JP2003183513A - 熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複合材料及びその製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複合材料及びその製造方法

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JP2003183513A
JP2003183513A JP2001383128A JP2001383128A JP2003183513A JP 2003183513 A JP2003183513 A JP 2003183513A JP 2001383128 A JP2001383128 A JP 2001383128A JP 2001383128 A JP2001383128 A JP 2001383128A JP 2003183513 A JP2003183513 A JP 2003183513A
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thermoplastic resin
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Hiroyoshi Sen
裕喜 撰
Hideshi Matsumoto
英志 松本
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Sekisui Chemical Co Ltd
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Sekisui Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 層状珪酸塩の多数の微細薄片状結晶が均一に
分散されており、アスペクト比の低下が生じ難く、従っ
て、十分な機械的強度を有し、かつ線膨張係数が十分に
低められた熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複合材料及びその
製造方法の提供。 【解決手段】 熱可塑性樹脂100重量部に対し層状珪
酸塩が0.1〜100重量部添加されている組成物から
なり、前記層状珪酸塩の各層を構成している各薄片状結
晶が隣接する薄片状結晶と部分的に対向するように連続
的にずらされた状態に分散されており、該層状珪酸塩の
厚みが5〜50nm、長さが少なくとも500nmであ
る熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複合材料、並びに熱可塑性
樹脂100重量部と層状珪酸塩を0.1〜100重量部
とを、混練装置内において、剪断応力0.1MPa〜
1.5MPaで、かつ剪断速度γ(1/秒)×実混練時
間(秒)=混練時間で表わされる混練時間が50000
〜300000の範囲で溶融混練する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性樹脂に層
状珪酸塩を混合してなる熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複合
材料及びその製造方法に関し、特に、強度が高く、線膨
張が低い熱可塑性樹脂/層状珪酸塩の複合材料及びその
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】高分子材料の機械的特性、熱的特性、ガ
スバリヤー性及び線膨張係数などの性質を改善するため
に、層状珪酸塩を熱可塑性樹脂中に分散させてなる複合
材料が種々提案されている。層状珪酸塩は、多数の微細
な薄片状結晶がイオン結合により層状をなすように凝集
された構造を有する。他方、上記複合材料の特性を改善
するには、層状珪酸塩の多数の薄片状結晶が分散されて
いることが望ましい。そこで、従来、化学的または物理
的な手段により層状珪酸塩の薄片状結晶間の距離が増大
するように、デラミネーションし、樹脂中に薄片状結晶
を均一に分散する方法が試みられている。例えば、特開
平7−207134号公報では、ナイロンやポリカーボ
ネート系樹脂に層状珪酸塩を溶融混練することにより、
層状珪酸塩の薄片状結晶の分散性が高められ、複合材料
の剛性などの物性が改善される旨が記載されている。
【0003】また、特開平9−217012号公報や特
開平8−53573号公報には、この種の熱可塑性樹脂
/層状珪酸塩複合材料の製造方法が示されている。すな
わち、特開平9−217012号公報では、混合係数M
IXが30〜200m3の範囲かつ剪断係数Fが200
〜700の範囲で層状珪酸塩と熱可塑性樹脂とを溶融混
練する方法が開示されている。ここで、混合係数MIX
は、下記の式(1)で表わされる。
【0004】 MIX={(Qb/Qf)×(M-1)×N}/Q …式(1) なお、式(1)における各記号の意味は以下の通りであ
る。
【0005】 Q :押出流量[m3/秒] Qb:バックフロー流量[m3/秒] Qf:前進流[m3/秒] N :スクリュー回転数[rps] M :ニーディングディスクの羽根の枚数 従って、スクリュー回転数Nが高く、すなわち剪断力が
高く、ニーディング長Mが長く、バックフロー流量Qb
が多く、押出量Qが低い(すなわち高剪断を付加するゾ
ーンにおける滞留時間が長い)ほど、混合係数MIXが
高くなることがわかる。
【0006】他方、上記剪断係数Fは下記の式(2)で
表される。 F={(πDN)/H}×t …式(2) 式(2)における記号の意味は以下の通りである。
【0007】 D:スクリュー断面平均径[mm] N:スクリュー回転数[rps] H:スクリュー平均溝深さ[mm] t:滞留時間[秒] 特開平9−217012号公報では、上記の条件を満た
して溶融混練し、成形することにより、樹脂として主に
ポリアミド樹脂を用いた場合に、層状珪酸塩が微分散さ
れ、得られた成形体の曲げ強度及び曲げ弾性率が高くな
るとされている。
【0008】他方、特開平8−53573号公報には、
粉体状の熱可塑性樹脂と層状珪酸塩とを含む粉体混合物
に樹脂の軟化温度未満の温度条件下で、剪断速度500
-1以上の剪断力を付与した後、溶融混練する方法が示
されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】特開平9−21701
2号公報に記載の方法では、樹脂の温度の影響が考慮さ
れていないため、剪断速度が一定条件下であっても、樹
脂温度が高く、粘度が低い場合には、剪断応力が小さく
なる。従って、層状珪酸塩を分散するのに十分な剪断力
を付加することが困難となる。このため、層状珪酸塩の
薄片状結晶が凝集した状態で層状珪酸塩が樹脂中に存在
し、得られた成形体の強度が低下し、線膨張係数を改善
し得ないことがあった。また、混練温度が極端に低い場
合には、剪断応力が大きくなり過ぎ、層状珪酸塩が破壊
される恐れがあった。この場合には、層状珪酸塩におけ
る薄片状結晶のアスペクト比が低下し、所望の強度を得
ることができなくなり、線膨張係数の低下も図られな
い。なお、アスペクト比とは、板状の微細薄片状結晶の
長径と厚みの比をいうものとする。
【0010】他方、特開平8−53573号公報に記載
の方法では、粉体状の段階で剪断力が付加されるため、
500秒-1よりも大きな剪断力が付加された場合には、
層状珪酸塩が破壊する恐れがあった。従って、アスペク
ト比が低下し、成形体の強度が弱まらずかつ線膨張係数
の十分な低下を図ることができないことがあった。ま
た、成形機に投入される前に粉体を処理する必要がある
ため、コストが高くつくという問題もあった。
【0011】本発明の目的は、上述した従来技術の欠点
を解消し、層状珪酸塩の多数の微細薄片状結晶が均一に
分散されており、かつアスペクト比の低下が生じ難く、
従って、十分な機械的強度を有し、かつ線膨張係数が十
分に低められる熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複合材料及び
その製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明に係る熱可塑性樹
脂/層状珪酸塩複合材料は、熱可塑性樹脂100重量部
に対し層状珪酸塩が0.1〜100重量部添加されてい
る組成物からなり、前記層状珪酸塩の各層を構成してい
る各薄片状結晶が隣接する薄片状結晶と部分的に対向す
るように連続的にずらされた状態で分散されており、該
層状珪酸塩の厚みが5〜50nm、長さが少なくとも5
00nmであることを特徴とする。
【0013】本発明に係る熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複
合材料では、好ましくは、上記熱可塑性樹脂としてポリ
スチレン系樹脂が用いられる。本発明に係る熱可塑性樹
脂/層状珪酸塩複合材料では、好ましくは、上記層状珪
酸塩としてカチオン界面活性剤で処理された有機化層状
珪酸塩が用いられる。
【0014】本発明に係る製造方法は、熱可塑性樹脂1
00重量部と層状珪酸塩を0.1〜100重量部とを、
混練装置内において、剪断応力0.1MPa〜1.5M
Paで、かつ剪断速度γ(1/秒)×実混練時間(秒)
=混練時間で表わされる混練時間が50000〜300
000の範囲で溶融混練することを特徴とする。
【0015】本発明に係る製造方法では、好ましくは、
上記熱可塑性樹脂としてポリスチレン系樹脂が用いられ
る。本発明に係る製造方法では、好ましくは、上記層状
珪酸塩としてカチオン界面活性剤で処理された有機化層
状珪酸塩が用いられる。
【0016】以下、本発明の詳細を説明する。本発明に
おいて、層状珪酸塩とは、層間に交換性陽イオンを有す
る珪酸塩鉱物を意味し、通常、厚さが約1nm、平均ア
スペクト比がおよそ50〜200程度の微細な薄片状結
晶がイオン結合により凝集してなるものである。層状珪
酸塩の種類は特に限定されず、モンモリロナイト、サポ
ナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイ
ト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バー
ミキュライト、ハロイサイト等の天然雲母、及び膨潤性
雲母(膨潤性マイカ)等の合成雲母が挙げられ、天然の
ものでも合成されたものでも用いることができる。好ま
しくは、モンモリロナイトや合成マイカが用いられる。
【0017】本発明における層状珪酸塩添加量が少な過
ぎると、強度向上及び線膨張係数低下効果を得ることが
できない。また多過ぎると分散不良、成形性悪化、コス
トアップなどの不具合を生じる。そこで、層状珪酸塩の
添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜
100重量部であり、好ましくは、1〜60重量部の範
囲であり、より好ましくは5〜30重量部である。
【0018】層状珪酸塩の結晶構造を図1に示す。ま
た、図1中に記載の直方体部分Aを拡大した構造を図2
に示す。本発明の層状珪酸塩の層間に存在する交換性陽
イオン1とは、一般に結晶表面3上のナトリウムイオン
やカルシウムイオンなどである。これらのイオンは、カ
チオン性物質とのイオン交換性を有するため、カチオン
性を有する種々の物質が層間に挿入され得る。
【0019】このため、本発明において用いられる層状
珪酸塩の層間に存在する交換性陽イオンは、あらかじめ
カチオン系界面活性剤等によりイオン交換されていても
構わない。特に熱可塑性樹脂として、オレフィン系樹脂
等の非極性樹脂を用いる場合には、層間を予め、例え
ば、カチオン系界面活性剤による陽イオン交換により、
疎水化しておくことが好ましく、それによって層状珪酸
塩と熱可塑性樹脂との間に高い親和性が得られる。
【0020】層状珪酸塩の層間がカチオン活性剤にてイ
オン交換されているものは「有機化層状珪酸塩」と称さ
れており、有機化されていない層状珪酸塩よりも樹脂中
に分散されやすいので本発明において好適に用いられ
る。
【0021】上記層間をあらかじめ疎水化する物質につ
いては、特に限定されず、通常、用いられるカチオン系
界面活性剤が用いられ、例えば、4級アンモニウム塩、
4級ホスホニウム塩等が挙げられる。好ましくは、炭素
数8以上のアルキル鎖を有する4級アンモニウム塩が用
いられる。炭素数が8以上のアルキル鎖を含有しない場
合には、アルキルアンモニウムイオンの親水性が強く、
層状珪酸塩の層間を十分に非極性化することが困難とな
ることがある。
【0022】4級アンモニウム塩としては、例えば、ラ
ウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチ
ルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、ジス
テアリルジメチルアンモニウム塩(以下、DSDMと略
記する場合がある)、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム
塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩等が挙げら
れる。
【0023】本発明に用いられる層状珪酸塩の陽イオン
交換容量は特に限定されず、50〜200ミリ当量/1
00gであることが好ましい。50ミリ当量/100g
未満の場合には、結晶層間にイオン交換によりインター
カレートされるカチオン系界面活性剤の量が少ないため
に、層間が十分に非極性化されない場合があり、一方、
200ミリ当量/100gを超える場合には、層状珪酸
塩の層間の結合力が強固となり、結晶薄片をデラミネー
トすることが困難な場合があるからである。
【0024】通常、層状珪酸塩は1枚が厚み1nm、長
さ50〜100nmの薄片状結晶が数十〜百層、凝集さ
れた構造を有し、凝集体の厚みは50nm、長さ100
nm程度である。本発明では、図3に示すように、これ
らの多数の薄片状結晶4,4…が樹脂中にて剪断により
トランプをずらしたような状態(薄片状結晶3が隣接す
る薄片状結晶4と部分的に対向するように連続的にずら
された状態)とされ、TEM観察において無機状態の層
状珪酸塩の全体の厚さは5〜50nm、長さは500n
m以上であることが好ましい。より好ましくは、無機分
散状態で厚みは5nm〜15nm、長さは500nmか
ら2μmである。
【0025】なお、全体の厚さ及び長さとは、多数の薄
片状形成からなる層状珪酸塩の厚み及び長さをいう。
「無機状態」とは、層状珪酸塩を構成している層間、す
なわち薄片状結晶間がカチオン活性剤によりイオン交換
されていない状態をいうものとする。すなわち、有機化
されていない層状珪酸塩をいうものとする。
【0026】本発明において用いられる熱可塑性樹脂に
ついては、特に限定はないが、ポリスチレン、AES、
ABS等のスチレン系樹脂、アクリル樹脂、PET、ポ
リカーボネート(PC)、ポリオレフィン、塩化ビニル
樹脂等の一般に用いられているものであればよい。
【0027】特に、非ハロゲン系樹脂として、ポリスチ
レン系樹脂及びポリオレフィン系樹脂は、近年、廃プラ
スチックの処理が容易であるため好適に用いることがで
きる。さらに、線膨張係数がより小さい、ポリスチレン
系樹脂が特に好適に用いることが可能である。
【0028】本発明で用いられるポリスチレン系樹脂
は、スチレン及びスチレン誘導体を重合してなるもの、
スチレン及びスチレン誘導体と分子内に1個以上の炭素
−炭素二重結合を有するビニル単量体との共重合体、ま
たはこれらを主成分とする樹脂である。
【0029】上記スチレン及びスチレン誘導体とは一般
式CH2=CYZ(Yはフェニル基または置換フェニル
基、Zは水素原子またはアルキル基を示す)で表される
化合物である。
【0030】スチレン及びスチレン誘導体としては、ス
チレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o
−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−メチ
ルスチレン、p−メチルスチレン、o−塩化スチレン、
p−塩化スチレン、o−臭化スチレン、p−臭化スチレ
ン、p−ニトロスチレン、ジビニルベンゼン等が例示さ
れるが、これらに限定されるものではない。
【0031】スチレン及びスチレン誘導体とビニル単量
体との共重合体におけるビニル単量体とは、分子内に1
個以上の炭素−炭素二重結合を有するものであり、エチ
レン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘ
キサン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1
−ペンテン等のα−オレフィン、ブタジエン等のジエ
ン、(メタ)アクリル酸エステルやその誘導体、(メ
タ)アクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。こ
れらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】上記ポリスチレン系樹脂としては、例え
ば、スチレンのアタクチック単独重合体、スチレンのア
イソタクチックもしくはシンジオタクチック単独重合
体、ABS樹脂(アクリロニトリル/スチレン/ブタジ
エン共重合体)、スチレン/エチレン共重合体、または
ゴム成分が添加されたHIPS(ハイインパクトポリス
チレン)等が挙げられる。これらは単独で用いても、2
種以上を併用してもよい。
【0033】また、本発明に用いるポリスチレン系樹脂
には適宜、他種の高分子化合物がアロイ化またはブレン
ドされていても構わない。例えば、マレイン酸等のカル
ボン酸や無水マレイン酸、オキサゾリン基をグラフトま
たは他の共重合法等により導入した高分子化合物を少量
添加しておき、あらかじめ熱可塑性樹脂と層状珪酸塩の
親和性を高めておいてもよい。
【0034】本発明に用いられる熱可塑性樹脂には適
宜、各種添加剤が添加されていてもよい。酸化防止剤、
耐光剤、紫外線吸収剤、滑剤等、難燃剤、帯電防止剤等
の添加剤が、所望の物性を得るために適宜用いられる。
結晶核剤となり得るものを少量添加して、結晶を微細化
して、物性の均一化を補助してもよい。
【0035】本発明に係る製造方法では、熱可塑性樹脂
100重量部に対し層状珪酸塩が0.1〜100重量部
配合され、混練装置内においてこれらが混練される。混
練装置としては、剪断応力0.1MPa〜1.5MPa
であり、かつ混練時間が50000以上300000以
下の条件で溶融混練し得る装置であれば限定されない。
なお、混練時間=剪断係数γ(秒-1)×実混練時間
(秒)である。このような混練装置としては、例えば、
ラボプラストミル、ロール、一軸押出機または二軸押出
機が好適に用いられる。
【0036】剪断応力τは、上記混練装置における樹脂
粘土η(Pa・秒)と剪断速度γ(秒-1)の関数であ
り、τ=η×γで与えられる。例えば、ロールの混練に
おいて、ロール間のクリアランスHが0.2mm、かつ
ロール周速度差が20mm/秒のとき、剪断速度γ(秒
-1)は100(1/秒)となる。その際に樹脂粘度が、
15000Pa・Sのとき剪断応力が1.5MPaとな
る。剪断応力が1.5MPaを超えると、熱可塑性樹脂
中の層状珪酸塩が破壊し、アスペクト比が減少するた
め、強度や線膨張係数の効果がでない。また剪断応力が
0.1MPa未満では、層状珪酸塩の層状ズレが生じる
までに至らず、層状珪酸塩が凝集状態で熱可塑性樹脂中
に存在する。このため剪断応力は0.1MPa以上1.
5MPa以下であることが好ましい。また平均剪断速度
が低過ぎると、層状珪酸塩と樹脂との混練が悪くなり、
分散不良が発生する。また平均剪断速度が高過ぎると、
樹脂が劣化したり、層状珪酸塩が破壊したりするなどの
不具合が生じる恐れがある。従って、平均剪断速度は、
0.1〜1000(1/秒)であり、より好ましくは1
〜500(1/秒)の熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複合材
料範囲である。
【0037】本発明においては、剪断速度γ(秒-1)と
実混練時間(秒)の積である混練時間が50000以上
として溶融混練することにより、層状珪酸塩の層間への
樹脂のインターカレート(挿入)が促進される。この混
練時間50000以上とは、剪断速度が低いときには長
い実混練時間を必要とし、例えば剪断速度100(1/
秒)のときは500秒以上必要となることを、上記剪断
応力が1.5MPaを超えない程度の高い剪断速度のと
きには、比較的短い混練時間で十分であることを意味す
る。例えば剪断速度200(1/秒)のときは250秒
以上必要となる。混練時間が50000未満のときに
は、層状珪酸塩層間への樹脂インターカレートや層状珪
酸塩の分散が十分に行われない。また混練時間3000
00を超えると、剪断速度が高くなり、層状珪酸塩が破
断する恐れがあり、かつ過度の発熱により樹脂が劣化を
起こすことがあり、生産性も低下する。従って、混練時
間は50000〜300000範囲とされる。
【0038】本発明では、層状珪酸塩は、熱可塑性樹脂
中に所望方向に配向されていることが好ましい。通常の
押出成形、射出成形においては、簡易に樹脂流動方向に
平行に層状珪酸塩を配向させることができる。押出成形
では押出方向に線膨張係数の低い成形品を得ることがで
き、また射出成形では、射出充填時の流動方向に線膨張
係数の低い成形品を得ることができる。強度も配向方向
に影響を受け、層状珪酸塩配向方向に直角な方向の強度
が向上される。
【0039】(作用)本発明において、層状珪酸塩は樹
脂の伸縮を抑制するように作用し、薄片状結晶のアスペ
クト比が高くかつ所望方向に配向されて、層状珪酸塩周
辺に剛直な樹脂層領域が増大されるほど、線膨張係数低
下の効果が高められる。混練時間を長くすることにより
層状珪酸塩層間に樹脂のインターカレート(挿入)が十
分に行なわれ、インターカレート(挿入)された樹脂が
層状珪酸塩周辺の樹脂と絡み合いを起こし、剛直な領域
がより多くなる。
【0040】また、ポリスチレン系樹脂を用いた場合、
層状珪酸塩との長時間の混合により層間へのインターカ
レート(挿入)が可能であり、インターカレートされた
スチレン鎖に層状珪酸塩周辺のスチレンが絡むことによ
り、剛直な樹脂層が形成され、より一層、大きな効果が
期待できる。さらに、層状珪酸塩を破壊しない程度に剪
断応力を付加して、薄片状結晶を所望方向にずらせるこ
とができ、所望方向に有効に作用させることができる。
【0041】
【実施例】次に、実施例、比較例を挙げて本発明を詳し
く説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定され
るものではない。
【0042】以下の実施例、比較例で用いた原材料につ
いて説明する。 [用いた原材料] (1)層状珪酸塩 層状珪酸塩として、以下に示す鉱物を用いた。 ・モンモリロナイト:豊順鉱業社製モンモリロナイト
(商品名:ベンゲルA) ・膨潤性マイカ:コープケミカル社製膨潤性マイカ(商
品名;ME−100)
【0043】(2)カチオン系界面活性剤含有層状珪酸
塩 カチオン系界面活性剤を含有する層状珪酸塩として、以
下に示す市販品を用いた。 ・DSDM変性モンモリロナイト:豊順鉱業社製DSD
M変性モンモリロナイト(商品名;ニューエスベンD=
ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドにてモン
モリロナイト層間のナトリウムイオンを全量イオン交換
した有機化モンモリロナイト) ・DSDM変性膨潤性マイカ:コープケミカル社製DS
DM変性膨潤性マイカ(商品名;MAE=ジステアリル
ジメチルアンモニウムクロライドにてモンモリロナイト
層間のナトリウムイオンを全量イオン交換した有機化膨
潤性マイカ)
【0044】(3)熱可塑性樹脂 熱可塑性樹脂として以下のものを用いた。 ・ポリスチレン(A&Mポリスチレン社製、HH10
2) ・アクリル変性ポリスチレン(A&Mポリスチレン社
製、SX200)
【0045】(実施例及び比較例)6インチロール(小
平製作所製)を用いて、任意のロールクリアランスに設
定し、各ロール温度、各回転数、各時間にて混練サンプ
ルを作成した。上記ロールは、前後で1:1.235の
比で回転するよう設定されている。上記ロールでロール
に巻き付いて混練された状態から取り出した板状サンプ
ルを2mm厚みでプレスして評価サンプルを作成した。
なお、熱可塑性樹脂100重量部に対し、層状珪酸塩は
10重量部もしくは20重量部添加した。
【0046】(サンプル評価法) (1)層状珪酸塩状態観察 透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、配向方向の断面
を×5万倍で観察し、凝集体すなわち、層状珪酸塩の配
向方向長さと厚みを算出した。
【0047】(2)層状珪酸塩の層間距離 X線回折測定装置(リガク社製;RINT1100)に
より複合物中の層状珪酸塩の積層面の回折より得られる
回折ピークの2θを測定し、ブラックの回折式(1)を
用いて該層状珪酸塩の面間隔を算出した。
【0048】λ=2dsineθ …(1) (λ=1.54、d;層状珪酸塩の面間隔、θ;回折
角) (1)式より得られたdを平均層間距離とした。
【0049】(3)層状ズレ状態の観察 混練したサンプルをダイヤモンドカッターにて切り出
し、透過型電子顕微鏡(TEM 日本電子社製 JEM
−1200EX II)写真により複合物中の層状珪酸塩
の剥離状態を観察した。
【0050】(4)線膨張係数の測定 TMA(セイコー電子工業社製 TMA/SS120)
により、40℃から70℃の線膨張係数を測定した。
【0051】(5)曲げ強度 上記手法により得られたサンプル2mm厚みの板状物か
ら試験片を切り出し、JIS K 7171に規定され
ている方法にて測定した。
【0052】(実施例1)アクリル変性ポリエチレン
(SX200)に、DSDM変性膨潤性マイカ(MA
E)を10部添加し、ロール温度180℃、回転数10
rpmで15分間混練した。
【0053】(実施例2)アクリル変性ポリエチレン
(SX200)に、DSDM変性膨潤性マイカ(MA
E)を10部添加し、ロール温度140℃、回転数10
rpmで30分間混練した。
【0054】(実施例3)ポリスチレン(HH102)
に、DSDM変性膨潤性マイカ(MAE)を10部添加
し、ロール温度140℃、回転数10rpmで15分間
混練した。GPPS系のポリスチレンを用いた場合も、
本発明の製造方法により、強度の向上と線膨張係数の低
下に効果があることがわかった。
【0055】(実施例4)アクリル変性ポリエチレン
(SX200)にDSDM変性膨潤性マイカ(MAE)
を20部添加し、ロール温度140℃、回転数10rp
mで15分間混練した。
【0056】(実施例5)アクリル変性ポリエチレン
(SX200)に、DSDM変性モンモリロナイト(ニ
ューエスベンD)を10部添加し、ロール温度140
℃、回転数10rpmで15分間混練した。
【0057】(比較例1)アクリル変性ポリエチレン
(SX200)100重量部を、ロール温度180℃、
回転数10rpmで15分間混練した。
【0058】(比較例2)アクリル変性ポリエチレン
(SX200)に、DSDM変性膨潤性マイカ(MA
E)を10部添加し、ロール温度140℃、回転数10
rpmで2分間混練した。
【0059】混練時間が短いためにインターカレートが
十分に行われず、また層状珪酸塩が層状ズレを生じるに
至らなかった。このため強度が低く、線膨張係数が高か
った。
【0060】(比較例3)アクリル変性ポリエチレン
(SX200)に、DSDM変性膨潤性マイカ(MA
E)を10部添加し、ロール温度120℃、回転数10
rpmで15分間混練した。剪断応力が高いため、層状
珪酸塩が破壊しアスペクト比が低かった。このため、強
度が低く、線膨張係数が高かった。
【0061】(比較例4)アクリル変性ポリエチレン
(SX200)に、DSDM変性膨潤性マイカ(MA
E)を10部添加し、ロールクリアランス1mm、ロー
ル温度180℃、回転数10rpmで15分間混練し
た。剪断応力が低く、混練時間が短いため、アスペクト
比が低かった。このため強度が低く線膨張係数が高かっ
た。
【0062】(比較例5)アクリル変性ポリエチレン
(SX200)に、DSDM変性膨潤性マイカ(MA
E)を120部添加し、ロール温度180℃、回転数1
0rpmで15分間混練した。ロールクリアンランス1
mmにて混練したが、層状珪酸塩が多く分散不良により
サンプル採取困難であった。
【0063】(結果)表1に、実施例及び比較例にて行
った層状珪酸塩の状態、成形品の評価結果を示した。実
施例1〜4から明らかなように、本発明に従って層状珪
酸塩を少量添加することにより、線膨張係数を飛躍的に
低下させ、かつ強度を向上させることが可能となった。
線膨張係数に関しては、層状珪酸塩を添加しない熱可塑
性樹脂の線膨張係数9.5(×10-5/℃)に対して1
/2以下である線膨張係数4(×10-5/℃)以下に改
善されるので、寸法精度の高い成形品を生産することが
できる。さらに環境の変化による寸法変化が小さいた
め、本発明は、長尺製品(例えば雨樋や住宅内部の廻り
縁、幅木と呼ばれる製品)に好適に用いることができ
る。また強度についても層状珪酸塩を添加しない熱可塑
性樹脂の強度よりも、本発明の実施例では強度が1.5
〜2倍向上するので、製品肉厚を薄くでき、コストを低
減することができる。
【0064】
【表1】
【0065】
【発明の効果】本発明に係る熱可塑性樹脂/層状珪酸塩
複合材料では、熱可塑性樹脂100重量部に対し層状珪
酸塩が0.1〜100重量部添加されている組成物から
なり、層状珪酸塩の各層を構成している各薄片状結晶が
隣接する薄片状結晶と部分的に対向するように連続的に
ずらされた状態で層状珪酸塩が分散されており、層状珪
酸塩の厚みが5〜50nm及び長さが少なくとも500
nmであるため、層状珪酸塩の原料結晶のずらす方向を
制御することにより、所望の方向において線膨張係数を
低くすること及び機械的強度の向上を図ることができ
る。
【0066】本発明に係る製造方法では、熱可塑性樹脂
100重量部と層状珪酸塩0.1〜100重量部と、剪
断応力0.1MPa〜1.5MPaかつ前述のように定
義された混練時間が50000〜300000の範囲で
溶融混練されるため、層状珪酸塩の層間、すなわち薄片
状結晶間の樹脂のインターカレートが十分に行われる。
また、層状珪酸塩の薄片状結晶が隣接する薄片状結晶と
部分的に対向するように連続的にずらされた状態に容易
にされ、さらに薄片状結晶の該アスペクト比が維持され
る。従って、上記薄片状結晶がずらされた方向における
線膨張係数が低く、強度の高い本発明の熱可塑性樹脂/
層状珪酸塩複合材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】層状珪酸塩の結晶構造を示す模式的斜視図。
【図2】図1の結晶構造の一部を拡大して示す模式図。
【図3】本発明に係る層状珪酸塩における薄片状結晶が
部分的に対向して連続的にずらされた状態を示す模式的
斜視図。
【符号の説明】
1…層状珪酸塩 2…交換性陽イオン 3…薄片状結晶
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // B29K 25:00 B29K 25:00 105:06 105:06 309:10 309:10 Fターム(参考) 4F201 AA13 AB11 AB16 AB27 AB28 AR09 AR11 AR12 BA01 BC01 BC03 BC12 BC37 BK01 BK16 BK26 BK74 BK75 4J002 BB001 BC031 BD031 BG001 BN071 BN151 CF061 CG001 DJ006 FB236 FD016

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性樹脂100重量部に対し層状珪
    酸塩が0.1〜100重量部添加されている組成物から
    なり、前記層状珪酸塩の各層を構成している各薄片状結
    晶が隣接する薄片状結晶と部分的に対向するように連続
    的にずらされた状態に分散されており、該層状珪酸塩の
    厚みが5〜50nm、長さが少なくとも500nmであ
    ることを特徴とする熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複合材
    料。
  2. 【請求項2】 前記熱可塑性樹脂がポリスチレン系樹脂
    である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複
    合材料。
  3. 【請求項3】 前記層状珪酸塩が、カチオン界面活性剤
    で処理された有機化層状珪酸塩である、請求項1または
    2に記載の熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複合材料。
  4. 【請求項4】 熱可塑性樹脂100重量部と層状珪酸塩
    を0.1〜100重量部とを、混練装置内において、剪
    断応力0.1MPa〜1.5MPaで、かつ剪断速度γ
    (1/秒)×実混練時間(秒)=混練時間で表わされる
    混練時間が50000〜300000の範囲で溶融混練
    することを特徴とする熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複合材
    料の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記熱可塑性樹脂としてポリスチレン系
    樹脂を用いることを特徴とする請求項4に記載の熱可塑
    性樹脂/層状珪酸塩複合材料の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記層状珪酸塩が、カチオン界面活性剤
    で処理された有機化層状珪酸塩である、請求項4または
    5に記載の熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複合材料の製造方
    法。
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