JP2004049303A - X線コンピュータ断層撮影装置 - Google Patents

X線コンピュータ断層撮影装置 Download PDF

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Satoru Nakanishi
中西 知
Michito Nakayama
中山 道人
Yoshiaki Yaoi
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Abstract

【課題】X線コンピュータ断層撮影装置において、チャンネル故障による空間分解能の低下を解消すること。
【解決手段】X線管及び多列仕様のX線検出器により収集されたデータに基づいて画像データを再構成し、画像を表示するX線コンピュータ断層撮影装置において、X線検出器103が故障検出素子を含むとき、故障検出素子を含む列を除いた残りの列によりデータを収集する。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検体の投影データに基づいて画像データを再構成するX線コンピュータ断層撮影装置に係り、特にX線検出器の素子故障の対処法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知の通り、X線コンピュータ断層撮影装置のX線検出器としては、現在、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオードで電荷に変換する間接変換形が主流であるが、今後は、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形に移行していくものと考えられる。それと共に、X線検出器の検出素子の微細化、検出素子数の増大が見込まれている。
【0003】
そのような検出素子数の増加は、故障の発生機会を増大させる。従来では、故障検出素子が発生したとき、故障検出素子を、その周辺検出素子のデータから補間処理により計算したデータ(置換データ)に置き換えることで、見かけ上、素子故障を回避する対処法が採用されていることが多い。
【0004】
この対処法は、故障検出素子が多くの検出素子の中で1又は数個にとどまっているときには効果的であるが、広範囲にわたって検出素子が故障しているような場合、補間距離の増大に伴ってアーチファクトが目立つようになり、また空間分解能が著しく低下する。また、アーチファクト又は空間分解能の低下として明確に認識できるほどではないものであっても、実際にはアーチファクトが発生している又は空間分解能が低下しているのにも関わらず、それを読影者が認識できないことが重要な問題として懸念される。
【0005】
さらに、他の対処法では、故障検出素子が発生した場合、特に故障が上記データ置換で対処できない程度の比較的大規模なものであった場合、強制的に動作不能(システムダウン)な状態に移行する。この対処法は、修理完了するまで、CT検査ができなくなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、X線コンピュータ断層撮影装置において、検出素子の故障による空間分解能の低下を解消することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1局面によるX線コンピュータ断層撮影装置は、X線管及び多列仕様のX線検出器により収集されたデータに基づいて画像データを再構成し、画像を表示するX線コンピュータ断層撮影装置において、前記X線検出器が故障検出素子を含むとき、前記故障検出素子を含む列を除いた残りの列により前記データを収集することを特徴とする。
本発明の第2局面によるX線コンピュータ断層撮影装置は、X線管及び多列仕様のX線検出器により収集されたデータに基づいて画像データを再構成し、画像を表示するX線コンピュータ断層撮影装置において、前記X線検出器が故障検出素子を含むとき、前記故障検出素子を含む列を除いた残りの列により収集したデータに基づいて前記画像データを再構成することを特徴とする。
本発明の第3局面によるX線コンピュータ断層撮影装置は、X線管及び多列仕様のX線検出器により収集されたデータに基づいて画像データを再構成し、画像を表示するX線コンピュータ断層撮影装置において、前記X線検出器が故障検出素子を含むとき、前記故障検出素子を含む列により収集したデータから再構成した画像データの表示を制限することを特徴とする。
本発明の第4局面によるX線コンピュータ断層撮影装置は、X線管及び多列仕様のX線検出器により収集されたデータに基づいて画像データを再構成し、画像を表示するX線コンピュータ断層撮影装置において、前記X線検出器が故障検出素子を含むとき、前記故障検出素子を含む列に対してはX線が非照射となるようにX線照射野を制限することを特徴とする。
本発明の第5局面によるX線コンピュータ断層撮影装置は、被検体にX線を照射するX線管と、前記被検体を透過したX線を検出するための複数の検出素子を有する多列仕様のX線検出器と、前記X線検出器から出力されたデータのセットに基づいて画像データを再構成する再構成装置と、前記再構成された画像データに基づいて画像を表示する表示装置と、前記検出素子の故障を個々に判定する判定部と、前記判定部により故障と判定された検出素子のデータを含むデータセットから再構成された画像データの表示を制限する制御部とを具備する。
本発明の第6局面によるX線コンピュータ断層撮影装置は、被検体にX線を照射するX線管と、前記被検体を透過したX線を検出するための複数の検出素子を有する多列仕様のX線検出器と、前記X線検出器から出力されたデータのセットに基づいて画像データを再構成する再構成装置と、前記再構成された画像データに基づいて画像を表示する表示装置と、前記検出素子の故障を個々に判定する判定部と、前記判定部により故障と判定された検出素子のデータを含むデータセットを用いた画像データの再構成を制限する制御部とを具備する。
本発明の第7局面によるX線コンピュータ断層撮影装置は、被検体にX線を照射するX線管と、前記被検体を透過したX線を検出するための複数の検出素子を有する多列仕様のX線検出器と、前記X線検出器から出力されたデータのセットに基づいて画像データを再構成する再構成装置と、前記再構成された画像データに基づいて画像を表示する表示装置と、前記検出素子の故障を個々に判定する判定部と、前記判定部により故障と判定された検出素子を含む列を除く残りの列により収集したデータから前記データセットを構成する制御部とを具備する。
本発明の第8局面によるX線コンピュータ断層撮影装置は、被検体にX線を照射するX線管と、前記被検体を透過したX線を検出するための複数の検出素子を有する多列仕様のX線検出器と、前記被検体を載置する天板を移動自在に支持する寝台と、前記X線検出器から出力されたデータのセットに基づいて画像データを再構成する再構成装置と、前記再構成された画像データに基づいて画像を表示する表示装置と、前記検出素子の故障を個々に判定する判定部と、前記判定部により故障と判定された検出素子を含む列を除く残りの列に基づいて、ヘリカルスキャン又はコンベンショナルスキャン時の前記天板の送りピッチを設定する制御部とを具備することを特徴とする。
本発明の第9局面によるX線コンピュータ断層撮影装置は、被検体にX線を照射するX線管と、前記X線管に取り付けられた開口可変のコリメータと、前記被検体を透過したX線を検出するための複数の検出素子を有する多列仕様のX線検出器と、前記X線検出器から出力されたデータのセットに基づいて画像データを再構成する再構成装置と、前記再構成された画像データに基づいて画像を表示する表示装置と、前記検出素子の故障を個々に判定する判定部と、前記判定部により故障有りとして判定された検出素子を含む列へのX線の照射を制限するために前記コリメータの開口を制御する制御部とを具備する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明によるX線コンピュータ断層撮影装置の実施形態を説明する。なお、X線コンピュータ断層撮影装置には、X線管と放射線検出器とが一体として被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプと、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本発明を適用可能である。ここでは、現在、主流を占めている回転/回転タイプとして説明する。また、1スライスの断層像データを再構成するには、被検体の周囲1周、約360°分の投影データが、またハーフスキャン法でも180°+ビュー角分の投影データが必要とされる。いずれの再構成方式にも本発明を適用可能である。ここでは、前者を例に説明する。また、入射X線を電荷に変換するメカニズムは、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とが主流である。X線検出素子としては、それらのいずれの方式を採用してもよい。ここでは、後者の直接変換形を例に説明する。また、近年では、X線管とX線検出器との複数のペアを回転リングに搭載したいわゆる多管球型の製品化が進み、その周辺技術の開発が進んでいる。本発明では、従来からの一管球型であっても、多管球型であってもいずれにも適用可能である。ここでは、一管球型として説明する。
【0009】
図1に、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成をブロック図により示している。ガントリ100は、回転軸Z回りに回転自在に支持された回転リング102を有する。回転リング102には、X線管101とX線検出器103とが対向して配置されている。X線管101とX線検出器103との間の空間には、被検体を載置する天板126を装備した寝台が配置される。寝台は、天板126とともに、天板126をその長軸(回転軸Zと平行)に沿って移動自在に支持する機構、天板126を移動する電動機(ステッピングモータ)等を有する。天板駆動部127は、電動機にパルス信号を供給するために必要な構成を備えている。天板駆動部127から電動機に供給されるパルス信号の数及び周波数を変化させることにより天板127の移動を任意に調整することが可能とされる。
【0010】
X線管101は、高電圧発生装置109から高電圧パルスをスリップリング108を経由して印加される。それによりX線が発生される。X線管101の放射窓には、X線管101の放射窓から放射されるX線を図2に示すように四角錐形に成形するために、コリメータ125が取り付けられる。コリメータ125は、複数の遮蔽板と、遮蔽板を個々に移動自在に支持する機構と、複数の遮蔽板をそれぞれ移動する複数の電動機(ステッピングモータ)とを有する。コリメータ駆動部107は、複数の電動機に個々にパルス信号を供給するために必要な構成を備えている。コリメータ駆動部107から各電動機に供給されるパルス信号の数及びそのパターンを変化させることにより複数の遮蔽板により形成される開口の形状及び開口幅を任意に調整することが可能とされる。
【0011】
図2にはX線検出器103の斜視図を示し、図3にはX線検出器103の平面図を示している。X線検出器103は、複数のX線検出素子130を有する。複数のX線検出素子130は、チャンネル方向にm個、スライス方向にn個のマトリクスで配列される。スライス方向は、回転軸Zと平行な向き、チャンネル方向は、回転軸Zに対して直交する向きとして規定される。チャンネル方向に関して配列されたm個のX線検出素子130を「列」と称する。このX線検出素子列は、スライス方向にn個並べられる。図3の例では、スライス厚が0.5mmに相当する素子幅を有するX線検出素子をスライス方向の中央に4列、その両側に、スライス厚が1.0mmに相当する素子幅を有するX線検出素子を15列ずつ配列している。ここで、図4に示すように、スライス厚とは、1チャンネルを構成する検出器103の列数(加算される検出素子数)の実際の全幅を、X線管101の焦点Fから検出器103までの距離に対するX線管101の焦点Fから回転軸Zまでの距離の幾何学的な相似比によって換算した回転軸Z上での幅として定義される。また、ここでは、スキャン厚Tを、上記スライス厚S×スライス枚数Nとして定義する。このスキャン厚Tを基準として、図5(a)に示すヘリカルピッチHP、図5(b)に示すスキャンピッチSPが設定される。ヘリカルピッチHPは、ヘリカルスキャンオペレーション時に、X線管101が1回転する間に天板126が連続的に移動する単位距離を示す。スキャンピッチSPは、スキャンとスキャン位置の変位とを断続的に繰り返すコンベンショナルスキャンオペレーション時に、天板126がスキャンインターバルの間に断続的に移動する単位距離を示す。
【0012】
X線検出器103には、電子スイッチ回路104を介して一般的にDAS(data acquisition system) と呼ばれているデータ収集回路105が接続される。データ収集回路104は、検出器103の電流信号を電圧に変換するI−V変換器と、電圧信号をX線の曝射周期に同期して周期的に積分する積分器と、積分器の出力信号を増幅するアンプと、プリアンプの出力信号をディジタル信号に変換するアナログ・ディジタル・コンバータとを例えば4系統(4チャンネル)装備している。このデータ収集回路104とX線検出器103との間の電子スイッチ回路104により、検出素子を個々に単独で、またはスライス方向に加算する検出素子の数を例えば2乃至8の範囲で任意に変えることにより、スライス厚S(再構成画像のスライス厚(画像スライス厚)と区別するために収集スライス厚と呼ばれることもある)を制御することができる。なお、1つの検出素子又は加算される2乃至8個の検出素子を信号処理上の1つの単位としてチャンネルと呼ばれる。
【0013】
前処理部106は、図示しない光や磁気等を利用した非接触データ伝送装置を経由してデータ収集回路104に接続されている。前処理部106では、データ収集回路104から出力されるデータ(生データと呼ばれる)に対して、チャンネル間の感度不均一を補正したり、またX線強吸収体、主に金属部による極端な信号強度の低下又は信号脱落を補正する等の前処理を実行する。この前処理部106で補正を受けたデータ(投影データと呼ばれる)は、チャンネル番号、列番号、ビュー角(X線管101の回転角)等の位置情報とともに補助記憶装置112に一旦記憶される。
【0014】
なお、この補助記憶装置112には、各部の正常被検体模型に関する検査用の投影データセットが記憶されている。この検査用投影データセットは実装される検出器103の1列分のチャンネル数に対応するもので、1枚の画像(断層像)を再構成するに必要とされる例えば360°分のデータから構成されている。この検査用の投影データセットを使ってデータ置換の効果が確認される。つまり、検査用の投影データセットのあるチャンネルのデータが置換データに置き換えられ、画像が再構成され、表示される。医師又は専任者は、画像を目視確認し、データ置換に伴う空間分解能の低下の程度を、目視で確認する。
【0015】
この補助記憶装置112とともに、スキャンコントローラ111、故障チャンネル判定部113、再構成装置114、入力装置115、縮退運転データ記憶部116、データ置換部117、表示装置118、ネットワーク通信装置120が、データ/制御バス300を介してシステムコントローラ110に接続されている。
【0016】
故障チャンネル判定部113は、自己診断運転時に1検出素子=1チャンネルの状態で取得された補助記憶装置112に記憶されている投影データに対して検出素子ごとに故障の有無を判定し、故障が発生しているか否かについて検出素子ごとに判定する。故障判定方法としては例えば図6に示すように、水ファントムをスキャンして取得したデータをチャンネル方向とビュー方向とに展開してデータ値に応じて濃淡で表したいわゆるサイノグラムを利用する方法が一般的である。サイノグラム上で、故障を起こしている検出素子に応じた位置に異常線が走行する。この異常線を抽出することで故障を起こしている検出素子を特定することができる。
【0017】
データ置換部117は、故障チャンネル判定部113で故障として判定された検出素子を含むチャンネルのデータを、故障として判定された検出素子を含まないチャンネルのデータから生成したデータ(置換データという)に置換する。置換データとしては、その対向データ、又は正常なチャンネルのデータから補間処理により生成したデータ(補間データ)に置換される。対向データとは、周知の通り、ある投影データに対して、X線管101の焦点と検出器103のチャンネル中心を結ぶ直線(投影線)が重なるが、X線の照射方向が逆向きの関係にある投影データとして定義される。補間データは、その故障チャンネルを中心としたチャンネル方向とビュー方向との少なくとも1方向に関して近傍する複数チャンネルのデータから距離補間により求められる。
【0018】
チャンネル故障が発生したときの対処としては、データ置換法がまず適用され、そのデータ置換法が効果的でないとき、つまり空間分解能の低下が許容できないとき、縮退運転モードが実行される。縮退運転モードとは、空間分解能を低下させることなく、その代わりに通常運転の一部機能を制限して運転される運転モードである。この縮退運転モードでどのように機能制限をかけるか、その内容に関するデータが、故障を起こした検出素子を含むチャンネルのチャンネル番号と列番号とに関連付けて予め縮退運転データ記憶部116に記憶されている。
【0019】
図7には、システムコントローラ110によるチャンネル故障時の動作手順が示されている。まず、自己診断モードが起動される(S1)。水ファントムが天板126上にセットされ、1検出素子=1チャンネルの条件下で、スキャンが行われる。DAS105が例えば4チャンネル対応であり、検出素子列数がそれより多い場合、全列のデータを取得するために、電子スイッチ回路104の接続切り替えを伴ってスキャンが繰り返される。取得されたデータは補助記憶装置112に記憶される。
【0020】
システムコントローラ110の制御により自己診断時に取得されたデータが補助記憶装置112から故障チャンネル判定部113に供給される。故障チャンネル判定部113では、図6に示したサイノグラムを検出素子列ごとに生成し、サイノグラムごとに異常線の有無を検出する(S2)。全てのサイノグラムに異常線が検出されなかったとき、故障チャンネル(=故障検出素子)が発生していないものとしてシステムコントローラ110は当該フローを終了する。
【0021】
故障チャンネルが発生しているとき、システムコントローラ110はその故障を起こしている検出素子を特定するためのチャンネル番号(チャンネル方向の位置情報)と列番号(スライス方向の位置情報)とに関するデータを補助記憶装置112に記憶させる。また、少なくとも1つの検出素子が故障を起こしているとき、システムコントローラ110は、直ちに通常運転モードから縮退運転モードに移行するのではなく、その前に、データ置換の適用の可能性を判定するための処理を実行する。
【0022】
まず、システムコントローラ110の制御のもとで、故障検出素子を特定するチャンネル番号と列番号に関するデータが、検査用の投影データセットとともに、補助記憶装置112から再構成装置114と、データ置換部117とにそれぞれ読み出される(S3)。データ置換部117では、検査用の投影データセットから、所定の補間処理法により当該故障検出素子を含むチャンネルのための置換データが計算される(S4)。この置換処理は、1検出素子=1チャンネルのスキャン条件のもとで行われる。
【0023】
再構成装置114では、故障検出素子を含むチャンネルに対応するデータが置換データに置き換えられた検査用の投影データセットに基づいて、画像データが再構成される(S5)。この画像データは、データ置換により故障チャンネルのデータが見かけ上修復された画像データとして修復画像データと称する。同様に、再構成装置114では、比較対照として、オリジナルの検査用の投影データセットに基づいて、画像データ(正常画像データと称する)が再構成される(S6)。
【0024】
これら修復画像データは、正常画像データとともに、表示装置118に送られ、例えば同画面に並べて表示される(S7)。また、表示装置118で修復画像データと正常画像データとは差分され、その差分画像データが、修復画像データ及び正常画像データとともに表示される。
【0025】
医師又は画像確認の専任者(例えばメーカ側技術者)は、修復画像と正常画像との比較、および差分画像の観察により、データ置換による空間分解能の低下を目視確認するとともに、データ置換に起因する空間分解能の低下が許容できる程度か否かを判断する(S8)。データ置換に起因する空間分解能の低下が許容できる程度の微細なものであると判断したとき、入力装置115を介して置換運転モードへの移行を許可する。それによりシステムコントローラ110は、通常運転モードから置換処理運転モードへの移行を設定する(S9)。それにより当該装置を使ったCT検査では、故障修理が完了するまで、置換処理運転モードで動作する。
【0026】
一方、データ置換に起因する空間分解能の低下が許容できない程度であると判断したとき、医師又は画像確認の専任者は、入力装置115を介して置換処理運転モードへの移行を拒否する。
【0027】
その拒否を受けて、システムコントローラ110は、今度は、縮退運転モード移行の確認画面を、縮退運転時の影響に関する注意書き、例えば、「縮退運転時は、画質劣化はありませんが、撮影時間が長くなることがあります。縮退運転モードの切り替えますか?」といったメッセージと共に表示させる。医師又は画像確認の専任者は、縮退運転モードへの移行を許可するとき、入力装置115を介して縮退運転モードへの移行を許可する為に必要な操作を行う。それによりシステムコントローラ110は、通常運転モードから縮退運転モードへの移行を設定する(S11)。それにより当該装置を使ったCT検査では、故障修理が完了するまで、縮退運転モードで動作する。一方、医師又は画像確認の専任者は、縮退運転モードへの移行を拒否するとき、入力装置115を介して縮退運転モードへの移行を拒否する為に必要な操作を行う。それによりシステムコントローラ110は、運転不能(システムダウン)の状態に移行するか、または通常運転モードを継続する(S12)。それにより当該装置を使ったCT検査では、故障修理が完了するまで、システムダウン又は「チャンネル故障に伴って画質が劣化する可能性があります。サービスメンテナンスに早急に連絡してください。」といった注意換気メッセージを伴って通常運転モードで動作する。
【0028】
次に縮退運転について説明する。なお、故障検出素子を含むチャンネルを故障チャンネルと称し、故障検出素子を含まないチャンネルを正常チャンネルと称して区別する。
【0029】
システムコントローラ110は、縮退運転モードでは、故障チャンネルで検出したデータを含むデータセットに由来する画像の表示を停止する。チャンネル故障により画質劣化等の影響を受けた画像が表示されないので、その画質劣化等の影響を受けた画像の読影による誤診の危険性を排除することを可能とする。
【0030】
当該画像表示を停止するために、システムコントローラ110は、故障チャンネルにより収集したデータを含むデータセットから再構成した画像データを表示しないために再構成装置114又は補助記憶装置112から表示装置118への当該画像データの供給を禁止する。換言すると、故障チャンネルを含む列を除いた残りの全チャンネルが正常な列により収集したデータセットから再構成した画像データに対してだけ、再構成装置114又は補助記憶装置112から表示装置118への供給を許可する。この再構成の制限と同様の結果を得るために、システムコントローラ110は、故障チャンネルにより収集したデータを含むデータセットに基づく画像データの再構成を禁止する、換言すると、故障チャンネルを含む列を除いた残りの全チャンネルが正常な列により収集したデータセットに基づく画像データの再構成だけを許可するようにしても良い。このような表示又は再構成処理を制限することにより、表示画像は全てチャンネル故障に起因する画質劣化等の影響を受けていない画像だけとなる。チャンネル故障により画質劣化等の影響を受けた画像が表示されないので、表示した場合の誤診等の不具合を回避することができる。
【0031】
この縮退運転は、再構成や表示処理だけでなく、スキャン、ここでは主に被検体の広範囲のデータをヘリカルスキャン又はコンベンショナルスキャンにより収集する場合もに適用される。縮退運転モード下でのスキャンでは、故障チャンネルが少なくとも1つ存在する列によるデータ収集動作が、全てが正常チャンネルの列によるデータ収集動作により補償されるように、天板移動が縮退運転データに基づいてシステムコントローラ110で設定される。以下、具体的に説明する。
【0032】
スキャンにあたっては、その準備段階で、スライス厚S、スライス枚数Nとともに、ヘリカルスキャン又はコンベンショナルスキャンの区別が設定される。スライス厚Sに従ってスライス方向に関して加算される検出素子数が決定される。ここでは、スライス厚Sが0.5mm、スライス枚数が4と設定されたものと仮定する。この仮定のもとでは、0.5mm幅の中央の4列が、1検出素子=1チャンネルの条件で使用される。図8(a)に示すように、通常運転モードでは、天板126の送りピッチFPは、S×N(S×4)に設定される。送りピッチFPは、ヘリカルスキャンでは、ヘリカルピッチHPに相当し、コンベンショナルスキャンでは、スキャンピッチSPに相当する。
【0033】
この中央4列のうち、天板移動方向からみて最後尾の列の中に、故障チャンネルが含まれているとき、図8(b)に示すように、縮退運転モードでは、天板126の送りピッチFPは、S×N´に設定される。ここで、更新されたスライス枚数N´は、故障チャンネルを含まない、正常チャンネルからなる列(故障チャンネルを含まない列を実線で示し、故障チャンネルを含む列を破線で示している)がスライス方向に関して連続する最大列数として定義される。図8(b)の例では、先頭の3列が、故障チャンネルを含まない、正常なチャンネルからなる列であり、その連続数は3である。従って、N´=3に設定される。送りピッチFPをS×N´(=S×3)に設定することにより、撮影時間は通常運転モード時より1列に相当する時間長くなるものの、初期設定されたスライス厚Sの分解能でデータ欠損無く投影データを収集することができる。
【0034】
図8(c)に示すように、中央4列のうち、天板移動の先頭列からみて3番目の列の中に、故障チャンネルが含まれているとき、故障チャンネルを含まない列がスライス方向に関して連続する最大列数は「2」として特定される。つまり、この例では、N´=2に設定される。送りピッチFPをS×N´(=S×2)に設定することにより、撮影時間は通常運転モード時の約2倍に長くなるものの、初期設定されたスライス厚Sの一定の分解能で投影データを収集することができる。
【0035】
同様に、図8(d)のように先頭の1列だけが故障チャンネルを含む場合、N´=3、図9(a)のように後2列が故障チャンネルを含む場合、N´=2、図9(b)のように先頭の2列が故障チャンネルを含む場合、N´=2、そして図9(c)のように故障チャンネルを含む列が交互である場合、N´=1にそれぞれ設定される。
【0036】
天板送りピッチFD及びデータ収集に使用する列に関するデータは縮退運転データに含まれ、縮退運転データは故障チャンネルを含む列の様々なパターンに対して個々に関連付けられている。故障チャンネルを含む列のパターンに関連付けられている縮退運転データから、データ収集に使用する列、天板送りピッチFDが設定される。
【0037】
このように故障チャンネルを含む列のパターンに応じて天板送りピッチFDを修正して、故障チャンネルを含む列を使用しないで、故障チャンネルを含まない列だけでデータ収集を行うことにより、初期設定されたスライス厚Sの分解能でデータ欠損無く投影データを収集することができ、従って画質劣化のない画像を再構成することができる。
【0038】
上述のように、故障チャンネルを含む列を使用しないのであるから、その列へのX線の照射は被曝の観点から望ましいものではない。システムコントローラ110は、図10(a)、図10(b)、図10(c)、図10(d)に示すようにデータ収集に使用する列にだけX線が照射されるように、つまり故障チャンネルを含む列にはX線が非照射となるようにコリメータ駆動部107を制御してコリメータ125の開口の幅及びその中心位置を調整して、X線照射野を制限する。
【0039】
なお、上述の説明では、病院サイトで置換運転モードや縮退運転モードへの移行の判断及び設定を行うようになっているが、これら処理を遠隔のメンテナンスサービスサイトで行うようにしてもよい。図11に示すように、故障チャンネル判定部113が故障チャンネルの発生を判定した場合、ホストコントローラ110の制御のもとでネットワーク通信装置120から故障情報(故障チャンネル番号(故障検出素子番号)、故障列番号、故障時の動作モード等)が専用回線または一般公衆回線等の通信回線122を経由してメンテナンスサービス会社のメンテナンスサービス端末124に送信される。その情報に基づいてサービスマンが、リモートで、メンテナンスサービス端末124を介してデータ置換運転モードの移行、データ置換方法の種類、縮退運転モードの移行を指示するようにしてもよい。例えば、故障チャンネル判定部113で故障チャンネル(故障検出素子)が発見された場合、ネットワーク通信装置120から故障チャンネル番号(故障検出素子番号)、故障チャンネルを含む列の列番号、故障時の動作モード、画像データ、サイノグラムデータが通信回線122を経由してメンテナンスサービス端末124に送信される。サービスマンは、それら送られてきた故障検出素子番号、故障時の動作モード、画像データ、サイノグラムデータの情報を解析し、その解析結果に従って、置換運転モードや縮退運転モードへの移行の設定を遠隔操作で行うとともに、メンテナンスサービス端末124から、サービスマン派遣端末に派遣要請を送信する。それにより、置換運転や縮退運転から迅速に通常運転へ復帰させることができる。
【0040】
(変形例)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されてもよい。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、X線コンピュータ断層撮影装置において、チャンネル故障による空間分解能の低下を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施形態によるコンピュータ断層撮影装置の構成図。
【図2】図1のX線検出器の斜視図。
【図3】図1のX線検出器の平面図。
【図4】本実施形態において、スライス厚及びスキャン厚の定義に関する説明補足図。
【図5】本実施形態において、ヘリカルピッチ及びコンベンショナルピッチの定義に関する説明補足図。
【図6】図1の故障チャンネル判定部による判定方法に関する説明補足図。
【図7】図1のシステムコントローラによるチャンネル故障時の動作を示すフローチャート。
【図8】図1の縮退運転データ記憶部に記憶される縮退運転データに基づいて行われる縮退運転下での天板送り制御の一例を示す図。
【図9】図1の縮退運転データ記憶部に記憶される縮退運転データに基づいて行われる縮退運転下での天板送り制御の他の例を示す図。
【図10】図1の縮退運転データ記憶部に記憶される縮退運転データに基づいて行われる縮退運転下でのコリメータの開口制御の一例を示す図。
【図11】本実施形態において、リモートメンテナンスの概要説明図。
【符号の説明】
100…ガントリ、
101…X線管、
102…回転リング、
103…X線検出器、
104…データ収集回路、
105…非接触データ伝送装置、
106…前処理装置、
107…コリメータ駆動部、
108…スリップリング、
109…高電圧発生装置、
110…システムコントローラ、
111…スキャンコントローラ、
112…補助記憶装置、
113…故障チャンネル判定部、
114…再構成装置、
115…入力装置、
116…縮退運転データ記憶部、
117…データ置換部、
118…表示装置、
120…ネットワーク通信装置、
122…通信回線、
124…メンテナンスサービス端末、
126…天板、
127…天板駆動部。

Claims (9)

  1. X線管及び多列仕様のX線検出器により収集されたデータに基づいて画像データを再構成し、画像を表示するX線コンピュータ断層撮影装置において、
    前記X線検出器が故障検出素子を含むとき、前記故障検出素子を含む列を除いた残りの列により前記データを収集することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
  2. X線管及び多列仕様のX線検出器により収集されたデータに基づいて画像データを再構成し、画像を表示するX線コンピュータ断層撮影装置において、
    前記X線検出器が故障検出素子を含むとき、前記故障検出素子を含む列を除いた残りの列により収集したデータに基づいて前記画像データを再構成することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
  3. X線管及び多列仕様のX線検出器により収集されたデータに基づいて画像データを再構成し、画像を表示するX線コンピュータ断層撮影装置において、
    前記X線検出器が故障検出素子を含むとき、前記故障検出素子を含む列により収集したデータから再構成した画像データの表示を制限することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
  4. X線管及び多列仕様のX線検出器により収集されたデータに基づいて画像データを再構成し、画像を表示するX線コンピュータ断層撮影装置において、
    前記X線検出器が故障検出素子を含むとき、前記故障検出素子を含む列に対してはX線が非照射となるようにX線照射野を制限することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
  5. 被検体にX線を照射するX線管と、
    前記被検体を透過したX線を検出するための複数の検出素子を有する多列仕様のX線検出器と、
    前記X線検出器から出力されたデータのセットに基づいて画像データを再構成する再構成装置と、
    前記再構成された画像データに基づいて画像を表示する表示装置と、
    前記検出素子の故障を個々に判定する判定部と、
    前記判定部により故障と判定された検出素子のデータを含むデータセットから再構成された画像データの表示を制限する制御部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
  6. 被検体にX線を照射するX線管と、
    前記被検体を透過したX線を検出するための複数の検出素子を有する多列仕様のX線検出器と、
    前記X線検出器から出力されたデータのセットに基づいて画像データを再構成する再構成装置と、
    前記再構成された画像データに基づいて画像を表示する表示装置と、
    前記検出素子の故障を個々に判定する判定部と、
    前記判定部により故障と判定された検出素子のデータを含むデータセットを用いた画像データの再構成を制限する制御部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
  7. 被検体にX線を照射するX線管と、
    前記被検体を透過したX線を検出するための複数の検出素子を有する多列仕様のX線検出器と、
    前記X線検出器から出力されたデータのセットに基づいて画像データを再構成する再構成装置と、
    前記再構成された画像データに基づいて画像を表示する表示装置と、
    前記検出素子の故障を個々に判定する判定部と、
    前記判定部により故障と判定された検出素子を含む列を除く残りの列により収集したデータから前記データセットを構成する制御部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
  8. 被検体にX線を照射するX線管と、
    前記被検体を透過したX線を検出するための複数の検出素子を有する多列仕様のX線検出器と、
    前記被検体を載置する天板を移動自在に支持する寝台と、
    前記X線検出器から出力されたデータのセットに基づいて画像データを再構成する再構成装置と、
    前記再構成された画像データに基づいて画像を表示する表示装置と、
    前記検出素子の故障を個々に判定する判定部と、
    前記判定部により故障と判定された検出素子を含む列を除く残りの列に基づいて、ヘリカルスキャン又はコンベンショナルスキャン時の前記天板の送りピッチを設定する制御部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
  9. 被検体にX線を照射するX線管と、
    前記X線管に取り付けられた開口可変のコリメータと、
    前記被検体を透過したX線を検出するための複数の検出素子を有する多列仕様のX線検出器と、
    前記X線検出器から出力されたデータのセットに基づいて画像データを再構成する再構成装置と、
    前記再構成された画像データに基づいて画像を表示する表示装置と、
    前記検出素子の故障を個々に判定する判定部と、
    前記判定部により故障有りとして判定された検出素子を含む列へのX線の照射を制限するために前記コリメータの開口を制御する制御部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
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