JP2004043994A - 炭素繊維前駆体繊維の製造方法、その前駆体繊維を用いた炭素繊維の製造方法及びその炭素繊維から得られるフィラメント状カーボンナノファイバー - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、フィラメント状カーボンナノファイバーの集合体を工業技術的観点から高い品質と歩留で生産し得る炭素繊維前駆体繊維の製造方法、それを用いた炭素繊維の製造方法及びその炭素繊維からカーボンナノファイバーを得ることを課題とする。
【解決手段】熱処理により分解消失するポリマーを海部とし、溶融賦型可能なアクリロニトリル系ポリマー組成物を島部として紡糸口金装置を用いて溶融紡糸する炭素繊維前駆体繊維の製造方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】熱処理により分解消失するポリマーを海部とし、溶融賦型可能なアクリロニトリル系ポリマー組成物を島部として紡糸口金装置を用いて溶融紡糸する炭素繊維前駆体繊維の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
カーボンナノファイバーの集合体からなる炭素繊維を得るために、最適な炭素繊維前駆体繊維の製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維状炭素のうち直径が100nmのオーダー前後のものをカーボンナノファイバーと呼び、直径が10nmのオーダー前後にまで小さくなるとカーボンナノチューブと呼ばれる(遠藤守信:炭素,[200]202−205(2001))。 カーボンナノファイバー(本件明細書において、カーボンナノチューブも含んで、カーボンナノファイバーという。)は、樹脂材料に導電性を付与及び/又は機械的性質を向上する目的で添加するフィラーとして有用な材料であり、最近では燃料電池の電極材料やガス吸蔵材料としても期待される材料である。
【0003】
従来、カーボンナノファイバーは、アーク放電法、レーザー昇華法、化学的気相分解法に代表される気相法により製造されていたが、主として金属触媒の混入に起因する純度の問題や直径、長さ等の構造の不均一性が指摘されており、高純度で均一性の高い材料と製造法が望まれていた。更に、従来の気相法では生成物がサブミクロンオーダー以下の短繊維状物からなる粉体であって、製造工程及び加工工程における取扱い性と安全衛生の面から改良が望まれていた。加えて、従来の気相法では生産性が低い為により広く工業材料として使用される為には抜本的な低コスト化製造技術が望まれていた。
【0004】
このような課題を解決する技術として、炭素前駆体樹脂を熱分解消失性樹脂に被覆したコアシェルポリマーを熱分解消失性樹脂中に分散し溶融紡糸することにより炭素繊維前駆体繊維を得た後、該前駆体繊維を加熱炭素化することによりカーボンナノチューブを得る方法が開示されている(特開2002−29719号公報)。
更に改良技術として、上記のコアシェルポリマーにおいて炭素前駆体樹脂としてポリアクリロニトリルを用い熱分解消失性樹脂としてポリメタクリル酸メチルを用いる方法が開示されている(大谷朝男:機能材料、21[5](2001)41−46)。
【0005】
このように紡糸技術により製造されたカーボンナノファイバーは、一般に紡糸法カーボンナノファイバーと呼ばれている。
【0006】
紡糸法カーボンナノファイバーは、金属触媒を用いないという点で純度が高く、更に製造物がカーボンナノファイバーの集合体からなる繊維状物であるという点において、加えて前駆体が溶融紡糸された繊維であるという点において、純度、構造の均一性、製造・加工工程通過性、安全衛生、品質、コストの問題を抜本的に解決できる糸口を与えたという意味で上述の課題を解決する方向に大きく一歩を踏み出した画期的提案と言える。
【0007】
しかしながら上記の紡糸法カーボンナノファイバーは、その製造方法から非常に短いものしか得られず、又、ポリアクリロニトリルが元来加熱溶融しない熱環化反応性ポリマーであるために溶融紡糸性には向かず、本方法により得られた炭素繊維前駆体繊維の炭素化工程の通過性も又良好であるとは言えない。従って、上記の紡糸法カーボンナノファイバーの技術は、工業技術的観点から改良の余地が十分に残されており、均一な構造を有するフィラメント状カーボンナノファイバーを得る技術として十分とは言い難い。殊に直径100nm以下のフィラメント状カーボンナノファイバーを得るという点では、更に十分とは言い難い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、フィラメント状カーボンナノファイバーの集合体を工業技術的観点から高い品質と歩留で生産し得る炭素繊維前駆体繊維の製造方法、それを用いた炭素繊維の製造方法及びその炭素繊維からカーボンナノファイバーを得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、熱処理により分解消失するポリマーを海部とし、溶融賦型可能なアクリロニトリル系ポリマー組成物を島部として紡糸口金装置を用いて溶融紡糸する炭素繊維前駆体繊維の製造方法にある。
【0010】
【発明の実施の形態】
(炭素繊維前駆体繊維のモルフォロジーについて)
本発明においては、炭素繊維前駆体繊維のモルフォロジー制御が最大の技術のポイントである。すなわち、炭素繊維前駆体繊維のモルフォロジーが繊維軸方向に沿って筋状構造を有し、且つ、繊維軸垂直方向断面でマトリックス相(海部)の中に島状独立相が点在している構造を有することが必要である。そして、前記マトリックス相(海部)ポリマーの主成分を熱分解性ポリマーとし、前記島状独立相(島部)の主成分を溶融賦型可能なアクリロニトリル系ポリマー組成物として溶融紡糸することにより有利に炭素繊維前駆体繊維を得ることができる。
【0011】
このとき、繊維軸方向と繊維軸垂直方向の双方において、そのサイズが一様であり繊維軸方向に沿って筋状構造が切れ目のない構造であることや炭素前駆体ポリマーとして最適なアクリロニトリル系ポリマーを主成分とする島部の繊維軸垂直方向断面で見た特性距離が200nm以下であることが好ましい。
【0012】
前記炭素繊維前駆体繊維において、島部の繊維軸垂直方向断面で見た、以下に定義する特性距離が200nmを超えると炭素化処理後に得られるカーボンナノファイバーの直径が100nmを超えてしまう。従って、カーボンナノファイバーの直径を制御する上で特性距離が重要な意味をもつ。
【0013】
<特性距離の評価法>
炭素繊維前駆体繊維の繊維軸垂直方向断面の島部サイズに対応する特性距離は走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡により測定し、次式より算出できる。
特性距離=2[(島部分の面積)/π]1/2
【0014】
又、炭素繊維前駆体繊維の島部サイズが繊維断面方向において一様でないと炭素化処理後に得られるカーボンナノファイバーの直径が不均一となるので、直径が均一なカーボンナノファイバーを得るためにはそのサイズの制御が重要である。
【0015】
更に、炭素繊維前駆体繊維のモルフォロジーである筋状構造が繊維軸方向沿って均一でないと炭素化処理後に得られるカーボンナノファイバーの直径が均一で切れ目の無いフィラメント状とならない場合があるので、筋状構造が繊維軸方向沿って均一になるよう制御することが重要である。
【0016】
本発明のカーボンナノファイバーにおいて、好ましい形態である直径100nm以下で均一なものを得るには、炭素繊維前駆体繊維の紡糸直後の炭素前駆体ポリマーからなる島部のサイズを直径30μm以下に均一に制御することが肝要である。
【0017】
本発明の炭素繊維前駆体繊維において、島部の直径は30〜1000nmであることが好ましい形態である直径100nm以下で均一なカーボンナノファイバーを得る上で好ましい。島部の直径は30nm未満の場合は、連続した長さのカーボンナノファイバ−が得られにくくなる傾向があり、逆に1000nmを超えると特に直径の均一性が得られなくなる傾向がある。
【0018】
前記島部は、単に炭素前駆体ポリマーのみからなっていてもよいが、島部中に更に、芯部として熱処理により分解消失するポリマーからなり、鞘部として炭素前駆体ポリマーからなる芯鞘構造を有していることが、最終的に得られるカーボンナノファイバーが好ましい形態である直径100nm以下で均一なものとなるので更に好ましい。このとき芯部の直径としては30〜1000nmであることが最も好ましい。
【0019】
(熱分解性ポリマーについて)
熱処理により分解消失するポリマー(以下、熱分解性ポリマーという。)とは、後述する炭素化の熱処理条件において、昇温と共に分解してガス化するポリマーを意味する。すなわち、分解温度が炭素化の熱処理温度より低いポリマーであればよい。斯かるポリマーの具体例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン等のオレフィン系ポリマー、ポリオキシメチレン等の異原子分子を含むポリマー等が挙げられ、好ましくはマレイン酸変性低密度ポリエチレン樹脂である。本発明に用いる熱分解性ポリマーの重量平均分子量は3万〜300万であることが好ましい。熱分解性ポリマーとしてはメタクリレート系ポリマーが好ましく、例えばポリメタクリル酸メチルのホモポリマー及び/又は他のモノマーとの共重合体を用いることができる。
【0020】
ポリメタクリル酸メチルの共重合成分モノマーとしては、特に制限は無いが、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどに代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどの代表されるメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどの不飽和モノマー類であり、さらに染色性改良などの目的によっては、p−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0021】
(溶融賦型可能なアクリロニトリル系ポリマー組成物)
本発明で用いる溶融賦型可能なアクリロニトリル系ポリマー組成物としては、いわゆる海島型複合繊維の紡糸口金装置から溶融紡糸できればよく特に限定しないが、次のようなアクリロニトリル系ポリマー組成物が好適に使用できる。
(1)アクリロニトリル系ポリマーとそのニトリル基に水和した水とからなるアクリロニトリル系ポリマー
(2)アクリロニトリル等の単量体を、単量体と水の総量に対して3〜30質量%の水が存在する系において、自生圧下に80℃以上の温度で重合し、前記単量体の45〜90質量%を重合体に変換したものであるアクリロニトリル系ポリマー
(3)アクリロニトリル系ポリマー30〜90質量%、そのニトリル基に水和した水1〜56質量%並びにアクリロニトリル2〜63質量%からなるアクリロニトリル系ポリマー
(4)アクリロニトリル70質量%以上からなり、還元粘度が1以上のアクリロニトリル系ポリマー[分子量分布比(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.8以下であることが好ましく、又、単独重合により得られる重合体のガラス転移温度(Tg)が−60〜+30℃の範囲の、アクリロニトリルと共重合可能なモノマー単位を20質量%を限度に共重合されていることが好ましい。]
なお、
【0022】
(アクリロニトリル系ポリマー)
本発明の炭素繊維前駆体繊維に好適に用いることのできるアクリロニトリル系ポリマーの重量平均分子量は3万〜300万である。アクリロニトリル系ポリマーとしてはアクリロニトリルのホモポリマー及び/又は他のモノマーとの共重合体を用いることができる。この場合、炭素化を良好に行う目的で共重合体中のアクリロニトリル単位の組成は溶融賦型可能な範囲でできるだけ高いことが好ましい。
【0023】
アクリロニトリル系ポリマーの共重合成分モノマーとしては、特に制限は無いが、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどに代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどの代表されるメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどの不飽和モノマー類であり、さらに染色性改良などの目的によっては、p−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0024】
アクリロニトリル系ポリマーの共重合成分モノマーとして、炭素化工程における環化反応を促進する目的でカルボン酸基を有するモノマーやアクリルアミド系モノマーを用いることが好ましい。このようなカルボン酸基を有するモノマーとしては、メタクリル酸やイタコン酸が好ましい。又、アクリルアミド系モノマーとしてはアクリルアミドが好ましい。
【0025】
(溶融紡糸)
本発明の炭素繊維前駆体繊維は、上記の海島成分を公知の海島型複合繊維の紡糸口金装置から紡糸することにより得ることができる。このとき、紡糸口金装置から大気圧下の湿熱雰囲気中に糸条を紡出することにより、可塑剤として水を用いた場合に溶融物中に含有される水の瞬間的な蒸発により発生する、糸切れ及び炭素繊維前駆体繊維に多数発生するボイドの発生を抑制できるので好ましい。
【0026】
(紡糸口金装置)
本発明に好適に用いることができる紡糸口金装置として、1枚以上の島形成用ノズル、海形成用ノズル及び集合セルを上方から順次重ねて構成され、前記島形成用ノズルは各ノズル孔の周辺に島成分流路を有し、該島形成用ノズルの上方に所定の間隔をおいて分配板が配されてなり、前記海形成用ノズルは各ノズル孔の周辺に海成分流路を有し、該海形成用ノズルの上方に所定の間隔をおいて前記島形成用ノズルが配されてなる紡糸口金装置(図1)を挙げることができる。
紡糸装置の紡糸部に一個以上が設置され、その設置の数は通常複数個である。紡糸装置には前記紡糸口金装置の他に海成分と島成分とを貯留溶融し、紡糸口金装置に供給する押出機と、口金装置から紡出された溶融状態にある海島繊維を急速に冷却固化するクエンチングし固化した海島繊維を一定速度で巻き取る巻取りロールとが備えられている。
【0027】
まず、島成分となるアクリロニトリル系ポリマー組成物を溶融した紡糸原液が紡糸口金装置の島形成用ノズルの流路に均等に供給される。供給量がノズル孔の導入部周辺に達しさらに供給が進むと、炭素前駆体ポリマーの紡糸原液は各ノズル孔の導入部上面と分配板との間の間隙を通過するとき均一な背圧が作用して、各ノズル孔に供給される。
【0028】
これと同期して、海成分となる熱処理により分解消失するポリマーを溶融した紡糸原液が、紡糸口金装置の海形成用ノズルのノズル孔に供給される。好適な態様によれば、海形成用ノズルも前記島形成用ノズルとほぼ同一の構成を備え、同島形成用ノズルの下面が上記分配板の機能を有しており、海成分も各海成分形成用ノズル孔に均等に導入される。
【0029】
島成分用ノズルを通過したアクリロニトリル系ポリマー組成物の紡糸原液は、島形成用ノズルと海形成用ノズルとの間に形成されている間隙部で熱処理により分解消失するポリマーが被覆され、被覆条として海形成用ノズル孔を通過する。海形成用ノズル孔を通過した海成分被覆条は、下方の集合セル内のロート部に供給され、そこで他の海成分被覆条と合流し、海成分を介して融着一体化し、ロート部先端の海島繊維紡出口から紡出される。
【0030】
これら口金装置から紡出された溶融海島繊維は急冷手段により急速に冷却固化され、固化した海島繊維は巻取りロールに一定速度で巻き取られる。
【0031】
以下、本発明について添付図面に基づいて更に具体的に説明する。図1は本発明の一実施例である島成分が1種類の場合の紡糸口金装置を示す縦断面図である。
【0032】
図1において、1は分配板、2は島形成用ノズル、3は海形成用ノズル、4は集合セルである。島形成用ノズル2及び海形成用ノズル3には、それぞれ一表面に各成分の流路8,9が形成され、その流路間に挟まれた部分にはそれぞれ突出部2a、3aが複数個形成されている。島形成用ノズル2の突出部2aの中央部には島形成ノズル孔5が鉛直方向に貫通して形成されると共に、海形成用ノズル3の突出部3aの中央部には海形成ノズル孔6が鉛直方向に貫通して形成されている。該海形成用ノズル孔6は、図示のごとく単純な円筒状でも良いが、互いに隣接するノズル孔との間隔を小さくするため、下方に向かって広がるテーパー孔にすることが好ましい。これは、海成分と島成分との合流が層流状に乱れることなく行われ、所定の断面形状が再現されやすくなるためである。
【0033】
島形成ノズル孔5と海形成ノズル孔6とは同一垂線上に対向して配され、これらノズル孔5,6の配列はランダムでも良いが、円周状、正六角形状、正方形状等の対称形に配列すると、より海成分中に均一な島成分条が形成された良質なものが得られる。又、前記海形成用ノズル3の下面に配される集合セル4には、前記海形成ノズル孔6から吐出される複数の海成分被覆条を集合一体化するための下方の紡糸孔7に向けて狭まる形状の複数のロート状複合部12が形成されている。島形成ノズル孔5と海形成ノズル孔6の好ましい孔径は50〜500μmである。孔径が50μm未満では、ノズル孔内部での流路抵抗が高くなり、かつ吐出線速度が高くなるため経時的に紡出不安定となる。また吐出圧力に耐え得るだけのノズル部材厚みを必要とするため実用的でなく、500μmを超えると流路抵抗と吐出線速度は低下するが、ノズル全体の圧力分布を均一に維持することが困難となり繊度斑の原因となる。
【0034】
島形成用ノズル2の上方には、本発明の特徴部分をなす分配板1が所定の間隙10を設けて配設されている。島成分が図示せぬ島成分供給装置から島形成用ノズル2の流路8に押し出し供給されるとき、まず同流路8に均一に充填され、突出部2aの上面に達した後に前記間隙10を通過して島形成ノズル孔5に供給される。吐出孔5への供給時の流圧は島成分の押出圧によって制御される。又前記間隙10により島成分に背圧が作用し流圧も一定であるので、いずれの島形成ノズル孔5にも一定流量の島成分が均一に導入されることになる。
【0035】
又、この例では、海形成用ノズル3は前記島形成用ノズル2と同様の構成を備えており、各ノズル孔6が島形成ノズル孔5に対応して島形成用ノズル2の直下に設けて配置され、島形成用ノズル2の下面と海形成用ノズル3の突出部3aとの上面との間に所定の間隙11が形成されている。前記突出部3aの周囲は海成分流路9を構成しており、海成分が図示せぬ海成分供給装置から押出し供給されたとき、まず同流路9に均一に充填されてから突出部3a上面の間隙11を通って海形成ノズル孔6に導入される。島形成ノズル孔5から島成分条となって前記間隙11に吐出され、該間隙11を通過するときに海成分が被覆されながら海形成ノズル孔6から下方のロート状複合部12に吐出される。このときの海成分の被覆量は、海成分の海成分押出機からの押出圧によって制御される。
島形成用ノズルとその上方の分配板の好ましい間隔、及び、海形成用ノズルとその上方の島形成用ノズルの好ましい間隔は、ともに50〜1,000μmである。これらの間隔が50μm未満の場合は流路抵抗が高くなり僅かな間隔の斑が吐出量の差となり易く、50μm未満の間隔をノズル面全体に渡り維持するのは実質的に困難であり、樹脂流が分布不均一となり、逆に1,000μmを超えると狭小部での樹脂流の圧力損失が低くなりノズル外周部と内周部で圧力分布が生じ樹脂流の均一分配が実質的に困難となるため好ましくない。
【0036】
集合セル4は、海成分被覆用ノズル3の下面に密着して配置される。複数個の海形成ノズル孔6から吐出された海成分被覆条は、集合セル4のロート状集合部12で合流し、海成分を介して融着一体化され、ロート状集合部12の下端の海島繊維紡出口7より紡出される。ロート状集合部12は、まず断面積の変化しない垂直面12aを経てから断面積が漸次小さくなるようなテーパー面12bとすることが好ましい。断面積変化のない12aがないと、得られる海島繊維の外周に位置する島成分の断面形状が変形し易くなる。又、このロート状集合部12の上面開口は複数個の海形成ノズル孔6の最外周部に配置する孔の外接線より大きく、その断面形状は前記外接線の形状と相似形であることが望ましい。海島繊維紡出口7の断面形状も同様に相似形であることが望ましいが、ロート状集合部12の上面開口及び海島繊維紡出口7を円形断面としても構わない。
【0037】
又島形成ノズル孔5、海形成ノズル孔6の断面形状は、各成分の流圧がノズル孔5,6の形状に影響されないため、様々な断面形状とすることが可能であり、各ノズル孔5,6及び海島繊維紡出口7の断面形状は、所望の海島繊維の断面形状によって選択される。図2は本発明の装置を用いて紡出した海島繊維の断面図である。同図において、例えば前記島形成ノズル孔5、海形成ノズル孔6及び海島繊維紡出口7を全て円形断面にした場合は図2(a)の繊維断面を呈し、海島繊維紡出口7のみを矩形にした場合には図2(b)に示すごとく島成分Aも楕円形状を呈する。又島形成ノズル孔5、或いは島形成ノズル孔5と海形成ノズル孔6を十字断面とし、海島繊維紡出口7を円形断面とした場合は図2(c)に示すごとく島成分が十字状の断面形状を有する海島繊維が紡糸される。その他、多様な形状のものが紡糸可能である。
【0038】
又図2の(a)〜(c)のように、島成分が1成分の場合は島形成用ノズルが1枚の上記例で紡糸できるが、図2の(d)に示すように島成分が2成分或いはそれ以上の場合には、その成分数に対応した数の島形成用ノズルを上記例の島形成用ノズル2と海成分被覆用ノズル3との間に挿入して対応することができる。
【0039】
更に、本発明の変形例として、海形成用ノズル3の任意の突出部3aの幾つかが、その上面を島形成用ノズル2の下面に密着させて海成分用間隙11を形成せずに島形成ノズル孔5と海形成ノズル孔6とを連結して、海成分の被覆を全く、或いは部分的に受けない海成分被覆条を形成することも可能である。
【0040】
(炭素繊維前駆体繊維の炭素化について)
本発明の炭素繊維前駆体繊維は、従来の炭素繊維の炭素化と同様に炭素化することにより、本発明のフィラメント状カーボンナノファイバー集合体からなる炭素繊維が得られる。炭素化は通常のPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維の製造工程で行うことができる。
【0041】
(炭素繊維からカーボンナノファイバーを得る方法)
本発明のフィラメント状のカーボンナノファイバー集合体からなる炭素繊維を粉砕処理することにより、フィラメント状カーボンナノファイバーを得ることができる。この粉砕処理を液体中で行うことにより、外径が100nm以下であるカーボンナノファイバーの分散液を得ることもきる。このような分散液の分散液調製時又は調整後にその分散液に樹脂を分散・溶解することによりフィラメント状カーボンナノファイバーを含有する樹脂コーティング液を得ることができる。
【0042】
又、同様の分散液を抄紙することによりフィラメント状カーボンナノファイバーからなる抄紙物を得ることができる。
更に、粉砕処理を樹脂との混合状態で行うことによりフィラメント状カーボンナノファイバーが分散された樹脂混合物を得ることができる。このように、分散工程に本発明のフィラメント状カーボンナノファイバー集合体からなる炭素繊維を用いることで、従来の粉体処理工程で懸念された取扱い性と安全衛生上の問題を克服したという点で本発明は工業的に有用な技術を提供するものである。
【0043】
(炭素繊維前駆体繊維のモルフォロジー観察)
炭素繊維前駆体繊維のモルフォロジー観察は電子顕微鏡用のエポキシ系樹脂で前駆体繊維束を包埋硬化して、繊維軸と垂直方向の断面が得られるようにトリミング、面出しした後、ダイヤモンドナイフを装着したミクロトームにより約70nmの厚さの切片を切り出した。得られた切片を電子顕微鏡観察用のメッシュに載せ、日立(株)H−7600等の透過型電子顕微鏡により、加速電圧120kVの条件で観察することが好ましい。
【0044】
(炭素繊維のモルフォロジー観察)
炭素繊維のモルフォロジー観察は、炭素繊維を繊維軸方向に引張破断して走査型電子顕微鏡用試料台に接着した後、イオンスパッター装置によりAuを約5nmの厚さになるようにコーティングし、日本電子(株)JSM−880等の走査型電子顕微鏡により、加速電圧5kVの条件で破断面を観察することが好ましい。一方、炭素繊維を乳鉢で破砕したものをイソプロパノールに分散し、電子顕微鏡観察用のメッシュに載せ乾燥した後、日立(株)H−7600等の透過型電子顕微鏡により、加速電圧120kVの条件で観察することも好ましい。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、フィラメント状カーボンナノファイバー集合体からなる高品質な炭素繊維を低コストで提供可能な炭素繊維前駆体繊維を提供する。
この炭素繊維を粉砕処理することにより容易にフィラメント状カーボンナノファイバーが得られる点で、工業的に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる紡糸口金装置の代表的な実施例である島成分が1種類である場合の紡糸口金装置を示す縦断面図である。
【図2】本発明により紡糸した海島繊維の断面図である。
【符号の説明】
1 分配板
2 島形成用ノズル
2a 突出部
3 海形成ノズル
3a 突出部
4 集合セル
5 島形成ノズル孔
6 海形成ノズル孔
7 海島繊維紡出口
8 島成分流路
9 海成分流路
10 島形成用間隙
11 海成分被覆用間隙
12 ロート状集合部
12a 垂直面
12b テーパー面
A 島成分
B 海成分
C 第二島成分
【発明の属する技術分野】
カーボンナノファイバーの集合体からなる炭素繊維を得るために、最適な炭素繊維前駆体繊維の製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維状炭素のうち直径が100nmのオーダー前後のものをカーボンナノファイバーと呼び、直径が10nmのオーダー前後にまで小さくなるとカーボンナノチューブと呼ばれる(遠藤守信:炭素,[200]202−205(2001))。 カーボンナノファイバー(本件明細書において、カーボンナノチューブも含んで、カーボンナノファイバーという。)は、樹脂材料に導電性を付与及び/又は機械的性質を向上する目的で添加するフィラーとして有用な材料であり、最近では燃料電池の電極材料やガス吸蔵材料としても期待される材料である。
【0003】
従来、カーボンナノファイバーは、アーク放電法、レーザー昇華法、化学的気相分解法に代表される気相法により製造されていたが、主として金属触媒の混入に起因する純度の問題や直径、長さ等の構造の不均一性が指摘されており、高純度で均一性の高い材料と製造法が望まれていた。更に、従来の気相法では生成物がサブミクロンオーダー以下の短繊維状物からなる粉体であって、製造工程及び加工工程における取扱い性と安全衛生の面から改良が望まれていた。加えて、従来の気相法では生産性が低い為により広く工業材料として使用される為には抜本的な低コスト化製造技術が望まれていた。
【0004】
このような課題を解決する技術として、炭素前駆体樹脂を熱分解消失性樹脂に被覆したコアシェルポリマーを熱分解消失性樹脂中に分散し溶融紡糸することにより炭素繊維前駆体繊維を得た後、該前駆体繊維を加熱炭素化することによりカーボンナノチューブを得る方法が開示されている(特開2002−29719号公報)。
更に改良技術として、上記のコアシェルポリマーにおいて炭素前駆体樹脂としてポリアクリロニトリルを用い熱分解消失性樹脂としてポリメタクリル酸メチルを用いる方法が開示されている(大谷朝男:機能材料、21[5](2001)41−46)。
【0005】
このように紡糸技術により製造されたカーボンナノファイバーは、一般に紡糸法カーボンナノファイバーと呼ばれている。
【0006】
紡糸法カーボンナノファイバーは、金属触媒を用いないという点で純度が高く、更に製造物がカーボンナノファイバーの集合体からなる繊維状物であるという点において、加えて前駆体が溶融紡糸された繊維であるという点において、純度、構造の均一性、製造・加工工程通過性、安全衛生、品質、コストの問題を抜本的に解決できる糸口を与えたという意味で上述の課題を解決する方向に大きく一歩を踏み出した画期的提案と言える。
【0007】
しかしながら上記の紡糸法カーボンナノファイバーは、その製造方法から非常に短いものしか得られず、又、ポリアクリロニトリルが元来加熱溶融しない熱環化反応性ポリマーであるために溶融紡糸性には向かず、本方法により得られた炭素繊維前駆体繊維の炭素化工程の通過性も又良好であるとは言えない。従って、上記の紡糸法カーボンナノファイバーの技術は、工業技術的観点から改良の余地が十分に残されており、均一な構造を有するフィラメント状カーボンナノファイバーを得る技術として十分とは言い難い。殊に直径100nm以下のフィラメント状カーボンナノファイバーを得るという点では、更に十分とは言い難い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、フィラメント状カーボンナノファイバーの集合体を工業技術的観点から高い品質と歩留で生産し得る炭素繊維前駆体繊維の製造方法、それを用いた炭素繊維の製造方法及びその炭素繊維からカーボンナノファイバーを得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、熱処理により分解消失するポリマーを海部とし、溶融賦型可能なアクリロニトリル系ポリマー組成物を島部として紡糸口金装置を用いて溶融紡糸する炭素繊維前駆体繊維の製造方法にある。
【0010】
【発明の実施の形態】
(炭素繊維前駆体繊維のモルフォロジーについて)
本発明においては、炭素繊維前駆体繊維のモルフォロジー制御が最大の技術のポイントである。すなわち、炭素繊維前駆体繊維のモルフォロジーが繊維軸方向に沿って筋状構造を有し、且つ、繊維軸垂直方向断面でマトリックス相(海部)の中に島状独立相が点在している構造を有することが必要である。そして、前記マトリックス相(海部)ポリマーの主成分を熱分解性ポリマーとし、前記島状独立相(島部)の主成分を溶融賦型可能なアクリロニトリル系ポリマー組成物として溶融紡糸することにより有利に炭素繊維前駆体繊維を得ることができる。
【0011】
このとき、繊維軸方向と繊維軸垂直方向の双方において、そのサイズが一様であり繊維軸方向に沿って筋状構造が切れ目のない構造であることや炭素前駆体ポリマーとして最適なアクリロニトリル系ポリマーを主成分とする島部の繊維軸垂直方向断面で見た特性距離が200nm以下であることが好ましい。
【0012】
前記炭素繊維前駆体繊維において、島部の繊維軸垂直方向断面で見た、以下に定義する特性距離が200nmを超えると炭素化処理後に得られるカーボンナノファイバーの直径が100nmを超えてしまう。従って、カーボンナノファイバーの直径を制御する上で特性距離が重要な意味をもつ。
【0013】
<特性距離の評価法>
炭素繊維前駆体繊維の繊維軸垂直方向断面の島部サイズに対応する特性距離は走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡により測定し、次式より算出できる。
特性距離=2[(島部分の面積)/π]1/2
【0014】
又、炭素繊維前駆体繊維の島部サイズが繊維断面方向において一様でないと炭素化処理後に得られるカーボンナノファイバーの直径が不均一となるので、直径が均一なカーボンナノファイバーを得るためにはそのサイズの制御が重要である。
【0015】
更に、炭素繊維前駆体繊維のモルフォロジーである筋状構造が繊維軸方向沿って均一でないと炭素化処理後に得られるカーボンナノファイバーの直径が均一で切れ目の無いフィラメント状とならない場合があるので、筋状構造が繊維軸方向沿って均一になるよう制御することが重要である。
【0016】
本発明のカーボンナノファイバーにおいて、好ましい形態である直径100nm以下で均一なものを得るには、炭素繊維前駆体繊維の紡糸直後の炭素前駆体ポリマーからなる島部のサイズを直径30μm以下に均一に制御することが肝要である。
【0017】
本発明の炭素繊維前駆体繊維において、島部の直径は30〜1000nmであることが好ましい形態である直径100nm以下で均一なカーボンナノファイバーを得る上で好ましい。島部の直径は30nm未満の場合は、連続した長さのカーボンナノファイバ−が得られにくくなる傾向があり、逆に1000nmを超えると特に直径の均一性が得られなくなる傾向がある。
【0018】
前記島部は、単に炭素前駆体ポリマーのみからなっていてもよいが、島部中に更に、芯部として熱処理により分解消失するポリマーからなり、鞘部として炭素前駆体ポリマーからなる芯鞘構造を有していることが、最終的に得られるカーボンナノファイバーが好ましい形態である直径100nm以下で均一なものとなるので更に好ましい。このとき芯部の直径としては30〜1000nmであることが最も好ましい。
【0019】
(熱分解性ポリマーについて)
熱処理により分解消失するポリマー(以下、熱分解性ポリマーという。)とは、後述する炭素化の熱処理条件において、昇温と共に分解してガス化するポリマーを意味する。すなわち、分解温度が炭素化の熱処理温度より低いポリマーであればよい。斯かるポリマーの具体例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン等のオレフィン系ポリマー、ポリオキシメチレン等の異原子分子を含むポリマー等が挙げられ、好ましくはマレイン酸変性低密度ポリエチレン樹脂である。本発明に用いる熱分解性ポリマーの重量平均分子量は3万〜300万であることが好ましい。熱分解性ポリマーとしてはメタクリレート系ポリマーが好ましく、例えばポリメタクリル酸メチルのホモポリマー及び/又は他のモノマーとの共重合体を用いることができる。
【0020】
ポリメタクリル酸メチルの共重合成分モノマーとしては、特に制限は無いが、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどに代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどの代表されるメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどの不飽和モノマー類であり、さらに染色性改良などの目的によっては、p−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0021】
(溶融賦型可能なアクリロニトリル系ポリマー組成物)
本発明で用いる溶融賦型可能なアクリロニトリル系ポリマー組成物としては、いわゆる海島型複合繊維の紡糸口金装置から溶融紡糸できればよく特に限定しないが、次のようなアクリロニトリル系ポリマー組成物が好適に使用できる。
(1)アクリロニトリル系ポリマーとそのニトリル基に水和した水とからなるアクリロニトリル系ポリマー
(2)アクリロニトリル等の単量体を、単量体と水の総量に対して3〜30質量%の水が存在する系において、自生圧下に80℃以上の温度で重合し、前記単量体の45〜90質量%を重合体に変換したものであるアクリロニトリル系ポリマー
(3)アクリロニトリル系ポリマー30〜90質量%、そのニトリル基に水和した水1〜56質量%並びにアクリロニトリル2〜63質量%からなるアクリロニトリル系ポリマー
(4)アクリロニトリル70質量%以上からなり、還元粘度が1以上のアクリロニトリル系ポリマー[分子量分布比(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.8以下であることが好ましく、又、単独重合により得られる重合体のガラス転移温度(Tg)が−60〜+30℃の範囲の、アクリロニトリルと共重合可能なモノマー単位を20質量%を限度に共重合されていることが好ましい。]
なお、
【0022】
(アクリロニトリル系ポリマー)
本発明の炭素繊維前駆体繊維に好適に用いることのできるアクリロニトリル系ポリマーの重量平均分子量は3万〜300万である。アクリロニトリル系ポリマーとしてはアクリロニトリルのホモポリマー及び/又は他のモノマーとの共重合体を用いることができる。この場合、炭素化を良好に行う目的で共重合体中のアクリロニトリル単位の組成は溶融賦型可能な範囲でできるだけ高いことが好ましい。
【0023】
アクリロニトリル系ポリマーの共重合成分モノマーとしては、特に制限は無いが、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどに代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどの代表されるメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどの不飽和モノマー類であり、さらに染色性改良などの目的によっては、p−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0024】
アクリロニトリル系ポリマーの共重合成分モノマーとして、炭素化工程における環化反応を促進する目的でカルボン酸基を有するモノマーやアクリルアミド系モノマーを用いることが好ましい。このようなカルボン酸基を有するモノマーとしては、メタクリル酸やイタコン酸が好ましい。又、アクリルアミド系モノマーとしてはアクリルアミドが好ましい。
【0025】
(溶融紡糸)
本発明の炭素繊維前駆体繊維は、上記の海島成分を公知の海島型複合繊維の紡糸口金装置から紡糸することにより得ることができる。このとき、紡糸口金装置から大気圧下の湿熱雰囲気中に糸条を紡出することにより、可塑剤として水を用いた場合に溶融物中に含有される水の瞬間的な蒸発により発生する、糸切れ及び炭素繊維前駆体繊維に多数発生するボイドの発生を抑制できるので好ましい。
【0026】
(紡糸口金装置)
本発明に好適に用いることができる紡糸口金装置として、1枚以上の島形成用ノズル、海形成用ノズル及び集合セルを上方から順次重ねて構成され、前記島形成用ノズルは各ノズル孔の周辺に島成分流路を有し、該島形成用ノズルの上方に所定の間隔をおいて分配板が配されてなり、前記海形成用ノズルは各ノズル孔の周辺に海成分流路を有し、該海形成用ノズルの上方に所定の間隔をおいて前記島形成用ノズルが配されてなる紡糸口金装置(図1)を挙げることができる。
紡糸装置の紡糸部に一個以上が設置され、その設置の数は通常複数個である。紡糸装置には前記紡糸口金装置の他に海成分と島成分とを貯留溶融し、紡糸口金装置に供給する押出機と、口金装置から紡出された溶融状態にある海島繊維を急速に冷却固化するクエンチングし固化した海島繊維を一定速度で巻き取る巻取りロールとが備えられている。
【0027】
まず、島成分となるアクリロニトリル系ポリマー組成物を溶融した紡糸原液が紡糸口金装置の島形成用ノズルの流路に均等に供給される。供給量がノズル孔の導入部周辺に達しさらに供給が進むと、炭素前駆体ポリマーの紡糸原液は各ノズル孔の導入部上面と分配板との間の間隙を通過するとき均一な背圧が作用して、各ノズル孔に供給される。
【0028】
これと同期して、海成分となる熱処理により分解消失するポリマーを溶融した紡糸原液が、紡糸口金装置の海形成用ノズルのノズル孔に供給される。好適な態様によれば、海形成用ノズルも前記島形成用ノズルとほぼ同一の構成を備え、同島形成用ノズルの下面が上記分配板の機能を有しており、海成分も各海成分形成用ノズル孔に均等に導入される。
【0029】
島成分用ノズルを通過したアクリロニトリル系ポリマー組成物の紡糸原液は、島形成用ノズルと海形成用ノズルとの間に形成されている間隙部で熱処理により分解消失するポリマーが被覆され、被覆条として海形成用ノズル孔を通過する。海形成用ノズル孔を通過した海成分被覆条は、下方の集合セル内のロート部に供給され、そこで他の海成分被覆条と合流し、海成分を介して融着一体化し、ロート部先端の海島繊維紡出口から紡出される。
【0030】
これら口金装置から紡出された溶融海島繊維は急冷手段により急速に冷却固化され、固化した海島繊維は巻取りロールに一定速度で巻き取られる。
【0031】
以下、本発明について添付図面に基づいて更に具体的に説明する。図1は本発明の一実施例である島成分が1種類の場合の紡糸口金装置を示す縦断面図である。
【0032】
図1において、1は分配板、2は島形成用ノズル、3は海形成用ノズル、4は集合セルである。島形成用ノズル2及び海形成用ノズル3には、それぞれ一表面に各成分の流路8,9が形成され、その流路間に挟まれた部分にはそれぞれ突出部2a、3aが複数個形成されている。島形成用ノズル2の突出部2aの中央部には島形成ノズル孔5が鉛直方向に貫通して形成されると共に、海形成用ノズル3の突出部3aの中央部には海形成ノズル孔6が鉛直方向に貫通して形成されている。該海形成用ノズル孔6は、図示のごとく単純な円筒状でも良いが、互いに隣接するノズル孔との間隔を小さくするため、下方に向かって広がるテーパー孔にすることが好ましい。これは、海成分と島成分との合流が層流状に乱れることなく行われ、所定の断面形状が再現されやすくなるためである。
【0033】
島形成ノズル孔5と海形成ノズル孔6とは同一垂線上に対向して配され、これらノズル孔5,6の配列はランダムでも良いが、円周状、正六角形状、正方形状等の対称形に配列すると、より海成分中に均一な島成分条が形成された良質なものが得られる。又、前記海形成用ノズル3の下面に配される集合セル4には、前記海形成ノズル孔6から吐出される複数の海成分被覆条を集合一体化するための下方の紡糸孔7に向けて狭まる形状の複数のロート状複合部12が形成されている。島形成ノズル孔5と海形成ノズル孔6の好ましい孔径は50〜500μmである。孔径が50μm未満では、ノズル孔内部での流路抵抗が高くなり、かつ吐出線速度が高くなるため経時的に紡出不安定となる。また吐出圧力に耐え得るだけのノズル部材厚みを必要とするため実用的でなく、500μmを超えると流路抵抗と吐出線速度は低下するが、ノズル全体の圧力分布を均一に維持することが困難となり繊度斑の原因となる。
【0034】
島形成用ノズル2の上方には、本発明の特徴部分をなす分配板1が所定の間隙10を設けて配設されている。島成分が図示せぬ島成分供給装置から島形成用ノズル2の流路8に押し出し供給されるとき、まず同流路8に均一に充填され、突出部2aの上面に達した後に前記間隙10を通過して島形成ノズル孔5に供給される。吐出孔5への供給時の流圧は島成分の押出圧によって制御される。又前記間隙10により島成分に背圧が作用し流圧も一定であるので、いずれの島形成ノズル孔5にも一定流量の島成分が均一に導入されることになる。
【0035】
又、この例では、海形成用ノズル3は前記島形成用ノズル2と同様の構成を備えており、各ノズル孔6が島形成ノズル孔5に対応して島形成用ノズル2の直下に設けて配置され、島形成用ノズル2の下面と海形成用ノズル3の突出部3aとの上面との間に所定の間隙11が形成されている。前記突出部3aの周囲は海成分流路9を構成しており、海成分が図示せぬ海成分供給装置から押出し供給されたとき、まず同流路9に均一に充填されてから突出部3a上面の間隙11を通って海形成ノズル孔6に導入される。島形成ノズル孔5から島成分条となって前記間隙11に吐出され、該間隙11を通過するときに海成分が被覆されながら海形成ノズル孔6から下方のロート状複合部12に吐出される。このときの海成分の被覆量は、海成分の海成分押出機からの押出圧によって制御される。
島形成用ノズルとその上方の分配板の好ましい間隔、及び、海形成用ノズルとその上方の島形成用ノズルの好ましい間隔は、ともに50〜1,000μmである。これらの間隔が50μm未満の場合は流路抵抗が高くなり僅かな間隔の斑が吐出量の差となり易く、50μm未満の間隔をノズル面全体に渡り維持するのは実質的に困難であり、樹脂流が分布不均一となり、逆に1,000μmを超えると狭小部での樹脂流の圧力損失が低くなりノズル外周部と内周部で圧力分布が生じ樹脂流の均一分配が実質的に困難となるため好ましくない。
【0036】
集合セル4は、海成分被覆用ノズル3の下面に密着して配置される。複数個の海形成ノズル孔6から吐出された海成分被覆条は、集合セル4のロート状集合部12で合流し、海成分を介して融着一体化され、ロート状集合部12の下端の海島繊維紡出口7より紡出される。ロート状集合部12は、まず断面積の変化しない垂直面12aを経てから断面積が漸次小さくなるようなテーパー面12bとすることが好ましい。断面積変化のない12aがないと、得られる海島繊維の外周に位置する島成分の断面形状が変形し易くなる。又、このロート状集合部12の上面開口は複数個の海形成ノズル孔6の最外周部に配置する孔の外接線より大きく、その断面形状は前記外接線の形状と相似形であることが望ましい。海島繊維紡出口7の断面形状も同様に相似形であることが望ましいが、ロート状集合部12の上面開口及び海島繊維紡出口7を円形断面としても構わない。
【0037】
又島形成ノズル孔5、海形成ノズル孔6の断面形状は、各成分の流圧がノズル孔5,6の形状に影響されないため、様々な断面形状とすることが可能であり、各ノズル孔5,6及び海島繊維紡出口7の断面形状は、所望の海島繊維の断面形状によって選択される。図2は本発明の装置を用いて紡出した海島繊維の断面図である。同図において、例えば前記島形成ノズル孔5、海形成ノズル孔6及び海島繊維紡出口7を全て円形断面にした場合は図2(a)の繊維断面を呈し、海島繊維紡出口7のみを矩形にした場合には図2(b)に示すごとく島成分Aも楕円形状を呈する。又島形成ノズル孔5、或いは島形成ノズル孔5と海形成ノズル孔6を十字断面とし、海島繊維紡出口7を円形断面とした場合は図2(c)に示すごとく島成分が十字状の断面形状を有する海島繊維が紡糸される。その他、多様な形状のものが紡糸可能である。
【0038】
又図2の(a)〜(c)のように、島成分が1成分の場合は島形成用ノズルが1枚の上記例で紡糸できるが、図2の(d)に示すように島成分が2成分或いはそれ以上の場合には、その成分数に対応した数の島形成用ノズルを上記例の島形成用ノズル2と海成分被覆用ノズル3との間に挿入して対応することができる。
【0039】
更に、本発明の変形例として、海形成用ノズル3の任意の突出部3aの幾つかが、その上面を島形成用ノズル2の下面に密着させて海成分用間隙11を形成せずに島形成ノズル孔5と海形成ノズル孔6とを連結して、海成分の被覆を全く、或いは部分的に受けない海成分被覆条を形成することも可能である。
【0040】
(炭素繊維前駆体繊維の炭素化について)
本発明の炭素繊維前駆体繊維は、従来の炭素繊維の炭素化と同様に炭素化することにより、本発明のフィラメント状カーボンナノファイバー集合体からなる炭素繊維が得られる。炭素化は通常のPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維の製造工程で行うことができる。
【0041】
(炭素繊維からカーボンナノファイバーを得る方法)
本発明のフィラメント状のカーボンナノファイバー集合体からなる炭素繊維を粉砕処理することにより、フィラメント状カーボンナノファイバーを得ることができる。この粉砕処理を液体中で行うことにより、外径が100nm以下であるカーボンナノファイバーの分散液を得ることもきる。このような分散液の分散液調製時又は調整後にその分散液に樹脂を分散・溶解することによりフィラメント状カーボンナノファイバーを含有する樹脂コーティング液を得ることができる。
【0042】
又、同様の分散液を抄紙することによりフィラメント状カーボンナノファイバーからなる抄紙物を得ることができる。
更に、粉砕処理を樹脂との混合状態で行うことによりフィラメント状カーボンナノファイバーが分散された樹脂混合物を得ることができる。このように、分散工程に本発明のフィラメント状カーボンナノファイバー集合体からなる炭素繊維を用いることで、従来の粉体処理工程で懸念された取扱い性と安全衛生上の問題を克服したという点で本発明は工業的に有用な技術を提供するものである。
【0043】
(炭素繊維前駆体繊維のモルフォロジー観察)
炭素繊維前駆体繊維のモルフォロジー観察は電子顕微鏡用のエポキシ系樹脂で前駆体繊維束を包埋硬化して、繊維軸と垂直方向の断面が得られるようにトリミング、面出しした後、ダイヤモンドナイフを装着したミクロトームにより約70nmの厚さの切片を切り出した。得られた切片を電子顕微鏡観察用のメッシュに載せ、日立(株)H−7600等の透過型電子顕微鏡により、加速電圧120kVの条件で観察することが好ましい。
【0044】
(炭素繊維のモルフォロジー観察)
炭素繊維のモルフォロジー観察は、炭素繊維を繊維軸方向に引張破断して走査型電子顕微鏡用試料台に接着した後、イオンスパッター装置によりAuを約5nmの厚さになるようにコーティングし、日本電子(株)JSM−880等の走査型電子顕微鏡により、加速電圧5kVの条件で破断面を観察することが好ましい。一方、炭素繊維を乳鉢で破砕したものをイソプロパノールに分散し、電子顕微鏡観察用のメッシュに載せ乾燥した後、日立(株)H−7600等の透過型電子顕微鏡により、加速電圧120kVの条件で観察することも好ましい。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、フィラメント状カーボンナノファイバー集合体からなる高品質な炭素繊維を低コストで提供可能な炭素繊維前駆体繊維を提供する。
この炭素繊維を粉砕処理することにより容易にフィラメント状カーボンナノファイバーが得られる点で、工業的に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる紡糸口金装置の代表的な実施例である島成分が1種類である場合の紡糸口金装置を示す縦断面図である。
【図2】本発明により紡糸した海島繊維の断面図である。
【符号の説明】
1 分配板
2 島形成用ノズル
2a 突出部
3 海形成ノズル
3a 突出部
4 集合セル
5 島形成ノズル孔
6 海形成ノズル孔
7 海島繊維紡出口
8 島成分流路
9 海成分流路
10 島形成用間隙
11 海成分被覆用間隙
12 ロート状集合部
12a 垂直面
12b テーパー面
A 島成分
B 海成分
C 第二島成分
Claims (16)
- 熱処理により分解消失するポリマーを海部とし、溶融賦型可能なアクリロニトリル系ポリマー組成物を島部として紡糸口金装置を用いて溶融紡糸する炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 溶融賦型可能なアクリロニトリル系ポリマー組成物がアクリロニトリル系ポリマーとそのニトリル基に水和した水とからなる請求項1記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 溶融賦型可能なアクリロニトリル系ポリマー組成物がアクリロニトリル等の単量体を、単量体と水の総量に対して3〜30質量%の水が存在する系において、自生圧下に80℃以上の温度で重合し、前記単量体の45〜90質量%を重合体に変換したものである請求項1記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 溶融賦型可能なアクリロニトリル系ポリマー組成物がアクリロニトリル系ポリマー30〜90質量%、そのニトリル基に水和した水1〜56質量%並びにアクリロニトリル2〜63質量%からなる請求項1記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 紡糸口金装置から大気圧下の湿熱雰囲気中に糸条を紡出する請求項1〜4のいずれか一項記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 紡糸口金装置として、1枚以上の島形成用ノズル、海形成用ノズル及び集合セルを上方から順次重ねて構成され、前記島形成用ノズルは各ノズル孔の周辺に島成分流路を有し、該島形成用ノズルの上方に所定の間隔をおいて分配板が配されてなり、前記海形成用ノズルは各ノズル孔の周辺に海成分流路を有し、該海形成用ノズルの上方に所定の間隔をおいて前記島形成用ノズルが配されてなる紡糸口金装置を用いる請求項1〜5のいずれか一項記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 島部の直径が50〜500μmである請求項1〜6のいずれか一項記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 島部が以下の芯鞘構造を有している請求項1〜7のいずれか一項記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
芯部:熱処理により分解消失するポリマー
鞘部:炭素前駆体ポリマー - 芯部の直径が50〜500μmである請求項8記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- アクリロニトリル系ポリマー組成物中のアクリロニトリル系ポリマーがカルボン酸を含むモノマーを共重合したアクリロニトリル系ポリマーである請求項1〜9のいずれか一項記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- カルボン酸を含むモノマーがアクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸からなる群から選ばれる1種以上のカルボン酸を含むモノマーである請求項10記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- アクリロニトリル系ポリマー組成物中のアクリロニトリル系ポリマーがアクリルアミドを共重合したアクリロニトリル系ポリマーである請求項1〜11のいずれか一項記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 熱処理により分解消失するポリマーがメタクリレート系ポリマーである請求項1〜12のいずれか一項記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 請求項1〜13のいずれか一項記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法で得られた炭素繊維前駆体繊維を不融化した後に炭素化する炭素繊維の製造方法。
- 請求項14記載の炭素繊維の方法で得られた炭素繊維と液体とを混合した後、液体中で該炭素繊維を粉砕して得られるフィラメント状カーボンナノファイバー。
- 請求項14記載の炭素繊維の方法で得られた炭素繊維と樹脂とを混合した後、樹脂中で該炭素繊維を粉砕して得られるフィラメント状カーボンナノファイバー。
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