JP2004047134A - 誘電体材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ベンジル基の4位の水素が、ハロゲン原子に置換されている、ムコン酸、又はソルビン酸のベンジルエステル類をトポケミカル重合してなる、可逆的に相変化する結晶性高分子を有する誘電体材料。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽量化や小型化を図れる誘電体として好適な、結晶性高分子からなる誘電体材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、有機結晶を加熱すると融解や昇華、熱劣化反応が起こりやすく、このため有機結晶を高温領域での使用に供することはできない。また、様々な結晶性高分子が知られているが、低分子結晶に比べると、上記各結晶性高分子は、それらの結晶性が低く、部分的に非晶部を含むものとなっている。このため、高い結晶性を保ちながら高温領域でも安定に使用でき、なおかつ使用温度に応じて結晶構造が可逆的に相変化する物質は一部の無機材料に限定されており、同様の性質をもつ有機材料を提供できる材料は極めて限定されていた。
【0003】
ところで、強誘電性結晶は、さまざまな配向をもつ電気分極からなるドメインをもっており、それらドメインが電場により再配列したり、整列したりするものである。多くの強誘電体が、ペロブスカイト型と呼ばれる結晶構造をしており、とりわけチタン酸バリウム(BaTiO3)が強誘電体として昔からよく知られている。
【0004】
このチタン酸バリウムは、非常に大きい誘電率(約1000)を示し、コンデンサー材料として広く用いられている(入門固体化学、J.Smart, E.Moore 著、河本邦仁、平尾一之訳、化学同人1996年、307ページ参照、誘電体の基本的性質については、化学便覧応用編II、1019ページ参照)。誘電体は次のように強誘電体と常誘電体とに分類される。
【0005】
強誘電性を示す結晶は必ず焦電性を示し、焦電性を示す結晶は必ず圧電性を示す。ただし、逆はかならずしも成立しない。したがって、強誘電性の結晶は、これら3種類の性質を示す事になる。圧電性、焦電性は誘電体のもつ性質のひとつで、物質構造の空間対称性によって決定される。
圧電体:対称中心をもたない誘電体で圧電効果を有する。
焦電体:圧電体のうち自発分極をもつもので圧電効果・焦電効果を有する。
強誘電体:焦電体のなかで自発分極が電界によって反転するもので、圧電性・焦電性を示す。
非圧電体:点対称をもつもので、圧電性も焦電性も示さない。
【0006】
一方、常誘電体は、圧電性・焦電性に関係なく、強誘電体以外のすべての誘電体である。常誘電体の応用は大別して2つあり、第一の応用は、コンデンサー材料としてのもので、誘電率が大きく、絶縁破壊電場が大きく、薄膜にできる材料が選ばれる。第二の応用は、高周波絶縁体であり、比抵抗が大きく、絶縁破壊電場が大きく、誘電損の小さい条件を満たす材料が用いられる。高周波領域での絶縁体は、通信、情報処理が高周波化、高速化するにつれ、重要性を増している。
【0007】
水晶のように単結晶の形で圧電性を示すものは、水晶発信器など高性能を必要とするところに用いられるが、圧電体の多くは、強誘電性結晶粒子を焼結させたものを分極処理して、分極方向をそろえた形のものである。
【0008】
応用として、圧電振電子として超音波洗浄器、超音波発信器、圧電音叉、音叉フィルター、圧電結合子、セラミックフィルター、圧電着火素子、圧電トランス用素子、などがある。焦電性材料は、赤外線検出のように、微小な温度変化を検知するのに適している。
【0009】
強誘電体がその性質そのものを生かして使われる例はあまりなく、むしろ上述の圧電体、焦電体として用いられることが多いが、分極方向により偏光性を示すので、電気光学素子や光スイッチとしての利用がある。
【0010】
強誘電性高分子として一般に認められているものは、これまでポリフッ化ビニリデン(PVDF)、これとトリフルオロエチレンあるいはテトラフルオロエチレンとの共重合体だけである。これら高分子は、軽量化や小型化を図れる、圧電性高分子、焦電性高分子などのエネルギー変換用高分子として利用されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来の誘電体材料の例でもわかるとおり、結晶構造と密接に関係する誘電体に着目しても、その材料の大半は無機結晶であり、有機高分子はごく限られた種類のもののみが利用されているに過ぎない。
【0012】
これは、結晶性に優れた高分子材料がこれまでほとんど提供されてこなかったことにもよる。ジエンモノマーのトポケミカル重合は、結晶性高分子の製造方法として最適のものであるが、重合可能なモノマーの種類が比較的限られていたため、結晶性高分子としての応用開発は立ち遅れていた。
【0013】
本発明は、ジエンモノマーの重合(好ましくはトポケミカル重合)によって、熱安定性に優れ、温度に応じて可逆的に結晶構造(相)変化する新規な結晶性高分子(有機材料)からなる誘電体材料を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の誘電体材料は、以上の課題を解決するために、ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる、可逆的に相変化する結晶性高分子を有することを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、結晶性高分子が可逆的に相変化するので、誘電性を発揮できて、少なくとも融点までの温度に耐えることが可能であるから熱安定にも優れたものにできる。
【0016】
ところで、従来の、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、これとトリフルオロエチレンあるいはテトラフルオロエチレンとの共重合体からなる結晶性高分子では、一部のみが結晶化しており、その結晶部分により圧電性を発揮していたため、その性能に限界を備えていた。
【0017】
一方、本発明の構成においては、ほぼ100%の結晶化が可能であり、上記従来と比べて、より高性能化を図ることが可能となる。
【0018】
上記誘電体材料では、ジエンモノマーは、ジエンカルボン酸エステル類であることが好ましい。
【0019】
上記誘電体材料においては、ジエンモノマーは、ムコン酸、ソルビン酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも一つであることが望ましい。上記構成によれば、ジエンモノマーが、ムコン酸、ソルビン酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも一つであるから、結晶性高分子における結晶性を確保できる。
【0020】
上記誘電体材料では、ジエンモノマーは、ジエンカルボン酸ベンジルエステル類であることが好ましい。
【0021】
上記誘電体材料においては、ジエンカルボン酸ベンジルエステル類のベンジル基の水素がハロゲン原子に置換されていることが望ましい。
【0022】
上記誘電体材料では、ベンジル基の4位の水素が、ハロゲン原子に置換されていることが好ましい。
【0023】
上記誘電体材料においては、ハロゲン原子は、塩素原子または臭素原子であることが望ましい。
【0024】
上記構成によれば、ジエンカルボン酸とエステルを形成するベンジル基にハロゲンを置換、導入することによって、トポケミカル等の重合反応性を損なうことなく、耐熱性を保持したまま、可逆的に結晶相転移が可能な結晶性高分子からなる誘電体材料を提供できる。
【0025】
また、上記構成では、従来の結晶性高分子と比べて、極性を制御できるから、上記構成と当接する部材との付着性や接着性を制御できる。
【0026】
本発明の誘電体材料について、さらに詳しく以下に説明する。上記誘電体材料に用いた結晶性高分子は高温領域での使用が可能なだけでなく、温度に応じて多段階で不連続な結晶構造の変化(結晶相転移)を起こし、結晶相転移温度の上下では、密度、屈折率、誘電率等の物性が不連続にしかも可逆的に変化することが期待される。
【0027】
高温での使用に耐え、かつ結晶相転移可能な材料はこれまで無機物質に限られていたが、本発明によれば、同様の優れた性質を有する新規な有機材料を提供でき、電気・電子材料分野での応用展開が期待できる。
【0028】
本発明では、結晶化などの結晶調整条件については、特に限定されず、プリズム状の大きな結晶だけでなく、粉末状の微小な結晶でも同様の結晶構造(相)変化を示すことを確認している。
【0029】
熱安定性に優れ、可逆的に結晶構造が相変化する結晶性高分子を、より確実に得るために、まずモノマーとしてのジエンモノマーのうち、イオン結合や水素結合の相互作用のないエステル誘導体を用い(アンモニウム誘導体では比較的強固な水素結合ネットワークがあるため、結晶構造は固定されてしまうため可逆的な結晶構造変化が抑制される)、結晶性高分子の融点をより高くする(結晶相転移が可能な温度領域をより高温側にまで広げる)ために、芳香環やハロゲン原子を導入することがより有効である。芳香環やハロゲン原子の導入により、CH /πあるいはハロゲン−ハロゲン相互作用などの弱い分子間相互作用が期待でき、可逆的な結晶相転移が大いに期待できる。
【0030】
また、これら相互作用は、モノマー結晶中のモノマー分子のパッキングに対しても、トポケミカル重合に都合のよい5Åのスタッキング距離でのカラム状の分子パッキングを実現でき、重合反応を損なうものではない。
【0031】
可逆的に相転移するもので、かつ無機材料ではない高分子(有機材料)を用いることによる好適な適用例として、前述の従来用いられている誘電体の用途のほとんどを有機材料で置き換えが可能になる。
【0032】
このことにより、低密度(軽量化)、低屈折率化が容易に行いうる。また、他の有機材料、例えばアモルファスポリマーと結晶性高分子の複合化などもより容易に行いうる。低分子有機物質ならびにアモルファス高分子への分散性に優れる事が期待でき、薄膜化も容易になり、従来の無機/有機複合系に比べて、均質性の高いものが得られることが期待できる。
【0033】
前記のトポケミカル(topochemical)重合とは、高分子の高次構造を制御する一手法であり、特定の分子配列を持つ結晶格子を重合反応の反応場として用いる手法である。すなわち、モノマー分子が結晶状態であることにより、モノマー分子が自らから重合反応の反応場を提供し、かつ、重合反応中にモノマー分子単位の重心の位置や結晶の対称性が変化することなく、最小限の原子や置換基の動きで重合反応を進行させて立体規則性高分子を生成する手法である。
【0034】
トポケミカル重合は、モノマー分子の集合体である結晶の構造によって反応経路や反応速度が支配され、結晶中の分子配列によって生成物であるポリマーの構造が決定される。さらに、このトポケミカル重合によってポリマーを取得すれば、分離や精製を必要とすることなくポリマーを得ることができ、また、有機溶媒を用いることがないため、環境への負荷を低減することができる。
【0035】
従って、結晶格子の支配下でトポケミカル重合が進行するので、立体規則性ポリマーを容易に得ることができる。それゆえ、これまでに、トポケミカル重合に関して精力的な研究が行われ、例えば、ジアセチレンの固相重合(H.Basser,Adv.Polym.Sci.,63,p.1(1984)等)やオレフィンの固相重合(M.Hasegawa,Adv.Phys.Org.Chem.,30,p.117(1995)等)に関する報告がなされている。また、本発明者らは、ジエンモノマーのトポケミカル重合について報告している(A.Matsumoto,T.Matsumura,S.Aoki,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1994,p.1389)。
【0036】
【実施例】
本発明の実施例について、図1ないし図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0037】
〔実施例1〕
(モノマー合成)
以下の手順にて、シス、シス−ムコン酸4−クロロベンジルエステルを合成した。まず、シス、シス−ムコン酸(三菱化学社製)2.08g(14.5mmol)と、ヘキサメチルホスホルアミド(東京化成工業製)20mLとを、100mLのナス形フラスコに入れ、さらに、該ナス形フラスコに塩化カルシウム管を取り付け、上記シス、シス−ムコン酸が溶解するまで撹拌して、ヘキサメチルホスホルアミド溶液とした。
【0038】
その後、この溶液に、炭酸カリウム(和光純薬製)5.05g(36.6mmol)及び、4−クロロベンジルブロミド(東京化成工業製)8.65g(42.1mmol)を加え、さらに2日間撹拌して反応させて、反応混合物を得た。
【0039】
次いで、上記反応混合物に水200mLを添加し、クロロホルム100mLにて2回抽出し、抽出液を水及び飽和食塩水にて洗浄した。続いて、洗浄液を硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下にてクロロホルムを留去し、黄色液体を得た。得られた黄色液体にメタノール及び水を加え、析出した白色固体を濾取し、室温にて減圧乾燥した。
【0040】
減圧乾燥した白色固体をカラムクロマトグラフィ(ワコーゲルC−200、クロロホルム)に付し、第1留分から溶媒を留去し、さらに乾燥して、4−クロロベンジルブロミドを原料として用いたものからはシス、シス−ムコン酸ジ(4−クロロベンジル)5.45g(収率96%)、第2留分からトランス、シス−ムコン酸ジ(4−クロロベンジル)を0.02g(収率1%未満)を得た。
【0041】
なお、上記モノマーの製法に代えて、上記モノマーは、相間移動触媒によっても合成でき、また、シス、シス体と、トランス、シス体の混合物となるムコン酸と相当するベンジルアルコールの脱水反応によっても合成できる。
【0042】
(重合方法)
上記にて得られたシス、シス−ムコン酸ジ(4−クロロベンジル)を用いて、それぞれ、ポリムコン酸ジ(4−クロロベンジル)を固相重合(トポケミカル重合)により合成した。
【0043】
具体的には、シス、シス−ムコン酸ジ(4−クロロベンジル)の結晶32mg(0.081mmol)をシャーレに入れ、このシャーレから10cm離れた位置に高圧水銀灯を配置して、室温にて、紫外線を8時間照射した。なお、上記の紫外線によるトポケミカル重合に代えて、γ線や加熱によるトポケミカル重合を行ってもよい。
【0044】
次いで、得られた固形物をクロロホルム50mLに添加して、約1時間撹拌し、不溶分を濾取し、白色粉末のポリムコン酸ジ(4−クロロベンジル)を29mg(収率90%)にて得た。
【0045】
〔実施例2〕
上記実施例1に用いた、4−クロロベンジルブロミドに代えて、4−ブロモベンジルブロミド(東京化成工業製)10.52g(42.1mmol)を同様に用いた他は実施例1と同様の手順にて、シス、シス−ムコン酸4−ブロモベンジルエステルを合成した。
【0046】
このとき、カラムクロマトグラフィーでは、シス、シス−ムコン酸ジ(4−ブロモベンジル)5.71g(収率82%)、第2留分からトランス、シス−ムコン酸ジ(4−ブロモベンジル)を0.03g(収率1%未満)を得た。
【0047】
続いて、得られたシス、シス−ムコン酸ジ(4−ブロモベンジル)を用い、上記実施例1と同様にして固相重合(トポケミカル重合)によりポリムコン酸ジ(4−ブロモベンジル)を35mg(収率90%)合成した。なお、以下では、このポリムコン酸ジ(4−クロロベンジル)又はポリムコン酸ジ(4−ブロモベンジル)をシス、シス体からのポリマーと記載する。
【0048】
上記実施例1及び2にて得られたポリムコン酸としてのポリマーについて、溶媒に対する溶解性を調べた。その結果、上記ポリマーは、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、o−ジクロベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ヘキサメチルホスホルアミド、トリフルオロ酢酸、ヘキサフルオロイソプロパノールの極性溶媒、およびフッ素系溶媒に、不溶であった。この結果より、上記の各ポリマーは、優れた耐溶媒性を示すことがわかる。
【0049】
上記では、ジエンモノマーとしてのジカルボン酸として、ムコン酸を用いた例を挙げたが、ソルビン酸も使用可能である。ソルビン酸4−ブロモベンジルエステルの合成方法は、ソルビン酸クロリドと4−ブロモベンジルアルコールの反応、あるいは直接ソルビン酸と4−ブロモベンジルアルコールの反応による通常のエステル合成法によって得られる。
【0050】
以下に、シス、シス−ムコン酸4−クロロベンジルエステルモノマー、及びシス、シス−ムコン酸4−クロロベンジルエステルポリマーの結晶構造解析を行った。それらの結果を図1(a)及び図1(b)、並びに図2(a)及び図2(b)にそれぞれ示した。シス、シス−ムコン酸−4−ブロモベンジルエステルのポリマーについては、後述する粉末X線回折データに基づき結晶構造を調べた。
【0051】
図1及び図2に示すように、得られたポリマーは、トポケミカル重合によって用いたモノマーの結晶性を保存した、著しく高い立体規則性及び結晶性を有していることがわかる。さらに、上記各ポリマーが炭素−炭素二重結合の立体配置がトランスになっていること、結晶相間の反応であるトポケミカル重合によってポリマーが形成されたことがわかる。また、得られた上記各ポリマーの立体規則性は、ジイソタクチックであることがわかる。
【0052】
X線結晶構造解析は、R−AXIS RAPID Imaging Plate 回折計あるいはNonius Kappa CCDシステムにて、グラファイトによって単色化されたMo−Kα照射(λ=0.71073Å)によって行った。結晶構造は、SIR92プログラムを用いた直接法によって解析し、最小自乗法によって決定した。すべての計算は、結晶解析ソフトCrystal Structure(Molecular Structure社製)を用いて行い、その結果を表1に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
次に、得られたポリマーの熱安定性を評価した。
【0055】
得られたポリマー(結晶性高分子)の熱安定性を熱重量ならびに示差熱分析によって行った(使用装置:熱重量/示差熱同時測定装置、TG/DTA6000、セイコーインスツルメント製、測定条件:窒素気流下、昇温速度10℃/min)。図3に、シス、シス−ムコン酸−4−ブロモベンジルエステルポリマーの熱重量/示差熱分析の結果を示した。図4に、シス、シス−ムコン酸−4−クロロベンジルエステルポリマーの熱重量/示差熱分析の結果を示した。
【0056】
図3から明らかなように、シス、シス−ムコン酸−4−ブロモベンジルエステルポリマーでは、その融点が305℃、分解開始温度が309℃と決定され、また、114℃と186℃にそれぞれ吸熱ピークが見られ、相転移を起こしていることがわかる。また、図4から明らかなように、シス、シス−ムコン酸−4−クロロベンジルエステルポリマーにおいては、その融点が296℃、分解開始温度が300℃と決定され、また、246℃と251℃にそれぞれ吸熱ピークが見られ、相転移を起こしていることがわかる。
【0057】
さらに、上記熱安定性の試験結果から、得られたポリマーは、有機材料にもかかわらず、室温から300℃近傍までの温度範囲において、可逆的に相変化しており、熱安定性に優れていることがわかる。
【0058】
次に、シス、シス−ムコン酸4−ブロモベンジルエステルポリマーの粉末X線回折スペクトルプロファイルについて、室温より250℃まで段階的に昇温しながら、X線回折測定を行い、続いて、250℃から室温まで同様に段階的に降温させなからX線回折測定を行った。それらの結果を、図5(昇温時)、図6(降温時)にそれぞれ示した。図5および図6から明らかなように、昇温時と降温時とにおける、同一温度で同一なプロファイルを示した。
【0059】
また、シス、シス−ムコン酸4−ブロモベンジルエステルポリマーについて、室温から130℃まで連続的に温度変化させたときの、FT−IR(フーリエ変換赤外吸光度測定)の測定結果を図7(上の太線は室温、下の細線は130℃での測定結果を示す)に、およびその部分拡大図(図7にて矢印で示した2カ所)である図8に示した。
【0060】
さらに、シス、シス−ムコン酸4−ブロモベンジルエステルポリマーのDSCを調べた結果を図9(a)及び図9(b)に示す。上記結果は、DSC曲線が、2回目(図9(a))と3回目(図9(b))とで互いに一致した。それらの図5ないし図9の結果も、本発明の誘電体粒子の結晶相転移が可逆的であることを示す。
【0061】
【発明の効果】
本発明の誘電体材料は、以上のように、ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる、可逆的に相変化する結晶性高分子を有する構成である。
【0062】
それゆえ、上記構成は、結晶性高分子が可逆的に相変化するので、誘電性を発揮できると共に、少なくとも融点までの温度に耐えることが可能であるから熱安定にも優れたものにできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘電体材料の一例としてのシス、シス−ムコン酸4−クロロベンジルエステルポリマーを示す結晶構造図であり、(a)は、その原料となるモノマー結晶、(b)はシス、シス−ムコン酸4−クロロベンジルエステルポリマーを示す。
【図2】上記シス、シス−ムコン酸4−クロロベンジルエステルモノマー(a)ならびにシス、シス−ムコン酸4−クロロベンジルエステルポリマー(b)の結晶構造のORTEP図である。
【図3】上記シス、シス−ムコン酸4−ブロモベンジルエステルポリマーの熱重量/示差熱分析の結果を示すグラフである。
【図4】上記シス、シス−ムコン酸4−クロロベンジルエステルポリマーの熱重量/示差熱分析の結果を示すグラフである。
【図5】上記シス、シス−ムコン酸4−ブロモベンジルエステルポリマーに関する、室温より250℃まで段階的に昇温させながらの粉末X線回折スペクトルプロファイルをそれぞれ示すグラフである。
【図6】上記シス、シス−ムコン酸4−ブロモベンジルエステルポリマーに関する、250℃より室温まで段階的に降温させながらの粉末X線回折スペクトルプロファイルをそれぞれ示すグラフである。
【図7】上記シス、シス−ムコン酸4−ブロモベンジルエステルポリマーについて、室温から130℃まで連続的に温度変化させたときの、FT−IR(フーリエ変換赤外吸光度測定)の測定結果を、上の太線が室温、下の細線が130℃にてそれぞれ示すグラフである。
【図8】上記図7にて矢印にて示した2カ所の拡大図であり、(a)は低波数側、(b)は高波数側である。
【図9】上記シス、シス−ムコン酸4−ブロモベンジルエステルポリマーのDSCを調べた結果のグラフであり、(a)は2回目、(b)3回目を示す。
Claims (7)
- ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる、可逆的に相変化する結晶性高分子を有することを特徴とする誘電体材料。
- ジエンモノマーは、ジエンカルボン酸エステル類であることを特徴とする請求項1記載の誘電体材料。
- ジエンモノマーは、ムコン酸、ソルビン酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも一つであることを特徴とする請求項1記載の誘電体材料。
- ジエンモノマーは、ジエンカルボン酸ベンジルエステル類であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の誘電体材料。
- ジエンカルボン酸ベンジルエステル類のベンジル基の水素がハロゲン原子に置換されていることを特徴とする請求項4記載の誘電体材料。
- ベンジル基の4位の水素が、ハロゲン原子に置換されていることを特徴とする請求項5記載の誘電体材料。
- ハロゲン原子は、塩素原子または臭素原子であることを特徴とする請求項6記載の誘電体材料。
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