JP2004051722A - ポリオレフィン系複合樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融張力が簡便な手法で大幅に向上し、その成形性が改良されたポリオレフィン系複合樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物とポリオレフィン系樹脂(D)を溶融混練してなるポリオレフィン系複合樹脂組成物である。
【選択図】 なし
【解決手段】層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物とポリオレフィン系樹脂(D)を溶融混練してなるポリオレフィン系複合樹脂組成物である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂の溶融張力を簡便な手法で大幅に向上させ、その成形性の改良を図ったポリオレフィン系複合樹脂組成物に関するものである。
本発明のポリオレフィン系複合樹脂組成物は、通常のポリオレフィン系樹脂のみでは溶融張力が不足するために、成形が困難であったブロー成形、発泡シート成形等の分野に活用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、ブロー成形及び発泡シート成形等により賦形を行なう場合、溶融張力を向上させるために、ポリマーの一次構造として長鎖の分岐を持つ分子構造が必要とされている。
かかる目的のために、重合により長鎖分岐構造を導入したり、熱可塑性樹脂を電子線照射(特公平7−45551号公報)又は放射線照射によって架橋する方法が提案されている。
これらの方法は、長鎖分岐を導入するための特殊な触媒を必要としたり、電子線照射及び放射線照射のための特殊な製造設備を必要とする等、製造コスト及び製造の簡便性に問題がある。
更に、電子線照射及び放射線照射によって架橋して製造した樹脂組成物の場合、再度、加熱して処理したときに溶融張力が極度に低下する等、いわゆるリサイクル性に問題がある。
従って、特殊な重合触媒、電子線照射及び放射線照射のための特殊な製造設備を使用せずに、溶融張力が向上し、成形性が改良された素材が待望されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ポリオレフィン系樹脂(D)に特定のフィラーを混合して溶融混練することによって、溶融張力が大幅に向上し、その成形性が改良され、ブロー成形、発泡シート成形等に活用することができるポリオレフィン系複合樹脂組成物に関するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、層間拡張剤(B)で処理した層状珪酸塩(A)を、不飽和結合又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)で処理し、ポリオレフィン系樹脂(D)と溶融混練したポリオレフィン系複合樹脂組成物が、従来の重合法又は電子線照射により得られたものと同等以上に溶融張力が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(1)層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物とポリオレフィン系樹脂(D)を溶融混練してなるポリオレフィン系複合樹脂組成物、
(2)層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物とポリオレフィン系樹脂(D)及び酸成分(E)を溶融混練してなるポリオレフィン系複合樹脂組成物、
(3)層状珪酸塩(A)が、粘土、粘土鉱物及びイオン交換性層状化合物から選ばれる一種以上であり、層間拡張剤(B)がアンモニウム塩である上記(1)又は(2)に記載のポリオレフィン系複合樹脂組成物、
(4)ポリオレフィン系樹脂(D)が、ポリオレフィン系樹脂(D)が、エチレン、プロピレン、スチレン、ジエンから選ばれる一種以上を重合又は共重合して得らたものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリオレフィン系複合樹脂組成物、
(5)ポリオレフィン系複合樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が0.4〜60g/10分の範囲にあり、かつ溶融張力(MT)が下記の式(1)を満たす上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリオレフィン系複合樹脂組成物、
logMT>−0.81ogMFR+0.54 (1)
に関するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の層状珪酸塩(A)としては、粘土、粘土鉱物又はイオン交換性層状化合物が挙げられる。
粘土とは、細かい含水ケイ酸塩鉱物の集合体であって、適当量の水を混ぜてこねると可塑性を生じ、乾けば剛性を示し、高温度で焼くと焼結するような物質をいう。
又、粘土鉱物とは、粘土の主成分をなす含水珪酸塩をいう。これらは、天然産のものに限らず、人工合成したものであってもよい。
イオン交換性層状化合物とは、イオン結合等によって構成される面がたがいに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる化合物であり、含有するイオンが交換可能なものをいう。
粘土鉱物の中には、イオン交換性層状化合物であるものがある。
本発明においては、層電荷0.1〜0.7を有する2:1型層状化合物を用いることが好ましい。
【0006】
例えば、粘土鉱物としてフィロ珪酸類が挙げられる。
フィロ珪酸類としては、フィロ珪酸やフィロ珪酸塩が挙げられる。
フィロ珪酸塩としては、天然品として、スメクタイト族に属するモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、雲母族に属するイライト、セリサイト及びスメクタイト族と雲母族又は雲母族とバーミキュライト族との混合層鉱物等が挙げられる。
又、合成品として、弗化四珪素雲母、ラポナイト、スメクトン等が挙げられる。 本発明においては、スメクタイトと呼ばれる粘土鉱物群が好ましく、具体的には、モンモリロナイト、ヘクトライト及び弗化四珪素雲母が好ましい。
【0007】
本発明の層状珪酸塩(A)の形状は、体積平均粒子径が10μm以下である粒子が好ましく、体積平均粒子径が3μm以下である粒子が更に好ましい。
又、一般に粒子の粒子形状は粒径分布を有するが、体積平均粒子径が10μm以下であって、体積平均粒子径が3.0μm以下の含有割合が10質量%以上である粒径分布を有することが好ましく、体積平均粒子径が10μm以下であって、体積平均粒子径が1.5μm以下の含有割合が10質量%以上である粒径分布を有することが更に好ましい。
体積平均粒子径及び含有割合の測定方法としては、例えば、レーザー光による光透過性で粒径を測定する機器(GALAI Production Ltd.製のCIS−1)を用いる測定方法が挙げられる。
【0008】
本発明の層状珪酸塩(A)は、その層間を層間拡張剤(B)である有機オニウム塩で処理される。
本発明の層間拡張剤(B)としては、第一級、第二級、第三級及び第四級アンモニウム塩及びホスホニウム塩等の有機オニウム塩が挙げられる。
好ましい有機オニウム塩としては、アルキルオニウム塩が挙げられ、炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のアルキル基を有するアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、複素芳香族環由来のオニウムイオンが挙げられる。
層状珪酸塩の層間に有機オニウムイオン構造を存在させることにより、負に帯電した珪酸塩層の層間に分子間力の小さい炭化水素構造を導入することができる。
有機オニウムイオンの種類は特に制限されないが、入手容易性の点から、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、複素芳香族環由来のオニウムイオンが好適である。
【0009】
アンモニウムイオンとしては、ドデシルアンモニウム、ヘキサデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム等の第1級アンモニウム、メチルドデシルアンモニウム、ブチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウム等の第2級アンモニウム、ジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルヘキサデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウム、ジフェニルドデシルアンモニウム、ジフェニルオクタデシルアンモニウム等の第3級アンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム等の同一アルキル基を有する第4級アンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、トリメチルエイコサニルアンモニウム、トリメチルオクタデセニルアンモニウム、トリメチルオクタデカジエニルアンモニウム等のトリメチルアルキルアンモニウム、トリエチルドデシルアンモニウム、トリエチルテトラデシルアンモニウム、トリエチルヘキサデシルアンモニウム、トリエチルオクタデシルアンモニウム等のトリエチルアルキルアンモニウム、トリブチルドデシルアンモニウム、トリブチルテトラデシルアンモニウム、トリブチルヘキサデシルアンモニウム、トリブチルオクタデシルアンモニウム等のトリブチルアルキルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデセニルアンモニウム、ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウム等のジメチルジアルキルアンモニウム、ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジオクタデシルアンモニウム等のジエチルジアルキルアンモニウム、ジブチルジドデシルアンモニウム、ジブチルジテトラデシルアンモニウム、ジブチルジヘキサデシルアンモニウム、ジブチルジオクタデシルアンモニウム等のジブチルジアルキルアンモニウム、メチルベンジルジヘキサデシルアンモニウム等のメチルベンジルジアルキルアンモニウム、ジベンジルジヘキサデシルアンモニウム等のジベンジルジアルキルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム、トリテトラデシルメチルアンモニウム等のトリアルキルメチルアンモニウム、トリオクチルエチルアンモニウム、トリドデシルエチルアンモニウム等のトリアルキルエチルアンモニウム、トリオクチルブチルアンモニウム、トリドデシルブチルアンモニウム等のトリアルキルブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等の芳香環を有する第4級アンモニウム及びトリメチルフェニルアンモニウム等の芳香族アミン由来の第4級アンモニウムイオン等のイオン類が挙げられる。
【0010】
ホスホニウムイオンとしては、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリメチルデシルホスホニウム、トリメチルドデシルホスホニウム、トリメチルヘキサデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム及びトリブチルオクタデシルホスホニウム等の第4級ホスホニウムイオン等が挙げられる。
【0011】
複素芳香環由来のオニウムイオンとしては、ピリジニウム、キノリニウム、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピペラジニウム等のイオンが挙げられる。
【0012】
これらの中で、アンモニウム塩が特に好ましい。
具体的には、オクタデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、トリブチルヘキシルホスホニウム及びジメチルジステアリルアンモニウムが好ましく、特に、ジメチルジステアリルアンモニウムが好ましい。
アンモニウム塩が好ましい理由は、ポリオレフィン系複合樹脂組成物の製造時に、二軸押出機等を用いて溶融混練を行なうが、その際に加えられる剪断力によって、層状珪酸塩の層の剥離・分散が容易に起こるからである。
【0013】
層間拡張剤(B)で処理された層状珪酸塩(A)は、例えば、第4級アンモニウム塩を大量の水中の層状珪酸塩に加え、攪拌して製造することができる。
層状珪酸塩の処理に用いる有機オニウム塩の量としては、層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対して、通常0.2〜100質量%の範囲で任意に選択することができる。
処理温度としては、5〜150℃、好ましくは50〜100℃である。
このような処理温度では、種々の溶媒を使用することができるので好都合である。
【0014】
本発明の不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)は、層状珪酸塩(A)とポリオレフィン系樹脂(マトリックス)(D)の間で結合を形成することにより、ポリオレフィン系複合樹脂組成物の溶融張力が発現し、更に溶融混練時の剪断力による層状珪酸塩の層の剥離を促進する。
本発明の不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロビルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等のイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−メタクリロキシプロプルトリメトキシシラン(3−メタクリロキシプロプルトリメトキシシラン)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン,ビニルエチルジエトキシシラン,ビニルオクチルジエトキシシラン,ビニルジフェニルエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等のビニル基含有アルコキシシラン化合物等が挙げられる。
これらの中で、不飽和基含有トリアルコキシシラン化合物が好ましく、ビニル基含有トリアルコキシシラン化合物が更に好ましく、具体的には、γ−メタクリロキシプロプルトリメトキシシランが好ましい。
不飽和基含有トリアルコキシシランが好ましい理由は、アルコキシ基の多い方が、層状珪酸塩表面の水酸基との反応性が高く、不飽和基が存在するとポリオレフィン系樹脂(D)との反応性に優れるからである。
【0015】
本発明のポリオレフィン系樹脂(D)は、エチレン、プロピレン、スチレン、ジエンから選ばれる一種以上を重合又は共重合して得られたものが好適である。ポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレン等の各種ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー及びプロピレンブロックコポリマー等の各種ポリプロピレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−プロピルスチレン、p−イソプロピルスチレン、p−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−メチルスチレン、o−エチルスチレン、o−プロピルスチレン、o−イソプロピルスチレン、m−メチルスチレン、m−エチルスチレン、m−イソプロピルスチレン、m−ブチルスチレン、メシチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン等のアルキルスチレン類、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類、p−クロロスチレン、m−クロロスチレン、o−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、o−ブロモスチレン、p−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、o−フルオロスチレン、o−メチル−p−フルオロスチレン等のハロゲン化スチレン、更にはトリメチルシリルスチレンから得られるポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体及びアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等の鎖状ジオレフィン類、ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状ジオレフィン類から得られるジエン系ポリマー等が挙げられる。
これらの中で、ポリエチレン及びポリプロピレンが好ましく、特に、ポリプロピレンが好ましい。
【0016】
又、本発明の酸成分(E)は、以下の理由により必要に応じて添加することができる。
即ち、剥離した層状珪酸塩(A)の単層及び薄層は、ポリオレフィン系樹脂(マトリックス)(D)のpH条件によって凝集(自己組織化)構造が異なり、特に溶融張力発現に好適な構造(カードハウス構造)は、酸性条件(特に、pH3〜6が最適)によってもたらされる。
このため、カードハウス構造をもたらす条件とするために、酸成分を添加する。
本発明の酸成分としては、酸性物質であれば制限はないが、水溶液中での酸解離指数(pka)が9.5以下(ただし、解離段が複数ある場合は、一段目の数値)の物質が好ましい。
具体的には、リン酸及びホウ酸等の無機酸、アクリル酸、L−アスコルビン酸、アスパラギン酸、アントラニル酸、安息香酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸及び乳酸等の有機酸が好ましい。
【0017】
本発明の層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物の製造方法について、以下に述べる。
先ず、本発明の層間拡張剤で処理した層状珪酸塩の製造方法について述べる。層状珪酸塩を大量の水中で膨潤スラリーとし、これに有機オニウム塩を層状珪酸塩のイオン交換容量に対し100質量%となるように投入する。
激しく攪拌するうちに、層状珪酸塩の層間に有機オニウム塩が挿入され疎水化されるため、系が二相となってくる。
この処理物をろ過後、イオン交換等で生成する化合物(塩化ナトリウム等)を水洗除去して、乾燥し、粉末状の層間拡張剤で処理した層状珪酸塩を得ることができる。
乾燥条件としては、例えば、減圧下、80〜100℃で10〜12時間行なえばよい。
有機オニウム塩の使用量が、層状珪酸塩のイオン交換容量に対し100%未満の場合、層状珪酸塩(A)の層間の拡張が不十分となる場合があり、100%を超えると、特に、問題はないがその分が無駄となってしまう。
層間拡張剤で処理した層状珪酸塩は、有機化粘土として市販されている。
市販品としては、株式会社ホージュン社製、商品名エスベンNX(層間の陽イオンが、ジメチルジステアリルアンモニウムで100%イオン交換された精製モンモリロナイト)、エスベンN400、エスベンWX,エスベンNZエスベン,エスベンW、エスベンC,オルガナイトX、エレメンティス社製の商品名ベントン27、ベントン34、ベントン38、ベントンSD−1(層間の陽イオンが、ジメチルジオクタデシルアンモニウムで100%イオン交換された精製モンモリロナイト、ベントンSD−2、ベントンSD−3及びベントン57等が挙げられる。
次に、ヘンシェルミキサーやスーパーフロ一夕ー等で高速回転攪拌しながら、層間拡張剤(B)で処理した層状珪酸塩(A)に対して、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)を(A)、(B)及び(C)成分からなる組成物に対して1〜10質量%となるように添加し、加熱反応させ、生成アルコール等を乾燥して除去し、層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物粉体を得ることができる。
不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物の使用量が、1質量%未満の場合、層状珪酸塩の層の剥離・分散が不十分となり、ポリオレフィン系複合樹脂組成物の溶融張力の発現が不十分となる恐れがある。
又、10質量%を超えると、層状珪酸塩の表面水酸基量に対しシラン化合物が過剰となるため、無駄になってしまう。
又、未反応シラン化合物が存在すると、ポリオレフィン系樹脂の可塑剤として作用するため、ポリオレフィン系複合樹脂組成物の機械物性が低下する恐れがある。
シラン化合物(C)の添加方法としては、滴下法が好ましい。これは、局部的な反応を回避し、均一に反応させることを目的とするためである。
加熱反応温度としては、0〜80℃、好ましくは20〜50℃である。
その理由は、シラン化合物として好適な不飽和基含有トリアルコキシシラン化合物を用いて反応させた場合に生成するエタノール等のアルコールを除去し易いからである。
又、乾燥条件としては、例えば、80〜150℃、好ましくは110℃で10〜12時間である。
もし、(A)成分、(B)成分及び(C)成分からなる組成物を粉砕する必要がある場合、ボールミル、自動乳鉢による粉砕、スーパーフローター、バンパリーミキサー等を用いることができる。
【0018】
次に、本発明の層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び不飽和結合及び/又は反応性官能基(C)からなる組成物とポリオレフィン系樹脂(D)、必要に応じて、酸成分(E)を溶融混練してなるポリオレフィン系複合樹脂組成物の製造方法について、述べる。
上記のようにして得られた、層状珪酸塩、層間拡張剤及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物からなる組成物を、ポリオレフィン系樹脂(D)及び、必要に応じて酸成分(E)と混合し、溶融混練してポリオレフィン系複合樹脂組成物を得ることができる。
(A)成分、(B)成分及び(C)成分からなる組成物の使用量としては、ポリオレフィン系複合樹脂組成物100質量部に対し、0.2〜50質量部であり、好ましくは3〜30質量部である。
(A)成分、(B)成分及び(C)成分からなる組成物の使用量が0.2質量%未満であると、(D)成分と比較して、同じ(D)成分を含有する複合樹脂組成物の溶融張力の向上が少なく、50質量%を超えると、ポリオレフィン系複合樹脂組成物の耐衝撃性が低下する等、素材としての基本的な物性が低下する。
又、ポリオレフィン系樹脂の配合量としては、ポリオレフィン系複合樹脂組成物100質量部に対し、50〜99.8質量部、好ましくは70〜97質量部である。
配合量が50質量部未満の場合、ポリオレフィン系複合樹脂組成物の耐衝撃性が低下する等、素材としての基本的な物性が低下し、配合量が99.8質量部を超えると、溶融張力の向上が不十分である。
又、必要に応じて、配合される酸成分の配合量としては、ポリオレフィン系複合樹脂組成物100質量部に対し、0.001〜1.0質量部、好ましくは0.005〜0.08質量部である。
配合量が0.001質量部未満の場合、(A)成分の剥離した単層や薄層が凝集(自己組織化)構造をとり難い場合があり、このような場合には、溶融張力の向上が期待できない。
配合量が1.0質量部を超えると、成型加工の段階で酸がポリオレフィン系樹脂(D)の分解を引き起こす恐れがある。
本発明のポリオレフィン系複合樹脂組成物は、下記の添加剤成分を必要により含有することができる。
例えば、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤、フィラーやガラス等の補強剤、可塑剤、帯電防止剤及び滑剤等が挙げられる。
これらの成分の含有量は、本発明のポリオレフィン系複合樹脂組成物の特性が維持される範囲であれば特に制限はない。
【0019】
本発明のポリオレフィン系複合樹脂組成物は、層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物を、ポリオレフィン系樹脂(D)及び、必要に応じて酸成分(E)と混合し、更に必要に応じて用いられる、上記添加成分を所定の割合で混合し、溶融混練することにより得られる。
このときの混合及び混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラー等で予備混合して、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。
混練の際の加熱温度は、(D)成分の融解温度を考慮し、通常150〜300℃の範囲で適宜選択される。
この溶融混練成形としては、押出成形機、特にベント式の押出成形機の使用が好ましい。
【0020】
本発明のポリオレフィン系複合樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は0.4〜60g/10分の範囲にあり、かつ溶融張力(MT)が下記の式(1)を満たすものである。
logMT>−0.81ogMFR+0.54 (1)
MFRが0.4g/10分未満の場合又は60g/10分を超えると、成形性に悪影響を及ぼす場合がある。
ポリオレフィン系複合樹脂組成物が、上式(1)を満足する場合、溶融張力が向上した組成物であり、ブロー成形、発泡シート成形等の分野に活用することができる。
尚、通常のポリプロピレン樹脂は、上式(1)の不等号を外し、等号で結んだ関係を満たすか、又は、左辺の値の方が小さいものであり、ブロー成形、発泡シート成形等の分野に活用するには不向きである。
【0021】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
(1)有機化粘土と不飽和結合を有する有機シラン化合物からなる組成物の製造有機化粘土[株式会社ホージュン社製、商品名エスベンNX(層間の陽イオンが、ジメチルジステアリルアンモニウムで100%イオン交換された精製モンモリロナイト)]1kgをヘンシェルミキサーに入れ、毎分500rpmの回転状態で30秒間で、不飽和結合を有するシラン化合物[日本ユニカ一社製、商品名A−174(γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン)]30gを室温で滴下して加えた。
添加後、攪拌を停止し、粉体の飛散・浮遊が止んでからベッセルを開放した。得られた組成物を琺瑯製バットに移し、予め110℃に加熱した恒温機の中で、8時間乾燥した。
(2)ポリオレフィン系複合樹脂組成物の製造
上記(1)の組成物20g及びホモポリプロピレン(出光石油化学社製、グレード名H100M)400gを、ポリエチレンバッグ中で混合した。
この混合物420gを自動投入機(ホッパー)から東洋精機社製ラボブラストミル二軸押出機(230℃、140rpm、滞留時間3分)に投入し、熱時に混練成形した。
得られたストランド状のホモポリプロピレン複合樹脂組成物は、直ちに、水冷した後、カッティングによりペレット状とした。
(3)分光学的測定による有機化粘土(粘土フィラー)分散状態の評価
a.広角X線回折(WAXS)による底面間隔(層間距離)の測定。
X線発生装置(リガク電機社製RJ200)を用い、ターゲットCuKα線、モノクロメーター、電圧50kV、電流180mA、走査角2θ=1.5〜40.0°、ステップ角=0.1°の測定条件で底面間隔を測定した。
底面間隔は、広角X線回折ピーク角値をブラッグの式に代入して算出した。
但し、広角X線回折ピーク角値の確認が困難であったことから、モンモリロナイトの層が十分に劈開して結晶性が実質的に消失したか、又はピーク角値がおおよそ1.5°以下であるために確認が困難であると考え、底面間隔は6nm以上あると推定した。
b.透過型電子顕微鏡による有機化粘土分散状態の測定
透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM−1010)を用い、厚さ約130nmのポリプロピレン複合樹脂組成物の超薄切片について、加速電圧100kVで倍率4〜100万倍で有機化粘土の分散状態を観測撮影した。
100個以上の分散粒子が存在する領域を選択し、粒子数、層厚及び層長を目盛り付きの定規を用いた手計測、又は必要に応じて米国立衛生研究所製NIHimageV.1.57を用いて処理することにより測定した。
有機化粘土は、層厚は2〜10nm、層長は300nmであり、シリケート層の一枚一枚までの剥離ではないが、マトリックスのポリプロピレン中に均一に分散していることが確認できた。
(4)メルトフローレシオ(MFR)の測定
長さ8mm、直径2.095mmのオリフィスを用い、ホモポリプロピレン複合樹脂組成物230℃、荷重2.16kgの条件(JIS−K7210に準拠)で測定した。
得られたホモポリプロピレン複合樹脂組成物のMFRは、4.8g/10分であった。
(5)溶融張力(MT)の測定
東洋精機製キャピログラフ1Cを用い、長さ8mm、直径2.095mmのオリフィスを用いて、ホモポリプロピレン複合樹脂組成物の溶融張力を230℃、引取速度3.1m/分の条件で測定した。
得られたホモポリプロピレン複合樹脂組成物のMTは、2.4gであった。
【0022】
実施例2
(1)ポリオレフィン系複合樹脂組成物の製造
実施例1(1)の組成物20g、ホモポリプロピレン(出光石油化学社製、グレード名H100M)400g及びリン酸50mgをポリエチレンバッグ中で混合した他は、実施例1と同様にホモポリプロピレン複合樹脂組成物のペレットを製造した。
(2)分光学的測定による有機化粘土(粘土フィラー)分散状態の評価
a.広角X線回折(WAXS)による底面間隔(層間距離)の測定。
実施例1と同様に測定した。底面間隔は、広角X線回折ピーク角値をブラッグの式に代入して算出した。
但し、広角X線回折ピーク角値の確認が困難であったことから、モンモリロナイトの層が十分に劈開して結晶性が実質的に消失したか、又はピーク角値がおおよそ1.5°以下であるために確認が困難であると考え、底面間隔は6nm以上あると推定した。
b.透過型電子顕微鏡による有機化粘土分散状態の測定
実施例1と同様に測定した。有機化粘土は、層厚は2〜10nm、層長は300nmであり、シリケート層の一枚一枚までの剥離ではないが、マトリックスのポリプロピレン中に均一に分散していることが確認できた。
(3)メルトフローレシオ(MFR)の測定
実施例1と同様に測定した。得られたホモポリプロピレン複合樹脂組成物のMFRは、2.0g/10分であった。
(4)溶融張力(MT)の測定
実施例1と同様に測定した。得られたホモポリプロピレン複合樹脂組成物のMTは、10.2gであった。
【0023】
比較例1
(1)ポリオレフィン系樹脂組成物の製造
実施例1(1)の有機化粘土(有機シラン化合物による処理なし)20g及びホモポリプロピレン(出光石油化学社製、グレード名H100M)400gをポリエチレンバッグ中で混合した他は、実施例1と同様にホモポリプロピレン複合樹脂組成物のペレットを製造した。
(2)分光学的測定による有機化粘土(粘土フィラー)分散状態の評価
a.広角X線回折(WAXS)による底面間隔(層間距離)の測定。
実施例1と同様に測定した。底面間隔は、広角X線回折ピーク角値をブラッグの式に代入して算出した。
但し、広角X線回折ピーク角値の確認により、ピーク角値がおおよそ2.9°であり、底面間隔は3nm程度あると推定した。
b.透過型電子顕微鏡による有機化粘土分散状態の測定
実施例1と同様に測定した。有機化粘土は、層厚は300nm、層長は約700nmであり、シリケート層は剥離せずに、マトリックスのポリプロピレン中に不均一に分散していることが確認できた。
(4)メルトフローレシオ(MFR)の測定
実施例1と同様に測定した。得られたホモポリプロピレン樹脂組成物のMFRは、11.0g/10分であった。
(5)溶融張力(MT)の測定
実施例1と同様に測定した。得られたホモポリプロピレン樹脂組成物のMTは、0.4gであった。
【0024】
【発明の効果】
本発明の、 層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物とポリオレフィン系樹脂(D)を溶融混練してなるポリオレフィン系複合樹脂組成物は、溶融張力が大幅に向上し、ブロー成形、発泡シート成形等の分野に活用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂の溶融張力を簡便な手法で大幅に向上させ、その成形性の改良を図ったポリオレフィン系複合樹脂組成物に関するものである。
本発明のポリオレフィン系複合樹脂組成物は、通常のポリオレフィン系樹脂のみでは溶融張力が不足するために、成形が困難であったブロー成形、発泡シート成形等の分野に活用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、ブロー成形及び発泡シート成形等により賦形を行なう場合、溶融張力を向上させるために、ポリマーの一次構造として長鎖の分岐を持つ分子構造が必要とされている。
かかる目的のために、重合により長鎖分岐構造を導入したり、熱可塑性樹脂を電子線照射(特公平7−45551号公報)又は放射線照射によって架橋する方法が提案されている。
これらの方法は、長鎖分岐を導入するための特殊な触媒を必要としたり、電子線照射及び放射線照射のための特殊な製造設備を必要とする等、製造コスト及び製造の簡便性に問題がある。
更に、電子線照射及び放射線照射によって架橋して製造した樹脂組成物の場合、再度、加熱して処理したときに溶融張力が極度に低下する等、いわゆるリサイクル性に問題がある。
従って、特殊な重合触媒、電子線照射及び放射線照射のための特殊な製造設備を使用せずに、溶融張力が向上し、成形性が改良された素材が待望されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ポリオレフィン系樹脂(D)に特定のフィラーを混合して溶融混練することによって、溶融張力が大幅に向上し、その成形性が改良され、ブロー成形、発泡シート成形等に活用することができるポリオレフィン系複合樹脂組成物に関するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、層間拡張剤(B)で処理した層状珪酸塩(A)を、不飽和結合又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)で処理し、ポリオレフィン系樹脂(D)と溶融混練したポリオレフィン系複合樹脂組成物が、従来の重合法又は電子線照射により得られたものと同等以上に溶融張力が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(1)層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物とポリオレフィン系樹脂(D)を溶融混練してなるポリオレフィン系複合樹脂組成物、
(2)層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物とポリオレフィン系樹脂(D)及び酸成分(E)を溶融混練してなるポリオレフィン系複合樹脂組成物、
(3)層状珪酸塩(A)が、粘土、粘土鉱物及びイオン交換性層状化合物から選ばれる一種以上であり、層間拡張剤(B)がアンモニウム塩である上記(1)又は(2)に記載のポリオレフィン系複合樹脂組成物、
(4)ポリオレフィン系樹脂(D)が、ポリオレフィン系樹脂(D)が、エチレン、プロピレン、スチレン、ジエンから選ばれる一種以上を重合又は共重合して得らたものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリオレフィン系複合樹脂組成物、
(5)ポリオレフィン系複合樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が0.4〜60g/10分の範囲にあり、かつ溶融張力(MT)が下記の式(1)を満たす上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリオレフィン系複合樹脂組成物、
logMT>−0.81ogMFR+0.54 (1)
に関するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の層状珪酸塩(A)としては、粘土、粘土鉱物又はイオン交換性層状化合物が挙げられる。
粘土とは、細かい含水ケイ酸塩鉱物の集合体であって、適当量の水を混ぜてこねると可塑性を生じ、乾けば剛性を示し、高温度で焼くと焼結するような物質をいう。
又、粘土鉱物とは、粘土の主成分をなす含水珪酸塩をいう。これらは、天然産のものに限らず、人工合成したものであってもよい。
イオン交換性層状化合物とは、イオン結合等によって構成される面がたがいに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる化合物であり、含有するイオンが交換可能なものをいう。
粘土鉱物の中には、イオン交換性層状化合物であるものがある。
本発明においては、層電荷0.1〜0.7を有する2:1型層状化合物を用いることが好ましい。
【0006】
例えば、粘土鉱物としてフィロ珪酸類が挙げられる。
フィロ珪酸類としては、フィロ珪酸やフィロ珪酸塩が挙げられる。
フィロ珪酸塩としては、天然品として、スメクタイト族に属するモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、雲母族に属するイライト、セリサイト及びスメクタイト族と雲母族又は雲母族とバーミキュライト族との混合層鉱物等が挙げられる。
又、合成品として、弗化四珪素雲母、ラポナイト、スメクトン等が挙げられる。 本発明においては、スメクタイトと呼ばれる粘土鉱物群が好ましく、具体的には、モンモリロナイト、ヘクトライト及び弗化四珪素雲母が好ましい。
【0007】
本発明の層状珪酸塩(A)の形状は、体積平均粒子径が10μm以下である粒子が好ましく、体積平均粒子径が3μm以下である粒子が更に好ましい。
又、一般に粒子の粒子形状は粒径分布を有するが、体積平均粒子径が10μm以下であって、体積平均粒子径が3.0μm以下の含有割合が10質量%以上である粒径分布を有することが好ましく、体積平均粒子径が10μm以下であって、体積平均粒子径が1.5μm以下の含有割合が10質量%以上である粒径分布を有することが更に好ましい。
体積平均粒子径及び含有割合の測定方法としては、例えば、レーザー光による光透過性で粒径を測定する機器(GALAI Production Ltd.製のCIS−1)を用いる測定方法が挙げられる。
【0008】
本発明の層状珪酸塩(A)は、その層間を層間拡張剤(B)である有機オニウム塩で処理される。
本発明の層間拡張剤(B)としては、第一級、第二級、第三級及び第四級アンモニウム塩及びホスホニウム塩等の有機オニウム塩が挙げられる。
好ましい有機オニウム塩としては、アルキルオニウム塩が挙げられ、炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のアルキル基を有するアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、複素芳香族環由来のオニウムイオンが挙げられる。
層状珪酸塩の層間に有機オニウムイオン構造を存在させることにより、負に帯電した珪酸塩層の層間に分子間力の小さい炭化水素構造を導入することができる。
有機オニウムイオンの種類は特に制限されないが、入手容易性の点から、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、複素芳香族環由来のオニウムイオンが好適である。
【0009】
アンモニウムイオンとしては、ドデシルアンモニウム、ヘキサデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム等の第1級アンモニウム、メチルドデシルアンモニウム、ブチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウム等の第2級アンモニウム、ジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルヘキサデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウム、ジフェニルドデシルアンモニウム、ジフェニルオクタデシルアンモニウム等の第3級アンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム等の同一アルキル基を有する第4級アンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、トリメチルエイコサニルアンモニウム、トリメチルオクタデセニルアンモニウム、トリメチルオクタデカジエニルアンモニウム等のトリメチルアルキルアンモニウム、トリエチルドデシルアンモニウム、トリエチルテトラデシルアンモニウム、トリエチルヘキサデシルアンモニウム、トリエチルオクタデシルアンモニウム等のトリエチルアルキルアンモニウム、トリブチルドデシルアンモニウム、トリブチルテトラデシルアンモニウム、トリブチルヘキサデシルアンモニウム、トリブチルオクタデシルアンモニウム等のトリブチルアルキルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデセニルアンモニウム、ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウム等のジメチルジアルキルアンモニウム、ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジオクタデシルアンモニウム等のジエチルジアルキルアンモニウム、ジブチルジドデシルアンモニウム、ジブチルジテトラデシルアンモニウム、ジブチルジヘキサデシルアンモニウム、ジブチルジオクタデシルアンモニウム等のジブチルジアルキルアンモニウム、メチルベンジルジヘキサデシルアンモニウム等のメチルベンジルジアルキルアンモニウム、ジベンジルジヘキサデシルアンモニウム等のジベンジルジアルキルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム、トリテトラデシルメチルアンモニウム等のトリアルキルメチルアンモニウム、トリオクチルエチルアンモニウム、トリドデシルエチルアンモニウム等のトリアルキルエチルアンモニウム、トリオクチルブチルアンモニウム、トリドデシルブチルアンモニウム等のトリアルキルブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等の芳香環を有する第4級アンモニウム及びトリメチルフェニルアンモニウム等の芳香族アミン由来の第4級アンモニウムイオン等のイオン類が挙げられる。
【0010】
ホスホニウムイオンとしては、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリメチルデシルホスホニウム、トリメチルドデシルホスホニウム、トリメチルヘキサデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム及びトリブチルオクタデシルホスホニウム等の第4級ホスホニウムイオン等が挙げられる。
【0011】
複素芳香環由来のオニウムイオンとしては、ピリジニウム、キノリニウム、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピペラジニウム等のイオンが挙げられる。
【0012】
これらの中で、アンモニウム塩が特に好ましい。
具体的には、オクタデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、トリブチルヘキシルホスホニウム及びジメチルジステアリルアンモニウムが好ましく、特に、ジメチルジステアリルアンモニウムが好ましい。
アンモニウム塩が好ましい理由は、ポリオレフィン系複合樹脂組成物の製造時に、二軸押出機等を用いて溶融混練を行なうが、その際に加えられる剪断力によって、層状珪酸塩の層の剥離・分散が容易に起こるからである。
【0013】
層間拡張剤(B)で処理された層状珪酸塩(A)は、例えば、第4級アンモニウム塩を大量の水中の層状珪酸塩に加え、攪拌して製造することができる。
層状珪酸塩の処理に用いる有機オニウム塩の量としては、層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対して、通常0.2〜100質量%の範囲で任意に選択することができる。
処理温度としては、5〜150℃、好ましくは50〜100℃である。
このような処理温度では、種々の溶媒を使用することができるので好都合である。
【0014】
本発明の不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)は、層状珪酸塩(A)とポリオレフィン系樹脂(マトリックス)(D)の間で結合を形成することにより、ポリオレフィン系複合樹脂組成物の溶融張力が発現し、更に溶融混練時の剪断力による層状珪酸塩の層の剥離を促進する。
本発明の不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロビルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等のイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−メタクリロキシプロプルトリメトキシシラン(3−メタクリロキシプロプルトリメトキシシラン)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン,ビニルエチルジエトキシシラン,ビニルオクチルジエトキシシラン,ビニルジフェニルエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等のビニル基含有アルコキシシラン化合物等が挙げられる。
これらの中で、不飽和基含有トリアルコキシシラン化合物が好ましく、ビニル基含有トリアルコキシシラン化合物が更に好ましく、具体的には、γ−メタクリロキシプロプルトリメトキシシランが好ましい。
不飽和基含有トリアルコキシシランが好ましい理由は、アルコキシ基の多い方が、層状珪酸塩表面の水酸基との反応性が高く、不飽和基が存在するとポリオレフィン系樹脂(D)との反応性に優れるからである。
【0015】
本発明のポリオレフィン系樹脂(D)は、エチレン、プロピレン、スチレン、ジエンから選ばれる一種以上を重合又は共重合して得られたものが好適である。ポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレン等の各種ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー及びプロピレンブロックコポリマー等の各種ポリプロピレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−プロピルスチレン、p−イソプロピルスチレン、p−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−メチルスチレン、o−エチルスチレン、o−プロピルスチレン、o−イソプロピルスチレン、m−メチルスチレン、m−エチルスチレン、m−イソプロピルスチレン、m−ブチルスチレン、メシチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン等のアルキルスチレン類、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類、p−クロロスチレン、m−クロロスチレン、o−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、o−ブロモスチレン、p−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、o−フルオロスチレン、o−メチル−p−フルオロスチレン等のハロゲン化スチレン、更にはトリメチルシリルスチレンから得られるポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体及びアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等の鎖状ジオレフィン類、ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状ジオレフィン類から得られるジエン系ポリマー等が挙げられる。
これらの中で、ポリエチレン及びポリプロピレンが好ましく、特に、ポリプロピレンが好ましい。
【0016】
又、本発明の酸成分(E)は、以下の理由により必要に応じて添加することができる。
即ち、剥離した層状珪酸塩(A)の単層及び薄層は、ポリオレフィン系樹脂(マトリックス)(D)のpH条件によって凝集(自己組織化)構造が異なり、特に溶融張力発現に好適な構造(カードハウス構造)は、酸性条件(特に、pH3〜6が最適)によってもたらされる。
このため、カードハウス構造をもたらす条件とするために、酸成分を添加する。
本発明の酸成分としては、酸性物質であれば制限はないが、水溶液中での酸解離指数(pka)が9.5以下(ただし、解離段が複数ある場合は、一段目の数値)の物質が好ましい。
具体的には、リン酸及びホウ酸等の無機酸、アクリル酸、L−アスコルビン酸、アスパラギン酸、アントラニル酸、安息香酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸及び乳酸等の有機酸が好ましい。
【0017】
本発明の層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物の製造方法について、以下に述べる。
先ず、本発明の層間拡張剤で処理した層状珪酸塩の製造方法について述べる。層状珪酸塩を大量の水中で膨潤スラリーとし、これに有機オニウム塩を層状珪酸塩のイオン交換容量に対し100質量%となるように投入する。
激しく攪拌するうちに、層状珪酸塩の層間に有機オニウム塩が挿入され疎水化されるため、系が二相となってくる。
この処理物をろ過後、イオン交換等で生成する化合物(塩化ナトリウム等)を水洗除去して、乾燥し、粉末状の層間拡張剤で処理した層状珪酸塩を得ることができる。
乾燥条件としては、例えば、減圧下、80〜100℃で10〜12時間行なえばよい。
有機オニウム塩の使用量が、層状珪酸塩のイオン交換容量に対し100%未満の場合、層状珪酸塩(A)の層間の拡張が不十分となる場合があり、100%を超えると、特に、問題はないがその分が無駄となってしまう。
層間拡張剤で処理した層状珪酸塩は、有機化粘土として市販されている。
市販品としては、株式会社ホージュン社製、商品名エスベンNX(層間の陽イオンが、ジメチルジステアリルアンモニウムで100%イオン交換された精製モンモリロナイト)、エスベンN400、エスベンWX,エスベンNZエスベン,エスベンW、エスベンC,オルガナイトX、エレメンティス社製の商品名ベントン27、ベントン34、ベントン38、ベントンSD−1(層間の陽イオンが、ジメチルジオクタデシルアンモニウムで100%イオン交換された精製モンモリロナイト、ベントンSD−2、ベントンSD−3及びベントン57等が挙げられる。
次に、ヘンシェルミキサーやスーパーフロ一夕ー等で高速回転攪拌しながら、層間拡張剤(B)で処理した層状珪酸塩(A)に対して、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)を(A)、(B)及び(C)成分からなる組成物に対して1〜10質量%となるように添加し、加熱反応させ、生成アルコール等を乾燥して除去し、層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物粉体を得ることができる。
不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物の使用量が、1質量%未満の場合、層状珪酸塩の層の剥離・分散が不十分となり、ポリオレフィン系複合樹脂組成物の溶融張力の発現が不十分となる恐れがある。
又、10質量%を超えると、層状珪酸塩の表面水酸基量に対しシラン化合物が過剰となるため、無駄になってしまう。
又、未反応シラン化合物が存在すると、ポリオレフィン系樹脂の可塑剤として作用するため、ポリオレフィン系複合樹脂組成物の機械物性が低下する恐れがある。
シラン化合物(C)の添加方法としては、滴下法が好ましい。これは、局部的な反応を回避し、均一に反応させることを目的とするためである。
加熱反応温度としては、0〜80℃、好ましくは20〜50℃である。
その理由は、シラン化合物として好適な不飽和基含有トリアルコキシシラン化合物を用いて反応させた場合に生成するエタノール等のアルコールを除去し易いからである。
又、乾燥条件としては、例えば、80〜150℃、好ましくは110℃で10〜12時間である。
もし、(A)成分、(B)成分及び(C)成分からなる組成物を粉砕する必要がある場合、ボールミル、自動乳鉢による粉砕、スーパーフローター、バンパリーミキサー等を用いることができる。
【0018】
次に、本発明の層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び不飽和結合及び/又は反応性官能基(C)からなる組成物とポリオレフィン系樹脂(D)、必要に応じて、酸成分(E)を溶融混練してなるポリオレフィン系複合樹脂組成物の製造方法について、述べる。
上記のようにして得られた、層状珪酸塩、層間拡張剤及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物からなる組成物を、ポリオレフィン系樹脂(D)及び、必要に応じて酸成分(E)と混合し、溶融混練してポリオレフィン系複合樹脂組成物を得ることができる。
(A)成分、(B)成分及び(C)成分からなる組成物の使用量としては、ポリオレフィン系複合樹脂組成物100質量部に対し、0.2〜50質量部であり、好ましくは3〜30質量部である。
(A)成分、(B)成分及び(C)成分からなる組成物の使用量が0.2質量%未満であると、(D)成分と比較して、同じ(D)成分を含有する複合樹脂組成物の溶融張力の向上が少なく、50質量%を超えると、ポリオレフィン系複合樹脂組成物の耐衝撃性が低下する等、素材としての基本的な物性が低下する。
又、ポリオレフィン系樹脂の配合量としては、ポリオレフィン系複合樹脂組成物100質量部に対し、50〜99.8質量部、好ましくは70〜97質量部である。
配合量が50質量部未満の場合、ポリオレフィン系複合樹脂組成物の耐衝撃性が低下する等、素材としての基本的な物性が低下し、配合量が99.8質量部を超えると、溶融張力の向上が不十分である。
又、必要に応じて、配合される酸成分の配合量としては、ポリオレフィン系複合樹脂組成物100質量部に対し、0.001〜1.0質量部、好ましくは0.005〜0.08質量部である。
配合量が0.001質量部未満の場合、(A)成分の剥離した単層や薄層が凝集(自己組織化)構造をとり難い場合があり、このような場合には、溶融張力の向上が期待できない。
配合量が1.0質量部を超えると、成型加工の段階で酸がポリオレフィン系樹脂(D)の分解を引き起こす恐れがある。
本発明のポリオレフィン系複合樹脂組成物は、下記の添加剤成分を必要により含有することができる。
例えば、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤、フィラーやガラス等の補強剤、可塑剤、帯電防止剤及び滑剤等が挙げられる。
これらの成分の含有量は、本発明のポリオレフィン系複合樹脂組成物の特性が維持される範囲であれば特に制限はない。
【0019】
本発明のポリオレフィン系複合樹脂組成物は、層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物を、ポリオレフィン系樹脂(D)及び、必要に応じて酸成分(E)と混合し、更に必要に応じて用いられる、上記添加成分を所定の割合で混合し、溶融混練することにより得られる。
このときの混合及び混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラー等で予備混合して、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。
混練の際の加熱温度は、(D)成分の融解温度を考慮し、通常150〜300℃の範囲で適宜選択される。
この溶融混練成形としては、押出成形機、特にベント式の押出成形機の使用が好ましい。
【0020】
本発明のポリオレフィン系複合樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は0.4〜60g/10分の範囲にあり、かつ溶融張力(MT)が下記の式(1)を満たすものである。
logMT>−0.81ogMFR+0.54 (1)
MFRが0.4g/10分未満の場合又は60g/10分を超えると、成形性に悪影響を及ぼす場合がある。
ポリオレフィン系複合樹脂組成物が、上式(1)を満足する場合、溶融張力が向上した組成物であり、ブロー成形、発泡シート成形等の分野に活用することができる。
尚、通常のポリプロピレン樹脂は、上式(1)の不等号を外し、等号で結んだ関係を満たすか、又は、左辺の値の方が小さいものであり、ブロー成形、発泡シート成形等の分野に活用するには不向きである。
【0021】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
(1)有機化粘土と不飽和結合を有する有機シラン化合物からなる組成物の製造有機化粘土[株式会社ホージュン社製、商品名エスベンNX(層間の陽イオンが、ジメチルジステアリルアンモニウムで100%イオン交換された精製モンモリロナイト)]1kgをヘンシェルミキサーに入れ、毎分500rpmの回転状態で30秒間で、不飽和結合を有するシラン化合物[日本ユニカ一社製、商品名A−174(γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン)]30gを室温で滴下して加えた。
添加後、攪拌を停止し、粉体の飛散・浮遊が止んでからベッセルを開放した。得られた組成物を琺瑯製バットに移し、予め110℃に加熱した恒温機の中で、8時間乾燥した。
(2)ポリオレフィン系複合樹脂組成物の製造
上記(1)の組成物20g及びホモポリプロピレン(出光石油化学社製、グレード名H100M)400gを、ポリエチレンバッグ中で混合した。
この混合物420gを自動投入機(ホッパー)から東洋精機社製ラボブラストミル二軸押出機(230℃、140rpm、滞留時間3分)に投入し、熱時に混練成形した。
得られたストランド状のホモポリプロピレン複合樹脂組成物は、直ちに、水冷した後、カッティングによりペレット状とした。
(3)分光学的測定による有機化粘土(粘土フィラー)分散状態の評価
a.広角X線回折(WAXS)による底面間隔(層間距離)の測定。
X線発生装置(リガク電機社製RJ200)を用い、ターゲットCuKα線、モノクロメーター、電圧50kV、電流180mA、走査角2θ=1.5〜40.0°、ステップ角=0.1°の測定条件で底面間隔を測定した。
底面間隔は、広角X線回折ピーク角値をブラッグの式に代入して算出した。
但し、広角X線回折ピーク角値の確認が困難であったことから、モンモリロナイトの層が十分に劈開して結晶性が実質的に消失したか、又はピーク角値がおおよそ1.5°以下であるために確認が困難であると考え、底面間隔は6nm以上あると推定した。
b.透過型電子顕微鏡による有機化粘土分散状態の測定
透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM−1010)を用い、厚さ約130nmのポリプロピレン複合樹脂組成物の超薄切片について、加速電圧100kVで倍率4〜100万倍で有機化粘土の分散状態を観測撮影した。
100個以上の分散粒子が存在する領域を選択し、粒子数、層厚及び層長を目盛り付きの定規を用いた手計測、又は必要に応じて米国立衛生研究所製NIHimageV.1.57を用いて処理することにより測定した。
有機化粘土は、層厚は2〜10nm、層長は300nmであり、シリケート層の一枚一枚までの剥離ではないが、マトリックスのポリプロピレン中に均一に分散していることが確認できた。
(4)メルトフローレシオ(MFR)の測定
長さ8mm、直径2.095mmのオリフィスを用い、ホモポリプロピレン複合樹脂組成物230℃、荷重2.16kgの条件(JIS−K7210に準拠)で測定した。
得られたホモポリプロピレン複合樹脂組成物のMFRは、4.8g/10分であった。
(5)溶融張力(MT)の測定
東洋精機製キャピログラフ1Cを用い、長さ8mm、直径2.095mmのオリフィスを用いて、ホモポリプロピレン複合樹脂組成物の溶融張力を230℃、引取速度3.1m/分の条件で測定した。
得られたホモポリプロピレン複合樹脂組成物のMTは、2.4gであった。
【0022】
実施例2
(1)ポリオレフィン系複合樹脂組成物の製造
実施例1(1)の組成物20g、ホモポリプロピレン(出光石油化学社製、グレード名H100M)400g及びリン酸50mgをポリエチレンバッグ中で混合した他は、実施例1と同様にホモポリプロピレン複合樹脂組成物のペレットを製造した。
(2)分光学的測定による有機化粘土(粘土フィラー)分散状態の評価
a.広角X線回折(WAXS)による底面間隔(層間距離)の測定。
実施例1と同様に測定した。底面間隔は、広角X線回折ピーク角値をブラッグの式に代入して算出した。
但し、広角X線回折ピーク角値の確認が困難であったことから、モンモリロナイトの層が十分に劈開して結晶性が実質的に消失したか、又はピーク角値がおおよそ1.5°以下であるために確認が困難であると考え、底面間隔は6nm以上あると推定した。
b.透過型電子顕微鏡による有機化粘土分散状態の測定
実施例1と同様に測定した。有機化粘土は、層厚は2〜10nm、層長は300nmであり、シリケート層の一枚一枚までの剥離ではないが、マトリックスのポリプロピレン中に均一に分散していることが確認できた。
(3)メルトフローレシオ(MFR)の測定
実施例1と同様に測定した。得られたホモポリプロピレン複合樹脂組成物のMFRは、2.0g/10分であった。
(4)溶融張力(MT)の測定
実施例1と同様に測定した。得られたホモポリプロピレン複合樹脂組成物のMTは、10.2gであった。
【0023】
比較例1
(1)ポリオレフィン系樹脂組成物の製造
実施例1(1)の有機化粘土(有機シラン化合物による処理なし)20g及びホモポリプロピレン(出光石油化学社製、グレード名H100M)400gをポリエチレンバッグ中で混合した他は、実施例1と同様にホモポリプロピレン複合樹脂組成物のペレットを製造した。
(2)分光学的測定による有機化粘土(粘土フィラー)分散状態の評価
a.広角X線回折(WAXS)による底面間隔(層間距離)の測定。
実施例1と同様に測定した。底面間隔は、広角X線回折ピーク角値をブラッグの式に代入して算出した。
但し、広角X線回折ピーク角値の確認により、ピーク角値がおおよそ2.9°であり、底面間隔は3nm程度あると推定した。
b.透過型電子顕微鏡による有機化粘土分散状態の測定
実施例1と同様に測定した。有機化粘土は、層厚は300nm、層長は約700nmであり、シリケート層は剥離せずに、マトリックスのポリプロピレン中に不均一に分散していることが確認できた。
(4)メルトフローレシオ(MFR)の測定
実施例1と同様に測定した。得られたホモポリプロピレン樹脂組成物のMFRは、11.0g/10分であった。
(5)溶融張力(MT)の測定
実施例1と同様に測定した。得られたホモポリプロピレン樹脂組成物のMTは、0.4gであった。
【0024】
【発明の効果】
本発明の、 層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物とポリオレフィン系樹脂(D)を溶融混練してなるポリオレフィン系複合樹脂組成物は、溶融張力が大幅に向上し、ブロー成形、発泡シート成形等の分野に活用することができる。
Claims (5)
- 層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物とポリオレフィン系樹脂(D)を溶融混練してなるポリオレフィン系複合樹脂組成物。
- 層状珪酸塩(A)、層間拡張剤(B)及び、不飽和結合及び/又は反応性官能基を有するシラン化合物(C)からなる組成物とポリオレフィン系樹脂(D)及び酸成分(E)を溶融混練してなるポリオレフィン系複合樹脂組成物。
- 層状珪酸塩(A)が、粘土、粘土鉱物及びイオン交換性層状化合物から選ばれる一種以上であり、層間拡張剤(B)がアンモニウム塩である請求項1又は2に記載のポリオレフィン系複合樹脂組成物。
- ポリオレフィン系樹脂(D)が、エチレン、プロピレン、スチレン、ジエンから選ばれる一種以上を重合又は共重合して得らたものである請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系複合樹脂組成物。
- ポリオレフィン系複合樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が0.4〜60g/10分の範囲にあり、かつ溶融張力(MT)が下記の式(1)を満たす請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系複合樹脂組成物。
logMT>−0.81ogMFR+0.54 (1)
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EP2072575A1 (en) | 2007-12-21 | 2009-06-24 | Borealis Technology OY | Polypropylene composition comprising a cross-linkable dispersed phase comprising silanol groups containing nanofillers |
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