JP2004042085A - プレス成形用ブランク材の製造方法並びにそれによって得られるプレス成形用ブランク材 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の金属板が一体的に接合されてなるプレス成形用ブランク材を、安定した接合品質と優れた生産性と高度なプレス成形性をもって製造可能な技術を提供する。
【解決手段】複数の金属板12,14のそれぞれの被接合部位28,29を、互いに押し付け合い得る状態で、圧接用コイル18間に配置せしめた後、該圧接用コイル18に瞬間大電流を流して、該複数の金属板12,14の各被接合部位28,29に、それらを互いに押し付け合う方向に向かって作用する電磁力を瞬間的に発生させて、該複数の金属板12,14を、該被接合部位28,29同士において瞬間的に相互に圧接せしめることにより、一体化するように構成した。
【選択図】 図2
【解決手段】複数の金属板12,14のそれぞれの被接合部位28,29を、互いに押し付け合い得る状態で、圧接用コイル18間に配置せしめた後、該圧接用コイル18に瞬間大電流を流して、該複数の金属板12,14の各被接合部位28,29に、それらを互いに押し付け合う方向に向かって作用する電磁力を瞬間的に発生させて、該複数の金属板12,14を、該被接合部位28,29同士において瞬間的に相互に圧接せしめることにより、一体化するように構成した。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【技術分野】
本発明は、プレス成形用ブランク材の製造方法とそれによって得られるプレス成形用ブランク材に係り、特に、複数の金属板が互いに接合され、一体化されてなるプレス成形用ブランク材を有利に製造する方法と、そのような製造方法によって得られる特徴的なプレス成形用ブランク材に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、所望のプレス製品を得る際には、1枚の金属板を所定の形状に切断して、プレス成形用ブランク材を製造し、その後、このブランク材に対してプレス成形を実施する技術が、一般に採用されてきているが、近年では、複数の金属板を接合し、一体化して、1枚のプレス成形用ブランク材、所謂テーラードブランク材を製造し、そして、このテーラードブランク材に対して所定のプレス成形を行なうことにより、所望のプレス製品を得るようにしたプレス成形技術が、例えば、自動車の内装パネル用のプレス製品を得る際等に、多く採用されている。
【0003】
このようなテーラードブランク材を用いたプレス成形技術においては、プレス成形用ブランク材たるテーラードブランク材が、複数の金属板を互いに接合して、一体化せしめることにより、製造されているところから、その製造時に、切断加工等による廃棄材料が何等生じないばかりでなく、一般的なプレス成形技術では使用不能な小型の金属板を、ブランク材の形成材料として利用することが出来、それによって、材料コストの低減を有利に図ることが可能となり、また、テーラードブランク材を与える複数の金属板のうちの幾つかを高強度の金属板にて構成したり、或いはそれらのうちの幾つかを補強板として、別の金属板に対して一体的に接合したりすることによって、必要な部位に必要なだけの強度が付与されたプレス製品を容易に得ることが出来る等といった、数々のメリットが得られるのである。
【0004】
ところが、このテーラードブランク材を用いたプレス成形技術においては、これまで、複数の金属板同士を突き合わせて溶融溶接するレーザ溶接やアーク溶接、或いは複数の金属板のそれぞれの一部を重ね合わせて、かかる重合部位を連続的に抵抗溶接するシーム溶接等の各種の溶接方式により、複数の金属板を接合することによって、テーラードブランク材が製造されていたため、そのようなテーラードブランク材やそれから得られるプレス製品において、以下の如き様々な問題が惹起されていた。
【0005】
すなわち、複数の金属板同士を突き合わせて溶融溶接することによりテーラードブランク材を製造する場合には、それら各金属板同士の突き合わせ部位における間隙(ギャップ)の管理が難しく、特に、板厚の異なる金属板同士を溶融溶接する際にあっては、板厚の差異の大きさにより溶融部分の溶け込みが不十分となって、接合強度にバラツキが生じ、その結果、テーラードブランク材の接合品質が不安定となるといった問題が生じていたのである。また、複数の金属板のそれぞれの一部を重ね合わせて抵抗溶接する場合にあっても、例えば、電極円盤を用いたマッシュシーム溶接を行なった際に、電極円盤の電極部が金属板の溶接部位に付着したり、潰れたりして、接合強度が低下してしまうことがあり、更には、重ね合わされた被接合部位の表面性状によって、接合強度が左右されるため、接合品質の安定したテーラードブランク材の製造が困難となるといった問題が内在していたのである。
【0006】
さらに、従来のプレス成形技術におけるテーラードブランク材の製造手法では、何れも、複数の金属板の接合に際して、被接合部位が加熱溶融せしめられるところから、製造されたテーラードブランク材の接合部位の近傍に熱影響部(軟化域)が生ずることが避けられなかったのであり、そのために、製造されたテーラードブランク材を、所定の後処理することなく、そのままプレス成形した際に、熱影響部で破断してしまうことが、往々にしてあったのである。
【0007】
更にまた、従来のテーラードブランク材の製造手法においては、複数の金属板の最大接合速度が、概ね毎分5m程度で、比較的に遅い速度であるため、被接合部位の長さが長くなるほど、溶接に要される作業時間が冗長的に長くなって、生産性が低下するばかりでなく、入熱が蓄積されて、テーラードブランク材に歪みや組織変化等が生じ、それによって、外観や強度が損ねられると共に、プレス成形時におけるプレス精度が低下するといった不具合もあったのである。
【0008】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その第一の解決課題とするところは、複数の金属板を相互に接合し、一体化してなるプレス成形用ブランク材(テーラードブランク材)を、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性をもって、有利に製造することが出来る方法を提供することにある。また、本発明は、そのような製造方法によって有利に得られるプレス成形用ブランク材を提供することを、その第二の解決課題とするものである。
【0009】
【解決手段】
そして、本発明にあっては、前記第一の技術的課題の解決のために、複数の金属板を相互に接合して、一体化することにより、プレス成形に用いられるブランク材を製造する方法であって、前記複数の金属板のそれぞれの接合されるべき部位を、互いに押し付け合い得る状態で、圧接用コイル間に配置せしめた後、該圧接用コイルに瞬間大電流を流して、該複数の金属板の各被接合部位に、それらを互いに押し付け合う方向に向かって作用する電磁力を瞬間的に発生させて、該複数の金属板を、該被接合部位同士において瞬間的に相互に圧接せしめることにより、一体化することを特徴とするプレス成形用ブランク材の製造方法を、その要旨とするものである。
【0010】
要するに、この本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法は、これまで、アーク溶接やレーザ溶接、シーム溶接等、金属板の被接合部位を加熱溶融させて接合せしめる溶接により、複数の金属板を接合していたところを、かかる溶接による接合方式に代えて、金属板の被接合部位を加熱溶融させずに固相状態のままで接合せしめる固相接合法の一種たる圧接法を利用して、複数の金属板を接合するようにしたものなのである。
【0011】
それ故、かかる本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法にあっては、複数の金属板の接合時において、アーク溶接やレーザ溶接を実施する際に惹起される問題、例えば、金属板同士の突き合わせ部位における間隙(ギャップ)の管理上の問題や、板厚の異なる金属板同士を溶接する際における溶接部分の溶込み不良の問題が、有利に解消され得るのであり、またシーム溶接により複数の金属板を接合する際に生ずる問題、例えば、電極円盤の電極部の潰れや金属板の付着等の問題や、被接合部位の表面性状の接合強度への影響の問題も、悉く回避され得るのである。そして、その結果として、複数の金属板の優れた接合強度が、安定的に確保され得ることとなるのである。
【0012】
また、本発明に係るプレス成形用ブランク材の製造方法においては、上述の如く、各金属板の被接合部位が加熱溶融されるものでなく、しかも、圧接方式が採用されているために熱の発生が少ないため、製造されるプレス成形用ブランク材の接合部位の近傍に熱影響部が生ずるようなことが有利に回避され得、それによって、製造されるプレス成形用ブランク材が、プレス成形時に、かかる熱影響部で破断するようなことも、効果的に皆無ならしめられ得るのである。
【0013】
さらに、本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法にあっては、複数の金属板の各被接合部位に、それらを互いに押し付け合う方向に向かって作用する電磁力を瞬間的に発生させて、それら複数の金属板を、被接合部位同士において瞬間的に相互に圧接せしめるようにした、圧接法の中でも特に電磁圧接法を利用して、複数の金属板が接合されるようになっているところから、複数の金属板の被接合部位が多少長くなっても、それらの接合が、極めて短時間で完了せしめられ得るのであり、それによって、複数の金属板における被接合部位の長尺化に起因する生産性の低下が有利に防止され得ると共に、製造されるプレス成形用ブランク材の入熱の蓄積による歪みや組織変化の発生や、それに伴う外観や強度の低下、更にはプレス成形時におけるプレス精度の低下等が、効果的に阻止され得るのである。
【0014】
しかも、本発明に係るプレス成形用ブランク材の製造方法においては、上述せる如く、電磁圧接法を利用して、複数の金属板が接合されるようになっているため、単に、金属板の種類や板厚等に応じて、圧接用コイルの形状や圧接用コイルに流される瞬間大電流の大きさ及び通電時間等を制御するだけで、接合強度の安定化が、極めて容易に図られ得るのである。
【0015】
従って、かくの如き本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法によれば、複数の金属板を相互に接合し、一体化してなる、目的とするプレス成形用ブランク材(テーラードブランク材)を、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性をもって、極めて容易に且つ安価に製造することが出来るのである。
【0016】
なお、このような本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法の好ましい態様の一つによれば、前記複数の金属板のそれぞれの被接合部位を、それら金属板の間に所定の間隙が介在せしめられた状態で、前記圧接用コイル間に対向配置せしめることによって、該複数の金属板の各被接合部位が、互いに押し付け合い得る状態で、該圧接用コイル間に配置せしめられることとなる。
【0017】
このような構成を採用すれば、圧接用コイルに大電流を流した際に、複数の金属板の各被接合部位同士が、高速で衝突せしめられて、それら各被接合部位の間に、より強固な金属的結合が生ぜしめられ、それによって、複数の金属板が、より高度で且つ安定した接合強度をもって接合せしめられ得るのであり、その結果として、更に一層優れた接合品質を有するプレス成形用ブランク材が、より安定的に製造され得ることとなるのである。
【0018】
また、本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法の別の有利な態様の一つによれば、前記複数の金属板のうちの少なくとも一つが、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる板材にて構成され、更に、それら複数の金属板が、それぞれ板厚の異なるものや、互いに異なる種類の金属材料にて構成されることとなる。
【0019】
このような構成を採用することによって、よりバラエティーに富んだプレス成形用ブランク材が、有利に製造され得るのである。そして、特に、複数の金属板が異種金属にて構成される場合には、そのような複数の金属板を溶融溶接する場合とは異なって、複数の金属板の接合界面に脆い合金層(金属間化合物層)の生成が効果的に抑制され得るばかりでなく、複数の金属板間に熱膨張率の差異があっても、接合後における歪みの発生が有利に解消乃至は抑制され得、それによって、接合品質やプレス成形性に優れたプレス成形用ブランク材が、有利に製造され得ることとなるのである。
【0020】
更にまた、本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法の更に別の好ましい態様の一つによれば、前記複数の金属板として、所定のコイルを形成するように巻回された長尺な薄板が用いられ、かかるコイルを徐々に巻き戻しつつ、該複数の金属板のそれぞれの巻き戻された部分を、互いに押し付け合い得る状態で、前記圧接用コイル間に配置せしめた後、該圧接用コイルに瞬間大電流を流して、それら各巻き戻された部分に、前記電磁力を瞬間的に発生させて、該各巻き戻された部分を圧接する操作を繰り返し行なうことにより、該複数の金属板が、該巻き戻された部分毎に連続的に圧接されて一体化せしめられる一方、該圧接されて一体化された該複数の金属板の接合体が、所定の間隔で切断されることとなる。
【0021】
このような構成を採用すれば、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性を有するプレス成形用ブランク材が、単純操作の繰り返しにより、連続して、大量に、しかも容易に且つ迅速に製造され得るのであり、その結果として、目的とするプレス成形用ブランク材の生産コストを、極めて効果的に低減させることが可能となるのである。
【0022】
また、本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法の更に他の有利な態様の一つによれば、前記複数の金属板として、互いに大きさの異なる板材が用いられ、かかる複数の金属板を、大きさが小なる金属板の一方の面の全面と、大きさが大なる金属板の一部の面とにおいて互いに押し付け合い得る状態で、前記圧接用コイル間に配置せしめた後、該圧接用コイルに瞬間大電流を流して、それら複数の金属板に前記電磁力を発生させて、該複数の金属板を圧接するように構成される。これによって、上述の如き優れた特徴を有し、しかも、大きさが小なる金属板にて部分的に補強されたプレス成形用ブランク材が、極めて容易に製造され得ることとなるのである。
【0023】
そして、本発明にあっては、前記第二の課題の解決のために、上述した製造方法によって得られることを特徴とするプレス成形用ブランク材をも、その要旨とするものである。
【0024】
このような本発明に従うプレス成形用ブランク材にあっては、前述せる如き特徴的な製造方法によって製造されるものであるところから、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性が、極めて有利に発揮され得るのである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明に係るプレス成形用ブランク材の製造方法とそれによって得られるプレス成形用ブランク材の構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0026】
先ず、図1には、本発明に係る製造手法に従って製造されたプレス成形用ブランク材の一例として、自動車の内装パネルを与えるプレス成形用ブランク材たるテーラードブランク材が、その縦断面形態において、概略的に示されている。かかる図1に示されるように、テーラードブランク材10は、2枚の金属板12,14が、それぞれの端部同士において、互いに重ね合わされた状態で、接合され、一体化せしめられて、構成されている。なお、図1には明示されてはいないものの、2枚の金属板12,14は、それぞれの重合部位の全幅に亘って、接合されている。
【0027】
また、ここでは、テーラードブランク材10を構成する2枚の金属板12,14が、何れも、比較的に薄い肉厚を有しているものの、一方の金属板14が、他方の金属板12よりも所定寸法厚い厚さとされており、更に、かかる厚肉の金属板14がアルミニウム製の平板からなる一方、薄肉の金属板12が鉄製の平板からなっている。これにより、テーラードブランク材10の強度が、アルミニウム製厚肉の金属板14からなる部分において、鉄製薄肉の金属板12からなる部分よりも、十分に大きくされているのである。なお、かかるテーラードブランク材10の形成材料たる2枚の金属板12,14を与える金属材料の種類は、特に限定されるものではなく、目的とするプレス製品に要求される材質や特性等に応じて、同一種類のものや互いに異なる種類のものが適宜に選択されるのであり、また、それらの板厚も、互いに同一寸法とされていても、何等差し支えないのである。
【0028】
ところで、この本実施形態のテーラードブランク材10は、例えば、図2に示されるような電磁圧接装置16を用いて、上述の如き2枚の金属板12,14を電磁圧接して、一体化することによって、製造されることとなる。
【0029】
すなわち、ここで用いられる電磁圧接装置16は、コンデンサ:Cと放電スイッチ:Gと圧接用コイル18とを備えた、高密度の磁束を発生させるための放電回路と、かかる放電回路上のコンデンサ:Cに電荷を供給する電源装置19を備えた充電回路とを含んで構成されている。また、この電磁圧接装置16の放電回路上に設けられる圧接用コイル18は、所定距離を隔てて対向位置せしめられた、クロム銅等からなる薄肉平板状の二つの電極板20,20と、それら二つの電極板20,20のそれぞれにおける長さ方向の端縁部同士を一体的に連結する、クロム銅等からなる薄肉平板状の連結板22とを有しており、全体として、コ字形状を呈するワンターンコイル形態をもって、構成されている。更に、かかる圧接用コイル18の各電極板20は、全体として、略H字形状を呈しており、長さ方向の両端部が、幅方向に向かって互いに平行に延びる広幅の電極端部24,24とされている一方、その中間部が、それら二つの電極端部24,24を、それぞれの中間部において接続する狭幅の電極中間部26とされている。
【0030】
そして、このような電磁圧接装置16にあっては、コンデンサ:Cに所定量の電荷を充電させた状態下で、放電スイッチ:Gを閉じて、圧接用コイル18にパルス大電流(瞬間大電流)を流すことによって、圧接用コイル18の各電極板20,20における、電流が集中する各中間電極部26の周囲に、高密度の磁束が発生せしめられるようになっているのである。
【0031】
而して、かくの如き電磁圧接装置16を用いて、目的とするテーラードブランク材10を製造する際には、図2に示されるように、先ず、電磁圧接装置16における圧接用コイル18の二つの電極板20,20間に、公知の絶縁材料からなる2枚の絶縁シート27,27を互いに所定間隔をおいて対向配置する。また、その一方で、テーラードブランク材10を与える2枚の金属板12,14における、それぞれの長さ方向の端部、つまり、それら金属板12,14の各被接合部位28,29同士を、外力により互いに容易に押し付け合い得るように、相互に重ね合わせるか、若しくは所定の間隙を介して対向せしめた状態で、圧延用コイル18における各電極板20,20のそれぞれの中間電極部26,26間に、2枚の絶縁シート27,27に挟まれるように配置する。
【0032】
なお、2枚の金属板12,14を、所定の間隙を介して対向位置せしめる場合には、例えば、それら2枚の金属板12,14間に適当なスペーサ部材が介在せしめられることとなる。また、本工程で、2枚の金属板12,14を重ね合わせて、若しくは所定の間隙を介して対向するように配置する際には、それら2枚の金属板12,14の各被接合部位28,29同士の重なり代や、互いに対向する部分のそれぞれの幅は、特に限定されるものではなく、各金属板12,14の大きさ等によって適宜に決定され得るところではあるものの、一般には、それらの重なり代や対向部分の幅が、1〜2mm程度とされる。更に、2枚の金属板12,14における各被接合部位28,29を、それらの間に所定の間隙を介在せしめた状態で、圧延用コイル18間に配置する場合においては、後述する如き、その後の接合操作により接合される2枚の金属板12,14の接合強度を十分に確保するために、各金属板12,14の端部間の距離が、好ましくは、薄肉の金属板12の板厚に相当する寸法か、若しくは1mm程度とされる。
【0033】
そして、上述のようにして2枚の金属板12,14を圧接用コイル18間に配置した後、或いはその前に、若しくはかかる配置と同時に、電磁圧接装置16の充電回路上の電源装置19から供給される電荷にて、コンデンサ:Cを充電する。なお、このコンデンサ:Cの静電容量は、接合されるべき2枚の金属板12,14の板厚や種類等、それら金属板12,14の接合に要される電磁力に影響を与える幾つかの要素の差異に応じて、適宜に変更され得るところではあるものの、一般には、100〜1000μF程度とされる。
【0034】
次ぎに、電磁圧接装置16の放電回路上の放電スイッチ:Gを閉じて、コンデンサ:Cに蓄えられた電荷を放電させることにより、圧接用コイル18にパルス大電流(瞬間大電流)を流し、それによって、圧接用コイル18における各電極板20,20のそれぞれの中間電極部26,26の周囲に高密度の磁束:Bを発生させる。
【0035】
このとき、図3及び図4に示される如く、圧接用コイル18における各電極板20,20のそれぞれの中間電極部26,26の間に、互いに押し付け合い得るように配置された2枚の金属板12,14の各被接合部位28,29と、各中間電極部26,26の周囲に発生せしめられた高密度の磁束:Bとが交差すると、それら各金属板12,14の被接合部位28,29の内部に、磁束:Bの浸透を妨げる方向に渦電流:iが発生する。また、その際、各被接合部位28,29の内部を流れる渦電流:iが、互いに隣接する部分で打ち消し合って、等価的には、図4中に破線で示されるように、各被接合部位28,29の周辺部分を流れる電流だけが残り、それによって、図4に太矢印で示されるように、各被接合部位28,29に、それらを互いに押し付け方向に向かって作用する電磁力:Fが瞬間的に発生する。そして、その結果、2枚の金属板12,14の各被接合部位28,29同士を高速で衝突させるように為して、それら各被接合部位28,29を、殆ど加熱溶融せしめることなく、瞬間的に相互に圧接するのである。
【0036】
その後、上述の如くして、それぞれの被接合部位28,29同士において、圧接され、一体化された金属板12,14を電磁圧接装置16の圧接用コイル18間から取り出し、以てプレス成形に供される、図1に示される如き、目的とするテーラードブランク材10を得るのである。
【0037】
このように、本実施形態では、2枚の金属板12,14のそれぞれの被接合部位28,29が、加熱溶融せしめられることなく、固相状態のままで圧接されるようになっているところから、それら2枚の金属板12,14の接合方式として、各被接合部位28,29を加熱溶融せしめて接合する溶融溶接や抵抗溶接等を採用する場合とは異なって、そのような溶融溶接や抵抗溶接の実施時に、それら各被接合部位28,29の接合強度に悪影響を及ぼすような数々の問題が生ずることが、悉く解消され得るばかりでなく、製造されるテーラードブランク材10の接合部位の近傍に、局部的な強度低下やプレス成形時に破断の発生を惹起せしめる恐れのある熱影響部が生ずるようなことも有利に回避され得るのであり、それによって、安定的な接合品質と優れたプレス成形性を備えたテーラードブランク材10が、極めて有利に製造され得ることとなるのである。
【0038】
また、本実施形態においては、2枚の金属板12,14の各被接合部位28,29に瞬間的に発生せしめられる電磁力によって、それら各被接合部位28,29が瞬間的に相互に圧接されるようになっているところから、例えば、2枚の金属板12,14が大きいために、それらの各被接合部位28,29が多少長くなっても、そのような2枚の金属板12,14の接合が、極めて短時間で完了せしめられ得るのであり、そのため、接合されるべき金属板12,14の大きさ等に拘わらず、目的とするテーラードブランク材10が、優れた生産効率をもって、有利に製造され得るのである。そして、その結果として、テーラードブランク材10の生産コストの低減が、効果的に図られ得ることとなるのである。
【0039】
さらに、本実施形態では、上述の如く、2枚の金属板12,14の接合が瞬間的に完了せしめられ得るようになっているため、製造されるテーラードブランク材10の入熱の蓄積による歪みや組織変化の発生や、それに伴う外観や強度の低下、更にはプレス成形時におけるプレス精度の低下等が、効果的に阻止され得るのであり、これによっても、製造されるテーラードブランク材10のプレス成形性が安定的に確保され得ることとなるのである。
【0040】
しかも、本実施形態にあっては、圧接用コイル18にパルス大電流を流すことにより、かかる圧接用コイル18間に配置される2枚の金属板12,14における各被接合部位28,29の内部に、電磁力を瞬間的に発生させることによって、それら各被接合部位28,29が相互に接合されるようになっているところから、単に、金属板12,14を与える金属材料の種類や板厚等に応じて、圧接用コイル18の形状やそれに流されるパルス大電流の大きさ及び通電時間等を制御するだけで、接合強度の安定化が、極めて容易に図られ得るのである。
【0041】
ところで、前記第一の実施形態では、互いに厚さの異なる2枚の金属板12,14を、それぞれの長さ方向の端部同士において接合し、一体化せしめてなる接合形態を有するテーラードブランク材10の例が示されていたが、テーラードブランク材10の接合形態は、何等これに限定されるものではない。即ち、例えば、図5及び図6に示されるように、互いに大きさの異なる、大小2枚の金属板12,14を用い、大きさが小なる金属板14を、その板厚方向の一方の面の全面が、大きさが大なる金属板12に接触せしめられた状態で、かかる大きさが大なる金属板12に接合し、一体化して、テーラードブランク材10を構成するようにしても、良いのである。なお、図5及び図6、更には後述する図7乃至図9では、前記第一の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、前記第一の実施形態と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略した。
【0042】
そして、このような大小2枚の金属板12,14が一体的に接合されてなる接合形態を有するテーラードブランク材10を製造する際には、例えば、先ず、大小2枚の金属板12,14を、大きさの小なる金属板14の一方の面の全面と、大きさが大なる金属板12の一部の面とにおいて互いに押し付け合い得るように、互い重ね合わせるか、若しくは所定の間隙を介して対向するように位置させる。なお、大小2枚の金属板12,14を、所定の間隙を介して対向位置させる場合には、前記第一の実施形態と同様に、2枚の金属板12、14間に適当なスペーサ部材が介在せしめられることとなる。
【0043】
次いで、前記第一の実施形態のテーラードブランク材10を製造する際に使用される電磁圧接装置16を用い、この電磁圧接装置16の圧接用コイル18における二つの電極板20,20の各中間電極部26,26間に、上述の如くして互いに押し付け合い得るように位置せしめられた2枚の金属板12,14を、絶縁シート27,27を介して配置する。そして、その後、前記第一の実施形態と同様に、圧接用コイル18にパルス大電流を流して、2枚の金属板12,14のそれぞれの接合されるべき部位に、それらを互いに押し付け合う方向に向かって作用する電磁力を瞬間的に発生させることにより、それら2枚の金属板12,14を、被接合部位同士において瞬間的に相互に圧接して、一体化し、以て目的とするテーラードブランク材10を得るのである。
【0044】
なお、このとき、接合されるべき2枚の金属板12,14のうちの小さな金属板14が、各電極板20,20の中間電極部26よりも広幅である場合には、例えば、先ず、互いに押し付け合い得るように位置せしめられた2枚の金属板12,14を、小さな金属板14の幅方向の一方側が、それら各電極板20,20の中間電極部26の間に位置するように配置して、2枚の金属板12,14を、小さな金属板14の幅方向の一方側において、互いに接合し、その後、小さな金属板14の幅方向の他方側が、各電極板20,20の中間電極部26の間に位置するように配置して、2枚の金属板12,14を、小さな金属板14の幅方向の他方側において、互いに接合する操作が、実施され、以て、大小2枚の金属板12,14が、小さな金属板14の幅方向の両端部側に、接合部位31,31がそれぞれ形成されて、一体化せしめられることとなる。
【0045】
このように、本実施形態にあっても、2枚の金属板12,14が、その接合されるべき部位を何等溶融させることなく接合させる電磁圧接法を利用して、瞬間的に接合されるようになっているところから、前記第一の実施形態において奏される効果が、何れも有利に享受され得るのである。
【0046】
そして、本実施形態では、特に、互いに大きさの異なる、大小2枚の金属板12,14が用いられ、大きさの小なる金属板14が、その全面において、大きさの大なる金属板12に接合され、一体化されるようになっているため、大きさが小なる金属板14にて部分的に補強されたテーラードブランク材10が、極めて容易に製造され得ることとなるのである。
【0047】
また、前記第一及び第二の実施形態では、所定の大きさを有する平板状の2枚の金属板12,14が、互いに接合せしめられて、1枚のテーラードブランク材10が製造されるようになっていたが、例えば、接合されるべき金属板12,14として、それぞれ、所定のコイルを形成するように巻回された長尺な薄板を用い、それらのコイルを徐々に巻き戻しつつ、連続的に接合することも、可能である。
【0048】
すなわち、ここでは、図7に示される如く、先ず、2枚の長尺な金属板12,14からなる二つのコイル30,32を、それぞれ徐々に巻き戻して、その巻戻し部位34,36を、図8に示されるように、それぞれの幅方向の一端部において、互いに押し付け合い得るように、互い重ね合わさせるか、若しくは所定の間隙を介して対向するように位置させる。なお、それぞれのコイル30,32の各巻戻し部位34,36を、所定の間隙を介して対向位置させる場合には、前記第一及び第二の実施形態と同様に、各巻戻し部位34,36間に適当なスペーサ部材が介在せしめられることとなる。
【0049】
引き続き、図7に示されるように、前記第一及び第二の実施形態のテーラードブランク材10を製造する際に使用される電磁圧接装置16を用い、この電磁圧接装置16の圧接用コイル18における二つの電極板20,20の各中間電極部26,26間に、上述の如くして互いに押し付け合い得るように位置せしめられた各巻戻し部位34,36を、絶縁シート27,27を介して配置する。そして、その後、前記第一及び第二の実施形態と同様に、圧接用コイル18にパルス大電流を流して、各巻戻し部位34,36のそれぞれの接合されるべき部位に、それらを互いに押し付け合う方向に向かって作用する電磁力を瞬間的に発生させることにより、それら各巻戻し部位34,36を、被接合部位同士において瞬間的に相互に圧接して、一体化する。
【0050】
そして、二つのコイル30,32を徐々に巻き戻しつつ、各巻戻し部位34,36を圧接する上述の如き操作を連続して、繰り返し実施することにより、二つのコイル30,32を形成する2枚の長尺な金属板12,14を、全長に亘って接合し、一体化せしめる一方、かくして一体化された2枚の長尺な金属板12,14の接合体を、所定の間隔で、公知の切断機38により切断する。これによって、図9に示される如く、2枚の金属板12,14がそれぞれの幅方向の一端部において圧接され、一体化されてなる、目的とするテーラードブランク材10を、多数得るのである。
【0051】
このように、本実施形態にあっても、2枚の金属板12,14が、その接合されるべき部位を何等溶融させることなく接合させる電磁圧接法を利用して、瞬間的に接合されるようになっているところから、前記第一及び第二の実施形態において奏される効果が、何れも有利に享受され得るのである。
【0052】
そして、本実施形態では、特に、二つのコイル30,32を徐々に巻き戻しつつ、各巻戻し部位34,36を圧接し、それにより得られる接合体を所定間隔で切断するといった単純な操作の繰り返しにより、目的とするテーラードブランク材10を、連続して、大量に、しかも容易に且つ迅速に製造することが出来るのであり、その結果として、テーラードブランク材10の生産コストを、極めて効果的に低減させることが可能となるのである。
【0053】
さらに、前記三つの実施形態では、2枚の金属板12,14を瞬間的に電磁圧接して、目的とするテーラードブランク材10が製造されていたが、3枚以上の金属板を瞬間的に電磁圧接して、テーラードブランク材(プレス成形用ブランク材)を製造することも、勿論可能である。
【0054】
加えて、前記三つの実施形態では、本発明を、自動車の内装パネルを与えるプレス成形用ブランク材たるテーラードブランク材と、その製造方法に適用した例が示されていたが、本発明は、その他、自動車の内装パネル以外に使用されるプレス成形用ブランクとその製造方法の何れにも、有利に適用され得るものであることは、言うまでもないところである。
【0055】
【実施例】
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した発明の実施の形態以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0056】
<実施例1>
先ず、アルミニウム、1000系アルミニウム合金、5000系アルミニウム合金、6000系アルミニウム合金、表面に亜鉛メッキが施された鉄、表面にメッキが何等施されていない鉄、及び銅からそれぞれなる、板厚が1mmと2mmの金属板を、それぞれ複数枚準備する一方、図2に示される如き構造を有する電磁圧接装置(16)と、公知の絶縁シートを準備した。
【0057】
次いで、準備された複数枚の金属板の中から、下記表1に示される如き種類と板厚の組み合わせで、2枚を選択して、それら選択された2枚の金属板を、それぞれの長さ方向の端部において重ね合わせる一方、電磁圧接装置(16)の圧接用コイル(18)における二つの電極板(20,20)の各中間電極部(26,26)間に、それら2枚の金属板の互いの重合部位を、絶縁シートを介して配置した。その後、圧接用コイル(18)にパルス大電流を流して、2枚の金属板のそれぞれの重合部位に、それらを互いに押し付け合う方向に向かって作用する電磁力を瞬間的に発生させることにより、それら2枚の金属板を、重合部位同士において瞬間的に相互に電磁圧接して、一体化し、以て目的とするテーラードブランク材を得た。このようにして、下記表1に示される種類と板厚の組み合わせにて選択された2枚の金属板を、それぞれ全て、電磁圧接し、一体化して、接合される2枚の金属板の種類や板厚の組合せが互いに異なる11種類のテーラードブランク材(本発明例1〜11)を得た。なお、ここでの電磁圧接は、400μFのコンデンサ電源に、1〜20kJのエネルギーを充電し、その後放電させて、コイルにパルス大電流を流すことによって、実施した。
【0058】
そして、かくして得られた本発明例1〜11のテーラードブランク材を用い、それらの接合部位の近傍に、熱影響部が存在するか否かをビッカース硬度計で調べ、また、直径100〜120mm円板の中心部に接合線がある試験片を、φ40mm球頭張出し試験に供し、15mm高さでの「割れ」の発生の有無を目視で確認した。それぞれの結果を、下記表1に併せて示した。更に、本発明例1〜11のテーラードブランク材を製造する際に、2枚の金属板の接合に要した時間における、接合長100mm当たりの接合時間を算出した。その結果を、下記表1に併せて示した。
【0059】
【表1】
【0060】
また、比較のために、6000系アルミニウム合金からなる、板厚が1mmと2mmの金属板を用いて、それらを長さ方向の端部同士において互いに重ね合わせて配置する一方で、それらの重合部位に対してMIG溶接を行なうことにより、かかる2種類の金属板を接合し、一体化せしめて、MIG溶接にて接合部が形成されたテーラードブランク材(比較例1)を得た。更に、かかる比較例1のテーラードブランク材を与える2枚の金属板と同一の種類と板厚を有する金属板をそれぞれ3枚ずつ準備し、その中から板厚の異なる金属板の1枚ずつを選択して、それら選択された2枚の金属板を、長さ方向の端部同士において互いに重ね合わせ、その後、それらの重合部位に対して、レーザ溶接、シーム溶接、摩擦撹拌接合(FSW)をそれぞれ行なうことによって、かかる3種類の接合方式にて接合部がそれぞれ形成された3種類のテーラードブランク材(比較例2〜4)を得た。それら3種類のテーラードブランク材のうち、レーザ溶接にて接合部が形成されたテーラードブランク材を比較例2とし、また、シーム溶接にて接合部が形成されたテーラードブランク材を比較例3とし、更に、摩擦撹拌接合(FSW)にて接合部が形成されたテーラードブランク材を比較例4とした。
【0061】
そして、かくして得られた比較例1〜4のテーラードブランク材を用いて、前記本発明例1〜11のテーラードブランク材と同様にして、熱影響部の有無と、球頭張出し試験での「割れ」の発生の有無と、接合長100mm当たりの接合時間とを、それぞれ調べた。その結果を、下記表2に示した。
【0062】
【表2】
【0063】
上記表1と表2の結果から明らかなように、本発明手法に従って2枚の金属板を、それぞれの端部において電磁圧接して製造された本発明例1〜11のテーラードブランク材においては、熱影響部が存在せず、また、球頭張出し試験での「割れ」も全く発生しておらず、更に、接合長100mm当たりの接合時間も0.1秒と極めて短時間であった。これに対して、本発明手法とは異なってMIG溶接やレーザ溶接、シーム溶接、摩擦撹拌接合等によって、2枚の金属板を接合してなる比較例1〜4のテーラードブランク材にあっては、熱影響部が存在すると共に、球頭張出し試験において「割れ」が発生しており、また、接合長100mm当たりの接合時間も1.5〜30秒程度の長時間となっていた。これらのことから、本発明手法に従って製造された本発明例1〜11のテーラードブランク材が、本発明手法とは異なる手法により製造された比較例1〜4のテーラードブランク材に比して、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性を有していることが、明確に認識され得るのである。
【0064】
<実施例2>
先ず、実施例1において準備された金属板と同一の種類の金属材料からなる、板厚が0.5mmと1mmと2mmの、互いに大きさの異なる金属板を、それぞれ複数枚準備すると共に、実施例1において目的とするテーラードブランク材(本発明例1〜11)の製造に使用された電磁圧接装置及び絶縁シートをそれぞれ準備した。
【0065】
次いで、準備された複数枚の金属板の中から、下記表3に示される如き種類と板厚の組み合わせで、2枚乃至は3枚を選択して、それら選択された2枚乃至は3枚の金属板を、小さな金属板が、その全面において、大きな金属板に接触するように重ね合わせる一方、電磁圧接装置の圧接用コイルにおける二つの電極板の各中間電極部間に、それら2枚乃至は3枚の金属板の互いの重合部位を、絶縁シートを介して配置した。その後、前記実施例1と同様にして、2枚乃至は3枚の金属板を電磁圧接し、一体化せしめて、金属板の種類や板厚の組合せが互いに異なる12種類のテーラードブランク材(本発明例12〜23)を得た。なお、ここでの電磁圧接の条件は、前記実施例1と同一とした。
【0066】
そして、かくして得られた本発明例12〜23のテーラードブランク材を用い、それら各テーラードブランク材における熱影響部の有無と、球頭張出し試験での「割れ」の発生の有無と、接合長100mm当たりの接合時間とを、前記実施例1と同様にして、それぞれ調べた。その結果を、下記表3に示した。なお、ここでの球頭張出し試験の条件も、前記実施例1と同一とした。
【0067】
【表3】
【0068】
上記表3の結果から明らかなように、本発明手法に従って2枚乃至は3枚の金属板を、小さな金属板が、その全面において大きな金属板に重ね合わされた状態で、電磁圧接して製造された本発明例12〜23のテーラードブランク材にあっても、前記実施例1における本発明例1〜11のテーラードブランク材と同様に、熱影響部が存在せず、また、球頭張出し試験での「割れ」も全く発生しておらず、更に、接合長100mm当たりの接合時間も0.1秒と極めて短時間であった。これによって、本発明手法に従って製造された本発明例12〜23のテーラードブランク材が、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性を有していることが、明確に認識され得るのである。
【0069】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法によれば、複数の金属板を相互に接合し、一体化してなる、目的とするプレス成形用ブランク材(テーラードブランク材)を、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性をもって、極めて容易に且つ安価に製造することが出来るのである。
【0070】
また、本発明に従うプレス成形用ブランク材にあっては、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性が、極めて有利に発揮され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明手法に従って製造されたテーラードブランク材の一例を示す縦断面説明図である。
【図2】図1に示されたテーラードブランク材を製造する工程の一例を示す説明図であって、かかるテーラードブランク材を与える2枚の金属板を電磁圧接装置の圧接用コイル間に配置せしめた状態を示している。
【図3】図2に示された電磁圧接装置による2枚の金属板の接合原理を示す模式図であって、かかる電磁圧接装置の圧接用コイルに磁束を発生せしめた状態を示している。
【図4】図2に示された電磁圧接装置による2枚の金属板の接合原理を示す別の模式図であって、かかる電磁圧接装置の圧接用コイル間に配置された2枚の金属板の内部に電磁力を発生せしめた状態を示している。
【図5】本発明手法に従って製造されたテーラードブランク材の別の例を示す縦断面説明図である。
【図6】図5におけるVI矢視説明図である。
【図7】本発明手法に従って、図1及び図5に示されるテーラードブランク材とは更に別のテーラードブランク材を製造する工程の一例を示す説明図であって、かかるテーラードブランク材を与える2枚の金属板を電磁圧接装置の圧接用コイル間に配置せしめた状態を示している。
【図8】図7のVIII矢視における要部拡大説明図である。
【図9】本発明手法に従って製造されるテーラードブランク材の更に別の例を示す図1に対応する図である。
【符号の説明】
10 テーラードブランク材 12,14 金属板
16 電磁圧接装置 18 圧接用コイル
20 電極板 28,29 被接合部位
30,32 コイル 34,36 巻戻し部位
【技術分野】
本発明は、プレス成形用ブランク材の製造方法とそれによって得られるプレス成形用ブランク材に係り、特に、複数の金属板が互いに接合され、一体化されてなるプレス成形用ブランク材を有利に製造する方法と、そのような製造方法によって得られる特徴的なプレス成形用ブランク材に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、所望のプレス製品を得る際には、1枚の金属板を所定の形状に切断して、プレス成形用ブランク材を製造し、その後、このブランク材に対してプレス成形を実施する技術が、一般に採用されてきているが、近年では、複数の金属板を接合し、一体化して、1枚のプレス成形用ブランク材、所謂テーラードブランク材を製造し、そして、このテーラードブランク材に対して所定のプレス成形を行なうことにより、所望のプレス製品を得るようにしたプレス成形技術が、例えば、自動車の内装パネル用のプレス製品を得る際等に、多く採用されている。
【0003】
このようなテーラードブランク材を用いたプレス成形技術においては、プレス成形用ブランク材たるテーラードブランク材が、複数の金属板を互いに接合して、一体化せしめることにより、製造されているところから、その製造時に、切断加工等による廃棄材料が何等生じないばかりでなく、一般的なプレス成形技術では使用不能な小型の金属板を、ブランク材の形成材料として利用することが出来、それによって、材料コストの低減を有利に図ることが可能となり、また、テーラードブランク材を与える複数の金属板のうちの幾つかを高強度の金属板にて構成したり、或いはそれらのうちの幾つかを補強板として、別の金属板に対して一体的に接合したりすることによって、必要な部位に必要なだけの強度が付与されたプレス製品を容易に得ることが出来る等といった、数々のメリットが得られるのである。
【0004】
ところが、このテーラードブランク材を用いたプレス成形技術においては、これまで、複数の金属板同士を突き合わせて溶融溶接するレーザ溶接やアーク溶接、或いは複数の金属板のそれぞれの一部を重ね合わせて、かかる重合部位を連続的に抵抗溶接するシーム溶接等の各種の溶接方式により、複数の金属板を接合することによって、テーラードブランク材が製造されていたため、そのようなテーラードブランク材やそれから得られるプレス製品において、以下の如き様々な問題が惹起されていた。
【0005】
すなわち、複数の金属板同士を突き合わせて溶融溶接することによりテーラードブランク材を製造する場合には、それら各金属板同士の突き合わせ部位における間隙(ギャップ)の管理が難しく、特に、板厚の異なる金属板同士を溶融溶接する際にあっては、板厚の差異の大きさにより溶融部分の溶け込みが不十分となって、接合強度にバラツキが生じ、その結果、テーラードブランク材の接合品質が不安定となるといった問題が生じていたのである。また、複数の金属板のそれぞれの一部を重ね合わせて抵抗溶接する場合にあっても、例えば、電極円盤を用いたマッシュシーム溶接を行なった際に、電極円盤の電極部が金属板の溶接部位に付着したり、潰れたりして、接合強度が低下してしまうことがあり、更には、重ね合わされた被接合部位の表面性状によって、接合強度が左右されるため、接合品質の安定したテーラードブランク材の製造が困難となるといった問題が内在していたのである。
【0006】
さらに、従来のプレス成形技術におけるテーラードブランク材の製造手法では、何れも、複数の金属板の接合に際して、被接合部位が加熱溶融せしめられるところから、製造されたテーラードブランク材の接合部位の近傍に熱影響部(軟化域)が生ずることが避けられなかったのであり、そのために、製造されたテーラードブランク材を、所定の後処理することなく、そのままプレス成形した際に、熱影響部で破断してしまうことが、往々にしてあったのである。
【0007】
更にまた、従来のテーラードブランク材の製造手法においては、複数の金属板の最大接合速度が、概ね毎分5m程度で、比較的に遅い速度であるため、被接合部位の長さが長くなるほど、溶接に要される作業時間が冗長的に長くなって、生産性が低下するばかりでなく、入熱が蓄積されて、テーラードブランク材に歪みや組織変化等が生じ、それによって、外観や強度が損ねられると共に、プレス成形時におけるプレス精度が低下するといった不具合もあったのである。
【0008】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その第一の解決課題とするところは、複数の金属板を相互に接合し、一体化してなるプレス成形用ブランク材(テーラードブランク材)を、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性をもって、有利に製造することが出来る方法を提供することにある。また、本発明は、そのような製造方法によって有利に得られるプレス成形用ブランク材を提供することを、その第二の解決課題とするものである。
【0009】
【解決手段】
そして、本発明にあっては、前記第一の技術的課題の解決のために、複数の金属板を相互に接合して、一体化することにより、プレス成形に用いられるブランク材を製造する方法であって、前記複数の金属板のそれぞれの接合されるべき部位を、互いに押し付け合い得る状態で、圧接用コイル間に配置せしめた後、該圧接用コイルに瞬間大電流を流して、該複数の金属板の各被接合部位に、それらを互いに押し付け合う方向に向かって作用する電磁力を瞬間的に発生させて、該複数の金属板を、該被接合部位同士において瞬間的に相互に圧接せしめることにより、一体化することを特徴とするプレス成形用ブランク材の製造方法を、その要旨とするものである。
【0010】
要するに、この本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法は、これまで、アーク溶接やレーザ溶接、シーム溶接等、金属板の被接合部位を加熱溶融させて接合せしめる溶接により、複数の金属板を接合していたところを、かかる溶接による接合方式に代えて、金属板の被接合部位を加熱溶融させずに固相状態のままで接合せしめる固相接合法の一種たる圧接法を利用して、複数の金属板を接合するようにしたものなのである。
【0011】
それ故、かかる本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法にあっては、複数の金属板の接合時において、アーク溶接やレーザ溶接を実施する際に惹起される問題、例えば、金属板同士の突き合わせ部位における間隙(ギャップ)の管理上の問題や、板厚の異なる金属板同士を溶接する際における溶接部分の溶込み不良の問題が、有利に解消され得るのであり、またシーム溶接により複数の金属板を接合する際に生ずる問題、例えば、電極円盤の電極部の潰れや金属板の付着等の問題や、被接合部位の表面性状の接合強度への影響の問題も、悉く回避され得るのである。そして、その結果として、複数の金属板の優れた接合強度が、安定的に確保され得ることとなるのである。
【0012】
また、本発明に係るプレス成形用ブランク材の製造方法においては、上述の如く、各金属板の被接合部位が加熱溶融されるものでなく、しかも、圧接方式が採用されているために熱の発生が少ないため、製造されるプレス成形用ブランク材の接合部位の近傍に熱影響部が生ずるようなことが有利に回避され得、それによって、製造されるプレス成形用ブランク材が、プレス成形時に、かかる熱影響部で破断するようなことも、効果的に皆無ならしめられ得るのである。
【0013】
さらに、本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法にあっては、複数の金属板の各被接合部位に、それらを互いに押し付け合う方向に向かって作用する電磁力を瞬間的に発生させて、それら複数の金属板を、被接合部位同士において瞬間的に相互に圧接せしめるようにした、圧接法の中でも特に電磁圧接法を利用して、複数の金属板が接合されるようになっているところから、複数の金属板の被接合部位が多少長くなっても、それらの接合が、極めて短時間で完了せしめられ得るのであり、それによって、複数の金属板における被接合部位の長尺化に起因する生産性の低下が有利に防止され得ると共に、製造されるプレス成形用ブランク材の入熱の蓄積による歪みや組織変化の発生や、それに伴う外観や強度の低下、更にはプレス成形時におけるプレス精度の低下等が、効果的に阻止され得るのである。
【0014】
しかも、本発明に係るプレス成形用ブランク材の製造方法においては、上述せる如く、電磁圧接法を利用して、複数の金属板が接合されるようになっているため、単に、金属板の種類や板厚等に応じて、圧接用コイルの形状や圧接用コイルに流される瞬間大電流の大きさ及び通電時間等を制御するだけで、接合強度の安定化が、極めて容易に図られ得るのである。
【0015】
従って、かくの如き本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法によれば、複数の金属板を相互に接合し、一体化してなる、目的とするプレス成形用ブランク材(テーラードブランク材)を、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性をもって、極めて容易に且つ安価に製造することが出来るのである。
【0016】
なお、このような本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法の好ましい態様の一つによれば、前記複数の金属板のそれぞれの被接合部位を、それら金属板の間に所定の間隙が介在せしめられた状態で、前記圧接用コイル間に対向配置せしめることによって、該複数の金属板の各被接合部位が、互いに押し付け合い得る状態で、該圧接用コイル間に配置せしめられることとなる。
【0017】
このような構成を採用すれば、圧接用コイルに大電流を流した際に、複数の金属板の各被接合部位同士が、高速で衝突せしめられて、それら各被接合部位の間に、より強固な金属的結合が生ぜしめられ、それによって、複数の金属板が、より高度で且つ安定した接合強度をもって接合せしめられ得るのであり、その結果として、更に一層優れた接合品質を有するプレス成形用ブランク材が、より安定的に製造され得ることとなるのである。
【0018】
また、本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法の別の有利な態様の一つによれば、前記複数の金属板のうちの少なくとも一つが、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる板材にて構成され、更に、それら複数の金属板が、それぞれ板厚の異なるものや、互いに異なる種類の金属材料にて構成されることとなる。
【0019】
このような構成を採用することによって、よりバラエティーに富んだプレス成形用ブランク材が、有利に製造され得るのである。そして、特に、複数の金属板が異種金属にて構成される場合には、そのような複数の金属板を溶融溶接する場合とは異なって、複数の金属板の接合界面に脆い合金層(金属間化合物層)の生成が効果的に抑制され得るばかりでなく、複数の金属板間に熱膨張率の差異があっても、接合後における歪みの発生が有利に解消乃至は抑制され得、それによって、接合品質やプレス成形性に優れたプレス成形用ブランク材が、有利に製造され得ることとなるのである。
【0020】
更にまた、本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法の更に別の好ましい態様の一つによれば、前記複数の金属板として、所定のコイルを形成するように巻回された長尺な薄板が用いられ、かかるコイルを徐々に巻き戻しつつ、該複数の金属板のそれぞれの巻き戻された部分を、互いに押し付け合い得る状態で、前記圧接用コイル間に配置せしめた後、該圧接用コイルに瞬間大電流を流して、それら各巻き戻された部分に、前記電磁力を瞬間的に発生させて、該各巻き戻された部分を圧接する操作を繰り返し行なうことにより、該複数の金属板が、該巻き戻された部分毎に連続的に圧接されて一体化せしめられる一方、該圧接されて一体化された該複数の金属板の接合体が、所定の間隔で切断されることとなる。
【0021】
このような構成を採用すれば、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性を有するプレス成形用ブランク材が、単純操作の繰り返しにより、連続して、大量に、しかも容易に且つ迅速に製造され得るのであり、その結果として、目的とするプレス成形用ブランク材の生産コストを、極めて効果的に低減させることが可能となるのである。
【0022】
また、本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法の更に他の有利な態様の一つによれば、前記複数の金属板として、互いに大きさの異なる板材が用いられ、かかる複数の金属板を、大きさが小なる金属板の一方の面の全面と、大きさが大なる金属板の一部の面とにおいて互いに押し付け合い得る状態で、前記圧接用コイル間に配置せしめた後、該圧接用コイルに瞬間大電流を流して、それら複数の金属板に前記電磁力を発生させて、該複数の金属板を圧接するように構成される。これによって、上述の如き優れた特徴を有し、しかも、大きさが小なる金属板にて部分的に補強されたプレス成形用ブランク材が、極めて容易に製造され得ることとなるのである。
【0023】
そして、本発明にあっては、前記第二の課題の解決のために、上述した製造方法によって得られることを特徴とするプレス成形用ブランク材をも、その要旨とするものである。
【0024】
このような本発明に従うプレス成形用ブランク材にあっては、前述せる如き特徴的な製造方法によって製造されるものであるところから、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性が、極めて有利に発揮され得るのである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明に係るプレス成形用ブランク材の製造方法とそれによって得られるプレス成形用ブランク材の構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0026】
先ず、図1には、本発明に係る製造手法に従って製造されたプレス成形用ブランク材の一例として、自動車の内装パネルを与えるプレス成形用ブランク材たるテーラードブランク材が、その縦断面形態において、概略的に示されている。かかる図1に示されるように、テーラードブランク材10は、2枚の金属板12,14が、それぞれの端部同士において、互いに重ね合わされた状態で、接合され、一体化せしめられて、構成されている。なお、図1には明示されてはいないものの、2枚の金属板12,14は、それぞれの重合部位の全幅に亘って、接合されている。
【0027】
また、ここでは、テーラードブランク材10を構成する2枚の金属板12,14が、何れも、比較的に薄い肉厚を有しているものの、一方の金属板14が、他方の金属板12よりも所定寸法厚い厚さとされており、更に、かかる厚肉の金属板14がアルミニウム製の平板からなる一方、薄肉の金属板12が鉄製の平板からなっている。これにより、テーラードブランク材10の強度が、アルミニウム製厚肉の金属板14からなる部分において、鉄製薄肉の金属板12からなる部分よりも、十分に大きくされているのである。なお、かかるテーラードブランク材10の形成材料たる2枚の金属板12,14を与える金属材料の種類は、特に限定されるものではなく、目的とするプレス製品に要求される材質や特性等に応じて、同一種類のものや互いに異なる種類のものが適宜に選択されるのであり、また、それらの板厚も、互いに同一寸法とされていても、何等差し支えないのである。
【0028】
ところで、この本実施形態のテーラードブランク材10は、例えば、図2に示されるような電磁圧接装置16を用いて、上述の如き2枚の金属板12,14を電磁圧接して、一体化することによって、製造されることとなる。
【0029】
すなわち、ここで用いられる電磁圧接装置16は、コンデンサ:Cと放電スイッチ:Gと圧接用コイル18とを備えた、高密度の磁束を発生させるための放電回路と、かかる放電回路上のコンデンサ:Cに電荷を供給する電源装置19を備えた充電回路とを含んで構成されている。また、この電磁圧接装置16の放電回路上に設けられる圧接用コイル18は、所定距離を隔てて対向位置せしめられた、クロム銅等からなる薄肉平板状の二つの電極板20,20と、それら二つの電極板20,20のそれぞれにおける長さ方向の端縁部同士を一体的に連結する、クロム銅等からなる薄肉平板状の連結板22とを有しており、全体として、コ字形状を呈するワンターンコイル形態をもって、構成されている。更に、かかる圧接用コイル18の各電極板20は、全体として、略H字形状を呈しており、長さ方向の両端部が、幅方向に向かって互いに平行に延びる広幅の電極端部24,24とされている一方、その中間部が、それら二つの電極端部24,24を、それぞれの中間部において接続する狭幅の電極中間部26とされている。
【0030】
そして、このような電磁圧接装置16にあっては、コンデンサ:Cに所定量の電荷を充電させた状態下で、放電スイッチ:Gを閉じて、圧接用コイル18にパルス大電流(瞬間大電流)を流すことによって、圧接用コイル18の各電極板20,20における、電流が集中する各中間電極部26の周囲に、高密度の磁束が発生せしめられるようになっているのである。
【0031】
而して、かくの如き電磁圧接装置16を用いて、目的とするテーラードブランク材10を製造する際には、図2に示されるように、先ず、電磁圧接装置16における圧接用コイル18の二つの電極板20,20間に、公知の絶縁材料からなる2枚の絶縁シート27,27を互いに所定間隔をおいて対向配置する。また、その一方で、テーラードブランク材10を与える2枚の金属板12,14における、それぞれの長さ方向の端部、つまり、それら金属板12,14の各被接合部位28,29同士を、外力により互いに容易に押し付け合い得るように、相互に重ね合わせるか、若しくは所定の間隙を介して対向せしめた状態で、圧延用コイル18における各電極板20,20のそれぞれの中間電極部26,26間に、2枚の絶縁シート27,27に挟まれるように配置する。
【0032】
なお、2枚の金属板12,14を、所定の間隙を介して対向位置せしめる場合には、例えば、それら2枚の金属板12,14間に適当なスペーサ部材が介在せしめられることとなる。また、本工程で、2枚の金属板12,14を重ね合わせて、若しくは所定の間隙を介して対向するように配置する際には、それら2枚の金属板12,14の各被接合部位28,29同士の重なり代や、互いに対向する部分のそれぞれの幅は、特に限定されるものではなく、各金属板12,14の大きさ等によって適宜に決定され得るところではあるものの、一般には、それらの重なり代や対向部分の幅が、1〜2mm程度とされる。更に、2枚の金属板12,14における各被接合部位28,29を、それらの間に所定の間隙を介在せしめた状態で、圧延用コイル18間に配置する場合においては、後述する如き、その後の接合操作により接合される2枚の金属板12,14の接合強度を十分に確保するために、各金属板12,14の端部間の距離が、好ましくは、薄肉の金属板12の板厚に相当する寸法か、若しくは1mm程度とされる。
【0033】
そして、上述のようにして2枚の金属板12,14を圧接用コイル18間に配置した後、或いはその前に、若しくはかかる配置と同時に、電磁圧接装置16の充電回路上の電源装置19から供給される電荷にて、コンデンサ:Cを充電する。なお、このコンデンサ:Cの静電容量は、接合されるべき2枚の金属板12,14の板厚や種類等、それら金属板12,14の接合に要される電磁力に影響を与える幾つかの要素の差異に応じて、適宜に変更され得るところではあるものの、一般には、100〜1000μF程度とされる。
【0034】
次ぎに、電磁圧接装置16の放電回路上の放電スイッチ:Gを閉じて、コンデンサ:Cに蓄えられた電荷を放電させることにより、圧接用コイル18にパルス大電流(瞬間大電流)を流し、それによって、圧接用コイル18における各電極板20,20のそれぞれの中間電極部26,26の周囲に高密度の磁束:Bを発生させる。
【0035】
このとき、図3及び図4に示される如く、圧接用コイル18における各電極板20,20のそれぞれの中間電極部26,26の間に、互いに押し付け合い得るように配置された2枚の金属板12,14の各被接合部位28,29と、各中間電極部26,26の周囲に発生せしめられた高密度の磁束:Bとが交差すると、それら各金属板12,14の被接合部位28,29の内部に、磁束:Bの浸透を妨げる方向に渦電流:iが発生する。また、その際、各被接合部位28,29の内部を流れる渦電流:iが、互いに隣接する部分で打ち消し合って、等価的には、図4中に破線で示されるように、各被接合部位28,29の周辺部分を流れる電流だけが残り、それによって、図4に太矢印で示されるように、各被接合部位28,29に、それらを互いに押し付け方向に向かって作用する電磁力:Fが瞬間的に発生する。そして、その結果、2枚の金属板12,14の各被接合部位28,29同士を高速で衝突させるように為して、それら各被接合部位28,29を、殆ど加熱溶融せしめることなく、瞬間的に相互に圧接するのである。
【0036】
その後、上述の如くして、それぞれの被接合部位28,29同士において、圧接され、一体化された金属板12,14を電磁圧接装置16の圧接用コイル18間から取り出し、以てプレス成形に供される、図1に示される如き、目的とするテーラードブランク材10を得るのである。
【0037】
このように、本実施形態では、2枚の金属板12,14のそれぞれの被接合部位28,29が、加熱溶融せしめられることなく、固相状態のままで圧接されるようになっているところから、それら2枚の金属板12,14の接合方式として、各被接合部位28,29を加熱溶融せしめて接合する溶融溶接や抵抗溶接等を採用する場合とは異なって、そのような溶融溶接や抵抗溶接の実施時に、それら各被接合部位28,29の接合強度に悪影響を及ぼすような数々の問題が生ずることが、悉く解消され得るばかりでなく、製造されるテーラードブランク材10の接合部位の近傍に、局部的な強度低下やプレス成形時に破断の発生を惹起せしめる恐れのある熱影響部が生ずるようなことも有利に回避され得るのであり、それによって、安定的な接合品質と優れたプレス成形性を備えたテーラードブランク材10が、極めて有利に製造され得ることとなるのである。
【0038】
また、本実施形態においては、2枚の金属板12,14の各被接合部位28,29に瞬間的に発生せしめられる電磁力によって、それら各被接合部位28,29が瞬間的に相互に圧接されるようになっているところから、例えば、2枚の金属板12,14が大きいために、それらの各被接合部位28,29が多少長くなっても、そのような2枚の金属板12,14の接合が、極めて短時間で完了せしめられ得るのであり、そのため、接合されるべき金属板12,14の大きさ等に拘わらず、目的とするテーラードブランク材10が、優れた生産効率をもって、有利に製造され得るのである。そして、その結果として、テーラードブランク材10の生産コストの低減が、効果的に図られ得ることとなるのである。
【0039】
さらに、本実施形態では、上述の如く、2枚の金属板12,14の接合が瞬間的に完了せしめられ得るようになっているため、製造されるテーラードブランク材10の入熱の蓄積による歪みや組織変化の発生や、それに伴う外観や強度の低下、更にはプレス成形時におけるプレス精度の低下等が、効果的に阻止され得るのであり、これによっても、製造されるテーラードブランク材10のプレス成形性が安定的に確保され得ることとなるのである。
【0040】
しかも、本実施形態にあっては、圧接用コイル18にパルス大電流を流すことにより、かかる圧接用コイル18間に配置される2枚の金属板12,14における各被接合部位28,29の内部に、電磁力を瞬間的に発生させることによって、それら各被接合部位28,29が相互に接合されるようになっているところから、単に、金属板12,14を与える金属材料の種類や板厚等に応じて、圧接用コイル18の形状やそれに流されるパルス大電流の大きさ及び通電時間等を制御するだけで、接合強度の安定化が、極めて容易に図られ得るのである。
【0041】
ところで、前記第一の実施形態では、互いに厚さの異なる2枚の金属板12,14を、それぞれの長さ方向の端部同士において接合し、一体化せしめてなる接合形態を有するテーラードブランク材10の例が示されていたが、テーラードブランク材10の接合形態は、何等これに限定されるものではない。即ち、例えば、図5及び図6に示されるように、互いに大きさの異なる、大小2枚の金属板12,14を用い、大きさが小なる金属板14を、その板厚方向の一方の面の全面が、大きさが大なる金属板12に接触せしめられた状態で、かかる大きさが大なる金属板12に接合し、一体化して、テーラードブランク材10を構成するようにしても、良いのである。なお、図5及び図6、更には後述する図7乃至図9では、前記第一の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、前記第一の実施形態と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略した。
【0042】
そして、このような大小2枚の金属板12,14が一体的に接合されてなる接合形態を有するテーラードブランク材10を製造する際には、例えば、先ず、大小2枚の金属板12,14を、大きさの小なる金属板14の一方の面の全面と、大きさが大なる金属板12の一部の面とにおいて互いに押し付け合い得るように、互い重ね合わせるか、若しくは所定の間隙を介して対向するように位置させる。なお、大小2枚の金属板12,14を、所定の間隙を介して対向位置させる場合には、前記第一の実施形態と同様に、2枚の金属板12、14間に適当なスペーサ部材が介在せしめられることとなる。
【0043】
次いで、前記第一の実施形態のテーラードブランク材10を製造する際に使用される電磁圧接装置16を用い、この電磁圧接装置16の圧接用コイル18における二つの電極板20,20の各中間電極部26,26間に、上述の如くして互いに押し付け合い得るように位置せしめられた2枚の金属板12,14を、絶縁シート27,27を介して配置する。そして、その後、前記第一の実施形態と同様に、圧接用コイル18にパルス大電流を流して、2枚の金属板12,14のそれぞれの接合されるべき部位に、それらを互いに押し付け合う方向に向かって作用する電磁力を瞬間的に発生させることにより、それら2枚の金属板12,14を、被接合部位同士において瞬間的に相互に圧接して、一体化し、以て目的とするテーラードブランク材10を得るのである。
【0044】
なお、このとき、接合されるべき2枚の金属板12,14のうちの小さな金属板14が、各電極板20,20の中間電極部26よりも広幅である場合には、例えば、先ず、互いに押し付け合い得るように位置せしめられた2枚の金属板12,14を、小さな金属板14の幅方向の一方側が、それら各電極板20,20の中間電極部26の間に位置するように配置して、2枚の金属板12,14を、小さな金属板14の幅方向の一方側において、互いに接合し、その後、小さな金属板14の幅方向の他方側が、各電極板20,20の中間電極部26の間に位置するように配置して、2枚の金属板12,14を、小さな金属板14の幅方向の他方側において、互いに接合する操作が、実施され、以て、大小2枚の金属板12,14が、小さな金属板14の幅方向の両端部側に、接合部位31,31がそれぞれ形成されて、一体化せしめられることとなる。
【0045】
このように、本実施形態にあっても、2枚の金属板12,14が、その接合されるべき部位を何等溶融させることなく接合させる電磁圧接法を利用して、瞬間的に接合されるようになっているところから、前記第一の実施形態において奏される効果が、何れも有利に享受され得るのである。
【0046】
そして、本実施形態では、特に、互いに大きさの異なる、大小2枚の金属板12,14が用いられ、大きさの小なる金属板14が、その全面において、大きさの大なる金属板12に接合され、一体化されるようになっているため、大きさが小なる金属板14にて部分的に補強されたテーラードブランク材10が、極めて容易に製造され得ることとなるのである。
【0047】
また、前記第一及び第二の実施形態では、所定の大きさを有する平板状の2枚の金属板12,14が、互いに接合せしめられて、1枚のテーラードブランク材10が製造されるようになっていたが、例えば、接合されるべき金属板12,14として、それぞれ、所定のコイルを形成するように巻回された長尺な薄板を用い、それらのコイルを徐々に巻き戻しつつ、連続的に接合することも、可能である。
【0048】
すなわち、ここでは、図7に示される如く、先ず、2枚の長尺な金属板12,14からなる二つのコイル30,32を、それぞれ徐々に巻き戻して、その巻戻し部位34,36を、図8に示されるように、それぞれの幅方向の一端部において、互いに押し付け合い得るように、互い重ね合わさせるか、若しくは所定の間隙を介して対向するように位置させる。なお、それぞれのコイル30,32の各巻戻し部位34,36を、所定の間隙を介して対向位置させる場合には、前記第一及び第二の実施形態と同様に、各巻戻し部位34,36間に適当なスペーサ部材が介在せしめられることとなる。
【0049】
引き続き、図7に示されるように、前記第一及び第二の実施形態のテーラードブランク材10を製造する際に使用される電磁圧接装置16を用い、この電磁圧接装置16の圧接用コイル18における二つの電極板20,20の各中間電極部26,26間に、上述の如くして互いに押し付け合い得るように位置せしめられた各巻戻し部位34,36を、絶縁シート27,27を介して配置する。そして、その後、前記第一及び第二の実施形態と同様に、圧接用コイル18にパルス大電流を流して、各巻戻し部位34,36のそれぞれの接合されるべき部位に、それらを互いに押し付け合う方向に向かって作用する電磁力を瞬間的に発生させることにより、それら各巻戻し部位34,36を、被接合部位同士において瞬間的に相互に圧接して、一体化する。
【0050】
そして、二つのコイル30,32を徐々に巻き戻しつつ、各巻戻し部位34,36を圧接する上述の如き操作を連続して、繰り返し実施することにより、二つのコイル30,32を形成する2枚の長尺な金属板12,14を、全長に亘って接合し、一体化せしめる一方、かくして一体化された2枚の長尺な金属板12,14の接合体を、所定の間隔で、公知の切断機38により切断する。これによって、図9に示される如く、2枚の金属板12,14がそれぞれの幅方向の一端部において圧接され、一体化されてなる、目的とするテーラードブランク材10を、多数得るのである。
【0051】
このように、本実施形態にあっても、2枚の金属板12,14が、その接合されるべき部位を何等溶融させることなく接合させる電磁圧接法を利用して、瞬間的に接合されるようになっているところから、前記第一及び第二の実施形態において奏される効果が、何れも有利に享受され得るのである。
【0052】
そして、本実施形態では、特に、二つのコイル30,32を徐々に巻き戻しつつ、各巻戻し部位34,36を圧接し、それにより得られる接合体を所定間隔で切断するといった単純な操作の繰り返しにより、目的とするテーラードブランク材10を、連続して、大量に、しかも容易に且つ迅速に製造することが出来るのであり、その結果として、テーラードブランク材10の生産コストを、極めて効果的に低減させることが可能となるのである。
【0053】
さらに、前記三つの実施形態では、2枚の金属板12,14を瞬間的に電磁圧接して、目的とするテーラードブランク材10が製造されていたが、3枚以上の金属板を瞬間的に電磁圧接して、テーラードブランク材(プレス成形用ブランク材)を製造することも、勿論可能である。
【0054】
加えて、前記三つの実施形態では、本発明を、自動車の内装パネルを与えるプレス成形用ブランク材たるテーラードブランク材と、その製造方法に適用した例が示されていたが、本発明は、その他、自動車の内装パネル以外に使用されるプレス成形用ブランクとその製造方法の何れにも、有利に適用され得るものであることは、言うまでもないところである。
【0055】
【実施例】
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した発明の実施の形態以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0056】
<実施例1>
先ず、アルミニウム、1000系アルミニウム合金、5000系アルミニウム合金、6000系アルミニウム合金、表面に亜鉛メッキが施された鉄、表面にメッキが何等施されていない鉄、及び銅からそれぞれなる、板厚が1mmと2mmの金属板を、それぞれ複数枚準備する一方、図2に示される如き構造を有する電磁圧接装置(16)と、公知の絶縁シートを準備した。
【0057】
次いで、準備された複数枚の金属板の中から、下記表1に示される如き種類と板厚の組み合わせで、2枚を選択して、それら選択された2枚の金属板を、それぞれの長さ方向の端部において重ね合わせる一方、電磁圧接装置(16)の圧接用コイル(18)における二つの電極板(20,20)の各中間電極部(26,26)間に、それら2枚の金属板の互いの重合部位を、絶縁シートを介して配置した。その後、圧接用コイル(18)にパルス大電流を流して、2枚の金属板のそれぞれの重合部位に、それらを互いに押し付け合う方向に向かって作用する電磁力を瞬間的に発生させることにより、それら2枚の金属板を、重合部位同士において瞬間的に相互に電磁圧接して、一体化し、以て目的とするテーラードブランク材を得た。このようにして、下記表1に示される種類と板厚の組み合わせにて選択された2枚の金属板を、それぞれ全て、電磁圧接し、一体化して、接合される2枚の金属板の種類や板厚の組合せが互いに異なる11種類のテーラードブランク材(本発明例1〜11)を得た。なお、ここでの電磁圧接は、400μFのコンデンサ電源に、1〜20kJのエネルギーを充電し、その後放電させて、コイルにパルス大電流を流すことによって、実施した。
【0058】
そして、かくして得られた本発明例1〜11のテーラードブランク材を用い、それらの接合部位の近傍に、熱影響部が存在するか否かをビッカース硬度計で調べ、また、直径100〜120mm円板の中心部に接合線がある試験片を、φ40mm球頭張出し試験に供し、15mm高さでの「割れ」の発生の有無を目視で確認した。それぞれの結果を、下記表1に併せて示した。更に、本発明例1〜11のテーラードブランク材を製造する際に、2枚の金属板の接合に要した時間における、接合長100mm当たりの接合時間を算出した。その結果を、下記表1に併せて示した。
【0059】
【表1】
【0060】
また、比較のために、6000系アルミニウム合金からなる、板厚が1mmと2mmの金属板を用いて、それらを長さ方向の端部同士において互いに重ね合わせて配置する一方で、それらの重合部位に対してMIG溶接を行なうことにより、かかる2種類の金属板を接合し、一体化せしめて、MIG溶接にて接合部が形成されたテーラードブランク材(比較例1)を得た。更に、かかる比較例1のテーラードブランク材を与える2枚の金属板と同一の種類と板厚を有する金属板をそれぞれ3枚ずつ準備し、その中から板厚の異なる金属板の1枚ずつを選択して、それら選択された2枚の金属板を、長さ方向の端部同士において互いに重ね合わせ、その後、それらの重合部位に対して、レーザ溶接、シーム溶接、摩擦撹拌接合(FSW)をそれぞれ行なうことによって、かかる3種類の接合方式にて接合部がそれぞれ形成された3種類のテーラードブランク材(比較例2〜4)を得た。それら3種類のテーラードブランク材のうち、レーザ溶接にて接合部が形成されたテーラードブランク材を比較例2とし、また、シーム溶接にて接合部が形成されたテーラードブランク材を比較例3とし、更に、摩擦撹拌接合(FSW)にて接合部が形成されたテーラードブランク材を比較例4とした。
【0061】
そして、かくして得られた比較例1〜4のテーラードブランク材を用いて、前記本発明例1〜11のテーラードブランク材と同様にして、熱影響部の有無と、球頭張出し試験での「割れ」の発生の有無と、接合長100mm当たりの接合時間とを、それぞれ調べた。その結果を、下記表2に示した。
【0062】
【表2】
【0063】
上記表1と表2の結果から明らかなように、本発明手法に従って2枚の金属板を、それぞれの端部において電磁圧接して製造された本発明例1〜11のテーラードブランク材においては、熱影響部が存在せず、また、球頭張出し試験での「割れ」も全く発生しておらず、更に、接合長100mm当たりの接合時間も0.1秒と極めて短時間であった。これに対して、本発明手法とは異なってMIG溶接やレーザ溶接、シーム溶接、摩擦撹拌接合等によって、2枚の金属板を接合してなる比較例1〜4のテーラードブランク材にあっては、熱影響部が存在すると共に、球頭張出し試験において「割れ」が発生しており、また、接合長100mm当たりの接合時間も1.5〜30秒程度の長時間となっていた。これらのことから、本発明手法に従って製造された本発明例1〜11のテーラードブランク材が、本発明手法とは異なる手法により製造された比較例1〜4のテーラードブランク材に比して、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性を有していることが、明確に認識され得るのである。
【0064】
<実施例2>
先ず、実施例1において準備された金属板と同一の種類の金属材料からなる、板厚が0.5mmと1mmと2mmの、互いに大きさの異なる金属板を、それぞれ複数枚準備すると共に、実施例1において目的とするテーラードブランク材(本発明例1〜11)の製造に使用された電磁圧接装置及び絶縁シートをそれぞれ準備した。
【0065】
次いで、準備された複数枚の金属板の中から、下記表3に示される如き種類と板厚の組み合わせで、2枚乃至は3枚を選択して、それら選択された2枚乃至は3枚の金属板を、小さな金属板が、その全面において、大きな金属板に接触するように重ね合わせる一方、電磁圧接装置の圧接用コイルにおける二つの電極板の各中間電極部間に、それら2枚乃至は3枚の金属板の互いの重合部位を、絶縁シートを介して配置した。その後、前記実施例1と同様にして、2枚乃至は3枚の金属板を電磁圧接し、一体化せしめて、金属板の種類や板厚の組合せが互いに異なる12種類のテーラードブランク材(本発明例12〜23)を得た。なお、ここでの電磁圧接の条件は、前記実施例1と同一とした。
【0066】
そして、かくして得られた本発明例12〜23のテーラードブランク材を用い、それら各テーラードブランク材における熱影響部の有無と、球頭張出し試験での「割れ」の発生の有無と、接合長100mm当たりの接合時間とを、前記実施例1と同様にして、それぞれ調べた。その結果を、下記表3に示した。なお、ここでの球頭張出し試験の条件も、前記実施例1と同一とした。
【0067】
【表3】
【0068】
上記表3の結果から明らかなように、本発明手法に従って2枚乃至は3枚の金属板を、小さな金属板が、その全面において大きな金属板に重ね合わされた状態で、電磁圧接して製造された本発明例12〜23のテーラードブランク材にあっても、前記実施例1における本発明例1〜11のテーラードブランク材と同様に、熱影響部が存在せず、また、球頭張出し試験での「割れ」も全く発生しておらず、更に、接合長100mm当たりの接合時間も0.1秒と極めて短時間であった。これによって、本発明手法に従って製造された本発明例12〜23のテーラードブランク材が、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性を有していることが、明確に認識され得るのである。
【0069】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明に従うプレス成形用ブランク材の製造方法によれば、複数の金属板を相互に接合し、一体化してなる、目的とするプレス成形用ブランク材(テーラードブランク材)を、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性をもって、極めて容易に且つ安価に製造することが出来るのである。
【0070】
また、本発明に従うプレス成形用ブランク材にあっては、安定した接合品質と優れた生産性、更には高度なプレス成形性が、極めて有利に発揮され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明手法に従って製造されたテーラードブランク材の一例を示す縦断面説明図である。
【図2】図1に示されたテーラードブランク材を製造する工程の一例を示す説明図であって、かかるテーラードブランク材を与える2枚の金属板を電磁圧接装置の圧接用コイル間に配置せしめた状態を示している。
【図3】図2に示された電磁圧接装置による2枚の金属板の接合原理を示す模式図であって、かかる電磁圧接装置の圧接用コイルに磁束を発生せしめた状態を示している。
【図4】図2に示された電磁圧接装置による2枚の金属板の接合原理を示す別の模式図であって、かかる電磁圧接装置の圧接用コイル間に配置された2枚の金属板の内部に電磁力を発生せしめた状態を示している。
【図5】本発明手法に従って製造されたテーラードブランク材の別の例を示す縦断面説明図である。
【図6】図5におけるVI矢視説明図である。
【図7】本発明手法に従って、図1及び図5に示されるテーラードブランク材とは更に別のテーラードブランク材を製造する工程の一例を示す説明図であって、かかるテーラードブランク材を与える2枚の金属板を電磁圧接装置の圧接用コイル間に配置せしめた状態を示している。
【図8】図7のVIII矢視における要部拡大説明図である。
【図9】本発明手法に従って製造されるテーラードブランク材の更に別の例を示す図1に対応する図である。
【符号の説明】
10 テーラードブランク材 12,14 金属板
16 電磁圧接装置 18 圧接用コイル
20 電極板 28,29 被接合部位
30,32 コイル 34,36 巻戻し部位
Claims (8)
- 複数の金属板を相互に接合して、一体化することにより、プレス成形に用いられるブランク材を製造する方法であって、
前記複数の金属板のそれぞれの接合されるべき部位を、互いに押し付け合い得る状態で、圧接用コイル間に配置せしめた後、該圧接用コイルに瞬間大電流を流して、該複数の金属板の各被接合部位に、それらを互いに押し付け合う方向に向かって作用する電磁力を瞬間的に発生させて、該複数の金属板を、該被接合部位同士において瞬間的に相互に圧接せしめることにより、一体化することを特徴とするプレス成形用ブランク材の製造方法。 - 前記複数の金属板のそれぞれの被接合部位を、それら金属板の間に所定の間隙が介在せしめられた状態で、前記圧接用コイル間に対向配置せしめることによって、該複数の金属板の各被接合部位を、互いに押し付け合い得る状態で、該圧接用コイル間に配置せしめるようにした請求項1に記載のプレス成形用ブランク材の製造方法。
- 前記複数の金属板のうちの少なくとも一つが、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる板材である請求項1又は請求項2に記載のプレス成形用ブランク材の製造方法。
- 前記複数の金属板が、それぞれ板厚の異なるものにて構成されている請求項1乃至請求項3の何れかに記載のプレス成形用ブランク材の製造方法。
- 前記複数の金属板が、互いに異なる種類の金属材料にて構成されている請求項1乃至請求項4の何れかに記載のプレス成形用ブランク材の製造方法。
- 前記複数の金属板として、所定のコイルを形成するように巻回された長尺な薄板を用い、かかるコイルを徐々に巻き戻しつつ、該複数の金属板のそれぞれの巻き戻された部分を、互いに押し付け合い得る状態で、前記圧接用コイル間に配置せしめた後、該圧接用コイルに瞬間大電流を流して、それら各巻き戻された部分に、前記電磁力を瞬間的に発生させて、該各巻き戻された部分を圧接する操作を繰り返し行なうことにより、該複数の金属板を、該巻き戻された部分毎に連続的に圧接して一体化する一方、該圧接されて一体化された該複数の金属板の接合体を、所定の間隔で切断するようにした請求項1乃至請求項5の何れかに記載のプレス成形用ブランク材の製造方法。
- 前記複数の金属板として、互いに大きさの異なる板材を用い、かかる複数の金属板を、大きさが小なる金属板の一方の面の全面と、大きさが大なる金属板の一部の面とにおいて互いに押し付け合い得る状態で、前記圧接用コイル間に配置せしめた後、該圧接用コイルに瞬間大電流を流して、それら複数の金属板に前記電磁力を発生させて、該複数の金属板を圧接するようにした請求項1乃至請求項5に記載のプレス成形用ブランク材の製造方法。
- 前記請求項1乃至請求項7の何れかに記載の製造方法によって得られることを特徴とするプレス成形用ブランク材。
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-
2002
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