JP2004057009A - アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの検出方法 - Google Patents

アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの検出方法 Download PDF

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Masahiro Kusumoto
楠本  正博
Yoshiaki Nishiya
西矢  芳昭
Masanori Oka
岡  正則
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Abstract

【課題】アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの染色体上の新規な16S−23S遺伝子間スペーサー領域の核酸配列、該挿入配列を利用した迅速かつ簡便な細菌検出方法を提供する。
【解決手段】2種類の特定の核酸配列または該配列に相補的な核酸配列を有する新規な16S−23S遺伝子間スペーサー領域、該配列のうち少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有するオリゴヌクレオチド、および該オリゴヌクレオチドである核酸増幅プライマー、熱安定性DNAポリメラーゼ、dNTPおよび緩衝液を含む、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片を増幅する方法および試薬。ならびに該DNA増幅方法で得られた増幅DNA断片を確認する細菌の検出方法。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの新規な16S−23S遺伝子間スペーサー領域の遺伝子および該遺伝子を特異的に増幅するための試薬および該増幅方法ならびにアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの検出法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)は嫌気性細菌で、近年歯周病の起因菌(歯周病菌)として注目されている。歯周病は歯を支える組織(歯肉)に炎症を起こす病気であり、歯周病菌が引き起こす感染症である。最近の研究により、歯周病菌は歯だけでなく全身の病気と関連している可能性が示唆されており、感染に対する早期診断および早期治療が極めて重要であることから該細菌の迅速な検出方法が望まれている。
【0003】
アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスを検出および同定する方法としては、市販の細菌同定キットを利用する手段が知られている。該キットは複数の生化学試験の結果から得られるプロファイルより細菌を同定する方法であが、歯周病菌の生育速度が遅いために、結果の判明までに数日から数週間を要する。そこで現在、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの遺伝子をPCR(polymerase chain reaction)法を用いて増幅する方法が注目されている。
【0004】
しかし口腔内に存在する細菌の種類が多い、すなわちアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスと類似した遺伝子を保有する近縁の細菌が多く存在するため、PCR法によりアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの遺伝子を特異的に増幅することは困難である。そこで、菌体の培養法を伴う検査法すなわち形態学的検索や生化学試験と、PCR法に代表される遺伝子検査が合わせて行われている(足本ら、Dental Outlook誌・94巻・516−520頁・1999年)。しかしアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの検出に迅速性および簡便性が要求されていることを考慮すると、時間を要する培養を伴わないPCR法のみを用いて該細菌を特異的に増幅することが非常に効果的であると考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスに特異的な遺伝子領域を使用して、試料中の該遺伝子を特異的に増幅し、該細菌を迅速に検出するための方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するためにアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスおよび他の歯周病関連細菌の遺伝子に関して種々鋭意検討した結果、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの16Sリボソーム遺伝子と23Sリボソーム遺伝子の間に存在する核酸配列(16S−23S遺伝子間スペーサー領域)が該菌株に特異的であることを見出し、それを用いた遺伝子増幅法を確立し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスには複数の16Sリボソーム遺伝子および23Sリボソーム遺伝子が存在するため、該細菌には16S−23S遺伝子間スペーサー領域も複数箇所存在する。本発明者らは、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスには2種類の16S−23S遺伝子間スペーサー領域が存在することを発見した。
【0008】
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
[1]配列番号1または2のいずれかに示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列を有することを特徴とする、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの16S−23S遺伝子間スペーサー領域。
[2]配列番号1または2のいずれかに示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有することを特徴とするオリゴヌクレオチド。
[3]配列番号3または4に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有することを特徴とするオリゴヌクレオチド。
[4]細菌の16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片から1つまたはそれ以上のDNA断片を増幅するための試薬であって、少なくとも2種のプライマーが、配列番号1または2のいずれかに示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有するオリゴヌクレオチドであり、一方のプライマーの伸長生成物が、その相補体から分離された場合に、他方のプライマーの鋳型となるプライマー、熱安定性DNAポリメラーゼ、dNTPおよび緩衝液を含むことを特徴とするDNA増幅用試薬。
[5]細菌の16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片から1つまたはそれ以上のDNA断片を増幅するための試薬であって、少なくとも2種のプライマーが、配列番号3および4に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有するオリゴヌクレオチドであり、一方のプライマーの伸長生成物が、その相補体から分離された場合に、他方のプライマーの鋳型となるプライマー、熱安定性DNAポリメラーゼ、dNTPおよび緩衝液を含むことを特徴とするDNA増幅用試薬。
[6]細菌の16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片から1つまたはそれ以上のDNA断片を増幅するための方法であって、少なくとも2種のプライマーが、配列番号1または2のいずれかに示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有するオリゴヌクレオチドであり、一方のプライマーの伸長生成物が、その相補体から分離された場合に、他方のプライマーの鋳型となることを特徴とするDNA増幅方法。
[7]細菌の16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片から1つまたはそれ以上のDNA断片を増幅するための方法であって、少なくとも2種のプライマーが、配列番号3および4に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有するオリゴヌクレオチドであり、一方のプライマーの伸長生成物が、その相補体から分離された場合に、他方のプライマーの鋳型となることを特徴とするDNA増幅方法。
[8]請求項6または7記載のDNA増幅方法で得られた1つまたはそれ以上の増幅DNA断片の鎖長を比較することを特徴とする細菌の検出方法。
[9]請求項6または7記載のDNA増幅方法で得られたDNA断片を制限酵素で消化し、該DNA断片の鎖長を比較することを特徴とする細菌の検出方法。
[10]試料中のアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスを検出するための方法であって、1,000CFUのアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスを含む系にて遺伝子増幅反応を行った場合に、少なくとも10ngの増幅DNA断片が得られることを特徴とする細菌検出方法。
[11]試料中のアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスを検出するための方法であって、1,000CFUのアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス、200nMのプライマー、50U/mlの熱安定性DNAポリメラーゼ、200μMのdNTPおよび緩衝液を含み、反応阻害物を含まない系にて35サイクルの遺伝子増幅反応を行った場合に、少なくとも10ngの増幅DNA断片が得られることを特徴とする細菌検出方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の新規な16S−23S遺伝子間スペーサー領域は、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの16Sリボソーム遺伝子と23Sリボソーム遺伝子の間に存在する核酸配列を解析して得たものである。
本発明のオリゴヌクレオチドは、新規な16S−23S遺伝子間スペーサー領域(配列番号1または2)から選択されたDNA断片であって、少なくとも連続した15塩基、好ましくは20〜35塩基よりなる核酸配列を含有する。
本発明のオリゴヌクレオチドは、新規な2種類の16S−23S遺伝子間スペーサー領域(配列番号1または2)の間で配列が共通する部分からそれぞれ選択され、配列番号3および4に示される核酸配列(ただし、Aはアデニン、Cはシトシン、Gはグアニン、Tはチミンを表す。また、任意の位置のTはウラシル(U)と置換されていてもよい。)の少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有する。
【0010】
本発明のオリゴヌクレオチドは、プライマーとして使用されるが、特に、PCR法などによる遺伝子増幅用のプライマーとして使用され得る。その際、少なくとも2種のオリゴヌクレオチドが使用され、2種のプライマーは増幅しようとする核酸配列の両端を規定し、一方のプライマーの伸長生成物が、その相補体から分離された場合に、他方のプライマーの鋳型となるように、その塩基配列が選択される。
また、本発明のオリゴヌクレオチドはシークエンス解析を行う場合のプライマーとしても使用され得る。さらには、検出用プローブとしても使用可能である。
【0011】
本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号3および4に示される塩基配列またはそれらの相補配列の全域を使用する必要はない。配列表の塩基配列およびその相補配列に由来する適度な長さの配列が、PCR反応条件などに合わせて、解離温度(Tm値)などを計算することにより決定され得る。しかし、PCRの場合、プライマーに十分な特異性を持たせるためには、少なくとも連続した15塩基、さらに望ましくは、20塩基の長さが必要である。プライマーが短いと、それに応じてアニール温度を下げることになるので特異性が落ちる傾向が出ると考えられる。逆にプライマーが長すぎるとプライマー同士の非特異的な反応によりターゲットの増幅量が落ち、さらに余計なアニーリングにより特異性が落ちる傾向が出ると考えられる。したがって、25〜30塩基程度が増幅量の面で有利だと考えられる。
【0012】
プライマーが十分な特異性を有するためには、3’末端の塩基は配列表の核酸配列に示される3’末端の塩基を用いることが望ましい。使用する条件、目的などに応じて、オリゴヌクレオチド中にある程度の置換を行ってもよい。また、プライマーの特異性に影響を及ぼさない程度に、16S−23S遺伝子間スペーサー領域の塩基配列に従って、プライマーの5’末端側をさらに延長して使用してもよい。
本発明では、上記少なくとも2種のオリゴヌクレオチドを増幅用プライマーとして使用し、一方のプライマーの伸長生成物は、その相補体から分離された場合、他方のプライマーの鋳型となるように配列を選択する必要がある。
【0013】
本発明のオリゴヌクレオチドは、生物の細胞内で行われる核酸合成反応を利用した方法またはデオキシリボヌクレオチドを化学的に反応させる方法などにより製造することが出来る。
【0014】
本発明のDNA増幅方法に用いるプライマーとしては、配列番号1または2のいずれかに示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列を有する、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの16S−23S遺伝子間スペーサー領域、好ましくは配列番号1または2のいずれかに示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有することを特徴とするオリゴヌクレオチド、あるいは、さらに好ましくは配列番号3または4に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有することを特徴とするオリゴヌクレオチドなど、上述のすべてのオリゴヌクレオチドが挙げられる。この遺伝子増幅には、一般的にPCR法が用いられる。
【0015】
本発明のDNA増幅方法において、上述したように、各種試料に存在するアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片から、1つまたはそれ以上の該DNA断片を増幅するには、配列番号3および4にそれぞれ示されるオリゴヌクレオチドの組み合わせが好適に用いられ得る。そして、配列番号3および4にそれぞれ示されるオリゴヌクレオチドよりも外側のプライマーにより増幅されたDNAを、さらに配列番号3および4にそれぞれ示されるオリゴヌクレオチドを用いて再増幅することによって、より高感度の増幅が可能となることが予想される。このとき使用する外側のプライマーは、該16S−23S遺伝子間スペーサー領域に特異的であることが望ましいが、特異性の低いプライマーも使用し得る。
【0016】
アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片からの1つまたはそれ以上の該DNA断片の増幅において、配列番号3および4にそれぞれ示されるオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いることが必要である。このことは、増幅反応における特異性には、使用する2つのオリゴヌクレオチドの相乗効果が重要であることによる。また、さらに特異性を高めるためには、増幅に使用するプライマーの濃度をできるだけ低く抑えることも重要である。
【0017】
本発明のアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片から1つまたはそれ以上の該DNA断片の増幅用試薬は、具体的には、少なくとも2種のプライマーが、配列番号1または2のいずれかに示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有する、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片からランダムに選択された1つまたはそれ以上の該DNA断片を増幅するためのオリゴヌクレオチドであって、一方のプライマーの伸長生成物が、その相補体から分離された場合に、他方のプライマーの鋳型となるプライマーを含むか、より好ましくは少なくとも2種のプライマーが、配列番号3および4に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有する、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片からランダムに選択された1つまたはそれ以上の該DNA断片を増幅するためのオリゴヌクレオチドであって、一方のプライマーの伸長生成物が、その相補体から分離された場合に、他方のプライマーの鋳型となるプライマー、DNAポリメラーゼ、dNTP、緩衝液等を含む。
【0018】
本発明の増幅用試薬において、上記プライマー、DNAポリメラーゼ、dNTPは当該増幅工程を十分に行い得る量を含む。
プライマーは1〜1000nM程度を含む。中でも特異性を高めるために、100〜500nM程度がより好適であり、200nM程度がさらに好適である。DNAポリメラーゼは1〜200U/ml程度を含む。20〜100U/ml程度がより好適であり、50U/ml程度がさらに好適である。サーマス(Thermus)属、パイロコッカス(Pyrococcus)属、サーモコッカス(Thermococcus)属、大腸菌など種々の起源のものが用いられ、Taq DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼなど熱安定性のものがより好ましい。中でもKOD DNAポリメラーゼまたは該酵素を改良したDNAポリメラーゼは増幅量および反応速度の観点から最も好ましい。dNTPは50〜500μM程度を含む。100〜350μM程度がより好適であり、200μM程度がさらに好適である。
【0019】
さらに、本発明の試薬には、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片からランダムに選択された1つまたはそれ以上の該DNA断片を単離するための工程に適した緩衝液および当該DNA断片を増幅するに適した緩衝液を併せて含めてもよい。さらに増幅したDNA断片を検出するための試薬も、検出法に併せて各種組み合わせておくこともできる。
【0020】
本発明の試薬には、DNAポリメラーゼの活性発現に必要なマグネシウム塩を併せて含むことができ、好ましくは0.5mM〜4mM、さらに好ましくは1mM〜1.5mMの濃度範囲で添加できる。また、DNAポリメラーゼの活性発現に好ましい条件として、増幅反応中のpHを6.5〜9.0好ましくは7.0〜8.0に設定することが好ましい。
【0021】
本発明において、増幅する遺伝子は、患者から採取した組織片や唾液、食品など、あらゆる材料中に存在する細菌由来の遺伝子であるが、単離培養された菌体の遺伝子を増幅することも含まれる。また、本発明における試料には、上記の各種材料や培養菌体の他、これらより単離および精製された核酸なども含まれる。
すなわち、本発明における試料としては、上記の各種材料を直接、用いる場合の他に、上記の各種材料の培養液、またはそこから粗抽出または精製された核酸などが用いられ得る。さらに、上記の各種材料から単離された寒天培地上の菌体またはその培養液、またはそこから粗抽出または精製された核酸なども試料として用いられ得る。
【0022】
本発明の細菌検出方法は、上記DNA増幅方法で得られた1つまたはそれ以上の増幅DNA断片の鎖長を比較することにより行うことができる。或いは、上記DNA増幅方法で得られたDNA断片を制限酵素で消化し、該DNA断片の鎖長を比較することにより行うことができる。
【0023】
本発明の細菌検出方法は、試料中のアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスを検出するための方法であって、1,000CFUのアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスを含む系にて遺伝子増幅反応を行った場合に、少なくとも10ngの増幅DNA断片を得ることができる。
このとき、測定系中にはさらに、プライマー、熱安定性DNAポリメラーゼ、dNTPおよび緩衝液を含むことができるが、反応阻害物を含ませることは好ましくない。
プライマーは1〜1000nM程度を含む。中でも特異性を高めるために、100〜500nM程度がより好適であり、200nM程度がさらに好適である。DNAポリメラーゼは1〜200U/ml程度を含む。20〜100U/ml程度がより好適であり、50U/ml程度がさらに好適である。サーマス(Thermus)属、パイロコッカス(Pyrococcus)属、サーモコッカス(Thermococcus)属、大腸菌など種々の起源のものが用いられ、Taq DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼなど熱安定性のものがより好ましい。中でもKOD DNAポリメラーゼまたは該酵素を改良したDNAポリメラーゼは増幅量および反応速度の観点から最も好ましい。dNTPは50〜500μM程度を含む。100〜350μM程度がより好適であり、200μM程度がさらに好適である。最適な組合せの1つとしては、200nMのプライマー、50U/mlの熱安定性DNAポリメラーゼ、200μMのdNTPおよび緩衝液を含み、反応阻害物を含まない系が挙げられる。
アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスのCFUは、該菌を生育に適した条件で平板培養した場合に生じる該菌のコロニー数により定義される。アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスは、例えばATCC(American Type Culture Collection)から入手することができる。ATCCから分与された菌株にはProduct Information Sheetが添付されており、生育に適した条件とは、例えば、ATCCが発行したProduct Information Sheetに記載された培養方法をいう。
遺伝子増幅反応サイクルは、35サイクルが増幅DNA断片の収量の点で好ましいが、該増幅DNA断片を検出し得る条件であれば特に制限はない。
なお、少なくとも10ngの増幅DNA断片が得られているか否かは、増幅DNA断片をアガロースゲル電気泳動に供し、エチジウムブロマイド染色を行うことにより確認できる。一般に、電気泳動でのエチジウムブロマイド染色による検出限界は10ngよりやや少なめであると言われていることから、検出が可能であれば増幅DNA断片は10ng以上あると判断する。
【実施例】
以下に、本発明を実施例を用いて、具体的に説明する。
【0024】
実施例1
(1)オリゴヌクレオチドの合成
アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片から1つまたはそれ以上の該DNA断片を増幅するためのオリゴヌクレオチドは、配列番号1または2のいずれかに示される核酸配列から選択し、その配列は、配列番号3および4にそれぞれ示される。プライマー1:配列番号3のうち、1〜26番目、プライマー2:配列番号4のうち、1〜30番目
該オリゴヌクレオチドは、ABI社DNAシンセサイザー392型を用いて、ホスホアミダイト法にて合成することにより得た。手法はABI社のマニュアルに従い、各種オリゴヌクレオチドの脱保護はアンモニア水で55℃にて一夜実施した。精製はHPLC(ベックマン製)を用い、逆相クロマトカラム(ナカライテスク製)にて実施した。
【0025】
(2)試料の調製
歯周病関連細菌6株の菌体コロニーをそれぞれ直接、PCRの試料として使用した(表1参照)。寒天培地上の菌体コロニー100,000CFU(colony forming unit)を水100μlに懸濁し、そのうちの1μlをPCRに使用した。
【0026】
【表1】
Figure 2004057009
【0027】
(3)PCR
配列番号3および4に示されるオリゴヌクレオチド(プライマー1および2)を、それぞれPCRのプライマーとして用いた。反応液組成は、プライマー1および2をそれぞれ0.2μM、dATPおよびdGTPおよびdCTPおよびdTTPを各0.2mM、熱安定性DNAポリメラーゼ(KOD Dash:東洋紡製)25単位/ml、および1倍濃度の増幅用緩衝液(東洋紡製)である。実際の使用にあたっては、反応液に試料溶液(菌体コロニー懸濁液)1μlを添加し、反応液量を50μlとして、以下の反応に供した。反応条件は以下の通りである:
熱変性:       94℃、20秒
アニーリング:  60℃、5秒
伸長反応:      74℃、30秒
上記熱変性、アニーリングおよび伸長反応を30回繰り返した。これらの操作はパーキンエルマー社のDNAサーマルサイクラー(GeneAmp2400)を用いて行った。
【0028】
(4)検出
増幅反応後の反応液5μlを2%アガロースゲルにて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色した後、紫外線照射下での蛍光を検出した。電気泳動の条件は、定電圧100V、30分間にて行った。操作方法ならびに他の条件は、マニアティス(Maniatis)らのモレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)(1982年)に記載の技法に従った。反応液の他に分子量マーカーも同時に泳動し、検出されたDNA断片の鎖長を比較する際の参考とした。
【0029】
(5)結果
増幅DNA断片の検出に用いたアガロースゲル電気泳動を図1に示す。
図1から明らかなように、上記増幅方法により、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(レーン1)についてのみ増幅DNA断片が得られた。一般に、電気泳動でのエチジウムブロマイド染色による検出限界は10ngよりやや少なめであると言われていることから、増幅DNA断片は10ng以上あると推定される。すなわち、本発明の方法により、迅速かつ簡便なアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの検出が可能であることを示している。
【0030】
【発明の効果】
本発明により、あらゆる材料中から簡便、迅速、かつ特異的にアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの16S−23S遺伝子間スペーサー領域の遺伝子を増幅し、該細菌を迅速に検出することができる。
【0031】
【配列表】
Figure 2004057009
Figure 2004057009
Figure 2004057009

【図面の簡単な説明】
【図1】歯周病関連細菌の菌体コロニー中の遺伝子から、本発明のオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して増幅したDNA断片を示す図面に代わる電気泳動写真である。

Claims (11)

  1. 配列番号1または2のいずれかに示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列を有することを特徴とする、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの16S−23S遺伝子間スペーサー領域。
  2. 配列番号1または2のいずれかに示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有することを特徴とするオリゴヌクレオチド。
  3. 配列番号3または4に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有することを特徴とするオリゴヌクレオチド。
  4. 細菌の16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片から1つまたはそれ以上のDNA断片を増幅するための試薬であって、少なくとも2種のプライマーが、配列番号1または2のいずれかに示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有するオリゴヌクレオチドであり、一方のプライマーの伸長生成物が、その相補体から分離された場合に、他方のプライマーの鋳型となるプライマー、DNAポリメラーゼ、dNTPおよび緩衝液を含むことを特徴とするDNA増幅用試薬。
  5. 細菌の16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片から1つまたはそれ以上のDNA断片を増幅するための試薬であって、少なくとも2種のプライマーが、配列番号3および4に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有するオリゴヌクレオチドであり、一方のプライマーの伸長生成物が、その相補体から分離された場合に、他方のプライマーの鋳型となるプライマー、DNAポリメラーゼ、dNTPおよび緩衝液を含むことを特徴とするDNA増幅用試薬。
  6. 細菌の16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片から1つまたはそれ以上のDNA断片を増幅するための方法であって、少なくとも2種のプライマーが、配列番号1または2のいずれかに示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有するオリゴヌクレオチドであり、一方のプライマーの伸長生成物が、その相補体から分離された場合に、他方のプライマーの鋳型となることを特徴とするDNA増幅方法。
  7. 細菌の16S−23S遺伝子間スペーサー領域のDNA断片から1つまたはそれ以上のDNA断片を増幅するための方法であって、少なくとも2種のプライマーが、配列番号3および4に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した15塩基よりなる核酸配列を含有するオリゴヌクレオチドであり、一方のプライマーの伸長生成物が、その相補体から分離された場合に、他方のプライマーの鋳型となることを特徴とするDNA増幅方法。
  8. 請求項6または7記載のDNA増幅方法で得られた1つまたはそれ以上の増幅DNA断片の鎖長を比較することを特徴とする細菌の検出方法。
  9. 請求項6または7記載のDNA増幅方法で得られたDNA断片を制限酵素で消化し、該DNA断片の鎖長を比較することを特徴とする細菌の検出方法。
  10. 試料中のアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスを検出するための方法であって、1,000CFUのアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスを含む系にて遺伝子増幅反応を行った場合に、少なくとも10ngの増幅DNA断片が得られることを特徴とする細菌検出方法。
  11. 試料中のアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスを検出するための方法であって、1,000CFUのアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス、200nMのプライマー、50U/mlの熱安定性DNAポリメラーゼ、200μMのdNTPおよび緩衝液を含み、反応阻害物を含まない系にて35サイクルの遺伝子増幅反応を行った場合に、少なくとも10ngの増幅DNA断片が得られることを特徴とする細菌検出方法。
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