JP2004056871A - 薄型ダイレクトドライブモータ - Google Patents
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Abstract
【課題】軸方向に薄型構造で、低騒音・低振動で、コストダウンとなるダイレクトドライブ型モータを提供する。
【解決手段】磁石2を備えた回転子1と、コイル4をラジアルギャップ11内に備えた固定子10とから成るダイレクトドライブモータにおいて、磁石2を回転子1の鉄芯内に埋め込み、コイル4を固定子10の1つのティース7に巻きつけ、コアはオープニング形状の一体製造コアであり、かつオープニング距離はスロットピッチ幅からティース幅を差し引いた距離を有し、ティース7内に空隙6を設けた。
【選択図】 図1
【解決手段】磁石2を備えた回転子1と、コイル4をラジアルギャップ11内に備えた固定子10とから成るダイレクトドライブモータにおいて、磁石2を回転子1の鉄芯内に埋め込み、コイル4を固定子10の1つのティース7に巻きつけ、コアはオープニング形状の一体製造コアであり、かつオープニング距離はスロットピッチ幅からティース幅を差し引いた距離を有し、ティース7内に空隙6を設けた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ギアを介さない低速のダイレクトドライブであって、しかも軸方向に十分なスペースがなく、かつ振動や騒音が規制されるような場所に適用可能なモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の省スペースダイレクトドライブモータとして、エレベータ装置用に使用されるモータを例に考えることとする。公知のこの種のモータとしては、特開平8−40676号公報記載のダイレクトドライブモータがある。これは、アクシャルギャップ型を採用し、そのコイルエンドを軸方向に垂直な方向にした構造とし、軸方向の制約寸法を固定子のスロット高さとヨーク幅で決定して、省スペースを実現している。
しかし、アクシャルギャップ型モータには次のような欠点があった。すなわち、エレベータのような数kWクラスの大型モータでは、固定子鉄芯と回転子の永久磁石とのギャップ間に数トンもの強い吸引力が働くため、アキシャルギャップ型では、軸方向のスラスト力を抑える強固な支持構造が必要になる。しかし、回転子と固定子の間は可動部であり、ベアリング等で結合されているため、支持構造も複雑で、強固にすることは難しい。支持構造が十分強固でなければ、モータのギャップがギャップ面によって異なったり、最悪の場合、固定子と回転子が接触してしまい、磁石がはがれるなどの心配もある。このため、アキシャルギャップ型のモータは製作,補修,点検に手間や時間がかかり、エレベータのように特に安全性が要求され、かつ、頻繁に保守点検が必要な装置に適応するのは難しく、実現できてもコストが高い欠点があった。
【0003】
そこで、上記モータの欠点を解決するものとして、特開平10−304641公報記載のダイレクトドライブモータが開発された。これは、前記のようなアクシャルギャップ型ではなくてラジアルギャップ型を採用し、回転子をインナーロータとアウターロータ構造とし、固定子を集中巻き構造としているものである。更に、コギングトルクの振動数とトラクションシーブの周長、およびかごの停止位置の関係および定格効率最大運転の観点から、極数を30極〜50極の間に選びスロット数を極数よりも少なくした数を選び、高効率でコギングトルクの脈動周期を高次数へもっていく工夫をしている。これによって前記ダイレクトドライブモータが持たない特徴のある省スペースダイレクトドライブモータとなっている。
更に、このモータではこのモータの固定子の円弧をいくつかに分割し、ユニット毎に製作し、後から一体に組み合わせるようにした製作上の工夫をして、これにより、電気装荷を大きくし生産性をあげることを可能としている。
一方、それの制御面を考えると、永久磁石モータドライブのため高分解能のエンコーダがそれ自身に具備されており、信号形態でアブソリュートエンコーダとインクリメンタルエンコーダの2種類がある。
ところが、アブソリュートエンコーダは電源供給の有無に関係なくポール位置が把握できるという長所があるが、逆にコスト面で大きな問題があり、通常、インクリメンタルエンコーダが使用されている。その内訳は位置、速度センサ、原点センサおよびポールセンサの信号で構成されている。したがって、仮にラインドライバ方式で考えると、電源仕様を考慮すると14本もの多数の信号線が必要となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように、前記特開平10−304641号公報に記載のラジアルギャップ型モータの特徴は、エレベータシステムに対しその振動要因であるトルクリップル中でコギングトルクのみに対する低減策に対し、スロットコンビネーションの適切な選択法を提案しているものの、振動や騒音に起因するのはコギングトルクのみではない。他にも、通電中のギャップ波形の空間高調波成分に起因する比較的低周波のインバータ出力周波数の6倍トルクリップル成分も大きく影響しているので、これも同時に除去する適切なスロットコンビネーション選択を行う必要がある。ところがこの点についての記載はそこにはなされておらず、示唆もない。
また、生産性重視で固定子を分割コアにすることで、極数とスロット数の最小公倍振動数である理論的なコギングトルクの他に、ギャップ不平衡によるインバータ出力周波数の2倍のコギングトルクが発生することが、報告されている。(電学論RM−00−144 ”分割コアモータのコギングトルク発生要因分析”を参照。)
そしてこの要因としては、ギャップ形状に起因し、ギャップ真円度およびギャップ偏芯度にあること、特に真円度に大きく起因することが判明した。
また、エンコーダ仕様は高分解なポールセンサを具備することが一般的であるが、それ自身が高価である。また、最大14本もの信号線が必要であり、配線ミスなどの問題が考えられる。
さらに、モータのN極とポールセンサ信号を同期させるため、モータ組み立てに細心の注意を払うか、出荷時ポールセンサの位置合わせを行うなどの問題がある。
本発明はこれらの課題を解決するもので、通電中のギャップ波形の空間高調波成分に起因した6倍のトルクリップルや真円度に起因するコギングトルクの発生レベルが少ない、更にポールセンサや多数の信号線を必要としない、モータ組み立てに細心の注意を払う必要のないダイレクトドライブであって、しかも軸方向に十分なスペースがなく、かつ振動や騒音が規制されるような場所に適用可能なモータを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の問題を解決するため、本願の請求項1記載の薄型ダイレクトドライブモータの発明は、磁石を備えた回転子と、コイルをラジアルギャップ内に備えた固定子とから成るダイレクトドライブモータにおいて、前記磁石を前記回転子の鉄芯内に埋め込んだ内磁型回転子としたことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の薄型ダイレクトドライブモータにおいて、前記モータに対し前記コイルを前記固定子の1つのティースに巻きつけたことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の薄型ダイレクトドライブモータにおいて、前記固定子を構成するコアがオープニング形状の一体製造コアであり、かつ該オープニング距離はスロットピッチ幅からティース幅を差し引いた距離を有することにより真円度を限りなく0に近づけることが可能となることを特徴とする。
以上のように、トルクリップル中のコギングトルクに対し、理論上発生するコギングトルクはロータあるいはステータに最適スキューを施し、真円度のばらつきによる製作上発生するコギングトルクに対してはモータの鉄芯抜きをワンスタンプで一体構造で抜き真円度のばらつきを限りなく0に近づけることで解決する。
【0006】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載の薄型ダイレクトドライブモータにおいて、前記固定子ティース内に空隙を設けたことを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の薄型ダイレクトドライブモータにおいて、前記モータの極数とスロット数との関係が固定子スロットピッチの電気角が120°〜240°となる組み合わせからなることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の薄型ダイレクトドライブモータにおいて、前記モータの極数とスロット数との前記組み合わせがスロット数をZ、極数をP(ただし、Pは10極以上とする。)とするとき、前記式1を満たすことを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項5記載の薄型ダイレクトドライブモータにおいて、前記モータの極数とスロット数との前記組み合わせがスロット数をZ、極数をP(ただし、Pは14極以上とする。)とするとき、前記式2を満たすことを特徴とする。
以上のように、比較的低周期のモータの空間高調波に起因したトルクリップルはロータ形状の工夫およびスロットコンビネーションをインバータ出力周波数の6倍が消去する最適な組み合わせにより解決する。
【0007】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項記載の薄型ダイレクトドライブモータにおいて、前記内磁型回転子の磁気特性である各相インダクタンスの交番性を利用することにより電源投入時のポール位置検出を行うことを特徴とする。
以上のように、電源投入時のポール位置検出に対してはエンコーダに信号を付加することなくモータを内磁型モータ(IPM)にすることでその磁気特性、言い換えれば各相インダクタンスの交番性を利用することで解決する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は以下の3つの実施の形態で構成されている。
1)発明の実施の形態1は、真円度のばらつきによるコギングトルク比較とワンスタンプモータのコギングトルクに対する有用性に基づくものである。
2)発明の実施の形態2は、インバータ出力周波数6倍トルクリップルのモータ構造による低減法に基づくものである。
3)発明の実施の形態3は、高トルク定数とポールセンサレスの両面を満たすモータ構造に基づくものである。
以下、それぞれの実施の形態について詳細に説明する。
【0009】
(発明の実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係るモータで、40極、48スロットモータの5極、6スロット分を表している。図2は図1の部分拡大図である。図1および図2において、1は回転子部、2はマグネット部、3は固定子コア部、4はコイル、5はシャフト部、6は空隙部、7はティース部、10は固定子部、11はラジアルギャップ、13は回転子鉄芯(コア)である。なお、図2の8はウェッジ挿入部、9はロータ外径部である。
図において、固定子10はコイル4をそのラジアルギャップ11内に収納しており、また回転子10はマグネット(永久磁石)2をその鉄芯13内に埋め込んで、内磁型のダイレクトドライブモータを構成している。このモータに対してコイル4は固定子10の1つのティース7に集中巻きとしている。
また、固定子コア3はその内周側に完全オープニング(ラジアルギャップ)11を複数個備えて一体に製造されており、かつそのオープニングの距離To(図2)はスロットピッチ幅T1からティース幅T2を差し引いた距離としている。このように、固定子側のオープニングはセミクローズ構造(オープニングがスロットピッチとティースピッチとの差より小さい構造。)でなく完全オープン構造(オープニングがスロットピッチとティースピッチとの差に等しい構造。)となっているので、固定子を円弧に分割し製作しなくてもコイルを挿入するに十分なスペースが確保できることとなる。言い換えれば、完全オープン構造の固定子コアはワンスタンプ抜きにより又はノッチングにより製作できるので、真円度を限りなく0に近づけることが可能となることを意味する。
【0010】
このように真円度を限りなく0に近づけるように製作することの有用性をコギングトルク特性について考えてみる。
コギングトルクは有限要素解析により真円度が0(%)のステータと真円度が0.625(%)(250μm突出)のステータのモデルで解析した。ここで用いている真円度とは、その円の基準半径とその基準半径から最も偏りのある実半径との差を基準半径で割った値×100(%)のことを言う。
解析モデルは図3と図4に示されている。図3は真円度が0(%)のステータの一部で、図4は真円度が0.625(%)のステータの一部の形状である。図4においては、固定子鉄心がギャップ側に250μm突出している部分があるため真円度が0.625(%)のステータとなっている。定格トルク29(N−m)、極数8、スロット数12、ギャップ0.8mm(ギャップダイヤ80mm)の表面磁石モータで固定子スロットはセミクローズの分割コア形状である。
【0011】
図5はその時のコギングトルク波形を示す図である。
縦軸はコギングトルク(Nm)、横軸は電気角である。黒丸が図3の真円度が0(%)のコギングトルク波形、白丸は図4の真円度が0.625(%)のコギングトルク波形を示す線図である。図から分かるように、真円度が0(%)のコギングトルク波形の時と真円度が0.625(%)のコギングトルク波形では相対比較で真円度がずれた場合のコギングトルクの波高値が真円度が0(%)のコギングトルク波形に対して約4倍にもなる。
なお、理論上のコギングトルクの周期はインバータ出力周波数の6倍(極数とスロット数の最少公倍数を極対数で除算する。)となるが、真円度ずれにより2倍の周期が発生しており、振動周波数がより低周期となっていることが問題である。
分割コアを複数個繋ぎ合わせて真円度がゼロのステータを作ることは、分割コアどうしの接続部分のクリアランスがあるためとても困難である。ところが1枚板を打ち抜いて作る一体コアであれば真円度が限りなくゼロ(%)のステータを作ることは簡単である。したがって真円度が限りなくゼロ(%)のステータであれば組みたて時のバラツキによるコギングトルクが図5のように現れることはないから、分割コアでなく一体コアで形成することが有用であることが分かる。
そして一体コアの場合、その形状がセミクローズのコアであっても完全オープンのコアであっても真円度が限りなくゼロ(%)に作れるのでコギングトルク上は問題ないのであるが、実際の製作上の観点からセミクローズのコアよりも完全オープンのコアのほうが有用である。なぜなら、セミクローズのコアに集中巻きのコイル巻きを施すとき、セミクローズの狭いオープニングからコイルを入れてティースに巻回することは困難であり、これに対して、完全オープンコアへの集中巻きを施す場合は、広いオープニングが利用できるからコイルをティースに密着して巻くことは簡単にできるからである。したがって、分割コアではなくて完全オープンスロット一体コアをダイレクトドライブ型の永久磁石モータとすることの有用性が確認できる。
【0012】
(発明の実施の形態2)
次に、発明の実施の形態2に係るインバータ出力周波数6倍トルクリップルのモータ構造による低減法について説明する。
図6はロータ形状の違いによる起磁力ギャップ空間高調波形状を示すもので、(a)は図2の凸極円弧形状のロータ、(b)は同芯形状のロータを示している。
図において、1は回転子部、2はマグネット部、3は固定子コア部、4はコイル、5はシャフト部、7はティース部、10は固定子部、Gは回転子1と固定子10の間のエアギャップ、Hは起磁力ギャップ空間高調波形状をしている。
(a)から分かるように、凸極円弧形状のロータによって生じる起磁力ギャップ空間高調波はほぼ正弦波形状で推移しているのに対して、(b)の同芯形状ロータの場合は台形状であり、きわめて多くの高調波を含むことになる。したがって、図2のような凸極円弧形状にすると、起磁力ギャップ空間高調波は同芯形状のロータよりもより少なくなる。
【0013】
高次高調波成分によるトルクTは、電流基本波と高次高調波のトルク定数の瞬時値の積による次式で表される。
T=Φu・Iu+Φv・Iv+Φw・Iw
ここで、Iu(θ)=IpcosPθ
Iv(θ)=Ipcos(Pθ−2π/3)
Iw(θ)=Ipcos(Pθ−4π/3)
Φu(θ)=ΦpcosPθ
Φv(θ)=Φpcos(Pθ−2π/3)
Φw(θ)=Φpcos(Pθ−4π/3)
まず、3次高調波によるトルクリップルT3を求めると、
T3=Φu・Iu+Φv・Iv+Φw・Iw
=Φp3×cos3Pθ・IpcosPθ
+Φp3×cos3(Pθ−2π/3)・Ipcos(Pθ−2π/3)
+Φp3×cos3(Pθ−4π/3)・Ipcos(Pθ−4π/3)
=0
次に、5次高調波によるトルクリップルT5を求めると、
T5=Φu・Iu+Φv・Iv+Φw・Iw
=Φp5 ×cos5Pθ・IpcosPθ
+Φp5 ×cos5(Pθ−2π/3)・Ipcos(Pθ−2π/3)
+Φp5 ×cos5(Pθ−4π/3)・Ipcos(Pθ−4π/3)
=3/2×Φp5 ×Ip×cos6Pθ
さらに、7次高調波によるトルクリップルT7を求めると、
T7=Φu・Iu+Φv・Iv+Φw・Iw
=Φp7 ×cos7Pθ・IpcosPθ
+Φp7 ×cos7(Pθ−2π/3)・Ipcos(Pθ−2π/3)
+Φp7 ×cos7(Pθ−4π/3)・Ipcos(Pθ−4π/3)
=3/2×Φp7 ×Ip×cos6Pθ
さらに、9次高調波によるトルクリップルT9を求めると、
T9=Φu・Iu+Φv・Iv+Φw・Iw
=Φp9 ×cos9Pθ・IpcosPθ
+Φp9 ×cos9(Pθ−2π/3)・Ipcos(Pθ−2π/3)
+Φp9 ×cos9(Pθ−4π/3)・Ipcos(Pθ−4π/3)
=0
上記式からわかるように、3の奇数次調波のトルクリップルは0になるが、5次高調波と7次高調波のトルクリップルは6倍のトルクリップルで表現される。
したがって、6次のトルクリップルは5次高調波と1次電流の積および7次高調波と1次電流の積の和で表現できる。そして、一般に5次高調波成分値は7次高調波成分値よりも図6(a)から大きいため、5次高調波を減衰させることが重要である。
なお、1次電流はインバータによるPWM制御で電流波形ひずみの影響が考えられるがここでは理想的な正弦波電流と考えている。
【0014】
図7〜図9の表は極数とスロット数のコンビネーションによる5次の短節係数値表を示している。短節係数値とは、磁極ピッチ180度に対して、巻線ピッチを例えば150度とした時、
β=150/180=0.833
として、次式より計算される値を示す。
Kpν=sin(νβπ/2)
ただし、νは高調波の次数を表し、1,3,5,・・・で奇数調波。
図7の表において、左欄の数値はスロット数で、最上より2行目はスロット数9であり、以下下方に行くに従い3スロットづつ増え、最下行はスロット数87となっている。一方、最上行は極数を示し、左の8極から右へ行くに従い2極づつ増え、図7の表では右の24極で終っている。
図8の表はスロット数(行)は図7と同じで、極数(列)が図7の極数の続きを示している。すなわち、左の26極から右へ行くに従い2極づつ増え右の42極で終っている。
図9の表はスロット数(行)は図7、図8と同じで、極数(列)が図8の極数の続きを示し、44極から右の60極で終っている。
また、行と列も交差部は左右2つの欄で構成され、左欄の数値は1スロットピッチ当たりの電気角、右欄の数値は5次の短節係数値を示している。
したがって、図7〜図9の表はモータの誘起電圧波形の高次の空間高調波のうち先に問題となった5次成分を格段と減衰させる極数とスロット数の組み合わせを選ぶため、それらの全ての組み合わせをまとめて示したものである。
【0015】
図7〜図9および図10〜図12において、上下の太枠で囲まれた内部はスロットピッチが120°〜240°のいわゆる集中巻き構造部分を示している。
ここで基本波の短節係数βを90°、120°、240°、270°について求めると、
(1) 90°のβ:β= 90/180=0.5
→ sin(1×0.5×π/2)=0.7
(2)120°のβ:β=120/180=0.666
→ sin(1×0.666×π/2)=0.866
(3)240°のβ:β=240/180=1.333
→ sin(1×1.333×π/2)=0.866
(4)270°のβ:β=270/180=1.5
→ sin(1×1.5×π/2)=0.7
以上の計算結果から、短節係数βが90°〜270°の範囲を選ぶと、基本波の短節係数が0.7となり、基本波のトルク定数が30%も減少する。しかし短節係数βを120°〜240°の範囲を選ぶと、基本波の短節係数が0.86となり、基本波のトルク定数が14%に留めることが可能で、設計的に許容範囲である。したがってこの表では、スロットピッチが120°〜240°の集中巻きを選ぶこととしている。
【0016】
モータの極数とスロット数との組み合わせはスロット数をZ、極数をP(ただし、Pは10極以上とする。)とするとき、式(1)を満たすようにするのがよい。
【数3】
式(1)は、図7〜図9の中で、二重カッコで囲んだ部分を5つ毎のグループに分けて考えて、Z=f(P)の関数で表したものである。
例えば、図7において、{極数10でスロット数12、極数12でスロット数15、極数14でスロット数18、極数16でスロット数21、極数18でスロット数24}で1グループ、{極数20でスロット数24、極数22でスロット数27、極数24でスロット数30、極数26でスロット数33、極数28でスロット数36}で1グループ、{極数30でスロット数36、極数32でスロット数39、極数34でスロット数42、極数36でスロット数45、極数38でスロット数48}で1グループ、{極数40でスロット数48、極数42でスロット数51、極数44でスロット数54、極数46でスロット数57、極数48でスロット数60}で1グループ、・・・。このように5つ毎のグループに分けている。
【0017】
さらに、生産面も考慮する時、スロット数がより少ない方が有利であるので、その面でモータの極数とスロット数との前記組み合わせはスロット数をZ、極数をP(ただし、Pは14極以上とする。)とするとき、式(2)を満たすようにするのが式(1)よりもより有利となる。
【数4】
式(2)は、図7〜図9の中で、点線で囲んだ部分を4つ毎のグループに分けて考えて、Z=f(P)の関数で表したものである。そのとき、極数を14で除算した商の値を奇数、偶数で分けて表現することとした。例えば、図7において、{極数14でスロット数12、極数18でスロット数15、極数22でスロット数18、極数26でスロット数21}で奇数グループ、{極数28でスロット数24、極数32でスロット数27、極数30でスロット数30、極数40でスロット数33}で偶数グループ、{極数42でスロット数36、極数46でスロット数39、極数50でスロット数42、極数54でスロット数45}で奇数グループ、{極数56でスロット数48、極数60でスロット数51、極数64でスロット数54、極数68でスロット数57}で偶数グループ。このように4つ毎のグループに分けている。
【0018】
以上のように、図7〜図9において、本発明の実施の形態2に係る範囲(式1)は二重枠で、また実施の形態2の変形例に係る範囲(式2)は点線枠で示している。二重枠部分はスロットピッチの電気角が140°〜150°となる極数とスロット数の関係であり、点線枠はスロットピッチの電気角が210°〜220°となるような極数とスロット数の関係である。本発明の実施の形態2およびその変形例の範囲であれば、いずれも磁極ピッチ180°に対してその前段30°〜40°の間のスロットピッチが5次の高調波を減衰させる効果がある。
なお、式1と式2の違いは、式1がP<Zで極数がスロット数より少なく、式2がP>Zで極数がスロット数より多くなっている。式2の方が生産性の向上、巻線工数の低減で有利である。
このように、この範囲内のスロットコンビネーションを選ぶことで、5倍の空間高調波短節係数を0.3以下に抑えることが可能であり、6倍の低トルクリップル化が実現できる。
【0019】
また、図10〜図12の表は、極数とスロット数のコンビネーションで1スロットピッチの電気角と、このコンビネーションでのコギングトルクの出力次数を示している。
図10の表において、左欄の数値はスロット数で、最上より2行目はスロット数9であり、以下下方に行くに従い3スロットづつ増え、最下行はスロット数87となっている。一方、最上行は極数を示し、左の8極から右へ行くに従い2極づつ増え、図10の表では右の24極で終っている。
図11の表はスロット数(行)は図10と同じで、極数(列)が図10の極数の続きを示している。すなわち、左の26極から右へ行くに従い2極づつ増え右の42極で終っている。
図12の表はスロット数(行)は図10、図12と同じで、極数(列)が図11の極数の続きを示し、44極から右の60極で終っている。
また、行と列も交差部は左右2つの欄で構成され、左欄の数値は1スロットピッチ当たりの電気角、右欄の数値はコギングトルクの出力次数を示している。
したがって、図10〜図12の表は、スロット数と極数のコンビネーションで理論的なコギングトルクの出力次数を示しており、出力次数が高ければ高いほどよいことになる。
【0020】
図7〜図9および図10〜図12の表から、例えば(1)40極の48スロットと、(2)32極の39スロットを比較した場合、5倍の空間高調波の低減率はほぼ同等であるが((1)の40極の48スロットで0.258、(2)の32極の39スロットで0.16)、理論的なコギングトルクの周波数は前者が12倍であるのに対し後者は78倍と非常に高次数へ持っていくことが可能である。例えば、インバータ出力周波数が1Hzのとき、(1)は12Hzでコギングトルクの影響を受け、(2)は78Hzでコギングトルクの影響を受けることとなり、低い周波数でないことがメリットとなるので、後者が低コギングトルク化も同時に満たす好ましいスロットコンビネーションである。
【0021】
(発明の実施の形態3)
最後に、発明の実施の形態3である高トルク定数とポールセンサレスの両面を満たすモータ構造について説明する。
図1の空隙部の効果は固定子部のギャップ面を減少させることなく、d軸(直軸)、q軸(横軸)インダクタンスの飽和特性を積極的に活用するためのものである。一般的に、内磁型モータのインダクタンスは回転子と固定子の相対位置が変化すれば交番特性をもって変化するため、これを利用してポール位置を検出する技術は確立されつつある。
しかし、飽和させることは固定子のティース幅を狭くすることにより容易に実現できるが、集中巻き構造のモータは巻線に鎖交する磁束量がそのままティース幅の面積に依存することから、ギャップ面のティース幅をむやみに狭くすることはトルク定数の低下を招き、飽和特性とトルク定数アップの間にトレードオフの関係が成り立ち、何らかの工夫により両面を満たす構造を考える必要がある。
ティース幅とトルク定数の関係は以下の式により表現される。
巻線への鎖交磁束は式(3)で表現される。
Φ(θ) = Φmax cosθ ・・・・(3)
誘起電圧は式(4)で表現される。
【数5】
ここで式(3)、式(4)中のΦmaxは式(5)で表現される。
Φmax =21/2×Broot−mean×S×n ・・・・(5)
ただし、Broot−meanはギャップ表面の磁束密度の実効値で、nは巻数である。Sは巻線を巻いたティースのギャップ側表面積である。
この面積が大きいほどΦmaxが大きくなり誘起電圧が大きくなる。このことはスロットピッチをポールピッチに近づける設計を行う必要がある。しかし、ティース部の磁気飽和もポールセンサーレスに欠かせないためギャップ表面でなく奥の方へ図1に示す空隙を設け等価的にティースを細くしポールセンサーレス構造とトルク定数アップの両面特性を考慮する発明である。
【0022】
図13は、ティース部の空隙の有無によるインダクタンス分布を示す線図で、基準軸はU相巻線軸(あるいは磁石軸)を0°として、そこを基準にして電気角対インダクタンス値を示している。図1に示すモータに対してdq軸インダクタンスの有限要素解析結果である。図13において、0°、180°はU相巻線軸と磁石の極が一致していることを示し、180°は磁石がN極であり、言い換えれば減磁方向へ電流を流した場合を示し、逆に0°は磁石がS極であり、言い換えれば増磁方向へ電流を流した場合である。180°の方がティース部の磁気抵抗が下がり、磁束が透過しやすく、インダクダンスが0°の時よりも大きくなる。
図13の電気角はU相巻線軸と回転子のマグネット軸が一致したところを基準軸として0°とし、そこからir−refステップ指令を与えるようにする。
図14は発明の実施の形態3を実現する具体的な構成回路である。
図14において、電流指令ir−ref が与えられると、電圧指令Vr−ref に変換され、この電圧指令Vr−ref がipmモータに与えられる。
ipmモータでは、
Vr−ref = R・ir+L・dir /dt
なる式を満足する電流irが流れる。
インダクタンスLは位相(マグネットの位置)によって変化するから、位相を例えば10°毎に変化させて、irの応答が最も速いところがインダクタンスが最も小さいところなので、そこがマグネット位置であることが分かる。
このように発明の実施の形態3によれば、ポールセンサーを取りはずしても各相インダクタンスの交番性を利用してインダクタンスが最も小さいところを求めることで電源投入時のポール位置検出を行うことができることとなる。
【0023】
【発明の効果】
以上のように本発明は大きく分けて3つの実施の形態から成っている。
1)発明の実施の形態1は、真円度のばらつきによるコギングトルク比較とワンスタンプモータのコギングトルクに対する有用性に基づくもので、一体コアかつ完全オープンスロットの固定子の構造を提案して、製作上増加するインバータ周波数の2倍周期のコギングトルクを増加させないようにしている。
2)発明の実施の形態2は、インバータ出力周波数6倍トルクリップルのモータ構造による低減法に基づくもので、極数とスロット数の組合わせを最適に選択することにより、5次の空間高調波起磁力によるインバータ周波数の6倍のトルクリップルを減衰させ、かつコギングトルクを高次数へもっていくコンビネーションを提案した。
3)発明の実施の形態3は、高トルク定数とポールセンサレス両面を満たすもので、磁石モータの宿命であるポールセンサ実装に対し回転子側は磁石を鉄に埋め込む内磁型構造とし、固定子側は磁極ピッチにスロットピッチを近づけ、鎖交磁束を増やす工夫をし、ティースに空隙を設けることでインダクタンスの交番性と飽和性を利用してポールセンサのU,V,W相の信号を省くものである。これにより、ラインドライバ方式では6本もの信号を省くことができる。
このように構造上、軸方向にスペースがなく薄型構造が余儀なくされ低騒音、低振動も同時に満たすモータであって、その固定子側を集中巻きかつ回転子を内磁型で構成して、かつ、その工夫により駆動インターフェースであるエンコーダのコストダウンを実現する実用性の高いモータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るモータ(40極、48スロット)を示す図である。
【図2】図1の拡大図である。
【図3】真円度0(%)のコギングトルク解析モデルを示す図である。
【図4】真円度250(%)のコギングトルク解析モデルを示す図である。
【図5】真円度の違いによるコギングトルクの比較線図である。
【図6】ロータ形状の違いによる起磁力ギャップ空間高調波形状を示すもので、(a)は図2の凸極円弧形状のロータ、(b)は同芯形状のロータを示している。
【図7】スロットコンビネーションによる5次の短節係数値表(その1)である。
【図8】図7に5次の続く短節係数値表(その2)である。
【図9】図8に続く5次の短節係数値表(その3)である。
【図10】スロットコンビネーションにコギングトルク次数値表(その1)である。
【図11】図10に続くコギングトルク次数値表(その2)である。
【図12】図10に続くコギングトルク次数値表(その3)である。
【図13】図1のティース部の空隙の有無によるインダクタンス分布磁界解析結果を示す線図である。
【図14】発明の実施の形態3を実現する具体的な構成回路である。
【符号の説明】
1 回転子部
2 マグネット部
3 固定子コア部
4 コイル部
5 シャフト部
6 空隙部
7 ティース部
8 ウェッジ挿入部
9 ロータ外径部
10 固定子部
11 オープニング(ラジアルギャップ)
13 回転子鉄芯(コア)
To オープニング距離
T1 スロットピッチ
T2 ティース幅
【発明の属する技術分野】
本発明は、ギアを介さない低速のダイレクトドライブであって、しかも軸方向に十分なスペースがなく、かつ振動や騒音が規制されるような場所に適用可能なモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の省スペースダイレクトドライブモータとして、エレベータ装置用に使用されるモータを例に考えることとする。公知のこの種のモータとしては、特開平8−40676号公報記載のダイレクトドライブモータがある。これは、アクシャルギャップ型を採用し、そのコイルエンドを軸方向に垂直な方向にした構造とし、軸方向の制約寸法を固定子のスロット高さとヨーク幅で決定して、省スペースを実現している。
しかし、アクシャルギャップ型モータには次のような欠点があった。すなわち、エレベータのような数kWクラスの大型モータでは、固定子鉄芯と回転子の永久磁石とのギャップ間に数トンもの強い吸引力が働くため、アキシャルギャップ型では、軸方向のスラスト力を抑える強固な支持構造が必要になる。しかし、回転子と固定子の間は可動部であり、ベアリング等で結合されているため、支持構造も複雑で、強固にすることは難しい。支持構造が十分強固でなければ、モータのギャップがギャップ面によって異なったり、最悪の場合、固定子と回転子が接触してしまい、磁石がはがれるなどの心配もある。このため、アキシャルギャップ型のモータは製作,補修,点検に手間や時間がかかり、エレベータのように特に安全性が要求され、かつ、頻繁に保守点検が必要な装置に適応するのは難しく、実現できてもコストが高い欠点があった。
【0003】
そこで、上記モータの欠点を解決するものとして、特開平10−304641公報記載のダイレクトドライブモータが開発された。これは、前記のようなアクシャルギャップ型ではなくてラジアルギャップ型を採用し、回転子をインナーロータとアウターロータ構造とし、固定子を集中巻き構造としているものである。更に、コギングトルクの振動数とトラクションシーブの周長、およびかごの停止位置の関係および定格効率最大運転の観点から、極数を30極〜50極の間に選びスロット数を極数よりも少なくした数を選び、高効率でコギングトルクの脈動周期を高次数へもっていく工夫をしている。これによって前記ダイレクトドライブモータが持たない特徴のある省スペースダイレクトドライブモータとなっている。
更に、このモータではこのモータの固定子の円弧をいくつかに分割し、ユニット毎に製作し、後から一体に組み合わせるようにした製作上の工夫をして、これにより、電気装荷を大きくし生産性をあげることを可能としている。
一方、それの制御面を考えると、永久磁石モータドライブのため高分解能のエンコーダがそれ自身に具備されており、信号形態でアブソリュートエンコーダとインクリメンタルエンコーダの2種類がある。
ところが、アブソリュートエンコーダは電源供給の有無に関係なくポール位置が把握できるという長所があるが、逆にコスト面で大きな問題があり、通常、インクリメンタルエンコーダが使用されている。その内訳は位置、速度センサ、原点センサおよびポールセンサの信号で構成されている。したがって、仮にラインドライバ方式で考えると、電源仕様を考慮すると14本もの多数の信号線が必要となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように、前記特開平10−304641号公報に記載のラジアルギャップ型モータの特徴は、エレベータシステムに対しその振動要因であるトルクリップル中でコギングトルクのみに対する低減策に対し、スロットコンビネーションの適切な選択法を提案しているものの、振動や騒音に起因するのはコギングトルクのみではない。他にも、通電中のギャップ波形の空間高調波成分に起因する比較的低周波のインバータ出力周波数の6倍トルクリップル成分も大きく影響しているので、これも同時に除去する適切なスロットコンビネーション選択を行う必要がある。ところがこの点についての記載はそこにはなされておらず、示唆もない。
また、生産性重視で固定子を分割コアにすることで、極数とスロット数の最小公倍振動数である理論的なコギングトルクの他に、ギャップ不平衡によるインバータ出力周波数の2倍のコギングトルクが発生することが、報告されている。(電学論RM−00−144 ”分割コアモータのコギングトルク発生要因分析”を参照。)
そしてこの要因としては、ギャップ形状に起因し、ギャップ真円度およびギャップ偏芯度にあること、特に真円度に大きく起因することが判明した。
また、エンコーダ仕様は高分解なポールセンサを具備することが一般的であるが、それ自身が高価である。また、最大14本もの信号線が必要であり、配線ミスなどの問題が考えられる。
さらに、モータのN極とポールセンサ信号を同期させるため、モータ組み立てに細心の注意を払うか、出荷時ポールセンサの位置合わせを行うなどの問題がある。
本発明はこれらの課題を解決するもので、通電中のギャップ波形の空間高調波成分に起因した6倍のトルクリップルや真円度に起因するコギングトルクの発生レベルが少ない、更にポールセンサや多数の信号線を必要としない、モータ組み立てに細心の注意を払う必要のないダイレクトドライブであって、しかも軸方向に十分なスペースがなく、かつ振動や騒音が規制されるような場所に適用可能なモータを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の問題を解決するため、本願の請求項1記載の薄型ダイレクトドライブモータの発明は、磁石を備えた回転子と、コイルをラジアルギャップ内に備えた固定子とから成るダイレクトドライブモータにおいて、前記磁石を前記回転子の鉄芯内に埋め込んだ内磁型回転子としたことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の薄型ダイレクトドライブモータにおいて、前記モータに対し前記コイルを前記固定子の1つのティースに巻きつけたことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の薄型ダイレクトドライブモータにおいて、前記固定子を構成するコアがオープニング形状の一体製造コアであり、かつ該オープニング距離はスロットピッチ幅からティース幅を差し引いた距離を有することにより真円度を限りなく0に近づけることが可能となることを特徴とする。
以上のように、トルクリップル中のコギングトルクに対し、理論上発生するコギングトルクはロータあるいはステータに最適スキューを施し、真円度のばらつきによる製作上発生するコギングトルクに対してはモータの鉄芯抜きをワンスタンプで一体構造で抜き真円度のばらつきを限りなく0に近づけることで解決する。
【0006】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載の薄型ダイレクトドライブモータにおいて、前記固定子ティース内に空隙を設けたことを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の薄型ダイレクトドライブモータにおいて、前記モータの極数とスロット数との関係が固定子スロットピッチの電気角が120°〜240°となる組み合わせからなることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の薄型ダイレクトドライブモータにおいて、前記モータの極数とスロット数との前記組み合わせがスロット数をZ、極数をP(ただし、Pは10極以上とする。)とするとき、前記式1を満たすことを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項5記載の薄型ダイレクトドライブモータにおいて、前記モータの極数とスロット数との前記組み合わせがスロット数をZ、極数をP(ただし、Pは14極以上とする。)とするとき、前記式2を満たすことを特徴とする。
以上のように、比較的低周期のモータの空間高調波に起因したトルクリップルはロータ形状の工夫およびスロットコンビネーションをインバータ出力周波数の6倍が消去する最適な組み合わせにより解決する。
【0007】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項記載の薄型ダイレクトドライブモータにおいて、前記内磁型回転子の磁気特性である各相インダクタンスの交番性を利用することにより電源投入時のポール位置検出を行うことを特徴とする。
以上のように、電源投入時のポール位置検出に対してはエンコーダに信号を付加することなくモータを内磁型モータ(IPM)にすることでその磁気特性、言い換えれば各相インダクタンスの交番性を利用することで解決する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は以下の3つの実施の形態で構成されている。
1)発明の実施の形態1は、真円度のばらつきによるコギングトルク比較とワンスタンプモータのコギングトルクに対する有用性に基づくものである。
2)発明の実施の形態2は、インバータ出力周波数6倍トルクリップルのモータ構造による低減法に基づくものである。
3)発明の実施の形態3は、高トルク定数とポールセンサレスの両面を満たすモータ構造に基づくものである。
以下、それぞれの実施の形態について詳細に説明する。
【0009】
(発明の実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係るモータで、40極、48スロットモータの5極、6スロット分を表している。図2は図1の部分拡大図である。図1および図2において、1は回転子部、2はマグネット部、3は固定子コア部、4はコイル、5はシャフト部、6は空隙部、7はティース部、10は固定子部、11はラジアルギャップ、13は回転子鉄芯(コア)である。なお、図2の8はウェッジ挿入部、9はロータ外径部である。
図において、固定子10はコイル4をそのラジアルギャップ11内に収納しており、また回転子10はマグネット(永久磁石)2をその鉄芯13内に埋め込んで、内磁型のダイレクトドライブモータを構成している。このモータに対してコイル4は固定子10の1つのティース7に集中巻きとしている。
また、固定子コア3はその内周側に完全オープニング(ラジアルギャップ)11を複数個備えて一体に製造されており、かつそのオープニングの距離To(図2)はスロットピッチ幅T1からティース幅T2を差し引いた距離としている。このように、固定子側のオープニングはセミクローズ構造(オープニングがスロットピッチとティースピッチとの差より小さい構造。)でなく完全オープン構造(オープニングがスロットピッチとティースピッチとの差に等しい構造。)となっているので、固定子を円弧に分割し製作しなくてもコイルを挿入するに十分なスペースが確保できることとなる。言い換えれば、完全オープン構造の固定子コアはワンスタンプ抜きにより又はノッチングにより製作できるので、真円度を限りなく0に近づけることが可能となることを意味する。
【0010】
このように真円度を限りなく0に近づけるように製作することの有用性をコギングトルク特性について考えてみる。
コギングトルクは有限要素解析により真円度が0(%)のステータと真円度が0.625(%)(250μm突出)のステータのモデルで解析した。ここで用いている真円度とは、その円の基準半径とその基準半径から最も偏りのある実半径との差を基準半径で割った値×100(%)のことを言う。
解析モデルは図3と図4に示されている。図3は真円度が0(%)のステータの一部で、図4は真円度が0.625(%)のステータの一部の形状である。図4においては、固定子鉄心がギャップ側に250μm突出している部分があるため真円度が0.625(%)のステータとなっている。定格トルク29(N−m)、極数8、スロット数12、ギャップ0.8mm(ギャップダイヤ80mm)の表面磁石モータで固定子スロットはセミクローズの分割コア形状である。
【0011】
図5はその時のコギングトルク波形を示す図である。
縦軸はコギングトルク(Nm)、横軸は電気角である。黒丸が図3の真円度が0(%)のコギングトルク波形、白丸は図4の真円度が0.625(%)のコギングトルク波形を示す線図である。図から分かるように、真円度が0(%)のコギングトルク波形の時と真円度が0.625(%)のコギングトルク波形では相対比較で真円度がずれた場合のコギングトルクの波高値が真円度が0(%)のコギングトルク波形に対して約4倍にもなる。
なお、理論上のコギングトルクの周期はインバータ出力周波数の6倍(極数とスロット数の最少公倍数を極対数で除算する。)となるが、真円度ずれにより2倍の周期が発生しており、振動周波数がより低周期となっていることが問題である。
分割コアを複数個繋ぎ合わせて真円度がゼロのステータを作ることは、分割コアどうしの接続部分のクリアランスがあるためとても困難である。ところが1枚板を打ち抜いて作る一体コアであれば真円度が限りなくゼロ(%)のステータを作ることは簡単である。したがって真円度が限りなくゼロ(%)のステータであれば組みたて時のバラツキによるコギングトルクが図5のように現れることはないから、分割コアでなく一体コアで形成することが有用であることが分かる。
そして一体コアの場合、その形状がセミクローズのコアであっても完全オープンのコアであっても真円度が限りなくゼロ(%)に作れるのでコギングトルク上は問題ないのであるが、実際の製作上の観点からセミクローズのコアよりも完全オープンのコアのほうが有用である。なぜなら、セミクローズのコアに集中巻きのコイル巻きを施すとき、セミクローズの狭いオープニングからコイルを入れてティースに巻回することは困難であり、これに対して、完全オープンコアへの集中巻きを施す場合は、広いオープニングが利用できるからコイルをティースに密着して巻くことは簡単にできるからである。したがって、分割コアではなくて完全オープンスロット一体コアをダイレクトドライブ型の永久磁石モータとすることの有用性が確認できる。
【0012】
(発明の実施の形態2)
次に、発明の実施の形態2に係るインバータ出力周波数6倍トルクリップルのモータ構造による低減法について説明する。
図6はロータ形状の違いによる起磁力ギャップ空間高調波形状を示すもので、(a)は図2の凸極円弧形状のロータ、(b)は同芯形状のロータを示している。
図において、1は回転子部、2はマグネット部、3は固定子コア部、4はコイル、5はシャフト部、7はティース部、10は固定子部、Gは回転子1と固定子10の間のエアギャップ、Hは起磁力ギャップ空間高調波形状をしている。
(a)から分かるように、凸極円弧形状のロータによって生じる起磁力ギャップ空間高調波はほぼ正弦波形状で推移しているのに対して、(b)の同芯形状ロータの場合は台形状であり、きわめて多くの高調波を含むことになる。したがって、図2のような凸極円弧形状にすると、起磁力ギャップ空間高調波は同芯形状のロータよりもより少なくなる。
【0013】
高次高調波成分によるトルクTは、電流基本波と高次高調波のトルク定数の瞬時値の積による次式で表される。
T=Φu・Iu+Φv・Iv+Φw・Iw
ここで、Iu(θ)=IpcosPθ
Iv(θ)=Ipcos(Pθ−2π/3)
Iw(θ)=Ipcos(Pθ−4π/3)
Φu(θ)=ΦpcosPθ
Φv(θ)=Φpcos(Pθ−2π/3)
Φw(θ)=Φpcos(Pθ−4π/3)
まず、3次高調波によるトルクリップルT3を求めると、
T3=Φu・Iu+Φv・Iv+Φw・Iw
=Φp3×cos3Pθ・IpcosPθ
+Φp3×cos3(Pθ−2π/3)・Ipcos(Pθ−2π/3)
+Φp3×cos3(Pθ−4π/3)・Ipcos(Pθ−4π/3)
=0
次に、5次高調波によるトルクリップルT5を求めると、
T5=Φu・Iu+Φv・Iv+Φw・Iw
=Φp5 ×cos5Pθ・IpcosPθ
+Φp5 ×cos5(Pθ−2π/3)・Ipcos(Pθ−2π/3)
+Φp5 ×cos5(Pθ−4π/3)・Ipcos(Pθ−4π/3)
=3/2×Φp5 ×Ip×cos6Pθ
さらに、7次高調波によるトルクリップルT7を求めると、
T7=Φu・Iu+Φv・Iv+Φw・Iw
=Φp7 ×cos7Pθ・IpcosPθ
+Φp7 ×cos7(Pθ−2π/3)・Ipcos(Pθ−2π/3)
+Φp7 ×cos7(Pθ−4π/3)・Ipcos(Pθ−4π/3)
=3/2×Φp7 ×Ip×cos6Pθ
さらに、9次高調波によるトルクリップルT9を求めると、
T9=Φu・Iu+Φv・Iv+Φw・Iw
=Φp9 ×cos9Pθ・IpcosPθ
+Φp9 ×cos9(Pθ−2π/3)・Ipcos(Pθ−2π/3)
+Φp9 ×cos9(Pθ−4π/3)・Ipcos(Pθ−4π/3)
=0
上記式からわかるように、3の奇数次調波のトルクリップルは0になるが、5次高調波と7次高調波のトルクリップルは6倍のトルクリップルで表現される。
したがって、6次のトルクリップルは5次高調波と1次電流の積および7次高調波と1次電流の積の和で表現できる。そして、一般に5次高調波成分値は7次高調波成分値よりも図6(a)から大きいため、5次高調波を減衰させることが重要である。
なお、1次電流はインバータによるPWM制御で電流波形ひずみの影響が考えられるがここでは理想的な正弦波電流と考えている。
【0014】
図7〜図9の表は極数とスロット数のコンビネーションによる5次の短節係数値表を示している。短節係数値とは、磁極ピッチ180度に対して、巻線ピッチを例えば150度とした時、
β=150/180=0.833
として、次式より計算される値を示す。
Kpν=sin(νβπ/2)
ただし、νは高調波の次数を表し、1,3,5,・・・で奇数調波。
図7の表において、左欄の数値はスロット数で、最上より2行目はスロット数9であり、以下下方に行くに従い3スロットづつ増え、最下行はスロット数87となっている。一方、最上行は極数を示し、左の8極から右へ行くに従い2極づつ増え、図7の表では右の24極で終っている。
図8の表はスロット数(行)は図7と同じで、極数(列)が図7の極数の続きを示している。すなわち、左の26極から右へ行くに従い2極づつ増え右の42極で終っている。
図9の表はスロット数(行)は図7、図8と同じで、極数(列)が図8の極数の続きを示し、44極から右の60極で終っている。
また、行と列も交差部は左右2つの欄で構成され、左欄の数値は1スロットピッチ当たりの電気角、右欄の数値は5次の短節係数値を示している。
したがって、図7〜図9の表はモータの誘起電圧波形の高次の空間高調波のうち先に問題となった5次成分を格段と減衰させる極数とスロット数の組み合わせを選ぶため、それらの全ての組み合わせをまとめて示したものである。
【0015】
図7〜図9および図10〜図12において、上下の太枠で囲まれた内部はスロットピッチが120°〜240°のいわゆる集中巻き構造部分を示している。
ここで基本波の短節係数βを90°、120°、240°、270°について求めると、
(1) 90°のβ:β= 90/180=0.5
→ sin(1×0.5×π/2)=0.7
(2)120°のβ:β=120/180=0.666
→ sin(1×0.666×π/2)=0.866
(3)240°のβ:β=240/180=1.333
→ sin(1×1.333×π/2)=0.866
(4)270°のβ:β=270/180=1.5
→ sin(1×1.5×π/2)=0.7
以上の計算結果から、短節係数βが90°〜270°の範囲を選ぶと、基本波の短節係数が0.7となり、基本波のトルク定数が30%も減少する。しかし短節係数βを120°〜240°の範囲を選ぶと、基本波の短節係数が0.86となり、基本波のトルク定数が14%に留めることが可能で、設計的に許容範囲である。したがってこの表では、スロットピッチが120°〜240°の集中巻きを選ぶこととしている。
【0016】
モータの極数とスロット数との組み合わせはスロット数をZ、極数をP(ただし、Pは10極以上とする。)とするとき、式(1)を満たすようにするのがよい。
【数3】
式(1)は、図7〜図9の中で、二重カッコで囲んだ部分を5つ毎のグループに分けて考えて、Z=f(P)の関数で表したものである。
例えば、図7において、{極数10でスロット数12、極数12でスロット数15、極数14でスロット数18、極数16でスロット数21、極数18でスロット数24}で1グループ、{極数20でスロット数24、極数22でスロット数27、極数24でスロット数30、極数26でスロット数33、極数28でスロット数36}で1グループ、{極数30でスロット数36、極数32でスロット数39、極数34でスロット数42、極数36でスロット数45、極数38でスロット数48}で1グループ、{極数40でスロット数48、極数42でスロット数51、極数44でスロット数54、極数46でスロット数57、極数48でスロット数60}で1グループ、・・・。このように5つ毎のグループに分けている。
【0017】
さらに、生産面も考慮する時、スロット数がより少ない方が有利であるので、その面でモータの極数とスロット数との前記組み合わせはスロット数をZ、極数をP(ただし、Pは14極以上とする。)とするとき、式(2)を満たすようにするのが式(1)よりもより有利となる。
【数4】
式(2)は、図7〜図9の中で、点線で囲んだ部分を4つ毎のグループに分けて考えて、Z=f(P)の関数で表したものである。そのとき、極数を14で除算した商の値を奇数、偶数で分けて表現することとした。例えば、図7において、{極数14でスロット数12、極数18でスロット数15、極数22でスロット数18、極数26でスロット数21}で奇数グループ、{極数28でスロット数24、極数32でスロット数27、極数30でスロット数30、極数40でスロット数33}で偶数グループ、{極数42でスロット数36、極数46でスロット数39、極数50でスロット数42、極数54でスロット数45}で奇数グループ、{極数56でスロット数48、極数60でスロット数51、極数64でスロット数54、極数68でスロット数57}で偶数グループ。このように4つ毎のグループに分けている。
【0018】
以上のように、図7〜図9において、本発明の実施の形態2に係る範囲(式1)は二重枠で、また実施の形態2の変形例に係る範囲(式2)は点線枠で示している。二重枠部分はスロットピッチの電気角が140°〜150°となる極数とスロット数の関係であり、点線枠はスロットピッチの電気角が210°〜220°となるような極数とスロット数の関係である。本発明の実施の形態2およびその変形例の範囲であれば、いずれも磁極ピッチ180°に対してその前段30°〜40°の間のスロットピッチが5次の高調波を減衰させる効果がある。
なお、式1と式2の違いは、式1がP<Zで極数がスロット数より少なく、式2がP>Zで極数がスロット数より多くなっている。式2の方が生産性の向上、巻線工数の低減で有利である。
このように、この範囲内のスロットコンビネーションを選ぶことで、5倍の空間高調波短節係数を0.3以下に抑えることが可能であり、6倍の低トルクリップル化が実現できる。
【0019】
また、図10〜図12の表は、極数とスロット数のコンビネーションで1スロットピッチの電気角と、このコンビネーションでのコギングトルクの出力次数を示している。
図10の表において、左欄の数値はスロット数で、最上より2行目はスロット数9であり、以下下方に行くに従い3スロットづつ増え、最下行はスロット数87となっている。一方、最上行は極数を示し、左の8極から右へ行くに従い2極づつ増え、図10の表では右の24極で終っている。
図11の表はスロット数(行)は図10と同じで、極数(列)が図10の極数の続きを示している。すなわち、左の26極から右へ行くに従い2極づつ増え右の42極で終っている。
図12の表はスロット数(行)は図10、図12と同じで、極数(列)が図11の極数の続きを示し、44極から右の60極で終っている。
また、行と列も交差部は左右2つの欄で構成され、左欄の数値は1スロットピッチ当たりの電気角、右欄の数値はコギングトルクの出力次数を示している。
したがって、図10〜図12の表は、スロット数と極数のコンビネーションで理論的なコギングトルクの出力次数を示しており、出力次数が高ければ高いほどよいことになる。
【0020】
図7〜図9および図10〜図12の表から、例えば(1)40極の48スロットと、(2)32極の39スロットを比較した場合、5倍の空間高調波の低減率はほぼ同等であるが((1)の40極の48スロットで0.258、(2)の32極の39スロットで0.16)、理論的なコギングトルクの周波数は前者が12倍であるのに対し後者は78倍と非常に高次数へ持っていくことが可能である。例えば、インバータ出力周波数が1Hzのとき、(1)は12Hzでコギングトルクの影響を受け、(2)は78Hzでコギングトルクの影響を受けることとなり、低い周波数でないことがメリットとなるので、後者が低コギングトルク化も同時に満たす好ましいスロットコンビネーションである。
【0021】
(発明の実施の形態3)
最後に、発明の実施の形態3である高トルク定数とポールセンサレスの両面を満たすモータ構造について説明する。
図1の空隙部の効果は固定子部のギャップ面を減少させることなく、d軸(直軸)、q軸(横軸)インダクタンスの飽和特性を積極的に活用するためのものである。一般的に、内磁型モータのインダクタンスは回転子と固定子の相対位置が変化すれば交番特性をもって変化するため、これを利用してポール位置を検出する技術は確立されつつある。
しかし、飽和させることは固定子のティース幅を狭くすることにより容易に実現できるが、集中巻き構造のモータは巻線に鎖交する磁束量がそのままティース幅の面積に依存することから、ギャップ面のティース幅をむやみに狭くすることはトルク定数の低下を招き、飽和特性とトルク定数アップの間にトレードオフの関係が成り立ち、何らかの工夫により両面を満たす構造を考える必要がある。
ティース幅とトルク定数の関係は以下の式により表現される。
巻線への鎖交磁束は式(3)で表現される。
Φ(θ) = Φmax cosθ ・・・・(3)
誘起電圧は式(4)で表現される。
【数5】
ここで式(3)、式(4)中のΦmaxは式(5)で表現される。
Φmax =21/2×Broot−mean×S×n ・・・・(5)
ただし、Broot−meanはギャップ表面の磁束密度の実効値で、nは巻数である。Sは巻線を巻いたティースのギャップ側表面積である。
この面積が大きいほどΦmaxが大きくなり誘起電圧が大きくなる。このことはスロットピッチをポールピッチに近づける設計を行う必要がある。しかし、ティース部の磁気飽和もポールセンサーレスに欠かせないためギャップ表面でなく奥の方へ図1に示す空隙を設け等価的にティースを細くしポールセンサーレス構造とトルク定数アップの両面特性を考慮する発明である。
【0022】
図13は、ティース部の空隙の有無によるインダクタンス分布を示す線図で、基準軸はU相巻線軸(あるいは磁石軸)を0°として、そこを基準にして電気角対インダクタンス値を示している。図1に示すモータに対してdq軸インダクタンスの有限要素解析結果である。図13において、0°、180°はU相巻線軸と磁石の極が一致していることを示し、180°は磁石がN極であり、言い換えれば減磁方向へ電流を流した場合を示し、逆に0°は磁石がS極であり、言い換えれば増磁方向へ電流を流した場合である。180°の方がティース部の磁気抵抗が下がり、磁束が透過しやすく、インダクダンスが0°の時よりも大きくなる。
図13の電気角はU相巻線軸と回転子のマグネット軸が一致したところを基準軸として0°とし、そこからir−refステップ指令を与えるようにする。
図14は発明の実施の形態3を実現する具体的な構成回路である。
図14において、電流指令ir−ref が与えられると、電圧指令Vr−ref に変換され、この電圧指令Vr−ref がipmモータに与えられる。
ipmモータでは、
Vr−ref = R・ir+L・dir /dt
なる式を満足する電流irが流れる。
インダクタンスLは位相(マグネットの位置)によって変化するから、位相を例えば10°毎に変化させて、irの応答が最も速いところがインダクタンスが最も小さいところなので、そこがマグネット位置であることが分かる。
このように発明の実施の形態3によれば、ポールセンサーを取りはずしても各相インダクタンスの交番性を利用してインダクタンスが最も小さいところを求めることで電源投入時のポール位置検出を行うことができることとなる。
【0023】
【発明の効果】
以上のように本発明は大きく分けて3つの実施の形態から成っている。
1)発明の実施の形態1は、真円度のばらつきによるコギングトルク比較とワンスタンプモータのコギングトルクに対する有用性に基づくもので、一体コアかつ完全オープンスロットの固定子の構造を提案して、製作上増加するインバータ周波数の2倍周期のコギングトルクを増加させないようにしている。
2)発明の実施の形態2は、インバータ出力周波数6倍トルクリップルのモータ構造による低減法に基づくもので、極数とスロット数の組合わせを最適に選択することにより、5次の空間高調波起磁力によるインバータ周波数の6倍のトルクリップルを減衰させ、かつコギングトルクを高次数へもっていくコンビネーションを提案した。
3)発明の実施の形態3は、高トルク定数とポールセンサレス両面を満たすもので、磁石モータの宿命であるポールセンサ実装に対し回転子側は磁石を鉄に埋め込む内磁型構造とし、固定子側は磁極ピッチにスロットピッチを近づけ、鎖交磁束を増やす工夫をし、ティースに空隙を設けることでインダクタンスの交番性と飽和性を利用してポールセンサのU,V,W相の信号を省くものである。これにより、ラインドライバ方式では6本もの信号を省くことができる。
このように構造上、軸方向にスペースがなく薄型構造が余儀なくされ低騒音、低振動も同時に満たすモータであって、その固定子側を集中巻きかつ回転子を内磁型で構成して、かつ、その工夫により駆動インターフェースであるエンコーダのコストダウンを実現する実用性の高いモータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るモータ(40極、48スロット)を示す図である。
【図2】図1の拡大図である。
【図3】真円度0(%)のコギングトルク解析モデルを示す図である。
【図4】真円度250(%)のコギングトルク解析モデルを示す図である。
【図5】真円度の違いによるコギングトルクの比較線図である。
【図6】ロータ形状の違いによる起磁力ギャップ空間高調波形状を示すもので、(a)は図2の凸極円弧形状のロータ、(b)は同芯形状のロータを示している。
【図7】スロットコンビネーションによる5次の短節係数値表(その1)である。
【図8】図7に5次の続く短節係数値表(その2)である。
【図9】図8に続く5次の短節係数値表(その3)である。
【図10】スロットコンビネーションにコギングトルク次数値表(その1)である。
【図11】図10に続くコギングトルク次数値表(その2)である。
【図12】図10に続くコギングトルク次数値表(その3)である。
【図13】図1のティース部の空隙の有無によるインダクタンス分布磁界解析結果を示す線図である。
【図14】発明の実施の形態3を実現する具体的な構成回路である。
【符号の説明】
1 回転子部
2 マグネット部
3 固定子コア部
4 コイル部
5 シャフト部
6 空隙部
7 ティース部
8 ウェッジ挿入部
9 ロータ外径部
10 固定子部
11 オープニング(ラジアルギャップ)
13 回転子鉄芯(コア)
To オープニング距離
T1 スロットピッチ
T2 ティース幅
Claims (8)
- 磁石を備えた回転子と、コイルをラジアルギャップ内に備えた固定子とから成るダイレクトドライブモータにおいて、前記磁石を前記回転子の鉄芯内に埋め込んだ内磁型回転子としたことを特徴とする薄型ダイレクトドライブモータ。
- 前記モータに対し前記コイルを前記固定子の1つのティースに巻きつけたことを特徴とする請求項1記載の薄型ダイレクトドライブモータ。
- 前記固定子を構成するコアはオープニング形状の一体製造コアであり、かつ該オープニング距離はスロットピッチ幅からティース幅を差し引いた距離を有することにより真円度を限りなく0に近づけることが可能となることを特徴とする請求項1又は2記載の薄型ダイレクトドライブモータ。
- 前記固定子ティース内に空隙を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の薄型ダイレクトドライブモータ。
- 前記モータの極数とスロット数との関係は固定子スロットピッチの電気角が120°〜240°となる組み合わせからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の薄型ダイレクトドライブモータ。
- 前記内磁型回転子の磁気特性である各相インダクタンスの交番性を利用することにより電源投入時のポール位置検出を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の薄型ダイレクトドライブモータ。
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