JP2004058179A - 電解加工用電極工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】動圧発生用溝を形成するための電解加工用電極工具によって電解加工を行う際に、絶縁部材の耐久性を低コストで確保しつつ、電極と被加工物の間隙を微少に保つことで電解加工の速度を高く維持する。
【解決手段】電解加工用電極工具61は、動圧軸受を構成する被加工物の表面に動圧発生用溝を形成するためのものであって、電極62と絶縁プレート63とを備えている。電極62は、電極パターン68が形成された電極表面67と、電極表面67より凹んだ底部69とを有する。絶縁プレート63は、電極62の底部69に係止された部材である。絶縁プレート63は電極パターン68より突出する畝部71を有し、畝部71は溝形成時に被加工物の表面に当接して電極パターン68と被加工物との間に電解液用の微少間隙を確保する。
【選択図】 図2
【解決手段】電解加工用電極工具61は、動圧軸受を構成する被加工物の表面に動圧発生用溝を形成するためのものであって、電極62と絶縁プレート63とを備えている。電極62は、電極パターン68が形成された電極表面67と、電極表面67より凹んだ底部69とを有する。絶縁プレート63は、電極62の底部69に係止された部材である。絶縁プレート63は電極パターン68より突出する畝部71を有し、畝部71は溝形成時に被加工物の表面に当接して電極パターン68と被加工物との間に電解液用の微少間隙を確保する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被加工物の表面に溝を形成するための電解加工用電極工具に関し、特に、動圧軸受を構成する被加工物の表面に動圧発生用溝を形成するためのものに関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスク等の記録ディスク駆動装置は、記録ディスクと同心に配置された回転駆動用のスピンドルモータを装置内に有している。このスピンドルモータは、主に、電機子コイルを有するステータが固定された静止部材と、ステータに対向するロータマグネットが固定された回転部材と、回転部材を静止部材に回転自在に支持する軸受手段とから構成されている。
【0003】
同装置の高性能化に伴い、この軸受手段としては、高精度化を目的に動圧軸受が採用されている。動圧軸受は、例えば、中空円筒状部材と、その中に相対回転可能に配置されたシャフトによって形成されている。シャフトは、例えば、シャフト本体と、その端部に形成されたスラストフランジとを有している。中空円筒状部材は、シャフト本体の外周面に微少間隙を介して半径方向に対向する内周面と、スラストフランジに微少間隙を介して軸線方向に対向するスラスト面とを有している。各微少間隙内にはオイル等の潤滑油が充填され、ラジアル動圧軸受部及びスラスト動圧軸受部がそれぞれ構成されている。シャフト及び中空円筒状部材の一方が他方に対して回転を開始すると、各軸受部において動圧が発生し、回転側の部材が静止側の部材に対して回転自在に非接触にて支持される。
【0004】
このような動圧軸受では、微少間隙を構成する壁面に動圧発生用の溝が形成されている。この溝は、0.5μm程度の高精度なものであり、形状はヘリングボーン状、スパイラル状等様々である。
この動圧発生用溝の成形方法としては、電解加工、転造、プレス等があるが、電解加工が選択されることがある。電解加工機は、主に、動圧溝に対応した電極パターンを電極表面に有する電極工具と、電解液の供給・回収機構とから構成されている。電解加工方法では、被加工物及び電極工具を電解加工用電源の正極及び負極にそれぞれ接続し、被加工物に対して電極工具の電極パターンを対向させる。この状態で、電極工具と被加工物との間に電解液を流動させながら通電する。この結果、被加工物の表面は電極パターンに対応する部分が溶出し、その箇所に動圧溝が蝕刻される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように電解加工によって被加工物表面に特定のパターンを蝕刻する場合、以下の2つの技術が必要とされる。
第1に、レジスト膜等によって、形電極表面に電極パターン以外の部分を被覆して絶縁することである。レジスト膜を用いる場合は、例えば、電極の表面に一様なレジスト膜を形成した後に、フォトリソグラフィの技術を用いて不要部分を除去する。
第2に、被加工物表面と電極表面の間に電解液を流すための微少間隙を確保することである。この微少間隙は50μm程度であることが望ましい。
【0006】
第2の技術である間隙確保のためには、治具を用いて電極と被加工物を固定する方法が知られている。しかし、治具による位置決めでは、被加工物表面と電極表面を平行に保つことにしばしば失敗して、歩留まりを低下させてしまう。
特開2001−336532号に示すように、電極と被加工物の間にシートを挟んで微少間隙を確保する技術も知られている。この場合には、シートは電極表面に電極パターンを形成する第1の技術も同時に実現していることになる。
【0007】
しかし、この電極工具では、シートに耐久性を付与することが難しい。なぜなら、シート材質を樹脂材料とした場合は、強度が低いために容易に傷が付き、ピンホールや破れなどが生じる。シート材質をセラミックスなどの硬質材料とした場合は、割れやすく、耐久性が確保できない。また、セラミックスを非常に薄くすれば、耐久性を実現するものの、その反面、製造が難しく高コストになる。
【0008】
また、シートを200μm程度まで厚くすれば高コストにならずに耐久性の確保は可能であるが、この電極工具ではシートの厚みがそのまま電極パターンと被加工物の加工間隙となるため、加工間隙が大きくなりすぎ、生産性が低下してしまう。加工間隙が大きくなると、電気抵抗が増し、電解加工の速度が低下するからである。
【0009】
このように、絶縁部材を電極表面に当接させることで微少間隙を確保する電極工具においては、厚みを増加させずに絶縁部材の耐久性を向上した場合は高コスト化し、厚みを増加することで絶縁部材の耐久性を向上した場合は生産性が低下してしまうという問題がある。
本発明の課題は、動圧発生用溝を形成するための電解加工用電極工具によって電解加工を行う際に、絶縁部材の耐久性を低コストで確保しつつ、電極と被加工物の間隙を微少に保つことで電解加工の速度を高く維持することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の動圧発生用溝を形成するための電解加工用電極工具は、動圧軸受を構成する被加工物の表面に動圧発生用溝を形成するためのものであって、電極と絶縁スペーサとを備えている。電極は、電極パターンが形成された電極表面と、電極表面より凹んだ凹部とを有する。絶縁スペーサは、電極の凹部に係止された部材である。絶縁スペーサは電極パターンより突出する突出部を有し、突出部は溝形成時に被加工物の表面に当接して電極パターンと被加工物との間に電解液用の微少間隙を確保する。なお、ここで、凹部とは、電極に形成された溝や凹み、さらには孔を含む。
【0011】
この電解加工用電極工具では、絶縁スペーサは、溝形成時に被加工物の表面に当接して電極パターンと被加工物との間に電解液用の微少間隙を確保している。しかも、絶縁スペーサは電極の凹部に係止された部材であるため、溝形成時に電極パターンと被加工物との微少間隙を十分に小さく保ちつつ、絶縁スペーサをその微少間隙以上に厚くすることができる。このように絶縁スペーサの十分な厚みを確保して耐久性を維持することで低コストを維持でき、さらに、電極パターンと被加工物との間の微少間隙を十分に小さく保つことで電解加工の速度を高く維持し、生産性を高く維持している。
【0012】
請求項2に記載の電解加工用電極工具では、請求項1において、突出部は、被加工物の表面に当接する平坦面を有している。
この電解加工用電極工具では、突出部が被加工物の表面に当接する平坦面を有しているため、被加工物の表面に損傷が生じにくい。したがって、被加工物の表面の精度が向上する。
【0013】
請求項3に記載の電解加工用電極工具では、請求項1又は2において、突出部は電極表面中央部に対応する突出中央部を有しており、突出中央部の周囲には電解液の供給又は回収用の孔が設けられている。
この電解加工用電極工具では、突出中央部の周囲には電解液の供給又は回収用の孔が設けられているため、絶縁スペーサに突出中央部を設けていても電解液の流れが阻害されることがなく、電解加工の速度を高く維持できる。
【0014】
請求項4に記載の電解加工用電極工具では、請求項1又は2において、突出部は電極表面中央部に対応する中央開口部を有しており、中央開口部は電解液の供給又は回収用の孔として機能している。
この電解加工用電極工具では、突出部の中央開口部は電解液の供給又は回収用の孔として機能しているため、電解液の流れが阻害されることがなく、電解加工の速度を高く維持できる。
【0015】
請求項5に記載の電解加工用電極工具では、請求項1〜4のいずれかにおいて、電極パターンは電極表面の他の部分から突出しており、絶縁スペーサは、電極パターンがはめ込まれる切り欠きを有するプレートである。
この電解加工用電極工具では、絶縁スペーサの切り欠きに電極パターンがはめ込まれることで、絶縁スペーサは電極表面に係止されている。ここでは、絶縁スペーサは、電極表面において電極パターン以外の部分を被覆する機能も有している。
【0016】
請求項6に記載の電解加工用電極工具では、請求項5において、絶縁スペーサは、電極表面の外周縁からさらに半径方向外側にはみ出した部分をさらに有し、はみ出した部分が電極の外周面に固定されている。
この電解加工用電極工具では、絶縁スペーサの電極表面の外周縁からさらに半径方向外側にはみ出した部分が電極の外周面に固定されているため、電極表面の精度を低下させることなく、絶縁スペーサを電極に堅く固定することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
(1)電解加工用電極工具
図1及び図2に、本発明の第1実施形態としての電解加工用電極工具61を示している。図1は電極工具61の正面図であり、図2は電極工具61の電極表面67付近の分解斜視図である。電極工具61は、動圧軸受を構成する被加工物の表面に動圧発生用溝を形成するためのものであり、さらに具体的には、被加工物の平面部分に動圧発生用溝を形成するためのものである。
【0018】
電極工具61は、主に、電極62と、絶縁プレート63とから構成されている。電極62は、細長い円柱部64と、その一端に設けられた大径の電極本体65とから構成されている。
電極本体65の先端側(円柱部64と反対側)には、電極表面67が形成されている。電極表面67は、電極本体65の外周縁に沿った環状の領域である。電極本体65の先端側中央部には中心孔66が形成されている。この中心孔66は、後述するように、電解液の供給又は回収用の開口部として機能している。
【0019】
電極表面67の表面形状について説明する。電極表面67上には、複数の電極パターン68が形成されている。電極パターン68は、回転方向に対して傾いた状態で半径方向に延びるスパイラル形状である。電極パターン68は電極表面67の他の部分から突出して形成されており、その間には電極表面67の複数の底部69が形成されている。以上をまとめると、電極表面67には、底部69と電極パターン68とによって凹凸が形成されている。電極パターン68の突出高さ(すなわち、底部69の溝深さ)は、深ければ深いほど、絶縁プレートを厚くすることができて、耐久性が増す。しかし、2mmを超える加工は、加工に用いるエンドミル等の能力が制約となって加工が困難になる。一方、0.05mm未満では、絶縁プレートを0.1mm未満にまで薄くしなければならなくなり、耐久性の確保が難しくなる。
【0020】
絶縁プレート63は、アクリル等の樹脂製絶縁材料から構成されており、電極表面67に固定される部材である。絶縁プレート63は、概ね、電極表面67に対応するような環状であり、しかも平坦な板状部材である。絶縁プレート63の板厚は、絶縁プレート63の板厚は、溝深さに対応して決められる。0.05〜2mmに突出高さを加えた値とすることが好ましい。絶縁プレート63は、半径方向に延びる複数の畝部71と、それらの外周端に連結された環状の外周部72とから構成されており、各畝部71間が切り欠き73となっている。言い換えると、絶縁プレート63は中心に丸孔が形成されており、その内周縁から外周側に向かって複数の切り欠き73が形成されている。
【0021】
絶縁プレート63の畝部71は、電極表面67の底部69に対応して形成されており、底部69に隙間なく、填め込まれている。また、電極表面67の電極パターン68は、絶縁プレート63の切り欠き73内に隙間なく、填め込まれている。このように、絶縁プレート63は、電極表面67の凹凸部分(電極パターン68と底部69)に対して填め込まれ、底部69上に電極パターン68より突出する突出部(畝部71)を確保している。
【0022】
絶縁プレート63は内外径ともに電極表面67より大きい。さらに、絶縁プレート63の外周部72の内径も電極表面67の外径よりも大きいため、切り欠き73の外周側部73aは電極表面67の外周縁のさらに外周側に位置して開口している。
絶縁プレート63の外周部72と電極本体65の外周面との間には、固定用モールド76が形成されている。これにより、絶縁プレート63は電極本体65に対して堅く固定されている。このように絶縁プレート63の電極表面67の外周縁からさらに半径方向外側にはみ出した部分が電極本体65の外周面に固定されているため、電極表面67の精度を低下させることなく、絶縁プレート63を電極62に堅く固定することができる。言い換えると、絶縁プレート63の接着部を電極表面67以外の部分に設けているため、電極表面67における絶縁プレート63の精度が向上し、さらに被加工物の表面の加工精度が向上する。
【0023】
固定用モールド76は、電極本体65の外周面まで内周側に延びているため、外周部72のみならず畝部71の外周端まで延びており、切り欠き73の外周側部73aの片側を閉鎖しているが、その反対側(先端側)までは延びていない。そのため、切り欠き73の外周側部73aは、図1及び図2の下側は閉鎖されているが、上側は開いた状態になっている。
【0024】
絶縁プレート63は、図3に示すように、先端側面が電極表面67の電極パターン68の先端側面よりさらに突出している。言い換えると、電極パターン68の先端側面は絶縁プレート63の先端側面よりわずかに凹んだ状態になっている。この突出量Sはわずかであり、50μm程度である。突出量Sは、30〜100μmの範囲にあることが好ましい。突出量Sは電解液が流れる隙間の軸線方向間隙に等しく、この間隙が30μm以下になると電解液の流れが悪くて焼きつき(ショート)が発生しやすくなり、100μm以上では電気抵抗が増大して効率が低下するからである。
【0025】
このように、絶縁プレート63は、電極表面67の凹部である底面69に填められているため、それ自身は一定の厚みを保ちながら電極パターン68からの突出量Sを小さくできる。
また、以上に述べたように絶縁プレート63は、電極表面67において絶縁部を形成する機能を有している。このように絶縁部形成のためにレジスト塗布をしなくて良いため、レジスト塗布に起因する手間の増大や塗装物の剥がれなどの問題が生じない。
【0026】
(2)電解加工動作
被加工物79は、この実施形態では、図3に示すように、円板形状の部材であり、外径が電極表面67とほぼ等しい。なお、被加工物79は、例えば、スラスト動圧軸受部の対向面の一方を構成する部材であり、シャフトに設けられたスラストフランジや、又はそれに対向するスラストカバーやスリーブ端面である(後述)。
【0027】
被加工物79及び電極工具61を電解加工用電源の正極及び負極にそれぞれ接続し、被加工物79に対して電極工具61の電極表面67側を対向させる。すると、絶縁プレート63の畝部71が被加工物79の表面79aに当接し、電極表面67の電極パターン68と被加工物79の表面79aとには微少間隙77が確保される。微少間隙77の軸線方向距離は絶縁プレート63の突出量Sに等しい。微少間隙77は、内周側においては電極本体65の中心孔66に連通し、外周側において切り欠き73の外周側部73aに連通している。このように、絶縁プレート63は、被加工物79に突き当てられるスペーサとして機能している。ここで、絶縁プレート63の表面が平坦面であるため、被加工物79の表面79aに損傷が生じにくい。したがって、被加工物79の表面79aの精度が向上する。
【0028】
この状態で、電極工具61と被加工物79との間に電解液を流動させながら、両者に通電する。電解液は、図3及び図4の矢印Fで示すように、電極本体65の中心孔66から供給され、微少間隙77すなわち電極パターン68と被加工物79との間(より正確には、電極表面67の底部69と絶縁プレート63の畝部71の側壁によって囲まれる範囲)を通って半径方向外側に流れ、最後に切り欠き73の外周側部73aから先端側に排出される。この結果、被加工物79の表面79aは電極パターン68に対応する部分80が溶出し、その箇所に動圧溝が蝕刻される。なお、電解液の流れ方向は、外周側から内周側に向かっても良い。
【0029】
この電解加工用電極工具61では、絶縁プレート63の中心孔が電解液の供給又回収用の孔として機能しているため、電解液の流れが阻害されることがなく、電解加工の速度を高く維持できる。
しかも、絶縁プレート63は電極表面67の底部69に填められて係止されているため、それ自身は一定の厚みを保ちながら微少間隙77を小さくできる。このように微少間隙77が十分に小さく保たれているため、電解加工の速度が高くなり、生産性も高く維持されている。また、絶縁プレート63は高コストになることなく耐久性を維持している。さらに、絶縁プレート63は電極表面67の底部69に填められているため、絶縁プレート63の係止が容易かつ確実である。
【0030】
さらに、絶縁プレート63が被加工物79に密着しているため、絶縁プレート63と被加工物79との間に電解液が入り込みにくい。その結果、被加工物79において電極パターン68に対応する部分以外の部分が溶出しにくい。
(3)スピンドルモータの構成
図8は、本発明の一実施形態としての電極工具61によって動圧発生用溝が形成された構成部材を有する動圧軸受4が採用されたスピンドルモータ1の概略構成を模式的に示す縦断面図である。
【0031】
図8において、このスピンドルモータ1は、主に、静止部材2と、回転部材3と、回転部材3を静止部材2に対して回転自在に支持するための動圧軸受4とを備えている。スピンドルモータ1は、さらに、静止部材2に固定されたステータコアとこのステータコアに巻装されたコイルとからなるステータ6と、回転部材3に固定されたロータマグネット7を備えており、両部材によって、回転部材3に対して回転力を与えるための磁気回路部が構成されている。
【0032】
静止部材2は、ブラケット10と、このブラケット10の中央開口内に固定されたスリーブ11とから構成されている。ブラケット10の中央開口縁には軸線方向上側に延びる筒状部10aが形成されており、その内周面にはスリーブ11の外周面が嵌合されている。また筒状部10aの外周面にはステータ6が固定されている。
【0033】
スリーブ11は、中空円筒状のスリーブ本体16と、スリーブ本体16の下部を閉鎖する円板状のスラストカバー12とから構成されている。スリーブ本体16は、その中心を軸線方向に延びる貫通孔51を有しており、そこには内周面53が形成されている。スラストカバー12は、円形の板状部材であり、スリーブ本体16の下端に固定されて貫通孔51の下端開口を閉鎖している。スリーブ本体16の下端には、内周面53から連続する段部が形成されている。段部は、スリーブ本体16の下端面であるスラスト面と、内周面53より大径の下部内周面とから構成されており、シャフト15のスラストフランジ46を収容するための環状の凹部又は空間を確保している。また、段部の下方は、スラストカバー12の軸線方向上側端面であるスラスト面によって閉ざされている。
【0034】
回転部材3は、スリーブ11に対して動圧軸受4を介して回転自在に支持される部材であって、外周部に記録ディスク(図示しない)が載置されるロータハブ14と、ロータハブ14の内周側に位置し動圧軸受4を介してスリーブ11に軸支されるシャフト15とを備えている。
ロータハブ14は、スリーブ11やステータ6を上方から覆うようように近接して配置されたカップ形状の部材である。ロータハブ14のボス部14aの内周面はスリーブ11の上部外周面に微少間隙をもって対向しており、下部筒状部14bの内周面には接着手段によってロータマグネット7が固定されている。ボス部14aの外周面には、記録ディスク(図9を参照)が嵌合される。
【0035】
ロータマグネット7はステータ6に半径方向に微少間隙をもって対向している。そして、ステータ6のコイルに通電することにより、ステータ6とロータマグネット7との電磁相互作用が発生し、回転部材3にトルクが作用する。
シャフト15の軸線方向上側端部は、ロータハブ14の中心孔内に嵌合されている。シャフト15の下端には、スラストフランジ46が一体に形成されている。つまり、シャフト15は、円柱形状のシャフト本体45とスラストフランジ46とから構成されていることになる。
【0036】
シャフト本体45は、概ね、スリーブ11の貫通孔51に沿って柱状中空部に配置され、その外周面37が内周面53に対して半径方向に微少間隙を介して対向している。
スラストフランジ46は、スリーブ11の円板状中空部に配置されている。具体的には、スラストフランジ46は、シャフト15のシャフト本体45の下端の外周面からスリーブ11のスリーブ本体16の下部内周面に対して微少間隙を形成する位置まで半径方向外側に延びる円板状の部分である。スラストフランジ46は、シャフト本体45側の第1スラスト面と、その反対側の第2スラスト面とを有している。第1スラスト面はスリーブ本体16の下端面であるスラスト面に対して軸線方向に微少間隙を介して対向しており、第2スラスト面はスラストカバー12のスラスト面に対して軸線方向に微少間隙を介して対向している。
【0037】
動圧軸受4は、回転部材3を静止部材2に対して、より具体的には、ロータハブ14及びシャフト15をスリーブ11に対して潤滑油8を介して回転自在に支持するための動圧軸受である。動圧軸受4は、第1及び第2ラジアル動圧軸受部21,22と、第1及び第2スラスト動圧軸受部23,24とを有している。さらに、各軸受部内の潤滑油8は、シャフト15の外周面とスリーブ11の内周面との間の隙間の軸線方向上側部分に形成された表面張力シール部29によってシールされている。また、各軸受部21〜24を構成する間隙は完全に潤滑油8が満たされており(空気によって遮断された部分を有しておらず)、表面張力シール部29のみにて外気に通じるいわゆるフルフィル構造となっている。
【0038】
スリーブ本体16の内周面53には、潤滑油8中に動圧を発生するためのヘリングボーン状の動圧発生用溝25、26が軸線方向に並んで形成されている。動圧発生用溝25、26は回転方向に並んだ複数の溝であり、各溝は回転方向に対して相反する方向に傾斜する一対のスパイラル溝を連結してなる略「く」の字状の溝である。このように、スリーブ11の内周面53と、シャフト15のシャフト本体45の外周面37と、その間の潤滑油8とによって、第1及び第2ラジアル動圧軸受部21、22が軸線方向に並んで構成されている。この両ラジアル動圧軸受部21,22では、流体動圧は動圧発生用溝25,26の連結部において極大となり、必要な荷重支持圧を実現する。
【0039】
スリーブ本体16のスラスト面には、シャフト15の回転にともない潤滑油8中に動圧を発生するためのスパイラル状の動圧発生用溝27が形成されている。動圧発生用溝27は回転方向に並んだ複数の溝であり、各溝は潤滑油8に対して半径方向内側に向かう流体動圧を誘起するように回転方向に対して傾斜している。このように、スリーブ11のスラスト面とスラストフランジ46の第1スラスト面とその間の潤滑油8によって、第1スラスト動圧軸受部23が形成されている。
【0040】
スラストカバー12のスラスト面には、シャフト15の回転にともない潤滑油8中に動圧を発生するためのスパイラル状の動圧発生用溝28が形成されている。動圧発生用溝28は回転方向に並んだ複数の溝であり、各溝は潤滑油8に対して半径方向内側に向かう流体動圧を誘起するように回転方向に傾斜している。このように、スラストフランジ46の第2スラスト面と、スラストカバー12のスラスト面と、その間の潤滑油8とによって、第2スラスト動圧軸受部24が形成されている。
【0041】
(4)スピンドルモータの動作
回転部材3の回転に応じて、第1及び第2ラジアル動圧軸受部21,22によるポンピング圧が高まり、ラジアル方向(半径方向)の荷重を支持するために必要な支持圧を発生すると同時に、潤滑油8を軸線方向下側に押し込むようにポンピング圧が作用する。また、定常回転時において第1及び第2ラジアル動圧軸受部21,22からのポンピング圧は、第1スラスト動圧軸受部23の半径方向内周側に作用するポンピング圧よりも大きいため、幾分相殺されて潤滑油8を半径方向外周側へ押し込むように作用する。第1スラスト動圧軸受部23は、ここで発生する半径方向内周側のポンピング圧と第1及び第2ラジアル動圧軸受部21、22からのポンピング圧とが相互作用してスラスト方向(軸線方向)の荷重を支持する。さらにこのポンピング圧は、スラストフランジ46の外周面に形成される微少間隙を介して第2スラスト動圧軸受部24に伝搬し、この軸受部の半径方向内周側のポンピング圧と第1及び第2ラジアル動圧軸受部21,22からの押し込み圧とが相互作用する。これにより、第2スラスト動圧軸受部24の中心が高圧になってスラスト方向の荷重を支持する。
【0042】
このようにして動圧軸受4は回転部材3を静止部材2に対して回転自在に非接触支持する。なお、微少間隙の潤滑油8の保持量は、スピンドルモータの回転動作や温度等により適宜変化するが、表面張力シール部29を構成する空隙が油溜めとして作用するため、そのような変化があっても潤滑油8が不足したり或いは漏洩することはない。
【0043】
(5)ハードディスク装置の構成
次に、スピンドルモータ1を備えた記録ディスク駆動装置としてのハードディスク装置を例に説明する。
図9に、一般的なハードディスク装置80の内部構成を模式図として示す。ハウジング81の内部は塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部に情報を記憶する円板状の記録ディスク83が装着されたスピンドルモータ1が設置されている。加えてハウジング81の内部には、記録ディスク83に対して情報を読み書きする磁気ヘッド移動機構87が配置され、この磁気ヘッド移動機構87は、記録ディスク上の情報を読み書きするヘッド86、このヘッドを支えるアーム85、およびヘッドおよびアームをディスク上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部84により構成される。
【0044】
(6)第2実施形態
▲1▼電解加工用電極工具の構成
図5〜図7に本発明の第2実施形態としての電解加工用電極工具61’を示す。この電極工具61’は前記第1実施形態としての電極工具61と基本的な構造が同様であるので、以下異なる点のみを説明する。
【0045】
電極工具61’の絶縁プレート63’は、第1実施形態の絶縁プレート63とは異なり、中心部74を有している。すなわち、畝部71は、外周部72と中心部74とを連結しており、切り欠き73は内周縁が閉ざされている。
絶縁プレート63の畝部71は、電極表面67の底部69に対応して形成されており、底部69に隙間なく、填め込まれている。また、電極表面67の電極パターン68は、絶縁プレート63の切り欠き73内に隙間なく、填め込まれている。このように、絶縁プレート63は、電極表面67の凹凸部分(電極パターン68と底部69)に対して填め込まれ、底部69上に電極パターン68より突出する突出部(畝部71)を確保している。さらに、絶縁プレート63は、電極62の中心孔66に対応する部分に、電極パターン68より突出する突出中央部(中心部74)を確保している。
【0046】
▲2▼電解加工動作
このような状態で、図6及び図7に示すように、電解加工を行う。被加工物79及び電極工具61’を電解加工用電源の正極及び負極にそれぞれ接続し、被加工物79に対して電極工具61’の電極表面67側を対向させる。すると、絶縁プレート63’の畝部71及び中心部74が被加工物79の表面に当接し、電極表面67の電極パターン68と被加工物79の表面79aとには微少間隙77が確保される。微少間隙77の軸線方向距離は絶縁プレート63の突出量Sに等しい。微少間隙77は、内周側においては電極本体65の中心孔66に連通し、外周側において切り欠き73の外周側部73aに連通している。このように、絶縁プレート63’は、被加工物79に突き当てられるスペーサとして機能している。ここで、絶縁プレート63’の表面が平坦面であるため、被加工物79の表面79aに損傷が生じにくい。したがって、被加工物79の表面79aの精度が向上する。
【0047】
この状態で、電極工具61’と被加工物79との間に電解液を流動させながら、両者に通電する。電解液は、図6及び図7の矢印Fで示すように、電極本体65の中心孔66から供給され、微少間隙77すなわち電極パターン68と被加工物79との間(より正確には、電極表面67の底部69と絶縁プレート63’の畝部71の側壁によって囲まれる範囲)を通って半径方向外側に流れ、最後に切り欠き73の外周側部73aから先端側に排出される。この結果、被加工物79の表面79aは電極パターン68に対応する部分80が溶出し、その箇所に動圧溝が蝕刻される。なお、電解液の流れ方向は、外周側から内周側に向かっても良い。
【0048】
この電解加工用電極工具61’では、基本的に、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
さらに、この電解加工用電極工具61’では、突出中央部である中心部74の周囲には電解液の供給又は回収用の孔が設けられているため、電解液の流れが阻害されることがなく、電解加工の速度を高く維持できる。
【0049】
(7)他の実施形態
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
前記実施形態においては加工される溝の形状はスパイラルであったが、ヘリングボーンやステップ形状であってもよい。
【0050】
前記実施形態においては、スラスト動圧軸受部の動圧発生用溝を形成するための電極工具に本発明を適用した例を示したが、ラジアル動圧軸受部やコーン型動圧軸受部の動圧発生用溝を形成する動圧発生用溝を形成するための電極工具に本発明を適用しても良い。
【0051】
【発明の効果】
請求項1に記載の動圧発生用溝を形成するための電解加工用電極工具では、絶縁スペーサの十分な厚みを確保して耐久性を維持することで低コストを維持でき、さらに、電極パターンと被加工物との間の微少間隙を十分に小さく保つことで電解加工の速度を高く維持し、生産性を高く維持している。
【0052】
請求項2に記載の電解加工用電極工具では、請求項1において、被加工物の表面の精度が向上する。
請求項3に記載の電解加工用電極工具では、請求項1又は2において、絶縁スペーサに突出中央部を設けていても電解液の流れが阻害されることがなく、電解加工の速度を高く維持できる。
【0053】
請求項4に記載の電解加工用電極工具では、請求項1又は2において、電解液の流れが阻害されることがなく、電解加工の速度を高く維持できる。
請求項5に記載の電解加工用電極工具では、請求項1〜4のいずれかにおいて、絶縁スペーサは、電極表面において電極パターン以外の部分を被覆する機能も有している。
【0054】
請求項6に記載の電解加工用電極工具では、請求項5において、電極表面の精度を低下させることなく、絶縁スペーサを電極に堅く固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態としての電解加工用電極工具の正面図。
【図2】電極工具の電極本体の斜視図。
【図3】電解加工時の電極工具と被加工物の関係を説明するための部分縦断面図。
【図4】電極工具の先端面の部分平面図。
【図5】第2実施形態における、図2に対応する図。
【図6】第2実施形態における、図3に対応する図。
【図7】第2実施形態における、図4に対応する図。
【図8】本発明に電極工具によって加工された被加工物が用いられる一例としてのスピンドルモータの縦断面概略図。
【図9】図8のスピンドルモータが用いられるハードディスク装置の模式図。
【符号の説明】
61 電極工具
62 電極
63 絶縁プレート(絶縁スペーサ)
67 電極表面
68 電極パターン
69 底部(凹部)
71 畝部(突出部)
72 外周部
73 切り欠き
77 微少間隙
【発明の属する技術分野】
本発明は、被加工物の表面に溝を形成するための電解加工用電極工具に関し、特に、動圧軸受を構成する被加工物の表面に動圧発生用溝を形成するためのものに関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスク等の記録ディスク駆動装置は、記録ディスクと同心に配置された回転駆動用のスピンドルモータを装置内に有している。このスピンドルモータは、主に、電機子コイルを有するステータが固定された静止部材と、ステータに対向するロータマグネットが固定された回転部材と、回転部材を静止部材に回転自在に支持する軸受手段とから構成されている。
【0003】
同装置の高性能化に伴い、この軸受手段としては、高精度化を目的に動圧軸受が採用されている。動圧軸受は、例えば、中空円筒状部材と、その中に相対回転可能に配置されたシャフトによって形成されている。シャフトは、例えば、シャフト本体と、その端部に形成されたスラストフランジとを有している。中空円筒状部材は、シャフト本体の外周面に微少間隙を介して半径方向に対向する内周面と、スラストフランジに微少間隙を介して軸線方向に対向するスラスト面とを有している。各微少間隙内にはオイル等の潤滑油が充填され、ラジアル動圧軸受部及びスラスト動圧軸受部がそれぞれ構成されている。シャフト及び中空円筒状部材の一方が他方に対して回転を開始すると、各軸受部において動圧が発生し、回転側の部材が静止側の部材に対して回転自在に非接触にて支持される。
【0004】
このような動圧軸受では、微少間隙を構成する壁面に動圧発生用の溝が形成されている。この溝は、0.5μm程度の高精度なものであり、形状はヘリングボーン状、スパイラル状等様々である。
この動圧発生用溝の成形方法としては、電解加工、転造、プレス等があるが、電解加工が選択されることがある。電解加工機は、主に、動圧溝に対応した電極パターンを電極表面に有する電極工具と、電解液の供給・回収機構とから構成されている。電解加工方法では、被加工物及び電極工具を電解加工用電源の正極及び負極にそれぞれ接続し、被加工物に対して電極工具の電極パターンを対向させる。この状態で、電極工具と被加工物との間に電解液を流動させながら通電する。この結果、被加工物の表面は電極パターンに対応する部分が溶出し、その箇所に動圧溝が蝕刻される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように電解加工によって被加工物表面に特定のパターンを蝕刻する場合、以下の2つの技術が必要とされる。
第1に、レジスト膜等によって、形電極表面に電極パターン以外の部分を被覆して絶縁することである。レジスト膜を用いる場合は、例えば、電極の表面に一様なレジスト膜を形成した後に、フォトリソグラフィの技術を用いて不要部分を除去する。
第2に、被加工物表面と電極表面の間に電解液を流すための微少間隙を確保することである。この微少間隙は50μm程度であることが望ましい。
【0006】
第2の技術である間隙確保のためには、治具を用いて電極と被加工物を固定する方法が知られている。しかし、治具による位置決めでは、被加工物表面と電極表面を平行に保つことにしばしば失敗して、歩留まりを低下させてしまう。
特開2001−336532号に示すように、電極と被加工物の間にシートを挟んで微少間隙を確保する技術も知られている。この場合には、シートは電極表面に電極パターンを形成する第1の技術も同時に実現していることになる。
【0007】
しかし、この電極工具では、シートに耐久性を付与することが難しい。なぜなら、シート材質を樹脂材料とした場合は、強度が低いために容易に傷が付き、ピンホールや破れなどが生じる。シート材質をセラミックスなどの硬質材料とした場合は、割れやすく、耐久性が確保できない。また、セラミックスを非常に薄くすれば、耐久性を実現するものの、その反面、製造が難しく高コストになる。
【0008】
また、シートを200μm程度まで厚くすれば高コストにならずに耐久性の確保は可能であるが、この電極工具ではシートの厚みがそのまま電極パターンと被加工物の加工間隙となるため、加工間隙が大きくなりすぎ、生産性が低下してしまう。加工間隙が大きくなると、電気抵抗が増し、電解加工の速度が低下するからである。
【0009】
このように、絶縁部材を電極表面に当接させることで微少間隙を確保する電極工具においては、厚みを増加させずに絶縁部材の耐久性を向上した場合は高コスト化し、厚みを増加することで絶縁部材の耐久性を向上した場合は生産性が低下してしまうという問題がある。
本発明の課題は、動圧発生用溝を形成するための電解加工用電極工具によって電解加工を行う際に、絶縁部材の耐久性を低コストで確保しつつ、電極と被加工物の間隙を微少に保つことで電解加工の速度を高く維持することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の動圧発生用溝を形成するための電解加工用電極工具は、動圧軸受を構成する被加工物の表面に動圧発生用溝を形成するためのものであって、電極と絶縁スペーサとを備えている。電極は、電極パターンが形成された電極表面と、電極表面より凹んだ凹部とを有する。絶縁スペーサは、電極の凹部に係止された部材である。絶縁スペーサは電極パターンより突出する突出部を有し、突出部は溝形成時に被加工物の表面に当接して電極パターンと被加工物との間に電解液用の微少間隙を確保する。なお、ここで、凹部とは、電極に形成された溝や凹み、さらには孔を含む。
【0011】
この電解加工用電極工具では、絶縁スペーサは、溝形成時に被加工物の表面に当接して電極パターンと被加工物との間に電解液用の微少間隙を確保している。しかも、絶縁スペーサは電極の凹部に係止された部材であるため、溝形成時に電極パターンと被加工物との微少間隙を十分に小さく保ちつつ、絶縁スペーサをその微少間隙以上に厚くすることができる。このように絶縁スペーサの十分な厚みを確保して耐久性を維持することで低コストを維持でき、さらに、電極パターンと被加工物との間の微少間隙を十分に小さく保つことで電解加工の速度を高く維持し、生産性を高く維持している。
【0012】
請求項2に記載の電解加工用電極工具では、請求項1において、突出部は、被加工物の表面に当接する平坦面を有している。
この電解加工用電極工具では、突出部が被加工物の表面に当接する平坦面を有しているため、被加工物の表面に損傷が生じにくい。したがって、被加工物の表面の精度が向上する。
【0013】
請求項3に記載の電解加工用電極工具では、請求項1又は2において、突出部は電極表面中央部に対応する突出中央部を有しており、突出中央部の周囲には電解液の供給又は回収用の孔が設けられている。
この電解加工用電極工具では、突出中央部の周囲には電解液の供給又は回収用の孔が設けられているため、絶縁スペーサに突出中央部を設けていても電解液の流れが阻害されることがなく、電解加工の速度を高く維持できる。
【0014】
請求項4に記載の電解加工用電極工具では、請求項1又は2において、突出部は電極表面中央部に対応する中央開口部を有しており、中央開口部は電解液の供給又は回収用の孔として機能している。
この電解加工用電極工具では、突出部の中央開口部は電解液の供給又は回収用の孔として機能しているため、電解液の流れが阻害されることがなく、電解加工の速度を高く維持できる。
【0015】
請求項5に記載の電解加工用電極工具では、請求項1〜4のいずれかにおいて、電極パターンは電極表面の他の部分から突出しており、絶縁スペーサは、電極パターンがはめ込まれる切り欠きを有するプレートである。
この電解加工用電極工具では、絶縁スペーサの切り欠きに電極パターンがはめ込まれることで、絶縁スペーサは電極表面に係止されている。ここでは、絶縁スペーサは、電極表面において電極パターン以外の部分を被覆する機能も有している。
【0016】
請求項6に記載の電解加工用電極工具では、請求項5において、絶縁スペーサは、電極表面の外周縁からさらに半径方向外側にはみ出した部分をさらに有し、はみ出した部分が電極の外周面に固定されている。
この電解加工用電極工具では、絶縁スペーサの電極表面の外周縁からさらに半径方向外側にはみ出した部分が電極の外周面に固定されているため、電極表面の精度を低下させることなく、絶縁スペーサを電極に堅く固定することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
(1)電解加工用電極工具
図1及び図2に、本発明の第1実施形態としての電解加工用電極工具61を示している。図1は電極工具61の正面図であり、図2は電極工具61の電極表面67付近の分解斜視図である。電極工具61は、動圧軸受を構成する被加工物の表面に動圧発生用溝を形成するためのものであり、さらに具体的には、被加工物の平面部分に動圧発生用溝を形成するためのものである。
【0018】
電極工具61は、主に、電極62と、絶縁プレート63とから構成されている。電極62は、細長い円柱部64と、その一端に設けられた大径の電極本体65とから構成されている。
電極本体65の先端側(円柱部64と反対側)には、電極表面67が形成されている。電極表面67は、電極本体65の外周縁に沿った環状の領域である。電極本体65の先端側中央部には中心孔66が形成されている。この中心孔66は、後述するように、電解液の供給又は回収用の開口部として機能している。
【0019】
電極表面67の表面形状について説明する。電極表面67上には、複数の電極パターン68が形成されている。電極パターン68は、回転方向に対して傾いた状態で半径方向に延びるスパイラル形状である。電極パターン68は電極表面67の他の部分から突出して形成されており、その間には電極表面67の複数の底部69が形成されている。以上をまとめると、電極表面67には、底部69と電極パターン68とによって凹凸が形成されている。電極パターン68の突出高さ(すなわち、底部69の溝深さ)は、深ければ深いほど、絶縁プレートを厚くすることができて、耐久性が増す。しかし、2mmを超える加工は、加工に用いるエンドミル等の能力が制約となって加工が困難になる。一方、0.05mm未満では、絶縁プレートを0.1mm未満にまで薄くしなければならなくなり、耐久性の確保が難しくなる。
【0020】
絶縁プレート63は、アクリル等の樹脂製絶縁材料から構成されており、電極表面67に固定される部材である。絶縁プレート63は、概ね、電極表面67に対応するような環状であり、しかも平坦な板状部材である。絶縁プレート63の板厚は、絶縁プレート63の板厚は、溝深さに対応して決められる。0.05〜2mmに突出高さを加えた値とすることが好ましい。絶縁プレート63は、半径方向に延びる複数の畝部71と、それらの外周端に連結された環状の外周部72とから構成されており、各畝部71間が切り欠き73となっている。言い換えると、絶縁プレート63は中心に丸孔が形成されており、その内周縁から外周側に向かって複数の切り欠き73が形成されている。
【0021】
絶縁プレート63の畝部71は、電極表面67の底部69に対応して形成されており、底部69に隙間なく、填め込まれている。また、電極表面67の電極パターン68は、絶縁プレート63の切り欠き73内に隙間なく、填め込まれている。このように、絶縁プレート63は、電極表面67の凹凸部分(電極パターン68と底部69)に対して填め込まれ、底部69上に電極パターン68より突出する突出部(畝部71)を確保している。
【0022】
絶縁プレート63は内外径ともに電極表面67より大きい。さらに、絶縁プレート63の外周部72の内径も電極表面67の外径よりも大きいため、切り欠き73の外周側部73aは電極表面67の外周縁のさらに外周側に位置して開口している。
絶縁プレート63の外周部72と電極本体65の外周面との間には、固定用モールド76が形成されている。これにより、絶縁プレート63は電極本体65に対して堅く固定されている。このように絶縁プレート63の電極表面67の外周縁からさらに半径方向外側にはみ出した部分が電極本体65の外周面に固定されているため、電極表面67の精度を低下させることなく、絶縁プレート63を電極62に堅く固定することができる。言い換えると、絶縁プレート63の接着部を電極表面67以外の部分に設けているため、電極表面67における絶縁プレート63の精度が向上し、さらに被加工物の表面の加工精度が向上する。
【0023】
固定用モールド76は、電極本体65の外周面まで内周側に延びているため、外周部72のみならず畝部71の外周端まで延びており、切り欠き73の外周側部73aの片側を閉鎖しているが、その反対側(先端側)までは延びていない。そのため、切り欠き73の外周側部73aは、図1及び図2の下側は閉鎖されているが、上側は開いた状態になっている。
【0024】
絶縁プレート63は、図3に示すように、先端側面が電極表面67の電極パターン68の先端側面よりさらに突出している。言い換えると、電極パターン68の先端側面は絶縁プレート63の先端側面よりわずかに凹んだ状態になっている。この突出量Sはわずかであり、50μm程度である。突出量Sは、30〜100μmの範囲にあることが好ましい。突出量Sは電解液が流れる隙間の軸線方向間隙に等しく、この間隙が30μm以下になると電解液の流れが悪くて焼きつき(ショート)が発生しやすくなり、100μm以上では電気抵抗が増大して効率が低下するからである。
【0025】
このように、絶縁プレート63は、電極表面67の凹部である底面69に填められているため、それ自身は一定の厚みを保ちながら電極パターン68からの突出量Sを小さくできる。
また、以上に述べたように絶縁プレート63は、電極表面67において絶縁部を形成する機能を有している。このように絶縁部形成のためにレジスト塗布をしなくて良いため、レジスト塗布に起因する手間の増大や塗装物の剥がれなどの問題が生じない。
【0026】
(2)電解加工動作
被加工物79は、この実施形態では、図3に示すように、円板形状の部材であり、外径が電極表面67とほぼ等しい。なお、被加工物79は、例えば、スラスト動圧軸受部の対向面の一方を構成する部材であり、シャフトに設けられたスラストフランジや、又はそれに対向するスラストカバーやスリーブ端面である(後述)。
【0027】
被加工物79及び電極工具61を電解加工用電源の正極及び負極にそれぞれ接続し、被加工物79に対して電極工具61の電極表面67側を対向させる。すると、絶縁プレート63の畝部71が被加工物79の表面79aに当接し、電極表面67の電極パターン68と被加工物79の表面79aとには微少間隙77が確保される。微少間隙77の軸線方向距離は絶縁プレート63の突出量Sに等しい。微少間隙77は、内周側においては電極本体65の中心孔66に連通し、外周側において切り欠き73の外周側部73aに連通している。このように、絶縁プレート63は、被加工物79に突き当てられるスペーサとして機能している。ここで、絶縁プレート63の表面が平坦面であるため、被加工物79の表面79aに損傷が生じにくい。したがって、被加工物79の表面79aの精度が向上する。
【0028】
この状態で、電極工具61と被加工物79との間に電解液を流動させながら、両者に通電する。電解液は、図3及び図4の矢印Fで示すように、電極本体65の中心孔66から供給され、微少間隙77すなわち電極パターン68と被加工物79との間(より正確には、電極表面67の底部69と絶縁プレート63の畝部71の側壁によって囲まれる範囲)を通って半径方向外側に流れ、最後に切り欠き73の外周側部73aから先端側に排出される。この結果、被加工物79の表面79aは電極パターン68に対応する部分80が溶出し、その箇所に動圧溝が蝕刻される。なお、電解液の流れ方向は、外周側から内周側に向かっても良い。
【0029】
この電解加工用電極工具61では、絶縁プレート63の中心孔が電解液の供給又回収用の孔として機能しているため、電解液の流れが阻害されることがなく、電解加工の速度を高く維持できる。
しかも、絶縁プレート63は電極表面67の底部69に填められて係止されているため、それ自身は一定の厚みを保ちながら微少間隙77を小さくできる。このように微少間隙77が十分に小さく保たれているため、電解加工の速度が高くなり、生産性も高く維持されている。また、絶縁プレート63は高コストになることなく耐久性を維持している。さらに、絶縁プレート63は電極表面67の底部69に填められているため、絶縁プレート63の係止が容易かつ確実である。
【0030】
さらに、絶縁プレート63が被加工物79に密着しているため、絶縁プレート63と被加工物79との間に電解液が入り込みにくい。その結果、被加工物79において電極パターン68に対応する部分以外の部分が溶出しにくい。
(3)スピンドルモータの構成
図8は、本発明の一実施形態としての電極工具61によって動圧発生用溝が形成された構成部材を有する動圧軸受4が採用されたスピンドルモータ1の概略構成を模式的に示す縦断面図である。
【0031】
図8において、このスピンドルモータ1は、主に、静止部材2と、回転部材3と、回転部材3を静止部材2に対して回転自在に支持するための動圧軸受4とを備えている。スピンドルモータ1は、さらに、静止部材2に固定されたステータコアとこのステータコアに巻装されたコイルとからなるステータ6と、回転部材3に固定されたロータマグネット7を備えており、両部材によって、回転部材3に対して回転力を与えるための磁気回路部が構成されている。
【0032】
静止部材2は、ブラケット10と、このブラケット10の中央開口内に固定されたスリーブ11とから構成されている。ブラケット10の中央開口縁には軸線方向上側に延びる筒状部10aが形成されており、その内周面にはスリーブ11の外周面が嵌合されている。また筒状部10aの外周面にはステータ6が固定されている。
【0033】
スリーブ11は、中空円筒状のスリーブ本体16と、スリーブ本体16の下部を閉鎖する円板状のスラストカバー12とから構成されている。スリーブ本体16は、その中心を軸線方向に延びる貫通孔51を有しており、そこには内周面53が形成されている。スラストカバー12は、円形の板状部材であり、スリーブ本体16の下端に固定されて貫通孔51の下端開口を閉鎖している。スリーブ本体16の下端には、内周面53から連続する段部が形成されている。段部は、スリーブ本体16の下端面であるスラスト面と、内周面53より大径の下部内周面とから構成されており、シャフト15のスラストフランジ46を収容するための環状の凹部又は空間を確保している。また、段部の下方は、スラストカバー12の軸線方向上側端面であるスラスト面によって閉ざされている。
【0034】
回転部材3は、スリーブ11に対して動圧軸受4を介して回転自在に支持される部材であって、外周部に記録ディスク(図示しない)が載置されるロータハブ14と、ロータハブ14の内周側に位置し動圧軸受4を介してスリーブ11に軸支されるシャフト15とを備えている。
ロータハブ14は、スリーブ11やステータ6を上方から覆うようように近接して配置されたカップ形状の部材である。ロータハブ14のボス部14aの内周面はスリーブ11の上部外周面に微少間隙をもって対向しており、下部筒状部14bの内周面には接着手段によってロータマグネット7が固定されている。ボス部14aの外周面には、記録ディスク(図9を参照)が嵌合される。
【0035】
ロータマグネット7はステータ6に半径方向に微少間隙をもって対向している。そして、ステータ6のコイルに通電することにより、ステータ6とロータマグネット7との電磁相互作用が発生し、回転部材3にトルクが作用する。
シャフト15の軸線方向上側端部は、ロータハブ14の中心孔内に嵌合されている。シャフト15の下端には、スラストフランジ46が一体に形成されている。つまり、シャフト15は、円柱形状のシャフト本体45とスラストフランジ46とから構成されていることになる。
【0036】
シャフト本体45は、概ね、スリーブ11の貫通孔51に沿って柱状中空部に配置され、その外周面37が内周面53に対して半径方向に微少間隙を介して対向している。
スラストフランジ46は、スリーブ11の円板状中空部に配置されている。具体的には、スラストフランジ46は、シャフト15のシャフト本体45の下端の外周面からスリーブ11のスリーブ本体16の下部内周面に対して微少間隙を形成する位置まで半径方向外側に延びる円板状の部分である。スラストフランジ46は、シャフト本体45側の第1スラスト面と、その反対側の第2スラスト面とを有している。第1スラスト面はスリーブ本体16の下端面であるスラスト面に対して軸線方向に微少間隙を介して対向しており、第2スラスト面はスラストカバー12のスラスト面に対して軸線方向に微少間隙を介して対向している。
【0037】
動圧軸受4は、回転部材3を静止部材2に対して、より具体的には、ロータハブ14及びシャフト15をスリーブ11に対して潤滑油8を介して回転自在に支持するための動圧軸受である。動圧軸受4は、第1及び第2ラジアル動圧軸受部21,22と、第1及び第2スラスト動圧軸受部23,24とを有している。さらに、各軸受部内の潤滑油8は、シャフト15の外周面とスリーブ11の内周面との間の隙間の軸線方向上側部分に形成された表面張力シール部29によってシールされている。また、各軸受部21〜24を構成する間隙は完全に潤滑油8が満たされており(空気によって遮断された部分を有しておらず)、表面張力シール部29のみにて外気に通じるいわゆるフルフィル構造となっている。
【0038】
スリーブ本体16の内周面53には、潤滑油8中に動圧を発生するためのヘリングボーン状の動圧発生用溝25、26が軸線方向に並んで形成されている。動圧発生用溝25、26は回転方向に並んだ複数の溝であり、各溝は回転方向に対して相反する方向に傾斜する一対のスパイラル溝を連結してなる略「く」の字状の溝である。このように、スリーブ11の内周面53と、シャフト15のシャフト本体45の外周面37と、その間の潤滑油8とによって、第1及び第2ラジアル動圧軸受部21、22が軸線方向に並んで構成されている。この両ラジアル動圧軸受部21,22では、流体動圧は動圧発生用溝25,26の連結部において極大となり、必要な荷重支持圧を実現する。
【0039】
スリーブ本体16のスラスト面には、シャフト15の回転にともない潤滑油8中に動圧を発生するためのスパイラル状の動圧発生用溝27が形成されている。動圧発生用溝27は回転方向に並んだ複数の溝であり、各溝は潤滑油8に対して半径方向内側に向かう流体動圧を誘起するように回転方向に対して傾斜している。このように、スリーブ11のスラスト面とスラストフランジ46の第1スラスト面とその間の潤滑油8によって、第1スラスト動圧軸受部23が形成されている。
【0040】
スラストカバー12のスラスト面には、シャフト15の回転にともない潤滑油8中に動圧を発生するためのスパイラル状の動圧発生用溝28が形成されている。動圧発生用溝28は回転方向に並んだ複数の溝であり、各溝は潤滑油8に対して半径方向内側に向かう流体動圧を誘起するように回転方向に傾斜している。このように、スラストフランジ46の第2スラスト面と、スラストカバー12のスラスト面と、その間の潤滑油8とによって、第2スラスト動圧軸受部24が形成されている。
【0041】
(4)スピンドルモータの動作
回転部材3の回転に応じて、第1及び第2ラジアル動圧軸受部21,22によるポンピング圧が高まり、ラジアル方向(半径方向)の荷重を支持するために必要な支持圧を発生すると同時に、潤滑油8を軸線方向下側に押し込むようにポンピング圧が作用する。また、定常回転時において第1及び第2ラジアル動圧軸受部21,22からのポンピング圧は、第1スラスト動圧軸受部23の半径方向内周側に作用するポンピング圧よりも大きいため、幾分相殺されて潤滑油8を半径方向外周側へ押し込むように作用する。第1スラスト動圧軸受部23は、ここで発生する半径方向内周側のポンピング圧と第1及び第2ラジアル動圧軸受部21、22からのポンピング圧とが相互作用してスラスト方向(軸線方向)の荷重を支持する。さらにこのポンピング圧は、スラストフランジ46の外周面に形成される微少間隙を介して第2スラスト動圧軸受部24に伝搬し、この軸受部の半径方向内周側のポンピング圧と第1及び第2ラジアル動圧軸受部21,22からの押し込み圧とが相互作用する。これにより、第2スラスト動圧軸受部24の中心が高圧になってスラスト方向の荷重を支持する。
【0042】
このようにして動圧軸受4は回転部材3を静止部材2に対して回転自在に非接触支持する。なお、微少間隙の潤滑油8の保持量は、スピンドルモータの回転動作や温度等により適宜変化するが、表面張力シール部29を構成する空隙が油溜めとして作用するため、そのような変化があっても潤滑油8が不足したり或いは漏洩することはない。
【0043】
(5)ハードディスク装置の構成
次に、スピンドルモータ1を備えた記録ディスク駆動装置としてのハードディスク装置を例に説明する。
図9に、一般的なハードディスク装置80の内部構成を模式図として示す。ハウジング81の内部は塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部に情報を記憶する円板状の記録ディスク83が装着されたスピンドルモータ1が設置されている。加えてハウジング81の内部には、記録ディスク83に対して情報を読み書きする磁気ヘッド移動機構87が配置され、この磁気ヘッド移動機構87は、記録ディスク上の情報を読み書きするヘッド86、このヘッドを支えるアーム85、およびヘッドおよびアームをディスク上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部84により構成される。
【0044】
(6)第2実施形態
▲1▼電解加工用電極工具の構成
図5〜図7に本発明の第2実施形態としての電解加工用電極工具61’を示す。この電極工具61’は前記第1実施形態としての電極工具61と基本的な構造が同様であるので、以下異なる点のみを説明する。
【0045】
電極工具61’の絶縁プレート63’は、第1実施形態の絶縁プレート63とは異なり、中心部74を有している。すなわち、畝部71は、外周部72と中心部74とを連結しており、切り欠き73は内周縁が閉ざされている。
絶縁プレート63の畝部71は、電極表面67の底部69に対応して形成されており、底部69に隙間なく、填め込まれている。また、電極表面67の電極パターン68は、絶縁プレート63の切り欠き73内に隙間なく、填め込まれている。このように、絶縁プレート63は、電極表面67の凹凸部分(電極パターン68と底部69)に対して填め込まれ、底部69上に電極パターン68より突出する突出部(畝部71)を確保している。さらに、絶縁プレート63は、電極62の中心孔66に対応する部分に、電極パターン68より突出する突出中央部(中心部74)を確保している。
【0046】
▲2▼電解加工動作
このような状態で、図6及び図7に示すように、電解加工を行う。被加工物79及び電極工具61’を電解加工用電源の正極及び負極にそれぞれ接続し、被加工物79に対して電極工具61’の電極表面67側を対向させる。すると、絶縁プレート63’の畝部71及び中心部74が被加工物79の表面に当接し、電極表面67の電極パターン68と被加工物79の表面79aとには微少間隙77が確保される。微少間隙77の軸線方向距離は絶縁プレート63の突出量Sに等しい。微少間隙77は、内周側においては電極本体65の中心孔66に連通し、外周側において切り欠き73の外周側部73aに連通している。このように、絶縁プレート63’は、被加工物79に突き当てられるスペーサとして機能している。ここで、絶縁プレート63’の表面が平坦面であるため、被加工物79の表面79aに損傷が生じにくい。したがって、被加工物79の表面79aの精度が向上する。
【0047】
この状態で、電極工具61’と被加工物79との間に電解液を流動させながら、両者に通電する。電解液は、図6及び図7の矢印Fで示すように、電極本体65の中心孔66から供給され、微少間隙77すなわち電極パターン68と被加工物79との間(より正確には、電極表面67の底部69と絶縁プレート63’の畝部71の側壁によって囲まれる範囲)を通って半径方向外側に流れ、最後に切り欠き73の外周側部73aから先端側に排出される。この結果、被加工物79の表面79aは電極パターン68に対応する部分80が溶出し、その箇所に動圧溝が蝕刻される。なお、電解液の流れ方向は、外周側から内周側に向かっても良い。
【0048】
この電解加工用電極工具61’では、基本的に、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
さらに、この電解加工用電極工具61’では、突出中央部である中心部74の周囲には電解液の供給又は回収用の孔が設けられているため、電解液の流れが阻害されることがなく、電解加工の速度を高く維持できる。
【0049】
(7)他の実施形態
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
前記実施形態においては加工される溝の形状はスパイラルであったが、ヘリングボーンやステップ形状であってもよい。
【0050】
前記実施形態においては、スラスト動圧軸受部の動圧発生用溝を形成するための電極工具に本発明を適用した例を示したが、ラジアル動圧軸受部やコーン型動圧軸受部の動圧発生用溝を形成する動圧発生用溝を形成するための電極工具に本発明を適用しても良い。
【0051】
【発明の効果】
請求項1に記載の動圧発生用溝を形成するための電解加工用電極工具では、絶縁スペーサの十分な厚みを確保して耐久性を維持することで低コストを維持でき、さらに、電極パターンと被加工物との間の微少間隙を十分に小さく保つことで電解加工の速度を高く維持し、生産性を高く維持している。
【0052】
請求項2に記載の電解加工用電極工具では、請求項1において、被加工物の表面の精度が向上する。
請求項3に記載の電解加工用電極工具では、請求項1又は2において、絶縁スペーサに突出中央部を設けていても電解液の流れが阻害されることがなく、電解加工の速度を高く維持できる。
【0053】
請求項4に記載の電解加工用電極工具では、請求項1又は2において、電解液の流れが阻害されることがなく、電解加工の速度を高く維持できる。
請求項5に記載の電解加工用電極工具では、請求項1〜4のいずれかにおいて、絶縁スペーサは、電極表面において電極パターン以外の部分を被覆する機能も有している。
【0054】
請求項6に記載の電解加工用電極工具では、請求項5において、電極表面の精度を低下させることなく、絶縁スペーサを電極に堅く固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態としての電解加工用電極工具の正面図。
【図2】電極工具の電極本体の斜視図。
【図3】電解加工時の電極工具と被加工物の関係を説明するための部分縦断面図。
【図4】電極工具の先端面の部分平面図。
【図5】第2実施形態における、図2に対応する図。
【図6】第2実施形態における、図3に対応する図。
【図7】第2実施形態における、図4に対応する図。
【図8】本発明に電極工具によって加工された被加工物が用いられる一例としてのスピンドルモータの縦断面概略図。
【図9】図8のスピンドルモータが用いられるハードディスク装置の模式図。
【符号の説明】
61 電極工具
62 電極
63 絶縁プレート(絶縁スペーサ)
67 電極表面
68 電極パターン
69 底部(凹部)
71 畝部(突出部)
72 外周部
73 切り欠き
77 微少間隙
Claims (6)
- 動圧軸受を構成する被加工物の表面に動圧発生用溝を形成するための電解加工用電極工具であって、
電極パターンが形成された電極表面と、前記電極表面より凹んだ凹部とを有する電極と、
前記電極の前記凹部に係止された部材であり、前記電極パターンより突出する突出部を有し、前記突出部は溝形成時に前記被加工物の表面に当接して前記電極パターンと前記被加工物との間に電解液用の微少間隙を確保する、絶縁スペーサと、
を備えた電解加工用電極工具。 - 前記突出部は、前記被加工物の表面に当接する平坦面を有している、請求項1に記載の電解加工用電極工具。
- 前記突出部は前記電極表面の中央部に対応する突出中央部を有しており、
前記突出中央部の周囲には電解液の供給又は回収用の孔が設けられている、請求項1又は2に記載の電解加工用電極工具。 - 前記突出部は前記電極表面の中央部に対応する中央開口部を有しており、
前記中央開口部は電解液の供給又は回収用の孔として機能している、請求項1又は2に記載の電解加工用電極工具。 - 前記電極パターンは前記電極表面の他の部分から突出しており、
前記絶縁スペーサは、前記電極パターンがはめ込まれる切り欠きを有するプレートである、請求項1〜4のいずれかに記載の電解加工用電極工具。 - 前記絶縁スペーサは、前記電極表面の外周縁からさらに半径方向外側にはみ出した部分をさらに有しており、
前記はみ出した部分が前記電極の外周面に固定されている、請求項5に記載の電解加工用電極工具。
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JP2002217252A JP2004058179A (ja) | 2002-07-25 | 2002-07-25 | 電解加工用電極工具 |
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JP2002217252A JP2004058179A (ja) | 2002-07-25 | 2002-07-25 | 電解加工用電極工具 |
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Country | Link |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007139190A1 (ja) | 2006-05-31 | 2007-12-06 | Toray Industries, Inc. | 免疫刺激オリゴヌクレオチド及びその医薬用途 |
KR101053371B1 (ko) * | 2008-10-30 | 2011-08-01 | 삼성전기주식회사 | Ecm 가공장치 |
KR101101607B1 (ko) | 2009-09-07 | 2012-01-02 | 삼성전기주식회사 | 전해 가공용 전극, 이를 포함하는 전해 가공장치 및 스핀들 모터 |
KR101219002B1 (ko) * | 2010-10-14 | 2013-01-04 | 삼성전기주식회사 | 전해 가공용 전극 어셈블리 및 이의 제조 방법 |
-
2002
- 2002-07-25 JP JP2002217252A patent/JP2004058179A/ja not_active Withdrawn
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