JP2004044709A - 軸継手 - Google Patents

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Kazuharu Inoue
井上 和春
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Abstract

【課題】回転軸20,30とのガタに起因する摩耗や異音の発生を防止した軸継手10を提供する。
【解決手段】駆動側回転軸20の係合凹部21又は従動側回転軸30の係合凹部31に回転方向に係合される一対の係合突起10a,10aを備え、この係合突起10a,10aは、その双方に跨って延びる金具11にゴム状弾性材料からなる弾性層13を一体的に加硫接着したものであり、この弾性層13には、トルクの授受側となる厚肉部13aと、その反対側の薄肉部13bを有する勾配が形成されている。両係合突起10a,10aの間には、駆動側回転軸20の端面と従動側回転軸30の端面との間に介在される弾性壁14が形成され、両係合突起10a,10aの外周側には、駆動側回転軸20の軸端外周面及び従動側回転軸30の軸端外周面を包囲する弾性筒15が形成されている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータの駆動軸と油圧ポンプの回転軸など、駆動側回転軸と従動側回転軸とを回転接続する軸継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図8は、従来の技術に係る軸継手を、接続対象の回転軸と共に示す分離斜視図である。この図8において、例えばモータの出力軸である駆動側回転軸110の軸端110aには、その直径方向に対称に並んだ一対のトルク伝達片111,112が突設されており、駆動側回転軸110の軸端110aと対向する、例えば油圧ポンプの回転軸である従動側回転軸120の軸端120aにも、同様のトルク伝達片121,122が突設されている。両回転軸110,120を連結する軸継手100は、ゴム状弾性材料で成形されたものであって、軸方向に貫通した十字孔101を有する。
【0003】
すなわち、駆動側回転軸110のトルク伝達片111,112と、従動側回転軸120のトルク伝達片121,122は、互いにほぼ直角をなして交差するように組み合わされた状態で、軸継手100の十字孔101に、その軸方向両側から挿入されることによって、トルク伝達可能な状態に接続される。また、両回転軸110,120間の芯ずれなどミスアライメントは、軸継手100の有するゴム弾性によって、有効に吸収される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の技術によれば、駆動側回転軸110のトルク伝達片111,112及び従動側回転軸120のトルク伝達片121,122と、軸継手100の十字孔101との間には、回転方向の隙間(ガタ)が生じるため、この十字孔101におけるトルク伝達面が、トルク伝達片111,112及び121,122との摺動によって摩耗する。また、組付上、回転軸110,120と軸継手100の軸方向のガタがあると、これに起因する異音を発生することもある。
【0005】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、軸とのガタに起因する摩耗や異音の発生を防止した軸継手を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る軸継手は、駆動側回転軸の軸端に形成された係合凹部又は従動側回転軸の軸端に形成された係合凹部に回転方向に係合される一対の係合突起を備え、この係合突起が、その双方に跨って延びる金具にゴム状弾性材料からなる弾性層を一体的に接合したものであり、この弾性層が、トルクの授受側で相対的に厚肉に形成され、その反対側で相対的に薄肉に形成されている。
【0007】
請求項2の発明に係る軸継手は、請求項1に記載の構成において、両係合突起の間に、駆動側回転軸の端面と従動側回転軸の端面との間に介在されるゴム状弾性材料からなる弾性壁が形成される。
【0008】
請求項3の発明に係る軸継手は、請求項1又は2に記載の構成において、両係合突起の外周側に、駆動側回転軸の軸端外周面及び従動側回転軸の軸端外周面を包囲するゴム状弾性材料からなる弾性筒が形成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る軸継手の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、第一の形態による軸継手10を、接続対象の回転軸20,30と共に示す分離斜視図、図2は、第一の形態による軸継手10を介して回転軸20,30を接続した状態を示す断面図、図3は、第一の形態による軸継手10をその軸心を通る平面で切断して示す断面図、図4は、図3におけるIV方向の矢視図である。
【0010】
まず図1において、参照符号20,30は、それぞれ第一の形態による軸継手10による接続対象の回転軸で、このうち、駆動側回転軸20は、例えばモータの出力軸であり、従動側回転軸30は、例えば前記モータによって回転される油圧ポンプやあるいは減速機等の回転軸である。両回転軸20,30は、その軸端が軸方向に互いに対向される。
【0011】
駆動側回転軸20の軸端には、その直径方向に貫通し軸方向に所定の深さdを有する係合凹部としての係合溝21が形成されており、従動側回転軸30の軸端にも同様に、その直径方向に貫通し軸方向に所定の深さdを有する係合凹部としての係合溝31が形成されている。
【0012】
軸継手10は、図2及び図3の断面図に示されるように、鋼板などの金属板からなるほぼ長方形の板状の金具11に、ゴム状弾性材料からなる弾性体12を一体的に焼き付けたものである。弾性体12は、金具11の長手方向(軸方向)両端及びその近傍における厚さ方向両面(合計四箇所)に一体的に加硫接着された弾性層13と、金具11の長手方向(軸方向)中間位置に厚さ方向両面に一体的に加硫接着され弾性層13と連続した弾性壁14と、弾性壁14及び弾性層13に連続して円筒状に形成された弾性筒15とからなる。
【0013】
金具11の両端及びその近傍部と、その両面に形成された弾性層13,13は、それぞれ駆動側回転軸20の係合溝21又は従動側回転軸30の係合溝31に挿入状態に係合される一対の係合突起10a,10aを構成している。そして、弾性壁14からの各係合突起10a,10aの突出高さh(図3参照)は、駆動側回転軸20の係合溝21及び従動側回転軸30の係合溝31の深さdと略同等又はそれより若干小さいものとなっている。
【0014】
弾性筒15は、図2に示されるように、駆動側回転軸20及び従動側回転軸30の係合溝21,31を、係合突起10a,10aにそれぞれ係合させた状態において、駆動側回転軸20及び従動側回転軸30の軸端の外周面を外周から包囲すると共に、当該軸継手10が駆動側回転軸20及び従動側回転軸30の間から脱落するのを防止するものである。弾性筒15の内径は、駆動側回転軸20及び従動側回転軸30の外径と同等又はそれより僅かに小径となっている。
【0015】
各係合突起10aにおける弾性層13,13は、トルクTの授受側で相対的に厚肉となり(以下、厚肉部13aという)、その反対側で相対的に薄肉となる(以下、薄肉部13bという)ように、金具11の表面に対して一定の勾配をなして形成されている。すなわち、駆動側回転軸20は、図1に示される矢印R方向へ回転するものであり、そのトルクは、駆動側回転軸20の係合溝21の内面から、軸継手10における一方の係合突起10aに対して、図4に矢印Tで示されるように、弾性層13,13における厚肉部13a,13aに作用する。また、軸継手10に伝達されたトルクは、駆動側回転軸20と反対側の係合突起10aにおいて、図4に破線矢印T’で示されるように、弾性層13,13における厚肉部13a,13aから従動側回転軸30の係合溝31の内面へ伝達される。
【0016】
したがって、両係合突起10a,10aにおける弾性層13,13の軸方向の投影形状は、図4に示されるように、互いに逆向きの勾配となっている。
【0017】
以上のように構成された第一の形態による軸継手10は、図2に示されるように、軸方向に互いに対向する駆動側回転軸20と従動側回転軸30の間に介在して、両軸20,30を回転接続するものである。すなわち、駆動側回転軸20及び従動側回転軸30は、その係合溝21,31に軸継手10における係合突起10a,10aが挿入された状態に係合しているので、駆動側回転軸20が図1におけるR方向へ回転すると、そのトルクは、駆動側回転軸20の係合溝21から、図4に矢印T及び破線矢印T’で示されるように、係合突起10a,10aを介して、従動側回転軸30の係合溝21に伝達され、従動側回転軸30が駆動側回転軸20と同方向へ回転される。
【0018】
この軸継手10は、係合突起10a,10aの双方に跨って埋設された金具11の剛性を利用して、トルクを駆動側回転軸20から従動側回転軸30へ伝達すると共に、弾性体12の弾性によって、駆動側回転軸20と従動側回転軸30の軸心が僅かにずれた状態や、駆動側回転軸20と従動側回転軸30の軸心が互いに交差した状態でのトルク伝達を許容するものである。
【0019】
図5は、軸継手10の係合突起10aにおける弾性層13,13の作用を示す説明図である。この図5において、図1に示される駆動側回転軸20の係合溝21の内面からのトルクは、矢印Tで示されるように、一方の係合突起10aにおける金具11の厚さ方向両面に存在する弾性層13,13の厚肉部13a,13aに作用する。このため、弾性層13,13の厚肉部13a,13aは圧縮変形を受けるが、その圧縮応力によって、図5に一点鎖線で示されるように、薄肉部13b,13bの肉厚を僅かに増大させるように逃げ変形が起こる。したがって弾性層13,13が比較的低ばねとなり、捩り方向の振動に対する優れた吸収機能を発揮する。
【0020】
他方の係合突起10aもまったく同様である。すなわち、軸継手10から従動側回転軸30へのトルク伝達においては、従動側回転軸30の係合溝31と係合した係合突起10aの弾性層13,13の厚肉部13a,13aが、前記係合溝31の内面との圧接によって圧縮変形を受け、その圧縮応力によって、薄肉部13b,13bの肉厚を僅かに増大させるように、弾性層13,13の逃げ変形が起こるので、比較的低ばねになると共に、係合溝31の内面に対する面圧が均一化される。
【0021】
また、このような弾性層13,13の逃げ変形によって、係合溝21,31の内面と、弾性層13,13との面圧が均一化される。この形態によれば、トルクが作用していない状態から面圧がほぼ均一となるまでの捩り角度θは、弾性層13,13の材質等にもよるが、4度程度である。そして、このような弾性層13,13の変形作用によって、係合溝21,31と係合突起10aとの間に回転方向のガタが生じるのを有効に防止することができ、その結果、弾性層13,13の摩耗も有効に防止される。
【0022】
駆動側回転軸20と従動側回転軸30間の軸方向の伝達振動は、両軸20,30の軸端間に介在する弾性壁14によって吸収され、しかもこの弾性壁14によって、駆動側回転軸20と従動側回転軸30間での軸方向のガタの発生、及びこれに起因する異音の発生も、有効に防止される。
【0023】
各係合突起10aにおける弾性層13,13は、基本的に、トルクの授受側で相対的に厚肉、その反対側で薄肉とするものであるが、上述した第一の形態以外にも、種々の形状が考えられる。図6及び図7は、本発明に係る軸継手10の他の形態として、係合突起10aにおける弾性層13,13の形状及びその作用を示す説明図である。
【0024】
まず図6に示される形態の軸継手10は、両係合突起10aにおける弾性層13,13が、その厚肉部13a,13aから、薄肉部13b,13bへ向けて、勾配(肉厚の減少率)が漸次大きくなる曲面状をなすものである。また、このような曲面をなすことによって、図中に一点鎖線で示されるように、トルク入力前の状態において、駆動側回転軸20の係合溝21又は従動側回転軸30の係合溝31に対して、厚肉部13a,13aが適当な締め代を有するものとなっている。その他の部分の構成は、先に説明した第一の形態と同様である。
【0025】
この形態による軸継手10は、基本的には、第一の形態と同様の作用・効果を有するものである。特に、矢印T又は破線矢印T’で示される伝達トルクによって、係合突起10aにおける金具11の厚さ方向両面に存在する弾性層13,13の厚肉部13a,13aが圧縮を受けると、この厚肉部13a,13aでは、薄肉部13b,13bへ向けての肉厚の減少率が小さいため、前記厚肉部13a,13aの圧縮応力による逃げ変形が、第一の形態のものと比較して小さいものとなる。したがって、弾性層13,13が第一の形態のものと比較して高ばねとなり、図中に一点鎖線で示されるトルク入力前の状態から、二点鎖線で示されるように、係合溝21又は31の内面に対する面圧が均一化される状態となるまでの捩り角度θは、弾性層13,13の材質等にもよるが、2度程度である。
【0026】
図7に示される形態の軸継手10は、両係合突起10aにおける弾性層13,13が、その厚肉部13a,13a及び薄肉部13b,13bでは勾配(肉厚の減少率)が小さく、厚肉部13aと薄肉部13bの間の部分で勾配が最も大きくなる曲面状をなすものである。また、このような曲面をなすことによって、トルク入力前の状態では、図中に一点鎖線で示されるように、駆動側回転軸20の係合溝21又は従動側回転軸30の係合溝31に対して、厚肉部13a,13aが適当な締め代を有するものとなっている。その他の部分の構成は、先に説明した第一の形態と同様である。
【0027】
この形態による軸継手10は、基本的には、第一の形態と同様の作用・効果を有するものである。特に、矢印T又は破線矢印T’で示される伝達トルクによって、係合突起10aにおける金具11の厚さ方向両面に存在する弾性層13,13の厚肉部13a,13aが圧縮を受けると、この厚肉部13a,13aは、薄肉部13b,13bとの間の部分で急激に肉厚が減少しているため、前記厚肉部13a,13aの圧縮応力による逃げ変形が、第一の形態のものと比較して大きいものとなる。したがって、弾性層13,13が第一の形態のものと比較して低ばねとなり、図中に一点鎖線で示されるトルク入力前の状態から、二点鎖線で示されるように、係合溝21又は31の内面に対する面圧が均一化される状態となるまでの捩り角度θは、弾性層13,13の材質等にもよるが、6度程度である。
【0028】
すなわち、図5、図6、図7に示されるような、弾性層13,13の種々の形状によって、そのばね定数や、面圧が一様になる捩り角度を、任意に設定することができる。
【0029】
【発明の効果】
請求項1の発明に係る軸継手によれば、金具にゴム状弾性材料からなる弾性層を一体的に接合した一対の係合突起を有し、弾性層が、トルクの授受側で相対的に厚肉に形成され、その反対側で相対的に薄肉に形成されたことによって、駆動側回転軸及び従動側回転軸の係合凹部との回転方向のガタや、これに起因する異音の発生や、弾性層の摩耗を有効に防止することができる。
【0030】
請求項2の発明に係る軸継手によれば、駆動側回転軸と従動側回転軸間の軸方向の伝達振動が、その軸端間に介在する弾性壁によって吸収され、両軸間での軸方向のガタの発生も、有効に防止することができる。
【0031】
請求項3の発明に係る軸継手によれば、駆動側回転軸の軸端外周面及び従動側回転軸の軸端外周面同士を、弾性筒を介して互いに弾性的に拘束するため、両回転軸の芯ずれなどミスアライメントを許容した状態で、両回転軸を回転接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の形態による軸継手10を、接続対象の回転軸20,30と共に示す分離斜視図である。
【図2】本発明の第一の形態による軸継手10を介して回転軸20,30を接続した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第一の形態による軸継手10をその軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図4】図3におけるIV方向の矢視図である。
【図5】軸継手10における係合突起10aの弾性層13の作用を示す説明図である。
【図6】本発明に係る軸継手10の他の形態として、係合突起10aにおける弾性層13の形状及びその作用を示す説明図である。
【図7】本発明に係る軸継手10の更に他の形態として、係合突起10aにおける弾性層13の形状及びその作用を示す説明図である。
【図8】従来の技術に係る軸継手100を、接続対象の回転軸110,120と共に示す分離斜視図である。
【符号の説明】
10 軸継手
10a 係合突起
11 金具
12 弾性体
13 弾性層
13a 厚肉部(トルクの授受側)
13b 薄肉部
14 弾性壁
15 弾性筒
20 駆動側回転軸
21,31 係合溝(係合凹部)
30 従動側回転軸

Claims (3)

  1. 駆動側回転軸(20)の軸端に形成された係合凹部(21)又は従動側回転軸(30)の軸端に形成された係合凹部(31)に回転方向に係合される一対の係合突起(10a,10a)を備え、この係合突起(10a,10a)が、その双方に跨って延びる金具(11)にゴム状弾性材料からなる弾性層(13)を一体的に接合したものであり、この弾性層(13)が、トルクの授受側で相対的に厚肉に形成され、その反対側で相対的に薄肉に形成されたことを特徴とする軸継手。
  2. 両係合突起(10a,10a)の間に、駆動側回転軸(20)の端面と従動側回転軸(30)の端面との間に介在されるゴム状弾性材料からなる弾性壁(14)が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の軸継手。
  3. 両係合突起(10a,10a)の外周側に、駆動側回転軸(20)の軸端外周面及び従動側回転軸(30)の軸端外周面を包囲するゴム状弾性材料からなる弾性筒(15)が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の軸継手。
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