JP2004042433A - ノズルプレートの製造方法およびインクジェットヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明はノズルプレートの製造において、基材および撥水膜の加工形状精度の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】基材1上に少なくとも1層以上からなる撥水膜2を有するノズルプレート構成部材を、基材1側から加工するとともに、主に基材1をエッチングする第1の加工工程と、第1の加工工程終了後、主に上記撥水膜2を酸素を有するプラズマを用いてエッチングする第2の加工工程を備える。
【選択図】 図1
【解決手段】基材1上に少なくとも1層以上からなる撥水膜2を有するノズルプレート構成部材を、基材1側から加工するとともに、主に基材1をエッチングする第1の加工工程と、第1の加工工程終了後、主に上記撥水膜2を酸素を有するプラズマを用いてエッチングする第2の加工工程を備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットプリンタにおけるノズルプレートの製造方法およびインクジェットヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンターのノズルプレートにおいて、吐出されるインクの吐出特性を向上させる目的から、吐出口形成部材の吐出口が形成される面、少なくとも吐出口近傍は撥水性を持つ材料を塗布、熱処理することで形成し、撥水性を持たせている。吐出口形成部材(基材)としてはポリイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォンなどが好ましく用いられる。その中でも特に好ましいのはポリイミド樹脂でDupont社製;カプトン(登録商標)や、宇部興産(株)製;ユーピレックス(登録商標)などが寸法安定性、耐インク性、耐熱性などに優れているので好ましく用いられる。
【0003】
また、撥水膜は、溶剤可溶性のフッ素ポリマやシリコン樹脂などの素材を適当な溶剤に溶解して、ノズル板上にディップコート、スピンコートなどで1μm前後の厚さにコーティング、熱処理して形成する。撥水膜素材としては、パーフルオロポリマの結晶性を低下させて可溶性とし、さらに架橋性基を導入した、フルオロビニレンとビニルエーテルの交互共重合体(旭硝子(株)製;ルミフロン(登録商標)、大日本インキ(株)製;フルオネート(登録商標)、セントラル硝子(株)製;セフラルコート(登録商標)、ダイキン(株)製;C−1(登録商標)等)、非晶質で溶剤可溶性のパーフルオロシクロポリマ(旭硝子(株)製;サイトップ(登録商標)、Dupont社製;テフロン(登録商標)AF等)、パーフルオロ基を側鎖に有するポリマ(旭硝子(株)製;旭ガード(登録商標)AGシリーズ等)を挙げることができる。
【0004】
ノズルプレートの製造方法は、たとえば、特開平10−146981号公報(以下、先行文献1と称する)、特開平10−157140号公報(以下、先行文献2と称する)などで示されている。まず図4(A)で示されるように、上記吐出口形成部材としての基材1上の吐出口10が形成される面に撥水性を持つ材料2を形成し、図4(B)で示されるように基材1側から吐出口形成部材にレーザービーム3を照射することによって吐出口10を形成する。
【0005】
また、他のノズルプレートの製造方法は、たとえば特開平6−238903号公報(以下、先行文献3と称する)に示されている。この先行文献3には、ノズルプレートへの吐出口の形成をドライエッチングで行なう技術が開示されている。すなわち、図5(A)に示すように基材1に所定の形状のマスキング5を行なった上で、O2、CO2、CCl4などのガスを用いたプラズマによって等方的にエッチングすることで、吐出口10を形成している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の先行文献1あるいは先行文献2では、レーザ加工時に吐出口形成部材としての基材1には撥水膜2が形成されている。したがって、基材1と撥水膜2との両方を上記レーザで同時に加工することになる。上記レーザとしては紫外光レーザ、特にエキシマレーザがよく用いられる。基材1として用いられるポリイミドのフィルムは、上記紫外光レーザで用いられる発振周波数付近(200〜400nm)の光の吸収率が良く、それに伴って上記紫外光レーザによる加工性は良い。
【0007】
しかし、撥水膜2の多くは前記紫外光レーザの発振周波数付近の光の吸収が悪く、それに伴って前記紫外光レーザによる加工性は良くない。したがって、図4(C)に示すように、加工後に撥水膜2の剥離41が起こったり、図4(D)に示すように、不要な部分が完全に除去できないことがある(抜け残り42)。これによってインク吐出時に飛翔液滴の方向が安定しなくなり、印字品位の低下を招くことが問題となる。
【0008】
一方、先行文献3では、等方的なドライエッチングによって吐出口を形成している。通常、ドライエッチング装置のチャンバーは有限の大きさをもつため、チャンバー内に発生させるプラズマの密度には分布が生じる。このプラズマ密度に分布が生じるとそのままエッチングレートのばらつきになる。
【0009】
このばらつきを図で説明すると図5(B),(C),(D)のようになる。すなわち、図5(B)に示すように、エッチレートの早い部位の吐出口10は先に貫通穴が形成されるが、図5(C)エッチレートの遅い部位の吐出口10は途中までしか穴は形成されていない。このため、エッチレートの遅い部位が完全にエッチングされるまで加工を行なう必要があるが、このときエッチレートの早い部位は過剰に等方エッチングされるため、図5(D)に示すように、吐出口10の径が大きくなる。つまり、吐出口10のばらつきが大きくなる。
【0010】
吐出口10の大きさは、吐出するインク液滴の速度に大きく影響するため、吐出口径のばらつきが大きくなると、インク吐出速度がばらつき、これによってインクの紙面上への着弾精度が劣化し、印字品位の低下を招くことが問題となる。
【0011】
したがって、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、第1の課題は、ノズルプレートの製造において、基材および撥水膜の加工形状精度の向上を図ることを目的とする。
【0012】
また、この発明の第2の課題は、ノズルプレートの製造において、吐出口径のばらつきを抑え、吐出口径の均一化を図ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、本発明に基づいたノズルプレートの製造方法のある局面においては、液滴を吐出することによって媒体上に描画する描画装置に用いられるノズルプレートの製造方法であって、基材上に少なくとも1層以上からなる撥水膜を有するノズルプレート構成部材を、基材側から加工するとともに、主に基材をエッチングする第1の加工工程と、第1の加工工程終了後、主に上記撥水膜をエッチングする第2の加工工程を備えることを特徴としている。
【0014】
この製造方法によれば、ノズルプレートとなる基材の加工と撥水膜との加工をそれぞれの材質に応じた最適な手法を用いているため、それぞれの加工を形状精度良く行なうことが可能となる。
【0015】
また、本発明のノズルプレートの他の好ましい製造方法では、第1の加工工程がエキシマレーザによる加工工程を有していることを特徴としている。この製造方法によれば、ノズルプレートの基材の加工をエキシマレーザによって行なうため、プラズマを用いたドライエッチングにくらべ、ノズル穴形状のばらつきを低減させることが可能となる。
【0016】
また、本発明のノズルプレートの他の好ましい製造方法では、第2の加工工程が、プラズマを用いた加工工程を有していることを特徴としている。この製造方法によれば、ノズルプレートの撥水膜の加工を、プラズマを用いたドライエッチングで行なうため、レーザ光の吸収率が低い材料であっても、加工に際して大きな歪を印加することがないため、撥水膜の剥離や抜け残りが生じることがない。
【0017】
また、本発明のノズルプレートの他の好ましい製造方法では、上記第2の加工工程におけるプラズマを用いた加工が、基材側からなされることを特徴としている。この製造方法によれば、第1の加工工程で加工された基材の形状をマスクとして撥水膜を加工することができるので、撥水膜を加工するためのマスクを新たに作成する必要がなく、製造プロセスを簡略化することができる。
【0018】
また、本製造方法では、ノズルプレートのインク流入側(撥水膜側が吐出側)全面とノズル穴の内側が、プラズマエッチングにさらされるため、上記部位のインクに対する濡性が向上し、これに伴なって気泡のかみこみなどの危険性が少なくなるため、飛翔液滴の方向安定性に対して良い方向で作用する。
【0019】
また、本発明のノズルプレートの他の好ましい製造方法では、上記第2の加工工程が、酸素ガスを有する雰囲気で行われることを特徴としている。この製造方法によれば、プラズマによって生成された、酸素原子のイオンや活性種が撥水膜中の炭素原子や水素原子と反応するため、大きな熱の影響を与えることなく撥水膜をエッチングすることができるため、ノズルプレート基材と撥水膜の剥離の危険性を大幅に低減することができ、飛翔液滴の方向安定性を向上することが可能となる。
【0020】
また、本発明のノズルプレートの他の好ましい製造方法では、上記第2の加工工程におけるプラズマを用いた加工工程が、平行な平板電極を用いたエッチングを備えていることを特徴としている。この製造方法によれば、ガス圧などのエッチング条件を制御することで、エッチングの異方性を簡便に制御できるため、ノズルプレート撥水膜面への活性種のまわりこみを防止することができ、撥水膜の撥水性劣化を防止することができるとともに、第2の加工工程においてエッチングの横への広がりを抑制することができるので、ノズル吐出口径が安定して加工することが可能になる。
【0021】
また、本発明のノズルプレートの他の好ましい製造方法では、上記基材のレーザ光吸収率が、上記撥水膜のレーザ光吸収率の10倍以上であることを特徴としている。この製造方法によれば、第1の加工工程を撥水膜と基材との界面で精度良くとめることができるため、第2の加工工程における撥水膜の加工量が安定するため、吐出口径のばらつきを低減することが可能となる。
【0022】
また、本発明のインクジェットヘッドは、上記一連の製造方法にかかるノズルプレートを用いて作成することを特徴としている。このインクジェットヘッドでは、上記一連の製造方法にかかるノズルプレートを使用するため、ノズル穴のばらつきや形状が安定し、さらにノズルプレートのインク流入側とノズル穴の内側の親水性が高い。このため、インクジェットヘッドの吐出特性のばらつきが低減され、これによってインクの媒体上への着弾精度を向上することが可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に基づいた各実施の形態について図参照して詳細に説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1(A)から(D)は実施の形態1に基づいたノズルプレートの製造方法のフローを示す図である。図1(A)から(D)を参照して、本実施の形態にかかるノズルプレートの製造方法を説明すると以下の通りである。
【0025】
まず、図1(A)を参照して、Dupont社製;カプトン(登録商標)や宇部興産(株)製;ユーピレックス(登録商標)などの、ポリイミド樹脂からなる厚さ50μmのシートを吐出穴形成部材としての基材1として準備する。次に、図1(B)を参照して、この基材1の片方の表面に、非晶質で溶剤可溶性のパーフルオロシクロポリマ(旭ガラス(株)製;サイトップ(登録商標))を撥水膜2として0.3μmの厚さに形成する。撥水膜2は上記ポリマを溶解した溶液を、スピンコート法によって塗布した後、220℃の雰囲気で焼成した。これによって、撥水膜2を形成した面が吐出側、撥水膜2を塗布していない面がインク流入側となる。
【0026】
ここで、非晶質で溶剤可溶性のパーフルオロシクロポリマ以外に、撥水膜2として、フルオロビニレンとビニルエーテルの交互共重合体、パーフルオロ基を側鎖に有するポリマ、あるいはシロキサン結合を有するポリマなどを用いることが可能である。
【0027】
また、撥水膜2の厚さは、インクジェットヘッドの使用用途に応じて、0.1μmから5μm程度の厚さで任意に設定することができる。また、ノズルプレートの基材1としては、上記ポリイミド樹脂以外に、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリサルフォンからなる樹脂材料を使用することができる。
【0028】
次に、図1(C)を参照して、撥水膜2を形成した基材1にエキシマレーザ3を用いて、吐出穴(ノズル穴)形状の穴10aをあける第1のエッチングを行なう。
【0029】
ここで、図2は、本実施の形態で用いるエキシマレーザ加工システムの一例を示す図である。このエキシマレーザ加工システムは、KrFエキシマレーザ5から発振された波長248nmのレーザービーム3が光学系6を通過する。光学系6の所定領域には、所定の開口パターンを有するインクジェットノズルのすべて、または一部のパターンを持った投影マスク7が配置される。光学系6を通過したレーザービーム3は、被エッチング物8に照射される。
【0030】
エキシマレーザ5から発振されたレーザービーム3は、光学系6を通り、投影マスク7を照射する。この光学系6は投影マスク7のパターンを1/4倍の縮尺率で被エッチング物8上に投影し、被エッチング物8に加工を行なう。
【0031】
本実施の形態において、ノズルプレート基材の加工は基材1上のエネルギー密度を150mJ/cm2に制御し、撥水膜2が形成されていない流入側からエッチングを行なった(図1(C)参照)。
【0032】
ここで、エキシマレーザの透過率を、ポリイミド樹脂とパーフルオロシクロポリマにおいて比較すると、200μm厚のポリイミド樹脂の透過率は0%、パーフルオロシクロポリマ200μmの透過率は90%である。
【0033】
一方、ポリイミドとパーフルオロシクロポリマの屈折率はそれぞれ、1.78、1.34であるので、反射率はそれぞれ8%、2%と推定される。
【0034】
このため、上記材料における吸収率は、(吸収率=100−反射率−透過率)より、それぞれ、92%(A=100−0−8)、8%(A=100−90−2)となり、ポリイミドとパーフルシクロポリマとの吸収率の違いは、おおむね10倍以上である。
【0035】
レーザ加工の加工速度、すなわちエッチレートはレーザ光の吸収率に依存するため、上記結果からポリイミドに比べてパーフルシクロポリマはエキシマ加工において加工され難いことが定性的に理解される。
【0036】
従来のプロセスでは、このエッチングされ難いパーフルシクロポリマをレーザのパワーで吹き飛ばして加工していたが、上述したように、撥水膜2の抜け残りや、はがれの問題があるため、本実施の形態では、レーザによる加工は基材1のみにとどめ、撥水膜2と基材1との界面でエキシマレーザによるエッチングを終了する。
【0037】
上記基材1の厚さムラなどを考慮して若干のオーバーエッチを行なう必要があるが、レーザの吸収率が10倍以上異なるため、図1(C)に示される第1のエッチングは良好に撥水膜2と基材1との界面近傍で停止させることができる。また、このオーバーエッチによって撥水膜2が少しエッチングされても良い。
【0038】
次に、図1(D)に示すように、ドライエッチング装置20(図3参照)を用いて撥水膜2をエッチングし、吐出穴(ノズル穴)10を完成させる。ここで、図3(A)は、本実施の形態にかかる、第2のエッチングに用いる、平行平板型反応性ドライエッチング装置(以下RIE:Reactive Ion Etching)20の概念図であり、図3(B)は、電極23の部分拡大図である。
【0039】
RIEは真空排気が可能なチャンバ21を有し、このチャンバ21内に、相対する平行な電極22,23を装備している。この電極22,23の一方である下部電極23には、13.56MHzのRF電源24が接続され、高周波電圧が印加される。もう一方の上部電極22は、チャンバ21とともにグランドに接続されている。
【0040】
エッチングの際には、チャンバ21内にO2、Ar、CF4などの反応ガスが導入され、相対する電極22,23間でプラズマ25発生させることで、プラズマ25中にガスのイオン化したガス分子(以下イオン)26や活性種を生成する。被エッチング物8は下部電極23上に配置され、プラズマ25中で生成されたイオン26や活性種は、自己バイアス電界によって下部電極23に向かって加速され、下部電極23上の被エッチング物8と反応する。このため、反応ガスのイオンや活性種と反応し蒸気圧の低い分子を形成する材料であれば、レーザの吸収に関係なく良好に加工することができる。
【0041】
本実施の形態では、図3(B)に示すように、エキシマレーザによって基材1をエッチングしたノズルプレートをRIEの下部電極23上に撥水膜2面を上部電極22側に向けて配置し、流入側から第2のエッチングを行なった。
【0042】
図1(D)を参照して、上述のように、流入側から第2のエッチングを行なうことによって、第1のエッチングで加工した基材1の穴10aをマスクとすることができるので、新たに撥水膜2を加工するためのマスキングを行なう必要がなく、プロセスが簡便である。また、マスクアライメントの誤差がないため、高精度の加工が可能となる。
【0043】
反応ガスとしてはO2ガスを用い、30mTorrの圧力中で、下部電極23に0.25W/cm2のパワー密度のRFパワーを印加した。この条件では、プラズマ中で生成されたイオンや活性種がほぼ垂直にノズルプレートに照射されるため(異方性エッチング)、第1の加工工程で形成されたノズルプレート基材の穴の形状が転写される形で、撥水膜2がエッチングされる。
【0044】
また、第1の加工工程による基材1の穴は、9°から12°程度のテーパーを有しているため、第2の加工工程のオーバーエッチングが過剰であると吐出面に形成される穴が大きくなるが、撥水膜2の厚さが0.3μmと非常に薄いことと、上記テーパー角が小さいことから、2倍のオーバーエッチを行なった場合でも、最大で直径が0.12μm程度拡がるだけで、インクジェットヘッドに応用する際にはまったく影響がない。
【0045】
また、従来の技術の欄で説明したように、上記RIEではプラズマ密度によってエッチレートに分布が生じるが、上記のように、たとえば2倍のエッチレートの差があったとしても、実用上まったく問題がなく、非常に余裕度の広い、安定した加工方法であると言える。
【0046】
さらに、RIEは被エッチング物を冷却しながら化学的に加工できるため、被エッチング物の温度上昇がほとんどなく、さらにレーザ加工と異なりノズルプレート全面が均一にエッチングされるので、撥水膜加工部に熱的な歪がほとんど残らず、撥水膜2が剥離することなくエッチングすることができる。
【0047】
本実施の形態で加工したノズルの吐出口径のばらつきは、140チャンネルで標準偏差が0.20μmと非常に良好であった。さらに、上述したように、ノズルプレートの流入側が均一にドライエッチされるため、ノズル穴の内側を含め基材表面の親水性が向上し、インクジェットヘッドに組み込んだ際、気泡が残留しにくく、飛翔液滴の方向安定性がさらに向上するという効果もある。
【0048】
また、本実施の形態では第2のエッチングに際して、撥水膜2面になんの処理も施さずに行なったが、撥水膜2面保護のために、保護部材を当接してエッチングを行なっても良い。
【0049】
比較のために、本実施の形態にかかる製造方法で加工したノズルプレートと、基材1と撥水膜2とをエキシマレーザのみで加工したノズルプレート(比較例)を用いて、インクジェットヘッドを作成し、吐出特性を比較した。
【0050】
上記2つのインクジェットヘッドを、インクジェットプリンタに搭載し、1mm離れた紙面上に印字し、印字位置のばらつき(着弾精度)を調べた。上記2つのヘッドは同様のパターンの吐出口10を有しており、チャンネル数は140である。
【0051】
これら2つの着弾精度を比較したところ、比較例のインクジェットヘッドは着弾精度のばらつきが50μmと大きかったのに対して、本実施の形態にかかる製造方法で作成したノズルプレートを用いたインクジェットヘッドでは、着弾精度のばらつきは10μmと非常に良好であった。
【0052】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に基づいたノズルプレートの製造方法について説明する。本実施の形態において実施の形態1と重複する内容については、簡略化のため省略する。
【0053】
本実施の形態では、ポリイミド樹脂からなる厚さ50μmのシートを基材1として用い、この基材1の片方の表面に、撥水膜2としてオルガノシロキサン3次元重合を有するポリマを、0.5μmの厚さで形成した(図1(A),(B)参照)。
【0054】
次に、この撥水膜2を形成した基材1にエキシマレーザを用いて、吐出口形状の穴10aをあける第1のエッチングを行なう(図1(C)参照)。第1の加工工程は実施の形態1と同様の条件で、撥水膜2を形成していない側から加工した。
【0055】
次に、第2のエッチングは、実施の形態1と同様の装置を用いて行ない、吐出口10を完成させた。ただし、本実施の形態ではRIEに導入するガスをCF4とO2との混合ガスとした。これは、本実施の形態に用いたシロキサン結合を有するポリマ中に含まれるSiが酸素ガスだけでは、完全にエッチングされずSiが残さとして残留し、エッチングムラなどの不具合を防止するためである。すなわちフッ素を含有するガスを導入することによって、プラズマで励起されたFと撥水膜2中のSiが反応しSiF4となって昇華し、残さの発生を防止することができる。
【0056】
本実施の形態にかかるノズルプレートを用いてインクジェットヘッドを作成し、着弾精度を評価したところ、実施の形態1と同様に着弾精度のばらつきは10μmと良好であった。
【0057】
また、上記各実施の形態においては、撥水膜2を単層膜としているが、同様の機能を有するように、複数の膜からなる構成とすることも可能である。
【0058】
以上、今回開示した各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0059】
【発明の効果】
以上、本発明に基づいたノズルプレートの製造方法ある局面によれば、ノズルプレートとなる基材の加工と撥水膜の加工を異なる手法を用いて行なうため、それぞれの加工を形状精度良く行なうことができるという効果を奏する。また、本発明に基づいたノズルプレートを用いたインクジェットヘッドは、従来に比べ着弾精度が大幅に向上するとういう効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)から(D)は、実施の形態1におけるノズルプレートの製造プロセスを示す図である。
【図2】レーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【図3】ドライエッチング装置の構成を示す模式図である。
【図4】従来の技術におけるレーザによるノズル加工を説明する図である。
【図5】従来の技術におけるドライエッチングによるノズル加工を説明する図である。
【符号の説明】
1 基材、2 撥水膜、3 エキシマレーザ、5 KrFエキシマレーザ、6光学系、7 投影マスク、8 被エッチング物、10 吐出口、20 ドライエッチング装置、21 チャンバ、22,23 電極、24 RF電源、25 プラズマ、26 イオン化したガス分子(以下イオン)、31,32 レーザ加工。
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットプリンタにおけるノズルプレートの製造方法およびインクジェットヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンターのノズルプレートにおいて、吐出されるインクの吐出特性を向上させる目的から、吐出口形成部材の吐出口が形成される面、少なくとも吐出口近傍は撥水性を持つ材料を塗布、熱処理することで形成し、撥水性を持たせている。吐出口形成部材(基材)としてはポリイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォンなどが好ましく用いられる。その中でも特に好ましいのはポリイミド樹脂でDupont社製;カプトン(登録商標)や、宇部興産(株)製;ユーピレックス(登録商標)などが寸法安定性、耐インク性、耐熱性などに優れているので好ましく用いられる。
【0003】
また、撥水膜は、溶剤可溶性のフッ素ポリマやシリコン樹脂などの素材を適当な溶剤に溶解して、ノズル板上にディップコート、スピンコートなどで1μm前後の厚さにコーティング、熱処理して形成する。撥水膜素材としては、パーフルオロポリマの結晶性を低下させて可溶性とし、さらに架橋性基を導入した、フルオロビニレンとビニルエーテルの交互共重合体(旭硝子(株)製;ルミフロン(登録商標)、大日本インキ(株)製;フルオネート(登録商標)、セントラル硝子(株)製;セフラルコート(登録商標)、ダイキン(株)製;C−1(登録商標)等)、非晶質で溶剤可溶性のパーフルオロシクロポリマ(旭硝子(株)製;サイトップ(登録商標)、Dupont社製;テフロン(登録商標)AF等)、パーフルオロ基を側鎖に有するポリマ(旭硝子(株)製;旭ガード(登録商標)AGシリーズ等)を挙げることができる。
【0004】
ノズルプレートの製造方法は、たとえば、特開平10−146981号公報(以下、先行文献1と称する)、特開平10−157140号公報(以下、先行文献2と称する)などで示されている。まず図4(A)で示されるように、上記吐出口形成部材としての基材1上の吐出口10が形成される面に撥水性を持つ材料2を形成し、図4(B)で示されるように基材1側から吐出口形成部材にレーザービーム3を照射することによって吐出口10を形成する。
【0005】
また、他のノズルプレートの製造方法は、たとえば特開平6−238903号公報(以下、先行文献3と称する)に示されている。この先行文献3には、ノズルプレートへの吐出口の形成をドライエッチングで行なう技術が開示されている。すなわち、図5(A)に示すように基材1に所定の形状のマスキング5を行なった上で、O2、CO2、CCl4などのガスを用いたプラズマによって等方的にエッチングすることで、吐出口10を形成している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の先行文献1あるいは先行文献2では、レーザ加工時に吐出口形成部材としての基材1には撥水膜2が形成されている。したがって、基材1と撥水膜2との両方を上記レーザで同時に加工することになる。上記レーザとしては紫外光レーザ、特にエキシマレーザがよく用いられる。基材1として用いられるポリイミドのフィルムは、上記紫外光レーザで用いられる発振周波数付近(200〜400nm)の光の吸収率が良く、それに伴って上記紫外光レーザによる加工性は良い。
【0007】
しかし、撥水膜2の多くは前記紫外光レーザの発振周波数付近の光の吸収が悪く、それに伴って前記紫外光レーザによる加工性は良くない。したがって、図4(C)に示すように、加工後に撥水膜2の剥離41が起こったり、図4(D)に示すように、不要な部分が完全に除去できないことがある(抜け残り42)。これによってインク吐出時に飛翔液滴の方向が安定しなくなり、印字品位の低下を招くことが問題となる。
【0008】
一方、先行文献3では、等方的なドライエッチングによって吐出口を形成している。通常、ドライエッチング装置のチャンバーは有限の大きさをもつため、チャンバー内に発生させるプラズマの密度には分布が生じる。このプラズマ密度に分布が生じるとそのままエッチングレートのばらつきになる。
【0009】
このばらつきを図で説明すると図5(B),(C),(D)のようになる。すなわち、図5(B)に示すように、エッチレートの早い部位の吐出口10は先に貫通穴が形成されるが、図5(C)エッチレートの遅い部位の吐出口10は途中までしか穴は形成されていない。このため、エッチレートの遅い部位が完全にエッチングされるまで加工を行なう必要があるが、このときエッチレートの早い部位は過剰に等方エッチングされるため、図5(D)に示すように、吐出口10の径が大きくなる。つまり、吐出口10のばらつきが大きくなる。
【0010】
吐出口10の大きさは、吐出するインク液滴の速度に大きく影響するため、吐出口径のばらつきが大きくなると、インク吐出速度がばらつき、これによってインクの紙面上への着弾精度が劣化し、印字品位の低下を招くことが問題となる。
【0011】
したがって、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、第1の課題は、ノズルプレートの製造において、基材および撥水膜の加工形状精度の向上を図ることを目的とする。
【0012】
また、この発明の第2の課題は、ノズルプレートの製造において、吐出口径のばらつきを抑え、吐出口径の均一化を図ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、本発明に基づいたノズルプレートの製造方法のある局面においては、液滴を吐出することによって媒体上に描画する描画装置に用いられるノズルプレートの製造方法であって、基材上に少なくとも1層以上からなる撥水膜を有するノズルプレート構成部材を、基材側から加工するとともに、主に基材をエッチングする第1の加工工程と、第1の加工工程終了後、主に上記撥水膜をエッチングする第2の加工工程を備えることを特徴としている。
【0014】
この製造方法によれば、ノズルプレートとなる基材の加工と撥水膜との加工をそれぞれの材質に応じた最適な手法を用いているため、それぞれの加工を形状精度良く行なうことが可能となる。
【0015】
また、本発明のノズルプレートの他の好ましい製造方法では、第1の加工工程がエキシマレーザによる加工工程を有していることを特徴としている。この製造方法によれば、ノズルプレートの基材の加工をエキシマレーザによって行なうため、プラズマを用いたドライエッチングにくらべ、ノズル穴形状のばらつきを低減させることが可能となる。
【0016】
また、本発明のノズルプレートの他の好ましい製造方法では、第2の加工工程が、プラズマを用いた加工工程を有していることを特徴としている。この製造方法によれば、ノズルプレートの撥水膜の加工を、プラズマを用いたドライエッチングで行なうため、レーザ光の吸収率が低い材料であっても、加工に際して大きな歪を印加することがないため、撥水膜の剥離や抜け残りが生じることがない。
【0017】
また、本発明のノズルプレートの他の好ましい製造方法では、上記第2の加工工程におけるプラズマを用いた加工が、基材側からなされることを特徴としている。この製造方法によれば、第1の加工工程で加工された基材の形状をマスクとして撥水膜を加工することができるので、撥水膜を加工するためのマスクを新たに作成する必要がなく、製造プロセスを簡略化することができる。
【0018】
また、本製造方法では、ノズルプレートのインク流入側(撥水膜側が吐出側)全面とノズル穴の内側が、プラズマエッチングにさらされるため、上記部位のインクに対する濡性が向上し、これに伴なって気泡のかみこみなどの危険性が少なくなるため、飛翔液滴の方向安定性に対して良い方向で作用する。
【0019】
また、本発明のノズルプレートの他の好ましい製造方法では、上記第2の加工工程が、酸素ガスを有する雰囲気で行われることを特徴としている。この製造方法によれば、プラズマによって生成された、酸素原子のイオンや活性種が撥水膜中の炭素原子や水素原子と反応するため、大きな熱の影響を与えることなく撥水膜をエッチングすることができるため、ノズルプレート基材と撥水膜の剥離の危険性を大幅に低減することができ、飛翔液滴の方向安定性を向上することが可能となる。
【0020】
また、本発明のノズルプレートの他の好ましい製造方法では、上記第2の加工工程におけるプラズマを用いた加工工程が、平行な平板電極を用いたエッチングを備えていることを特徴としている。この製造方法によれば、ガス圧などのエッチング条件を制御することで、エッチングの異方性を簡便に制御できるため、ノズルプレート撥水膜面への活性種のまわりこみを防止することができ、撥水膜の撥水性劣化を防止することができるとともに、第2の加工工程においてエッチングの横への広がりを抑制することができるので、ノズル吐出口径が安定して加工することが可能になる。
【0021】
また、本発明のノズルプレートの他の好ましい製造方法では、上記基材のレーザ光吸収率が、上記撥水膜のレーザ光吸収率の10倍以上であることを特徴としている。この製造方法によれば、第1の加工工程を撥水膜と基材との界面で精度良くとめることができるため、第2の加工工程における撥水膜の加工量が安定するため、吐出口径のばらつきを低減することが可能となる。
【0022】
また、本発明のインクジェットヘッドは、上記一連の製造方法にかかるノズルプレートを用いて作成することを特徴としている。このインクジェットヘッドでは、上記一連の製造方法にかかるノズルプレートを使用するため、ノズル穴のばらつきや形状が安定し、さらにノズルプレートのインク流入側とノズル穴の内側の親水性が高い。このため、インクジェットヘッドの吐出特性のばらつきが低減され、これによってインクの媒体上への着弾精度を向上することが可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に基づいた各実施の形態について図参照して詳細に説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1(A)から(D)は実施の形態1に基づいたノズルプレートの製造方法のフローを示す図である。図1(A)から(D)を参照して、本実施の形態にかかるノズルプレートの製造方法を説明すると以下の通りである。
【0025】
まず、図1(A)を参照して、Dupont社製;カプトン(登録商標)や宇部興産(株)製;ユーピレックス(登録商標)などの、ポリイミド樹脂からなる厚さ50μmのシートを吐出穴形成部材としての基材1として準備する。次に、図1(B)を参照して、この基材1の片方の表面に、非晶質で溶剤可溶性のパーフルオロシクロポリマ(旭ガラス(株)製;サイトップ(登録商標))を撥水膜2として0.3μmの厚さに形成する。撥水膜2は上記ポリマを溶解した溶液を、スピンコート法によって塗布した後、220℃の雰囲気で焼成した。これによって、撥水膜2を形成した面が吐出側、撥水膜2を塗布していない面がインク流入側となる。
【0026】
ここで、非晶質で溶剤可溶性のパーフルオロシクロポリマ以外に、撥水膜2として、フルオロビニレンとビニルエーテルの交互共重合体、パーフルオロ基を側鎖に有するポリマ、あるいはシロキサン結合を有するポリマなどを用いることが可能である。
【0027】
また、撥水膜2の厚さは、インクジェットヘッドの使用用途に応じて、0.1μmから5μm程度の厚さで任意に設定することができる。また、ノズルプレートの基材1としては、上記ポリイミド樹脂以外に、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリサルフォンからなる樹脂材料を使用することができる。
【0028】
次に、図1(C)を参照して、撥水膜2を形成した基材1にエキシマレーザ3を用いて、吐出穴(ノズル穴)形状の穴10aをあける第1のエッチングを行なう。
【0029】
ここで、図2は、本実施の形態で用いるエキシマレーザ加工システムの一例を示す図である。このエキシマレーザ加工システムは、KrFエキシマレーザ5から発振された波長248nmのレーザービーム3が光学系6を通過する。光学系6の所定領域には、所定の開口パターンを有するインクジェットノズルのすべて、または一部のパターンを持った投影マスク7が配置される。光学系6を通過したレーザービーム3は、被エッチング物8に照射される。
【0030】
エキシマレーザ5から発振されたレーザービーム3は、光学系6を通り、投影マスク7を照射する。この光学系6は投影マスク7のパターンを1/4倍の縮尺率で被エッチング物8上に投影し、被エッチング物8に加工を行なう。
【0031】
本実施の形態において、ノズルプレート基材の加工は基材1上のエネルギー密度を150mJ/cm2に制御し、撥水膜2が形成されていない流入側からエッチングを行なった(図1(C)参照)。
【0032】
ここで、エキシマレーザの透過率を、ポリイミド樹脂とパーフルオロシクロポリマにおいて比較すると、200μm厚のポリイミド樹脂の透過率は0%、パーフルオロシクロポリマ200μmの透過率は90%である。
【0033】
一方、ポリイミドとパーフルオロシクロポリマの屈折率はそれぞれ、1.78、1.34であるので、反射率はそれぞれ8%、2%と推定される。
【0034】
このため、上記材料における吸収率は、(吸収率=100−反射率−透過率)より、それぞれ、92%(A=100−0−8)、8%(A=100−90−2)となり、ポリイミドとパーフルシクロポリマとの吸収率の違いは、おおむね10倍以上である。
【0035】
レーザ加工の加工速度、すなわちエッチレートはレーザ光の吸収率に依存するため、上記結果からポリイミドに比べてパーフルシクロポリマはエキシマ加工において加工され難いことが定性的に理解される。
【0036】
従来のプロセスでは、このエッチングされ難いパーフルシクロポリマをレーザのパワーで吹き飛ばして加工していたが、上述したように、撥水膜2の抜け残りや、はがれの問題があるため、本実施の形態では、レーザによる加工は基材1のみにとどめ、撥水膜2と基材1との界面でエキシマレーザによるエッチングを終了する。
【0037】
上記基材1の厚さムラなどを考慮して若干のオーバーエッチを行なう必要があるが、レーザの吸収率が10倍以上異なるため、図1(C)に示される第1のエッチングは良好に撥水膜2と基材1との界面近傍で停止させることができる。また、このオーバーエッチによって撥水膜2が少しエッチングされても良い。
【0038】
次に、図1(D)に示すように、ドライエッチング装置20(図3参照)を用いて撥水膜2をエッチングし、吐出穴(ノズル穴)10を完成させる。ここで、図3(A)は、本実施の形態にかかる、第2のエッチングに用いる、平行平板型反応性ドライエッチング装置(以下RIE:Reactive Ion Etching)20の概念図であり、図3(B)は、電極23の部分拡大図である。
【0039】
RIEは真空排気が可能なチャンバ21を有し、このチャンバ21内に、相対する平行な電極22,23を装備している。この電極22,23の一方である下部電極23には、13.56MHzのRF電源24が接続され、高周波電圧が印加される。もう一方の上部電極22は、チャンバ21とともにグランドに接続されている。
【0040】
エッチングの際には、チャンバ21内にO2、Ar、CF4などの反応ガスが導入され、相対する電極22,23間でプラズマ25発生させることで、プラズマ25中にガスのイオン化したガス分子(以下イオン)26や活性種を生成する。被エッチング物8は下部電極23上に配置され、プラズマ25中で生成されたイオン26や活性種は、自己バイアス電界によって下部電極23に向かって加速され、下部電極23上の被エッチング物8と反応する。このため、反応ガスのイオンや活性種と反応し蒸気圧の低い分子を形成する材料であれば、レーザの吸収に関係なく良好に加工することができる。
【0041】
本実施の形態では、図3(B)に示すように、エキシマレーザによって基材1をエッチングしたノズルプレートをRIEの下部電極23上に撥水膜2面を上部電極22側に向けて配置し、流入側から第2のエッチングを行なった。
【0042】
図1(D)を参照して、上述のように、流入側から第2のエッチングを行なうことによって、第1のエッチングで加工した基材1の穴10aをマスクとすることができるので、新たに撥水膜2を加工するためのマスキングを行なう必要がなく、プロセスが簡便である。また、マスクアライメントの誤差がないため、高精度の加工が可能となる。
【0043】
反応ガスとしてはO2ガスを用い、30mTorrの圧力中で、下部電極23に0.25W/cm2のパワー密度のRFパワーを印加した。この条件では、プラズマ中で生成されたイオンや活性種がほぼ垂直にノズルプレートに照射されるため(異方性エッチング)、第1の加工工程で形成されたノズルプレート基材の穴の形状が転写される形で、撥水膜2がエッチングされる。
【0044】
また、第1の加工工程による基材1の穴は、9°から12°程度のテーパーを有しているため、第2の加工工程のオーバーエッチングが過剰であると吐出面に形成される穴が大きくなるが、撥水膜2の厚さが0.3μmと非常に薄いことと、上記テーパー角が小さいことから、2倍のオーバーエッチを行なった場合でも、最大で直径が0.12μm程度拡がるだけで、インクジェットヘッドに応用する際にはまったく影響がない。
【0045】
また、従来の技術の欄で説明したように、上記RIEではプラズマ密度によってエッチレートに分布が生じるが、上記のように、たとえば2倍のエッチレートの差があったとしても、実用上まったく問題がなく、非常に余裕度の広い、安定した加工方法であると言える。
【0046】
さらに、RIEは被エッチング物を冷却しながら化学的に加工できるため、被エッチング物の温度上昇がほとんどなく、さらにレーザ加工と異なりノズルプレート全面が均一にエッチングされるので、撥水膜加工部に熱的な歪がほとんど残らず、撥水膜2が剥離することなくエッチングすることができる。
【0047】
本実施の形態で加工したノズルの吐出口径のばらつきは、140チャンネルで標準偏差が0.20μmと非常に良好であった。さらに、上述したように、ノズルプレートの流入側が均一にドライエッチされるため、ノズル穴の内側を含め基材表面の親水性が向上し、インクジェットヘッドに組み込んだ際、気泡が残留しにくく、飛翔液滴の方向安定性がさらに向上するという効果もある。
【0048】
また、本実施の形態では第2のエッチングに際して、撥水膜2面になんの処理も施さずに行なったが、撥水膜2面保護のために、保護部材を当接してエッチングを行なっても良い。
【0049】
比較のために、本実施の形態にかかる製造方法で加工したノズルプレートと、基材1と撥水膜2とをエキシマレーザのみで加工したノズルプレート(比較例)を用いて、インクジェットヘッドを作成し、吐出特性を比較した。
【0050】
上記2つのインクジェットヘッドを、インクジェットプリンタに搭載し、1mm離れた紙面上に印字し、印字位置のばらつき(着弾精度)を調べた。上記2つのヘッドは同様のパターンの吐出口10を有しており、チャンネル数は140である。
【0051】
これら2つの着弾精度を比較したところ、比較例のインクジェットヘッドは着弾精度のばらつきが50μmと大きかったのに対して、本実施の形態にかかる製造方法で作成したノズルプレートを用いたインクジェットヘッドでは、着弾精度のばらつきは10μmと非常に良好であった。
【0052】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に基づいたノズルプレートの製造方法について説明する。本実施の形態において実施の形態1と重複する内容については、簡略化のため省略する。
【0053】
本実施の形態では、ポリイミド樹脂からなる厚さ50μmのシートを基材1として用い、この基材1の片方の表面に、撥水膜2としてオルガノシロキサン3次元重合を有するポリマを、0.5μmの厚さで形成した(図1(A),(B)参照)。
【0054】
次に、この撥水膜2を形成した基材1にエキシマレーザを用いて、吐出口形状の穴10aをあける第1のエッチングを行なう(図1(C)参照)。第1の加工工程は実施の形態1と同様の条件で、撥水膜2を形成していない側から加工した。
【0055】
次に、第2のエッチングは、実施の形態1と同様の装置を用いて行ない、吐出口10を完成させた。ただし、本実施の形態ではRIEに導入するガスをCF4とO2との混合ガスとした。これは、本実施の形態に用いたシロキサン結合を有するポリマ中に含まれるSiが酸素ガスだけでは、完全にエッチングされずSiが残さとして残留し、エッチングムラなどの不具合を防止するためである。すなわちフッ素を含有するガスを導入することによって、プラズマで励起されたFと撥水膜2中のSiが反応しSiF4となって昇華し、残さの発生を防止することができる。
【0056】
本実施の形態にかかるノズルプレートを用いてインクジェットヘッドを作成し、着弾精度を評価したところ、実施の形態1と同様に着弾精度のばらつきは10μmと良好であった。
【0057】
また、上記各実施の形態においては、撥水膜2を単層膜としているが、同様の機能を有するように、複数の膜からなる構成とすることも可能である。
【0058】
以上、今回開示した各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0059】
【発明の効果】
以上、本発明に基づいたノズルプレートの製造方法ある局面によれば、ノズルプレートとなる基材の加工と撥水膜の加工を異なる手法を用いて行なうため、それぞれの加工を形状精度良く行なうことができるという効果を奏する。また、本発明に基づいたノズルプレートを用いたインクジェットヘッドは、従来に比べ着弾精度が大幅に向上するとういう効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)から(D)は、実施の形態1におけるノズルプレートの製造プロセスを示す図である。
【図2】レーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【図3】ドライエッチング装置の構成を示す模式図である。
【図4】従来の技術におけるレーザによるノズル加工を説明する図である。
【図5】従来の技術におけるドライエッチングによるノズル加工を説明する図である。
【符号の説明】
1 基材、2 撥水膜、3 エキシマレーザ、5 KrFエキシマレーザ、6光学系、7 投影マスク、8 被エッチング物、10 吐出口、20 ドライエッチング装置、21 チャンバ、22,23 電極、24 RF電源、25 プラズマ、26 イオン化したガス分子(以下イオン)、31,32 レーザ加工。
Claims (8)
- 液滴を吐出することによって媒体上に描画する描画装置に用いられるノズルプレートの製造方法であって、
基材上に少なくとも1層以上からなる撥水膜を有するノズルプレート構成部材を、前記基材側から加工するとともに、主に前記基材をエッチングする第1の加工工程と、
前記第1の加工工程終了後、主に前記撥水膜をエッチングする第2の加工工程と、
を備えることを特徴とするノズルプレートの製造方法。 - 前記第1の加工工程は、エキシマレーザによる加工工程を有することを特徴とする、請求項1に記載のノズルプレートの製造方法。
- 前記第2の加工工程は、プラズマを用いた加工工程を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のノズルプレートの製造方法。
- 前記プラズマを用いた加工が、前記基材側から行なわれることを特徴とする、請求項3に記載のノズルプレートの製造方法。
- 前記第2の加工工程は、酸素ガスを有する雰囲気で行なわれることを特徴とする、請求項4に記載のノズルプレートの製造方法。
- 前記プラズマを用いた加工工程は、平行な平板電極を用いた加工装置を使用する工程を有することを特徴とする、請求項4または5に記載のノズルプレートの製造方法。
- 前記基材のレーザ光吸収率が、前記撥水膜のレーザ光吸収率の10倍以上であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
- 請求項1から7のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法を用いて製造したノズルプレートを用いて作成した、インクジェットヘッド。
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- 2002-07-11 JP JP2002202778A patent/JP2004042433A/ja not_active Withdrawn
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