JP2004054220A - 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 Download PDF

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Abstract

【課題】耐キズ性および耐摩耗性の機械的強度が強く、かつ、繰り返し安定性に優れた電子写真感光体を安価に提供する。
【解決手段】支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、電気絶縁性バインダー樹脂と特定の構造を有する高分子電荷輸送物質を含有し、かつ、該電気絶縁性バインダー樹脂が該高分子電荷輸送物質の特定の部位と同一の構造を有することを特徴とする電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置に関し、詳しくは、高いモビリティーを有する特定の電荷輸送性高分子を含有した高耐久な電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体には、セレン、酸化亜鉛、硫化カドミウムなどの無機光導電性化合物を主成分とする感光層を有する無機電子写真感光体が広く使用されてきた。しかし、これらは、熱安定性、耐湿性、耐久性、生産性、安全性の点などの問題点を有していた。
【0003】
無機電子写真感光体の欠点を克服する目的で、様々な有機光導電性化合物を主成分とする有機電子写真感光体の開発が近年盛んに行われている。例えば、米国特許3837851号公報には、トリアリルピラゾリンを含有する電荷輸送層を有する電子写真感光体が開示されている。また、米国特許3871880号公報には、ペリレン顔料の誘導体からなる電荷発生層と3−プロピレンとホルムアルデヒドの縮合体からなる電荷輸送層を有する電子写真感光体が開示されている。
【0004】
さらに、有機光導電性化合物は、その化合物によって電子写真感光体の感光波長域を自由に選択することが可能である。例えば、アゾ顔料では、特開昭61−272754号公報、特開昭56−167759号公報に、可視領域で高感度を示すものが開示されている。また、特開昭57−19567号公報、特開昭61−228453号公報には、赤外領域まで感度を有している化合物が開示されている。
【0005】
これらの材料のうち、赤外領域に感度を示すものは、近年進歩の著しいレーザービームプリンター(以下、LBPと略す。)やLEDプリンターに使用されその需要頻度は高くなってきている。
【0006】
これら有機光導電性化合物を用いた電子写真感光体は電気的、機械的双方の特性を満足させるために電荷輸送層と電荷発生層を積層させた機能分離型の電子写真感光体として利用される場合が多い。また、当然のことながら、電子写真感光体には適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気的特性、さらには光学的特性を備えていることが要求される。
【0007】
特に、繰り返し使用される電子写真感光体においては、その電子写真感光体の表面にはコロナまたは接触帯電、画像露光、トナー現像、転写工程、表面クリーニングなどの電気的、機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性も要求される。
【0008】
有機電子写真感光体の耐摩耗性を向上させる手段としては、バインダー樹脂を高分子量化する方法やバインダー中にフィラーを添加する方法、あるいは、バインダー樹脂構造中にシロキサン構造やフッ素含有置換基などの潤滑性を付与するための構造を導入したり、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような固体潤滑剤を添加したりすることで、クリーニングブレードとの摩擦係数を低減させる方法などが知られている。
【0009】
さらに、機械的強度に優れたいろいろなバインダー樹脂の使用も提案されているが、バインダー樹脂そのものが機械的強度に優れていても、低分子量の電荷輸送物質を混合して用いるため、バインダー樹脂本来の膜強度を十分に生かせず、耐摩耗、耐キズ性において必ずしも十分な耐久性を得るには至っていない。バインダー樹脂本来の膜強度を生かすためには、添加する電荷輸送物質の添加量を減らせばよいが、その場合には、電子写真感度の低下や残留電位の上昇を招いてしまうという問題が生じ、膜強度と電子写真特性を両立するには至っていない。
【0010】
また、感光層に潤滑性を付与し、クリーニングブレードとの摩擦係数を低減させるという方法も、感光層の膜強度の低下を招き、十分な耐久性を得ることができていない。
【0011】
一方、特開昭64−9964号公報、特開平2−282263号公報、特開平3−221522号公報、特開平8−208820号公報などには、低分子量電荷輸送物質の添加による膜強度低下を改善する目的で、電荷輸送性高分子化合物の使用することが提案されているが、これらの多くは必ずしも十分な耐摩耗性を有しているわけではなく、ある程度の膜強度を有する場合でも、製造コストが非常に高く実用には向かないなどの欠点があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の電子写真感光体の表面層が有していた問題点を解決し、耐キズ性および耐摩耗性の機械的強度が強く、かつ、繰り返し安定性に優れた電子写真感光体を安価に提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、電気絶縁性バインダー樹脂と下記式(1)で示される構造を有する高分子電荷輸送物質を含有し、かつ、該電気絶縁性バインダー樹脂が下記式(1)のAr11またはAr12と同一の構造を有することを特徴とする電子写真感光体。
【0014】
【外4】
Figure 2004054220
(式(1)中、Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、下記式(2)で示される構造を有する。
【外5】
Figure 2004054220
(式(2)中、Ar21およびAr22は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい2価の芳香環基または複素環基を表す。A21は、置換基を有してもよいアルキレン基、アミノ基、アゾ基、スルホニル基、酸素原子または硫黄原子を表す。X21は、置換基を有してもよいアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子または硫黄原子を表す。p、qは、それぞれ、0または1を表す。ただし、Ar21−(A21−Ar22に関しては、p=0のときは、Ar21−Ar22という直接結合は形成せず、Ar21−(X21−Ar22に関しては、q=0のときは、Ar21−Ar22という直接結合を形成する。)また、Ar13およびAr14は、それぞれ独立に、置換または非置換の芳香環基または複素環基を表す。mは0または1を表し、nは4以上の整数を表す。ただし、m+n≧5である。)
【0015】
また、本発明は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置である。
【0016】
【発明の実施の形態】
上記式(1)中のAr13およびAr14の芳香環基としては、フェニル、ナフチル、アンスリル、ピレニル、フルオレニル、フェナンスリルなどが挙げられ、複素環基としては、キノリル、ジベンゾチェニル、ジベンゾフリル、n−メチルカルバゾル、n−エチルカルバゾル、n−トリルカルバゾルなどが挙げられる。
【0017】
上記式(2)中のAr21およびAr22の芳香環基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ペリレン、フルオレン、ビフェニル、ターフェニルなどの芳香環より2個の水素原子をとった2価の芳香環基が挙げられ、複素環基としては、カルバゾール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、キノリン、フェナジンなどの複素環より2個の水素原子をとった2価の複素環基が挙げられる。A21のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン基などが挙げられる。X21のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン基などが挙げられ、シロキサン基としては、−SiO−の数が1〜10のシロキサン基が挙げられ、シリレン基としては、Siの数が1〜4のシリレン基が挙げられる。
【0018】
上記式(1)で示される電荷輸送性高分子化合物は、下記式(3)で示される構成単位を有する重合体であることがより好ましい。
【外6】
Figure 2004054220
(上記式(3)中、Ar13およびAr14は、上記式(1)中のAr13およびAr14と同義であり、それぞれ独立に、置換または非置換の芳香環基または複素環基を表す。n’は、3以上の整数を表す。R301〜R316は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または、アミノ基を表す。さらに、R302とR305、R310とR313は、結合して環を形成したり、アルキレン基、アミノ基、アゾ基、スルホニル基、酸素原子または硫黄原子を介して環を形成したりしてもよい。X31およびX32は、置換基を有してもよいアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子または硫黄原子を表す。r、sはそれぞれ0または1を表す。)
【0019】
上記式(3)中のR301〜R316のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピルなどが挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシなどが挙げられる。R 02とR305、R310とR313が環を形成する際に介してもよいアルキレン基としては、炭素数が1、2のアルキレン基が挙げられる。
【0020】
また、上記式(1)中、Ar11およびAr12、すなわち、上記式(2)で示される構造は、以下の式で示される構造であることが好ましい。
【外7】
Figure 2004054220
(式中、R〜Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよい芳香環基を示す。)
【0021】
上記式(1)〜(3)中のAr11〜Ar14、Ar21〜Ar22、A21,X21、X31、X32、R301〜R316が有してもよい置換基としては、メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどのアルキル基や、メトキシ、エトキシおよびプロポキシなどのアルコキシ基や、フェノキシおよびナフトキシなどのアリールオキシ基や、フッ素、塩素および臭素などのハロゲン原子や、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびジフェニルアミノなどのジ置換アミノ基などが挙げられる。
【0022】
本発明に用いる高分子電荷輸送物質の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
以下の具体例の中でも、CT−14、CT−24、CT−25、CT−28、CT−30が好ましく、CT−24、CT−25がより好ましい。
【0024】
【外8】
Figure 2004054220
【0025】
【外9】
Figure 2004054220
【0026】
【外10】
Figure 2004054220
【0027】
【外11】
Figure 2004054220
【0028】
【外12】
Figure 2004054220
【0029】
【外13】
Figure 2004054220
【0030】
【外14】
Figure 2004054220
【0031】
【外15】
Figure 2004054220
【0032】
【外16】
Figure 2004054220
【0033】
【外17】
Figure 2004054220
【0034】
【外18】
Figure 2004054220
【0035】
【外19】
Figure 2004054220
【0036】
【外20】
Figure 2004054220
【0037】
【外21】
Figure 2004054220
【0038】
【外22】
Figure 2004054220
【0039】
本発明においては、電気絶縁性バインダー樹脂の中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が機械的強度の観点から好ましい。
【0040】
本発明に用いる電気絶縁性バインダー樹脂の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の具体例の中では、B−2、B−6、B−23、B−24、B−37が好ましく、B−6、B−24がより好ましい。
【0041】
【外23】
Figure 2004054220
【0042】
【外24】
Figure 2004054220
【0043】
【外25】
Figure 2004054220
【0044】
本発明による電荷輸送層は、電荷輸送物質が高分子量であるため、電荷輸送物質を添加することによる樹脂の膜強度の低下が小さく、耐キズ性、耐摩耗性に優れている。さらに、高分子電荷輸送物質と絶縁性の樹脂バインダーが同一な部分構造を持つことで、相分離をおこすことなく均一な膜を形成できる。
【0045】
電気絶縁性バインダー樹脂(B)および前記高分子電荷輸送物質(D)の含有比率(D/B)は、0.09以上1.0以下(質量比)であることが好ましい。
【0046】
本発明の高分子電荷輸送物質と電気絶縁性バインダー樹脂が有する同一構造とは、Ar11またはAr12がとりうる芳香環基または複素環基の基本骨格が同一であることを示し、それらが有する置換基は異なっていてもよい。
【0047】
また、電気絶縁性バインダー樹脂は、高分子電荷輸送物質と同一構造を有する繰り返し構造単位を、電気絶縁性バインダー樹脂全体の30mol%以上含有することが好ましい。より好ましくは50mol%以上であり、さらに好ましくは70mol%以上である。
【0048】
本発明の電子写真感光体においては、本発明による高分子電荷輸送物質が1種類であっても、2種類以上の別種のものであってもよい。
【0049】
さらに、既存の低分子電荷輸送物質と混合して使用してもよい。ただし、この場合は、本発明の高分子電荷輸送物質が、60mol%以上存在するのが好ましい。
【0050】
以下に、本発明に用いる電子写真感光体の構成について説明する。
【0051】
本発明における電子写真感光体は、感光層が電荷発生物質と電荷輸送物質とを同一の層に含有する単層型であっても、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型でもよいが、電子写真特性の観点からは積層型が好ましく、電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した順積層型がより好ましい。
【0052】
使用する支持体は導電性を有するものであればよく、アルミニウム、ステンレスなどの金属、あるいは導電層を設けた金属、紙、プラスチックなどが挙げられ、形状はシート状、円筒状などがあげられる。
【0053】
LBPなど画像入力がレーザー光の場合は、散乱による干渉縞防止または基盤の傷を被覆することを目的とした導電層を設けてもよい。これはカーボンブラック、金属粒子などの導電性粒子をバインダー樹脂に分散させて形成することができる。導電層の膜厚は5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0054】
それらの上に接着機能を有する中間層を設けてもよい。中間層の材料としてはポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタンなどが挙げられる。これらは適当な溶剤に溶解して塗布される。中間層の膜厚は0.05〜5μmが好ましく、0.3〜1μmがより好ましい。
【0055】
それらの上に感光層が形成される。順積層型の場合は電荷発生層である。
【0056】
本発明に用いられる電荷発生物質としてはセレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドン、非対称キノシアニン系の各顔料が挙げられる。積層型の場合、電荷発生層は前記電荷発生物質を0.3〜4倍量の結着剤樹脂および溶剤とともにホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルおよび液衝突型高速分散機などの方法でよく分散し、分散液を塗布、乾燥させて形成される。電荷発生層の膜厚は5μm以下、好ましくは0.1〜2μmが適当である。
【0057】
電荷輸送層は主として本発明の電気絶縁性バインダー樹脂と電荷輸送物質とを溶剤中に溶解させた塗料を塗工乾燥して形成する。電荷輸送物質は0.5〜2倍量のバインダー樹脂と組み合わされ塗工、乾燥し電荷輸送層を形成する。電荷輸送層の膜厚は5〜40μmが好ましく、15〜30μmがより好ましい。
【0058】
本発明においては、前もって電荷輸送物質と樹脂とを部分的に反応させてシロキサン結合をもたせてもよい。この場合には電子写真感光体への塗布に支障のない溶液または分散液であれば用いることができる。
【0059】
また、電荷輸送物質とバインダー樹脂の架橋硬化には、必ずしも触媒が必要ではないが、硬化に要する時間、硬化温度などを考慮してジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジウラレート、ジブチル錫オクマエートなどのアルキル錫有機酸塩などまたはノルマルブチルチタネートなどの有機チタン酸エステルから適宜選択される。
【0060】
図1に本発明の電子写真感光体を有する電子写真装置の概略構成を示す。
【0061】
図において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)からの露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0062】
形成された静電潜像は、次いで、現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取り出されて給紙された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。
【0063】
像転写を受けた転写材7は、感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0064】
像転写後の感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、さらに、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し像形成に使用される。なお、図のように、一次帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0065】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9の少なくとも1つを感光体1とともに一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール12などの案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0066】
また、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号にしたがって行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動および液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光である。
【0067】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター、レーザー製版など電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0068】
なお、本発明の効果は、電子写真プロセススピード(上述の、電子写真感光体を帯電し、露光による潜像形成、トナーによる現像、紙などへの転写後に、感光体表面をクリーニングするというプロセスの稼動速度。)が速い系(135mm/s以上)や、クリーニング手段にクリーニングブレードを用いた系において顕著に現れる。
【0069】
また、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC8120GPC(東ソー(株))を用い、標準ポリスチレン換算で示される値で示した。
【0070】
【実施例】
以下、実施例にしたがって説明する。なお、「部」とあるのは質量部を意味する。
【0071】
(実施例1)
直径30mm、長さ357.5mmのアルミニウムシリンダーを支持体とし、それに、以下の材料より構成される塗料を支持体上に浸漬法で塗布し140℃、30分熱硬化して18μmの導電層を形成した。
【0072】
導電性顔料:SnO2コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
バインダー樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール、メトキシプロパノール 0.2/0.8 20部
【0073】
次にこの上にNメトキシメチル化ナイロン3部および共重合ナイロン3部をメタノール65部、nブタノール30部の混合溶媒に溶解した溶液を浸漬法で塗布し0.6μmの中間層を形成した。
【0074】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン4部とポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学製)2部およびシクロヘキサノン60部を直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、エチルアセテート100部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。これを浸漬法で塗布し、0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0075】
次に、前記合成例にしたがって合成した電荷輸送物質(CT−2)4部と電気絶縁性バインダー樹脂((B−3)/(B−4)、共重合比50/50)10部をモノクロロベンゼン30部、ジクロロメタン70部の混合溶媒に溶解した。
【0076】
この塗料を浸漬法で塗布し120℃2時間乾燥し、25μmの電荷輸送層を形成した。
【0077】
このようにして、電子写真感光体を作製した。
【0078】
次に評価について説明する。
【0079】
装置はキヤノン(株)製LBP−950(プロセススピード144.5mm/s)を改造して用いた。改造は、一次帯電の制御を定電流制御から定電圧制御に変更し、かつ、ピーク間電圧を20%増加させた。作製した電子写真感光体を、この装置で28℃90%RH(H/H)下で通紙耐久を行った。シーケンスはプリント1枚ごとに1回停止する間欠モードとした。トナーがなくなったならば補給し画像で問題がでるまで耐久した。
【0080】
まず、研磨テープを用いたテーバー摩耗試験機を用い25分摩耗させそのときの重量減少分を測定した。
【0081】
また、電子写真感光体の一部に3000lux、30分間の白色蛍光灯の光を当て、4分間放置後明部電位を測定し、光を当てる前から明部電位がどれだけ下がったかを測定しフォトメモリー値とした。
【0082】
さらに、ソルベントクラック性は表面に指脂を付着させ72時間放置し、顕微鏡観察によりソルベントクラックの有無を観察した。
【0083】
(実施例2〜30)
電荷輸送層の電荷輸送物質および電気絶縁性バインダー樹脂を表1に示すものを用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0084】
(比較例1)
電荷輸送層の電荷輸送物質を以下の比較化合物にかえた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。
【外26】
Figure 2004054220
【0085】
(比較例2)
電気絶縁性バインダー樹脂を(B−2)にかえた以外は、実施例2と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。
【0086】
(比較例3)
電気絶縁性バインダー樹脂を(B−2)にかえた以外は、実施例2と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。
【0087】
(比較例4)
電気絶縁性バインダー樹脂を(B−23)にかえた以外は、実施例16と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。
【0088】
(比較例5)
電気絶縁性バインダー樹脂を(B−22)にかえた以外は、実施例17と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。
【0089】
評価結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
Figure 2004054220
【0091】
【発明の効果】
本発明により、耐キズ性および耐摩耗性の機械的強度が強く、かつ、接触帯電による放電に対する耐電気特性が良好であり、かつ、繰り返し安定性に優れた電子写真感光体を安価に提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有する電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 軸
3 一次帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 像定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 レール

Claims (7)

  1. 支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、電気絶縁性バインダー樹脂と下記式(1)で示される構造を有する高分子電荷輸送物質を含有し、かつ、該電気絶縁性バインダー樹脂が下記式(1)のAr11またはAr12と同一の構造を有することを特徴とする電子写真感光体。
    【外1】
    Figure 2004054220
    (式(1)中、Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、下記式(2)で示される構造を有する。
    【外2】
    Figure 2004054220
    (式(2)中、Ar21およびAr22は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい2価の芳香環基または複素環基を表す。A21は、置換基を有してもよいアルキレン基、アミノ基、アゾ基、スルホニル基、酸素原子または硫黄原子を表す。X21は、置換基を有してもよいアルキレン基、シロキサン基、シリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子または硫黄原子を表す。p、qは、それぞれ、0または1を表す。ただし、Ar21−(A21−Ar22に関しては、p=0のときは、Ar21−Ar22という直接結合は形成せず、Ar21−(X21−Ar22に関しては、q=0のときは、Ar21−Ar22という直接結合を形成する。)また、Ar13およびAr14は、それぞれ独立に、置換または非置換の芳香環基または複素環基を表す。mは0または1を表し、nは4以上の整数を表す。ただし、m+n≧5である。)
  2. 前記式(1)中の前記式(2)で示される構造のうち少なくとも1つが下記構造群から選択される構造である請求項1に記載の電子写真感光体。
    【外3】
    Figure 2004054220
    (式中、R〜Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよい芳香環基を示す。)
  3. 前記電気絶縁性バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記電気絶縁性バインダー樹脂がポリアリレート樹脂である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  5. 前記電気絶縁性バインダー樹脂(B)および前記高分子電荷輸送物質(D)の含有比率(D/B)が、0.09以上1.0以下である請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段およびクリーニング手段からなる群より選ばれた少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
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