JP2004052056A - 亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】防食性に優れたチタン系防食被膜を亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材上に形成する方法を提供すること。
【解決手段】亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材を、シリカ(a)、鉱酸(b)、並びにTi、Zr、Co、V、W及びMoから選ばれる金属の金属カチオン、該金属のオキシ金属アニオン及び該金属のフルオロ金属アニオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオン(c)を含有する処理液(A)で処理した後、加水分解性チタン、加水分解性チタン低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタン低縮合物から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを反応させて得られるチタンを含む水性液(d)を含有してなるチタン系表面処理剤(B)を塗布乾燥してなるチタン系表面処理皮膜を形成させることを特徴とする亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の表面処理方法。
【選択図】なし
【解決手段】亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材を、シリカ(a)、鉱酸(b)、並びにTi、Zr、Co、V、W及びMoから選ばれる金属の金属カチオン、該金属のオキシ金属アニオン及び該金属のフルオロ金属アニオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオン(c)を含有する処理液(A)で処理した後、加水分解性チタン、加水分解性チタン低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタン低縮合物から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを反応させて得られるチタンを含む水性液(d)を含有してなるチタン系表面処理剤(B)を塗布乾燥してなるチタン系表面処理皮膜を形成させることを特徴とする亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の表面処理方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防食性に優れたノンクロム系の処理剤による亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材への表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術およびその課題】
近年、防錆被覆鋼板には優れた耐食性が要求され、従来の冷延鋼板にかわり亜鉛系めっき鋼板を基板とする表面処理鋼板が多く使用されている。
【0003】
従来、亜鉛系めっき鋼板の表面処理として、クロム酸塩処理及びリン酸亜鉛処理が一般に行われているが、クロムの毒性が問題になっている。クロム酸塩処理は、処理工程でのクロム酸塩ヒュームの揮散の問題、排水処理設備に多大の費用を要すること、さらには化成処理被膜からのクロム酸の溶出による問題などがある。また6価クロム化合物は、IARC(International Agency for Researchon Cancer Review)を初めとして多くの公的機関が人体に対する発癌性物質に指定しており極めて有害な物質である。
【0004】
またリン酸亜鉛処理では、リン酸亜鉛処理後、通常、クロム酸によるリンス処理を行うためクロム処理の問題があるとともに、リン酸亜鉛処理剤中の反応促進剤、金属イオンなどの排水処理、被処理金属からの金属イオンの溶出によるスラッジ処理の問題がある。
【0005】
クロム酸塩処理やリン酸亜鉛処理以外の処理方法としては、(1)重燐酸アルミニウムを含有する水溶液で処理した後、150〜550℃の温度で加熱する表面処理方法(特公昭53−28857号公報参照)、(2)タンニン酸を含有する水溶液で処理する方法(特開昭51−71233号公報参照)などが提案され、また、(3)亜硝酸ナトリウム、硼酸ナトリウム、イミダゾール、芳香族カルボン酸、界面活性剤等による処理方法もしくはこれらを組合せた処理方法が行われている。
【0006】
しかしながら、(1)の方法は、この上に塗料を塗装する場合、塗料の密着性が十分でなく、また、(2)の方法は、耐食性が劣り、(3)の方法は、いずれも高温多湿の雰囲気に暴露された場合の耐食性が劣るという問題がある。
【0007】
また、膜厚数μm以下の薄膜の被膜を有する亜鉛系鋼板として、特開昭58−224174 号公報、特開昭60−50179号公報、特開昭60−50180号公報などには、亜鉛系めっき鋼板を基材とし、これにクロメート被膜を形成し、さらにこの上に最上層として有機複合シリケート被膜を形成した防錆鋼板が知られており、このものは、加工性及び耐食性に優れた性能を有する。しかしながら、この防錆鋼板はクロメート被膜を有するため、前記したと同様にクロメートイオンによる安全衛生面の問題があった。また、この防錆鋼板からクロメート被膜を除いた鋼板では、いまだ耐食性が十分ではない。
【0008】
本発明の目的は、特に防食性に優れたチタン系防食被膜を亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材上に形成する方法を提供することである。
【0009】
さらに、本発明の目的は、鋼板にクロメート被膜がなくても、優れた耐食性を発揮する防食被覆亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材をシリカ、鉱酸及び特定の金属イオンを含有する処理液で処理を行った後、さらに特定のチタン系表面処理剤により処理を行うことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして本発明は、亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材を、シリカ(a)、鉱酸(b)、並びにTi、Zr、Co、V、W及びMoから選ばれる金属の金属カチオン、該金属のオキシ金属アニオン及び該金属のフルオロ金属アニオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオン(c)を含有する処理液(A)で処理した後、加水分解性チタン、加水分解性チタン低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタン低縮合物から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを反応させて得られるチタンを含む水性液(d)を含有してなるチタン系表面処理剤(B)を塗布乾燥してなるチタン系表面処理皮膜を形成させることを特徴とする亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の表面処理方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記表面処理方法により得られる防食被覆亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の表面処理方法に関するものであり、亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材を最初にシリカ(a)、鉱酸(b)及び金属イオン(c)を含有する処理液(A)で処理した後、さらにチタン系表面処理皮膜を形成させるものである。
【0014】
まず、処理液(A)について説明する。
【0015】
処理液(A)
処理液(A)は、シリカ(a)、鉱酸(b)及びTi、Zr、Co、V、W、Moから選ばれる金属の金属カチオン、該金属のオキシ金属アニオン又は該金属のフルオロ金属アニオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオン(c)を必須成分として含有してなるものである。
【0016】
シリカ(a)
処理液(A)の(a)成分であるシリカは、密着性、耐食性の向上に寄与するものであり、気相法シリカ、粉砕シリカ、水分散性コロイダルシリカなど、いずれのシリカであってもよい。水分散性コロイダルシリカの市販品としては、例えば、スノ−ッテクスN、スノ−ッテクスC、スノ−ッテクスO(いずれも日産化学社製)等が挙げられ、その他のシリカの市販品としては、例えば、AEROSIL200V、同R−811(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0017】
処理液(A)中のシリカ(a)の含有量としては、0.001〜3.0mol/l、特に0.01〜2.0mol/lの範囲内が好ましい。
【0018】
鉱酸(b)
処理液(A)の(b)成分として使用する鉱酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、フッ酸、リン酸、6フッ化珪酸などを挙げることができるが、特に硝酸、リン酸が好ましい。
【0019】
処理液(A)中の鉱酸(b)の含有量としては、0.001〜3.0mol/l、特に0.01〜2.0mol/lの範囲内が好ましい。
【0020】
金属イオン(c)
処理液(A)の(c)成分として使用する金属イオンは、Ti、Zr、Co、V、W、Moから選ばれる金属の金属カチオン、該金属のオキシ金属アニオン又は該金属のフルオロ金属アニオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンである。
【0021】
Tiイオンの供給源としては、塩化チタン、硫酸チタン、チタン弗化水素酸、チタン弗化塩(例えばナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム等)などが挙げられる。
【0022】
Zrイオンの供給源としては、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、ジルコニウム弗化水素酸、ジルコニウム弗化塩(例えばナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム等)などが挙げられる。
【0023】
Coイオンの供給源としては、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルトアンモニウムなどが挙げられる。
【0024】
Vイオンの供給源としては、例えば、オルソバナジン酸リチウム、オルソバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸リチウム、メタバナジン酸カリウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸アンモニウム、ピロバナジン酸ナトリウム、塩化バナジル、硫酸バナジルなどが挙げられる。
【0025】
Wイオンの供給源としては、例えば、タングステン酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、メタタングステン酸ナトリウム、パラタングステン酸ナトリウム、ペンタタングステン酸アンモニウム、ヘプタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、ホウタングステン酸バリウムなどが挙げられる。
【0026】
Moイオンの供給源としては、例えば、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸ストロンチウム、モリブデン酸バリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸亜鉛などが挙げられる。
【0027】
処理液(A)中の金属イオン(c)の含有量としては、0.001〜1.0mol/l、特に0.004〜0.2mol/lの範囲内が好ましい。
処理液(A)は、水中に、上記シリカ(a)、鉱酸(b)及び金属イオン(c)を添加することにより得ることができる。
【0028】
亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材は上記処理液(A)で処理した後、さらにチタン系表面処理剤(B)からなるチタン系表面処理皮膜を形成させる。
【0029】
チタン系表面処理剤(B)
本発明のチタン系表面処理剤(B)は、下記チタンを含む水性液(d)を必須成分として含有してなるものである。
【0030】
チタンを含む水性液(d)
チタンを含む水性液(d)は、加水分解性チタン、加水分解性チタン低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタン低縮合物から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを反応させて得られるチタンを含む水性液である。
【0031】
該チタンを含む水性液としては、上記したものであれば特に制限なしに従来から公知のものを適宜選択して使用することができる。上記した加水分解性チタンは、チタンに直接結合する加水分解性基を有するチタン化合物であって、水、水蒸気などの水分と反応することにより水酸化チタンを生成するものである。また、加水分解性チタンにおいて、チタンに結合する基の全てが加水分解性基であっても、もしくはその1部が加水分解された水酸基であってもどちらでも構わない。
【0032】
上記した加水分解性基としては、上記した様に水分と反応することにより水酸化チタンを生成するものであれば特に制限されないが、例えば、低級アルコキシル基やチタンと塩を形成する基(例えば、ハロゲン原子(塩素等)、水素原子、硫酸イオン等)が挙げられる。
【0033】
加水分解性基として低級アルコキシル基を含有する加水分解性チタンとしては、特に一般式Ti(OR)4(式中、Rは同一もしくは異なって炭素数1〜5のアルキル基を示す)のテトラアルコキシチタンが好ましい。炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0034】
加水分解性基として、チタンと塩を形成する基を有する加水分解性チタンとしては、塩化チタン、硫酸チタン等が代表的なものとして挙げられる。
【0035】
また、加水分解性チタン低縮合物は、上記した加水分解性チタン同士の低縮合物である。該低縮合物は、チタンに結合する基の全てが加水分解性基であっても、もしくはその1部が加水分解された水酸基であってもどちらでも構わない。
【0036】
チタンと塩を形成する基である塩化チタンや硫酸チタン等は、このものの水溶液とアンモニアや苛性ソーダ等のアルカリ溶液との反応によるオルトチタン酸(水酸化チタンゲル)も低縮合物として使用できる。
【0037】
上記した加水分解性チタン低縮合物又は水酸化チタン低縮合物における縮合度は、2〜30の化合物が使用可能で、特に縮合度2〜10の範囲内のものを使用することが好ましい。
【0038】
チタンを含む水性液(d)としては、上記したチタン化合物と過酸化水素水とを反応させることにより得られるチタンを含む水性液であれば、従来から公知のものを特に制限なしに使用することができる。具体的には下記のものを挙げることができる。
【0039】
▲1▼含水酸化チタンのゲルあるいはゾルに過酸化水素水を添加して得られるチタニルイオン過酸化水素錯体あるいはチタン酸(ペルオキソチタン水和物)水溶液。(特開昭63−35419号及び特開平1−224220号公報参照)
▲2▼塩化チタンや硫酸チタン水溶液と塩基性溶液から製造した水酸化チタンゲルに過酸化水素水を作用させ、合成することで得られるチタニア膜形成用液体。(特開平9−71418号及び特開平10−67516号公報参照)
また、上記したチタニア膜形成用液体において、チタンと塩を形成する基を有する塩化チタンや硫酸チタン水溶液とアンモニアや苛性ソーダ等のアルカリ溶液とを反応させることによりオルトチタン酸と呼ばれる水酸化チタンゲルを沈殿させる。次いで水を用いたデカンテーションによって水酸化チタンゲルを分離し、良く水洗し、さらに過酸化水素水を加え、余分な過酸化水素を分解除去することにより、黄色透明粘性液体を得ることができる。
【0040】
沈殿した該オルトチタン酸はOH同志の重合や水素結合によって高分子化したゲル状態にあり、このままではチタンを含む水性液としては使用できない。このゲルに過酸化水素水を添加するとOHの一部が過酸化状態になりペルオキソチタン酸イオンとして溶解、あるいは、高分子鎖が低分子に分断された一種のゾル状態になり、余分な過酸化水素は水と酸素になって分解し、無機膜形成用のチタンを含む水性液として使用できるようになる。
【0041】
このゾルはチタン原子以外に酸素原子と水素原子しか含まないので、乾燥や焼成によって酸化チタンに変化する場合、水と酸素しか発生しないため、ゾルゲル法や硫酸塩等の熱分解に必要な炭素成分やハロゲン成分の除去が必要でなく、従来より低温でも比較的密度の高い結晶性の酸化チタン膜を作成することができる。
【0042】
▲3▼塩化チタンや硫酸チタンの無機チタン化合物水溶液に過酸化水素を加えてぺルオキソチタン水和物を形成させた後に、塩基性物質を添加して得られた溶液を放置もしくは加熱することによってペルオキソチタン水和物重合体の沈殿物を形成した後に、少なくともチタン含有原料溶液に由来する水以外の溶解成分を除去した後に過酸化水素を作用させて得られるチタン酸化物形成用溶液。(特開2000−247638号及び特開2000−247639号公報参照)
本発明で使用するチタンを含む水性液(d)において、過酸化水素水中にチタン化合物を添加して製造されたものを使用することが好ましい。チタン化合物としては、上記した一般式で表される加水分解して水酸基になる基を含有する加水分解性チタンやその加水分解性チタン低縮合物を使用することが好ましい。
【0043】
加水分解性チタン及び/又はその低縮合物(以下、これらのものを単に「加水分解性チタン(e)」と略す)と過酸化水素水との混合割合は、加水分解性チタン(e)10重量部に対して過酸化水素換算で0.1〜100重量部、特に1〜20重量部の範囲内が好ましい。過酸化水素換算で0.1重量部未満になるとキレート形成が十分でなく白濁沈殿してしまう。一方、100重量部を超えると未反応の過酸化水素が残存し易く貯蔵中に危険な活性酸素を放出するので好ましくない。
【0044】
過酸化水素水の過酸化水素濃度は特に限定されないが3〜30重量範囲内であることが取り扱いやすさ、塗装作業性に関係する生成液の固形分の点で好ましい。
【0045】
また、加水分解性チタン(e)を用いてなるチタンを含む水性液(d)は、加水分解性チタン(e)を過酸化水素水と反応温度1〜70℃の範囲内で10分〜20時間反応させることにより製造できる。
【0046】
加水分解性チタン(e)を用いてなるチタンを含む水性液(d)は、加水分解性チタン(e)と過酸化水素水と反応させることにより、加水分解性チタンが水で加水分解されて水酸基含有チタン化合物を生成し、次いで過酸化水素が生成した水酸基含有チタン化合物に配位するものと推察され、この加水分解反応及び過酸化水素による配位が同時近くに起こることにより得られたものであり、室温域で安定性が極めて高く長期の保存に耐えるキレート液を生成する。従来の製法で用いられる水酸化チタンゲルはTi−O−Ti結合により部分的に三次元化しており、このゲルと過酸化水素水を反応させた物とは組成、安定性に関し本質的に異なる。
【0047】
加水分解性チタン(e)を用いてなるチタンを含む水性液(d)を80℃以上で加熱処理あるいはオートクレーブ処理を行うと結晶化した酸化チタンの超微粒子を含む酸化チタン分散液が得られる。80℃未満では十分に酸化チタンの結晶化が進まない。このようにして製造された酸化チタン分散液は、酸化チタン超微粒子の粒子径が10nm以下、好ましくは1nm〜6nmの範囲である。また、該分散液の外観は半透明状のものである。該粒子径が10nmより大きくなると造膜性が低下(1μm以上でワレを生じる)するので好ましくない。 この分散液も同様に使用することができる。
【0048】
加水分解性チタン(e)を用いてなるチタンを含む水性液(d)は、鋼鈑材料に塗布乾燥、または低温で加熱処理することにより、それ自体で付着性に優れた緻密な酸化チタン膜を形成できる。
【0049】
加熱処理温度としては、例えば200℃以下、特に150℃以下の温度で酸化チタン膜を形成することが好ましい。
【0050】
加水分解性チタン(e)を用いてなるチタンを含む水性液(d)は、上記した温度により水酸基を若干含む非晶質(アモルファス)の酸化チタン膜を形成する。
また、80℃以上の加熱処理をした酸化チタン分散液は塗布するだけで結晶性の酸化チタン膜が形成できるため、加熱処理をできない材料のコーティング材として有用である。
【0051】
本発明において、チタンを含む水性液(d)として、酸化チタンゾルの存在下で、上記と同様の加水分解性チタン及び/又は加水分解性チタン低縮合物と過酸化水素水とを反応させて得られるチタンを含む水性液(d1)を使用することが好ましい。加水分解性チタン及び/又は加水分解性チタン低縮合物(加水分解性チタン(e))としては、上記した一般式で表される加水分解して水酸基になる基を含有するチタンモノマーやその加水分解性チタン低縮合物を使用することが好ましい。
【0052】
上記した酸化チタンゾルは、無定型チタニア、アナタース型チタニア微粒子が水(必要に応じて、例えば、アルコール系、アルコールエーテル系等の水性有機溶剤を含有しても構わない)に分散したゾルである。
【0053】
上記した酸化チタンゾルとしては従来から公知のものを使用することができる。該酸化チタンゾルとしては、例えば、(1)硫酸チタンや硫酸チタニルなどの含チタン溶液を加水分解して得られるもの、(2)チタンアルコキシド等の有機チタン化合物を加水分解して得られるもの、(3)四塩化チタン等のハロゲン化チタン溶液を加水分解又は中和して得られるもの等の酸化チタン凝集物を水に分散した無定型チタニアゾルや該酸化チタン凝集物を焼成してアナタース型チタン微粒子としこのものを水に分散したものを使用することができる。
【0054】
無定形チタニアの焼成は少なくともアナターゼの結晶化温度以上の温度、例えば、400℃〜500℃以上の温度で焼成すれば、無定形チタニアをアナターゼ型チタニアに変換させることができる。該酸化チタンの水性ゾルとして、例えば、TKS−201(テイカ社製、商品名、アナタース型結晶形、平均粒子径6nm)、TA−15(日産化学社製、商品名、アナタース型結晶形)、STS−11(石原産業社製、商品名、アナタース型結晶形)等が挙げられる。
【0055】
加水分解性チタン(e)と過酸化水素水とを反応させるために使用する際の上記酸化チタンゾルとチタン過酸化水素反応物との重量比率は1/99〜99/1、好ましくは約10/90〜90/10範囲である。重量比率が1/99未満になると安定性、光反応性等酸化チタンゾルを添加した効果が見られず、99/1を越えると造膜性が劣るので好ましくない。
【0056】
加水分解性チタン(e)と過酸化水素水との混合割合は、加水分解性チタン(e)10重量部に対して過酸化水素換算で0.1〜100重量部、特に1〜20重量部の範囲内が好ましい。過酸化水素換算で0.1重量部未満になるとキレート形成が十分でなく白濁沈殿してしまう。一方、100重量部を超えると未反応の過酸化水素が残存し易く貯蔵中に危険な活性酸素を放出するので好ましくない。
【0057】
過酸化水素水の過酸化水素濃度は特に限定されないが3〜30重量範囲内であることが取り扱いやすさ、塗装作業性に関係する生成液の固形分の点で好ましい。
【0058】
また、水性液(d1)は、酸化チタンゾルの存在下で加水分解性チタン(e)を過酸化水素水と反応温度1〜70℃の範囲内で10分〜20時間反応させることにより製造できる。
【0059】
水性液(d1)は、加水分解性チタン(e)を過酸化水素水と反応させることにより、加水分解性チタン(e)が水で加水分解されて水酸基含有チタン化合物を生成し、次いで過酸化水素が生成した水酸基含有チタン化合物に配位するものと推察され、この加水分解反応及び過酸化水素による配位が同時近くに起こることにより得られたものであり、室温域で安定性が極めて高く長期の保存に耐えるキレート液を生成する。従来の製法で用いられる水酸化チタンゲルはTi−O−Ti結合により部分的に三次元化しており、このゲルと過酸化水素水を反応させた物とは組成、安定性に関し本質的に異なる。また、酸化チタンゾルを使用することにより、合成時に一部縮合反応が起きて増粘するのを防ぐようになる。その理由は縮合反応物が酸化チタンゾルの表面に吸着され、溶液状態での高分子化を防ぐためと考えられる。
【0060】
また、チタンを含む水性液(d1)を80℃以上で加熱処理あるいはオートクレーブ処理を行うと結晶化した酸化チタンの超微粒子を含む酸化チタン分散液が得られる。80℃未満では十分に酸化チタンの結晶化が進まない。このようにして製造された酸化チタン分散液は、酸化チタン超微粒子の粒子径が10nm以下、好ましくは1nm〜6nmの範囲である。また、該分散液の外観は半透明状のものである。該粒子径が10nmより大きくなると造膜性が低下(1μm以上でワレを生じる)するので好ましくない。 この分散液も同様に使用することができる。
【0061】
チタンを含む水性液(d1)は、鋼鈑材料に塗布乾燥、または低温で加熱処理することにより、それ自体で付着性に優れた緻密な酸化チタン膜を形成できる。
【0062】
加熱処理温度としては、例えば200℃以下、特に150℃以下の温度で酸化チタン膜を形成することが好ましい。
【0063】
チタンを含む水性液(d1)は、上記した温度により水酸基を若干含むアナタース型の酸化チタン膜を形成する。
【0064】
上記したチタンを含む水性液(d)の中でも、加水分解性チタン(e)を使用した上記水性液や水性液(d1)は貯蔵安定性、耐食性などに優れた性能を有するのでこのものを使用することが好ましい。
【0065】
チタンを含む水性液(d)の表面処理組成物中の含有量は固形分で1〜100g/L好ましくは5〜50g/Lの範囲内が、処理液の安定性などの点から適している。
【0066】
チタン系表面処理剤(B)は、上記チタンを含む水性液(d)を必須成分として含有するものであるが、さらに必要に応じてリン酸系化合物、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩及び有機酸から選ばれる少なくとも1種の化合物(f)を含有することができ、チタン系表面処理剤(B)の貯蔵安定性及び耐食性の観点から、化合物(f)を含有することが好ましい。これらの化合物は1種でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0067】
上記リン酸系化合物としては、例えば、亞リン酸、強リン酸、三リン酸、次亞リン酸、次リン酸、トリメタリン酸、二亞リン酸、二リン酸、ピロ亞リン酸、ピロリン酸、メタ亞リン酸、メタリン酸、リン酸(オルトリン酸)、及びリン酸誘導体等のモノリン酸類及びこれらの塩類、トリポリリン酸、テトラリン酸、ヘキサリン酸、及び縮合リン酸誘導体等の縮合リン酸及びこれらの塩類等が挙げられる。これらの化合物は1種もしくは2種以上組合せて使用することができる。また、上記した塩を形成するアルカリ化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等の有機又は無機アルカリ化合物が挙げられる。さらに、リン酸系化合物として水に溶解性のあるものを使用することが好ましい。
【0068】
リン酸系化合物としては、特に、リン酸、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、メタリン酸、メタリン酸アンモニウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどが、塗布剤の貯蔵安定性又は塗膜の防錆性等に優れた効果を発揮することから、このものを使用することが好ましい。
【0069】
上記、金属弗化水素酸及び金属弗化水素酸塩としては、例えば、ジルコニウム弗化水素酸、チタン弗化水素酸、珪弗化水素酸、ジルコニウム弗化塩、チタン弗化塩、珪弗化塩などを挙げることができる。金属弗化水素酸の塩を形成するものとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム等が挙げられるが、中でもカリウム、ナトリウムが好ましく、具体例として、ジルコニウム弗化カリウム、チタン弗化カリウム、珪弗化ナトリウム、珪弗化カリウムなどが挙げられる。
【0070】
上記有機酸としては、例えば、酢酸、シュウ酸、グリコ−ル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等の有機カルボン酸、有機スルフォン酸、有機スルフィン酸、フェノ−ル、チオフェノ−ル、有機ニトロ化合物、有機リン酸、1−ヒドロキシエタン−1、1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、N,N―ビス(2−ホスホエチル)ヒドロキシアミン、N,N―ビス(2−ホスホメチル)ヒドロキシアミン、2−ヒドロキシエチルホスホン酸ジメチルエーテルの加水分解物、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等の有機亞リン酸が挙げられ、これらの有機酸の塩を使用することもでる。有機酸の塩は有機酸にアルカリ化合物を配合してなるものである。該塩を形成するアルカリ化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等の有機又は無機アルカリ化合物が挙げられる。
【0071】
有機酸としては、特に、グリコ−ル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸、1−ヒドロキシエタン−1、1−ジホスホン酸等のヒドロキシル基含有有機亞リン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等のカルボキシル基含有有機亜リン酸が、塗布剤の貯蔵安定性又は塗膜の防食性等に優れた効果を発揮することから、このものを使用することが好ましい。
【0072】
化合物(f)の配合割合は、チタンを含む水性液(d)の固形分100重量部に対して1〜400重量部、特に10〜200重量部の範囲内が好ましい。
【0073】
チタン系表面処理剤(B)には、さらに必要に応じて、水性有機高分子化合物(エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアルキレングリコールなど)、塩基性中和剤、有機溶剤、増粘剤、酸化チタンゾル、界面活性剤、防菌剤、防錆剤(タンニン酸、フィチン酸、ベンゾトリアゾールなど)、着色顔料(酸化チタン粉末等)、体質顔料(マイカ、タルク、シリカ、微粉シリカ、バリタ、クレー等)、防錆顔料などの顔料類などを含有することができる。
【0074】
上記塩基性中和剤としては、アンモニア、有機アミン化合物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属等の塩基性中和剤を挙げることができ、例えば、アンモニア、エタノ−ルアミン、トリエチルアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが好ましいものとして挙げられる。
【0075】
上記有機溶剤としては、例えば、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、エチレングリコ−ル系、プロピレングリコ−ル系などの親水性溶剤を好ましいものとして挙げることができる。
【0076】
表面処理方法
本発明の処理方法は、亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材を始めに処理液(A)で処理した後、さらにチタン系表面処理剤(B)からなる表面処理皮膜をを形成するものである。
【0077】
亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材のメッキ層としては、Znメッキ、Zn−Ni合金メッキ(Ni含有率10〜15wt%)、Zn−Fe合金メッキ(Fe含有率5〜25wt%またはFe含有率60〜90wt%)、Zn−Mn合金メッキ(Mn含有率30〜80wt%)、Zn−Co合金メッキ(Co含有率3〜15wt%)、Zn−Cr合金メッキ(Cr含有率5〜30wt%)、Zn−Al合金メッキ(Al含有率3〜60wt%)等が挙げられる。また、耐食性向上を目的として、上記の各メッキ成分にCo、Fe、Ni、Cr等の合金元素、シリカ、アルミナ、難溶性クロム酸塩等の酸化物や塩類、ポリマー等を含有させることができる。
【0078】
また、上記のメッキ層のうち同種または異種のものを2種以上メッキした複層メッキとすることもできる。メッキ方法としては、電解法、溶融法、気相法のうち実施可能ないずれの方法を採用することもできるが、素地鋼板の材質の選択性の面からは電解法が最も有利である。
【0079】
上記亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の上への処理液(A)の塗装、及び処理膜上へのチタン系表面処理剤(B)の塗装は、例えば、ロールコーター、カーテンロールコーター、スプレーなどの公知の塗布方法によって塗布するか、またはこれらの塗液中に亜鉛系めっき鋼板を浸漬した後ロールや空気吹付けによって付着量をコントロールして膜を形成させることにより行うことができる。
【0080】
塗布量は乾燥膜厚として処理液(A)で通常0.05〜5g/m2、好ましくは、0.1〜3g/m2の範囲、チタン系表面処理剤(B)で通常0.05〜5g/m2、好ましくは、0.1〜3g/m2の範囲である。
【0081】
塗布液の乾燥は通常、熱風炉や誘導加熱装置などにより行うことができ、処理液(A)は、通常、素材到達最高温度が約60〜約250℃となる条件で約2秒〜約30秒乾燥させることにより、また、チタン系表面処理剤(B)は、通常、素材到達最高温度が約60〜約250℃となる条件で約2秒〜約30秒乾燥させることにより行うことができる。
【0082】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものとする。
【0083】
処理液(A)の製造
製造例1〜12
後記表1に示す配合に従って各処理液を製造した。なお、表1における各原料の配合量は水溶液である処理液1リットル中の固形分重量(g)で表示した。なお、処理液A10〜A12は比較例用に製造した。
【0084】
【表1】
【0085】
表1における(注1)および(注2)の原料は、各々下記の内容のものである。
(注1)スノーテックスO:日産化学工業社製、コロイダルシリカ(無処理)、粒子径10〜20nm、固形分20%。
(注2)スノーテックスC:日産化学工業社製、コロイダルシリカ(アルミナ処理)、粒子径10〜20nm、固形分20%。
【0086】
チタン系水性液の製造
製造例13
四塩化チタン60%溶液5ccを蒸留水で500ccとした溶液にアンモニア水(1:9)を滴下し、水酸化チタンを沈殿させた。蒸留水で洗浄後、過酸化水素水30%溶液を10cc加えかき混ぜ、チタンを含む黄色半透明の粘性のあるチタン系水性液(T1)を得た。
【0087】
製造例14
テトラiso−プロポキシチタン10部とiso−プロパノール10部の混合物を30%過酸化水素水10部と脱イオン水100部の混合物中に20℃で1時間かけて撹拌しながら滴下した。その後25℃で2時間熟成し黄色透明の少し粘性のあるチタン系水性液(T2)を得た。
【0088】
製造例15
チタン系水性液(T2)の製造例のテトラiso−プロポキシチタンの代わりにテトラn−ブトキシチタンを使用して同様の製造条件でチタン系水性液(T3)を得た。
【0089】
製造例16
チタン系水性液(T2)の製造例のテトラiso−プロポキシチタンの代わりにテトラiso−プロポキシチタンの3量体を使用して同様の製造条件でチタン系水性液(T4)を得た。
【0090】
製造例17
チタン系水性液(T2)の製造例において過酸化水素水を3倍量用い50℃で1時間かけて滴下しさらに60℃で3時間熟成しチタン系水性液(T5)を得た。
【0091】
製造例18
チタン系水溶液(T3)を95℃で6時間加熱処理し、白黄色の半透明なチタン系水性液(T6)を得た。
【0092】
製造例19
テトラiso−プロポキシチタン10部とiso−プロパノール10部の混合物を、TKS−203(テイカ(株)製、酸化チタンゾル)を5部(固形分)、30%過酸化水素水10部、脱イオン水100部の混合物中に10℃で1時間かけて撹拌しながら滴下した。その後10℃で24時間熟成し黄色透明の少し粘性のあるチタン系水性液(T7)を得た。
【0093】
チタン系表面処理剤(B)の製造
製造例20〜29
後記表2に示す配合に従って各チタン系表面処理剤を製造した。なお、表2における配合は固形分量で示した。また、各表面処理剤は脱イオン水により固形分2%に調整した。なお、チタン系表面処理剤B8及びB9は比較例用に製造した。
【0094】
【表2】
【0095】
表2における(注3)〜(注5)の原料は、各々下記の内容のものである。
(注3)ニカゾールRX−672A:日本カーバイト工業社製、アクリル樹脂エマルション、固形分40%。
(注4)クラレRSポリマーRS−105:クラレ社製、ポリビニルアルコール、固形分10%。
(注5)アデカボンタイターUX−206:旭電化工業社製、ウレタン樹脂エマルション、固形分36%。
【0096】
試験塗板の作成
実施例1〜9及び比較例1〜7
板厚0.6mmの各種めっき鋼板(使用しためっき鋼板の種類およびその略号を後記表4に示す)を用い、後記表3に示す組み合わせにて下記処理工程で処理を行い各試験塗板を得た。
▲1▼ アルカリ脱脂
▲2▼ 水洗
▲3▼ 処理液(A)処理:前記表1に示す組成の処理液を使用し、浴温30℃の処理液に60秒間浸漬した。
▲4▼ 水洗
▲5▼ 水切り乾燥
▲6▼ チタン系表面処理剤(B)処理:前記表2に示す組成のチタン系表面処理剤を使用し、浴温30℃で30秒間浸漬処理した。
▲7▼ 焼き付け乾燥:雰囲気温度150℃で10分間行った。
【0097】
試験塗板の評価
上記で得られた各試験塗板について、裸耐食性を評価した。
【0098】
また、各試験塗板にマジクロン#1000ホワイト(関西ペイント社製、熱硬化型アクリル樹脂塗料、白色)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、160℃で20分間焼き付けて上塗塗装板を得た。得られた上塗塗装板について上層塗膜密着性及び耐食性(平面部及ぶカット部)を評価した。
【0099】
各評価は、下記試験方法に従って行った。結果を後記表3に記す。
【0100】
試験方法
裸耐食性:処理板の端面部及び裏面部をシールした試験塗板にJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を240時間まで行い、試験時間72、120及び240時間での錆の程度を下記基準により評価した。
a:白錆の発生が認められない、
b:白錆の発生程度が塗膜面積の5%未満、
c:白錆の発生程度が塗膜面積の5%以上で10%未満、
d:白錆の発生程度が塗膜面積の10%以上で50%未満、
e:白錆の発生程度が塗膜面積の50%以上。
【0101】
上層塗膜密着性:上塗塗装板の塗膜面にナイフにて素地に達する縦横各11本の傷を碁盤目状に入れて1mm角のマス目を100個作成した。この碁盤目部にセロハン粘着テープを密着させて瞬時にテープを剥がした際の上層塗膜の剥離程度を下記基準により評価した。
a:上層塗膜の剥離が全く認められない、
b:上層塗膜の剥離が1〜2個認められる、
c:上層塗膜の剥離が3〜9個認められる、
d:上層塗膜の剥離が10個以上認められる。
【0102】
耐食性(平面部):上塗塗装板の端面部及び裏面部をシールした試験塗板に、JIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を120時間まで行い錆の程度を下記基準により評価した。
a:白錆の発生が認められない、
b:白錆の発生程度が塗膜面積の5%未満、
c:白錆の発生程度が塗膜面積の5%以上で10%未満、
d:白錆の発生程度が塗膜面積の10%以上で50%未満、
e:白錆の発生程度が塗膜面積の50%以上。
【0103】
耐食性(カット部):上塗塗装板の端面部及び裏面部をシールした試験塗板の塗膜面にナイフにて素地に達するクロスの傷を入れて、JIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を120時間まで行い、クロスの傷にセロハン粘着テープを密着させて瞬時にテープを剥がした際の上層塗膜の剥離幅を下記基準により評価した。
a:剥離幅1mm未満、
b:剥離幅1mm以上、3mm未満、
c:剥離幅3mm以上、5mm未満、
d:剥離幅5mm以上。
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【発明の効果】
本発明の亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の表面処理方法は、クロム系化合物を含有しない表面処理組成物による表面処理でありながら、クロム系表面処理に匹敵する防食性に優れた皮膜を形成することができ、ノンクロム系防錆鋼板には特に有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、防食性に優れたノンクロム系の処理剤による亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材への表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術およびその課題】
近年、防錆被覆鋼板には優れた耐食性が要求され、従来の冷延鋼板にかわり亜鉛系めっき鋼板を基板とする表面処理鋼板が多く使用されている。
【0003】
従来、亜鉛系めっき鋼板の表面処理として、クロム酸塩処理及びリン酸亜鉛処理が一般に行われているが、クロムの毒性が問題になっている。クロム酸塩処理は、処理工程でのクロム酸塩ヒュームの揮散の問題、排水処理設備に多大の費用を要すること、さらには化成処理被膜からのクロム酸の溶出による問題などがある。また6価クロム化合物は、IARC(International Agency for Researchon Cancer Review)を初めとして多くの公的機関が人体に対する発癌性物質に指定しており極めて有害な物質である。
【0004】
またリン酸亜鉛処理では、リン酸亜鉛処理後、通常、クロム酸によるリンス処理を行うためクロム処理の問題があるとともに、リン酸亜鉛処理剤中の反応促進剤、金属イオンなどの排水処理、被処理金属からの金属イオンの溶出によるスラッジ処理の問題がある。
【0005】
クロム酸塩処理やリン酸亜鉛処理以外の処理方法としては、(1)重燐酸アルミニウムを含有する水溶液で処理した後、150〜550℃の温度で加熱する表面処理方法(特公昭53−28857号公報参照)、(2)タンニン酸を含有する水溶液で処理する方法(特開昭51−71233号公報参照)などが提案され、また、(3)亜硝酸ナトリウム、硼酸ナトリウム、イミダゾール、芳香族カルボン酸、界面活性剤等による処理方法もしくはこれらを組合せた処理方法が行われている。
【0006】
しかしながら、(1)の方法は、この上に塗料を塗装する場合、塗料の密着性が十分でなく、また、(2)の方法は、耐食性が劣り、(3)の方法は、いずれも高温多湿の雰囲気に暴露された場合の耐食性が劣るという問題がある。
【0007】
また、膜厚数μm以下の薄膜の被膜を有する亜鉛系鋼板として、特開昭58−224174 号公報、特開昭60−50179号公報、特開昭60−50180号公報などには、亜鉛系めっき鋼板を基材とし、これにクロメート被膜を形成し、さらにこの上に最上層として有機複合シリケート被膜を形成した防錆鋼板が知られており、このものは、加工性及び耐食性に優れた性能を有する。しかしながら、この防錆鋼板はクロメート被膜を有するため、前記したと同様にクロメートイオンによる安全衛生面の問題があった。また、この防錆鋼板からクロメート被膜を除いた鋼板では、いまだ耐食性が十分ではない。
【0008】
本発明の目的は、特に防食性に優れたチタン系防食被膜を亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材上に形成する方法を提供することである。
【0009】
さらに、本発明の目的は、鋼板にクロメート被膜がなくても、優れた耐食性を発揮する防食被覆亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材をシリカ、鉱酸及び特定の金属イオンを含有する処理液で処理を行った後、さらに特定のチタン系表面処理剤により処理を行うことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして本発明は、亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材を、シリカ(a)、鉱酸(b)、並びにTi、Zr、Co、V、W及びMoから選ばれる金属の金属カチオン、該金属のオキシ金属アニオン及び該金属のフルオロ金属アニオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオン(c)を含有する処理液(A)で処理した後、加水分解性チタン、加水分解性チタン低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタン低縮合物から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを反応させて得られるチタンを含む水性液(d)を含有してなるチタン系表面処理剤(B)を塗布乾燥してなるチタン系表面処理皮膜を形成させることを特徴とする亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の表面処理方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記表面処理方法により得られる防食被覆亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の表面処理方法に関するものであり、亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材を最初にシリカ(a)、鉱酸(b)及び金属イオン(c)を含有する処理液(A)で処理した後、さらにチタン系表面処理皮膜を形成させるものである。
【0014】
まず、処理液(A)について説明する。
【0015】
処理液(A)
処理液(A)は、シリカ(a)、鉱酸(b)及びTi、Zr、Co、V、W、Moから選ばれる金属の金属カチオン、該金属のオキシ金属アニオン又は該金属のフルオロ金属アニオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオン(c)を必須成分として含有してなるものである。
【0016】
シリカ(a)
処理液(A)の(a)成分であるシリカは、密着性、耐食性の向上に寄与するものであり、気相法シリカ、粉砕シリカ、水分散性コロイダルシリカなど、いずれのシリカであってもよい。水分散性コロイダルシリカの市販品としては、例えば、スノ−ッテクスN、スノ−ッテクスC、スノ−ッテクスO(いずれも日産化学社製)等が挙げられ、その他のシリカの市販品としては、例えば、AEROSIL200V、同R−811(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0017】
処理液(A)中のシリカ(a)の含有量としては、0.001〜3.0mol/l、特に0.01〜2.0mol/lの範囲内が好ましい。
【0018】
鉱酸(b)
処理液(A)の(b)成分として使用する鉱酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、フッ酸、リン酸、6フッ化珪酸などを挙げることができるが、特に硝酸、リン酸が好ましい。
【0019】
処理液(A)中の鉱酸(b)の含有量としては、0.001〜3.0mol/l、特に0.01〜2.0mol/lの範囲内が好ましい。
【0020】
金属イオン(c)
処理液(A)の(c)成分として使用する金属イオンは、Ti、Zr、Co、V、W、Moから選ばれる金属の金属カチオン、該金属のオキシ金属アニオン又は該金属のフルオロ金属アニオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンである。
【0021】
Tiイオンの供給源としては、塩化チタン、硫酸チタン、チタン弗化水素酸、チタン弗化塩(例えばナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム等)などが挙げられる。
【0022】
Zrイオンの供給源としては、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、ジルコニウム弗化水素酸、ジルコニウム弗化塩(例えばナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム等)などが挙げられる。
【0023】
Coイオンの供給源としては、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルトアンモニウムなどが挙げられる。
【0024】
Vイオンの供給源としては、例えば、オルソバナジン酸リチウム、オルソバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸リチウム、メタバナジン酸カリウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸アンモニウム、ピロバナジン酸ナトリウム、塩化バナジル、硫酸バナジルなどが挙げられる。
【0025】
Wイオンの供給源としては、例えば、タングステン酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、メタタングステン酸ナトリウム、パラタングステン酸ナトリウム、ペンタタングステン酸アンモニウム、ヘプタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、ホウタングステン酸バリウムなどが挙げられる。
【0026】
Moイオンの供給源としては、例えば、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸ストロンチウム、モリブデン酸バリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸亜鉛などが挙げられる。
【0027】
処理液(A)中の金属イオン(c)の含有量としては、0.001〜1.0mol/l、特に0.004〜0.2mol/lの範囲内が好ましい。
処理液(A)は、水中に、上記シリカ(a)、鉱酸(b)及び金属イオン(c)を添加することにより得ることができる。
【0028】
亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材は上記処理液(A)で処理した後、さらにチタン系表面処理剤(B)からなるチタン系表面処理皮膜を形成させる。
【0029】
チタン系表面処理剤(B)
本発明のチタン系表面処理剤(B)は、下記チタンを含む水性液(d)を必須成分として含有してなるものである。
【0030】
チタンを含む水性液(d)
チタンを含む水性液(d)は、加水分解性チタン、加水分解性チタン低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタン低縮合物から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを反応させて得られるチタンを含む水性液である。
【0031】
該チタンを含む水性液としては、上記したものであれば特に制限なしに従来から公知のものを適宜選択して使用することができる。上記した加水分解性チタンは、チタンに直接結合する加水分解性基を有するチタン化合物であって、水、水蒸気などの水分と反応することにより水酸化チタンを生成するものである。また、加水分解性チタンにおいて、チタンに結合する基の全てが加水分解性基であっても、もしくはその1部が加水分解された水酸基であってもどちらでも構わない。
【0032】
上記した加水分解性基としては、上記した様に水分と反応することにより水酸化チタンを生成するものであれば特に制限されないが、例えば、低級アルコキシル基やチタンと塩を形成する基(例えば、ハロゲン原子(塩素等)、水素原子、硫酸イオン等)が挙げられる。
【0033】
加水分解性基として低級アルコキシル基を含有する加水分解性チタンとしては、特に一般式Ti(OR)4(式中、Rは同一もしくは異なって炭素数1〜5のアルキル基を示す)のテトラアルコキシチタンが好ましい。炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0034】
加水分解性基として、チタンと塩を形成する基を有する加水分解性チタンとしては、塩化チタン、硫酸チタン等が代表的なものとして挙げられる。
【0035】
また、加水分解性チタン低縮合物は、上記した加水分解性チタン同士の低縮合物である。該低縮合物は、チタンに結合する基の全てが加水分解性基であっても、もしくはその1部が加水分解された水酸基であってもどちらでも構わない。
【0036】
チタンと塩を形成する基である塩化チタンや硫酸チタン等は、このものの水溶液とアンモニアや苛性ソーダ等のアルカリ溶液との反応によるオルトチタン酸(水酸化チタンゲル)も低縮合物として使用できる。
【0037】
上記した加水分解性チタン低縮合物又は水酸化チタン低縮合物における縮合度は、2〜30の化合物が使用可能で、特に縮合度2〜10の範囲内のものを使用することが好ましい。
【0038】
チタンを含む水性液(d)としては、上記したチタン化合物と過酸化水素水とを反応させることにより得られるチタンを含む水性液であれば、従来から公知のものを特に制限なしに使用することができる。具体的には下記のものを挙げることができる。
【0039】
▲1▼含水酸化チタンのゲルあるいはゾルに過酸化水素水を添加して得られるチタニルイオン過酸化水素錯体あるいはチタン酸(ペルオキソチタン水和物)水溶液。(特開昭63−35419号及び特開平1−224220号公報参照)
▲2▼塩化チタンや硫酸チタン水溶液と塩基性溶液から製造した水酸化チタンゲルに過酸化水素水を作用させ、合成することで得られるチタニア膜形成用液体。(特開平9−71418号及び特開平10−67516号公報参照)
また、上記したチタニア膜形成用液体において、チタンと塩を形成する基を有する塩化チタンや硫酸チタン水溶液とアンモニアや苛性ソーダ等のアルカリ溶液とを反応させることによりオルトチタン酸と呼ばれる水酸化チタンゲルを沈殿させる。次いで水を用いたデカンテーションによって水酸化チタンゲルを分離し、良く水洗し、さらに過酸化水素水を加え、余分な過酸化水素を分解除去することにより、黄色透明粘性液体を得ることができる。
【0040】
沈殿した該オルトチタン酸はOH同志の重合や水素結合によって高分子化したゲル状態にあり、このままではチタンを含む水性液としては使用できない。このゲルに過酸化水素水を添加するとOHの一部が過酸化状態になりペルオキソチタン酸イオンとして溶解、あるいは、高分子鎖が低分子に分断された一種のゾル状態になり、余分な過酸化水素は水と酸素になって分解し、無機膜形成用のチタンを含む水性液として使用できるようになる。
【0041】
このゾルはチタン原子以外に酸素原子と水素原子しか含まないので、乾燥や焼成によって酸化チタンに変化する場合、水と酸素しか発生しないため、ゾルゲル法や硫酸塩等の熱分解に必要な炭素成分やハロゲン成分の除去が必要でなく、従来より低温でも比較的密度の高い結晶性の酸化チタン膜を作成することができる。
【0042】
▲3▼塩化チタンや硫酸チタンの無機チタン化合物水溶液に過酸化水素を加えてぺルオキソチタン水和物を形成させた後に、塩基性物質を添加して得られた溶液を放置もしくは加熱することによってペルオキソチタン水和物重合体の沈殿物を形成した後に、少なくともチタン含有原料溶液に由来する水以外の溶解成分を除去した後に過酸化水素を作用させて得られるチタン酸化物形成用溶液。(特開2000−247638号及び特開2000−247639号公報参照)
本発明で使用するチタンを含む水性液(d)において、過酸化水素水中にチタン化合物を添加して製造されたものを使用することが好ましい。チタン化合物としては、上記した一般式で表される加水分解して水酸基になる基を含有する加水分解性チタンやその加水分解性チタン低縮合物を使用することが好ましい。
【0043】
加水分解性チタン及び/又はその低縮合物(以下、これらのものを単に「加水分解性チタン(e)」と略す)と過酸化水素水との混合割合は、加水分解性チタン(e)10重量部に対して過酸化水素換算で0.1〜100重量部、特に1〜20重量部の範囲内が好ましい。過酸化水素換算で0.1重量部未満になるとキレート形成が十分でなく白濁沈殿してしまう。一方、100重量部を超えると未反応の過酸化水素が残存し易く貯蔵中に危険な活性酸素を放出するので好ましくない。
【0044】
過酸化水素水の過酸化水素濃度は特に限定されないが3〜30重量範囲内であることが取り扱いやすさ、塗装作業性に関係する生成液の固形分の点で好ましい。
【0045】
また、加水分解性チタン(e)を用いてなるチタンを含む水性液(d)は、加水分解性チタン(e)を過酸化水素水と反応温度1〜70℃の範囲内で10分〜20時間反応させることにより製造できる。
【0046】
加水分解性チタン(e)を用いてなるチタンを含む水性液(d)は、加水分解性チタン(e)と過酸化水素水と反応させることにより、加水分解性チタンが水で加水分解されて水酸基含有チタン化合物を生成し、次いで過酸化水素が生成した水酸基含有チタン化合物に配位するものと推察され、この加水分解反応及び過酸化水素による配位が同時近くに起こることにより得られたものであり、室温域で安定性が極めて高く長期の保存に耐えるキレート液を生成する。従来の製法で用いられる水酸化チタンゲルはTi−O−Ti結合により部分的に三次元化しており、このゲルと過酸化水素水を反応させた物とは組成、安定性に関し本質的に異なる。
【0047】
加水分解性チタン(e)を用いてなるチタンを含む水性液(d)を80℃以上で加熱処理あるいはオートクレーブ処理を行うと結晶化した酸化チタンの超微粒子を含む酸化チタン分散液が得られる。80℃未満では十分に酸化チタンの結晶化が進まない。このようにして製造された酸化チタン分散液は、酸化チタン超微粒子の粒子径が10nm以下、好ましくは1nm〜6nmの範囲である。また、該分散液の外観は半透明状のものである。該粒子径が10nmより大きくなると造膜性が低下(1μm以上でワレを生じる)するので好ましくない。 この分散液も同様に使用することができる。
【0048】
加水分解性チタン(e)を用いてなるチタンを含む水性液(d)は、鋼鈑材料に塗布乾燥、または低温で加熱処理することにより、それ自体で付着性に優れた緻密な酸化チタン膜を形成できる。
【0049】
加熱処理温度としては、例えば200℃以下、特に150℃以下の温度で酸化チタン膜を形成することが好ましい。
【0050】
加水分解性チタン(e)を用いてなるチタンを含む水性液(d)は、上記した温度により水酸基を若干含む非晶質(アモルファス)の酸化チタン膜を形成する。
また、80℃以上の加熱処理をした酸化チタン分散液は塗布するだけで結晶性の酸化チタン膜が形成できるため、加熱処理をできない材料のコーティング材として有用である。
【0051】
本発明において、チタンを含む水性液(d)として、酸化チタンゾルの存在下で、上記と同様の加水分解性チタン及び/又は加水分解性チタン低縮合物と過酸化水素水とを反応させて得られるチタンを含む水性液(d1)を使用することが好ましい。加水分解性チタン及び/又は加水分解性チタン低縮合物(加水分解性チタン(e))としては、上記した一般式で表される加水分解して水酸基になる基を含有するチタンモノマーやその加水分解性チタン低縮合物を使用することが好ましい。
【0052】
上記した酸化チタンゾルは、無定型チタニア、アナタース型チタニア微粒子が水(必要に応じて、例えば、アルコール系、アルコールエーテル系等の水性有機溶剤を含有しても構わない)に分散したゾルである。
【0053】
上記した酸化チタンゾルとしては従来から公知のものを使用することができる。該酸化チタンゾルとしては、例えば、(1)硫酸チタンや硫酸チタニルなどの含チタン溶液を加水分解して得られるもの、(2)チタンアルコキシド等の有機チタン化合物を加水分解して得られるもの、(3)四塩化チタン等のハロゲン化チタン溶液を加水分解又は中和して得られるもの等の酸化チタン凝集物を水に分散した無定型チタニアゾルや該酸化チタン凝集物を焼成してアナタース型チタン微粒子としこのものを水に分散したものを使用することができる。
【0054】
無定形チタニアの焼成は少なくともアナターゼの結晶化温度以上の温度、例えば、400℃〜500℃以上の温度で焼成すれば、無定形チタニアをアナターゼ型チタニアに変換させることができる。該酸化チタンの水性ゾルとして、例えば、TKS−201(テイカ社製、商品名、アナタース型結晶形、平均粒子径6nm)、TA−15(日産化学社製、商品名、アナタース型結晶形)、STS−11(石原産業社製、商品名、アナタース型結晶形)等が挙げられる。
【0055】
加水分解性チタン(e)と過酸化水素水とを反応させるために使用する際の上記酸化チタンゾルとチタン過酸化水素反応物との重量比率は1/99〜99/1、好ましくは約10/90〜90/10範囲である。重量比率が1/99未満になると安定性、光反応性等酸化チタンゾルを添加した効果が見られず、99/1を越えると造膜性が劣るので好ましくない。
【0056】
加水分解性チタン(e)と過酸化水素水との混合割合は、加水分解性チタン(e)10重量部に対して過酸化水素換算で0.1〜100重量部、特に1〜20重量部の範囲内が好ましい。過酸化水素換算で0.1重量部未満になるとキレート形成が十分でなく白濁沈殿してしまう。一方、100重量部を超えると未反応の過酸化水素が残存し易く貯蔵中に危険な活性酸素を放出するので好ましくない。
【0057】
過酸化水素水の過酸化水素濃度は特に限定されないが3〜30重量範囲内であることが取り扱いやすさ、塗装作業性に関係する生成液の固形分の点で好ましい。
【0058】
また、水性液(d1)は、酸化チタンゾルの存在下で加水分解性チタン(e)を過酸化水素水と反応温度1〜70℃の範囲内で10分〜20時間反応させることにより製造できる。
【0059】
水性液(d1)は、加水分解性チタン(e)を過酸化水素水と反応させることにより、加水分解性チタン(e)が水で加水分解されて水酸基含有チタン化合物を生成し、次いで過酸化水素が生成した水酸基含有チタン化合物に配位するものと推察され、この加水分解反応及び過酸化水素による配位が同時近くに起こることにより得られたものであり、室温域で安定性が極めて高く長期の保存に耐えるキレート液を生成する。従来の製法で用いられる水酸化チタンゲルはTi−O−Ti結合により部分的に三次元化しており、このゲルと過酸化水素水を反応させた物とは組成、安定性に関し本質的に異なる。また、酸化チタンゾルを使用することにより、合成時に一部縮合反応が起きて増粘するのを防ぐようになる。その理由は縮合反応物が酸化チタンゾルの表面に吸着され、溶液状態での高分子化を防ぐためと考えられる。
【0060】
また、チタンを含む水性液(d1)を80℃以上で加熱処理あるいはオートクレーブ処理を行うと結晶化した酸化チタンの超微粒子を含む酸化チタン分散液が得られる。80℃未満では十分に酸化チタンの結晶化が進まない。このようにして製造された酸化チタン分散液は、酸化チタン超微粒子の粒子径が10nm以下、好ましくは1nm〜6nmの範囲である。また、該分散液の外観は半透明状のものである。該粒子径が10nmより大きくなると造膜性が低下(1μm以上でワレを生じる)するので好ましくない。 この分散液も同様に使用することができる。
【0061】
チタンを含む水性液(d1)は、鋼鈑材料に塗布乾燥、または低温で加熱処理することにより、それ自体で付着性に優れた緻密な酸化チタン膜を形成できる。
【0062】
加熱処理温度としては、例えば200℃以下、特に150℃以下の温度で酸化チタン膜を形成することが好ましい。
【0063】
チタンを含む水性液(d1)は、上記した温度により水酸基を若干含むアナタース型の酸化チタン膜を形成する。
【0064】
上記したチタンを含む水性液(d)の中でも、加水分解性チタン(e)を使用した上記水性液や水性液(d1)は貯蔵安定性、耐食性などに優れた性能を有するのでこのものを使用することが好ましい。
【0065】
チタンを含む水性液(d)の表面処理組成物中の含有量は固形分で1〜100g/L好ましくは5〜50g/Lの範囲内が、処理液の安定性などの点から適している。
【0066】
チタン系表面処理剤(B)は、上記チタンを含む水性液(d)を必須成分として含有するものであるが、さらに必要に応じてリン酸系化合物、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩及び有機酸から選ばれる少なくとも1種の化合物(f)を含有することができ、チタン系表面処理剤(B)の貯蔵安定性及び耐食性の観点から、化合物(f)を含有することが好ましい。これらの化合物は1種でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0067】
上記リン酸系化合物としては、例えば、亞リン酸、強リン酸、三リン酸、次亞リン酸、次リン酸、トリメタリン酸、二亞リン酸、二リン酸、ピロ亞リン酸、ピロリン酸、メタ亞リン酸、メタリン酸、リン酸(オルトリン酸)、及びリン酸誘導体等のモノリン酸類及びこれらの塩類、トリポリリン酸、テトラリン酸、ヘキサリン酸、及び縮合リン酸誘導体等の縮合リン酸及びこれらの塩類等が挙げられる。これらの化合物は1種もしくは2種以上組合せて使用することができる。また、上記した塩を形成するアルカリ化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等の有機又は無機アルカリ化合物が挙げられる。さらに、リン酸系化合物として水に溶解性のあるものを使用することが好ましい。
【0068】
リン酸系化合物としては、特に、リン酸、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、メタリン酸、メタリン酸アンモニウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどが、塗布剤の貯蔵安定性又は塗膜の防錆性等に優れた効果を発揮することから、このものを使用することが好ましい。
【0069】
上記、金属弗化水素酸及び金属弗化水素酸塩としては、例えば、ジルコニウム弗化水素酸、チタン弗化水素酸、珪弗化水素酸、ジルコニウム弗化塩、チタン弗化塩、珪弗化塩などを挙げることができる。金属弗化水素酸の塩を形成するものとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム等が挙げられるが、中でもカリウム、ナトリウムが好ましく、具体例として、ジルコニウム弗化カリウム、チタン弗化カリウム、珪弗化ナトリウム、珪弗化カリウムなどが挙げられる。
【0070】
上記有機酸としては、例えば、酢酸、シュウ酸、グリコ−ル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等の有機カルボン酸、有機スルフォン酸、有機スルフィン酸、フェノ−ル、チオフェノ−ル、有機ニトロ化合物、有機リン酸、1−ヒドロキシエタン−1、1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、N,N―ビス(2−ホスホエチル)ヒドロキシアミン、N,N―ビス(2−ホスホメチル)ヒドロキシアミン、2−ヒドロキシエチルホスホン酸ジメチルエーテルの加水分解物、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等の有機亞リン酸が挙げられ、これらの有機酸の塩を使用することもでる。有機酸の塩は有機酸にアルカリ化合物を配合してなるものである。該塩を形成するアルカリ化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等の有機又は無機アルカリ化合物が挙げられる。
【0071】
有機酸としては、特に、グリコ−ル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸、1−ヒドロキシエタン−1、1−ジホスホン酸等のヒドロキシル基含有有機亞リン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等のカルボキシル基含有有機亜リン酸が、塗布剤の貯蔵安定性又は塗膜の防食性等に優れた効果を発揮することから、このものを使用することが好ましい。
【0072】
化合物(f)の配合割合は、チタンを含む水性液(d)の固形分100重量部に対して1〜400重量部、特に10〜200重量部の範囲内が好ましい。
【0073】
チタン系表面処理剤(B)には、さらに必要に応じて、水性有機高分子化合物(エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアルキレングリコールなど)、塩基性中和剤、有機溶剤、増粘剤、酸化チタンゾル、界面活性剤、防菌剤、防錆剤(タンニン酸、フィチン酸、ベンゾトリアゾールなど)、着色顔料(酸化チタン粉末等)、体質顔料(マイカ、タルク、シリカ、微粉シリカ、バリタ、クレー等)、防錆顔料などの顔料類などを含有することができる。
【0074】
上記塩基性中和剤としては、アンモニア、有機アミン化合物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属等の塩基性中和剤を挙げることができ、例えば、アンモニア、エタノ−ルアミン、トリエチルアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが好ましいものとして挙げられる。
【0075】
上記有機溶剤としては、例えば、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、エチレングリコ−ル系、プロピレングリコ−ル系などの親水性溶剤を好ましいものとして挙げることができる。
【0076】
表面処理方法
本発明の処理方法は、亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材を始めに処理液(A)で処理した後、さらにチタン系表面処理剤(B)からなる表面処理皮膜をを形成するものである。
【0077】
亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材のメッキ層としては、Znメッキ、Zn−Ni合金メッキ(Ni含有率10〜15wt%)、Zn−Fe合金メッキ(Fe含有率5〜25wt%またはFe含有率60〜90wt%)、Zn−Mn合金メッキ(Mn含有率30〜80wt%)、Zn−Co合金メッキ(Co含有率3〜15wt%)、Zn−Cr合金メッキ(Cr含有率5〜30wt%)、Zn−Al合金メッキ(Al含有率3〜60wt%)等が挙げられる。また、耐食性向上を目的として、上記の各メッキ成分にCo、Fe、Ni、Cr等の合金元素、シリカ、アルミナ、難溶性クロム酸塩等の酸化物や塩類、ポリマー等を含有させることができる。
【0078】
また、上記のメッキ層のうち同種または異種のものを2種以上メッキした複層メッキとすることもできる。メッキ方法としては、電解法、溶融法、気相法のうち実施可能ないずれの方法を採用することもできるが、素地鋼板の材質の選択性の面からは電解法が最も有利である。
【0079】
上記亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の上への処理液(A)の塗装、及び処理膜上へのチタン系表面処理剤(B)の塗装は、例えば、ロールコーター、カーテンロールコーター、スプレーなどの公知の塗布方法によって塗布するか、またはこれらの塗液中に亜鉛系めっき鋼板を浸漬した後ロールや空気吹付けによって付着量をコントロールして膜を形成させることにより行うことができる。
【0080】
塗布量は乾燥膜厚として処理液(A)で通常0.05〜5g/m2、好ましくは、0.1〜3g/m2の範囲、チタン系表面処理剤(B)で通常0.05〜5g/m2、好ましくは、0.1〜3g/m2の範囲である。
【0081】
塗布液の乾燥は通常、熱風炉や誘導加熱装置などにより行うことができ、処理液(A)は、通常、素材到達最高温度が約60〜約250℃となる条件で約2秒〜約30秒乾燥させることにより、また、チタン系表面処理剤(B)は、通常、素材到達最高温度が約60〜約250℃となる条件で約2秒〜約30秒乾燥させることにより行うことができる。
【0082】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものとする。
【0083】
処理液(A)の製造
製造例1〜12
後記表1に示す配合に従って各処理液を製造した。なお、表1における各原料の配合量は水溶液である処理液1リットル中の固形分重量(g)で表示した。なお、処理液A10〜A12は比較例用に製造した。
【0084】
【表1】
【0085】
表1における(注1)および(注2)の原料は、各々下記の内容のものである。
(注1)スノーテックスO:日産化学工業社製、コロイダルシリカ(無処理)、粒子径10〜20nm、固形分20%。
(注2)スノーテックスC:日産化学工業社製、コロイダルシリカ(アルミナ処理)、粒子径10〜20nm、固形分20%。
【0086】
チタン系水性液の製造
製造例13
四塩化チタン60%溶液5ccを蒸留水で500ccとした溶液にアンモニア水(1:9)を滴下し、水酸化チタンを沈殿させた。蒸留水で洗浄後、過酸化水素水30%溶液を10cc加えかき混ぜ、チタンを含む黄色半透明の粘性のあるチタン系水性液(T1)を得た。
【0087】
製造例14
テトラiso−プロポキシチタン10部とiso−プロパノール10部の混合物を30%過酸化水素水10部と脱イオン水100部の混合物中に20℃で1時間かけて撹拌しながら滴下した。その後25℃で2時間熟成し黄色透明の少し粘性のあるチタン系水性液(T2)を得た。
【0088】
製造例15
チタン系水性液(T2)の製造例のテトラiso−プロポキシチタンの代わりにテトラn−ブトキシチタンを使用して同様の製造条件でチタン系水性液(T3)を得た。
【0089】
製造例16
チタン系水性液(T2)の製造例のテトラiso−プロポキシチタンの代わりにテトラiso−プロポキシチタンの3量体を使用して同様の製造条件でチタン系水性液(T4)を得た。
【0090】
製造例17
チタン系水性液(T2)の製造例において過酸化水素水を3倍量用い50℃で1時間かけて滴下しさらに60℃で3時間熟成しチタン系水性液(T5)を得た。
【0091】
製造例18
チタン系水溶液(T3)を95℃で6時間加熱処理し、白黄色の半透明なチタン系水性液(T6)を得た。
【0092】
製造例19
テトラiso−プロポキシチタン10部とiso−プロパノール10部の混合物を、TKS−203(テイカ(株)製、酸化チタンゾル)を5部(固形分)、30%過酸化水素水10部、脱イオン水100部の混合物中に10℃で1時間かけて撹拌しながら滴下した。その後10℃で24時間熟成し黄色透明の少し粘性のあるチタン系水性液(T7)を得た。
【0093】
チタン系表面処理剤(B)の製造
製造例20〜29
後記表2に示す配合に従って各チタン系表面処理剤を製造した。なお、表2における配合は固形分量で示した。また、各表面処理剤は脱イオン水により固形分2%に調整した。なお、チタン系表面処理剤B8及びB9は比較例用に製造した。
【0094】
【表2】
【0095】
表2における(注3)〜(注5)の原料は、各々下記の内容のものである。
(注3)ニカゾールRX−672A:日本カーバイト工業社製、アクリル樹脂エマルション、固形分40%。
(注4)クラレRSポリマーRS−105:クラレ社製、ポリビニルアルコール、固形分10%。
(注5)アデカボンタイターUX−206:旭電化工業社製、ウレタン樹脂エマルション、固形分36%。
【0096】
試験塗板の作成
実施例1〜9及び比較例1〜7
板厚0.6mmの各種めっき鋼板(使用しためっき鋼板の種類およびその略号を後記表4に示す)を用い、後記表3に示す組み合わせにて下記処理工程で処理を行い各試験塗板を得た。
▲1▼ アルカリ脱脂
▲2▼ 水洗
▲3▼ 処理液(A)処理:前記表1に示す組成の処理液を使用し、浴温30℃の処理液に60秒間浸漬した。
▲4▼ 水洗
▲5▼ 水切り乾燥
▲6▼ チタン系表面処理剤(B)処理:前記表2に示す組成のチタン系表面処理剤を使用し、浴温30℃で30秒間浸漬処理した。
▲7▼ 焼き付け乾燥:雰囲気温度150℃で10分間行った。
【0097】
試験塗板の評価
上記で得られた各試験塗板について、裸耐食性を評価した。
【0098】
また、各試験塗板にマジクロン#1000ホワイト(関西ペイント社製、熱硬化型アクリル樹脂塗料、白色)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、160℃で20分間焼き付けて上塗塗装板を得た。得られた上塗塗装板について上層塗膜密着性及び耐食性(平面部及ぶカット部)を評価した。
【0099】
各評価は、下記試験方法に従って行った。結果を後記表3に記す。
【0100】
試験方法
裸耐食性:処理板の端面部及び裏面部をシールした試験塗板にJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を240時間まで行い、試験時間72、120及び240時間での錆の程度を下記基準により評価した。
a:白錆の発生が認められない、
b:白錆の発生程度が塗膜面積の5%未満、
c:白錆の発生程度が塗膜面積の5%以上で10%未満、
d:白錆の発生程度が塗膜面積の10%以上で50%未満、
e:白錆の発生程度が塗膜面積の50%以上。
【0101】
上層塗膜密着性:上塗塗装板の塗膜面にナイフにて素地に達する縦横各11本の傷を碁盤目状に入れて1mm角のマス目を100個作成した。この碁盤目部にセロハン粘着テープを密着させて瞬時にテープを剥がした際の上層塗膜の剥離程度を下記基準により評価した。
a:上層塗膜の剥離が全く認められない、
b:上層塗膜の剥離が1〜2個認められる、
c:上層塗膜の剥離が3〜9個認められる、
d:上層塗膜の剥離が10個以上認められる。
【0102】
耐食性(平面部):上塗塗装板の端面部及び裏面部をシールした試験塗板に、JIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を120時間まで行い錆の程度を下記基準により評価した。
a:白錆の発生が認められない、
b:白錆の発生程度が塗膜面積の5%未満、
c:白錆の発生程度が塗膜面積の5%以上で10%未満、
d:白錆の発生程度が塗膜面積の10%以上で50%未満、
e:白錆の発生程度が塗膜面積の50%以上。
【0103】
耐食性(カット部):上塗塗装板の端面部及び裏面部をシールした試験塗板の塗膜面にナイフにて素地に達するクロスの傷を入れて、JIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を120時間まで行い、クロスの傷にセロハン粘着テープを密着させて瞬時にテープを剥がした際の上層塗膜の剥離幅を下記基準により評価した。
a:剥離幅1mm未満、
b:剥離幅1mm以上、3mm未満、
c:剥離幅3mm以上、5mm未満、
d:剥離幅5mm以上。
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【発明の効果】
本発明の亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の表面処理方法は、クロム系化合物を含有しない表面処理組成物による表面処理でありながら、クロム系表面処理に匹敵する防食性に優れた皮膜を形成することができ、ノンクロム系防錆鋼板には特に有用である。
Claims (6)
- 亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材を、シリカ(a)、鉱酸(b)、並びにTi、Zr、Co、V、W及びMoから選ばれる金属の金属カチオン、該金属のオキシ金属アニオン及び該金属のフルオロ金属アニオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオン(c)を含有する処理液(A)で処理した後、加水分解性チタン、加水分解性チタン低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタン低縮合物から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを反応させて得られるチタンを含む水性液(d)を含有してなるチタン系表面処理剤(B)を塗布乾燥してなるチタン系表面処理皮膜を形成させることを特徴とする亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の表面処理方法。
- 鉱酸(b)が、硝酸、硫酸、塩酸、フッ酸、リン酸及び6フッ化珪酸から選ばれる少なくとも1種の酸である請求項1に記載の亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の表面処理方法。
- 処理液(A)が、シリカ(a)を0.001〜3.0mol/l、鉱酸(b)を0.001〜1.0mol/l及び金属イオン(c)を0.001〜1.0mol/l含有するものである請求項1に記載の亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の表面処理方法。
- チタン系表面処理剤(B)が、チタンを含む水性液(d)並びにリン酸系化合物、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩及び有機酸から選ばれる少なくとも1種の化合物(f)を含有してなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の表面処理方法。
- チタン系表面処理剤(B)が、チタンを含む水性液(d)の固形分100重量部に対して、化合物(f)を1〜400重量部の範囲内で含有するものである請求項4に記載の亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材の表面処理方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の表面処理方法を用いて得られる防食被覆亜鉛又は亜鉛系合金メッキ材。
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