JP2004055974A - 波長安定化制御回路および波長安定化光源 - Google Patents
波長安定化制御回路および波長安定化光源 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】LD10の波長を安定化させる波長安定化制御回路において、前記LD10のLD波長モニタ信号とLDパワーモニタ信号との差信号を出力する差動増幅器11と、前記差信号の出力に基づき前記LD10の出力波長を制御するLD波長制御回路12とを備え、前記LD波長制御回路12が、前記LD10の出力波長を前記差信号が零となるように制御する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、光半導体素子の出力光の波長を安定化させる波長安定化制御回路および波長安定化光源に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
超高密度光伝送システムにおいては、システムの長期安定動作を実現するために、使用する光源波長の安定化が必要不可欠である。例えば、100GHz間隔(0.08nm間隔)に波長を並べる場合で50〜100pm、50GHz間隔(0.4nm間隔)に波長を並べる場合にはその半分以下(<20〜30pm)の波長安定度が必要とされる。
【0003】
光通信システムにおいては、半導体レーザ(LD:Laser Diode)が用いられることが多く、このLDの波長安定化技術の一つに、自動温度制御回路(Automatic Temperature Control Circuit)を用いたLDのチップ温度安定化の手法がある。この手法では、LDのチップ温度を一定に保つことにより、温度とLD駆動条件から決まる発振波長に波長が安定化される。
【0004】
しかしながら、この手法では、あくまでもLDのチップ温度の一定制御であり、LD自体の劣化による波長変動などは制御に反映されない。この自動温度制御回路で波長安定化制御を実施した状態においても、長期間の連続運転中に僅かずつ波長シフトが生じる。長期間において波長を安定させるためには、別途波長モニタ手段を用い、波長モニタ信号に基づく制御を行うことで、LD自体の経時劣化の影響を受けない、波長の安定化動作を実現する必要がある。
【0005】
例えば、特開平10−209546号公報には、干渉光フィルタを用いた波長モニタとこの波長モニタを用いた波長制御手法が記述されている。図7は、この特開平10−209546号公報に開示される波長制御手法を用いた制御回路(以下「従来回路」という。)を書き直したブロック図である。同図に示す従来回路では、LD10の出力光の波長に依存して変化する波長モニタ信号(Swm)とLD10の出力光のパワーに応じて変化するパワーモニタ信号(Spm)の出力比を割り算器31において算出し、得られる出力比の信号と基準波長設定電圧14の基準電圧との誤差を、誤差検出器32で検出した後、LD波長制御回路12にて発振波長の制御を行う。
【0006】
この従来回路において、光部品を含めた回路全体をフィードバック動作させることで波長安定化が実現できる。例えば、閉ループゲインを充分大きくすることで、概略基準電圧で決定される波長にLDの波長を安定化させることができる。いま、誤差検出器32のゲインをGとし、基準電圧をVrefとすると、誤差検出器32の出力は、
G×(Swm/Spm−Vref)=Verr
Swm/Spm−Vref=Verr/G ・・・(式1)
と表せる。
式1において、フィードバック系の閉ループゲインGを十分大きくした場合(G→∞)には、(式1)の右辺は限りなく0に近づくので、結果的に、
Swm/Spm=Vref ・・・(式2)
となる。すなわち、波長が(式2)を満足する値で波長が安定する。
【0007】
つぎに、図7に示す従来回路において、LDの波長安定化動作に割り算器が必要な理由について図8を用いて説明する。図8(a)は、LDの波長に対する波長モニタ信号(Swm)の出力特性の概略を示すグラフであり、図8(b)は、(a)の特性をパワーモニタ信号比(Spm)で規格化した出力特性の概略を示すグラフである。通常、波長モニタ信号は波長依存性を有する光フィルタ(特開平10−209546号公報では干渉光フィルタ)の透過光出力もしくは反射光出力から得られる。光出力パワーを一定とした場合には、図8(a)に示すように波長変動が生じると、光フィルタの有する波長特性に応じて光フィルタの出力信号は概略単調増加もしくは概略単調減少する。
【0008】
実際のシステムにおいては、光出力パワーは装置の調整段階/運用時等場合に応じて適宜調整され、終始一貫して一定の光パワーでの使用はありえない。フィルタ通過光出力のみをモニタした場合には、波長変動が生じた場合、光パワー自体が変動した場合のどちらにおいても、光フィルタ通過光出力の大きさが増減する。正確な波長安定化制御を行うためには、光出力パワーが変動しても正確に波長変動をモニタできる制御系が必要とされる。ところが、図8(b)に示すように、パワーモニタ信号比(Spm)で規格化した特性は、パワーモニタ出力に依存しない特性を有している。そこで、従来は割り算器を用いて光パワーモニタ信号と波長モニタ信号の比をとり、その出力特性を利用して波長安定化制御を実現する手法が用いられていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際に波長安定化制御回路を実現する上では、安価でかつ制御精度および制御速度に優れた回路が必要とされる。割り算器を使用した制御回路は基本的にディジタル制御にて実現するため、アナログ信号とディジタル信号の間の変換にA/D変換器およびD/A変換器が必要であり、回路実現上の部品点数が増えるという欠点がある。さらに、使用するA/D変換器およびD/A変換器での使用ビット数や変換速度によって制御精度および制御速度が制限されるという問題がある。加えて、ディジタル部品の制御用にCPU等付加的な部品が付随する場合には、さらに部品点数が増え信頼性上も不利になるという課題がある。これらの課題を解決するには、部品点数が少なく簡易な構成で、精度の高いアナログ制御回路を実現することが必要である。
【0010】
この発明は上記に鑑みてなされたものであり、光半導体素子の波長を安定化させる波長安定化制御回路において、制御精度および制御速度に優れ、簡易かつ安価に構成できる波長安定化制御回路、および波長安定化光源を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明にかかる波長安定化制御回路は、光半導体素子の出力光の波長モニタ信号とパワーモニタ信号に基いて、波長を安定化させる波長安定化制御回路において、前記光半導体素子の波長モニタ信号とパワーモニタ信号との差信号を出力する差動増幅器と、前記差信号の出力に基づき前記光半導体素子の出力光の波長を制御する波長制御回路とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記光半導体素子のパワーモニタ信号に基づき前記光半導体素子の出力パワーを制御するパワー制御回路をさらに備え、前記パワー制御回路は、前記光半導体素子のパワーモニタ信号を用いて、前記光半導体素子の出力パワーを制御し、前記波長制御回路は、前記光半導体素子の出力波長を前記差動増幅器の差信号が零となるように制御してもよい。
【0013】
また、基準波長設定電圧と前記差動増幅器が出力する前記差信号との加算信号を前記波長制御回路に出力する加算回路をさらに備え、前記波長制御回路は、前記基準波長設定電圧で決定される前記光半導体素子の出力波長を前記差動増幅器が出力する前記差信号が零となるよう制御してもよい。
【0014】
また、前記光半導体素子の背面から出力され、波長弁別フィルタを介して受光した光に応じて前記波長モニタ信号を出力する第1の受光素子と、前記光半導体素子の背面から出力された光に応じて前記パワーモニタ信号を出力する第2の受光素子とを備えていてもよい。
【0015】
また、前記光半導体素子の前面から出力され、波長弁別フィルタを介して受光した光に応じて前記波長モニタ信号を出力する第1の受光素子と、前記光半導体素子の背面から出力された光に応じて前記パワーモニタ信号を出力する第2の受光素子とを備えていてもよい。
【0016】
また、前記波長制御回路は、前記差信号に基づいて前記光半導体素子の温度を制御し、前記パワー制御回路は、前記パワーモニタ信号に基づいて前記光半導体素子の駆動電流もしくは駆動電圧を制御してもよい。
【0017】
また、前記波長制御回路における前記光半導体素子の出力波長制御の時定数が前記パワー制御回路における前記光半導体素子の出力パワー制御の時定数よりも大きくてもよい。
【0018】
また、この発明にかかる波長安定化光源は、光半導体素子と、上記の発明による波長安定化制御回路とを備えていてもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる波長安定化制御回路および波長安定化光源の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1である波長安定化光源の基本的な構成を示すブロック図である。この波長安定化光源は、LD10と波長安定化制御回路100を備え、波長安定化制御回路100は、差動増幅器11、LD波長制御回路12を備えている。同図において、差動増幅器11は、差動端子に入力されるLD波長モニタ信号およびLDパワーモニタ信号の差を検出し、この検出結果に基づき、LD波長制御回路12を通してLD10の波長安定化を行う。
【0021】
図1に示すように、LDパワーモニタ信号(Spm)は、図示しないパワーモニタ手段検出結果であるIpmをG1倍した値、LD波長モニタ信号(Swm)は、図示しない波長モニタ手段の検出信号であるIwmをG2倍した値であるとする。すなわち、Spm、Swmは次式のように記述できる。
Spm=G1×Ipm ・・・(式3)
Swm=G2×Iwm ・・・(式4)
【0022】
波長モニタ手段での波長検出や、パワーモニター手段での光パワーの検出は、光信号をPD(フォトダイオード)等の受光素子の光電気変換出力によって得ることが一般的である。また、波長モニタ手段には、LD10の出力光の波長に依存して光の透過量が変化する波長弁別フィルタが設けられる。例えば、LD10から出力され波長弁別フィルタを透過した光が受光素子で受光されることによって、波長に応じて変化する信号Iwmが出力される。パワーモニター手段では、光信号をPD(フォトダイオード)等の受光素子の光電気変換手段で変換することによって、LD10の出力光のパワーに応じた信号Ipmが出力される。波長弁別フィルタとしては、エタロンフィルタや、複屈折結晶を用いたものが知られている。
【0023】
実際の制御に使用するSpm、Swmは、光電流を電流・電圧変換した信号、もしくはその後に適度に増幅された信号となっているので、(式3)および(式4)のように記述しても一般性は失われない。また、差動増幅器出力(Verr)としてはSpm、Swmの差に比例した成分が得られるため、Verrは次式のように記述できる。
Verr=G×(Spm−Swm) ・・・(式5)
ここで、差動増幅器出力VerrをLD波長制御回路で決まるLD波長からの波長ずれ量(Verr=0のときに誤差0)を表す誤差信号として用いる。
【0024】
光部品を含み、この発明の波長安定化制御回路の閉ループゲインを充分大きくとった場合には、Verr/Gが限りなく0に近づくので、(式5)より、
Spm−Swm=0 ・・・(式6)
Spm=Swm ・・・(式7)
となる。その結果、制御波長は、(式3)、(式4)および(式7)から、
Iwm/Ipm=G1/G2=一定 ・・・(式8)
となり、(式8)の条件を満たす波長に安定化される。この式が意味するところは、光パワーモニタ信号と光波長モニタ信号の比を一定制御していることと等価であり、割り算器を用いることなく、波長安定化制御が実現できることを示している。
【0025】
図2(a)は、図1の波長安定化制御回路において規格化された出力特性の概略を示すグラフであり、(b)は波長ずれに対する差動増幅器の出力特性(誤差信号特性)の概略を示すグラフである。例えば、図2(a)に示すように長波長側に波長がシフトすると、Iwm/Ipmの値が減少するような特性を有する波長モニタ信号を用いた場合、誤差信号Verrは波長ずれ(Δλ=λ−λlock)によって、図2(b)のような信号を発生する。図2(b)に示すように、Verrは、零を中心に波長ずれの正の値に対して負の値、波長ずれの負の値に対して正の値をとるため、例えば、後段の回路にてVerrが負となった場合に波長を短波長側に調整し、正となった場合に長波長側に調整するという制御が行われれば常にVerr=0で決まる波長(λlock)に安定化されることになる。
【0026】
これらの考察から、差動増幅器を用いた回路構成において、光部品を含む波長安定化制御回路の閉ループゲインを充分大きくとれば、誤差信号がVerr=0となる点に迅速に収束するため、光パワーモニタ信号と光波長モニタ信号の比が一定となる制御を行うこととなり、図7の従来回路において説明した割り算回路を用いた場合と等価な制御を実現していることとなる。
【0027】
したがって、図1で示したように、割り算器と等価なSwm/Spm=一定(もしくは、図2のようにIwm/Ipm=一定)となるような制御を差動増幅器によって実現することができ、同等の動作を行うのに必要な部品点数を減少させることができる。加えて、差動増幅器としては汎用のアナログ演算増幅器等が使用可能であり、安価な回路構成をとることができる。さらに、アナログ部品で実現可能な構成とすることで、制御時定数、制御精度の設定が容易となり、簡易で制御精度、応答特性に優れた波長安定化制御回路を得ることができる。
【0028】
波長安定化制御回路に供給されるLD波長モニタ信号、LDパワーモニタ信号は、例えば図3に示す構成により取得可能である。図3(a)はLD10の内部に波長弁別フィルタ500を有するデバイスを用いた場合の構成例を示すブロック図である。波長弁別フィルタ500は、透過率が波長に依存して変化する波長弁別機能を有する。
【0029】
例えば、図3(a)では、LD10の背面光から得られるLDパワーモニタ信号とLD波長モニタ信号を使用する形態である。この例では、LD10の背面光のビームの一部分が通過する光路上に、波長弁別フィルタ500を挟んで第1の受光素子30を配置する。また、LD10の背面光のビームの他の部分が通過する光路上であって、波長弁別フィルタ500の透過光が入射しない位置に、第1の受光素子30と並列に第2の受光素子31を配置する。これによって、第1の受光素子30からLD波長モニタ信号が出力され、第2の受光素子31からLDパワーモニタ信号が出力されて、差動増幅器11に入力される。LD波長モニタ信号は、例えば上述した図8(a)に示すような出力特性を有している。これ以外にも、LD10内で前面光を分岐した形式のデバイスから得られるLD波長モニタ信号およびLDパワーモニタ信号を用いても同等の動作が実現できることは言うまでもない。
【0030】
図3(b)は、LD10の外に、波長弁別フィルタを有する波長ロッカ20を用いた場合の構成例を示すブロック図である。LD10の前面出力光は、光タップカプラ21により少量分岐して波長ロッカ20に入力される。波長ロッカ20は、内部に有する図示しない波長弁別フィルタを介在させて、一方の光路からLD波長モニタ信号を差動増幅器11に出力する。また、他方の光路からLDパワーモニタ信号を差動増幅器11に出力する。LD波長モニタ信号は、例えば上述した図8(a)に示すような出力特性を有している。
【0031】
このように前面出力光から得られるLD波長モニタ信号、LDパワーモニタ信号を用いた制御を行うことで、実際に使用している主信号の波長もしくはパワーの制御を正確に行うことができる。例えば、波長モニタ箇所に既に変調された光信号が到達するような場合には、光源の波長を独立に制御するよりも、変調後の光信号スペクトルの重心が設定波長にくるよう制御をかけた方がよい場合があり、この場合には図3(b)の形態が有用である。また、多くの光部品通過後の光パワー変動を一定制御するような場合においても、パワーモニタ箇所をLD10の外部に配置することで、パワーを一定としたい場所でのモニタおよびそれに対応したLD10の出力パワー制御が可能となる。
【0032】
図3(c)は、LD10の波長制御は波長弁別フィルタ500および第1の受光素子30を介して得られるLD波長モニタ信号を用いて行い、LD10のパワーの制御はLD10の背面光を第2の受光素子31で受光し、その受光素子の出力から得られるLDパワーモニタ信号を用いる場合の構成例を示すブロック図である。同図の構成では、例えば図示しない光部品がLD10と光タップカプラ21の間に入り、光タップカプラ21の出力が波長弁別フィルタ500を介在させて第1の受光素子30で受光される。波長弁別フィルタ500と第1の受光素子30とで波長ロッカ20bが構成されている。この例では、LD前面出力光に基づいてLD波長モニタ信号が得られ、LD背面光に基づいてLDパワーモニタ信号が得られて、差動増幅器11に出力される。このように、波長ロッカ20bによって検出されるLD波長モニタ信号が、直接LD10の出力パワーに結びつかない場合でも、LD10の出力パワーは波長ロッカ20bの検出結果に左右されることなく独立に制御することが可能である。なお、LD波長モニタ信号は、例えば上述した図8(a)に示すような出力特性を有している。
【0033】
さらに、図3(b)、(c)の例では、波長ロッカのかわりに多チャネル一括モニタを使用することで、波長多重された多チャンネルの光に対して一括して波長モニタ用信号もしくはパワーモニタ用信号を得ることができる。
【0034】
この実施の形態によれば、光半導体素子のパワーモニタ信号に基づき光半導体素子の出力パワーを制御するパワー制御回路が、光半導体素子のパワーモニタ信号を用いて、光半導体素子の出力パワーを制御するようにしているので、波長安定化制御と共に光出力パワー安定化制御を実現することができるという効果を奏する。
【0035】
この実施の形態によれば、波長制御回路は、差動増幅器出力の差信号が零となるように光半導体素子の出力波長を制御しているので、光パワーモニタ信号と光波長モニタ信号の比が概略一定値となる条件に波長安定化動作が収束する波長安定化制御を実現することができるという効果を奏する。
【0036】
この実施の形態によれば、加算回路が、基準波長設定電圧と差動増幅器が出力する差信号との加算信号を波長制御回路に出力し、この波長制御回路が、光半導体素子の出力波長を基準波長設定電圧で設定するようにしているので、所望の波長に設定する波長安定化制御を実現することができるという効果を奏する。
【0037】
この実施の形態によれば、波長制御回路が、基準波長設定電圧で決定される光半導体素子の出力波長を差動増幅器が出力する差信号が零となるように制御しているので、光パワーモニタ信号と光波長モニタ信号の比が概略一定値となる条件に波長安定化動作が収束する波長安定化制御を実現することができるという効果を奏する。
【0038】
なお、上述した実施の形態は、LDについての説明であったが、LDの波長制御に限ることではなく、少なくとも2種類の信号の比を一定に保つような制御を行いたい場合には、同様なアナログ回路にて、高精度な波長安定化制御回路を得ることができる。
【0039】
さらに、実施例により安定化された光源を光送信器内に適用することで、容易に光送信器の波長安定度を向上することができる。
【0040】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2にかかる波長安定化制御回路の構成例を示すブロック図である。この波長安定化制御回路は、差動増幅器11、LD波長制御回路12、LDパワー制御回路13、基準波長設定電圧14、増幅器15a、15b、加算器16を備えている。また、この波長安定化制御回路にLD10が設けられて、波長安定化光源が得られる。
【0041】
同図の回路において、LD10の波長およびパワーのモニタ手段検出信号が、増幅器15a、15bに供給される。増幅器15aではLDパワーモニタ手段検出信号がG1倍に増幅され、増幅器15bではLD波長モニタ手段検出信号がG2倍に増幅され、夫々差動増幅器11の差動端子に入力される。差動増幅器11の出力はスイッチ40を通過して、基準波長設定電圧14との加算をとるために加算器16に入力される。加算器16の出力は、LD波長制御回路12に供給される。一方、増幅器15aの出力はLDパワー制御回路13へも接続されている。したがって、LD10の出力パワーおよび発振波長の制御はLD波長制御回路12およびLDパワー制御回路13によって行われる。
【0042】
つぎに、図4の回路の動作について説明する。図4の回路においては、誤差信号Verrを得るところまでの原理は、図1の説明と同様であるので省略する。実施の形態2の波長安定化制御回路においては、Verrを基準波長設定電圧14からの誤差信号として用いる構成となっている。すなわち、Verr=0の状態ではLD10の発振波長は、基準波長設定電圧14で決定される波長に安定化される。この構成をとることで、LDおよび制御回路に電源が投入された直後の動作を安定化させることができる。図4の回路で使用している各種アナログ回路においては、電源立ち上がり時に不安定動作を伴うことがある。加えて、電源投入直後ではLDのチップ温度が安定化するのに若干時間が必要である。こういった場合は、Verrの加算を電源投入後一定時間後に行う必要がある。このために設けられたのがスイッチ40である。このスイッチ40は、例えばスタート時はOFFで、波長が落ち着く所定の時間後にONになるように動作することにより、安定な波長引き込み動作を実現することができる。波長引き込みが完了した後に、発振波長の調整を行う場合には、増幅器15bのゲイン(G1)を調整し、等価的に波長の収束点の条件であるSwm/Spmの値を変更することで収束点の波長設定を変更することができる。LDパワー制御回路13からは、LD10にバイアス電流Sbが出力される。また加算器16からは、LD波長制御回路12にLD波長設定電圧Swが出力される。
【0043】
図5は、図4に示す波長安定化制御回路のLDパワー制御回路13の構成例を示すブロック図である。このLDパワー制御回路13は、LDパワー設定電圧22、差動増幅器23およびLDバイアス電流駆動回路24を備えている。同図に示すLDパワー制御回路13が示すように、LDパワー設定電圧22とLDパワーモニタ信号(Spm)との差に応じた出力が、差動増幅器23からLDバイアス電流駆動回路24に出力される。LDバイアス電流駆動回路24は、差動増幅器23の出力信号に応じてLD10のバイアス電流を制御する。このように、LDパワー制御回路13での出力パワー調整は、LD10に流すバイアス電流Sbの量によって調整することができる。
【0044】
図6は、図4に示す波長安定化制御回路のLD波長制御回路12の構成例を示すブロック図である。このLD波長制御回路12は、電圧源25、サーミスタ抵抗26、差動増幅器27およびLDペルチェ電流駆動回路28を備えている。同図に示すLD波長制御回路12が示すように、サーミスタ抵抗26の抵抗値の変化が電圧変化に変換されサーミスタ検出電圧として差動増幅器27に入力される。加算器16から出力されるLD波長設定電圧Swと、このサーミスタ検出電圧との差に応じた出力が、差動増幅器27からLDペルチェ電流駆動回路28に出力される。LDペルチェ電流駆動回路28は、差動増幅器27の出力に応じて、LD10と熱的に接続されたペルチェに印加するペルチェ電流を制御する。ここで、使用するサーミスタとしてLD10のモジュール内部に配置されたものを使用することで、より正確にチップ温度の検出および制御が可能である。このように、LD波長制御回路12での波長調整は、結果的にLD10のチップ温度を制御することで調整することができる。
【0045】
チップ温度が安定化するまでの時間は、バイアス電流変動によって光パワー変動が生じる時定数より充分長い。加えて、LD出力パワー調整のためにLDバイアス電流を変化させると、それによってもLD10のチップ温度が変化する。このため、これらの制御回路においては、波長と光パワーの制御の間には適度な制御時定数差を設けることが望ましい。すなわち、LD10の波長制御に係わる制御ループの時定数と出力パワーに係わる制御ループとでは、LD10の波長制御に係わる制御時定数の方を遅くすることでより安定な波長制御が可能となる。
【0046】
また、図4に供給されるLD波長モニタ信号もしくはLD出力パワーモニタ信号や回路自体に温度依存性がある場合には、温度補正信号を、例えば増幅器15bの後段に入れることで、温度補償機能のついたより安定度の高い波長制御が可能である。
【0047】
図4で示した回路で使用する各種演算回路(差動増幅器11、増幅器15a、15b、加算器16等)は全てアナログの汎用演算増幅器によって実現可能であり、簡易な構成で、高精度な波長安定化制御回路を得ることができる。
【0048】
この実施の形態によれば、光半導体素子の波長制御が、この光半導体素子の温度によって制御されるので、半導体レーザの制御に最適な波長安定化制御を実現することができるという効果を奏する。
【0049】
この実施の形態によれば、光半導体素子の出力パワー制御が、この光半導体素子の駆動電流もしくは駆動電圧によって制御されるので、光パワー制御も同時に実現することができるという効果を奏する。
【0050】
この実施の形態によれば、光半導体素子の出力波長制御の速度が光半導体素子の出力パワー制御の速度よりも遅くなるようにしているので、波長安定化制御の応答を最適化することができるという効果を奏する。
【0051】
なお、上述した実施の形態は、LDについての説明であったが、LDの波長制御に限ることではなく、少なくとも2種類の信号の比を一定に保つような制御を行いたい場合には、同様なアナログ回路にて、高精度な波長安定化制御回路を得ることができる。
【0052】
さらに、上記実施例により安定化された光源を光送信器内に適用することで、容易に光送信器の波長安定度を向上することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、差動増幅器が、光半導体素子の波長モニタ信号とパワーモニタ信号との差信号を出力し、波長制御回路が、この差信号の出力に基づき光半導体素子の出力波長を制御するようにしているので、簡易な構成で高精度の波長制御を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1である波長安定化制御回路の基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、図1の波長安定化制御回路において規格化された出力特性の概略を示すグラフであり、(b)は波長ずれに対する差動増幅器の出力特性(誤差信号特性)の概略を示すグラフである。
【図3】(a)は、LDの内部に波長弁別フィルタを有するデバイスを用いた場合の構成例を示すブロック図であり、(b)は、LDの外に波長弁別フィルタを有する波長ロッカを用いた場合の構成例を示すブロック図であり、(c)は、LDの波長制御は波長弁別フィルタおよび第1の受光素子を介して得られるLD波長モニタ信号を用いて行い、LDのパワーの制御はLDの背面光を第2の受光素子で受光し、その受光素子の出力から得られるLDパワーモニタ信号を用いる場合の構成例を示すブロック図である。
【図4】実施の形態2にかかる波長安定化制御回路の構成例を示すブロック図である。
【図5】図4に示す波長安定化制御回路のLDパワー制御回路の構成例を示すブロック図である。
【図6】図4に示す波長安定化制御回路のLD波長制御回路の構成例を示すブロック図である。
【図7】特開平10−209546号公報に開示される波長制御手法を用いた制御回路を書き直したブロック図である。
【図8】(a)は、LDの波長に対する波長モニタ信号(Swm)の出力特性の概略を示すグラフであり、(b)は、(a)の特性をパワーモニタ信号比(Spm)で規格化した出力特性の概略を示すグラフである。
【符号の説明】
10 LD、11 差動増幅器、12 LD波長制御回路、13 LDパワー制御回路、14 基準波長設定電圧、15a,15b 増幅器、16 加算器、20,20b 波長ロッカ、21 LDパワー設定電圧、22 光タップカプラ、23 差動増幅器、24 LDバイアス電流駆動回路、25 電圧源、26 サーミスタ抵抗、27 差動増幅器、28 LDペルチェ電流駆動回路、30 第1の受光素子、31 第2の受光素子、40 スイッチ、100 波長安定化制御回路、500 波長弁別フィルタ。
Claims (8)
- 光半導体素子の出力光の波長モニタ信号とパワーモニタ信号に基いて、光半導体素子の出力光の波長を安定化させる波長安定化制御回路において、
前記光半導体素子の波長モニタ信号とパワーモニタ信号との差信号を出力する差動増幅器と、
前記差信号に基づき前記光半導体素子の出力光の波長を制御する波長制御回路と、を備えることを特徴とする波長安定化制御回路。 - 前記光半導体素子のパワーモニタ信号に基づき前記光半導体素子の出力パワーを制御するパワー制御回路をさらに備え、
前記パワー制御回路は、前記光半導体素子のパワーモニタ信号を用いて、前記光半導体素子の出力パワーを制御し、
前記波長制御回路は、前記光半導体素子の出力波長を前記差信号が零となるように制御することを特徴とする請求項1に記載の波長安定化制御回路。 - 前記光半導体素子のパワーモニタ信号に基づき前記光半導体素子の出力パワーを制御するパワー制御回路と、
基準波長設定電圧と前記差動増幅器が出力する前記差信号との加算信号を前記波長制御回路に出力する加算回路とをさらに備え、
前記パワー制御回路は、前記光半導体素子のパワーモニタ信号を用いて、前記光半導体素子の出力パワーを制御し、
前記波長制御回路は、前記基準波長設定電圧で決定される前記光半導体素子の出力波長を、前記差動増幅器が出力する前記差信号が零となるように制御することを特徴とする請求項1に記載の波長安定化制御回路。 - 前記光半導体素子の背面から出力され、波長弁別フィルタを介して受光した光に応じて前記波長モニタ信号を出力する第1の受光素子と、前記光半導体素子の背面から出力された光に応じて前記パワーモニタ信号を出力する第2の受光素子とを備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の波長安定化制御回路。
- 前記光半導体素子の前面から出力され、波長弁別フィルタを介して受光した光に応じて前記波長モニタ信号を出力する第1の受光素子と、前記光半導体素子の背面から出力された光に応じて前記パワーモニタ信号を出力する第2の受光素子とを備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の波長安定化制御回路。
- 前記波長制御回路は、前記差信号に基いて前記光半導体素子の温度を制御し、
前記パワー制御回路は、前記パワーモニタ信号に基いて前記光半導体素子の駆動電流もしくは駆動電圧を制御することを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の波長安定化制御回路。 - 前記波長制御回路における前記光半導体素子の出力波長制御の時定数が、前記パワー制御回路における前記光半導体素子の出力パワー制御の時定数よりも大きいことを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の波長安定化制御回路。
- 光半導体素子と、前記請求項1〜7の何れか一つに記載の波長安定化制御回路とを備えたことを特徴とする波長安定化光源。
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JP2002213924A JP2004055974A (ja) | 2002-07-23 | 2002-07-23 | 波長安定化制御回路および波長安定化光源 |
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2002
- 2002-07-23 JP JP2002213924A patent/JP2004055974A/ja active Pending
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