JP2004047006A - 光ピックアップ装置及び光ディスク装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】対物レンズの位置制御に必要な情報を含む信号を安定して出力することができる光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】光源から出射された光束は、対物レンズ60を介して情報記録媒体15の記録面に集光される。記録面で反射された戻り光束は、フィルタ81及び回折素子70を介して光検出器59で受光される。光検出器からは対物レンズの光軸方向に関する位置情報を含む信号が出力される。フィルタにより回折効率の入射角依存性に対応して戻り光束の透過光量が調整されるため、光検出器では、入射角依存性による誤差が低減された戻り光束が受光されることとなる。そして、その結果複数の光検出器からの出力信号は入射角依存性による誤差が低減された信号となる。これにより、対物レンズの光軸方向に関する位置情報を含む信号を安定して出力することが可能となる。
【選択図】 図2
【解決手段】光源から出射された光束は、対物レンズ60を介して情報記録媒体15の記録面に集光される。記録面で反射された戻り光束は、フィルタ81及び回折素子70を介して光検出器59で受光される。光検出器からは対物レンズの光軸方向に関する位置情報を含む信号が出力される。フィルタにより回折効率の入射角依存性に対応して戻り光束の透過光量が調整されるため、光検出器では、入射角依存性による誤差が低減された戻り光束が受光されることとなる。そして、その結果複数の光検出器からの出力信号は入射角依存性による誤差が低減された信号となる。これにより、対物レンズの光軸方向に関する位置情報を含む信号を安定して出力することが可能となる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光ピックアップ装置及び光ディスク装置に係り、さらに詳しくは、情報記録媒体の記録面に光を照射し、その記録面からの反射光を受光する光ピックアップ装置及び該光ピックアップ装置を備えた光ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスク装置では、光ディスクなどの情報記録媒体が用いられ、そのスパイラル状又は同心円状のトラックが形成された記録面にレーザ光を照射することにより情報の記録及び消去を行い、記録面からの反射光に基づいて情報の再生などを行っている。そして、光ディスク装置には、情報記録媒体の記録面にレーザ光を照射して光スポットを形成するとともに、記録面からの反射光を受光するための装置として、光ピックアップ装置を備えている。
【0003】
通常、光ピックアップ装置は、対物レンズを含み、光源から出射される光束を情報記録媒体の記録面に導くとともに、記録面で反射された戻り光束を所定の受光位置まで導く光学系、及び受光位置に配置された受光素子を含む検出系などを備えている。この検出系からは、記録面に記録されているデータの再生情報だけでなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御に必要な情報を含む信号などが出力される。例えば光ディスク装置では、受光素子の出力信号からいわゆるフォーカスエラー信号を検出し、微小な光スポットを記録面に正確に形成するための最適な位置に対物レンズが保持されるように、その光軸方向(フォーカス方向)に関する対物レンズの位置制御(フォーカス制御)にフィードバックさせている。また、光ディスク装置では、受光素子の出力信号からいわゆるトラックエラー信号を検出し、光スポットが記録面の所定位置に正確に形成されるように、トラックの接線方向に直交する方向(トラッキング方向)に関する対物レンズの位置制御(トラッキング制御)にフィードバックさせている。
【0004】
近年、パーソナルコンピュータ(以下「パソコン」と略述する)に代表される情報機器の小型化、軽量化及び低価格化が進み、特にモバイル型のパソコンが急速に普及しつつある。そして、それに伴って、パソコンの周辺機器の一つである光ディスク装置の小型化、軽量化及び低価格化への要求が高まっている。そこで、これらの要求に応える1つの手段として、光ディスク装置の構成要素の1つである光ピックアップ装置の小型化及び低コスト化が注目された。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
光ピックアップ装置の小型化及び低コスト化を図るため、記録面で反射された戻り光束を往路と復路の共通光路から分岐したり、戻り光束を複数の光束に分割する光学素子の1つとしてホログラム素子などの回折素子が用いられるようになってきた。一般的に回折素子では、その格子の溝の深さ(以下「溝深さ」と略述する)が深くなると、その回折効率は、入射角とブラッグ角とが一致するときにピーク値を示す入射角依存性を有することが知られている。
【0006】
特に光利用効率を向上させ、高速度でのアクセスに対応するために、入射する光束の偏光方向に応じて回折効率が異なる偏光ホログラム素子が用いられるようになってきた。例えば特許第2594548号公報には、複屈折性を有する物質(以下「複屈折媒体」という)に形成された凹凸状の格子の少なくとも凹部を複屈折媒体の常光に対する屈折率(常光屈折率)又は異常光に対する屈折率(異常光屈折率)とほぼ等しい屈折率を有する物質で充填した偏光ホログラム素子が開示されている。このような偏光ホログラム素子を光ピックアップ装置に用いる場合に、例えば光源から出射される光束の偏光方向に対しては回折効率が低く、一方戻り光束の偏光方向に対しては回折効率が高くなるように設定すると、光利用効率を高めることができ、高速度でのアクセスに対応可能となる。しかしながら、偏光ホログラム素子は、その常光屈折率と異常光屈折率との差が小さいため、所定の回折効率を確保するには、偏光性を有しないホログラム(無偏光ホログラム)素子よりも溝深さを深くする必要があり、回折効率の入射角依存性が顕著となっている。
【0007】
また、波長が異なる複数の光源を備えた光ピックアップ装置では、戻り光束を受光素子に導くためのホログラム素子が波長毎に配置されている場合がある。この場合に、光利用効率を向上させる目的で、それぞれ対応する波長の光束のみが回折されるように波長選択性を有するホログラム素子を用いることがある。一般的にホログラム素子に波長選択性を持たせるためには、波長選択性を持たないホログラム素子に比べて格子深さを深くする必要がある。例えばCD用の光束を出射する光源のみを有する光ピックアップ装置では、格子深さが0.2μm程度のホログラム素子が用いられている。しかしながら、例えばCD用の光束を出射する光源とDVD用の光束を出射する光源とを有する光ピックアップ装置において、CD用のホログラム素子に、DVD用の光束は透過させ、かつCD用の光束のみを回折するような波長選択性を持たせるには格子深さを1.3μm程度にする必要がある。そのため、このような波長選択性を有するホログラム素子は、格子のピッチにもよるが、その回折効率が入射角依存性を示す場合がある。
【0008】
さらに、近年、小型化によりホログラム素子の狭ピッチ化が進み、前述したような偏光性や波長選択性を有しない場合でも、その回折効率が入射角依存性を示すことがある。
【0009】
通常、光ピックアップ装置に用いられるホログラム素子は、フォーカスエラー信号を検出するための領域(以下「フォーカスエラー検出領域」という)とトラックエラー信号を検出するための領域(以下「トラックエラー検出領域」という)とを備えている。例えば、フォーカスエラー信号をいわゆるナイフエッジ法により検出する場合には、一例として図20(A)に示されるように、ホログラム素子HMは、記録面からの戻り光束の一部をトラッキング方向に回折する回折領域HMaをフォーカスエラー検出領域として備えている。このホログラム素子HMに戻り光束が入射されると、回折領域HMaで回折された+1次回折光(又は−1次回折光)はトラッキング方向に対応する方向の分割線によって2分割された2分割受光素子で受光される。そして、光ディスク装置では、その2分割受光素子を構成する部分受光素子PD1及びPD2からの出力信号の差信号に基づいてフォーカスエラー信号を検出する。なお、図20(A)では便宜上、トラックエラー信号を検出するための回折光については図示を省略している。
【0010】
ここで、例えば、図20(B)に示されるように、非平行の戻り光束がホログラム素子HMに入射された場合に、戻り光束を複数の光束の集合体と考えると、回折領域HMaでの各光束の入射角度は「−θi」〜「+θi」(入射面の法線方向に対して右回りを+とする)の範囲内にある。そこで、分割領域HMaでの+1次回折光における回折効率の入射角度依存性が、一例として図21(A)に示されるような曲線で与えられる場合には、回折領域HMaでの各光束の回折効率はEa〜Eb(Ea<Eb)の範囲内となる。すなわち、例えば戻り光束におけるトラックの溝に起因して発生した2つの回折パターン(以下「トラックパターン」という)TP1,TP2が同一光量であっても、トラックパターンTP1の回折光はトラックパターンTP2の回折光よりも光量が少なくなる。そこで、トラッキング方向における対物レンズの位置ずれ量(以下「オフトラック量」という)と各トラックパターンの回折光の光量との関係は、一例として図21(B)に示されるように、回折効率の入射角度依存性の影響を受ける。すなわち、トラックパターンTP1の回折光による光電変換信号Stp1の平均信号レベルをLγとすると、トラックパターンTP2の回折光による光電変換信号Stp2の平均信号レベルはLγよりも大きいLβとなる。従って、例えば部分受光素子PD1からの出力信号は、一例として図21(C)に示されるように、オフトラック量に対して振幅を有する信号となる。部分受光素子PD2からの出力信号も、部分受光素子PD1からの出力信号と同様にオフトラック量に対して振幅を有する信号となるが、それぞれの振幅の大きさは同一ではないためにフォーカスエラー信号に揺らぎが生じることとなる。そして、そのために、対物レンズのトラッキング制御に伴い、誤ったフォーカス制御が行われるおそれがあるという不都合があった。
【0011】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、対物レンズの位置制御に必要な情報を含む信号を安定して出力することができる光ピックアップ装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の第2の目的は、情報記録媒体への高速度でのアクセスを精度良く安定して行うことができる光ディスク装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、スパイラル状又は同心円状のトラックが形成された情報記録媒体の記録面に光を照射し、前記記録面からの反射光を受光する光ピックアップ装置であって、光源と;該光源から出射される光束を前記記録面に集光する対物レンズと;前記記録面で反射され前記対物レンズを介した戻り光束が入射され、その回折効率が前記戻り光束の入射角に依存する入射角依存性を有する回折素子を含む光学素子と;前記回折素子による回折方向と所定の対応関係にある特定方向に沿って配置され、前記光学素子を介した戻り光束を受光し、前記対物レンズの光軸方向に関する位置情報を含む信号を出力する複数の光検出器と;を備え、前記光学素子のうちの特定光学素子及び前記複数の光検出器の少なくとも一部の特定光検出器の少なくともいずれかが、前記複数の光検出器から出力される信号が前記入射角依存性による誤差が低減された信号となるように構成されている光ピックアップ装置である。
【0014】
これによれば、光源から出射された光束は、対物レンズを介して情報記録媒体の記録面に集光される。記録面で反射された戻り光束は、回折素子を含む光学素子を介して複数の光検出器で受光される。各光検出器からは、それぞれの受光量に対応し、対物レンズの光軸方向に関する位置情報を含む信号が出力される。ここで、入射角依存性による誤差が低減された信号が複数の光検出器から出力されるように、光学素子のうちの特定光学素子及び複数の光検出器の少なくとも一部の特定光検出器の少なくともいずれかが構成されていることにより、結果として対物レンズの光軸方向に関する位置情報を含む信号を安定して出力することが可能となる。
【0015】
この場合において、請求項2に記載の光ピックアップ装置の如く、前記複数の光検出器から出力される信号は、ナイフエッジ法によって前記対物レンズの光軸方向に関する位置情報を検出するのに適した信号であり、前記特定方向は、前記トラックの接線方向に対応する方向であることとすることができる。
【0016】
この場合において、請求項3に記載の光ピックアップ装置の如く、前記特定光学素子は、少なくとも1つのフィルタを含み、該フィルタは前記戻り光束に対する透過率が場所によって異なることとすることができる。かかる場合には、フィルタにより、回折効率の入射角依存性に対応して戻り光束の透過光量が調整される。これにより、複数の光検出器では、入射角依存性による誤差が低減された戻り光束が受光されることとなる。そして、その結果複数の光検出器からの出力信号は入射角依存性による誤差が低減された信号となる。
【0017】
この場合において、請求項4に記載の光ピックアップ装置の如く、前記透過率は、前記トラックの接線方向に直交する方向に対応する方向の一側から他側に向かって変化していることとすることができる。
【0018】
上記請求項3に記載の光ピックアップ装置において、請求項5に記載の光ピックアップ装置の如く、前記フィルタは、トラックの接線方向に対応する方向の分割線によって分割された複数の部分領域を含み、該複数の部分領域のうちの少なくとも2つの部分領域における透過率が互いに異なることとすることができる。
【0019】
上記請求項2〜5に記載の各光ピックアップ装置において、請求項6に記載の光ピックアップ装置の如く、前記特定光学素子は、前記回折素子を含み、前記回折素子は前記戻り光束に対する回折特性が場所によって異なることとすることができる。かかる場合には、戻り光束の入射角に対応して回折素子における回折特性が調整される。これにより、複数の光検出器では、入射角依存性による誤差が低減された戻り光束が受光されることとなる。そして、その結果複数の光検出器からの出力信号は入射角依存性による誤差が低減された信号となる。
【0020】
この場合において、請求項7に記載の光ピックアップ装置の如く、前記回折素子は、格子のデューティ比及び溝の深さのうちの少なくとも1つが、前記トラックの接線方向に直交する方向に対応する方向の一側から他側に向かって変化していることとすることができる。あるいは、請求項8に記載の光ピックアップ装置の如く、前記回折素子は、トラックの接線方向に対応する方向の分割線によって分割された複数の部分領域を含み、そのうちの少なくとも2つの部分領域は、格子のデューティ比及び溝の深さのうちの少なくとも1つが、互いに異なることとすることができる。かかる場合には、格子のデューティ比及び溝の深さのうちの少なくとも1つによって回折素子の回折特性が調整されることとなる。
【0021】
上記請求項6〜8に記載の各光ピックアップ装置において、請求項9に記載の光ピックアップ装置の如く、前記回折素子は、格子が形成された第1の部材と該第1の部材の格子の溝に充填された第2の部材とを含み、前記第1の部材の屈折率と前記第2の部材の屈折率との差が場所によって異なることとすることができる。かかる場合には、第1の部材の屈折率と第2の部材の屈折率との差によって回折素子の回折特性が調整されることとなる。
【0022】
上記請求項1に記載の光ピックアップ装置において、請求項10に記載の光ピックアップ装置の如く、前記複数の光検出器から出力される信号は、ダブルビームサイズ法によって前記対物レンズの光軸方向に関する位置情報を検出するのに適した信号であり、前記特定方向は、前記トラックの接線方向に直交する方向に対応する方向であることとすることができる。
【0023】
この場合において、請求項11に記載の光ピックアップ装置の如く、前記特定光検出器は、前記特定方向に直交する方向の2本の分割線によって3つの受光素子に分割され、各受光素子での受光量の比が順におよそ1:2:1の関係にある3分割受光素子を2つ含むこととすることができる。かかる場合には、各3分割受光素子では、その3分割受光素子を構成する3つの受光素子での受光量の比がおよそ1:2:1の関係となるようにそれぞれ設定されていることにより、戻り光束に含まれる入射角依存性による誤差が低減されることとなる。そして、その結果複数の光検出器からの出力信号は入射角依存性による誤差が低減された信号となる。
【0024】
上記請求項1〜11に記載の各光ピックアップ装置において、請求項12に記載の光ピックアップ装置の如く、前記光源と前記複数の光検出器とが、同一の筐体内に配置され、パッケージ化されていることとすることができる。かかる場合には、光ピックアップ装置の小型化及び低コスト化を促進することができる。
【0025】
上記請求項1〜12に記載の各光ピックアップ装置において、請求項13に記載の光ピックアップ装置の如く、前記光源と前記複数の光検出器と前記回折素子とが、一体化されていることとすることができる。かかる場合には、組み付け時の構成部品の数が減少し、組み付け作業及び調整作業を簡略化することができ、作業コストを削減することが可能となる。
【0026】
上記請求項1〜13に記載の各光ピックアップ装置において、請求項14に記載の光ピックアップ装置の如く、前記回折素子は、入射する光束の偏光方向によりその回折効率が異なる偏光回折素子であることとすることができる。かかる場合には、光利用効率が向上し、高速化に対応することができる。
【0027】
この場合において、請求項15に記載の光ピックアップ装置の如く、前記偏光回折素子は、表面に周期的な凹凸が格子として形成された複屈折性を有する複屈折媒体を含み、該複屈折媒体は、前記格子が形成された有機延伸膜であることとすることができる。かかる場合には、微細加工を容易に行うことができるため、狭ピッチ化が可能となる。すなわち、戻り光束の回折角を大きくすることができ、光ピックアップ装置の小型化を促進することが可能となる。
【0028】
請求項16に記載の発明は、情報記録媒体に対して、情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行なう光ディスク装置であって、請求項1〜15のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置と;前記複数の光検出器からの出力信号に基づいて前記対物レンズの光軸方向に関する位置情報を求め、前記対物レンズの光軸方向に関する位置を制御する位置制御手段と;前記光ピックアップ装置からの出力信号を用いて、前記情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行なう処理装置と;を備える光ディスク装置である。
【0029】
これによれば、請求項1〜15のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置が用いられ、位置制御手段により、光ピックアップ装置からの出力信号に基づいて対物レンズの光軸方向に関する位置情報が精度良く検出され、その検出結果に基づいて対物レンズの光軸方向に関する位置が制御されるために、情報記録媒体の記録面に所定の光スポットを正確に形成することができる。従って、結果として情報記録媒体への高速度での情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を含むアクセスを精度良く安定して行うことが可能となる。
【0030】
【発明の実施の形態】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0031】
図1には、本発明の第1の実施形態に係る光ディスク装置の概略構成が示されている。
【0032】
この図1に示される光ディスク装置20は、情報記録媒体としての光ディスク15を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、レーザコントロール回路24、エンコーダ25、モータドライバ27、再生信号処理回路28、サーボコントローラ33、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、ROM39、CPU40及びRAM41などを備えている。なお、図1における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0033】
前記光ピックアップ装置23は、光ディスク15のスパイラル状又は同心円状のトラックが形成された記録面にレーザ光を照射するとともに、記録面からの反射光を受光するための装置である。なお、この光ピックアップ装置23の構成等については後に詳述する。
【0034】
前記再生信号処理回路28は、光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいてウォブル信号、RF信号及びサーボ信号(フォーカスエラー信号、トラックエラー信号)などを検出する。そして、再生信号処理回路28はウォブル信号からアドレス情報及び同期信号等を抽出する。ここで抽出されたアドレス情報はCPU40に出力され、同期信号はエンコーダ25に出力される。さらに、再生信号処理回路28はRF信号に対して誤り訂正処理等を行なった後、バッファマネージャ37を介してバッファRAM34に格納する。また、サーボ信号は再生信号処理回路28からサーボコントローラ33に出力される。
【0035】
前記サーボコントローラ33は、サーボ信号に基づいて光ピックアップ装置23を制御する各種制御信号を生成し、モータドライバ27に出力する。
【0036】
前記バッファマネージャ37は、バッファRAM34へのデータの入出力を管理し、蓄積されたデータ量が所定の値になるとCPU40に通知する。
【0037】
前記モータドライバ27は、サーボコントローラ33からの制御信号及びCPU40の指示に基づいて、光ピックアップ装置23及びスピンドルモータ22を制御する。
【0038】
前記エンコーダ25は、CPU40の指示に基づいて、バッファRAM34に蓄積されているデータをバッファマネージャ37を介して取り出し、エラー訂正コードの付加などを行ない、光ディスク15への書き込みデータを作成するとともに、再生信号処理回路28からの同期信号に同期して書き込みデータをレーザコントロール回路24に出力する。
【0039】
前記レーザコントロール回路24は、エンコーダ25からの書き込みデータ及びCPU40の指示に基づいて、光ピックアップ装置23から出射されるレーザ光の出力を制御する。
【0040】
前記インターフェース38は、ホスト(例えばパソコン)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)及びSCSI(Small Computer System Interface)等の標準インターフェースに準拠している。
【0041】
前記ROM39には、CPU40にて解読可能なコードで記述されたプログラムが格納されている。そして、CPU40は、ROM39に格納されているプログラムに従って上記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータ等を一時的にRAM41に保存する。
【0042】
次に、前記光ピックアップ装置23の構成等について図2に基づいて説明する。光ピックアップ装置23は、図2に示されるように、光源ユニット51、コリメートレンズ52、ビームスプリッタ54、対物レンズ60、検出レンズ58、回折素子としてのホログラム素子70、光検出器としての受光器59、フィルタ81及び駆動系(フォーカシングアクチュエータ、トラッキングアクチュエータ及びシークモータ(いずれも図示省略))などを備えている。なお、以下では光ディスク15のトラックの接線方向に対応する方向をタンジェンシャル方向(以下「T方向」ともいう)、該タンジェンシャル方向に直交する方向をラジアル方向(以下「R方向」ともいう)という。
【0043】
前記光源ユニット51は、所定の波長の光束を発光する光源としての半導体レーザ(図示省略)を含んで構成されている。なお、光源ユニット51から出射される光束の最大強度出射方向を+X方向とする。この光源ユニット51の+X側には、前記コリメートレンズ52が配置され、光源ユニット51から出射された光束を略平行光とする。
【0044】
コリメートレンズ52の+X側には、光ディスク15からの戻り光束を−Z方向に分岐するための前記ビームスプリッタ54が配置されている。このビームスプリッタ54の+X側には、ビームスプリッタ54を透過した光束を集光し、光ディスク15の記録面に光スポットを形成する前記対物レンズ60が配置されている。
【0045】
また、ビームスプリッタ54の−Z側には、ビームスプリッタ54で分岐された戻り光束を集光する前記検出レンズ58が配置されている。この検出レンズ58の−Z側には、戻り光束の光量を調整するための前記フィルタ81が配置されている。なお、このフィルタ81については後に詳述する。
【0046】
フィルタ81の−Z側には、フィルタ81を透過した戻り光束を回折する前記ホログラム素子70が配置されている。本第1の実施形態では、ナイフエッジ法によりフォーカスエラー信号を検出し、いわゆるプッシュプル法によりトラックエラー信号を検出することとする。そこで、ホログラム素子70は、一例として図3に示されるように、R方向(ここではX軸方向)の分割線DL1によって2つの領域に分割され、そのうち分割線DL1の−Y側の領域は、更にT方向(ここではY軸方向)の分割線DL2によって2つの領域に分割されている。すなわち、ホログラム素子70は、3つの回折領域70a,70b,70cから構成されている。ここでは、回折領域70aは分割線DL1の+Y側に位置し、回折領域70bは分割線DL2の−X側に位置し、回折領域70cは分割線DL2の+X側に位置している。そこで、回折領域70aがフォーカスエラー検出領域となり、回折領域70b,70cがトラックエラー検出領域となる。そして、ホログラム素子70は、そのほぼ中央に戻り光束が入射するように配置されている。また、各回折領域に入射した光束はR方向(ここではX軸方向)に回折されるように設定されている。
【0047】
なお、ここでは、+X側に回折される1次回折光を+1次回折光と呼ぶものとする。また便宜上、ホログラム素子の受光面、すなわちXY平面上に回折光を写像した際の回折光の方向を用いて、ホログラム素子での回折方向を示すものとする。さらに、検出レンズ58で集束された戻り光束は、一例として図4に示されるように、ホログラム素子70の光軸方向と回折方向とを含む平面(ここではXZ平面)内における入射角(以下、便宜上「戻り光束入射角」ともいう)が「−θ1」〜「+θ1」の範囲内となるように、ホログラム素子70に入射されるものとする。これにより、回折領域70aにおける戻り光束入射角は、入射位置によって「−θ1」から「+θ1」に変化することとなる。なお、例えばコリメートレンズ52の開口数(N.A.)が0.1程度の場合には、θ1は6°程度である。また、回折領域70aは、一例として図5に示されるような回折効率の入射角依存性を有することととする。なお、図5には+1次回折光における回折効率の入射角依存性が示されている。従って、回折領域70aでの回折効率は、戻り光束の入射位置によってE1からE2(E1<E2)に変化することとなる。
【0048】
前記フィルタ81は、回折領域70aでの回折効率の入射角依存性を補正する目的で用いられ、回折領域70aに入射する戻り光束が通過する位置に配置されている。そして、このフィルタ81は、一例として図6(A)及び図6(B)に示されるように、T方向の分割線によって2つの通過領域(部分領域)に分割されている。すなわち、フィルタ81は、戻り光束入射角が「−θ1」〜「0」の範囲内の戻り光束が通過する通過領域81aと、戻り光束入射角が「0」〜「+θ1」の範囲内の戻り光束が通過する通過領域81bとから構成されている。そして、通過領域81aでの戻り光束の透過率は、通過領域81bでの戻り光束の透過率よりも大きく設定されている。例えば、光ディスク15の位置に反射ミラー(又は光源)を置き、通過領域81aを通過して回折領域70aで回折された光束の光量と、通過領域81bを通過して回折領域70aで回折された光束の光量とがほぼ等しくなるように通過領域81a,81bでの透過率を決定する。これにより、回折領域70aに入射する戻り光束のうち、戻り光束入射角が「−θ1」〜「0」の範囲内の戻り光束の光量は、戻り光束入射角が「0」〜「+θ1」の範囲内の戻り光束の光量よりも多くなる。そして、その結果として回折領域70aにおける回折効率の入射角依存性が補正されることとなる。
【0049】
前記受光器59は、一例として図7に示されるように、回折領域70aからの+1次回折光を受光する受光素子59aと、回折領域70bからの+1次回折光を受光する受光素子59bと、回折領域70cからの+1次回折光を受光する受光素子59cとを含んで構成されている。受光素子59aは2分割受光素子であり、部分受光素子59a1と部分受光素子59a2とから構成されている。
【0050】
これにより、一例として図8(A)及び図8(B)に示されるように、オフトラック量と部分受光素子59a1からの出力信号との関係において、回折領域70aにおける回折効率の入射角依存性の影響が非常に小さくなる。すなわち、通過領域81aを通過した戻り光束の+1次回折光による信号成分S81aと通過領域81bを通過した戻り光束の+1次回折光による信号成分S81bとは、平均レベルがほぼ等しい逆相の信号となり、図8(B)に示されるように、部分受光素子59a1からの出力信号は、従来(図21(C)参照)に比べてオフトラック量に対する揺らぎが極めて小さくなる。なお、部分受光素子59a2からの出力信号も同様に、オフトラック量に対する揺らぎが極めて小さくなる。
【0051】
《対物レンズの位置制御》
次に、前述のようにして構成された光ディスク装置20を用いて光ディスク15をアクセスする際の対物レンズ60の位置制御(トラッキング制御、フォーカス制御)について説明する。
【0052】
光源ユニット51から+X方向に出射された光束は、コリメートレンズ52で略平行光となった後、ビームスプリッタ54に入射する。ビームスプリッタ54を透過した光束は、対物レンズ60を介して光ディスク15の記録面に微小スポットとして集光される。
【0053】
光ディスク15の記録面で反射した光束は、戻り光束として対物レンズ60で再び略平行光とされ、ビームスプリッタ54に入射する。ビームスプリッタ54で−Z方向に分岐された戻り光束は、検出レンズ58で集束され、フィルタ81を介してホログラム素子70に入射する。ホログラム素子70の回折領域70aからの+1次回折光は受光素子(2分割受光素子)59aで受光され、回折領域70bからの+1次回折光は受光素子59bで受光され、回折領域70cからの+1次回折光は受光素子59cで受光される。各受光素子は受光量に応じた信号を再生信号処理回路28に出力する。
【0054】
再生信号処理回路28は、次の(1)式に基づいてフォーカスエラー信号FEを検出する。ここで、S59a1は部分受光素子59a1からの出力信号を変換した電圧信号であり、S59a2は部分受光素子59a2からの出力信号を変換した電圧信号である。
【0055】
FE=S59a1−S59a2 ……(1)
【0056】
また、再生信号処理回路28は、次の(2)式に基づいてトラックエラー信号TEを検出する。ここで、S59bは受光素子59bからの出力信号を変換した電圧信号であり、S59cは部分受光素子59cからの出力信号を変換した電圧信号である。
【0057】
TE=S59b−S59c ……(2)
【0058】
そして、再生信号処理回路28は、検出したフォーカスエラー信号FE及びトラックエラー信号TEをサーボコントローラ33に出力する。サーボコントローラ33は、フォーカスエラー信号FEに基づいてモータドライバ27を介して光ピックアップ装置23のフォーカシングアクチュエータを駆動し、対物レンズ60のフォーカスずれを補正する。また、サーボコントローラ33は、トラックエラー信号TEに基づいてモータドライバ27を介して光ピックアップ装置23のトラッキングアクチュエータを駆動し、対物レンズ60のトラックずれを補正する。
【0059】
《記録処理》
次に、前述の光ディスク装置20を用いて、光ディスク15にデータを記録する場合の処理動作について簡単に説明する。
【0060】
CPU40はホストから記録要求のコマンドを受信すると、指定された記録速度に基づいてスピンドルモータ22の回転を制御するための制御信号をモータドライバ27に出力するとともに、ホストから記録要求のコマンドを受信した旨を再生信号処理回路28に通知する。また、CPU40はホストから受信したデータをバッファマネージャ37を介してバッファRAM34に蓄積する。
【0061】
光ディスク15の回転が所定の線速度に達すると、前述の如くして、対物レンズ60のトラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。
【0062】
再生信号処理回路28は光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいてアドレス情報を取得し、CPU40に通知する。そして、CPU40はアドレス情報に基づいて、指定された書き込み開始地点に光ピックアップ装置23が位置するように光ピックアップ装置23のシーク動作を制御する信号をモータドライバ27に出力する。
【0063】
CPU40はバッファマネージャ37からバッファRAM34に蓄積されたデータ量が所定の値を超えたとの通知を受けると、エンコーダ25に書き込みデータの作成を指示する。また、CPU40はアドレス情報に基づいて光ピックアップ装置23の位置が書き込み開始地点であると判断すると、エンコーダ25に通知する。そして、エンコーダ25はレーザコントロール回路24及び光ピックアップ装置23を介して、書き込みデータを光ディスク15に記録する。
【0064】
《再生処理》
次に、前述した光ディスク装置20を用いて、光ディスク15に記録されているデータを再生する場合の処理動作について簡単に説明する。
【0065】
CPU40はホストから再生要求のコマンドを受信すると、再生速度に基づいてスピンドルモータ22の回転を制御するための制御信号をモータドライバ27に出力するとともに、ホストから再生要求のコマンドを受信した旨を再生信号処理回路28に通知する。そして、光ディスク15の回転が所定の線速度に達すると、上記記録処理の場合と同様に、対物レンズ60のトラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。また、再生信号処理回路28は上記記録処理の場合と同様に、アドレス情報を検出し、CPU40に通知する。
【0066】
CPU40はアドレス情報に基づいて、指定された読み込み開始地点に光ピックアップ装置23が位置するようにシーク動作を制御する信号をモータドライバ27に出力する。CPU40はアドレス情報に基づいて、光ピックアップ装置23の位置が読み込み開始地点であると判断すると、再生信号処理回路28に通知する。
【0067】
そして、再生信号処理回路28は、光ピックアップ装置23の出力信号に基づいてRF信号を検出し、誤り訂正処理等を行った後、バッファRAM34に蓄積する。バッファマネージャ37は、バッファRAM34に蓄積された再生データがセクタデータとして揃ったときに、インターフェース38を介してホストに転送する。
【0068】
なお、記録処理及び再生処理が終了するまで、対物レンズ60のトラッキング制御及びフォーカス制御が随時行われる。
【0069】
以上の説明から明らかなように、本第1の実施形態に係る光ディスク装置20では、再生信号処理回路28と、CPU40及び該CPU40によって実行されるプログラムとによって処理装置が実現されている。また、再生信号処理回路28とサーボコントローラ33とから位置制御手段が構成されている。
【0070】
以上説明したように、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置23によると、ホログラム素子70のフォーカスエラー検出領域である回折領域70aに入射する戻り光束のうち、高い回折効率の領域に入射する光束の光量が低い回折効率の領域に入射する光束の光量よりも少なくなるように、フィルタ81によって戻り光束の光量調整が行われている。それにより、回折領域70aにおける回折効率の入射角依存性が補正され、その結果としてオフトラック量に対する揺らぎが極めて低いフォーカスエラーに関する情報を含む信号が受光素子59aから安定して出力されることとなる。また、戻り光束を複数の光束に分割するための光学素子として、光学プリズムなどよりも小さくて安価なホログラム素子を用いているために、光ピックアップ装置の小型化及び低コスト化を促進することができる。さらに、小さくて安価なフィルタによって、回折効率の入射角依存性を補正しているために、光ピックアップ装置の大型化及び高コスト化を防止することができる。
【0071】
また、本第1の実施形態に係る光ディスク装置20によると、再生信号処理回路28では、光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいて、オフトラック量に対する揺らぎが極めて低いフォーカスエラー信号を安定して検出することができるため、対物レンズのフォーカス制御を精度良く行うことができる。すなわち、情報記録媒体への高速度でのアクセスを精度良く安定して行うことが可能となる。さらに、光ピックアップ装置の小型化によって、光ディスク装置自体の小型化及び消費電力の低減も促進することができ、例えば携帯用として用いられる場合には、持ち運びが容易となり、さらに長時間の使用が可能となる。
【0072】
なお、上記第1の実施形態では、フィルタ81の両方の通過領域81a,81bにフィルタ機能を持たせる場合について説明したが、これに限らず、例えば通過領域81aの透過率をほぼ100%とし、通過領域81bにのみフィルタ機能を持たせても良い。
【0073】
また、上記第1の実施形態では、フィルタ81を検出レンズ58とホログラム素子70との間に配置する場合について説明したが、これに限らず、例えば、フィルタ81をビームスプリッタ54と検出レンズ58との間に配置しても良く、あるいは、ホログラム素子70と受光器59との間に配置しても良い。この場合には、フィルタ81は2分割受光素子59aの受光面上に貼り付けられても良い。
【0074】
また、上記第1の実施形態では、1つのフィルタを用いる場合について説明したが、これに限らず、複数個のフィルタを用いても良い。
【0075】
また、上記第1の実施形態では、フィルタを2つの通過領域に分割した場合について説明したが、これに限らず、例えば3つ以上の通過領域に分割しても良い。
【0076】
なお、上記第1の実施形態では、フィルタ81の各通過領域での透過率が一定の場合について説明したが、これに限らず、例えば図9(A)及び図9(B)に示されるように、戻り光束入射角が−θ1の部分での透過率をTR1、戻り光束入射角が+θ1の部分での透過率をTR2(<TR1)とし、TR1からTR2に徐々に透過率が小さくなっているフィルタ82を用いても良い。そして、この場合に、TR1からTR2に一定のステップで透過率が変化しても良いが、部分的にステップが異なっていても良い。この場合には、フィルタは分割されない。
【0077】
また、フィルタが複数の通過領域から構成されている場合に、それらの通過領域のうちの少なくとも一つの通過領域で、+X方向に向かって透過率が徐々に小さくなっていても良い。
【0078】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を図10〜図12に基づいて説明する。
【0079】
この第2の実施形態は、一例として図10に示されるように、上記第1の実施形態におけるホログラム素子70の代わりに、場所によってホログラム作用(回折特性)が異なるフォーカスエラー検出領域を有するホログラム素子71が用いられる点に特徴を有する。そして、この場合には、第1の実施形態におけるフィルタ81は不要である。なお、その他の光ピックアップ装置及び光ディスク装置の構成などは、上記第1の実施形態と同様である。従って、以下においては、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、上記第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。また、前提条件についても上記第1の実施形態と同様とする。
【0080】
ホログラム素子71は、一例として図11(A)に示されるように、フォーカスエラー検出領域として回折領域71a、トラックエラー検出領域として回折領域71b,71cを有している。そして、回折領域71aはトラックの接線方向に対応する方向(ここではY軸方向)の分割線によって更に2つの部分領域71a1,71a2に分割されている。そして、部分領域71a1は分割線の−X側に位置し、部分領域71a2は分割線の+X側に位置している。すなわち、部分領域71a1での戻り光束入射角は「−θ1」〜「0」の範囲内にあり、部分領域71a2での戻り光束入射角は「0」〜「+θ1」の範囲内にある。
【0081】
一般的にホログラム素子の回折効率は、格子の溝深さによって変化する。一例として図12に示されるように、溝深さが2μmのホログラム素子と3μmのホログラム素子とを比較すると、実用的な入射角領域では溝深さが3μmのホログラム素子のほうが2μmのホログラム素子よりも回折効率が高い。すなわち、溝深さが深いほうが回折効率が高い。そこで、図11(B)に示されるように、部分領域71a1での格子の溝深さDaを部分領域71a2での格子の溝深さDbよりも深くしている。なお、溝深さDa及び溝深さDbは、理論計算あるいは実験及び経験などに基づいて最適な深さがそれぞれ設定される。
【0082】
これにより、回折領域71aでは、戻り光束入射角が「−θ1」〜「0」の範囲内の領域での回折効率は、戻り光束入射角が「0」〜「+θ1」の範囲内の領域での回折効率よりも大きくなり、その結果として、回折領域71aにおける回折効率の入射角依存性を小さくすることができる。
【0083】
次に、上述のようにして構成された光ピックアップ装置23を備えた光ディスク装置20における対物レンズ60のフォーカス制御について説明する。
【0084】
光源ユニット51から出射された光束は、上記第1の実施形態と同様にして記録面に微小スポットとして集光される。
【0085】
記録面からの戻り光束は対物レンズ60で再び略平行光とされ、ビームスプリッタ54に入射する。ビームスプリッタ54で−Z方向に反射された戻り光束は、検出レンズ58を介してホログラム素子71に入射する。ホログラム素子71の回折領域71aにおけるホログラム作用により生じた+1次回折光は、2分割受光素子59aで受光される。
【0086】
再生信号処理回路28では、上記(1)式に基づいてフォーカスエラー信号FEを検出する。そして、そのフォーカスエラー信号FEに基づいて、上記第1の実施形態と同様にしてフォーカス制御が行われる。
【0087】
以上の説明から明らかなように、本第2の実施形態に係る光ディスク装置では、上記第1の実施形態と同様に、再生信号処理回路28と、CPU40及び該CPU40によって実行されるプログラムとによって処理装置が実現されており、上記第1の実施形態と同様にして、記録処理及び再生処理が行われる。また、再生信号処理回路28とサーボコントローラ33とから位置制御手段が構成されている。
【0088】
以上説明したように、本第2の実施形態に係る光ピックアップ装置23によると、部分領域71a1での格子の溝深さと部分領域71a2での格子の溝深さとが互いに異なるように設定されたホログラム素子71を用いている。そして、ホログラム素子71では、戻り光束の入射角の違いに起因する各部分領域での戻り光束の回折効率の差を小さくするように各部分領域での格子の溝深さが設定されているために、回折領域71aにおける回折効率の入射角依存性を小さくすることができる。また、ホログラム素子における格子の溝深さを調整することによって、回折効率の入射角依存性を補正しているために、新たな補正手段を必要とせず、大型化及び高コスト化を防止することができる。従って、上記第1の実施形態に係る光ピックアップ装置と同様な効果を得ることが可能となる。
【0089】
また、本第2の実施形態に係る光ディスク装置20によると、光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいて、オフトラック量に対する揺らぎが極めて低いフォーカスエラー信号を安定して検出することができるため、上記第1の実施形態に係る光ディスク装置と同様な効果を得ることが可能となる。
【0090】
なお、上記第2の実施形態では、フォーカスエラー検出領域を2つの部分領域に分割した場合について説明したが、これに限らず、例えば3つ以上の部分領域に分割しても良い。
【0091】
なお、上記第2の実施形態では、部分領域71a1での格子の溝深さが一定値Daであり、部分領域71a2での格子の溝深さが一定値Dbである場合について説明したが、これに限らず、回折効率が最も低い部分から回折効率が最も高い部分に向かって所定のステップで徐々に溝深さが浅くなっても良い。例えば図13(A)及び図13(B)に示されるように、フォーカスエラー検出領域として回折領域72a、トラックエラー検出領域として回折領域72b,72cを有し、回折領域72aでは、戻り光束入射角が−θ1の部分(回折効率が最も低い部分)での溝深さをDc、戻り光束入射角が+θ1の部分(回折効率が最も高い部分)での溝深さをDd(<Dc)とし、DcからDdに徐々に溝深さが浅くなっているホログラム素子72を用いても良い。そして、この場合に、DcからDdに一定のステップで溝深さが変化しても良いが、部分的にステップが異なっていても良い。この場合には、フォーカスエラー検出領域は分割されない。
【0092】
また、フォーカスエラー検出領域が複数の部分領域から構成されている場合に、それらの部分領域のうちの少なくとも一つの部分領域で、その部分領域内における戻り光束の回折効率の低い部分から高い部分に向かって所定のステップで徐々に溝深さを浅くしても良い。
【0093】
また、上記第2の実施形態では、溝深さを調整することにより、回折効率の入射角依存性を小さくする場合について説明したが、これに限らず、例えば格子における凹凸のデューティ比を変えても良い。ホログラム素子の回折効率はデューティ比が0.5の時に最大となるので、例えば図14(A)及び図14(B)に示されるように、フォーカスエラー検出領域として回折領域73a、トラックエラー検出領域として回折領域73b,73cを有し、回折効率が低い部分領域73a1でのデューティ比を0.5、回折効率が高い部分領域73a2でのデューティ比を0.33としたホログラム素子73を用いても良い。
【0094】
ここで、回折効率が最も低い部分から回折効率が最も高い部分に向かって所定のステップで徐々にデューティ比が小さくなっても良い。例えば図15(A)及び図15(B)に示されるように、フォーカスエラー検出領域として回折領域74a、トラックエラー検出領域として回折領域74b,74cを有し、回折領域74aでは、戻り光束入射角が−θ1の部分(回折効率が最も低い部分)でのデューティ比を0.5、戻り光束入射角が+θ1の部分(回折効率が最も高い部分)でのデューティ比を0.33とし、0.5から0.33に徐々にデューティ比が小さくなっているホログラム素子74を用いても良い。
【0095】
また、フォーカスエラー検出領域において格子の溝深さとデューティ比の両方によってホログラム作用を調整しても良い。
【0096】
また、ホログラム素子がエッチングなどによって所定の深さの溝が形成された基板と該溝に充填された充填材とを有している場合には、基板の屈折率と充填材の屈折率との差を調整することにより、回折効率の入射角依存性を小さくしても良い。例えば図16(A)及び図16(B)に示されるように、フォーカスエラー検出領域として回折領域75a、トラックエラー検出領域として回折領域75b,75cを有し、回折効率が低い部分領域75a1での基板Maの屈折率と充填材Mbの屈折率との差と、回折効率が高い部分領域75a2での基板Maの屈折率と充填材Mcの屈折率との差が互いに異なっているホログラム素子75を用いても良い。
【0097】
ホログラム素子などの周期的な凹凸が格子として形成されている回折素子では、最大の回折効率が得られるときの入射光の波長λと格子の溝の深さTmとは、一般的に次の(3)式で示される関係にあることが知られている。ここで、Δnは溝が形成された基板の屈折率とその溝に充填されている充填材の屈折率との差(偏光ホログラムでは常光屈折率と異常光屈折率との差)である。
【0098】
Δn×Tm=λ/2 ……(3)
【0099】
そこで、基板Maの屈折率と充填材Mbの屈折率との差が上記(3)式を満たし、基板Maの屈折率と充填材Mcの屈折率との差が上記(3)式を満たさないように設定することにより、回折領域75aでの回折効率の入射角依存性を小さくすることができる。
【0100】
なお、この場合において、充填材の屈折率を一定とし、基板の屈折率を場所によって変えても良い。さらに、基板と充填材の両方の屈折率を場所によって変えても良い。
【0101】
また、上記第2の実施形態において、上記第1の実施形態におけるフィルタと同様な機能を有するフィルタを併用しても良い。
【0102】
また、上記第1及び第2の実施形態では、上記(1)式及び(2)式の演算処理が再生信号処理回路28にて行われる場合について説明したが、これに限らず、光ピックアップ装置23に、上記(1)式及び(2)式の少なくとも一方の演算処理を行なう演算回路を付加しても良い。
【0103】
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態を図17〜図19に基づいて説明する。
【0104】
この第3の実施形態は、ダブルビームサイズ法を用いてフォーカスエラー信号を検出する点に特徴を有する。そして、この場合には、一例として図17に示されるように、上記第1の実施形態におけるホログラム素子70の代わりにホログラム素子76が用いられ、受光器59の代わりに受光器69が用いられる。第1の実施形態におけるフィルタ81は不要である。なお、その他の光ピックアップ装置及び光ディスク装置の構成などは、上記第1の実施形態と同様である。従って、以下においては、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、上記第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。また、前提条件についても上記第1の実施形態と同様とする。
【0105】
ホログラム素子76は、一例として図18に示されるように、R方向(ここではX軸方向)の分割線DL3によって2つの領域に分割されている。すなわち、ホログラム素子76は、2つの回折領域76a,76bから構成されている。ここでは、回折領域76aは分割線DL3の+Y側に位置し、回折領域76bは分割線DL3の−Y側に位置している。そして、ホログラム素子76は、そのほぼ中央に戻り光束が入射するように配置されている。また、各回折領域に入射した光束はT方向(ここではY軸方向)に回折されるように設定されている。
【0106】
受光器69は、一例として図19に示されるように、回折領域76aからの回折光を受光する3分割受光素子69Aと、回折領域76bからの回折光を受光する3分割受光素子69Bとを含んで構成されている。3分割受光素子69Aは、T方向(ここでは、Y軸方向)の2本の分割線によって3つの部分受光素子69a,69b,69cに分割されている。そして、3分割受光素子69Aでは、部分受光素子69aでの受光量と部分受光素子69bでの受光量と部分受光素子69cでの受光量との比がおおよそ1:2:1となるように設定されている。同様に3分割受光素子69Bは、T方向の2本の分割線によって3つの部分受光素子69d,69e,69fに分割されている。そして、3分割受光素子69Bでは、部分受光素子69dでの受光量と部分受光素子69eでの受光量と部分受光素子69fでの受光量との比がおおよそ1:2:1となるように設定されている。
【0107】
再生信号処理回路28は、次の(4)式に基づいてフォーカスエラー信号FEを検出する。ここでS69aは部分受光素子69aの出力信号を変換した電圧信号であり、S69bは部分受光素子69bの出力信号を変換した電圧信号であり、S69cは部分受光素子69cの出力信号を変換した電圧信号であり、S69dは部分受光素子69dの出力信号を変換した電圧信号であり、S69eは部分受光素子69eの出力信号を変換した電圧信号であり、S69fは部分受光素子69fの出力信号を変換した電圧信号である。
【0108】
FE=(S69a+S69c+S69e)−(S69b+S69d+S69f) ……(4)
【0109】
ここでは、ホログラム素子での回折方向が光ディスク15のトラックの接線方向に対応する方向(ここではY軸方向)とほぼ一致しているため、部分受光素子69aの出力信号及び部分受光素子69cの出力信号における信号振幅は互いにほぼ等しく、また部分受光素子69dの出力信号及び部分受光素子69fの出力信号における信号振幅も互いにほぼ等しくなる。従って、ナイフエッジ法を用いた場合に比べてフォーカスエラー信号におけるオフトラックに対する揺らぎは極めて低くなる。
【0110】
しかしながら、ホログラム素子76に入射する戻り光束の強度分布中心が分割線DL3上に位置する場合に、対物レンズの位置がオフトラック位置でなくても、ホログラム素子における回折効率の入射角依存性の影響により、部分受光素子69aでの受光量と部分受光素子69dでの受光量、部分受光素子69bでの受光量と部分受光素子69eでの受光量、及び部分受光素子69cでの受光量と部分受光素子69fでの受光量は、いずれも異なることとなる。例えば、回折領域76bでの戻り光束の回折効率が回折領域76aでの戻り光束の回折効率の2倍であり、部分受光素子69aでの受光量及び部分受光素子69cでの受光量がいずれもAであり、部分受光素子69bでの受光量がBである場合について説明する。この場合には、フォーカスエラー信号FEは上記(4)式に基づいて計算すると、FE=(A+A+2B)−(B+2A+2A)=B−2Aとなる。ここで、B≠2Aであれば、フォーカスエラー信号FEにオフセットが生じることとなる。本第3の実施形態では、上述したように3分割受光素子69Aでは、部分受光素子69aでの受光量と部分受光素子69bでの受光量と部分受光素子69cでの受光量との比がおおよそ1:2:1となるように設定されており、同様に3分割受光素子69Bでは、部分受光素子69dでの受光量と部分受光素子69eでの受光量と部分受光素子69fでの受光量との比がおおよそ1:2:1となるように設定されているために、(B−2A)はほとんど0となり、フォーカスエラー信号FEのオフセットは極めて小さくなる。
【0111】
また、トラックエラー信号TEは次の(5)式に基づいて検出される。
【0112】
TE=(S69a+S69f)−(S69c+S69d) ……(5)
【0113】
以上の説明から明らかなように、本第3の実施形態に係る光ディスク装置では、上記第1の実施形態と同様に、再生信号処理回路28と、CPU40及び該CPU40によって実行されるプログラムとによって処理装置が実現されており、上記第1の実施形態と同様にして、記録処理及び再生処理が行われる。また、再生信号処理回路28とサーボコントローラ33とから位置制御手段が構成されている。
【0114】
以上説明したように、本第3の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、ダブルビームサイズ法を用いてフォーカスエラー信号を検出するとともに、3分割受光素子69Aを構成する部分受光素子69aでの受光量と部分受光素子69bでの受光量と部分受光素子69cでの受光量との比がおおよそ1:2:1となるように設定されており、3分割受光素子69Bを構成する部分受光素子69dでの受光量と部分受光素子69eでの受光量と部分受光素子69fでの受光量との比がおおよそ1:2:1となるように設定されている。それにより、ホログラム素子における回折効率の入射角依存性に起因するオフセット成分がフォーカスエラー信号に付加されるのを抑制することができる。また、受光器における分割線の位置を設定することによって、ホログラム素子における回折効率の入射角依存性を補正しているために、新たな補正手段を必要とせず、大型化及び高コスト化を防止することができる。従って、上記第1の実施形態に係る光ピックアップ装置と同様な効果を得ることが可能となる。
【0115】
また、本第3の実施形態に係る光ディスク装置20によると、光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいて、オフセット成分が極めて低いフォーカスエラー信号を安定して検出することができるため、上記第1の実施形態に係る光ディスク装置と同様な効果を得ることが可能となる。
【0116】
なお、上記第3の実施形態では、受光器における分割線の位置を設定することによって、回折効率の入射角依存性を補正する場合について説明したが、これに限らず、例えば、ホログラム素子における分割線の位置を設定することによって、回折効率の入射角依存性を補正しても良い。すなわち、対物レンズの位置がオフトラック位置でないときに、部分受光素子69aでの受光量と部分受光素子69dでの受光量、部分受光素子69bでの受光量と部分受光素子69eでの受光量、及び部分受光素子69cでの受光量と部分受光素子69fでの受光量が、それぞれほぼ等しくなるようにホログラム素子における分割線の位置を設定しても良い。
【0117】
また、上記第3の実施形態では、上記(4)式及び(5)式の演算処理が再生信号処理回路28にて行われる場合について説明したが、これに限らず、光ピックアップ装置23に、上記(4)式及び(5)式の少なくとも一方の演算処理を行なう演算回路を付加しても良い。
【0118】
また、上記各実施形態では、ホログラム素子からの+1次回折光を受光器で受光する場合について説明したが、これに限らず、−1次回折光を利用しても良い。但し、この場合には、入射角と回折効率との関係が逆になるため、ホログラム素子では、戻り光束入射角が「−θ1」の部分で回折効率が最大となり、戻り光束入射角が「+θ1」の部分で回折効率が最小となる。
【0119】
なお、上記各実施形態では、ホログラム素子として、その回折効率が入射する光束の偏光方向に依存しない無偏光ホログラム素子が用いられる場合について説明したが、これに限らず、入射する光束の偏光方向に応じて回折効率が異なる偏光ホログラム素子を用いても良い。これにより、光ディスクの記録面に照射される光束の光量低下が極めて少なくなり、高速化に対応することが容易となる。また、受光器での受光量が増加し、受光器からの出力信号における信号レベル及びS/N比を向上させることができる。
【0120】
一般に偏光ホログラム素子は複屈折性を有する材料を格子形状に加工することにより製造することができる。複屈折性を有する材料としてはLiNbO3結晶や液晶などがあるが、薄い膜で複屈折性を有する透明な有機材料の延伸膜(有機延伸膜)、例えばポリイミドやPETは、Δn=0.06〜0.1程度の複屈折性を有し、屈折率が1.6程度であるため、オーバーコート材料も安価なものを用いることができ、低コスト化が容易である。また、有機延伸膜は、微細加工を容易に行うことができるため、狭ピッチ化が可能となる。すなわち、戻り光束の回折角を大きくすることができ、光ピックアップ装置の小型化を促進することが可能となる。
【0121】
また、上記各実施形態では、光源が1つの場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば波長が405nmの光束を出射する光源、波長が650nmの光束を出射する光源及び波長が780nmの光束を出射する光源のうち少なくとも2つの光源を備えていても良い。そして、この場合には、入射する光束の波長に応じて回折効率が異なる波長選択性ホログラム素子を用いても良い。また、この場合に例えば上記第1の実施形態のように、透過光量を調整するためのフィルタが用いられるときは、入射する光束の波長に応じて透過率が異なる波長選択性フィルタを用いても良い。
【0122】
さらに、上記各実施形態では、ホログラム素子が復路の光路上に配置される場合について説明したが、これに限らず、往路と復路の共通光路上に配置されても良い。但し、この場合に、各回折領域での格子のデューティ比及び溝深さのうちの少なくとも1つが異なるホログラム素子を用いるときは、偏光ホログラム素子であることが好ましい。無偏光ホログラム素子では波面が劣化することがあるからである。
【0123】
また、上記各実施形態では、半導体レーザと受光器とが個別に配置される場合について説明したが、これに限らず、受光器と半導体レーザとが同一筐体内に実装されパッケージ化されても良い。さらに、受光器と半導体レーザと回折素子とが一体化されても良い。かかる場合には、光ピックアップ装置の小型化を促進することができるとともに、組み付け時の構成部品の数が減少し、組み付け作業及び調整作業を簡略化することができ、作業コストを削減することが可能となる。
【0124】
なお、上記各実施形態では、情報の記録及び再生が可能な光ディスク装置について説明したが、これに限らず、情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも1つが可能な光ディスク装置であれば良い。
【0125】
なお、上記各実施形態では、光源として半導体レーザを用いる場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0126】
また、上記各実施形態では、光ディスクとして、CD、DVD及び光磁気ディスクなど、光を利用して情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも1つが行われる情報記録媒体を用いることができる。
【0127】
なお、上記各実施形態において、CPU40によるプログラムに従う処理によって実現した処理装置の少なくとも一部をハードウェアによって構成することとしても良いし、あるいは処理装置の全てをハードウェアによって構成することとしても良い。
【0128】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る光ピックアップ装置によれば、対物レンズの位置制御に必要な情報などを含む信号を安定して出力することができるという効果がある。
【0129】
また、本発明に係る光ディスク装置によれば、情報記録媒体への高速度でのアクセスを精度良く安定して行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る光ピックアップ装置の構成を説明するための図である。
【図3】図2におけるホログラム素子70の回折領域を説明するための図である。
【図4】図2における受光素子59とホログラム素子70との関係を説明するための図である。
【図5】図2におけるホログラム素子70での回折効率の入射角依存性を説明するための図である。
【図6】図6(A)及び図6(B)は、それぞれ図2におけるフィルタ81の構成を説明するための図である。
【図7】図2における受光器59の構成を説明するための図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は、それぞれオフトラック量に対する信号の揺らぎを説明するための図である。
【図9】図9(A)及び図9(B)は、それぞれ第1の実施形態に係るフィルタの変形例を説明するための図である。
【図10】第2の実施形態に係る光ピックアップ装置の構成を説明するための図である。
【図11】図11(A)及び図11(B)は、それぞれ第2の実施形態に係るホログラム素子におけるフォーカスエラー検出領域を説明するための図である。
【図12】ホログラム素子における格子の溝深さと回折効率との関係を説明するための図である。
【図13】図13(A)及び図13(B)は、それぞれ第2の実施形態に係るホログラム素子におけるフォーカスエラー検出領域の変形例(その1)を説明するための図である。
【図14】図14(A)及び図14(B)は、それぞれ第2の実施形態に係るホログラム素子におけるフォーカスエラー検出領域の変形例(その2)を説明するための図である。
【図15】図15(A)及び図15(B)は、それぞれ第2の実施形態に係るホログラム素子におけるフォーカスエラー検出領域の変形例(その3)を説明するための図である。
【図16】図16(A)及び図16(B)は、それぞれ第2の実施形態に係るホログラム素子におけるフォーカスエラー検出領域の変形例(その4)を説明するための図である。
【図17】第3の実施形態に係る光ピックアップ装置の構成を説明するための図である。
【図18】第3の実施形態に係るホログラム素子76を説明するための図である。
【図19】図17における受光器69の構成を説明するための図である。
【図20】図20(A)及び図21(B)は、それぞれホログラム素子を用いた従来例を説明するための図である。
【図21】図21(A)は、図20(A)のホログラム素子における入射角度と回折効率との関係を説明するための図であり、図21(B)及び図21(C)は、それぞれフォーカスエラー信号におけるオフトラック量に対する揺らぎを説明するための図である。
【符号の説明】
15…光ディスク(情報記録媒体)、20…光ディスク装置、23…光ピックアップ装置、28…再生信号処理回路(処理装置の一部、位置制御手段の一部)、33…サーボコントローラ(位置制御手段の一部)、40…CPU(処理装置の一部)、59…受光器(光検出器)、60…対物レンズ、69…受光器(光検出器)、70〜76…ホログラム素子(回折素子)、81,82…フィルタ。
【発明の属する技術分野】
本発明は光ピックアップ装置及び光ディスク装置に係り、さらに詳しくは、情報記録媒体の記録面に光を照射し、その記録面からの反射光を受光する光ピックアップ装置及び該光ピックアップ装置を備えた光ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスク装置では、光ディスクなどの情報記録媒体が用いられ、そのスパイラル状又は同心円状のトラックが形成された記録面にレーザ光を照射することにより情報の記録及び消去を行い、記録面からの反射光に基づいて情報の再生などを行っている。そして、光ディスク装置には、情報記録媒体の記録面にレーザ光を照射して光スポットを形成するとともに、記録面からの反射光を受光するための装置として、光ピックアップ装置を備えている。
【0003】
通常、光ピックアップ装置は、対物レンズを含み、光源から出射される光束を情報記録媒体の記録面に導くとともに、記録面で反射された戻り光束を所定の受光位置まで導く光学系、及び受光位置に配置された受光素子を含む検出系などを備えている。この検出系からは、記録面に記録されているデータの再生情報だけでなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御に必要な情報を含む信号などが出力される。例えば光ディスク装置では、受光素子の出力信号からいわゆるフォーカスエラー信号を検出し、微小な光スポットを記録面に正確に形成するための最適な位置に対物レンズが保持されるように、その光軸方向(フォーカス方向)に関する対物レンズの位置制御(フォーカス制御)にフィードバックさせている。また、光ディスク装置では、受光素子の出力信号からいわゆるトラックエラー信号を検出し、光スポットが記録面の所定位置に正確に形成されるように、トラックの接線方向に直交する方向(トラッキング方向)に関する対物レンズの位置制御(トラッキング制御)にフィードバックさせている。
【0004】
近年、パーソナルコンピュータ(以下「パソコン」と略述する)に代表される情報機器の小型化、軽量化及び低価格化が進み、特にモバイル型のパソコンが急速に普及しつつある。そして、それに伴って、パソコンの周辺機器の一つである光ディスク装置の小型化、軽量化及び低価格化への要求が高まっている。そこで、これらの要求に応える1つの手段として、光ディスク装置の構成要素の1つである光ピックアップ装置の小型化及び低コスト化が注目された。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
光ピックアップ装置の小型化及び低コスト化を図るため、記録面で反射された戻り光束を往路と復路の共通光路から分岐したり、戻り光束を複数の光束に分割する光学素子の1つとしてホログラム素子などの回折素子が用いられるようになってきた。一般的に回折素子では、その格子の溝の深さ(以下「溝深さ」と略述する)が深くなると、その回折効率は、入射角とブラッグ角とが一致するときにピーク値を示す入射角依存性を有することが知られている。
【0006】
特に光利用効率を向上させ、高速度でのアクセスに対応するために、入射する光束の偏光方向に応じて回折効率が異なる偏光ホログラム素子が用いられるようになってきた。例えば特許第2594548号公報には、複屈折性を有する物質(以下「複屈折媒体」という)に形成された凹凸状の格子の少なくとも凹部を複屈折媒体の常光に対する屈折率(常光屈折率)又は異常光に対する屈折率(異常光屈折率)とほぼ等しい屈折率を有する物質で充填した偏光ホログラム素子が開示されている。このような偏光ホログラム素子を光ピックアップ装置に用いる場合に、例えば光源から出射される光束の偏光方向に対しては回折効率が低く、一方戻り光束の偏光方向に対しては回折効率が高くなるように設定すると、光利用効率を高めることができ、高速度でのアクセスに対応可能となる。しかしながら、偏光ホログラム素子は、その常光屈折率と異常光屈折率との差が小さいため、所定の回折効率を確保するには、偏光性を有しないホログラム(無偏光ホログラム)素子よりも溝深さを深くする必要があり、回折効率の入射角依存性が顕著となっている。
【0007】
また、波長が異なる複数の光源を備えた光ピックアップ装置では、戻り光束を受光素子に導くためのホログラム素子が波長毎に配置されている場合がある。この場合に、光利用効率を向上させる目的で、それぞれ対応する波長の光束のみが回折されるように波長選択性を有するホログラム素子を用いることがある。一般的にホログラム素子に波長選択性を持たせるためには、波長選択性を持たないホログラム素子に比べて格子深さを深くする必要がある。例えばCD用の光束を出射する光源のみを有する光ピックアップ装置では、格子深さが0.2μm程度のホログラム素子が用いられている。しかしながら、例えばCD用の光束を出射する光源とDVD用の光束を出射する光源とを有する光ピックアップ装置において、CD用のホログラム素子に、DVD用の光束は透過させ、かつCD用の光束のみを回折するような波長選択性を持たせるには格子深さを1.3μm程度にする必要がある。そのため、このような波長選択性を有するホログラム素子は、格子のピッチにもよるが、その回折効率が入射角依存性を示す場合がある。
【0008】
さらに、近年、小型化によりホログラム素子の狭ピッチ化が進み、前述したような偏光性や波長選択性を有しない場合でも、その回折効率が入射角依存性を示すことがある。
【0009】
通常、光ピックアップ装置に用いられるホログラム素子は、フォーカスエラー信号を検出するための領域(以下「フォーカスエラー検出領域」という)とトラックエラー信号を検出するための領域(以下「トラックエラー検出領域」という)とを備えている。例えば、フォーカスエラー信号をいわゆるナイフエッジ法により検出する場合には、一例として図20(A)に示されるように、ホログラム素子HMは、記録面からの戻り光束の一部をトラッキング方向に回折する回折領域HMaをフォーカスエラー検出領域として備えている。このホログラム素子HMに戻り光束が入射されると、回折領域HMaで回折された+1次回折光(又は−1次回折光)はトラッキング方向に対応する方向の分割線によって2分割された2分割受光素子で受光される。そして、光ディスク装置では、その2分割受光素子を構成する部分受光素子PD1及びPD2からの出力信号の差信号に基づいてフォーカスエラー信号を検出する。なお、図20(A)では便宜上、トラックエラー信号を検出するための回折光については図示を省略している。
【0010】
ここで、例えば、図20(B)に示されるように、非平行の戻り光束がホログラム素子HMに入射された場合に、戻り光束を複数の光束の集合体と考えると、回折領域HMaでの各光束の入射角度は「−θi」〜「+θi」(入射面の法線方向に対して右回りを+とする)の範囲内にある。そこで、分割領域HMaでの+1次回折光における回折効率の入射角度依存性が、一例として図21(A)に示されるような曲線で与えられる場合には、回折領域HMaでの各光束の回折効率はEa〜Eb(Ea<Eb)の範囲内となる。すなわち、例えば戻り光束におけるトラックの溝に起因して発生した2つの回折パターン(以下「トラックパターン」という)TP1,TP2が同一光量であっても、トラックパターンTP1の回折光はトラックパターンTP2の回折光よりも光量が少なくなる。そこで、トラッキング方向における対物レンズの位置ずれ量(以下「オフトラック量」という)と各トラックパターンの回折光の光量との関係は、一例として図21(B)に示されるように、回折効率の入射角度依存性の影響を受ける。すなわち、トラックパターンTP1の回折光による光電変換信号Stp1の平均信号レベルをLγとすると、トラックパターンTP2の回折光による光電変換信号Stp2の平均信号レベルはLγよりも大きいLβとなる。従って、例えば部分受光素子PD1からの出力信号は、一例として図21(C)に示されるように、オフトラック量に対して振幅を有する信号となる。部分受光素子PD2からの出力信号も、部分受光素子PD1からの出力信号と同様にオフトラック量に対して振幅を有する信号となるが、それぞれの振幅の大きさは同一ではないためにフォーカスエラー信号に揺らぎが生じることとなる。そして、そのために、対物レンズのトラッキング制御に伴い、誤ったフォーカス制御が行われるおそれがあるという不都合があった。
【0011】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、対物レンズの位置制御に必要な情報を含む信号を安定して出力することができる光ピックアップ装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の第2の目的は、情報記録媒体への高速度でのアクセスを精度良く安定して行うことができる光ディスク装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、スパイラル状又は同心円状のトラックが形成された情報記録媒体の記録面に光を照射し、前記記録面からの反射光を受光する光ピックアップ装置であって、光源と;該光源から出射される光束を前記記録面に集光する対物レンズと;前記記録面で反射され前記対物レンズを介した戻り光束が入射され、その回折効率が前記戻り光束の入射角に依存する入射角依存性を有する回折素子を含む光学素子と;前記回折素子による回折方向と所定の対応関係にある特定方向に沿って配置され、前記光学素子を介した戻り光束を受光し、前記対物レンズの光軸方向に関する位置情報を含む信号を出力する複数の光検出器と;を備え、前記光学素子のうちの特定光学素子及び前記複数の光検出器の少なくとも一部の特定光検出器の少なくともいずれかが、前記複数の光検出器から出力される信号が前記入射角依存性による誤差が低減された信号となるように構成されている光ピックアップ装置である。
【0014】
これによれば、光源から出射された光束は、対物レンズを介して情報記録媒体の記録面に集光される。記録面で反射された戻り光束は、回折素子を含む光学素子を介して複数の光検出器で受光される。各光検出器からは、それぞれの受光量に対応し、対物レンズの光軸方向に関する位置情報を含む信号が出力される。ここで、入射角依存性による誤差が低減された信号が複数の光検出器から出力されるように、光学素子のうちの特定光学素子及び複数の光検出器の少なくとも一部の特定光検出器の少なくともいずれかが構成されていることにより、結果として対物レンズの光軸方向に関する位置情報を含む信号を安定して出力することが可能となる。
【0015】
この場合において、請求項2に記載の光ピックアップ装置の如く、前記複数の光検出器から出力される信号は、ナイフエッジ法によって前記対物レンズの光軸方向に関する位置情報を検出するのに適した信号であり、前記特定方向は、前記トラックの接線方向に対応する方向であることとすることができる。
【0016】
この場合において、請求項3に記載の光ピックアップ装置の如く、前記特定光学素子は、少なくとも1つのフィルタを含み、該フィルタは前記戻り光束に対する透過率が場所によって異なることとすることができる。かかる場合には、フィルタにより、回折効率の入射角依存性に対応して戻り光束の透過光量が調整される。これにより、複数の光検出器では、入射角依存性による誤差が低減された戻り光束が受光されることとなる。そして、その結果複数の光検出器からの出力信号は入射角依存性による誤差が低減された信号となる。
【0017】
この場合において、請求項4に記載の光ピックアップ装置の如く、前記透過率は、前記トラックの接線方向に直交する方向に対応する方向の一側から他側に向かって変化していることとすることができる。
【0018】
上記請求項3に記載の光ピックアップ装置において、請求項5に記載の光ピックアップ装置の如く、前記フィルタは、トラックの接線方向に対応する方向の分割線によって分割された複数の部分領域を含み、該複数の部分領域のうちの少なくとも2つの部分領域における透過率が互いに異なることとすることができる。
【0019】
上記請求項2〜5に記載の各光ピックアップ装置において、請求項6に記載の光ピックアップ装置の如く、前記特定光学素子は、前記回折素子を含み、前記回折素子は前記戻り光束に対する回折特性が場所によって異なることとすることができる。かかる場合には、戻り光束の入射角に対応して回折素子における回折特性が調整される。これにより、複数の光検出器では、入射角依存性による誤差が低減された戻り光束が受光されることとなる。そして、その結果複数の光検出器からの出力信号は入射角依存性による誤差が低減された信号となる。
【0020】
この場合において、請求項7に記載の光ピックアップ装置の如く、前記回折素子は、格子のデューティ比及び溝の深さのうちの少なくとも1つが、前記トラックの接線方向に直交する方向に対応する方向の一側から他側に向かって変化していることとすることができる。あるいは、請求項8に記載の光ピックアップ装置の如く、前記回折素子は、トラックの接線方向に対応する方向の分割線によって分割された複数の部分領域を含み、そのうちの少なくとも2つの部分領域は、格子のデューティ比及び溝の深さのうちの少なくとも1つが、互いに異なることとすることができる。かかる場合には、格子のデューティ比及び溝の深さのうちの少なくとも1つによって回折素子の回折特性が調整されることとなる。
【0021】
上記請求項6〜8に記載の各光ピックアップ装置において、請求項9に記載の光ピックアップ装置の如く、前記回折素子は、格子が形成された第1の部材と該第1の部材の格子の溝に充填された第2の部材とを含み、前記第1の部材の屈折率と前記第2の部材の屈折率との差が場所によって異なることとすることができる。かかる場合には、第1の部材の屈折率と第2の部材の屈折率との差によって回折素子の回折特性が調整されることとなる。
【0022】
上記請求項1に記載の光ピックアップ装置において、請求項10に記載の光ピックアップ装置の如く、前記複数の光検出器から出力される信号は、ダブルビームサイズ法によって前記対物レンズの光軸方向に関する位置情報を検出するのに適した信号であり、前記特定方向は、前記トラックの接線方向に直交する方向に対応する方向であることとすることができる。
【0023】
この場合において、請求項11に記載の光ピックアップ装置の如く、前記特定光検出器は、前記特定方向に直交する方向の2本の分割線によって3つの受光素子に分割され、各受光素子での受光量の比が順におよそ1:2:1の関係にある3分割受光素子を2つ含むこととすることができる。かかる場合には、各3分割受光素子では、その3分割受光素子を構成する3つの受光素子での受光量の比がおよそ1:2:1の関係となるようにそれぞれ設定されていることにより、戻り光束に含まれる入射角依存性による誤差が低減されることとなる。そして、その結果複数の光検出器からの出力信号は入射角依存性による誤差が低減された信号となる。
【0024】
上記請求項1〜11に記載の各光ピックアップ装置において、請求項12に記載の光ピックアップ装置の如く、前記光源と前記複数の光検出器とが、同一の筐体内に配置され、パッケージ化されていることとすることができる。かかる場合には、光ピックアップ装置の小型化及び低コスト化を促進することができる。
【0025】
上記請求項1〜12に記載の各光ピックアップ装置において、請求項13に記載の光ピックアップ装置の如く、前記光源と前記複数の光検出器と前記回折素子とが、一体化されていることとすることができる。かかる場合には、組み付け時の構成部品の数が減少し、組み付け作業及び調整作業を簡略化することができ、作業コストを削減することが可能となる。
【0026】
上記請求項1〜13に記載の各光ピックアップ装置において、請求項14に記載の光ピックアップ装置の如く、前記回折素子は、入射する光束の偏光方向によりその回折効率が異なる偏光回折素子であることとすることができる。かかる場合には、光利用効率が向上し、高速化に対応することができる。
【0027】
この場合において、請求項15に記載の光ピックアップ装置の如く、前記偏光回折素子は、表面に周期的な凹凸が格子として形成された複屈折性を有する複屈折媒体を含み、該複屈折媒体は、前記格子が形成された有機延伸膜であることとすることができる。かかる場合には、微細加工を容易に行うことができるため、狭ピッチ化が可能となる。すなわち、戻り光束の回折角を大きくすることができ、光ピックアップ装置の小型化を促進することが可能となる。
【0028】
請求項16に記載の発明は、情報記録媒体に対して、情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行なう光ディスク装置であって、請求項1〜15のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置と;前記複数の光検出器からの出力信号に基づいて前記対物レンズの光軸方向に関する位置情報を求め、前記対物レンズの光軸方向に関する位置を制御する位置制御手段と;前記光ピックアップ装置からの出力信号を用いて、前記情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行なう処理装置と;を備える光ディスク装置である。
【0029】
これによれば、請求項1〜15のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置が用いられ、位置制御手段により、光ピックアップ装置からの出力信号に基づいて対物レンズの光軸方向に関する位置情報が精度良く検出され、その検出結果に基づいて対物レンズの光軸方向に関する位置が制御されるために、情報記録媒体の記録面に所定の光スポットを正確に形成することができる。従って、結果として情報記録媒体への高速度での情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を含むアクセスを精度良く安定して行うことが可能となる。
【0030】
【発明の実施の形態】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0031】
図1には、本発明の第1の実施形態に係る光ディスク装置の概略構成が示されている。
【0032】
この図1に示される光ディスク装置20は、情報記録媒体としての光ディスク15を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、レーザコントロール回路24、エンコーダ25、モータドライバ27、再生信号処理回路28、サーボコントローラ33、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、ROM39、CPU40及びRAM41などを備えている。なお、図1における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0033】
前記光ピックアップ装置23は、光ディスク15のスパイラル状又は同心円状のトラックが形成された記録面にレーザ光を照射するとともに、記録面からの反射光を受光するための装置である。なお、この光ピックアップ装置23の構成等については後に詳述する。
【0034】
前記再生信号処理回路28は、光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいてウォブル信号、RF信号及びサーボ信号(フォーカスエラー信号、トラックエラー信号)などを検出する。そして、再生信号処理回路28はウォブル信号からアドレス情報及び同期信号等を抽出する。ここで抽出されたアドレス情報はCPU40に出力され、同期信号はエンコーダ25に出力される。さらに、再生信号処理回路28はRF信号に対して誤り訂正処理等を行なった後、バッファマネージャ37を介してバッファRAM34に格納する。また、サーボ信号は再生信号処理回路28からサーボコントローラ33に出力される。
【0035】
前記サーボコントローラ33は、サーボ信号に基づいて光ピックアップ装置23を制御する各種制御信号を生成し、モータドライバ27に出力する。
【0036】
前記バッファマネージャ37は、バッファRAM34へのデータの入出力を管理し、蓄積されたデータ量が所定の値になるとCPU40に通知する。
【0037】
前記モータドライバ27は、サーボコントローラ33からの制御信号及びCPU40の指示に基づいて、光ピックアップ装置23及びスピンドルモータ22を制御する。
【0038】
前記エンコーダ25は、CPU40の指示に基づいて、バッファRAM34に蓄積されているデータをバッファマネージャ37を介して取り出し、エラー訂正コードの付加などを行ない、光ディスク15への書き込みデータを作成するとともに、再生信号処理回路28からの同期信号に同期して書き込みデータをレーザコントロール回路24に出力する。
【0039】
前記レーザコントロール回路24は、エンコーダ25からの書き込みデータ及びCPU40の指示に基づいて、光ピックアップ装置23から出射されるレーザ光の出力を制御する。
【0040】
前記インターフェース38は、ホスト(例えばパソコン)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)及びSCSI(Small Computer System Interface)等の標準インターフェースに準拠している。
【0041】
前記ROM39には、CPU40にて解読可能なコードで記述されたプログラムが格納されている。そして、CPU40は、ROM39に格納されているプログラムに従って上記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータ等を一時的にRAM41に保存する。
【0042】
次に、前記光ピックアップ装置23の構成等について図2に基づいて説明する。光ピックアップ装置23は、図2に示されるように、光源ユニット51、コリメートレンズ52、ビームスプリッタ54、対物レンズ60、検出レンズ58、回折素子としてのホログラム素子70、光検出器としての受光器59、フィルタ81及び駆動系(フォーカシングアクチュエータ、トラッキングアクチュエータ及びシークモータ(いずれも図示省略))などを備えている。なお、以下では光ディスク15のトラックの接線方向に対応する方向をタンジェンシャル方向(以下「T方向」ともいう)、該タンジェンシャル方向に直交する方向をラジアル方向(以下「R方向」ともいう)という。
【0043】
前記光源ユニット51は、所定の波長の光束を発光する光源としての半導体レーザ(図示省略)を含んで構成されている。なお、光源ユニット51から出射される光束の最大強度出射方向を+X方向とする。この光源ユニット51の+X側には、前記コリメートレンズ52が配置され、光源ユニット51から出射された光束を略平行光とする。
【0044】
コリメートレンズ52の+X側には、光ディスク15からの戻り光束を−Z方向に分岐するための前記ビームスプリッタ54が配置されている。このビームスプリッタ54の+X側には、ビームスプリッタ54を透過した光束を集光し、光ディスク15の記録面に光スポットを形成する前記対物レンズ60が配置されている。
【0045】
また、ビームスプリッタ54の−Z側には、ビームスプリッタ54で分岐された戻り光束を集光する前記検出レンズ58が配置されている。この検出レンズ58の−Z側には、戻り光束の光量を調整するための前記フィルタ81が配置されている。なお、このフィルタ81については後に詳述する。
【0046】
フィルタ81の−Z側には、フィルタ81を透過した戻り光束を回折する前記ホログラム素子70が配置されている。本第1の実施形態では、ナイフエッジ法によりフォーカスエラー信号を検出し、いわゆるプッシュプル法によりトラックエラー信号を検出することとする。そこで、ホログラム素子70は、一例として図3に示されるように、R方向(ここではX軸方向)の分割線DL1によって2つの領域に分割され、そのうち分割線DL1の−Y側の領域は、更にT方向(ここではY軸方向)の分割線DL2によって2つの領域に分割されている。すなわち、ホログラム素子70は、3つの回折領域70a,70b,70cから構成されている。ここでは、回折領域70aは分割線DL1の+Y側に位置し、回折領域70bは分割線DL2の−X側に位置し、回折領域70cは分割線DL2の+X側に位置している。そこで、回折領域70aがフォーカスエラー検出領域となり、回折領域70b,70cがトラックエラー検出領域となる。そして、ホログラム素子70は、そのほぼ中央に戻り光束が入射するように配置されている。また、各回折領域に入射した光束はR方向(ここではX軸方向)に回折されるように設定されている。
【0047】
なお、ここでは、+X側に回折される1次回折光を+1次回折光と呼ぶものとする。また便宜上、ホログラム素子の受光面、すなわちXY平面上に回折光を写像した際の回折光の方向を用いて、ホログラム素子での回折方向を示すものとする。さらに、検出レンズ58で集束された戻り光束は、一例として図4に示されるように、ホログラム素子70の光軸方向と回折方向とを含む平面(ここではXZ平面)内における入射角(以下、便宜上「戻り光束入射角」ともいう)が「−θ1」〜「+θ1」の範囲内となるように、ホログラム素子70に入射されるものとする。これにより、回折領域70aにおける戻り光束入射角は、入射位置によって「−θ1」から「+θ1」に変化することとなる。なお、例えばコリメートレンズ52の開口数(N.A.)が0.1程度の場合には、θ1は6°程度である。また、回折領域70aは、一例として図5に示されるような回折効率の入射角依存性を有することととする。なお、図5には+1次回折光における回折効率の入射角依存性が示されている。従って、回折領域70aでの回折効率は、戻り光束の入射位置によってE1からE2(E1<E2)に変化することとなる。
【0048】
前記フィルタ81は、回折領域70aでの回折効率の入射角依存性を補正する目的で用いられ、回折領域70aに入射する戻り光束が通過する位置に配置されている。そして、このフィルタ81は、一例として図6(A)及び図6(B)に示されるように、T方向の分割線によって2つの通過領域(部分領域)に分割されている。すなわち、フィルタ81は、戻り光束入射角が「−θ1」〜「0」の範囲内の戻り光束が通過する通過領域81aと、戻り光束入射角が「0」〜「+θ1」の範囲内の戻り光束が通過する通過領域81bとから構成されている。そして、通過領域81aでの戻り光束の透過率は、通過領域81bでの戻り光束の透過率よりも大きく設定されている。例えば、光ディスク15の位置に反射ミラー(又は光源)を置き、通過領域81aを通過して回折領域70aで回折された光束の光量と、通過領域81bを通過して回折領域70aで回折された光束の光量とがほぼ等しくなるように通過領域81a,81bでの透過率を決定する。これにより、回折領域70aに入射する戻り光束のうち、戻り光束入射角が「−θ1」〜「0」の範囲内の戻り光束の光量は、戻り光束入射角が「0」〜「+θ1」の範囲内の戻り光束の光量よりも多くなる。そして、その結果として回折領域70aにおける回折効率の入射角依存性が補正されることとなる。
【0049】
前記受光器59は、一例として図7に示されるように、回折領域70aからの+1次回折光を受光する受光素子59aと、回折領域70bからの+1次回折光を受光する受光素子59bと、回折領域70cからの+1次回折光を受光する受光素子59cとを含んで構成されている。受光素子59aは2分割受光素子であり、部分受光素子59a1と部分受光素子59a2とから構成されている。
【0050】
これにより、一例として図8(A)及び図8(B)に示されるように、オフトラック量と部分受光素子59a1からの出力信号との関係において、回折領域70aにおける回折効率の入射角依存性の影響が非常に小さくなる。すなわち、通過領域81aを通過した戻り光束の+1次回折光による信号成分S81aと通過領域81bを通過した戻り光束の+1次回折光による信号成分S81bとは、平均レベルがほぼ等しい逆相の信号となり、図8(B)に示されるように、部分受光素子59a1からの出力信号は、従来(図21(C)参照)に比べてオフトラック量に対する揺らぎが極めて小さくなる。なお、部分受光素子59a2からの出力信号も同様に、オフトラック量に対する揺らぎが極めて小さくなる。
【0051】
《対物レンズの位置制御》
次に、前述のようにして構成された光ディスク装置20を用いて光ディスク15をアクセスする際の対物レンズ60の位置制御(トラッキング制御、フォーカス制御)について説明する。
【0052】
光源ユニット51から+X方向に出射された光束は、コリメートレンズ52で略平行光となった後、ビームスプリッタ54に入射する。ビームスプリッタ54を透過した光束は、対物レンズ60を介して光ディスク15の記録面に微小スポットとして集光される。
【0053】
光ディスク15の記録面で反射した光束は、戻り光束として対物レンズ60で再び略平行光とされ、ビームスプリッタ54に入射する。ビームスプリッタ54で−Z方向に分岐された戻り光束は、検出レンズ58で集束され、フィルタ81を介してホログラム素子70に入射する。ホログラム素子70の回折領域70aからの+1次回折光は受光素子(2分割受光素子)59aで受光され、回折領域70bからの+1次回折光は受光素子59bで受光され、回折領域70cからの+1次回折光は受光素子59cで受光される。各受光素子は受光量に応じた信号を再生信号処理回路28に出力する。
【0054】
再生信号処理回路28は、次の(1)式に基づいてフォーカスエラー信号FEを検出する。ここで、S59a1は部分受光素子59a1からの出力信号を変換した電圧信号であり、S59a2は部分受光素子59a2からの出力信号を変換した電圧信号である。
【0055】
FE=S59a1−S59a2 ……(1)
【0056】
また、再生信号処理回路28は、次の(2)式に基づいてトラックエラー信号TEを検出する。ここで、S59bは受光素子59bからの出力信号を変換した電圧信号であり、S59cは部分受光素子59cからの出力信号を変換した電圧信号である。
【0057】
TE=S59b−S59c ……(2)
【0058】
そして、再生信号処理回路28は、検出したフォーカスエラー信号FE及びトラックエラー信号TEをサーボコントローラ33に出力する。サーボコントローラ33は、フォーカスエラー信号FEに基づいてモータドライバ27を介して光ピックアップ装置23のフォーカシングアクチュエータを駆動し、対物レンズ60のフォーカスずれを補正する。また、サーボコントローラ33は、トラックエラー信号TEに基づいてモータドライバ27を介して光ピックアップ装置23のトラッキングアクチュエータを駆動し、対物レンズ60のトラックずれを補正する。
【0059】
《記録処理》
次に、前述の光ディスク装置20を用いて、光ディスク15にデータを記録する場合の処理動作について簡単に説明する。
【0060】
CPU40はホストから記録要求のコマンドを受信すると、指定された記録速度に基づいてスピンドルモータ22の回転を制御するための制御信号をモータドライバ27に出力するとともに、ホストから記録要求のコマンドを受信した旨を再生信号処理回路28に通知する。また、CPU40はホストから受信したデータをバッファマネージャ37を介してバッファRAM34に蓄積する。
【0061】
光ディスク15の回転が所定の線速度に達すると、前述の如くして、対物レンズ60のトラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。
【0062】
再生信号処理回路28は光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいてアドレス情報を取得し、CPU40に通知する。そして、CPU40はアドレス情報に基づいて、指定された書き込み開始地点に光ピックアップ装置23が位置するように光ピックアップ装置23のシーク動作を制御する信号をモータドライバ27に出力する。
【0063】
CPU40はバッファマネージャ37からバッファRAM34に蓄積されたデータ量が所定の値を超えたとの通知を受けると、エンコーダ25に書き込みデータの作成を指示する。また、CPU40はアドレス情報に基づいて光ピックアップ装置23の位置が書き込み開始地点であると判断すると、エンコーダ25に通知する。そして、エンコーダ25はレーザコントロール回路24及び光ピックアップ装置23を介して、書き込みデータを光ディスク15に記録する。
【0064】
《再生処理》
次に、前述した光ディスク装置20を用いて、光ディスク15に記録されているデータを再生する場合の処理動作について簡単に説明する。
【0065】
CPU40はホストから再生要求のコマンドを受信すると、再生速度に基づいてスピンドルモータ22の回転を制御するための制御信号をモータドライバ27に出力するとともに、ホストから再生要求のコマンドを受信した旨を再生信号処理回路28に通知する。そして、光ディスク15の回転が所定の線速度に達すると、上記記録処理の場合と同様に、対物レンズ60のトラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。また、再生信号処理回路28は上記記録処理の場合と同様に、アドレス情報を検出し、CPU40に通知する。
【0066】
CPU40はアドレス情報に基づいて、指定された読み込み開始地点に光ピックアップ装置23が位置するようにシーク動作を制御する信号をモータドライバ27に出力する。CPU40はアドレス情報に基づいて、光ピックアップ装置23の位置が読み込み開始地点であると判断すると、再生信号処理回路28に通知する。
【0067】
そして、再生信号処理回路28は、光ピックアップ装置23の出力信号に基づいてRF信号を検出し、誤り訂正処理等を行った後、バッファRAM34に蓄積する。バッファマネージャ37は、バッファRAM34に蓄積された再生データがセクタデータとして揃ったときに、インターフェース38を介してホストに転送する。
【0068】
なお、記録処理及び再生処理が終了するまで、対物レンズ60のトラッキング制御及びフォーカス制御が随時行われる。
【0069】
以上の説明から明らかなように、本第1の実施形態に係る光ディスク装置20では、再生信号処理回路28と、CPU40及び該CPU40によって実行されるプログラムとによって処理装置が実現されている。また、再生信号処理回路28とサーボコントローラ33とから位置制御手段が構成されている。
【0070】
以上説明したように、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置23によると、ホログラム素子70のフォーカスエラー検出領域である回折領域70aに入射する戻り光束のうち、高い回折効率の領域に入射する光束の光量が低い回折効率の領域に入射する光束の光量よりも少なくなるように、フィルタ81によって戻り光束の光量調整が行われている。それにより、回折領域70aにおける回折効率の入射角依存性が補正され、その結果としてオフトラック量に対する揺らぎが極めて低いフォーカスエラーに関する情報を含む信号が受光素子59aから安定して出力されることとなる。また、戻り光束を複数の光束に分割するための光学素子として、光学プリズムなどよりも小さくて安価なホログラム素子を用いているために、光ピックアップ装置の小型化及び低コスト化を促進することができる。さらに、小さくて安価なフィルタによって、回折効率の入射角依存性を補正しているために、光ピックアップ装置の大型化及び高コスト化を防止することができる。
【0071】
また、本第1の実施形態に係る光ディスク装置20によると、再生信号処理回路28では、光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいて、オフトラック量に対する揺らぎが極めて低いフォーカスエラー信号を安定して検出することができるため、対物レンズのフォーカス制御を精度良く行うことができる。すなわち、情報記録媒体への高速度でのアクセスを精度良く安定して行うことが可能となる。さらに、光ピックアップ装置の小型化によって、光ディスク装置自体の小型化及び消費電力の低減も促進することができ、例えば携帯用として用いられる場合には、持ち運びが容易となり、さらに長時間の使用が可能となる。
【0072】
なお、上記第1の実施形態では、フィルタ81の両方の通過領域81a,81bにフィルタ機能を持たせる場合について説明したが、これに限らず、例えば通過領域81aの透過率をほぼ100%とし、通過領域81bにのみフィルタ機能を持たせても良い。
【0073】
また、上記第1の実施形態では、フィルタ81を検出レンズ58とホログラム素子70との間に配置する場合について説明したが、これに限らず、例えば、フィルタ81をビームスプリッタ54と検出レンズ58との間に配置しても良く、あるいは、ホログラム素子70と受光器59との間に配置しても良い。この場合には、フィルタ81は2分割受光素子59aの受光面上に貼り付けられても良い。
【0074】
また、上記第1の実施形態では、1つのフィルタを用いる場合について説明したが、これに限らず、複数個のフィルタを用いても良い。
【0075】
また、上記第1の実施形態では、フィルタを2つの通過領域に分割した場合について説明したが、これに限らず、例えば3つ以上の通過領域に分割しても良い。
【0076】
なお、上記第1の実施形態では、フィルタ81の各通過領域での透過率が一定の場合について説明したが、これに限らず、例えば図9(A)及び図9(B)に示されるように、戻り光束入射角が−θ1の部分での透過率をTR1、戻り光束入射角が+θ1の部分での透過率をTR2(<TR1)とし、TR1からTR2に徐々に透過率が小さくなっているフィルタ82を用いても良い。そして、この場合に、TR1からTR2に一定のステップで透過率が変化しても良いが、部分的にステップが異なっていても良い。この場合には、フィルタは分割されない。
【0077】
また、フィルタが複数の通過領域から構成されている場合に、それらの通過領域のうちの少なくとも一つの通過領域で、+X方向に向かって透過率が徐々に小さくなっていても良い。
【0078】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を図10〜図12に基づいて説明する。
【0079】
この第2の実施形態は、一例として図10に示されるように、上記第1の実施形態におけるホログラム素子70の代わりに、場所によってホログラム作用(回折特性)が異なるフォーカスエラー検出領域を有するホログラム素子71が用いられる点に特徴を有する。そして、この場合には、第1の実施形態におけるフィルタ81は不要である。なお、その他の光ピックアップ装置及び光ディスク装置の構成などは、上記第1の実施形態と同様である。従って、以下においては、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、上記第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。また、前提条件についても上記第1の実施形態と同様とする。
【0080】
ホログラム素子71は、一例として図11(A)に示されるように、フォーカスエラー検出領域として回折領域71a、トラックエラー検出領域として回折領域71b,71cを有している。そして、回折領域71aはトラックの接線方向に対応する方向(ここではY軸方向)の分割線によって更に2つの部分領域71a1,71a2に分割されている。そして、部分領域71a1は分割線の−X側に位置し、部分領域71a2は分割線の+X側に位置している。すなわち、部分領域71a1での戻り光束入射角は「−θ1」〜「0」の範囲内にあり、部分領域71a2での戻り光束入射角は「0」〜「+θ1」の範囲内にある。
【0081】
一般的にホログラム素子の回折効率は、格子の溝深さによって変化する。一例として図12に示されるように、溝深さが2μmのホログラム素子と3μmのホログラム素子とを比較すると、実用的な入射角領域では溝深さが3μmのホログラム素子のほうが2μmのホログラム素子よりも回折効率が高い。すなわち、溝深さが深いほうが回折効率が高い。そこで、図11(B)に示されるように、部分領域71a1での格子の溝深さDaを部分領域71a2での格子の溝深さDbよりも深くしている。なお、溝深さDa及び溝深さDbは、理論計算あるいは実験及び経験などに基づいて最適な深さがそれぞれ設定される。
【0082】
これにより、回折領域71aでは、戻り光束入射角が「−θ1」〜「0」の範囲内の領域での回折効率は、戻り光束入射角が「0」〜「+θ1」の範囲内の領域での回折効率よりも大きくなり、その結果として、回折領域71aにおける回折効率の入射角依存性を小さくすることができる。
【0083】
次に、上述のようにして構成された光ピックアップ装置23を備えた光ディスク装置20における対物レンズ60のフォーカス制御について説明する。
【0084】
光源ユニット51から出射された光束は、上記第1の実施形態と同様にして記録面に微小スポットとして集光される。
【0085】
記録面からの戻り光束は対物レンズ60で再び略平行光とされ、ビームスプリッタ54に入射する。ビームスプリッタ54で−Z方向に反射された戻り光束は、検出レンズ58を介してホログラム素子71に入射する。ホログラム素子71の回折領域71aにおけるホログラム作用により生じた+1次回折光は、2分割受光素子59aで受光される。
【0086】
再生信号処理回路28では、上記(1)式に基づいてフォーカスエラー信号FEを検出する。そして、そのフォーカスエラー信号FEに基づいて、上記第1の実施形態と同様にしてフォーカス制御が行われる。
【0087】
以上の説明から明らかなように、本第2の実施形態に係る光ディスク装置では、上記第1の実施形態と同様に、再生信号処理回路28と、CPU40及び該CPU40によって実行されるプログラムとによって処理装置が実現されており、上記第1の実施形態と同様にして、記録処理及び再生処理が行われる。また、再生信号処理回路28とサーボコントローラ33とから位置制御手段が構成されている。
【0088】
以上説明したように、本第2の実施形態に係る光ピックアップ装置23によると、部分領域71a1での格子の溝深さと部分領域71a2での格子の溝深さとが互いに異なるように設定されたホログラム素子71を用いている。そして、ホログラム素子71では、戻り光束の入射角の違いに起因する各部分領域での戻り光束の回折効率の差を小さくするように各部分領域での格子の溝深さが設定されているために、回折領域71aにおける回折効率の入射角依存性を小さくすることができる。また、ホログラム素子における格子の溝深さを調整することによって、回折効率の入射角依存性を補正しているために、新たな補正手段を必要とせず、大型化及び高コスト化を防止することができる。従って、上記第1の実施形態に係る光ピックアップ装置と同様な効果を得ることが可能となる。
【0089】
また、本第2の実施形態に係る光ディスク装置20によると、光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいて、オフトラック量に対する揺らぎが極めて低いフォーカスエラー信号を安定して検出することができるため、上記第1の実施形態に係る光ディスク装置と同様な効果を得ることが可能となる。
【0090】
なお、上記第2の実施形態では、フォーカスエラー検出領域を2つの部分領域に分割した場合について説明したが、これに限らず、例えば3つ以上の部分領域に分割しても良い。
【0091】
なお、上記第2の実施形態では、部分領域71a1での格子の溝深さが一定値Daであり、部分領域71a2での格子の溝深さが一定値Dbである場合について説明したが、これに限らず、回折効率が最も低い部分から回折効率が最も高い部分に向かって所定のステップで徐々に溝深さが浅くなっても良い。例えば図13(A)及び図13(B)に示されるように、フォーカスエラー検出領域として回折領域72a、トラックエラー検出領域として回折領域72b,72cを有し、回折領域72aでは、戻り光束入射角が−θ1の部分(回折効率が最も低い部分)での溝深さをDc、戻り光束入射角が+θ1の部分(回折効率が最も高い部分)での溝深さをDd(<Dc)とし、DcからDdに徐々に溝深さが浅くなっているホログラム素子72を用いても良い。そして、この場合に、DcからDdに一定のステップで溝深さが変化しても良いが、部分的にステップが異なっていても良い。この場合には、フォーカスエラー検出領域は分割されない。
【0092】
また、フォーカスエラー検出領域が複数の部分領域から構成されている場合に、それらの部分領域のうちの少なくとも一つの部分領域で、その部分領域内における戻り光束の回折効率の低い部分から高い部分に向かって所定のステップで徐々に溝深さを浅くしても良い。
【0093】
また、上記第2の実施形態では、溝深さを調整することにより、回折効率の入射角依存性を小さくする場合について説明したが、これに限らず、例えば格子における凹凸のデューティ比を変えても良い。ホログラム素子の回折効率はデューティ比が0.5の時に最大となるので、例えば図14(A)及び図14(B)に示されるように、フォーカスエラー検出領域として回折領域73a、トラックエラー検出領域として回折領域73b,73cを有し、回折効率が低い部分領域73a1でのデューティ比を0.5、回折効率が高い部分領域73a2でのデューティ比を0.33としたホログラム素子73を用いても良い。
【0094】
ここで、回折効率が最も低い部分から回折効率が最も高い部分に向かって所定のステップで徐々にデューティ比が小さくなっても良い。例えば図15(A)及び図15(B)に示されるように、フォーカスエラー検出領域として回折領域74a、トラックエラー検出領域として回折領域74b,74cを有し、回折領域74aでは、戻り光束入射角が−θ1の部分(回折効率が最も低い部分)でのデューティ比を0.5、戻り光束入射角が+θ1の部分(回折効率が最も高い部分)でのデューティ比を0.33とし、0.5から0.33に徐々にデューティ比が小さくなっているホログラム素子74を用いても良い。
【0095】
また、フォーカスエラー検出領域において格子の溝深さとデューティ比の両方によってホログラム作用を調整しても良い。
【0096】
また、ホログラム素子がエッチングなどによって所定の深さの溝が形成された基板と該溝に充填された充填材とを有している場合には、基板の屈折率と充填材の屈折率との差を調整することにより、回折効率の入射角依存性を小さくしても良い。例えば図16(A)及び図16(B)に示されるように、フォーカスエラー検出領域として回折領域75a、トラックエラー検出領域として回折領域75b,75cを有し、回折効率が低い部分領域75a1での基板Maの屈折率と充填材Mbの屈折率との差と、回折効率が高い部分領域75a2での基板Maの屈折率と充填材Mcの屈折率との差が互いに異なっているホログラム素子75を用いても良い。
【0097】
ホログラム素子などの周期的な凹凸が格子として形成されている回折素子では、最大の回折効率が得られるときの入射光の波長λと格子の溝の深さTmとは、一般的に次の(3)式で示される関係にあることが知られている。ここで、Δnは溝が形成された基板の屈折率とその溝に充填されている充填材の屈折率との差(偏光ホログラムでは常光屈折率と異常光屈折率との差)である。
【0098】
Δn×Tm=λ/2 ……(3)
【0099】
そこで、基板Maの屈折率と充填材Mbの屈折率との差が上記(3)式を満たし、基板Maの屈折率と充填材Mcの屈折率との差が上記(3)式を満たさないように設定することにより、回折領域75aでの回折効率の入射角依存性を小さくすることができる。
【0100】
なお、この場合において、充填材の屈折率を一定とし、基板の屈折率を場所によって変えても良い。さらに、基板と充填材の両方の屈折率を場所によって変えても良い。
【0101】
また、上記第2の実施形態において、上記第1の実施形態におけるフィルタと同様な機能を有するフィルタを併用しても良い。
【0102】
また、上記第1及び第2の実施形態では、上記(1)式及び(2)式の演算処理が再生信号処理回路28にて行われる場合について説明したが、これに限らず、光ピックアップ装置23に、上記(1)式及び(2)式の少なくとも一方の演算処理を行なう演算回路を付加しても良い。
【0103】
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態を図17〜図19に基づいて説明する。
【0104】
この第3の実施形態は、ダブルビームサイズ法を用いてフォーカスエラー信号を検出する点に特徴を有する。そして、この場合には、一例として図17に示されるように、上記第1の実施形態におけるホログラム素子70の代わりにホログラム素子76が用いられ、受光器59の代わりに受光器69が用いられる。第1の実施形態におけるフィルタ81は不要である。なお、その他の光ピックアップ装置及び光ディスク装置の構成などは、上記第1の実施形態と同様である。従って、以下においては、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、上記第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。また、前提条件についても上記第1の実施形態と同様とする。
【0105】
ホログラム素子76は、一例として図18に示されるように、R方向(ここではX軸方向)の分割線DL3によって2つの領域に分割されている。すなわち、ホログラム素子76は、2つの回折領域76a,76bから構成されている。ここでは、回折領域76aは分割線DL3の+Y側に位置し、回折領域76bは分割線DL3の−Y側に位置している。そして、ホログラム素子76は、そのほぼ中央に戻り光束が入射するように配置されている。また、各回折領域に入射した光束はT方向(ここではY軸方向)に回折されるように設定されている。
【0106】
受光器69は、一例として図19に示されるように、回折領域76aからの回折光を受光する3分割受光素子69Aと、回折領域76bからの回折光を受光する3分割受光素子69Bとを含んで構成されている。3分割受光素子69Aは、T方向(ここでは、Y軸方向)の2本の分割線によって3つの部分受光素子69a,69b,69cに分割されている。そして、3分割受光素子69Aでは、部分受光素子69aでの受光量と部分受光素子69bでの受光量と部分受光素子69cでの受光量との比がおおよそ1:2:1となるように設定されている。同様に3分割受光素子69Bは、T方向の2本の分割線によって3つの部分受光素子69d,69e,69fに分割されている。そして、3分割受光素子69Bでは、部分受光素子69dでの受光量と部分受光素子69eでの受光量と部分受光素子69fでの受光量との比がおおよそ1:2:1となるように設定されている。
【0107】
再生信号処理回路28は、次の(4)式に基づいてフォーカスエラー信号FEを検出する。ここでS69aは部分受光素子69aの出力信号を変換した電圧信号であり、S69bは部分受光素子69bの出力信号を変換した電圧信号であり、S69cは部分受光素子69cの出力信号を変換した電圧信号であり、S69dは部分受光素子69dの出力信号を変換した電圧信号であり、S69eは部分受光素子69eの出力信号を変換した電圧信号であり、S69fは部分受光素子69fの出力信号を変換した電圧信号である。
【0108】
FE=(S69a+S69c+S69e)−(S69b+S69d+S69f) ……(4)
【0109】
ここでは、ホログラム素子での回折方向が光ディスク15のトラックの接線方向に対応する方向(ここではY軸方向)とほぼ一致しているため、部分受光素子69aの出力信号及び部分受光素子69cの出力信号における信号振幅は互いにほぼ等しく、また部分受光素子69dの出力信号及び部分受光素子69fの出力信号における信号振幅も互いにほぼ等しくなる。従って、ナイフエッジ法を用いた場合に比べてフォーカスエラー信号におけるオフトラックに対する揺らぎは極めて低くなる。
【0110】
しかしながら、ホログラム素子76に入射する戻り光束の強度分布中心が分割線DL3上に位置する場合に、対物レンズの位置がオフトラック位置でなくても、ホログラム素子における回折効率の入射角依存性の影響により、部分受光素子69aでの受光量と部分受光素子69dでの受光量、部分受光素子69bでの受光量と部分受光素子69eでの受光量、及び部分受光素子69cでの受光量と部分受光素子69fでの受光量は、いずれも異なることとなる。例えば、回折領域76bでの戻り光束の回折効率が回折領域76aでの戻り光束の回折効率の2倍であり、部分受光素子69aでの受光量及び部分受光素子69cでの受光量がいずれもAであり、部分受光素子69bでの受光量がBである場合について説明する。この場合には、フォーカスエラー信号FEは上記(4)式に基づいて計算すると、FE=(A+A+2B)−(B+2A+2A)=B−2Aとなる。ここで、B≠2Aであれば、フォーカスエラー信号FEにオフセットが生じることとなる。本第3の実施形態では、上述したように3分割受光素子69Aでは、部分受光素子69aでの受光量と部分受光素子69bでの受光量と部分受光素子69cでの受光量との比がおおよそ1:2:1となるように設定されており、同様に3分割受光素子69Bでは、部分受光素子69dでの受光量と部分受光素子69eでの受光量と部分受光素子69fでの受光量との比がおおよそ1:2:1となるように設定されているために、(B−2A)はほとんど0となり、フォーカスエラー信号FEのオフセットは極めて小さくなる。
【0111】
また、トラックエラー信号TEは次の(5)式に基づいて検出される。
【0112】
TE=(S69a+S69f)−(S69c+S69d) ……(5)
【0113】
以上の説明から明らかなように、本第3の実施形態に係る光ディスク装置では、上記第1の実施形態と同様に、再生信号処理回路28と、CPU40及び該CPU40によって実行されるプログラムとによって処理装置が実現されており、上記第1の実施形態と同様にして、記録処理及び再生処理が行われる。また、再生信号処理回路28とサーボコントローラ33とから位置制御手段が構成されている。
【0114】
以上説明したように、本第3の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、ダブルビームサイズ法を用いてフォーカスエラー信号を検出するとともに、3分割受光素子69Aを構成する部分受光素子69aでの受光量と部分受光素子69bでの受光量と部分受光素子69cでの受光量との比がおおよそ1:2:1となるように設定されており、3分割受光素子69Bを構成する部分受光素子69dでの受光量と部分受光素子69eでの受光量と部分受光素子69fでの受光量との比がおおよそ1:2:1となるように設定されている。それにより、ホログラム素子における回折効率の入射角依存性に起因するオフセット成分がフォーカスエラー信号に付加されるのを抑制することができる。また、受光器における分割線の位置を設定することによって、ホログラム素子における回折効率の入射角依存性を補正しているために、新たな補正手段を必要とせず、大型化及び高コスト化を防止することができる。従って、上記第1の実施形態に係る光ピックアップ装置と同様な効果を得ることが可能となる。
【0115】
また、本第3の実施形態に係る光ディスク装置20によると、光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいて、オフセット成分が極めて低いフォーカスエラー信号を安定して検出することができるため、上記第1の実施形態に係る光ディスク装置と同様な効果を得ることが可能となる。
【0116】
なお、上記第3の実施形態では、受光器における分割線の位置を設定することによって、回折効率の入射角依存性を補正する場合について説明したが、これに限らず、例えば、ホログラム素子における分割線の位置を設定することによって、回折効率の入射角依存性を補正しても良い。すなわち、対物レンズの位置がオフトラック位置でないときに、部分受光素子69aでの受光量と部分受光素子69dでの受光量、部分受光素子69bでの受光量と部分受光素子69eでの受光量、及び部分受光素子69cでの受光量と部分受光素子69fでの受光量が、それぞれほぼ等しくなるようにホログラム素子における分割線の位置を設定しても良い。
【0117】
また、上記第3の実施形態では、上記(4)式及び(5)式の演算処理が再生信号処理回路28にて行われる場合について説明したが、これに限らず、光ピックアップ装置23に、上記(4)式及び(5)式の少なくとも一方の演算処理を行なう演算回路を付加しても良い。
【0118】
また、上記各実施形態では、ホログラム素子からの+1次回折光を受光器で受光する場合について説明したが、これに限らず、−1次回折光を利用しても良い。但し、この場合には、入射角と回折効率との関係が逆になるため、ホログラム素子では、戻り光束入射角が「−θ1」の部分で回折効率が最大となり、戻り光束入射角が「+θ1」の部分で回折効率が最小となる。
【0119】
なお、上記各実施形態では、ホログラム素子として、その回折効率が入射する光束の偏光方向に依存しない無偏光ホログラム素子が用いられる場合について説明したが、これに限らず、入射する光束の偏光方向に応じて回折効率が異なる偏光ホログラム素子を用いても良い。これにより、光ディスクの記録面に照射される光束の光量低下が極めて少なくなり、高速化に対応することが容易となる。また、受光器での受光量が増加し、受光器からの出力信号における信号レベル及びS/N比を向上させることができる。
【0120】
一般に偏光ホログラム素子は複屈折性を有する材料を格子形状に加工することにより製造することができる。複屈折性を有する材料としてはLiNbO3結晶や液晶などがあるが、薄い膜で複屈折性を有する透明な有機材料の延伸膜(有機延伸膜)、例えばポリイミドやPETは、Δn=0.06〜0.1程度の複屈折性を有し、屈折率が1.6程度であるため、オーバーコート材料も安価なものを用いることができ、低コスト化が容易である。また、有機延伸膜は、微細加工を容易に行うことができるため、狭ピッチ化が可能となる。すなわち、戻り光束の回折角を大きくすることができ、光ピックアップ装置の小型化を促進することが可能となる。
【0121】
また、上記各実施形態では、光源が1つの場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば波長が405nmの光束を出射する光源、波長が650nmの光束を出射する光源及び波長が780nmの光束を出射する光源のうち少なくとも2つの光源を備えていても良い。そして、この場合には、入射する光束の波長に応じて回折効率が異なる波長選択性ホログラム素子を用いても良い。また、この場合に例えば上記第1の実施形態のように、透過光量を調整するためのフィルタが用いられるときは、入射する光束の波長に応じて透過率が異なる波長選択性フィルタを用いても良い。
【0122】
さらに、上記各実施形態では、ホログラム素子が復路の光路上に配置される場合について説明したが、これに限らず、往路と復路の共通光路上に配置されても良い。但し、この場合に、各回折領域での格子のデューティ比及び溝深さのうちの少なくとも1つが異なるホログラム素子を用いるときは、偏光ホログラム素子であることが好ましい。無偏光ホログラム素子では波面が劣化することがあるからである。
【0123】
また、上記各実施形態では、半導体レーザと受光器とが個別に配置される場合について説明したが、これに限らず、受光器と半導体レーザとが同一筐体内に実装されパッケージ化されても良い。さらに、受光器と半導体レーザと回折素子とが一体化されても良い。かかる場合には、光ピックアップ装置の小型化を促進することができるとともに、組み付け時の構成部品の数が減少し、組み付け作業及び調整作業を簡略化することができ、作業コストを削減することが可能となる。
【0124】
なお、上記各実施形態では、情報の記録及び再生が可能な光ディスク装置について説明したが、これに限らず、情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも1つが可能な光ディスク装置であれば良い。
【0125】
なお、上記各実施形態では、光源として半導体レーザを用いる場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0126】
また、上記各実施形態では、光ディスクとして、CD、DVD及び光磁気ディスクなど、光を利用して情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも1つが行われる情報記録媒体を用いることができる。
【0127】
なお、上記各実施形態において、CPU40によるプログラムに従う処理によって実現した処理装置の少なくとも一部をハードウェアによって構成することとしても良いし、あるいは処理装置の全てをハードウェアによって構成することとしても良い。
【0128】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る光ピックアップ装置によれば、対物レンズの位置制御に必要な情報などを含む信号を安定して出力することができるという効果がある。
【0129】
また、本発明に係る光ディスク装置によれば、情報記録媒体への高速度でのアクセスを精度良く安定して行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る光ピックアップ装置の構成を説明するための図である。
【図3】図2におけるホログラム素子70の回折領域を説明するための図である。
【図4】図2における受光素子59とホログラム素子70との関係を説明するための図である。
【図5】図2におけるホログラム素子70での回折効率の入射角依存性を説明するための図である。
【図6】図6(A)及び図6(B)は、それぞれ図2におけるフィルタ81の構成を説明するための図である。
【図7】図2における受光器59の構成を説明するための図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は、それぞれオフトラック量に対する信号の揺らぎを説明するための図である。
【図9】図9(A)及び図9(B)は、それぞれ第1の実施形態に係るフィルタの変形例を説明するための図である。
【図10】第2の実施形態に係る光ピックアップ装置の構成を説明するための図である。
【図11】図11(A)及び図11(B)は、それぞれ第2の実施形態に係るホログラム素子におけるフォーカスエラー検出領域を説明するための図である。
【図12】ホログラム素子における格子の溝深さと回折効率との関係を説明するための図である。
【図13】図13(A)及び図13(B)は、それぞれ第2の実施形態に係るホログラム素子におけるフォーカスエラー検出領域の変形例(その1)を説明するための図である。
【図14】図14(A)及び図14(B)は、それぞれ第2の実施形態に係るホログラム素子におけるフォーカスエラー検出領域の変形例(その2)を説明するための図である。
【図15】図15(A)及び図15(B)は、それぞれ第2の実施形態に係るホログラム素子におけるフォーカスエラー検出領域の変形例(その3)を説明するための図である。
【図16】図16(A)及び図16(B)は、それぞれ第2の実施形態に係るホログラム素子におけるフォーカスエラー検出領域の変形例(その4)を説明するための図である。
【図17】第3の実施形態に係る光ピックアップ装置の構成を説明するための図である。
【図18】第3の実施形態に係るホログラム素子76を説明するための図である。
【図19】図17における受光器69の構成を説明するための図である。
【図20】図20(A)及び図21(B)は、それぞれホログラム素子を用いた従来例を説明するための図である。
【図21】図21(A)は、図20(A)のホログラム素子における入射角度と回折効率との関係を説明するための図であり、図21(B)及び図21(C)は、それぞれフォーカスエラー信号におけるオフトラック量に対する揺らぎを説明するための図である。
【符号の説明】
15…光ディスク(情報記録媒体)、20…光ディスク装置、23…光ピックアップ装置、28…再生信号処理回路(処理装置の一部、位置制御手段の一部)、33…サーボコントローラ(位置制御手段の一部)、40…CPU(処理装置の一部)、59…受光器(光検出器)、60…対物レンズ、69…受光器(光検出器)、70〜76…ホログラム素子(回折素子)、81,82…フィルタ。
Claims (16)
- スパイラル状又は同心円状のトラックが形成された情報記録媒体の記録面に光を照射し、前記記録面からの反射光を受光する光ピックアップ装置であって、
光源と;
該光源から出射される光束を前記記録面に集光する対物レンズと;
前記記録面で反射され前記対物レンズを介した戻り光束が入射され、その回折効率が前記戻り光束の入射角に依存する入射角依存性を有する回折素子を含む複数の光学素子と;
前記回折素子による回折方向と所定の対応関係にある特定方向に沿って配置され、前記光学素子を介した戻り光束を受光し、前記対物レンズの光軸方向に関する位置情報を含む信号を出力する複数の光検出器と;を備え、
前記複数の光学素子のうちの特定光学素子及び前記複数の光検出器の少なくとも一部の特定光検出器の少なくともいずれかが、前記複数の光検出器から出力される信号が前記入射角依存性による誤差が低減された信号となるように構成されている光ピックアップ装置。 - 前記複数の光検出器から出力される信号は、ナイフエッジ法によって前記対物レンズの光軸方向に関する位置情報を検出するのに適した信号であり、前記特定方向は、前記トラックの接線方向に対応する方向であることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
- 前記特定光学素子は、少なくとも1つのフィルタを含み、
該フィルタは前記戻り光束に対する透過率が場所によって異なることを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ装置。 - 前記透過率は、前記トラックの接線方向に直交する方向に対応する方向の一側から他側に向かって変化していることを特徴とする請求項3に記載の光ピックアップ装置。
- 前記フィルタは、トラックの接線方向に対応する方向の分割線によって分割された複数の部分領域を含み、該複数の部分領域のうちの少なくとも2つの部分領域における透過率が互いに異なることを特徴とする請求項3に記載の光ピックアップ装置。
- 前記特定光学素子は、前記回折素子を含み、
前記回折素子は前記戻り光束に対する回折特性が場所によって異なることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。 - 前記回折素子は、格子のデューティ比及び溝の深さのうちの少なくとも1つが、前記トラックの接線方向に直交する方向に対応する方向の一側から他側に向かって変化していることを特徴とする請求項6に記載の光ピックアップ装置。
- 前記回折素子は、トラックの接線方向に対応する方向の分割線によって分割された複数の部分領域を含み、そのうちの少なくとも2つの部分領域は、格子のデューティ比及び溝の深さのうちの少なくとも1つが、互いに異なることを特徴とする請求項6に記載の光ピックアップ装置。
- 前記回折素子は、格子が形成された第1の部材と該第1の部材の格子の溝に充填された第2の部材とを含み、前記第1の部材の屈折率と前記第2の部材の屈折率との差が場所によって異なることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
- 前記複数の光検出器から出力される信号は、ダブルビームサイズ法によって前記対物レンズの光軸方向に関する位置情報を検出するのに適した信号であり、前記特定方向は、前記トラックの接線方向に直交する方向に対応する方向であることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
- 前記特定光検出器は、前記特定方向に直交する方向の2本の分割線によって3つの受光素子に分割され、各受光素子での受光量の比が順におよそ1:2:1の関係にある3分割受光素子を2つ含むことを特徴とする請求項10に記載の光ピックアップ装置。
- 前記光源と前記複数の光検出器とが、同一の筐体内に配置され、パッケージ化されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
- 前記光源と前記複数の光検出器と前記回折素子とが、一体化されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
- 前記回折素子は、入射する光束の偏光方向によりその回折効率が異なる偏光回折素子であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
- 前記偏光回折素子は、表面に周期的な凹凸が格子として形成された複屈折性を有する複屈折媒体を含み、該複屈折媒体は、前記格子が形成された有機延伸膜であることを特徴とする請求項14に記載の光ピックアップ装置。
- 情報記録媒体に対して、情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行なう光ディスク装置であって、
請求項1〜15のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置と;
前記複数の光検出器からの出力信号に基づいて前記対物レンズの光軸方向に関する位置情報を求め、前記対物レンズの光軸方向に関する位置を制御する位置制御手段と;
前記光ピックアップ装置からの出力信号を用いて、前記情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行なう処理装置と;を備える光ディスク装置。
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