JP2004039477A - 自動車用軽量導体 - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量・環境リサイクル性を向上できると共に、安価に製造することができる自動車用軽量導体を提供する。
【解決手段】芯材の外周に銅または銅合金の被覆層を形成した自動車用軽量導体である。芯材は、質量%で、Mg≦1.5%、Cr+Si+Mn+Cu+Fe≦1.0%以下を含み、残部がアルミニウムからなるアルミニウム合金で構成される。被覆層の断面積が軽量導体の断面積に対して占める比率が3%以上20%以下である。芯材の添加元素量の限定と銅または銅合金被覆層の面積比を限定することで、伸線性と導電性に優れたCu/Al複合線を得ることができる。
【選択図】 なし
【解決手段】芯材の外周に銅または銅合金の被覆層を形成した自動車用軽量導体である。芯材は、質量%で、Mg≦1.5%、Cr+Si+Mn+Cu+Fe≦1.0%以下を含み、残部がアルミニウムからなるアルミニウム合金で構成される。被覆層の断面積が軽量導体の断面積に対して占める比率が3%以上20%以下である。芯材の添加元素量の限定と銅または銅合金被覆層の面積比を限定することで、伸線性と導電性に優れたCu/Al複合線を得ることができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はガソリン・ディーゼル自動車や電気自動車(EV)等の内部配線導体(ワイヤーハーネス)として最適な自動車用軽量導体に関するものである。特に、軽量化と環境リサイクル性に優れた銅または銅合金被覆アルミニウム導体(Cu/Al複合線)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化に代表される環境問題がクローズアップされ、より低熱費化を進めるべく、車両の軽量化が叫ばれている。又、最近では自動車のリサイクルから、廃車解体後に鉄スクラップとして再利用するには、いかに異物として混入する銅を少なくするかが検討されている。
【0003】
自動車電装用ワイヤーハーネスは、エレクトロニクス化の進歩のもと益々多岐にわたる回路が増え、一般的なもので重量が約25kg/台となり、重量比で、その60%が電線、15%が保護材、10%がコネクター類で構成されている。この60%を占める電線は、一般に、図3のように0.32mmや0.26mmの銅線20を7本よりあわせて撚り線とし、撚り線の上に塩化ビニル21を被覆して構成される。近年、この電線の軽量化のため、より細い(断面積0.5sq→0.3sq)電線の採用や、図4に示すように、撚り線をダイスに通した圧縮導体30上に塩化ビニル31の被覆を施したものが採用されている。
【0004】
さらに、電気自動車の開発と共に、より軽量化のため、銅より軽いアルミニウムを使用したアルミ電線も実用化しつつある。しかし、アルミ電線ではアルミニウムとニッケルや錫メッキされた金属端子との接触抵抗が従来銅線に比べて高くなる問題があるため、アルミニウムの芯材表層に銅をクラッドして2層構造にしたCu/Al複合線が提案されている(特開平4−230905号公報)。その他、自動車用ではないが、CATV用やボイスコイル用に用いたCu/Al複合線(特開平11−57848号公報)もある。又、電子機器のコイル部品用として、アルミニウム導体に電気銅めっきしたリボン線(特開2000−113730号公報)や、銅被覆アルミニウム線(特開2001−271198号公報)がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の従来技術では、次のような問題があった。
特開平4−230905号公報のCu/Al複合線は、より細くするまでの伸線加工性と銅被覆層の破れによるアルミ芯の露出を防止するべく、銅被覆率を20〜40%にしたり、アルミニウムの成分中の添加元素量を上げることで、伸線性を向上させている。しかし、アルミニウム中の添加物を増やすことで導電率が低下し、より太い線径に設計変更してかえって軽量化を阻害したりする。
【0006】
また、特開平11−57848号公報に記載の技術では、より高度な製造管理技術が要求される。すなわち、2種の金属を接合させ、かつ伸線性に害を及ぼすCuとAlのもろい金属間化合物を生成させない様な特殊な熱処理も必要となる。そのため、非常にコスト高になったり、伸線中に断線して大単重を実現することができず、実用化は大きく遅れているのが実状である。
【0007】
さらに、特開2000−113730号公報や特開2001−271198号公報記載の技術では、1.0mm以下のサイズのアルミ芯へ亜鉛置換法で細かく銅メッキ層をコントロールすることで、銅被覆層の破れによるアルミ芯露出の問題解決を試みている。しかし、アルミ芯のサイズが細いため生産性が悪く、生産性を上げるために多本がけの設備とすれば設備コストがかさむなど、コスト面での課題があった。
【0008】
従って、本発明の主目的は、軽量・環境リサイクル性を向上できると共に、安価に製造することができる自動車用軽量導体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、Cu/Al複合線について種々の実験と評価を行い、Cu/Al複合線の伸線性と導電率を考慮した結果、芯材の添加物量を限定し、芯材と被覆層との断面積比を規定することで上記の目的を達成する。
【0010】
すなわち、本発明自動車用軽量導体は、芯材の外周に銅または銅合金の被覆層を形成した自動車用軽量導体であって、前記芯材は、質量%で、Mg≦1.5%、Cr+Si+Mn+Cu+Fe≦1.0%以下を含み、残部がアルミニウムからなるアルミニウム合金で構成され、前記被覆層の断面積が軽量導体の断面積に対して占める比率が3%以上20%以下であることを特徴とする。
【0011】
このように、芯材の添加元素量の限定と銅または銅合金被覆層の面積比を限定することで、伸線性と導電性に優れたCu/Al複合線を得ることができる。従って、従来アルミ線で問題となっていたアルミ線と端子との接触抵抗の増加、つまり高温多湿の状態でアルミ表面の酸化膜(アルミナ)が接触抵抗を上げることを改善できる。また、適切な添加元素をアルミ合金の芯材に含有させることで、伸線時の断線を抑制して、大単重の自動車用導体を得ることができる。
【0012】
ここで、伸線性を上げるには、公知例のように芯材に添加元素を添加するのが望ましいが、導電性との兼ね合いから、最大でMgは1.5%とし、Cr+Si+Mn+Cu+Feは最大で1.0%までとする。これにより、銅線と同様に、細径にいたるまでの途中の断線率が極めて少ない伸線性を実現でき、かつ導電率の低下を防止することができる。
【0013】
また、導体断面積における被覆層の面積比を3%以上とすることで、銅被覆層の破れによるアルミ芯露出の問題を解消すると共に、同面積比を20%以下とすることで、リサイクル時に異物となる銅の含有量を低下し、銅以外の材料のリサイクルを容易にすることができる。例えば、自動車のドア部を鉄スクラップにしたとき、銅成分は電線導体における20%以下とすることが好適である。そして、被覆層の断面比率を大きくすれば導電性は上がるが、比重が増加し、被覆層厚に伴うコストアップが問題になるため、被覆層の面積比率を20%以下とした。より好ましい上記面積比は5%以上15%以下である。
【0014】
被覆層はクラッド法ではなく、電気メッキ法によって形成することが好適である。電気メッキ法により被覆層を形成することにより、クラッド法などで必要とされた途中の熱処理をなくすことができる。従来の銅線と同じ単重(約2t程度を断線無く伸線可能)分の伸線性を考えると、異種の金属を結合し、熱拡散させて金属結合するクラッド法では、途中段階の熱処理が300℃を越えると界面に脆い金属間化合物が形成され、伸線中に断線する問題が出てくる。そこで、電気メッキ法により面積比5%〜20%の銅または銅合金層を形成することで、熱処理がなくても細く伸線でき、材料の軟化による金属間化合物の問題がなくなり、銅/アルミ界面の密着不良の問題がなくすことができる。
【0015】
途中一度も軟化熱処理をせずに伸線加工できる芯材のサイズは、2.3mm以上6.0mm以下である。このサイズの芯材を用いれば断線することなく伸線を行うことができ、自動車用ワイヤーハーネスとして好適なCu/Al複合線を提供することができる。
【0016】
さらに、本発明自動車用軽量導体は、比重が4.0以下であり、導電率が58%以上であることが望ましい。この比重と導電率を具える導体とすることで、導体自体、ひいてはワイヤーハーネスの軽量化を実現し、さらに導体として十分な導電性を確保することができる。なお、銅の比重は8.9、アルミニウムは2.7であり、両者の断面積比を適切に調整することで上記の比重を実現できる。
【0017】
現在、車体側から求められているワイヤーハーネスの導電率を考えると、58%以上が求められる。導電率が55%以下さらに50%にもなると、結局電線導体の体積を導電率の低下分上げる必要があり、導体軽量化に寄与しない。従って、導電率は58%以上望ましくは70%以上、比重は4.0以下、望ましくは3.5以下が最適である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1はCu/Al複合線の製造ラインである。供給部1よりアルミニウム芯材100が線径で2.6mm〜5.0mmで供給され、前処理装置部2を通過しながら溶剤脱脂、弱アルカリ脱脂、酸脱脂後、下地処理装置3に入る。その後、ストライクメッキ槽4で銅ストライクメッキされてから本メッキ槽5で本メッキされ、巻取り部6に巻き取られる。以上の工程より、アルミニウム芯材100の上に銅被覆層200が形成されたCu/Al複合線を得ることができる。重要なのは、この下地処理装置3で、電気メッキの下地処理として、置換法、陽極酸化法、直接法(機械的、化学的粗面化法)等の下地処理を行う。
【0019】
その後、巻き取られたCu/Al複合線を0.32mm,0.26mmまで伸線し、7本撚り後塩化ビニルを被覆して、導体断面積0.5sq,0.3sqの電線とする。さらに、この電線を定尺切断し、その先端を皮むきして金属端子を圧着させて、ハウジング中にその端子を挿入し、約200本の束からなるサブアッシーを束ねた上に保護材を被せ、ワイヤーハーネスを作製した。
【0020】
比較のため、従来のクラッド法で作製した銅被覆アルミニウム線材の他、銅線およびアルミニウム線も用意して同様のワイヤーハーネスを作製した。
【0021】
そして、得られたCu/Al複合線の伸線加工性ならびにワイヤーハーネスの軽量化・環境リサイクル性の評価を行った。伸線加工性の評価は、約2t程度の単重分を断線無く伸線できれば○、できなければ×で示している。また、軽量性はCu/Al複合線の比重が4.0以下のものを○、4.0超4.5未満のものを△、4.5以上のものを×とした。さらに、環境リサイクル性は、銅面積比が20%以下のものを○、20%超25%以下のものを△、25%超のものを×とした。表1に芯材の化学成分、銅被覆の形成方法、Cu/Al複合線の導電率、比重と共に、伸線加工性、軽量性、環境リサイクル性の評価結果を示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1から明らかなように、電気メッキにより被覆した試料1〜7は銅線やアルミ線と同様の伸線加工性を具えていることがわかる。中でも、銅面積比が低く、導電率が高く、比重の小さい試料1〜4は伸線加工性、軽量性、環境リサイクル性のいずれも好結果であることがわかる。一方、Mgの添加量が多い試料6およびMg以外の添加元素量が多い試料7は導電率が低いことがわかる。さらに、銅面積比の大きい試料5、9は比重が大きかったり、環境リサイクル性に劣ることがわかる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明自動車用軽量導体は、芯材の添加元素量の限定と銅または銅合金被覆層の面積比を限定することで、伸線性と導電性に優れたCu/Al複合線とすることができる。従って、一般の自動車ハーネス用以外に、例えば電気自動車用バッテリーケーブル、同軸ケーブルや電磁シールド用編組線に加え、モーター用マグネットワイヤーなどに用いることができる。そして、車両廃却後のリサイクルに役立つことなど、極めて環境に優しい複合線であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明自動車用軽量導体の製造ラインを示す説明図である。
【図2】本発明導体の断面図である。
【図3】従来の絶縁被覆銅導体の断面図である。
【図4】圧縮導体を用いた従来の絶縁被覆銅導体の断面図である。
【符号の説明】
1 供給部
2 前処理装置部
3 下地処理装置
4 ストライクメッキ槽
5 本メッキ槽
6 巻き取り部
20 銅線
21 塩化ビニル
30 圧縮導体
31 塩化ビニル
100 アルミニウム芯材
200 銅被覆層
【発明の属する技術分野】
本発明はガソリン・ディーゼル自動車や電気自動車(EV)等の内部配線導体(ワイヤーハーネス)として最適な自動車用軽量導体に関するものである。特に、軽量化と環境リサイクル性に優れた銅または銅合金被覆アルミニウム導体(Cu/Al複合線)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化に代表される環境問題がクローズアップされ、より低熱費化を進めるべく、車両の軽量化が叫ばれている。又、最近では自動車のリサイクルから、廃車解体後に鉄スクラップとして再利用するには、いかに異物として混入する銅を少なくするかが検討されている。
【0003】
自動車電装用ワイヤーハーネスは、エレクトロニクス化の進歩のもと益々多岐にわたる回路が増え、一般的なもので重量が約25kg/台となり、重量比で、その60%が電線、15%が保護材、10%がコネクター類で構成されている。この60%を占める電線は、一般に、図3のように0.32mmや0.26mmの銅線20を7本よりあわせて撚り線とし、撚り線の上に塩化ビニル21を被覆して構成される。近年、この電線の軽量化のため、より細い(断面積0.5sq→0.3sq)電線の採用や、図4に示すように、撚り線をダイスに通した圧縮導体30上に塩化ビニル31の被覆を施したものが採用されている。
【0004】
さらに、電気自動車の開発と共に、より軽量化のため、銅より軽いアルミニウムを使用したアルミ電線も実用化しつつある。しかし、アルミ電線ではアルミニウムとニッケルや錫メッキされた金属端子との接触抵抗が従来銅線に比べて高くなる問題があるため、アルミニウムの芯材表層に銅をクラッドして2層構造にしたCu/Al複合線が提案されている(特開平4−230905号公報)。その他、自動車用ではないが、CATV用やボイスコイル用に用いたCu/Al複合線(特開平11−57848号公報)もある。又、電子機器のコイル部品用として、アルミニウム導体に電気銅めっきしたリボン線(特開2000−113730号公報)や、銅被覆アルミニウム線(特開2001−271198号公報)がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の従来技術では、次のような問題があった。
特開平4−230905号公報のCu/Al複合線は、より細くするまでの伸線加工性と銅被覆層の破れによるアルミ芯の露出を防止するべく、銅被覆率を20〜40%にしたり、アルミニウムの成分中の添加元素量を上げることで、伸線性を向上させている。しかし、アルミニウム中の添加物を増やすことで導電率が低下し、より太い線径に設計変更してかえって軽量化を阻害したりする。
【0006】
また、特開平11−57848号公報に記載の技術では、より高度な製造管理技術が要求される。すなわち、2種の金属を接合させ、かつ伸線性に害を及ぼすCuとAlのもろい金属間化合物を生成させない様な特殊な熱処理も必要となる。そのため、非常にコスト高になったり、伸線中に断線して大単重を実現することができず、実用化は大きく遅れているのが実状である。
【0007】
さらに、特開2000−113730号公報や特開2001−271198号公報記載の技術では、1.0mm以下のサイズのアルミ芯へ亜鉛置換法で細かく銅メッキ層をコントロールすることで、銅被覆層の破れによるアルミ芯露出の問題解決を試みている。しかし、アルミ芯のサイズが細いため生産性が悪く、生産性を上げるために多本がけの設備とすれば設備コストがかさむなど、コスト面での課題があった。
【0008】
従って、本発明の主目的は、軽量・環境リサイクル性を向上できると共に、安価に製造することができる自動車用軽量導体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、Cu/Al複合線について種々の実験と評価を行い、Cu/Al複合線の伸線性と導電率を考慮した結果、芯材の添加物量を限定し、芯材と被覆層との断面積比を規定することで上記の目的を達成する。
【0010】
すなわち、本発明自動車用軽量導体は、芯材の外周に銅または銅合金の被覆層を形成した自動車用軽量導体であって、前記芯材は、質量%で、Mg≦1.5%、Cr+Si+Mn+Cu+Fe≦1.0%以下を含み、残部がアルミニウムからなるアルミニウム合金で構成され、前記被覆層の断面積が軽量導体の断面積に対して占める比率が3%以上20%以下であることを特徴とする。
【0011】
このように、芯材の添加元素量の限定と銅または銅合金被覆層の面積比を限定することで、伸線性と導電性に優れたCu/Al複合線を得ることができる。従って、従来アルミ線で問題となっていたアルミ線と端子との接触抵抗の増加、つまり高温多湿の状態でアルミ表面の酸化膜(アルミナ)が接触抵抗を上げることを改善できる。また、適切な添加元素をアルミ合金の芯材に含有させることで、伸線時の断線を抑制して、大単重の自動車用導体を得ることができる。
【0012】
ここで、伸線性を上げるには、公知例のように芯材に添加元素を添加するのが望ましいが、導電性との兼ね合いから、最大でMgは1.5%とし、Cr+Si+Mn+Cu+Feは最大で1.0%までとする。これにより、銅線と同様に、細径にいたるまでの途中の断線率が極めて少ない伸線性を実現でき、かつ導電率の低下を防止することができる。
【0013】
また、導体断面積における被覆層の面積比を3%以上とすることで、銅被覆層の破れによるアルミ芯露出の問題を解消すると共に、同面積比を20%以下とすることで、リサイクル時に異物となる銅の含有量を低下し、銅以外の材料のリサイクルを容易にすることができる。例えば、自動車のドア部を鉄スクラップにしたとき、銅成分は電線導体における20%以下とすることが好適である。そして、被覆層の断面比率を大きくすれば導電性は上がるが、比重が増加し、被覆層厚に伴うコストアップが問題になるため、被覆層の面積比率を20%以下とした。より好ましい上記面積比は5%以上15%以下である。
【0014】
被覆層はクラッド法ではなく、電気メッキ法によって形成することが好適である。電気メッキ法により被覆層を形成することにより、クラッド法などで必要とされた途中の熱処理をなくすことができる。従来の銅線と同じ単重(約2t程度を断線無く伸線可能)分の伸線性を考えると、異種の金属を結合し、熱拡散させて金属結合するクラッド法では、途中段階の熱処理が300℃を越えると界面に脆い金属間化合物が形成され、伸線中に断線する問題が出てくる。そこで、電気メッキ法により面積比5%〜20%の銅または銅合金層を形成することで、熱処理がなくても細く伸線でき、材料の軟化による金属間化合物の問題がなくなり、銅/アルミ界面の密着不良の問題がなくすことができる。
【0015】
途中一度も軟化熱処理をせずに伸線加工できる芯材のサイズは、2.3mm以上6.0mm以下である。このサイズの芯材を用いれば断線することなく伸線を行うことができ、自動車用ワイヤーハーネスとして好適なCu/Al複合線を提供することができる。
【0016】
さらに、本発明自動車用軽量導体は、比重が4.0以下であり、導電率が58%以上であることが望ましい。この比重と導電率を具える導体とすることで、導体自体、ひいてはワイヤーハーネスの軽量化を実現し、さらに導体として十分な導電性を確保することができる。なお、銅の比重は8.9、アルミニウムは2.7であり、両者の断面積比を適切に調整することで上記の比重を実現できる。
【0017】
現在、車体側から求められているワイヤーハーネスの導電率を考えると、58%以上が求められる。導電率が55%以下さらに50%にもなると、結局電線導体の体積を導電率の低下分上げる必要があり、導体軽量化に寄与しない。従って、導電率は58%以上望ましくは70%以上、比重は4.0以下、望ましくは3.5以下が最適である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1はCu/Al複合線の製造ラインである。供給部1よりアルミニウム芯材100が線径で2.6mm〜5.0mmで供給され、前処理装置部2を通過しながら溶剤脱脂、弱アルカリ脱脂、酸脱脂後、下地処理装置3に入る。その後、ストライクメッキ槽4で銅ストライクメッキされてから本メッキ槽5で本メッキされ、巻取り部6に巻き取られる。以上の工程より、アルミニウム芯材100の上に銅被覆層200が形成されたCu/Al複合線を得ることができる。重要なのは、この下地処理装置3で、電気メッキの下地処理として、置換法、陽極酸化法、直接法(機械的、化学的粗面化法)等の下地処理を行う。
【0019】
その後、巻き取られたCu/Al複合線を0.32mm,0.26mmまで伸線し、7本撚り後塩化ビニルを被覆して、導体断面積0.5sq,0.3sqの電線とする。さらに、この電線を定尺切断し、その先端を皮むきして金属端子を圧着させて、ハウジング中にその端子を挿入し、約200本の束からなるサブアッシーを束ねた上に保護材を被せ、ワイヤーハーネスを作製した。
【0020】
比較のため、従来のクラッド法で作製した銅被覆アルミニウム線材の他、銅線およびアルミニウム線も用意して同様のワイヤーハーネスを作製した。
【0021】
そして、得られたCu/Al複合線の伸線加工性ならびにワイヤーハーネスの軽量化・環境リサイクル性の評価を行った。伸線加工性の評価は、約2t程度の単重分を断線無く伸線できれば○、できなければ×で示している。また、軽量性はCu/Al複合線の比重が4.0以下のものを○、4.0超4.5未満のものを△、4.5以上のものを×とした。さらに、環境リサイクル性は、銅面積比が20%以下のものを○、20%超25%以下のものを△、25%超のものを×とした。表1に芯材の化学成分、銅被覆の形成方法、Cu/Al複合線の導電率、比重と共に、伸線加工性、軽量性、環境リサイクル性の評価結果を示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1から明らかなように、電気メッキにより被覆した試料1〜7は銅線やアルミ線と同様の伸線加工性を具えていることがわかる。中でも、銅面積比が低く、導電率が高く、比重の小さい試料1〜4は伸線加工性、軽量性、環境リサイクル性のいずれも好結果であることがわかる。一方、Mgの添加量が多い試料6およびMg以外の添加元素量が多い試料7は導電率が低いことがわかる。さらに、銅面積比の大きい試料5、9は比重が大きかったり、環境リサイクル性に劣ることがわかる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明自動車用軽量導体は、芯材の添加元素量の限定と銅または銅合金被覆層の面積比を限定することで、伸線性と導電性に優れたCu/Al複合線とすることができる。従って、一般の自動車ハーネス用以外に、例えば電気自動車用バッテリーケーブル、同軸ケーブルや電磁シールド用編組線に加え、モーター用マグネットワイヤーなどに用いることができる。そして、車両廃却後のリサイクルに役立つことなど、極めて環境に優しい複合線であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明自動車用軽量導体の製造ラインを示す説明図である。
【図2】本発明導体の断面図である。
【図3】従来の絶縁被覆銅導体の断面図である。
【図4】圧縮導体を用いた従来の絶縁被覆銅導体の断面図である。
【符号の説明】
1 供給部
2 前処理装置部
3 下地処理装置
4 ストライクメッキ槽
5 本メッキ槽
6 巻き取り部
20 銅線
21 塩化ビニル
30 圧縮導体
31 塩化ビニル
100 アルミニウム芯材
200 銅被覆層
Claims (3)
- 芯材の外周に銅または銅合金の被覆層を形成した自動車用軽量導体であって、
前記芯材は、質量%で、Mg≦1.5%、Cr+Si+Mn+Cu+Fe≦1.0%以下を含み、残部がアルミニウムからなるアルミニウム合金で構成され、
前記被覆層の断面積が軽量導体の断面積に対して占める比率が3%以上20%以下であることを特徴とする自動車用軽量導体。 - 前記芯材の外径が2.3mm以上6.0mm以下で、
前記被覆層は電気メッキ法によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の自動車用軽量導体。 - 比重が4.0以下であり、導電率が58%以上であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用軽量導体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002196107A JP2004039477A (ja) | 2002-07-04 | 2002-07-04 | 自動車用軽量導体 |
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JP2002196107A JP2004039477A (ja) | 2002-07-04 | 2002-07-04 | 自動車用軽量導体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004039477A true JP2004039477A (ja) | 2004-02-05 |
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Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008262808A (ja) * | 2007-04-12 | 2008-10-30 | Daiden Co Ltd | 電線・ケーブル |
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