JP3885506B2 - ジメチルエーテルエンジンの燃料噴射ポンプ - Google Patents

ジメチルエーテルエンジンの燃料噴射ポンプ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料タンクから圧送されたジメチルエーテルをエンジン内に噴射するのに適した圧力に高めて燃料噴射装置に送るジメチルエーテルエンジンの燃料噴射ポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ディーゼルエンジンの燃料として、ジメチルエーテルを用いる場合、通常の軽油用燃料噴射ポンプが流用されている。この燃料噴射ポンプは、列型燃料噴射ポンプやコモンレール用高圧燃料ポンプ等があるが、いずれも、プランジャやプランジャバレル等を備えたピストン構造を有しており、このプランジャの往復運動によって、ポンプ室内の燃料を圧縮して高圧にして、燃料噴射装置に圧送するようになっている。
【0003】
燃料噴射ポンプには、上記プランジャを回転させるためにカムが設けられている。プランジャは燃料であるジメチルエーテルによって潤滑され、カムはプランジャ側とは別途の潤滑油によって潤滑されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の燃料噴射ポンプは、元々軽油用であり、軽油を用いた場合には、比較的粘性が高いため、軽油がポンプ室からリークせず、カム側に流れることはなかった。
【0005】
しかしながら、ジメチルエーテルを用いた場合には、その粘性が低く、プランジャとプランジャバレルとの隙間からジメチルエーテルがカム側へと漏れ、カム側の潤滑油にジメチルエーテルが混入してしまう。これによって、潤滑油の劣化、さらにはブローバイガスを外部に排出している場合には、ジメチルエーテル燃料のエンジン外部への漏出、ブローバイガスを吸気に戻している場合には、エンジンの異常燃焼等が考えられ、外部への悪影響やエンジンの破損が発生する等の問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題を解決すべく案出されたものであり、その目的は、ジメチルエーテルがカム側の潤滑油に混入するのを防止できるジメチルエーテルエンジンの燃料噴射ポンプを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決すべく、本発明は、プランジャバレルブロック内に挿入されたプランジャを作動させるためのカムと、上記プランジャの頂面と上記プランジャバレルブロックの内面とから区画されたポンプ室と、該ポンプ室に燃料であるジメチルエーテルを導くためのジメチルエーテル吸入流路と、上記ポンプ室から上記プランジャにより圧縮されたジメチルエーテルを吐出するためのジメチルエーテル吐出流路とを備え、上記プランジャと上記プランジャバレルブロックとの接触面をジメチルエーテルによって潤滑するようにしたジメチルエーテルエンジンの燃料噴射ポンプにおいて、上記ポンプ室から上記接触面を伝ってリークしたジメチルエーテルを貯留すると共にその内部を上記カムから隔離するように形成された隔膜と、該隔膜の内部のジメチルエーテルを燃料タンクに戻すためのジメチルエーテル戻し流路と、該ジメチルエーテル戻し流路に配設された一方向弁であって、その開弁圧力が上記隔膜の内部のジメチルエーテルが常に液体状態となる圧力に設定された逆止弁とを備え、該逆止弁により上記隔膜の内部のジメチルエーテルを液体状態とすることで上記接触面の潤滑を確保するようにしたものである。
【0008】
上記構成によれば、隔膜によって、プランジャ側とカム側とを隔離したことによって、プランジャの周囲からリークしたジメチルエーテルがカム側へ漏出することがなく、カム側の潤滑油に混入することはない。また、逆止弁によって隔膜の内部の圧力が高められて隔膜の内部のジメチルエーテルが常に液体状態となるので、その液体状態のジメチルエーテルによって、プランジャとプランジャバレルブロックとの接触面を常に確実に潤滑することができる。
【0009】
また、上記ジメチルエーテル吸入流路に配設され、ジメチルエーテルを上記ポンプ室へと導く一方向弁であって、その開弁圧力がジメチルエーテルの蒸気圧以上に設定された逆止弁を備えていてもよい。
【0010】
また、上記ジメチルエーテル吐出流路に配設され、ジメチルエーテルを燃料噴射装置へと導く一方向弁であって、その開弁圧力がジメチルエーテルをエンジン内に噴射するのに適した所定の噴射圧力に設定された逆止弁を備えていてもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0013】
図1は本発明に係るジメチルエーテルエンジンの燃料噴射ポンプの好適な実施の形態を示した断面図、図2はプランジャの周囲を示した断面図、図3はジメチルエーテルエンジンの燃料供給システムを示した概略構成図である。
【0014】
まず、本実施の形態のジメチルエーテルエンジンの燃料供給システムの全体構成を説明する。
【0015】
図3に示すように、ジメチルエーテルエンジンの燃料供給システム1は、シャシ側(図示せず)に燃料タンク3が設けられている。燃料タンク3には、エンジン側(図示せず)に設けられた燃料噴射ポンプ5にジメチルエーテル(DME)燃料を供給するための燃料パイプ6が接続されている。
【0016】
燃料噴射ポンプ5の下流側には、エンジンの燃焼室(図示せず)内にジメチルエーテル燃料を噴射するための複数の燃料噴射装置(インジェクタ)7がそれぞれ接続されている。
【0017】
燃料噴射ポンプ5には、余剰のジメチルエーテル燃料を燃料タンク3に戻す燃料戻しパイプ8が接続されている。
【0018】
燃料タンク3内には、ジメチルエーテルをその圧力を飽和蒸気圧以上に高めて燃料噴射ポンプ5に送るための圧送ポンプ9が設けられている。
【0019】
なお、図中、11は燃料クーラ、12は燃料カットバルブをそれぞれ示す。
【0020】
図1に示すように、燃料噴射ポンプ5は、ジメチルエーテルを圧縮するためのポンプ室14を有している。ポンプ室14は、シリンダブロック15とプランジャ16とで区画されている。
【0021】
詳しくは、シリンダブロック15は、上ブロック17と中ブロック18と下ブロック19とプランジャバレルブロック21とを有しており、ポンプ室14は中ブロック18とプランジャバレルブロック21とプランジャ16とで囲まれて区画形成されている。
【0022】
プランジャ16は、その下端近傍が拡径して鍔部23が形成されており、その鍔部23の上面とプランジャバレルブロック21の下端面との間にバネ部材24が設けられ、プランジャ16を下方に付勢するようになっている。
【0023】
プランジャ16の下部には、タペット22が設けられており、その下部には、回転軸25に固定されたカム26が各プランジャ16毎に設けられている。カム26が一回転するごとに、タペット22と共にプランジャ16が一回押し上げられ、ポンプ室14内のジメチルエーテルを圧縮するようになっている。
【0024】
タペット22は、有底筒状に形成され、その内側にプランジャ16が収容されている。タペット22はその外周面で、下ブロック19と接触して、プランジャ16の往復運動方向に摺動自在となっている。
【0025】
プランジャ16の往復運動の際の潤滑は、圧縮される燃料として供給されたジメチルエーテル自体で行うようになっている。一方、カム26の回転の際の潤滑、及びタペット22と下ブロック19との潤滑は、別途に供給された潤滑油によって行うようになっている。
【0026】
上ブロック17と中ブロック18には、ジメチルエーテルを供給するジメチルエーテル吸入流路27が設けられている。このジメチルエーテル吸入流路27は、燃料タンク3から延びる燃料パイプ6との接続部(図示せず)から各ポンプ室14に延びて形成されている。ジメチルエーテル吸入流路27には逆止弁28が設けられている。この逆止弁28は、ポンプ室14側にのみジメチルエーテルを供給可能で、ジメチルエーテルの圧力が蒸気圧よりも高い場合に、そのジメチルエーテルがポンプ室14内に流されるように、圧力が設定されている。
【0027】
上ブロック17と中ブロック18には、各ポンプ室14から圧縮されたジメチルエーテルを吐出するジメチルエーテル吐出流路31が設けられている。このジメチルエーテル吐出流路31は、各ポンプ室14から燃料噴射装置7側(図1中、上方)に延びて形成されている。ジメチルエーテル吐出流路31には逆止弁32が設けられている。この逆止弁32は、燃料噴射装置7側にのみジメチルエーテルを吐出可能で、ジメチルエーテルの圧力がエンジン内に噴射するのに適した圧力の場合に、そのジメチルエーテルが燃料噴射装置7側に流されるように、圧力が設定されている。
【0028】
ところで、本発明は、燃料であるジメチルエーテルによって潤滑されるプランジャ16側と別途の潤滑油によって潤滑されるカム26側とを隔離するための隔膜33を備えたことを特徴とする。
【0029】
プランジャバレルブロック21は、プランジャ16の外周を覆うべく筒状に形成されており、その外周下部は、縮径されている。
【0030】
隔膜33は、プランジャバレルブロック21の外周の縮径された段差部34と、プランジャ16の鍔部23の上面との間に掛け渡されている。隔膜33は、伸縮自在の蛇腹状の金属膜にて構成されている。隔膜33は、プランジャバレルブロック21の縮径部分35を覆うように円筒状に形成されており、プランジャ16の往復運動方向に伸縮自在となっている。
【0031】
なお、隔膜33の材質は、金属膜に限られるものではなく、ゴム等の弾性材料であってもよい。
【0032】
この隔膜33によって、燃料噴射ポンプ5内の空間が、隔膜33の内側となるプランジャ側空間36と、隔膜33の外側からカム室38へと繋がるカム側空間37とに区画されることとなる。
【0033】
隔膜33は、その上下端がプランジャバレルブロック21及びプランジャ16の鍔部23に、全周に渡ってそれぞれ水密に固定されており、ジメチルエーテルがプランジャ側空間36からカム側空間37へと漏出するのを防止している。
【0034】
プランジャ側空間36には、ジメチルエーテルを圧縮するポンプ室14からプランジャ16とプランジャバレルブロック21との接触面45を伝って鍔部23側へリークしたジメチルエーテルを、燃料タンク3に戻すジメチルエーテル戻し流路39が接続されている。
【0035】
このジメチルエーテル戻し流路39は、プランジャバレルブロック21の隔膜33の内側部分から上ブロック17に延びて形成された流路穴41と、その流路穴41に接続され燃料タンク3に延びた戻しパイプ(図3参照)43とで構成されている。
【0036】
図3に示すように、戻しパイプ43には、燃料タンク3側に向かってのみ開放可能な逆止弁44が設けられている。この逆止弁44は、プランジャ側空間36内のジメチルエーテルの圧力がその蒸気圧よりも高い場合に、ジメチルエーテルを燃料タンク3に流すように圧力が設定されている。
【0037】
次に、係るジメチルエーテルエンジンの燃料噴射ポンプ5の作用を説明する。
【0038】
上述のように、隔膜33でプランジャ16側とカム26側とを隔離したことによって、粘性が低いジメチルエーテルが、ポンプ室14から鍔部23側へリークしても、隔膜33にて塞き止められ、カム26側へ流れることがなく、カム26側の潤滑油に混入することはない。
【0039】
これによって、潤滑油の劣化を防止できる。また、ブローバイガスを外部に排出している場合でも、ジメチルエーテル燃料のエンジン外部への漏出を防止できる。さらに、ブローバイガスを吸気に戻している場合でも、エンジンの異常燃焼を防止できる。よって、エンジン外部環境への悪影響やエンジンの破損を防止することができる。
【0040】
本実施の形態によれば、隔膜33を伸縮自在の蛇腹状の金属膜にて形成しているので、プランジャ16の往復運動に追従して伸縮することができ、確実にプランジャ16側とカム26側とを隔離することができる。
【0041】
また、ポンプ室14からプランジャ16の鍔部23側へとリークしたジメチルエーテルは、ジメチルエーテル戻し流路39によって燃料タンク3に戻すことができ、燃料となるジメチルエーテルをロスなく利用することができる。
【0042】
ジメチルエーテルは、蒸発しやすく、プランジャ16とプランジャバレルブロック21の接触面45がドライになり易いが、プランジャ側空間36内のジメチルエーテルの圧力を蒸気圧以上に保持できる逆止弁44を設けたことによって、そのジメチルエーテルは常に液体の状態となり、プランジャ16の潤滑を確実に行うことができる。また、燃料タンク3からプランジャ側空間36内への吸引を防止できる。
【0043】
なお、本実施の形態では、列型の燃料噴射ポンプ5を例に挙げて説明したが、本発明は、コモンレール用の高圧ポンプとし、燃料噴射装置との間にコモンレールを設けたものであっても適用できるのは勿論である。
【0044】
【発明の効果】
以上要するに本発明によればジメチルエーテルがカム側へ流れることがなく、カム側の潤滑油への混入を防止でき、潤滑油の劣化、エンジン外部環境への悪影響やエンジンの破損を防止することができるといった優れた効果を発揮する。
【0045】
またジメチルエーテルのロスをなくすことができ、さらにプランジャの潤滑を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るジメチルエーテルエンジンの燃料噴射ポンプの好適な実施の形態を示した断面図である。
【図2】プランジャの周囲を示した断面図である。
【図3】ジメチルエーテルエンジンの燃料供給システムを示した概略構成図である。
【符号の説明】
3 燃料タンク
5 燃料噴射ポンプ
7 燃料噴射装置
14 ポンプ室
16 プランジャ
26 カム
33 隔膜
36 プランジャ側空間
39 ジメチルエーテル戻し流路
44 逆止弁

Claims (3)

  1. プランジャバレルブロック内に挿入されたプランジャを作動させるためのカムと、上記プランジャの頂面と上記プランジャバレルブロックの内面とから区画されたポンプ室と、該ポンプ室に燃料であるジメチルエーテルを導くためのジメチルエーテル吸入流路と、上記ポンプ室から上記プランジャにより圧縮されたジメチルエーテルを吐出するためのジメチルエーテル吐出流路とを備え、上記プランジャと上記プランジャバレルブロックとの接触面をジメチルエーテルによって潤滑するようにしたジメチルエーテルエンジンの燃料噴射ポンプにおいて、
    上記ポンプ室から上記接触面を伝ってリークしたジメチルエーテルを貯留すると共にその内部を上記カムから隔離するように形成された隔膜と、該隔膜の内部のジメチルエーテルを燃料タンクに戻すためのジメチルエーテル戻し流路と、該ジメチルエーテル戻し流路に配設された一方向弁であって、その開弁圧力が上記隔膜の内部のジメチルエーテルが常に液体状態となる圧力に設定された逆止弁とを備え、該逆止弁により上記隔膜の内部のジメチルエーテルを液体状態とすることで上記接触面の潤滑を確保するようにしたことを特徴とするジメチルエーテルエンジンの燃料噴射ポンプ。
  2. 上記ジメチルエーテル吸入流路に配設され、ジメチルエーテルを上記ポンプ室へと導く一方向弁であって、その開弁圧力がジメチルエーテルの蒸気圧以上に設定された逆止弁を備えた請求項1に記載のジメチルエーテルエンジンの燃料噴射ポンプ。
  3. 上記ジメチルエーテル吐出流路に配設され、ジメチルエーテルを燃料噴射装置へと導く一方向弁であって、その開弁圧力がジメチルエーテルをエンジン内に噴射するのに適した所定の噴射圧力に設定された逆止弁を備えた請求項1又は2に記載のジメチルエーテルエンジンの燃料噴射ポンプ。
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