JP2004049008A - ホモシステインの定量方法及び定量用試薬 - Google Patents
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Abstract
【課題】ホモシステインとシステインを含む生体試料中のホモシステインを、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素を用いて定量する際に、共存するシステインの影響を回避し、より簡便で正確に定量できるホモシステインの定量方法、及び臨床現場等において実質的に適用しうるホモシステインの定量用試薬を提供する。
【解決手段】(a)還元剤非共存下で、生体試料にシステインジオキシゲナーゼを作用させ、(b)続いて、還元剤と、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素とを作用させながら硫化水素を生成させ、(c)生成した硫化水素の濃度を測定することにより、前記生体試料中のホモシステイン濃度を測定する。
【選択図】 なし
【解決手段】(a)還元剤非共存下で、生体試料にシステインジオキシゲナーゼを作用させ、(b)続いて、還元剤と、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素とを作用させながら硫化水素を生成させ、(c)生成した硫化水素の濃度を測定することにより、前記生体試料中のホモシステイン濃度を測定する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホモシステインとシステインを含む生体試料中のホモシステインを、システインの影響を受けることなく、酵素を用いて簡便かつ正確に測定できるようにしたホモシステインの定量方法及びホモシステインの定量用試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
試料中のホモシステインを定量する方法として、ホモシステインに酵素を作用させて、生成する硫化水素を測定する方法が知られている。この方法において使用される酵素としては、L−メチオニンγ−リアーゼやホモシステインデスルフハイドリラーゼがある。また、本発明者は、アミノ酸合成酵素であるο−アセチルホモセリン−リアーゼ(ECクラス4.2.99に属する)においても、チオール化合物の存在下、γ−置換作用を触媒することによって硫化水素が産生されることを見出しており、本酵素を用いてホモシステインを定量できることを報告している(特開2000−166597号公報参照)。
【0003】
しかしながら、これらの酵素は、ホモシステインだけでなくシステインにも反応して硫化水素を生成するため、ホモシステインとシステインが共存するような試料(例えば血液などの生体試料)中のホモシステインを正確に測定できないという問題があった。
【0004】
そこで、本発明者らは、予め上記酵素を用いて、システイン含量と硫化水素生成量の関係を定数化しておき、システインとホモシステインを含有する試料に上記酵素を所定の条件下で作用させ、発生する硫化水素量(1)を測定し、次に、別途求めた該生体試料中のシステイン含量から、上記定数を用いてシステイン由来の硫化水素量(2)を求め、それを硫化水素(1)から差し引くことにより、システインが共存する生体試料中のホモシステイン含量を求める方法を開示している(特開2000−270895号公報)。
【0005】
また、特表2000−513589号公報には、生体試料中のシステインをホモシステイナーゼの基質ではない化合物に変換することができる酵素(γ−グルタミルシステインシンターゼ、システインオキシダーゼ、シスタチオニンβシンターゼ及びシステインtRNAシンターゼ)で前処理し、残ったホモシステインをホモシステイナーゼで測定する方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2000−270895号公報に開示された方法では、別途システイン含量を求めなければならないため、あまり簡易な方法とは言えなかった。
【0007】
一方、特表2000−513589号公報に開示された方法においては、以下のような問題があった。
【0008】
例えば、γ−グルタミルシステインシンターゼ(ラット腎臓由来)は基質特異性が低く、システイン以外にもシステイン誘導体やDL−ホモシステインにも反応してしまうという問題があった(Biochemistry, 10 (3), 1971; 372−380参照)。
【0009】
また、シスタチオニンβシンターゼは、チオール化合物存在下、システインに対してβ置換反応を有することが知られているが、生成物として硫化水素を産生するため、ホモシステインに酵素を作用させて、生成する硫化水素を測定する方法には使用できない。
【0010】
また、システインtRNAシンターゼは基質にRNAを用いることから、RNaseの影響を受けやすいという問題があった。
【0011】
また、ラット肝臓由来のシステインジオキシゲナーゼ(別名システインオキシダーゼ)は、▲1▼活性型とするために、嫌気的な条件で、システイン存在下でインキュベート処理が必要である、▲2▼非常に不安定で失活してしまうため、保存が困難であり、安定化蛋白(プロテイン−A)が必要である(J. Biochem. 83 (2), 1978; 479−491参照)、▲3▼還元剤の存在下では容易に失活してしまう等の問題があった。
【0012】
したがって、上記公報に開示された方法では、試料中のシステインを簡便かつ効率よく除去することは困難であった。
【0013】
また、特表2000−513589号公報には、遺伝子改変によりホモシステインに対する基質特異性を高めたTrichomonas vaginalis由来のメチオニンγリアーゼ、特開2002−10787号公報には、システインには実質的に反応せず、ホモシステインに対して特異的に反応する酵素として、サーマス・サーモフィルス由来のアミノ酸合成酵素であるο−アセチルホモセリンスルフヒドラーゼも開示されているが、生体試料中のシステイン含量が1mMを越える高濃度のケースもあることから、これらの基質特異性を高めた酵素を用いても、システインの影響を完全に回避するには不充分であった。
【0014】
したがって、本発明の目的は、ホモシステインとシステインを含む生体試料中のホモシステインを、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素を用いて定量する際に、共存するシステインの影響を回避し、より簡便で正確に定量できるホモシステインの定量方法、及び臨床現場等において実質的に適用しうるホモシステインの定量用試薬を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、ホモシステインとシステインを含む生体試料中のホモシステインを、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素を用いて定量する方法において、
(a)還元剤非共存下で、生体試料にシステインジオキシゲナーゼを作用させ、(b)続いて、還元剤と、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素とを作用させて硫化水素を生成させ、(c)生成した硫化水素の濃度を測定することにより、前記生体試料中のホモシステイン濃度を測定することを特徴とするホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0016】
上記発明によれば、還元剤非共存下で、生体試料にシステインジオキシゲナーゼを作用させることにより、最初に該試料中の遊離のシステインを効率よく除去し、次いで、還元剤を作用させることにより、タンパク質と結合したシステインやホモシステインを遊離させて、新たに生成した遊離のシステインを残存するシステインジオキシゲナーゼ活性によって除去することができる。そのため、還元剤と同時に作用させたホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素は、試料中のシステインの影響をほとんど受けることなく、ホモシステインに作用して硫化水素を生成させることができるので、生成した硫化水素の濃度を測定することにより、簡便かつ正確に試料中のホモシステインを定量することができる。
【0017】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記(a)の工程をpH5.5〜7の緩衝液中で行なう、ホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0018】
上記発明によれば、システインジオキシゲナーゼの活性を高く維持できるので、試料中のシステインを効率よく除去することができる。
【0019】
本発明の第3は、前記第1又は2の発明において、前記還元剤は、チオール化合物である、ホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0020】
上記発明によれば、試料中のタンパク質と結合したシステイン及びホモシステインを効率よく遊離させることができるので、システインジオキシゲナーゼの作用により、システインの影響をより少なくすることができると共にホモシステインをより正確に定量することができる。
【0021】
本発明の第4は、前記第3の発明において、前記ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素は、アミノ酸合成酵素である、ホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0022】
上記発明によれば、チオール化合物の存在下で、アミノ酸合成酵素をホモシステインに作用させることにより、γ−置換反応により効率よく硫化水素を生成させることができる。
【0023】
本発明の第5は、前記第1〜4のいずれかの発明において、前記生成した硫化水素の濃度を、金属イオンと金属指示薬を用いて測定する、ホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0024】
上記発明によれば、生成した硫化水素の濃度を簡単かつ正確に測定することができる。
【0025】
本発明の第6は、前記第1〜5のいずれかの発明において、前記システインジオキシゲナーゼは、pH5.5〜7の緩衝液中で保存したものを用いる、ホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0026】
上記発明によれば、システインジオキシゲナーゼの安定性を高めることができ、充分な活性を維持したシステインジオキシゲナーゼを用いることができるので、システインを効率よく除去することができる。
【0027】
本発明の第7は、前記第1〜5のいずれかの発明において、前記システインジオキシゲナーゼは、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムを含むpH5.5〜7の緩衝液中で凍結保存したものを用いる、ホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0028】
上記発明によれば、より活性の強いシステインジオキシゲナーゼを用いることができる。
【0029】
本発明の第8は、前記第1〜5のいずれかの発明において、前記システインジオキシゲナーゼは、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムと、糖類とを含むpH5.5〜7の緩衝液に、システインジオキシゲナーゼを溶解し、これを凍結乾燥したものを用いる、ホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0030】
上記発明によれば、更に活性の強いシステインジオキシゲナーゼを用いることができる。
【0031】
本発明の第9は、システインジオキシゲナーゼを含有する試薬(I)と、還元剤と、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素とを含有する試薬(II)と、金属イオンと金属指示薬とを含有する試薬(III)とからなる、ホモシステインの定量用試薬を提供するものである。
【0032】
上記発明によれば、試料中に共存するシステインの影響を回避し、より簡便で正確にホモシステインを定量することができ、臨床現場等において実質的に適用しうる定量用試薬を提供することができる。
【0033】
本発明の第10は、前記第9の発明において、前記還元剤はチオール化合物である、ホモシステインの定量用試薬を提供するものである。
【0034】
上記発明によれば、試料中のタンパク質と結合したシステイン及びホモシステインを効率よく遊離させることができるので、システインジオキシゲナーゼの作用により、システインの影響をより少なくすることができると共にホモシステインをより正確に定量することができる定量用試薬を提供することができる。
【0035】
本発明の第11は、前記第10の発明において、前記ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素は、アミノ酸合成酵素である、ホモシステインの定量用試薬を提供するものである。
【0036】
上記発明によれば、チオール化合物の存在下で、アミノ酸合成酵素をホモシステインに作用させることにより、γ−置換反応により硫化水素を生成させることができるので、試薬の構成を単純にすることができる。
【0037】
本発明の第12は、前記第9〜11のいずれかの発明において、前記試薬(I)は、pH5.5〜7の緩衝液にシステインジオキシゲナーゼを溶解したものである、ホモシステインの定量用試薬を提供するものである。
【0038】
上記発明によれば、システインジオキシゲナーゼの安定性を高めることができる。
【0039】
本発明の第13は、前記第9〜11のいずれかの発明において、前記試薬(I)は、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムを含むpH5.5〜7の緩衝液にシステインジオキシゲナーゼを溶解し、これを凍結したものである、ホモシステインの定量用試薬を提供するものである。
【0040】
上記発明によれば、システインジオキシゲナーゼの安定性をより高めることができる。
【0041】
本発明の第14は、前記第9〜11のいずれかの発明において、前記試薬(I)は、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムと、糖類とを含むpH5.5〜7の緩衝液にシステインジオキシゲナーゼを溶解し、これを凍結乾燥したものである、ホモシステインの定量用試薬を提供するものである。
【0042】
上記発明によれば、システインジオキシゲナーゼの安定性を更に高めることができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のホモシステインの定量方法について、各工程ごとに説明する。(a)還元剤非共存下で、生体試料にシステインジオキシゲナーゼを作用させる工程
ホモシステインとシステインを含む生体試料に、還元剤非共存下でシステインジオキシゲナーゼを所定時間作用させて、遊離のシステインを選択的に除去する。酵素反応は、通常、20〜50℃、好ましくは25〜37℃で、1〜30分間行なうことが好ましい。
【0044】
本発明においては、生体試料に、還元剤非共存下でシステインジオキシゲナーゼを作用させることにより、システインジオキシゲナーゼの失活を防ぎ、効率よく遊離のシステインを除去できる。
【0045】
本発明において、ホモシステインとシステインを含む生体試料としては、例えば、血液、血清、血漿、尿等が例示できる。
【0046】
本発明において用いられるシステインジオキシゲナーゼは、システインを酸化してシステインスルフィン酸を生成する酵素で、哺乳類(ヒト、ラット等)の肝臓由来やHistoplasma capsulatum由来のものが知られており、上記の生物から、例えば、J. Biochem. 83 (2), 1978; 479−491、Biochemistry 22, 1983; 762−768等に記載された公知の方法で調製することができる。
【0047】
また、既にシステインジオキシゲナーゼ遺伝子が解明されており(特開平3−272688号公報、Biochimica Biophysica Acta 1209, 1994; 107−110参照)、遺伝子組換え発現による製造も可能である。
【0048】
例えば、クローニングしたシステインオキシダーゼ遺伝子を公知の方法により適当な発現ベクターに組込み、この発現ベクターを適当な宿主細胞に導入して形質転換体を得、この形質転換体を適当な栄養培地で培養し、この培養物から抽出・精製することにより得ることができる(Molecular Cloning, A laboratory manual. 2nd Edition, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press)。上記宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌、酵母、動物細胞等が使用できる。また、発現ベクターとしては、例えば、大腸菌などの微生物を用いる場合は、pUC、pMalやpQEベクター(QIA express発現システム)等が例示できる。
【0049】
培養物からシステインジオキシゲナーゼを抽出・精製する方法は、公知の方法によって行なうことができ、超音波処理、界面活性剤による処理及び酵素消化等によって抽出した後、得られた抽出液を、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過、等電点電気泳動等により精製することができる。
【0050】
なお、システインジオキシゲナーゼは非常に不安定であり、酵素分子内にある鉄原子が外れた場合には、鉄イオン(具体的には、塩化鉄、酢酸鉄、硫酸鉄等の鉄イオンを遊離する化合物)を共存させることにより、酵素分子内に鉄原子が取り込まれ、さらに、嫌気的状況下、SH基を持つ化合物(L−システイン、システアミン、ジチオスレイトール、メルカプトエタノール等)の共存下で加温処理することにより、酵素活性を回復させることができる。
【0051】
システインジオキシゲナーゼの添加量は、測定する生体試料中に含まれる全システインを充分に除去できるような量を、生体試料によって適宜決定すればよく、好ましくは0.1〜500単位(u)/mL、より好ましくは1〜50単位(u)/mLである。なお、システインジオキシゲナーゼ1単位(u)とは、下記の条件で1分間に1μmolの酸素を消費する酵素活性を意味する。
【0052】
37℃に保った反応セルに、200mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)0.9mL及び100mM L−システイン0.1mLを加えて予備加温し、酵素液を適量(5μL程度)加え、溶存酸素計を用いて溶液中の酸素の減少をモニターして、酸素の消費量を測定する。
【0053】
本発明においては、反応中のシステインジオキシゲナーゼの失活を防ぐために、pH5.5〜7の緩衝液中で酵素反応を行なうことが好ましい。これにより、後述する(b)の工程でもシステインジオキシゲナーゼの活性を充分に維持することができるので、還元剤によって遊離したシステインを除去することができる。
【0054】
また、より高い活性を有するシステインジオキシゲナーゼを用いるために、▲1▼pH5.5〜7の緩衝液中で冷蔵保存したシステインジオキシゲナーゼ、▲2▼塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムを含むpH5.5〜7の緩衝液中で凍結保存したシステインジオキシゲナーゼ、又は▲3▼塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムと、糖類とを含むpH5.5〜7の緩衝液に、システインジオキシゲナーゼを溶解し、これを凍結乾燥したものを、使用時に水に溶解してから用いることが好ましい。
【0055】
上記緩衝液は、pH5.5〜7に緩衝能を有するものであればよく、イミダゾール塩酸、酢酸−ナトリウム、MES−ナトリウム緩衝液等が好ましく例示できる。また、上記糖類としては、凍結乾燥した酵素剤を再溶解した際に、不溶化を防ぐ作用のあるものであれば特に限定されないが、シュークロースが特に好ましく例示できる。
【0056】
(b)還元剤と、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素とを作用させながら硫化水素を生成させる工程
上記(a)の反応液に、還元剤を添加して、上記(a)の工程では除去できなかったタンパク質と結合したシステインを遊離させると共に、タンパク質と結合したホモシステインを遊離させて、試料中のホモシステインを完全に遊離状態とする。そして、遊離したシステインを、残存するシステインジオキシゲナーゼ活性により除去しながら、還元剤と同時に添加したホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素により、ホモシステインから硫化水素を生成させる。
【0057】
本発明においては、上記(a)の工程でシステインジオキシゲナーゼがほとんど失活することがなく、還元剤存在下でも、新たに生成した遊離のシステインを除去するのに充分な酵素活性を維持することができるので、効率よくシステインを除去できる。その結果、システインの影響を受けることなく、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素をホモシステインに作用させることができ、生成した硫化水素の濃度を測定することにより、簡便かつ正確に試料中のホモシステインを定量することができる。
【0058】
本発明において用いられるホモシステイン及びシステインに作用して硫化水素を生成する作用を有する酵素としては、還元剤存在下で、置換反応により硫化水素を生成する触媒作用を有する酵素が好ましい。このような酵素としては、例えば、ο−アセチルホモセリン−リアーゼ等のアミノ酸合成酵素、L−メチオニンγ−リアーゼ等が挙げられる。
【0059】
例えば、ο−アセチルホモセリン−リアーゼは、アミノ酸合成作用(ο−アセチルホモセリンと硫化水素からはホモシステインと酢酸、又はο−アセチルホモセリンとメタンチオールからはメチオニンと酢酸を生成する作用)を有する酵素であるが、この酵素をチオール化合物存在下でホモシステインに作用させると、γ−置換反応により硫化水素を生成する触媒作用を示す(特開2000−166597号公報参照)。
【0060】
また、L−メチオニンγ−リアーゼは、チオール化合物非存在下では、ホモシステインに対して分解(脱離)作用を示して硫化水素を発生するが、チオール化合物存在下では、γ−置換反応を触媒する酵素として知られている。
【0061】
本発明においては、アミノ酸合成酵素(ο−アセチルホモセリン−リアーゼ)が特に好ましく用いられる。ο−アセチルホモセリン−リアーゼは、それを産生する様々な微生物(例えば、細菌ではバチルス属等、酵母ではサッカロミセス属、真菌ではニューロスポラ属)等から公知の方法により調製することができる(Ozaki等., J. Biochem.91; 1163−1171 (1982)、Yamagata., J. Biochem. 96; 1511−1523 (1984)、Brzywczy等., Acta. Biochimica. Polonica. 40 (3); 421−428 (1993))。また、ο−アセチルホモセリン−リアーゼは市販されているものもあり、例えば、バチルス属由来のο−アセチルホモセリン−リアーゼは、ユニチカ株式会社(商品名「GCS」)等から入手できる。
【0062】
ホモシステイン及びシステインに作用して硫化水素を生成する作用を有する酵素の添加量は、生体試料中のホモシステインに対して充分な量を、測定する生体試料によって適宜決定すればよく、好ましくは0.01〜100単位(u)/mL、より好ましくは0.1〜10単位(u)/mLである。なお、ホモシステイン及びシステインに作用して硫化水素を生成する作用を有する酵素1単位(u)とは、下記の条件で1分間に1μmolの硫化水素を生成する酵素活性を意味する。
【0063】
200mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5) 0.25mLに、8mM 2−メルカプトエタノールを0.125mL、10mM DL−ホモシステイン 0.1mLを加えて37℃で5分間加温する。続いて、この溶液に適当に希釈した酵素液を0.025mL加え、37℃で15分間加温した後、3% NaOH水溶液を0.1mL、16mM N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン塩酸塩溶液 0.325mL及び10mM 塩化第二鉄塩酸溶液 0.075mLを順次追加し、室温で15分間放置後、670nmの吸光度を測定する。この条件下でのメチレンブルーのモル吸光系数(ε=15000)から、酵素反応により生成した硫化水素の量を計算し、酵素活性を求める。
【0064】
また、本発明で用いられる還元剤としては、チオール化合物、ホスフィン化合物、水素化硼素化合物等が例示できるが、中でもチオール化合物は、タンパク質と結合(ジスルフィド結合)したシステインやホモシステインを特異的に還元し、更にそのままアミノ酸合成酵素等による酵素反応を行なうことができるので好ましい。
【0065】
チオール化合物としては、酵素による置換反応の基質となるものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、メタンチオール、2−メルカプトエタン、ジチオスレイトール、チオグリセロール、システアミン等が例示できる。
【0066】
本発明において、還元剤は、通常、1〜50mMとなるように添加することが好ましい。
【0067】
(c)生成した硫化水素の濃度を測定することにより、前記生体試料中のホモシステイン濃度を測定する工程
上記(b)の工程で生成した硫化水素の濃度を測定する方法は、特に限定されないが、簡便性及び正確性の点から金属イオンと金属指示薬を用いて測定することが好ましい。例えば、特開2000−338096号公報に開示された方法などが挙げられる。
【0068】
具体的には、金属イオンとして3価の鉄イオンを用い、この3価の鉄イオンが硫化水素(硫化物イオン)によって還元されて生じる2価の鉄イオンを、2価の鉄イオンと反応して発色する金属指示薬を用いて検出し、その吸光度を測定して、予め作成しておいた検量線から硫化水素の濃度を求めることが好ましい。また、残存した3価の鉄イオンを、3価の鉄イオンと反応して発色する金属指示薬を用いて検出し、その吸光度を測定して、予め作成しておいた検量線から硫化水素の濃度を求めてもよい。
【0069】
そして、ホモシステインの濃度と、ホモシステイン及びシステインに作用して硫化水素を生成する作用を有する酵素を作用させた際に生成する硫化水素濃度との検量線をもとに、本工程で測定した硫化水素の濃度から生体試料中のホモシステインの濃度を計算することができる。
【0070】
また、3価の鉄イオンとしては、具体的には水溶液中で3価の鉄イオンを遊離する化合物であれば特に制限なく用いることができる。例えば、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)アンモニウム水和物等のイオン化合物の他、エチレンジアミン四酢酸一ナトリウム鉄(III)、シュウ酸アンモニウム鉄(III)水和物等のキレート化合物が挙げられ、中でもエチレンジアミン四酢酸一ナトリウム鉄(III)が好ましく用いられる。
【0071】
更に、上記のような錯体を用いる場合は、鉄イオンに配位する能力を有する補助剤(例えば、IDA(イミノ二酢酸)、ADA(N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸)、Bicine(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン等)を、0.01〜10mM共存させることが好ましい。
【0072】
また、2価又は3価の鉄イオンと反応して発色する金属指示薬としては、これらの鉄イオンと錯体を形成するものであれば特に制限されないが、その錯体形成時の発色感度が高いものが好ましい。例えば、2価の鉄イオンと反応して発色する金属指示薬としては、ピリジルアゾ化合物やニトロソアミノフェノール化合物等が例示できる。具体的には、ピリジルアゾ化合物としては、2−(5−ブロモ−2−ピリジルアゾ)−5−[N−N−プロピル−N−(3−スルフォプロピル)アミノ]フェノール・ナトリウム塩(商品名「5Br・PAPS」、以下、5Br・PAPSと略記する)や2−(5−ニトロ−2−ピリジルアゾ)−5−[N−N−プロピル−N−(3−スルフォプロピル)アミノ]フェノール・ナトリウム塩(商品名「Nitro・PAPS」)が例示でき、ニトロソアミノフェノール化合物としては、2−ニトロソ−5−[N−N−プロピル−N−(3−スルフォプロピル)アミノ]フェノール(商品名「Nitroso・PSAP」)や2−ニトロソ−5−[N−エチル−N−(3−スルフォプロピル)アミノ]フェノール(商品名「Nitroso・ESAP」)が例示できる。
【0073】
また、3価の鉄イオンを反応して発色する金属指示薬としては、フェロン、カルシクローム(Calcichrome)、クロマズロールB(Chromazurol B)、クロマズロールS(Chromazurol S)、クロモトロープ酸(Chromotropic acid)等が例示できる。
【0074】
これらの金属指示薬は水溶性であり、2価又は3価の鉄イオンと錯体を形成することにより高感度に発色する性質を有する。これらの金属指示薬は様々な特徴を持ったものが市販されており、例えば(株)同仁化学研究所より入手できる。
【0075】
なお、鉄イオンと鉄イオンと反応して発色する金属指示薬を用いて硫化水素の濃度を測定する際に、予め試料中に、アルミニウム塩及び/又はガリウム塩と、銅イオン特異的なキレート剤を添加しておくことが好ましい。これにより、生体試料中に共存する成分(血清銅やトランスフェリン等)の影響を回避し、より正確に硫化水素の濃度を測定することができる。
【0076】
上記アルミニウム塩としては、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等が例示でき、ガリウム塩としては、硝酸ガリウム、硫酸ガリウム等が例示できる。また、銅イオン特異的なキレート剤としては、ネオクプロイン、バソクプロイン又はそれらの塩等が例示できる。
【0077】
アルミニウム塩及び/又はガリウム塩の添加量は、通常、好ましくは0.01〜10mM、より好ましくは0.3〜3mMの濃度となるように添加することが好ましい。なお、アルカリpHにおけるアルミニウムやガリウムの水酸化物の生成を防止するため、適当な濃度(通常、0.01〜50mM)の酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、IDA(イミノ二酢酸)等の有機酸を併用することがより好ましい。
【0078】
また、銅イオン特異的なキレート剤の添加量は、通常、好ましくは0.01〜50mM、より好ましくは0.5〜10mMの濃度となるように添加することが好ましい。
【0079】
次に、本発明のホモシステインの定量用試薬について説明する。
本発明のホモシステインの定量用試薬は、システインジオキシゲナーゼを含有する試薬(I)と、還元剤と、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素とを含有する試薬(II)と、金属イオンと金属指示薬とを含有する試薬(III)とからなり、各試薬を順次試料に添加することにより、試料中に共存するシステインの影響を回避し、より簡便で正確に試料中のホモシステインを定量できるようにしたものである。
【0080】
・試薬(I)
試薬(I)の製品形態は、溶液、凍結品、凍結乾燥品等を適宜選択できるが、システインジオキシゲナーゼは安定性が低いため、以下のようにして調製、保存することが好ましい。
【0081】
▲1▼溶液の形態とする場合は、pH5.5〜7の緩衝液にシステインジオキシゲナーゼを溶解して、2〜10℃で冷蔵保存することが好ましい。上記緩衝液としては、pH5.5〜7に緩衝能を有するものであればよく、イミダゾール塩酸、酢酸−ナトリウム、MES−ナトリウム緩衝液等が好ましく例示できる。このような緩衝液中でシステインジオキシゲナーゼを保存することにより、冷蔵保存した際のシステインジオキシゲナーゼの失活を防止することができる。
【0082】
▲2▼凍結品とする場合は、上記▲1▼の緩衝液に、更に塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムを添加したものにシステインジオキシゲナーゼを溶解して凍結し、−30℃以下、より好ましくは−80℃以下で保存することが好ましい。塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムの添加量は、通常、0.1〜2Mが好ましく、0.25〜1Mがより好ましい。これにより、解凍した際の不溶物の生成を防止することができ、保存安定性を更に向上することができる。
【0083】
▲3▼凍結乾燥品とする場合は、上記▲2▼の緩衝液に、更に糖類を添加したものに、システインジオキシゲナーゼを溶解し、これを凍結乾燥処理して、10℃以下で保存することが好ましい。上記糖類としては、シュークロース等が例示できる。糖類の添加量は、0.1〜20(w/v)%が好ましく、5〜20(w/v)%がより好ましい。糖類を添加することにより、再溶解時の不溶物の生成を防止することができ、保存安定性を更に向上することができる。
【0084】
本発明においては、保存安定性の点から、凍結乾燥品とすることが一番好ましく、次いで凍結品とすることが好ましい。
【0085】
・試薬(II)
試薬(II)の成分である還元剤、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素は、上記のホモシステインの定量方法において説明したものと同様のものが好ましく用いられる。
【0086】
また、試薬(II)は、上記基本的な成分の他に、鉄イオンと鉄イオンと反応して発色する金属指示薬を用いて硫化水素の濃度を測定する際に、生体試料中に共存する成分(血清銅やトランスフェリン等)の影響を回避して、正確に硫化水素の濃度を測定できるように、上述したアルミニウム塩及び/又はガリウム塩と、銅イオン特異的なキレート剤、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、IDA(イミノ二酢酸)等の有機酸を含むことがより好ましい。更に、鉄イオンに配位する能力を有する補助剤を含むことが好ましい。
【0087】
アルミニウム塩及び/又はガリウム塩、銅イオン特異的なキレート剤、有機酸、鉄イオンに配位する能力を有する補助剤の濃度は、上述した濃度に基いて適宜設定することができる。
【0088】
試薬(II)は、上記の各成分を、トリス塩酸等の緩衝液(pH7.0〜9.0)に溶解して調製することができ、2〜10℃で保存すればよい。
【0089】
・試薬(III)
試薬(III)の成分である金属イオン及び金属指示薬は上記のホモシステインの定量方法において説明したものと同様のものが好ましく用いられる。
【0090】
試薬(III)は、水溶液中で3価の鉄イオンを遊離する化合物及び金属指示薬を、例えば精製水や適当な緩衝液に溶解することにより調製できる。
【0091】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。なお、システインジオキシゲナーゼの活性測定は、上述した測定方法により、L−システインを基質として消費される溶液中の酸素の減少を、溶存酸素計(型式「TD−650」、(株)東興化学研究所製)を用いてモニターし、溶存酸素の消費速度をもとに酵素活性を算出した。
【0092】
製造例(システインジオキシゲナーゼの調製)
(1)ヒト由来システインジオキシゲナーゼをコードするcDNAの調製
市販のヒト肝臓由来のcDNAライブラリー(Invitrogen社製)を鋳型として、配列番号1(センスプライマー)、及び配列番号2(アンチセンスプライマー)に示す特異的プライマーを用いてPCRを行い、ヒト由来システインジオキシゲナーゼをコードするcDNAをクローニングした。上記プライマーは、Biochimica Biophysica Acta 1209, 1994; 107−110に記載されたヒト由来システインジオキシゲナーゼ遺伝子の塩基配列に基いて、常法により合成したものである。
【0093】
PCRは、TOYOBO KOD キット(商品名、東洋紡社製)を用いて、95℃で2分加熱後、95℃で0.5分、60℃で0.5分及び68℃で1分のサイクルを30回繰り返した。
【0094】
「配列表フリーテキスト」
配列番号1:ヒトシステインジオキシゲナーゼをコードするDNA断片を増幅するためのPCR用プライマー。
配列番号2:ヒトシステインジオキシゲナーゼをコードするDNA断片を増幅するためのPCR用プライマー。
【0095】
得られた増幅DNA断片を、NcoI及びBamHIで消化後、アガロースゲル電気泳
動で精製し、NcoI及びBamHIで処理した発現用ベクターpQE60(QIAGEN社製)
に連結して組換えプラスミドを構築し、この組換えプラスミドを大腸菌(JM109株)に常法により導入した。
【0096】
(2)ヒト由来システインジオキシゲナーゼの調製
▲1▼組換え大腸菌の培養
組換えプラスミドを導入した大腸菌を、アンピシリン(100μg/mL)を含むLB寒天培地にまき、37℃で一晩静置してコロニーを形成させ、そのシングルコロニーを、アンピシリン(100μg/mL)及びグルコース0.2(w/v)%を含有するLB培地3mLに接種し、37℃で一晩培養した。この培養液0.5mLを、同LB培地50mLに接種し、37℃で一晩培養した。さらに、この培養液40mLを、同LB培地にL−システイン(10mM)を加えた培地4Lに接種し、37℃で培養を開始した。その後、培養液の600nmの吸光度が0.8OD前後であることを確認した後、IPTG(イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド)を最終濃度で1mMとなるように添加し、さらに5時間培養を継続した後、集菌した。
【0097】
▲2▼組換え大腸菌からのシステインジオキシゲナーゼの単離
今回の発現系では、発現蛋白(システインジオキシゲナーゼ)に、ヒスチジンのタグが付加されることから、精製にはニッケルキレートアフィニティークロマトグラフィーを適用した。
【0098】
上記培養で得られた菌体を、トリス塩酸緩衝液(20mM、pH8.0、0.5M NaCL含有)に懸濁し、超音波破砕装置で菌体を破砕した。破砕液を10,000×gで15分間遠心分離して、上清を回収し、無細胞抽出液を得た。
【0099】
Chelating Sepharose FF(商品名、アマーシャムファルマシアバイオテク社製)に、硫酸ニッケル溶液を添加し、ニッケルイオンを吸着させ、その後、水洗して余分なニッケルイオンを取り除き、更にトリス塩酸緩衝液(20mM、pH8.0、0.5M NaCL含有)で平衡化しておいたカラムに、上記無細胞抽出液を通液して吸着させ、同緩衝液で洗浄した。
【0100】
そして、まず、同緩衝液にイミダゾールを50mM共存させた溶出液で、非特異吸着している夾雑物を溶出させ、さらに同緩衝液にイミダゾールを200mM共存させた溶出液で、目的の酵素蛋白(システインジオキシゲナーゼ)を溶出させて、蛋白質画分を集めた。
【0101】
回収した蛋白質画分に、硫酸アンモニウムを70%飽和になるように添加溶解して、一晩放置した後、遠心分離して沈殿物を回収した。得られた沈殿物を少量のトリス塩酸緩衝液(20mM、pH8.0)に溶解し、更に同緩衝液で透析した。
【0102】
アフィニティー精製によって除去された酵素蛋白中の鉄を補うため、透析処理液の蛋白質濃度が5mg/ml程度になるようにトリス塩酸緩衝液(20mM、pH8.0)で希釈した後、10mM 塩化第一鉄水溶液を最終濃度で0.4〜0.5mM程度となるよう添加し、一晩放置した。
【0103】
そして、10mMシステアミンを含むトリス塩酸緩衝液(100mM、pH9.0)に、鉄組込み処理をした酵素液を9:1の割合で添加し、減圧下脱気処理又は窒素置換により嫌気的条件とした後、37℃で約30分加温して、酵素の活性化を行った。
【0104】
そして、活性化した酵素液に、硫酸アンモニウムを70%飽和になるように添加溶解し、氷冷下で約1時間放置した後、遠心分離して沈殿を回収し、活性型システインジオキシゲナーゼを得た。
【0105】
(3)活性型システインジオキシゲナーゼの性質
・至適pH
得られた活性型システインジオキシゲナーゼの酵素活性を上記の方法により測定した。なお、活性測定用緩衝液を、リン酸カリウム緩衝液(pH6.0〜8.0)、トリス塩酸緩衝液(pH7.0〜9.0)、ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.0〜11.0)に代えて、それぞれ酵素活性測定をした。その結果を図1に示す。図1から、至適pHは8.0〜9.0であることが分かる。
【0106】
・分子量測定
SDS−PAGE電気泳動法で算出した結果、分子量約25,000程度であった。
【0107】
・安定性
至適pHである8.0〜9.0の緩衝液中では、4℃で一晩保存で完全に失活し、極めて安定性が低かった。
【0108】
実施例1 活性型システインジオキシゲナーゼの保存安定性の検討
・溶液中での保存条件の検討
活性型システインジオキシゲナーゼを、表1に示す100mMの各種緩衝液中に添加後、4℃で保存して酵素活性を経時的にモニターした。その結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1から、システインジオキシゲナーゼの活性は、pH5.5〜7付近に緩衝能を有する緩衝液(特にマレイン酸、イミダゾール、酢酸緩衝液、グット緩衝液の中でもMESやPIPES等)中で保存することにより、飛躍的に安定性が向上することが分かる。一方、pH8.5の緩衝液では極めて安定性が低かった。
【0111】
・凍結条件の検討
活性型システインジオキシゲナーゼを、表2に示す各種塩を0.5M含有した20mMイミダゾール塩酸緩衝液(pH6.5)に添加し、−30℃で1日間凍結保存した後、室温で融解して残存する酵素活性を測定した。その結果を表2に示す。なお、表中、++:不溶物あり、−:不溶物なし、を表す(以下、同じ。)。
【0112】
【表2】
【0113】
表2から、塩を添加することにより、凍結融解後の酵素の残存活性が高くなることが分かる。特に、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムを添加することにより、凍結融解による酵素タンパクの沈殿が防止され、酵素の残存活性が非常に高くなることが分かる。
【0114】
更に、活性型システインジオキシゲナーゼを、硫酸アンモニウムを0.5M含有した20mMイミダゾール塩酸緩衝液(pH6.5)に添加し、−30℃又は−80℃で4週間凍結保存した後、融解して酵素の残存活性を測定した。その結果を表3に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
表3から、凍結(特に−80℃)保存することによって、長期に酵素活性が保たれることが分かる。
【0117】
・凍結乾燥保存条件の検討
活性型システインジオキシゲナーゼを、硫酸アンモニウムを0.5M含有した20mMイミダゾール塩酸緩衝液(pH6.5)に添加し、更にシュークロースを終濃度で10(w/v)%となるように添加し、凍結乾燥装置で凍結乾燥した。この凍結乾燥品を、凍結乾燥前の液量と同量の精製水に溶解し、酵素の残存活性を測定した。対照として、シュークロースを添加しないで同様に凍結乾燥したものを用いた。その結果を表4に示す。
【0118】
【表4】
【0119】
表4から、シュークロースを共存させることによって、凍結乾燥による酵素活性の失活がほとんどなく、また、再溶解時の不溶物の沈殿も防ぐことができることが分かる。
【0120】
実施例2 システイン共存下でのホモシステインの測定
以下の組成からなる第一、第二及び第三試薬を調製した。
(第一試薬)
活性型システインジオキシゲナーゼ 30 U/mL
硫酸アンモニウム 500 mM
イミダゾール塩酸緩衝液 20 mM(pH6.5)
(第二試薬)
ο−アセチルホモセリン−リアーゼ 0.7 U/mL
(ユニチカ社製、商品名:GCS)
チオグリセロール 10 mM
ADA (N−[2−Acetamido] iminodiacetic acid) 10 mM
ネオクプロイン 2 mM
硝酸ガリウム 0.5 mM
酒石酸 0.5 mM
界面活性剤 0.6 %
トリス塩酸緩衝液 132 mM(pH8.5)
(第三試薬)
Fe(III)EDTA 5.6 mM
Nitroso−PSAP(同仁化学社製) 2 mM
試料として、プールした血清にシステインの酸化型であるシスチンを9:1の割合で混合し、シスチン0〜500μmol/L(システインとして0〜1000μmol/L)を含有させたものを用い、日立7170形自動分析装置にて測定を行なった。具体的には、試料14μLに、第一試薬35μLを加えて37℃で2分間放置後、第二試薬175μLを加えて37℃で3分間放置した。さらに、第三試薬56μLを加えて室温にて5分間放置後、波長750nmにおける吸光度測定した。その結果を表5に示す。
【0121】
【表5】
【0122】
表5から、高濃度のシステインが共存する試料中のホモシステインを、システインの影響をほとんど受けることなく測定することができることが分かる。更に、実質的に生体試料中のシステインの存在形態である酸化型においても、問題なく、影響を回避させることができると判断される。
【0123】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、還元剤非共存下で、生体試料にシステインジオキシゲナーゼを作用させることにより、最初に該試料中の遊離のシステインを効率よく除去し、次いで、還元剤を作用させることにより、タンパク質と結合したシステインやホモシステインを遊離させて、新たに生成した遊離のシステインを残存するシステインジオキシゲナーゼ活性によって除去することができる。そのため、還元剤と同時に作用させたホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素は、試料中のシステインの影響をほとんど受けることなく、ホモシステインに作用して硫化水素を生成させることができるので、生成した硫化水素の濃度を測定することにより、簡便かつ正確に試料中のホモシステインを定量することができる。
【0124】
また、安定性の低いシステインジオキシゲナーゼを、pH5.5〜7の緩衝液中で保存することにより、安定性を高めることができ、臨床現場において実質的に適用しうるホモシステインの定量用試薬を提供することが可能となる。
【0125】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】活性型システインジオキシゲナーゼの酵素活性を測定した結果を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホモシステインとシステインを含む生体試料中のホモシステインを、システインの影響を受けることなく、酵素を用いて簡便かつ正確に測定できるようにしたホモシステインの定量方法及びホモシステインの定量用試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
試料中のホモシステインを定量する方法として、ホモシステインに酵素を作用させて、生成する硫化水素を測定する方法が知られている。この方法において使用される酵素としては、L−メチオニンγ−リアーゼやホモシステインデスルフハイドリラーゼがある。また、本発明者は、アミノ酸合成酵素であるο−アセチルホモセリン−リアーゼ(ECクラス4.2.99に属する)においても、チオール化合物の存在下、γ−置換作用を触媒することによって硫化水素が産生されることを見出しており、本酵素を用いてホモシステインを定量できることを報告している(特開2000−166597号公報参照)。
【0003】
しかしながら、これらの酵素は、ホモシステインだけでなくシステインにも反応して硫化水素を生成するため、ホモシステインとシステインが共存するような試料(例えば血液などの生体試料)中のホモシステインを正確に測定できないという問題があった。
【0004】
そこで、本発明者らは、予め上記酵素を用いて、システイン含量と硫化水素生成量の関係を定数化しておき、システインとホモシステインを含有する試料に上記酵素を所定の条件下で作用させ、発生する硫化水素量(1)を測定し、次に、別途求めた該生体試料中のシステイン含量から、上記定数を用いてシステイン由来の硫化水素量(2)を求め、それを硫化水素(1)から差し引くことにより、システインが共存する生体試料中のホモシステイン含量を求める方法を開示している(特開2000−270895号公報)。
【0005】
また、特表2000−513589号公報には、生体試料中のシステインをホモシステイナーゼの基質ではない化合物に変換することができる酵素(γ−グルタミルシステインシンターゼ、システインオキシダーゼ、シスタチオニンβシンターゼ及びシステインtRNAシンターゼ)で前処理し、残ったホモシステインをホモシステイナーゼで測定する方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2000−270895号公報に開示された方法では、別途システイン含量を求めなければならないため、あまり簡易な方法とは言えなかった。
【0007】
一方、特表2000−513589号公報に開示された方法においては、以下のような問題があった。
【0008】
例えば、γ−グルタミルシステインシンターゼ(ラット腎臓由来)は基質特異性が低く、システイン以外にもシステイン誘導体やDL−ホモシステインにも反応してしまうという問題があった(Biochemistry, 10 (3), 1971; 372−380参照)。
【0009】
また、シスタチオニンβシンターゼは、チオール化合物存在下、システインに対してβ置換反応を有することが知られているが、生成物として硫化水素を産生するため、ホモシステインに酵素を作用させて、生成する硫化水素を測定する方法には使用できない。
【0010】
また、システインtRNAシンターゼは基質にRNAを用いることから、RNaseの影響を受けやすいという問題があった。
【0011】
また、ラット肝臓由来のシステインジオキシゲナーゼ(別名システインオキシダーゼ)は、▲1▼活性型とするために、嫌気的な条件で、システイン存在下でインキュベート処理が必要である、▲2▼非常に不安定で失活してしまうため、保存が困難であり、安定化蛋白(プロテイン−A)が必要である(J. Biochem. 83 (2), 1978; 479−491参照)、▲3▼還元剤の存在下では容易に失活してしまう等の問題があった。
【0012】
したがって、上記公報に開示された方法では、試料中のシステインを簡便かつ効率よく除去することは困難であった。
【0013】
また、特表2000−513589号公報には、遺伝子改変によりホモシステインに対する基質特異性を高めたTrichomonas vaginalis由来のメチオニンγリアーゼ、特開2002−10787号公報には、システインには実質的に反応せず、ホモシステインに対して特異的に反応する酵素として、サーマス・サーモフィルス由来のアミノ酸合成酵素であるο−アセチルホモセリンスルフヒドラーゼも開示されているが、生体試料中のシステイン含量が1mMを越える高濃度のケースもあることから、これらの基質特異性を高めた酵素を用いても、システインの影響を完全に回避するには不充分であった。
【0014】
したがって、本発明の目的は、ホモシステインとシステインを含む生体試料中のホモシステインを、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素を用いて定量する際に、共存するシステインの影響を回避し、より簡便で正確に定量できるホモシステインの定量方法、及び臨床現場等において実質的に適用しうるホモシステインの定量用試薬を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、ホモシステインとシステインを含む生体試料中のホモシステインを、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素を用いて定量する方法において、
(a)還元剤非共存下で、生体試料にシステインジオキシゲナーゼを作用させ、(b)続いて、還元剤と、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素とを作用させて硫化水素を生成させ、(c)生成した硫化水素の濃度を測定することにより、前記生体試料中のホモシステイン濃度を測定することを特徴とするホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0016】
上記発明によれば、還元剤非共存下で、生体試料にシステインジオキシゲナーゼを作用させることにより、最初に該試料中の遊離のシステインを効率よく除去し、次いで、還元剤を作用させることにより、タンパク質と結合したシステインやホモシステインを遊離させて、新たに生成した遊離のシステインを残存するシステインジオキシゲナーゼ活性によって除去することができる。そのため、還元剤と同時に作用させたホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素は、試料中のシステインの影響をほとんど受けることなく、ホモシステインに作用して硫化水素を生成させることができるので、生成した硫化水素の濃度を測定することにより、簡便かつ正確に試料中のホモシステインを定量することができる。
【0017】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記(a)の工程をpH5.5〜7の緩衝液中で行なう、ホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0018】
上記発明によれば、システインジオキシゲナーゼの活性を高く維持できるので、試料中のシステインを効率よく除去することができる。
【0019】
本発明の第3は、前記第1又は2の発明において、前記還元剤は、チオール化合物である、ホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0020】
上記発明によれば、試料中のタンパク質と結合したシステイン及びホモシステインを効率よく遊離させることができるので、システインジオキシゲナーゼの作用により、システインの影響をより少なくすることができると共にホモシステインをより正確に定量することができる。
【0021】
本発明の第4は、前記第3の発明において、前記ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素は、アミノ酸合成酵素である、ホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0022】
上記発明によれば、チオール化合物の存在下で、アミノ酸合成酵素をホモシステインに作用させることにより、γ−置換反応により効率よく硫化水素を生成させることができる。
【0023】
本発明の第5は、前記第1〜4のいずれかの発明において、前記生成した硫化水素の濃度を、金属イオンと金属指示薬を用いて測定する、ホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0024】
上記発明によれば、生成した硫化水素の濃度を簡単かつ正確に測定することができる。
【0025】
本発明の第6は、前記第1〜5のいずれかの発明において、前記システインジオキシゲナーゼは、pH5.5〜7の緩衝液中で保存したものを用いる、ホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0026】
上記発明によれば、システインジオキシゲナーゼの安定性を高めることができ、充分な活性を維持したシステインジオキシゲナーゼを用いることができるので、システインを効率よく除去することができる。
【0027】
本発明の第7は、前記第1〜5のいずれかの発明において、前記システインジオキシゲナーゼは、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムを含むpH5.5〜7の緩衝液中で凍結保存したものを用いる、ホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0028】
上記発明によれば、より活性の強いシステインジオキシゲナーゼを用いることができる。
【0029】
本発明の第8は、前記第1〜5のいずれかの発明において、前記システインジオキシゲナーゼは、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムと、糖類とを含むpH5.5〜7の緩衝液に、システインジオキシゲナーゼを溶解し、これを凍結乾燥したものを用いる、ホモシステインの定量方法を提供するものである。
【0030】
上記発明によれば、更に活性の強いシステインジオキシゲナーゼを用いることができる。
【0031】
本発明の第9は、システインジオキシゲナーゼを含有する試薬(I)と、還元剤と、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素とを含有する試薬(II)と、金属イオンと金属指示薬とを含有する試薬(III)とからなる、ホモシステインの定量用試薬を提供するものである。
【0032】
上記発明によれば、試料中に共存するシステインの影響を回避し、より簡便で正確にホモシステインを定量することができ、臨床現場等において実質的に適用しうる定量用試薬を提供することができる。
【0033】
本発明の第10は、前記第9の発明において、前記還元剤はチオール化合物である、ホモシステインの定量用試薬を提供するものである。
【0034】
上記発明によれば、試料中のタンパク質と結合したシステイン及びホモシステインを効率よく遊離させることができるので、システインジオキシゲナーゼの作用により、システインの影響をより少なくすることができると共にホモシステインをより正確に定量することができる定量用試薬を提供することができる。
【0035】
本発明の第11は、前記第10の発明において、前記ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素は、アミノ酸合成酵素である、ホモシステインの定量用試薬を提供するものである。
【0036】
上記発明によれば、チオール化合物の存在下で、アミノ酸合成酵素をホモシステインに作用させることにより、γ−置換反応により硫化水素を生成させることができるので、試薬の構成を単純にすることができる。
【0037】
本発明の第12は、前記第9〜11のいずれかの発明において、前記試薬(I)は、pH5.5〜7の緩衝液にシステインジオキシゲナーゼを溶解したものである、ホモシステインの定量用試薬を提供するものである。
【0038】
上記発明によれば、システインジオキシゲナーゼの安定性を高めることができる。
【0039】
本発明の第13は、前記第9〜11のいずれかの発明において、前記試薬(I)は、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムを含むpH5.5〜7の緩衝液にシステインジオキシゲナーゼを溶解し、これを凍結したものである、ホモシステインの定量用試薬を提供するものである。
【0040】
上記発明によれば、システインジオキシゲナーゼの安定性をより高めることができる。
【0041】
本発明の第14は、前記第9〜11のいずれかの発明において、前記試薬(I)は、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムと、糖類とを含むpH5.5〜7の緩衝液にシステインジオキシゲナーゼを溶解し、これを凍結乾燥したものである、ホモシステインの定量用試薬を提供するものである。
【0042】
上記発明によれば、システインジオキシゲナーゼの安定性を更に高めることができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のホモシステインの定量方法について、各工程ごとに説明する。(a)還元剤非共存下で、生体試料にシステインジオキシゲナーゼを作用させる工程
ホモシステインとシステインを含む生体試料に、還元剤非共存下でシステインジオキシゲナーゼを所定時間作用させて、遊離のシステインを選択的に除去する。酵素反応は、通常、20〜50℃、好ましくは25〜37℃で、1〜30分間行なうことが好ましい。
【0044】
本発明においては、生体試料に、還元剤非共存下でシステインジオキシゲナーゼを作用させることにより、システインジオキシゲナーゼの失活を防ぎ、効率よく遊離のシステインを除去できる。
【0045】
本発明において、ホモシステインとシステインを含む生体試料としては、例えば、血液、血清、血漿、尿等が例示できる。
【0046】
本発明において用いられるシステインジオキシゲナーゼは、システインを酸化してシステインスルフィン酸を生成する酵素で、哺乳類(ヒト、ラット等)の肝臓由来やHistoplasma capsulatum由来のものが知られており、上記の生物から、例えば、J. Biochem. 83 (2), 1978; 479−491、Biochemistry 22, 1983; 762−768等に記載された公知の方法で調製することができる。
【0047】
また、既にシステインジオキシゲナーゼ遺伝子が解明されており(特開平3−272688号公報、Biochimica Biophysica Acta 1209, 1994; 107−110参照)、遺伝子組換え発現による製造も可能である。
【0048】
例えば、クローニングしたシステインオキシダーゼ遺伝子を公知の方法により適当な発現ベクターに組込み、この発現ベクターを適当な宿主細胞に導入して形質転換体を得、この形質転換体を適当な栄養培地で培養し、この培養物から抽出・精製することにより得ることができる(Molecular Cloning, A laboratory manual. 2nd Edition, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press)。上記宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌、酵母、動物細胞等が使用できる。また、発現ベクターとしては、例えば、大腸菌などの微生物を用いる場合は、pUC、pMalやpQEベクター(QIA express発現システム)等が例示できる。
【0049】
培養物からシステインジオキシゲナーゼを抽出・精製する方法は、公知の方法によって行なうことができ、超音波処理、界面活性剤による処理及び酵素消化等によって抽出した後、得られた抽出液を、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過、等電点電気泳動等により精製することができる。
【0050】
なお、システインジオキシゲナーゼは非常に不安定であり、酵素分子内にある鉄原子が外れた場合には、鉄イオン(具体的には、塩化鉄、酢酸鉄、硫酸鉄等の鉄イオンを遊離する化合物)を共存させることにより、酵素分子内に鉄原子が取り込まれ、さらに、嫌気的状況下、SH基を持つ化合物(L−システイン、システアミン、ジチオスレイトール、メルカプトエタノール等)の共存下で加温処理することにより、酵素活性を回復させることができる。
【0051】
システインジオキシゲナーゼの添加量は、測定する生体試料中に含まれる全システインを充分に除去できるような量を、生体試料によって適宜決定すればよく、好ましくは0.1〜500単位(u)/mL、より好ましくは1〜50単位(u)/mLである。なお、システインジオキシゲナーゼ1単位(u)とは、下記の条件で1分間に1μmolの酸素を消費する酵素活性を意味する。
【0052】
37℃に保った反応セルに、200mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)0.9mL及び100mM L−システイン0.1mLを加えて予備加温し、酵素液を適量(5μL程度)加え、溶存酸素計を用いて溶液中の酸素の減少をモニターして、酸素の消費量を測定する。
【0053】
本発明においては、反応中のシステインジオキシゲナーゼの失活を防ぐために、pH5.5〜7の緩衝液中で酵素反応を行なうことが好ましい。これにより、後述する(b)の工程でもシステインジオキシゲナーゼの活性を充分に維持することができるので、還元剤によって遊離したシステインを除去することができる。
【0054】
また、より高い活性を有するシステインジオキシゲナーゼを用いるために、▲1▼pH5.5〜7の緩衝液中で冷蔵保存したシステインジオキシゲナーゼ、▲2▼塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムを含むpH5.5〜7の緩衝液中で凍結保存したシステインジオキシゲナーゼ、又は▲3▼塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムと、糖類とを含むpH5.5〜7の緩衝液に、システインジオキシゲナーゼを溶解し、これを凍結乾燥したものを、使用時に水に溶解してから用いることが好ましい。
【0055】
上記緩衝液は、pH5.5〜7に緩衝能を有するものであればよく、イミダゾール塩酸、酢酸−ナトリウム、MES−ナトリウム緩衝液等が好ましく例示できる。また、上記糖類としては、凍結乾燥した酵素剤を再溶解した際に、不溶化を防ぐ作用のあるものであれば特に限定されないが、シュークロースが特に好ましく例示できる。
【0056】
(b)還元剤と、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素とを作用させながら硫化水素を生成させる工程
上記(a)の反応液に、還元剤を添加して、上記(a)の工程では除去できなかったタンパク質と結合したシステインを遊離させると共に、タンパク質と結合したホモシステインを遊離させて、試料中のホモシステインを完全に遊離状態とする。そして、遊離したシステインを、残存するシステインジオキシゲナーゼ活性により除去しながら、還元剤と同時に添加したホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素により、ホモシステインから硫化水素を生成させる。
【0057】
本発明においては、上記(a)の工程でシステインジオキシゲナーゼがほとんど失活することがなく、還元剤存在下でも、新たに生成した遊離のシステインを除去するのに充分な酵素活性を維持することができるので、効率よくシステインを除去できる。その結果、システインの影響を受けることなく、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素をホモシステインに作用させることができ、生成した硫化水素の濃度を測定することにより、簡便かつ正確に試料中のホモシステインを定量することができる。
【0058】
本発明において用いられるホモシステイン及びシステインに作用して硫化水素を生成する作用を有する酵素としては、還元剤存在下で、置換反応により硫化水素を生成する触媒作用を有する酵素が好ましい。このような酵素としては、例えば、ο−アセチルホモセリン−リアーゼ等のアミノ酸合成酵素、L−メチオニンγ−リアーゼ等が挙げられる。
【0059】
例えば、ο−アセチルホモセリン−リアーゼは、アミノ酸合成作用(ο−アセチルホモセリンと硫化水素からはホモシステインと酢酸、又はο−アセチルホモセリンとメタンチオールからはメチオニンと酢酸を生成する作用)を有する酵素であるが、この酵素をチオール化合物存在下でホモシステインに作用させると、γ−置換反応により硫化水素を生成する触媒作用を示す(特開2000−166597号公報参照)。
【0060】
また、L−メチオニンγ−リアーゼは、チオール化合物非存在下では、ホモシステインに対して分解(脱離)作用を示して硫化水素を発生するが、チオール化合物存在下では、γ−置換反応を触媒する酵素として知られている。
【0061】
本発明においては、アミノ酸合成酵素(ο−アセチルホモセリン−リアーゼ)が特に好ましく用いられる。ο−アセチルホモセリン−リアーゼは、それを産生する様々な微生物(例えば、細菌ではバチルス属等、酵母ではサッカロミセス属、真菌ではニューロスポラ属)等から公知の方法により調製することができる(Ozaki等., J. Biochem.91; 1163−1171 (1982)、Yamagata., J. Biochem. 96; 1511−1523 (1984)、Brzywczy等., Acta. Biochimica. Polonica. 40 (3); 421−428 (1993))。また、ο−アセチルホモセリン−リアーゼは市販されているものもあり、例えば、バチルス属由来のο−アセチルホモセリン−リアーゼは、ユニチカ株式会社(商品名「GCS」)等から入手できる。
【0062】
ホモシステイン及びシステインに作用して硫化水素を生成する作用を有する酵素の添加量は、生体試料中のホモシステインに対して充分な量を、測定する生体試料によって適宜決定すればよく、好ましくは0.01〜100単位(u)/mL、より好ましくは0.1〜10単位(u)/mLである。なお、ホモシステイン及びシステインに作用して硫化水素を生成する作用を有する酵素1単位(u)とは、下記の条件で1分間に1μmolの硫化水素を生成する酵素活性を意味する。
【0063】
200mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5) 0.25mLに、8mM 2−メルカプトエタノールを0.125mL、10mM DL−ホモシステイン 0.1mLを加えて37℃で5分間加温する。続いて、この溶液に適当に希釈した酵素液を0.025mL加え、37℃で15分間加温した後、3% NaOH水溶液を0.1mL、16mM N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン塩酸塩溶液 0.325mL及び10mM 塩化第二鉄塩酸溶液 0.075mLを順次追加し、室温で15分間放置後、670nmの吸光度を測定する。この条件下でのメチレンブルーのモル吸光系数(ε=15000)から、酵素反応により生成した硫化水素の量を計算し、酵素活性を求める。
【0064】
また、本発明で用いられる還元剤としては、チオール化合物、ホスフィン化合物、水素化硼素化合物等が例示できるが、中でもチオール化合物は、タンパク質と結合(ジスルフィド結合)したシステインやホモシステインを特異的に還元し、更にそのままアミノ酸合成酵素等による酵素反応を行なうことができるので好ましい。
【0065】
チオール化合物としては、酵素による置換反応の基質となるものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、メタンチオール、2−メルカプトエタン、ジチオスレイトール、チオグリセロール、システアミン等が例示できる。
【0066】
本発明において、還元剤は、通常、1〜50mMとなるように添加することが好ましい。
【0067】
(c)生成した硫化水素の濃度を測定することにより、前記生体試料中のホモシステイン濃度を測定する工程
上記(b)の工程で生成した硫化水素の濃度を測定する方法は、特に限定されないが、簡便性及び正確性の点から金属イオンと金属指示薬を用いて測定することが好ましい。例えば、特開2000−338096号公報に開示された方法などが挙げられる。
【0068】
具体的には、金属イオンとして3価の鉄イオンを用い、この3価の鉄イオンが硫化水素(硫化物イオン)によって還元されて生じる2価の鉄イオンを、2価の鉄イオンと反応して発色する金属指示薬を用いて検出し、その吸光度を測定して、予め作成しておいた検量線から硫化水素の濃度を求めることが好ましい。また、残存した3価の鉄イオンを、3価の鉄イオンと反応して発色する金属指示薬を用いて検出し、その吸光度を測定して、予め作成しておいた検量線から硫化水素の濃度を求めてもよい。
【0069】
そして、ホモシステインの濃度と、ホモシステイン及びシステインに作用して硫化水素を生成する作用を有する酵素を作用させた際に生成する硫化水素濃度との検量線をもとに、本工程で測定した硫化水素の濃度から生体試料中のホモシステインの濃度を計算することができる。
【0070】
また、3価の鉄イオンとしては、具体的には水溶液中で3価の鉄イオンを遊離する化合物であれば特に制限なく用いることができる。例えば、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)アンモニウム水和物等のイオン化合物の他、エチレンジアミン四酢酸一ナトリウム鉄(III)、シュウ酸アンモニウム鉄(III)水和物等のキレート化合物が挙げられ、中でもエチレンジアミン四酢酸一ナトリウム鉄(III)が好ましく用いられる。
【0071】
更に、上記のような錯体を用いる場合は、鉄イオンに配位する能力を有する補助剤(例えば、IDA(イミノ二酢酸)、ADA(N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸)、Bicine(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン等)を、0.01〜10mM共存させることが好ましい。
【0072】
また、2価又は3価の鉄イオンと反応して発色する金属指示薬としては、これらの鉄イオンと錯体を形成するものであれば特に制限されないが、その錯体形成時の発色感度が高いものが好ましい。例えば、2価の鉄イオンと反応して発色する金属指示薬としては、ピリジルアゾ化合物やニトロソアミノフェノール化合物等が例示できる。具体的には、ピリジルアゾ化合物としては、2−(5−ブロモ−2−ピリジルアゾ)−5−[N−N−プロピル−N−(3−スルフォプロピル)アミノ]フェノール・ナトリウム塩(商品名「5Br・PAPS」、以下、5Br・PAPSと略記する)や2−(5−ニトロ−2−ピリジルアゾ)−5−[N−N−プロピル−N−(3−スルフォプロピル)アミノ]フェノール・ナトリウム塩(商品名「Nitro・PAPS」)が例示でき、ニトロソアミノフェノール化合物としては、2−ニトロソ−5−[N−N−プロピル−N−(3−スルフォプロピル)アミノ]フェノール(商品名「Nitroso・PSAP」)や2−ニトロソ−5−[N−エチル−N−(3−スルフォプロピル)アミノ]フェノール(商品名「Nitroso・ESAP」)が例示できる。
【0073】
また、3価の鉄イオンを反応して発色する金属指示薬としては、フェロン、カルシクローム(Calcichrome)、クロマズロールB(Chromazurol B)、クロマズロールS(Chromazurol S)、クロモトロープ酸(Chromotropic acid)等が例示できる。
【0074】
これらの金属指示薬は水溶性であり、2価又は3価の鉄イオンと錯体を形成することにより高感度に発色する性質を有する。これらの金属指示薬は様々な特徴を持ったものが市販されており、例えば(株)同仁化学研究所より入手できる。
【0075】
なお、鉄イオンと鉄イオンと反応して発色する金属指示薬を用いて硫化水素の濃度を測定する際に、予め試料中に、アルミニウム塩及び/又はガリウム塩と、銅イオン特異的なキレート剤を添加しておくことが好ましい。これにより、生体試料中に共存する成分(血清銅やトランスフェリン等)の影響を回避し、より正確に硫化水素の濃度を測定することができる。
【0076】
上記アルミニウム塩としては、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等が例示でき、ガリウム塩としては、硝酸ガリウム、硫酸ガリウム等が例示できる。また、銅イオン特異的なキレート剤としては、ネオクプロイン、バソクプロイン又はそれらの塩等が例示できる。
【0077】
アルミニウム塩及び/又はガリウム塩の添加量は、通常、好ましくは0.01〜10mM、より好ましくは0.3〜3mMの濃度となるように添加することが好ましい。なお、アルカリpHにおけるアルミニウムやガリウムの水酸化物の生成を防止するため、適当な濃度(通常、0.01〜50mM)の酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、IDA(イミノ二酢酸)等の有機酸を併用することがより好ましい。
【0078】
また、銅イオン特異的なキレート剤の添加量は、通常、好ましくは0.01〜50mM、より好ましくは0.5〜10mMの濃度となるように添加することが好ましい。
【0079】
次に、本発明のホモシステインの定量用試薬について説明する。
本発明のホモシステインの定量用試薬は、システインジオキシゲナーゼを含有する試薬(I)と、還元剤と、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素とを含有する試薬(II)と、金属イオンと金属指示薬とを含有する試薬(III)とからなり、各試薬を順次試料に添加することにより、試料中に共存するシステインの影響を回避し、より簡便で正確に試料中のホモシステインを定量できるようにしたものである。
【0080】
・試薬(I)
試薬(I)の製品形態は、溶液、凍結品、凍結乾燥品等を適宜選択できるが、システインジオキシゲナーゼは安定性が低いため、以下のようにして調製、保存することが好ましい。
【0081】
▲1▼溶液の形態とする場合は、pH5.5〜7の緩衝液にシステインジオキシゲナーゼを溶解して、2〜10℃で冷蔵保存することが好ましい。上記緩衝液としては、pH5.5〜7に緩衝能を有するものであればよく、イミダゾール塩酸、酢酸−ナトリウム、MES−ナトリウム緩衝液等が好ましく例示できる。このような緩衝液中でシステインジオキシゲナーゼを保存することにより、冷蔵保存した際のシステインジオキシゲナーゼの失活を防止することができる。
【0082】
▲2▼凍結品とする場合は、上記▲1▼の緩衝液に、更に塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムを添加したものにシステインジオキシゲナーゼを溶解して凍結し、−30℃以下、より好ましくは−80℃以下で保存することが好ましい。塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムの添加量は、通常、0.1〜2Mが好ましく、0.25〜1Mがより好ましい。これにより、解凍した際の不溶物の生成を防止することができ、保存安定性を更に向上することができる。
【0083】
▲3▼凍結乾燥品とする場合は、上記▲2▼の緩衝液に、更に糖類を添加したものに、システインジオキシゲナーゼを溶解し、これを凍結乾燥処理して、10℃以下で保存することが好ましい。上記糖類としては、シュークロース等が例示できる。糖類の添加量は、0.1〜20(w/v)%が好ましく、5〜20(w/v)%がより好ましい。糖類を添加することにより、再溶解時の不溶物の生成を防止することができ、保存安定性を更に向上することができる。
【0084】
本発明においては、保存安定性の点から、凍結乾燥品とすることが一番好ましく、次いで凍結品とすることが好ましい。
【0085】
・試薬(II)
試薬(II)の成分である還元剤、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素は、上記のホモシステインの定量方法において説明したものと同様のものが好ましく用いられる。
【0086】
また、試薬(II)は、上記基本的な成分の他に、鉄イオンと鉄イオンと反応して発色する金属指示薬を用いて硫化水素の濃度を測定する際に、生体試料中に共存する成分(血清銅やトランスフェリン等)の影響を回避して、正確に硫化水素の濃度を測定できるように、上述したアルミニウム塩及び/又はガリウム塩と、銅イオン特異的なキレート剤、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、IDA(イミノ二酢酸)等の有機酸を含むことがより好ましい。更に、鉄イオンに配位する能力を有する補助剤を含むことが好ましい。
【0087】
アルミニウム塩及び/又はガリウム塩、銅イオン特異的なキレート剤、有機酸、鉄イオンに配位する能力を有する補助剤の濃度は、上述した濃度に基いて適宜設定することができる。
【0088】
試薬(II)は、上記の各成分を、トリス塩酸等の緩衝液(pH7.0〜9.0)に溶解して調製することができ、2〜10℃で保存すればよい。
【0089】
・試薬(III)
試薬(III)の成分である金属イオン及び金属指示薬は上記のホモシステインの定量方法において説明したものと同様のものが好ましく用いられる。
【0090】
試薬(III)は、水溶液中で3価の鉄イオンを遊離する化合物及び金属指示薬を、例えば精製水や適当な緩衝液に溶解することにより調製できる。
【0091】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。なお、システインジオキシゲナーゼの活性測定は、上述した測定方法により、L−システインを基質として消費される溶液中の酸素の減少を、溶存酸素計(型式「TD−650」、(株)東興化学研究所製)を用いてモニターし、溶存酸素の消費速度をもとに酵素活性を算出した。
【0092】
製造例(システインジオキシゲナーゼの調製)
(1)ヒト由来システインジオキシゲナーゼをコードするcDNAの調製
市販のヒト肝臓由来のcDNAライブラリー(Invitrogen社製)を鋳型として、配列番号1(センスプライマー)、及び配列番号2(アンチセンスプライマー)に示す特異的プライマーを用いてPCRを行い、ヒト由来システインジオキシゲナーゼをコードするcDNAをクローニングした。上記プライマーは、Biochimica Biophysica Acta 1209, 1994; 107−110に記載されたヒト由来システインジオキシゲナーゼ遺伝子の塩基配列に基いて、常法により合成したものである。
【0093】
PCRは、TOYOBO KOD キット(商品名、東洋紡社製)を用いて、95℃で2分加熱後、95℃で0.5分、60℃で0.5分及び68℃で1分のサイクルを30回繰り返した。
【0094】
「配列表フリーテキスト」
配列番号1:ヒトシステインジオキシゲナーゼをコードするDNA断片を増幅するためのPCR用プライマー。
配列番号2:ヒトシステインジオキシゲナーゼをコードするDNA断片を増幅するためのPCR用プライマー。
【0095】
得られた増幅DNA断片を、NcoI及びBamHIで消化後、アガロースゲル電気泳
動で精製し、NcoI及びBamHIで処理した発現用ベクターpQE60(QIAGEN社製)
に連結して組換えプラスミドを構築し、この組換えプラスミドを大腸菌(JM109株)に常法により導入した。
【0096】
(2)ヒト由来システインジオキシゲナーゼの調製
▲1▼組換え大腸菌の培養
組換えプラスミドを導入した大腸菌を、アンピシリン(100μg/mL)を含むLB寒天培地にまき、37℃で一晩静置してコロニーを形成させ、そのシングルコロニーを、アンピシリン(100μg/mL)及びグルコース0.2(w/v)%を含有するLB培地3mLに接種し、37℃で一晩培養した。この培養液0.5mLを、同LB培地50mLに接種し、37℃で一晩培養した。さらに、この培養液40mLを、同LB培地にL−システイン(10mM)を加えた培地4Lに接種し、37℃で培養を開始した。その後、培養液の600nmの吸光度が0.8OD前後であることを確認した後、IPTG(イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド)を最終濃度で1mMとなるように添加し、さらに5時間培養を継続した後、集菌した。
【0097】
▲2▼組換え大腸菌からのシステインジオキシゲナーゼの単離
今回の発現系では、発現蛋白(システインジオキシゲナーゼ)に、ヒスチジンのタグが付加されることから、精製にはニッケルキレートアフィニティークロマトグラフィーを適用した。
【0098】
上記培養で得られた菌体を、トリス塩酸緩衝液(20mM、pH8.0、0.5M NaCL含有)に懸濁し、超音波破砕装置で菌体を破砕した。破砕液を10,000×gで15分間遠心分離して、上清を回収し、無細胞抽出液を得た。
【0099】
Chelating Sepharose FF(商品名、アマーシャムファルマシアバイオテク社製)に、硫酸ニッケル溶液を添加し、ニッケルイオンを吸着させ、その後、水洗して余分なニッケルイオンを取り除き、更にトリス塩酸緩衝液(20mM、pH8.0、0.5M NaCL含有)で平衡化しておいたカラムに、上記無細胞抽出液を通液して吸着させ、同緩衝液で洗浄した。
【0100】
そして、まず、同緩衝液にイミダゾールを50mM共存させた溶出液で、非特異吸着している夾雑物を溶出させ、さらに同緩衝液にイミダゾールを200mM共存させた溶出液で、目的の酵素蛋白(システインジオキシゲナーゼ)を溶出させて、蛋白質画分を集めた。
【0101】
回収した蛋白質画分に、硫酸アンモニウムを70%飽和になるように添加溶解して、一晩放置した後、遠心分離して沈殿物を回収した。得られた沈殿物を少量のトリス塩酸緩衝液(20mM、pH8.0)に溶解し、更に同緩衝液で透析した。
【0102】
アフィニティー精製によって除去された酵素蛋白中の鉄を補うため、透析処理液の蛋白質濃度が5mg/ml程度になるようにトリス塩酸緩衝液(20mM、pH8.0)で希釈した後、10mM 塩化第一鉄水溶液を最終濃度で0.4〜0.5mM程度となるよう添加し、一晩放置した。
【0103】
そして、10mMシステアミンを含むトリス塩酸緩衝液(100mM、pH9.0)に、鉄組込み処理をした酵素液を9:1の割合で添加し、減圧下脱気処理又は窒素置換により嫌気的条件とした後、37℃で約30分加温して、酵素の活性化を行った。
【0104】
そして、活性化した酵素液に、硫酸アンモニウムを70%飽和になるように添加溶解し、氷冷下で約1時間放置した後、遠心分離して沈殿を回収し、活性型システインジオキシゲナーゼを得た。
【0105】
(3)活性型システインジオキシゲナーゼの性質
・至適pH
得られた活性型システインジオキシゲナーゼの酵素活性を上記の方法により測定した。なお、活性測定用緩衝液を、リン酸カリウム緩衝液(pH6.0〜8.0)、トリス塩酸緩衝液(pH7.0〜9.0)、ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.0〜11.0)に代えて、それぞれ酵素活性測定をした。その結果を図1に示す。図1から、至適pHは8.0〜9.0であることが分かる。
【0106】
・分子量測定
SDS−PAGE電気泳動法で算出した結果、分子量約25,000程度であった。
【0107】
・安定性
至適pHである8.0〜9.0の緩衝液中では、4℃で一晩保存で完全に失活し、極めて安定性が低かった。
【0108】
実施例1 活性型システインジオキシゲナーゼの保存安定性の検討
・溶液中での保存条件の検討
活性型システインジオキシゲナーゼを、表1に示す100mMの各種緩衝液中に添加後、4℃で保存して酵素活性を経時的にモニターした。その結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1から、システインジオキシゲナーゼの活性は、pH5.5〜7付近に緩衝能を有する緩衝液(特にマレイン酸、イミダゾール、酢酸緩衝液、グット緩衝液の中でもMESやPIPES等)中で保存することにより、飛躍的に安定性が向上することが分かる。一方、pH8.5の緩衝液では極めて安定性が低かった。
【0111】
・凍結条件の検討
活性型システインジオキシゲナーゼを、表2に示す各種塩を0.5M含有した20mMイミダゾール塩酸緩衝液(pH6.5)に添加し、−30℃で1日間凍結保存した後、室温で融解して残存する酵素活性を測定した。その結果を表2に示す。なお、表中、++:不溶物あり、−:不溶物なし、を表す(以下、同じ。)。
【0112】
【表2】
【0113】
表2から、塩を添加することにより、凍結融解後の酵素の残存活性が高くなることが分かる。特に、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムを添加することにより、凍結融解による酵素タンパクの沈殿が防止され、酵素の残存活性が非常に高くなることが分かる。
【0114】
更に、活性型システインジオキシゲナーゼを、硫酸アンモニウムを0.5M含有した20mMイミダゾール塩酸緩衝液(pH6.5)に添加し、−30℃又は−80℃で4週間凍結保存した後、融解して酵素の残存活性を測定した。その結果を表3に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
表3から、凍結(特に−80℃)保存することによって、長期に酵素活性が保たれることが分かる。
【0117】
・凍結乾燥保存条件の検討
活性型システインジオキシゲナーゼを、硫酸アンモニウムを0.5M含有した20mMイミダゾール塩酸緩衝液(pH6.5)に添加し、更にシュークロースを終濃度で10(w/v)%となるように添加し、凍結乾燥装置で凍結乾燥した。この凍結乾燥品を、凍結乾燥前の液量と同量の精製水に溶解し、酵素の残存活性を測定した。対照として、シュークロースを添加しないで同様に凍結乾燥したものを用いた。その結果を表4に示す。
【0118】
【表4】
【0119】
表4から、シュークロースを共存させることによって、凍結乾燥による酵素活性の失活がほとんどなく、また、再溶解時の不溶物の沈殿も防ぐことができることが分かる。
【0120】
実施例2 システイン共存下でのホモシステインの測定
以下の組成からなる第一、第二及び第三試薬を調製した。
(第一試薬)
活性型システインジオキシゲナーゼ 30 U/mL
硫酸アンモニウム 500 mM
イミダゾール塩酸緩衝液 20 mM(pH6.5)
(第二試薬)
ο−アセチルホモセリン−リアーゼ 0.7 U/mL
(ユニチカ社製、商品名:GCS)
チオグリセロール 10 mM
ADA (N−[2−Acetamido] iminodiacetic acid) 10 mM
ネオクプロイン 2 mM
硝酸ガリウム 0.5 mM
酒石酸 0.5 mM
界面活性剤 0.6 %
トリス塩酸緩衝液 132 mM(pH8.5)
(第三試薬)
Fe(III)EDTA 5.6 mM
Nitroso−PSAP(同仁化学社製) 2 mM
試料として、プールした血清にシステインの酸化型であるシスチンを9:1の割合で混合し、シスチン0〜500μmol/L(システインとして0〜1000μmol/L)を含有させたものを用い、日立7170形自動分析装置にて測定を行なった。具体的には、試料14μLに、第一試薬35μLを加えて37℃で2分間放置後、第二試薬175μLを加えて37℃で3分間放置した。さらに、第三試薬56μLを加えて室温にて5分間放置後、波長750nmにおける吸光度測定した。その結果を表5に示す。
【0121】
【表5】
【0122】
表5から、高濃度のシステインが共存する試料中のホモシステインを、システインの影響をほとんど受けることなく測定することができることが分かる。更に、実質的に生体試料中のシステインの存在形態である酸化型においても、問題なく、影響を回避させることができると判断される。
【0123】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、還元剤非共存下で、生体試料にシステインジオキシゲナーゼを作用させることにより、最初に該試料中の遊離のシステインを効率よく除去し、次いで、還元剤を作用させることにより、タンパク質と結合したシステインやホモシステインを遊離させて、新たに生成した遊離のシステインを残存するシステインジオキシゲナーゼ活性によって除去することができる。そのため、還元剤と同時に作用させたホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素は、試料中のシステインの影響をほとんど受けることなく、ホモシステインに作用して硫化水素を生成させることができるので、生成した硫化水素の濃度を測定することにより、簡便かつ正確に試料中のホモシステインを定量することができる。
【0124】
また、安定性の低いシステインジオキシゲナーゼを、pH5.5〜7の緩衝液中で保存することにより、安定性を高めることができ、臨床現場において実質的に適用しうるホモシステインの定量用試薬を提供することが可能となる。
【0125】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】活性型システインジオキシゲナーゼの酵素活性を測定した結果を示す図である。
Claims (14)
- ホモシステインとシステインを含む生体試料中のホモシステインを、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素を用いて定量する方法において、
(a)還元剤非共存下で、生体試料にシステインジオキシゲナーゼを作用させ、(b)続いて、還元剤と、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素とを作用させて硫化水素を生成させ、(c)生成した硫化水素の濃度を測定することにより、前記生体試料中のホモシステイン濃度を測定することを特徴とするホモシステインの定量方法。 - 前記(a)の工程をpH5.5〜7の緩衝液中で行なう、請求項1に記載のホモシステインの定量方法。
- 前記還元剤は、チオール化合物である、請求項1又は2に記載のホモシステインの定量方法。
- 前記ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素は、アミノ酸合成酵素である、請求項3に記載のホモシステインの定量方法。
- 前記生成した硫化水素の濃度を、金属イオンと金属指示薬を用いて測定する、請求項1〜4のいずれか一つに記載のホモシステインの定量方法。
- 前記システインジオキシゲナーゼは、pH5.5〜7の緩衝液中で保存したものを用いる、請求項1〜5のいずれか一つに記載のホモシステインの定量方法。
- 前記システインジオキシゲナーゼは、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムを含むpH5.5〜7の緩衝液中で凍結保存したものを用いる、請求項1〜5のいずれか一つに記載のホモシステインの定量方法。
- 前記システインジオキシゲナーゼは、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムと、糖類とを含むpH5.5〜7の緩衝液に、システインジオキシゲナーゼを溶解し、これを凍結乾燥したものを用いる、請求項1〜5のいずれか一つに記載のホモシステインの定量方法。
- システインジオキシゲナーゼを含有する試薬(I)と、還元剤と、ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素とを含有する試薬(II)と、金属イオンと金属指示薬とを含有する試薬(III)とからなる、ホモシステインの定量用試薬。
- 前記還元剤は、チオール化合物である、請求項9に記載のホモシステインの定量用試薬。
- 前記ホモシステイン及びシステインから硫化水素を生成する作用を有する酵素は、アミノ酸合成酵素である、請求項10に記載のホモシステインの定量用試薬。
- 前記試薬(I)は、pH5.5〜7の緩衝液にシステインジオキシゲナーゼを溶解したものである、請求項9〜11のいずれか一つに記載のホモシステインの定量用試薬。
- 前記試薬(I)は、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムを含むpH5.5〜7の緩衝液にシステインジオキシゲナーゼを溶解し、これを凍結したものである、請求項9〜11のいずれか一つに記載のホモシステインの定量用試薬。
- 前記試薬(I)は、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムと、糖類とを含むpH5.5〜7の緩衝液にシステインジオキシゲナーゼを溶解し、これを凍結乾燥したものである、請求項9〜11のいずれか一つに記載のホモシステインの定量用試薬。
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