以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明に適用される著作権情報の埋め込み装置(エンコーダ)を示すブロック図、図2は図1の信号処理回路を詳しく示すブロック図、図3は図1のA/Dコンバータのサンプリング周期及びデータ列を示す説明図、図4は図2のアロケーション回路によりパッキングされたユーザデータを示す説明図、図5は図2の制御部による著作権データの埋め込み処理を説明するためのフローチャート、図6は図2の制御部による著作権データの埋め込み期間を示す説明図、図7は図5の埋め込み処理の変形例を説明するためのフローチャート、図8は図1のエンコーダにより処理されたデータをデコードするデコーダを示すブロック図、図9は図8の信号処理回路を詳しく示すブロック図、図10は図8のデコーダによりデコードされたデータ列を示す説明図、図11は図2の信号処理回路の変形例を示すブロック図、図12は図9の信号処理回路の変形例を示すブロック図である。
図1に示す入力端子INには例えば音楽ソースのようなアナログ音声信号が入力され、この入力信号はA/Dコンバータ31により、無条件のデジタルコピーを禁止するのに値する十分高いサンプリング周波数(図3に示すサンプリング周期Δt)、例えば192kHzでサンプリングされて、例えば24ビットの高分解能のPCM信号に変換され、図3に示すように曲線αに対応するデータ列
xb1,x1 ,xa1,x2,xb2,x3,xa2,
・・・,xbi,x2i-1,xai,x2i,・・・
に変換される。
このデータ列(xbi,x2i-1,xai,x2i)は図2に詳しく示す信号処理回路32及びメモリ33によりエンコードされ、次いでDVD符号化回路34によりパッキングされる。このパッキングデータは出力端子OUT1に出力されるか、又は媒体に応じた変調方式で変調回路35により変調されて出力端子OUT2に出力される。また、出力端子OUT3からは必要に応じて著作権データが出力される。
図2を参照して信号処理回路32の構成を詳しく説明する。まず、A/Dコンバータ31の出力信号は加算器121により後述するように著作権データが埋め込まれた後にローパスフィルタ(LPF)36に印加される。ローパスフィルタ36は1/2の帯域を通過させる例えばFIRフィルタにより構成され、図3に示す曲線αに対応するデータ列(xbi,x2i-1,xai,x2i)から、帯域制限された曲線βに対応するデータ列
xc1,*,*,*,xc2,*,*,*,xc3,*,*,*,・・・,xci,*,*,*,・・・
を得る。
次にこのデータ列の内、データ「*」を間引き回路37により間引くことによりデータ列
xc1,xc2,xc3,・・・,xci,・・・
を生成し、また、データ列(xbi,x2i-1,xai,x2i)の内、データxi を間引き回路38により間引くことによりデータ列
xb1,xa1,xb2,xa2,・・・,xbi,xai,・・・
を生成する。
そして、これらのデータ列xci、xbi、xaiに基づいて、加算器により構成される差分計算部39により差分
xbi−xci=Δ1i
xai−xci=Δ2i
を演算する。ここで、差分データΔ1i、Δ2iは例えば24ビット又はそれ以下であり、また、ビット数は固定でも可変でもよい。
アロケーション回路40はデータ列xci及び差分データΔ1i、Δ2iと著作権データを図4に示すようにユーザデータとしてパッキングし、そのユーザデータを出力することにより記録媒体、例えばDVD(デジタル・ビデオ・ディスク)に記録されたり、伝送路に伝送される。なお、DVDのようにユーザデータが2034バイトの場合にはデータxci及び差分データΔ1i、Δ2iは共に225個であり、サブヘッダは9バイトである。ここで、データ列xciはA/Dコンバータ31によりA/D変換されたデジタルデータを帯域制限してサンプリング周波数を1/4に低減したデータ列となっている。
次に、著作権データを埋め込む方法について説明する。まず、著作権データ供給部100は入力端子INを介して入力する信号に関する著作権データの一例として、
・著作権を識別するために複製状態を管理するための情報であるディスクのシリアルナンバ(16バイト)
・カッティングプレーヤ識別子コード(4バイト)
・録音日(3バイト)
・録音数(3バイト)
・複製された数(4バイト)及び
・著作権状態を管理するための複製可能数(3バイト)
をFM変調器114とアロケーション回路40に供給する。
ここで、著作権データとしてSID(ソースID)情報とISRC(International Standard Recording Code )情報は万国共通であるので、ワールドワイドに出回る海賊版をチェックし易くすることができる。そこで、この製造者を示すSID情報として上記「カッティングプレーヤ識別子コード」が使用され、また、万国共通のISRC情報が上記「著作権を識別するために複製状態を管理するための情報であるディスクのシリアルナンバ」として採用される。
アロケーション回路40はこの著作権データを図4に示すサブヘッダに分散してパッキングする。また、DVDにはサブヘッダとは別に、CDRディスクなどで規定されているTOCエリアに相当するようにディスクの内周に設けられる著作権管理情報エリア(CMIエリア)に、これらの著作権データがさらに詳しく記録される。このCMIエリアはパーシャルRAM又はPCA(ポスト・カッティング・エリア)に記録される。
また、FM変調器114では著作権データが発振器115からの例えば5kHzの周波数により変調され、次いでこの変調された信号は、D/A変換されても聞き取れないように拡散変調器116により拡散符号(PS符号:Pseudorandom Sequence Code)117を用いて、その周波数スペクトラムが広く拡散されて低レベルにされ、さらに、レベル制御部118ではデータ列(xbi,xa1)のレベルに応じてそのレベルが制御される。この場合、例えば2kHzにおいて−25dB、また、10kHzにおいて−19dBのように聴覚心理モデルのCMR(Code to Music Ratio )より十分低くすることにより、通常では聞き取ることができない。そして、この変調データはスイッチ201を介して加算器121に印加され、A/Dコンバータ31の出力信号に対して埋め込まれる。
この埋め込み処理では、制御部200は制御信号a、b、cによりそれぞれ著作権データ供給部100と、拡散符号117とスイッチ201を制御する。図5を参照して制御部200の動作を説明すると、A/Dコンバータ31の出力信号に対して聴感補正のためにウエイティング逆特性フィルタを作用させる(ステップS1)。次いで平均レベル(補正値)とピークレベルを検出し(ステップS2)、次いでピークレベルが平均レベルを超えるか否かをチェックする(ステップS3)。
そして、ピークレベル>平均レベルの場合には制御信号aにより著作権データ供給部100が著作権データの発生・供給を継続し、制御信号bにより変調を継続し、制御信号cによりスイッチcをオンにすることにより著作権データの埋め込みを行う。他方、ピークレベル>平均レベルでない場合には制御信号aにより著作権データ供給部100が著作権データのインクリメントをホールドし、制御信号bにより変調を停止させ、制御信号cによりスイッチcをオフにすることにより著作権データの埋め込みを行わない。
図6(A)は原信号を示し、図6(B)は図6(A)の原信号に対する埋め込み状態を示す説明図である。上記埋め込み処理によれば、原信号のピークレベルが平均レベルより大きい期間で著作権データが埋め込まれ、ピークレベル>平均レベルでない期間では著作権データの埋め込みを行わないので埋め込みが間欠的となる。
図7は図5の変形例を示している。まず、図5に示す場合と同様に、A/Dコンバータ31の出力信号に対して聴感補正のためにウエイティング逆特性フィルタを作用させ(ステップS11)、次いで平均レベル(補正値)とピークレベルを検出する(ステップS12)。そして、この変形例では平均レベルが十分大きいか否か、例えば最大レベルに対して−19dBより平均レベルが大きいか否かをチェックし(ステップS13)、平均レベル>−19dBの場合に埋め込みを行う(ステップS15)。また、平均レベル>−19dBでない場合には、図5に示す場合と同様にピークレベル>平均レベルのときには埋め込みを行い(ステップS14→15)、他方、ピークレベル>平均レベルでないときには埋め込みを行わない(ステップS14→S16)。
次に、図8を参照してデコーダについて説明する。入力信号はまず、エンコーダ側の変調回路35の変調方式に応じて復調回路41により復調され、次いでDVD復号回路42により復号され、復号データ(著作権データが間欠的に埋め込まれたデータ列xciと差分データΔ1i、Δ2i)が図9に詳しく示す信号処理回路43(及びメモリ44)と著作権データ書換え部30に印加されるとともに、サブコードからアンパッキングされた著作権データ又はCMIエリアから再生された著作権データが暗号解読部50に印加される。信号処理回路43では図9に示すように、まず、加算部46により
Δ1i+xci=xbi
Δ2i+xci=xai
が演算され、データ列xbi、xaiが復元される。ここで、データ列xbi、xaiは元の24ビットである。
次いで補間処理回路47ではデータ列xai、xbiの複数のデータを用いて図10に示すようにその間のデータ列xi が補間される。なお、補間処理回路47では例えばアップサンプリング方法を用いて、それぞれに0データを埋めてローパスフィルタを通過させることにより、補間データ列xi を求めることができる。補間データ列xi はまた、曲線近似や予測近似により求めるようにしてもよい。この場合、近似補助データを追加して伝送するようにすることで近似度を高めることができる。
このように補間処理されたデータは、
xb1,x1 ,xa1,x2 ,xb2,x3 ,xa2,
・・・,xbi,x2i-1,xai,x2i,・・・
のように配列され、図8に示すD/Aコンバータ45と、LPF(ローパスフィルタ)56とデジタル出力端子90に印加される。
D/Aコンバータ45では、エンコーダ側で24ビットの量子化ビット数でA/D変換され、著作権データが埋め込まれて記録媒体に記録されたデータ列(xbi,x2i-1,xai,x2i)が192kHzのサンプリング周波数でアナログ信号に変換されてアナログ出力端子55を介して出力される。また、LPF56ではこの入力データが例えば1/4の帯域(48kHz)に制限され、デジタルデータとして出力端子53を介して出力され、さらに、著作権データが埋め込まれたデータ列(xbi,x2i-1,xai,x2i)がそのままの状態でデジタル出力端子90を介して出力される。
図11及び図12はそれぞれ、上記第1の実施形態の変形例を実現するエンコーダ及びデコーダの各信号処理回路を示している。図11に示すエンコーダでは図2に示す間引き回路38が省略され、データxi は間引かれない。そして、差分計算部39により差分
xbi−xci=Δ1i
xai−xci=Δ2i
xi −xci=Δ3i
が演算され、データ列(xci,Δ1i,Δ2i,Δ3i)及び著作権データがアロケーション回路40によりパッキングされて伝送される。この場合にも同様に、著作権データがデータ列(xci,Δ1i,Δ2i,Δ3i)内に間欠的に埋め込まれている。
図12に示すデコーダでは、上記のようにエンコーダ側でデータ列xi が間引かれていないので、補間処理部47が省略されている。そして、加算器46では xci+Δ1i=xbi
xci+Δ2i=xai
xci+Δ3i=xi
を演算することにより、元の高品質のデータ列(xbi,x2i-1,xai,x2i)を復元する。他の構成はエンコーダ、デコーダともに図2、図9と同一であるので説明を省略する。
次に、図13〜図15を参照して第2の実施形態を説明する。図13は第2の実施形態の制御部200による著作権データの埋め込み処理を説明するためのフローチャート、図14は図13の処理による埋め込み期間を示す説明図、図15は図13の埋め込み処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
図13において、まず、制御部200はA/Dコンバータ31の出力信号から、所定の立ち上がり時定数(例えば1ミリ秒)と立ち下がり時定数(例えば150ミリ秒)でピークレベルを検出する(ステップS21)。次いで平均レベルを検出し(ステップS22)、次いでピークレベルが平均レベル未満か否かチェックする(ステップS23)。そして、ピークレベル<平均レベルであり、かつそれが初めてである場合には著作権データの1つの情報の発生を継続状態にして埋め込みを行う(ステップS23→S24→S25)。他方、ピークレベル<平均レベルでない場合(ステップS23)やピークレベル<平均レベルが初めてでない場合(ステップS24)には著作権データを埋め込まない(ステップS26)。
したがって、上記埋め込み処理によれば、ピークレベル<平均レベルが初めての期間で著作権データが埋め込まれ、ピークレベル<平均レベルでない期間やピークレベル<平均レベルが初めてでない期間では著作権データの埋め込みを行わないので埋め込みが間欠的となる。図14(A)は原信号を示し、図14(B)は図14(A)の原信号に対する埋め込み状態を示す説明図である。ここで、図14(A)に示すようにレベルが変動する音楽ソースにおいては、図14(B)に示すようにレベルが小さくなる時点(図示矢印)で埋め込んでソースを修飾しても、聴感上感知しにくいことが知られているので、アナログ出力信号の品質が劣化することを防止することができる。
図15に示す処理は図7に示す第1の実施形態の変形例に対応している。すなわち、まず、図13に示す場合と同様に、A/Dコンバータ31の出力信号のピークレベルと(ステップS31)平均レベル(ステップS32)を検出する。そして、この変形例では続くステップS33において平均レベルが十分大きいか否か、例えば最大レベルに対して−19dBより平均レベルが大きいか否かをチェックし、平均レベル>−19dBの場合に著作権データの埋め込みを行う(ステップS36)。
また、ステップS33において平均レベル>−19dBでない場合には図13に示す場合と同様に、ピークレベル<平均レベルであり、かつそれが初めてであるときに埋め込みを行い(ステップS34→S35→S36)、他方、ピークレベル<平均レベルでないとき(ステップS34)やピークレベル<平均レベルが初めてでないとき(ステップS35)には著作権データを埋め込まない(ステップS37)。
次に、図16〜図18を参照して第3の実施形態を説明する。図16は第3の実施形態の制御部200による著作権データの埋め込み処理を説明するためのフローチャート、図17は図16の処理による埋め込み期間を示す説明図、図18は図16の埋め込み処理の変形例を説明するためのフローチャートである。ここで、上記第2の実施形態ではレベルが小さくなる時点で埋め込みを行うように構成されているが、この第3の実施形態ではレベルが大きくなる時点で埋め込みを行うように構成されている。
すなわち、図16において、まず、制御部200はA/Dコンバータ31の出力信号から、所定の立ち上がり時定数(例えば1ミリ秒)と立ち下がり時定数(例えば150ミリ秒)でピークレベルを検出する(ステップS41)。次いで平均レベルを検出し(ステップS42)、次いでピークレベルが平均レベルを超えるか否かチェックする(ステップS43)。そして、ピークレベル>平均レベルであり、かつそれが初めてである場合には著作権データの1つの情報の発生を継続状態にして埋め込みを行い(ステップS43→S44→S45)、他方、ピークレベル>平均レベルでない場合(ステップS43)やピークレベル>平均レベルが初めてでない場合(ステップS44)には著作権データを埋め込まない(ステップS46)。
したがって、上記埋め込み処理によれば、ピークレベル>平均レベルが初めての期間で著作権データが埋め込まれ、ピークレベル>平均レベルでない期間やピークレベル>平均レベルが初めてでない期間では著作権データの埋め込みを行わないので埋め込みが間欠的となる。図17(A)は原信号を示し、図17(B)は図17(A)の原信号に対する埋め込み状態を示す説明図である。図17(A)に示すようにレベルが変動する音楽ソースにおいては、図17(B)に示すようにレベルが大きくなる時点(図示矢印)で埋め込んでソースを修飾しても、聴感上感知しにくいことが知られているので、アナログ出力信号の品質が劣化することを防止することができる。
図18に示す処理は図7に示す第1の実施形態の変形例と、図15に示す第2の実施形態の変形例に対応している。すなわち、まず、図15に示す場合と同様に、A/Dコンバータ31の出力信号のピークレベルと(ステップS51)平均レベル(ステップS52)を検出する。そして、この変形例では続くステップS53において平均レベルが十分大きいか否か、例えば最大レベルに対して−19dBより平均レベルが大きいか否かをチェックし、平均レベル>−19dBの場合に著作権データの埋め込みを行う(ステップS56)。
また、ステップS53において平均レベル>−19dBでない場合には図15に示す場合と同様に、ピークレベル>平均レベルであり、かつそれが初めてであるときに埋め込みを行い(ステップS54→S55→S56)、他方、ピークレベル>平均レベルでないとき(ステップS54)やピークレベル>平均レベルが初めてでないとき(ステップS55)には著作権データを埋め込まない(ステップS57)。
次に、図19〜図21を参照して第4の実施形態を説明する。図19においてステップS41〜S44は図16(第3の実施形態)に示す処理と同一である。そして、ステップS43においてピークレベル>平均レベルでない場合とステップS44において「初めて」でない場合には、ステップS800において埋め込みフラグFをセットし(F=1)、次いでステップS46において埋め込みを行わず、次いでステップS41に戻る。
また、ステップS44において「初めて」の場合にはステップS500において埋め込みフラグFがセットされているか否かを判断し、F=1の場合にはステップS47に進む。ステップS47ではタイマをスタートしてタイマが例えば1ミリ(m)秒経過しているか否かを判断し、NOの場合にはステップS45に進んで埋め込みを行い、ステップS41に戻る。
そして、ステップS47において1ミリ秒経過すると、ステップS49に進んでタイマが例えば1.5秒が経過しているか否かを判断し、NOの場合にはステップS600に進んで埋め込みフラグFをリセットし(F=0)、次いでステップS46に進んで埋め込みを停止し、ステップS41に戻る。そして、ステップS500においてF=0の場合にはステップS49に進み、1.5秒が経過しているとステップS700に進んで埋め込みフラグFをセットし(F=1)、次いでステップS46を経由してステップS41に戻る。
このような構成によれば、図20に示すように著作権データが1ミリ秒間でかつ1.5秒以上の周期で飛び飛びにバースト状に埋め込まれるので、長い時間継続して埋め込まれなくなり、したがって、再生時のアナログ出力信号の品質が劣化することを防止することができる。また、図21に示す変形例におけるステップS51〜S57は図18(第3の実施形態の変形例)に示す処理と同一であり、また、同様にステップS58、S60、S500、S600、S700、S800の処理により著作権データを1ミリ秒間でかつ1.5秒の周期で飛び飛びにバースト状に埋め込むようにしている。
次に、図22〜図24を参照して第5の実施形態を説明する。ここで、上記第4の実施形態では著作権データを1.5秒の周期以上で埋め込むので、音楽ソースによっては1.5秒の一定周期で埋め込まれる場合もあり、この場合には再生時に耳障りとなる可能性がある。そこで、この第5の実施形態では著作権データの埋め込み周期Txをランダムに変化させるようにしている。
すなわち、ステップS45において埋め込みを行う場合には、まず、第4の実施形態と同様に例えば1ミリ秒だけ継続する。そして、ステップS47において1ミリ秒が経過するとステップS49aに進み、例えば10ミリ秒から1.5秒までの任意のランダムな埋め込み周期Txをセットし、次いでステップS49bにおいて埋め込み周期Txが経過していない場合にはステップS600に進んで埋め込みフラグFをリセットし(F=0)、次いでステップS46に進んで埋め込みを停止し、ステップS41に戻る。
そして、ステップS500においてF=0の場合にはステップS49bに進み、ランダムな埋め込み周期Txが経過しているとステップS700に進んで埋め込みフラグFをセットし(F=1)、次いでステップS46を経由してステップS41に戻る。
また、図23に示す変形例では、平均レベル>−19dBの場合にも同様に、著作権データを1ミリ秒間でかつランダムな埋め込み周期Txでバースト状に埋め込むようにしている。この変形例によれば、図24に示すように特に平均レベルが十分大きい期間、例えば平均レベル>−19dBの期間において著作権データがランダムな周期Tx(=T1≠T2≠T3…)でバースト状に埋め込まれるので、耳障りとなることを防止することができる。
また、これらの第1〜第5の実施形態のデコーダ(図8)では、媒体を介して伝送されて入力したビットストリームは、そのままの状態で著作権データ書換え部30、スイッチ51及びビットストリーム出力端子52を介して出力可能であり、また、暗証番号を入力するための端子49と、この端子49を介して入力した暗証番号とDVD復号回路42からの著作権データに基づいてスイッチ51をオンにするとともに著作権データ書換え部30を制御する暗号解読部50が設けられている。暗号解読部50は暗証番号の真正性を判断する認証機能を有する。
暗号解読部50は暗証番号が入力されると、認証のチェックを受けそれが真正なものと認証された場合に、DVD復号回路42からの著作権データの内のコピー許可条件、例えば「録音可能数」をチェックし、「0」でない場合にはビットストリーム内の録音可能数を1つデクリメントするように著作権データ書換え部30を制御するとともに、スイッチ51をオンにすることにより出力を許可し、他方、「0」であればスイッチ51をオンにしないで出力を禁止することにより無制限なビットストリームのコピーを禁止する。なお、コピー許可条件としては「録音可能数」の他、「コピー可能期間」を媒体を介して伝送するとともに、暗号解読部50内に時計機能を設けて暗証番号が入力した時間が「コピー可能期間」外であればコピーを禁止するようにしてもよい。
また、著作権データの埋め込みタイミングは、オーディオ信号のレベル変動時のみではなく、ピークレベルの−19dBを超える場合にのみ一定周期で(又はこの場合とレベル変動時に)埋め込むようにしてもよい(第6の実施形態)。この場合には、図24において埋め込み時間を約0.49秒とし、埋め込み停止時間を約0.49秒として1周期を約0.98秒とすれば、人間の鼓動の平均的周期となるので、埋め込みによる再生信号の変化がリズミカルとなり、人間の鼓動に近い周期によるマスキング効果により聴感上検知されにくくなる。また、一定周期で割り込むために埋め込みデータ量を多くすることができ、したがって、埋め込み効率を向上させることができる。
ここで、「聴覚マスキング効果」では、図25に示すようにあるマスクする側の信号M(ミュージック)が存在するときの、マスクされる側の信号C(コード)の最大レベルを「マスキングカーブ」として表すことができる。図25に示すマスキング感度X(=CMR)は、マスクする側の信号Mの性質に応じて異なり、
・信号がトーンライクな(正弦波に近い)場合…約25dB
・信号がノイズライクな場合 …約5dB
と考えられている。また、実際のオーディオ信号では、低域ほどトーンライクであり、高域では各楽器の高調波が重なりあってノイズライクになると考えられるので、マスキング感度X(=CMR)の値を図26及び図27に示すように周波数に応じてある程度決定することができる。
そこで、レベル制御部118ではデータ列(xbi,xai)の周波数に基づいて、例えば図26及び図27において実線で示すパターンC0のように著作権データの変調信号Cのレベルを原信号Mのレベルより聴覚心理モデルのCMRだけ又はそれより十分低くして通常では聞き取ることができないレベルにする。そして、この変調データは加算器121に印加され、A/Dコンバータ31の出力信号に対して埋め込まれる。
また、この埋め込み処理では、制御部200は図28に示すように、A/Dコンバータ31の出力信号から、所定の立ち上がり時定数(例えば1ミリ秒)と立ち下がり時定数(例えば150ミリ秒)でピークレベルを検出し(ステップS1a)、次いで平均レベル(補正値)を検出する(ステップS2a)。そしてピークレベルが平均レベル未満か否かチェックし(ステップS3a)、ピークレベル<平均レベルである場合に図27において破線で示すパターンC1のように、著作権データの変調信号Cのレベルを上げる(ステップS4a)。他方、ピークレベル<平均レベルでない場合にCMRを図26及び図27において実線で示すような固定パターンC0、すなわち原信号Mの周波数のみに応じて著作権データの変調信号Cのレベルを変化させる(ステップS5a)。
したがって、上記埋め込み処理によれば、ピークレベル<平均レベルの場合、すなわち図29に示すように原信号Mが小さくなる区間では変調信号Cのレベルを上げるが、この区間では小さな信号は聞こえにくいので音質は悪化しない。
図30に示すこの変形例では、まず、同様にピークレベルを検出し(ステップS11a)、次いで平均レベルを検出する(ステップS12a)。そして続くステップS13aでは平均レベルが十分大きいか否か、例えば最大レベルに対して−19dBより平均レベルが大きいか否かをチェックし、平均レベル>−19dBの場合には周波数のみに応じて著作権データの変調信号のレベルを変化させた固定パターンC0のレベルで著作権データの埋め込みを行う(ステップS16a)。
また、ステップS13aにおいて平均レベル>−19dBでない場合には図28に示す場合と同様に、ピークレベル<平均レベルであるときに図27において破線で示すパターンC1のように著作権データの変調信号Cのレベルを上げて埋め込みを行い(ステップS15a)、他方、ピークレベル<平均レベルでないときにCMRを図26及び図27において実線で示すような固定パターンC0で埋め込みを行う(ステップS16a)。
次に、間欠的に埋め込む方法と「聴覚マスキング効果」を利用して埋め込む方法を組み合わせた方法について説明する。まず、図5に対して図28を組み合わせる場合には、図5に示すステップS1において、まず、フラットなフィルタ又聴感補正フィルタ処理を実行し、次いで平均レベル(補正値)とピークレベルを検出する(ステップS2)。そして、ステップS3、S4においてピークレベル>平均レベルの場合に埋め込みを行う場合には、図28に示すステップS5aと同様に変調出力のCMRを固定パターンC0とする。なお、この固定パターンは、図27に示すように周波数に応じてCMRが異なるパターンC0が望ましいが、図67に示すように周波数に関係なく一定のパターンCでもよい。
図31は図7に示す方法に対して図28を組み合わせた方法を示し、ステップS17、S18が追加されている。まず、フラットなフィルタ又聴感補正フィルタ処理を実行し(ステップS11)、次いで平均レベル(補正値)とピークレベルを検出する(ステップS12)。そして、この変形例では平均レベルが十分大きいか否か、例えば最大レベルに対して−19dBより平均レベルが大きいか否かをチェックし(ステップS13)、平均レベル>−19dBの場合にはステップS17においてCMRを固定パターンC0(又はC)に設定して埋め込みを行う(ステップS15)。また、平均レベル>−19dBでない場合には、図5に示す場合と同様にピークレベル>平均レベルのときにはCMRを図27に示す可変パターンC1(>C0,C)に設定して埋め込みを行う(ステップS14→S18→S15)。ピークレベル>平均レベルでないときには埋め込みを行わない(ステップS14→S16)。
ここで、図32に示す可変パターンC1は図27の変形例を示している。この可変パターンC1のCMRは、2kHz以下でも埋め込みを行う(「0」でない)が周波数が低くなるについて小さくなり、2kHz〜7kHzでは一定であり、7kHz〜10kHzでは固定パターンC0より大きい。
また、図13に示す方法に対して図28を組み合わせる場合には、同図のステップS25において固定パターンC0、Cに設定して埋め込む。
図33は図15に示す方法に対して図28を組み合わせた方法を示している。図15に示す方法と異なる処理のみを説明すると、ステップS33において平均レベル>−19dBの場合にはステップS38においてCMRを固定パターンC0(又はC)に設定して埋め込みを行う(ステップS36)。また、ステップS34、S35においてピークレベル<平均レベルであり、かつそれが初めてである場合にはステップS39においてCMRを可変パターンC1(>C0,C)に設定して埋め込みを行う(ステップS36)。
また、図16に示す方法に対して図28を組み合わせる場合には、同図のステップS45において固定パターンC0、Cに設定して埋め込む。
図34、図35、図36はそれぞれ、図18、図21、図23に示す方法に対して図28を組み合わせた方法を示している。図18、図21、図23に示す方法と異なる処理のみを説明すると、ステップS53において平均レベル>−19dBの場合にはステップS61においてCMRを固定パターンC0(又はC)に設定して埋め込みを行う(ステップS56)。また、ステップS54、S55においてピークレベル>平均レベルであり、かつそれが初めてである場合にはステップS62においてCMRを可変パターンC1(>C0,C)に設定して埋め込みを行う(ステップS56)。
また、図19、図22に示す方法に対して図28を組み合わせる場合には、図19、図22のステップS45において固定パターンC0、Cに設定して埋め込む。
図37は図21の変形例として、CMRを固定パターンC0、Cのみに設定して間欠的に埋め込む方法を示している。まず、同様にピークレベルを検出し(ステップS51)、次いで平均レベルを検出する(ステップS52)。そして続くステップS53では平均レベルが十分大きいか否か、例えば最大レベルに対して−19dBより平均レベルが大きいか否かをチェックし、平均レベル>−19dBの場合には、フラグ判定、時間経過判定の各ステップS500、S58を経て、固定パターンC0のCMRで著作権データの埋め込みを行い(ステップS56)、他方、平均レベル>−19dBでない場合には、フラグFを1に設定し(ステップS800)、埋め込みを行なわない(ステップS57)。
そして、埋め込み時間を約0.49秒とし(ステップS58)、埋め込み停止時間を約0.49秒(ステップS60)として1周期を約0.98秒とすれば、人間の鼓動の平均的周期となるので、埋め込みによる再生信号の変化がリズミカルとなり、人間の鼓動に近い周期によるマスキング効果により聴感上検知されにくくなる。また、一定周期で割り込むために埋め込みデータ量を多くすることができ、したがって、埋め込み効率を向上させることができる。
そして、埋め込み時間を約0.49秒とし(ステップS58)、埋め込み停止時間を約0.49秒(ステップS58、ステップS60)として1周期を約0.98秒とすれば、人間の鼓動の平均的周期となるので、埋め込みによる再生信号の変化がリズミカルとなり、人間の鼓動に近い周期によるマスキング効果により聴感上検知されにくくなる。また、一定周期で割り込むために埋め込みデータ量を多くすることができ、したがって、埋め込み効率を向上させることができる。
次に、図38、図39を参照して第7の実施形態について説明する。ところで、上記第1〜第6の実施形態では、1チャネルのみに埋め込みを行う場合について説明しているが、実際にはオーディオ信号はステレオ2チャネルやマルチチャネルで再生されるので、全チャネルに埋め込みを行う方法と、特定のチャネルのみ(例えば6チャネルの内の前方Lチャネル)に埋め込みを行う方法が考えられる。しかしながら、全チャネルや特定のチャネルのみに継続して埋め込みを行うと、音質が聴感上劣化したり、加工感を感じたりして違和感が発生する場合がある。
そこで、第7の実施形態では、複数チャネルの内の1以上のチャネルに対して時間的に選択的に埋め込む。これにより、チャネル間の聴感がアンバランスになるので、聴感上検知されにくくすることができる。図38は埋め込みを行うチャネルフラグを変更する処理(ステップS−W1)を示し、この変更処理は割り込みにより行う。割り込みタイミングとしては種々の方法が考えられるが、例えば一定周期、ランダム周期、楽曲の区切り毎、楽章の区切り毎に行うようにしてもよい。
図39は説明を簡略化するために、一例としてステレオ2ch(LchとRch)の各チャネルに時間的に交互に埋め込み、また、図23に示す処理と組み合わせた場合の処理を示している。まず、LchとRchの各ピークレベルと(ステップS51')各平均レベル(ステップS52')を検出する。そして、図38に示すステップS−W1において設定されている埋め込みチャネルフラグに基づいて埋め込みチャネル(Lchか又はRch)を選択する(ステップS52b、S52c、S52d)。続くステップS53において選択チャネルの平均レベルが十分大きいか否か、例えば最大レベルに対して−19dBより平均レベルが大きいか否かをチェックし、平均レベル>−19dBの場合にステップS500、S47を経由してステップS56'に進み、選択チャネルの著作権データの埋め込みを行う。
また、ステップS53において選択チャネルの平均レベル>−19dBでない場合には図15に示す場合と同様に、ピークレベル>平均レベルであり、かつそれが初めてであるときに選択チャネルの埋め込みを行い(ステップS54→S55→S500→S47→S56')、他方、ピークレベル>平均レベルでないとき(ステップS54)やピークレベル>平均レベルが初めてでないとき(ステップS55)には選択チャネルには著作権データを埋め込まない(ステップS57')。また、選択チャネルの埋め込みを行う場合には、図23に示す場合と同様に1ミリ秒間でかつランダムな埋め込み周期Txでバースト状に埋め込む。
ここで、図39に示す処理では、レベルに応じて埋め込みを行うかを決定して2chの1つのチャネルに対してCMRの固定パターンC0、Cと可変パターンC1で埋め込むようにしているが、レベルやレベル変動に関係なく、CMRの固定パターンC0、Cのみでステレオ2chの1つのチャネルやマルチチャネルの1以上のチャネルに対して(例えば6チャネルの内の後方2チャネルに対して)埋め込むようにしてもよい。
次に、図40を参照して第8の実施形態について説明する。ところで、上記第1〜第7の実施形態では、同一の著作権データを複数チャネルに同時に埋め込みを行う方法が考えられるが、リスナは全チャネルを同時に聴取しているので、この方法では再生音の定位感などの理由により、聴感上検知され易くなる場合がある。そこで、個々のチャネルには「時間的に異なる著作権データ」を埋め込むことにより、これを防止することができる。なお、「時間的に異なる著作権データ」とは、全く異なるデータでもよく、同一であっても時間差を付けたデータでもよい。
図40は説明を簡略化するために、ステレオ2chに適用した構成を示している。著作権データ供給部100は「時間的に異なるLチャネルの著作権データLとRチャネルの著作権データR」をそれぞれFM変調器114L、114Rに供給する。この著作権データL、Rは2系統のFM変調器114L、114Rと、拡散変調器116L、116Rにおいてそれぞれ発振器115、及び拡散符号117により変調され、次いでそのレベルが制御部200の制御に基づいてレベル制御部118L、118Rにより制御され、スイッチ201を介して埋め込み用の加算器121L、121Rに印加される。制御部200は第1〜第7の実施形態と同様に、Lch及びRchのレベルやレベル変動などに基づいてスイッチ201を制御することにより、「時間的に異なるLチャネルの著作権データLとRチャネルの著作権データR」を埋め込む。
ここで、図40に示す処理では、「時間的に異なる著作権データ」を2以上のチャネルに埋め込む場合には、固定パターンC0、Cと可変パターンC1で埋め込んでもよいが、また、レベルやレベル変動に関係なく又はレベルやレベル変動に応じてCMRの固定パターンC0、Cのみで埋め込んでもよい。
次に、図41、図42を参照して第9の実施形態について説明する。ところで、上記第1〜第8の実施形態では、バースト状に変化する著作権データが原オーディオデータの帯域を超える成分を含むので、原オーディオデータに対して著作権データを埋め込む場合に両データを単に加算器121により加算すると、歪み発生の原因となり、この歪みが再生時に聴感上検知され易くなる。また、再生時に聴感上検知されにくくするため著作権データの埋め込み量を少なくすると、埋め込み量が限定される。そこで、第9の実施形態はこの問題を解決するように構成されている。
図41は加算器121の代わりに用いられる著作権データ埋め込み回路を示している。この回路はデジタルフィルタにより構成され、アップサンプリング部4は補間(インターポレーション)とLPF処理を行い、ダウンサンプリング部5は間引き(デシメーション)を行う。図42は図41における回路の主要信号を示し、まず、図42(A)(B)に示すように原オーディオ信号aと著作権情報bのサンプリング周波数fsは同一であり、また、著作権情報bのビット数は原信号aより少ない。そして、原信号aと著作権情報bを加算器3により加算すると、図42(C)に示すように歪みを含む信号cとなる。
続くアップサンプリング部(図示up↑2)4はこの加算器3から入力する信号cをその2倍のサンプリング周波数fs×2でアップサンプリングするために、入力信号cのサンプリング位置の間に0値、又は入力信号cの前のサンプリング位置のホールド値を補間信号として挿入し、次いでこれをLPF処理することにより図42(D)に示すように2倍のサンプリング周波数fs×2のデータ列dを作成する。このデータ列dはアップサンプリング部4による処理時間により、入力信号cに対して時間差τ1より遅れていることを除き同一値の信号である。
続くダウンサンプリング部(図示down↓2)5は、補間信号を間引いて信号cのサンプリング位置のみのデータ列eを出力することにより、図42(E)に示すように信号dを元のサンプリング周波数fsにダウンサンプリングする。このデータ列eは入力信号dに対して時間差τ2より遅れていることを除き同一値の信号であり、したがって、信号cに対して時間差τ1+τ2より遅れていることを除き同一値の信号である。このような処理によれば、原オーディオデータaに対して著作権データbを埋め込む際に位相と振幅の両方が変位するので、著作権データbの埋め込み量を多くしても再生時に聴感上検知されにくくすることができる。
図43は図41のアップ・ダウンサンプリング部の変形例を示し、埋め込み回路6はアップサンプリングとダウンサンプリングを同時に行うように構成されている。すなわち、埋め込み回路6は、図42(C)〜(E)に示すように加算器3により加算された原信号aと著作権情報bの加算信号cのサンプリング位置の間に補間信号を挿入して2倍のサンプリング周波数fs×2に変換するためのアップサンプリング処理と、ダウンサンプリング処理を元のサンプリング周波数fsでのみ行う。このような回路によれば、図41に示す回路と比べて少ない演算量で同一の埋め込み処理を実現することができる。
図44は図41のアップ・ダウンサンプリング部の他の変形例を示している。アップサンプリング部4−1、4−2はそれぞれ原オーディオ信号aと著作権情報bをその2倍のサンプリング周波数fs×2でアップサンプリングするために、信号a、bのサンプリング位置の間に0値、又は入力信号a、bの前のサンプリング位置のホールド値を補間信号として挿入し、ついでこの信号をLPF処理することにより2倍のサンプリング周波数fs×2のデータ列a'、b'を作成する。加算器3はこの2倍のサンプリング周波数fs×2の原オーディオ信号a'と著作権情報b'を加算し、続くダウンサンプリング部5はこの加算器3により加算された信号c'を元のサンプリング周波数fsにダウンサンプリングした信号eを出力する。このような処理によれば、著作権情報bによる歪みが加算前に除去されるので、図41に示す回路より出力信号eに残留する歪みを低減させることができる。
図45と図46はそれぞれ、更に他のアップ・ダウンサンプリング部とその処理を示している。この例では加算器3が省略され、アップサンプリング部4は図46(A)(B)に示すように原信号aと著作権情報bをその2倍のサンプリング周波数fs×2でアップサンプリングするために、原信号aのサンプリング位置の間に著作権情報bを補間信号として挿入し、図46(C)に示すように2倍のサンプリング周波数fs×2のデータ列cを作成する。次いでアップサンプリング部4はこのデータ列cを低域通過フィルタ(LPF)処理を行うことにより図46(D)に示すように低域成分を抽出した信号dを出力する。
続くダウンサンプリング部5はこのデータ列dを元のサンプリング周波数fsにダウンサンプリングして図46(E)に示すように原信号aのサンプリング位置のみのデータ列eを出力する。このような処理によれば、原オーディオデータaに対して著作権データbを埋め込む際に位相と振幅の両方が変位するので、著作権データbの埋め込み量を多くしても再生時に聴感上検知されにくくすることができる。図47は図45の回路の変形例を示し、埋め込み回路6は図43に示す場合と同様に、アップサンプリングとダウンサンプリングを元のサンプリング周波数fsで行うことにより、同時に行うように構成されている。
図48と図49はそれぞれ、更に他のアップ・ダウンサンプリング部とその処理を示している。著作権情報bは1サンプル遅延回路(Z-1)7により遅延され、図49(B)に示すような著作権データ列b1、b2…が生成される。そして、この著作権データ列b1、b2…と図49(A)に示す原オーディオデータ列a1、a2…が加算器3により加算される。
アップサンプリング部4は加算器3により加算されたデータ列a1+b1、a2+b2…と著作権データ列b1、b2…をその2倍のサンプリング周波数fs×2でアップサンプリングするために、データ列a1+b1、a2+b2…のサンプリング位置の間に著作権データ列b1、b2…を補間信号として挿入し、図49(C)に示すように2倍のサンプリング周波数fs×2のデータ列
b1,a1+b1,b2,a2+b2…
を作成する。次いでアップサンプリング部4はこのデータ列cを低域通過フィルタ(LPF)処理を行うことにより図49(D)に示すように低域成分を抽出する。
続くダウンサンプリング部5はこのデータ列を元のサンプリング周波数fsでダウンサンプリングして図49(E)に示すように原信号aのサンプリング位置のみのデータ列a'1、a'2…を出力する。このような処理においても同様に、原オーディオデータaに対して著作権データbを埋め込む際に位相と振幅の両方が変位するので、著作権データbの埋め込み量を多くしても再生時に聴感上検知されにくくすることができる。図50は図48の回路の変形例を示し、埋め込み回路6は図43、図47に示す場合と同様に、アップサンプリングとダウンサンプリングを元のサンプリング周波数fsで行うことにより、同時に行うように構成されている。
図51と図52はそれぞれ、更に他のアップ・ダウンサンプリング部とその処理を示している。この回路では補間信号を生成するために、図52(A)に示す原オーディオデータ列a1、a2…と図52(B)に示す著作権データ列b1、b2…が加算器3により加算され、次いでこの加算信号a1+b1、a2+b2…が1サンプル遅延回路(Z-1)7により遅延される。
アップサンプリング部4は原オーディオデータ列a1、a2…と1サンプル遅延回路(Z-1)7により遅延されたデータ列a1+b1、a2+b2…をその2倍のサンプリング周波数fs×2でアップサンプリングするために、原オーディオデータ列a1、a2…のサンプリング位置の間にデータ列a1+b1、a2+b2…を補間信号として挿入し、図52(C)に示すように2倍のサンプリング周波数fs×2のデータ列
a1,a1+b1,a2,a2+b2…
を作成する。次いでアップサンプリング部4はこのデータ列を低域通過フィルタ(LPF)処理を行うことにより図52(D)に示すように低域成分を抽出したデータ列d1、d2…を出力する。
続くダウンサンプリング部5はこのデータ列d1、d2…を元のサンプリング周波数fsでダウンサンプリングして図52(E)に示すように原信号aのサンプリング位置のみのデータ列d1、d3、d5…を出力する。図53は図51の回路の変形例を示し、埋め込み回路6は図43、図47、図50に示す場合と同様に、アップサンプリングとダウンサンプリングを元のサンプリング周波数fsで行うことにより、同時に行うように構成されている。
図54と図55はそれぞれ、更に他のアップ・ダウンサンプリング部とその処理を示している。この回路ではまず、アップサンプリング部4−1が著作権データ列b1、b2…と補間信号「0」をその4倍のサンプリング周波数fs×4でアップサンプリングするために、著作権データ列b1、b2…のサンプリング位置の間に補間信号「0」を挿入し、次いでこれをLPF処理することにより、図55(C)に示すように4倍のサンプリング周波数fs×4のデータ列c1、c2、c3、c4、c5…を生成する。ここで、b1とc1、b2とc5、すなわちbnとc4(n−1)+1が同一サンプリング位置である。
次いで加算器3−1はサンプリング周波数fsで原オーディオデータ列a1、a2〜anと、アップサンプリング部4−1により生成されたデータ列c1、c5〜c4(n−1)+1を加算し、また、加算器3−2は4倍のサンプリング周波数fs×4で補間信号「0」とデータ列c1、c5〜c4(n−1)+1を加算する。
そして、続くアップサンプリング部4−2は加算器3−1、3−2により加算された各信号を4倍のサンプリング周波数fs×4でアップサンプリングするために、加算器3−1により加算された信号のサンプリング位置の間に加算器3−1により加算された信号を補間信号として挿入し、次いでこれをLPF処理することにより、図55(D)
に示すように4倍のサンプリング周波数fs×4のデータ列
a1+c1,c2,c3,c4,a2+c5,c6…
,an+c4(n−1)+1
を作成する。アップサンプリング部4−2はまた、このデータ列を低域通過フィルタ(LPF)処理を行うことにより図55(E)に示すように低域成分を抽出したデータ列e1、e2…を出力する。
続くダウンサンプリング部5はこのデータ列e1、42…を元のサンプリング周波数fsにダウンサンプリングして図55(F)に示すように原信号aのサンプリング位置のみのデータ列f1(=e1)、f2(=e5)…を出力する。図56は図54の回路の変形例を示し、埋め込み回路6は図43、図47、図50、図53に示す場合と同様に、アップサンプリングとダウンサンプリングを元のサンプリング周波数fsで行うことにより、同時に行うように構成されている。
次に、このように埋め込み処理を行ったデータが記録される媒体について説明する。まず、図2、図11、図40に示すアロケーション回路40により作成されたユーザデータ列(図4参照)が図1に示すDVD符号化回路34により後述するようなDVDフォーマットに符号化され、次いで変調回路35によりEFM変調される。
次いでこのデータが図示省略のDVDカッティングマシン(プレーヤ)に供給されてDVDオーディオディスクの原盤(マスタ)が製造される。次いでこの原盤の上に金属薄膜がスパッタ法とメッキ法により形成され、更に厚くメッキして原盤から剥離されてスタンパが製造される。次いでこのスタンパによりディスクの基になる基材が射出成形により形成されて貼り合わされ、DVDオーディオディスクが製造される。
DVDオーディオディスクにおけるオーディオ(A)パック{及びビデオ(V)パック}は、図57に示すように2034バイトのユーザデータ(Aデータ、Vデータ)に対して4バイトのパックスタート情報と、6バイトのSCR(System Clock Reference:システム時刻基準参照値)情報と、3バイトのMux rate情報と1バイトのスタッフィングの合計14バイトのパックヘッダが付加されて構成されている(1パック=合計2048バイト)。この場合、タイムスタンプであるSCR情報を、ACBユニット内の先頭パックでは「1」として同一アルバム内で連続とすることにより同一アルバム内のAパックの時間を管理することができる。
次に、図58〜図66を参照して第10の実施形態を説明する。最近では、PCによるマルチメディア化が急速に進み、動画像や音声の信号をPCにより処理することが普及している。また、最近では、いわゆるインターネットなどの通信回線を介して動画像や音声の信号を伝送することが普及している。このような状況下では、一般ユーザがPCを使用してミュージックソースを媒体や通信回線を介して他人に供給する場合に自己の著作権を管理することを望むことが考えられる。
図58は本発明の第10の実施形態に係るデジタルオーディオ信号処理システムを示すブロック図、図59は図58のパーソナルコンピュータのデジタルオーディオ信号処理プログラムを説明するためのフローチャート、図60は図59の著作権データ埋め込みプログラムを詳しく説明するためのフローチャート、図61は著作権データ再生プログラムを説明するためのフローチャートである。
図58に示すパソコン106には、ディスクドライブ装置104又はネットワークターミナル105から図59に示すようなデジタルオーディオ信号処理プログラム(図60に詳しく示す著作権データ埋め込みプログラムと図61に詳しく示す著作権データ再生プログラムを含む)とサラウンドミュージックなどのミュージックソースが供給される。
パソコン106は例えばインテル社のPP55Cの拡張命令セット(MMX)のように、主として画像や音声などのデジタル信号を効率的に処理するために追加された特定用途向けの命令セットを有するCPU106aと、データ処理時のバッファとして使用されるRAM106bと、ディスクドライブ装置104又はネットワークターミナル105から供給されるデータを変換するデータコンバータ106cと、処理後のオーディオデータをD/A変換器とアンプを介して複数のスピーカ(図では103L、103R、更にはサラウンド用のスピーカ103C、103S)に供給するためのオーディオインタフェース(I/F)106dと、図示省略の表示部の表示制御を行うディスプレイプロセッサ106eと、図示省略のマウスやキーボードからの操作入力信号に基づいて操作信号を発生する操作信号発生部106fを有する。
このような構成において、図59に示すようにCPU106aはデジタルオーディオ信号処理プログラムが記録されたディスクがディスクドライブ装置104にセットされた状態で、不図示のキーボードを介してプログラムロード命令(コマンド)が入力すると(ステップS61)、ディスクからプログラムデータを読み出して内部RAMにロードし(ステップS62)、ロードが終了するとプログラムロードフラグをセットし(ステップS63)、終了する。このとき、CPU106aはMMX対応であるので、高速信号処理が可能になる。
また、CPU106aはサラウンドミュージックなどのミュージックソースが記録されたディスクがディスクドライブ装置104にセットされた状態で、不図示のキーボードを介してプレイコマンドが入力すると、ディスクの最初のトラックにアクセスしてそのディスクの種類を示すサブコードを読み取り、そのサブコードが「ミュージックソース」か否かをチェックし(ステップS64)、YESの場合には図60に詳しく示す著作権データ埋め込みプログラムを実行し(ステップS65)、次いで処理後のオーディオデータをオーディオI/F106dに渡す(ステップS66)。次いでステップS65に戻り、著作権データ埋め込みプログラムを繰り返す。また、ステップS64において「ミュージックソース」でない場合には「演奏不能」を不図示の表示部に表示し(ステップS67)、終了する。
CPU106aは図60に示すような著作権データ埋め込みプログラムを実行する。図60において、まず、ミュージックソースのA/D変換データを入力する処理を実行し(ステップS100)、著作権データをキーボードを介して入力する処理を実行し(ステップS101)、次いでこの著作権データをスペクトラム拡散する処理を実行する(ステップS102)。このスペクトラム拡散処理では、図2、図11、図40に示すFM変調器114、拡散変調器115により処理をハードウエアではなくソフトウエアで実行する。
続くステップS103では、前述したような埋め込み処理により、変調された著作権データをデジタルオーディオデータに埋め込み(ステップS103)、次いでこのデジタルオーディオデータを記録媒体に記録するためのフォーマット変換を行う(ステップS104)。
次に、図61を参照してこのように変調されて埋め込まれた著作権データを再生する処理について説明する。まず、著作権データが埋め込まれたデジタルオーディオデータを取り込み(ステップS200)、次いでこのデジタルオーディオデータと著作権データが埋め込まれていない原デジタルオーディオデータに基づいて変調信号を抽出する(ステップS201)。次いでこの変調信号を変調時と同一の拡散符号117(図2、図11、図40参照)を用いてスペクトラム拡散復調し、次いで変調時と同一の周波数(図2、図11、図40に示す発振器115参照)を用いてFM復調することにより元の著作権データを取り出す(ステップS202)。次いでこの著作権データをデータベースと照合することにより解読を行う(ステップS203)
次に、上記のプログラムや、このプログラムにより処理されたデジタルオーディオ信号を通信回線を介して伝送する場合について説明する。図62は図58に示すパソコン106内のネットワークターミナル105を詳細に示すブロック図、図63及び図64は図62のデータ変換部の処理を示すフローチャート、図65は通信ネットワークを示す説明図、図66は図65のネットワーク上のパケット処理を示す説明図である。このターミナル105はデータ送信側とデータ受信側のパソコン106の両方に設けられ、パソコン106の内部バスに接続される受信バッファT1及び送信バッファT2と、データ変換部T4と、通信インタフェースであるアダプタT3と、通信端子T6とコントローラT5を有する。
データ送信側のデータ変換部T4は図63に示すように、送信バッファT2に蓄えられている送信データを所定長に分割してパケット化し(ステップS141)、次いでパケットの先頭には宛て先アドレスを含むヘッダを付与し(ステップS142)、次いでこれをアダプタT3と通信端子T6を介してネットワークNW上に出力する(ステップS143)。データ受信側のデータ変換部T4は図64に示すように、ネットワークNWから通信端子T6とアダプタT3を介して受信したパケットからヘッダを除去し(ステップS151)、次いで受信データを復元し(ステップS152)、次いでこれを受信バッファT1を介して図58に示すプログラムRAM106bに転送する(ステップS153)。
データ送信側とデータ受信側の通信端子T6は例えば図65に示すようなネットワークNWを介して接続される。このネットワークNWでは例えばCATV回線や、インターネットと呼ばれるTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol )のプロトコルを用いてデータがパケット1)2)3)…単位で伝送される。この場合、データ送信側から出力されたパケット1)2)3)…は図65、図66に示すように、ネットワークNW上のルータRにより最適ルートが選択されてパケット1)2)3)…毎に分離され、次いでルータRにより分離された各パケットはパケット交換器Pn(n=1〜k)を介してパケット1)2)3)…順にデータ受信側のパソコン106に送られる。
したがって、データ受信側のパソコン106では、ディスクドライブ装置104にセットされているディスク内のミュージックソースに対して、プログラムRAM106b上のプログラムに基づいて著作権データを埋め込むことができる。そして、このような通信方法により著作権データ埋め込みプログラムや、このプログラムに基づいて著作権データが埋め込まれたミュージックソースが転送された場合には、送信側や受信側に対してプログラム使用料を請求する。
本発明はデータ送信側が受信側に対して一方的に送信する場合に限定されず、、例えばデータ受信側のユーザがデータ送信側のホームページに基づいて、プログラム送信要求やオーディオ信号送信要求を送信し、データ送信側がこの要求に基づいてプログラムやオーディオ信号を送信する場合にも適用することができる。なお、このようなインターネットの場合には、インタフェースとして機能するアダプタT3としてTCP/IPプロトコル群が用いられる。
ここで、著作権データが埋め込まれたミュージックソースを記憶するための媒体、例えばDVD−オーディオディスクの基材の表面又は内部に特殊な印刷あるいは成形などにより、著作権データが埋め込まれていることを示す可視画像を形成することによりコピープロテクト機能を実現することができる。なお、このような可視画像を形成する方法としては、例えば特開平7−98889号公報、特開平8−2158号公報、特開平9−128812号公報などに記載されているので詳細な説明を省略するが、このような方法で形成された可視画像は、容易に複製れず、また、改ざんされない。