JP2004052054A - 鍛造用アルミニウム合金材料およびその連続鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鍛造用アルミニウム合金材料の溶湯を鋳型2に通して連続鋳造するにあたり、材料の凝固界面mが、鋳型2の排出側のエッジ2bから鋳型2の内側寄りに位置するよう鋳造速度を制御し、表面に生成した偏析層の厚さが0.1〜2mmであり、かつ、表面の面粗度がRa35以下の鍛造用アルミニウム合金材料を得る。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鍛造用アルミニウム合金材料およびその連続鋳造方法に係り、特に自動車用部品等の高強度、高靱性が要求される部品を廉価で量産可能とすることを目的とした技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム等の軽金属の鍛造は、円形断面の押出し、あるいは連続鋳造、半連続鋳造、重力鋳造等の鋳造によって製造されたビレットを所定温度に加熱して型打ち鍛造する方法が一般的であり、鍛造によって材料は所望の強度および靱性に鍛錬される。アルミニウム合金の鍛造品の製造過程は、概ね次の如くである。
すなわち、地金溶解・合金配合、ビレット連続鋳造、ビレット切断、ピーリング(表面の皮むき)、均質化処理を経たビレットを350〜550℃に再加熱して熱間鍛造し、所定の製品形状を得る。ところでこのような方法では、多くの工程を要することが課題であり、また、バリ等の不要部分が生じ、それをスクラップとして処理する必要があることから、コストが高いものになっている。鍛造に要するコストの中で材料費の占める割合は例えば約3割以上と高く、したがって廉価な鍛造品を得るためには、鍛造に供する素材の製造コストをいかに低減するかが重要である。
【0003】
そこで、鍛造用のアルミニウム合金素材を製造する方法としては、次に挙げる方法がある。
▲1▼DC(Direct Chill)鋳造法やホットトップ連続鋳造法
連続鋳造法により鋳造した棒材の表面をピーリングし、必要な長さに切断して素材を得る。
▲2▼連続鋳造材の押出し丸棒または形材
連続鋳造法により鋳造した棒材を熱間にて円形断面または異形断面に押出し加工して素材を得る。
▲3▼異形連続鋳造ビレット
連続鋳造法により鋳造した異形断面の材料をスライスしてビレットを得る。
▲4▼鋳造製品を鍛造素材に用いる(鋳造鍛造)
ニアネットシェイプ(製品に近似した形状)に鋳造した素材に対して軽い鍛造処理を加えて素材を得る。
▲5▼断熱鋳型連続鋳造法
鋳型を断熱構造とし、鋳型下端から噴出させた冷却水で冷却しながら鋳造することにより、鋳型との接触を極力少なくする鋳造法でビレットを得る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記▲1▼の方法では、鋳型との周期的な接触やヘッダーと鋳型の境界でリップルもしくはラップスと呼ばれる周期的な逆偏析層が生成し、このままの表面で鍛造すると表面に凹凸が転写され傷となり品質が低下する。これを回避するため、生成した逆偏析層を切削して除去するピーリングを行っているが、そのための設備に費用がかかるので製造コストの上昇を招いている。また、気体加圧式ホットトップ鋳造法は、平滑な鋳肌を得るための気体加圧の条件コントロールが煩雑であり、しかも装置が複雑で設備が高価になってしまう欠点があった。
【0005】
上記▲2▼の方法では、工程数が比較的多いためコストの高騰を招く。また、表面が粗大な再結晶組織となることは避けられず粒界腐食を招くことから、腐食時の強度低下が懸念される。なお、特開平7−197216号公報によれば、圧縮残留応力を与えることによって熱処理型合金の6000系アルミニウム合金の疲労強度と耐粒界腐食性が向上するとされているが、圧縮残留応力を与える工程が増えるのでコストの上昇を招く。また、特開平7−150312号公報によれば、押出し加工前の均質化処理を省略することで表面の粗大な再結晶化を抑制しようとしているが、押出し加工を要することから工程減に伴う抜本的な低廉化にはつながらない。
【0006】
上記▲3▼の方法で得られるビレットは表面品質が▲1▼の方法で得られる素材と同等であり、したがって同様の課題を抱えている。また、鋳型の冷却構造が複雑になるので設備が高価となり、製造コストの高騰を招く。
【0007】
上記▲4▼の方法では、鋳造工程および鍛造工程ごとに最終形状に相当する鋳型および金型が必要であることに加え、複雑な形状に鋳造するので大量生産のために自動化し難いといった問題が生じる。また、複雑な形状に鋳造するためSiを添加して鋳造性を高める必要があるが、Siの添加は鍛造性を低下させるといったデメリットがある。また、鋳造後の加工度が比較的低いので、鋳造組織が残留しやすく、靱性や強度も通常の鍛造品より低い上に、鋳巣等の鋳造上の欠陥を検査する必要があり、安定した品質を得るには至っていない。
【0008】
上記▲5▼の方法では、比較的平滑な鋳肌を得ることができるのでピーリングを不要とするが、連続鋳造時にビレット表面に発生する偏析層の隆起した突起が、均質化処理時に溶融したり鍛造時にかぶり傷を誘発したりすることがあり、安定した平滑面を得にくいという問題があった。
【0009】
上記▲1▼〜▲5▼の他に、新技術として電磁鋳造法が提唱されているが、これは電磁遮蔽等の特殊な設備が必要となるので設備費が高騰し、低コストで製造することが困難である。
【0010】
一般に材料コストをできるだけ抑えることが部品を安価に提供する上で必要となるが、押出し加工は工程数が多く生産性の良い小さな部品や前方または後方押出しとする冷間鍛造に限られる。そして、例えばサスペンション等の大型の自動車部品を製造する場合には大断面となるのでコストが高くなり、このため、量販車への適用が困難となり、軽量化を阻害する一因となる。
【0011】
そこで、上記のように連続鋳造または半連続鋳造によりビレットを製造すれば比較的コストの低減は図られるものの、凝固過程で鋳肌面の表面欠陥(発汗、焼き付き、リップル、ラップス等)が発生するため、そのまま鍛造すると鍛造後に表面欠陥が傷として残り、良好な品質が得られず、表面のピーリングを要することになるのでコストの高騰を招く。
【0012】
また、押出し丸棒または形材を素材としたり、連続鋳造によって製造されたビレットは、熱間加工時の金型温度や材料の予熱温度を厳密に管理しないと表面(黒皮面)の再結晶粒の粗大化が起こり、強度や伸びの低下を招く。これを回避するため、特開平1−283337号公報、特開平7−145440号公報、特開2000−144296号公報等には、Mn、Cr、Zr等を添加することにより再結晶粒の粗大化を抑制することが提案されているが、そのためには最終鍛造温度を再結晶温度以上の高温とする必要があり、コスト低減のため1ヒートで鍛造する工程においては加工温度が鍛造のたびに低下しやすく、結局のところ表面の粗大な再結晶粒は生じやすかった。前述のように再結晶粒の粗大化は強度や伸びの低下を招き、実際に使用される部品は、特性調査用に供する試験片とは異なり黒皮のまま使用されることが多く、実質的には表層の再結晶組織の粗大化は多くの課題を残すことになる。
【0013】
よって本発明は、連続鋳造後の鋳肌が平滑でピーリングを不要とし、鋳造材をそのまま鍛造することができ、表面に偏析層を残留させることによって再結晶粒の粗大化が抑制されて優れた靱性や強度等の特性を有する鍛造用アルミニウム合金材料およびその連続鋳造方法を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
図1(a)は、従来の断熱鋳型連続鋳造方法による鋳造メカニズムを示しており、図中2は鋳型、3は冷却水Wを鋳造材に噴出する冷却水ジャケットである。
鋳型2に形成された断面円形の排出口2aは排出側に向かって拡径するテーパ状に形成されており、溶湯は、完全液相域M1から固液共存域M2を経て完全固相域M3へと移行しながら鋳造される。ここで、完全固相域M3と固液共存域M2との境界を形成する凝固界面mは、鋳型2の排出側のエッジ2bにほぼ一致しており、したがって、同図に示すように酸化膜Sが鋳型2のエッジ2bにより局部的に破れ、固液共存域M2がしみだし表面突起が形成され、これが鋳肌の欠陥となる。本発明はこのような挙動を回避するものであり、断熱鋳型連続鋳造方法による鋳肌の平滑性を確保するためには、凝固過程で生じる安定した酸化膜と半凝固部分の弾性との作用を利用することを見出したことに基づく。
【0015】
具体的には、図1(b)に示すように、凝固界面mが鋳型2のエッジ2bよりも内側に位置するように鋳造速度を制御することにある。凝固界面mは排出口2aにおけるテーパ部分のどの位置でもよく、鋳造速度をこのように制御することにより、酸化膜Sに保護された固液共存域M2は弾力性に富むのでエッジ2bにより酸化膜Sが破られることなくスムーズに引き出され、平滑な鋳肌が確保される。鋳造棒の径はエッジ2bの径(排出口の外側の口径)よりも小さくなるが、これは生産量に応じた鋳造速度と鋳型の寸法を適宜に設定することにより問題は生じない。凝固界面はできる限りエッジ2bの近傍となるように制御することが望ましい。これにより急冷が可能となり、結晶粒の微細化が図られる。
【0016】
本発明の鍛造用アルミニウム合金材料の連続鋳造方法は上記知見から導き出されたものであり、鍛造用アルミニウム合金材料の溶湯を鋳型に通して連続鋳造するにあたり、材料の凝固界面が鋳型の排出側のエッジから鋳型の内側寄りに位置するよう鋳造速度を制御することを特徴としている。また、本発明の鍛造用アルミニウム合金材料は連続鋳造によって得られるものであって、表面に生成した偏析層の厚さが0.1〜2mmであり、かつ、表面の面粗度がRa35以下であることを特徴としている。本発明の鍛造用アルミニウム合金材料は、上記製造方法によって好適に得ることができる。なお、本発明のアルミニウム合金としては、例えば、2000系、3000系、4000系、5000系、6000系、7000系のいずれからなる群から選択される。
【0017】
従来の課題であった再結晶組織の粗大化は、不純物の度合いが高いほどピン止め効果により抑制されることが一般的に判っている。本発明によれば、従来有害視されていた偏析層を再結晶粒の粗大化を抑制するための材料としており、これによって安定した酸化膜を有し、表層に発生する中〜低負荷応力下での高い疲労強度を有する材料を得ることができる。
【0018】
本発明における鋳造速度の制御方法としては、凝固界面を鋳型の排出側のエッジから鋳型の内側寄りの範囲において、速度を一定とせず加減速を繰り返しながら行うことが挙げられる。このような鋳造速度の制御により、凝固界面の位置が常に変動し、これによって安定した平滑面を得ることができる。図2は本発明および従来の鋳造速度マップを示しており、本発明のように制御される鋳造速度を適用することにより凝固界面が微妙に移動し、アルミニウム合金と鋳型との凝着が起こりにくくなり、平滑な鋳肌が得られると考えられる。
【0019】
また、本発明のアルミニウム合金材料は、CaあるいはBeを添加させることができる。CaおよびBeは、鋳造速度の向上と表面品質の改善といった効果を発揮する。Caは添加量が0.005重量%を下回ると表面品質が改善されにくく、0.015重量%を超えると効果が発揮されない。よってCaの添加量は0.005〜0.015重量%が適切である。また、Beは0.0005重量%以上で効果が発揮され、0.0020重量%を超えると効果が発揮されない。よってBeの添加量は0.0005〜0.0020重量%が適切である。
【0020】
本発明の材料は、必要に応じて均質化処理を行うことができ、その処理方法としては、均質化処理温度を偏析層における組成成分の固相温度のマイナス20℃〜マイナス40℃の間で行う。均質化処理は、合金の種類によっては特性の安定化に不可欠なものであり、できるだけ高い温度で長時間行うことが望ましいが、固相温度以上で実施すると局部融解が発生するため、通常、固相温度マイナス10℃程度で行われることが多い。従来技術の均質化処理はピーリングを前提としているため、組織の健全化をできるだけ効率的にする上で、固相温度近傍まで加熱し、偏析層が共晶融解したり、それに伴ってガス吸着等が発生したりしても、2〜3mmのピーリングを後で行うため問題にはならない。しかしながら、本発明では鋳造材料の表面が平滑であり、後のピーリングを必要としないことから、固相温度近傍までの加熱は避けなければならず、均質化処理温度を偏析層における組成成分の固相温度のマイナス20℃〜マイナス40℃の間で行う。
【0021】
上記均質化処理は必要に応じて行われるものであり、本発明では均質化処理を行わなくとも、行ったものと同等の特性を得ることができる場合がある。また、本発明では、強度や靱性を高める観点から、鍛造後にガラスショット等のショットピーニング処理を行うと好ましい。
【0022】
【実施例】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
(1)鋳造方法の違いによる本発明の効果の検証
図3は実施例で用いた連続鋳造装置を示しており、同装置は、タンディッシュ1内のアルミニウム合金の溶湯Mが、排出側に拡径するテーパ状の鋳型2の排出口2aから鉛直下方に引き出されて冷却水ジャケット3から噴出する冷却水により冷却されて凝固し、凝固した鋳造棒Maは昇降装置4で昇降するボトムブロック5によって冷却水ピット6内に降下させられるものである。
【0023】
a.鋳造
[実施例1]
表1に示す6061アルミニウム合金を溶製し、図3で示した鋳造装置により、図1(b)に示すように凝固界面が鋳型の排出口よりも内側に位置するように鋳造速度150mm/minの降下速度でボトムブロツクを降下させ、直径83mmの円柱状のビレットを得る鋳造を行った。
[実施例2]
Caを0.0075重量%添加した6061アルミニウム合金は、Caの酸化被膜強化により凝固界面を鋳型の排出口に近づけることができるようになり、鋳造速度を170mm/minまで上げて鋳造を行った。
[比較例1]
従来のDC鋳造を適用した以外は、実施例1と同様にして鋳造を行った。
【0024】
【表1】
【0025】
b.鋳造後の表面の観察
実施例1および2の鋳造ビレットの写真を、それぞれ図4(a),(b)に示す。また、比較例1の鋳造ビレットの写真を図4(c)に示す。これら図で判るように、実施例1および2の鋳造ビレットの表面は押出し材と同等の平滑な鋳肌を呈しているが、比較例1の鋳造ビレットの表面には凹凸が認められた。
【0026】
c.偏析層の厚さ
実施例1,2および比較例1の鋳造ビレットの偏析層の厚さを調べた。厚さの測定方法は、以下の方法で行った。鋳造方向に対して垂直に切断した切断面を鏡面に研磨した後、エッチング液に浸漬して組織の濃淡が鮮明になるように処理を行い、この後、金属顕微鏡で切断面の組織写真を撮影し、偏析層の厚さをスケールで測定する。なお、偏析層とは表層から結晶粒径が一定に落ち着くまでの範囲を示す。その結果を、表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
d.均質化処理
実施例1および比較例1のビレットを所定長さに切断し、これを偏析層の組成の固相温度マイナス30℃である530℃で8時間加熱する均質化処理を行った。なお、実施例1のビレットはピーリングを行わずに均質化処理し、比較例1のビレットは表面を2〜3mm切削するピーリングを行った後に均質化処理した。
なお、偏析層の組成および固相温度は、次のようにして求めた。まず、偏析層部分の成分をX線マイクロアナライザの1種であるEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)によって分析し、続いて、偏析層よりも内部の部分の成分を同様にして分析し、これらデータと発光分光あるいは湿式分析の整合性を確認した後、偏析層のEPMA値をほぼ正確な数値として取り扱い、サーモカルク等の凝固解析ソフトにて偏析層の固相温度を求める。表1に、6061と6110のアルミニウム合金のEPMAによる偏析層および内部の切削面の成分、発光分光による切削面の成分、固相温度、液相温度を示す。
【0029】
e.鍛造
均質化処理しなかった実施例2のビレットを所定長さに切断し、これと均質化処理した実施例1および比較例1のビレットを鍛造した。鍛造は、図6のA〜Eの工程のように、切断したビレットを曲げ、このビレットを金型内に横向き(金型内面に対して鋳造方向が平行)にして、潰し、荒打ち、仕上げ打ちの手順で鍛造し、同図に示す形状の鍛造品を得る。この方向で鍛造することにより、表面の偏析層が万遍なく拡がり、再結晶粒の粗大化が効果的に抑制される。
【0030】
f.鍛造後の表面の観察
実施例1,2および比較例1の鍛造品の写真を、それぞれ図5(a)〜(c)に示す。これら図で判るように、実施例1および2の鍛造品の表面は平滑であったのに比べ、比較例1の鍛造品の表面には凹凸が認められ、疲労強度に劣ることが推測される品質となっている。
【0031】
g.溶体化処理および時効処理
実施例1,2および比較例1の鍛造品に対し、535℃で8時間加熱する溶体化処理を行い、次いで、水温60℃で焼入れ処理した後、170℃で5時間加熱する時効処理を行った。
【0032】
h.引張り試験および面粗度の測定
上記gの処理を施した実施例1,2および比較例1の鍛造品につき、引張り試験を行って引張り強さ(MPa)、耐力(MPa)および伸び(%)を求めた。
また、面粗度を表面粗さ測定器(東京精密社製:サーフコム550AD)を求めた。その結果を表2に示す。表2の測定結果によれば、実施例1,2の鍛造品の引張り試験結果は比較例1のものと遜色がなく、しかも、面粗度はより平滑なものとなっている。特に実施例2では均質化処理を行わなかったにもかかわらず同等の特性が得られており、したがって、大幅なコストの削減ならびに軽量化を達成することができることが明らかとなった。
【0033】
(2)ピーリング、ガラスショットの検証
[実施例3]
上記実施例1による鋳造ビレットをピーリングなし、均質化処理なしのまま加熱温度480℃で据え込み鍛造し、直径を20%まで減じた鍛造素材を得た。この素材に535℃で4時間の溶体化処理を行い、次いで水温60℃で焼き入れ処理した後、170℃で5時間加熱する時効処理を行うT6処理を施して鍛造素材を得た。
[実施例4]
実施例1の鋳造ビレットに、530℃で8時間加熱する均質化処理を行い、
実施例3と同様の鍛造とT6処理を施して鍛造素材を得た。
[実施例5]
実施例4の鍛造素材にガラスショットを施して、実施例5の鍛造素材を得た。
【0034】
[比較例2]
鋳造ビレットに対して外皮を0.1mm切削するピーリングを行った以外は、実施例4と同様にして比較例2の鍛造素材を得た。
[比較例3]
鋳造ビレットに対して外皮を1mm切削するピーリングを行った以外は、実施例4と同様にして比較例3の鍛造素材を得た。
[比較例4]
気体加圧式ホットトップ鋳造法によってビレットを鋳造した後、530℃で8時間加熱する均質化処理を行い、鋳造ビレットに対し外皮を3mm切削するピーリングした後、実施例3と同様の鍛造とT6処理を施して比較例4の鍛造素材を得た。
【0035】
上記実施例3〜5および比較例2〜4の鍛造素材につき、表層が残るように採取した試験片にて引張り試験を行い、引張り強さ(MPa)、耐力(MPa)および伸び(%)を求めた。また、平面曲げ疲労試験片を作成して平面曲げ疲労試験を行い、破損確率10%の統計値を求めた。これらの結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
引張り試験の結果によると特性に大きな変化はなく、ピーリングの有無にかかわらず伸びと耐力は高いレベルを維持している。これは、表層の再結晶化を抑制する効果が低負荷応力における特性向上に大きな効果を発揮することを示唆している。また、疲労強度に関しては、比較例よりも実施例が概ね高い値を示しており、ピーリングを行わないと再結晶が抑制されることが確認できた。また、実施例5では疲労強度が大幅に向上しており、ガラスショット処理が有効であることが判った。
【0038】
(3)応力腐食割れ性の検証
[実施例6]
上記実施例4の手法によって板状のアルミニウム合金(6061)の鍛造素材を得、これから所定形状の応力腐食割れ性試験片を切り出した。
[実施例7]
表1のアルミニウム合金(6110)を520℃で8時間加熱する均質化処理を行い、ピーリングを行わずに実施例3と同様の鍛造と熱処理を実施して板状のアルミニウム合金の鍛造素材を得、これから所定形状の応力腐食割れ性試験片を切り出した。
[比較例5]
上記実施例4の手法によって板状のアルミニウム合金(6061)の鍛造素材を得、これに対し切削加工にて表面から偏析層を含んだ厚さ1mmを除去した後、所定形状の応力腐食割れ性試験片を切り出した。
[比較例6]
表1のアルミニウム合金(6110)を、上記実施例1の手法によって鋳造したビレットの外皮を1mm切削するピーリングを行った以外は実施例7と同様にして板状に鍛造し、これから所定形状の応力腐食割れ性試験片を切り出した。
【0039】
上記実施例6,7および比較例5,6の試験片を用い、煮沸クロム酸腐食試験および複合腐食試験を行った。煮沸クロム酸腐食試験は、応力腐食割れ試験期間を短縮させる促進液としてCrO3:36g/l−K2Cr2O7:30g/l−NaCl:3g/lを用い、これを沸騰させた中に、試験応力を耐力実力値の85%に設定した試験片を浸漬し、5時間後に取り出してクラックの発生の有無を観察した。複合腐食試験は、塩水浸漬、噴霧、乾燥、湿潤、乾燥を交互に繰り返す試験炉の中に、試験応力を耐力実力値の85%に設定した試験片を投入し、7200時間後に取り出してクラックの発生の有無を観察した。これらの試験結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
(4)均質化処理温度の検証
実施例1の手法によって鋳造した6061アルミニウム合金のビレットに対する均質化処理を、表5に示すように500℃、520℃、540℃、560℃、580℃でそれぞれ8時間加熱することにより行った。また、実施例1の手法によって鋳造した6110アルミニウム合金のビレットを、同じく500℃、520℃、540℃、560℃、580℃でそれぞれ8時間加熱して均質化処理を行った。これらビレットにつき、表層に共晶融解の発生の有無を調べ、さらに、鍛造後のブリスター(膨れ)の発生の有無を調べた。その結果を表5に示す。
【0042】
【表5】
【0043】
表5によれば、6061合金では、均質化温度が540℃を超えると表層に共晶融解の発生の痕跡が見られ、これを鍛造すると、溶体化処理後にブリスターが発生した。従来、均質化処理温度は540〜560℃で行っており、この温度範囲では不適切であるとともに、下限温度が520℃を下回ると組織の均一性が不十分であることが判った。よって、均質化処理温度は520〜540℃未満が適切であり、すなわち均質化温度は偏析層の固相温度(6061は559℃)に対してマイナス20℃〜マイナス40℃が適切である。そこで、偏析層の固相温度が552℃である6110合金における適切な均質化処理温度は510〜530℃と推測され、実際にこの温度範囲では共晶融解ならびに鍛造後のブリスターは発生せず、均質化処理温度は偏析層の固相温度に対してマイナス20℃〜マイナス40℃が適切であることが実証された。
【0044】
(5)添加元素の効果
表6に示す添加量のBeおよびCaを添加した6061アルミニウム合金を実施例1の手法により鋳造し、鋳肌を観察した。その結果を表6に併記する。表6によれば、Beに関しては0.0005〜0.0020重量%の添加により平滑な鋳肌が得られ、Caに関しては0.005〜0.015重量%の添加により平滑な鋳肌が得られた。
【0045】
【表6】
【0046】
(6)鋳造速度の検証
上記実施例1の鋳造方法において、鋳造速度を150mm/min前後で微妙に増減させて鋳造した。一方、鋳造速度を170mm/minで一定とし、鋳造を行った。図7の(a)は鋳造速度を増減させた鋳造棒であり、(b)は鋳造速度が一定の鋳造棒を示している。図7で明らかなように、鋳造速度を増減させた場合には鋳肌が平滑であり、一方、鋳造速度が一定の場合には鋳肌に荒れが認められた。また、図7(a)には均質化処理後の断面のミクロ組織を示しており、これによると共晶融解は生じておらず、共晶部分が球状化した健全な組織が得られた。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、連続鋳造時における材料の凝固界面を鋳型の排出側のエッジから鋳型の内側寄りに位置するよう鋳造速度を制御して、表面に生成した偏析層の厚さが0.1〜2mmであり、かつ、表面の面粗度がRa35以下の鍛造用アルミニウム合金材料を得るので、連続鋳造後の鋳肌が平滑でピーリングを不要とし、鋳造材をそのまま鍛造することができ、しかも優れた靱性や強度等の特性を有するといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は従来の鋳造のメカニズムを示す断面図、(b)は本発明の鋳造のメカニズムを示す断面図である。
【図2】本発明および従来の鋳造速度のマップを示す図である。
【図3】実施例で用いた連続鋳造装置の概略的構成を示す断面図である。
【図4】(a)〜(c)は実施例で鋳造されたビレットの写真である。
【図5】(a)〜(c)は実施例の鍛造品の写真である。
【図6】実施例の鍛造工程図である。
【図7】実施例で鋳造したビレットの写真であって、(a)は鋳造速度を増減させた場合、(b)は鋳造速度が一定の場合である。
【符号の説明】
2…鋳型、2b…エッジ、m…凝固界面。
Claims (4)
- 連続鋳造によって得られた鍛造用アルミニウム合金材料であって、表面に生成した偏析層の厚さが0.1〜2mmであり、かつ、表面の面粗度がRa35以下であることを特徴とする鍛造用アルミニウム合金材料。
- 0.005〜0.015重量%のCaが添加されていることを特徴とする請求項1に記載の鍛造用アルミニウム合金材料。
- 0.0005〜0.0020重量%のBeが添加されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鍛造用アルミニウム合金材料。
- 鍛造用アルミニウム合金材料の溶湯を鋳型に通して連続鋳造するにあたり、材料の凝固界面が、鋳型の排出側のエッジから鋳型の内側寄りに位置するよう鋳造速度を制御することを特徴とする鍛造用アルミニウム合金材料の連続鋳造方法。
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