JP2004051039A - 車両のパーキングブレーキ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】乗員のスイッチ操作により車両の駐停車状態に応じた車輪制動力を発生させ、また、ブレーキ機構の可動部分の耐久性を高める。
【解決手段】モータ65の作動によって車輪に対し制動力を付与する駐車ブレーキ機構と、該ブレーキ機構の作動を制御するブレーキ制御装置50とを備え、該ブレーキ制御装置は、ブレーキ制御モードとして、ブレーキ機構に車輪制動力を発生させないリリースモードと、ブレーキ機構に所定の車輪制動力を発生させる駐車モードと、該駐車モード時よりも大きい車輪制動力をブレーキ機構に発生させる増し引きモードとを有しており、上記ブレーキ制御装置50に対して乗員の操作に応じた操作信号を発信し、該ブレーキ制御装置のブレーキ制御モードを選択する操作スイッチ61が設けられている、ことを特徴とする。
【選択図】 図13
【解決手段】モータ65の作動によって車輪に対し制動力を付与する駐車ブレーキ機構と、該ブレーキ機構の作動を制御するブレーキ制御装置50とを備え、該ブレーキ制御装置は、ブレーキ制御モードとして、ブレーキ機構に車輪制動力を発生させないリリースモードと、ブレーキ機構に所定の車輪制動力を発生させる駐車モードと、該駐車モード時よりも大きい車輪制動力をブレーキ機構に発生させる増し引きモードとを有しており、上記ブレーキ制御装置50に対して乗員の操作に応じた操作信号を発信し、該ブレーキ制御装置のブレーキ制御モードを選択する操作スイッチ61が設けられている、ことを特徴とする。
【選択図】 図13
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両のパーキングブレーキ装置、特に、アクチュエータの作動によって車輪に対し制動力を付与するようにした車両のパーキングブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両のパーキングブレーキ装置として、アクチュエータの作動によって車輪に対し制動力を付与するブレーキ手段を備え、該ブレーキ手段の作動をブレーキ制御手段で制御するようにした、所謂、電動式のパーキングブレーキ装置は一般に良く知られている。
【0003】
例えば、特開昭59−145658号公報には、車両の駐車(パーキング)ブレーキを作動および解除制御する電磁手段(アクチュエータ)と、車両の傾斜状態を検出する斜度センサを含み、車両の運転状態を検出する多数のセンサ群と、該センサ群からの信号を受けて上記電磁手段に制御信号を出力するコントローラとを備えたものが開示されている。
【0004】
かかるタイプのパーキングブレーキ装置によれば、車両の傾斜状態を含む運転状態に応じて、パーキングブレーキの作動および解除ならびに作動力の可変制御を自動的に行わせることができるので非常に便利であるが、反面、多数のセンサ類および複雑な制御機構を必要とするのでかなりのコスト高になるという難点がある。
【0005】
また、近年では、車両の駐停車操作を含む運転操作等がますます自動化されつつあるが、余りに自動化が進み過ぎると、逆に乗員の車両に対する操縦感覚もしくは操作感覚が薄くなり過ぎるという不満もユーザ間に生じるようになって来ている。上記従来のパーキングブレーキ装置では、駐停車時における全てのブレーキ操作が自動で行われ乗員の手動操作を全く必要としないので、乗員にとってはパーキングブレーキを操作しているという操作感を得ることが全くできないという不満もある。
【0006】
これに対して、乗員の手動でのスイッチ操作によってパーキングブレーキを働かせるようにしたタイプの電動式パーキングブレーキ装置が知られている。この場合には、多数のセンサ類を備えて自動制御でブレーキが働くものに比して、構成が比較的簡単で済むのでコストも抑制でき、また、乗員のブレーキ操作感も失われることはない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
周知のように、車両を安全かつ確実に駐停車させるに要する車輪制動力は、車両の駐停車状態、例えば駐停車する際の車両の傾斜状態等に応じて異なり、例えば、急な坂道などで駐停車する場合には非常に大きな制動力が必要であるが、平坦な箇所で駐停車する場合には比較的小さな制動力で済む。
【0008】
しかしながら、従来のスイッチ操作タイプの電動式パーキングブレーキ装置では、通常、車輪に制動力を加えるオン(ON)状態と車輪への制動力を解除したオフ(OFF)状態の2段階の作動状態しか設定されていない。この場合、上記ON状態では、どんな坂道での駐停車にも対応できるように、つまり、想定し得る最大の傾斜状態での駐停車にも対応できるように、車輪制動力の大きさを設定しておく必要がある。
【0009】
したがって、従来のスイッチ操作タイプの電動式パーキングブレーキ装置では、例えば車両が平坦な箇所で駐停車する場合など比較的小さな車輪制動力で済む場合でも、ON状態になりさえすれば常に、車両の想定最大斜度に対応した非常に大きな車輪制動力が発生することとなる。このため、車輪に制動力を加えるブレーキ機構の可動部分(例えばブレーキケーブルなど)の耐久性にも悪影響を及ぼすという問題があった。
【0010】
この発明は、上記技術的課題に鑑みてなされたもので、乗員のスイッチ操作により車両の駐停車状態に応じた車輪制動力を発生させることができ、また、ブレーキ機構の可動部分の耐久性を向上させることができる車両のパーキングブレーキ装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このため、本願請求項1の発明(以下、第1の発明という)に係る車両のパーキングブレーキ装置は、アクチュエータの作動によって車輪に対し制動力を付与するブレーキ手段と、該ブレーキ手段の作動を制御するブレーキ制御手段とを備えた車両のパーキングブレーキ装置を前提とし、上記ブレーキ制御手段は、ブレーキ制御モードとして、ブレーキ手段に車輪制動力を発生させないリリースモードと、ブレーキ手段に所定の車輪制動力を発生させる駐車モードと、該駐車モード時よりも大きい車輪制動力をブレーキ手段に発生させる増し引きモードとを有しており、上記ブレーキ制御手段に対して乗員の操作に応じた操作信号を発信し、該ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードを選択する操作スイッチが設けられている、ことを特徴としている。
【0012】
また、本願の請求項2に係る発明(以下、第2の発明という)は、上記第1の発明において、上記増し引きモードは、乗員の操作スイッチの操作に応じて車輪制動力を設定し得る制動力設定モードを含み、上記操作スイッチは、乗員の操作に応じて車輪制動力を設定する制動力設定機構を備えていることを特徴としたものである。
【0013】
更に、本願の請求項3に係る発明(以下、第3の発明という)は、上記第2の発明において、上記ブレーキ制御手段は、乗員の操作スイッチの操作により制動力設定機構が作動状態にあるときにのみ、上記制動力設定モードで車輪制動力を設定することを特徴としたものである。
【0014】
また、更に、本願の請求項4の発明(以下、第4の発明という)は、上記第2又は第3の発明において、上記ブレーキ手段の車輪制動力を検出する制動力検出手段と、制動力設定モードにおいて制動力検出手段の検出値が所定値を越えると車輪制動力の増大を規制する規制手段とを、更に備えたことを特徴としたものである。
【0015】
また、更に、本願の請求項5に係る発明(以下、第5の発明という)は、上記第1〜第4の発明の何れか一において、制御モードが増し引きモードからリリースモードに移行する際に、車輪制動力の減少を一旦停止させる停止手段を更に備えたことを特徴としたものである。
【0016】
また、更に、本願の請求項6に係る発明(以下、第6の発明という)は、上記第1〜第5の発明の何れか一において、上記ブレーキ手段の作動状況を検知する作動状況検知手段と、該作動状況検知手段の検知結果に基づいてブレーキ手段の作動状況を表示する表示手段とを、更に備えたことを特徴としたものである。
【0017】
また、更に、本願の請求項7に係る発明(以下、第7の発明という)は、上記第1〜第6の発明の何れか一において、車両の車速が所定値以上である場合には制御モードが増し引きモードとなることを禁止する増し引き禁止手段を更に備えたことを特徴としたものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る車両のパーキングブレーキ装置を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2は、本実施の形態に係るパーキングブレーキ装置を備えた自動車の車室前部の平面説明図および正面説明図である。これらの図に示すように、上記自動車では、車室前部に配設されたインストルメントパネル2の正面部の比較的上部における略中央部に、パーキングブレーキ装置の操作スイッチ10が配置されている。
【0019】
上記自動車は、例えば、ステアリングホイール3が車室の右側部分に配置された、所謂、右ハンドル車であるが、上記操作スイッチ10はインストルメントパネル2の車幅方向における略中央部に配置されているので、左ハンドル車の場合でも、その取付位置を変更する必要はない。
尚、操作スイッチ10の近辺には、例えば、他の種々のスイッチ類や表示装置類あるいはオーディオ装置などが配置され、その下方には例えば変速装置のシフトレバー4が配設されている。また、符号5,6は各々運転席シート,補助席シートを示している。
【0020】
図3〜図5は上記操作スイッチ10の構造を示す説明図で、図3は操作スイッチの全体斜視図、図4はその可動操作部の分解斜視図、また、図5は可動操作部の通電エレメントを導電体側から見て示した斜視図である。
図3から分かるように、操作スイッチ10は、全体の外形形状が直方体状に形成された中空ボックス状のスイッチケース11内に、乗員のスイッチ操作に応じて動作する可動操作部20を配設して構成されている。
【0021】
上記可動操作部20は、図4から良く分かるように、可動ベース21と操作ノブ22と通電エレメント23とを主要部として構成されている。可動ベース21は、全体の外形形状が大略直方体状に形成され、その内部には一側(図4における下側)に開口する凹部21aが形成されている。この凹部21a内に電極エレメント23が収容される。
【0022】
該通電エレメント23は、図5から良く分かるように、長手方向における両端部に突出部23aを備え、各突出部23aの頂部は所定曲率の曲面状に形成されている。そして、両突出部23aの頂部を結ぶようにして帯状の導電体23pが固着されている。通電エレメント23は、この両突出部23a及び導電体23pを開口外向き(図4における下向き)にして、可動ベース21の凹部21a内に収容される。
【0023】
このとき、凹部21aの天井部と通電エレメント23の平坦面(図4における上面)との間には、該通電エレメント23を凹部開口外向き(図4における下向き)に付勢する例えば複数(例えば2個)の付勢バネ24が介装される。
尚、上記通電エレメント23は、帯状の導電体23pを除いて、その部材本体部分は両突出部23aも含めて全て、非導電性材料(例えば合成樹脂)で製作されている。また、可動ベース21及び操作ノブ22並びにスイッチケース11も同様に、例えば合成樹脂等の非導電性材料で製作されている。
【0024】
一方、可動ベース21の反凹部開口側の端面21f(ベース面:図4における上面)には長手方向に延びる溝部21gが設けられ、上記操作ノブ22の一側の端面(図4における下面)には、この溝部21gにスライド可能に係合する係合部22fが形成されている。操作ノブ22の一側面および可動ベース21の上記ベース面21fには比較的微小なピン状の突起22t及び21tが設けられており、これら両突起22t,21tに両端を係止させてコイル状のスプリング25が装着される。
【0025】
上記スイッチケース11のケース正面部12には、可動操作部21の移動動作を案内するガイド溝19が形成されている。該ガイド溝19は、スイッチケース11の長手方向に延びる所定長さの第1ガイド部19aと、該第1ガイド部19aとは異なる方向、より好ましくは、第1ガイド部19aと直交する方向へ延びる比較的短い第2ガイド部19bと、上記第1ガイド部19aと実質的に平行にスイッチケース11の長手方向へ延びる第3ガイド部19cとで構成されている。第2ガイド部19bは、第3ガイド部19cと上記第1ガイド部19aとを繋ぐものである。
【0026】
また、スイッチケース11の底面部13には、その長手方向の一辺に沿って(つまり、上記ガイド溝19の第1及び第3ガイド部19a及び19cと平行に)延びる帯状の電極14が固着されるとともに、長手方向の他の一辺に沿って上記帯状電極14と平行に配設された3つの接点電極15A,15B,15Cが所定距離を隔てた位置A,B,Cに固着されている。各電極14及び15A〜15Cには、後述する制御回路に繋ぎ込まれる導線16及び17a〜17cがそれぞれ接続されている。
【0027】
上記可動操作部21をスイッチケース11内に組み込む際には、図3に示されるように、操作ノブ22が上記ガイド溝19に係合してケース正面部12から突出し、且つ、通電エレメント23の両突出部23aがケース底面部13に当接するように組み込まれる。このとき、一方の突出部23aは帯状電極14に常時当接する。この組付状態で、付勢バネ24の付勢力により、可動操作部21の両突出部23aはケース底面部13に対して押圧され、可動ベース21のベース面21fはケース正面部12の裏面側に対して押圧される。
【0028】
上記操作スイッチ10をインストルメントパネル2に取り付ける際には、スイッチケース11のケース正面部12がインストルメントパネル2の表面と実質的に面一となるように取り付けられる。つまり、操作スイッチ10の操作ノブ22は、インストルメントパネル2の表面から車室内に突出することになる。
【0029】
上記パーキングブレーキ装置は、具体的には図示しなかったが、車輪に対して制動力を加えるブレーキ手段として、電動アクチュエータの作動によって車輪に制動力を付与する従来公知のブレーキ機構を備えている。尚、かかるブレーキ機構としては、例えば、前述の特開昭59−145658号公報に開示された駐車ブレーキ機構など、従来公知の具体構成による種々のものを適用することができる。
【0030】
また、パーキングブレーキ装置には、上記ブレーキ機構の作動を制御するブレーキ制御手段が設けられている。本実施の形態では、このブレーキ制御手段は、駐車ブレーキ機構を制御する制御モードとして、上記ブレーキ機構に車輪制動力を発生させないリリースモードと、上記ブレーキ機構に所定の車輪制動力を発生させる駐車モードと、該駐車モード時よりも大きい車輪制動力を上記ブレーキ機構に発生させる増し引きモードとを有している。
【0031】
上記駐車モードは、比較的平坦な箇所で駐停車する場合など、車輪に対して付与する制動力が比較的小さくて済む場合に対応する制御モードである。これに対して、上記増し引きモードは、急な坂道等で駐停車する場合など、比較的大きな車輪制動力が必要とされる場合に対応する制御モードである。尚、上記リリースモードは、パーキングブレーキ装置による車輪制動を行わない(パーキングブレーキ不作動)場合に対応する制御モードである。
【0032】
上述の操作スイッチ10は、乗員の意思に応じてかかるパーキングブレーキ装置を操作するもので、後述するように、乗員の操作に応じた操作信号をブレーキ制御手段に対して発信し、該ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードを乗員の意思に応じた制御モードに変更するものである。すなわち、乗員がこの操作スイッチ10を操作することにより、ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードが、段階的に変化するように乗員の意思に応じて選択される。
【0033】
このように、本実施の形態に係る車両のパーキングブレーキ装置によれば、ブレーキ制御モードとしてリリースモードと駐車モードと増し引きモードとを備えるとともに、乗員の操作に応じてブレーキ制御モードを選択し得る操作スイッチ10が設けられていることにより、車輪に制動力を加えるON状態と車輪への制動力を解除したOFF状態の2段階の作動状態しか設定されていなかった従来のように、ON状態になりさえすれば、比較的小さな車輪制動力で済む場合でも非常に大きな(過大な)制動力が車輪に加えられるようなことはなくなる。
すなわち、乗員のスイッチ操作により車両の駐停車状態に応じた車輪制動力を発生させることができ、過大な車輪制動力が発生することを抑制して、ブレーキ機構の可動部分(例えばブレーキケーブル等)の耐久性を向上させることもできるのである。
【0034】
図6は上記操作スイッチ10の正面説明図、また、図7は図6のY7−Y7線に沿った断面説明図である。これらの図からも良く分かるように、操作スイッチ10を操作する際には、操作ノブ22のインストルメントパネル表面から(つまり、スイッチケース11のケース正面部12から)車室内に突出した部分を摘んで、可動操作部20をガイド溝19に沿ってスライド移動させることにより、スイッチ操作が行われる。
【0035】
上記スイッチケース11のケース底面部13には、上述のように、ガイド溝19の第1及び第3ガイド部19a及び19cと平行に延びる帯状電極14と、これに平行に配設された3つの接点電極15A,15B,15Cとが設けられており、操作ノブ22を操作して可動操作部20の通電エレメント23の片側の突出部23aを接点電極15A,15B,15Cの何れかに位置させることにより、当該位置A,B,Cの接点電極15A,15B,15Cと帯状電極14とが通電エレメント23の導電体23pを介して通電し、当該位置A,B,Cに対応した操作信号がブレーキ制御手段に対して発信されるようになっている。
【0036】
本実施の形態では、通電エレメント23の片側の突出部23aが接点電極15A,15B,15Cを設けた操作位置A,B,Cにそれぞれ位置するように操作ノブ22を操作した際に、ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードをそれぞれリリースモード,駐車モード,増し引きモードとする操作信号が発信されるようになっている。
すなわち、上記操作位置A,B,Cが、可動操作部20の操作位置として、ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードをそれぞれリリースモード,駐車モード,増し引きモードとするリリース位置,駐車位置,増し引き位置に相当している。
【0037】
図7から良く分かるように、各接点電極15A,15B,15Cには、通電エレメント23の突出部23aの曲面状頂部がごく浅く嵌まり込むように、該頂部よりも曲率半径が大きい曲面状に形成されたクリック凹部15kが形成されている。
従って、乗員がスイッチ操作を行うとき、可動操作部20が上記リリース位置A,駐車位置B,増し引き位置Cの何れかに操作される際には、通電エレメント23の突出部23aの曲面状頂部が、接点電極15A,15B,15Cの何れかのクリック凹部15kに嵌まり込むことにより、乗員に対し節度感を与えることができる。
【0038】
このように、乗員のスイッチ操作に応じて動作する可動操作部20を操作スイッチ10に設け、該可動操作部20がリリース位置A,駐車位置B,増し引き位置Cの何れかの操作位置に操作された際に、乗員に対して節度感を与える節度機構としてのクリック凹部15kが設けられていることにより、乗員は、パーキングブレーキを操作しているという操作感を得ることができるとともに、スイッチの可動操作部の動作が完了したことを節度感で把握でき、操作毎にスイッチを見る煩わしさを無くすることができる。つまり、所謂、ブラインド操作を実現できるのである。
【0039】
図6及び図3から良く分かるように、可動操作部20をリリース位置Aと駐車位置Bとの間で移動させる際には、操作ノブ22をガイド溝19の第1ガイド部19aに沿ってスライド移動させる。また、可動操作部20を駐車位置Bと増し引き位置Cとの間で移動させる際には、操作ノブ22は、ガイド溝19の上記第1ガイド部19aと実質的に平行な第3ガイド部19cに沿ってスライド移動させられる。
【0040】
そして、可動操作部20をリリース位置Aから増し引き位置Cまで移動させる際には、まず、操作ノブ22をガイド溝19の第1ガイド部19aに沿って、リリース位置Aから駐車位置Bまでスライド移動させる。可動操作部20がこの駐車位置Bに達すると、操作ノブ22が第1ガイド部19aの端末部に当接し、可動操作部20は一旦停止させられる。
【0041】
次に、この駐車位置Bにおいて、操作ノブ22を第2ガイド部19bに沿って(つまり、第1ガイド部19aの溝方向と直交する方向へ)スライド移動させる。図6から良く分かるように、可動操作部20の可動ベース21に設けられた溝部21gは、ガイド溝19の第2ガイド部19bと実質的に平行に伸張しており、操作ノブ22の第2ガイド部19bに沿った移動は、操作ノブ22の係合突起部22fが、コイルスプリング25の付勢力に抗して、上記可動ベース21の溝部21gに沿ってスライド移動することにより行われる。
【0042】
操作ノブ22が第2ガイド部19bに沿った移動が終了すると、つまり、操作ノブ22が第2ガイド部19bの端末部に当接すると、可動操作部20は一旦停止し、その後、第3ガイド部19cに沿って増し引き位置Cまでスライド移動させられるようになっている。
【0043】
すなわち、駐車位置Bはリリース位置Aと増し引き位置Cの間に設定され、可動操作部20を上記リリース位置A側から増し引き位置C側へ向かって操作する際に、上記駐車位置Bにおいて可動操作部20を一旦停止させる停止機構が設けられていることになる。
【0044】
より具体的に説明すれば、上記操作スイッチ10のガイド溝19には、リリース位置Aと駐車位置Bとの間で、可動操作部20をスイッチケース11の長手方向(第1方向)へ導く第1ガイド部19aが設けられるとともに、駐車位置Bと増し引き位置Cとの間に、可動操作部20を上記第1方向とは異なる第2方向(スイッチケース11の長手方向と直交する方向)へ導く第2ガイド部19bが設けられている。従って、可動操作部20の操作方向を第1方向と第2方向との間で変換する場合には、可動操作部20を必ず一旦停止させる必要がある。
【0045】
このように、可動操作部20をリリース位置A側から増し引き位置C側へ向かって操作する際には、両者の間に設定された駐車位置Bで可動操作部20が一旦停止させられるので、この駐車位置Bまでは操作スイッチ10を目視で確認しなくてもブラインド操作でき、利便性をより高めることができる。
具体的には、駐車位置Bと増し引き位置Cとの間に(本実施の形態では、駐車位置Bに)、リリース位置Aと駐車位置Bとの間とは異なる操作方向へ可動操作部20を導くガイド機構(第2ガイド部19b)が設けられていることにより、操作スイッチ10を目視で確認しなくても操作方向の変化でスイッチ10の操作状況を把握でき、利便性をより一層高めることができるのである。
【0046】
上記とは逆に、可動操作部20を増し引き位置C側からリリース位置A側へ向かって操作する際についても、その移動動作の方向が逆向きになるだけで、やはり、駐車位置Bで可動操作部20が一旦停止させられるので、この駐車位置Bまでは操作スイッチ10を目視で確認しなくても、容易にブラインド操作ができる。尚、この場合には、可動操作部20が増し引き位置C側から駐車位置Bまで移動すると、操作ノブ22の第2ガイド部19bに沿った移動は、乗員が特に操作しなくても、操作ノブ22の係合突起部22fが、コイルスプリング25の付勢力で上記可動ベース21の溝部21gに沿ってスライド移動することにより行われる。
【0047】
以上のように、乗員が操作スイッチ10を操作することにより、ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードが、リリース位置A側から駐車位置Bを経て増し引き位置C側へ向かって、或いは逆に、増し引き位置C側から駐車位置Bを経てリリース位置A側へ向かって、段階的に変化するように乗員の意思に応じて選択されるのである。
【0048】
また、本実施の形態では、図7に示されるように、リリース位置A側のスイッチケース11の内壁と可動操作部20の可動ベース21の側面との間に、該可動ベース21を(従って、可動操作部20を)常時リリース位置A側に付勢するために、例えば引張コイルバネでなるリターンスプリング18が配設されている。
従って、乗員が可動操作部20をリリース位置A側から増し引き位置C側へ向かって操作する際には、このリターンスプリング18の付勢力に抗して操作することになる。しかも、このリターンスプリング18の付勢力は、可動操作部20が増し引き位置Cに近付くほど大きくなり、所要操作力が増大する。
【0049】
このように、可動操作部20を増し引き位置Cに近付けるほど、操作力増大機構(リターンスプリング18)により可動操作部20を移動操作する操作力が大きくなるので、操作スイッチ10を目視で確認しなくても、所要操作力の増減でスイッチの操作状況を把握でき、利便性を更に高めることができるのである。
【0050】
更に、本実施の形態では、図7に示されるように、スイッチケース11のケース正面部12の裏面側に、可動操作部20の各操作位置A,B,Cに応じて可動ベース21の上部が嵌まり込む嵌合凹部12a,12b,12cが形成されており、操作位置A,B,Cに位置する可動操作部20を移動させるには、当該操作位置A,B,Cの嵌合凹部12a,12b,12cを外れるまで一旦押し込む必要がある。従って、乗員の意図しない可動操作部20の移動が不用意に生じることはない。
【0051】
本実施の形態では、上記各嵌合凹部12a,12b,12cは、そのケース正面部12の表面からの(つまり、実質的にはインストルメントパネル2の表面からの)深さが異なるように、例えば、より好ましくは、リリース位置Aに対する嵌合凹部12a,駐車位置Bに対する嵌合凹部12b,増し引き位置Cに対する嵌合凹部12cの順で深くなるように設定されている。
【0052】
従って、可動操作部20の操作ノブ22がインストルメントパネル2の表面から車室内に突き出す突出量は、リリース位置AではHa,駐車位置BではHb,増し引き位置CではHcと、この順で小さくなり(Ha>Hb>Hc)、可動操作部20の操作位置A,B,Cに応じて操作ノブ22の突出量が変更されるようになっている。
【0053】
このように、可動操作部20の操作ノブ22のインストルメントパネル2の表面からの突出量は、突出量変更機構(嵌合凹部12a,12b,12c)により可動操作部20の操作位置A,B,Cに応じて変化するので、操作スイッチ10を目視で確認しなくても可動操作部20の位置を把握でき、利便性を更に一層高めることができるのである。
【0054】
尚、図7から良く分かるように、上記スイッチケース11のケース正面部12の裏面側において、嵌合凹部12aと嵌合凹部12bとの間および嵌合凹部12bと嵌合凹部12cとの間は、ケース底面部13の裏面と実質的に平行な段部が設けられている。
そして、リリース位置Aと駐車位置Bとの間および該駐車位置Bと増し引き位置Cとの間に中間位置に位置する可動操作部20は、その操作方向(図7における左右方向)について、リターンスプリング18による付勢力と、可動操作部20とケース正面部12の裏面およびケース底面部13の裏面との間に働く摩擦力とが作用する。
【0055】
本実施の形態では、この摩擦力の方が上記リターンスプリング18の付勢力よりも大きくなるように設定されている。従って、乗員がスイッチ操作中に可動操作部20の操作位置A,B,C間の中間位置で手を離しても、当該可動操作部20は、リターンスプリング18の付勢力によって操作位置まで戻ることなく、その位置を保つようになっている。
【0056】
次に、上記操作スイッチ10の変形例について説明する。尚、以下の説明において、上記図1〜図7で示した操作スイッチ10における場合と同様の構成を備え同様の作用をなすものについては同一の符号を付し、それ以上の説明は省略する。
図8及び図9は操作スイッチの変形例を示している。図8は上記図6に対応したもので、変形例に係る操作スイッチの正面説明図である。また、図9は図7に対応したもので、図8のY9−Y9線に沿った断面説明図である。
【0057】
これらの図に示すように、この変形例に係る操作スイッチ10’は、リターンスプリング18’のタイプ及びその配設位置、並びに可動操作部20の可動ベース21’の上部形状とスイッチケース11のケース正面部12’の裏面形状が、上述の操作スイッチ10と異なっている。
【0058】
すなわち、この変形例に係る操作スイッチ10’では、図9に示されるように、増し引き位置C側のスイッチケース11の内壁と可動操作部20の可動ベース21’の側面との間に、該可動ベース21’を(従って、可動操作部20を)常時リリース位置A側に付勢するために、圧縮コイルバネでなるリターンスプリング18’が配設されている。
【0059】
乗員が可動操作部20をリリース位置A側から増し引き位置C側へ向かって操作する際には、このリターンスプリング18’の付勢力に抗して操作することになり、しかも、このリターンスプリング18’の付勢力は、可動操作部20が増し引き位置Cに近付くほど大きくなって所要操作力が増大する。
従って、前述の操作スイッチ10の場合と同様に、操作力増大機構としてのリターンスプリング18’により、可動操作部20を増し引き位置C側に操作するほど、移動操作に要する操作力が大きくなるので、操作スイッチ10’を目視で確認しなくても、所要操作力の増減でスイッチの操作状況を把握できる。
【0060】
また、この変形例に係る操作スイッチ10’では、図9から良く分かるように、上記スイッチケース11のケース正面部12’の裏面側において、操作位置C(増し引き位置)に対応する箇所には、可動ベース21’の上部が嵌まり込む嵌合凹部が設けられておらず、また、操作位置A(リリース位置)に対応する嵌合凹部12a’と操作位置(駐車位置)に対応する嵌合凹部12b’との間、及び該嵌合凹部12b’から操作位置C側のケース端末にまで至る各段部は、ケース底面部13の裏面に対して所定の角度をもって傾斜する傾斜面を成している。更に、可動操作部20の可動ベース21’の上面も、上記傾斜面と組み合わされるように傾斜状に形成されている。
【0061】
そして、この変形例の場合には、上記リターンスプリング18’の付勢力の方が、可動操作部20とケース正面部12’の裏面およびケース底面部13の裏面との間に働く摩擦力の図9における水平方向成分(つまり、上記リターンスプリング18’の付勢力に対向する方向の成分)よりも大きくなるように設定されている。
【0062】
従って、乗員がスイッチ操作中に可動操作部20の操作位置A,B,C間の中間位置で手を離した場合、当該可動操作部20は、リターンスプリング18’の付勢力によって、その中間位置よりもリターン位置Aに近い側の操作位置B又はリターン位置Aまで戻ることになる。
【0063】
特に、操作位置C(増し引き位置)に対応する箇所には、可動ベース21’の上部が嵌まり込む嵌合凹部が設けられておらず、この場合には、各操作位置Cへのスイッチ操作時間に応じて、モータ回転量を(従って、ブレーキ引き力)を調節可能である。つまり、基本的には可動操作部20を操作位置Cに位置させている間だけ、モータを駆動してブレーキ引き力を増大させるように、所謂モーメンタリな調節が可能である。そして、スイッチ操作を止めると、可動操作部20は操作開始前の位置に復帰する。
【0064】
尚、この場合についても、可動操作部20の操作ノブ22がインストルメントパネル2の表面から車室内に突き出す突出量は、リリース位置AではHa’,駐車位置BではHb’,増し引き位置CではHc’と、この順で小さくなり(Ha’>Hb’>Hc’)、可動操作部20の操作位置A,B,Cに応じて操作ノブ22の突出量が変更されるようになっている。
【0065】
次に、他の実施形態に係る操作スイッチについて説明する。この操作スイッチは、今までに述べた操作スイッチ10及び10’とはタイプが全く異なるものである。
図10は、本発明の他の実施形態に係る操作スイッチ30を概略的に示す斜視図である。この図に示すように、この他の実施形態に係る操作スイッチ30は、全体の外形形状が中空円筒状に形成されたスイッチケース31内に、乗員のスイッチ操作に応じて動作する可動操作部36を配設して構成されている。
【0066】
上記可動操作部36は、スイッチケース31の正面部32に形成された穴部32hを挿通する操作ロッド38と、該操作ロッド38の先端に一体的に固着された可動ディスク39と、操作ロッド38を介して上記可動ディスク39を操作する操作ハンドル37とを主要部として構成されている。上記可動ディスク39は、スイッチケース31の内周面に対し軸線方向及び周方向について摺動可能にスイッチケース31内に収納されている。
【0067】
上記スイッチケース31には、その正面部32の裏面側及び底面部33の裏面側ならびに両者間に設定された所定位置のスイッチケース内周面に、接点電極(固定接点)がそれぞれ設けられている。一方、上記可動ディスク39の上面および下面ならびに外周面にも、接点電極(可動接点)がそれぞれ設けられている。
上記操作スイッチ30を操作する際には、図11に示すように、操作ハンドル37を周方向に所定量回動させ、また、スイッチケース31の軸線に沿って押し操作/引き操作し、可動ディスク39をスイッチケース31の内面に沿って移動させることにより、スイッチ操作が行われる。
【0068】
このスイッチ操作によって可動ディスク39を、その下面の可動接点がスイッチケース底面部33の裏面側の固定接点と接触・導通する操作位置A、外周面の可動接点がスイッチケース内周面の固定接点と接触・導通する操作位置B、可動ディスク上面の可動接点がスイッチケース正面部32の裏面側の固定接点と接触・導通する操作位置Cの何れかに位置させることにより、当該位置A,B,Cに対応した操作信号がブレーキ制御手段に対して発信されるようになっている。
【0069】
上記図10に示した実施形態では、可動ディスク39を操作位置A,B,Cにそれぞれ位置するように操作ハンドル37を操作した際に、ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードをそれぞれリリースモード,駐車モード,増し引きモードとする操作信号が発信されるようになっている。
すなわち、上記操作位置A,B,Cが、可動操作部36の操作位置として、ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードをそれぞれリリースモード,駐車モード,増し引きモードとするリリース位置,駐車位置,増し引き位置に相当している。
【0070】
上記スイッチケース31の正面部32の裏面と可動ディスク39の上面との間には、可動ディスク39をスイッチケース31の底面部33側に付勢するコイルバネ34(リターンスプリング)が装着されている。
従って、この場合にも、前述の実施形態およびその変形例の場合と同じく、可動ディスク39を増し引き位置Cに近付けるほど操作力増大機構(リターンスプリング34)により操作力が大きくなるので、操作スイッチ30を目視で確認しなくても操作力の増減でスイッチの操作状況を把握できる。
【0071】
また、上記操作スイッチ30をインストルメントパネル2に取り付ける際には、スイッチケース31のケース正面部32がインストルメントパネル2の表面と実質的に面一となるように取り付けられる。つまり、操作スイッチ30の操作ハンドル37は、インストルメントパネル2の表面から車室内に突出することになる。
この突出量は、可動操作部36の操作位置A,B,Cに応じて変化するので、操作スイッチ30を目視で確認しなくても可動操作部36の操作位置を把握できるのである。
【0072】
更に、スイッチケース31の内周面には、可動操作部36の操作位置A,B,Cにそれぞれ対応する可動ディスク39の操作位置の近傍に、該可動ディスク39を移動させる際にある程度の抵抗力を及ぼすように、ごく低い凸部31a,31b,31c(クリック凸部)が形成されている。
従って、乗員がスイッチ操作を行うとき、可動ディスク39が上記リリース位置A,駐車位置B,増し引き位置Cの何れかに操作される際には、可動ディスク39の側面部およびその角部が、上記クリック凸部31a,31b,31cの何れかに嵌まり込むことにより、乗員に対し節度感を与えることができる。
【0073】
また、具体的には図示しなかったが、より好ましくは、スイッチケース31の内周面には、可動操作部36の操作位置B,Cにそれぞれ対応する可動ディスク39の操作位置の近傍に、該可動ディスク39の(従って、操作ハンドル37の)回動方向における所定位置において可動ディスク39を係止(ラッチ)する例えば突起部(ラッチ用突起部)が形成されている。
【0074】
そして、図11に示すように、操作ハンドル37を所定位置に回動操作することにより、可動ディスク39を操作位置B,Cで係止し、また、この係止状態(ラッチ状態)を解除できるようになっている。
このように、ラッチ用突起部を設けたことにより、操作ハンドル37を適宜回動操作しながら操作スイッチ30を操作することにより、可動ディスク39を駐車位置B,増し引き位置Cで係止(ラッチ)及び解除可能なラッチ・タイプの操作スイッチとして使用することができる。
【0075】
一方、ラッチ用突起部が設けられていない場合、或いは設けられていても操作ハンドル37を敢えて回動操作しない場合には、可動ディスク39は操作位置B,Cでラッチされることはなく、モータの安全装置が働かない限り、基本的には各操作位置B,Cにおけるスイッチ操作時間(可動ディスク39が位置する時間)に対応した時間だけモーメンタリにモータへの通電が行われる。
【0076】
つまり、このモーメンタリ・タイプの場合には、各操作位置B,Cへのスイッチ操作時間に応じてモータ回転量を(従ってブレーキ力)を調節可能であり、スイッチ操作を止めると操作開始前の位置に復帰する。
この場合、操作位置C(増し引き位置)についてのみ、上記ラッチ用突起部を設けないようにして、前述の図8及び図9で示した操作スイッチ10’の場合と同様に、操作位置Cでの増し引き操作のみについて、スイッチ操作時間(可動ディスク39が位置する時間)に対応した時間だけモーメンタリにモータへの通電が行われるようにしても良い。
【0077】
以上のように、このようなモーメンタリ・タイプの操作スイッチの場合には、乗員の操作スイッチの操作に応じて無段階的に車輪制動力を設定することができる制動力設定機構を備えており、また、ブレーキ制御モードとして、無段階的に車輪制動力を設定し得る制動力設定モードを備えていることになる。この制動力設定モードは、少なくとも増し引きモードに含まれている。
【0078】
このように、乗員の操作スイッチの操作に応じて車輪制動力を設定し得る制動力設定モードが増し引きモードに含まれることにより、少なくとも増し引き時には、乗員のスイッチ操作の仕方(当該操作位置でのスイッチ操作時間)により、車両が置かれている状況に応じた、無段階的できめ細かな車輪制動力の設定を行うことができる。
【0079】
尚、上記のような制動力設定モードは、乗員のスイッチ操作により制動力設定機構が作動状態にあるときにのみ働く。つまり、操作スイッチの操作位置が例えば増し引き位置Cにあり、乗員のスイッチ操作によりこの操作位置Cが維持されている間だけ、制動力設定モードで車輪制動力が設定される。従って、増し引き時には乗員の意思に応じたきめ細かな車輪制動力の設定を行うことができる。
【0080】
図12は、駐車ブレーキ機構のモータの回転量(回転ストローク)とモータ引き力との関係を例示するグラフである。操作位置A,B,C(リリース位置,駐車位置,増し引き位置)の順に、モータ回転量が大きくなり、モータによる引き力も大きくなっている。また、前述の操作スイッチ10’における増し引き操作の場合、スイッチ操作時間に応じてBとCの範囲で引き力を調整できる。
【0081】
次に、本発明の実施の形態に係る車両のパーキングブレーキ装置における駐車ブレーキ機構の作動を制御するブレーキ制御システムについて説明する。図13は、該ブレーキ制御システムにおける制御回路を概略的に示す回路構成図である。
この図に示すように、本ブレーキ制御システムの中心となるブレーキ制御装置50は、マイクロコンピュータを主要部として構成されたコントロールユニット51と、操作スイッチ61からの操作信号を信号変換してコントロールユニット51へ入力する入力インタフェイス(I/F)回路52と、該コントロールユニット51からの制御信号を信号変換してブレーキ機構の駆動モータや各種表示装置等に出力する出力インタフェイス(I/F)回路53とを備えている。
【0082】
また、上記コントロールユニット51には、該ユニット51の異常を検出するために、その制御状態を監視するマイコン監視回路54が付設されている。このようなマイコン監視回路54としては、所謂、ウォッチドック回路を適用することができる。
尚、本ブレーキ制御装置50には、車載のバッテリ60からの電圧(通常、12ボルト)を所定の電圧(例えば、5ボルト)に降下させるように調整する電圧調整回路55が備えられている。
【0083】
操作スイッチ61には、前述の操作スイッチ10,10’又は30の何れもが適用可能であり、各操作位置(リリース位置A,駐車位置B,増し引き位置C)に応じたスイッチ接点61A,61B,61Cが備えられている。そして、乗員のスイッチ操作により、当該操作位置A,B,Cに対応したスイッチ接点61A,61B,61Cが閉成(ON)し、その操作信号が入力インタフェイス52を介してコントロールユニット51に入力され、乗員のスイッチ操作に応じたブレーキ制御モードが選択される。
【0084】
上記コントロールユニット51の出力インタフェイス53には、第1,第2の2個のリレー63,64が接続され、これらリレー63,64には駐車ブレーキ機構を作用させる駆動モータ65が接続されている。
上記リレー63,64には、ブレーキ機構の作動状況を検知する作動状況検知手段として、駆動モータ65への通電状態を検知するためのモータ作動電流検知センサ66が付設されており、該センサ66の検知結果は電流検出インタフェイス回路67を介してコントロールユニット51に入力されるようになっている。このモータ作動電流検知センサ66により、駆動モータ65の作動状況、つまり駐車ブレーキ機構の作動状況が検知される。
【0085】
また、上記駆動モータ65には、該モータ65の例えば回転量(若しくは回転位置)又は出力トルク等の出力に関するパラメータが、当該モータ65の駆動を停止させるべき値に達したか否かを判定するために、かかる出力に関するパラメータ値を検知する停止判定センサ68が設けられており、該センサ68の検出結果はモータ停止判定インタフェイス回路69を介してコントロールユニット51に入力されるようになっている。
【0086】
上記停止判定センサ68は、駐車ブレーキ機構の車輪制動力検出手段を構成するもので、例えば、モータトルクセンサ或いはモータ内位置センサなどの、公知のセンサを用いることができる。
この停止判定センサ68からの検出信号を受けたコントロールユニット51は、各制御モード毎に予め設定された閾値に基づいて、後述するような駆動モータ65の停止判定を行う。
【0087】
例えば、増し引きモードで駆動モータ65を作動させている場合の停止判定に際しては、モータ65の駐車側への回転動作(増し引き動作を含むプル動作)における突き当て位置までモータ65が回転し、該モータ65に過度な負荷が掛かって過熱する等の不具合が生じない範囲での限界値が、その閾値として選ばれる。
【0088】
尚、このように停止判定センサ68からの検出信号に基づいてコントロールユニット51が停止判定を行う代わりに、駆動モータには、通常の駐車位置への動作(ノーマル・プル:Nomal・Pull)を検出するとOFFする内蔵スイッチと、モータの駐車動作(プル動作)における突き当て位置まで作動するとOFFする内蔵スイッチと、モータのリリース動作における突き当て位置まで作動するとOFFする内蔵スイッチの3つの内蔵スイッチを設けておき、これら内蔵スイッチの作用によってモータ停止を行わせることもできる。
【0089】
駆動モータ65をプル操作側(駐車位置または増し引き位置への操作側)に作動させる際には、バッテリ60(+B)からの電力供給により第1リレー63が作動し、逆に、駆動モータ65をリリース操作側に作動させる際には、イグニッション・スイッチ(+IG)を通じての電力供給により第2リレー64が作動するように設定されている。
【0090】
このように設定することにより、通常、駐車状態で行われるプル操作に対しては、バッテリ60から直接に電力供給を行ってモータ65を作動させる一方、子供などによる不用意な操作の防止が求められるリリース操作については、イグニッション・スイッチのONを要件として電力供給が行われることになり、リリース操作についての安全性をより高めることができる。
【0091】
また、上記コントロールユニット51の出力インタフェイス53には、通常ブレーキ及びパーキングブレーキの異常をそれぞれ報知するワーニングランプ71及び72が接続され、更に、パーキングブレーキの操作状況および作動状態を表示するパーキングブレーキ作動ランプ73,74が接続されている。
【0092】
このうち、パーキングブレーキ作動ランプ73(プル作動ランプ)は、プル操作およびプル作動状態を示すもので、例えば、プル操作中には点滅し、プル状態になれば点灯する。一方、パーキングブレーキ作動ランプ74(リリース作動ランプ)は、リリース操作およびリリース状態を示すもので、例えば、リリース操作中には点滅し、リリース状態になれば点灯するものである。これらパーキングブレーキ作動ランプ73,74は、前述のモータ作動電流検知センサ66の検出結果に基づいて、その表示状態が定められるようになっている。
【0093】
以上のように構成されたブレーキ制御システムによるパーキングブレーキ制御について、添付フローチャートを参照しながら説明する。
まず、前述のモーメンタリ・タイプの操作スイッチが用いられている場合について、図14〜図16のフローチャートを参照しながら説明する。尚、このモーメンタリ・タイプの操作スイッチでは、増し引き操作時は、操作位置での操作時間に応じて、つまり、乗員のスイッチ操作に応じて、基本的にはその操作時間だけモータ65が駆動され、乗員の意思に応じて車輪に対する制動力が調節できる。
【0094】
制御が開始(スタート)されると、まず、ステップ#1で初期設定が行われる。すなわち、プル(Pull)表示フラグ及び/又は増し引き操作フラグがセットされている場合には、これをリセットする。
上記プル表示フラグは、プル作動ランプ73を表示作動させる際にセットされるフラグであり、駐車位置へのスイッチ操作および増し引き位置へのスイッチ操作が行われる際には、このプル表示プラグがセットされる。また、上記増し引き操作フラグは、増し引き位置へのスイッチ操作が行われる際にセットされるフラグである。
【0095】
次に、ステップ#2では、増し引き操作フラグがセットされているか否かが判定される。このように、増し引き操作フラグのセット状態を確かめることにより、増し引き操作後に不要なプル操作が行われることが防止できる。
上記ステップ#2での判定結果がNOの場合には、ステップ#3で、プルスイッチ(Pull SW)がONされているか否かが判定される。これがYESの場合には、駆動モータ65がプル作動を行い(ステップ#4)、プル作動ランプ73がプル作動中の表示、つまり、点滅表示を行う(ステップ#5)。そして、ステップ#6で、停止判定センサ68の検出値に基づいてプル停止すべきか否かの判定(Pull停止判定)が行われる。
【0096】
これらステップ#4,#5及び#6の各ステップが繰り返して行われ、ステップ#6の判定結果がYESになると、プル作動ランプ73がプル表示、つまり、点灯表示を行う(ステップ#7)。そして、ステップ#28で、駆動モータ65の作動が停止され、その後、ステップ#2に戻り、それ以降の各ステップを繰り返すようになっている。
【0097】
一方、上記ステップ#2での判定結果がYESの場合(増し引き操作フラグがセット状態の場合)、及び上記ステップ#3での判定結果がNOの場合(プルスイッチがON状態でない場合)には、ステップ#8で、リリース・スイッチ(Release SW)がONされているか否かが判定される。この判定結果がYESの場合には、更に、ステップ#9で、増し引き操作フラグがセット状態であるか否かが判定される。
このステップ#9での判定結果がYESの場合は、当該リリース操作が増し引き後のリリース操作であることを意味しており、この場合には、まず、ステップ#10で、増し引き操作フラグがリセットされる。
【0098】
次に、駆動モータ65がリリース作動を行い(ステップ#11)、ステップ#12で、モータ位置が駐車位置(Pull位置)に達したか否かが判定される。このステップ#11及び#12の各ステップが繰り返して行われ、ステップ#12の判定結果がYESになると、ステップ#13で、モータ65の作動が遅延(Delay)させられる。具体的には、例えばモータ65の作動が実質的に一旦停止され、車輪制動力の減少が実質的には一時的に停止させられる。
【0099】
このように、増し引きモードからリリースモードへの移行時に車輪制動力の減少を一旦停止させる停止機構が設けられている。かかる停止機構を備えたことにより、増し引きモードで車輪に制動力が加えられるような車両の駐停車状態(例えば、急な坂道での駐停車など)において、車輪制動力が急に解除されることによる不具合(例えば、車両のズリ落ちなど)発生を有効に防止できるのである。
【0100】
その後、ステップ#14で、再び駆動モータ65がリリース作動を行い、リリース作動ランプ74がリリース作動中の表示、つまり、点滅表示を行う(ステップ#15)。そして、ステップ#16で、停止判定センサ68の検出値に基づいてリリース停止すべきか否かの判定(Release停止判定)が行われる。
これらステップ#14,#15及び#16の各ステップが繰り返して行われ、ステップ#16の判定結果がYESになると、リリース作動ランプ74がリリース表示、つまり、点灯表示を行う(ステップ#17)。そして、ステップ#28で、駆動モータ65の作動が停止されるようになっている。
【0101】
一方、上記ステップ#9での判定結果がNOの場合(増し引き操作フラグがセット状態でない場合)には、増し引き操作後のリリース操作ではなく、通常のリリース操作であるので、ステップ#10〜#13の各ステップをスキップして、ステップ#14以降の各ステップを実行するようになっている。
【0102】
ステップ#8での判定結果がNOの場合(リリース・スイッチがON状態でない場合)には、ステップ#18で、車速が一定以上であるか否かが判定される。この判定値としては、通常ブレーキに異常が生じてパーキングブレーキを(例えば、増し引きモードで)緊急使用する場合に、車輪がロックしてスリップが生じる限界の車速(例えば、数km/h程度の車速)が選ばれている。
【0103】
このステップ#18での判定結果がNOの場合、つまり、車速が上記限界車速未満の場合には、ステップ#19で、増し引きスイッチ(SW)がON状態であるか否かが判定され、これがYESの場合には、プル作動ランプ73の表示フラグ及び増し引き操作フラグが順次セットされた(ステップ#20及び#21)後、駆動モータ65がプル作動を行い(ステップ#22)、プル作動ランプ73がプル作動中の表示、つまり、点滅表示を行う(ステップ#23)。
【0104】
そして、ステップ#24で、停止判定センサ68の検出値に基づいてブレーキ引き力が一定以上でプル停止すべきか否かの判定が行われる。
尚、この場合の判定閾値としては、前述のように、駆動モータ65に過度な負荷が掛かって過熱する等の不具合が生じない範囲での限界値が選ばれている。
【0105】
このように、ブレーキ引き力が一定値以上になると(つまり、車輪制動力が一定値以上になると)、駆動モータ65が停止されて車輪制動力の増大が規制されるので、過大な車輪制動力の発生およびモータ65の過負荷を有効に防止することができる。
【0106】
これらステップ#18〜#24の各ステップが繰り返して行われ、ステップ#24の判定結果がYESになると、プル作動ランプ73がプル表示、つまり、点灯表示を行う(ステップ#27)。そして、ステップ#28で、駆動モータ65の作動が停止されるようになっている。
上記ステップ#19での判定結果がNOの場合(増し引きSWがON状態でない場合)には、ステップ#25で、プル表示フラグがセット状態であるか否かが判定され、これがYESの場合には、このプル表示フラグがリセット(ステップ#26)された後、ステップ#27が実行される。
【0107】
一方、上記ステップ#18での判定結果がYESの場合、つまり、車速が上記限界車速以上である場合、及びステップ#25での判定結果がNOの場合(プル表示フラグがセット状態でない場合)には、パーキングブレーキの増し引きは行われることなく、ステップ#28でモータが停止されるようになっている。
【0108】
このように、車両の車速が所定値以上である場合には、制御モードが増し引きモードとなることが禁止されるので、車両走行中にパーキングブレーキを作動させた場合に、車速の割に過大な制動力が車輪に加えられて車輪がロック状態になることを有効に回避でき、パーキングブレーキを使用する際の安全性をより高めることができるのである。
【0109】
また、パーキングブレーキの作動状況検知手段としてのモータ作動電流検知センサ66を備えると共に、該センサ66の検知結果に基づいて当該パーキングブレーキの作動状況を表示する表示手段(プル作動ランプ73及びリリース作動ランプ74)を備えたことにより、乗員はパーキングブレーキの作動状況を表示により確認することができ、利便性がより高められている。
【0110】
次に、前述のラッチ・タイプの操作スイッチが用いられている場合について、図17及び図18のフローチャートを参照しながら説明する。このラッチ・タイプの操作スイッチでは、乗員がスイッチ操作を止めて手を離しても、操作スイッチの可動操作部は当該操作位置に保持される。
【0111】
制御が開始(スタート)されると、まず、ステップ#31でプルスイッチ(Pull SW)がONされているか否かが判定される。これがYESの場合には、駆動モータ65がプル作動を行い(ステップ#32)、プル作動ランプ73がプル作動中の表示、つまり、点滅表示を行う(ステップ#33)。そして、ステップ#34で、停止判定センサ68の検出値に基づいてプル停止すべきか否かの判定(Pull停止判定)が行われる。
【0112】
これらステップ#32,#33及び#34の各ステップが繰り返して行われ、ステップ#34の判定結果がYESになると、プル作動ランプ73がプル表示、つまり、点灯表示を行う(ステップ#35)。そして、ステップ#47で、駆動モータ65の作動が停止され、その後、ステップ#31に戻り、それ以降の各ステップを繰り返すようになっている。
【0113】
一方、ステップ#31での判定結果がNOの場合(プルスイッチがON状態で無い場合)には、ステップ#36で、リリース・スイッチ(Release SW)がONされているか否かが判定され、これがYESの場合には、ステップ#37で、駆動モータ65がリリース作動を行い、リリース作動ランプ74がリリース作動中の表示、つまり、点滅表示を行う(ステップ#38)。そして、ステップ#39で、停止判定センサ68の検出値に基づいてリリース停止すべきか否かの判定(Release停止判定)が行われる。
【0114】
これらステップ#37,#38及び#39の各ステップが繰り返して行われ、ステップ#39の判定結果がYESになると、リリース作動ランプ74がリリース表示、つまり、点灯表示を行う(ステップ#40)。そして、ステップ#47で、駆動モータ65の作動が停止されるようになっている。
【0115】
上記ステップ#36での判定結果がNOの場合(リリース・スイッチがON状態でない場合)には、ステップ#41で、車速が一定以上であるか否かが判定される。この判定値としては、モーメンタリ・タイプの操作スイッチを用いる場合と同じく、通常ブレーキに異常が生じてパーキングブレーキを(例えば、増し引きモードで)緊急使用する場合に、車輪がロックしてスリップが生じる限界の車速(例えば、数km/h程度の車速)が選ばれる。
【0116】
このステップ#41での判定結果がNOの場合、つまり、車速が上記限界車速未満の場合には、ステップ#42で、増し引きスイッチ(SW)がON状態であるか否かが判定され、これがYESの場合には、駆動モータ65がプル作動を行い(ステップ#43)、プル作動ランプ73がプル作動中の表示、つまり、点滅表示を行う(ステップ#44)。
【0117】
そして、ステップ#45で、停止判定センサ68の検出値に基づいてブレーキ引き力が一定以上でプル停止すべきか否かの判定が行われる。
尚、この場合の判定閾値としては、前述のように、駆動モータ65に過度な負荷が掛かって過熱する等の不具合が生じない範囲での限界値が選ばれており、ブレーキ引き力が一定値以上になると駆動モータ65が停止されることにより、過大な車輪制動力の発生およびモータ65の過負荷が防止される。
【0118】
これらステップ#43〜#45の各ステップが繰り返して行われ、ステップ#45の判定結果がYESになると、プル作動ランプ73がプル表示、つまり、点灯表示を行う(ステップ#46)。そして、ステップ#47で、駆動モータ65の作動が停止されるようになっている。
【0119】
一方、上記ステップ#41での判定結果がYESの場合、つまり、車速が上記限界車速以上である場合、及び上記ステップ#42での判定結果がNOの場合(増し引きSWがON状態でない場合)には、パーキングブレーキの増し引きは行われることなく、ステップ#47でモータが停止されるようになっている。
【0120】
このラッチ・タイプの操作スイッチを用いた場合についても、前述のモーメンタリ・タイプの操作スイッチを用いた場合と同様に、車両の車速が所定値以上である場合には、制御モードが増し引きモードとなることが禁止され、車両走行中にパーキングブレーキを作動させた際に車輪がロック状態になることを有効に回避できる。また、パーキングブレーキの作動状況検知手段としてのモータ作動電流検知センサ66の検知結果に基づいて当該パーキングブレーキの作動状況を表示する表示手段(プル作動ランプ73及びリリース作動ランプ74)を備えたことにより、乗員はパーキングブレーキの作動状況を表示により確認でき、利便性が向上する。
【0121】
尚、本発明は、以上の実施態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良あるいは設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【0122】
【発明の効果】
本願の第1の発明に係る車両のパーキングブレーキ装置によれば、ブレーキ制御モードとしてリリースモードと駐車モードと増し引きモードとを備えるとともに、乗員の操作に応じてブレーキ制御モードを選択し得る操作スイッチが設けられていることにより、車輪に制動力を加えるON状態と車輪への制動力を解除したOFF状態の2段階の作動状態しか設定されていなかった従来のように、ON状態になりさえすれば、比較的小さな車輪制動力で済む場合でも非常に大きな(過大な)制動力が車輪に加えられるようなことはなくなる。
すなわち、乗員のスイッチ操作により車両の駐停車状態に応じた車輪制動力を発生させることができ、過大な車輪制動力が発生することを抑制してブレーキ機構の可動部分の耐久性を向上させることもできる。
【0123】
また、本願の第2の発明によれば、基本的には上記第1の発明と同様の効果を奏することができる。特に、乗員の操作スイッチの操作に応じて車輪制動力を設定し得る制動力設定モードが増し引きモードに含まれることにより、増し引き時には車両の状況に応じたきめ細かな車輪制動力の設定を行うことができる。
【0124】
更に、本願の第3の発明によれば、基本的には上記第2の発明と同様の効果を奏することができる。特に、乗員のスイッチ操作により上記制動力設定機構が作動状態にあるときにのみ制動力設定モードで車輪制動力が設定されるので、増し引き時には乗員の意思に応じたきめ細かな車輪制動力の設定を行うことができる。
【0125】
また更に、本願の第4の発明によれば、基本的には上記第2又は第3の発明と同様の効果を奏することができる。特に、制動力検出手段の検出値が所定値を越えると(つまり、車輪制動力が所定値を越えると)規制手段によって車輪制動力の増大が規制されるので、過大な車輪制動力の発生およびアクチュエータの過負荷を規制することができる。
【0126】
また更に、本願の第5の発明によれば、基本的には上記第1〜第4の発明の何れか一と同様の効果を奏することができる。特に、増し引きモードからリリースモードへの移行時に車輪制動力の減少を一旦停止させる停止手段を備えたことにより、増し引きモードで車輪に制動力が加えられるような車両の駐停車状態(例えば、急な坂道での駐停車など)において、車輪制動力が急に解除されることによる不具合(例えば、車両のズリ落ちなど)発生を有効に防止できる。
【0127】
また更に、本願の第6の発明によれば、基本的には上記第1〜第5の発明の何れか一と同様の効果を奏することができる。特に、ブレーキ手段の作動状況検知手段の検知結果に基づいて当該ブレーキ手段の作動状況を表示する表示手段を備えたことにより、乗員はブレーキ手段の作動状況を表示により確認することができ、利便性が向上する。
【0128】
また更に、本願の第7の発明によれば、基本的には上記第1〜第6の発明の何れか一と同様の効果を奏することができる。特に、車両の車速が所定値以上である場合には、禁止手段により制御モードが増し引きモードとなることが禁止されるので、車両走行中にブレーキ手段を作動させた場合に、車速の割に過大な制動力が車輪に加えられて車輪がロック状態になることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るパーキングブレーキ装置を備えた自動車の車室前部の平面説明図である。
【図2】上記自動車の車室前部の正面説明図である。
【図3】上記パーキングブレーキ装置の操作スイッチの全体構成を概略的に示す斜視図である。
【図4】上記操作スイッチの可動操作部の分解斜視図である。
【図5】上記可動操作部の電極エレメントの斜視図である。
【図6】上記操作スイッチの正面説明図である。
【図7】図6のY7−Y7線に沿った断面説明図である。
【図8】上記実施の形態の変形例に係る操作スイッチの正面説明図である。
【図9】図8のY9−Y9線に沿った断面説明図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る操作スイッチを概略的に示す斜視図である。
【図11】上記他の実施形態に係る操作スイッチの平面説明図である。
【図12】駐車ブレーキ機構のモータの回転量とモータ引き力との関係を例示するグラフである。
【図13】本発明の実施の形態に係る車両のパーキングブレーキ装置におけるブレーキ制御システムの制御回路を概略的に示す回路構成図である。
【図14】上記ブレーキ制御システムにおいてモーメンタリ・タイプの操作スイッチを用いた場合のパーキングブレーキ制御を説明するフローチャートの一部である。
【図15】上記モーメンタリ・タイプの操作スイッチを用いた場合のパーキングブレーキ制御を説明するフローチャートの一部である。
【図16】上記モーメンタリ・タイプの操作スイッチを用いた場合のパーキングブレーキ制御を説明するフローチャートの一部である。
【図17】上記ブレーキ制御システムにおいてラッチ・タイプの操作スイッチを用いた場合のパーキングブレーキ制御を説明するフローチャートの一部である。
【図18】上記ラッチ・タイプの操作スイッチを用いた場合のパーキングブレーキ制御を説明するフローチャートの一部である。
【符号の説明】
10,10’,30,61…操作スイッチ
50…ブレーキ制御装置
51…コントロールユニット
65…駆動モータ
66…モータ作動電流検知センサ
68…停止判定センサ
73…プル作動ランプ
74…リリース作動ランプ
A…リリース位置
B…駐車位置
C…増し引き位置
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両のパーキングブレーキ装置、特に、アクチュエータの作動によって車輪に対し制動力を付与するようにした車両のパーキングブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両のパーキングブレーキ装置として、アクチュエータの作動によって車輪に対し制動力を付与するブレーキ手段を備え、該ブレーキ手段の作動をブレーキ制御手段で制御するようにした、所謂、電動式のパーキングブレーキ装置は一般に良く知られている。
【0003】
例えば、特開昭59−145658号公報には、車両の駐車(パーキング)ブレーキを作動および解除制御する電磁手段(アクチュエータ)と、車両の傾斜状態を検出する斜度センサを含み、車両の運転状態を検出する多数のセンサ群と、該センサ群からの信号を受けて上記電磁手段に制御信号を出力するコントローラとを備えたものが開示されている。
【0004】
かかるタイプのパーキングブレーキ装置によれば、車両の傾斜状態を含む運転状態に応じて、パーキングブレーキの作動および解除ならびに作動力の可変制御を自動的に行わせることができるので非常に便利であるが、反面、多数のセンサ類および複雑な制御機構を必要とするのでかなりのコスト高になるという難点がある。
【0005】
また、近年では、車両の駐停車操作を含む運転操作等がますます自動化されつつあるが、余りに自動化が進み過ぎると、逆に乗員の車両に対する操縦感覚もしくは操作感覚が薄くなり過ぎるという不満もユーザ間に生じるようになって来ている。上記従来のパーキングブレーキ装置では、駐停車時における全てのブレーキ操作が自動で行われ乗員の手動操作を全く必要としないので、乗員にとってはパーキングブレーキを操作しているという操作感を得ることが全くできないという不満もある。
【0006】
これに対して、乗員の手動でのスイッチ操作によってパーキングブレーキを働かせるようにしたタイプの電動式パーキングブレーキ装置が知られている。この場合には、多数のセンサ類を備えて自動制御でブレーキが働くものに比して、構成が比較的簡単で済むのでコストも抑制でき、また、乗員のブレーキ操作感も失われることはない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
周知のように、車両を安全かつ確実に駐停車させるに要する車輪制動力は、車両の駐停車状態、例えば駐停車する際の車両の傾斜状態等に応じて異なり、例えば、急な坂道などで駐停車する場合には非常に大きな制動力が必要であるが、平坦な箇所で駐停車する場合には比較的小さな制動力で済む。
【0008】
しかしながら、従来のスイッチ操作タイプの電動式パーキングブレーキ装置では、通常、車輪に制動力を加えるオン(ON)状態と車輪への制動力を解除したオフ(OFF)状態の2段階の作動状態しか設定されていない。この場合、上記ON状態では、どんな坂道での駐停車にも対応できるように、つまり、想定し得る最大の傾斜状態での駐停車にも対応できるように、車輪制動力の大きさを設定しておく必要がある。
【0009】
したがって、従来のスイッチ操作タイプの電動式パーキングブレーキ装置では、例えば車両が平坦な箇所で駐停車する場合など比較的小さな車輪制動力で済む場合でも、ON状態になりさえすれば常に、車両の想定最大斜度に対応した非常に大きな車輪制動力が発生することとなる。このため、車輪に制動力を加えるブレーキ機構の可動部分(例えばブレーキケーブルなど)の耐久性にも悪影響を及ぼすという問題があった。
【0010】
この発明は、上記技術的課題に鑑みてなされたもので、乗員のスイッチ操作により車両の駐停車状態に応じた車輪制動力を発生させることができ、また、ブレーキ機構の可動部分の耐久性を向上させることができる車両のパーキングブレーキ装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このため、本願請求項1の発明(以下、第1の発明という)に係る車両のパーキングブレーキ装置は、アクチュエータの作動によって車輪に対し制動力を付与するブレーキ手段と、該ブレーキ手段の作動を制御するブレーキ制御手段とを備えた車両のパーキングブレーキ装置を前提とし、上記ブレーキ制御手段は、ブレーキ制御モードとして、ブレーキ手段に車輪制動力を発生させないリリースモードと、ブレーキ手段に所定の車輪制動力を発生させる駐車モードと、該駐車モード時よりも大きい車輪制動力をブレーキ手段に発生させる増し引きモードとを有しており、上記ブレーキ制御手段に対して乗員の操作に応じた操作信号を発信し、該ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードを選択する操作スイッチが設けられている、ことを特徴としている。
【0012】
また、本願の請求項2に係る発明(以下、第2の発明という)は、上記第1の発明において、上記増し引きモードは、乗員の操作スイッチの操作に応じて車輪制動力を設定し得る制動力設定モードを含み、上記操作スイッチは、乗員の操作に応じて車輪制動力を設定する制動力設定機構を備えていることを特徴としたものである。
【0013】
更に、本願の請求項3に係る発明(以下、第3の発明という)は、上記第2の発明において、上記ブレーキ制御手段は、乗員の操作スイッチの操作により制動力設定機構が作動状態にあるときにのみ、上記制動力設定モードで車輪制動力を設定することを特徴としたものである。
【0014】
また、更に、本願の請求項4の発明(以下、第4の発明という)は、上記第2又は第3の発明において、上記ブレーキ手段の車輪制動力を検出する制動力検出手段と、制動力設定モードにおいて制動力検出手段の検出値が所定値を越えると車輪制動力の増大を規制する規制手段とを、更に備えたことを特徴としたものである。
【0015】
また、更に、本願の請求項5に係る発明(以下、第5の発明という)は、上記第1〜第4の発明の何れか一において、制御モードが増し引きモードからリリースモードに移行する際に、車輪制動力の減少を一旦停止させる停止手段を更に備えたことを特徴としたものである。
【0016】
また、更に、本願の請求項6に係る発明(以下、第6の発明という)は、上記第1〜第5の発明の何れか一において、上記ブレーキ手段の作動状況を検知する作動状況検知手段と、該作動状況検知手段の検知結果に基づいてブレーキ手段の作動状況を表示する表示手段とを、更に備えたことを特徴としたものである。
【0017】
また、更に、本願の請求項7に係る発明(以下、第7の発明という)は、上記第1〜第6の発明の何れか一において、車両の車速が所定値以上である場合には制御モードが増し引きモードとなることを禁止する増し引き禁止手段を更に備えたことを特徴としたものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る車両のパーキングブレーキ装置を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2は、本実施の形態に係るパーキングブレーキ装置を備えた自動車の車室前部の平面説明図および正面説明図である。これらの図に示すように、上記自動車では、車室前部に配設されたインストルメントパネル2の正面部の比較的上部における略中央部に、パーキングブレーキ装置の操作スイッチ10が配置されている。
【0019】
上記自動車は、例えば、ステアリングホイール3が車室の右側部分に配置された、所謂、右ハンドル車であるが、上記操作スイッチ10はインストルメントパネル2の車幅方向における略中央部に配置されているので、左ハンドル車の場合でも、その取付位置を変更する必要はない。
尚、操作スイッチ10の近辺には、例えば、他の種々のスイッチ類や表示装置類あるいはオーディオ装置などが配置され、その下方には例えば変速装置のシフトレバー4が配設されている。また、符号5,6は各々運転席シート,補助席シートを示している。
【0020】
図3〜図5は上記操作スイッチ10の構造を示す説明図で、図3は操作スイッチの全体斜視図、図4はその可動操作部の分解斜視図、また、図5は可動操作部の通電エレメントを導電体側から見て示した斜視図である。
図3から分かるように、操作スイッチ10は、全体の外形形状が直方体状に形成された中空ボックス状のスイッチケース11内に、乗員のスイッチ操作に応じて動作する可動操作部20を配設して構成されている。
【0021】
上記可動操作部20は、図4から良く分かるように、可動ベース21と操作ノブ22と通電エレメント23とを主要部として構成されている。可動ベース21は、全体の外形形状が大略直方体状に形成され、その内部には一側(図4における下側)に開口する凹部21aが形成されている。この凹部21a内に電極エレメント23が収容される。
【0022】
該通電エレメント23は、図5から良く分かるように、長手方向における両端部に突出部23aを備え、各突出部23aの頂部は所定曲率の曲面状に形成されている。そして、両突出部23aの頂部を結ぶようにして帯状の導電体23pが固着されている。通電エレメント23は、この両突出部23a及び導電体23pを開口外向き(図4における下向き)にして、可動ベース21の凹部21a内に収容される。
【0023】
このとき、凹部21aの天井部と通電エレメント23の平坦面(図4における上面)との間には、該通電エレメント23を凹部開口外向き(図4における下向き)に付勢する例えば複数(例えば2個)の付勢バネ24が介装される。
尚、上記通電エレメント23は、帯状の導電体23pを除いて、その部材本体部分は両突出部23aも含めて全て、非導電性材料(例えば合成樹脂)で製作されている。また、可動ベース21及び操作ノブ22並びにスイッチケース11も同様に、例えば合成樹脂等の非導電性材料で製作されている。
【0024】
一方、可動ベース21の反凹部開口側の端面21f(ベース面:図4における上面)には長手方向に延びる溝部21gが設けられ、上記操作ノブ22の一側の端面(図4における下面)には、この溝部21gにスライド可能に係合する係合部22fが形成されている。操作ノブ22の一側面および可動ベース21の上記ベース面21fには比較的微小なピン状の突起22t及び21tが設けられており、これら両突起22t,21tに両端を係止させてコイル状のスプリング25が装着される。
【0025】
上記スイッチケース11のケース正面部12には、可動操作部21の移動動作を案内するガイド溝19が形成されている。該ガイド溝19は、スイッチケース11の長手方向に延びる所定長さの第1ガイド部19aと、該第1ガイド部19aとは異なる方向、より好ましくは、第1ガイド部19aと直交する方向へ延びる比較的短い第2ガイド部19bと、上記第1ガイド部19aと実質的に平行にスイッチケース11の長手方向へ延びる第3ガイド部19cとで構成されている。第2ガイド部19bは、第3ガイド部19cと上記第1ガイド部19aとを繋ぐものである。
【0026】
また、スイッチケース11の底面部13には、その長手方向の一辺に沿って(つまり、上記ガイド溝19の第1及び第3ガイド部19a及び19cと平行に)延びる帯状の電極14が固着されるとともに、長手方向の他の一辺に沿って上記帯状電極14と平行に配設された3つの接点電極15A,15B,15Cが所定距離を隔てた位置A,B,Cに固着されている。各電極14及び15A〜15Cには、後述する制御回路に繋ぎ込まれる導線16及び17a〜17cがそれぞれ接続されている。
【0027】
上記可動操作部21をスイッチケース11内に組み込む際には、図3に示されるように、操作ノブ22が上記ガイド溝19に係合してケース正面部12から突出し、且つ、通電エレメント23の両突出部23aがケース底面部13に当接するように組み込まれる。このとき、一方の突出部23aは帯状電極14に常時当接する。この組付状態で、付勢バネ24の付勢力により、可動操作部21の両突出部23aはケース底面部13に対して押圧され、可動ベース21のベース面21fはケース正面部12の裏面側に対して押圧される。
【0028】
上記操作スイッチ10をインストルメントパネル2に取り付ける際には、スイッチケース11のケース正面部12がインストルメントパネル2の表面と実質的に面一となるように取り付けられる。つまり、操作スイッチ10の操作ノブ22は、インストルメントパネル2の表面から車室内に突出することになる。
【0029】
上記パーキングブレーキ装置は、具体的には図示しなかったが、車輪に対して制動力を加えるブレーキ手段として、電動アクチュエータの作動によって車輪に制動力を付与する従来公知のブレーキ機構を備えている。尚、かかるブレーキ機構としては、例えば、前述の特開昭59−145658号公報に開示された駐車ブレーキ機構など、従来公知の具体構成による種々のものを適用することができる。
【0030】
また、パーキングブレーキ装置には、上記ブレーキ機構の作動を制御するブレーキ制御手段が設けられている。本実施の形態では、このブレーキ制御手段は、駐車ブレーキ機構を制御する制御モードとして、上記ブレーキ機構に車輪制動力を発生させないリリースモードと、上記ブレーキ機構に所定の車輪制動力を発生させる駐車モードと、該駐車モード時よりも大きい車輪制動力を上記ブレーキ機構に発生させる増し引きモードとを有している。
【0031】
上記駐車モードは、比較的平坦な箇所で駐停車する場合など、車輪に対して付与する制動力が比較的小さくて済む場合に対応する制御モードである。これに対して、上記増し引きモードは、急な坂道等で駐停車する場合など、比較的大きな車輪制動力が必要とされる場合に対応する制御モードである。尚、上記リリースモードは、パーキングブレーキ装置による車輪制動を行わない(パーキングブレーキ不作動)場合に対応する制御モードである。
【0032】
上述の操作スイッチ10は、乗員の意思に応じてかかるパーキングブレーキ装置を操作するもので、後述するように、乗員の操作に応じた操作信号をブレーキ制御手段に対して発信し、該ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードを乗員の意思に応じた制御モードに変更するものである。すなわち、乗員がこの操作スイッチ10を操作することにより、ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードが、段階的に変化するように乗員の意思に応じて選択される。
【0033】
このように、本実施の形態に係る車両のパーキングブレーキ装置によれば、ブレーキ制御モードとしてリリースモードと駐車モードと増し引きモードとを備えるとともに、乗員の操作に応じてブレーキ制御モードを選択し得る操作スイッチ10が設けられていることにより、車輪に制動力を加えるON状態と車輪への制動力を解除したOFF状態の2段階の作動状態しか設定されていなかった従来のように、ON状態になりさえすれば、比較的小さな車輪制動力で済む場合でも非常に大きな(過大な)制動力が車輪に加えられるようなことはなくなる。
すなわち、乗員のスイッチ操作により車両の駐停車状態に応じた車輪制動力を発生させることができ、過大な車輪制動力が発生することを抑制して、ブレーキ機構の可動部分(例えばブレーキケーブル等)の耐久性を向上させることもできるのである。
【0034】
図6は上記操作スイッチ10の正面説明図、また、図7は図6のY7−Y7線に沿った断面説明図である。これらの図からも良く分かるように、操作スイッチ10を操作する際には、操作ノブ22のインストルメントパネル表面から(つまり、スイッチケース11のケース正面部12から)車室内に突出した部分を摘んで、可動操作部20をガイド溝19に沿ってスライド移動させることにより、スイッチ操作が行われる。
【0035】
上記スイッチケース11のケース底面部13には、上述のように、ガイド溝19の第1及び第3ガイド部19a及び19cと平行に延びる帯状電極14と、これに平行に配設された3つの接点電極15A,15B,15Cとが設けられており、操作ノブ22を操作して可動操作部20の通電エレメント23の片側の突出部23aを接点電極15A,15B,15Cの何れかに位置させることにより、当該位置A,B,Cの接点電極15A,15B,15Cと帯状電極14とが通電エレメント23の導電体23pを介して通電し、当該位置A,B,Cに対応した操作信号がブレーキ制御手段に対して発信されるようになっている。
【0036】
本実施の形態では、通電エレメント23の片側の突出部23aが接点電極15A,15B,15Cを設けた操作位置A,B,Cにそれぞれ位置するように操作ノブ22を操作した際に、ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードをそれぞれリリースモード,駐車モード,増し引きモードとする操作信号が発信されるようになっている。
すなわち、上記操作位置A,B,Cが、可動操作部20の操作位置として、ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードをそれぞれリリースモード,駐車モード,増し引きモードとするリリース位置,駐車位置,増し引き位置に相当している。
【0037】
図7から良く分かるように、各接点電極15A,15B,15Cには、通電エレメント23の突出部23aの曲面状頂部がごく浅く嵌まり込むように、該頂部よりも曲率半径が大きい曲面状に形成されたクリック凹部15kが形成されている。
従って、乗員がスイッチ操作を行うとき、可動操作部20が上記リリース位置A,駐車位置B,増し引き位置Cの何れかに操作される際には、通電エレメント23の突出部23aの曲面状頂部が、接点電極15A,15B,15Cの何れかのクリック凹部15kに嵌まり込むことにより、乗員に対し節度感を与えることができる。
【0038】
このように、乗員のスイッチ操作に応じて動作する可動操作部20を操作スイッチ10に設け、該可動操作部20がリリース位置A,駐車位置B,増し引き位置Cの何れかの操作位置に操作された際に、乗員に対して節度感を与える節度機構としてのクリック凹部15kが設けられていることにより、乗員は、パーキングブレーキを操作しているという操作感を得ることができるとともに、スイッチの可動操作部の動作が完了したことを節度感で把握でき、操作毎にスイッチを見る煩わしさを無くすることができる。つまり、所謂、ブラインド操作を実現できるのである。
【0039】
図6及び図3から良く分かるように、可動操作部20をリリース位置Aと駐車位置Bとの間で移動させる際には、操作ノブ22をガイド溝19の第1ガイド部19aに沿ってスライド移動させる。また、可動操作部20を駐車位置Bと増し引き位置Cとの間で移動させる際には、操作ノブ22は、ガイド溝19の上記第1ガイド部19aと実質的に平行な第3ガイド部19cに沿ってスライド移動させられる。
【0040】
そして、可動操作部20をリリース位置Aから増し引き位置Cまで移動させる際には、まず、操作ノブ22をガイド溝19の第1ガイド部19aに沿って、リリース位置Aから駐車位置Bまでスライド移動させる。可動操作部20がこの駐車位置Bに達すると、操作ノブ22が第1ガイド部19aの端末部に当接し、可動操作部20は一旦停止させられる。
【0041】
次に、この駐車位置Bにおいて、操作ノブ22を第2ガイド部19bに沿って(つまり、第1ガイド部19aの溝方向と直交する方向へ)スライド移動させる。図6から良く分かるように、可動操作部20の可動ベース21に設けられた溝部21gは、ガイド溝19の第2ガイド部19bと実質的に平行に伸張しており、操作ノブ22の第2ガイド部19bに沿った移動は、操作ノブ22の係合突起部22fが、コイルスプリング25の付勢力に抗して、上記可動ベース21の溝部21gに沿ってスライド移動することにより行われる。
【0042】
操作ノブ22が第2ガイド部19bに沿った移動が終了すると、つまり、操作ノブ22が第2ガイド部19bの端末部に当接すると、可動操作部20は一旦停止し、その後、第3ガイド部19cに沿って増し引き位置Cまでスライド移動させられるようになっている。
【0043】
すなわち、駐車位置Bはリリース位置Aと増し引き位置Cの間に設定され、可動操作部20を上記リリース位置A側から増し引き位置C側へ向かって操作する際に、上記駐車位置Bにおいて可動操作部20を一旦停止させる停止機構が設けられていることになる。
【0044】
より具体的に説明すれば、上記操作スイッチ10のガイド溝19には、リリース位置Aと駐車位置Bとの間で、可動操作部20をスイッチケース11の長手方向(第1方向)へ導く第1ガイド部19aが設けられるとともに、駐車位置Bと増し引き位置Cとの間に、可動操作部20を上記第1方向とは異なる第2方向(スイッチケース11の長手方向と直交する方向)へ導く第2ガイド部19bが設けられている。従って、可動操作部20の操作方向を第1方向と第2方向との間で変換する場合には、可動操作部20を必ず一旦停止させる必要がある。
【0045】
このように、可動操作部20をリリース位置A側から増し引き位置C側へ向かって操作する際には、両者の間に設定された駐車位置Bで可動操作部20が一旦停止させられるので、この駐車位置Bまでは操作スイッチ10を目視で確認しなくてもブラインド操作でき、利便性をより高めることができる。
具体的には、駐車位置Bと増し引き位置Cとの間に(本実施の形態では、駐車位置Bに)、リリース位置Aと駐車位置Bとの間とは異なる操作方向へ可動操作部20を導くガイド機構(第2ガイド部19b)が設けられていることにより、操作スイッチ10を目視で確認しなくても操作方向の変化でスイッチ10の操作状況を把握でき、利便性をより一層高めることができるのである。
【0046】
上記とは逆に、可動操作部20を増し引き位置C側からリリース位置A側へ向かって操作する際についても、その移動動作の方向が逆向きになるだけで、やはり、駐車位置Bで可動操作部20が一旦停止させられるので、この駐車位置Bまでは操作スイッチ10を目視で確認しなくても、容易にブラインド操作ができる。尚、この場合には、可動操作部20が増し引き位置C側から駐車位置Bまで移動すると、操作ノブ22の第2ガイド部19bに沿った移動は、乗員が特に操作しなくても、操作ノブ22の係合突起部22fが、コイルスプリング25の付勢力で上記可動ベース21の溝部21gに沿ってスライド移動することにより行われる。
【0047】
以上のように、乗員が操作スイッチ10を操作することにより、ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードが、リリース位置A側から駐車位置Bを経て増し引き位置C側へ向かって、或いは逆に、増し引き位置C側から駐車位置Bを経てリリース位置A側へ向かって、段階的に変化するように乗員の意思に応じて選択されるのである。
【0048】
また、本実施の形態では、図7に示されるように、リリース位置A側のスイッチケース11の内壁と可動操作部20の可動ベース21の側面との間に、該可動ベース21を(従って、可動操作部20を)常時リリース位置A側に付勢するために、例えば引張コイルバネでなるリターンスプリング18が配設されている。
従って、乗員が可動操作部20をリリース位置A側から増し引き位置C側へ向かって操作する際には、このリターンスプリング18の付勢力に抗して操作することになる。しかも、このリターンスプリング18の付勢力は、可動操作部20が増し引き位置Cに近付くほど大きくなり、所要操作力が増大する。
【0049】
このように、可動操作部20を増し引き位置Cに近付けるほど、操作力増大機構(リターンスプリング18)により可動操作部20を移動操作する操作力が大きくなるので、操作スイッチ10を目視で確認しなくても、所要操作力の増減でスイッチの操作状況を把握でき、利便性を更に高めることができるのである。
【0050】
更に、本実施の形態では、図7に示されるように、スイッチケース11のケース正面部12の裏面側に、可動操作部20の各操作位置A,B,Cに応じて可動ベース21の上部が嵌まり込む嵌合凹部12a,12b,12cが形成されており、操作位置A,B,Cに位置する可動操作部20を移動させるには、当該操作位置A,B,Cの嵌合凹部12a,12b,12cを外れるまで一旦押し込む必要がある。従って、乗員の意図しない可動操作部20の移動が不用意に生じることはない。
【0051】
本実施の形態では、上記各嵌合凹部12a,12b,12cは、そのケース正面部12の表面からの(つまり、実質的にはインストルメントパネル2の表面からの)深さが異なるように、例えば、より好ましくは、リリース位置Aに対する嵌合凹部12a,駐車位置Bに対する嵌合凹部12b,増し引き位置Cに対する嵌合凹部12cの順で深くなるように設定されている。
【0052】
従って、可動操作部20の操作ノブ22がインストルメントパネル2の表面から車室内に突き出す突出量は、リリース位置AではHa,駐車位置BではHb,増し引き位置CではHcと、この順で小さくなり(Ha>Hb>Hc)、可動操作部20の操作位置A,B,Cに応じて操作ノブ22の突出量が変更されるようになっている。
【0053】
このように、可動操作部20の操作ノブ22のインストルメントパネル2の表面からの突出量は、突出量変更機構(嵌合凹部12a,12b,12c)により可動操作部20の操作位置A,B,Cに応じて変化するので、操作スイッチ10を目視で確認しなくても可動操作部20の位置を把握でき、利便性を更に一層高めることができるのである。
【0054】
尚、図7から良く分かるように、上記スイッチケース11のケース正面部12の裏面側において、嵌合凹部12aと嵌合凹部12bとの間および嵌合凹部12bと嵌合凹部12cとの間は、ケース底面部13の裏面と実質的に平行な段部が設けられている。
そして、リリース位置Aと駐車位置Bとの間および該駐車位置Bと増し引き位置Cとの間に中間位置に位置する可動操作部20は、その操作方向(図7における左右方向)について、リターンスプリング18による付勢力と、可動操作部20とケース正面部12の裏面およびケース底面部13の裏面との間に働く摩擦力とが作用する。
【0055】
本実施の形態では、この摩擦力の方が上記リターンスプリング18の付勢力よりも大きくなるように設定されている。従って、乗員がスイッチ操作中に可動操作部20の操作位置A,B,C間の中間位置で手を離しても、当該可動操作部20は、リターンスプリング18の付勢力によって操作位置まで戻ることなく、その位置を保つようになっている。
【0056】
次に、上記操作スイッチ10の変形例について説明する。尚、以下の説明において、上記図1〜図7で示した操作スイッチ10における場合と同様の構成を備え同様の作用をなすものについては同一の符号を付し、それ以上の説明は省略する。
図8及び図9は操作スイッチの変形例を示している。図8は上記図6に対応したもので、変形例に係る操作スイッチの正面説明図である。また、図9は図7に対応したもので、図8のY9−Y9線に沿った断面説明図である。
【0057】
これらの図に示すように、この変形例に係る操作スイッチ10’は、リターンスプリング18’のタイプ及びその配設位置、並びに可動操作部20の可動ベース21’の上部形状とスイッチケース11のケース正面部12’の裏面形状が、上述の操作スイッチ10と異なっている。
【0058】
すなわち、この変形例に係る操作スイッチ10’では、図9に示されるように、増し引き位置C側のスイッチケース11の内壁と可動操作部20の可動ベース21’の側面との間に、該可動ベース21’を(従って、可動操作部20を)常時リリース位置A側に付勢するために、圧縮コイルバネでなるリターンスプリング18’が配設されている。
【0059】
乗員が可動操作部20をリリース位置A側から増し引き位置C側へ向かって操作する際には、このリターンスプリング18’の付勢力に抗して操作することになり、しかも、このリターンスプリング18’の付勢力は、可動操作部20が増し引き位置Cに近付くほど大きくなって所要操作力が増大する。
従って、前述の操作スイッチ10の場合と同様に、操作力増大機構としてのリターンスプリング18’により、可動操作部20を増し引き位置C側に操作するほど、移動操作に要する操作力が大きくなるので、操作スイッチ10’を目視で確認しなくても、所要操作力の増減でスイッチの操作状況を把握できる。
【0060】
また、この変形例に係る操作スイッチ10’では、図9から良く分かるように、上記スイッチケース11のケース正面部12’の裏面側において、操作位置C(増し引き位置)に対応する箇所には、可動ベース21’の上部が嵌まり込む嵌合凹部が設けられておらず、また、操作位置A(リリース位置)に対応する嵌合凹部12a’と操作位置(駐車位置)に対応する嵌合凹部12b’との間、及び該嵌合凹部12b’から操作位置C側のケース端末にまで至る各段部は、ケース底面部13の裏面に対して所定の角度をもって傾斜する傾斜面を成している。更に、可動操作部20の可動ベース21’の上面も、上記傾斜面と組み合わされるように傾斜状に形成されている。
【0061】
そして、この変形例の場合には、上記リターンスプリング18’の付勢力の方が、可動操作部20とケース正面部12’の裏面およびケース底面部13の裏面との間に働く摩擦力の図9における水平方向成分(つまり、上記リターンスプリング18’の付勢力に対向する方向の成分)よりも大きくなるように設定されている。
【0062】
従って、乗員がスイッチ操作中に可動操作部20の操作位置A,B,C間の中間位置で手を離した場合、当該可動操作部20は、リターンスプリング18’の付勢力によって、その中間位置よりもリターン位置Aに近い側の操作位置B又はリターン位置Aまで戻ることになる。
【0063】
特に、操作位置C(増し引き位置)に対応する箇所には、可動ベース21’の上部が嵌まり込む嵌合凹部が設けられておらず、この場合には、各操作位置Cへのスイッチ操作時間に応じて、モータ回転量を(従って、ブレーキ引き力)を調節可能である。つまり、基本的には可動操作部20を操作位置Cに位置させている間だけ、モータを駆動してブレーキ引き力を増大させるように、所謂モーメンタリな調節が可能である。そして、スイッチ操作を止めると、可動操作部20は操作開始前の位置に復帰する。
【0064】
尚、この場合についても、可動操作部20の操作ノブ22がインストルメントパネル2の表面から車室内に突き出す突出量は、リリース位置AではHa’,駐車位置BではHb’,増し引き位置CではHc’と、この順で小さくなり(Ha’>Hb’>Hc’)、可動操作部20の操作位置A,B,Cに応じて操作ノブ22の突出量が変更されるようになっている。
【0065】
次に、他の実施形態に係る操作スイッチについて説明する。この操作スイッチは、今までに述べた操作スイッチ10及び10’とはタイプが全く異なるものである。
図10は、本発明の他の実施形態に係る操作スイッチ30を概略的に示す斜視図である。この図に示すように、この他の実施形態に係る操作スイッチ30は、全体の外形形状が中空円筒状に形成されたスイッチケース31内に、乗員のスイッチ操作に応じて動作する可動操作部36を配設して構成されている。
【0066】
上記可動操作部36は、スイッチケース31の正面部32に形成された穴部32hを挿通する操作ロッド38と、該操作ロッド38の先端に一体的に固着された可動ディスク39と、操作ロッド38を介して上記可動ディスク39を操作する操作ハンドル37とを主要部として構成されている。上記可動ディスク39は、スイッチケース31の内周面に対し軸線方向及び周方向について摺動可能にスイッチケース31内に収納されている。
【0067】
上記スイッチケース31には、その正面部32の裏面側及び底面部33の裏面側ならびに両者間に設定された所定位置のスイッチケース内周面に、接点電極(固定接点)がそれぞれ設けられている。一方、上記可動ディスク39の上面および下面ならびに外周面にも、接点電極(可動接点)がそれぞれ設けられている。
上記操作スイッチ30を操作する際には、図11に示すように、操作ハンドル37を周方向に所定量回動させ、また、スイッチケース31の軸線に沿って押し操作/引き操作し、可動ディスク39をスイッチケース31の内面に沿って移動させることにより、スイッチ操作が行われる。
【0068】
このスイッチ操作によって可動ディスク39を、その下面の可動接点がスイッチケース底面部33の裏面側の固定接点と接触・導通する操作位置A、外周面の可動接点がスイッチケース内周面の固定接点と接触・導通する操作位置B、可動ディスク上面の可動接点がスイッチケース正面部32の裏面側の固定接点と接触・導通する操作位置Cの何れかに位置させることにより、当該位置A,B,Cに対応した操作信号がブレーキ制御手段に対して発信されるようになっている。
【0069】
上記図10に示した実施形態では、可動ディスク39を操作位置A,B,Cにそれぞれ位置するように操作ハンドル37を操作した際に、ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードをそれぞれリリースモード,駐車モード,増し引きモードとする操作信号が発信されるようになっている。
すなわち、上記操作位置A,B,Cが、可動操作部36の操作位置として、ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードをそれぞれリリースモード,駐車モード,増し引きモードとするリリース位置,駐車位置,増し引き位置に相当している。
【0070】
上記スイッチケース31の正面部32の裏面と可動ディスク39の上面との間には、可動ディスク39をスイッチケース31の底面部33側に付勢するコイルバネ34(リターンスプリング)が装着されている。
従って、この場合にも、前述の実施形態およびその変形例の場合と同じく、可動ディスク39を増し引き位置Cに近付けるほど操作力増大機構(リターンスプリング34)により操作力が大きくなるので、操作スイッチ30を目視で確認しなくても操作力の増減でスイッチの操作状況を把握できる。
【0071】
また、上記操作スイッチ30をインストルメントパネル2に取り付ける際には、スイッチケース31のケース正面部32がインストルメントパネル2の表面と実質的に面一となるように取り付けられる。つまり、操作スイッチ30の操作ハンドル37は、インストルメントパネル2の表面から車室内に突出することになる。
この突出量は、可動操作部36の操作位置A,B,Cに応じて変化するので、操作スイッチ30を目視で確認しなくても可動操作部36の操作位置を把握できるのである。
【0072】
更に、スイッチケース31の内周面には、可動操作部36の操作位置A,B,Cにそれぞれ対応する可動ディスク39の操作位置の近傍に、該可動ディスク39を移動させる際にある程度の抵抗力を及ぼすように、ごく低い凸部31a,31b,31c(クリック凸部)が形成されている。
従って、乗員がスイッチ操作を行うとき、可動ディスク39が上記リリース位置A,駐車位置B,増し引き位置Cの何れかに操作される際には、可動ディスク39の側面部およびその角部が、上記クリック凸部31a,31b,31cの何れかに嵌まり込むことにより、乗員に対し節度感を与えることができる。
【0073】
また、具体的には図示しなかったが、より好ましくは、スイッチケース31の内周面には、可動操作部36の操作位置B,Cにそれぞれ対応する可動ディスク39の操作位置の近傍に、該可動ディスク39の(従って、操作ハンドル37の)回動方向における所定位置において可動ディスク39を係止(ラッチ)する例えば突起部(ラッチ用突起部)が形成されている。
【0074】
そして、図11に示すように、操作ハンドル37を所定位置に回動操作することにより、可動ディスク39を操作位置B,Cで係止し、また、この係止状態(ラッチ状態)を解除できるようになっている。
このように、ラッチ用突起部を設けたことにより、操作ハンドル37を適宜回動操作しながら操作スイッチ30を操作することにより、可動ディスク39を駐車位置B,増し引き位置Cで係止(ラッチ)及び解除可能なラッチ・タイプの操作スイッチとして使用することができる。
【0075】
一方、ラッチ用突起部が設けられていない場合、或いは設けられていても操作ハンドル37を敢えて回動操作しない場合には、可動ディスク39は操作位置B,Cでラッチされることはなく、モータの安全装置が働かない限り、基本的には各操作位置B,Cにおけるスイッチ操作時間(可動ディスク39が位置する時間)に対応した時間だけモーメンタリにモータへの通電が行われる。
【0076】
つまり、このモーメンタリ・タイプの場合には、各操作位置B,Cへのスイッチ操作時間に応じてモータ回転量を(従ってブレーキ力)を調節可能であり、スイッチ操作を止めると操作開始前の位置に復帰する。
この場合、操作位置C(増し引き位置)についてのみ、上記ラッチ用突起部を設けないようにして、前述の図8及び図9で示した操作スイッチ10’の場合と同様に、操作位置Cでの増し引き操作のみについて、スイッチ操作時間(可動ディスク39が位置する時間)に対応した時間だけモーメンタリにモータへの通電が行われるようにしても良い。
【0077】
以上のように、このようなモーメンタリ・タイプの操作スイッチの場合には、乗員の操作スイッチの操作に応じて無段階的に車輪制動力を設定することができる制動力設定機構を備えており、また、ブレーキ制御モードとして、無段階的に車輪制動力を設定し得る制動力設定モードを備えていることになる。この制動力設定モードは、少なくとも増し引きモードに含まれている。
【0078】
このように、乗員の操作スイッチの操作に応じて車輪制動力を設定し得る制動力設定モードが増し引きモードに含まれることにより、少なくとも増し引き時には、乗員のスイッチ操作の仕方(当該操作位置でのスイッチ操作時間)により、車両が置かれている状況に応じた、無段階的できめ細かな車輪制動力の設定を行うことができる。
【0079】
尚、上記のような制動力設定モードは、乗員のスイッチ操作により制動力設定機構が作動状態にあるときにのみ働く。つまり、操作スイッチの操作位置が例えば増し引き位置Cにあり、乗員のスイッチ操作によりこの操作位置Cが維持されている間だけ、制動力設定モードで車輪制動力が設定される。従って、増し引き時には乗員の意思に応じたきめ細かな車輪制動力の設定を行うことができる。
【0080】
図12は、駐車ブレーキ機構のモータの回転量(回転ストローク)とモータ引き力との関係を例示するグラフである。操作位置A,B,C(リリース位置,駐車位置,増し引き位置)の順に、モータ回転量が大きくなり、モータによる引き力も大きくなっている。また、前述の操作スイッチ10’における増し引き操作の場合、スイッチ操作時間に応じてBとCの範囲で引き力を調整できる。
【0081】
次に、本発明の実施の形態に係る車両のパーキングブレーキ装置における駐車ブレーキ機構の作動を制御するブレーキ制御システムについて説明する。図13は、該ブレーキ制御システムにおける制御回路を概略的に示す回路構成図である。
この図に示すように、本ブレーキ制御システムの中心となるブレーキ制御装置50は、マイクロコンピュータを主要部として構成されたコントロールユニット51と、操作スイッチ61からの操作信号を信号変換してコントロールユニット51へ入力する入力インタフェイス(I/F)回路52と、該コントロールユニット51からの制御信号を信号変換してブレーキ機構の駆動モータや各種表示装置等に出力する出力インタフェイス(I/F)回路53とを備えている。
【0082】
また、上記コントロールユニット51には、該ユニット51の異常を検出するために、その制御状態を監視するマイコン監視回路54が付設されている。このようなマイコン監視回路54としては、所謂、ウォッチドック回路を適用することができる。
尚、本ブレーキ制御装置50には、車載のバッテリ60からの電圧(通常、12ボルト)を所定の電圧(例えば、5ボルト)に降下させるように調整する電圧調整回路55が備えられている。
【0083】
操作スイッチ61には、前述の操作スイッチ10,10’又は30の何れもが適用可能であり、各操作位置(リリース位置A,駐車位置B,増し引き位置C)に応じたスイッチ接点61A,61B,61Cが備えられている。そして、乗員のスイッチ操作により、当該操作位置A,B,Cに対応したスイッチ接点61A,61B,61Cが閉成(ON)し、その操作信号が入力インタフェイス52を介してコントロールユニット51に入力され、乗員のスイッチ操作に応じたブレーキ制御モードが選択される。
【0084】
上記コントロールユニット51の出力インタフェイス53には、第1,第2の2個のリレー63,64が接続され、これらリレー63,64には駐車ブレーキ機構を作用させる駆動モータ65が接続されている。
上記リレー63,64には、ブレーキ機構の作動状況を検知する作動状況検知手段として、駆動モータ65への通電状態を検知するためのモータ作動電流検知センサ66が付設されており、該センサ66の検知結果は電流検出インタフェイス回路67を介してコントロールユニット51に入力されるようになっている。このモータ作動電流検知センサ66により、駆動モータ65の作動状況、つまり駐車ブレーキ機構の作動状況が検知される。
【0085】
また、上記駆動モータ65には、該モータ65の例えば回転量(若しくは回転位置)又は出力トルク等の出力に関するパラメータが、当該モータ65の駆動を停止させるべき値に達したか否かを判定するために、かかる出力に関するパラメータ値を検知する停止判定センサ68が設けられており、該センサ68の検出結果はモータ停止判定インタフェイス回路69を介してコントロールユニット51に入力されるようになっている。
【0086】
上記停止判定センサ68は、駐車ブレーキ機構の車輪制動力検出手段を構成するもので、例えば、モータトルクセンサ或いはモータ内位置センサなどの、公知のセンサを用いることができる。
この停止判定センサ68からの検出信号を受けたコントロールユニット51は、各制御モード毎に予め設定された閾値に基づいて、後述するような駆動モータ65の停止判定を行う。
【0087】
例えば、増し引きモードで駆動モータ65を作動させている場合の停止判定に際しては、モータ65の駐車側への回転動作(増し引き動作を含むプル動作)における突き当て位置までモータ65が回転し、該モータ65に過度な負荷が掛かって過熱する等の不具合が生じない範囲での限界値が、その閾値として選ばれる。
【0088】
尚、このように停止判定センサ68からの検出信号に基づいてコントロールユニット51が停止判定を行う代わりに、駆動モータには、通常の駐車位置への動作(ノーマル・プル:Nomal・Pull)を検出するとOFFする内蔵スイッチと、モータの駐車動作(プル動作)における突き当て位置まで作動するとOFFする内蔵スイッチと、モータのリリース動作における突き当て位置まで作動するとOFFする内蔵スイッチの3つの内蔵スイッチを設けておき、これら内蔵スイッチの作用によってモータ停止を行わせることもできる。
【0089】
駆動モータ65をプル操作側(駐車位置または増し引き位置への操作側)に作動させる際には、バッテリ60(+B)からの電力供給により第1リレー63が作動し、逆に、駆動モータ65をリリース操作側に作動させる際には、イグニッション・スイッチ(+IG)を通じての電力供給により第2リレー64が作動するように設定されている。
【0090】
このように設定することにより、通常、駐車状態で行われるプル操作に対しては、バッテリ60から直接に電力供給を行ってモータ65を作動させる一方、子供などによる不用意な操作の防止が求められるリリース操作については、イグニッション・スイッチのONを要件として電力供給が行われることになり、リリース操作についての安全性をより高めることができる。
【0091】
また、上記コントロールユニット51の出力インタフェイス53には、通常ブレーキ及びパーキングブレーキの異常をそれぞれ報知するワーニングランプ71及び72が接続され、更に、パーキングブレーキの操作状況および作動状態を表示するパーキングブレーキ作動ランプ73,74が接続されている。
【0092】
このうち、パーキングブレーキ作動ランプ73(プル作動ランプ)は、プル操作およびプル作動状態を示すもので、例えば、プル操作中には点滅し、プル状態になれば点灯する。一方、パーキングブレーキ作動ランプ74(リリース作動ランプ)は、リリース操作およびリリース状態を示すもので、例えば、リリース操作中には点滅し、リリース状態になれば点灯するものである。これらパーキングブレーキ作動ランプ73,74は、前述のモータ作動電流検知センサ66の検出結果に基づいて、その表示状態が定められるようになっている。
【0093】
以上のように構成されたブレーキ制御システムによるパーキングブレーキ制御について、添付フローチャートを参照しながら説明する。
まず、前述のモーメンタリ・タイプの操作スイッチが用いられている場合について、図14〜図16のフローチャートを参照しながら説明する。尚、このモーメンタリ・タイプの操作スイッチでは、増し引き操作時は、操作位置での操作時間に応じて、つまり、乗員のスイッチ操作に応じて、基本的にはその操作時間だけモータ65が駆動され、乗員の意思に応じて車輪に対する制動力が調節できる。
【0094】
制御が開始(スタート)されると、まず、ステップ#1で初期設定が行われる。すなわち、プル(Pull)表示フラグ及び/又は増し引き操作フラグがセットされている場合には、これをリセットする。
上記プル表示フラグは、プル作動ランプ73を表示作動させる際にセットされるフラグであり、駐車位置へのスイッチ操作および増し引き位置へのスイッチ操作が行われる際には、このプル表示プラグがセットされる。また、上記増し引き操作フラグは、増し引き位置へのスイッチ操作が行われる際にセットされるフラグである。
【0095】
次に、ステップ#2では、増し引き操作フラグがセットされているか否かが判定される。このように、増し引き操作フラグのセット状態を確かめることにより、増し引き操作後に不要なプル操作が行われることが防止できる。
上記ステップ#2での判定結果がNOの場合には、ステップ#3で、プルスイッチ(Pull SW)がONされているか否かが判定される。これがYESの場合には、駆動モータ65がプル作動を行い(ステップ#4)、プル作動ランプ73がプル作動中の表示、つまり、点滅表示を行う(ステップ#5)。そして、ステップ#6で、停止判定センサ68の検出値に基づいてプル停止すべきか否かの判定(Pull停止判定)が行われる。
【0096】
これらステップ#4,#5及び#6の各ステップが繰り返して行われ、ステップ#6の判定結果がYESになると、プル作動ランプ73がプル表示、つまり、点灯表示を行う(ステップ#7)。そして、ステップ#28で、駆動モータ65の作動が停止され、その後、ステップ#2に戻り、それ以降の各ステップを繰り返すようになっている。
【0097】
一方、上記ステップ#2での判定結果がYESの場合(増し引き操作フラグがセット状態の場合)、及び上記ステップ#3での判定結果がNOの場合(プルスイッチがON状態でない場合)には、ステップ#8で、リリース・スイッチ(Release SW)がONされているか否かが判定される。この判定結果がYESの場合には、更に、ステップ#9で、増し引き操作フラグがセット状態であるか否かが判定される。
このステップ#9での判定結果がYESの場合は、当該リリース操作が増し引き後のリリース操作であることを意味しており、この場合には、まず、ステップ#10で、増し引き操作フラグがリセットされる。
【0098】
次に、駆動モータ65がリリース作動を行い(ステップ#11)、ステップ#12で、モータ位置が駐車位置(Pull位置)に達したか否かが判定される。このステップ#11及び#12の各ステップが繰り返して行われ、ステップ#12の判定結果がYESになると、ステップ#13で、モータ65の作動が遅延(Delay)させられる。具体的には、例えばモータ65の作動が実質的に一旦停止され、車輪制動力の減少が実質的には一時的に停止させられる。
【0099】
このように、増し引きモードからリリースモードへの移行時に車輪制動力の減少を一旦停止させる停止機構が設けられている。かかる停止機構を備えたことにより、増し引きモードで車輪に制動力が加えられるような車両の駐停車状態(例えば、急な坂道での駐停車など)において、車輪制動力が急に解除されることによる不具合(例えば、車両のズリ落ちなど)発生を有効に防止できるのである。
【0100】
その後、ステップ#14で、再び駆動モータ65がリリース作動を行い、リリース作動ランプ74がリリース作動中の表示、つまり、点滅表示を行う(ステップ#15)。そして、ステップ#16で、停止判定センサ68の検出値に基づいてリリース停止すべきか否かの判定(Release停止判定)が行われる。
これらステップ#14,#15及び#16の各ステップが繰り返して行われ、ステップ#16の判定結果がYESになると、リリース作動ランプ74がリリース表示、つまり、点灯表示を行う(ステップ#17)。そして、ステップ#28で、駆動モータ65の作動が停止されるようになっている。
【0101】
一方、上記ステップ#9での判定結果がNOの場合(増し引き操作フラグがセット状態でない場合)には、増し引き操作後のリリース操作ではなく、通常のリリース操作であるので、ステップ#10〜#13の各ステップをスキップして、ステップ#14以降の各ステップを実行するようになっている。
【0102】
ステップ#8での判定結果がNOの場合(リリース・スイッチがON状態でない場合)には、ステップ#18で、車速が一定以上であるか否かが判定される。この判定値としては、通常ブレーキに異常が生じてパーキングブレーキを(例えば、増し引きモードで)緊急使用する場合に、車輪がロックしてスリップが生じる限界の車速(例えば、数km/h程度の車速)が選ばれている。
【0103】
このステップ#18での判定結果がNOの場合、つまり、車速が上記限界車速未満の場合には、ステップ#19で、増し引きスイッチ(SW)がON状態であるか否かが判定され、これがYESの場合には、プル作動ランプ73の表示フラグ及び増し引き操作フラグが順次セットされた(ステップ#20及び#21)後、駆動モータ65がプル作動を行い(ステップ#22)、プル作動ランプ73がプル作動中の表示、つまり、点滅表示を行う(ステップ#23)。
【0104】
そして、ステップ#24で、停止判定センサ68の検出値に基づいてブレーキ引き力が一定以上でプル停止すべきか否かの判定が行われる。
尚、この場合の判定閾値としては、前述のように、駆動モータ65に過度な負荷が掛かって過熱する等の不具合が生じない範囲での限界値が選ばれている。
【0105】
このように、ブレーキ引き力が一定値以上になると(つまり、車輪制動力が一定値以上になると)、駆動モータ65が停止されて車輪制動力の増大が規制されるので、過大な車輪制動力の発生およびモータ65の過負荷を有効に防止することができる。
【0106】
これらステップ#18〜#24の各ステップが繰り返して行われ、ステップ#24の判定結果がYESになると、プル作動ランプ73がプル表示、つまり、点灯表示を行う(ステップ#27)。そして、ステップ#28で、駆動モータ65の作動が停止されるようになっている。
上記ステップ#19での判定結果がNOの場合(増し引きSWがON状態でない場合)には、ステップ#25で、プル表示フラグがセット状態であるか否かが判定され、これがYESの場合には、このプル表示フラグがリセット(ステップ#26)された後、ステップ#27が実行される。
【0107】
一方、上記ステップ#18での判定結果がYESの場合、つまり、車速が上記限界車速以上である場合、及びステップ#25での判定結果がNOの場合(プル表示フラグがセット状態でない場合)には、パーキングブレーキの増し引きは行われることなく、ステップ#28でモータが停止されるようになっている。
【0108】
このように、車両の車速が所定値以上である場合には、制御モードが増し引きモードとなることが禁止されるので、車両走行中にパーキングブレーキを作動させた場合に、車速の割に過大な制動力が車輪に加えられて車輪がロック状態になることを有効に回避でき、パーキングブレーキを使用する際の安全性をより高めることができるのである。
【0109】
また、パーキングブレーキの作動状況検知手段としてのモータ作動電流検知センサ66を備えると共に、該センサ66の検知結果に基づいて当該パーキングブレーキの作動状況を表示する表示手段(プル作動ランプ73及びリリース作動ランプ74)を備えたことにより、乗員はパーキングブレーキの作動状況を表示により確認することができ、利便性がより高められている。
【0110】
次に、前述のラッチ・タイプの操作スイッチが用いられている場合について、図17及び図18のフローチャートを参照しながら説明する。このラッチ・タイプの操作スイッチでは、乗員がスイッチ操作を止めて手を離しても、操作スイッチの可動操作部は当該操作位置に保持される。
【0111】
制御が開始(スタート)されると、まず、ステップ#31でプルスイッチ(Pull SW)がONされているか否かが判定される。これがYESの場合には、駆動モータ65がプル作動を行い(ステップ#32)、プル作動ランプ73がプル作動中の表示、つまり、点滅表示を行う(ステップ#33)。そして、ステップ#34で、停止判定センサ68の検出値に基づいてプル停止すべきか否かの判定(Pull停止判定)が行われる。
【0112】
これらステップ#32,#33及び#34の各ステップが繰り返して行われ、ステップ#34の判定結果がYESになると、プル作動ランプ73がプル表示、つまり、点灯表示を行う(ステップ#35)。そして、ステップ#47で、駆動モータ65の作動が停止され、その後、ステップ#31に戻り、それ以降の各ステップを繰り返すようになっている。
【0113】
一方、ステップ#31での判定結果がNOの場合(プルスイッチがON状態で無い場合)には、ステップ#36で、リリース・スイッチ(Release SW)がONされているか否かが判定され、これがYESの場合には、ステップ#37で、駆動モータ65がリリース作動を行い、リリース作動ランプ74がリリース作動中の表示、つまり、点滅表示を行う(ステップ#38)。そして、ステップ#39で、停止判定センサ68の検出値に基づいてリリース停止すべきか否かの判定(Release停止判定)が行われる。
【0114】
これらステップ#37,#38及び#39の各ステップが繰り返して行われ、ステップ#39の判定結果がYESになると、リリース作動ランプ74がリリース表示、つまり、点灯表示を行う(ステップ#40)。そして、ステップ#47で、駆動モータ65の作動が停止されるようになっている。
【0115】
上記ステップ#36での判定結果がNOの場合(リリース・スイッチがON状態でない場合)には、ステップ#41で、車速が一定以上であるか否かが判定される。この判定値としては、モーメンタリ・タイプの操作スイッチを用いる場合と同じく、通常ブレーキに異常が生じてパーキングブレーキを(例えば、増し引きモードで)緊急使用する場合に、車輪がロックしてスリップが生じる限界の車速(例えば、数km/h程度の車速)が選ばれる。
【0116】
このステップ#41での判定結果がNOの場合、つまり、車速が上記限界車速未満の場合には、ステップ#42で、増し引きスイッチ(SW)がON状態であるか否かが判定され、これがYESの場合には、駆動モータ65がプル作動を行い(ステップ#43)、プル作動ランプ73がプル作動中の表示、つまり、点滅表示を行う(ステップ#44)。
【0117】
そして、ステップ#45で、停止判定センサ68の検出値に基づいてブレーキ引き力が一定以上でプル停止すべきか否かの判定が行われる。
尚、この場合の判定閾値としては、前述のように、駆動モータ65に過度な負荷が掛かって過熱する等の不具合が生じない範囲での限界値が選ばれており、ブレーキ引き力が一定値以上になると駆動モータ65が停止されることにより、過大な車輪制動力の発生およびモータ65の過負荷が防止される。
【0118】
これらステップ#43〜#45の各ステップが繰り返して行われ、ステップ#45の判定結果がYESになると、プル作動ランプ73がプル表示、つまり、点灯表示を行う(ステップ#46)。そして、ステップ#47で、駆動モータ65の作動が停止されるようになっている。
【0119】
一方、上記ステップ#41での判定結果がYESの場合、つまり、車速が上記限界車速以上である場合、及び上記ステップ#42での判定結果がNOの場合(増し引きSWがON状態でない場合)には、パーキングブレーキの増し引きは行われることなく、ステップ#47でモータが停止されるようになっている。
【0120】
このラッチ・タイプの操作スイッチを用いた場合についても、前述のモーメンタリ・タイプの操作スイッチを用いた場合と同様に、車両の車速が所定値以上である場合には、制御モードが増し引きモードとなることが禁止され、車両走行中にパーキングブレーキを作動させた際に車輪がロック状態になることを有効に回避できる。また、パーキングブレーキの作動状況検知手段としてのモータ作動電流検知センサ66の検知結果に基づいて当該パーキングブレーキの作動状況を表示する表示手段(プル作動ランプ73及びリリース作動ランプ74)を備えたことにより、乗員はパーキングブレーキの作動状況を表示により確認でき、利便性が向上する。
【0121】
尚、本発明は、以上の実施態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良あるいは設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【0122】
【発明の効果】
本願の第1の発明に係る車両のパーキングブレーキ装置によれば、ブレーキ制御モードとしてリリースモードと駐車モードと増し引きモードとを備えるとともに、乗員の操作に応じてブレーキ制御モードを選択し得る操作スイッチが設けられていることにより、車輪に制動力を加えるON状態と車輪への制動力を解除したOFF状態の2段階の作動状態しか設定されていなかった従来のように、ON状態になりさえすれば、比較的小さな車輪制動力で済む場合でも非常に大きな(過大な)制動力が車輪に加えられるようなことはなくなる。
すなわち、乗員のスイッチ操作により車両の駐停車状態に応じた車輪制動力を発生させることができ、過大な車輪制動力が発生することを抑制してブレーキ機構の可動部分の耐久性を向上させることもできる。
【0123】
また、本願の第2の発明によれば、基本的には上記第1の発明と同様の効果を奏することができる。特に、乗員の操作スイッチの操作に応じて車輪制動力を設定し得る制動力設定モードが増し引きモードに含まれることにより、増し引き時には車両の状況に応じたきめ細かな車輪制動力の設定を行うことができる。
【0124】
更に、本願の第3の発明によれば、基本的には上記第2の発明と同様の効果を奏することができる。特に、乗員のスイッチ操作により上記制動力設定機構が作動状態にあるときにのみ制動力設定モードで車輪制動力が設定されるので、増し引き時には乗員の意思に応じたきめ細かな車輪制動力の設定を行うことができる。
【0125】
また更に、本願の第4の発明によれば、基本的には上記第2又は第3の発明と同様の効果を奏することができる。特に、制動力検出手段の検出値が所定値を越えると(つまり、車輪制動力が所定値を越えると)規制手段によって車輪制動力の増大が規制されるので、過大な車輪制動力の発生およびアクチュエータの過負荷を規制することができる。
【0126】
また更に、本願の第5の発明によれば、基本的には上記第1〜第4の発明の何れか一と同様の効果を奏することができる。特に、増し引きモードからリリースモードへの移行時に車輪制動力の減少を一旦停止させる停止手段を備えたことにより、増し引きモードで車輪に制動力が加えられるような車両の駐停車状態(例えば、急な坂道での駐停車など)において、車輪制動力が急に解除されることによる不具合(例えば、車両のズリ落ちなど)発生を有効に防止できる。
【0127】
また更に、本願の第6の発明によれば、基本的には上記第1〜第5の発明の何れか一と同様の効果を奏することができる。特に、ブレーキ手段の作動状況検知手段の検知結果に基づいて当該ブレーキ手段の作動状況を表示する表示手段を備えたことにより、乗員はブレーキ手段の作動状況を表示により確認することができ、利便性が向上する。
【0128】
また更に、本願の第7の発明によれば、基本的には上記第1〜第6の発明の何れか一と同様の効果を奏することができる。特に、車両の車速が所定値以上である場合には、禁止手段により制御モードが増し引きモードとなることが禁止されるので、車両走行中にブレーキ手段を作動させた場合に、車速の割に過大な制動力が車輪に加えられて車輪がロック状態になることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るパーキングブレーキ装置を備えた自動車の車室前部の平面説明図である。
【図2】上記自動車の車室前部の正面説明図である。
【図3】上記パーキングブレーキ装置の操作スイッチの全体構成を概略的に示す斜視図である。
【図4】上記操作スイッチの可動操作部の分解斜視図である。
【図5】上記可動操作部の電極エレメントの斜視図である。
【図6】上記操作スイッチの正面説明図である。
【図7】図6のY7−Y7線に沿った断面説明図である。
【図8】上記実施の形態の変形例に係る操作スイッチの正面説明図である。
【図9】図8のY9−Y9線に沿った断面説明図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る操作スイッチを概略的に示す斜視図である。
【図11】上記他の実施形態に係る操作スイッチの平面説明図である。
【図12】駐車ブレーキ機構のモータの回転量とモータ引き力との関係を例示するグラフである。
【図13】本発明の実施の形態に係る車両のパーキングブレーキ装置におけるブレーキ制御システムの制御回路を概略的に示す回路構成図である。
【図14】上記ブレーキ制御システムにおいてモーメンタリ・タイプの操作スイッチを用いた場合のパーキングブレーキ制御を説明するフローチャートの一部である。
【図15】上記モーメンタリ・タイプの操作スイッチを用いた場合のパーキングブレーキ制御を説明するフローチャートの一部である。
【図16】上記モーメンタリ・タイプの操作スイッチを用いた場合のパーキングブレーキ制御を説明するフローチャートの一部である。
【図17】上記ブレーキ制御システムにおいてラッチ・タイプの操作スイッチを用いた場合のパーキングブレーキ制御を説明するフローチャートの一部である。
【図18】上記ラッチ・タイプの操作スイッチを用いた場合のパーキングブレーキ制御を説明するフローチャートの一部である。
【符号の説明】
10,10’,30,61…操作スイッチ
50…ブレーキ制御装置
51…コントロールユニット
65…駆動モータ
66…モータ作動電流検知センサ
68…停止判定センサ
73…プル作動ランプ
74…リリース作動ランプ
A…リリース位置
B…駐車位置
C…増し引き位置
Claims (7)
- アクチュエータの作動によって車輪に対し制動力を付与するブレーキ手段と、該ブレーキ手段の作動を制御するブレーキ制御手段とを備えた車両のパーキングブレーキ装置において、
上記ブレーキ制御手段は、ブレーキ制御モードとして、上記ブレーキ手段に車輪制動力を発生させないリリースモードと、上記ブレーキ手段に所定の車輪制動力を発生させる駐車モードと、該駐車モード時よりも大きい車輪制動力を上記ブレーキ手段に発生させる増し引きモードとを有しており、
上記ブレーキ制御手段に対して乗員の操作に応じた操作信号を発信し、該ブレーキ制御手段のブレーキ制御モードを選択する操作スイッチが設けられている、ことを特徴とする車両のパーキングブレーキ装置。 - 上記増し引きモードは、乗員の上記操作スイッチの操作に応じて車輪制動力を設定し得る制動力設定モードを含み、上記操作スイッチは、乗員の操作に応じて車輪制動力を設定する制動力設定機構を備えていることを特徴とする請求項1記載の車両のパーキングブレーキ装置。
- 上記ブレーキ制御手段は、乗員の上記操作スイッチの操作により上記制動力設定機構が作動状態にあるときにのみ、上記制動力設定モードで車輪制動力を設定することを特徴とする請求項2記載の車両のパーキングブレーキ装置。
- 上記ブレーキ手段の車輪制動力を検出する制動力検出手段と、上記制動力設定モードにおいて上記制動力検出手段の検出値が所定値を越えると車輪制動力の増大を規制する規制手段とを、更に備えたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両のパーキングブレーキ装置。
- 上記制御モードが増し引きモードからリリースモードに移行する際に、車輪制動力の減少を一旦停止させる停止手段を更に備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一に記載の車両のパーキングブレーキ装置。
- 上記ブレーキ手段の作動状況を検知する作動状況検知手段と、該作動状況検知手段の検知結果に基づいて上記ブレーキ手段の作動状況を表示する表示手段とを、更に備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一に記載の車両のパーキングブレーキ装置。
- 上記車両の車速が所定値以上である場合には上記制御モードが増し引きモードとなることを禁止する増し引き禁止手段を更に備えたことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一に記載の車両のパーキングブレーキ装置。
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2002
- 2002-07-23 JP JP2002213957A patent/JP2004051039A/ja active Pending
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