JP2004056307A - 分散マネージメント光伝送路 - Google Patents
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Abstract
【課題】高速大容量伝送に適した低非線形の分散マネージメント伝送路をを提供すること。
【解決手段】
1550nmにおいて正分散を有する少なくとも1つの正分散ファイバと、同波長において負分散を有する少なくとも1つの負分散ファイバとを含み、前記負分散ファイバの1550nmにおける伝送損失が、前記正分散ファイバの同波長における伝送損失よりも低いことを特徴とする。
【選択図】 図7
【解決手段】
1550nmにおいて正分散を有する少なくとも1つの正分散ファイバと、同波長において負分散を有する少なくとも1つの負分散ファイバとを含み、前記負分散ファイバの1550nmにおける伝送損失が、前記正分散ファイバの同波長における伝送損失よりも低いことを特徴とする。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散マネージメント光伝送路に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ECOC’97 Vol.1 P127に記載されているような、シングルモードファイバ(SMF)と逆分散特性を有する逆分散ファイバ(RDF)と呼ばれる線路型の分散補償ファイバが、低非線形な分散及び分散スロープ補償ファイバとして盛んに検討されている。このSMFとRDFの組合せ(SMF+RDF)を用いた、10Gb/sベースの長距離伝送実験が盛んに行われ、報告されている。
【0003】
また、最近では、ECOC’00 2−4−2にあるように、SMFやRDFよりも局所分散を抑制したMDFと呼ばれるファイバが、40Gb/s伝送に対応するためのファイバとして提案されている。
【0004】
このSMF+RDFやMDFのような伝送路は、分散マネージメント線路と呼ばれ、トータルで分散が非常にフラットに抑制可能な伝送路として、注目されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般的には、負分散ファイバの非線形性は、正分散ファイバに比べてかなり大きいため、負分散ファイバの非線形現象は大きな問題となる。正分散ファイバの損失は小さいので、比較的大きなパワーが負分散ファイバに入力されており、それが大きな非線形性を生じる原因となっていたが、負分散ファイバの分散や非線形性を調整することでしか、検討がなされてこなかった。
【0006】
よって、今までの発想を逆転し、正分散ファイバの伝送損失を負分散ファイバの伝送損失よりも大きくすることで、この問題の解決を図ることが考えられる。
【0007】
従来型のSMF+RDF(分散:−20)、Aeff拡大SMF(SMF−E)+分散拡大RDF(分散:−40)、およびP−MDF+N−MDFの各ファイバの1550nmにおける特性を下記表1に示す。いずれの線路も、正分散ファイバと負分散ファイバの分散特性が逆になっている。
【0008】
【表1】
【0009】
上記表1から明らかなように、正分散ファイバに比べて負分散ファイバのAeffはかなり小さく、損失は大きくなっていることが分かる。従来はこのような特性が通常であった。
【0010】
50km線路を仮定した場合の上記ファイバのトータル特性を下記表2に示す。ここで、非線形歪みとは、光ファイバの非線形性×光密度(入力されるパワーの面積を積分で求めたもの)から計算された値である。図6に非線形歪みを求める模式図を示す。
【0011】
【表2】
【0012】
上記表2から、従来型のSMF+RDFに比べて、SMF−E+RDF−40では伝送損失や非線形歪み特性が、P−MDF+N−MDFでは、伝送損失、非線形歪み、累積分散特性などが一応は改善されてはいる。しかし、更に特性を改善することが望まれる。
【0013】
本発明は、このような事情の下になされ、高速大容量伝送に適した低非線形の分散マネージメント伝送路を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、1550nmにおいて正分散を有する少なくとも1つの正分散ファイバと、同波長において負分散を有する少なくとも1つの負分散ファイバとを含み、前記負分散ファイバの1550nmにおける伝送損失が、前記正分散ファイバの同波長における伝送損失よりも低いことを特徴とする分散マネージメント光伝送路を提供する。
【0015】
以上のように構成される本発明によると、高速大容量伝送に適した低非線形の分散マネージメント伝送路の提供が可能となった。
【0016】
本発明の分散マネ−ジメント光伝送路の望ましい構成として、以下のものを挙げることが出来る。
(1)1550nmにおけるトータル線路の伝送損失が0.30dB/km以下であること。
【0017】
(2)1550nmにおけるトータル線路の分散値が−5.0〜5.0ps/nm/km、分散スロープが−0.06〜0.06ps/nm2/kmであること。
【0018】
(3)前記正分散ファイバの1550nm帯の伝送損失が0.35dB/km以下であり、前記負分散ファイバの同帯域における伝送損失が0.30dB/km以下であること。
【0019】
(4)前記正分散ファイバの1550nmにおける実効断面積(Aeff)が70μm2以上、前記負分散ファイバの1550nmにおける実効断面積(Aeff)が20μm2以上であること。
【0020】
(5)前記正分散ファイバおよび負分散ファイバのカットオフ波長(λc)が1550nm以下、直径20mmφでの曲げ損失が20dB/m以下であること。
【0021】
(6)前記正分散ファイバおよび負分散ファイバの偏波モード分散(PMD)が0.2ps/km1/2以下であること。
【0022】
(7)前記正分散ファイバが、凹ガイド構造(図1)、凹+階段型構造(図2)、凹+セグメントコア型構造(図3)、およびダブル凹ガイド型構造(図4)からなる群から選ばれた屈折率プロファイルを有すること。
【0023】
(8)前記負分散ファイバがW+セグメントコア型の屈折率プロファイル(図5)を有すること。
【0024】
(9)前記正分散ファイバまたは負分散ファイバのクラッドの屈折率が、シリカの屈折率より低いこと。
【0025】
(10)前記負分散ファイバをラマン増幅媒体として用いること。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態に係る分散マネージメント光伝送路について、より詳細に説明する。
正分散ファイバとしてAeff拡大SMF(SMF−E)、負分散ファイバとして分散拡大RDF(分散:−40)を用いた、平均損失0.207dB/kmの線路の50kmスパンについて、線路トータルの伝送損失を変えずに、正分散ファイバの損失を大きくしていった場合(負分散ファイバの伝送損失を小さくしていった場合)の、非線形歪みの変化を図7に示す。
【0027】
図7のグラフの右下にある□で囲んだ領域では、負分散ファイバの損失の方が、正分散ファイバの損失よりも小さくなっている。そして、規格化非線形歪みも、規格値(正分散ファイバの損失が0.18dB/kmの時を1とした場合)の90%程度まで抑制されていることが分かる。従って、負分散ファイバの損失を下げることが出来れば、正分散ファイバの損失が上がっても、トータルの伝送損失を同じレベルに維持することができ、かつ相対的な非線形歪みを抑制することが可能である。
【0028】
本発明は、このような正分散ファイバの損失よりも負分散ファイバの損失の方が小さい領域を、非線形歪みに有利な領域として用いるものである。
【0029】
一般的に、負分散ファイバは、正分散ファイバに比べて、非線形性が高いため、比較的損失の高い正分散ファイバを用いることで、光を十分弱め、高非線形なファイバである負分散ファイバに入射させるのが、本発明の原理である。もちろん、正分散の損失を大きくすることで非線形現象を抑制すると言っても、全体の損失が大きければ、その分大きなパワーを入射する必要があり、結局は高非線形になってしまう。従って、トータルの伝送損失を0.30dB/km以下とすることが望ましい。
【0030】
しかし、正分散ファイバの損失が大きいことが非線形性に有利とはいえ、正分散ファイバの損失があまりにも高すぎると、全体で損失を0.30dB/km以下にすることが困難となる。従って、正分散ファイバの損失を0.35dB/km以下とし、負分散ファイバの損失を0.30dB/km以下とし、正分散ファイバと負分散ファイバをあわせた時に、トータルの伝送損失を0.30dB/km以下になるようにすることが望ましい。
【0031】
また、分散マネージメント線路は、トータルで分散制御が可能なことが大きな特徴なので、トータル線路での分散および分散スロープが、従来型NZ−DSFよりも抑制されていることが望ましい。よって、1550nmにおける分散が±5ps/nm/km以内、分散スロープが0.06ps/nm2/km以下であることが望ましい。
【0032】
もちろん、非線形現象抑制のために損失を最適化しても、ファイバ自体の非線形性が高くては、意味が無くなってしまう。よって、正分散ファイバのAeffが70μm2以上、負正分散ファイバのAeffが20μm2以上であることが望ましい。Aeffは、大きければ大きいほど好ましい。
【0033】
更に、カットオフ波長λcが信号光波長よりも長波長側にあると、伝搬する光がシングルモード条件を満たさなくなるので、λcは1550nm以下であることが望ましい。更にまた、曲げ損失が大きい場合には、ケーブル化時の伝送損失増など深刻な問題を引き起こすので、1590nmにおける20mmφでの曲げ損失は、20dB/m以下であることが望ましい。曲げ損失をこのように抑えることにより、ケーブル化の際の構造による損失の増加を抑制することが可能である。
【0034】
また、高速伝送時には、偏波モード分散(PM)の値も非常に重要である。PMDの値が大きいと、偏波分散による波形歪みが顕著になるためである。高速伝送においては、その影響がより一層顕著になる。そこで、PMDは、0.2ps/km1/2以下であることが望ましい。もちろん、このPMDの値も小さければ小さいほど望ましい。
【0035】
正分散ファイバとしては、図1〜図4に示すような、センターにディプレスト層1を有する屈折率プロファイルの構造を有するファイバが、分散値を低く維持しつつ、Aeffを拡大するのに有利であるので望ましい。例えば、このような屈折率プロファイルを用いることで、低非線形の前段ファイバを構成することが可能である。
【0036】
しかし、一般的に、このような屈折率プロファイルの構造では、Δ+の値が大きくなり、伝送損失が大きめの値になりやすい。しかし、それを低損失の負分散ファイバで平均化すれば、線路の伝送損失を低い値に保つことが可能なだけでなく、更に低非線形化が可能となる。もちろん、正分散ファイバの屈折率プロファイルはこのようなセンターにディプレスト層1を有するものに限ったものではなく、上述した特性を満たすものであれば、どのようなタイプのものでもよい。
【0037】
センターディプレスト構造を有する各種ファイバのシミュレーション特性の最適化の結果を下記表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
しかしながら、いずれもΔ+が0.6%以上と高い値を有しており、一般的には、損失が大きくなってしまう。これに対して、負分散ファイバの伝送損失を低減することで伝送路の伝送損失を低いレベルに維持し、かつ非線形性を抑制するのが本発明の主題でもあるが、正分散ファイバの伝送損失が0.35dB/km以上になると、上述したように、全体の損失が大きくなりすぎてしまう。そこで、正分散ファイバのクラッドレベルをシリカレベルよりも下げることが、一つの有効な手段である。
【0040】
図8に通常のシリカクラッド2を用いた場合(a)と、−0.3%のディプレストクラッド3を用いた場合(b)のタイプ01−1の屈折率プロファイルを示すが、△+(伝送損失)を抑制するためには、ディプレストクラッド構造が有利であることが分かる。
【0041】
次に、本発明の主題である負分散ファイバの低損失化について検討する。一般的に、伝送損失は、Δ+の値に大きく依存するので、Δ+を小さくすることが、低損失化のために必要である。低損失化のための手段としては、分散を最適化する方法と、屈折率プロファイルのΔを相対的に下げる方法の2つがある。以下、各々について、説明する。
【0042】
まず、分散を最適化する方法について検討する。図9に、W型屈折率プロファイルを有する一般的な負分散ファイバのΔ1と分散および伝送損失との関係を示す。
【0043】
図9に示すように、一般的に、Δ1を小さくしていくと、伝送損失を低くすることが可能である。それと同時に、分散値も低くなっていく。正分散ファイバの損失が大きい場合には、伝送損失が低く、分散絶対値が小さいファイバを使う(負分散ファイバの条長比を長くする)ことは、トータルの伝送損失の低減に大きな意味がある。
【0044】
それ以外に、分散絶対値を小さくすることは、スパンの最大累積分散を減らすことにも効果があり、有効な手段である。しかし、W型の屈折率プロファイルでは、Δ1が余りにも小さくなってしまうと、マクロおよびミクロのベンディングロスが乗ってしまい、伝送損失が十分に下がりきらない傾向にある。
【0045】
従って、図5に示すような、セグメントコア層4を有するW+セグメントコア型の屈折率プロファイルが、低損失化には有効である。ただし、システムの要求によって、損失が許容される場合には、W型の屈折率プロファイルを用いても、何ら問題はない。Δ1を同一とし、W型とW+セグメントコア型の屈折率プロファイルを用いて負分散ファイバを作製した場合の伝送損失を図10に示す。
【0046】
図10に示すように、W+セグメントコア型では、セグメントコア層4が曲げ損失抑制効果を有しており、特に、曲げ損失の影響が顕著なΔ1が低いところで、伝送損失に差が生じていることが分かる。
【0047】
本発明の特徴は、負分散ファイバの損失を正分散ファイバよりも下げると言うことなので、Δ1が小さなW+セグメントコア型屈折率プロファイルを用いるのが有利であることが分かる。マクロ、およびミクロの曲げ損失の影響を受けない限りは、Δ1が低ければ低いほど有利である。
【0048】
分散絶対値が小さい領域でそのような解が得られると考えられ、それが一つの解決手段と思われる。例えば、分散のターゲットを−10ps/nm/kmにして最適化された屈折率プロファイルの特性例を、下記表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
上記表4に示すように、分散値−10ps/nm/km程度の、負分散および負分散スロープの負分散ファイバが、非常に低いΔを維持しながら得られている。これにより、低損失特性の負分散ファイバが期待できる。更に特筆すべきことは、どのファイバも、Aeffが35μm2以上になっており、負分散ファイバ自体の非線形性が低減されていることである。これにより、分散を抑制することで、低損失および低非線形のファイバを達成可能であることが分かる。
【0051】
もちろん、分散値は、−15、−20、−25ps/nm/kmと絶対値の大きいものでも良いが、その分、図10に示すように、損失が上がる傾向にあるので、正分散ファイバの伝送損失を超えない範囲で、大きくすることが重要である。なお、屈折率プロファイルは、このW+セグメントコア型に限定されるものではなく、W+セグメントコア層の外側に更にサイドコア層を有するもの等でもよい。
【0052】
そのような多層構造を用いることで、更に特性の改善を行うことが可能である。表5に、そのような多層構造を用いたファイバの特性シミュレーションの結果を示す。分散のターゲットは、やはり−10ps/nm/kmとした。
【0053】
【表5】
【0054】
以上の結果、W+セグメントコア型、あるいはその外側に更に多層を有する構造の屈折率プロファイルを用いることにより、Δ1の小さな負分散・負分散スロープファイバが、大きなAeffで達成できることが分かった。このように、負分散ファイバは、分散値を小さく設定することで(例えば、−10〜−25ps/nm/km)、正分散ファイバよりも低い比屈折率差Δで良好な特性を達成することが可能となり、正分散ファイバよりも低い損失が期待できることとなった。よって、トータル線路で、低損失を維持しつつ、更に低非線形化が可能となった。
【0055】
しかしながら、上記の方法では、分散が小さい負分散ファイバでしか、この手法を用いることが出来ない。SMF−E+RDF−45の特性例に示したように、分散絶対値の大きな負分散ファイバを用いた分散マネージ線路も盛んに検討されているため、このようなファイバにおいても、この手法が使用できると、非常に好ましい。よって、この第2の手法を用いることで、このような分散絶対値の大きな負分散ファイバに対する解決策を以下に示す。
【0056】
この手法は、正分散ファイバのところで示したのと同様に、負分散ファイバに関しても、ディプレスト型クラッドを用いる手法である。クラッドをディプレスト層にすることで、伝送損失に最も大きな影響を与えるΔ1の値を、相対的に下げることが可能である。この第2の手法を用いることで、比較的高い伝送損失を有する高分散型の負分散ファイバも、小さな伝送損失に抑えることが可能となる。図11にこの手法の概念図を示す。
【0057】
図11(a)から図11(b)に示すように、クラッド部をディプレスト層にすることで、同じプロファイルを維持しながら、Δ1の値を相対的に下げることが可能となる。こうすることで、大きな分散絶対値を維持しながら、伝送損失を低減することも可能である。ただし、絶対値の大き過ぎるディプレスト層(特にΔ2)を有していると、逆に損失が大きくなってしまう可能性もあるので、適切なクラッドの比屈折率差Δを決定することが重要である。
【0058】
以上のように、本発明によると、分散マネージメント線路の正分散ファイバの損失を負分散ファイバよりも大きくすることにより、Aeffの拡大、n2の低減や線路損失の低減以外の手段によって、伝送路を低非線形化することが可能となった。
【0059】
実施例
以下、本発明の実施例を示し、本発明の有効性を確認する。
シミュレーション結果の中で、最もAeffが拡大された結果を示す上記表3のType04−1(正分散ファイバ)と上記表5のType04(負分散ファイバ)を例に取り、シミュレーション結果を参考に試作を行った。試作結果を下記表6に示す。
【0060】
【表6】
【0061】
上記表6に示すように、負分散ファイバの伝送損失の方が正分散ファイバの伝送損失よりも抑制されている。これにより、トータル線路での低非線形特性を更に期待することができる。いずれのファイバもAeffが大きいことから、トータル線路では、かなりの低非線形化が図られている。
【0062】
しかしながら、トータル線路の伝送損失は、0.25dB/km程度と、許容範囲ではあるが、若干高い伝送損失であることは否めない。これは、正分散ファイバが、0.8%と高い比屈折率差Δを有していることが主要因と思われる。そこで、図8(a)に示す屈折率プロファイルを採用し、クラッド層の比屈折率差Δを−0.3%のディプレストクラッドにし、△+を0.5%まで下げて伝送損失を下げることにした。試作結果を下記表7に示す。
【0063】
【表7】
【0064】
上記表7に示すように、ディプレストクラッドを採用することで、伝送損失を0.245dB/km程度まで抑制することが出来た。線路トータルの伝送損失は0.227dB/kmと、低損失の特性を達成している。トータルの伝送損失を0.227dB/kmに一定とし、正分散ファイバの損失を変化させていった場合の、線路トータルの非線形特性の変化を図12に示す。
【0065】
図12に示すように、やはり、正分散ファイバの伝送損失を高くし、負分散ファイバの伝送損失を低くしていくと、非線形波形歪みの程度が抑制されていくことが分かる。このように、負分散ファイバの伝送損失が正分散ファイバの伝送損失よりも低い領域で、更に低非線形化が可能であることが分かった。
【0066】
次に、上記表7に示す正分散ファイバと組み合わせるための高分散スロープ型ファイバとして、分散値−60ps/nm/kmを有する負分散ファイバを試作した。その屈折率プロファイルと特性を下記表8に示す。
【0067】
【表8】
【0068】
上記表8に示すように、この負分散ファイバでは、分散値を大きくするために、Δ1=1.3%と比屈折率差が比較的高めのコアを用いている。そのため、伝送損失は、0.255dB/kmと高めの値になっている。トータルの損失を下げるためには、正分散ファイバ、または、負分散ファイバの損失を下げる必要があるが、既に述べたように、出来るだけ負分散ファイバの損失を下げることが重要である。
【0069】
このような負分散ファイバとして、図11(b)に示す屈折率プロファイルを有するものを用いた。この負分散ファイバは、図11(a)と同形状の屈折率プロファイルであるが、Δ3=−0.2%のクラッドを用い、全体のΔを−0.2%下げたものである。この負分散ファイバの試作結果を下記表9に示す。
【0070】
【表9】
【0071】
上記表9に示すように、高分散型負分散ファイバにおいても、クラッドの屈折率レベルを最適化することにより、正分散ファイバよりも低損失化を図れることが分かった。もちろん、正分散ファイバの損失も負分散ファイバの損失も、更に低いことが望ましいが、トータルで同損失の場合は、このような負分散ファイバが低損失化されている構成が有利である。
【0072】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によると、高速大容量伝送に適した低非線形の分散マネージメント伝送路を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る光伝送路に用いる光ファイバの凹ガイド型屈折率プロファイルを示す図。
【図2】本発明の他の実施形態に係る光伝送路に用いる光ファイバの凹+階段型屈折率プロファイルを示す図。
【図3】本発明の他の実施形態に係る光伝送路に用いる光ファイバの凹+セグメントコア型屈折率プロファイルを示す図。
【図4】本発明の他の実施形態に係る光伝送路に用いる光ファイバのダブル凹ガイド型プロファイルを示す図。
【図5】本発明の他の実施形態に係る光伝送路に用いる光ファイバのW+セグメントコア型プロファイルを示す図。
【図6】光ファイバの非線形歪みを求める模式図。
【図7】分散マネージメント線路の伝送損失と非線形歪みとの関係を示す特性図。
【図8】タイプ01−1の通常のシリカクラッドを用いた場合(a)と、ディプレストクラッドを用いた場合(b)の屈折率プロファイルを示す図。
【図9】W型屈折率プロファイルを有する一般的な負分散ファイバのΔ1と分散および伝送損失との関係を示す特性図。。
【図10】Δ1を同一とし、W型とW+セグメントコア型の屈折率プロファイルを用いて負分散ファイバを作製した場合の伝送損失を示す特性図。
【図11】クラッドをディプレスト層にすることで高分散型の負分散ファイバの伝送損失を抑制する手法の概念図。
【図12】トータルの伝送損失を一定とし、正分散ファイバの損失を変化させた場合の線路トータルの非線形特性の変化を示す特性図。
【符号の説明】
1・・・センタディプレスト層
2・・・シリカクラッド
3・・・ディプレストクラッド
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散マネージメント光伝送路に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ECOC’97 Vol.1 P127に記載されているような、シングルモードファイバ(SMF)と逆分散特性を有する逆分散ファイバ(RDF)と呼ばれる線路型の分散補償ファイバが、低非線形な分散及び分散スロープ補償ファイバとして盛んに検討されている。このSMFとRDFの組合せ(SMF+RDF)を用いた、10Gb/sベースの長距離伝送実験が盛んに行われ、報告されている。
【0003】
また、最近では、ECOC’00 2−4−2にあるように、SMFやRDFよりも局所分散を抑制したMDFと呼ばれるファイバが、40Gb/s伝送に対応するためのファイバとして提案されている。
【0004】
このSMF+RDFやMDFのような伝送路は、分散マネージメント線路と呼ばれ、トータルで分散が非常にフラットに抑制可能な伝送路として、注目されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般的には、負分散ファイバの非線形性は、正分散ファイバに比べてかなり大きいため、負分散ファイバの非線形現象は大きな問題となる。正分散ファイバの損失は小さいので、比較的大きなパワーが負分散ファイバに入力されており、それが大きな非線形性を生じる原因となっていたが、負分散ファイバの分散や非線形性を調整することでしか、検討がなされてこなかった。
【0006】
よって、今までの発想を逆転し、正分散ファイバの伝送損失を負分散ファイバの伝送損失よりも大きくすることで、この問題の解決を図ることが考えられる。
【0007】
従来型のSMF+RDF(分散:−20)、Aeff拡大SMF(SMF−E)+分散拡大RDF(分散:−40)、およびP−MDF+N−MDFの各ファイバの1550nmにおける特性を下記表1に示す。いずれの線路も、正分散ファイバと負分散ファイバの分散特性が逆になっている。
【0008】
【表1】
【0009】
上記表1から明らかなように、正分散ファイバに比べて負分散ファイバのAeffはかなり小さく、損失は大きくなっていることが分かる。従来はこのような特性が通常であった。
【0010】
50km線路を仮定した場合の上記ファイバのトータル特性を下記表2に示す。ここで、非線形歪みとは、光ファイバの非線形性×光密度(入力されるパワーの面積を積分で求めたもの)から計算された値である。図6に非線形歪みを求める模式図を示す。
【0011】
【表2】
【0012】
上記表2から、従来型のSMF+RDFに比べて、SMF−E+RDF−40では伝送損失や非線形歪み特性が、P−MDF+N−MDFでは、伝送損失、非線形歪み、累積分散特性などが一応は改善されてはいる。しかし、更に特性を改善することが望まれる。
【0013】
本発明は、このような事情の下になされ、高速大容量伝送に適した低非線形の分散マネージメント伝送路を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、1550nmにおいて正分散を有する少なくとも1つの正分散ファイバと、同波長において負分散を有する少なくとも1つの負分散ファイバとを含み、前記負分散ファイバの1550nmにおける伝送損失が、前記正分散ファイバの同波長における伝送損失よりも低いことを特徴とする分散マネージメント光伝送路を提供する。
【0015】
以上のように構成される本発明によると、高速大容量伝送に適した低非線形の分散マネージメント伝送路の提供が可能となった。
【0016】
本発明の分散マネ−ジメント光伝送路の望ましい構成として、以下のものを挙げることが出来る。
(1)1550nmにおけるトータル線路の伝送損失が0.30dB/km以下であること。
【0017】
(2)1550nmにおけるトータル線路の分散値が−5.0〜5.0ps/nm/km、分散スロープが−0.06〜0.06ps/nm2/kmであること。
【0018】
(3)前記正分散ファイバの1550nm帯の伝送損失が0.35dB/km以下であり、前記負分散ファイバの同帯域における伝送損失が0.30dB/km以下であること。
【0019】
(4)前記正分散ファイバの1550nmにおける実効断面積(Aeff)が70μm2以上、前記負分散ファイバの1550nmにおける実効断面積(Aeff)が20μm2以上であること。
【0020】
(5)前記正分散ファイバおよび負分散ファイバのカットオフ波長(λc)が1550nm以下、直径20mmφでの曲げ損失が20dB/m以下であること。
【0021】
(6)前記正分散ファイバおよび負分散ファイバの偏波モード分散(PMD)が0.2ps/km1/2以下であること。
【0022】
(7)前記正分散ファイバが、凹ガイド構造(図1)、凹+階段型構造(図2)、凹+セグメントコア型構造(図3)、およびダブル凹ガイド型構造(図4)からなる群から選ばれた屈折率プロファイルを有すること。
【0023】
(8)前記負分散ファイバがW+セグメントコア型の屈折率プロファイル(図5)を有すること。
【0024】
(9)前記正分散ファイバまたは負分散ファイバのクラッドの屈折率が、シリカの屈折率より低いこと。
【0025】
(10)前記負分散ファイバをラマン増幅媒体として用いること。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態に係る分散マネージメント光伝送路について、より詳細に説明する。
正分散ファイバとしてAeff拡大SMF(SMF−E)、負分散ファイバとして分散拡大RDF(分散:−40)を用いた、平均損失0.207dB/kmの線路の50kmスパンについて、線路トータルの伝送損失を変えずに、正分散ファイバの損失を大きくしていった場合(負分散ファイバの伝送損失を小さくしていった場合)の、非線形歪みの変化を図7に示す。
【0027】
図7のグラフの右下にある□で囲んだ領域では、負分散ファイバの損失の方が、正分散ファイバの損失よりも小さくなっている。そして、規格化非線形歪みも、規格値(正分散ファイバの損失が0.18dB/kmの時を1とした場合)の90%程度まで抑制されていることが分かる。従って、負分散ファイバの損失を下げることが出来れば、正分散ファイバの損失が上がっても、トータルの伝送損失を同じレベルに維持することができ、かつ相対的な非線形歪みを抑制することが可能である。
【0028】
本発明は、このような正分散ファイバの損失よりも負分散ファイバの損失の方が小さい領域を、非線形歪みに有利な領域として用いるものである。
【0029】
一般的に、負分散ファイバは、正分散ファイバに比べて、非線形性が高いため、比較的損失の高い正分散ファイバを用いることで、光を十分弱め、高非線形なファイバである負分散ファイバに入射させるのが、本発明の原理である。もちろん、正分散の損失を大きくすることで非線形現象を抑制すると言っても、全体の損失が大きければ、その分大きなパワーを入射する必要があり、結局は高非線形になってしまう。従って、トータルの伝送損失を0.30dB/km以下とすることが望ましい。
【0030】
しかし、正分散ファイバの損失が大きいことが非線形性に有利とはいえ、正分散ファイバの損失があまりにも高すぎると、全体で損失を0.30dB/km以下にすることが困難となる。従って、正分散ファイバの損失を0.35dB/km以下とし、負分散ファイバの損失を0.30dB/km以下とし、正分散ファイバと負分散ファイバをあわせた時に、トータルの伝送損失を0.30dB/km以下になるようにすることが望ましい。
【0031】
また、分散マネージメント線路は、トータルで分散制御が可能なことが大きな特徴なので、トータル線路での分散および分散スロープが、従来型NZ−DSFよりも抑制されていることが望ましい。よって、1550nmにおける分散が±5ps/nm/km以内、分散スロープが0.06ps/nm2/km以下であることが望ましい。
【0032】
もちろん、非線形現象抑制のために損失を最適化しても、ファイバ自体の非線形性が高くては、意味が無くなってしまう。よって、正分散ファイバのAeffが70μm2以上、負正分散ファイバのAeffが20μm2以上であることが望ましい。Aeffは、大きければ大きいほど好ましい。
【0033】
更に、カットオフ波長λcが信号光波長よりも長波長側にあると、伝搬する光がシングルモード条件を満たさなくなるので、λcは1550nm以下であることが望ましい。更にまた、曲げ損失が大きい場合には、ケーブル化時の伝送損失増など深刻な問題を引き起こすので、1590nmにおける20mmφでの曲げ損失は、20dB/m以下であることが望ましい。曲げ損失をこのように抑えることにより、ケーブル化の際の構造による損失の増加を抑制することが可能である。
【0034】
また、高速伝送時には、偏波モード分散(PM)の値も非常に重要である。PMDの値が大きいと、偏波分散による波形歪みが顕著になるためである。高速伝送においては、その影響がより一層顕著になる。そこで、PMDは、0.2ps/km1/2以下であることが望ましい。もちろん、このPMDの値も小さければ小さいほど望ましい。
【0035】
正分散ファイバとしては、図1〜図4に示すような、センターにディプレスト層1を有する屈折率プロファイルの構造を有するファイバが、分散値を低く維持しつつ、Aeffを拡大するのに有利であるので望ましい。例えば、このような屈折率プロファイルを用いることで、低非線形の前段ファイバを構成することが可能である。
【0036】
しかし、一般的に、このような屈折率プロファイルの構造では、Δ+の値が大きくなり、伝送損失が大きめの値になりやすい。しかし、それを低損失の負分散ファイバで平均化すれば、線路の伝送損失を低い値に保つことが可能なだけでなく、更に低非線形化が可能となる。もちろん、正分散ファイバの屈折率プロファイルはこのようなセンターにディプレスト層1を有するものに限ったものではなく、上述した特性を満たすものであれば、どのようなタイプのものでもよい。
【0037】
センターディプレスト構造を有する各種ファイバのシミュレーション特性の最適化の結果を下記表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
しかしながら、いずれもΔ+が0.6%以上と高い値を有しており、一般的には、損失が大きくなってしまう。これに対して、負分散ファイバの伝送損失を低減することで伝送路の伝送損失を低いレベルに維持し、かつ非線形性を抑制するのが本発明の主題でもあるが、正分散ファイバの伝送損失が0.35dB/km以上になると、上述したように、全体の損失が大きくなりすぎてしまう。そこで、正分散ファイバのクラッドレベルをシリカレベルよりも下げることが、一つの有効な手段である。
【0040】
図8に通常のシリカクラッド2を用いた場合(a)と、−0.3%のディプレストクラッド3を用いた場合(b)のタイプ01−1の屈折率プロファイルを示すが、△+(伝送損失)を抑制するためには、ディプレストクラッド構造が有利であることが分かる。
【0041】
次に、本発明の主題である負分散ファイバの低損失化について検討する。一般的に、伝送損失は、Δ+の値に大きく依存するので、Δ+を小さくすることが、低損失化のために必要である。低損失化のための手段としては、分散を最適化する方法と、屈折率プロファイルのΔを相対的に下げる方法の2つがある。以下、各々について、説明する。
【0042】
まず、分散を最適化する方法について検討する。図9に、W型屈折率プロファイルを有する一般的な負分散ファイバのΔ1と分散および伝送損失との関係を示す。
【0043】
図9に示すように、一般的に、Δ1を小さくしていくと、伝送損失を低くすることが可能である。それと同時に、分散値も低くなっていく。正分散ファイバの損失が大きい場合には、伝送損失が低く、分散絶対値が小さいファイバを使う(負分散ファイバの条長比を長くする)ことは、トータルの伝送損失の低減に大きな意味がある。
【0044】
それ以外に、分散絶対値を小さくすることは、スパンの最大累積分散を減らすことにも効果があり、有効な手段である。しかし、W型の屈折率プロファイルでは、Δ1が余りにも小さくなってしまうと、マクロおよびミクロのベンディングロスが乗ってしまい、伝送損失が十分に下がりきらない傾向にある。
【0045】
従って、図5に示すような、セグメントコア層4を有するW+セグメントコア型の屈折率プロファイルが、低損失化には有効である。ただし、システムの要求によって、損失が許容される場合には、W型の屈折率プロファイルを用いても、何ら問題はない。Δ1を同一とし、W型とW+セグメントコア型の屈折率プロファイルを用いて負分散ファイバを作製した場合の伝送損失を図10に示す。
【0046】
図10に示すように、W+セグメントコア型では、セグメントコア層4が曲げ損失抑制効果を有しており、特に、曲げ損失の影響が顕著なΔ1が低いところで、伝送損失に差が生じていることが分かる。
【0047】
本発明の特徴は、負分散ファイバの損失を正分散ファイバよりも下げると言うことなので、Δ1が小さなW+セグメントコア型屈折率プロファイルを用いるのが有利であることが分かる。マクロ、およびミクロの曲げ損失の影響を受けない限りは、Δ1が低ければ低いほど有利である。
【0048】
分散絶対値が小さい領域でそのような解が得られると考えられ、それが一つの解決手段と思われる。例えば、分散のターゲットを−10ps/nm/kmにして最適化された屈折率プロファイルの特性例を、下記表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
上記表4に示すように、分散値−10ps/nm/km程度の、負分散および負分散スロープの負分散ファイバが、非常に低いΔを維持しながら得られている。これにより、低損失特性の負分散ファイバが期待できる。更に特筆すべきことは、どのファイバも、Aeffが35μm2以上になっており、負分散ファイバ自体の非線形性が低減されていることである。これにより、分散を抑制することで、低損失および低非線形のファイバを達成可能であることが分かる。
【0051】
もちろん、分散値は、−15、−20、−25ps/nm/kmと絶対値の大きいものでも良いが、その分、図10に示すように、損失が上がる傾向にあるので、正分散ファイバの伝送損失を超えない範囲で、大きくすることが重要である。なお、屈折率プロファイルは、このW+セグメントコア型に限定されるものではなく、W+セグメントコア層の外側に更にサイドコア層を有するもの等でもよい。
【0052】
そのような多層構造を用いることで、更に特性の改善を行うことが可能である。表5に、そのような多層構造を用いたファイバの特性シミュレーションの結果を示す。分散のターゲットは、やはり−10ps/nm/kmとした。
【0053】
【表5】
【0054】
以上の結果、W+セグメントコア型、あるいはその外側に更に多層を有する構造の屈折率プロファイルを用いることにより、Δ1の小さな負分散・負分散スロープファイバが、大きなAeffで達成できることが分かった。このように、負分散ファイバは、分散値を小さく設定することで(例えば、−10〜−25ps/nm/km)、正分散ファイバよりも低い比屈折率差Δで良好な特性を達成することが可能となり、正分散ファイバよりも低い損失が期待できることとなった。よって、トータル線路で、低損失を維持しつつ、更に低非線形化が可能となった。
【0055】
しかしながら、上記の方法では、分散が小さい負分散ファイバでしか、この手法を用いることが出来ない。SMF−E+RDF−45の特性例に示したように、分散絶対値の大きな負分散ファイバを用いた分散マネージ線路も盛んに検討されているため、このようなファイバにおいても、この手法が使用できると、非常に好ましい。よって、この第2の手法を用いることで、このような分散絶対値の大きな負分散ファイバに対する解決策を以下に示す。
【0056】
この手法は、正分散ファイバのところで示したのと同様に、負分散ファイバに関しても、ディプレスト型クラッドを用いる手法である。クラッドをディプレスト層にすることで、伝送損失に最も大きな影響を与えるΔ1の値を、相対的に下げることが可能である。この第2の手法を用いることで、比較的高い伝送損失を有する高分散型の負分散ファイバも、小さな伝送損失に抑えることが可能となる。図11にこの手法の概念図を示す。
【0057】
図11(a)から図11(b)に示すように、クラッド部をディプレスト層にすることで、同じプロファイルを維持しながら、Δ1の値を相対的に下げることが可能となる。こうすることで、大きな分散絶対値を維持しながら、伝送損失を低減することも可能である。ただし、絶対値の大き過ぎるディプレスト層(特にΔ2)を有していると、逆に損失が大きくなってしまう可能性もあるので、適切なクラッドの比屈折率差Δを決定することが重要である。
【0058】
以上のように、本発明によると、分散マネージメント線路の正分散ファイバの損失を負分散ファイバよりも大きくすることにより、Aeffの拡大、n2の低減や線路損失の低減以外の手段によって、伝送路を低非線形化することが可能となった。
【0059】
実施例
以下、本発明の実施例を示し、本発明の有効性を確認する。
シミュレーション結果の中で、最もAeffが拡大された結果を示す上記表3のType04−1(正分散ファイバ)と上記表5のType04(負分散ファイバ)を例に取り、シミュレーション結果を参考に試作を行った。試作結果を下記表6に示す。
【0060】
【表6】
【0061】
上記表6に示すように、負分散ファイバの伝送損失の方が正分散ファイバの伝送損失よりも抑制されている。これにより、トータル線路での低非線形特性を更に期待することができる。いずれのファイバもAeffが大きいことから、トータル線路では、かなりの低非線形化が図られている。
【0062】
しかしながら、トータル線路の伝送損失は、0.25dB/km程度と、許容範囲ではあるが、若干高い伝送損失であることは否めない。これは、正分散ファイバが、0.8%と高い比屈折率差Δを有していることが主要因と思われる。そこで、図8(a)に示す屈折率プロファイルを採用し、クラッド層の比屈折率差Δを−0.3%のディプレストクラッドにし、△+を0.5%まで下げて伝送損失を下げることにした。試作結果を下記表7に示す。
【0063】
【表7】
【0064】
上記表7に示すように、ディプレストクラッドを採用することで、伝送損失を0.245dB/km程度まで抑制することが出来た。線路トータルの伝送損失は0.227dB/kmと、低損失の特性を達成している。トータルの伝送損失を0.227dB/kmに一定とし、正分散ファイバの損失を変化させていった場合の、線路トータルの非線形特性の変化を図12に示す。
【0065】
図12に示すように、やはり、正分散ファイバの伝送損失を高くし、負分散ファイバの伝送損失を低くしていくと、非線形波形歪みの程度が抑制されていくことが分かる。このように、負分散ファイバの伝送損失が正分散ファイバの伝送損失よりも低い領域で、更に低非線形化が可能であることが分かった。
【0066】
次に、上記表7に示す正分散ファイバと組み合わせるための高分散スロープ型ファイバとして、分散値−60ps/nm/kmを有する負分散ファイバを試作した。その屈折率プロファイルと特性を下記表8に示す。
【0067】
【表8】
【0068】
上記表8に示すように、この負分散ファイバでは、分散値を大きくするために、Δ1=1.3%と比屈折率差が比較的高めのコアを用いている。そのため、伝送損失は、0.255dB/kmと高めの値になっている。トータルの損失を下げるためには、正分散ファイバ、または、負分散ファイバの損失を下げる必要があるが、既に述べたように、出来るだけ負分散ファイバの損失を下げることが重要である。
【0069】
このような負分散ファイバとして、図11(b)に示す屈折率プロファイルを有するものを用いた。この負分散ファイバは、図11(a)と同形状の屈折率プロファイルであるが、Δ3=−0.2%のクラッドを用い、全体のΔを−0.2%下げたものである。この負分散ファイバの試作結果を下記表9に示す。
【0070】
【表9】
【0071】
上記表9に示すように、高分散型負分散ファイバにおいても、クラッドの屈折率レベルを最適化することにより、正分散ファイバよりも低損失化を図れることが分かった。もちろん、正分散ファイバの損失も負分散ファイバの損失も、更に低いことが望ましいが、トータルで同損失の場合は、このような負分散ファイバが低損失化されている構成が有利である。
【0072】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によると、高速大容量伝送に適した低非線形の分散マネージメント伝送路を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る光伝送路に用いる光ファイバの凹ガイド型屈折率プロファイルを示す図。
【図2】本発明の他の実施形態に係る光伝送路に用いる光ファイバの凹+階段型屈折率プロファイルを示す図。
【図3】本発明の他の実施形態に係る光伝送路に用いる光ファイバの凹+セグメントコア型屈折率プロファイルを示す図。
【図4】本発明の他の実施形態に係る光伝送路に用いる光ファイバのダブル凹ガイド型プロファイルを示す図。
【図5】本発明の他の実施形態に係る光伝送路に用いる光ファイバのW+セグメントコア型プロファイルを示す図。
【図6】光ファイバの非線形歪みを求める模式図。
【図7】分散マネージメント線路の伝送損失と非線形歪みとの関係を示す特性図。
【図8】タイプ01−1の通常のシリカクラッドを用いた場合(a)と、ディプレストクラッドを用いた場合(b)の屈折率プロファイルを示す図。
【図9】W型屈折率プロファイルを有する一般的な負分散ファイバのΔ1と分散および伝送損失との関係を示す特性図。。
【図10】Δ1を同一とし、W型とW+セグメントコア型の屈折率プロファイルを用いて負分散ファイバを作製した場合の伝送損失を示す特性図。
【図11】クラッドをディプレスト層にすることで高分散型の負分散ファイバの伝送損失を抑制する手法の概念図。
【図12】トータルの伝送損失を一定とし、正分散ファイバの損失を変化させた場合の線路トータルの非線形特性の変化を示す特性図。
【符号の説明】
1・・・センタディプレスト層
2・・・シリカクラッド
3・・・ディプレストクラッド
Claims (11)
- 1550nmにおいて正分散を有する少なくとも1つの正分散ファイバと、同波長において負分散を有する少なくとも1つの負分散ファイバとを含み、前記負分散ファイバの1550nmにおける伝送損失が、前記正分散ファイバの同波長における伝送損失よりも低いことを特徴とする分散マネージメント光伝送路。
- 1550nmにおけるトータル線路の伝送損失が0.30dB/km以下であることを特徴とする請求項1に記載の分散マネージメント光伝送路。
- 1550nmにおけるトータル線路の分散値が−5.0〜5.0ps/nm/km、分散スロープが−0.06〜0.06ps/nm2/kmであることを特徴とする請求項1または2に記載の分散マネージメント光伝送路。
- 前記正分散ファイバの1550nm帯の伝送損失が0.35dB/km以下であり、前記負分散ファイバの同帯域における伝送損失が0.30dB/km以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の分散マネージメント光伝送路。
- 前記正分散ファイバの1550nmにおける実効断面積(Aeff)が70μm2以上、前記負分散ファイバの1550nmにおける実効断面積(Aeff)が20μm2以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の分散マネージメント光伝送路。
- 前記正分散ファイバおよび負分散ファイバのカットオフ波長(λc)が1550nm以下、直径20mmφでの曲げ損失が20dB/m以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の分散マネージメント光伝送路。
- 前記正分散ファイバおよび負分散ファイバの偏波モード分散(PMD)が0.2ps/km1/2以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の分散マネージメント光伝送路。
- 前記正分散ファイバが、凹ガイド構造、凹+階段型構造、凹+セグメントコア型構造、およびダブル凹ガイド型構造からなる群から選ばれた屈折率プロファイルを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の分散マネージメント光伝送路。
- 前記負分散ファイバがW+セグメントコア型の屈折率プロファイルを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の分散マネージメント光伝送路。
- 前記正分散ファイバまたは負分散ファイバのクラッドの屈折率が、シリカの屈折率より低いことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の分散マネージメント光伝送路。
- 前記負分散ファイバをラマン増幅媒体として用いることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の分散マネージメント光伝送路。
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KR100830005B1 (ko) * | 2006-09-01 | 2008-05-15 | 후지쯔 가부시끼가이샤 | 광 조사 헤드, 정보 기억 장치, 광 조사 헤드 설계 장치 및 광 조사 헤드 설계 프로그램 기억 매체 |
-
2002
- 2002-07-17 JP JP2002208743A patent/JP2004056307A/ja active Pending
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