JP2004044773A - 液封防振装置 - Google Patents

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Abstract

【目的】主液室の側部に横膜を設け、この変形を横膜ストッパで規制するとき、横膜ストッパの取付座をわざわざ溶接等により設けなければならず、手間がかかったため、これを廃止する。
【構成】主液室20の側部に設ける内圧制御手段を、弾性本体部5と別体に構成され主液室20内へ挿入固定される弾性筒部材8の側面に形成された横膜10と主液室20の側面壁に取付けられる横膜ストッパ11で構成する。横膜ストッパ11はストッパ本体部12とパイプ部13を樹脂により一体に形成し、取付用のインサート部材43をインサート成形する。インサート部材43は略L字状断面をなし、ストッパ本体部12を第2取付部材2の胴部に形成された取付穴9a,9bへ嵌合した状態でそのフランジ44をフランジ部材3のフランジに形成された張り出し部40と重ね、リベット41のみで固定する。
【選択図】図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はエンジンマウント等の液封防振装置に係り、特に主液室の内圧をコントロールする可動膜を設けたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開2002−70931号には、主液室に臨む側部に弾性本体部と連続する可動膜を設け、かつ外部から略漏斗状のホルダを取付けて作動室を形成し、負圧又は大気開放に選択切り換えすることにより、可動膜をフリーにしたり拘束して変形を規制することが開示されている。また、ホルダ内には、可動膜ストッパを設け、これにより可動膜の変形を規制している。
【0003】
図7は上記公開公報のものと同様構造をなす可動膜ストッパの取付方を示すため液封防振装置を主たる入力側(図8の上方側)から示す平面図、図8はその側面図である。これらの図に示すように、可動膜ストッパaはボルトbにより主液室を構成する筒部材cのフランジdの縁部へ溶接された取付座eへ締結することにより固定されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記図7及び図8のように構成すると、わざわざ別体の取付座eを溶接で設けるため、手間が多くかつ組立精度維持にも困難が生じる。そこでこのような別体の取付座eを省略する構造が望まれる。本願は、この要請の実現を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1の液封防振装置は、振動発生側又は振動受け側のいずれか一方側へ取付けられる第1取付部材と、他方側へ取付けられる第2取付部材と、これらの間に介在される弾性本体部材とを備え、弾性本体部材を壁の一部とする主液室と、この主液室と仕切り部材で仕切られ、可撓膜部材で覆われる副液室と、これら両液室を連通するオリフィス通路とを備えた液封防振装置において、前記主液室に臨んでその内圧変動を吸収するための可動膜と、この可動膜の変形規制を行う可動膜ストッパと、この可動膜ストッパに対して前記可動膜の弾性変形を自由にするフリー状態と、前記可動膜ストッパに対して前記可動膜を密着させた拘束状態とに変化させる内圧制御手段とを備えるとともに、前記可動膜ストッパは、略L字形断面の取付部材を一体に備え、この取付部材の外方へ屈曲するフランジを前記第2取付部材のフランジと重ねて結合することにより固定したことを特徴とする。
【0006】
請求項2は、上記請求項1において、前記可動膜ストッパの取付部材を、第2取付部材の円筒部外周に沿う略円弧状としたことを特徴とする。
【0007】
請求項3は、上記請求項2において、前記可動膜ストッパの取付部材における前記第2取付部材のフランジへ重なる前記フランジと前記第2取付部材の円筒部外周に沿う部分が、取付前の状態で鈍角をなすように傾斜し、これを略90°になるよう変形させて取付けたものであることを特徴とする。
【0008】
請求項4は、上記請求項1において、前記可動膜ストッパの一部を前記可動膜へ密着させて前記可動膜ストッパと前記可動膜の間をシールしたことを特徴とする。
【0009】
請求項5は、上記請求項1において、前記可動膜ストッパ及び前記可動膜は、耐熱性及び耐ガソリン性材料からなることを特徴とする。
【0010】
【発明の効果】
請求項1によれば、可動膜ストッパに略L字状の取付部材を一体に設け、そのフランジを第2取付部材のフランジと重ねて結合することにより固定したので、可動膜ストッパを第2取付部材へ直接取付けることができるようになり、わざわざ別体の取付座を溶接して設ける必要がないので、製造が容易になりかつ組立精度維持も容易になる。
【0011】
また、請求項2のように可動膜ストッパの取付部材を第2取付部材の円筒部外周に沿う略円弧状にすることにより、可動膜ストッパの取付部材における剛性を高めることができる。
【0012】
このとき、請求項3のように可動膜ストッパの取付部材におけるフランジと第2取付部材の円筒部外周に沿う部分とを、取付前の状態で鈍角をなすように傾斜させておき、これを略90°になるよう変形させて取付ければ、可動膜ストッパを円筒部外周へさらに強く押し付けて確実に固定させることができる。
【0013】
また、請求項4によれば、可動膜ストッパの一部を前記可動膜へ密着させたので、可動膜の弾性を利用して可動膜ストッパとの間を密にシールできる。
【0014】
請求項5によれば、可動膜ストッパ及び可動膜を、耐熱性及び耐ガソリン性材料で形成したので、耐熱性及び耐ガソリン性が高くなり、耐久性が向上する。そのうえ部分的に使用するだけで済むため、全体のコストダウンが可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、エンジンマウントとして構成された一実施例を説明する。図1はこのエンジンマウントの全断面図(図2の1−1線断面図)、図2は平面図(図1のZ矢示図)図3は側面図(図1のX矢示図)、図4はストッパ取付部の概略斜視図、図5はストッパ部の拡大断面図、図6はストッパブラケットの変形例を示す図である。
【0016】
まず、図1において、符号1は突部1aでエンジン側へ取付けられる第1取付部材、2はボルト等により車体側へ取付けられる第2取付部材、5は弾性本体部材であり、ゴム等の適宜弾性部材からなり、略円錐状のドーム部6とこれに連続してドーム部6の開口縁部をなす脚部7を有する。脚部7は弾性筒部材8の上部に密接している。
【0017】
第2取付部材2の上半部側はフランジ部材3と筒状部材4を内外に嵌合一体化してあり、筒状部材4の内側には弾性筒部材8が嵌合されている。弾性筒部材8の一部で、第2取付部材2のフランジ部材3と筒状部材4が重なり合う部分に形成された取付穴9a,9bと対応する位置に横膜10が形成されている。横膜10は本願発明における可動膜に相当する。
【0018】
取付穴9a,9b内には横膜ストッパ11が嵌合されている。横膜ストッパ11は取付穴9a,9bへ嵌合するストッパ本体部12とパイプ部13をポリプロピレン等の耐熱性及び耐ガソリン性に優れた樹脂により一体に形成したものである。パイプ部13は切換バルブ14aへ接続される。
【0019】
切換バルブ14aは、大気開放とエンジンの吸気負圧等の負圧源に対する接続とを切り換えることにより、横膜10をストッパ本体部12上へ密着固定する拘束状態と、横膜10をフリーにして自由に弾性変形可能な状態とのいずれかに選択切り換えする。横膜10及び横膜ストッパ11はそれぞれ耐熱性及び耐ガソリン性に優れた材料が用いられている。
【0020】
弾性筒部材8の下端側開口部は仕切り部材16で覆われる。この仕切り部材16は、上部仕切り17、中間仕切り18及び下部仕切り19の3部材を重ね合わせた構造であり、各部材はそれぞれ合成樹脂等の適宜剛性材料から形成される。仕切り部材16には後述する第1及び第2オリフィス通路が設けられる。
【0021】
仕切り部材16と弾性本体部材5との間に、弾性本体部材5を壁の一部とする主液室20が形成される。仕切り部材16の主液室20と反対側にはダイアフラム21で覆われた副液室22が形成され、これら主液室20及び副液室22内には非圧縮性の液体が封入される。
【0022】
上部仕切り17と中間仕切り18の間及び中間仕切り18と下部仕切り19の間には螺旋状をなす第1オリフィス通路である減衰オリフィス通路23が形成され、その一端は上部仕切り17と中間仕切り18の間に形成されて主液室へ開口する共通通路24へ通じ、他端は下部仕切り19の一部に形成された開口部19aで副液室22へ通じている。
【0023】
減衰オリフィス通路23は常時主液室20と副液室22を連通して一般走行時における振動等の比較的低周波数でかつ振幅の大きな振動に対して減衰力を発生してこれを吸収するようになっている。
【0024】
共通通路24は第2オリフィス通路であるアイドルオリフィス通路25へも同時に連通する。アイドルオリフィス通路25は、上部仕切り17の中央に形成された中央ホール26、及びこれに対応して中間仕切り18の中央に形成された開口27及び下部仕切り19の中央に形成された開口である出口28を介して副液室22へ通じている。出口28はダイアフラム21の中央部に形成された厚肉部21aで開閉される。
【0025】
厚肉部21aは、下部仕切り19における出口28の周囲部分であるシート部へ接離することにより、アイドルオリフィス通路25の副液室22側開口をなす出口28を開閉する。この出口28が開いたときは主液室20と副液室22を連通し、アイドル時の振動を減衰オリフィス通路23よりも高周波側で液柱共振して吸収する。
【0026】
厚肉部21aの開閉動作は別体の開閉部材30で行われる。開閉部材30は厚肉部21aを押し上げるための中央突部31を有する弾性体からなる上部32と樹脂製の底部材33を合わせ、間に中空の開閉部作動室34を形成するように密閉し、開閉部作動室34内に配置したリターンスプリング35により、中央突部31を厚肉部21aへ押し当てて、厚肉部21aが出口28の周囲へ密着するように押し上げ側へ付勢する。
【0027】
底部材33の中央部に形成されたパイプ部36は切換バルブ14bへ接続し、大気開放状態と負圧状態を切り換える。このとき開閉部材30と前記横膜10をそれぞれ同期して切り換える場合には切換バルブ14a及び14bを共通化することもできる。
【0028】
開閉部作動室34内を負圧状態にすると開閉部材30の中央突部31をリターンスプリング35に抗して図の下方へ引き下げ、その結果、厚肉部21aを出口28の周囲から離して出口28を開放し、アイドルオリフィス通路25を主液室20及び副液室22と連通させる。逆に大気開放すれば、中央突部31がリターンスプリング35により押し上げられ、厚肉部21aが出口28を閉じる。
【0029】
開閉部材30は、上部32と底部材33の各外周部を重ね合わせ、全周をリング部材37でカシメることにより一体化され、このリング部材37を下部円筒部材38の下部内側へ固定される。下部円筒部材38は第2取付部材2の下半部側をなす金属製部材であり、その上端部を筒状部材4の下端部でカシメることにより一体化される。このときこのカシメ部4bに弾性筒部材8の下端部とダイアフラム21の外周部に一体化されているインサートリング21bの上部フランジ21cとがそれぞれ挟持されて同時に固定される。
【0030】
また、筒状部材4と下部円筒部材38とのカシメ時に、弾性筒部材8と仕切り部材16も同時に固定される。すなわち、弾性筒部材8は上端部へ脚部7が圧接し、下端部が仕切り部材16の上部仕切り17の外周部上面へ当接し、さらに仕切り部材16のうち下部仕切り19の外周部下端がインサートリング21bの下部フランジ21dに支持されるため、結局、脚部7と下部フランジ21dとの間に挟持されて固定されることになる。
【0031】
図2及び4に示すように、フランジ部材3の上部に外方へ折り曲げられて形成されたフランジ3bの一部を径方向へ突出させて張り出し部40が設けられている。張り出し部40は図2に明らかなように、図示状態の平面視で、中心Oとパイプ部13を結ぶ線Lを挟んで左右へ略60°程度づつ開いた位置に2ヶ所設けられ、張り出し部40、40にはリベット41、41により横膜ストッパ11を直接固定している。
【0032】
張り出し部40は、フランジ部材3における本来のフランジ3bの外周部より張り出して形成され、かつ下部円筒部材38のフランジ38aの内側に位置している。すなわち装置の大型化を回避するようにフランジ38aよりも引き込んだ位置に形成される。左右の張り出し部40,40の外側を結ぶ線Mはほぼ直線状であって、線L上におけるフランジ3bの最大張り出し部である先端部と同程度の位置を通っている。また張り出し部40、40やリベット41、41の間隔は任意であり、横膜ストッパ11の大きさに応じて設定される。
【0033】
図3及び図4に示すように、横膜ストッパ11は、フランジ部材3の胴部3aの周囲へ沿うようにフランジ3bの下方に配置され、リベット41,41により図の上下方向すなわち主たる振動の入力方向Zと平行な方向にて固定される。なお図4のフランジ部材3は弾性本体部材5(図1)を一体化する前の状態、筒状部材4は下部円筒部材38(図1)との結合前の状態でそれぞれ示してある。
【0034】
図4に明らかなように、横膜ストッパ11は略円弧状をなして胴部3aの周方向へ長く形成され(以下、この形状を横長という)、張り出し部40,40に設けられた取付穴42,42と、横膜ストッパ11のインサート部材43に形成されたフランジ44に設けられている取付穴45,45を一致させてリベットで固定するようになっている。なお、胴部3a及び4aに形成された取付穴9a,9bも横膜ストッパ11に対応して横長に形成されている。
【0035】
図5に示すように、インサート部材43は略L字状断面をなす金属製部材であり、胴部3aの外側に沿う本体部46とその上部に略90°に外側へ屈曲して、張り出し部40に沿うフランジ44とを連続一体に形成したものである。なお、インサート部材43はある程度の剛性及び耐久強度を有するものであれば、金属材料に限らず適当な樹脂材料であってもよい。
【0036】
本体部46の下半部はストッパ本体部12中へインサートされ、横膜ストッパ11を射出成形等によって成形するときに一体化されている。このインサート部材43の下部側に穴47が形成され、この穴47によりストッパ本体部12との結合を強固にするとともに、この穴47の中央を貫通して通気穴48が形成されている。通気穴48はパイプ部13の軸心部を通り、かつストッパ本体部12の中央部を貫通して横膜作動室15へ連通している。
【0037】
ストッパ本体部12は上端側が取付穴9a,9bに嵌合し、下端側は、胴部3aの下端よりも下方へ延出しているため取付穴9bのみに嵌合する。
ストッパ本体部12の横膜作動室15側表面には最外周側部に最外周側突部51を形成し、そのすぐ内側の横膜作動室15に臨む面には突起52が一体に形成されている。突起52は全体としてシート面53をリング状に囲むように多数を点状に配設したものである。但し突起52に代えて連続するリング状の突条に形成してもよい。シート面53には通気穴48の一端が開口している。最外周側突部51はシート面53の周囲を囲んで連続するリング状の突条をなす。
【0038】
最外周側突部51は、横膜10の周囲部分へ常時圧接されるシール部をなす。但し、逆に横膜10側からシール突起を突出させることもできる。突起52はシート面53の外周を規定し、横膜10が弾性変形時にまず突起52へ当接し、その次にシート面53へ当接するよう、段階的な弾性変形を行わせることにより、横膜10のバネをフリー状態、突起52との接触時及びシート面53との接触時の3段階に変化させ、非線形のバネ特性を生じさせるようになっている。
【0039】
弾性筒部材8には芯金具として略筒状のインサート部材54が一体成形されている。インサート部材54の取付穴9a,9bと対応する位置は、これらと同形状をなす横穴55が形成され、この横穴55を覆う弾性筒部材8の一部が横膜10となっている。横穴55の縁部は最外周側突部51に近接した位置となる。
【0040】
弾性筒部材8は、耐熱性及び耐ガソリン性に優れた弾性材料、例えば、ヒドリンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等からなり、インサート部材54と一体形成することにより、横膜ストッパ11の横長形状と対応した非円形をなす横膜10を容易に形成できる。
【0041】
インサート部材54の上部は内向きのフランジ56をなし、下部は外向きのフランジ57をなす。フランジ56の周囲にも弾性筒部材8の弾性部材が一体に形成されて弾性受部8aをなし、ここに弾性本体部5の脚部7が圧接されて密着することにより脚部7と弾性受部8aとの接合部をシールしている。なお、両部材からシール突起8b及び7aを設ける。
【0042】
弾性筒部材8の下端部8cは筒状部材4の本体部4aにおける取付穴9b近傍部へ密接して筒状部材4と弾性筒部材8の間をシールするとともに、上部仕切り17の外周部上面に密接する。このとき、一体に形成されたシール突起8dがシールを確実にする。また、ストッパ本体部は下部との当接部にも下端部8cにはシール突起8eを設ける。
【0043】
フランジ57の外周部は、下部円筒部材38の上端フランジ及びインサートリング21bの上部フランジ21cに重なって、筒状部材4のフランジ部に設けられたカシメ部4bによりカシメられて一体化する。
【0044】
次に、本実施例の作用を説明する。まず、パイプ部13の通気穴48を大気開放して横膜10の弾性変形をフリーにすれば、横膜10は第1取付部材1からの微少振動入力により主液室20の内圧変動に応じて自在に弾性変形し、主液室20の内圧変化を吸収する。したがって、全体が低動バネとなる。
【0045】
より大きな振動入力があると、横膜10がシート面53へ当接してその弾性変形が規制されるようになるため、横膜10のバネが高くなり、このような大振動による横膜10の過大な変形を防止して破損を防ぎ、横膜10の耐久性を向上させることができる。
【0046】
したがって、小さな振動入力には低バネとなり、より大きな振動入力に対してはそれ相応の非線形的に上昇した高バネとなるから、バネ定数を非線形的かつ広範囲に変化させて主液室20における内圧上昇を吸収し、より理想的な振動吸収が可能になる。
【0047】
また、切り換えバルブ14aによりパイプ部13の通気穴48を負圧源へ接続させれば、横膜作動室15が負圧となるため、横膜10はシート面53へ密着され、弾性変形が規制される。この状態で、減衰オリフィス通路23又はアイドルオリフィス通路25の共振周波数近傍の振動入力があると、横膜10の弾性変形が規制されているため、各オリフィス通路に対する液体流動量を多くでき、その結果、これらのオリフィス通路における液柱共振効率を大きくできる。なお、横膜10の拘束は、減衰オリフィス通路23又はアイドルオリフィス通路25のいずれか一方に対してのみ行うこともできる。
【0048】
このとき、突起52を設けることにより、横膜10とシート面53の間に間隙を確保し、隣り合う突起52間に形成される凹部を介して、横膜10と最外周側突部51近傍部との間に形成される間隙と横膜作動室15の通気穴48が開口する中央部とを連通させておくことができるから、横膜作動室15の隅部における空気だまりの発生を防ぎ、エンジンルームの高温化による横膜作動室15の容量変化を防止して横膜10の膜剛性が変化をすることを防止できる。但し、空気だまりの発生による影響が少ない場合は、突起52を点状ではなく、通気穴48の開口部周囲を連続して囲むループ状の突条としてもよい。
【0049】
本実施例における横膜10は、主液室20内へ挿入・固定される弾性筒部材8の一部を利用するので、非円形など複雑形状であっても成形容易である。しかも取付性及びシール性のいずれも優れたものとなる。また、弾性筒部材8を弾性本体部5と別体に構成したので、弾性筒部材8のみを耐熱性及び耐ガソリン性に優れたものにでき、弾性本体部5を高価な材料でなく通常のものとすることができるため、全体としてのコストを低減できる。
【0050】
さらに、弾性筒部材8を耐熱性及び耐ガソリン性に優れた材料にしたので、耐久性を向上させることができる。しかも弾性本体部5と弾性筒部材8をシール7aと8bにより、上部仕切り17と弾性筒部材8をシール8dによりそれぞれ密着させ、これらの接合部におけるシール性を確保することができる。
【0051】
また、横膜10の周囲に横膜ストッパ11のシート面53を囲んで形成された最外周側突部51を密着させたので、横膜10の弾性を利用して横膜ストッパ11との間を密にシールでき、その結果、横膜作動室15を確実にシールできる。なお、横膜10側からシール突起を突出させて横膜ストッパ11へ密着させてもよい。
【0052】
また、横膜ストッパ11は、インサート部材43のフランジ44を、フランジ部材3のフランジ3bに形成された張り出し部40に対応してリベット41,41によって直接取付けるだけで固定できるので、特別な取付座を溶接で設ける必要がなく、取付が容易となり、溶接しない分だけ組立精度も高くなる。しかも、インサート部材43は略L字形をなすとともに半円弧状をなすから、剛性が高くなり、変形に対する程度も大きくなり、リベット41,41にて2ヶ所のみでの固定が可能になる。
【0053】
なお、インサート部材43は、図6に示すように、断面が略90°に屈曲した状態よりもさらにθだけ傾けて鈍角にし、取付時に略90°まで変形させて取付ければ、さらに密着が良好になる。逆に、筒状部材4の本体部4aを下方が外方へ張り出すように傾斜されば同様の効果が得られる。いずれにしてもリベット41,41の2ヶ所のみによる固定だけで足りることになる。
【0054】
さらに、横膜ストッパ11はインサート部材43をインサートした状態でストッパ本体部12とパイプ部13を一体成形するので、従来のように組立時に複数部材を組み合わせる必要がなくなり、部品点数を削源でき、構造及び製造が簡単になる。
【0055】
そのうえ、横膜ストッパ11を樹脂で構成したので、横膜10が当接した状態で変形することがなく、横膜10の弾性変形を確実に規制できるから、フリー状態と規制状態の間で可動膜のバネ特性を顕著な非線形にできる。しかも横膜10との接触もゴムとゴム相互の接触ではなくなるから、摩耗が少なくなって耐久性が向上し、形状変化が少なくバネ特性が安定する。そのうえ耐熱性及び耐ガソリン性に優れるため耐久性が向上する。
【0056】
なお、本願発明は上記の実施例に限定されず種々に変形等が可能であり、例えば、用途としてエンジンマウント以外の種々な防振装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係るエンジンマウントの全断面図(図2の1−1線断面図)
【図2】図1のZ矢示方向図
【図3】図1のX矢示方向図
【図4】横膜ストッパの取付を示す斜視図
【図5】横膜ストッパの取付部拡大断面図
【図6】インサート部材の別実施例を示す図
【図7】従来例の平面図
【図8】同上側面図
【符号の説明】
1:第1取付部材、2:第2取付部材、5:弾性本体部材、8:弾性筒部材、9a.9b:取付穴、10:横膜、11:横膜ストッパ、12:ストッパ本体部、13:パイプ部、15:横膜作動室、16:仕切り部材、20:主液室、21:ダイアフラム、22:副液室、23:減衰オリフィス通路、24:共通通路、25:アイドルオリフィス通路、40:張り出し部、41:リベット、43:インサート部材、44:フランジ

Claims (5)

  1. 振動発生側又は振動受け側のいずれか一方側へ取付けられる第1取付部材と、他方側へ取付けられる第2取付部材と、これらの間に介在される弾性本体部材とを備え、弾性本体部材を壁の一部とする主液室と、この主液室と仕切り部材で仕切られ、可撓膜部材で覆われる副液室と、これら両液室を連通するオリフィス通路とを備えた液封防振装置において、
    前記主液室に臨んでその内圧変動を吸収するための可動膜と、この可動膜の変形規制を行う可動膜ストッパと、この可動膜ストッパに対して前記可動膜の弾性変形を自由にするフリー状態と、前記可動膜ストッパに対して前記可動膜を密着させた拘束状態とに変化させる内圧制御手段とを備えるとともに、
    前記可動膜ストッパは、略L字形断面の取付部材を一体に備え、この取付部材の外方へ屈曲するフランジを前記第2取付部材のフランジと重ねて結合することにより固定したことを特徴とする液封防振装置。
  2. 前記可動膜ストッパの取付部材を、前記第2取付部材の円筒部外周に沿う略円弧状としたことを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
  3. 前記可動膜ストッパの取付部材における、前記第2取付部材のフランジへ重なる前記フランジと前記第2取付部材の円筒部外周に沿う部分が、取付前の状態で鈍角をなすように傾斜し、これを略90°になるよう変形させて取付けたものであることを特徴とする請求項2に記載した液封防振装置。
  4. 前記可動膜ストッパの一部を前記可動膜へ密着させて前記可動膜ストッパと前記可動膜の間をシールしたことを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
  5. 前記可動膜ストッパ及び前記可動膜は、耐熱性及び耐ガソリン性材料からなることを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
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