JP2004045268A - 温度分布測定方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】被測定部材の表面温度を高い精度で測定する為の温度分布測定方法および装置を提供する。
【解決手段】第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rとして1未満のものを用いることにより、その第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rと、その2波長間の放射強度比Rを与える光を放射する物体の温度Tとが、測定に好適な傾きを備えた一次関数に近い相関関係を示す為、被測定部材12の表面温度を高い精度で測定する為の温度分布測定方法および装置を提供することができる。
【選択図】 図6
【解決手段】第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rとして1未満のものを用いることにより、その第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rと、その2波長間の放射強度比Rを与える光を放射する物体の温度Tとが、測定に好適な傾きを備えた一次関数に近い相関関係を示す為、被測定部材12の表面温度を高い精度で測定する為の温度分布測定方法および装置を提供することができる。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえばセラミックスなどの被測定部材の表面温度を高い精度で測定する為の温度分布測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
焼成炉や加熱炉内の物体の表面温度、発熱体の表面温度などの温度分布を正確に測定することが必要とされる場合がある。この為、2色温度計の測定原理を利用して、物体から放射される光エネルギのうち予め選択された相互に異なる2波長を用いてイメージセンサにて物体の画像を検出し、検出された1対の画像の同じ部分毎に放射強度の比(放射強度比)を求め、その放射強度比に基づいて物体の表面温度を測定する装置が提案されている。たとえば、特開平7−301569号公報に記載された装置がそれである。これによれば、被測定部材表面の放射率が不明であっても、相互に異なる2つの波長毎の放射強度比と被測定部材の表面温度との間で相関関係が成立することを利用し、予め求められた関係式から実際の放射強度比に基づいて表面温度分布が算出される。
【0003】
上述の特開平7−301569号公報に記載された装置では、その図2に示されるように、被測定部材の表面温度分布を、多数の光検出素子が配列された光検出面を有する画像検出器(イメージセンサ)を用い、被測定部材からその光検出面までの光路に択一的に選択される第1光路および第2光路を設け、一方の第1光路に第1の波長を通過させるフィルタを設け且つ他方の第2光路に第2の波長を通過させるフィルタを設け、第1波長の光による被測定部材の画像と第2波長の光による被測定部材の画像とを得て、その2波長間の放射強度比から被測定部材の画像の画素毎の温度を算出するようにしている。
【0004】
ところで、2色温度計の被測定部材がアルミナあるいはシリカをはじめとするセラミックスなどの場合には、上記第1波長および第2波長を選ぶのに注意を要する。すなわち、図8は、金属表面の波長λと放射率εとの関係を示す曲線Lmeと、セラミックス表面の波長λと放射率εとの関係を示す曲線Lceとを比較して表したグラフであるが、この図に示すように、金属表面の放射率は一般的に波長の増加に伴って単調減少する規則的な変化を示すのに対して、セラミックス表面の放射率は一般的に波長の増加にともなって不規則な増加、減少を示すものが多く、かかるセラミックスなどを被測定部材としたときに、たとえば図8に示すように第1波長λ1と第2波長λ2とをとると、波長の若干のずれによって放射率が大幅に変動して誤差が生じ易くなる。そのような不具合の発生を防止する為には、被測定部毎に好適な第1波長および第2波長を選ぶべきであり、上述のフィルタを適宜交換することで誤差の少ない温度測定をおこなうことができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、第1波長および第2波長の組み合わせを様々に変化させた際に、2波長間の放射強度比と表面温度との相関関係が新たに誤差を発生させる原因となる場合が考えられる。すなわち、予め与えられる2波長間の放射強度比と表面温度との相関関係において、放射強度比の変化に伴う表面温度の変化が著しい場合には、被測定部材から検出される放射強度比の若干のずれによって、それに対応する表面温度が大幅に変動する為、温度分布測定に際しての誤差が生じ易くなる。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、被測定部材の表面温度を高い精度で測定する為の温度分布測定方法および装置を提供することにある。
【0007】
本発明者等は、かかる目的を達成する為に鋭意研究を重ねた結果、第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比と、その2波長間の放射強度比を与える光を放射する物体の温度との相関関係について、第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比を限定的に定義することで、温度分布測定に好適に用いられる関係が得られることを知覚するに至った。
【0008】
【課題を解決するための第1の手段】
すなわち、前記目的を達成する為に、本第1発明の要旨とするところは、被測定部材の表面から放射される光のうちから選択された第1波長および第2波長の光を検出し、その第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比と、その2波長間の放射強度比を与える光を放射する物体の温度との相関関係を用いて前記被測定部材表面の温度分布を測定する温度分布測定方法であって、前記2波長間の放射強度比は1未満となるように定義されていることを特徴とするものである。
【0009】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成する為に、本第2発明の要旨とするところは、被測定部材の表面から放射される光のうちから選択された第1波長および第2波長の光を検出し、その第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比と、その2波長間の放射強度比を与える光を放射する物体の温度との相関関係を用いて前記被測定部材表面の温度分布を測定する温度分布測定装置であって、前記2波長間の放射強度比は1未満となるように定義されていることを特徴とするものである。
【0010】
【第1発明および第2発明の効果】
このようにすれば、第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比として1未満のものを用いることにより、その第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比と、その2波長間の放射強度比を与える光を放射する物体の温度とが、測定に好適な傾きを備えた一次関数に近い相関関係を示す為、被測定部材の表面温度を高い精度で測定する為の温度分布測定方法および装置を提供することができる。
【0011】
【第1発明および第2発明の他の態様】
ここで、好適には、本第1発明および第2発明の被測定部材はセラミックスを含むものである。このようにすれば、被測定部材にあわせて第1波長および第2波長を適宜変更する必要があるセラミックスを含む被測定部材表面の温度分布測定に際して、誤差の発生を好適に防止する温度分布測定方法および装置を提供することができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例である温度分布測定装置10の構成を説明する図である。図1において、焼成炉、加熱炉などの炉内において加熱されている被測定部材12の表面から放射された光は、ハーフミラー(ビームスプリッタ)14により第1光路16および第2光路18に2分されるようになっている。第1光路16および第2光路18はミラー20、22によって略直角に曲げられた後ハーフミラー24によって合成され、多数の光検出素子が配列された光検出面26を備えたCCD素子28と、その光検出面26に被測定部材12の画像を結像させるレンズ装置30とを有する画像検出器32に入射させられるようになっている。
【0014】
上記第1光路16および第2光路18には、たとえば中心波長600nm且つ半値幅10nm程度の第1波長(帯)λ1の光を通過させる第1フィルタ34、およびたとえば中心波長650nm且つ半値幅10nm程度の第2波長(帯)λ2の光を通過させる第2フィルタ36がそれぞれ介挿されている。上記第1フィルタ34および第2フィルタ36は、光波干渉を利用して所定の波長帯の光を通過させる所謂干渉フィルタから構成されている。
【0015】
上記第1波長λ1および第1波長λ2は、たとえば以下のようにして決定されている。先ず、プランクの式により測定温度範囲の最低温度における黒体の波長と放射(輻射)強度との間の関係すなわち図2に示す曲線L1が求められ、次いで室温における被測定部材12からのバックグラウンド放射強度EBGが測定される。次いで、そのバックグラウンド放射強度EBGの3倍値すなわち3×EBGを上まわる曲線L1上の任意の1点が第1波長λ1として決定される。検出誤差以上の強度を用いて測定精度を高める為である。次に、第1波長λ1の1/12の波長以下の波長Δλだけたとえば第1波長λ1を600nmとすれば50nm(=Δλ)だけ第1波長λ1から上または下へずらした波長たとえば650nmが第2波長λ2として決定される。後述の2色温度計の原理を示す近似式(式1)を成立させる為である。なお、第1波長λ1および第2波長λ2は、放射強度の測定精度を維持する為に相互の波長が重ならないように、以下において決定する半値幅の2倍以上の差が設けられるようにする。そして、上記第1波長λ1および第2波長λ2は、単色光の性質を維持する為に、その中心波長の1/20以下、たとえば20nm程度以下の半値幅が用いられる。また、第1フィルタ34および第2フィルタ36は、それらの透過率の差が30%以内となるように構成されている。透過率の差が30%よりも大きくなると、輝度の低い側の波長において感度が低下してS/N比が下がり、表示温度の精度が低下する。
【0016】
図1の光学系において、たとえばミラー20、22によってハーフミラー24から画像検出器32までの間において第1光路16と第2光路18とが僅かにずらされることにより、CCD素子28の光検出面26において波長の異なる2画像が結像されるようになっている。すなわち、前記画像検出器32においては、たとえば図3に示すように、被測定部材12の表面から放射される光のうちから第1フィルタ34により選択された第1波長λ1の被測定部材12の第1画像G1が光検出面26上の第1位置B1に結像され、且つ被測定部材12の表面から放射される光のうちから第2フィルタ36により選択された第2波長λ2の被測定部材12の第2画像G2が、光検出面26上の上記第1位置B1とは異なる第2位置B2に結像させられるようになっている。これにより、光検出面26に配列された多数の光検出素子により、上記第1画像G1の各部位の放射強度および第2画像G2の各部位の放射強度が素子単位すなわち画素単位で検出されるようになっている。
【0017】
演算制御装置40は、たとえばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェイスなどを含む所謂マイクロコンピュータであって、CPUは予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号、すなわち上記光検出面26に配列された多数の光検出素子からの信号を処理し、画像表示器42に被測定部材12の表面温度分布を表示させる。
【0018】
図4は、上記演算制御装置40の演算制御作動の要部を説明するフローチャートである。ステップ(以下、ステップを省略する)S1では、光検出面26に配列された多数の光検出素子からの信号により、第1画像G1の各部位の放射強度E1ijおよび第2画像G2の各部位の放射強度E2ijが素子単位すなわち画素単位で読み込まれる。次に、S2では、光検出面26内の第1位置B1に結像された第1画像G1および第2位置B2に結像された第2画像G2のうちの同じ部分に位置する光検出素子対がそれぞれ検出する第1波長λ1の放射強度E1i jと第2波長λ2の放射強度E2ijとの放射強度比Rij(=E1ij/E2ij)が算出される。
【0019】
次に、S3において、予め演算制御装置40に記憶された関係に基づいて上記画素毎に算出された実際の放射強度比Rijより、被測定部材12の画像を構成する画素毎の温度Tijが導出される。温度Tijの導出に用いられる関係は、たとえば式1に示す2色温度計の測定原理を示す近似式から得られるものである。式1は、放射率を用いなくとも異なる2波長λ1およびλ2における放射強度比Rから被測定部材12の表面温度Tを求めることができるように導かれたものである。以下の式において、λ2>λ1であって、Tは絶対温度を、C1は放射(Planck)第1定数、C2は放射(Planck)第2定数をそれぞれ示している。
【0020】
(式1)
R=(λ2/λ1)5exp[(C2/T)・(1/λ2−1/λ1)]
【0021】
上式1は、以下のようにして求められる。すなわち、波長λにおいて単位時間、単位面積あたりに黒体から放射される放射強度(エネルギ)Ebおよびλはプランク(Planck)の式である式2に従うことが知られている。また、exp(C2/λT)>>1である場合には、ウイーン(Wien)の近似式である式3が成り立つことが知られている。通常の物体は灰色であると考えることができる為、放射率εを代入して書き換えることにより式4が導出される。この式4を用いて2波長λ1およびλ2の放射強度E1およびE2の比Rを求めると式5が導かれる。上記2波長λ1およびλ2が近接している場合には、放射率εの依存性を無視することができ、ε1=ε2と近似することができるので、前記式1が得られる。これによれば、放射率εの異なる物体であっても、それに影響なく温度Tを求めることができるのである。
【0022】
(式2)
Eb=C1/λ5[exp(C2/λT)−1]
(式3)
Eb=C1exp(−C2/λT)/λ5
(式4)
E=ε・C1exp(−C2/λT)/λ5
(式5)
R=(ε1/ε2)・(λ2/λ1)5exp[(C2/T)・(1/λ2−1/λ1)]
【0023】
ここで、第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rと、その2波長間の放射強度比Rを与える光を放射する物体の温度Tとの相関関係は、Rの定義によってその性質が大幅に異なってくる。図5は、第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rが1以上となるように定義された第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rと、その2波長間の放射強度比Rを与える光を放射する物体の温度Tとの相関関係を示すグラフである。この図において、(1)f1は、λ1を500nm、λ2を600nmとした場合、(2)f2は、λ1を600nm、λ2を700nmとした場合、(3)f3は、λ1を500nm、λ2を550nmとした場合、(4)f4は、λ1を550nm、λ2を600nmとした場合、(5)f5は、λ1を600nm、λ2を650nmとした場合、(6)f6は、λ1を650nm、λ2を700nmとした場合における関係をそれぞれ示す。なお、ここでは放射強度比Rを、第2波長λ2の放射強度E2を第1波長λ1の放射強度E1で除した値すなわちR21=E2/E1と定義した。そのように放射強度比が定義された関係について、f1では放射強度比Rの増加に伴って温度Tが比較的なだらかに減少している為、温度分布測定に好適に用いられるが、f2〜f6では放射強度比Rの増加に伴って温度Tが比較的急激に減少しており、被測定部材12から検出される放射強度比Rの若干のずれによって、それに対応する温度Tが大幅に変動する為、温度分布測定に際しての誤差が生じ易くなる。
【0024】
一方、本実施例の温度分布測定方法および装置は、第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rを1未満となるように予め定義するものである。図6は、第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rが1未満となるように定義された第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rと、その2波長間の放射強度比Rを与える光を放射する物体の温度Tとの相関関係を示すグラフである。この図において、(1)fp1は、λ1を500nm、λ2を600nmとした場合、(2)fp2は、λ1を600nm、λ2を700nmとした場合、(3)fp3は、λ1を500nm、λ2を550nmとした場合、(4)fp4は、λ1を550nm、λ2を600nmとした場合、(5)fp5は、λ1を600nm、λ2を650nmとした場合、(6)fp6は、λ1を650nm、λ2を700nmとした場合における関係をそれぞれ示す。なお、ここでは放射強度比Rを、第1波長λ1の放射強度E1を第2波長λ2の放射強度E2で除した値すなわちR12=E1/E2と定義した。そのように放射強度比が定義された関係については、fp1〜fp6の何れもが測定に好適な傾きを備えた一次関数に近い相関関係を示す。すなわち、第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rと、その2波長間の放射強度比Rを与える光を放射する物体の温度Tとの相関関係が1対1に定まり易い為、温度分布測定に際しての誤差が生じ難くなる。
【0025】
とりわけ、本実施例の温度分布測定方法および装置は、セラミックスを被測定部材12とする温度分布測定、あるいはセラミックスを含む被測定部材12の温度分布を測定する為に好適に用いられるものである。たとえば、セラミックス基板上に金属電極などが設けられた基板の焼成時の温度分布測定では、金属表面の放射率εは一般的に波長の増加に伴って単調減少する規則的な変化を示すのに対して、セラミックス表面の放射率εは一般的に波長の増加にともなって不規則な増加、減少を示すものが多い為、被測定部材12に含まれるセラミックスにあわせて好適な第1波長λ1および第2波長λ2を選ぶべきであるが、本発明がかかる温度分布測定に適用されることで、被測定部材12にあわせて第1波長λ1および第2波長λ2を適宜変更する必要があるセラミックスを含む被測定部材12の表面の温度分布測定に際して、誤差の発生を好適に防止することができる。
【0026】
以上のようにして、たとえば図6に示す関係から被測定部材12の画像を構成する画素毎の温度Tijが算出されると、続くS4において、予め演算制御装置40に記憶された関係から上記画素毎に算出された実際の温度Tijに基づいて被測定部材12の表面の温度分布が表示される。その関係としては、たとえば図6に示す温度Tと表示色との関係が用いられる。この場合には、被測定部材12の表面の温度分布が予め定められた温度色により表示される。
【0027】
以下、図1に示す光学系を用いて本発明者等がおこなった実験例について説明する。図1に示す光学系において、日本光学製の望遠レンズ(AF Zoom Nikkor ED 70−300mm F4−5.6D)付CCDカメラ(Santa Barbara Instruments Group社製 ST−7)を画像検出器32として、ハーフミラー14、24はBK7から構成されたシグマ光機社製のものであり、クロムプレートによる可視光用であって30%反射、30%透過の性質を備えたものである。ミラー20、22はシグマ光機社製のものであり、アルミ平面ミラーであってBK7から構成されている。第1フィルタ34および第2フィルタ36はシグマ光機社製のものであり、第1フィルタ34は500あるいは600nm且つ半値幅10nm、第2フィルタ36は550あるいは650nm且つ半値幅10nmのものを用いた。そして、被測定部材12としてアルミナ基板(50×50×0.8mm)を、外部から内部の観察が可能となるように観察窓を設けた加熱炉の中央に配置し、室温から10℃/分の速度で1000℃まで昇温させ、1000℃にて1時間保持した後に上記アルミナ基板表面の温度分布を測定した。かかる測定と同時に、上記アルミナ基板の温度を熱電対によって測定し、図1の光学系を用いた温度測定結果の熱電対の指示温度からのずれを誤差として評価した。なお、上記アルミナ基板の中央部は熱電対の指示温度で1000℃で一定に保たれていることを確認した。さらに、同様機器および手段を用いて、室温から10℃/分の速度で800℃まで昇温させ、800℃にて1時間保持した後に上記アルミナ基板表面の温度分布を測定した。第1フィルタ34および第2フィルタ36を交換することにより、第1波長λ1および第2波長λ2と、2波長間の放射強度比Rの定義を様々に変化させてかかる実験をおこなった結果を以下に示す。
【0028】
【0029】
上述の試験結果において、本発明の実施例である実施例試料1あるいは実施例試料2のように、第1波長λ1および第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rが1未満となるように、それぞれ第1波長λ1の放射強度E1を第2波長λ2の放射強度E2で除した値すなわちR12=E1/E2と定義したものでは、熱電対指示温度からの誤差が±5℃の範囲内とされた。一方、比較例試料1あるいは比較例試料2のように、第1波長λ1および第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rが1以上となるように、それぞれ第2波長λ2の放射強度E2を第1波長λ1の放射強度E1で除した値すなわちR21=E2/E1と定義したものでは、λ1を500nm、λ2を550nmとして800℃における温度分布を測定したものが±5℃の範囲内に収まった他は、何れも熱電対指示温度からの誤差が±10℃となった。すなわち、本実施例の温度分布測定では、従来の温度分布測定と比較して、誤差が略半分に抑えられていることが確認された。
【0030】
このように、本実施例によれば、第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rとして1未満のものを用いることにより、その第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rと、その2波長間の放射強度比Rを与える光を放射する物体の温度Tとが、測定に好適な傾きを備えた一次関数に近い相関関係を示す為、被測定部材12の表面温度を高い精度で測定する為の温度分布測定方法および装置を提供することができる。
【0031】
また、好適には、本実施例の被測定部材12はセラミックスを含むものである為、被測定部材12にあわせて第1波長λ1および第2波長λ2を適宜変更する必要があるセラミックスを含む被測定部材12の表面の温度分布測定に際して、誤差の発生を好適に防止する温度分布測定方法および装置を提供することができる。
【0032】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに別の態様においても実施される。
【0033】
たとえば、前述の実施例において、第1波長λ1および第2波長λ2は、500〜700nmの範囲内すなわち可視光領域の値をとるものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば、第1波長λ1および第2波長λ2が、700nm以上の赤外線領域あるいは500nm未満の紫外線領域の値をとる温度分布測定においても、本発明は好適に適用されるものである。
【0034】
また、前述の図4のS4では、被測定部材12の表面温度が色によって表示されていたが、等高線や濃淡などによって表示されても差し支えない。
【0035】
また、前述の実施例の画像検出器32では、光検出面26を備えたCCD素子28が用いられていたが、カラー撮像管など他の光検出素子が用いられてもよい。
【0036】
また、前述の実験例では、本発明の温度分布測定はアルミナ基板の温度分布測定に用いられていたが、本発明はセラミックスの温度分布測定に限定されるものでは当然になく、たとえば、窯業の焼成、絵付け、電子部品の加熱処理、鉄鋼の加熱処理などといった様々な温度分布測定に好適に用いられるものである。
【0037】
その他一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更がくわえられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である温度分布測定装置の構成を説明する概略図である。
【図2】図1の第1フィルタの波長と第2フィルタの波長を決定する方法を説明する図である。
【図3】図1の画像検出装置の光検出面上に結像された第1画像および第2画像を説明する図である。
【図4】図1の演算制御装置の制御動作の要部を説明するフローチャートである。
【図5】第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比が1以上となるように定義された第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比と、その2波長間の放射強度比を与える光を放射する物体の温度との相関関係を示すグラフである。
【図6】第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比が1未満となるように定義された第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比と、その2波長間の放射強度比を与える光を放射する物体の温度との相関関係を示すグラフである。
【図7】演算制御装置により導出された表面温度から表示色を決定する為に用いられる関係を示す図である。
【図8】金属表面の波長と放射率との関係を示す曲線と、セラミックス表面の波長と放射率との関係を示す曲線とを比較して表したグラフである。
【符号の説明】
10:温度分布測定装置
12:被測定部材
R:放射強度比
T:温度
λ1:第1波長
λ2:第2波長
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえばセラミックスなどの被測定部材の表面温度を高い精度で測定する為の温度分布測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
焼成炉や加熱炉内の物体の表面温度、発熱体の表面温度などの温度分布を正確に測定することが必要とされる場合がある。この為、2色温度計の測定原理を利用して、物体から放射される光エネルギのうち予め選択された相互に異なる2波長を用いてイメージセンサにて物体の画像を検出し、検出された1対の画像の同じ部分毎に放射強度の比(放射強度比)を求め、その放射強度比に基づいて物体の表面温度を測定する装置が提案されている。たとえば、特開平7−301569号公報に記載された装置がそれである。これによれば、被測定部材表面の放射率が不明であっても、相互に異なる2つの波長毎の放射強度比と被測定部材の表面温度との間で相関関係が成立することを利用し、予め求められた関係式から実際の放射強度比に基づいて表面温度分布が算出される。
【0003】
上述の特開平7−301569号公報に記載された装置では、その図2に示されるように、被測定部材の表面温度分布を、多数の光検出素子が配列された光検出面を有する画像検出器(イメージセンサ)を用い、被測定部材からその光検出面までの光路に択一的に選択される第1光路および第2光路を設け、一方の第1光路に第1の波長を通過させるフィルタを設け且つ他方の第2光路に第2の波長を通過させるフィルタを設け、第1波長の光による被測定部材の画像と第2波長の光による被測定部材の画像とを得て、その2波長間の放射強度比から被測定部材の画像の画素毎の温度を算出するようにしている。
【0004】
ところで、2色温度計の被測定部材がアルミナあるいはシリカをはじめとするセラミックスなどの場合には、上記第1波長および第2波長を選ぶのに注意を要する。すなわち、図8は、金属表面の波長λと放射率εとの関係を示す曲線Lmeと、セラミックス表面の波長λと放射率εとの関係を示す曲線Lceとを比較して表したグラフであるが、この図に示すように、金属表面の放射率は一般的に波長の増加に伴って単調減少する規則的な変化を示すのに対して、セラミックス表面の放射率は一般的に波長の増加にともなって不規則な増加、減少を示すものが多く、かかるセラミックスなどを被測定部材としたときに、たとえば図8に示すように第1波長λ1と第2波長λ2とをとると、波長の若干のずれによって放射率が大幅に変動して誤差が生じ易くなる。そのような不具合の発生を防止する為には、被測定部毎に好適な第1波長および第2波長を選ぶべきであり、上述のフィルタを適宜交換することで誤差の少ない温度測定をおこなうことができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、第1波長および第2波長の組み合わせを様々に変化させた際に、2波長間の放射強度比と表面温度との相関関係が新たに誤差を発生させる原因となる場合が考えられる。すなわち、予め与えられる2波長間の放射強度比と表面温度との相関関係において、放射強度比の変化に伴う表面温度の変化が著しい場合には、被測定部材から検出される放射強度比の若干のずれによって、それに対応する表面温度が大幅に変動する為、温度分布測定に際しての誤差が生じ易くなる。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、被測定部材の表面温度を高い精度で測定する為の温度分布測定方法および装置を提供することにある。
【0007】
本発明者等は、かかる目的を達成する為に鋭意研究を重ねた結果、第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比と、その2波長間の放射強度比を与える光を放射する物体の温度との相関関係について、第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比を限定的に定義することで、温度分布測定に好適に用いられる関係が得られることを知覚するに至った。
【0008】
【課題を解決するための第1の手段】
すなわち、前記目的を達成する為に、本第1発明の要旨とするところは、被測定部材の表面から放射される光のうちから選択された第1波長および第2波長の光を検出し、その第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比と、その2波長間の放射強度比を与える光を放射する物体の温度との相関関係を用いて前記被測定部材表面の温度分布を測定する温度分布測定方法であって、前記2波長間の放射強度比は1未満となるように定義されていることを特徴とするものである。
【0009】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成する為に、本第2発明の要旨とするところは、被測定部材の表面から放射される光のうちから選択された第1波長および第2波長の光を検出し、その第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比と、その2波長間の放射強度比を与える光を放射する物体の温度との相関関係を用いて前記被測定部材表面の温度分布を測定する温度分布測定装置であって、前記2波長間の放射強度比は1未満となるように定義されていることを特徴とするものである。
【0010】
【第1発明および第2発明の効果】
このようにすれば、第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比として1未満のものを用いることにより、その第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比と、その2波長間の放射強度比を与える光を放射する物体の温度とが、測定に好適な傾きを備えた一次関数に近い相関関係を示す為、被測定部材の表面温度を高い精度で測定する為の温度分布測定方法および装置を提供することができる。
【0011】
【第1発明および第2発明の他の態様】
ここで、好適には、本第1発明および第2発明の被測定部材はセラミックスを含むものである。このようにすれば、被測定部材にあわせて第1波長および第2波長を適宜変更する必要があるセラミックスを含む被測定部材表面の温度分布測定に際して、誤差の発生を好適に防止する温度分布測定方法および装置を提供することができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例である温度分布測定装置10の構成を説明する図である。図1において、焼成炉、加熱炉などの炉内において加熱されている被測定部材12の表面から放射された光は、ハーフミラー(ビームスプリッタ)14により第1光路16および第2光路18に2分されるようになっている。第1光路16および第2光路18はミラー20、22によって略直角に曲げられた後ハーフミラー24によって合成され、多数の光検出素子が配列された光検出面26を備えたCCD素子28と、その光検出面26に被測定部材12の画像を結像させるレンズ装置30とを有する画像検出器32に入射させられるようになっている。
【0014】
上記第1光路16および第2光路18には、たとえば中心波長600nm且つ半値幅10nm程度の第1波長(帯)λ1の光を通過させる第1フィルタ34、およびたとえば中心波長650nm且つ半値幅10nm程度の第2波長(帯)λ2の光を通過させる第2フィルタ36がそれぞれ介挿されている。上記第1フィルタ34および第2フィルタ36は、光波干渉を利用して所定の波長帯の光を通過させる所謂干渉フィルタから構成されている。
【0015】
上記第1波長λ1および第1波長λ2は、たとえば以下のようにして決定されている。先ず、プランクの式により測定温度範囲の最低温度における黒体の波長と放射(輻射)強度との間の関係すなわち図2に示す曲線L1が求められ、次いで室温における被測定部材12からのバックグラウンド放射強度EBGが測定される。次いで、そのバックグラウンド放射強度EBGの3倍値すなわち3×EBGを上まわる曲線L1上の任意の1点が第1波長λ1として決定される。検出誤差以上の強度を用いて測定精度を高める為である。次に、第1波長λ1の1/12の波長以下の波長Δλだけたとえば第1波長λ1を600nmとすれば50nm(=Δλ)だけ第1波長λ1から上または下へずらした波長たとえば650nmが第2波長λ2として決定される。後述の2色温度計の原理を示す近似式(式1)を成立させる為である。なお、第1波長λ1および第2波長λ2は、放射強度の測定精度を維持する為に相互の波長が重ならないように、以下において決定する半値幅の2倍以上の差が設けられるようにする。そして、上記第1波長λ1および第2波長λ2は、単色光の性質を維持する為に、その中心波長の1/20以下、たとえば20nm程度以下の半値幅が用いられる。また、第1フィルタ34および第2フィルタ36は、それらの透過率の差が30%以内となるように構成されている。透過率の差が30%よりも大きくなると、輝度の低い側の波長において感度が低下してS/N比が下がり、表示温度の精度が低下する。
【0016】
図1の光学系において、たとえばミラー20、22によってハーフミラー24から画像検出器32までの間において第1光路16と第2光路18とが僅かにずらされることにより、CCD素子28の光検出面26において波長の異なる2画像が結像されるようになっている。すなわち、前記画像検出器32においては、たとえば図3に示すように、被測定部材12の表面から放射される光のうちから第1フィルタ34により選択された第1波長λ1の被測定部材12の第1画像G1が光検出面26上の第1位置B1に結像され、且つ被測定部材12の表面から放射される光のうちから第2フィルタ36により選択された第2波長λ2の被測定部材12の第2画像G2が、光検出面26上の上記第1位置B1とは異なる第2位置B2に結像させられるようになっている。これにより、光検出面26に配列された多数の光検出素子により、上記第1画像G1の各部位の放射強度および第2画像G2の各部位の放射強度が素子単位すなわち画素単位で検出されるようになっている。
【0017】
演算制御装置40は、たとえばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェイスなどを含む所謂マイクロコンピュータであって、CPUは予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号、すなわち上記光検出面26に配列された多数の光検出素子からの信号を処理し、画像表示器42に被測定部材12の表面温度分布を表示させる。
【0018】
図4は、上記演算制御装置40の演算制御作動の要部を説明するフローチャートである。ステップ(以下、ステップを省略する)S1では、光検出面26に配列された多数の光検出素子からの信号により、第1画像G1の各部位の放射強度E1ijおよび第2画像G2の各部位の放射強度E2ijが素子単位すなわち画素単位で読み込まれる。次に、S2では、光検出面26内の第1位置B1に結像された第1画像G1および第2位置B2に結像された第2画像G2のうちの同じ部分に位置する光検出素子対がそれぞれ検出する第1波長λ1の放射強度E1i jと第2波長λ2の放射強度E2ijとの放射強度比Rij(=E1ij/E2ij)が算出される。
【0019】
次に、S3において、予め演算制御装置40に記憶された関係に基づいて上記画素毎に算出された実際の放射強度比Rijより、被測定部材12の画像を構成する画素毎の温度Tijが導出される。温度Tijの導出に用いられる関係は、たとえば式1に示す2色温度計の測定原理を示す近似式から得られるものである。式1は、放射率を用いなくとも異なる2波長λ1およびλ2における放射強度比Rから被測定部材12の表面温度Tを求めることができるように導かれたものである。以下の式において、λ2>λ1であって、Tは絶対温度を、C1は放射(Planck)第1定数、C2は放射(Planck)第2定数をそれぞれ示している。
【0020】
(式1)
R=(λ2/λ1)5exp[(C2/T)・(1/λ2−1/λ1)]
【0021】
上式1は、以下のようにして求められる。すなわち、波長λにおいて単位時間、単位面積あたりに黒体から放射される放射強度(エネルギ)Ebおよびλはプランク(Planck)の式である式2に従うことが知られている。また、exp(C2/λT)>>1である場合には、ウイーン(Wien)の近似式である式3が成り立つことが知られている。通常の物体は灰色であると考えることができる為、放射率εを代入して書き換えることにより式4が導出される。この式4を用いて2波長λ1およびλ2の放射強度E1およびE2の比Rを求めると式5が導かれる。上記2波長λ1およびλ2が近接している場合には、放射率εの依存性を無視することができ、ε1=ε2と近似することができるので、前記式1が得られる。これによれば、放射率εの異なる物体であっても、それに影響なく温度Tを求めることができるのである。
【0022】
(式2)
Eb=C1/λ5[exp(C2/λT)−1]
(式3)
Eb=C1exp(−C2/λT)/λ5
(式4)
E=ε・C1exp(−C2/λT)/λ5
(式5)
R=(ε1/ε2)・(λ2/λ1)5exp[(C2/T)・(1/λ2−1/λ1)]
【0023】
ここで、第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rと、その2波長間の放射強度比Rを与える光を放射する物体の温度Tとの相関関係は、Rの定義によってその性質が大幅に異なってくる。図5は、第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rが1以上となるように定義された第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rと、その2波長間の放射強度比Rを与える光を放射する物体の温度Tとの相関関係を示すグラフである。この図において、(1)f1は、λ1を500nm、λ2を600nmとした場合、(2)f2は、λ1を600nm、λ2を700nmとした場合、(3)f3は、λ1を500nm、λ2を550nmとした場合、(4)f4は、λ1を550nm、λ2を600nmとした場合、(5)f5は、λ1を600nm、λ2を650nmとした場合、(6)f6は、λ1を650nm、λ2を700nmとした場合における関係をそれぞれ示す。なお、ここでは放射強度比Rを、第2波長λ2の放射強度E2を第1波長λ1の放射強度E1で除した値すなわちR21=E2/E1と定義した。そのように放射強度比が定義された関係について、f1では放射強度比Rの増加に伴って温度Tが比較的なだらかに減少している為、温度分布測定に好適に用いられるが、f2〜f6では放射強度比Rの増加に伴って温度Tが比較的急激に減少しており、被測定部材12から検出される放射強度比Rの若干のずれによって、それに対応する温度Tが大幅に変動する為、温度分布測定に際しての誤差が生じ易くなる。
【0024】
一方、本実施例の温度分布測定方法および装置は、第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rを1未満となるように予め定義するものである。図6は、第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rが1未満となるように定義された第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rと、その2波長間の放射強度比Rを与える光を放射する物体の温度Tとの相関関係を示すグラフである。この図において、(1)fp1は、λ1を500nm、λ2を600nmとした場合、(2)fp2は、λ1を600nm、λ2を700nmとした場合、(3)fp3は、λ1を500nm、λ2を550nmとした場合、(4)fp4は、λ1を550nm、λ2を600nmとした場合、(5)fp5は、λ1を600nm、λ2を650nmとした場合、(6)fp6は、λ1を650nm、λ2を700nmとした場合における関係をそれぞれ示す。なお、ここでは放射強度比Rを、第1波長λ1の放射強度E1を第2波長λ2の放射強度E2で除した値すなわちR12=E1/E2と定義した。そのように放射強度比が定義された関係については、fp1〜fp6の何れもが測定に好適な傾きを備えた一次関数に近い相関関係を示す。すなわち、第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rと、その2波長間の放射強度比Rを与える光を放射する物体の温度Tとの相関関係が1対1に定まり易い為、温度分布測定に際しての誤差が生じ難くなる。
【0025】
とりわけ、本実施例の温度分布測定方法および装置は、セラミックスを被測定部材12とする温度分布測定、あるいはセラミックスを含む被測定部材12の温度分布を測定する為に好適に用いられるものである。たとえば、セラミックス基板上に金属電極などが設けられた基板の焼成時の温度分布測定では、金属表面の放射率εは一般的に波長の増加に伴って単調減少する規則的な変化を示すのに対して、セラミックス表面の放射率εは一般的に波長の増加にともなって不規則な増加、減少を示すものが多い為、被測定部材12に含まれるセラミックスにあわせて好適な第1波長λ1および第2波長λ2を選ぶべきであるが、本発明がかかる温度分布測定に適用されることで、被測定部材12にあわせて第1波長λ1および第2波長λ2を適宜変更する必要があるセラミックスを含む被測定部材12の表面の温度分布測定に際して、誤差の発生を好適に防止することができる。
【0026】
以上のようにして、たとえば図6に示す関係から被測定部材12の画像を構成する画素毎の温度Tijが算出されると、続くS4において、予め演算制御装置40に記憶された関係から上記画素毎に算出された実際の温度Tijに基づいて被測定部材12の表面の温度分布が表示される。その関係としては、たとえば図6に示す温度Tと表示色との関係が用いられる。この場合には、被測定部材12の表面の温度分布が予め定められた温度色により表示される。
【0027】
以下、図1に示す光学系を用いて本発明者等がおこなった実験例について説明する。図1に示す光学系において、日本光学製の望遠レンズ(AF Zoom Nikkor ED 70−300mm F4−5.6D)付CCDカメラ(Santa Barbara Instruments Group社製 ST−7)を画像検出器32として、ハーフミラー14、24はBK7から構成されたシグマ光機社製のものであり、クロムプレートによる可視光用であって30%反射、30%透過の性質を備えたものである。ミラー20、22はシグマ光機社製のものであり、アルミ平面ミラーであってBK7から構成されている。第1フィルタ34および第2フィルタ36はシグマ光機社製のものであり、第1フィルタ34は500あるいは600nm且つ半値幅10nm、第2フィルタ36は550あるいは650nm且つ半値幅10nmのものを用いた。そして、被測定部材12としてアルミナ基板(50×50×0.8mm)を、外部から内部の観察が可能となるように観察窓を設けた加熱炉の中央に配置し、室温から10℃/分の速度で1000℃まで昇温させ、1000℃にて1時間保持した後に上記アルミナ基板表面の温度分布を測定した。かかる測定と同時に、上記アルミナ基板の温度を熱電対によって測定し、図1の光学系を用いた温度測定結果の熱電対の指示温度からのずれを誤差として評価した。なお、上記アルミナ基板の中央部は熱電対の指示温度で1000℃で一定に保たれていることを確認した。さらに、同様機器および手段を用いて、室温から10℃/分の速度で800℃まで昇温させ、800℃にて1時間保持した後に上記アルミナ基板表面の温度分布を測定した。第1フィルタ34および第2フィルタ36を交換することにより、第1波長λ1および第2波長λ2と、2波長間の放射強度比Rの定義を様々に変化させてかかる実験をおこなった結果を以下に示す。
【0028】
【0029】
上述の試験結果において、本発明の実施例である実施例試料1あるいは実施例試料2のように、第1波長λ1および第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rが1未満となるように、それぞれ第1波長λ1の放射強度E1を第2波長λ2の放射強度E2で除した値すなわちR12=E1/E2と定義したものでは、熱電対指示温度からの誤差が±5℃の範囲内とされた。一方、比較例試料1あるいは比較例試料2のように、第1波長λ1および第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rが1以上となるように、それぞれ第2波長λ2の放射強度E2を第1波長λ1の放射強度E1で除した値すなわちR21=E2/E1と定義したものでは、λ1を500nm、λ2を550nmとして800℃における温度分布を測定したものが±5℃の範囲内に収まった他は、何れも熱電対指示温度からの誤差が±10℃となった。すなわち、本実施例の温度分布測定では、従来の温度分布測定と比較して、誤差が略半分に抑えられていることが確認された。
【0030】
このように、本実施例によれば、第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rとして1未満のものを用いることにより、その第1波長λ1と第2波長λ2の2波長間の放射強度比Rと、その2波長間の放射強度比Rを与える光を放射する物体の温度Tとが、測定に好適な傾きを備えた一次関数に近い相関関係を示す為、被測定部材12の表面温度を高い精度で測定する為の温度分布測定方法および装置を提供することができる。
【0031】
また、好適には、本実施例の被測定部材12はセラミックスを含むものである為、被測定部材12にあわせて第1波長λ1および第2波長λ2を適宜変更する必要があるセラミックスを含む被測定部材12の表面の温度分布測定に際して、誤差の発生を好適に防止する温度分布測定方法および装置を提供することができる。
【0032】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに別の態様においても実施される。
【0033】
たとえば、前述の実施例において、第1波長λ1および第2波長λ2は、500〜700nmの範囲内すなわち可視光領域の値をとるものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば、第1波長λ1および第2波長λ2が、700nm以上の赤外線領域あるいは500nm未満の紫外線領域の値をとる温度分布測定においても、本発明は好適に適用されるものである。
【0034】
また、前述の図4のS4では、被測定部材12の表面温度が色によって表示されていたが、等高線や濃淡などによって表示されても差し支えない。
【0035】
また、前述の実施例の画像検出器32では、光検出面26を備えたCCD素子28が用いられていたが、カラー撮像管など他の光検出素子が用いられてもよい。
【0036】
また、前述の実験例では、本発明の温度分布測定はアルミナ基板の温度分布測定に用いられていたが、本発明はセラミックスの温度分布測定に限定されるものでは当然になく、たとえば、窯業の焼成、絵付け、電子部品の加熱処理、鉄鋼の加熱処理などといった様々な温度分布測定に好適に用いられるものである。
【0037】
その他一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更がくわえられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である温度分布測定装置の構成を説明する概略図である。
【図2】図1の第1フィルタの波長と第2フィルタの波長を決定する方法を説明する図である。
【図3】図1の画像検出装置の光検出面上に結像された第1画像および第2画像を説明する図である。
【図4】図1の演算制御装置の制御動作の要部を説明するフローチャートである。
【図5】第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比が1以上となるように定義された第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比と、その2波長間の放射強度比を与える光を放射する物体の温度との相関関係を示すグラフである。
【図6】第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比が1未満となるように定義された第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比と、その2波長間の放射強度比を与える光を放射する物体の温度との相関関係を示すグラフである。
【図7】演算制御装置により導出された表面温度から表示色を決定する為に用いられる関係を示す図である。
【図8】金属表面の波長と放射率との関係を示す曲線と、セラミックス表面の波長と放射率との関係を示す曲線とを比較して表したグラフである。
【符号の説明】
10:温度分布測定装置
12:被測定部材
R:放射強度比
T:温度
λ1:第1波長
λ2:第2波長
Claims (4)
- 被測定部材の表面から放射される光のうちから選択された第1波長および第2波長の光を検出し、該第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比と、該2波長間の放射強度比を与える光を放射する物体の温度との相関関係を用いて前記被測定部材表面の温度分布を測定する温度分布測定方法であって、
前記2波長間の放射強度比は1未満となるように定義されていることを特徴とする温度分布測定方法。 - 前記被測定部材はセラミックスを含むものである請求項1の温度分布測定方法。
- 被測定部材の表面から放射される光のうちから選択された第1波長および第2波長の光を検出し、該第1波長と第2波長の2波長間の放射強度比と、該2波長間の放射強度比を与える光を放射する物体の温度との相関関係を用いて前記被測定部材表面の温度分布を測定する温度分布測定装置であって、
前記2波長間の放射強度比は1未満となるように定義されていることを特徴とする温度分布測定装置。 - 前記被測定部材はセラミックスを含むものである請求項3の温度分布測定装置。
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2002
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