JP2004043906A - Fe−Cr−Co系磁石合金およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】粉末冶金法によって製造する場合に、焼結性を改善したFe−Cr−Co系磁石合金およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】20〜30wt%のCr、5〜20wt%のCo、1〜3wt%のMo、1〜3wt%のZr、および残部が主としてFeからなるFe−Cr−Co系磁石合金とする。また、O(酸素)含有量が0.5wt%以下であり、かつ、C(炭素)含有量が0.1wt%以下であるとよい。また、相対的密度が真密度に対する比率で表して90%より高いとよい。
【選択図】 図1
【解決手段】20〜30wt%のCr、5〜20wt%のCo、1〜3wt%のMo、1〜3wt%のZr、および残部が主としてFeからなるFe−Cr−Co系磁石合金とする。また、O(酸素)含有量が0.5wt%以下であり、かつ、C(炭素)含有量が0.1wt%以下であるとよい。また、相対的密度が真密度に対する比率で表して90%より高いとよい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高磁石特性を有するFe−Cr−Co系磁石合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、Fe−Cr−Co系磁石合金は、所定組成のものを溶解鋳造した後、必要に応じて圧延および塑性加工、切削および打ち抜きなどの機械加工を施して所望の形状を付与し、次いで磁気特性を付与する為の溶体化処理、磁場中熱処理および時効処理を行う工程によって製造されている。
【0003】
このように従来の溶解鋳造法によって複雑な形状や高い寸法精度を持つものを製造する場合には、機械加工や圧延を行う必要があるが、Crを含有する為に機械加工性は悪く、切削、打抜きなどでは屑が出てしまうこと、また、圧延を行う場合には、工程を数回繰り返し行わないと所望の形状および寸法が得られず、組成によっては圧延の際に割れが生じて所望の厚さまで圧延出来ないこともある。
【0004】
上記従来の方法で複雑形状のもの、あるいは寸法精度の高いものを製造するには、機械加工での歩留まりを高くできないという問題、あるいは加工工程が複雑となり手間がかかるためにコスト高になるという問題がある。
【0005】
一方、粉末冶金法(焼結法)には、上述の鋳造、圧延の問題点はなく、工業的に大量のFe−Cr−Co磁石を製造するには適している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、粉末冶金法(焼結法)による場合、この磁石合金はCrを多量に含むので、所定の組成の合金粉末では、焼結性が悪く、焼結後の密度が上がりにくいことが知られている。
【0007】
一般に、焼結後の密度を上げるには、焼結時間を長くするか、焼結温度を高くしなければならないが、焼結時間を長くすることは製造工程時間の延長を招き、また、焼結温度を高くすると、焼結炉の耐火性の問題から、炉の耐用年数が短かくなりコストの面で好ましくない。
【0008】
そこで、本発明は、粉末冶金法によって製造する場合において、焼結性を改善したFe−Cr−Co系磁石合金およびその製造方法を提供することを目的としたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Fe−Cr−Co系磁石合金にZrを添加することが焼結性の改善に有効であることに基づいている。
【0010】
すなわち、本発明のFe−Cr−Co系磁石合金は、20〜30wt%のCr、5〜20wt%のCo、1〜3wt%のMo、1〜3wt%のZr、および残部が主としてFeからなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のFe−Cr−Co系磁石合金は、O(酸素)含有量が0.5wt%以下であり、C(炭素)含有量が0.1wt%以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のFe−Cr−Co系磁石合金の相対的密度は真密度に対する比率で表して90%より高いことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のFe−Cr−Co系磁石合金の製造方法は、20〜30wt%のCr、5〜20wt%のCo、1〜3wt%のMo、および残部にFeを主として含むFe−Cr−Co系磁石合金の製造方法であって、Zrを加えて、粉末冶金法により合金化することを特徴とする。
【0014】
次に、本発明における作用を説明する。
【0015】
上記の合金成分において、Crを20〜30wt%としたのは、20wt%未満および30wt%より上ではいずれも実用的な磁石合金として要求される飽和磁束密度と保磁力を得ることが出来ないためである。
【0016】
また、Coを5〜20wt%としたのは、5wt%未満では実用的な磁石合金として要求される磁束密度と保磁力を得ることが出来ないためであり、20wt%より上では熱処理条件が実施しにくい条件となり、また、コスト的にも高価であるため実用的ではないからである。
【0017】
また、Moを1〜3wt%としたのは、1wt%未満では強磁性相のFeCo相を〈100〉方向に伸張する効果がなく、3wt%より上では磁気特性を低下させてしまう為、1〜3wt%の範囲とした。
【0018】
また、Zrが1wt%未満では焼結性改善の効果がなく、3wt%より上では磁気特性を低下させるので、この範囲とした。
【0019】
また、焼結体のO(酸素)含有量を0.5wt%以下、C(炭素)含有量を0.1wt%以下としたのは、これらの含有量がそれより上では磁気特性を低下させる為である。
【0020】
さらに、焼結条件としては、焼結中の酸化を防ぐ為、真空中または不活性ガス等の雰囲気中のような非酸化性雰囲気中で焼結するものとし、真空度は1×10−4Torr(1.3×10−2Pa)程度がよい。また、焼結温度は1200℃〜1400℃が好ましい。焼結温度が1200℃未満では高密度のものが得られず、1400℃を超えると変形や部分的な融解が生じるので好ましくない。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
まず、20〜30wt%Cr、5〜20wt%Co、1〜3wt%Mo、1〜3wt%のZr、および残部Feである組成の合金原料を不活性雰囲気中で溶解し、その後、ロール噴霧法でフレーク状粉末を得て、さらに粉砕して、粒径45μm程度の粉末を得る。他に水アトマイズ法などにより粉末を作製してもよい。
【0023】
この粉末を7×108Pa程度の圧力で、所定の形状に加圧成形する。
【0024】
その成形体を真空中または不活性ガス中などの非酸化性雰囲気において、1200℃〜1400℃で、3時間程度の焼結を行う。
【0025】
次に、得られた焼結体の密度を測定する。また、酸素含有量と炭素含有量も測定する。
【0026】
この焼結体に約1150℃で1時間程度の溶体化処理を行う。次に、約650℃、磁場強度およそ240kA/mで、磁場中等温処理を1時間程度行い、さらに600℃付近より500℃付近の間で5℃/h程度の温度勾配による冷却(時効処理)を行い、磁気異方性の形成とスピノーダル分解を行い、磁石合金を得る。そして、磁気特性を測定する。
【0027】
【実施例】
次いで、本発明の実施例を説明する。
【0028】
(実施例1)まず、(25.5wt%のCr)−(12.9wt%のCo)−(3wt%のMo)−(0wt%、1wt%、2wt%、3wt%または4wt%のZr)−(残部Fe)である5種類の組成の合金原料を用意した。これをArガス雰囲気中で高周波溶解し、溶湯をφ3mmのノズルからロールの回転数が3000r.p.mの銅製の双ロールに噴出することで厚さ20〜70μmフレーク状粉末を作製した。
【0029】
このフレーク状粉末を振動ミルにて10分間の粉砕を行った。この粉砕された粉末を、篩にて45μm以下になるように分級を行った。この時、それぞれの組成の粉末のO(酸素)含有量は0.3wt%以下であり、C(炭素)含有量は0.05wt%以下であった。
【0030】
この粉末を7ton/cm2(6.9×108Pa)の圧力で、φ13×10mmの形状に加圧成形した。
【0031】
次に、この成形体を1×10−4Torr(1.3×10−2Pa)の真空中で1300℃で3時間の条件にて焼結し、得られた焼結体の密度を測定した。
【0032】
結果を、Zr含有量と焼結体の密度の関係として、図1に示す。なお、密度は相対的密度(焼結体の密度/真密度)を%単位で表した。この時、焼結体のO(酸素)含有量とC(炭素)含有量は、それぞれ、0.3wt%、0.08wt%であった。
【0033】
この焼結体を1150℃で1時間の溶体化処理を行った後、650℃、3000Oe(238.8kA/m)で1時間の磁場中等温処理を施し、さらに600℃より500℃までの温度勾配5℃/hによる冷却を経て、磁石合金を得た。そして、磁気特性を測定した。
【0034】
図2に、Zr含有量の保持力Hcに対する結果を、図3に、Zr含有量の飽和磁束密度に対する結果を示す。
【0035】
図1、図2および図3より、Zr含有量は1wt%以上で焼結体の相対的な密度が90%より高くなるが、Zr含有量が3wt%を超えると磁気特性(飽和磁束密度および保磁力)は大きく低下する。
【0036】
従って、焼結体の密度を向上させ、磁気特性に悪い影響を及ぼさないZr含有量は1〜3wt%であることが分かる。
【0037】
(実施例2)25.5wt%Cr−12.9wt%Co−3wt%Mo−2wt%Zr−残部Feである組成の水アトマイズ粉末(O含有量0.7wt%、C含有量0.1wt%)に、焼結体におけるO含有量とC含有量をコントロールする為に、0〜0.5wt%のC(炭素)粉末を添加し、得られた粉末を7ton/cm2(6.9×108Pa)の圧力でφ13×10mmの形状に加圧成形した。
【0038】
次に、成形体を1×10−4Torr(1.3×10−2Pa)の真空中において、1300℃で3時間の条件にて焼結を行い、1150℃で1時間の溶体化処理を行った後、650℃、3000Oe(233.8kA/m)で1時間の磁場中等温処理を行い、さらに600℃より500℃までの温度勾配5℃/hによる冷却を行い、磁石合金を得て、磁気特性を測定した。この焼結体のO、Cの含有量と磁気特性の関係を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1より、O含有量が、0.5wt%を超えると飽和磁束密度が1300mTより低くなることが分かる。
【0041】
また、試料▲6▼の結果が示しているように、C含有量が0.1wt%を超えるとOの含有量が0.5wt%以下であっても磁気特性において大きな低下があることが分かった。
【0042】
Cの含有量と磁気特性の関係をさらに説明する。試料▲4▼においては、C含有量は0.08wt%であり、O含有量は0.62wt%である。このとき、飽和磁束密度が1005mTとなっている。
【0043】
それに対して、実施例1の場合には、C含有量が同じ0.08wt%であっても、O含有量が0.3wt%と少ないので、Zr含有量が1〜3wt%のときに、1300mT以上の高い飽和磁束密度が得られている。
【0044】
また、試料▲6▼においては、C含有量が0.13wt%であり、O含有量は0.4wt%のときに、飽和磁束密度は800mTまで低下している。
【0045】
これらの結果から、C含有量が0.1wt%以下でないと、実用的な磁気特性が得られないと推定できる。なお、焼結後の製造工程においては、C含有量、O含有量および密度はほとんど変化しない。
【0046】
また、表1において、相対的密度が90%より高い試料については、520×80A/m以上の保持力と1310mT以上の飽和磁束密度が得られている。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、Fe−Cr−Co系磁石の合金原料に、Zrを添加し、また、O、Cの含有量をそれぞれコントロールすることによって磁気特性に何ら悪い影響を与えること無く、また、粉末冶金法における焼結温度を高くすること無く、さらに、焼結時間を長くすること無く、焼結密度を高めたFe−Cr−Co系磁石合金およびその製造方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Zr含有量と焼結体の相対的な密度の関係を示す図。
【図2】Zr含有量と保持力Hcの関係を示す図。
【図3】Zr含有量と飽和磁束密度の関係を示す図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高磁石特性を有するFe−Cr−Co系磁石合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、Fe−Cr−Co系磁石合金は、所定組成のものを溶解鋳造した後、必要に応じて圧延および塑性加工、切削および打ち抜きなどの機械加工を施して所望の形状を付与し、次いで磁気特性を付与する為の溶体化処理、磁場中熱処理および時効処理を行う工程によって製造されている。
【0003】
このように従来の溶解鋳造法によって複雑な形状や高い寸法精度を持つものを製造する場合には、機械加工や圧延を行う必要があるが、Crを含有する為に機械加工性は悪く、切削、打抜きなどでは屑が出てしまうこと、また、圧延を行う場合には、工程を数回繰り返し行わないと所望の形状および寸法が得られず、組成によっては圧延の際に割れが生じて所望の厚さまで圧延出来ないこともある。
【0004】
上記従来の方法で複雑形状のもの、あるいは寸法精度の高いものを製造するには、機械加工での歩留まりを高くできないという問題、あるいは加工工程が複雑となり手間がかかるためにコスト高になるという問題がある。
【0005】
一方、粉末冶金法(焼結法)には、上述の鋳造、圧延の問題点はなく、工業的に大量のFe−Cr−Co磁石を製造するには適している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、粉末冶金法(焼結法)による場合、この磁石合金はCrを多量に含むので、所定の組成の合金粉末では、焼結性が悪く、焼結後の密度が上がりにくいことが知られている。
【0007】
一般に、焼結後の密度を上げるには、焼結時間を長くするか、焼結温度を高くしなければならないが、焼結時間を長くすることは製造工程時間の延長を招き、また、焼結温度を高くすると、焼結炉の耐火性の問題から、炉の耐用年数が短かくなりコストの面で好ましくない。
【0008】
そこで、本発明は、粉末冶金法によって製造する場合において、焼結性を改善したFe−Cr−Co系磁石合金およびその製造方法を提供することを目的としたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Fe−Cr−Co系磁石合金にZrを添加することが焼結性の改善に有効であることに基づいている。
【0010】
すなわち、本発明のFe−Cr−Co系磁石合金は、20〜30wt%のCr、5〜20wt%のCo、1〜3wt%のMo、1〜3wt%のZr、および残部が主としてFeからなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のFe−Cr−Co系磁石合金は、O(酸素)含有量が0.5wt%以下であり、C(炭素)含有量が0.1wt%以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のFe−Cr−Co系磁石合金の相対的密度は真密度に対する比率で表して90%より高いことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のFe−Cr−Co系磁石合金の製造方法は、20〜30wt%のCr、5〜20wt%のCo、1〜3wt%のMo、および残部にFeを主として含むFe−Cr−Co系磁石合金の製造方法であって、Zrを加えて、粉末冶金法により合金化することを特徴とする。
【0014】
次に、本発明における作用を説明する。
【0015】
上記の合金成分において、Crを20〜30wt%としたのは、20wt%未満および30wt%より上ではいずれも実用的な磁石合金として要求される飽和磁束密度と保磁力を得ることが出来ないためである。
【0016】
また、Coを5〜20wt%としたのは、5wt%未満では実用的な磁石合金として要求される磁束密度と保磁力を得ることが出来ないためであり、20wt%より上では熱処理条件が実施しにくい条件となり、また、コスト的にも高価であるため実用的ではないからである。
【0017】
また、Moを1〜3wt%としたのは、1wt%未満では強磁性相のFeCo相を〈100〉方向に伸張する効果がなく、3wt%より上では磁気特性を低下させてしまう為、1〜3wt%の範囲とした。
【0018】
また、Zrが1wt%未満では焼結性改善の効果がなく、3wt%より上では磁気特性を低下させるので、この範囲とした。
【0019】
また、焼結体のO(酸素)含有量を0.5wt%以下、C(炭素)含有量を0.1wt%以下としたのは、これらの含有量がそれより上では磁気特性を低下させる為である。
【0020】
さらに、焼結条件としては、焼結中の酸化を防ぐ為、真空中または不活性ガス等の雰囲気中のような非酸化性雰囲気中で焼結するものとし、真空度は1×10−4Torr(1.3×10−2Pa)程度がよい。また、焼結温度は1200℃〜1400℃が好ましい。焼結温度が1200℃未満では高密度のものが得られず、1400℃を超えると変形や部分的な融解が生じるので好ましくない。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
まず、20〜30wt%Cr、5〜20wt%Co、1〜3wt%Mo、1〜3wt%のZr、および残部Feである組成の合金原料を不活性雰囲気中で溶解し、その後、ロール噴霧法でフレーク状粉末を得て、さらに粉砕して、粒径45μm程度の粉末を得る。他に水アトマイズ法などにより粉末を作製してもよい。
【0023】
この粉末を7×108Pa程度の圧力で、所定の形状に加圧成形する。
【0024】
その成形体を真空中または不活性ガス中などの非酸化性雰囲気において、1200℃〜1400℃で、3時間程度の焼結を行う。
【0025】
次に、得られた焼結体の密度を測定する。また、酸素含有量と炭素含有量も測定する。
【0026】
この焼結体に約1150℃で1時間程度の溶体化処理を行う。次に、約650℃、磁場強度およそ240kA/mで、磁場中等温処理を1時間程度行い、さらに600℃付近より500℃付近の間で5℃/h程度の温度勾配による冷却(時効処理)を行い、磁気異方性の形成とスピノーダル分解を行い、磁石合金を得る。そして、磁気特性を測定する。
【0027】
【実施例】
次いで、本発明の実施例を説明する。
【0028】
(実施例1)まず、(25.5wt%のCr)−(12.9wt%のCo)−(3wt%のMo)−(0wt%、1wt%、2wt%、3wt%または4wt%のZr)−(残部Fe)である5種類の組成の合金原料を用意した。これをArガス雰囲気中で高周波溶解し、溶湯をφ3mmのノズルからロールの回転数が3000r.p.mの銅製の双ロールに噴出することで厚さ20〜70μmフレーク状粉末を作製した。
【0029】
このフレーク状粉末を振動ミルにて10分間の粉砕を行った。この粉砕された粉末を、篩にて45μm以下になるように分級を行った。この時、それぞれの組成の粉末のO(酸素)含有量は0.3wt%以下であり、C(炭素)含有量は0.05wt%以下であった。
【0030】
この粉末を7ton/cm2(6.9×108Pa)の圧力で、φ13×10mmの形状に加圧成形した。
【0031】
次に、この成形体を1×10−4Torr(1.3×10−2Pa)の真空中で1300℃で3時間の条件にて焼結し、得られた焼結体の密度を測定した。
【0032】
結果を、Zr含有量と焼結体の密度の関係として、図1に示す。なお、密度は相対的密度(焼結体の密度/真密度)を%単位で表した。この時、焼結体のO(酸素)含有量とC(炭素)含有量は、それぞれ、0.3wt%、0.08wt%であった。
【0033】
この焼結体を1150℃で1時間の溶体化処理を行った後、650℃、3000Oe(238.8kA/m)で1時間の磁場中等温処理を施し、さらに600℃より500℃までの温度勾配5℃/hによる冷却を経て、磁石合金を得た。そして、磁気特性を測定した。
【0034】
図2に、Zr含有量の保持力Hcに対する結果を、図3に、Zr含有量の飽和磁束密度に対する結果を示す。
【0035】
図1、図2および図3より、Zr含有量は1wt%以上で焼結体の相対的な密度が90%より高くなるが、Zr含有量が3wt%を超えると磁気特性(飽和磁束密度および保磁力)は大きく低下する。
【0036】
従って、焼結体の密度を向上させ、磁気特性に悪い影響を及ぼさないZr含有量は1〜3wt%であることが分かる。
【0037】
(実施例2)25.5wt%Cr−12.9wt%Co−3wt%Mo−2wt%Zr−残部Feである組成の水アトマイズ粉末(O含有量0.7wt%、C含有量0.1wt%)に、焼結体におけるO含有量とC含有量をコントロールする為に、0〜0.5wt%のC(炭素)粉末を添加し、得られた粉末を7ton/cm2(6.9×108Pa)の圧力でφ13×10mmの形状に加圧成形した。
【0038】
次に、成形体を1×10−4Torr(1.3×10−2Pa)の真空中において、1300℃で3時間の条件にて焼結を行い、1150℃で1時間の溶体化処理を行った後、650℃、3000Oe(233.8kA/m)で1時間の磁場中等温処理を行い、さらに600℃より500℃までの温度勾配5℃/hによる冷却を行い、磁石合金を得て、磁気特性を測定した。この焼結体のO、Cの含有量と磁気特性の関係を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1より、O含有量が、0.5wt%を超えると飽和磁束密度が1300mTより低くなることが分かる。
【0041】
また、試料▲6▼の結果が示しているように、C含有量が0.1wt%を超えるとOの含有量が0.5wt%以下であっても磁気特性において大きな低下があることが分かった。
【0042】
Cの含有量と磁気特性の関係をさらに説明する。試料▲4▼においては、C含有量は0.08wt%であり、O含有量は0.62wt%である。このとき、飽和磁束密度が1005mTとなっている。
【0043】
それに対して、実施例1の場合には、C含有量が同じ0.08wt%であっても、O含有量が0.3wt%と少ないので、Zr含有量が1〜3wt%のときに、1300mT以上の高い飽和磁束密度が得られている。
【0044】
また、試料▲6▼においては、C含有量が0.13wt%であり、O含有量は0.4wt%のときに、飽和磁束密度は800mTまで低下している。
【0045】
これらの結果から、C含有量が0.1wt%以下でないと、実用的な磁気特性が得られないと推定できる。なお、焼結後の製造工程においては、C含有量、O含有量および密度はほとんど変化しない。
【0046】
また、表1において、相対的密度が90%より高い試料については、520×80A/m以上の保持力と1310mT以上の飽和磁束密度が得られている。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、Fe−Cr−Co系磁石の合金原料に、Zrを添加し、また、O、Cの含有量をそれぞれコントロールすることによって磁気特性に何ら悪い影響を与えること無く、また、粉末冶金法における焼結温度を高くすること無く、さらに、焼結時間を長くすること無く、焼結密度を高めたFe−Cr−Co系磁石合金およびその製造方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Zr含有量と焼結体の相対的な密度の関係を示す図。
【図2】Zr含有量と保持力Hcの関係を示す図。
【図3】Zr含有量と飽和磁束密度の関係を示す図。
Claims (4)
- 20〜30wt%のCr、5〜20wt%のCo、1〜3wt%のMo、1〜3wt%のZr、および残部が主としてFeからなることを特徴とするFe−Cr−Co系磁石合金。
- O(酸素)含有量が0.5wt%以下であり、かつ、C(炭素)含有量が0.1wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のFe−Cr−Co系磁石合金。
- 相対的密度が真密度に対する比率で表して90%より高いことを特徴とする請求項1または2に記載のFe−Cr−Co系磁石合金。
- 20〜30wt%のCr、5〜20wt%のCo、1〜3wt%のMo、および残部にFeを主として含むFe−Cr−Co系磁石合金の製造方法において、Zrを添加して、粉末冶金法により合金化することを特徴とするFe−Cr−Co系磁石合金の製造方法。
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JP (1) | JP2004043906A (ja) |
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2002
- 2002-07-12 JP JP2002204119A patent/JP2004043906A/ja active Pending
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