JP2004039543A - 平板状配線ケーブル及び磁気記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】幅方向への高い可撓性と制振性とを備える平板状配線ケーブルを提供する。
【解決手段】平板状配線ケーブル10を、平面状に配置された複数本の並行する配線用導体20と、配線用導体20の周囲を覆う可撓性絶縁体40、30と、この可撓性絶縁体40、30を貫通し、配線用導体20の並行する方向に延びるスリット60と、このスリット60に充填した粘弾性体61とで構成している。この構成で平板状配線ケーブル10のスリット60と直交する方向(幅方向)の可撓性が高まり、また、スリット60に充填した粘弾性体61により制振性が向上する。
【選択図】 図1
【解決手段】平板状配線ケーブル10を、平面状に配置された複数本の並行する配線用導体20と、配線用導体20の周囲を覆う可撓性絶縁体40、30と、この可撓性絶縁体40、30を貫通し、配線用導体20の並行する方向に延びるスリット60と、このスリット60に充填した粘弾性体61とで構成している。この構成で平板状配線ケーブル10のスリット60と直交する方向(幅方向)の可撓性が高まり、また、スリット60に充填した粘弾性体61により制振性が向上する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、フラットケーブルと呼ばれる平板状配線ケーブルと、それを用いた磁気記録装置に関し、特に、フラットケーブルを撓み易くしたものである。
【0002】
【従来の技術】
平板状配線ケーブル(通称フラットケーブル)は、いわゆる電気銅の薄板を所要の幅に切断して配線用導体を形成した後、この配線用導体の複数本を平面状に配置し、その周囲をポリエチレンテレフタレートなどの可撓性を有する熱可塑性樹脂で被覆して構成している。平板状配線には、その他に、圧延や電解銅による銅箔を柔軟な基板上に形成し、エッチングで導体部分のみを残すフレキシブル配線基板も知られているが、フラットケーブルは、フレキシブル配線基板と比較して安価であるため、電子機器などの配線に多用されている。
【0003】
しかし、可撓性に関しては、フラットケーブルよりもフレキシブル配線基板の方が高い。フラットケーブルでは、その厚み方向の可撓性は良いが、幅方向に対する可撓性が低い。そのため、複数の機器のコネクタ間をフラットケーブルで接続する場合には、各機器のコネクタがフラットケーブルの幅方向に位置ずれしていると、コネクタ間を接続するフラットケーブルが幅方向に撓み、各機器や、基板及びフラットケーブル自身の配線用導体にストレスが加わることが知られている。
【0004】
こうした欠点を改良するため、特開平6−36620号公報には、図9(a)、(b)に示すように、フラットケーブル1に複数の折り曲げによる蛇腹構造5、53を設け、フラットケーブル1の幅方向への可撓性を高めることが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この従来技術のようにフラットケーブルを複数回折り曲げて蛇腹構造を設けることは、折り曲げに関わる工数の増加や、フラットケーブル自体の長さが、接続する部分の距離に比べて、折り曲げに関わる分だけ長くなるため、コストが上昇するという問題点があった。
【0006】
また、折り曲げに伴い、特に配線用導体に常に曲げ応力が加わったままの状態となるため、応力腐食などが発生する可能性があり、信頼性向上を阻害する原因となっていた。
また、フラットケーブルは、車などに搭載された機器の電気接続や携帯機器等にも使用されるため、接続する機器への振動伝搬を抑える制振性が求められている。
【0007】
本発明は、こうした従来の課題を解決するものであり、幅方向への高い可撓性と制振性とを備えるとともに、信頼性が高く、製造が容易である平板状配線ケーブルを提供し、また、それを用いた磁気記録装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、平板状配線ケーブルを、平面状に、且つ、並行に配置された複数の配線用導体と、この複数の配線用導体の周囲を覆う可撓性絶縁体と、可撓性絶縁体の配線用導体間の一部を貫通し、配線用導体に沿って並行する方向へ延びるスリットと、このスリットに充填された粘弾性体とで構成している。
【0009】
この構成により、平板状配線ケーブルのスリットと直交する方向(幅方向)の可撓性が高まり、また、スリットに充填した粘弾性体により制振性が向上する。この平板状配線ケーブルは、従来の蛇腹構造を必要としないので、コストの上昇や信頼性の低下を招かない。
【0010】
また、本発明の磁気記録装置は、この平板状配線ケーブルを用いて、インターフェース信号を変換する回路基板と磁気記録装置本体とを接続している。
この構成により、磁気記録装置本体と回路基板との位置ずれに起因してそれらを接続する平板状配線ケーブルに幅方向の変位が生じた場合でも、平板状配線ケーブルの幅方向の高い可撓性により、磁気記録装置のトラック方向のズレが回避できる。また、制振性が高いため、この磁気記録装置を車などに搭載したり、携帯用とした場合でも高い信頼性を保つことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態では、平板状配線ケーブルについて説明する。
この平板状配線ケーブル(即ち、フラットケーブル)は、図1に示すように、複数本の配線用導体20と、この配線用導体20をサンドイッチする下側の絶縁フィルム30及び上側の絶縁フィルム40と、上下の絶縁フィルム30、40を貫通する複数本のスリット60と、このスリット60に充填された粘弾性体61とを備えている。
【0012】
下側の絶縁フィルム30及び上側の絶縁フィルム40は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)などの可撓性を有する熱可塑性樹脂から成る。フィルムの厚さは、この実施形態では上下とも0.025mmとしている。
配線用導体20は、平角の軟銅線などの薄板に錫等のめっきを施した後、所要の幅及び長さに切断して構成する。この実施形態では厚さ0.025mm、幅0.3mmとしている。板厚は、使用する電流容量や、厚み方向の可撓性などを考慮して適宜決定する。
【0013】
この配線用導体20の複数本を等間隔に配置し、下側の絶縁フィルム30と上側の絶縁フィルム40とを熱溶着(ラミネート)して、各配線用導体20を電気的に絶縁する。配線用導体20のピッチは、この実施形態では0.5mmとしている。
【0014】
スリット60は、上下の絶縁フィルム30、40を貫通し、また、フラットケーブル10の長手方向の端にまで到達しないように配置している。また、スリット60は、その複数本をフラットケーブル10の幅方向に等間隔に配置している。ここでは、4本のスリット60を配置している。これらのスリット60には、粘弾性体61を充填している。この粘弾性体61には、ブチル系ゴムやシリコンゴム系、高減衰ゴム系のもの、または、ソルボセイン(登録商標:三進興産(株))、αゲル(登録商標:(株)ジェルテック)、ポリスチレンのゲル化したものなどを用いることができる。
【0015】
フラットケーブル10の長手方向の両端は、配線用導体20を露出させて端子部62を形成する。この端子部62は、回路基板などに設けられた電気接続用のランドやコネクタに接続する。なお、半田などを用いて接続する場合には、端子部62の配線用導体20が完全に露出するように上下の絶縁フィルム30、40を除去することが望ましい。また、コネクタを用いて接続する場合には、図1のように、端子部62の配線用導体20の露出する面と反対側の絶縁フィルム30を残し、この絶縁フィルム30の裏面に適当な厚さのフィルム(PET)を貼り合わせて(裏打ちして)、端子部62の断面形状をコネクタの挿入口などに適合させることが望ましい。
このフラットケーブル10は、端子部62を介して機器と電気接続し、配線用導体20により、電気信号の伝送や電源供給などを行う。
【0016】
図3は、このフラットケーブル10の上側の絶縁フィルム40を除いた状態を示し、また、図4は、図3のスリット60の周辺を拡大して示している。スリット60に隣接する配線用導体20の幅は、スリット60に隣接する部分において、スリット60に対応させて狭めている。
このフラットケーブル10は、配線用導体20を下側の絶縁フィルム30及び上側の絶縁フィルム40でラミネートした後、スリット60を打ち抜きなどで形成し、このスリット60に粘弾性体61を充填して製造する。
【0017】
なお、予め、上下の絶縁フィルム30、40にスリット60を形成し、これらのフィルムを用いて配線用導体20をラミネートするようにしても良い。この場合には、スリットが形成された絶縁フィルム30、40を用いて、工程を追加することなしにスリット入りのフラットケーブルを作成することができる。
また、スリット60の部分に粘弾性体61を充填する工程は、フラットケーブル10が完成した後に行う方が作業は楽であるが、フラットケーブル10の製造工程中に粘弾性体61の充填工程を適宜組み入れることも可能である。
【0018】
次に、このフラットケーブル10の可撓性について説明する。図2は、フラットケーブル10をその厚み方向に曲げるとともに、その幅方向(矢印70で示す方向)に変位させた状態を示している。
フラットケーブル10は、単純な曲げ応力のみを印加して、その厚み方向のみに屈曲させる場合には、簡単に撓ませることができる。しかし、さらにその幅方向(矢印70)への変位が加えられた場合は、あたかも幅方向の長さ(w0)が撓みに抵抗する厚さとして作用し、剛性が増大する。これは、矩形断面形状を有する梁に対して、変位(幅方向のずれ)を与える力を加える場合と同等である。そのため、その変位には非常に大きな力が必要となる。
【0019】
一般に、撓みに関する厚さの影響は、その3乗に反比例することが知られている。つまり、同じ変位を与えるには厚さの3乗に相当する力が必要になる。しかし、図1、図2に示すように、フラットケーブル10がスリット60により幅方向に分割(図2では5分割)されていると、フラットケーブル10の変位が、分割された短い幅(w1)の5つのフラットケーブル100に分散されるため、フラットケーブル10の幅方向の変位に対する剛性が小さくなる。
【0020】
即ち、フラットケーブル10の変位は、分割された短い幅(w1)の5つのフラットケーブル100の変位を合わせたものとなり、幅w1のフラットケーブル100の各々は、全体の変位の1/5の変位を受けることとなる。その変位を幅w1のフラットケーブル100に与える力はw1の3乗に相当する力で足りる。従って、その5倍がフラットケーブル10に変位を与えるための必要な力となるが、これは、分割されていない幅w0のフラットケーブル10に同じ変位を与えるための力、即ち、w0の3乗、に比べて遥かに小さい。
【0021】
具体的に数値で示すと、いま、分割した幅w1を横に変位させるときに必要な力をa(gf)とした場合、スリットで分割したフラットケーブル10は5×a(gf)の力で変位させることができる。一方、スリットの無いフラットケーブルにおいては、幅がw0(>5×w1)であるため、53×a(gf)以上の力が必要となり、スリットで分割したフラットケーブル10に比べて25倍以上の力が必要となる。
【0022】
この変形の際、分割された幅の短いフラットケーブル100同士は、厚さ方向に重なり合うように変形する。これは、隣接する幅の短いフラットケーブル100同士の変形状態が、スリット60により、連続しなくても良くなったためである。
なお、粘弾性体61は、その剛性がフラットケーブル10に比べて低いので、スリット60による柔軟性を阻害することはない。
【0023】
また、スリット60はフラットケーブルの端子部62にまで伸びていないため、フラットケーブル10を幅方向に変形したときでも、端子部62における変形は防止でき、配線用導体20のピッチずれなどは生じない。従って、フラットケーブル10を機器に接続する時に、半田付けやコネクタ挿入などの作業性を損なう虞れは無い。また、コネクタによる接続では、コンタクト部分の変形が無いので接触不良を起こす虞れもない。
【0024】
図5は、図6に示すように、各種フラットケーブルを一定の曲率半径で曲げた後、幅方向(矢印の方向)に撓ませたときの変位量とその荷重との関係を示している。横軸には幅方向の変位量を取り、縦軸にはその荷重を取っている。図5において、従来例の関係線6はスリットを持たないフラットケーブルの特性を示し、本発明の関係線7はスリットを持つフラットケーブルの特性を示し、本発明の関係線8は、スリット数を本発明の関係線7の2倍にした場合の特性を示している。
【0025】
このグラフから明らかなように、フラットケーブルにスリットを設けることにより、少ない荷重でフラットケーブルを幅方向に変位させることが可能になり、幅方向の可撓性が増大する。そして、この可撓性は、スリットの本数を増やす程、向上する。
このように、この実施形態のフラットケーブルでは、スリットを設けてフラットケーブルの幅方向(スリットと直交する方向)の可撓性を高めているため、機器に接続する際に、フラットケーブルを幅方向にずらす必要が生じた場合でも、少ない力で幅方向に変位させることができ、機器や配線基板、あるいはフラットケーブル自身の配線用導体に加わるストレスを減らすことができる。
【0026】
スリットで可撓性を高める構造は、従来の蛇腹構造に比べて、工数とコストとを削減できるため、平板状配線ケーブルを安価に製造できる。また、スリットに粘弾性体を充填することにより制振性の向上を図ることができる。
また、スリットをフラットケーブルにほぼ等間隔に配置することにより、スリットと直交する方向の可撓性を、幅方向の位置によらずに均等に設定することができ、部分的なストレスの増加を防止できる。それによりフラットケーブルの使い勝手及び接続に関わる作業性の向上を図ることができる。
【0027】
また、この実施形態のフラットケーブルでは、スリットに隣接する配線用導体の幅を、スリットに隣接する部分で、スリットに対応させて狭めているため、スリットと配線用導体との間に所定の間隔を空けることができる。そのため、配線用導体を上側及び下側の絶縁フィルムでラミネートした後、スリットを打ち抜き加工する場合にも、スリットの位置ずれに対してより許容寸法が拡大できる。また、予め、上側及び下側の絶縁フィルムにスリットを設け、この絶縁フィルムで配線用導体をラミネートしてフラットケーブルを作る場合でも、同様に許容寸法が拡大できる。この許容寸法の拡大は、作業性を高め、歩留りの低下を抑えることができる。
また、この構成により、配線用導体と絶縁フィルムとの沿面距離を、スリットに隣接する部分でも、スリットのない部分と同等に保つことができ、絶縁耐圧などの低下を防ぐことができる。
【0028】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態の平板状配線ケーブルを用いた磁気記録装置について説明する。
この磁気記録装置は、図8に示すように、樹脂製の筐体80内に装着された磁気記録装置本体85と、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)用コネクタ82と、インターフェース信号を変換するI/F回路基板81と、磁気記録装置本体85のコネクタ84とI/F回路基板81とを接続するフラットケーブル10とを備えている。(なお、図8は、フラットケーブル10を磁気記録装置本体85のコネクタ84に接続する前の状態を示している。)
フラットケーブル10は、磁気記録装置本体85の回路基板に設けられたコネクタ84と、I/F回路基板81に設けられたコネクタ86との間の電気信号の授受や、電源の供給を行う。この実施形態の装置では、コネクタ84、86として、0.5mmピッチの20芯を具備し、フラットケーブル10の挿抜時にスライダーでコンタクト部分に対する押し付け/開放ができる通称ジフタイプと呼ばれる形態のものを用いている。
また、I/F回路基板81は、ネジ83で筐体80に取り付けており、磁気記録装置本体85は、筐体80に設けたフック(図示せず)で筐体80に取り付けている。
【0029】
また、磁気記録装置本体85は、図7に示すように(図7では、密閉するためのカバーを除き、回路の一部が露呈するようにシャーシの一部を切り欠いている)、アルミ製のベースプレート117と、電気部品を実装した回路基板115(一部のみ表示)と、磁気記録媒体109と、磁気記録媒体109を回転駆動するスピンドルモータ112と、データなどを記録再生する磁気ヘッド114と、磁気ヘッド114を所要のトラックに移動するVCM(voice coil motor)113とを備えており、回路基板115、スピンドルモータ112、VCM113などがベースプレート117に取り付けられている。
【0030】
この装置では、磁気記録装置本体85とI/F回路基板81との取り付け精度により、コネクタ84とコネクタ86とがフラットケーブル10の幅方向(図中の矢印に示す方向)に最大約2mmほどずれることが有り得る。
【0031】
ところで、磁気記録装置本体85では、セクターサーボにより、トラックと磁気ヘッドとのトラック方向の位置決めが高精度に行なわれている。トラックと磁気ヘッドとのトラック方向の位置ずれ(オフトラックと呼ばれている)がある限界を越えると、読み取りエラーが発生したり、ある程度のオフトラックの場合には、エラー発生の頻度が増加したりすることが知られている。そこで、このオフトラックをある程度の値に抑えることが重要となる。このオフトラックは、温度湿度などの環境条件に加えて、磁気記録装置本体85を固定する際に磁気記録装置本体85に加えられる外力によりベースプレート117が変形し、スピンドルモータ112が僅かに傾き、トラックが偏芯したり、VCM113との位置関係が僅かにずれたりすること等で発生する。
ベースプレート117の変形は、回路基板115への外力の印加によっても同様に発生する。つまり、コネクタ84に接続されるフラットケーブル10の幅方向のずれによる外力によっても発生する。
【0032】
しかし、スリットを設けた本発明の第1の実施形態のフラットケーブル10は、幅方向の可撓性が高いため、磁気記録装置本体85のベースプレート117を変形させずに、幅方向にずれたコネクタ84とコネクタ86とを接続することができる。
この点を磁気記録装置本体85のスピンドルモータ112の傾きに起因するトラックの偏芯を実測して確かめた。
【0033】
コネクタ84とコネクタ86とを幅方向に2mmずらし、スリットを持たない従来のフラットケーブル10でそれらを接続した場合には、磁気記録装置本体85のスピンドルモータ112の傾きによるトラックの偏芯は、トラックピッチの約40%であったが、本発明の第1の実施形態におけるフラットケーブル10を用いた場合には、約15%と十分小さな値とすることができた。
これにより、セクター毎のトラックフォローイングの回数を減らすことができる。
【0034】
また、スリットを設けて粘弾性体61を充填したフラットケーブル10は、制振性を有している。
この磁気記録装置に外部から振動が加わると、ケース80に印加された振動が磁気記録装置本体85及びI/F回路基板81に伝搬するが、磁気記録装置本体85とI/F回路基板81との質量が異なるので磁気記録装置本体85とI/F回路基板81との間で振動の位相差が発生する。フラットケーブル10は、この位相差に対して粘弾性体により制振することができ、磁気記録装置本体85における耐振特性を十分引き出すことができる。また、磁気記録装置本体85自身が発する振動についても低減することができ静音化を図ることができる。
【0035】
また、この実施形態のフラットケーブル10では、図3、図4に示すように、スリット60に隣接する配線用導体20の幅を、スリット60に隣接する部分でスリットに対応させて狭めている。磁気記録装置では、磁気記録装置本体85に対して、比較的電流容量の大きい電源供給と電流容量の小さい信号線との2系統の電気的接続が行われるが、電源供給用の導体には、配線用導体の幅が十分取れるように、スリット60に隣接していない配線用導体20の一または複数本を用いる。こうすることで給電における電圧降下を少なくすることができる。
一方、信号を伝送する信号線は、いずれの位置に配置した配線用導体20を用いても良い。
【0036】
このように、この磁気記録装置は、スリットを設けたフラットケーブルを用いることにより、コストの上昇を招来すること無く、高い信頼性を実現できる。
また、前述するように、スリットによりフラットケーブルの幅方向の可撓性が得られるので、接続する機器間に長手方向の位置ずれが有り、それらを接続するフラットケーブルに幅方向の変位が発生する場合でも、配線用導体へのストレスは少ない。そのため、従来の蛇腹構造では、折り曲げに伴い特に配線用導体に曲げ応力が加わり、常にその状態が維持されるため応力腐食などが発生する可能性があるが、本発明のフラットケーブルでは、応力腐食の発生の可能性を除くことができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0037】
また、このフラットケーブルは、粘弾性体により制振性を有しているため、振動により引き起こされる可能性がある、コネクタとフラットケーブルの端子部との間での微小磨耗(フレッチング)さえ防止できる。そのため、この磁気記録装置を、振動が常に印加される車などに搭載したり、携帯機器として構成した場合でも、高い信頼性を保つことができる。
【0038】
なお、ここでは、本発明のフラットケーブルを磁気記録装置に用いる場合について説明したが、このフラットケーブルは各種の装置に組込むことができ、また、その場合に、インターフェースの形態などは適宜変更することができる。
また、ここでは、フラットケーブルのスリットに隣接する配線用導体の幅をスリットに隣接する部分で狭める場合について説明したが、スリットを形成する配線用導体間の間隔を広げたり、スリットの幅を狭めたりして、スリットとそれに隣接する配線用導体との間に十分な距離を確保すれば、各配線用導体の幅を一定にすることもできる。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の平板状配線ケーブルは、配線用導体と直交する方向に高い可撓性を持つことができる。また、制振性能を有し、耐振動の向上を図ることができる。この平板状配線ケーブルは、工数やコストをそれ程増やさずに製作することができる。
【0040】
この平板状配線ケーブルを磁気記録装置に用いた場合には、この装置のエラー発生を減らし、信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるフラットケーブルの斜視図
【図2】本発明の第1の実施形態におけるフラットケーブルを撓ませて更に幅方向に変位させた状態を示す斜視図
【図3】本発明の第1の実施形態におけるフラットケーブルの上側の絶縁フィルムを除いた状態を示す斜視図
【図4】本発明の第1の実施形態におけるフラットケーブルのスリット周辺を拡大して示す斜視図
【図5】各種フラットケーブルを幅方向に撓ませたときの変位量と荷重との特性を示す図
【図6】図5の特性の測定方法を説明する図
【図7】本発明の第2の実施形態における磁気記録装置本体の要部平面図
【図8】本発明の第2の実施形態における磁気記録装置を示す要部斜視図
【図9】従来のフラットケーブルを示す図
【符号の説明】
1 フラットケーブル
5、53 蛇腹構造
10 フラットケーブル
20 配線用導体
30 下側の絶縁フィルム
40 上側の絶縁フィルム
60 スリット
61 粘弾性体
62 端子部
70 フラットケーブルの幅方向
80 筐体
81 I/F回路基板
82 USBコネクタ
83 ネジ
84 コネクタ
85 磁気記録装置本体
86 コネクタ
100 分割された短い幅フラットケーブル
109 磁気記録媒体
112 スピンドルモータ
113 VCM
114 磁気ヘッド
115 回路基板
117 ベースプレート
【発明が属する技術分野】
本発明は、フラットケーブルと呼ばれる平板状配線ケーブルと、それを用いた磁気記録装置に関し、特に、フラットケーブルを撓み易くしたものである。
【0002】
【従来の技術】
平板状配線ケーブル(通称フラットケーブル)は、いわゆる電気銅の薄板を所要の幅に切断して配線用導体を形成した後、この配線用導体の複数本を平面状に配置し、その周囲をポリエチレンテレフタレートなどの可撓性を有する熱可塑性樹脂で被覆して構成している。平板状配線には、その他に、圧延や電解銅による銅箔を柔軟な基板上に形成し、エッチングで導体部分のみを残すフレキシブル配線基板も知られているが、フラットケーブルは、フレキシブル配線基板と比較して安価であるため、電子機器などの配線に多用されている。
【0003】
しかし、可撓性に関しては、フラットケーブルよりもフレキシブル配線基板の方が高い。フラットケーブルでは、その厚み方向の可撓性は良いが、幅方向に対する可撓性が低い。そのため、複数の機器のコネクタ間をフラットケーブルで接続する場合には、各機器のコネクタがフラットケーブルの幅方向に位置ずれしていると、コネクタ間を接続するフラットケーブルが幅方向に撓み、各機器や、基板及びフラットケーブル自身の配線用導体にストレスが加わることが知られている。
【0004】
こうした欠点を改良するため、特開平6−36620号公報には、図9(a)、(b)に示すように、フラットケーブル1に複数の折り曲げによる蛇腹構造5、53を設け、フラットケーブル1の幅方向への可撓性を高めることが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この従来技術のようにフラットケーブルを複数回折り曲げて蛇腹構造を設けることは、折り曲げに関わる工数の増加や、フラットケーブル自体の長さが、接続する部分の距離に比べて、折り曲げに関わる分だけ長くなるため、コストが上昇するという問題点があった。
【0006】
また、折り曲げに伴い、特に配線用導体に常に曲げ応力が加わったままの状態となるため、応力腐食などが発生する可能性があり、信頼性向上を阻害する原因となっていた。
また、フラットケーブルは、車などに搭載された機器の電気接続や携帯機器等にも使用されるため、接続する機器への振動伝搬を抑える制振性が求められている。
【0007】
本発明は、こうした従来の課題を解決するものであり、幅方向への高い可撓性と制振性とを備えるとともに、信頼性が高く、製造が容易である平板状配線ケーブルを提供し、また、それを用いた磁気記録装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、平板状配線ケーブルを、平面状に、且つ、並行に配置された複数の配線用導体と、この複数の配線用導体の周囲を覆う可撓性絶縁体と、可撓性絶縁体の配線用導体間の一部を貫通し、配線用導体に沿って並行する方向へ延びるスリットと、このスリットに充填された粘弾性体とで構成している。
【0009】
この構成により、平板状配線ケーブルのスリットと直交する方向(幅方向)の可撓性が高まり、また、スリットに充填した粘弾性体により制振性が向上する。この平板状配線ケーブルは、従来の蛇腹構造を必要としないので、コストの上昇や信頼性の低下を招かない。
【0010】
また、本発明の磁気記録装置は、この平板状配線ケーブルを用いて、インターフェース信号を変換する回路基板と磁気記録装置本体とを接続している。
この構成により、磁気記録装置本体と回路基板との位置ずれに起因してそれらを接続する平板状配線ケーブルに幅方向の変位が生じた場合でも、平板状配線ケーブルの幅方向の高い可撓性により、磁気記録装置のトラック方向のズレが回避できる。また、制振性が高いため、この磁気記録装置を車などに搭載したり、携帯用とした場合でも高い信頼性を保つことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態では、平板状配線ケーブルについて説明する。
この平板状配線ケーブル(即ち、フラットケーブル)は、図1に示すように、複数本の配線用導体20と、この配線用導体20をサンドイッチする下側の絶縁フィルム30及び上側の絶縁フィルム40と、上下の絶縁フィルム30、40を貫通する複数本のスリット60と、このスリット60に充填された粘弾性体61とを備えている。
【0012】
下側の絶縁フィルム30及び上側の絶縁フィルム40は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)などの可撓性を有する熱可塑性樹脂から成る。フィルムの厚さは、この実施形態では上下とも0.025mmとしている。
配線用導体20は、平角の軟銅線などの薄板に錫等のめっきを施した後、所要の幅及び長さに切断して構成する。この実施形態では厚さ0.025mm、幅0.3mmとしている。板厚は、使用する電流容量や、厚み方向の可撓性などを考慮して適宜決定する。
【0013】
この配線用導体20の複数本を等間隔に配置し、下側の絶縁フィルム30と上側の絶縁フィルム40とを熱溶着(ラミネート)して、各配線用導体20を電気的に絶縁する。配線用導体20のピッチは、この実施形態では0.5mmとしている。
【0014】
スリット60は、上下の絶縁フィルム30、40を貫通し、また、フラットケーブル10の長手方向の端にまで到達しないように配置している。また、スリット60は、その複数本をフラットケーブル10の幅方向に等間隔に配置している。ここでは、4本のスリット60を配置している。これらのスリット60には、粘弾性体61を充填している。この粘弾性体61には、ブチル系ゴムやシリコンゴム系、高減衰ゴム系のもの、または、ソルボセイン(登録商標:三進興産(株))、αゲル(登録商標:(株)ジェルテック)、ポリスチレンのゲル化したものなどを用いることができる。
【0015】
フラットケーブル10の長手方向の両端は、配線用導体20を露出させて端子部62を形成する。この端子部62は、回路基板などに設けられた電気接続用のランドやコネクタに接続する。なお、半田などを用いて接続する場合には、端子部62の配線用導体20が完全に露出するように上下の絶縁フィルム30、40を除去することが望ましい。また、コネクタを用いて接続する場合には、図1のように、端子部62の配線用導体20の露出する面と反対側の絶縁フィルム30を残し、この絶縁フィルム30の裏面に適当な厚さのフィルム(PET)を貼り合わせて(裏打ちして)、端子部62の断面形状をコネクタの挿入口などに適合させることが望ましい。
このフラットケーブル10は、端子部62を介して機器と電気接続し、配線用導体20により、電気信号の伝送や電源供給などを行う。
【0016】
図3は、このフラットケーブル10の上側の絶縁フィルム40を除いた状態を示し、また、図4は、図3のスリット60の周辺を拡大して示している。スリット60に隣接する配線用導体20の幅は、スリット60に隣接する部分において、スリット60に対応させて狭めている。
このフラットケーブル10は、配線用導体20を下側の絶縁フィルム30及び上側の絶縁フィルム40でラミネートした後、スリット60を打ち抜きなどで形成し、このスリット60に粘弾性体61を充填して製造する。
【0017】
なお、予め、上下の絶縁フィルム30、40にスリット60を形成し、これらのフィルムを用いて配線用導体20をラミネートするようにしても良い。この場合には、スリットが形成された絶縁フィルム30、40を用いて、工程を追加することなしにスリット入りのフラットケーブルを作成することができる。
また、スリット60の部分に粘弾性体61を充填する工程は、フラットケーブル10が完成した後に行う方が作業は楽であるが、フラットケーブル10の製造工程中に粘弾性体61の充填工程を適宜組み入れることも可能である。
【0018】
次に、このフラットケーブル10の可撓性について説明する。図2は、フラットケーブル10をその厚み方向に曲げるとともに、その幅方向(矢印70で示す方向)に変位させた状態を示している。
フラットケーブル10は、単純な曲げ応力のみを印加して、その厚み方向のみに屈曲させる場合には、簡単に撓ませることができる。しかし、さらにその幅方向(矢印70)への変位が加えられた場合は、あたかも幅方向の長さ(w0)が撓みに抵抗する厚さとして作用し、剛性が増大する。これは、矩形断面形状を有する梁に対して、変位(幅方向のずれ)を与える力を加える場合と同等である。そのため、その変位には非常に大きな力が必要となる。
【0019】
一般に、撓みに関する厚さの影響は、その3乗に反比例することが知られている。つまり、同じ変位を与えるには厚さの3乗に相当する力が必要になる。しかし、図1、図2に示すように、フラットケーブル10がスリット60により幅方向に分割(図2では5分割)されていると、フラットケーブル10の変位が、分割された短い幅(w1)の5つのフラットケーブル100に分散されるため、フラットケーブル10の幅方向の変位に対する剛性が小さくなる。
【0020】
即ち、フラットケーブル10の変位は、分割された短い幅(w1)の5つのフラットケーブル100の変位を合わせたものとなり、幅w1のフラットケーブル100の各々は、全体の変位の1/5の変位を受けることとなる。その変位を幅w1のフラットケーブル100に与える力はw1の3乗に相当する力で足りる。従って、その5倍がフラットケーブル10に変位を与えるための必要な力となるが、これは、分割されていない幅w0のフラットケーブル10に同じ変位を与えるための力、即ち、w0の3乗、に比べて遥かに小さい。
【0021】
具体的に数値で示すと、いま、分割した幅w1を横に変位させるときに必要な力をa(gf)とした場合、スリットで分割したフラットケーブル10は5×a(gf)の力で変位させることができる。一方、スリットの無いフラットケーブルにおいては、幅がw0(>5×w1)であるため、53×a(gf)以上の力が必要となり、スリットで分割したフラットケーブル10に比べて25倍以上の力が必要となる。
【0022】
この変形の際、分割された幅の短いフラットケーブル100同士は、厚さ方向に重なり合うように変形する。これは、隣接する幅の短いフラットケーブル100同士の変形状態が、スリット60により、連続しなくても良くなったためである。
なお、粘弾性体61は、その剛性がフラットケーブル10に比べて低いので、スリット60による柔軟性を阻害することはない。
【0023】
また、スリット60はフラットケーブルの端子部62にまで伸びていないため、フラットケーブル10を幅方向に変形したときでも、端子部62における変形は防止でき、配線用導体20のピッチずれなどは生じない。従って、フラットケーブル10を機器に接続する時に、半田付けやコネクタ挿入などの作業性を損なう虞れは無い。また、コネクタによる接続では、コンタクト部分の変形が無いので接触不良を起こす虞れもない。
【0024】
図5は、図6に示すように、各種フラットケーブルを一定の曲率半径で曲げた後、幅方向(矢印の方向)に撓ませたときの変位量とその荷重との関係を示している。横軸には幅方向の変位量を取り、縦軸にはその荷重を取っている。図5において、従来例の関係線6はスリットを持たないフラットケーブルの特性を示し、本発明の関係線7はスリットを持つフラットケーブルの特性を示し、本発明の関係線8は、スリット数を本発明の関係線7の2倍にした場合の特性を示している。
【0025】
このグラフから明らかなように、フラットケーブルにスリットを設けることにより、少ない荷重でフラットケーブルを幅方向に変位させることが可能になり、幅方向の可撓性が増大する。そして、この可撓性は、スリットの本数を増やす程、向上する。
このように、この実施形態のフラットケーブルでは、スリットを設けてフラットケーブルの幅方向(スリットと直交する方向)の可撓性を高めているため、機器に接続する際に、フラットケーブルを幅方向にずらす必要が生じた場合でも、少ない力で幅方向に変位させることができ、機器や配線基板、あるいはフラットケーブル自身の配線用導体に加わるストレスを減らすことができる。
【0026】
スリットで可撓性を高める構造は、従来の蛇腹構造に比べて、工数とコストとを削減できるため、平板状配線ケーブルを安価に製造できる。また、スリットに粘弾性体を充填することにより制振性の向上を図ることができる。
また、スリットをフラットケーブルにほぼ等間隔に配置することにより、スリットと直交する方向の可撓性を、幅方向の位置によらずに均等に設定することができ、部分的なストレスの増加を防止できる。それによりフラットケーブルの使い勝手及び接続に関わる作業性の向上を図ることができる。
【0027】
また、この実施形態のフラットケーブルでは、スリットに隣接する配線用導体の幅を、スリットに隣接する部分で、スリットに対応させて狭めているため、スリットと配線用導体との間に所定の間隔を空けることができる。そのため、配線用導体を上側及び下側の絶縁フィルムでラミネートした後、スリットを打ち抜き加工する場合にも、スリットの位置ずれに対してより許容寸法が拡大できる。また、予め、上側及び下側の絶縁フィルムにスリットを設け、この絶縁フィルムで配線用導体をラミネートしてフラットケーブルを作る場合でも、同様に許容寸法が拡大できる。この許容寸法の拡大は、作業性を高め、歩留りの低下を抑えることができる。
また、この構成により、配線用導体と絶縁フィルムとの沿面距離を、スリットに隣接する部分でも、スリットのない部分と同等に保つことができ、絶縁耐圧などの低下を防ぐことができる。
【0028】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態の平板状配線ケーブルを用いた磁気記録装置について説明する。
この磁気記録装置は、図8に示すように、樹脂製の筐体80内に装着された磁気記録装置本体85と、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)用コネクタ82と、インターフェース信号を変換するI/F回路基板81と、磁気記録装置本体85のコネクタ84とI/F回路基板81とを接続するフラットケーブル10とを備えている。(なお、図8は、フラットケーブル10を磁気記録装置本体85のコネクタ84に接続する前の状態を示している。)
フラットケーブル10は、磁気記録装置本体85の回路基板に設けられたコネクタ84と、I/F回路基板81に設けられたコネクタ86との間の電気信号の授受や、電源の供給を行う。この実施形態の装置では、コネクタ84、86として、0.5mmピッチの20芯を具備し、フラットケーブル10の挿抜時にスライダーでコンタクト部分に対する押し付け/開放ができる通称ジフタイプと呼ばれる形態のものを用いている。
また、I/F回路基板81は、ネジ83で筐体80に取り付けており、磁気記録装置本体85は、筐体80に設けたフック(図示せず)で筐体80に取り付けている。
【0029】
また、磁気記録装置本体85は、図7に示すように(図7では、密閉するためのカバーを除き、回路の一部が露呈するようにシャーシの一部を切り欠いている)、アルミ製のベースプレート117と、電気部品を実装した回路基板115(一部のみ表示)と、磁気記録媒体109と、磁気記録媒体109を回転駆動するスピンドルモータ112と、データなどを記録再生する磁気ヘッド114と、磁気ヘッド114を所要のトラックに移動するVCM(voice coil motor)113とを備えており、回路基板115、スピンドルモータ112、VCM113などがベースプレート117に取り付けられている。
【0030】
この装置では、磁気記録装置本体85とI/F回路基板81との取り付け精度により、コネクタ84とコネクタ86とがフラットケーブル10の幅方向(図中の矢印に示す方向)に最大約2mmほどずれることが有り得る。
【0031】
ところで、磁気記録装置本体85では、セクターサーボにより、トラックと磁気ヘッドとのトラック方向の位置決めが高精度に行なわれている。トラックと磁気ヘッドとのトラック方向の位置ずれ(オフトラックと呼ばれている)がある限界を越えると、読み取りエラーが発生したり、ある程度のオフトラックの場合には、エラー発生の頻度が増加したりすることが知られている。そこで、このオフトラックをある程度の値に抑えることが重要となる。このオフトラックは、温度湿度などの環境条件に加えて、磁気記録装置本体85を固定する際に磁気記録装置本体85に加えられる外力によりベースプレート117が変形し、スピンドルモータ112が僅かに傾き、トラックが偏芯したり、VCM113との位置関係が僅かにずれたりすること等で発生する。
ベースプレート117の変形は、回路基板115への外力の印加によっても同様に発生する。つまり、コネクタ84に接続されるフラットケーブル10の幅方向のずれによる外力によっても発生する。
【0032】
しかし、スリットを設けた本発明の第1の実施形態のフラットケーブル10は、幅方向の可撓性が高いため、磁気記録装置本体85のベースプレート117を変形させずに、幅方向にずれたコネクタ84とコネクタ86とを接続することができる。
この点を磁気記録装置本体85のスピンドルモータ112の傾きに起因するトラックの偏芯を実測して確かめた。
【0033】
コネクタ84とコネクタ86とを幅方向に2mmずらし、スリットを持たない従来のフラットケーブル10でそれらを接続した場合には、磁気記録装置本体85のスピンドルモータ112の傾きによるトラックの偏芯は、トラックピッチの約40%であったが、本発明の第1の実施形態におけるフラットケーブル10を用いた場合には、約15%と十分小さな値とすることができた。
これにより、セクター毎のトラックフォローイングの回数を減らすことができる。
【0034】
また、スリットを設けて粘弾性体61を充填したフラットケーブル10は、制振性を有している。
この磁気記録装置に外部から振動が加わると、ケース80に印加された振動が磁気記録装置本体85及びI/F回路基板81に伝搬するが、磁気記録装置本体85とI/F回路基板81との質量が異なるので磁気記録装置本体85とI/F回路基板81との間で振動の位相差が発生する。フラットケーブル10は、この位相差に対して粘弾性体により制振することができ、磁気記録装置本体85における耐振特性を十分引き出すことができる。また、磁気記録装置本体85自身が発する振動についても低減することができ静音化を図ることができる。
【0035】
また、この実施形態のフラットケーブル10では、図3、図4に示すように、スリット60に隣接する配線用導体20の幅を、スリット60に隣接する部分でスリットに対応させて狭めている。磁気記録装置では、磁気記録装置本体85に対して、比較的電流容量の大きい電源供給と電流容量の小さい信号線との2系統の電気的接続が行われるが、電源供給用の導体には、配線用導体の幅が十分取れるように、スリット60に隣接していない配線用導体20の一または複数本を用いる。こうすることで給電における電圧降下を少なくすることができる。
一方、信号を伝送する信号線は、いずれの位置に配置した配線用導体20を用いても良い。
【0036】
このように、この磁気記録装置は、スリットを設けたフラットケーブルを用いることにより、コストの上昇を招来すること無く、高い信頼性を実現できる。
また、前述するように、スリットによりフラットケーブルの幅方向の可撓性が得られるので、接続する機器間に長手方向の位置ずれが有り、それらを接続するフラットケーブルに幅方向の変位が発生する場合でも、配線用導体へのストレスは少ない。そのため、従来の蛇腹構造では、折り曲げに伴い特に配線用導体に曲げ応力が加わり、常にその状態が維持されるため応力腐食などが発生する可能性があるが、本発明のフラットケーブルでは、応力腐食の発生の可能性を除くことができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0037】
また、このフラットケーブルは、粘弾性体により制振性を有しているため、振動により引き起こされる可能性がある、コネクタとフラットケーブルの端子部との間での微小磨耗(フレッチング)さえ防止できる。そのため、この磁気記録装置を、振動が常に印加される車などに搭載したり、携帯機器として構成した場合でも、高い信頼性を保つことができる。
【0038】
なお、ここでは、本発明のフラットケーブルを磁気記録装置に用いる場合について説明したが、このフラットケーブルは各種の装置に組込むことができ、また、その場合に、インターフェースの形態などは適宜変更することができる。
また、ここでは、フラットケーブルのスリットに隣接する配線用導体の幅をスリットに隣接する部分で狭める場合について説明したが、スリットを形成する配線用導体間の間隔を広げたり、スリットの幅を狭めたりして、スリットとそれに隣接する配線用導体との間に十分な距離を確保すれば、各配線用導体の幅を一定にすることもできる。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の平板状配線ケーブルは、配線用導体と直交する方向に高い可撓性を持つことができる。また、制振性能を有し、耐振動の向上を図ることができる。この平板状配線ケーブルは、工数やコストをそれ程増やさずに製作することができる。
【0040】
この平板状配線ケーブルを磁気記録装置に用いた場合には、この装置のエラー発生を減らし、信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるフラットケーブルの斜視図
【図2】本発明の第1の実施形態におけるフラットケーブルを撓ませて更に幅方向に変位させた状態を示す斜視図
【図3】本発明の第1の実施形態におけるフラットケーブルの上側の絶縁フィルムを除いた状態を示す斜視図
【図4】本発明の第1の実施形態におけるフラットケーブルのスリット周辺を拡大して示す斜視図
【図5】各種フラットケーブルを幅方向に撓ませたときの変位量と荷重との特性を示す図
【図6】図5の特性の測定方法を説明する図
【図7】本発明の第2の実施形態における磁気記録装置本体の要部平面図
【図8】本発明の第2の実施形態における磁気記録装置を示す要部斜視図
【図9】従来のフラットケーブルを示す図
【符号の説明】
1 フラットケーブル
5、53 蛇腹構造
10 フラットケーブル
20 配線用導体
30 下側の絶縁フィルム
40 上側の絶縁フィルム
60 スリット
61 粘弾性体
62 端子部
70 フラットケーブルの幅方向
80 筐体
81 I/F回路基板
82 USBコネクタ
83 ネジ
84 コネクタ
85 磁気記録装置本体
86 コネクタ
100 分割された短い幅フラットケーブル
109 磁気記録媒体
112 スピンドルモータ
113 VCM
114 磁気ヘッド
115 回路基板
117 ベースプレート
Claims (6)
- 平面状に、且つ、並行に配置された複数の配線用導体と、前記複数の配線用導体の周囲を覆う可撓性絶縁体と、前記可撓性絶縁体の前記配線用導体間の一部を貫通し、前記配線用導体に沿って並行する方向へ延びるスリットと、前記スリットに充填された粘弾性体とを備えることを特徴とする平板状配線ケーブル。
- 前記スリットが、等間隔に複数本配置されていることを特徴とする請求項1に記載の平板状配線ケーブル。
- 前記スリットに隣接する前記配線用導体は、前記スリットとの間隔が拡がるように前記スリットに隣接する部分の幅が前記スリットに隣接していない部分の幅より狭く設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の平板状配線ケーブル。
- 前記スリットに隣接していない前記配線用導体を給電用に用いることを特徴とする請求項3に記載の平板状配線ケーブル。
- 前記可撓性絶縁体は、予め前記スリットが設けられた、前記配線用導体を挟む二枚の絶縁フィルムから成り、前記絶縁フィルムをラミネートして前記可撓性絶縁体が構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の平板状配線ケーブル。
- 請求項1から請求項5までのいずれかに記載の平板状配線ケーブルが、インターフェース信号を変換する回路基板と磁気記録装置本体とを接続していることを特徴とする磁気記録装置。
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