JP2004049777A - ポリ塩化ビフェニルの分解方法及びシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】仕上処理工程に送られるPCB量を減少させ、経済的に不利な仕上処理の負担が小さいポリ塩化ビフェニルの分解方法。
【解決手段】ポリ塩化ビフェニル1と極性有機溶媒2とを含む溶液に紫外線を照射する紫外線照射工程12と、該紫外線照射工程を経た溶液を蒸留することにより、極性有機溶媒を主成分とする溶液5と、微量のポリ塩化ビフェニルを含有するか又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液6aと、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液6bとに各々分離する蒸留工程13と、該微量のポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液中のポリ塩化ビフェニルを分解する仕上処理工程14とを含んでなり、前記濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液6bが紫外線照射工程12へ返送されることを特徴とするポリ塩化ビフェニルの分解方法。
【選択図】 図1
【解決手段】ポリ塩化ビフェニル1と極性有機溶媒2とを含む溶液に紫外線を照射する紫外線照射工程12と、該紫外線照射工程を経た溶液を蒸留することにより、極性有機溶媒を主成分とする溶液5と、微量のポリ塩化ビフェニルを含有するか又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液6aと、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液6bとに各々分離する蒸留工程13と、該微量のポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液中のポリ塩化ビフェニルを分解する仕上処理工程14とを含んでなり、前記濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液6bが紫外線照射工程12へ返送されることを特徴とするポリ塩化ビフェニルの分解方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ塩化ビフェニルを分解する方法及びシステムに関する。特には、本発明は、主として紫外線照射によりポリ塩化ビフェニルを分解し、無害化する効率的かつ経済的な方法及びシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリ塩化ビフェニル(Polychlorinated Biphenyl)は、PCBの略称で知られ、ビフェニルの2個以上の水素を塩素で置換した化合物の総称をいう。かかるPCB類は含有塩素量によってその形態が異なり、金属に対して安定で、絶縁性、不燃性、高脂溶性、可塑性などに大変優れているため、電気製品、熱媒体、感圧紙等の工業製品に広く使用され、プラスチック製品に含有された状態で、あるいは1wt%以上のPCBを含む高濃度PCBまたは1wt%以下のPCBを含む低濃度PCB(廃油)として処理されずに保管されている。しかし、PCBは化学的に非常に安定で長期にわたって自然分解されることなく残留するため、人体への影響のみならず地球環境に深刻な影響をもたらすことが問題となっている。
【0003】
従って、このようなPCB類を人工的に分解処理する必要がある。かかるPCB類の分解方法としては、従来から、焼却方法以外に、脱塩素化分解法、水熱酸化分解法、水素供与物質による還元熱・化学分解法、紫外線照射法等による光分解法が知られている。これらのうち紫外線照射法は、PCBを極性有機溶媒中に溶かして紫外線を照射することにより脱塩素し、残留するPCBを生物処理または触媒処理等によって無害化するものであり、常温・常圧処理できるために安全性が高いという点で有利性がある。
【0004】
従来から知られている紫外線照射法によるPCBの処理方法を、図4にブロック図を示して説明する。かかる従来から知られているPCBの処理方法によれば、まず、極性有機溶媒2にPCB1を溶解させる工程11と、紫外線を照射する工程12とを経る。次に、この紫外線を照射する工程12から排出された処理液4を蒸留する工程13により、極性有機溶媒主体の溶液5と、PCBを含有するビフェニル溶液6に分離する。ここで得られたビフェニル溶液6は、微生物または触媒により分解する仕上処理工程14により処理され、PCBを分解して無害化する。微生物により無害化されたものは河川等に放流することが可能であり、触媒により分解されたものは油として燃焼処理することが可能である。
【0005】
極性有機溶媒の存在下で紫外線を照射すればPCBは分解されるが、紫外線照射処理の効率とPCB濃度の間には強い相関関係があり、PCB濃度が低いと紫外線照射処理の効率が著しく低下するという問題があった。一方、仕上処理工程である生物処理あるいは触媒処理においては、分解されるPCBの量が多ければ、多くの微生物あるいは触媒量を必要とするため、処理対象物であるPCBの量が少ないことが望ましい。
【0006】
そこで従来は、これらの処理を効率よく行うために、紫外線照射処理と、生物処理あるいは触媒処理からなる仕上処理とを組み合わせていたが、仕上処理工程において処理すべきPCB量が比較的多く、仕上処理工程にかかる経済的な負担が大きいという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の処理方法が有する問題点を解決すべくなされたものであり、仕上処理工程に送られるPCB量を減少させることにより、仕上処理工程の負担を軽減し、処理効率の向上を図り、経済性を上げることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明にかかるポリ塩化ビフェニルの分解方法は、極性有機溶媒にポリ塩化ビフェニルを溶解した溶液に紫外線を照射する紫外線照射工程と、該紫外線照射工程を経た溶液を蒸留することにより、極性有機溶媒を主成分とする溶液と、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液と、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに各々分離する蒸留工程と、該微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液中のポリ塩化ビフェニル及びビフェニルを分解する仕上処理工程とを含んでなり、前記濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液が、紫外線照射工程へ返送されることを特徴とする。
ここで、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液とは、前記蒸留工程において、留出温度130〜140℃、30Torrで充填層12〜15段付きの回分式精密蒸留装置によって蒸留することにより留出分として得られる溶液であって、ポリ塩化ビフェニルの分解生成物であるビフェニルを約95〜98重量%含有する他、若干のクロルベンゼン等を含む溶液(常温で固体)をいう。残存するポリ塩化ビフェニルの濃度は、検出限界(0.3mg/kg)以下程度である。
また、特にポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液とは、既知の方法で化学分析を行った結果、ポリ塩化ビフェニルの含量が検出限界以下である溶液をいい、必ずしもポリ塩化ビフェニルを一切含有しない溶液をいうものではない。
一方、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とは、同様の操作により蒸留装置の底部から得られる溶液であって、ポリ塩化ビフェニルを約5〜20mg/kg含有する他、ポリ塩化ビフェニルの分解生成物であるビフェニル、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム等を含む溶液を言う。
【0009】
前記ポリ塩化ビフェニルの分解方法において、前記蒸留工程が、前記紫外線照射工程を経た溶液を、極性有機溶媒を主成分とする溶液と、ポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに分離する第1の蒸発工程と、該ポリ塩化フェニルを含有するビフェニル溶液を、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液と、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに分離する第2の蒸留工程とを含んでなることが好ましい。
ここで、第1の蒸発工程で得られるポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とは、前記紫外線照射工程を経た溶液から、極性溶媒成分を、80〜90℃、1atmにおいて、蒸発器形式の操作によって分離した後に残った溶液であって、例えばイソプロピルアルコール等の極性溶媒成分、ビフェニル、ポリ塩化ビフェニル、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム等を含む溶液をいう。これがさらに第2の蒸留工程で、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液と、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに分離される。かかる二段階の蒸留工程を含むことにより、極性有機溶媒をより簡易に、かつ精確に分離することができる。
【0010】
上述のポリ塩化ビフェニルの分解方法においては、前記極性有機溶媒がイソプロピルアルコールであることが好ましい。
【0011】
本発明にかかる別のポリ塩化ビフェニルの分解方法は、イソプロピルアルコールにポリ塩化ビフェニルを溶解した溶液に紫外線を照射する紫外線照射工程と、該紫外線照射工程を経た溶液からイソプロピルアルコールとその酸化生成物であるアセトンとを主成分とする溶液を蒸発させることにより、イソプロピルアルコールとその酸化生成物であるアセトンとを主成分とする溶液と、ポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに分離する蒸発工程と、該ポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液を、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液と、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに分離するポリ塩化ビフェニル蒸留工程と、前記蒸発工程で分離されたイソプロピルアルコールとその酸化生成物であるアセトンとを主成分とする溶液を、イソプロピルアルコールとその酸化生成物であるアセトンとに分離する蒸発ガス分離工程と、前記微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液中のポリ塩化ビフェニル及びビフェニルを分解する仕上処理工程とを含んでなり、前記ポリ塩化ビフェニル蒸留工程で得られた濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液が、紫外線照射工程へ返送されることを特徴とする。
このとき、蒸発ガス分離工程で生成するアセトンは、紫外線処理工程においてイソプロピルアルコールが酸化して生成したものである。
ここで、ポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とは、紫外線照射工程を経た溶液から、80〜90℃、1atmにおけるの蒸発器形式の加熱操作を行う蒸発工程によって極性有機溶媒が除かれた溶液である。かかるビフェニル溶液は、紫外線処理工程により生成したポリ塩化ビフェニル由来の物質、特にはビフェニルの他、イソプロピルアルコール、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム等を含む溶液をいう。
【0012】
また、前記ポリ塩化ビフェニルの分解方法において、前記仕上処理工程が、前記微量のポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液中のポリ塩化ビフェニルを微生物により分解する生物処理工程であることが好ましい。さらには、前記微生物が、コマモナス・テストステロニであることが好ましい。コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)TK102は、本出願人によりすでに独立行政法人産業技術総合研究所・特許生物寄託センターに寄託されている(受託番号:FERM,P−14591)。一方、ロドコッカス・オパカス(Rhodococcus opacus)TSP203株も同様に特許生物寄託センターに寄託されている(受託番号:FERM,P−15408)。
【0013】
前記ポリ塩化ビフェニルの分解方法において、前記仕上処理工程が、微量のポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液を触媒と接触させることにより、該ポリ塩化ビフェニルを分解する触媒処理工程であることが好ましい。
【0014】
さらには、本発明は別の側面においては、ポリ塩化ビフェニルの分解システムであって、ポリ塩化ビフェニルと極性有機溶媒とを含む溶液に紫外線を照射する紫外線照射手段と、該紫外線が照射された溶液を、極性有機溶媒を主成分とする溶液と、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液と、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに各々分離する少なくとも1以上の分離手段と、該分離された濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液を前記紫外線照射手段へ返送する返送手段と、該分離された微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液中のポリ塩化ビフェニルまたはビフェニルを分解する仕上処理手段とを含んでなる。
ここで、少なくとも1以上の分離手段とは、具体的には、蒸留手段あるいは蒸発手段またはそれらの両方の手段をいう。特に、蒸留手段とは、充填塔による回分式多段蒸留であり、スチル(釜)、多段充填塔、還流ドラムから構成され、揮発度の差を利用し各成分に分離する操作である。一方、蒸発手段とは、液体に潜熱を与えて蒸気とする操作であり、揮発性物質を除去することをいう。
【0015】
本発明にかかるポリ塩化ビフェニルの分解方法によれば、紫外線処理工程を経てポリ塩化ビフェニル分解物を含む溶液を、蒸留工程により分類し、そのうち濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液のみを再び紫外線処理工程に返送することで、仕上処理工程へ送るポリ塩化ビフェニルの量を低減または皆無にすることが可能となる。本発明にかかる方法及び装置によれば、仕上処理に過度の負担をかけることなく、効率的かつ経済的なポリ塩化ビフェニルの分解が達成される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。以下に挙げる実施の形態は、本発明を限定するものではない。
【0017】
図1に本発明のPCBの分解方法にかかる第一の実施形態を示して説明する。まず、溶解工程11にてPCB1を極性有機溶媒2に溶解する。ここでPCB1が極性溶媒に溶解されてできた溶液を原液3という。次に、紫外線照射工程12で、かかる原液3に紫外線を照射し、含まれるPCB1を分解する。紫外線照射工程12により得られた溶液を紫外線処理液4という。紫外線処理液4は、蒸留工程13において、極性有機溶媒溶液5及びアセトン溶液5bと、微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aと、濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bとに分離される。分離された極性有機溶媒溶液5は、溶解工程に返送され、PCB1の溶解に再利用される。一方、分離された濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bは、紫外線照射工程1に返送され、再び紫外線を照射する処理を受ける。また、分離された微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aは、次工程である仕上処理工程14に送られ、微生物によるPCBの分解あるいは触媒によるPCBの分解を経る。仕上処理工程14において、微生物により分解されたときは放流水7として放流され、触媒により分解されたときは油として燃焼処理される。
【0018】
ここで、処理の対象となるPCBとしては、KC−1000(カネクロール1000)が挙げられる。このKC−1000は、5塩化物のビフェニルを主成分としたKC−500が、溶剤としてのトリクロルベンゼンに溶解したものであり、5塩化物のビフェニルが70wt%、トリクロルベンゼンが30wt%の混合物である。KC−1000は、PCBの使用が禁止される以前に鉄道の新幹線や特急のトランス用熱媒として用いられていたものである。その形態は、2m×3m×1m高さのトランス(容器)の中に液体として存在しており、総重量は3〜4tで、KC−1000のみの重量は700kg程度である。ここで、KC−1000を処理対象物の一例として挙げたが、処理の対象となるPCBは、特定の形態や種類には限定されない。例えば、固体の状態でプラスチック製品等に含有されるPCBについては、溶剤洗浄法や真空加熱法等の方法で抽出された後、本発明の処理に供する。また、本発明の方法においては、PCBは極性有機溶媒に溶解して処理されるため、高粘度の液体であるKC−500にトリクロルベンゼンを混ぜて流動性を改善したKC−1000を用いる場合は、蒸留によりKC−500とトリクロルベンゼンに分離するような前処理をしておくことが分解効率上、必要である。
【0019】
一方、極性有機溶媒としては、イソプロピルアルコール(2−プロピルアルコール、IPAともいう)、メチルアルコール、エチルアルコールあるいはそれらの混合物等を用いることができるが、これらには限定されない。特にPCBの塩素が外れた後、水素の供与性が良好であるために、イソプロピルアルコールを用いることが好ましい。
【0020】
溶解工程11で、PCB1を極性有機溶媒2に溶解するに当たっては、室温で適当な量を混合することで簡単に溶解することができる。溶解後の溶液である原液3の適切なPCB濃度は、PCB及び極性有機溶媒の種類により異なるが、例えば、五塩化物を主成分とするPCBをイソプロピルアルコールに溶解する場合、PCB濃度は100,000mg/L以下、5,000〜20,000mg/Lとなるように調整することが好ましい。かかる溶解工程11は、通常の撹拌機付きのタンクのような装置を用いて行うことができる。
【0021】
本実施形態においては溶解工程11について説明したが、溶解工程11は必ずしも本発明にかかるポリ塩化ビフェニルの分解方法に含まれる必要はない。例えば、所定の濃度になるように別の場所で調製された原液3を処理対象としてもよい。
【0022】
紫外線照射工程12では、原液3に紫外線を照射することにより、原液3に含まれるPCBを分解する。このとき、原液3中のPCBは、濃度が5mg/L以下まで分解され、ビフェニルとなる。紫外線処理液4にはそれらの分解生成物が含まれている。極性有機溶媒2も、分解されたりあるいは酸化されることがありうる。かかる紫外線照射工程12において、原液3に含まれるPCB1の99.9重量%以上、好ましくは約99.99重量%を分解する。
【0023】
紫外線の光源は、波長が254nmの低出力低圧紫外線ランプを使用することが好ましいが、その他にも高出力低圧紫外線ランプや高圧紫外線ランプなども用いることができる。必要とされる紫外線照射エネルギーは、PCB1g当たり通常5〜20Wh、好ましくは10〜15Whであるが、対象とするPCBの種類及び溶媒の種類によって異なり、一定の値に限定されるものではない。
【0024】
このような紫外線処理工程12としては、具体的には、円柱状の容器に1m長さのランプが同心円状に数十本配置されたもので、液は容器の下部から供給されランプに平行に流れ上部から出ていき循環して下部に戻る方式の装置を用いて行うことができる。しかし、本発明の紫外線処理工程12に使用する装置は、一定の形態に限定されるものではない。
【0025】
蒸留工程13は、紫外線処理液4を、極性有機溶媒溶液5と、微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aと、濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bとに分離する。
かかる工程は、留出温度30℃から140℃まで、圧力70Torrから30Torrまで、操作には約30hrを要し、アセトン、イソプロピルアルコール、ビフェニルが蒸気圧の高い順番に留出するような方法で、14段の充填物付きの回分式精密蒸留装置を用いることにより実施することができる。
【0026】
かかる蒸留工程13で得られる極性有機溶媒溶液5はパイプ等の手段により溶解工程11へ返送することができ、溶解工程11でPCB1の溶解に再利用される。蒸留工程13では、溶解工程で用いた極性有機溶媒2のうち約95〜98重量%が極性有機溶媒溶液5として回収される。
【0027】
濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bは、1〜20mg/kg程度のPCBを含有しており、パイプ等の返送手段により紫外線処理工程12に返送することにより再び紫外線照射され、含有するPCB1が分解される。
【0028】
仕上処理工程14では、微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aを分解する。仕上処理工程14としては、生物処理により行う方法と、触媒処理により行う方法とが挙げられる。
【0029】
ここで、生物処理とは、PCBを微生物により炭酸ガス、水及び塩素イオンまで分解することをいう。生物処理工程において1回の処理に供する溶液量は、紫外線照射工程12に供する原液3量の1〜3倍、好ましくは1.3〜2倍である。このとき、微生物の量は、処理溶液の2〜3重量%であることが好ましい。
【0030】
微生物により処理するための条件は、約20〜40℃、好ましくは25〜35℃に温度を制御し、pHは6〜9とし、溶存酸素濃度は約0.1ppm以上、好ましくは1ppm以上となるよう空気を吹き込み、攪拌した状態で約48〜60時間処理することが好ましい。また、かかる処理は、密閉式で撹拌機付きの培養装置を用いて行うことができる。このような生物処理により仕上処理を行う利点は、常温・常圧の安全な操作であることや有害な二次生成物を生じないことである。
【0031】
触媒処理とは、触媒により、PCBをモノクロルベンゼンまたはビフェニルにまで分解し、PCB濃度が0.0012ppmとなる程度にまで処理することをいう。触媒としては、パラジウム/カーボン系触媒、白金系触媒等を使用し、含有されるPCBに対し重量比率で5〜20倍量の触媒により、約50℃〜75℃の温度で、30分〜2時間処理して分解することができる。また、かかる処理は、触媒充填反応器などの装置を用いて行うことができる。触媒処理により仕上処理を行う利点としては、生物を用いる場合のような培養操作が不要であることや、生物による処理以上に、広い濃度範囲のPCBを分解処理することが可能であることが挙げられる。
【0032】
仕上処理工程では、上述のいずれかの方法により、放流水として河川等に放流する場合はPCB濃度が3μg/L以下になるまで分解処理を行う。油として処理する場合は0.5μg/kg以下まで分解処理を行う。得られた溶液のPCB濃度は、わが国におけるPCBの規制基準である工場排水の基準値を満たす値であり、放流水7として海や川に放水することができる。
【0033】
図2に本発明のPCBの分解方法にかかる第二の実施形態を示して説明する。かかる第二の実施形態は、紫外線処理液4を蒸留して分離する工程を2つ含むものであって、紫外線処理液4から極性有機溶媒を含む溶液5を分離する第1の蒸留工程13aと、第一の蒸留工程で残存したPCB含有ビフェニル溶液6を、微量のPCBを含有する又はPCBを含有しないビフェニル溶液6aと、濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bとに分離する第2の蒸留工程13bとを含む。第一の蒸留工程13aで得られた極性有機溶媒を含む溶液5は、溶解工程11に返送されて再利用される。濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bは、紫外線照射工程12に返送され、再度紫外線を照射して含有するPCBを分解する。微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aは、仕上処理工程に送られ、第一の実施形態と同様に処理されて放流水7として放流される。
【0034】
かかる蒸留工程以外の溶解工程11、紫外線照射工程12及び仕上処理工程14は、第一の実施の形態と同様に行うことができるため、ここでは説明を省略する。
【0035】
本実施の形態において、第1の蒸留工程13aは、紫外線処理液4を、極性有機溶媒を含む溶液5と、PCBを含有するビフェニル溶液に分離する。このとき、液温度が80〜90℃,圧力が1atm、処理時間が3〜4時間といった条件で、充填層4段付きの回分式蒸留装置を用いて実施することができる。極性有機溶媒を含む溶液5をこのような方法で蒸留して、極性有機溶媒由来のアセトンとイソプロアルコールを分別し、残物としてPCBを含む他の物質(ビフェニル、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム)を得る。
【0036】
第2の蒸留工程13bは、PCB含有ビフェニル溶液6を、微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aと、濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bとに分離する。このとき、蒸留は、留出温度30℃から140℃まで、圧力70Torrから30Torrまで時間については、約20hrを要し、アセトン、イソプロピルアルコール、ビフェニルの蒸気圧の低い順番に留出物が出てくる条件で、14段の充填物付きの回分式精密蒸留装置を用いて行うことができる。
【0037】
第一の実施形態で述べたように、溶解工程11においてPCB1を溶解し、紫外線処理工程12においてPCBと共存させる極性有機溶媒2としてはイソプロピルアルコールを使用することが好ましい。しかし、イソプロピルアルコールを極性有機溶媒として使用する場合、一段の蒸留工程により紫外線処理液4をイソプロピルアルコールと、微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aと、濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bと分離することは実施例1で述べた通りであり、分離は可能であるが時間を要する。従って、第二の実施形態では、二段階の蒸留工程を含むことで、高い精度かつ短時間で簡単に分離をすることができるという利点を有する。
【0038】
図3に本発明のPCBの分解方法にかかる第三の実施形態を示して説明する。かかる第三の実施形態は、溶解工程11でPCB1を溶解するために、イソプロピルアルコール2aを用い、紫外線処理液4を分離するための工程を3つ含むことを特徴とする。
【0039】
蒸発工程15では、紫外線処理液4から極性有機溶媒成分5を蒸発させる。蒸発ガス分離工程16では、極性有機溶媒成分5からなる蒸発物を充填塔においてイソプロピルアルコール溶液5aとアセトン溶液5bとに分離する。分離されたイソプロピルアルコール溶液5aは、溶解工程11へ返送され、再利用される。一方、蒸発工程15で残留したPCBを含有するビフェニル溶液6は、ポリ塩化ビフェニル蒸留工程13cで、微量のPCBを含有する又はPCBを含まないビフェニル溶液6aと、濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bとに分離される。
【0040】
蒸発工程15は、通常、蒸発缶に紫外線処理液4を導入し、蒸留缶の液温度を80〜90℃とし、大気圧にてイソプロピルアルコール5a及びアセトン5bを含む極性有機溶媒成分5を蒸発させることにより行う。しかし、かかる方法以外にも減圧して80℃以下で蒸発させる方法も可能である。
【0041】
蒸発缶から出る蒸気は、極性有機溶媒成分5であって、さらに蒸発ガス分離工程16が行われる充填塔にて分離される。充填塔では、ガス温度80〜90℃、圧力1atmの条件によりイソプロピルアルコール溶液5aとアセトン溶液5bとを分離し、塔底部からイソプロピルアルコール溶液5aを、塔頂部からアセトン溶液5bを回収する。
【0042】
アセトン溶液5bに含まれるイソプロピルアルコール5aは少ないほど好ましいが、通常は10重量%以下、好ましくは2重量%以下とする。このときイソプロピルアルコール溶液5aに含まれるアセトンは1重量%未満である。回収されたイソプロピルアルコール溶液5aは溶解工程11にてPCB1の溶解に再使用される。回収されたアセトン溶液5bは、有効な燃料として利用することができる。
【0043】
ポリ塩化ビフェニル蒸留工程13cは、第二の実施形態で説明した第2の蒸留工程13bと同様に行うことができ、留出成分である微量のPCBを含有する又はPCBを含有しないビフェニル溶液6aと、蒸留装置の底部の残物として残る濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bとが分離される。
【0044】
本発明にかかる第一、第二、第三の実施形態ともに、極性有機溶媒5成分を、さらにアセトン5bとイソプロピルアルコール5aにまで分離することができ、有効な再利用ができる。また、第一の実施形態の場合には、蒸留装置が一つであるために装置として簡略であるため有利である。第二の実施形態は、処理時間が短く、第三の実施形態は、蒸発缶であるために装置の開放が容易であり保守点検が容易であるといった利点がある。
【0045】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を限定するものではない。本実施例では、図3に示す第三の実施形態にかかる方法により、PCBを含む溶液の分解処理を行った。
【0046】
処理対象は、主成分として五塩化ビフェニルを含むPCB濃度が、10,000mg/dm3のPCB溶液であって、溶媒としてイソプロピルアルコールを用いた溶液100dm3であった。本実施例では、溶解工程が既に行われている原液を用いて分解処理を行った。
【0047】
まず、紫外線照射工程12において、この原液3に紫外線を照射した。このとき、出力が2.4kwの紫外線光源を用いて、8〜10時間処理することにより、PCB濃度が1mg/dm3になるまで分解した。このような処理をして得られた紫外線処理液4は、イソプロピルアルコール、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、ビフェニル、アセトンを含むものであった。
【0048】
次に、紫外線処理液4を蒸発工程15にて処理し、アセトン溶液5b、イソプロピルアルコール溶液5a及びPCB含有ビフェニル溶液6に分離した。蒸発工程は具体的には、80〜90℃、圧力1atmで、通常の蒸発缶を用いて行った。アセトンは、紫外線照射工程12でイソプロピルアルコールの酸化により生成したものであった。蒸発ガス分離工程16により、アセトン溶液5bに含まれるPCB量は、油卒業基準の0.5mg/kg以下となった。
【0049】
次に、ポリ塩化ビフェニル蒸留工程13cにて、該PCB含有ビフェニル溶液6を更に蒸留し、微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aと、濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bとに分離した。具体的には、留出温度30℃から140℃まで、圧力70Torrから30Torrまでで、約20hrを要して蒸留操作を行い、アセトン、イソプロピルアルコール、ビフェニルの蒸気圧の低い順番に留出物が出てくるような条件により、14段の充填物付きの回分式精密蒸留装置を用いて行った。この操作による留出分が、微量のPCBを含有する又はPCBを含有しないビフェニル溶液6aであり、蒸留装置の底部の残物として残ったのが濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bであった。
【0050】
100dm3の紫外線処理液4から0.00033〜0.000667dm3のPCBを含有するビフェニル溶液6が得られた。濃度で示すと、このPCB含有ビフェニル溶液6には、0.5〜1.0mg/dm3のPCBが含まれていた。PCB含有ビフェニル溶液6の約90重量%を蒸発させたところ、ビフェニルと共に留出し凝縮させた液6aに含まれるPCB量はPCB含有ビフェニル溶液6の1mg/kg以下で、通常は0.3mg/kgであった。濃縮させた液6bに含まれるPCB濃度は1〜20mg/kgで、通常は5mg/kgであった。
【0051】
ここで、ポリ塩化ビフェニル蒸留工程13cで、紫外線照射工程12により分解されなかったPCBを含む凝縮させた液6aを回収し、紫外線照射工程12に返送した。これにより、仕上処理工程14に送られるPCB量は従来に比べ2%以下となった。
【0052】
微量のPCBを含有するビフェニル溶液を仕上処理工程14にて、130m3の微生物培養液により、20〜40℃で48時間処理した。微生物としては、コマモナス・テストステロニを用いた。これにより、残存するPCB濃度は卒業基準である3μg/L以下となり、ダイオキシン類濃度も放流基準である10pg/L以下を満足した。
【0053】
一方、微生物に代えて、仕上処理工程14として、微量のPCBを含有するビフェニル溶液をパラジウム/カーボン触媒により75℃で1時間処理したところ、PCB濃度は油卒業基準の0.5mg/kg以下となった。
【0054】
【発明の効果】
本発明にかかるポリ塩化ビフェニルの分解方法によれば、紫外線処理工程を経てポリ塩化ビフェニル分解物を含む溶液を、蒸留工程により分類し、そのうち濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液のみを再び紫外線処理工程に返送することで、仕上処理工程へ送るポリ塩化ビフェニルの量を低減することが可能となる。本発明にかかる方法及び装置によれば、仕上処理に過度の負担をかけることなく、効率的かつ経済的なポリ塩化ビフェニルの分解が達成される。
また、かかる方法によれば、ポリ塩化ビフェニルの分解装置を従来のものよりも小型化することができると共に、蒸留工程で分離した極性有機溶媒の有効利用が可能となり、全体的にコストを下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる第一の実施形態によるPCBの分解工程を示すブロック図である。
【図2】本発明にかかる第二の実施形態によるPCBの分解工程を示すブロック図である。
【図3】本発明にかかる第三の実施形態によるPCBの分解工程を示すブロック図である。
【図4】従来のPCBの分解工程を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 PCB
2 極性有機溶媒
2a イソプロピルアルコール
3 原液
4 紫外線処理液
5 極性有機溶媒溶液
5a イソプロピルアルコール溶液
5b アセトン溶液
6 PCB含有ビフェニル溶液
6a 微量のPCBを含有するビフェニル溶液及
6b 濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液
7 放流水
11 溶解工程
12 紫外線照射工程
13 蒸留工程
13a 第1の蒸留工程
13b 第2の蒸留工程
13c ポリ塩化ビフェニル蒸留工程
14 仕上処理工程
15 蒸発工程
16 蒸発ガス分離工程
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ塩化ビフェニルを分解する方法及びシステムに関する。特には、本発明は、主として紫外線照射によりポリ塩化ビフェニルを分解し、無害化する効率的かつ経済的な方法及びシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリ塩化ビフェニル(Polychlorinated Biphenyl)は、PCBの略称で知られ、ビフェニルの2個以上の水素を塩素で置換した化合物の総称をいう。かかるPCB類は含有塩素量によってその形態が異なり、金属に対して安定で、絶縁性、不燃性、高脂溶性、可塑性などに大変優れているため、電気製品、熱媒体、感圧紙等の工業製品に広く使用され、プラスチック製品に含有された状態で、あるいは1wt%以上のPCBを含む高濃度PCBまたは1wt%以下のPCBを含む低濃度PCB(廃油)として処理されずに保管されている。しかし、PCBは化学的に非常に安定で長期にわたって自然分解されることなく残留するため、人体への影響のみならず地球環境に深刻な影響をもたらすことが問題となっている。
【0003】
従って、このようなPCB類を人工的に分解処理する必要がある。かかるPCB類の分解方法としては、従来から、焼却方法以外に、脱塩素化分解法、水熱酸化分解法、水素供与物質による還元熱・化学分解法、紫外線照射法等による光分解法が知られている。これらのうち紫外線照射法は、PCBを極性有機溶媒中に溶かして紫外線を照射することにより脱塩素し、残留するPCBを生物処理または触媒処理等によって無害化するものであり、常温・常圧処理できるために安全性が高いという点で有利性がある。
【0004】
従来から知られている紫外線照射法によるPCBの処理方法を、図4にブロック図を示して説明する。かかる従来から知られているPCBの処理方法によれば、まず、極性有機溶媒2にPCB1を溶解させる工程11と、紫外線を照射する工程12とを経る。次に、この紫外線を照射する工程12から排出された処理液4を蒸留する工程13により、極性有機溶媒主体の溶液5と、PCBを含有するビフェニル溶液6に分離する。ここで得られたビフェニル溶液6は、微生物または触媒により分解する仕上処理工程14により処理され、PCBを分解して無害化する。微生物により無害化されたものは河川等に放流することが可能であり、触媒により分解されたものは油として燃焼処理することが可能である。
【0005】
極性有機溶媒の存在下で紫外線を照射すればPCBは分解されるが、紫外線照射処理の効率とPCB濃度の間には強い相関関係があり、PCB濃度が低いと紫外線照射処理の効率が著しく低下するという問題があった。一方、仕上処理工程である生物処理あるいは触媒処理においては、分解されるPCBの量が多ければ、多くの微生物あるいは触媒量を必要とするため、処理対象物であるPCBの量が少ないことが望ましい。
【0006】
そこで従来は、これらの処理を効率よく行うために、紫外線照射処理と、生物処理あるいは触媒処理からなる仕上処理とを組み合わせていたが、仕上処理工程において処理すべきPCB量が比較的多く、仕上処理工程にかかる経済的な負担が大きいという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の処理方法が有する問題点を解決すべくなされたものであり、仕上処理工程に送られるPCB量を減少させることにより、仕上処理工程の負担を軽減し、処理効率の向上を図り、経済性を上げることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明にかかるポリ塩化ビフェニルの分解方法は、極性有機溶媒にポリ塩化ビフェニルを溶解した溶液に紫外線を照射する紫外線照射工程と、該紫外線照射工程を経た溶液を蒸留することにより、極性有機溶媒を主成分とする溶液と、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液と、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに各々分離する蒸留工程と、該微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液中のポリ塩化ビフェニル及びビフェニルを分解する仕上処理工程とを含んでなり、前記濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液が、紫外線照射工程へ返送されることを特徴とする。
ここで、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液とは、前記蒸留工程において、留出温度130〜140℃、30Torrで充填層12〜15段付きの回分式精密蒸留装置によって蒸留することにより留出分として得られる溶液であって、ポリ塩化ビフェニルの分解生成物であるビフェニルを約95〜98重量%含有する他、若干のクロルベンゼン等を含む溶液(常温で固体)をいう。残存するポリ塩化ビフェニルの濃度は、検出限界(0.3mg/kg)以下程度である。
また、特にポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液とは、既知の方法で化学分析を行った結果、ポリ塩化ビフェニルの含量が検出限界以下である溶液をいい、必ずしもポリ塩化ビフェニルを一切含有しない溶液をいうものではない。
一方、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とは、同様の操作により蒸留装置の底部から得られる溶液であって、ポリ塩化ビフェニルを約5〜20mg/kg含有する他、ポリ塩化ビフェニルの分解生成物であるビフェニル、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム等を含む溶液を言う。
【0009】
前記ポリ塩化ビフェニルの分解方法において、前記蒸留工程が、前記紫外線照射工程を経た溶液を、極性有機溶媒を主成分とする溶液と、ポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに分離する第1の蒸発工程と、該ポリ塩化フェニルを含有するビフェニル溶液を、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液と、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに分離する第2の蒸留工程とを含んでなることが好ましい。
ここで、第1の蒸発工程で得られるポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とは、前記紫外線照射工程を経た溶液から、極性溶媒成分を、80〜90℃、1atmにおいて、蒸発器形式の操作によって分離した後に残った溶液であって、例えばイソプロピルアルコール等の極性溶媒成分、ビフェニル、ポリ塩化ビフェニル、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム等を含む溶液をいう。これがさらに第2の蒸留工程で、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液と、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに分離される。かかる二段階の蒸留工程を含むことにより、極性有機溶媒をより簡易に、かつ精確に分離することができる。
【0010】
上述のポリ塩化ビフェニルの分解方法においては、前記極性有機溶媒がイソプロピルアルコールであることが好ましい。
【0011】
本発明にかかる別のポリ塩化ビフェニルの分解方法は、イソプロピルアルコールにポリ塩化ビフェニルを溶解した溶液に紫外線を照射する紫外線照射工程と、該紫外線照射工程を経た溶液からイソプロピルアルコールとその酸化生成物であるアセトンとを主成分とする溶液を蒸発させることにより、イソプロピルアルコールとその酸化生成物であるアセトンとを主成分とする溶液と、ポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに分離する蒸発工程と、該ポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液を、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液と、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに分離するポリ塩化ビフェニル蒸留工程と、前記蒸発工程で分離されたイソプロピルアルコールとその酸化生成物であるアセトンとを主成分とする溶液を、イソプロピルアルコールとその酸化生成物であるアセトンとに分離する蒸発ガス分離工程と、前記微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液中のポリ塩化ビフェニル及びビフェニルを分解する仕上処理工程とを含んでなり、前記ポリ塩化ビフェニル蒸留工程で得られた濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液が、紫外線照射工程へ返送されることを特徴とする。
このとき、蒸発ガス分離工程で生成するアセトンは、紫外線処理工程においてイソプロピルアルコールが酸化して生成したものである。
ここで、ポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とは、紫外線照射工程を経た溶液から、80〜90℃、1atmにおけるの蒸発器形式の加熱操作を行う蒸発工程によって極性有機溶媒が除かれた溶液である。かかるビフェニル溶液は、紫外線処理工程により生成したポリ塩化ビフェニル由来の物質、特にはビフェニルの他、イソプロピルアルコール、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム等を含む溶液をいう。
【0012】
また、前記ポリ塩化ビフェニルの分解方法において、前記仕上処理工程が、前記微量のポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液中のポリ塩化ビフェニルを微生物により分解する生物処理工程であることが好ましい。さらには、前記微生物が、コマモナス・テストステロニであることが好ましい。コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)TK102は、本出願人によりすでに独立行政法人産業技術総合研究所・特許生物寄託センターに寄託されている(受託番号:FERM,P−14591)。一方、ロドコッカス・オパカス(Rhodococcus opacus)TSP203株も同様に特許生物寄託センターに寄託されている(受託番号:FERM,P−15408)。
【0013】
前記ポリ塩化ビフェニルの分解方法において、前記仕上処理工程が、微量のポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液を触媒と接触させることにより、該ポリ塩化ビフェニルを分解する触媒処理工程であることが好ましい。
【0014】
さらには、本発明は別の側面においては、ポリ塩化ビフェニルの分解システムであって、ポリ塩化ビフェニルと極性有機溶媒とを含む溶液に紫外線を照射する紫外線照射手段と、該紫外線が照射された溶液を、極性有機溶媒を主成分とする溶液と、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液と、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに各々分離する少なくとも1以上の分離手段と、該分離された濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液を前記紫外線照射手段へ返送する返送手段と、該分離された微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液中のポリ塩化ビフェニルまたはビフェニルを分解する仕上処理手段とを含んでなる。
ここで、少なくとも1以上の分離手段とは、具体的には、蒸留手段あるいは蒸発手段またはそれらの両方の手段をいう。特に、蒸留手段とは、充填塔による回分式多段蒸留であり、スチル(釜)、多段充填塔、還流ドラムから構成され、揮発度の差を利用し各成分に分離する操作である。一方、蒸発手段とは、液体に潜熱を与えて蒸気とする操作であり、揮発性物質を除去することをいう。
【0015】
本発明にかかるポリ塩化ビフェニルの分解方法によれば、紫外線処理工程を経てポリ塩化ビフェニル分解物を含む溶液を、蒸留工程により分類し、そのうち濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液のみを再び紫外線処理工程に返送することで、仕上処理工程へ送るポリ塩化ビフェニルの量を低減または皆無にすることが可能となる。本発明にかかる方法及び装置によれば、仕上処理に過度の負担をかけることなく、効率的かつ経済的なポリ塩化ビフェニルの分解が達成される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。以下に挙げる実施の形態は、本発明を限定するものではない。
【0017】
図1に本発明のPCBの分解方法にかかる第一の実施形態を示して説明する。まず、溶解工程11にてPCB1を極性有機溶媒2に溶解する。ここでPCB1が極性溶媒に溶解されてできた溶液を原液3という。次に、紫外線照射工程12で、かかる原液3に紫外線を照射し、含まれるPCB1を分解する。紫外線照射工程12により得られた溶液を紫外線処理液4という。紫外線処理液4は、蒸留工程13において、極性有機溶媒溶液5及びアセトン溶液5bと、微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aと、濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bとに分離される。分離された極性有機溶媒溶液5は、溶解工程に返送され、PCB1の溶解に再利用される。一方、分離された濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bは、紫外線照射工程1に返送され、再び紫外線を照射する処理を受ける。また、分離された微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aは、次工程である仕上処理工程14に送られ、微生物によるPCBの分解あるいは触媒によるPCBの分解を経る。仕上処理工程14において、微生物により分解されたときは放流水7として放流され、触媒により分解されたときは油として燃焼処理される。
【0018】
ここで、処理の対象となるPCBとしては、KC−1000(カネクロール1000)が挙げられる。このKC−1000は、5塩化物のビフェニルを主成分としたKC−500が、溶剤としてのトリクロルベンゼンに溶解したものであり、5塩化物のビフェニルが70wt%、トリクロルベンゼンが30wt%の混合物である。KC−1000は、PCBの使用が禁止される以前に鉄道の新幹線や特急のトランス用熱媒として用いられていたものである。その形態は、2m×3m×1m高さのトランス(容器)の中に液体として存在しており、総重量は3〜4tで、KC−1000のみの重量は700kg程度である。ここで、KC−1000を処理対象物の一例として挙げたが、処理の対象となるPCBは、特定の形態や種類には限定されない。例えば、固体の状態でプラスチック製品等に含有されるPCBについては、溶剤洗浄法や真空加熱法等の方法で抽出された後、本発明の処理に供する。また、本発明の方法においては、PCBは極性有機溶媒に溶解して処理されるため、高粘度の液体であるKC−500にトリクロルベンゼンを混ぜて流動性を改善したKC−1000を用いる場合は、蒸留によりKC−500とトリクロルベンゼンに分離するような前処理をしておくことが分解効率上、必要である。
【0019】
一方、極性有機溶媒としては、イソプロピルアルコール(2−プロピルアルコール、IPAともいう)、メチルアルコール、エチルアルコールあるいはそれらの混合物等を用いることができるが、これらには限定されない。特にPCBの塩素が外れた後、水素の供与性が良好であるために、イソプロピルアルコールを用いることが好ましい。
【0020】
溶解工程11で、PCB1を極性有機溶媒2に溶解するに当たっては、室温で適当な量を混合することで簡単に溶解することができる。溶解後の溶液である原液3の適切なPCB濃度は、PCB及び極性有機溶媒の種類により異なるが、例えば、五塩化物を主成分とするPCBをイソプロピルアルコールに溶解する場合、PCB濃度は100,000mg/L以下、5,000〜20,000mg/Lとなるように調整することが好ましい。かかる溶解工程11は、通常の撹拌機付きのタンクのような装置を用いて行うことができる。
【0021】
本実施形態においては溶解工程11について説明したが、溶解工程11は必ずしも本発明にかかるポリ塩化ビフェニルの分解方法に含まれる必要はない。例えば、所定の濃度になるように別の場所で調製された原液3を処理対象としてもよい。
【0022】
紫外線照射工程12では、原液3に紫外線を照射することにより、原液3に含まれるPCBを分解する。このとき、原液3中のPCBは、濃度が5mg/L以下まで分解され、ビフェニルとなる。紫外線処理液4にはそれらの分解生成物が含まれている。極性有機溶媒2も、分解されたりあるいは酸化されることがありうる。かかる紫外線照射工程12において、原液3に含まれるPCB1の99.9重量%以上、好ましくは約99.99重量%を分解する。
【0023】
紫外線の光源は、波長が254nmの低出力低圧紫外線ランプを使用することが好ましいが、その他にも高出力低圧紫外線ランプや高圧紫外線ランプなども用いることができる。必要とされる紫外線照射エネルギーは、PCB1g当たり通常5〜20Wh、好ましくは10〜15Whであるが、対象とするPCBの種類及び溶媒の種類によって異なり、一定の値に限定されるものではない。
【0024】
このような紫外線処理工程12としては、具体的には、円柱状の容器に1m長さのランプが同心円状に数十本配置されたもので、液は容器の下部から供給されランプに平行に流れ上部から出ていき循環して下部に戻る方式の装置を用いて行うことができる。しかし、本発明の紫外線処理工程12に使用する装置は、一定の形態に限定されるものではない。
【0025】
蒸留工程13は、紫外線処理液4を、極性有機溶媒溶液5と、微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aと、濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bとに分離する。
かかる工程は、留出温度30℃から140℃まで、圧力70Torrから30Torrまで、操作には約30hrを要し、アセトン、イソプロピルアルコール、ビフェニルが蒸気圧の高い順番に留出するような方法で、14段の充填物付きの回分式精密蒸留装置を用いることにより実施することができる。
【0026】
かかる蒸留工程13で得られる極性有機溶媒溶液5はパイプ等の手段により溶解工程11へ返送することができ、溶解工程11でPCB1の溶解に再利用される。蒸留工程13では、溶解工程で用いた極性有機溶媒2のうち約95〜98重量%が極性有機溶媒溶液5として回収される。
【0027】
濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bは、1〜20mg/kg程度のPCBを含有しており、パイプ等の返送手段により紫外線処理工程12に返送することにより再び紫外線照射され、含有するPCB1が分解される。
【0028】
仕上処理工程14では、微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aを分解する。仕上処理工程14としては、生物処理により行う方法と、触媒処理により行う方法とが挙げられる。
【0029】
ここで、生物処理とは、PCBを微生物により炭酸ガス、水及び塩素イオンまで分解することをいう。生物処理工程において1回の処理に供する溶液量は、紫外線照射工程12に供する原液3量の1〜3倍、好ましくは1.3〜2倍である。このとき、微生物の量は、処理溶液の2〜3重量%であることが好ましい。
【0030】
微生物により処理するための条件は、約20〜40℃、好ましくは25〜35℃に温度を制御し、pHは6〜9とし、溶存酸素濃度は約0.1ppm以上、好ましくは1ppm以上となるよう空気を吹き込み、攪拌した状態で約48〜60時間処理することが好ましい。また、かかる処理は、密閉式で撹拌機付きの培養装置を用いて行うことができる。このような生物処理により仕上処理を行う利点は、常温・常圧の安全な操作であることや有害な二次生成物を生じないことである。
【0031】
触媒処理とは、触媒により、PCBをモノクロルベンゼンまたはビフェニルにまで分解し、PCB濃度が0.0012ppmとなる程度にまで処理することをいう。触媒としては、パラジウム/カーボン系触媒、白金系触媒等を使用し、含有されるPCBに対し重量比率で5〜20倍量の触媒により、約50℃〜75℃の温度で、30分〜2時間処理して分解することができる。また、かかる処理は、触媒充填反応器などの装置を用いて行うことができる。触媒処理により仕上処理を行う利点としては、生物を用いる場合のような培養操作が不要であることや、生物による処理以上に、広い濃度範囲のPCBを分解処理することが可能であることが挙げられる。
【0032】
仕上処理工程では、上述のいずれかの方法により、放流水として河川等に放流する場合はPCB濃度が3μg/L以下になるまで分解処理を行う。油として処理する場合は0.5μg/kg以下まで分解処理を行う。得られた溶液のPCB濃度は、わが国におけるPCBの規制基準である工場排水の基準値を満たす値であり、放流水7として海や川に放水することができる。
【0033】
図2に本発明のPCBの分解方法にかかる第二の実施形態を示して説明する。かかる第二の実施形態は、紫外線処理液4を蒸留して分離する工程を2つ含むものであって、紫外線処理液4から極性有機溶媒を含む溶液5を分離する第1の蒸留工程13aと、第一の蒸留工程で残存したPCB含有ビフェニル溶液6を、微量のPCBを含有する又はPCBを含有しないビフェニル溶液6aと、濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bとに分離する第2の蒸留工程13bとを含む。第一の蒸留工程13aで得られた極性有機溶媒を含む溶液5は、溶解工程11に返送されて再利用される。濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bは、紫外線照射工程12に返送され、再度紫外線を照射して含有するPCBを分解する。微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aは、仕上処理工程に送られ、第一の実施形態と同様に処理されて放流水7として放流される。
【0034】
かかる蒸留工程以外の溶解工程11、紫外線照射工程12及び仕上処理工程14は、第一の実施の形態と同様に行うことができるため、ここでは説明を省略する。
【0035】
本実施の形態において、第1の蒸留工程13aは、紫外線処理液4を、極性有機溶媒を含む溶液5と、PCBを含有するビフェニル溶液に分離する。このとき、液温度が80〜90℃,圧力が1atm、処理時間が3〜4時間といった条件で、充填層4段付きの回分式蒸留装置を用いて実施することができる。極性有機溶媒を含む溶液5をこのような方法で蒸留して、極性有機溶媒由来のアセトンとイソプロアルコールを分別し、残物としてPCBを含む他の物質(ビフェニル、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム)を得る。
【0036】
第2の蒸留工程13bは、PCB含有ビフェニル溶液6を、微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aと、濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bとに分離する。このとき、蒸留は、留出温度30℃から140℃まで、圧力70Torrから30Torrまで時間については、約20hrを要し、アセトン、イソプロピルアルコール、ビフェニルの蒸気圧の低い順番に留出物が出てくる条件で、14段の充填物付きの回分式精密蒸留装置を用いて行うことができる。
【0037】
第一の実施形態で述べたように、溶解工程11においてPCB1を溶解し、紫外線処理工程12においてPCBと共存させる極性有機溶媒2としてはイソプロピルアルコールを使用することが好ましい。しかし、イソプロピルアルコールを極性有機溶媒として使用する場合、一段の蒸留工程により紫外線処理液4をイソプロピルアルコールと、微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aと、濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bと分離することは実施例1で述べた通りであり、分離は可能であるが時間を要する。従って、第二の実施形態では、二段階の蒸留工程を含むことで、高い精度かつ短時間で簡単に分離をすることができるという利点を有する。
【0038】
図3に本発明のPCBの分解方法にかかる第三の実施形態を示して説明する。かかる第三の実施形態は、溶解工程11でPCB1を溶解するために、イソプロピルアルコール2aを用い、紫外線処理液4を分離するための工程を3つ含むことを特徴とする。
【0039】
蒸発工程15では、紫外線処理液4から極性有機溶媒成分5を蒸発させる。蒸発ガス分離工程16では、極性有機溶媒成分5からなる蒸発物を充填塔においてイソプロピルアルコール溶液5aとアセトン溶液5bとに分離する。分離されたイソプロピルアルコール溶液5aは、溶解工程11へ返送され、再利用される。一方、蒸発工程15で残留したPCBを含有するビフェニル溶液6は、ポリ塩化ビフェニル蒸留工程13cで、微量のPCBを含有する又はPCBを含まないビフェニル溶液6aと、濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bとに分離される。
【0040】
蒸発工程15は、通常、蒸発缶に紫外線処理液4を導入し、蒸留缶の液温度を80〜90℃とし、大気圧にてイソプロピルアルコール5a及びアセトン5bを含む極性有機溶媒成分5を蒸発させることにより行う。しかし、かかる方法以外にも減圧して80℃以下で蒸発させる方法も可能である。
【0041】
蒸発缶から出る蒸気は、極性有機溶媒成分5であって、さらに蒸発ガス分離工程16が行われる充填塔にて分離される。充填塔では、ガス温度80〜90℃、圧力1atmの条件によりイソプロピルアルコール溶液5aとアセトン溶液5bとを分離し、塔底部からイソプロピルアルコール溶液5aを、塔頂部からアセトン溶液5bを回収する。
【0042】
アセトン溶液5bに含まれるイソプロピルアルコール5aは少ないほど好ましいが、通常は10重量%以下、好ましくは2重量%以下とする。このときイソプロピルアルコール溶液5aに含まれるアセトンは1重量%未満である。回収されたイソプロピルアルコール溶液5aは溶解工程11にてPCB1の溶解に再使用される。回収されたアセトン溶液5bは、有効な燃料として利用することができる。
【0043】
ポリ塩化ビフェニル蒸留工程13cは、第二の実施形態で説明した第2の蒸留工程13bと同様に行うことができ、留出成分である微量のPCBを含有する又はPCBを含有しないビフェニル溶液6aと、蒸留装置の底部の残物として残る濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bとが分離される。
【0044】
本発明にかかる第一、第二、第三の実施形態ともに、極性有機溶媒5成分を、さらにアセトン5bとイソプロピルアルコール5aにまで分離することができ、有効な再利用ができる。また、第一の実施形態の場合には、蒸留装置が一つであるために装置として簡略であるため有利である。第二の実施形態は、処理時間が短く、第三の実施形態は、蒸発缶であるために装置の開放が容易であり保守点検が容易であるといった利点がある。
【0045】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を限定するものではない。本実施例では、図3に示す第三の実施形態にかかる方法により、PCBを含む溶液の分解処理を行った。
【0046】
処理対象は、主成分として五塩化ビフェニルを含むPCB濃度が、10,000mg/dm3のPCB溶液であって、溶媒としてイソプロピルアルコールを用いた溶液100dm3であった。本実施例では、溶解工程が既に行われている原液を用いて分解処理を行った。
【0047】
まず、紫外線照射工程12において、この原液3に紫外線を照射した。このとき、出力が2.4kwの紫外線光源を用いて、8〜10時間処理することにより、PCB濃度が1mg/dm3になるまで分解した。このような処理をして得られた紫外線処理液4は、イソプロピルアルコール、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、ビフェニル、アセトンを含むものであった。
【0048】
次に、紫外線処理液4を蒸発工程15にて処理し、アセトン溶液5b、イソプロピルアルコール溶液5a及びPCB含有ビフェニル溶液6に分離した。蒸発工程は具体的には、80〜90℃、圧力1atmで、通常の蒸発缶を用いて行った。アセトンは、紫外線照射工程12でイソプロピルアルコールの酸化により生成したものであった。蒸発ガス分離工程16により、アセトン溶液5bに含まれるPCB量は、油卒業基準の0.5mg/kg以下となった。
【0049】
次に、ポリ塩化ビフェニル蒸留工程13cにて、該PCB含有ビフェニル溶液6を更に蒸留し、微量のPCBを含有するビフェニル溶液6aと、濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bとに分離した。具体的には、留出温度30℃から140℃まで、圧力70Torrから30Torrまでで、約20hrを要して蒸留操作を行い、アセトン、イソプロピルアルコール、ビフェニルの蒸気圧の低い順番に留出物が出てくるような条件により、14段の充填物付きの回分式精密蒸留装置を用いて行った。この操作による留出分が、微量のPCBを含有する又はPCBを含有しないビフェニル溶液6aであり、蒸留装置の底部の残物として残ったのが濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液6bであった。
【0050】
100dm3の紫外線処理液4から0.00033〜0.000667dm3のPCBを含有するビフェニル溶液6が得られた。濃度で示すと、このPCB含有ビフェニル溶液6には、0.5〜1.0mg/dm3のPCBが含まれていた。PCB含有ビフェニル溶液6の約90重量%を蒸発させたところ、ビフェニルと共に留出し凝縮させた液6aに含まれるPCB量はPCB含有ビフェニル溶液6の1mg/kg以下で、通常は0.3mg/kgであった。濃縮させた液6bに含まれるPCB濃度は1〜20mg/kgで、通常は5mg/kgであった。
【0051】
ここで、ポリ塩化ビフェニル蒸留工程13cで、紫外線照射工程12により分解されなかったPCBを含む凝縮させた液6aを回収し、紫外線照射工程12に返送した。これにより、仕上処理工程14に送られるPCB量は従来に比べ2%以下となった。
【0052】
微量のPCBを含有するビフェニル溶液を仕上処理工程14にて、130m3の微生物培養液により、20〜40℃で48時間処理した。微生物としては、コマモナス・テストステロニを用いた。これにより、残存するPCB濃度は卒業基準である3μg/L以下となり、ダイオキシン類濃度も放流基準である10pg/L以下を満足した。
【0053】
一方、微生物に代えて、仕上処理工程14として、微量のPCBを含有するビフェニル溶液をパラジウム/カーボン触媒により75℃で1時間処理したところ、PCB濃度は油卒業基準の0.5mg/kg以下となった。
【0054】
【発明の効果】
本発明にかかるポリ塩化ビフェニルの分解方法によれば、紫外線処理工程を経てポリ塩化ビフェニル分解物を含む溶液を、蒸留工程により分類し、そのうち濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液のみを再び紫外線処理工程に返送することで、仕上処理工程へ送るポリ塩化ビフェニルの量を低減することが可能となる。本発明にかかる方法及び装置によれば、仕上処理に過度の負担をかけることなく、効率的かつ経済的なポリ塩化ビフェニルの分解が達成される。
また、かかる方法によれば、ポリ塩化ビフェニルの分解装置を従来のものよりも小型化することができると共に、蒸留工程で分離した極性有機溶媒の有効利用が可能となり、全体的にコストを下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる第一の実施形態によるPCBの分解工程を示すブロック図である。
【図2】本発明にかかる第二の実施形態によるPCBの分解工程を示すブロック図である。
【図3】本発明にかかる第三の実施形態によるPCBの分解工程を示すブロック図である。
【図4】従来のPCBの分解工程を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 PCB
2 極性有機溶媒
2a イソプロピルアルコール
3 原液
4 紫外線処理液
5 極性有機溶媒溶液
5a イソプロピルアルコール溶液
5b アセトン溶液
6 PCB含有ビフェニル溶液
6a 微量のPCBを含有するビフェニル溶液及
6b 濃縮されたPCBを含有するビフェニル溶液
7 放流水
11 溶解工程
12 紫外線照射工程
13 蒸留工程
13a 第1の蒸留工程
13b 第2の蒸留工程
13c ポリ塩化ビフェニル蒸留工程
14 仕上処理工程
15 蒸発工程
16 蒸発ガス分離工程
Claims (8)
- 極性有機溶媒にポリ塩化ビフェニルを溶解した溶液に紫外線を照射する紫外線照射工程と、
該紫外線照射工程を経た溶液を蒸留することにより、極性有機溶媒を主成分とする溶液と、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液と、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに各々分離する蒸留工程と、
該微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液中のポリ塩化ビフェニル及びビフェニルを分解する仕上処理工程とを含んでなり、
前記濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液が、紫外線照射工程へ返送されることを特徴とするポリ塩化ビフェニルの分解方法。 - 前記蒸留工程が、
前記紫外線照射工程を経た溶液を、極性有機溶媒を主成分とする溶液と、ポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに分離する第1の蒸留工程と、
該ポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液を、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液と、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに分離する第2の蒸留工程とを含んでなる請求項1に記載のポリ塩化ビフェニルの分解方法。 - 前記極性有機溶媒がイソプロピルアルコールである請求項1又は2に記載のポリ塩化ビフェニルの分解方法。
- イソプロピルアルコールにポリ塩化ビフェニルを溶解した溶液に紫外線を照射する紫外線照射工程と、
該紫外線照射工程を経た溶液から、イソプロピルアルコールとその酸化生成物であるアセトンとを主成分とする溶液を蒸発させることにより、イソプロピルアルコールとその酸化生成物であるアセトンとを主成分とする溶液と、ポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに分離する蒸発工程と、
該ポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液を、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液と、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに分離するポリ塩化ビフェニル蒸留工程と、
前記蒸発工程で分離されたイソプロピルアルコールとその酸化生成物であるアセトンとを主成分とする溶液を、イソプロピルアルコールとその酸化生成物であるアセトンとに分離する蒸発ガス分離工程と、
前記微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液中のポリ塩化ビフェニル及びビフェニルを分解する仕上処理工程とを含んでなり、
前記ポリ塩化ビフェニル蒸留工程で得られた濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液が、紫外線照射工程へ返送されることを特徴とするポリ塩化ビフェニルの分解方法。 - 前記仕上処理工程が、前記微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液中のポリ塩化ビフェニル及びビフェニルを微生物により分解する生物処理工程である請求項1〜4のいずれかに記載のポリ塩化ビフェニルの分解方法。
- 前記微生物が、コマモナス・テストステロニTK102株又はロドコッカス・オパカスTSP203株である請求項5に記載のポリ塩化ビフェニルの分解方法。
- 前記仕上処理工程が、微量のポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液を触媒と接触させることにより、該ポリ塩化ビフェニルを分解する触媒処理工程である請求項1〜4のいずれかに記載のポリ塩化ビフェニルの分解方法。
- ポリ塩化ビフェニルと極性有機溶媒とを含む溶液に紫外線を照射する紫外線照射手段と、該紫外線が照射された溶液を、極性有機溶媒を主成分とする溶液と、微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液と、濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液とに各々分離する少なくとも1以上の分離手段と、該分離された濃縮されたポリ塩化ビフェニルを含有するビフェニル溶液を前記紫外線照射手段へ返送する返送手段と、該分離された微量のポリ塩化ビフェニルを含有する又はポリ塩化ビフェニルを含有しないビフェニル溶液中のポリ塩化ビフェニル及びビフェニルを分解する仕上処理手段と
を含んでなるポリ塩化ビフェニルの分解システム。
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