JP2004044397A - インジェクションポンプ、及び該インジェクションポンプを備えたディーゼルエンジンのdme燃料供給装置 - Google Patents
インジェクションポンプ、及び該インジェクションポンプを備えたディーゼルエンジンのdme燃料供給装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】カム室内の潤滑油に液体状のDME燃料が混入してしまうことによる潤滑油の潤滑性能の低下を防止する。
【解決手段】プランジャ26が挿設されているプランジャバレル25の内周面には、3つの環状溝20がプランジャバレル25の内周面の周方向に形成されている。環状溝20によってプランジャ26とプランジャバレル25との摺接面には、空間部20aが形成されている。油溜室11からプランジャ26とプランジャバレル25との摺接面に漏れ出た液体状態のDME燃料は、3つの空間部20aにおいて段階的に減圧されて気化した状態でカム室15へ漏れ出る。気化した状態でカム室15へ漏れ出たDME燃料は、カム室15に配設されたオイルセパレータ6によって潤滑油から分離され、コンプレッサー61によって吸引されて燃料タンク4へ送出される。
【選択図】 図3
【解決手段】プランジャ26が挿設されているプランジャバレル25の内周面には、3つの環状溝20がプランジャバレル25の内周面の周方向に形成されている。環状溝20によってプランジャ26とプランジャバレル25との摺接面には、空間部20aが形成されている。油溜室11からプランジャ26とプランジャバレル25との摺接面に漏れ出た液体状態のDME燃料は、3つの空間部20aにおいて段階的に減圧されて気化した状態でカム室15へ漏れ出る。気化した状態でカム室15へ漏れ出たDME燃料は、カム室15に配設されたオイルセパレータ6によって潤滑油から分離され、コンプレッサー61によって吸引されて燃料タンク4へ送出される。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、ディーゼルエンジンのDME燃料供給装置のインジェクションポンプ、及び該インジェクションポンプを備えたディーゼルエンジンのDME燃料供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンによる大気汚染対策として、軽油の代わりに排気がクリーンなDME(ジメチルエーテル)を燃料とするものが注目されている。DME燃料は、従来の燃料である軽油と違って液化ガス燃料である。つまり、軽油と比較して沸点温度が低く、大気圧下で軽油が常温において液体であるのに対して、DMEは、常温において気体となる性質を有している。そのため、従来のディーゼルエンジンにDME燃料を使用する際には、インジェクションポンプへの供給圧力が低いと、DME燃料が気化してしまう。よって、液体のDME燃料をインジェクションポンプへ供給するためには、軽油燃料よりインジェクションポンプへの供給圧力を高くする必要がある。
【0003】
したがって、従来のディーゼルエンジンにDME燃料を使用すると、そのインジェクションポンプへの高い供給圧力によって、エンジンの燃料噴射ノズルにDME燃料を送出するインジェクションポンプのプランジャバレルとプランジャとの間の隙間から、インジェクションポンプのカム室に漏れる燃料の量が、軽油燃料を使用した場合と比較して大幅に増加してしまうという問題が生じる。また、DMEは、軽油と比較して低粘度であるので、隙間から漏れやすくなり、さらにその量は多くなってしまう。そして、プランジャバレルとプランジャとの間の隙間から漏れた液体状のDME燃料が、インジェクションポンプのカム室に流れ込んでカム室内の潤滑油に混入してしまうと、潤滑油の粘性が低下し、インジェクションポンプの動作に支障をきたす虞がある。この潤滑油に混入した液体状のDME燃料は、分離して取り除くのが困難であり、また、気化することによって潤滑油から抜けるまでに長い時間を要することから、ディーゼルエンジンのDME燃料供給装置のインジェクションポンプにおいて、プランジャバレルとプランジャとの隙間からカム室に漏れ出る液体状のDME燃料を可能な限り少なくすることが課題とされている。
【0004】
しかし、プランジャバレル及びプランジャを高精度に形成して、プランジャバレルとプランジャとの隙間を可能な限り小さくしても漏れ出るDME燃料を少なくするのには限界がある。そこで、このような課題を解決する手段の一例としては、カム室内の気体部分に充満している気化したDME燃料からオイルセパレータで潤滑油を分離し、分離した気体状のDME燃料を吸引して燃料タンクに戻すものが挙げられる。これによって、カム室内に漏れ出た液体状のDME燃料の気化が促進され、液体状態で潤滑油に混入する量を少なくすることができるとともに、潤滑油に混入してしまった液体状のDME燃料の気化が促進され、液体状のDME燃料が潤滑油から分離される時間を短くすることができるので、DME燃料が潤滑油に混入することによる潤滑油の潤滑性能の低下を少なくすることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、カム室内に液体状のDME燃料が漏れ出る以上、潤滑油に液体状のDME燃料が混入してしまうことは避けられず、DME燃料が混入することを防止することはできなかった。そのため、DME燃料が潤滑油に混入して潤滑油の潤滑性能が低下することを防止することができなかった。
【0006】
本願発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、カム室内の潤滑油に液体状のDME燃料が混入してしまうことによる潤滑油の潤滑性能の低下を防止することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、ディーゼルエンジンの駆動軸の回転が伝達されて回転するカムシャフトと係合するプランジャの上下動で開閉可能なデリバリバルブによって、燃料タンクからフィードパイプを経由して前記DME燃料が供給される油溜室の前記DME燃料を、所定のタイミングで所定の量だけ前記ディーゼルエンジンの燃料噴射ノズルに連通しているインジェクションパイプへ加圧して送出するインジェクションポンプエレメントを有する前記ディーゼルエンジンのDME燃料供給装置のインジェクションポンプであって、前記インジェクションポンプエレメントは、前記油溜室からカム室へ向けて前記プランジャと該プランジャが挿設されるプランジャバレルとの摺接面に漏れ出た液体状の前記DME燃料を、前記カム室内に漏れ出る前に減圧して気化させる空間を前記プランジャと前記プランジャバレルとの摺接面に形成したDME燃料気化部を備えている、ことを特徴としたインジェクションポンプである。
【0008】
前述したように、インジェクションポンプの油溜室には、高圧な液体状態のDME燃料が充填されており、油溜室から各インジェクションポンプエレメントへ供給されたDME燃料は、その圧力によってプランジャとプランジャバレルとの摺接面のわずかな隙間からカム室へわずかに漏れ出てしまう。そのため、このように、プランジャとプランジャバレルとの摺接面に油溜室から漏れ出た高圧な液体状態のDME燃料を減圧させるための空間部を設けることによって、常温で気体となる性質を有する高圧な液体状態のDME燃料を減圧して飽和蒸気圧以下にすることでカム室に漏れ出る前に気化させることができる。
【0009】
つまり、DME燃料気化部は、液体が急激に膨張すると圧力が低下して、そのエネルギーが失われる原理と、常温の大気圧下では気体となるDME燃料特有の性質を応用することによって、加圧されて液体状態のDME燃料を減圧して気化させるものである。したがって、油溜室内の高圧な液体状態のDME燃料は、プランジャとプランジャバレルとの摺接面からカム室に漏れ出る前に空間部において減圧されて気化するので、液体状態のDME燃料がカム室内の潤滑油に混入してしまうことを防止することができる。
【0010】
これにより、本願請求項1に記載の発明に係るインジェクションポンプによれば、高圧な液体状態のDME燃料を減圧する空間部を有するDME燃料気化部によって、液体状態のDME燃料がカム室内の潤滑油に混入してしまうことを防止することができるので、カム室内の潤滑油に液体状のDME燃料が混入してしまうことによる潤滑油の潤滑性能の低下を防止することができるという作用効果が得られる。
【0011】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記空間部は、前記プランジャの周面に周方向に形成された環状溝によって形成されている、ことを特徴としたインジェクションポンプである。
【0012】
本願請求項2に記載の発明に係るインジェクションポンプによれば、本願請求項1に記載の発明による作用効果に加えて、DME燃料気化部の空間部がプランジャに形成されているので、つまり、プランジャの外周面に空間部が形成されているので、空間部を形成するための加工が容易になるという作用効果が得られる。
【0013】
本願請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記空間部は、前記プランジャバレルの内周面に周方向に形成された環状溝によって形成されている、ことを特徴としたインジェクションポンプである。
【0014】
このように、空間部をプランジャの外周面が摺接するプランジャバレルの内周面に形成してもよく、それによって、本願請求項1に記載の発明による作用効果を得ることができる。
【0015】
本願請求項4に記載の発明は、請求項2又は3において、前記DME燃料気化部は、複数の前記環状溝を有している、ことを特徴としたインジェクションポンプである。
【0016】
このように、複数の環状溝によって空間部を形成することによって、複数の空間が形成され、それによって、高圧な液体状のDME燃料を段階的に減圧していくことができる。したがって、環状溝による各空間の容積を小さく設定することができるので、高精度に形成されているプランジャとプランジャバレルとの摺接面の精度が低下する虞を少なくすることができる。
【0017】
これにより、本願請求項4に記載の発明に係るインジェクションポンプによれば、本願請求項2又は3に記載の発明による作用効果に加えて、DME燃料気化部を形成することによるプランジャ及びプランジャバレルの精度への影響を少なくすることができるという作用効果が得られる。
【0018】
本願請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項において、前記DME燃料気化部は、前記空間部が前記プランジャと前記プランジャバレルとの摺接面の前記カム室寄りに形成されている、ことを特徴としたインジェクションポンプである。
【0019】
プランジャとプランジャバレルとの摺接面に漏れ出た高圧で液体状のDME燃料は、カム室に向けて漏れ出る過程において徐々に圧力が低下していく。したがって、DME燃料気化部がカム室寄りに形成されていることによって、圧力がある程度低下した状態のDME燃料を減圧して気化させるので、高圧で液体状態のDME燃料を効果的に減圧して気化させることができる。
【0020】
これにより、本願請求項5に記載の発明に係るインジェクションポンプによれば、本願請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明による作用効果に加えて、プランジャとプランジャバレルとの間に漏れ出た高圧で液体状態のDME燃料を効果的に減圧して気化させることができるという作用効果が得られる。
【0021】
本願請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインジェクションポンプを備えたディーゼルエンジンのDME燃料供給装置である。
本願請求項6に記載の発明に係るディーゼルエンジンのDME燃料供給装置によれば、ディーゼルエンジンのDME燃料供給装置において、前述した本願請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明による作用効果を得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、ディーゼルエンジンのDME燃料供給装置の概略構成について説明する。図1は、本願発明に係るディーゼルエンジンのDME燃料供給装置の概略構成を示したシステム構成図である。
【0023】
ディーゼルエンジン200にDME燃料を供給するDME燃料供給装置100は、本願発明に係るインジェクションポンプ1を備えている。インジェクションポンプ1は、ディーゼルエンジン200が有するシリンダ31の数と同じ数のインジェクションポンプエレメント2を備えている。フィードポンプ5は、燃料タンク4に貯留されているDME燃料を、所定の圧力に加圧してフィードパイプ52へ送出する。燃料タンク4のDME燃料送出口は、燃料タンク4内のDME燃料の液面より下に設けられており、フィードポンプ5を燃料タンク4のDME燃料の送出口近傍に配設されている。フィードパイプ52へ送出されたDME燃料は、フィルタ51でろ過され、3方電磁弁71を介してインジェクションポンプ1へ送出される。3方電磁弁71は、噴射状態時(ディーゼルエンジン200の運転時)にはON状態で、符号Aで示した矢印の方向に連通している。
【0024】
インジェクションポンプ1内のカム室(図示せず)は、ディーゼルエンジン200の潤滑系と分離された専用潤滑系となっており、オイルセパレータ6は、インジェクションポンプ1内のカム室に漏れだしたDME燃料が混入したカム室内の潤滑油を、DME燃料と潤滑油とに分離し、潤滑油をカム室に戻す。オイルセパレータ6で分離されたDME燃料は、カム室内の圧力が大気圧以下になるのを防止するチェック弁62を介して、カム室内のカムによって駆動されるコンプレッサー61へ送出され、コンプレッサー61で加圧された後、チェック弁63、及びクーラー41を介して燃料タンク4へ戻される。チェック弁63は、ディーゼルエンジン200の停止時に、燃料タンク4からDME燃料がカム室へ逆流するのを防止するために設けられている。
【0025】
このように、インジェクションポンプ1のカム室が、ディーゼルエンジン200の潤滑系と分離された専用潤滑系になっているので、インジェクションポンプエレメント2からカム室に漏れたDME燃料が、ディーゼルエンジン200の潤滑系に侵入する虞がない。そして、それによって、ディーゼルエンジン200の潤滑系に侵入したDME燃料が気化し、気化したDME燃料がエンジンのクランク室に侵入して引火するといった虞をなくすことができる。
【0026】
燃料タンク4からフィードポンプ5によって所定の圧力に加圧されて送出されたDME燃料は、インジェクションポンプ1の各インジェクションポンプエレメント2からインジェクションパイプ3を経由して、所定のタイミングで所定の量だけディーゼルエンジン200の各シリンダ31に配設されている燃料噴射ノズル32へ圧送される。インジェクションポンプ1からオーバーフローしたDME燃料は、オーバーフロー燃料パイプ8を経由し、オーバーフロー燃料の圧力を決めるチェック弁91、及びクーラー41を介して燃料タンク4へ戻される。また、各燃料噴射ノズル32からオーバーフローしたDME燃料は、オーバーフロー燃料パイプ9を経由し、オーバーフロー燃料の圧力を決めるチェック弁91及びクーラー41を介して燃料タンク4へ戻される。
【0027】
さらに、DME燃料供給装置100は、ディーゼルエンジン停止時に、インジェクションポンプ1内の油溜室(図示せず)、オーバーフロー燃料パイプ8、及びオーバーフロー燃料パイプ9に残留しているDME燃料を、燃料タンク4へ回収する「残留燃料回収手段」の構成要素として、アスピレータ7、3方電磁弁71、及び2方電磁弁72を備えている。
【0028】
アスピレータ7は、入口7aと出口7bと吸入口7cとを有している。入口7aと出口7bは真っ直ぐに連通しており、吸入口7cは、入口7aと出口7bとの間の連通路から、略垂直方向に分岐している。3方電磁弁71がOFFの時に連通する連通路(符号Bの矢印で示した連通方向)の出口側が入口7aに接続されており、クーラー41を介して燃料タンク4への経路へ出口7bが接続されている。また、吸引口7cは、噴射状態時(ディーゼルエンジン200の運転時)にはOFF状態となっている2方電磁弁72に接続されている。
【0029】
無噴射状態時(ディーゼルエンジン200の停止時)には、3方電磁弁71をOFFして符号Bの矢印で示した方向の連通路を構成するとともに、2方電磁弁72をONして、オーバーフロー燃料パイプ8及びオーバーフロー燃料パイプ9とアスピレータ7の吸入口7cとの間を連通させる(符号Cで示した矢印の方向)。したがって、フィードポンプ5から送出されたDME燃料は、インジェクションポンプ1へ送出されずに、アスピレータ7へ送出され、入口7aから出口7bへ抜け、クーラー41を介して燃料タンク4へ戻り、再びフィードポンプ5からアスピレータ7へ送出される。つまり、アスピレータ7を介してDME燃料液が環流する状態となる。そして、インジェクションポンプ1内の油溜室、オーバーフロー燃料パイプ8、及びオーバーフロー燃料パイプ9に残留しているDME燃料は、入口7aと出口7bを流れるDME燃料液の流れによって、吸引口7cから吸引されて燃料タンク4へ回収されることになる。
【0030】
このように、残留燃料回収手段は、フィードポンプ5を駆動源としてアスピレータ7によって、油溜室、オーバーフロー燃料パイプ8、及びオーバーフロー燃料パイプ9のDME燃料を吸引して燃料タンク4へ回収する構成を成しているので、新たに残留燃料回収用のポンプ等を設ける必要がない。
【0031】
次に、本願発明に係るインジェクションポンプ1を構成するインジェクションポンプエレメント2の概略構造について説明する。図2は、本願発明に係るインジェクションポンプ1のインジェクションポンプエレメント2近傍の断面を示した要部斜視図である。また、図3は、本願発明に係るインジェクションポンプ1の断面図であり、図3(a)は、全体の側面図、図3(b)は、プランジャの一部を拡大して示したものである。
【0032】
デリバリバルブホルダ21は、デリバリバルブ挿設孔211を有する形状を成しており、インジェクションポンプ1の基体に固定されている。デリバリバルブ挿設孔211と連通している燃料液送出口212には、インジェクションパイプ3が接続される。デリバリバルブ挿設孔211には、デリバリバルブ23が往復動可能に挿設されており、デリバリバルブ23は、デリバリスプリング22によって、デリバリバルブホルダ21と一体に配設されているデリバリバルブシート24のバルブシート部24aに、バルブ部231が当接する如く付勢されている。
【0033】
プランジャバレル25は、デリバリバルブシート24と一体に配設され、デリバリバルブシート24に連通している液圧室25aを有している。液圧室25aには、プランジャ26が往復動可能に挿設されており、その一端側がデリバリバルブ23に面している。プランジャ26は、プランジャスプリング27によって、カム13側に付勢されている。プランジャ26は、ディーゼルエンジン200の駆動軸に連結され、ディーゼルエンジン200の駆動力で回転するカムシャフト12のカム13によって、タペット28を介してデリバリバルブ23側(符号Dの矢印で示した方向)に押し上げられる。プランジャ26のつば部261は、コントロールラック14と係合して回転するピニオン29と一体の円筒状の部材であるスリーブ291と係合しており、コントロールラック14の往復動によってピニオン29が回転し、プランジャ26が周方向に回転する構成を成しており、このプランジャの回転位置によってDME燃料の噴射量が増減する。
【0034】
プランジャ26が挿設されているプランジャバレル25の内周面には、本願発明に係る「DME燃料気化部」としての3つの環状溝20がプランジャバレル25の内周面の周方向に形成されている。環状溝20によってプランジャ26とプランジャバレル25との摺接面には、空間部20aが形成されている。油溜室11内の高圧な液体状態のDME燃料が液圧室25aに充填され、プランジャ25が上昇することによってデリバリバルブ23を介して燃料液送出口212へ送出される際に、プランジャ26とプランジャバレル25との摺接面に液体状態のDME燃料が漏れ出る。プランジャ26とプランジャバレル25との摺接面に漏れ出た液体状態のDME燃料は、3つの空間部20aにおいて段階的に減圧されて気化した状態でカム室15へ漏れ出る。気化した状態でカム室15へ漏れ出たDME燃料は、カム室15に配設されたオイルセパレータ6によって潤滑油から分離され、コンプレッサー61によって吸引されて燃料タンク4へ送出される。
【0035】
尚、空間部20aの容積は、プランジャ26とプランジャバレル25との摺接面の間隔等からプランジャ26とプランジャバレル25との摺接面に漏れ出た液体状態のDME燃料が十分減圧されて気化可能な容量であれば良い。また、プランジャ26とプランジャバレル25との摺接面は、高精度に形成されているので、その精度に環状溝20が及ぼす影響を最小限にするためにも可能な限り幅が狭く容量の小さい溝であることが好ましいと言える。
【0036】
このようにして、油溜室11からカム室15へ向けてプランジャ26とプランジャバレル25との摺接面に漏れ出た高圧で液体状態のDME燃料は、空間部20aにおいて減圧されて気化した状態でカム室15へ漏れ出る。そして、カム室15へ漏れ出た気体状態のDME燃料をオイルセパレータ6で分離しつつコンプレッサー61で吸引して燃料タンク4へ戻すので、カム室15内に液体状態でDME燃料が漏れ出てカム室15内の潤滑油に混入してしまうことを防止することができる。したがって、潤滑油にDME燃料が混入することによって潤滑油の潤滑性能が低下してしまう虞を少なくすることができる。
【0037】
また、他の実施の形態としては、空間部20aを形成する環状溝20をプランジャ26とプランジャバレル25との摺接面のカム室寄りに形成したものが挙げられる。図4は、プランジャバレル25のカム室15寄りに環状溝20が形成されたインジェクションポンプ1の一部を拡大して示した断面図である。
【0038】
プランジャ26とプランジャバレル25との摺接面に漏れ出た高圧で液体状のDME燃料は、カム室15に向けて漏れ出る過程において徐々に圧力が低下していく。したがって、このように、環状溝20がカム室寄りに形成され、空間部20aがカム室寄りに形成されていることによって、圧力がある程度低下した状態のDME燃料を減圧して気化させるので、高圧で液体状態のDME燃料を効果的に減圧して気化させることができる。
【0039】
さらに、他の実施の形態としては、プランジャ26に環状溝20が形成されたものが挙げられる。図5は、プランジャ26に環状溝20が形成されたインジェクションポンプ1の一部を拡大して示した断面図である。
【0040】
このように、プランジャ26とプランジャバレル25との摺接面において、プランジャ26に環状溝20を設けて空間部20aを形成しても本願発明の実施は可能であり、本願発明による作用効果を得ることができるものである。また、プランジャ26に環状溝20を形成することによって、環状溝20を容易に精度良く形成することができるというメリットがある。
【0041】
尚、本願発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本願発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0042】
【発明の効果】
本願発明によれば、カム室内の潤滑油に液体状のDME燃料が混入してしまうことによる潤滑油の潤滑性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係るディーゼルエンジンのDME燃料供給装置の概略構成を示したシステム構成図である。
【図2】本願発明に係るインジェクションポンプのインジェクションポンプエレメント近傍の断面を示した要部斜視図である。
【図3】本願発明に係るインジェクションポンプの断面図であり、図3(a)は、全体の側面図、図3(b)は、プランジャの一部を拡大して示したものである。
【図4】プランジャバレルのカム室寄りに環状溝が形成されたインジェクションポンプの一部を拡大して示した断面図である。
【図5】プランジャに環状溝が形成されたインジェクションポンプの一部を拡大して示した断面図である。
【符号の説明】
1 インジェクションポンプ
2 インジェクションポンプエレメント
6 オイルセパレータ
11 油溜室
15 カム室
20 環状溝
20a 空間部
25 プランジャバレル
26 プランジャ
61 コンプレッサー
100 DME燃料供給装置
200 ディーゼルエンジン
【発明の属する技術分野】
本願発明は、ディーゼルエンジンのDME燃料供給装置のインジェクションポンプ、及び該インジェクションポンプを備えたディーゼルエンジンのDME燃料供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンによる大気汚染対策として、軽油の代わりに排気がクリーンなDME(ジメチルエーテル)を燃料とするものが注目されている。DME燃料は、従来の燃料である軽油と違って液化ガス燃料である。つまり、軽油と比較して沸点温度が低く、大気圧下で軽油が常温において液体であるのに対して、DMEは、常温において気体となる性質を有している。そのため、従来のディーゼルエンジンにDME燃料を使用する際には、インジェクションポンプへの供給圧力が低いと、DME燃料が気化してしまう。よって、液体のDME燃料をインジェクションポンプへ供給するためには、軽油燃料よりインジェクションポンプへの供給圧力を高くする必要がある。
【0003】
したがって、従来のディーゼルエンジンにDME燃料を使用すると、そのインジェクションポンプへの高い供給圧力によって、エンジンの燃料噴射ノズルにDME燃料を送出するインジェクションポンプのプランジャバレルとプランジャとの間の隙間から、インジェクションポンプのカム室に漏れる燃料の量が、軽油燃料を使用した場合と比較して大幅に増加してしまうという問題が生じる。また、DMEは、軽油と比較して低粘度であるので、隙間から漏れやすくなり、さらにその量は多くなってしまう。そして、プランジャバレルとプランジャとの間の隙間から漏れた液体状のDME燃料が、インジェクションポンプのカム室に流れ込んでカム室内の潤滑油に混入してしまうと、潤滑油の粘性が低下し、インジェクションポンプの動作に支障をきたす虞がある。この潤滑油に混入した液体状のDME燃料は、分離して取り除くのが困難であり、また、気化することによって潤滑油から抜けるまでに長い時間を要することから、ディーゼルエンジンのDME燃料供給装置のインジェクションポンプにおいて、プランジャバレルとプランジャとの隙間からカム室に漏れ出る液体状のDME燃料を可能な限り少なくすることが課題とされている。
【0004】
しかし、プランジャバレル及びプランジャを高精度に形成して、プランジャバレルとプランジャとの隙間を可能な限り小さくしても漏れ出るDME燃料を少なくするのには限界がある。そこで、このような課題を解決する手段の一例としては、カム室内の気体部分に充満している気化したDME燃料からオイルセパレータで潤滑油を分離し、分離した気体状のDME燃料を吸引して燃料タンクに戻すものが挙げられる。これによって、カム室内に漏れ出た液体状のDME燃料の気化が促進され、液体状態で潤滑油に混入する量を少なくすることができるとともに、潤滑油に混入してしまった液体状のDME燃料の気化が促進され、液体状のDME燃料が潤滑油から分離される時間を短くすることができるので、DME燃料が潤滑油に混入することによる潤滑油の潤滑性能の低下を少なくすることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、カム室内に液体状のDME燃料が漏れ出る以上、潤滑油に液体状のDME燃料が混入してしまうことは避けられず、DME燃料が混入することを防止することはできなかった。そのため、DME燃料が潤滑油に混入して潤滑油の潤滑性能が低下することを防止することができなかった。
【0006】
本願発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、カム室内の潤滑油に液体状のDME燃料が混入してしまうことによる潤滑油の潤滑性能の低下を防止することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、ディーゼルエンジンの駆動軸の回転が伝達されて回転するカムシャフトと係合するプランジャの上下動で開閉可能なデリバリバルブによって、燃料タンクからフィードパイプを経由して前記DME燃料が供給される油溜室の前記DME燃料を、所定のタイミングで所定の量だけ前記ディーゼルエンジンの燃料噴射ノズルに連通しているインジェクションパイプへ加圧して送出するインジェクションポンプエレメントを有する前記ディーゼルエンジンのDME燃料供給装置のインジェクションポンプであって、前記インジェクションポンプエレメントは、前記油溜室からカム室へ向けて前記プランジャと該プランジャが挿設されるプランジャバレルとの摺接面に漏れ出た液体状の前記DME燃料を、前記カム室内に漏れ出る前に減圧して気化させる空間を前記プランジャと前記プランジャバレルとの摺接面に形成したDME燃料気化部を備えている、ことを特徴としたインジェクションポンプである。
【0008】
前述したように、インジェクションポンプの油溜室には、高圧な液体状態のDME燃料が充填されており、油溜室から各インジェクションポンプエレメントへ供給されたDME燃料は、その圧力によってプランジャとプランジャバレルとの摺接面のわずかな隙間からカム室へわずかに漏れ出てしまう。そのため、このように、プランジャとプランジャバレルとの摺接面に油溜室から漏れ出た高圧な液体状態のDME燃料を減圧させるための空間部を設けることによって、常温で気体となる性質を有する高圧な液体状態のDME燃料を減圧して飽和蒸気圧以下にすることでカム室に漏れ出る前に気化させることができる。
【0009】
つまり、DME燃料気化部は、液体が急激に膨張すると圧力が低下して、そのエネルギーが失われる原理と、常温の大気圧下では気体となるDME燃料特有の性質を応用することによって、加圧されて液体状態のDME燃料を減圧して気化させるものである。したがって、油溜室内の高圧な液体状態のDME燃料は、プランジャとプランジャバレルとの摺接面からカム室に漏れ出る前に空間部において減圧されて気化するので、液体状態のDME燃料がカム室内の潤滑油に混入してしまうことを防止することができる。
【0010】
これにより、本願請求項1に記載の発明に係るインジェクションポンプによれば、高圧な液体状態のDME燃料を減圧する空間部を有するDME燃料気化部によって、液体状態のDME燃料がカム室内の潤滑油に混入してしまうことを防止することができるので、カム室内の潤滑油に液体状のDME燃料が混入してしまうことによる潤滑油の潤滑性能の低下を防止することができるという作用効果が得られる。
【0011】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記空間部は、前記プランジャの周面に周方向に形成された環状溝によって形成されている、ことを特徴としたインジェクションポンプである。
【0012】
本願請求項2に記載の発明に係るインジェクションポンプによれば、本願請求項1に記載の発明による作用効果に加えて、DME燃料気化部の空間部がプランジャに形成されているので、つまり、プランジャの外周面に空間部が形成されているので、空間部を形成するための加工が容易になるという作用効果が得られる。
【0013】
本願請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記空間部は、前記プランジャバレルの内周面に周方向に形成された環状溝によって形成されている、ことを特徴としたインジェクションポンプである。
【0014】
このように、空間部をプランジャの外周面が摺接するプランジャバレルの内周面に形成してもよく、それによって、本願請求項1に記載の発明による作用効果を得ることができる。
【0015】
本願請求項4に記載の発明は、請求項2又は3において、前記DME燃料気化部は、複数の前記環状溝を有している、ことを特徴としたインジェクションポンプである。
【0016】
このように、複数の環状溝によって空間部を形成することによって、複数の空間が形成され、それによって、高圧な液体状のDME燃料を段階的に減圧していくことができる。したがって、環状溝による各空間の容積を小さく設定することができるので、高精度に形成されているプランジャとプランジャバレルとの摺接面の精度が低下する虞を少なくすることができる。
【0017】
これにより、本願請求項4に記載の発明に係るインジェクションポンプによれば、本願請求項2又は3に記載の発明による作用効果に加えて、DME燃料気化部を形成することによるプランジャ及びプランジャバレルの精度への影響を少なくすることができるという作用効果が得られる。
【0018】
本願請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項において、前記DME燃料気化部は、前記空間部が前記プランジャと前記プランジャバレルとの摺接面の前記カム室寄りに形成されている、ことを特徴としたインジェクションポンプである。
【0019】
プランジャとプランジャバレルとの摺接面に漏れ出た高圧で液体状のDME燃料は、カム室に向けて漏れ出る過程において徐々に圧力が低下していく。したがって、DME燃料気化部がカム室寄りに形成されていることによって、圧力がある程度低下した状態のDME燃料を減圧して気化させるので、高圧で液体状態のDME燃料を効果的に減圧して気化させることができる。
【0020】
これにより、本願請求項5に記載の発明に係るインジェクションポンプによれば、本願請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明による作用効果に加えて、プランジャとプランジャバレルとの間に漏れ出た高圧で液体状態のDME燃料を効果的に減圧して気化させることができるという作用効果が得られる。
【0021】
本願請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインジェクションポンプを備えたディーゼルエンジンのDME燃料供給装置である。
本願請求項6に記載の発明に係るディーゼルエンジンのDME燃料供給装置によれば、ディーゼルエンジンのDME燃料供給装置において、前述した本願請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明による作用効果を得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、ディーゼルエンジンのDME燃料供給装置の概略構成について説明する。図1は、本願発明に係るディーゼルエンジンのDME燃料供給装置の概略構成を示したシステム構成図である。
【0023】
ディーゼルエンジン200にDME燃料を供給するDME燃料供給装置100は、本願発明に係るインジェクションポンプ1を備えている。インジェクションポンプ1は、ディーゼルエンジン200が有するシリンダ31の数と同じ数のインジェクションポンプエレメント2を備えている。フィードポンプ5は、燃料タンク4に貯留されているDME燃料を、所定の圧力に加圧してフィードパイプ52へ送出する。燃料タンク4のDME燃料送出口は、燃料タンク4内のDME燃料の液面より下に設けられており、フィードポンプ5を燃料タンク4のDME燃料の送出口近傍に配設されている。フィードパイプ52へ送出されたDME燃料は、フィルタ51でろ過され、3方電磁弁71を介してインジェクションポンプ1へ送出される。3方電磁弁71は、噴射状態時(ディーゼルエンジン200の運転時)にはON状態で、符号Aで示した矢印の方向に連通している。
【0024】
インジェクションポンプ1内のカム室(図示せず)は、ディーゼルエンジン200の潤滑系と分離された専用潤滑系となっており、オイルセパレータ6は、インジェクションポンプ1内のカム室に漏れだしたDME燃料が混入したカム室内の潤滑油を、DME燃料と潤滑油とに分離し、潤滑油をカム室に戻す。オイルセパレータ6で分離されたDME燃料は、カム室内の圧力が大気圧以下になるのを防止するチェック弁62を介して、カム室内のカムによって駆動されるコンプレッサー61へ送出され、コンプレッサー61で加圧された後、チェック弁63、及びクーラー41を介して燃料タンク4へ戻される。チェック弁63は、ディーゼルエンジン200の停止時に、燃料タンク4からDME燃料がカム室へ逆流するのを防止するために設けられている。
【0025】
このように、インジェクションポンプ1のカム室が、ディーゼルエンジン200の潤滑系と分離された専用潤滑系になっているので、インジェクションポンプエレメント2からカム室に漏れたDME燃料が、ディーゼルエンジン200の潤滑系に侵入する虞がない。そして、それによって、ディーゼルエンジン200の潤滑系に侵入したDME燃料が気化し、気化したDME燃料がエンジンのクランク室に侵入して引火するといった虞をなくすことができる。
【0026】
燃料タンク4からフィードポンプ5によって所定の圧力に加圧されて送出されたDME燃料は、インジェクションポンプ1の各インジェクションポンプエレメント2からインジェクションパイプ3を経由して、所定のタイミングで所定の量だけディーゼルエンジン200の各シリンダ31に配設されている燃料噴射ノズル32へ圧送される。インジェクションポンプ1からオーバーフローしたDME燃料は、オーバーフロー燃料パイプ8を経由し、オーバーフロー燃料の圧力を決めるチェック弁91、及びクーラー41を介して燃料タンク4へ戻される。また、各燃料噴射ノズル32からオーバーフローしたDME燃料は、オーバーフロー燃料パイプ9を経由し、オーバーフロー燃料の圧力を決めるチェック弁91及びクーラー41を介して燃料タンク4へ戻される。
【0027】
さらに、DME燃料供給装置100は、ディーゼルエンジン停止時に、インジェクションポンプ1内の油溜室(図示せず)、オーバーフロー燃料パイプ8、及びオーバーフロー燃料パイプ9に残留しているDME燃料を、燃料タンク4へ回収する「残留燃料回収手段」の構成要素として、アスピレータ7、3方電磁弁71、及び2方電磁弁72を備えている。
【0028】
アスピレータ7は、入口7aと出口7bと吸入口7cとを有している。入口7aと出口7bは真っ直ぐに連通しており、吸入口7cは、入口7aと出口7bとの間の連通路から、略垂直方向に分岐している。3方電磁弁71がOFFの時に連通する連通路(符号Bの矢印で示した連通方向)の出口側が入口7aに接続されており、クーラー41を介して燃料タンク4への経路へ出口7bが接続されている。また、吸引口7cは、噴射状態時(ディーゼルエンジン200の運転時)にはOFF状態となっている2方電磁弁72に接続されている。
【0029】
無噴射状態時(ディーゼルエンジン200の停止時)には、3方電磁弁71をOFFして符号Bの矢印で示した方向の連通路を構成するとともに、2方電磁弁72をONして、オーバーフロー燃料パイプ8及びオーバーフロー燃料パイプ9とアスピレータ7の吸入口7cとの間を連通させる(符号Cで示した矢印の方向)。したがって、フィードポンプ5から送出されたDME燃料は、インジェクションポンプ1へ送出されずに、アスピレータ7へ送出され、入口7aから出口7bへ抜け、クーラー41を介して燃料タンク4へ戻り、再びフィードポンプ5からアスピレータ7へ送出される。つまり、アスピレータ7を介してDME燃料液が環流する状態となる。そして、インジェクションポンプ1内の油溜室、オーバーフロー燃料パイプ8、及びオーバーフロー燃料パイプ9に残留しているDME燃料は、入口7aと出口7bを流れるDME燃料液の流れによって、吸引口7cから吸引されて燃料タンク4へ回収されることになる。
【0030】
このように、残留燃料回収手段は、フィードポンプ5を駆動源としてアスピレータ7によって、油溜室、オーバーフロー燃料パイプ8、及びオーバーフロー燃料パイプ9のDME燃料を吸引して燃料タンク4へ回収する構成を成しているので、新たに残留燃料回収用のポンプ等を設ける必要がない。
【0031】
次に、本願発明に係るインジェクションポンプ1を構成するインジェクションポンプエレメント2の概略構造について説明する。図2は、本願発明に係るインジェクションポンプ1のインジェクションポンプエレメント2近傍の断面を示した要部斜視図である。また、図3は、本願発明に係るインジェクションポンプ1の断面図であり、図3(a)は、全体の側面図、図3(b)は、プランジャの一部を拡大して示したものである。
【0032】
デリバリバルブホルダ21は、デリバリバルブ挿設孔211を有する形状を成しており、インジェクションポンプ1の基体に固定されている。デリバリバルブ挿設孔211と連通している燃料液送出口212には、インジェクションパイプ3が接続される。デリバリバルブ挿設孔211には、デリバリバルブ23が往復動可能に挿設されており、デリバリバルブ23は、デリバリスプリング22によって、デリバリバルブホルダ21と一体に配設されているデリバリバルブシート24のバルブシート部24aに、バルブ部231が当接する如く付勢されている。
【0033】
プランジャバレル25は、デリバリバルブシート24と一体に配設され、デリバリバルブシート24に連通している液圧室25aを有している。液圧室25aには、プランジャ26が往復動可能に挿設されており、その一端側がデリバリバルブ23に面している。プランジャ26は、プランジャスプリング27によって、カム13側に付勢されている。プランジャ26は、ディーゼルエンジン200の駆動軸に連結され、ディーゼルエンジン200の駆動力で回転するカムシャフト12のカム13によって、タペット28を介してデリバリバルブ23側(符号Dの矢印で示した方向)に押し上げられる。プランジャ26のつば部261は、コントロールラック14と係合して回転するピニオン29と一体の円筒状の部材であるスリーブ291と係合しており、コントロールラック14の往復動によってピニオン29が回転し、プランジャ26が周方向に回転する構成を成しており、このプランジャの回転位置によってDME燃料の噴射量が増減する。
【0034】
プランジャ26が挿設されているプランジャバレル25の内周面には、本願発明に係る「DME燃料気化部」としての3つの環状溝20がプランジャバレル25の内周面の周方向に形成されている。環状溝20によってプランジャ26とプランジャバレル25との摺接面には、空間部20aが形成されている。油溜室11内の高圧な液体状態のDME燃料が液圧室25aに充填され、プランジャ25が上昇することによってデリバリバルブ23を介して燃料液送出口212へ送出される際に、プランジャ26とプランジャバレル25との摺接面に液体状態のDME燃料が漏れ出る。プランジャ26とプランジャバレル25との摺接面に漏れ出た液体状態のDME燃料は、3つの空間部20aにおいて段階的に減圧されて気化した状態でカム室15へ漏れ出る。気化した状態でカム室15へ漏れ出たDME燃料は、カム室15に配設されたオイルセパレータ6によって潤滑油から分離され、コンプレッサー61によって吸引されて燃料タンク4へ送出される。
【0035】
尚、空間部20aの容積は、プランジャ26とプランジャバレル25との摺接面の間隔等からプランジャ26とプランジャバレル25との摺接面に漏れ出た液体状態のDME燃料が十分減圧されて気化可能な容量であれば良い。また、プランジャ26とプランジャバレル25との摺接面は、高精度に形成されているので、その精度に環状溝20が及ぼす影響を最小限にするためにも可能な限り幅が狭く容量の小さい溝であることが好ましいと言える。
【0036】
このようにして、油溜室11からカム室15へ向けてプランジャ26とプランジャバレル25との摺接面に漏れ出た高圧で液体状態のDME燃料は、空間部20aにおいて減圧されて気化した状態でカム室15へ漏れ出る。そして、カム室15へ漏れ出た気体状態のDME燃料をオイルセパレータ6で分離しつつコンプレッサー61で吸引して燃料タンク4へ戻すので、カム室15内に液体状態でDME燃料が漏れ出てカム室15内の潤滑油に混入してしまうことを防止することができる。したがって、潤滑油にDME燃料が混入することによって潤滑油の潤滑性能が低下してしまう虞を少なくすることができる。
【0037】
また、他の実施の形態としては、空間部20aを形成する環状溝20をプランジャ26とプランジャバレル25との摺接面のカム室寄りに形成したものが挙げられる。図4は、プランジャバレル25のカム室15寄りに環状溝20が形成されたインジェクションポンプ1の一部を拡大して示した断面図である。
【0038】
プランジャ26とプランジャバレル25との摺接面に漏れ出た高圧で液体状のDME燃料は、カム室15に向けて漏れ出る過程において徐々に圧力が低下していく。したがって、このように、環状溝20がカム室寄りに形成され、空間部20aがカム室寄りに形成されていることによって、圧力がある程度低下した状態のDME燃料を減圧して気化させるので、高圧で液体状態のDME燃料を効果的に減圧して気化させることができる。
【0039】
さらに、他の実施の形態としては、プランジャ26に環状溝20が形成されたものが挙げられる。図5は、プランジャ26に環状溝20が形成されたインジェクションポンプ1の一部を拡大して示した断面図である。
【0040】
このように、プランジャ26とプランジャバレル25との摺接面において、プランジャ26に環状溝20を設けて空間部20aを形成しても本願発明の実施は可能であり、本願発明による作用効果を得ることができるものである。また、プランジャ26に環状溝20を形成することによって、環状溝20を容易に精度良く形成することができるというメリットがある。
【0041】
尚、本願発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本願発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0042】
【発明の効果】
本願発明によれば、カム室内の潤滑油に液体状のDME燃料が混入してしまうことによる潤滑油の潤滑性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係るディーゼルエンジンのDME燃料供給装置の概略構成を示したシステム構成図である。
【図2】本願発明に係るインジェクションポンプのインジェクションポンプエレメント近傍の断面を示した要部斜視図である。
【図3】本願発明に係るインジェクションポンプの断面図であり、図3(a)は、全体の側面図、図3(b)は、プランジャの一部を拡大して示したものである。
【図4】プランジャバレルのカム室寄りに環状溝が形成されたインジェクションポンプの一部を拡大して示した断面図である。
【図5】プランジャに環状溝が形成されたインジェクションポンプの一部を拡大して示した断面図である。
【符号の説明】
1 インジェクションポンプ
2 インジェクションポンプエレメント
6 オイルセパレータ
11 油溜室
15 カム室
20 環状溝
20a 空間部
25 プランジャバレル
26 プランジャ
61 コンプレッサー
100 DME燃料供給装置
200 ディーゼルエンジン
Claims (6)
- ディーゼルエンジンの駆動軸の回転が伝達されて回転するカムシャフトと係合するプランジャの上下動で開閉可能なデリバリバルブによって、燃料タンクからフィードパイプを経由して前記DME燃料が供給される油溜室の前記DME燃料を、所定のタイミングで所定の量だけ前記ディーゼルエンジンの燃料噴射ノズルに連通しているインジェクションパイプへ加圧して送出するインジェクションポンプエレメントを有する前記ディーゼルエンジンのDME燃料供給装置のインジェクションポンプであって、
前記インジェクションポンプエレメントは、前記油溜室からカム室へ向けて前記プランジャと該プランジャが挿設されるプランジャバレルとの摺接面に漏れ出た液体状の前記DME燃料を、前記カム室内に漏れ出る前に減圧して気化させる空間部を前記プランジャと前記プランジャバレルとの摺接面に形成したDME燃料気化部を備えている、ことを特徴としたインジェクションポンプ。 - 請求項1において、前記空間部は、前記プランジャの周面に周方向に形成された環状溝によって形成されている、ことを特徴としたインジェクションポンプ。
- 請求項1において、前記空間部は、前記プランジャバレルの内周面に周方向に形成された環状溝によって形成されている、ことを特徴としたインジェクションポンプ。
- 請求項2又は3において、前記DME燃料気化部は、複数の前記環状溝を有している、ことを特徴としたインジェクションポンプ。
- 請求項1〜4のいずれか1項において、前記DME燃料気化部は、前記空間部が前記プランジャと前記プランジャバレルとの摺接面の前記カム室寄りに形成されている、ことを特徴としたインジェクションポンプ。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のインジェクションポンプを備えたディーゼルエンジンのDME燃料供給装置。
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JP2016056709A (ja) * | 2014-09-08 | 2016-04-21 | いすゞ自動車株式会社 | ディーゼルエンジン及びディーゼルエンジンの燃料漏出検出方法 |
-
2002
- 2002-07-09 JP JP2002199407A patent/JP2004044397A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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