JP2004051466A - 断熱合わせガラス - Google Patents
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Abstract
【課題】熱線反射フィルムを用いた断熱合わせガラスにおいて、好適な構成を提案する。
【解決手段】第1ガラス板/中間膜部/第2ガラス板が積層されてなる合わせガラスであって、前記中間膜部は、第1中間膜/熱線反射フィルム/第2中間膜が積層されてなり、前記熱線反射フィルムは、屈折率が異なる2種類のポリマー薄膜を多数積層した光学干渉多層膜であり、前記第1ガラス板はクリアガラスであり、前記第2ガラス板は熱線吸収機能を有するガラスであって、前記第1ガラス面に垂直に入射する日射光に対して、JIS R 3106(1998)で算出される波長範囲300〜2500nmにおける日射透過率が48%以下であり、日射反射率が少なくとも10%であることを特徴とする断熱合わせガラスである。
【選択図】 図1
【解決手段】第1ガラス板/中間膜部/第2ガラス板が積層されてなる合わせガラスであって、前記中間膜部は、第1中間膜/熱線反射フィルム/第2中間膜が積層されてなり、前記熱線反射フィルムは、屈折率が異なる2種類のポリマー薄膜を多数積層した光学干渉多層膜であり、前記第1ガラス板はクリアガラスであり、前記第2ガラス板は熱線吸収機能を有するガラスであって、前記第1ガラス面に垂直に入射する日射光に対して、JIS R 3106(1998)で算出される波長範囲300〜2500nmにおける日射透過率が48%以下であり、日射反射率が少なくとも10%であることを特徴とする断熱合わせガラスである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物や車両の窓ガラスとして用いられる断熱合わせガラスに関する。特に、熱線反射フィルムを用いた断熱合わせガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
(社)自動車技術会 学術講演会前刷集 No.96−00,p17−p21(以下、文献1という)には、「金属を含まない熱線反射フィルム」に関する発表の要旨が記載されている。そのなかに、金属を含まないポリマーで構成される熱線反射フィルム(Solar Reflecting Film)を用いた合わせガラスが示されている。その構成は、ガラス板/PVB1/SRF/PVB2/ガラス板である(PVB:ポリビニルブチラール)。またその性能は、以下に示す表1のように記されている。
【0003】
【表1】
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の熱線反射フィルムを用いた合わせガラスでは、熱線反射フィルムとガラス板の日射遮蔽性能がよくないので、表1に示したように合わせガラス全体としてもクリア/グリーン構成については日射透過率が大きい、また、グリーン/グリーン構成については日射反射率が小さいため、日射遮蔽性能が十分でないという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は、上述のような状況を鑑みなされたものであって、熱線反射フィルムを用いた断熱合わせガラスの提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、請求項1に記載の発明として、
第1ガラス板/中間膜部/第2ガラス板が積層されてなる合わせガラスであって、
前記中間膜部は、第1中間膜/熱線反射フィルム/第2中間膜が積層されてなり、
前記熱線反射フィルムは、屈折率が異なる2種類のポリマー薄膜を多数積層した光学干渉多層膜であり、
前記第1ガラス板はクリアガラスであり、前記第2ガラス板は熱線吸収機能を有するガラスであって、前記第1ガラス面に垂直に入射する日射光に対して、JIS R 3106(1998)で算出される波長範囲300〜2500nmにおける日射透過率が48%以下であり、日射反射率が少なくとも10%であることを特徴とする断熱合わせガラスである。
【0007】
請求項2に記載の発明として、
請求項1に記載の断熱合わせガラスにおいて、
前記第2ガラス板は、質量%で表示して、
SiO2 65〜80%、
Al2O3 0〜 5%、
MgO 0〜10%、
CaO 5〜15%、
(ただし、MgOとCaOの合計量 5〜15%)、
Na2O 10〜18%、
K2O 0〜 5%、
(ただし、Na2O+K2Oの合計量 10〜20%)、
および
B2O3 0〜 5%
からなる基礎ガラス組成と、
着色成分として、
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T−Fe2O3)
0.5〜 1%、
CeO2 0.8〜 2%、
および
TiO2 0〜0.5%
からなり、かつ
Fe2O3に換算したFeOがT−Fe2O3の20〜40%であることを特徴とする断熱合わせガラスである。
【0008】
請求項3に記載の発明として、
請求項1に記載の断熱合わせガラスにおいて、
前記第2ガラス板は、質量%で表示して、
SiO2 65〜80%、
Al2O3 0〜 5%、
MgO 0〜10%、
CaO 5〜15%、
(ただし、MgOとCaOの合計量 5〜15%)、
Na2O 10〜18%、
K2O 0〜 5%、
(ただし、Na2O+K2Oの合計量 10〜20%)、
および
B2O3 0〜 5%
からなる基礎ガラス組成と、
着色成分として、
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T−Fe2O3)
1〜1.7%、
NiO 0.001〜0.05%、
および
CoO 0〜0.02%
からなり、かつ
Fe2O3に換算したFeOがT−Fe2O3の20〜40%であることを特徴とする断熱合わせガラスである。
【0009】
請求項4に記載の発明として、
請求項1に記載の断熱合わせガラスにおいて、
前記第2ガラス板は、JIS R 3106(1998)で算出される波長範囲300〜2500nmにおける日射透過率が60%以下であることを特徴とする断熱合わせガラスである。
【0010】
請求項5に記載の発明として、
請求項1に記載の断熱合わせガラスにおいて、
前記熱線反射フィルムが一部切り欠かれた領域を有することを特徴とする断熱合わせガラスである。
【0011】
請求項6に記載の発明として、
請求項1〜5に記載の断熱合わせガラスを、前記第1ガラスを車外側に、前記第2ガラスを車内側に配置して、窓開口部に装着したことを特徴とする車両窓構造である。
【0012】
本発明による断熱合わせガラスは、上述した文献1に示された構成の合わせガラスと同様に、その中間膜層は2枚の中間膜で反射フィルムを挟み込んだ構造を有している。
【0013】
本発明に使用する熱線反射フィルムは、金属を含まずポリマー100%で構成される熱線反射フィルムである。詳しくは、屈折率が異なる2種類のポリマー薄膜を多数積層した光学干渉多層膜であり、具体的には、ポリエチレンナフタレート(PEN)とポリメチルメタアクリレート(PMMA)を交互に多数枚積層し、光学干渉を利用して熱線を反射するものである(例えば、米国特許第6049419公報、参照のこと)。
【0014】
この反射フィルムは高い可視光線透過率を有するため、種々の可視光線透過率を有するガラス板を組み合わせて、合わせガラスを構成することが可能となる。
【0015】
この反射フィルムの特性を有効に作用させるには、日射エネルギーをできるだけ車外側に反射させるために、車外側には吸収の少ないガラス板を配置し、また反射フィルムを通過した日射エネルギーの車内側への放射を抑えるために、車内側ガラスに熱線吸収機能を有したガラス板を配置することが必要である。
【0016】
上述の文献1には、例としてクリア/グリーンおよびグリーン/グリーンの組み合わせによる特性が示されている(表1)。
【0017】
表1にあるように、車外側ガラスにクリアガラスを配置することで、日射反射率(Re)が大きく、反射性能が高まっていることが示されている。一方、クリアガラスを用いると、日射透過率(Te)は大きくなってしまう。
【0018】
合わせガラス全体として、日射エネルギーの車内への進入を防ぐためには、透過するエネルギーを抑えながら、一旦ガラスに吸収されて車内側に放射されるエネルギーも減じる必要がある。
【0019】
そこで本発明は、反射フィルムにて反射させた後の日射光のエネルギーを、熱線吸収機能を有する第2ガラス板で吸収させて、車内側に放射されるエネルギーを抑えることによって、熱遮蔽性に優れる断熱合わせガラスを提供するものである。
【0020】
自動車用の熱線吸収ガラスとしては、グリーンガラス板またはUVグリーンガラス板が、広く使用されている。
【0021】
熱線吸収能の大きいガラス板とするには、従来の熱線吸収ガラスの板厚の厚みを大きくしてもよいし、熱線吸収能を高めた別種類のガラス板を用いてもよい。
【0022】
熱線吸収能を大きくするためには、ガラス中に導入された酸化鉄のうち酸化第一鉄(FeO)の絶対量を増加させればよいことが知られており、過去に提案された熱線吸収ガラスのほとんどはこの方法を採用している。
【0023】
熱線吸収能の大きいガラス板としては、質量%で表示して、
SiO2 65〜80%、
Al2O3 0〜 5%、
MgO 0〜10%、
CaO 5〜15%、
(ただし、MgOとCaOの合計量 5〜15%)、
Na2O 10〜18%、
K2O 0〜 5%、
(ただし、Na2O+K2Oの合計量 10〜20%)、
および
B2O3 0〜 5%
からなる基礎ガラス組成と、
着色成分として、
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T−Fe2O3)
0.5〜 1%、
CeO2 0.8〜 2%、
および
TiO2 0〜0.5%
からなり、かつ
Fe2O3に換算したFeOがT−Fe2O3の20〜40%であるガラス組成を有していることが好ましい。
【0024】
また、熱線吸収能の大きい別の組成のガラス板としては、質量%で表示して、SiO2 65〜80%、
Al2O3 0〜 5%、
MgO 0〜10%、
CaO 5〜15%、
(ただし、MgOとCaOの合計量 5〜15%)、
Na2O 10〜18%、
K2O 0〜 5%、
(ただし、Na2O+K2Oの合計量 10〜20%)、
および
B2O3 0〜 5%
からなる基礎ガラス組成と、
着色成分として、
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T−Fe2O3)
1〜1.7%、
NiO 0.001〜0.05%、
および
CoO 0〜0.02%
からなり、かつ
Fe2O3に換算したFeOがT−Fe2O3の20〜40%であるガラス組成を有していることが好ましい。
【0025】
上述した2種類の紫外線赤外線吸収ガラスは、自動車用ガラスとして好ましくない黄色味を帯びさせることなく、緑色系の色調を有している。また、可視光透過率も中程度以上の透過率を有するため、合わせガラスとしてクリアガラスと組み合わせることで十分な可視光線透過率を維持することができる。
【0026】
本発明では、第2ガラス板を熱線吸収能の大きいガラス板とすることによって、熱遮蔽性に優れる断熱合わせガラスを提供するものである。このため、可視光線および赤外線領域の透過率を減じることができる。
【0027】
一方、近年、IT(Information Technology)化に伴い、自動車ならびに車両においてもガラス越しに情報のコミュニケーションを行うシステムやセンサが数多く取り付けられるようになった。
【0028】
これらセンサーの中には、光ビーコンやレインセンサのように赤外線領域の波長を利用したものもある。
【0029】
ところで、本発明の断熱合わせガラスでは、可視光および赤外光の透過率を減じているので、これら光学式通信機器または光学式検出装置の検出感度を低下させる畏れがある。
【0030】
そこで、本発明では、光学式通信機器または光学式検出装置などの光学機器が設けられる領域、すなわち前記光学機器の受光部および発光部の通信領域において、前記熱線反射フィルムを切り欠いて、設けないようにしたことを特徴とする断熱合わせガラスである。
【0031】
なお、熱線反射フィルムを設けないようにする手段としては、該当する領域のフィルムをガラスを貼り合わせする前にカッティングしておくとよい。
【0032】
また本発明に用いる熱線反射フィルムは、光学干渉を利用した光学多層膜である。この熱線反射フィルムを用いた合わせ断熱ガラスでは、熱線反射フィルムを用いない合わせガラスに比べ、曇価を示すヘイズ率が高くなる問題があった。
【0033】
そこで本発明では、第2ガラス板に熱線吸収機能の高めたガラス板を用いることによって、このヘイズ率を低減できる効果を見出した。
【0034】
ヘイズ率の測定には、スガ試験機株式会社製 HGM−3DPを使用した。ヘイズ率の計算式は次の通りであり、計算式の演算は全て試験機内のマイコンで行われる。
【0035】
【数1】
ヘイズ(曇価):H(%)=Td/Tt×100
【数2】
拡散透過率:Td(%)={T4−T3×(T2−T1)}/T1×100
【数3】
平行光線透過率:Tp(%)=Tt−td
【数4】
全光線透過率:Tt(%)=T2/T1×100
【0036】
ここで、T1:入射光線(試料なし、標準板セット)、T2:全光線透過率(試料あり、標準板セット)、T3:装置の拡散光(試料なし、暗箱セット)、T4:拡散透過光(試料あり、暗箱セット)、である。
【0037】
【発明の実施の形態】
(基本構成)
本発明による断熱合わせガラスの基本構成は、以下のようである。すなわち、第1(車外側)ガラス板(2.1mm)上に、通常の中間膜(0.38mm)、熱線反射フィルム(0.05mm)、通常の中間膜(0.38mm)、第2(車内側)ガラス板(2.1mm)を重ね合わせ、仮接着した後、140℃、1372.9kPa(=14kg・f/cm2)でオートクレーブによる本接着し、断熱合わせガラスを得た(図1参照)。
【0038】
本発明に使用した熱線吸収の大きいガラス板の基礎ガラス組成と、着色成分であるTiO2濃度、CeO2濃度、CoO濃度、NiO濃度、T−Fe2O3濃度、FeO(Fe2O3換算)/T−Fe2O3比および板厚と、そのときの光学データ(可視光線透過率(YA)、日射透過率(TG))を表2に示す。
【0039】
また参考として、従来使用されている自動車用熱線吸収ガラスであるグリーンガラス、UVグリーンガラス、および本発明に使用したクリアガラスの基礎ガラス組成、ならびに着色成分であるTiO2濃度、CeO2濃度、T−Fe2O3濃度、FeO(Fe2O3換算)/T−Fe2O3比、および板厚とそのときの光学データ(可視光線透過率(YA)、日射透過率(TG))を表3に示す。
【0040】
【表2】
(熱線吸収ガラス)
【0041】
【表3】
(参考)
【0042】
本発明による各実施例、および各比較例におけるガラス構成を表4に示す。表4にある熱線吸収ガラスには、それぞれ表2にある熱線吸収ガラス板を用いている。また、比較例としてクリアガラス/UVグリーンガラスの間に熱線反射フィルムを挟み込んだ場合と、UVグリーン/UVグリーンガラスの間に熱線反射フィルムを挟み込んだ例を併せて示す。
【0043】
【表4】
(ガラス板の組み合わせ)
【0044】
表4の構成により作製した断熱合わせガラスの光学性能を表5に示す。
【0045】
【表5】
(光学性能)
【0046】
実施例1と比較例1は、同じ組成のUVグリーンガラスを車内側ガラス板に用いた場合で、比較例1では板厚が2.1mm、実施例1では板厚が3.0mmと大きくした例である。
【0047】
実施例1と比較例1の比較から、板厚を大きくした実施例1では日射透過率は小さくなり、また、日射反射率は大きい値を維持される。このため、車外側からの日射光に対して、ガラス部分を透過する直達入射による熱量とガラスに吸収されて車内側に伝達される熱量の和である日射熱取得率(JIS R 3106における夏期条件)は小さな値となり、日射遮蔽性に優れていることがわかった。なお比較例1の光学データは、文献1に記されているクリア/グリーン構成の光学データにほぼ匹敵していた。
【0048】
実施例2は、比較例1で用いたUVグリーンガラスよりも熱線吸収能の大きい全鉄量(T−Fe2O3)の割合を高めたガラスを車内側ガラス板に用いた例である。このとき、ガラスの板厚は2.1mmであった。
【0049】
実施例2では、熱線吸収能の高いガラスを車内側に用いたため、比較例1に比べ、日射透過率は小さく、また、日射反射率は大きくなる。このため、日射熱取得率は小さい値となり、日射遮熱性に優れることがわかった。
【0050】
実施例3〜4は、実施例2で用いた同じガラス組成の熱線吸収ガラスを用いた例で、板厚を3.0mmおよび3.4mmと大きくしたときの例である。
【0051】
この場合も、板厚が大きくなると、日射透過率は小さくなり、また、日射反射率は大きい値を維持されるため、日射熱取得率は小さな値となり、日射遮蔽性に優れていることがわかった。
【0052】
実施例5は熱線吸収ガラスとして、熱線吸収能の大きいNiOおよびCoOを微量添加したガラスを用いた例である。
【0053】
実施例5の場合も日射透過率は小さく、また、日射反射率は大きい値を維持されるため、日射透過率は小さな値となり、日射遮蔽性に非常に優れていることがわかった。
【0054】
比較例2は、熱線吸収ガラスであるUVグリーンガラスを車外側、車内側の両方に用いた例である。
【0055】
比較例2では、日射透過率は41.0%と小さな値を示す。しかしながら、これは、熱線吸収ガラスを車内側のみならず車外側にも適応したことによる吸収効果によるものであり、この構成では熱線反射フィルムの反射効果が十分に発揮されない。このため、日射反射率は9.5%と小さく、日射熱取得率は実施例1〜5の何れの例よりも大きい値となり、日射遮蔽性に乏しいものであった。
なお比較例2の光学データは、文献1に記されているグリーン/グリーン構成の光学データにほぼ匹敵していた。
【0056】
また、本発明の断熱合わせガラスを自動車用ガラスに適応することを考えた場合、例えばウインドシールドガラスでは、可視光線透過率を70%以上に確保する必要がある。この場合、実施例1〜実施例4のガラス構成では可視光線透過率が70%を超えており、好適である。
【0057】
一方、実施例5に示した断熱合わせガラスでは、可視光線透過率に規制のない部位について適応が可能である。
【0058】
表4の構成で作製した合わせガラスのうち、実施例3〜5および比較例1、比較例2についてヘイズ率を測定した。ヘイズ率の測定はスガ試験機株式会社製 HGM−3DPを使用し、測定前にはサンプルをアルコールで十分に清浄にした。
【0059】
ヘイズ率の測定結果を表6に示す。実施例3〜5、比較例1,2はそれぞれ表4の条件で作製したサンプルである。
【0060】
【表5】
【0061】
比較例1または比較例2ではヘイズ率は0.5〜0.6%と高い数値を示したのに対し、実施例3〜5ではヘイズ率は低減されていた。
【0062】
これは、吸収能の高いガラス板を用いることによって、拡散透過光(T4)が吸収により小さくなり、拡散透過率(Td)が小さい値となる。このことにより、ヘイズ率は小さくなると考えられ、実施例5ではヘイズ率0.2%と熱反フィルムを挟まない通常ガラスと同等のヘイズ率が得られた。
【0063】
(実施例6)
実施例6は、請求項5の発明に対応する実施例である。実施例6は、上述した基本構成と基本的に同様にして作製した断熱合わせガラスであって、熱線反射フィルムの一部を予め切り欠いたものである(図2)。さらに切り欠き部の第2ガラス板の後方には、光学機器が設けてある。熱線反射フィルムを切り欠いた部分31は、中間膜、熱線反射フィルム、中間膜を重ねて貼り合せする際に、該当部分のフィルムのみをカッター等でカッティングしておけばよい。なお、熱線反射フィルムは0.05mmと薄いので、フィルムの切り欠いた部分には特に何もしなくても、合わせガラスとすることができる。
【0064】
このような構成により、この断熱合わせガラスにおいて、可視光および赤外光の透過に対して悪影響を及ぼすことが少ないので、これら光学式通信機器または光学式検出装置などの光学機器の検出感度を低下させることがない。
【0065】
【発明の効果】
以上詳細に説明してきたように、本発明による断熱合わせガラスは、第1ガラス板/中間膜部/第2ガラス板が積層されており、前記中間膜部は、第1中間膜/熱線反射フィルム/第2中間膜が積層された構成とした。
【0066】
その結果、反射フィルムにて反射させた後の日射光のエネルギーを、熱線吸収機能を有するガラス板で吸収させて、車内側に放射されるエネルギーを抑えることができた。つまり本発明による断熱合わせガラスは、日射透過率は小さく、また日射熱取得率も小さな値を示し、日射遮蔽性に優れていることがわかった。
【0067】
また第2ガラス板に、吸収能の高いガラス板を用いると、拡散透過光(T4)が小さくなり、拡散透過率(Td)も小さい値となる。このことにより、ヘイズ率を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による断熱合わせガラスの基本構成を示す図である。
【図2】請求項5にかかる断熱合わせガラスの基本構成を示す図である。
【符号の説明】
1:断熱合わせガラス、
11:第1ガラス板、
12:第2ガラス板、
21:第1中間膜、
22:第2中間膜、
3:熱線反射フィルム、
31:熱線反射フィルムの切り欠き部、
4:光学機器、
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物や車両の窓ガラスとして用いられる断熱合わせガラスに関する。特に、熱線反射フィルムを用いた断熱合わせガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
(社)自動車技術会 学術講演会前刷集 No.96−00,p17−p21(以下、文献1という)には、「金属を含まない熱線反射フィルム」に関する発表の要旨が記載されている。そのなかに、金属を含まないポリマーで構成される熱線反射フィルム(Solar Reflecting Film)を用いた合わせガラスが示されている。その構成は、ガラス板/PVB1/SRF/PVB2/ガラス板である(PVB:ポリビニルブチラール)。またその性能は、以下に示す表1のように記されている。
【0003】
【表1】
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の熱線反射フィルムを用いた合わせガラスでは、熱線反射フィルムとガラス板の日射遮蔽性能がよくないので、表1に示したように合わせガラス全体としてもクリア/グリーン構成については日射透過率が大きい、また、グリーン/グリーン構成については日射反射率が小さいため、日射遮蔽性能が十分でないという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は、上述のような状況を鑑みなされたものであって、熱線反射フィルムを用いた断熱合わせガラスの提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、請求項1に記載の発明として、
第1ガラス板/中間膜部/第2ガラス板が積層されてなる合わせガラスであって、
前記中間膜部は、第1中間膜/熱線反射フィルム/第2中間膜が積層されてなり、
前記熱線反射フィルムは、屈折率が異なる2種類のポリマー薄膜を多数積層した光学干渉多層膜であり、
前記第1ガラス板はクリアガラスであり、前記第2ガラス板は熱線吸収機能を有するガラスであって、前記第1ガラス面に垂直に入射する日射光に対して、JIS R 3106(1998)で算出される波長範囲300〜2500nmにおける日射透過率が48%以下であり、日射反射率が少なくとも10%であることを特徴とする断熱合わせガラスである。
【0007】
請求項2に記載の発明として、
請求項1に記載の断熱合わせガラスにおいて、
前記第2ガラス板は、質量%で表示して、
SiO2 65〜80%、
Al2O3 0〜 5%、
MgO 0〜10%、
CaO 5〜15%、
(ただし、MgOとCaOの合計量 5〜15%)、
Na2O 10〜18%、
K2O 0〜 5%、
(ただし、Na2O+K2Oの合計量 10〜20%)、
および
B2O3 0〜 5%
からなる基礎ガラス組成と、
着色成分として、
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T−Fe2O3)
0.5〜 1%、
CeO2 0.8〜 2%、
および
TiO2 0〜0.5%
からなり、かつ
Fe2O3に換算したFeOがT−Fe2O3の20〜40%であることを特徴とする断熱合わせガラスである。
【0008】
請求項3に記載の発明として、
請求項1に記載の断熱合わせガラスにおいて、
前記第2ガラス板は、質量%で表示して、
SiO2 65〜80%、
Al2O3 0〜 5%、
MgO 0〜10%、
CaO 5〜15%、
(ただし、MgOとCaOの合計量 5〜15%)、
Na2O 10〜18%、
K2O 0〜 5%、
(ただし、Na2O+K2Oの合計量 10〜20%)、
および
B2O3 0〜 5%
からなる基礎ガラス組成と、
着色成分として、
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T−Fe2O3)
1〜1.7%、
NiO 0.001〜0.05%、
および
CoO 0〜0.02%
からなり、かつ
Fe2O3に換算したFeOがT−Fe2O3の20〜40%であることを特徴とする断熱合わせガラスである。
【0009】
請求項4に記載の発明として、
請求項1に記載の断熱合わせガラスにおいて、
前記第2ガラス板は、JIS R 3106(1998)で算出される波長範囲300〜2500nmにおける日射透過率が60%以下であることを特徴とする断熱合わせガラスである。
【0010】
請求項5に記載の発明として、
請求項1に記載の断熱合わせガラスにおいて、
前記熱線反射フィルムが一部切り欠かれた領域を有することを特徴とする断熱合わせガラスである。
【0011】
請求項6に記載の発明として、
請求項1〜5に記載の断熱合わせガラスを、前記第1ガラスを車外側に、前記第2ガラスを車内側に配置して、窓開口部に装着したことを特徴とする車両窓構造である。
【0012】
本発明による断熱合わせガラスは、上述した文献1に示された構成の合わせガラスと同様に、その中間膜層は2枚の中間膜で反射フィルムを挟み込んだ構造を有している。
【0013】
本発明に使用する熱線反射フィルムは、金属を含まずポリマー100%で構成される熱線反射フィルムである。詳しくは、屈折率が異なる2種類のポリマー薄膜を多数積層した光学干渉多層膜であり、具体的には、ポリエチレンナフタレート(PEN)とポリメチルメタアクリレート(PMMA)を交互に多数枚積層し、光学干渉を利用して熱線を反射するものである(例えば、米国特許第6049419公報、参照のこと)。
【0014】
この反射フィルムは高い可視光線透過率を有するため、種々の可視光線透過率を有するガラス板を組み合わせて、合わせガラスを構成することが可能となる。
【0015】
この反射フィルムの特性を有効に作用させるには、日射エネルギーをできるだけ車外側に反射させるために、車外側には吸収の少ないガラス板を配置し、また反射フィルムを通過した日射エネルギーの車内側への放射を抑えるために、車内側ガラスに熱線吸収機能を有したガラス板を配置することが必要である。
【0016】
上述の文献1には、例としてクリア/グリーンおよびグリーン/グリーンの組み合わせによる特性が示されている(表1)。
【0017】
表1にあるように、車外側ガラスにクリアガラスを配置することで、日射反射率(Re)が大きく、反射性能が高まっていることが示されている。一方、クリアガラスを用いると、日射透過率(Te)は大きくなってしまう。
【0018】
合わせガラス全体として、日射エネルギーの車内への進入を防ぐためには、透過するエネルギーを抑えながら、一旦ガラスに吸収されて車内側に放射されるエネルギーも減じる必要がある。
【0019】
そこで本発明は、反射フィルムにて反射させた後の日射光のエネルギーを、熱線吸収機能を有する第2ガラス板で吸収させて、車内側に放射されるエネルギーを抑えることによって、熱遮蔽性に優れる断熱合わせガラスを提供するものである。
【0020】
自動車用の熱線吸収ガラスとしては、グリーンガラス板またはUVグリーンガラス板が、広く使用されている。
【0021】
熱線吸収能の大きいガラス板とするには、従来の熱線吸収ガラスの板厚の厚みを大きくしてもよいし、熱線吸収能を高めた別種類のガラス板を用いてもよい。
【0022】
熱線吸収能を大きくするためには、ガラス中に導入された酸化鉄のうち酸化第一鉄(FeO)の絶対量を増加させればよいことが知られており、過去に提案された熱線吸収ガラスのほとんどはこの方法を採用している。
【0023】
熱線吸収能の大きいガラス板としては、質量%で表示して、
SiO2 65〜80%、
Al2O3 0〜 5%、
MgO 0〜10%、
CaO 5〜15%、
(ただし、MgOとCaOの合計量 5〜15%)、
Na2O 10〜18%、
K2O 0〜 5%、
(ただし、Na2O+K2Oの合計量 10〜20%)、
および
B2O3 0〜 5%
からなる基礎ガラス組成と、
着色成分として、
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T−Fe2O3)
0.5〜 1%、
CeO2 0.8〜 2%、
および
TiO2 0〜0.5%
からなり、かつ
Fe2O3に換算したFeOがT−Fe2O3の20〜40%であるガラス組成を有していることが好ましい。
【0024】
また、熱線吸収能の大きい別の組成のガラス板としては、質量%で表示して、SiO2 65〜80%、
Al2O3 0〜 5%、
MgO 0〜10%、
CaO 5〜15%、
(ただし、MgOとCaOの合計量 5〜15%)、
Na2O 10〜18%、
K2O 0〜 5%、
(ただし、Na2O+K2Oの合計量 10〜20%)、
および
B2O3 0〜 5%
からなる基礎ガラス組成と、
着色成分として、
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T−Fe2O3)
1〜1.7%、
NiO 0.001〜0.05%、
および
CoO 0〜0.02%
からなり、かつ
Fe2O3に換算したFeOがT−Fe2O3の20〜40%であるガラス組成を有していることが好ましい。
【0025】
上述した2種類の紫外線赤外線吸収ガラスは、自動車用ガラスとして好ましくない黄色味を帯びさせることなく、緑色系の色調を有している。また、可視光透過率も中程度以上の透過率を有するため、合わせガラスとしてクリアガラスと組み合わせることで十分な可視光線透過率を維持することができる。
【0026】
本発明では、第2ガラス板を熱線吸収能の大きいガラス板とすることによって、熱遮蔽性に優れる断熱合わせガラスを提供するものである。このため、可視光線および赤外線領域の透過率を減じることができる。
【0027】
一方、近年、IT(Information Technology)化に伴い、自動車ならびに車両においてもガラス越しに情報のコミュニケーションを行うシステムやセンサが数多く取り付けられるようになった。
【0028】
これらセンサーの中には、光ビーコンやレインセンサのように赤外線領域の波長を利用したものもある。
【0029】
ところで、本発明の断熱合わせガラスでは、可視光および赤外光の透過率を減じているので、これら光学式通信機器または光学式検出装置の検出感度を低下させる畏れがある。
【0030】
そこで、本発明では、光学式通信機器または光学式検出装置などの光学機器が設けられる領域、すなわち前記光学機器の受光部および発光部の通信領域において、前記熱線反射フィルムを切り欠いて、設けないようにしたことを特徴とする断熱合わせガラスである。
【0031】
なお、熱線反射フィルムを設けないようにする手段としては、該当する領域のフィルムをガラスを貼り合わせする前にカッティングしておくとよい。
【0032】
また本発明に用いる熱線反射フィルムは、光学干渉を利用した光学多層膜である。この熱線反射フィルムを用いた合わせ断熱ガラスでは、熱線反射フィルムを用いない合わせガラスに比べ、曇価を示すヘイズ率が高くなる問題があった。
【0033】
そこで本発明では、第2ガラス板に熱線吸収機能の高めたガラス板を用いることによって、このヘイズ率を低減できる効果を見出した。
【0034】
ヘイズ率の測定には、スガ試験機株式会社製 HGM−3DPを使用した。ヘイズ率の計算式は次の通りであり、計算式の演算は全て試験機内のマイコンで行われる。
【0035】
【数1】
ヘイズ(曇価):H(%)=Td/Tt×100
【数2】
拡散透過率:Td(%)={T4−T3×(T2−T1)}/T1×100
【数3】
平行光線透過率:Tp(%)=Tt−td
【数4】
全光線透過率:Tt(%)=T2/T1×100
【0036】
ここで、T1:入射光線(試料なし、標準板セット)、T2:全光線透過率(試料あり、標準板セット)、T3:装置の拡散光(試料なし、暗箱セット)、T4:拡散透過光(試料あり、暗箱セット)、である。
【0037】
【発明の実施の形態】
(基本構成)
本発明による断熱合わせガラスの基本構成は、以下のようである。すなわち、第1(車外側)ガラス板(2.1mm)上に、通常の中間膜(0.38mm)、熱線反射フィルム(0.05mm)、通常の中間膜(0.38mm)、第2(車内側)ガラス板(2.1mm)を重ね合わせ、仮接着した後、140℃、1372.9kPa(=14kg・f/cm2)でオートクレーブによる本接着し、断熱合わせガラスを得た(図1参照)。
【0038】
本発明に使用した熱線吸収の大きいガラス板の基礎ガラス組成と、着色成分であるTiO2濃度、CeO2濃度、CoO濃度、NiO濃度、T−Fe2O3濃度、FeO(Fe2O3換算)/T−Fe2O3比および板厚と、そのときの光学データ(可視光線透過率(YA)、日射透過率(TG))を表2に示す。
【0039】
また参考として、従来使用されている自動車用熱線吸収ガラスであるグリーンガラス、UVグリーンガラス、および本発明に使用したクリアガラスの基礎ガラス組成、ならびに着色成分であるTiO2濃度、CeO2濃度、T−Fe2O3濃度、FeO(Fe2O3換算)/T−Fe2O3比、および板厚とそのときの光学データ(可視光線透過率(YA)、日射透過率(TG))を表3に示す。
【0040】
【表2】
(熱線吸収ガラス)
【0041】
【表3】
(参考)
【0042】
本発明による各実施例、および各比較例におけるガラス構成を表4に示す。表4にある熱線吸収ガラスには、それぞれ表2にある熱線吸収ガラス板を用いている。また、比較例としてクリアガラス/UVグリーンガラスの間に熱線反射フィルムを挟み込んだ場合と、UVグリーン/UVグリーンガラスの間に熱線反射フィルムを挟み込んだ例を併せて示す。
【0043】
【表4】
(ガラス板の組み合わせ)
【0044】
表4の構成により作製した断熱合わせガラスの光学性能を表5に示す。
【0045】
【表5】
(光学性能)
【0046】
実施例1と比較例1は、同じ組成のUVグリーンガラスを車内側ガラス板に用いた場合で、比較例1では板厚が2.1mm、実施例1では板厚が3.0mmと大きくした例である。
【0047】
実施例1と比較例1の比較から、板厚を大きくした実施例1では日射透過率は小さくなり、また、日射反射率は大きい値を維持される。このため、車外側からの日射光に対して、ガラス部分を透過する直達入射による熱量とガラスに吸収されて車内側に伝達される熱量の和である日射熱取得率(JIS R 3106における夏期条件)は小さな値となり、日射遮蔽性に優れていることがわかった。なお比較例1の光学データは、文献1に記されているクリア/グリーン構成の光学データにほぼ匹敵していた。
【0048】
実施例2は、比較例1で用いたUVグリーンガラスよりも熱線吸収能の大きい全鉄量(T−Fe2O3)の割合を高めたガラスを車内側ガラス板に用いた例である。このとき、ガラスの板厚は2.1mmであった。
【0049】
実施例2では、熱線吸収能の高いガラスを車内側に用いたため、比較例1に比べ、日射透過率は小さく、また、日射反射率は大きくなる。このため、日射熱取得率は小さい値となり、日射遮熱性に優れることがわかった。
【0050】
実施例3〜4は、実施例2で用いた同じガラス組成の熱線吸収ガラスを用いた例で、板厚を3.0mmおよび3.4mmと大きくしたときの例である。
【0051】
この場合も、板厚が大きくなると、日射透過率は小さくなり、また、日射反射率は大きい値を維持されるため、日射熱取得率は小さな値となり、日射遮蔽性に優れていることがわかった。
【0052】
実施例5は熱線吸収ガラスとして、熱線吸収能の大きいNiOおよびCoOを微量添加したガラスを用いた例である。
【0053】
実施例5の場合も日射透過率は小さく、また、日射反射率は大きい値を維持されるため、日射透過率は小さな値となり、日射遮蔽性に非常に優れていることがわかった。
【0054】
比較例2は、熱線吸収ガラスであるUVグリーンガラスを車外側、車内側の両方に用いた例である。
【0055】
比較例2では、日射透過率は41.0%と小さな値を示す。しかしながら、これは、熱線吸収ガラスを車内側のみならず車外側にも適応したことによる吸収効果によるものであり、この構成では熱線反射フィルムの反射効果が十分に発揮されない。このため、日射反射率は9.5%と小さく、日射熱取得率は実施例1〜5の何れの例よりも大きい値となり、日射遮蔽性に乏しいものであった。
なお比較例2の光学データは、文献1に記されているグリーン/グリーン構成の光学データにほぼ匹敵していた。
【0056】
また、本発明の断熱合わせガラスを自動車用ガラスに適応することを考えた場合、例えばウインドシールドガラスでは、可視光線透過率を70%以上に確保する必要がある。この場合、実施例1〜実施例4のガラス構成では可視光線透過率が70%を超えており、好適である。
【0057】
一方、実施例5に示した断熱合わせガラスでは、可視光線透過率に規制のない部位について適応が可能である。
【0058】
表4の構成で作製した合わせガラスのうち、実施例3〜5および比較例1、比較例2についてヘイズ率を測定した。ヘイズ率の測定はスガ試験機株式会社製 HGM−3DPを使用し、測定前にはサンプルをアルコールで十分に清浄にした。
【0059】
ヘイズ率の測定結果を表6に示す。実施例3〜5、比較例1,2はそれぞれ表4の条件で作製したサンプルである。
【0060】
【表5】
【0061】
比較例1または比較例2ではヘイズ率は0.5〜0.6%と高い数値を示したのに対し、実施例3〜5ではヘイズ率は低減されていた。
【0062】
これは、吸収能の高いガラス板を用いることによって、拡散透過光(T4)が吸収により小さくなり、拡散透過率(Td)が小さい値となる。このことにより、ヘイズ率は小さくなると考えられ、実施例5ではヘイズ率0.2%と熱反フィルムを挟まない通常ガラスと同等のヘイズ率が得られた。
【0063】
(実施例6)
実施例6は、請求項5の発明に対応する実施例である。実施例6は、上述した基本構成と基本的に同様にして作製した断熱合わせガラスであって、熱線反射フィルムの一部を予め切り欠いたものである(図2)。さらに切り欠き部の第2ガラス板の後方には、光学機器が設けてある。熱線反射フィルムを切り欠いた部分31は、中間膜、熱線反射フィルム、中間膜を重ねて貼り合せする際に、該当部分のフィルムのみをカッター等でカッティングしておけばよい。なお、熱線反射フィルムは0.05mmと薄いので、フィルムの切り欠いた部分には特に何もしなくても、合わせガラスとすることができる。
【0064】
このような構成により、この断熱合わせガラスにおいて、可視光および赤外光の透過に対して悪影響を及ぼすことが少ないので、これら光学式通信機器または光学式検出装置などの光学機器の検出感度を低下させることがない。
【0065】
【発明の効果】
以上詳細に説明してきたように、本発明による断熱合わせガラスは、第1ガラス板/中間膜部/第2ガラス板が積層されており、前記中間膜部は、第1中間膜/熱線反射フィルム/第2中間膜が積層された構成とした。
【0066】
その結果、反射フィルムにて反射させた後の日射光のエネルギーを、熱線吸収機能を有するガラス板で吸収させて、車内側に放射されるエネルギーを抑えることができた。つまり本発明による断熱合わせガラスは、日射透過率は小さく、また日射熱取得率も小さな値を示し、日射遮蔽性に優れていることがわかった。
【0067】
また第2ガラス板に、吸収能の高いガラス板を用いると、拡散透過光(T4)が小さくなり、拡散透過率(Td)も小さい値となる。このことにより、ヘイズ率を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による断熱合わせガラスの基本構成を示す図である。
【図2】請求項5にかかる断熱合わせガラスの基本構成を示す図である。
【符号の説明】
1:断熱合わせガラス、
11:第1ガラス板、
12:第2ガラス板、
21:第1中間膜、
22:第2中間膜、
3:熱線反射フィルム、
31:熱線反射フィルムの切り欠き部、
4:光学機器、
Claims (6)
- 第1ガラス板/中間膜部/第2ガラス板が積層されてなる合わせガラスであって、
前記中間膜部は、第1中間膜/熱線反射フィルム/第2中間膜が積層されてなり、
前記熱線反射フィルムは、屈折率が異なる2種類のポリマー薄膜を多数積層した光学干渉多層膜であり、
前記第1ガラス板はクリアガラスであり、前記第2ガラス板は熱線吸収機能を有するガラスであって、前記第1ガラス面に垂直に入射する日射光に対して、JIS R 3106(1998)で算出される波長範囲300〜2500nmにおける日射透過率が48%以下であり、日射反射率が少なくとも10%であることを特徴とする断熱合わせガラス。 - 請求項1に記載の断熱合わせガラスにおいて、
前記第2ガラス板は、質量%で表示して、
SiO2 65〜80%、
Al2O3 0〜 5%、
MgO 0〜10%、
CaO 5〜15%、
(ただし、MgOとCaOの合計量 5〜15%)、
Na2O 10〜18%、
K2O 0〜 5%、
(ただし、Na2OとK2Oの合計量 10〜20%)、
および
B2O3 0〜 5%
からなる基礎ガラス組成と、
着色成分として、
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T−Fe2O3)
0.5〜 1%、
CeO2 0.8〜 2%、
および
TiO2 0〜0.5%
からなり、かつ
Fe2O3に換算したFeOがT−Fe2O3の20〜40%であることを特徴とする断熱合わせガラス。 - 請求項1に記載の断熱合わせガラスにおいて、
前記第2ガラス板は、質量%で表示して、
SiO2 65〜80%、
Al2O3 0〜 5%、
MgO 0〜10%、
CaO 5〜15%、
(ただし、MgOとCaOの合計量 5〜15%)、
Na2O 10〜18%、
K2O 0〜 5%、
(ただし、Na2O+K2Oの合計量 10〜20%)、
および
B2O3 0〜 5%
からなる基礎ガラス組成と、
着色成分として、
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T−Fe2O3)
1〜1.7%、
NiO 0.001〜0.05%、
および
CoO 0〜0.02%
からなり、かつ
Fe2O3に換算したFeOがT−Fe2O3の20〜40%であることを特徴とする断熱合わせガラス。 - 請求項1に記載の断熱合わせガラスにおいて、
前記第2ガラス板は、JIS R 3106(1998)で算出される波長範囲300〜2500nmにおける日射透過率が60%以下であることを特徴とする断熱合わせガラス。 - 請求項1に記載の断熱合わせガラスにおいて、
前記熱線反射フィルムが一部切り欠かれた領域を有することを特徴とする断熱合わせガラス。 - 請求項1〜5に記載の断熱合わせガラスを、前記第1ガラスを車外側に、前記第2ガラスを車内側に配置して、窓開口部に装着したことを特徴とする車両窓構造。
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