JP2004051431A - 次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ダイオキシン濃度がきわめて低い次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、簡易な方法で工業的に大量に効率よく得る方法の提供。
【解決手段】ダイオキシンを0.01〜10pg−TEQ/g含む気体塩素を液化し、得られた液体塩素の少なくとも一部を再び気化して精製して塩素中のダイオキシン濃度を0.01pg−TEQ/g未満とした後、ダイオキシン含有量が1pg−TEQ/L以下の水酸化ナトリウム水溶液と反応させて、ダイオキシン含有量が1pg−TEQ/L以下の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造する。
【選択図】図1
【解決手段】ダイオキシンを0.01〜10pg−TEQ/g含む気体塩素を液化し、得られた液体塩素の少なくとも一部を再び気化して精製して塩素中のダイオキシン濃度を0.01pg−TEQ/g未満とした後、ダイオキシン含有量が1pg−TEQ/L以下の水酸化ナトリウム水溶液と反応させて、ダイオキシン含有量が1pg−TEQ/L以下の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイオキシン濃度のきわめて低い高純度次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、漂白剤、殺菌剤等の酸化剤として浄水処理や廃水処理に、また病院や歯科医院などで使用される消毒水として、また家庭の台所や洗濯用の水溶液として等、幅広い分野に使用されている。さらに、飲料水その他を供給する浄水場において、従来より消毒、殺菌用として塩素処理に塩素ガスや次亜塩素酸ナトリウムの投入が行われていたが、これらの薬品に関し、毒性や臭気を原因とする環境調和性や化学安定性等の問題が重視されてきている。
【0003】
一方、ポリジクロロベンゾパラダイオキシン(PCDD)、ポリクロロジベンゾフラン(PCDF)、及びコプラマーPCD(co−PCD)(以下、本明細書ではこれら3つを代表とするダイオキシン類をまとめてダイオキシンという)は、塩素含有有機化合物を燃焼する工程又は塩素を含有する特定の有機化合物の合成過程などにおいて微量副生するが、人体及び生態系に有害であることが注目され始めている。このような環境に対する意識が高まるなか、きわめて高純度の次亜塩素酸ナトリウムが要求されるようになってきている。
【0004】
従来、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の高純度化に関しては、使用工程上での不具合を生じないように食塩濃度の低減化、溶液安定性のための重金属の低減化について各種の検討がなされていきている。しかし、有機不純物、ダイオキシンの低減化については、何ら検討がなされていない。
【0005】
一般に無機物の水溶液中に含まれる有機不純物を処理する方法としては、処理すべき溶液を活性炭、ゼオライトなどの多孔性吸着剤に接触させて吸着させることにより分離除去する方法が知られている。しかし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の場合は、このような吸着剤に接触させると、吸着剤に吸着している金属等によって次亜塩素酸ナトリウム自体が分解されて、有効塩素濃度が低くなるという問題がある。
【0006】
ここで、吸着剤として金属フリーの活性炭であれば使用できるが、活性炭の再生、金属処理等の工程が煩雑となるため、工業的製法には適していない。また、ダイオキシンを有機溶媒で抽出する方法も考えられるが、ダイオキシン抽出後の次亜塩素酸ナトリウム水溶液から抽出溶媒を除去する工程が必要となり、工程が煩雑となる。そのうえ、有機溶媒が少量でも残留した場合、次亜塩素酸ナトリウムの用途が制限されるので工業的製法には適さない。
【0007】
さらに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を深冷により晶析させてダイオキシンを分離する方法も考えられるが、この方法の場合、ダイオキシンの水への溶解度がかなり低いためダイオキシンが水溶液側に分配されず、効果的にダイオキシンを次亜塩素酸ナトリウムから除去することができない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、簡易な方法で、ダイオキシン濃度のきわめて低い高純度次亜塩素酸ナトリウム水溶液を工業的に大量に効率よく得るための、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ダイオキシンを0.01〜10pg−TEQ/g含む気体塩素を液化する液化工程と、得られた液体塩素の少なくとも一部を再び気化する気化工程を経ることにより精製して前記塩素中のダイオキシン濃度を0.01pg−TEQ/g未満とした後、この塩素とダイオキシン含有量が1pg−TEQ/L以下の水酸化ナトリウム水溶液とを反応させる、ダイオキシン含有量が1pg−TEQ/L以下の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造方法を提供する。
【0010】
本発明者らの検討の結果、従来技術のように次亜塩素酸ナトリウム又はその水溶液からダイオキシンを除去するのは困難であるが、原料である塩素及び水酸化ナトリウムとしてダイオキシン含有量の少ないものを用いれば、容易にダイオキシン含有量の少ない次亜塩素酸ナトリウム水溶液が得られることが判明した。そして、ダイオキシンの融点のほとんどが300℃程度でありかつ昇華性を有しないという性質から、塩素ガスを液化した後気化することにより塩素ガス中のダイオキシンが大幅に低減されることがわかり本発明に到達した。
【0011】
なお、単位のTEQ(Toxicity Equivalency Quantity)はダイオキシンの毒性を示す指標である。最も毒性の高い2,3,7,8−TeCDDの毒性を1(基準)として、他のダイオキシンの毒性はこれに対する相対的な毒性の強さを表す毒性等価係数(TEF:Toxicity Equivalency Factor)で表される。TEQは試料中(ここでは塩素)の個々のダイオキシンの濃度に、それぞれTEFを乗じた値を加算した値である。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態について、図1に沿って具体的に説明する。図1は本発明の高純度次亜塩素酸ナトリウムの製造方法の実施態様の工程を示す図である。
【0013】
本発明ではダイオキシンを0.01〜10pg−TEQ/g含む気体塩素を出発物質とし、当該気体塩素をまず液化装置1に供給し、例えば加圧圧縮することにより液化させる(液化工程)。次に液化された塩素は高圧ガス容器2に貯留される。高圧ガス容器2においては液化された塩素は気化され(気化工程)、気化した塩素の量が多くなって高圧ガス容器2内の圧力が高まると、気化した塩素は通気管3を通って次亜塩素酸ナトリウム製造装置4に供給され、ここで水酸化ナトリウムと反応させる。
【0014】
液化工程における条件は、常圧から2.0MPaまでの範囲の圧力下で−30〜30℃の温度であることが好ましい。圧力は0.25〜0.3MPaであることがさらに好ましく、また温度は−10〜−20℃であることがさらに好ましい。温度が低すぎると、装置上の制約が大きく工程上の負荷が大きくなる。また温度が高すぎると高圧をかける必要が生じ、高圧装置が必要となるため製造上好ましくない。一方圧力が常圧より低いと液化装置が減圧になり外気が混入する可能性が高く運転上好ましくない。2.0MPaより高いと装置上の負担が大きくなり、工業的有利でない。
【0015】
気化工程における温度の条件は、0〜50℃、特に20〜35℃が好ましい。気化は通常は常圧以上の圧力で実施される。塩素の気化の条件は圧力が決まれば自動的に温度の範囲が定まる。したがって、次亜塩素酸ナトリウム製造装置に供給するためには上記温度範囲が好ましい。
【0016】
液化工程において、液化の条件にもよるが、液化せずに気体のままで液化装置1に残存する気体塩素もある。本発明では、この残存している気体塩素を気化工程を経た気体塩素と混合して次亜塩素酸ナトリウム製造装置4に供給し、水酸化ナトリウムと反応させてもよい。ダイオキシンが容易に液化する条件で液化している場合、液化しない気体塩素のダイオキシン含有量は少なくなって高純度となる。また、このような液化しない気体塩素の量を多くする場合は、高圧ガス容器2を大容量の装置としなくてもよくなる。
【0017】
本発明では、液化工程及び気化工程のサイクルを2回以上繰り返すと、次亜塩素酸ナトリウムを製造するための塩素中のダイオキシンの濃度をさらに低減することができるので好ましい。この場合、液化装置1及び高圧ガス容器2を複数組設置する。
【0018】
また、本発明の工程は繰り返し行うと、液化塩素中のダイオキシンの濃度が高まってくる。液化塩素のダイオキシンの濃度が高まると、その液化塩素から気化させて得られる気体塩素のダイオキシンの濃度も高くなるおそれがある。したがって、本発明では液化塩素をダイオキシンを吸着できる吸着剤、すなわち活性炭、ゼオライト等の多孔性吸着剤と接触させることが好ましい。吸着剤と接触させることにより、気化した気体塩素中のダイオキシン濃度はさらに低減し、0.01pG−TEQ/g以下、より好ましくは0.0001pg−TEQ/g以下とすることも可能となる。
【0019】
本発明により製造される次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、消毒剤、殺菌剤等、従来より公知の各種の用途に好適に使用できる。
【0020】
【実施例】
以下に、本発明を実施例(例1〜3)及び比較例(例4)により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、各例において、ダイオキシン濃度の分析はJIS K0312に従い、ダイオキシンの濃度は、液抽出ガスクロマトグラフ質量分析装置によって測定した。また、各試料は、ガラス製容器に3L以上採取し、試験採取の容器はアセトンおよびジクロロメタンで洗浄したものを使用した。
【0021】
装置の配管は、チタン製チューブ又は高純度PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体)チューブ(金属溶出低グレード)を使用した。フランジ、パッキンはポリテトラフルオロエチレン製のものをフランジの形に切って使用して密栓し、グリースは使用しなかった。配管材料、バルブ、フィッティング類は全て高純度アセトン、トルエンで洗浄して用いた。
【0022】
[例1]
図1に示した高純度次亜塩素酸ナトリウムの製造方法の工程に沿って、塩素の精製を経て次亜塩素酸ナトリウムを製造した。まず、ダイオキシン0.059pg−TEQ/gを含む塩素ガスを圧力0.27MPa、温度−18℃の条件下で液化させた。その後、25℃、常圧の条件で液化塩素の一部を気化させることにより、ダイオキシン濃度0.00015pg−TEQ/gの気体塩素を得た。
【0023】
次に得られた気体塩素をダイオキシン濃度0pg−TEQ/Lで濃度10%の水酸化ナトリウム水溶液3L中に吹き込み、反応させることにより次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た。ここで塩素ガスの吹き込み量は4.0L/minとし、反応時間は17分とした。得られた次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度、残存アルカリ濃度、NaCl濃度及びダイオキシン濃度(単位はpg−TEQ/L)を測定した結果を表1に示す。
【0024】
[例2]
塩素を液化する温度を−15℃に変更し、気体塩素を吹き込むための水酸化ナトリウム水溶液の濃度を20%に変更し、塩素と水酸化ナトリウムとの反応時間を25分に変更した以外は、例1と同様にして次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造した。得られた次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の各成分の濃度を例1と同様に測定したので、結果を表1に示す。なお、液化、気化を行って得られた気体塩素のダイオキシン濃度は0.00018pg−TEQ/gであった。
【0025】
[例3]
原料となる塩素として例1の液化、気化の工程を経て得られたダイオキシン濃度0.01pg−TEQ/Lの気体塩素を用いた以外は例2と同様にして次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た。すなわち、塩素に対し、液化、気化の工程を2回行った後に水酸化ナトリウム水溶液と反応させた。得られた次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の各成分の濃度を例1と同様に測定したので、結果を表1に示す。次亜塩素酸ナトリウム水溶液中のダイオキシンの濃度は、検出限界以下であった。なお、液化、気化を行って得られた気体塩素のダイオキシン濃度検出限界以下であった。
【0026】
[例4]
気体塩素を液化、気化せずに(精製せずに)そのまま用いた以外は例1と同様にして次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造した。得られた次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の各成分の濃度を例1と同様に測定したので、結果を表1に示す。
【0027】
この結果より、本発明の方法により製造された次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、ダイオキシン濃度がきわめて低く、高純度であることがわかる。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、ダイオキシン濃度がきわめて低い次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、簡易な方法で工業的に大量に効率よく得ることができる。そして、本発明により得られた次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、消毒剤、殺菌剤等、従来より公知の各種の用途に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高純度次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造方法の実施態様の工程を示す図。
【符号の説明】
1:液化装置
2:高圧ガス容器
3:通気管
4:次亜塩素酸ナトリウム製造装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイオキシン濃度のきわめて低い高純度次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、漂白剤、殺菌剤等の酸化剤として浄水処理や廃水処理に、また病院や歯科医院などで使用される消毒水として、また家庭の台所や洗濯用の水溶液として等、幅広い分野に使用されている。さらに、飲料水その他を供給する浄水場において、従来より消毒、殺菌用として塩素処理に塩素ガスや次亜塩素酸ナトリウムの投入が行われていたが、これらの薬品に関し、毒性や臭気を原因とする環境調和性や化学安定性等の問題が重視されてきている。
【0003】
一方、ポリジクロロベンゾパラダイオキシン(PCDD)、ポリクロロジベンゾフラン(PCDF)、及びコプラマーPCD(co−PCD)(以下、本明細書ではこれら3つを代表とするダイオキシン類をまとめてダイオキシンという)は、塩素含有有機化合物を燃焼する工程又は塩素を含有する特定の有機化合物の合成過程などにおいて微量副生するが、人体及び生態系に有害であることが注目され始めている。このような環境に対する意識が高まるなか、きわめて高純度の次亜塩素酸ナトリウムが要求されるようになってきている。
【0004】
従来、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の高純度化に関しては、使用工程上での不具合を生じないように食塩濃度の低減化、溶液安定性のための重金属の低減化について各種の検討がなされていきている。しかし、有機不純物、ダイオキシンの低減化については、何ら検討がなされていない。
【0005】
一般に無機物の水溶液中に含まれる有機不純物を処理する方法としては、処理すべき溶液を活性炭、ゼオライトなどの多孔性吸着剤に接触させて吸着させることにより分離除去する方法が知られている。しかし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の場合は、このような吸着剤に接触させると、吸着剤に吸着している金属等によって次亜塩素酸ナトリウム自体が分解されて、有効塩素濃度が低くなるという問題がある。
【0006】
ここで、吸着剤として金属フリーの活性炭であれば使用できるが、活性炭の再生、金属処理等の工程が煩雑となるため、工業的製法には適していない。また、ダイオキシンを有機溶媒で抽出する方法も考えられるが、ダイオキシン抽出後の次亜塩素酸ナトリウム水溶液から抽出溶媒を除去する工程が必要となり、工程が煩雑となる。そのうえ、有機溶媒が少量でも残留した場合、次亜塩素酸ナトリウムの用途が制限されるので工業的製法には適さない。
【0007】
さらに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を深冷により晶析させてダイオキシンを分離する方法も考えられるが、この方法の場合、ダイオキシンの水への溶解度がかなり低いためダイオキシンが水溶液側に分配されず、効果的にダイオキシンを次亜塩素酸ナトリウムから除去することができない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、簡易な方法で、ダイオキシン濃度のきわめて低い高純度次亜塩素酸ナトリウム水溶液を工業的に大量に効率よく得るための、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ダイオキシンを0.01〜10pg−TEQ/g含む気体塩素を液化する液化工程と、得られた液体塩素の少なくとも一部を再び気化する気化工程を経ることにより精製して前記塩素中のダイオキシン濃度を0.01pg−TEQ/g未満とした後、この塩素とダイオキシン含有量が1pg−TEQ/L以下の水酸化ナトリウム水溶液とを反応させる、ダイオキシン含有量が1pg−TEQ/L以下の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造方法を提供する。
【0010】
本発明者らの検討の結果、従来技術のように次亜塩素酸ナトリウム又はその水溶液からダイオキシンを除去するのは困難であるが、原料である塩素及び水酸化ナトリウムとしてダイオキシン含有量の少ないものを用いれば、容易にダイオキシン含有量の少ない次亜塩素酸ナトリウム水溶液が得られることが判明した。そして、ダイオキシンの融点のほとんどが300℃程度でありかつ昇華性を有しないという性質から、塩素ガスを液化した後気化することにより塩素ガス中のダイオキシンが大幅に低減されることがわかり本発明に到達した。
【0011】
なお、単位のTEQ(Toxicity Equivalency Quantity)はダイオキシンの毒性を示す指標である。最も毒性の高い2,3,7,8−TeCDDの毒性を1(基準)として、他のダイオキシンの毒性はこれに対する相対的な毒性の強さを表す毒性等価係数(TEF:Toxicity Equivalency Factor)で表される。TEQは試料中(ここでは塩素)の個々のダイオキシンの濃度に、それぞれTEFを乗じた値を加算した値である。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態について、図1に沿って具体的に説明する。図1は本発明の高純度次亜塩素酸ナトリウムの製造方法の実施態様の工程を示す図である。
【0013】
本発明ではダイオキシンを0.01〜10pg−TEQ/g含む気体塩素を出発物質とし、当該気体塩素をまず液化装置1に供給し、例えば加圧圧縮することにより液化させる(液化工程)。次に液化された塩素は高圧ガス容器2に貯留される。高圧ガス容器2においては液化された塩素は気化され(気化工程)、気化した塩素の量が多くなって高圧ガス容器2内の圧力が高まると、気化した塩素は通気管3を通って次亜塩素酸ナトリウム製造装置4に供給され、ここで水酸化ナトリウムと反応させる。
【0014】
液化工程における条件は、常圧から2.0MPaまでの範囲の圧力下で−30〜30℃の温度であることが好ましい。圧力は0.25〜0.3MPaであることがさらに好ましく、また温度は−10〜−20℃であることがさらに好ましい。温度が低すぎると、装置上の制約が大きく工程上の負荷が大きくなる。また温度が高すぎると高圧をかける必要が生じ、高圧装置が必要となるため製造上好ましくない。一方圧力が常圧より低いと液化装置が減圧になり外気が混入する可能性が高く運転上好ましくない。2.0MPaより高いと装置上の負担が大きくなり、工業的有利でない。
【0015】
気化工程における温度の条件は、0〜50℃、特に20〜35℃が好ましい。気化は通常は常圧以上の圧力で実施される。塩素の気化の条件は圧力が決まれば自動的に温度の範囲が定まる。したがって、次亜塩素酸ナトリウム製造装置に供給するためには上記温度範囲が好ましい。
【0016】
液化工程において、液化の条件にもよるが、液化せずに気体のままで液化装置1に残存する気体塩素もある。本発明では、この残存している気体塩素を気化工程を経た気体塩素と混合して次亜塩素酸ナトリウム製造装置4に供給し、水酸化ナトリウムと反応させてもよい。ダイオキシンが容易に液化する条件で液化している場合、液化しない気体塩素のダイオキシン含有量は少なくなって高純度となる。また、このような液化しない気体塩素の量を多くする場合は、高圧ガス容器2を大容量の装置としなくてもよくなる。
【0017】
本発明では、液化工程及び気化工程のサイクルを2回以上繰り返すと、次亜塩素酸ナトリウムを製造するための塩素中のダイオキシンの濃度をさらに低減することができるので好ましい。この場合、液化装置1及び高圧ガス容器2を複数組設置する。
【0018】
また、本発明の工程は繰り返し行うと、液化塩素中のダイオキシンの濃度が高まってくる。液化塩素のダイオキシンの濃度が高まると、その液化塩素から気化させて得られる気体塩素のダイオキシンの濃度も高くなるおそれがある。したがって、本発明では液化塩素をダイオキシンを吸着できる吸着剤、すなわち活性炭、ゼオライト等の多孔性吸着剤と接触させることが好ましい。吸着剤と接触させることにより、気化した気体塩素中のダイオキシン濃度はさらに低減し、0.01pG−TEQ/g以下、より好ましくは0.0001pg−TEQ/g以下とすることも可能となる。
【0019】
本発明により製造される次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、消毒剤、殺菌剤等、従来より公知の各種の用途に好適に使用できる。
【0020】
【実施例】
以下に、本発明を実施例(例1〜3)及び比較例(例4)により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、各例において、ダイオキシン濃度の分析はJIS K0312に従い、ダイオキシンの濃度は、液抽出ガスクロマトグラフ質量分析装置によって測定した。また、各試料は、ガラス製容器に3L以上採取し、試験採取の容器はアセトンおよびジクロロメタンで洗浄したものを使用した。
【0021】
装置の配管は、チタン製チューブ又は高純度PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体)チューブ(金属溶出低グレード)を使用した。フランジ、パッキンはポリテトラフルオロエチレン製のものをフランジの形に切って使用して密栓し、グリースは使用しなかった。配管材料、バルブ、フィッティング類は全て高純度アセトン、トルエンで洗浄して用いた。
【0022】
[例1]
図1に示した高純度次亜塩素酸ナトリウムの製造方法の工程に沿って、塩素の精製を経て次亜塩素酸ナトリウムを製造した。まず、ダイオキシン0.059pg−TEQ/gを含む塩素ガスを圧力0.27MPa、温度−18℃の条件下で液化させた。その後、25℃、常圧の条件で液化塩素の一部を気化させることにより、ダイオキシン濃度0.00015pg−TEQ/gの気体塩素を得た。
【0023】
次に得られた気体塩素をダイオキシン濃度0pg−TEQ/Lで濃度10%の水酸化ナトリウム水溶液3L中に吹き込み、反応させることにより次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た。ここで塩素ガスの吹き込み量は4.0L/minとし、反応時間は17分とした。得られた次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度、残存アルカリ濃度、NaCl濃度及びダイオキシン濃度(単位はpg−TEQ/L)を測定した結果を表1に示す。
【0024】
[例2]
塩素を液化する温度を−15℃に変更し、気体塩素を吹き込むための水酸化ナトリウム水溶液の濃度を20%に変更し、塩素と水酸化ナトリウムとの反応時間を25分に変更した以外は、例1と同様にして次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造した。得られた次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の各成分の濃度を例1と同様に測定したので、結果を表1に示す。なお、液化、気化を行って得られた気体塩素のダイオキシン濃度は0.00018pg−TEQ/gであった。
【0025】
[例3]
原料となる塩素として例1の液化、気化の工程を経て得られたダイオキシン濃度0.01pg−TEQ/Lの気体塩素を用いた以外は例2と同様にして次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た。すなわち、塩素に対し、液化、気化の工程を2回行った後に水酸化ナトリウム水溶液と反応させた。得られた次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の各成分の濃度を例1と同様に測定したので、結果を表1に示す。次亜塩素酸ナトリウム水溶液中のダイオキシンの濃度は、検出限界以下であった。なお、液化、気化を行って得られた気体塩素のダイオキシン濃度検出限界以下であった。
【0026】
[例4]
気体塩素を液化、気化せずに(精製せずに)そのまま用いた以外は例1と同様にして次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造した。得られた次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の各成分の濃度を例1と同様に測定したので、結果を表1に示す。
【0027】
この結果より、本発明の方法により製造された次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、ダイオキシン濃度がきわめて低く、高純度であることがわかる。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、ダイオキシン濃度がきわめて低い次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、簡易な方法で工業的に大量に効率よく得ることができる。そして、本発明により得られた次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、消毒剤、殺菌剤等、従来より公知の各種の用途に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高純度次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造方法の実施態様の工程を示す図。
【符号の説明】
1:液化装置
2:高圧ガス容器
3:通気管
4:次亜塩素酸ナトリウム製造装置
Claims (5)
- ダイオキシンを0.01〜10pg−TEQ/g含む気体塩素を液化する液化工程と、得られた液体塩素の少なくとも一部を再び気化する気化工程を経ることにより精製して前記塩素中のダイオキシン濃度を0.01pg−TEQ/g未満とした後、この塩素とダイオキシン含有量が1pg−TEQ/L以下の水酸化ナトリウム水溶液とを反応させる、ダイオキシン含有量が1pg−TEQ/L以下の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造方法。
- 前記液化工程において、気体塩素は常圧から2.0MPaまでの範囲の圧力下で−30〜30℃の温度にて液化され、前記気化工程において液体塩素は0〜50℃にて気化される請求項1に記載の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造方法。
- 前記気化工程を経た気体塩素に、前記液化工程において液化せずに残存する気体塩素を混合して、前記水酸化ナトリウム水溶液と反応させる請求項1又は2に記載の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造方法。
- 前記液化工程及び前記気化工程のサイクルを2回以上繰り返す請求項1〜3のいずれかに記載の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造方法。
- 前記液化工程にて液化された液化塩素を活性炭と接触させることにより、当該液化塩素中のダイオキシンを除去する請求項1〜4のいずれかに記載の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造方法。
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