JP2004051895A - 樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルからなる優れた機械的物性を有し、成型時の金型離型性に優れた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリフェニレンスルフィド(a)5〜95重量%とポリフェニレンエーテル(b)95〜5重量%からなる樹脂組成物100重量部に、特定不飽和モノマーを有す共重合体(c)0.3〜20重量部、さらにa+b+c=100重量部に、特定ポリオレフィン樹脂0.2〜5重量部を配合した樹脂組成物。
【選択図】 選択図なし。

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は電気・電子分野、自動車分野、その他の各種工業材料分野で利用できる耐油性、耐薬品性、耐熱性、耐衝撃性、剛性に優れた樹脂組成物に関し、さらには、成形加工材料としての金型離型性に優れた樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、非強化のポリフェニレンスルフィドは、その結晶性に起因して流動特性が良好で、耐熱性、耐水性に優れるため電子分野で利用されているが成形材料として、靱性(衝撃強度)に劣る欠点を有するため各種成形品(特に大型成形品)に利用することが困難である。
【0003】
このためポリフェニレンスルフィドのこれらの欠点を解消するため各種樹脂、各種熱可塑性エラストマー等とブレンドまたはアロイ化する試みが数多く提案されている。例えば、特公昭56−34032号公報にはポリフェニレンオキサイド類とポリフェニレンスルフィド類から成る成形性、難燃性に優れた樹脂組成物が提案されており、また、本出願人が提案した特開昭58−27740号公報には、ポリフェニレンスルフィドや他のエンジニアリング樹脂とα,β−不飽和カルボン酸の誘導体で変性した水添ブロック共重合体からなる、耐衝撃性、耐界面剥離性に優れた変性ブロック共重合体組成物が提案されており、さらに同様に本出願人が提案した特開昭58−40350号公報には、ポリフェニレンスルフィドや他のエンジニアリング樹脂とα,β−不飽和カルボン酸の誘導体で変性した水添ブロック共重合体およびエポキシ基含有重合体から成る耐衝撃性に優れた熱可塑性グラフト共重合体組成物がある。そして特開昭58−154757号公報にはポリアリレーンサルファイドとα−オレフィン/α,β−不飽和酸のグリシジルエステル共重合体からなる耐衝撃性、成形加工性に優れたポリアリレーンサルファイド樹脂組成物が提案されており、特開昭59−207921号公報にはポリフェニレンスルフィドと不飽和カルボン酸またはその無水物またはその誘導体をグラフト共重合したポリオレフィンおよびエポキシ樹脂からなる耐衝撃性に優れた組成物が提案されており、さらに特開昭62−153343号公報、特開昭62−153344号公報、特開昭62−153345号公報には特定のポリフェニレンスルフィドとα−オレフィン/α,β−不飽和酸のグリシジルエステル共重合体からなる耐衝撃性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が提案されている。そしてさらに特開昭62−169854号公報、特開昭62−172056号公報、特開昭62−172057号公報にも特定のポリフェニレンスルフィドと不飽和カルボン酸またはその無水物またはその誘導体をグラフト共重合したポリオレフィンからなる耐衝撃性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が提案されている。
【0004】
同様に、特開平01−266160号公報および特開平02−75656号公報には、酸変性ポリフェニレンエーテルと変性ポリフェニレンスルフィドの混和性改良にスチレンとオキサゾニル基を有するエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を用いる方法が提案され、特開平03−20356号公報には、ポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルの混和性改良にスチレンとオキサゾニル基を有するエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を用いる方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、これら先行技術に開示されたポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルからなる樹脂組成物は機械的物性の改良はなされているものの、成形材料として重要な特性である成形加工性、特に金型離型性の点では必ずしも満足できるものではなかった。通常、金型離型不良現象が発生した場合、成形加工工場に於いては成形時の金型内冷却時間を延長したり、更には金型温度を下げる対策がなされているが、この対策では成形サイクルの延長による生産性の悪化や成形品外観不良を招く場合があり、成形材料として金型離型性に優れた材料が強く求められていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルからなる樹脂組成物の優れた機械的物性を損なうことなく、成型時の金型離型性に優れた樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような現状に鑑み、ポリフェニレンスルフィド樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂からなる樹脂組成物において、金型離型性に関し鋭意検討を重ねた結果、特定のポリオレフィン樹脂を添加することで、機械的物性を損なうことなく、成型時の金型離型性に優れた樹脂組成物が得られることを見いだし本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂          5〜95重量%、
(b)ポリフェニレンエーテル樹脂           95〜5重量%、
ならびに(a)成分と(b)成分の合計100重量部あたり
(c)エポキシ基およびまたはオキサゾニル基を有する不飽和モノマーを0.3〜20重量%の割合でスチレンを主たる成分とするモノマーと共重合してなる共重合体                        1〜20重量部、
上記(a)〜(c)成分の合計100重量部に対して、
【0009】
(d)ポリオレフィン樹脂               0.2〜5重量部
さらに(a)〜(d)成分の合計100重量部あたり
(e)無機フィラー                  0〜150重量部
を含む金型離型性に優れる樹脂組成物において、(a)〜(d)成分の全量を溶融混練し、次いで(e)成分を供給し、さらに溶融混練を続けて行う製法で製造する事を特徴とする樹脂組成物に関するものである。
【0010】
本発明の(a)成分のポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPSと略記する)は、基本的にはパラフェニレンスルフィド骨格を70モル%以上、好ましくは90モル%以上からなるポリフェニレンスルフィドである。
これら上記したPPSの製造方法は、通常、ハロゲン置換芳香族化合物、例えばp−ジクロルベンゼンを硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、極性溶媒中で硫化ナトリウムあるいは硫化水素ナトリウムと水酸化ナトリウムまたは硫化水素と水酸化ナトリウムあるいはナトリウムアミノアルカノエートの存在下で重合させる方法、p−クロルチオフェノールの自己縮合等が挙げられるが、中でもN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンを反応させる方法が適当である。なお、これらの製造方法は公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第2513188号明細書、特公昭44−27671号公報、特公昭45−3368号公報、特公昭52−12240号公報、特開昭61−225217号公報および米国特許第3274165号明細書、英国特許第1160660号明細書さらに特公昭46−27255号公報、ベルギー特許第29437号明細書、特開平5−222196号公報、等に記載された方法やこれら特許等に例示された先行技術の方法で得ることが出来る。
【0011】
さらに本発明においては(a)成分であるポリフェニレンスルフィド樹脂の塩化メチレンによるオリゴマー抽出量は、樹脂組成物におけるポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルとの混和性および成形品のウェルド強度・靭性の観点から0.7重量%以下、好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下であり、かつ−SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属または水素原子である)が15μmol/g以上、好ましくは20μmol/g以上、さらに好ましくは20〜60μmol/gの範囲にあるポリフェニレンスルフィドがより好ましい。
【0012】
上記オリゴマー抽出量の範囲が上記範囲にあるということは、PPS中におけるオリゴマー(約10〜30量体)の量が少ないことを意味する。
ここで、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量の測定は以下の方法により行うことができる。すなわち、PPS粉末5gを塩化メチレン80mlに加え、4時間ソクスレー抽出を実施した後、室温まで冷却し、抽出後の塩化メチレン溶液を秤量瓶に移す。更に、上記の抽出に使用した容器を塩化メチレン合計60mlを用いて、3回に分けて洗浄し、該洗浄液を上記秤量瓶中に回収する。次に、約80℃に加熱して、該秤量瓶中の塩化メチレンを蒸発させて除去し、残渣を秤量し、この残渣量よりPPS中に存在するオリゴマー量の割合を求めることができる。
【0013】
また、−SX基( Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属または水素原子である)については、樹脂組成物のポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルとの混和性および樹脂組成物から得られる成形品のウェルド強度・靭性の観点から15μmol/g以上、好ましくは20μmol/g以上、特に好ましくは20〜60μmol/gである。
ここで、−SX基の定量は以下の方法により行うことができる。すなわち、PPS粉末を予め120℃で4時間乾燥した後、この乾燥PPS粉末20gをN−メチル−2−ピロリドン150gに加えて粉末凝集塊がなくなるように室温で30分間激しく撹拌混合しスラリー状態にする。
【0014】
かかるスラリーを濾過した後、毎回約80℃の温水1リットルを用いて7回洗浄を繰り返す。得た濾過ケーキを純水200g中に再度スラリー化した後、1Nの塩酸を加えて該スラリーのPHを4.5に調整する。次に、25℃で30分間撹拌し、濾過した後、約80℃の温水1リットルを用いて6回洗浄を繰り返す。
得られた濾過ケーキを純水200g中に再度スラリー化し、次いで、1Nの水酸化ナトリウムにより滴定し、消費した水酸化ナトリウム量よりPPS中に存在する−SX基の量を求める。
【0015】
ここで、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が0.7重量%以下であり、かつ−SX基が20μmol/g以上であるPPSの具体的な製造方法としては、特開平8−253587号公報の実施例1および2に記載された製造方法(段落番号0041〜0044)や特開平11−106656号公報の合成例1および2に記載された製造方法(段落番号0046〜0048)等が挙げられる。
さらに、本発明で用いるPPSは320℃における溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重196N、L/D=10/1で6分間保持した値)は、好ましくは1〜10,000ポイズであり、さらに好ましくは100〜10,000ポイズである。
また、PPSの構造は、上記した特徴を示すものであれば直鎖状、分岐状およびそれらの任意の割合の混合物のいずれでも良く、中でも直鎖状のものがより好ましい。
【0016】
次に本発明の(b)成分のポリフェニレンエーテル樹脂(以下、単にPPEと略記)は、本発明のポリマーアロイおいて耐熱性(荷重撓み温度:DTUL)、および難燃性を付与するうえで必須な成分であり、
該PPEは、結合単位(式1):
【0017】
【化1】
Figure 2004051895
【0018】
(ここで、R1,R2,R3,およびR4はそれぞれ、水素、ハロゲン、炭素数1〜7までの第一級または第二級低級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基または少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択されるものであり、互いに同一でも異なっていてもよい)からなり、還元粘度(0.5g/dl,クロロホルム溶液,30℃測定)が、0.15〜2.0の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜1.0の範囲にあるホモ重合体および/または共重合体である。
【0019】
このPPEの具体的な例としては、例えばポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、さらにポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。
【0020】
かかるPPEの製造方法は公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3306874号記載のHayによる第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば2,6−キシレノールを酸化重合することにより容易に製造でき、そのほかにも米国特許第3306875号、同第3257357号および同第3257358号、特公昭52−17880号公報および特開昭50−51197号公報および同63−152628号公報等に記載された方法で容易に製造できる。
【0021】
また、本発明で用いるPPEは上記したPPEのほかに、これらPPE100重量部に対してポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンまたはハイインパクトポリスチレン、スチレンとブタジエンおよびスチレンとイソプレンのブロック共重合体、スチレンとブタジエン、イソプレンのブロック共重合体及び/またはその水素添加物を400重量部を超えない範囲で加えたものも好適に用いることができる。
【0022】
次に本発明の(c)成分は、(a)成分のPPSと(b)成分のPPEを混合する際の相溶化剤として作用し、本発明の樹脂組成物に優れた機械的物性を与える効果を奏するものである。
かかる(c)成分としては、エポキシ基および/またはオキサゾニル基を有する不飽和モノマーとスチレンを主たる成分とするモノマーとの共重合体であり、ここで言うスチレンを主たる成分とするモノマーとは、スチレンモノマーと共重合可能な他のモノマーであれば何ら問題なく使用でき、その割合が少なくともスチレンモノマーを65重量%以上含むことを意味するものである。
具体的には、エポキシ基および/またはオキサゾニル基を有する不飽和モノマーとスチレンモノマーの共重合体、エポキシ基および/またはオキサゾニル基を有する不飽和モノマーとスチレン/アクリロニトリル=90〜75重量%/10〜25重量%の共重合体が挙げられる。
【0023】
上記のエポキシ基含有不飽和モノマーとしては、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルグリシジルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、グリシジルイタコネート等が挙げられ、中でもグリシジルメタアクリレートが好ましい。また、上記のオキサゾニル基含有不飽和モノマーとしては、下記一般式(式2):
【0024】
【化2】
Figure 2004051895
【0025】
(ここでRは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシ基)である。)この構造を示すビニルオキサゾリン化合物であり、中でもRが水素原子またはメチル基を示す化合物が好ましい。その中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手でき好ましく使用できる。
これら、エポキシ基および/またはオキサゾニル基を有する不飽和モノマーと共重合する他の不飽和モノマーとしては、スチレン等のビニル芳香族化合物、アクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられるが、かかるスチレンモノマーを少なくとも65重量%以上含むことが必須である。
【0026】
相溶化効果、機械的物性の観点から また、エポキシ基および/またはオキサゾニル基を有する不飽和モノマーは、(c)成分の共重合体中に0.3〜20重量%、好ましくは、1〜15重量%、更に好ましくは3〜10重量%である。
これら共重合可能な不飽和モノマーを共重合して得られる(c)成分の共重合体の例として、例えば、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルオキサゾリン共重合体、スチレン−ビニルオキサゾリン−アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。
【0027】
次に本発明で(d)成分として用いるポリオレフィン樹脂は、本発明の樹脂組成物の離型性付与に大きな効果を奏するものである。
具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等の直鎖状α−オレフィン;2−メチルプロペン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、5−メチルヘキセン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等の分岐状α−オレフィン等のオレフィン類の単独重合または共重合体である。
これらの中では、エチレン、プロピレン、ブテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1を過半重量含む共重合体または単独重合体が好ましく、エチレン単独重合体、エチレン−プロピレンのブロックまたはランダム共重合体、エチレン−オクテンのブロックまたはランダム共重合体がさらに好ましい。
【0028】
ポリオレフィン樹脂の分子量については、目的によってその好適な範囲が異なるため一概に範囲を定められないが、一般に温度230℃および荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR)で表して、0.01〜400g/10分、好ましくは0.15〜60g/10分、更に好ましくは0.3〜40g/10分である。
上記ポリオレフィン樹脂は従来公知の方法によって製造でき、市販品も広く入手可能である。本発明では、適宜これらから選んで使用することができる。
【0029】
さらに本発明の(e)成分として用いる無機フィラーは形状に制約はなく公知の無機フィラーを使用できる。好ましくは、繊維状及び/または板状のフィラーであり、これらは2種類以上を併用してもよい。また、使用する本発明(a)成分および(c)成分に合わせた表面処理、例えばシラン系やチタネート系等の種々のカップリング剤で処理を施したものを用いることが好ましい。繊維状の無機フィラーの一例として、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム等のウイスカー類、ワラストナイト等が挙げられる。 これらの繊維状の無機フィラーはその補強効果の観点から、繊維の平均直径(D)と平均長さ(L)の比で表されるL/Dが5以上であることが好ましい。つぎに板状の無機フィラーの一例としては、ガラスフレーク、マイカ、タルク等が挙げられる。これらの板状の無機フィラーはその補強効果の観点から、板の平均厚み(H)と平均板径(R)の比で表されるR/Hが5以上であることが好ましい。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、上記した(a)成分〜(e)成分を基本成分として構成される。本発明において、耐熱性、流動性、および耐溶剤性(a)成分の配合量は5〜95重量%である。
【0031】
次に、(b)成分の配合量は、耐熱性、流動性、および耐溶剤性の観点から95〜5重量%である。
次に、(c)成分の配合量は、相溶化剤としての効果および未溶融物発生の観点から(a)成分、(b)成分100重量部に対して1〜20重量部である。 次に(d)成分の配合量は金型離型性、耐熱性および機械的強度の観点から、前記(a)〜(c)成分の合計100重量部に対して0.2〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部である。
次に(e)成分の配合量は、耐衝撃性および流動性の観点から(a)成分〜(d)成分100重量部に対し0〜150重量部、好ましくは、0〜100重量部の範囲より選ばれることが好ましい
【0032】
本発明では、上記の成分の他に本発明の特徴及び効果を損なわない範囲で必要に応じて他の付加的成分、例えば、酸化防止剤、金属不活性化剤、難燃剤(有機リン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニウム系化合物、芳香族ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤など)、フッ素系ポリマー、可塑剤(低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、三酸化アンチモン等の難燃助剤、耐候(光)性改良剤、造核剤、スリップ剤、無機または有機の充填材や強化材(ポリアクリロニトリル繊維、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、導電性金属繊維、導電性カーボンブラック等)、各種着色剤、離型剤等を添加してもかまわない。
【0033】
本発明の製造法には特に制約はなく、種々の溶融混機及び混練押出機を用いて製造することができ、これらの方法を行う溶融混錬機として例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む多軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機が挙げられるが、中でも二軸押出機を用いた溶融混練方法が最も好ましい。具体的には、WERNER&PFLEIDERER社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズなどが挙げられる。
【0034】
押出機を用いた本発明の好ましい態様を以下に述べる。押出機のL/D(バレル有効長/バレル内径)は20以上60以下の範囲であり、好ましくは30以上50以下の範囲である。押出機は原料の流れ方向に対し上流側に第1原料供給口、これより下流に第1真空ベント、その下流に第2原料供給口を設け、さらにその下流に第2真空ベントを設けたものが好ましい。なかでも、第1真空ベントの上流にニーディングセクションを設け、第1真空ベントと第2原料供給口の間にニーディングセクションを設け、また第2原料供給口と第2真空ベントの間にニーディングセクションを設けたものがより好ましい。第2供給口への原材料供給方法は、特に限定されるものでは無いが、押出機第2供給口開放口よりの単なる添加供給よりも、押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて供給する方が安定で好ましい。特に、粉体、フィラー等が含まれる場合は、押出機サイドから供給する強制サイドフィーダーの方がより好ましく、押出機第2供給口の上部開放口は同搬する空気を抜くため開放とすることもできる。この際の溶融混練温度、スクリュー回転数は特に限定されるものではないが、通常溶融混練温度280〜350℃、スクリュー回転数100〜1200rpmの中から任意に選ぶことができる。
【0035】
本発明の特に好ましい製造方法は、上記した(a)成分〜(d)成分の全量の溶融混練状態下に(e)成分を供給し、さらに溶融混練を続けて行うことである。この製法を取ることにより、得られる樹脂組成物は(a)成分〜(e)成分が各々優れた均一分散形態を得ることができ、これらの相溶化剤である(c)成分の配合効果を最も顕著に発現させ、さらに(e)成分の溶融混練中の破砕を最小限に抑えることで、優れた機械的物性を損なうことなく、成型時の金型離型性が優れる樹脂組成物を得ることが出来る。この製法を取ることは、本発明の樹脂組成物を得るにあたり、非常に重要である。
【0036】
このようにして得られる本発明の樹脂組成物は、従来のポリフェニレンスルフィド系樹脂組成物が持つ優れた機械的物性を損なうことなく、欠点である金型離型性を解消するため、広く射出成形、押出成形、押出異形成形、中空成形、圧縮成形により目的に応じた各種部品の成形体として成形できる。これら各種部品としては、例えば自動車部品が挙げられ、具体的には、バンパー、フェンダー、ドアーパネル、各種モール、エンブレム、エンジンフード、ホイールキャップ、ルーフ、スポイラー、各種エアロパーツ等の外装品や、インストゥルメントパネル、コンソールボックス、トリム等の内装部品、さらに自動車、電気自動車およびハイブリッド電気自動車等に搭載される二次電池電槽部品に適している。また、電気機器の内外装部品としても好適に使用でき、具体的には各種コンピューターおよびその周辺機器、その他のOA機器、テレビ、ビデオ、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW等の各種ディスクプレーヤー等のキャビネット、シャーシ、冷蔵庫、工業用部品用途では各種ポンプケーシング等の部品用途に適している。
【0037】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例によって、さらに詳細に説明するが、これらの実施例により限定されるものではない。
(a)成分のポリフェニレンスルフィド樹脂
a−1:溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重196N、L/
=10/1で6分間保持した後測定した値。)が500ポイズ、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が0.4重量%、−SX基量が29μmol/gのPPSをa−1とした。
a−2:溶融粘度が2000ポイズ、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が0.3重量%、−SX基量が18μmol/gのPPSをa−2とした。
a−3:溶融粘度が2000ポイズ、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が1.8重量%、−SX基量が13μmol/gのPPSをa−3とした。
【0038】
(b)成分のポリフェニレンエーテル樹脂
b−1:2,6−キシレノールを酸化重合して得た還元粘度0.54のポリフェニレンエーテルb−2:2,6−キシレノールを酸化重合して得た還元粘度0.31のポリフェニレンエーテル
【0039】
(c)成分の相溶化剤
c−1:グリシジルメタクリレートを5重量%含有するスチレン−グリシジルメタクリレート共重合体。(重量平均分子量110,000)
c−2:グリシジルメタクリレートを18重量%含有するスチレン−グリシジルメタクリレート共重合体。(重量平均分子量114,000)
c−3:グリシジルメタクリレートを22重量%含有するスチレン−グリシジルメタクリレート共重合体。(重量平均分子量101,000)
c−4:2−イソプロペニル−2−オキサゾリンを5重量%含有するスチレン−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合体。(重量平均分子量146,000)
【0040】
(d)成分のポリオレフィン樹脂
d−1:密度0.87、温度230℃、荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレートが0.7g/10分のエチレンープロピレン共重合体。
d−2:密度0.86、温度230℃、荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレートが0.5g/10分のエチレン−オクテン共重合体。
d−3:密度0.96、温度230℃、荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレートが0.4g/10分の高密度ポリエチレン。
d−4:密度0.92、温度230℃、荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレートが0.5g/10分の低密度ポリエチレン。
【0041】
(e)成分の無機フィラー
e−1:平均直径13μ、アミノシラン系カップリング剤で表面処理した、ガラス繊維を(e−1)とした。
e−2:平均板径600μ、アミノシラン系カップリング剤で表面処理した、ガラスフレークを(e−2)とした。
e−3:平均板径90μ、アミノシラン系カップリング剤で表面処理した、マイカを(e−3)とした。
【0042】
【実施例1〜18および比較例1〜12】
二軸押出機ZSK−40(WERNER&PFLEIDERER社製)を用い原料の流れ方向に対し上流側に第1原料供給口、これより下流に第2原料供給口を設け、さらにその下流に真空ベントを設けた。また、第2供給口への原材料供給方法は、押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて供給する。上記のように設定した押出機を用い、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂、(c)相溶化剤としてのエポキシ基およびまたはオキサゾニル基を有する不飽和モノマーを0.3〜20重量%の割合でスチレンを主たる成分とするモノマーと共重合してなる共重合体、(d)ポリオレフィン樹脂、(e)無機フィラーを表1および表2に示した組成で配合し、押出温度290〜310℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量80kg/時間の条件にて溶融混練しペレットとして得た。
【0043】
このペレットを用いて290〜310℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度130℃の条件でカップ型離型評価金型を用て試験片離型時の突き出しピン圧力を測定し、離型性の評価とした。
さらに、上記の射出成形機を用い、同様の条件で引張試験用テストピース、ウェルド引張試験用テストピース、アイゾット衝撃試験用テストピースおよび荷重撓み温度測定用テストピースを射出成形した。
【0044】
つぎに、これらのテストピースを用いて引張強度試験(ASTM D−638に準拠:測定温度23℃)を行ない、引張強度およびウェルド引張強度を測定し、アイゾット(厚み1/8、ノッチ付き)衝撃強度(ASTM D−256に準拠:測定温度23℃)および荷重撓み温度(ASTM D−648:1.82MPa荷重)を測定した。これらの結果を離型性の評価と併せて表1および表2に載せた。
【0045】
表1および表2より、本発明の樹脂組成物は引張強度、ウェルド引張強度、耐衝撃性および耐熱性を損なうことなく、金型離型性に優れるが、本発明の組成が範囲外である場合、引張強度、ウェルド引張強度、耐衝撃性および耐熱性を損なうことなく金型離型性を改良する事が出来ないことが明らかになった。
【0046】
【表1】
Figure 2004051895
【0047】
【表2】
Figure 2004051895
【0048】
【表3】
Figure 2004051895
【0049】
【表4】
Figure 2004051895
【0050】
【発明の効果】
ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、相溶化剤及び無機フィラーからなる樹脂組成物において、特定のポリオレフィン樹脂を用い、さらに特定の製造方法をとることにより、引張強度、ウェルド引張強度、耐衝撃性および耐熱性を損なうことなく金型離型性に優れる樹脂組成物が得られる。

Claims (5)

  1. (a)ポリフェニレンスルフィド樹脂5〜95重量%と(b)ポリフェニレンエーテル樹脂95〜5重量%であって、(a)成分と(b)成分の合計100重量部に対し、(c)エポキシ基およびまたはオキサゾニル基を有する不飽和モノマーを0.3〜20重量%の割合でスチレンを主たる成分とするモノマーと共重合してなる共重合体1〜20重量部、さらに、上記(a)〜(c)成分の合計100重量部に対して、(d)ポリオレフィン樹脂0.2〜5重量部、さらにまた(a)〜(d)成分の合計100重量部に対して、(e)無機フィラー0〜150重量部を含むことを特徴とする金型離型性に優れる樹脂組成物。
  2. (a)成分が、塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%以下であり、かつ−SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属または水素原子である)が15μmol/g以上であるポリフェニレンスルフィド樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. (d)成分が、エチレンとプロピレンとの共重合体である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. (e)成分を1〜150重量部含む請求項1に記載の樹脂組成物。
  5. (a)〜(d)成分の全量を溶融混練し、次いで(e)成分を供給し、さらに溶融混練を続けて行うことを特徴とする請求項1,請求項4いずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
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