JP2004045378A - 波動歯車装置のトルク検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】可撓性外歯歯車に貼り付けた歪みゲージの出力に基づき、精度良く伝達トルクを検出可能な波動歯車装置のトルク検出方法を提案すること。
【解決手段】波動歯車装置のトルク検出方法では、可撓性外歯歯車のダイヤフラムに貼り付けた複数組の歪みゲージからの出力を増幅器でゲイン調整した後に合成して、検出信号を生成している。各歪みゲージ出力のゲイン調整を行うことにより出力に含まれている回転リップルを補償できる。回転リップルに含まれるn次数までの成分を補償する場合には、(2n+1)枚以上の歪みゲージを貼り付けることにより、回転リップルを確実に補償できる。
【選択図】 図5
【解決手段】波動歯車装置のトルク検出方法では、可撓性外歯歯車のダイヤフラムに貼り付けた複数組の歪みゲージからの出力を増幅器でゲイン調整した後に合成して、検出信号を生成している。各歪みゲージ出力のゲイン調整を行うことにより出力に含まれている回転リップルを補償できる。回転リップルに含まれるn次数までの成分を補償する場合には、(2n+1)枚以上の歪みゲージを貼り付けることにより、回転リップルを確実に補償できる。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は波動歯車装置の出力軸トルクを検出するためのトルク検出方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、波動歯車装置の可撓性外歯歯車の弾性変形を利用して、当該可撓性外歯歯車に貼り付けた歪みゲージを用いて出力軸トルクを精度良く検出可能な波動歯車装置のトルク検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
波動歯車装置は、公知のように、剛性の内歯歯車と、この内側に配置された可撓性の外歯歯車と、この外歯歯車を半径方向に撓めて内歯歯車に部分的に噛みあわせると共に噛み合い位置を円周方向に移動させる波動発生器から構成されている。一般には楕円形輪郭の波動発生器によって可撓性外歯歯車は楕円形に撓められる。波動発生器をモータなどによって回転させると、内歯歯車と外歯歯車の歯数差に基づき、これら両歯車の間に相対回転が発生するので、一方の歯車を固定しておくことにより、他方の歯車から減速回転出力を得ることができる。
【0003】
この波動歯車装置の出力軸トルクを検出するために、可撓性外歯歯車の弾性変形を利用する方法が知られている。図1に示すように、一般に使用されているコップ状可撓性外歯歯車1は、可撓性のある円筒状胴部2と、この一端に連続している円盤状のダイヤフラム3と、ダイヤフラム3の中心部分に連続して形成されているボス4と、円筒状胴部2の開口端の外周部分に形成した外歯5から構成されている。この場合、円筒状胴部2あるいはダイヤフラム3に歪みゲージを貼り付け、ここからの出力に基づき、出力軸トルクを検出可能である。
【0004】
しかしながら、可撓性外歯歯車1は波動発生器によって楕円形に撓められ、波動発生器の回転に伴って当該可撓性外歯歯車1の各部分は繰り返し半径方向に強制変形させられる。よって、可撓性外歯歯車1には伝達トルクとは無関係の歪みが発生する。可撓性外歯歯車1の各部分は、波動発生器の1回転毎に半径方向に向けて一定の変動幅で2往復する。従って、伝達トルクとは関係のない歪みは、波動発生器1回転につき2周期を基本周期とする正弦波状の歪みになる(一周期180°)。
【0005】
従来においては、図1に示すように、コップ状可撓性外歯歯車1の表面、例えばダイヤフラム3の表面に、歪みゲージ群f1(p)(R1、R2)と歪みゲージ群f2(p)(R3、R4)を互いに90°ずらして貼り付け、双方からの出力に基づき基本周期の歪成分をキャンセルしようとしている。しかし、この方法では、検出出力の線形性が不十分であり、また、検出出力には短い周期(基本周期の整数倍)の成分をもつ回転リップル成分が残ってしまう。
【0006】
基本周期と2次成分(一周期90°)の歪をキャンセルするために、図2に示すように、歪みゲージ群f1(R1、R2)、f2(R3、R4)を互いに45°ずらして貼り付けた組と、歪みゲージ群f3(R5、R6)、f4(R7、R8)を互いに45°ずらして貼り付けた組とを、互いに90°ずらして、合計8枚の歪みゲージR1〜R8を貼り付ける試みもなされている。さらに、検出出力の直線性を向上させるために、歪みゲージ群の組(f1、f2)と(f3、f4)とを360°内に対称に配置し、合計16枚の歪みゲージを貼り付ける試みもなされている。このような方法は例えば下記の特許文献に開示されている。
【0007】
【特許文献】
特開平9−184777号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このようにしても、回転リップルの補償はまだ不十分である。本発明者等の実験によれば、これらのエラーは、歪みゲージの貼り付け位置誤差と、可撓性外歯歯車寸法の誤差(非対称性など)と、歯車の組立て誤差が主要な要因である。例えば、歪みゲージの貼り付け位置誤差のために、それぞれの歪みゲージの信号の感度と位相が異なり、回転リップルをキャンセルあるいは充分に抑制することができない。
【0009】
本発明の課題は、波動発生器の回転に伴って伝達トルクとは無関係に可撓性外歯歯車に発生する周期的に変動する歪み成分(回転リップル)を除去あるいは充分に抑制できる波動歯車装置のトルク検出方法を提案することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、可撓性外歯歯車を楕円状に撓めて剛性内歯歯車に対して部分的に噛み合わせ、これら両歯車の噛み合い位置を円周方向に移動させることにより、これら両歯車の歯数差に起因する相対回転をこれら両歯車の間に発生させる波動歯車装置における伝達トルクを検出するためのトルク検出方法において、
前記可撓性外歯歯車の表面に貼り付けた複数枚の歪みゲージからの出力信号のゲイン調整を行うゲイン調整工程と、
ゲイン調整後の歪みゲージ出力信号を合成する信号合成工程とを含み、
前記ゲイン調整工程では、伝達トルクに関係無く発生する前記可撓性外歯歯車の歪みに起因して歪みゲージ出力信号に含まれる回転リップルを除去あるいは抑制できるように、各歪みゲージ出力信号のゲイン調整を行うことを特徴としている。
【0011】
また、本発明では、前記可撓性外歯歯車の表面における円周方向の異なる角度位置に貼り付けた少なくとも3枚の歪みゲージから得られる検出信号を合成するようにしている。
【0012】
更に、本発明では、補償したい前記回転リップル成分の次数をnとした場合に、歪みゲージの枚数を(2n+1)枚以上とすることを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明を適用した波動歯車装置のトルク検出方法を説明する。
【0014】
コップ状可撓性外歯歯車1のダイヤフラム2の表面に図2に示すように所定角度間隔で貼り付けた歪ゲージの組f1〜f4の出力に含まれる回転リップル成分は、次式(1)で表される。なお、式(1)〜(4)は、回転リップルに2次成分と4次成分のみが存在する場合の例である。
【0015】
【数1】
【0016】
回転リップル成分の合計h(p)が零になるための条件は次式(2)で表され、これは、次の連立方程式(3)として表すことができる。
【0017】
【数2】
【0018】
【数3】
【0019】
式(3)が成り立つためには、振幅a11〜a24、または位相Ψ11〜Ψ24を調整すればよい。歪みゲージを接着したあとに位相を調整することは困難であるが、振幅の調整は増幅器のゲインを調整することで容易に行うことができる。例えば、基本周期のリップルを補償するためには、次式(4)を満足するように増幅器のゲインk1、k2、k3を調整すればよい。
【0020】
【数4】
【0021】
ゲインk1、k2、k3は、合計したリップル信号を波形測定器などで観測しながら、直接、ボリュームなどで調整し、リップル出力が最小になるように、それぞれのゲインパラメータを任意に調整できる。この代わりに、公知の連立方程式解法により求めた式(4)の解を用いてもよい。
【0022】
次に、回転リップルを完全に補償できるために必要な歪みゲージの最低数について検討する。回転リップルの一般的な表現は次式(5)である。ここで、nは補償したい回転リップル成分の数であり、Nは歪みゲージの数(貼り付け位置の数、等角度配置)である。
【0023】
【数5】
【0024】
この式により規定される回転リップルが零になるためには、次の線形連立方程式(6)が成立する必要がある。
【0025】
【数6】
【0026】
本発明では、リップルの補償のためにそれぞれの歪みゲージjにゲインパラメータkjを追加する。すなわち、振幅aijにゲインパラメータkjを掛け合わせる。式(6)は次式(7)のように書き換えられる。
【0027】
【数7】
【0028】
この線形連立方程式において、ゲインパラメータのトリビアルでない解が存在するための条件は次式(8)で表すことができる。
【0029】
【数8】
【0030】
例えば、基本周期成分だけを補償するときにはn=1、従ってNは3以上であり、これは3枚以上の歪みゲージが必要なことを意味している。また、2次周期成分までを補償するときにはn=2、従ってNは5以上となり、5枚以上の歪みゲージが必要になる。
【0031】
ここで、図3には、基本周期回転リップルの補償原理を示してある。図3(a)、(b)に示すように、2組の歪みゲージf1、f2を用いた場合には回転リップルの補償が不可能である。しかるに、図3(c)、(d)に示すように、3組の歪みゲージf1、f2、f3を用いて、各歪みゲージのゲイン調整を行えば、回転リップルの完全な補償が可能になることが分かる。
【0032】
式(6)の連立方程式の解は無数に存在するが、N=2n+1の場合にはゲインパラメータの一つを自由に選択することができる。例えば、ゲインパラメータの一つを「1」に選ぶことができ、この場合には1組の歪みゲージにはゲイン調整が必要なくなる。J番目の歪みゲージのゲインパラメータを「1」、すなわち、kj=1とすれば、残りの(N−1)個のゲインパラメータは次の式(9)から求められる。
【0033】
【数9】
【0034】
ゲイン調整後に、出力全体のゲインが調整前と変わらないようにするためには、次式(10)でスケーリングする。
【0035】
【数10】
【0036】
Cはスケーリング係数であり、最終的なゲインパラメータの値はk’J=Ckjとなる。
【0037】
本発明によれば、リップルの補償は簡単な振幅のバランスで行われるので、アナログ回路でもデジタル回路でも高速に実現できる。
【0038】
次に、図4は、本発明者等によって判明した新たな事項に基づき構成された波動歯車装置のトルク検出装置の一例を示す概略構成図である。本例のトルク検出装置10は、コップ状可撓性外歯歯車1のダイヤフラム3の表面に、120°の間隔で3組の歪みゲージ群f(p)、f(p+120)、およびf(p+240)が貼り付けられている。各歪みゲージ群は直交する状態に貼り付けた一対の歪みゲージから構成されている。各歪みゲージ群からの出力は、それぞれ増幅器11、12、13によってゲイン調整された後に、加算器14で合成された後に、検出信号として出力される。上式(4)で規定されるようにゲイン調整を適切に行うことにより回転リップルが完全に補償された検出信号を得ることができる。
【0039】
図5には、トルク検出装置10の具体的な回路構成図の一例を示してある。検出部分は、3組の歪みゲージ群f(p)、f(p+120)およびf(p+240)を構成している3組の直交2軸型歪みゲージ(R1、R2)、(R3、R4)、(R5、R6)と、一対の固定抵抗R7、R8からなるブリッジ回路となっている。
【0040】
図6(a)には、各歪みゲージ群f(p)、f(p+120)およびf(p+240)における波動歯車装置の回転角度に対する出力変動曲線f1、f2、f3を示してある。図6(b)には、これらの出力を合成した場合の合成出力変動曲線を示してある。図6(c)には本例のトルク検出装置10によってゲイン調整された後の合成出力変動曲線を示してある。図6(b)および(c)の曲線を比較すると明らかなように、本例のトルク検出装置10からは回転リップルが補償された検出信号が得られることが分かる。
【0041】
ここで、本発明の上記基本原理によれば、図1、2に示すように、180°の角度範囲内に歪みゲージを配置すればよいが、本例のように360°の角度範囲内に配置した場合には、偏心による1回転1周期の低周波数成分も補償できるという利点がある。
【0042】
次に、図7は、回転リップルに含まれている基本波成分と二次成分を補償するためのトルク検出装置の一例を示してある。本例のトルク検出装置20は、n=2であるので5組の歪みゲージ群f(p)、f(p+72)、f(p+144)、f(p+216)、およびf(p+288)がコップ状可撓性外歯歯車1のダイヤフラム3の表面に等角度間隔で貼り付けられている。各歪みゲージ群は直交する状態に貼り付けた2枚の歪みゲージから構成されている。各歪みゲージ群からの出力はそれぞれの増幅器21〜25を介してゲイン調整された後に、加算器26に供給されて合成される。この結果、回転リップルが補償された検出信号を出力することができる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の波動歯車装置のトルク検出方法によれば、各歪みゲージの出力をゲイン調整した後に合成することにより、歪みゲージ出力に含まれている伝達トルクに関係の無い周期的な変動成分である回転リップルを補償できることが確認された。
【0044】
また、本発明では、回転リップルに含まれている各次数の成分を補償するために最低必要な歪みゲージ枚数を求め、これに基づき、必要次数までの回転リップル成分を確実に補償できる。換言すると、最小枚数の歪みゲージで効率良く回転リップルを補償することが可能になる。歪みゲージの枚数が少なくて済むので、貼り付け作業などを効率化でき、検出機構のコストの低減に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】波動歯車装置の伝達トルクを検出するために歪みゲージを用いた場合における検出信号に含まれる回転リップルを説明するための説明図である。
【図2】波動歯車装置の伝達トルクを検出するために歪みゲージを用いた場合における検出信号に含まれる回転リップルを説明するための説明図である。
【図3】回転リップルに含まれる基本周期成分をキャンセルするために最低3枚の歪みゲージが必要であることを示すための説明図である。
【図4】本発明を適用した波動歯車装置のトルク検出装置の主要部分を示す概略構成図である。
【図5】図4に示すトルク検出装置の具体的な回路構成例を示す回路ブロック図である。
【図6】(a)は、3組の各歪みゲージ群における波動歯車装置の回転角度に対する出力変動曲線を示すグラフであり、(b)は、これらの出力を合成した場合の合成出力変動曲線を示すグラフであり、図6(c)には図5のトルク検出装置によってゲイン調整された後の合成出力変動曲線を示すグラフである。
【図7】本発明を適用した波動歯車装置のトルク検出装置の主要部分を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 コップ状可撓性外歯歯車
2 円筒状胴部
3 ダイヤフラム
4 ボス
5 外歯
10 トルク検出器
11、12、13 増幅器
14 加算器
【発明の属する技術分野】
本発明は波動歯車装置の出力軸トルクを検出するためのトルク検出方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、波動歯車装置の可撓性外歯歯車の弾性変形を利用して、当該可撓性外歯歯車に貼り付けた歪みゲージを用いて出力軸トルクを精度良く検出可能な波動歯車装置のトルク検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
波動歯車装置は、公知のように、剛性の内歯歯車と、この内側に配置された可撓性の外歯歯車と、この外歯歯車を半径方向に撓めて内歯歯車に部分的に噛みあわせると共に噛み合い位置を円周方向に移動させる波動発生器から構成されている。一般には楕円形輪郭の波動発生器によって可撓性外歯歯車は楕円形に撓められる。波動発生器をモータなどによって回転させると、内歯歯車と外歯歯車の歯数差に基づき、これら両歯車の間に相対回転が発生するので、一方の歯車を固定しておくことにより、他方の歯車から減速回転出力を得ることができる。
【0003】
この波動歯車装置の出力軸トルクを検出するために、可撓性外歯歯車の弾性変形を利用する方法が知られている。図1に示すように、一般に使用されているコップ状可撓性外歯歯車1は、可撓性のある円筒状胴部2と、この一端に連続している円盤状のダイヤフラム3と、ダイヤフラム3の中心部分に連続して形成されているボス4と、円筒状胴部2の開口端の外周部分に形成した外歯5から構成されている。この場合、円筒状胴部2あるいはダイヤフラム3に歪みゲージを貼り付け、ここからの出力に基づき、出力軸トルクを検出可能である。
【0004】
しかしながら、可撓性外歯歯車1は波動発生器によって楕円形に撓められ、波動発生器の回転に伴って当該可撓性外歯歯車1の各部分は繰り返し半径方向に強制変形させられる。よって、可撓性外歯歯車1には伝達トルクとは無関係の歪みが発生する。可撓性外歯歯車1の各部分は、波動発生器の1回転毎に半径方向に向けて一定の変動幅で2往復する。従って、伝達トルクとは関係のない歪みは、波動発生器1回転につき2周期を基本周期とする正弦波状の歪みになる(一周期180°)。
【0005】
従来においては、図1に示すように、コップ状可撓性外歯歯車1の表面、例えばダイヤフラム3の表面に、歪みゲージ群f1(p)(R1、R2)と歪みゲージ群f2(p)(R3、R4)を互いに90°ずらして貼り付け、双方からの出力に基づき基本周期の歪成分をキャンセルしようとしている。しかし、この方法では、検出出力の線形性が不十分であり、また、検出出力には短い周期(基本周期の整数倍)の成分をもつ回転リップル成分が残ってしまう。
【0006】
基本周期と2次成分(一周期90°)の歪をキャンセルするために、図2に示すように、歪みゲージ群f1(R1、R2)、f2(R3、R4)を互いに45°ずらして貼り付けた組と、歪みゲージ群f3(R5、R6)、f4(R7、R8)を互いに45°ずらして貼り付けた組とを、互いに90°ずらして、合計8枚の歪みゲージR1〜R8を貼り付ける試みもなされている。さらに、検出出力の直線性を向上させるために、歪みゲージ群の組(f1、f2)と(f3、f4)とを360°内に対称に配置し、合計16枚の歪みゲージを貼り付ける試みもなされている。このような方法は例えば下記の特許文献に開示されている。
【0007】
【特許文献】
特開平9−184777号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このようにしても、回転リップルの補償はまだ不十分である。本発明者等の実験によれば、これらのエラーは、歪みゲージの貼り付け位置誤差と、可撓性外歯歯車寸法の誤差(非対称性など)と、歯車の組立て誤差が主要な要因である。例えば、歪みゲージの貼り付け位置誤差のために、それぞれの歪みゲージの信号の感度と位相が異なり、回転リップルをキャンセルあるいは充分に抑制することができない。
【0009】
本発明の課題は、波動発生器の回転に伴って伝達トルクとは無関係に可撓性外歯歯車に発生する周期的に変動する歪み成分(回転リップル)を除去あるいは充分に抑制できる波動歯車装置のトルク検出方法を提案することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、可撓性外歯歯車を楕円状に撓めて剛性内歯歯車に対して部分的に噛み合わせ、これら両歯車の噛み合い位置を円周方向に移動させることにより、これら両歯車の歯数差に起因する相対回転をこれら両歯車の間に発生させる波動歯車装置における伝達トルクを検出するためのトルク検出方法において、
前記可撓性外歯歯車の表面に貼り付けた複数枚の歪みゲージからの出力信号のゲイン調整を行うゲイン調整工程と、
ゲイン調整後の歪みゲージ出力信号を合成する信号合成工程とを含み、
前記ゲイン調整工程では、伝達トルクに関係無く発生する前記可撓性外歯歯車の歪みに起因して歪みゲージ出力信号に含まれる回転リップルを除去あるいは抑制できるように、各歪みゲージ出力信号のゲイン調整を行うことを特徴としている。
【0011】
また、本発明では、前記可撓性外歯歯車の表面における円周方向の異なる角度位置に貼り付けた少なくとも3枚の歪みゲージから得られる検出信号を合成するようにしている。
【0012】
更に、本発明では、補償したい前記回転リップル成分の次数をnとした場合に、歪みゲージの枚数を(2n+1)枚以上とすることを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明を適用した波動歯車装置のトルク検出方法を説明する。
【0014】
コップ状可撓性外歯歯車1のダイヤフラム2の表面に図2に示すように所定角度間隔で貼り付けた歪ゲージの組f1〜f4の出力に含まれる回転リップル成分は、次式(1)で表される。なお、式(1)〜(4)は、回転リップルに2次成分と4次成分のみが存在する場合の例である。
【0015】
【数1】
【0016】
回転リップル成分の合計h(p)が零になるための条件は次式(2)で表され、これは、次の連立方程式(3)として表すことができる。
【0017】
【数2】
【0018】
【数3】
【0019】
式(3)が成り立つためには、振幅a11〜a24、または位相Ψ11〜Ψ24を調整すればよい。歪みゲージを接着したあとに位相を調整することは困難であるが、振幅の調整は増幅器のゲインを調整することで容易に行うことができる。例えば、基本周期のリップルを補償するためには、次式(4)を満足するように増幅器のゲインk1、k2、k3を調整すればよい。
【0020】
【数4】
【0021】
ゲインk1、k2、k3は、合計したリップル信号を波形測定器などで観測しながら、直接、ボリュームなどで調整し、リップル出力が最小になるように、それぞれのゲインパラメータを任意に調整できる。この代わりに、公知の連立方程式解法により求めた式(4)の解を用いてもよい。
【0022】
次に、回転リップルを完全に補償できるために必要な歪みゲージの最低数について検討する。回転リップルの一般的な表現は次式(5)である。ここで、nは補償したい回転リップル成分の数であり、Nは歪みゲージの数(貼り付け位置の数、等角度配置)である。
【0023】
【数5】
【0024】
この式により規定される回転リップルが零になるためには、次の線形連立方程式(6)が成立する必要がある。
【0025】
【数6】
【0026】
本発明では、リップルの補償のためにそれぞれの歪みゲージjにゲインパラメータkjを追加する。すなわち、振幅aijにゲインパラメータkjを掛け合わせる。式(6)は次式(7)のように書き換えられる。
【0027】
【数7】
【0028】
この線形連立方程式において、ゲインパラメータのトリビアルでない解が存在するための条件は次式(8)で表すことができる。
【0029】
【数8】
【0030】
例えば、基本周期成分だけを補償するときにはn=1、従ってNは3以上であり、これは3枚以上の歪みゲージが必要なことを意味している。また、2次周期成分までを補償するときにはn=2、従ってNは5以上となり、5枚以上の歪みゲージが必要になる。
【0031】
ここで、図3には、基本周期回転リップルの補償原理を示してある。図3(a)、(b)に示すように、2組の歪みゲージf1、f2を用いた場合には回転リップルの補償が不可能である。しかるに、図3(c)、(d)に示すように、3組の歪みゲージf1、f2、f3を用いて、各歪みゲージのゲイン調整を行えば、回転リップルの完全な補償が可能になることが分かる。
【0032】
式(6)の連立方程式の解は無数に存在するが、N=2n+1の場合にはゲインパラメータの一つを自由に選択することができる。例えば、ゲインパラメータの一つを「1」に選ぶことができ、この場合には1組の歪みゲージにはゲイン調整が必要なくなる。J番目の歪みゲージのゲインパラメータを「1」、すなわち、kj=1とすれば、残りの(N−1)個のゲインパラメータは次の式(9)から求められる。
【0033】
【数9】
【0034】
ゲイン調整後に、出力全体のゲインが調整前と変わらないようにするためには、次式(10)でスケーリングする。
【0035】
【数10】
【0036】
Cはスケーリング係数であり、最終的なゲインパラメータの値はk’J=Ckjとなる。
【0037】
本発明によれば、リップルの補償は簡単な振幅のバランスで行われるので、アナログ回路でもデジタル回路でも高速に実現できる。
【0038】
次に、図4は、本発明者等によって判明した新たな事項に基づき構成された波動歯車装置のトルク検出装置の一例を示す概略構成図である。本例のトルク検出装置10は、コップ状可撓性外歯歯車1のダイヤフラム3の表面に、120°の間隔で3組の歪みゲージ群f(p)、f(p+120)、およびf(p+240)が貼り付けられている。各歪みゲージ群は直交する状態に貼り付けた一対の歪みゲージから構成されている。各歪みゲージ群からの出力は、それぞれ増幅器11、12、13によってゲイン調整された後に、加算器14で合成された後に、検出信号として出力される。上式(4)で規定されるようにゲイン調整を適切に行うことにより回転リップルが完全に補償された検出信号を得ることができる。
【0039】
図5には、トルク検出装置10の具体的な回路構成図の一例を示してある。検出部分は、3組の歪みゲージ群f(p)、f(p+120)およびf(p+240)を構成している3組の直交2軸型歪みゲージ(R1、R2)、(R3、R4)、(R5、R6)と、一対の固定抵抗R7、R8からなるブリッジ回路となっている。
【0040】
図6(a)には、各歪みゲージ群f(p)、f(p+120)およびf(p+240)における波動歯車装置の回転角度に対する出力変動曲線f1、f2、f3を示してある。図6(b)には、これらの出力を合成した場合の合成出力変動曲線を示してある。図6(c)には本例のトルク検出装置10によってゲイン調整された後の合成出力変動曲線を示してある。図6(b)および(c)の曲線を比較すると明らかなように、本例のトルク検出装置10からは回転リップルが補償された検出信号が得られることが分かる。
【0041】
ここで、本発明の上記基本原理によれば、図1、2に示すように、180°の角度範囲内に歪みゲージを配置すればよいが、本例のように360°の角度範囲内に配置した場合には、偏心による1回転1周期の低周波数成分も補償できるという利点がある。
【0042】
次に、図7は、回転リップルに含まれている基本波成分と二次成分を補償するためのトルク検出装置の一例を示してある。本例のトルク検出装置20は、n=2であるので5組の歪みゲージ群f(p)、f(p+72)、f(p+144)、f(p+216)、およびf(p+288)がコップ状可撓性外歯歯車1のダイヤフラム3の表面に等角度間隔で貼り付けられている。各歪みゲージ群は直交する状態に貼り付けた2枚の歪みゲージから構成されている。各歪みゲージ群からの出力はそれぞれの増幅器21〜25を介してゲイン調整された後に、加算器26に供給されて合成される。この結果、回転リップルが補償された検出信号を出力することができる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の波動歯車装置のトルク検出方法によれば、各歪みゲージの出力をゲイン調整した後に合成することにより、歪みゲージ出力に含まれている伝達トルクに関係の無い周期的な変動成分である回転リップルを補償できることが確認された。
【0044】
また、本発明では、回転リップルに含まれている各次数の成分を補償するために最低必要な歪みゲージ枚数を求め、これに基づき、必要次数までの回転リップル成分を確実に補償できる。換言すると、最小枚数の歪みゲージで効率良く回転リップルを補償することが可能になる。歪みゲージの枚数が少なくて済むので、貼り付け作業などを効率化でき、検出機構のコストの低減に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】波動歯車装置の伝達トルクを検出するために歪みゲージを用いた場合における検出信号に含まれる回転リップルを説明するための説明図である。
【図2】波動歯車装置の伝達トルクを検出するために歪みゲージを用いた場合における検出信号に含まれる回転リップルを説明するための説明図である。
【図3】回転リップルに含まれる基本周期成分をキャンセルするために最低3枚の歪みゲージが必要であることを示すための説明図である。
【図4】本発明を適用した波動歯車装置のトルク検出装置の主要部分を示す概略構成図である。
【図5】図4に示すトルク検出装置の具体的な回路構成例を示す回路ブロック図である。
【図6】(a)は、3組の各歪みゲージ群における波動歯車装置の回転角度に対する出力変動曲線を示すグラフであり、(b)は、これらの出力を合成した場合の合成出力変動曲線を示すグラフであり、図6(c)には図5のトルク検出装置によってゲイン調整された後の合成出力変動曲線を示すグラフである。
【図7】本発明を適用した波動歯車装置のトルク検出装置の主要部分を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 コップ状可撓性外歯歯車
2 円筒状胴部
3 ダイヤフラム
4 ボス
5 外歯
10 トルク検出器
11、12、13 増幅器
14 加算器
Claims (3)
- 可撓性外歯歯車を楕円状に撓めて剛性内歯歯車に対して部分的に噛み合わせ、これら両歯車の噛み合い位置を円周方向に移動させることにより、これら両歯車の歯数差に起因する相対回転をこれら両歯車の間に発生させる波動歯車装置における伝達トルクを検出するためのトルク検出方法において、
前記可撓性外歯歯車の表面に貼り付けた複数枚の歪みゲージからの出力信号のゲイン調整を行うゲイン調整工程と、
ゲイン調整後の歪みゲージ出力信号を合成する信号合成工程とを含み、
前記ゲイン調整工程では、伝達トルクに関係無く発生する前記可撓性外歯歯車の歪みに起因して歪みゲージ出力信号に含まれる回転リップルを除去あるいは抑制できるように、各歪みゲージ出力信号のゲイン調整を行うことを特徴とする波動歯車装置のトルク検出方法。 - 請求項1において、
前記可撓性外歯歯車の表面における円周方向の異なる角度位置に貼り付けた少なくとも3枚の歪みゲージから得られる検出信号を合成することを特徴とする波動歯車装置のトルク検出方法。 - 請求項1または2において、
補償したい前記回転リップル成分の次数をnとした場合に、歪みゲージの枚数を(2n+1)枚以上とすることを特徴とする波動歯車装置のトルク検出方法。
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-
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- 2003-04-22 JP JP2003116432A patent/JP2004045378A/ja active Pending
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