JP2004058444A - パイプの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】継手とパイプの接合、特にサニタリー配管システムにおける、フェルール継手とパイプの接合を、高温高圧のような過酷な条件下でも、有効な接合状態を維持し、外観にも悪影響を与えず、コスト的にも安価に、かつ容易に調製できる方法を提供する。
【解決手段】
射出成形用の金型を構成するキャビティ2内にパイプ主体4の端部外周部を挿入固定したのち、金型内に射出した樹脂8によって、パイプ主体4の端部外周部に、端部断面から外側に延出する接続面12が平面状に形成された接続部13を一体的に成型してパイプ10とする。
【選択図】   図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、各種液体を移送するための配管に使用されるパイプ、より具体的には、継手などの接続部材が一体化されたパイプに関するもので、特に、食品、飲料、医薬品、酪農、化学、バイオテクノロジーなどの多くの分野において、フェルール継手とパイプを用いたサニタリー配管システムに好適なパイプに関するもので、配管技術及びパイプ製造技術に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
サニタリー配管システムとは、I.D.F.(国際酪農連盟)やI.S.O.(国際標準化機構)などの規格に準拠して施工される配管システムで、洗浄あるいは殺菌のために、必要に応じて分解され、配管内の洗浄あるいは殺菌が施されることのあるもので、そのため、配管を構成するパイプの接続は、パイプに熔接や接着で接合されたフェルール継手を、クランプ部材でクランプして固定することにより行われている。
【0003】
サニタリー配管システムに用いられる材料としては、従来、ステンレスや塩化ビニル樹脂などが使用されているが、これらの材料の内、例えば、ステンレスの場合は溶接による接続が基本であるので、溶接部が組織変化して薬品による腐食や錆を生じ、配管内の流体の組成変化、変質あるいは分解、さらには異物の混入などのおそれがある一方、塩化ビニル樹脂は耐熱性に劣り、温度80℃以上の高温液体の移送や配管内面の薬品洗浄、あるいは温湯や蒸気による洗浄には不適当であるという問題を有していた。
【0004】
このような問題を解決するため、この発明の発明者は、先にポリサルホン系樹脂をフェルール継手やパイプに用いることを提案した(特開2000−213682号公報)。
この提案における、ポリサルホン系樹脂は、透明で耐熱性、耐蝕性や耐衝撃性に優れるため、配管内部の流動状態や汚染状態を外部より容易に発見でき、洗浄や殺菌などの時期を容易に把握することができ、効果的な洗浄・殺菌を行うことができ、また、分解や組み立てが容易で、配管の分解による洗浄や殺菌の作業が簡単であるという優れた効果を奏するものである。
【0005】
さらに、この発明者は、ポリサルホン系樹脂製のフェルール継手と、パイプの接合方法についても検討を行い、先の提案において、接着剤として、塩化メチレンやメチルピロリドンなどを例示し、また、それらより優れるものとして、特開2002−129132号公報において、常温液体のケトンを接着剤として用いること、さらには、複素環式化合物及び常温液体のケトン又は芳香族エーテルを接着剤として用いること(特願2002−152100号)を提案した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の提案にある、種々の接着剤は、それぞれ、ポリサルホン系樹脂の接着剤として優れたもので、それぞれが目的とする効果を達成できるものであるが、サニタリー配管システムにおいては、高温(温度80〜140℃)および高圧(5〜10kgf/cm)という過酷な条件が必要とされることがあり、かかる過酷な条件下での使用に適した、フェルール継手とパイプの接合状態を得るためには、接着剤の種類や使用量、接着温度や接着圧力、さらには前処理、養生などについての知識と技術を必要とし、前記接着剤を用いれば、誰もが、そのような過酷な条件に耐える接着構造を、調製できるというものではないというのが現状である。
【0007】
発明者は、このような現状に鑑み、サニタリー配管システムにおいて、フェルール継手とパイプの接合を、高温高圧のような過酷な条件下でも、有効な接合状態を維持し、外観にも悪影響を与えず、コスト的にも安価に、かつ容易に調製できる方法について検討を行った。
【0008】
その結果、パイプの端部に、射出成形によって継手部分を成形する、いわゆるインサート成形によって、しかも、特開2002−46144号公報に示されるような、パイプの端部と継手部を接合させるのでなく、パイプの端部外周部に継手部分を形成する方法によって、課題を解決することができることを見出してこの発明を完成したのである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、この発明の請求項1に記載の発明は、
射出成形用の金型内にパイプ主体の端部外周部を挿入固定したのち、金型内に射出した樹脂によって、パイプ主体の端部外周部に、端部断面から外側に延出する接続面が平面状に形成された接続部を一体的に成型すること
を特徴とするパイプの製造方法である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のパイプの製造方法において、
前記パイプ主体は、
端部近傍の外周部に、抜け防止用の溝が設けられているものであること
を特徴とするものである。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載のパイプの製造方法において、
前記金型は
パイプ主体を保持するキャビティと、このキャビティとパーティングラインで当接するコアとから構成され、前記キャビティの内部又は外部に、パイプ主体を固定するためのパイプホルダーを有すること
を特徴とするものである。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、
請求項1乃至3のいずれかに記載のパイプの製造方法において、
前記接続部は、
サニタリーフェルール継手、フランジ継手又はユニオン継手として機能するものであること
を特徴とするものである。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、
請求項1乃至4のいずれかに記載のパイプの製造方法において、
前記パイプ主体と接続部は、
同質のエンジニアリングプラスチックであること
を特徴とするものである。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、
請求項5に記載のパイプの製造方法において、
前記エンジニアリングプラスチックは、
ポリサルホン系樹脂であること
を特徴とするものである。
【0015】
さらに、請求項7に記載の発明は、
請求項1乃至6のいずれかに記載のパイプの製造方法において、
前記パイプ主体への接続部の射出成型は、
パイプ主体の端部を射出成形用の金型内に挿入する前に加熱し、同時に射出成形用の金型もパイプ主体の端部を挿入する前に加熱して置くこと
を特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明かかるパイプの製造方法の好ましい実施の形態について、添付の図面に基づいて具体的に説明すると、図1は、この発明のパイプの製造方法で調製されたパイプの断面図を示し、得られたパイプ10は、パイプ素材11の一方の端部または両端部の外周部に、端部断面から段差無く連続する平面からなる接続面12を有する接続部13が一体的に形成されたもので、接続部としては、図に示される、パッキン用溝14を有するフェルール継手だけでなく、フランジ継手又はユニオン継手などとすることもできる。
【0017】
前記構造のパイプ10は、図2に示されるように、パーティングライン1の箇所で分割されるコア2とキャビティ3からなる金型の、キャビティ2に形成された差込孔にパイプ主体4の端部を挿入し、スプルー5、ランナー6、ゲート8を経由して、パイプ主体4の端部近傍の外周面に樹脂8を射出してパイプ主体3と一体化させ、平滑なパイプ主体4の端部断面から段差無く連続する平面12を有する接続部13を形成することによって得られるもので、図中、9はパイプ主体4の端部外周部に形成したパイプ抜け防止用の溝9である。
【0018】
かかる製造方法で得られたパイプは、パイプ主体の端部外周部に、端部断面から段差無く連続する平面を形成する、パイプ主体と一体化した接続部を有するもので、ポリサルホン系樹脂で製造された当該パイプは、サニタリー配管システム用のパイプとして好適なものである。
【0019】
この発明におけるパイプは、ポリサルホン、ポリフェニルサルホン、ポリエーテルサルホンなどのポリサルホン系樹脂を素材とすることによって、サニタリー配管システム用のパイプとして好適なものが得られるので望ましいが、パイプの用途・目的に応じて、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミドなどの耐熱性、耐薬品性に優れたエンジニアリングプラスチックが用いられ、場合によっては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを材質とするものも用いることもできる。
【0020】
また、パイプの形状としては、長尺又は短尺の直管、ベンドやエルボなどの曲管、さらにはT字又はY字状の分岐管などの各種のパイプが、射出成形用金型内にその端部を挿入する際に、形状的に不都合が生じない限り、使用することができ、それらのパイプの端部、片末端のみでなく両末端、あるいは全ての端部に接続部を形成することができる。
【0021】
前記の接続部は、基本的には、フランジ継手又はユニオン継手などのパイプ継手として機能する部分で、この発明においては、サニタリーフェルール継手として機能するものが好ましく、この接続部は、通常、パイプ主体と同質の樹脂を用い、射出成形により、射出成形用金型内に挿入したパイプ主体の端部外周部に、パイプ主体と一体化するように成形されるものである。
【0022】
また、この接続部は、継手としての機能を発揮させるために、パイプの端部同志を突き合わせた際に、突き合わされた端部同士が、齟齬無く密着するために、また、サニタリー配管システムに用いた際に、液溜りが生じ、バクテリアを繁殖させないために、パイプ主体の端部断面が平滑で、接続部が、平滑な端部断面から段差無く連続する平面を有することが必要である。
【0023】
かかる接続部を射出成形で成形するに際し、パイプ主体の端部を、射出成形用金型内に挿入固定するものであるが、挿入前に以下のような措置が、パイプ主体に施される。
【0024】
まず、パイプ主体の端部断面を平滑にするために切削加工を施すとともに、端部近傍の外周部に、抜け防止用の溝を形成するもので、溝の形状としては、例えば、肉厚が2mmのパイプの場合、溝の幅4mm、頂角120°の断面二等辺三角形の溝を形成するもので、この溝は、射出された樹脂により金型内のパイプ主体が押し出され、抜けるのを防止するためのもので、抜けないまでも、多少でもパイプ主体が挿入位置から移動することにより、パイプ主体の断面と接続部の平面の間に段差ができることを防止するものである。
【0025】
なお、パイプ主体が挿入位置から移動し、段差が生じることを確実に防止するためには、金型としては、その内部又は外部に、パイプ主体固定用のパイプホルダーを有するものが好ましい。
【0026】
このパイプホルダーを金型内部に設ける場合は、金型の一部で、油圧などにより作動する、例えば30mm幅のドーナツ状にパイプ押圧面が形成されたパイプホルダーで、成形時にパイプ主体を抑えるようにすればよく、金型外部に設ける場合はパイプ主体を挟みつけるクランプ部材からなるパイプホルダーを設け、樹脂の射出時、パイプ主体を抑えて移動しないようにすればよい。
【0027】
パイプ主体として、ポリサルホン系樹脂を含めた、熔融温度の高いエンジニアリングプラスチック製のものを用いたときは、その端部を射出成形用金型内に挿入し、端部外周部に、一体的に接続部を成形するためには、挿入前にパイプ主体の端部を加熱しておくことが望ましく、その加熱温度は樹脂の種類によって異なるが、ポリサルホン系樹脂であれば温度70〜150℃、好ましくは温度100℃前後に加熱するのが望ましい。
【0028】
接続部を構成する樹脂の射出成形条件も、当該樹脂の熔融温度、熔融粘度などに応じて設定され、ポリサルホン系樹脂の場合であれば、樹脂温度330〜400℃、好ましくは360℃前後が、金型温度100〜150℃、好ましくは130℃前後、射出圧力70〜120kgf/cm、好ましくは100kgf/cmである。
【0029】
【実施例】
ポリフェニルサルホン製のパイプ主体(外径35mm、内径31mm、肉厚2.0mm、長さ1000mm)を用意し、その端部断面を平滑に切削するとともに、幅4mm、頂角120°の断面二等辺三角形の溝を形成し、温度100℃に加熱した。
端部の加熱されたパイプ主体を図2に示され、温度130℃に加熱してあるキャビティに挿入し、パイプ主体と同質のポリフェニルサルホンを、射出樹脂温度360℃、射出圧力100kgf/cmで金型内に射出し、パイプ主体の端部外周部にフェルール継手を一体的に形成したパイプを作製した。
金型から取出したフェルール継手を端部に有するパイプを、直ちに常温の水槽に浸漬冷却したのち、パイプを取出し、水滴を除去し乾燥させ、成形部を目視で観察したところ、成形部の表面は、いずれも透明で、汚れ、ヘアークラック、フェース部の段差、溶着ムラなどの欠陥のないものであった。
【0030】
上記のようにして得られた、両端部にフェルール継手を有するパイプの耐水圧性を以下のようにして試験した。
◎ 常温耐水圧試験
両端部のフェルール継手に、フッ素樹脂製のサニタリーパッキンを装着し、一方の端面には閉止継手を接続し、他方の継手には、ねじ付きフェルール継手を繋ぎ、水を封入して空気を除去し、両継手をともにサニタリークランプを用いて締付け固定した。
ねじ付きフェルール継手側から、手押しポンプ式加圧試験機に水圧を加え、各圧力において5分間維持し、その圧力での水漏れの有無を目視で観察した。
試験数5で行ったが、いずれも20kgf/cm以上の水圧に耐えるものであった。
【0031】
◎ 高温耐水圧試験
上記耐水圧試験を水温90〜95℃の高温水槽内で行った。
水圧を加え、高温水槽に2時間浸漬したのち取出し、その圧力での水漏れの有無を目視で観察した。
試験数5で行ったが、いずれも高温条件下においても、20kgf/cm以上の水圧に耐えるものであった。
【0032】
【発明の効果】
この発明のパイプの製造方法によれば、施工時に、知識や技術を必要とする接着剤を用いたパイプと継手、特にフェルール継手の接合が不要となる、接続部が一体化されたパイプを容易に得ることができるもので、しかも、接続部は、従来のものとは異なり、パイプの端部外周部に、パイプと一体化した状態にあり、その接合状態は、サニタリー配管システムで要求される高温、高圧という過酷な条件にも耐えることのできるので、サニタリー配管システムへの信頼性、また操作性を著しく向上させることができるのである。
【0033】
さらに、この発明によれば、以下のような優れた効果も奏されるのである。
1)長尺のパイプの端部のみを金型内に挿入して接続部を射出成形するため、パイプの形状、特にその長さに制限されることがない。
2)端部に形成される接続部は容積が比較的に小さいので、小型の射出成形機を用いて短時間に容易に成形でき、能率的で生産性が良い。
3)フェルール継手表面を清浄に且つ平滑に成形できる。
4)接着剤を使用しないので、公害面、衛生面での問題発生が少なくなる。
5)パイプの外径や真円度の多少のバラツキに容易に対応できる。
6)フランジ、ユニオンなど多種多様な製品への対応が容易である。
7)接着加工のものと異なり養生を必要とせず、直ちに使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明で調製されたパイプの一例を示す断面図である。
【図2】この発明におけるパイプの製造方法の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
1  パーティングライン
2  キャビティ
3  コア
4  パイプ主体
5  スプルー
6  ランナー
7  ゲート
8  樹脂
9  溝
10 パイプ
11 パイプ主体
12 接続面
13 接続部
14 パッキン用溝

Claims (7)

  1. 射出成形用の金型内にパイプ主体の端部外周部を挿入固定したのち、金型内に射出した樹脂によって、パイプ主体の端部外周部に、端部断面から外側に延出する接続面が平面状に形成された接続部を一体的に成型すること
    を特徴とするパイプの製造方法。
  2. 前記パイプ主体は、
    端部近傍の外周部に、抜け防止用の溝が設けられているものであること
    を特徴とする請求項1に記載のパイプの製造方法。
  3. 前記金型は
    パイプ主体を保持するキャビティと、このキャビティとパーティングラインで当接するコアとから構成され、前記キャビティの内部又は外部に、パイプ主体を固定するためのパイプホルダーを有すること
    を特徴とする請求項1又は2に記載のパイプの製造方法。
  4. 前記接続部は、
    サニタリーフェルール継手、フランジ継手又はユニオン継手として機能するものであること
    を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のパイプの製造方法。
  5. 前記パイプ主体と接続部は、
    同質のエンジニアリングプラスチックであること
    を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のパイプの製造方法。
  6. 前記エンジニアリングプラスチックは、
    ポリサルホン系樹脂であること
    を特徴とする請求項5に記載のパイプの製造方法。
  7. 前記パイプ主体への接続部の射出成型は、
    パイプ主体の端部を射出成形用の金型内に挿入する前に加熱し、同時に射出成形用の金型もパイプ主体の端部を挿入する前に加熱して置くこと
    を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のパイプの製造方法。
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