JP2004036634A - ロックアップクラッチ付き流体伝動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】流体伝動装置において,簡単な構成でロックアップクラッチの接続応答性の向上を図る。
【解決手段】ポンプインペラ2に連設されるサイドカバー5とタービンランナ3の外側面との間に画成されるクラッチ室22を,タービンランナ3に連結されるクラッチピストン19により内側油室23と外側油室24とに区画される流体伝動装置において,タービンランナ3及びクラッチピストン19間に,クラッチピストン19が非作動位置を占めるとき,内側油室23を半径方向内方の1次内側油室23aと半径方向外方の2次内側油室23bとに区画しつゝタービンランナ3及びクラッチピストン19間を離反させる方向に弾発力を発揮する弾性隔壁部材25を配設し,クランクピストン19を作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段42を作動したときは,1次内側油室23a及び2次内側油室23bを,その順序で外側油室24に対して昇圧させる。
【選択図】 図1
【解決手段】ポンプインペラ2に連設されるサイドカバー5とタービンランナ3の外側面との間に画成されるクラッチ室22を,タービンランナ3に連結されるクラッチピストン19により内側油室23と外側油室24とに区画される流体伝動装置において,タービンランナ3及びクラッチピストン19間に,クラッチピストン19が非作動位置を占めるとき,内側油室23を半径方向内方の1次内側油室23aと半径方向外方の2次内側油室23bとに区画しつゝタービンランナ3及びクラッチピストン19間を離反させる方向に弾発力を発揮する弾性隔壁部材25を配設し,クランクピストン19を作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段42を作動したときは,1次内側油室23a及び2次内側油室23bを,その順序で外側油室24に対して昇圧させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,車両や産業機械の動力伝動装置に使用される,トルクコンバータや流体継手等の流体伝動装置に関し,特に,ポンプインペラと,このポンプインペラとの間に循環回路を画成するタービンランナと,ポンプインペラに連設され,タービンランナの外側面との間に循環回路の外周部と連通するクラッチ室を画成するサイドカバーと,前記クラッチ室に配設され,サイドカバー及びタービンランナ間を直結し得るロックアップクラッチとを備え,そのロックアップクラッチを,タービンランナに軸方向移動可能に連結されて前記クラッチ室をタービンランナ側の内側油室とサイドカバー側の外側油室との区画するクラッチピストンと,このクラッチピストンをサイドカバー内側面に対して進退させるべく内側油室及び外側油室間に差圧を発生させるロックアップ制御手段と,クラッチピストンがサイドカバー内側面側に押圧されたとき,クラッチピストン及びサイドカバー間を摩擦係合させる摩擦係合手段とで構成した,ロックアップクラッチ付き流体伝動装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
かゝるロックアップクラッチ付き流体伝動装置は,例えば特開平5−296313号公報に開示されているように,既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般に,かゝるロックアップクラッチ付き流体伝動装置では,ロックアップクラッチの非接続状態では,クラッチピストン及びサイドカバー間には引き摺り防止のための間隙が設けられているので,ロックアップクラッチを接続させるようにロックアップ制御手段を作動した場合には,その作動初期に作動オイルが高圧側の内側油室から上記間隙を通して低圧側の外側油室へ多少とも漏出することになり,これがロックアップクラッチの作動遅れを招く一因となっている。
【0004】
このようなロックアップクラッチの作動遅れを解消するために,上記公報には,クラッチピストンの外周にサイドカバーの内周面に密接するシール部材を装着して,上記のような作動オイルの漏出を防ぐようにしたものが開示されている。しかしながら,そうしたものでは,ロックアップクラッチの作動解除時,外側油室から内側油室側へ作動の流通を可能にすべく,一方向弁をクラッチピストンに設ける必要があり,部品点数の増加,延いてはコストアップを免れず,またクラッチピストン外周のシール部材は,ロックアップクラッチの非接続状態でポンプインペラ及びタービンランナが相対回転するとき,常にサイドカバーの内周面と擦れ合うことを余儀なくされるため,その耐久性の確保を困難にするという問題をも有している。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,ロックアップクラッチの接続応答性が良好であり,しかも部品点数が少なくて安価であり,耐久性も高いロックアップクラッチ付き流体伝動装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,本発明は,ポンプインペラと,このポンプインペラとの間に循環回路を画成するタービンランナと,ポンプインペラに連設され,タービンランナの外側面との間に循環回路の外周部と連通するクラッチ室を画成するサイドカバーと,前記クラッチ室に配設され,サイドカバー及びタービンランナ間を直結し得るロックアップクラッチとを備え,そのロックアップクラッチを,タービンランナに軸方向移動可能に連結されて前記クラッチ室をタービンランナ側の内側油室とサイドカバー側の外側油室との区画するクラッチピストンと,このクラッチピストンをサイドカバー内側面に対して進退させるべく内側油室及び外側油室間に差圧を発生させるロックアップ制御手段と,クラッチピストンがサイドカバー内側面側に押圧されたとき,クラッチピストン及びサイドカバー間を摩擦係合させる摩擦係合手段とで構成した,ロックアップクラッチ付き流体伝動装置において,前記タービンランナ及びクラッチピストン間に,クラッチピストンが少なくとも摩擦係合手段を非作動にする後退位置を占めるとき,前記内側油室を半径方向内方の1次内側油室と半径方向外方の2次内側油室とに区画しつゝタービンランナ及びクラッチピストン間を離反させる方向に弾発力を発揮する弾性隔壁部材を配設し,前記クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動したときは,前記1次内側油室及び2次内側油室を,その順序で前記外側油室に対して昇圧させることを第1の特徴とする。
【0007】
この第1の特徴によれば,クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動したときは,前記1次内側油室及び2次内側油室を,その順序で前記外側油室に対して昇圧させるので,先ず,1次内側油室の素早い昇圧によりクラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に前進させて,2次内側油室から外側油室への作動オイルのリークを阻止し,これにより2次内側油室の昇圧をも早めることができ,その結果,総合的に1次内側油室及び2次内側油室の昇圧が早まり,クラッチピストンをサイドカバー側に素早く強力に押圧して,ロックアップクラッチの接続応答性を効果的に高めることができる。しかもクラッチピストンに対する押圧力は1次内側油室及び2次内側油室で順次発生することで,ロックアップクラッチの接続ショックを軽減することができる。また弾性隔壁部材は,その弾発力によりクラッチピストンを前記摩擦係合手段の作動方向へ付勢するので,クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動したときは,その弾発力もクラッチピストンを内側及び外側油室の圧力差に加わることになり,ロックアップクラッチの接続応答性をより効果的に高めることができる。
【0008】
さらにロックアップクラッチの遮断状態では,従来のような一方向弁に頼らずとも,外側油室から内側油室への作動オイルの流通をスムーズに行うことができ,ロックアップクラッチの冷却を図ることができると共に,一方向弁を設けない分,部品点数を削減し,コストの低減に寄与し得る。
【0009】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記弾性隔壁部材を,これが前記タービンランナ及びクラッチピストンの少なくとも一方に相対回転可能に摺接すると共に,その弾発力が前記クラッチピストンの,摩擦係合手段を作動する前進に応じて減少するように構成したことを第2の特徴とする。
【0010】
この第2の特徴によれば,ロックアップクラッチの遮断状態では,弾性隔壁部材とタービンランナ又はクラッチピストンとの摺接により,両者間の相対回転を許容しつゝ,1次及び2次内側油室間を確実に仕切ることができ,しかもロックアップクラッチの接続状態では,弾性隔壁部材とタービンランナ又はクラッチピストンとの摺接力を減少,若しくはゼロにして,その間の摩耗の発生を抑えることができる。
【0011】
さらに本発明は,第1又は第2の特徴に加えて,前記タービンランナに,前記1次内側室を前記循環回路に連通する通孔を設けたことを第3の特徴とする。
【0012】
この第3の特徴によれば,タービンランナがポンプインペラに対して駆動側となる流体伝動装置の減速運転時には,循環回路のタービンランナ側が高圧となることで,循環回路から前記通孔を通して1次内側室に作動オイルが流入して,1次内側室を昇圧させることになるから,クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動すると,1次及び2次内側室の昇圧を,1次内側室の既に昇圧した分,早めることができ,したがってロックアップクラッチの接続応答性を一層効果的に高めることができる。
【0013】
またポンプインペラがタービンランナより高速で回転される加速運転時には,循環回路のタービンランナ側が低圧となるから,1次内側室の作動オイルが通孔を通して循環回路に流出して,1次内側室を降圧させることになるが,通孔は2次内側室とは連通しておらず,しかも1次及び2次内側室は弾性隔壁部材により相互に遮断されているため,1次内側室の降圧は2次内側室にまでは及ばず,しかも2次内側室は,循環回路の外周部と連通していることで比較的高圧に保持される。したがって,この状態からロックアップクラッチを接続状態にすべくロックアップ制御手段を作動したときは,高圧の2次内側室と低圧となる外側室との圧力差によりクラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に作動させ,ロックアップクラッチを支障なく接続することができる。
【0014】
尚,前記流体伝動装置は,後述する本発明の実施例中のトルクコンバータTに対応し,また前記摩擦係合手段は摩擦面5b及び摩擦ライニング28に対応し,前記ロックアップ制御手段はロックアップ制御弁42に対応する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0016】
図1は本発明の第1実施例に係るロックアップクラッチ付きトルクコンバータの縦断側面図,図2は本発明の第2実施例を示す,図1との対応図,図3は本発明の第3実施例を示す,図1との対応図である。
【0017】
先ず,図1において,流体伝動装置としてのトルクコンバータTは,ポンプインペラ2と,それと対置されるタービンランナ3と,それらの内周部間に配置されるステータ4とを備え,これら三部材2,3,4間には作動オイルによる動力伝達のための循環回路6が画成される。
【0018】
ポンプインペラ2のシェル2aの外周部には,タービンランナ3の外側面を覆うサイドカバー5が溶接により一体的に連設される。サイドカバー5の外周面には,周方向に配列される複数の連結ボス7が溶接されており,これらに,エンジンのクランク軸1に結合した駆動板8がボルト9で固着される。タービンランナ3のハブ3bとサイドカバー5との間にスラストニードルベアリング36が介裝される。
【0019】
トルクコンバータTの中心部にクランク軸1と同軸上に並ぶ出力軸10が配置され,この出力軸10は,タービンランナ3のハブ3bにスプライン嵌合されると共に,サイドカバー5中心部の支持筒5aに軸受ブッシュ18を介して回転自在に支承される。出力軸10は図示しない多段変速機の主軸となる。
【0020】
出力軸10の外周には,ステータ4のハブ4bをフリーホイール11を介して支承する円筒状のステータ軸12が配置され,これら出力軸10及びステータ軸12間には,それらの相対回転を許容するニードルベアリング13が介裝される。ステータ軸12の外端部はミッションケース14に回転不能に支持される。
【0021】
ステータ4のハブ4bの軸方向両端面と,これらに対向するポンプインペラ2及びタービンランナ3の各ハブ2b,3bの端面との間にスラストニードルベアリング37,37′が介裝され,これらスラストニードルベアリング37,37′と前記スラストニードルベアリング36とにより,ポンプインペラ2及びサイドカバー5間でのタービンランナ3及びステータ4の軸方向移動が規制される。
【0022】
またステータ軸12の外周には,ポンプインペラ2に結合した補機駆動軸20が相対回転可能に配置され,この補機駆動軸20によって,トルクコンバータTに作動オイルを供給するオイルポンプ21が駆動されるようになっている。
【0023】
タービンランナ3及びサイドカバー5間には,前記循環回路6と外周側で連通するクラッチ室22が画成され,このクラッチ室22に,タービンランナ3及びサイドカバー5間を直結し得るロックアップクラッチLが設けられる。即ち,ロックアップクラッチLの主体をなすクラッチピストン19が,クラッチ室22をタービンランナ3側の内側油室23とサイドカバー5側の外側油室24とに区画するようにクラッチ室22に配置される。このクラッチピストン19は,タービンランナ3のハブ3bの外周面に摺動可能に支承されるハブ19aに溶接されるもので,その一側面には,サイドカバー5の内側面に形成された環状の摩擦面5bに対向する摩擦ライニング28が付設される。またクラッチピストン19は,公知のトルクダンパDを介して,タービンランナ3の外側面に固設された伝動板34に軸方向移動可能に連結される。
【0024】
タービンランナ3とクラッチピストン19との間には隔壁部材25が配設される。この隔壁部材25は,金属製の円錐状ダイヤフラムスプリングからなっており,その小径側端部は,前記ハブ19aの外周に嵌合されると共に,そのハブ19aの環状肩部26とクラッチピストン19との間で挟持,固定される。而して,この弾性隔壁部材25は,クラッチピストン19が少なくとも摩擦ライニング28をサイドカバー5の摩擦面5bから離間させる後退位置を占めるとき,前記内側油室23を半径方向内方の1次内側油室23aと半径方向外方の2次内側油室23bとに区画しつゝタービンランナ3及びクラッチピストン19間を離反させる方向に弾発力を発揮するように,その大径側端部をタービンランナ3の外側面に相対回転可能に摺接させる。この弾性隔壁部材25のばね定数は,上記弾発力がクラッチピストン19の摩擦面5b側への前進に応じて減少し,クラッチピストン19が摩擦面5bに接触したときゼロとなるように,即ち該部材25の大径側端部がタービンランナ3から実質的に離間するように設定される。
【0025】
タービンランナ3のハブ3bには,スラストニードルベアリング37の内周側で1次内側油室23aをタービンランナ3のハブ3b及びステータ4のハブ4b間の環状油路29に連通する通孔30が穿設され,またタービンランナ3のシェル3aには,1次内側油室23aを該シェル3aとステータ4のハブ4b側面との間隙に連通する通孔31が穿設される。
【0026】
出力軸10の中心部には,横孔39及びスラストニードルベアリング36を介してクラッチ室22の外側油室24に連通する第1油路40が設けられる。また補機駆動軸20とステータ軸12との間には第2油路41が画成され,この第2油路41は,ポンプインペラ2のハブ2b及びステータ4のハブ4b間の環状油路29′及び前記スラストニードルベアリング37′を介して循環回路6の内周側と連通される。
【0027】
また出力軸10及びステータ軸12間には第3油路44が画成され,この第3油路44は,タービンランナ3のハブ3b及びステータ4のハブ4b間の環状油路29や前記通孔30,31及びスラストニードルベアリング37を介して循環回路6の内周側と1次内側油室23aとに連通される。その際,前記両環状油路29,29′間の連通を遮断するために,フリーホイール11のインナレース11aとステータ軸12との間にシール部材49が介裝される。
【0028】
上記第1油路40及び第2油路41は,ロックアップ制御弁42により,オイルポンプ21の吐出側とオイル溜め43とに交互に接続されるようになっている。また循環回路6及び1次内側油室23aを所定油圧に保持するリリーフ弁48を介してオイル溜め43に接続される。したがって循環回路6及び1次内側油室23aの余剰圧力はリリーフ弁48を通してオイル溜め43に解放される。
【0029】
次に,この実施例の作用について説明する。
【0030】
トルクコンバータTのドライブ状態では,ロックアップ制御弁42は,第1油路40をオイルポンプ21の吐出側に接続する一方,第2油路41をオイル溜め43に接続するように,図示しない電子制御ユニットにより制御される。したがって,エンジンのクランク軸1の出力トルクが駆動板7,サイドカバー5,ポンプインペラ2へと伝達して,それを回転駆動し,更にオイルポンプ21をも駆動すると,オイルポンプ21が吐出した作動オイルは矢印aで示すように流れ,ロックアップ制御弁42から第1油路40,横孔39及びスラストニードルベアリング36,クラッチ室22の外側油室24,内側油室23の2次内側油室23bを順次経て循環回路6に流入し,該回路6を満たした後,スラストニードルベアリング37′,環状油路29′を経て第2油路41に移り,ロックアップ制御弁42からオイル溜め43に還流する。
【0031】
而して,クラッチ室22では,上記のような作動オイルの流れにより外側油室24の方が内側油室23よりも高圧となり,その圧力差によりクラッチピストン19がサイドカバー5の摩擦面5bから離れるように後退するので,ロックアップクラッチLは遮断状態となっており,ポンプインペラ2及びタービンランナ3の相対回転を許容している。したがって,クランク軸1からポンプインペラ2が回転駆動されると,循環回路6を満たしている作動オイルが矢印のように循環回路6を循環することにより,ポンプインペラ2の回転トルクをタービンランナ3に伝達し,出力軸10を駆動する。
【0032】
このとき,ポンプインペラ2及びタービンランナ3間でトルクの増幅作用が生じていれば,それに伴う反力がステータ4に負担され,ステータ4は,フリーホイール11のロック作用により固定される。
【0033】
一方,クラッチピストン19に固着された弾性隔壁部材25は,前記圧力差によるクラッチピストン19の後退により反発力を強めながら大径側端部をタービンランナ3の外側面に摺接させているから,タービンランナ3との相対回転を許容されつゝ,1次及び2次内側油室23a,23b間を確実に仕切っている。
【0034】
このようなトルクコンバータTのドライブ運転時や,タービンランナ3がポンプインペラ2に対して駆動側となって循環回路6で作動オイルが図示とは反対方向に流れる減速運転時に,ロックアップクラッチLを接続状態にすべく,電子制御ユニットによりロックアップ制御弁42を切換えると,オイルポンプ21が吐出した作動オイルは,先刻とは反対に矢印bのように流れ,ロックアップ制御弁42から第2油路41,環状油路29′,スラストニードルベアリング37′を順次経て循環回路6に流入し,そして一方では通孔30,31を介して1次内側油室23aに移り,他方では循環回路6の外周部から2次内側油室23bに移る。
【0035】
クラッチ室22の外側油室24は,第1油路40及びロックアップ制御弁42を介してオイル溜め43に開放される。
【0036】
このとき,2次内側油室23bに導入された作動オイルは,クラッチピストン19及びサイドカバー5間の間隙を通して低圧の外側油室24へ多少ともリークすることにより,2次内側油室23bの昇圧に遅れが生ずるのに対して,1次内側油室23aは,弾性隔壁部材25により2次内側油室23bとの間を仕切られ,しかもリリーフ弁48により実質的に密閉状態に保たれているから,2次内側油室23bでは,作動オイルが導入されるや否や直ちに昇圧し,外側油室24よりも即座に高圧となるので,クラッチピストン19は,その差圧に敏感に応答してサイドカバー5の摩擦面5bに向かって前進し,摩擦ライニング28を摩擦面5bに圧接させる。すると,この圧接により内側油室23の2次内側油室23bから外側油室24への作動オイルのリークが阻止されるので,2次内側油室23bも循環回路6から引き続き導入される作動オイルによって昇圧し,クラッチピストン19はサイドカバー5側に更に強力に押圧され,ロックアップクラッチLは強力な接続状態となる。
【0037】
かくして,トルクコンバータTのドライブ運転時,減速運転時の何れのときでも,ロックアップクラッチLを接続すべくロックアップ制御弁42を切換えれば,外側油室24に対して先ず1次内側油室23aが昇圧させてクラッチピストン19の接続応答性を高め,これにより内側油室の2次内側油室23bから外側油室24への作動オイルのリークを阻止することにより,2次内側油室23bをも大きな遅れを伴うことなく昇圧させることができ,全体として1次及び2次内側油室23a,23bの昇圧が早まることになり,また弾性隔壁部材25の反発力がクラッチピストン19をサイドカバー5側に付勢することも加わって,ロックアップクラッチLの接続応答性の向上を効果的に図ることができる。しかもクラッチピストン19に対する前進押圧力が1次内側油室23a及び2次内側油室23bで順次発生することで,ロックアップクラッチLの接続ショックを軽減することができる。またロックアップクラッチの接続状態では,弾性隔壁部材25がクラッチピストン19と共にサイドカバー5側に移動することで,弾性隔壁部材25のタービンランナ3に対する摺接力が減少,若しくはゼロとなり,その間の摩耗の発生を抑えることができる。
【0038】
尚,特に減速運転時,クラッチピストン19の接続応答性を更に高めるべく,タービンランナ3のシェル3aに,循環回路6及び2次内側油室23b間を連通する通孔を設けることは有効である。即ち,減速運転時には,循環回路6での作動オイルの流れが図1の矢印方向とが逆になり,循環回路6のシェル3a側が比較的高圧となり,その作動オイルが上記通孔を通して2次内側油室23bに流入して該油室23bを昇圧せしめるので,クラッチピストン19の接続応答性を高めることになる。しかしながら,緩加速運転時には,循環回路6での作動オイルの流れは図1の矢印方向となり,循環回路6内の上記通孔付近が比較的低圧となることで,2次内側油室23bの油圧が上記通孔から循環回路6側へ逃げてしまい,減速運転時とは逆に,クラッチピストン19の作動遅れを招く結果となる。したがって,上記のような通孔を設ける場合には,減速運転時のクラッチピストン19の接続応答性向上と緩加速運転時の同ピストン19の接続応答性低下との兼ね合いを考慮して,その通孔の位置及び大きさを選定する必要がある。
【0039】
再びロックアップクラッチLを遮断すべく,ロックアップ制御弁42を切換えると,作動オイルが外側油室24から内側油室23側へ流れ,その間の差圧によりクラッチピストン19がサイドカバー5の摩擦面5bから離れる方向へ後退させ,そして上記作動オイルは循環回路6から第2油路41へと流れるので,従来のような一方向弁を設けることなく,外側油室24から内側油室23側への作動オイルの流れを確保でき,ロックアップクラッチLの冷却を促進することができる。したがって,一方向弁を不要とした分,部品点数が削減されることになり,ロックアップクラッチ付きトルクコンバータTを安価に提供することが可能となる。
【0040】
次に,図2に示す本発明の第2実施例について説明する。
【0041】
この第2実施例は,弾性隔壁部材25の小径側端部に取り付け筒部25aをバーリング成形し,これをクラッチピストン19のハブ19aの外周面に圧入して固着したもので,その他の構成は前実施例と同様の構成であるから,図2中,前実施例と対応する部分には同一の参照符号を付して,その説明を省略する。
【0042】
最後に,図3に示す本発明の第3実施例について説明する。
【0043】
この第3実施例は,タービンランナ3のシェル3a外側面に摺接させる弾性隔壁部材25を上記2実施例の場合より大径の円板状に形成して,上記シェル3aに,1次内側室23aを循環回路6に連通する通孔51を1個又は複数個穿設したもので,その他の構成は前実施例と同様の構成であるから,図3中,第1実施例との対応部分には同一の参照符号を付して,その説明を省略する。
【0044】
この第3実施例によれば,タービンランナ3がポンプインペラ2に対して駆動側となるトルクコンバータTの減速運転時には,循環回路6のタービンランナ3側が比較的高圧となることで,循環回路6からタービンランナ3のシェル3aの通孔51を通して1次内側室23aに作動オイルが流入して,1次内側室23aを昇圧させることになるため,ロックアップ制御弁42によるロックアップ制御時,1次及び2次内側室23a,23bの昇圧を,1次内側室23aの既に昇圧した分,早めることができ,したがってロックアップクラッチLの接続応答性を一層効果的に高めることができる。
【0045】
一方,ロックアップクラッチLが遮断され,ポンプインペラ2がタービンランナ3より高速で回転される加速運転時には,循環回路6では作動オイルが矢印の方向に流れ,ポンプインペラ2側よりタービンランナ3側が低圧となるから,1次内側室23aの作動オイルが前記通孔51を通して循環回路6に流出して,1次内側室23aを降圧させることになるが,通孔51は2次内側室23bとは連通しておらず,しかも1次及び2次内側室23a,23bは弾性隔壁部材25により相互に遮断されているので,1次内側室23aの降圧は2次内側室23bにまでは及ばない。しかも2次内側室23bは,循環回路6の外周部と連通していることで比較的高圧に保持される。したがって,この状態からロックアップクラッチLを接続すべくロックアップ制御弁42を切換えたときは,高圧の2次内側室23bと低圧となる外側室24との圧力差によりクラッチピストン19がサイドカバー5側に作動し,ロックアップクラッチLを支障なく接続状状態にすることができる。
【0046】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,弾性隔壁部材25は,その大径側端部をタービンランナ3側に固着して小径側端部を自由にすることもでき,またその両端部を自由にすることもできる。また本発明は,ステータ4を持たない流体継手にも適用可能である。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明の第1の特徴によれば,ポンプインペラと,このポンプインペラとの間に循環回路を画成するタービンランナと,ポンプインペラに連設され,タービンランナの外側面との間に循環回路の外周部と連通するクラッチ室を画成するサイドカバーと,前記クラッチ室に配設され,サイドカバー及びタービンランナ間を直結し得るロックアップクラッチとを備え,そのロックアップクラッチを,タービンランナに軸方向移動可能に連結されて前記クラッチ室をタービンランナ側の内側油室とサイドカバー側の外側油室との区画するクラッチピストンと,このクラッチピストンをサイドカバー内側面に対して進退させるべく内側油室及び外側油室間に差圧を発生させるロックアップ制御手段と,クラッチピストンがサイドカバー内側面側に押圧されたとき,クラッチピストン及びサイドカバー間を摩擦係合させる摩擦係合手段とで構成した,ロックアップクラッチ付き流体伝動装置において,前記タービンランナ及びクラッチピストン間に,クラッチピストンが少なくとも摩擦係合手段を非作動にする後退位置を占めるとき,前記内側油室を半径方向内方の1次内側油室と半径方向外方の2次内側油室とに区画しつゝタービンランナ及びクラッチピストン間を離反させる方向に弾発力を発揮する弾性隔壁部材を配設し,前記クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動したときは,前記1次内側油室及び2次内側油室を,その順序で前記外側油室に対して昇圧させるので,クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動したときは,先ず,1次内側油室の素早い昇圧によりクラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に前進させて,2次内側油室から外側油室への作動オイルのリークを阻止し,これにより2次内側油室の昇圧をも早めることができ,その結果,総合的に1次内側油室及び2次内側油室の昇圧が早まり,クラッチピストンをサイドカバー側に素早く強力に押圧して,ロックアップクラッチの接続応答性を効果的に高めることができる。しかもクラッチピストンに対する押圧力は1次内側油室及び2次内側油室で順次発生することで,ロックアップクラッチの接続ショックを軽減することができる。また弾性隔壁部材は,その弾発力によりクラッチピストンを前記摩擦係合手段の作動方向へ付勢するので,クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動したときは,その弾発力もクラッチピストンを内側及び外側油室の圧力差に加わることになり,ロックアップクラッチの接続応答性をより効果的に高めることができる。さらにロックアップクラッチの遮断状態では,従来のような一方向弁に頼らずとも,外側油室から内側油室への作動オイルの流通をスムーズに行うことができ,ロックアップクラッチの冷却を図ることができると共に,一方向弁を設けない分,部品点数を削減し,コストの低減に寄与し得る。
【0048】
また本発明の第2の特徴によれば,第1の特徴に加えて,前記弾性隔壁部材を,これが前記タービンランナ及びクラッチピストンの少なくとも一方に相対回転可能に摺接すると共に,その弾発力が前記クラッチピストンの,摩擦係合手段を作動する前進に応じて減少するように構成したので,ロックアップクラッチの遮断状態では,弾性隔壁部材とタービンランナ又はクラッチピストンとの摺接により,両者間の相対回転を許容しつゝ,1次及び2次内側油室間を確実に仕切ることができ,しかもロックアップクラッチの接続状態では,弾性隔壁部材とタービンランナ又はクラッチピストンとの摺接力を減少,若しくはゼロにして,その間の摩耗の発生を抑えることができる。
【0049】
さらに本発明の第3の特徴によれば,第1又は第2の特徴に加えて,前記タービンランナに,前記1次内側室を前記循環回路に連通する通孔を設けたので,タービンランナがポンプインペラに対して駆動側となる流体伝動装置の減速運転時には,循環回路のタービンランナ側が高圧となることで,循環回路から前記通孔を通して1次内側室に作動オイルが流入して,1次内側室を昇圧させることになるから,クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動すると,1次及び2次内側室の昇圧を,1次内側室の既に昇圧した分,早めることができ,したがってロックアップクラッチの接続応答性を一層効果的に高めることができる。またポンプインペラがタービンランナより高速で回転される加速運転時には,循環回路のタービンランナ側が低圧となるから,1次内側室の作動オイルが通孔を通して循環回路に流出して,1次内側室を降圧させることになるが,通孔は2次内側室とは連通しておらず,しかも1次及び2次内側室は弾性隔壁部材により相互に遮断されているため,1次内側室の降圧は2次内側室にまでは及ばず,しかも2次内側室は,循環回路の外周部と連通していることで比較的高圧に保持される。したがって,この状態からロックアップクラッチを接続状態にすべくロックアップ制御手段を作動したときは,高圧の2次内側室と低圧となる外側室との圧力差によりクラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に作動させ,ロックアップクラッチを支障なく接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るロックアップクラッチ付きトルクコンバータの縦断側面図
【図2】本発明の第2実施例を示す,図1との対応図
【図3】本発明の第3実施例を示す,図1との対応図
【符号の説明】
L・・・・・・ロックアップクラッチ
T・・・・・・流体伝動装置(トルクコンバータ)
2・・・・・・ポンプインペラ
3・・・・・・タービンランナ
5・・・・・・サイドカバー
5b・・・・・摩擦面(摩擦係合手段)
6・・・・・・循環回路
19・・・・・クラッチピストン
22・・・・・クラッチ室
23・・・・・内側油室
23a・・・・1次内側油室
23b・・・・2次内側油室
24・・・・・外側油室
25・・・・・弾性隔壁部材
28・・・・・摩擦係合手段(摩擦ライニング)
42・・・・・ロックアップ制御手段(ロックアップ制御弁)
51・・・・・通孔
【発明の属する技術分野】
本発明は,車両や産業機械の動力伝動装置に使用される,トルクコンバータや流体継手等の流体伝動装置に関し,特に,ポンプインペラと,このポンプインペラとの間に循環回路を画成するタービンランナと,ポンプインペラに連設され,タービンランナの外側面との間に循環回路の外周部と連通するクラッチ室を画成するサイドカバーと,前記クラッチ室に配設され,サイドカバー及びタービンランナ間を直結し得るロックアップクラッチとを備え,そのロックアップクラッチを,タービンランナに軸方向移動可能に連結されて前記クラッチ室をタービンランナ側の内側油室とサイドカバー側の外側油室との区画するクラッチピストンと,このクラッチピストンをサイドカバー内側面に対して進退させるべく内側油室及び外側油室間に差圧を発生させるロックアップ制御手段と,クラッチピストンがサイドカバー内側面側に押圧されたとき,クラッチピストン及びサイドカバー間を摩擦係合させる摩擦係合手段とで構成した,ロックアップクラッチ付き流体伝動装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
かゝるロックアップクラッチ付き流体伝動装置は,例えば特開平5−296313号公報に開示されているように,既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般に,かゝるロックアップクラッチ付き流体伝動装置では,ロックアップクラッチの非接続状態では,クラッチピストン及びサイドカバー間には引き摺り防止のための間隙が設けられているので,ロックアップクラッチを接続させるようにロックアップ制御手段を作動した場合には,その作動初期に作動オイルが高圧側の内側油室から上記間隙を通して低圧側の外側油室へ多少とも漏出することになり,これがロックアップクラッチの作動遅れを招く一因となっている。
【0004】
このようなロックアップクラッチの作動遅れを解消するために,上記公報には,クラッチピストンの外周にサイドカバーの内周面に密接するシール部材を装着して,上記のような作動オイルの漏出を防ぐようにしたものが開示されている。しかしながら,そうしたものでは,ロックアップクラッチの作動解除時,外側油室から内側油室側へ作動の流通を可能にすべく,一方向弁をクラッチピストンに設ける必要があり,部品点数の増加,延いてはコストアップを免れず,またクラッチピストン外周のシール部材は,ロックアップクラッチの非接続状態でポンプインペラ及びタービンランナが相対回転するとき,常にサイドカバーの内周面と擦れ合うことを余儀なくされるため,その耐久性の確保を困難にするという問題をも有している。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,ロックアップクラッチの接続応答性が良好であり,しかも部品点数が少なくて安価であり,耐久性も高いロックアップクラッチ付き流体伝動装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,本発明は,ポンプインペラと,このポンプインペラとの間に循環回路を画成するタービンランナと,ポンプインペラに連設され,タービンランナの外側面との間に循環回路の外周部と連通するクラッチ室を画成するサイドカバーと,前記クラッチ室に配設され,サイドカバー及びタービンランナ間を直結し得るロックアップクラッチとを備え,そのロックアップクラッチを,タービンランナに軸方向移動可能に連結されて前記クラッチ室をタービンランナ側の内側油室とサイドカバー側の外側油室との区画するクラッチピストンと,このクラッチピストンをサイドカバー内側面に対して進退させるべく内側油室及び外側油室間に差圧を発生させるロックアップ制御手段と,クラッチピストンがサイドカバー内側面側に押圧されたとき,クラッチピストン及びサイドカバー間を摩擦係合させる摩擦係合手段とで構成した,ロックアップクラッチ付き流体伝動装置において,前記タービンランナ及びクラッチピストン間に,クラッチピストンが少なくとも摩擦係合手段を非作動にする後退位置を占めるとき,前記内側油室を半径方向内方の1次内側油室と半径方向外方の2次内側油室とに区画しつゝタービンランナ及びクラッチピストン間を離反させる方向に弾発力を発揮する弾性隔壁部材を配設し,前記クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動したときは,前記1次内側油室及び2次内側油室を,その順序で前記外側油室に対して昇圧させることを第1の特徴とする。
【0007】
この第1の特徴によれば,クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動したときは,前記1次内側油室及び2次内側油室を,その順序で前記外側油室に対して昇圧させるので,先ず,1次内側油室の素早い昇圧によりクラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に前進させて,2次内側油室から外側油室への作動オイルのリークを阻止し,これにより2次内側油室の昇圧をも早めることができ,その結果,総合的に1次内側油室及び2次内側油室の昇圧が早まり,クラッチピストンをサイドカバー側に素早く強力に押圧して,ロックアップクラッチの接続応答性を効果的に高めることができる。しかもクラッチピストンに対する押圧力は1次内側油室及び2次内側油室で順次発生することで,ロックアップクラッチの接続ショックを軽減することができる。また弾性隔壁部材は,その弾発力によりクラッチピストンを前記摩擦係合手段の作動方向へ付勢するので,クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動したときは,その弾発力もクラッチピストンを内側及び外側油室の圧力差に加わることになり,ロックアップクラッチの接続応答性をより効果的に高めることができる。
【0008】
さらにロックアップクラッチの遮断状態では,従来のような一方向弁に頼らずとも,外側油室から内側油室への作動オイルの流通をスムーズに行うことができ,ロックアップクラッチの冷却を図ることができると共に,一方向弁を設けない分,部品点数を削減し,コストの低減に寄与し得る。
【0009】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記弾性隔壁部材を,これが前記タービンランナ及びクラッチピストンの少なくとも一方に相対回転可能に摺接すると共に,その弾発力が前記クラッチピストンの,摩擦係合手段を作動する前進に応じて減少するように構成したことを第2の特徴とする。
【0010】
この第2の特徴によれば,ロックアップクラッチの遮断状態では,弾性隔壁部材とタービンランナ又はクラッチピストンとの摺接により,両者間の相対回転を許容しつゝ,1次及び2次内側油室間を確実に仕切ることができ,しかもロックアップクラッチの接続状態では,弾性隔壁部材とタービンランナ又はクラッチピストンとの摺接力を減少,若しくはゼロにして,その間の摩耗の発生を抑えることができる。
【0011】
さらに本発明は,第1又は第2の特徴に加えて,前記タービンランナに,前記1次内側室を前記循環回路に連通する通孔を設けたことを第3の特徴とする。
【0012】
この第3の特徴によれば,タービンランナがポンプインペラに対して駆動側となる流体伝動装置の減速運転時には,循環回路のタービンランナ側が高圧となることで,循環回路から前記通孔を通して1次内側室に作動オイルが流入して,1次内側室を昇圧させることになるから,クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動すると,1次及び2次内側室の昇圧を,1次内側室の既に昇圧した分,早めることができ,したがってロックアップクラッチの接続応答性を一層効果的に高めることができる。
【0013】
またポンプインペラがタービンランナより高速で回転される加速運転時には,循環回路のタービンランナ側が低圧となるから,1次内側室の作動オイルが通孔を通して循環回路に流出して,1次内側室を降圧させることになるが,通孔は2次内側室とは連通しておらず,しかも1次及び2次内側室は弾性隔壁部材により相互に遮断されているため,1次内側室の降圧は2次内側室にまでは及ばず,しかも2次内側室は,循環回路の外周部と連通していることで比較的高圧に保持される。したがって,この状態からロックアップクラッチを接続状態にすべくロックアップ制御手段を作動したときは,高圧の2次内側室と低圧となる外側室との圧力差によりクラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に作動させ,ロックアップクラッチを支障なく接続することができる。
【0014】
尚,前記流体伝動装置は,後述する本発明の実施例中のトルクコンバータTに対応し,また前記摩擦係合手段は摩擦面5b及び摩擦ライニング28に対応し,前記ロックアップ制御手段はロックアップ制御弁42に対応する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0016】
図1は本発明の第1実施例に係るロックアップクラッチ付きトルクコンバータの縦断側面図,図2は本発明の第2実施例を示す,図1との対応図,図3は本発明の第3実施例を示す,図1との対応図である。
【0017】
先ず,図1において,流体伝動装置としてのトルクコンバータTは,ポンプインペラ2と,それと対置されるタービンランナ3と,それらの内周部間に配置されるステータ4とを備え,これら三部材2,3,4間には作動オイルによる動力伝達のための循環回路6が画成される。
【0018】
ポンプインペラ2のシェル2aの外周部には,タービンランナ3の外側面を覆うサイドカバー5が溶接により一体的に連設される。サイドカバー5の外周面には,周方向に配列される複数の連結ボス7が溶接されており,これらに,エンジンのクランク軸1に結合した駆動板8がボルト9で固着される。タービンランナ3のハブ3bとサイドカバー5との間にスラストニードルベアリング36が介裝される。
【0019】
トルクコンバータTの中心部にクランク軸1と同軸上に並ぶ出力軸10が配置され,この出力軸10は,タービンランナ3のハブ3bにスプライン嵌合されると共に,サイドカバー5中心部の支持筒5aに軸受ブッシュ18を介して回転自在に支承される。出力軸10は図示しない多段変速機の主軸となる。
【0020】
出力軸10の外周には,ステータ4のハブ4bをフリーホイール11を介して支承する円筒状のステータ軸12が配置され,これら出力軸10及びステータ軸12間には,それらの相対回転を許容するニードルベアリング13が介裝される。ステータ軸12の外端部はミッションケース14に回転不能に支持される。
【0021】
ステータ4のハブ4bの軸方向両端面と,これらに対向するポンプインペラ2及びタービンランナ3の各ハブ2b,3bの端面との間にスラストニードルベアリング37,37′が介裝され,これらスラストニードルベアリング37,37′と前記スラストニードルベアリング36とにより,ポンプインペラ2及びサイドカバー5間でのタービンランナ3及びステータ4の軸方向移動が規制される。
【0022】
またステータ軸12の外周には,ポンプインペラ2に結合した補機駆動軸20が相対回転可能に配置され,この補機駆動軸20によって,トルクコンバータTに作動オイルを供給するオイルポンプ21が駆動されるようになっている。
【0023】
タービンランナ3及びサイドカバー5間には,前記循環回路6と外周側で連通するクラッチ室22が画成され,このクラッチ室22に,タービンランナ3及びサイドカバー5間を直結し得るロックアップクラッチLが設けられる。即ち,ロックアップクラッチLの主体をなすクラッチピストン19が,クラッチ室22をタービンランナ3側の内側油室23とサイドカバー5側の外側油室24とに区画するようにクラッチ室22に配置される。このクラッチピストン19は,タービンランナ3のハブ3bの外周面に摺動可能に支承されるハブ19aに溶接されるもので,その一側面には,サイドカバー5の内側面に形成された環状の摩擦面5bに対向する摩擦ライニング28が付設される。またクラッチピストン19は,公知のトルクダンパDを介して,タービンランナ3の外側面に固設された伝動板34に軸方向移動可能に連結される。
【0024】
タービンランナ3とクラッチピストン19との間には隔壁部材25が配設される。この隔壁部材25は,金属製の円錐状ダイヤフラムスプリングからなっており,その小径側端部は,前記ハブ19aの外周に嵌合されると共に,そのハブ19aの環状肩部26とクラッチピストン19との間で挟持,固定される。而して,この弾性隔壁部材25は,クラッチピストン19が少なくとも摩擦ライニング28をサイドカバー5の摩擦面5bから離間させる後退位置を占めるとき,前記内側油室23を半径方向内方の1次内側油室23aと半径方向外方の2次内側油室23bとに区画しつゝタービンランナ3及びクラッチピストン19間を離反させる方向に弾発力を発揮するように,その大径側端部をタービンランナ3の外側面に相対回転可能に摺接させる。この弾性隔壁部材25のばね定数は,上記弾発力がクラッチピストン19の摩擦面5b側への前進に応じて減少し,クラッチピストン19が摩擦面5bに接触したときゼロとなるように,即ち該部材25の大径側端部がタービンランナ3から実質的に離間するように設定される。
【0025】
タービンランナ3のハブ3bには,スラストニードルベアリング37の内周側で1次内側油室23aをタービンランナ3のハブ3b及びステータ4のハブ4b間の環状油路29に連通する通孔30が穿設され,またタービンランナ3のシェル3aには,1次内側油室23aを該シェル3aとステータ4のハブ4b側面との間隙に連通する通孔31が穿設される。
【0026】
出力軸10の中心部には,横孔39及びスラストニードルベアリング36を介してクラッチ室22の外側油室24に連通する第1油路40が設けられる。また補機駆動軸20とステータ軸12との間には第2油路41が画成され,この第2油路41は,ポンプインペラ2のハブ2b及びステータ4のハブ4b間の環状油路29′及び前記スラストニードルベアリング37′を介して循環回路6の内周側と連通される。
【0027】
また出力軸10及びステータ軸12間には第3油路44が画成され,この第3油路44は,タービンランナ3のハブ3b及びステータ4のハブ4b間の環状油路29や前記通孔30,31及びスラストニードルベアリング37を介して循環回路6の内周側と1次内側油室23aとに連通される。その際,前記両環状油路29,29′間の連通を遮断するために,フリーホイール11のインナレース11aとステータ軸12との間にシール部材49が介裝される。
【0028】
上記第1油路40及び第2油路41は,ロックアップ制御弁42により,オイルポンプ21の吐出側とオイル溜め43とに交互に接続されるようになっている。また循環回路6及び1次内側油室23aを所定油圧に保持するリリーフ弁48を介してオイル溜め43に接続される。したがって循環回路6及び1次内側油室23aの余剰圧力はリリーフ弁48を通してオイル溜め43に解放される。
【0029】
次に,この実施例の作用について説明する。
【0030】
トルクコンバータTのドライブ状態では,ロックアップ制御弁42は,第1油路40をオイルポンプ21の吐出側に接続する一方,第2油路41をオイル溜め43に接続するように,図示しない電子制御ユニットにより制御される。したがって,エンジンのクランク軸1の出力トルクが駆動板7,サイドカバー5,ポンプインペラ2へと伝達して,それを回転駆動し,更にオイルポンプ21をも駆動すると,オイルポンプ21が吐出した作動オイルは矢印aで示すように流れ,ロックアップ制御弁42から第1油路40,横孔39及びスラストニードルベアリング36,クラッチ室22の外側油室24,内側油室23の2次内側油室23bを順次経て循環回路6に流入し,該回路6を満たした後,スラストニードルベアリング37′,環状油路29′を経て第2油路41に移り,ロックアップ制御弁42からオイル溜め43に還流する。
【0031】
而して,クラッチ室22では,上記のような作動オイルの流れにより外側油室24の方が内側油室23よりも高圧となり,その圧力差によりクラッチピストン19がサイドカバー5の摩擦面5bから離れるように後退するので,ロックアップクラッチLは遮断状態となっており,ポンプインペラ2及びタービンランナ3の相対回転を許容している。したがって,クランク軸1からポンプインペラ2が回転駆動されると,循環回路6を満たしている作動オイルが矢印のように循環回路6を循環することにより,ポンプインペラ2の回転トルクをタービンランナ3に伝達し,出力軸10を駆動する。
【0032】
このとき,ポンプインペラ2及びタービンランナ3間でトルクの増幅作用が生じていれば,それに伴う反力がステータ4に負担され,ステータ4は,フリーホイール11のロック作用により固定される。
【0033】
一方,クラッチピストン19に固着された弾性隔壁部材25は,前記圧力差によるクラッチピストン19の後退により反発力を強めながら大径側端部をタービンランナ3の外側面に摺接させているから,タービンランナ3との相対回転を許容されつゝ,1次及び2次内側油室23a,23b間を確実に仕切っている。
【0034】
このようなトルクコンバータTのドライブ運転時や,タービンランナ3がポンプインペラ2に対して駆動側となって循環回路6で作動オイルが図示とは反対方向に流れる減速運転時に,ロックアップクラッチLを接続状態にすべく,電子制御ユニットによりロックアップ制御弁42を切換えると,オイルポンプ21が吐出した作動オイルは,先刻とは反対に矢印bのように流れ,ロックアップ制御弁42から第2油路41,環状油路29′,スラストニードルベアリング37′を順次経て循環回路6に流入し,そして一方では通孔30,31を介して1次内側油室23aに移り,他方では循環回路6の外周部から2次内側油室23bに移る。
【0035】
クラッチ室22の外側油室24は,第1油路40及びロックアップ制御弁42を介してオイル溜め43に開放される。
【0036】
このとき,2次内側油室23bに導入された作動オイルは,クラッチピストン19及びサイドカバー5間の間隙を通して低圧の外側油室24へ多少ともリークすることにより,2次内側油室23bの昇圧に遅れが生ずるのに対して,1次内側油室23aは,弾性隔壁部材25により2次内側油室23bとの間を仕切られ,しかもリリーフ弁48により実質的に密閉状態に保たれているから,2次内側油室23bでは,作動オイルが導入されるや否や直ちに昇圧し,外側油室24よりも即座に高圧となるので,クラッチピストン19は,その差圧に敏感に応答してサイドカバー5の摩擦面5bに向かって前進し,摩擦ライニング28を摩擦面5bに圧接させる。すると,この圧接により内側油室23の2次内側油室23bから外側油室24への作動オイルのリークが阻止されるので,2次内側油室23bも循環回路6から引き続き導入される作動オイルによって昇圧し,クラッチピストン19はサイドカバー5側に更に強力に押圧され,ロックアップクラッチLは強力な接続状態となる。
【0037】
かくして,トルクコンバータTのドライブ運転時,減速運転時の何れのときでも,ロックアップクラッチLを接続すべくロックアップ制御弁42を切換えれば,外側油室24に対して先ず1次内側油室23aが昇圧させてクラッチピストン19の接続応答性を高め,これにより内側油室の2次内側油室23bから外側油室24への作動オイルのリークを阻止することにより,2次内側油室23bをも大きな遅れを伴うことなく昇圧させることができ,全体として1次及び2次内側油室23a,23bの昇圧が早まることになり,また弾性隔壁部材25の反発力がクラッチピストン19をサイドカバー5側に付勢することも加わって,ロックアップクラッチLの接続応答性の向上を効果的に図ることができる。しかもクラッチピストン19に対する前進押圧力が1次内側油室23a及び2次内側油室23bで順次発生することで,ロックアップクラッチLの接続ショックを軽減することができる。またロックアップクラッチの接続状態では,弾性隔壁部材25がクラッチピストン19と共にサイドカバー5側に移動することで,弾性隔壁部材25のタービンランナ3に対する摺接力が減少,若しくはゼロとなり,その間の摩耗の発生を抑えることができる。
【0038】
尚,特に減速運転時,クラッチピストン19の接続応答性を更に高めるべく,タービンランナ3のシェル3aに,循環回路6及び2次内側油室23b間を連通する通孔を設けることは有効である。即ち,減速運転時には,循環回路6での作動オイルの流れが図1の矢印方向とが逆になり,循環回路6のシェル3a側が比較的高圧となり,その作動オイルが上記通孔を通して2次内側油室23bに流入して該油室23bを昇圧せしめるので,クラッチピストン19の接続応答性を高めることになる。しかしながら,緩加速運転時には,循環回路6での作動オイルの流れは図1の矢印方向となり,循環回路6内の上記通孔付近が比較的低圧となることで,2次内側油室23bの油圧が上記通孔から循環回路6側へ逃げてしまい,減速運転時とは逆に,クラッチピストン19の作動遅れを招く結果となる。したがって,上記のような通孔を設ける場合には,減速運転時のクラッチピストン19の接続応答性向上と緩加速運転時の同ピストン19の接続応答性低下との兼ね合いを考慮して,その通孔の位置及び大きさを選定する必要がある。
【0039】
再びロックアップクラッチLを遮断すべく,ロックアップ制御弁42を切換えると,作動オイルが外側油室24から内側油室23側へ流れ,その間の差圧によりクラッチピストン19がサイドカバー5の摩擦面5bから離れる方向へ後退させ,そして上記作動オイルは循環回路6から第2油路41へと流れるので,従来のような一方向弁を設けることなく,外側油室24から内側油室23側への作動オイルの流れを確保でき,ロックアップクラッチLの冷却を促進することができる。したがって,一方向弁を不要とした分,部品点数が削減されることになり,ロックアップクラッチ付きトルクコンバータTを安価に提供することが可能となる。
【0040】
次に,図2に示す本発明の第2実施例について説明する。
【0041】
この第2実施例は,弾性隔壁部材25の小径側端部に取り付け筒部25aをバーリング成形し,これをクラッチピストン19のハブ19aの外周面に圧入して固着したもので,その他の構成は前実施例と同様の構成であるから,図2中,前実施例と対応する部分には同一の参照符号を付して,その説明を省略する。
【0042】
最後に,図3に示す本発明の第3実施例について説明する。
【0043】
この第3実施例は,タービンランナ3のシェル3a外側面に摺接させる弾性隔壁部材25を上記2実施例の場合より大径の円板状に形成して,上記シェル3aに,1次内側室23aを循環回路6に連通する通孔51を1個又は複数個穿設したもので,その他の構成は前実施例と同様の構成であるから,図3中,第1実施例との対応部分には同一の参照符号を付して,その説明を省略する。
【0044】
この第3実施例によれば,タービンランナ3がポンプインペラ2に対して駆動側となるトルクコンバータTの減速運転時には,循環回路6のタービンランナ3側が比較的高圧となることで,循環回路6からタービンランナ3のシェル3aの通孔51を通して1次内側室23aに作動オイルが流入して,1次内側室23aを昇圧させることになるため,ロックアップ制御弁42によるロックアップ制御時,1次及び2次内側室23a,23bの昇圧を,1次内側室23aの既に昇圧した分,早めることができ,したがってロックアップクラッチLの接続応答性を一層効果的に高めることができる。
【0045】
一方,ロックアップクラッチLが遮断され,ポンプインペラ2がタービンランナ3より高速で回転される加速運転時には,循環回路6では作動オイルが矢印の方向に流れ,ポンプインペラ2側よりタービンランナ3側が低圧となるから,1次内側室23aの作動オイルが前記通孔51を通して循環回路6に流出して,1次内側室23aを降圧させることになるが,通孔51は2次内側室23bとは連通しておらず,しかも1次及び2次内側室23a,23bは弾性隔壁部材25により相互に遮断されているので,1次内側室23aの降圧は2次内側室23bにまでは及ばない。しかも2次内側室23bは,循環回路6の外周部と連通していることで比較的高圧に保持される。したがって,この状態からロックアップクラッチLを接続すべくロックアップ制御弁42を切換えたときは,高圧の2次内側室23bと低圧となる外側室24との圧力差によりクラッチピストン19がサイドカバー5側に作動し,ロックアップクラッチLを支障なく接続状状態にすることができる。
【0046】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,弾性隔壁部材25は,その大径側端部をタービンランナ3側に固着して小径側端部を自由にすることもでき,またその両端部を自由にすることもできる。また本発明は,ステータ4を持たない流体継手にも適用可能である。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明の第1の特徴によれば,ポンプインペラと,このポンプインペラとの間に循環回路を画成するタービンランナと,ポンプインペラに連設され,タービンランナの外側面との間に循環回路の外周部と連通するクラッチ室を画成するサイドカバーと,前記クラッチ室に配設され,サイドカバー及びタービンランナ間を直結し得るロックアップクラッチとを備え,そのロックアップクラッチを,タービンランナに軸方向移動可能に連結されて前記クラッチ室をタービンランナ側の内側油室とサイドカバー側の外側油室との区画するクラッチピストンと,このクラッチピストンをサイドカバー内側面に対して進退させるべく内側油室及び外側油室間に差圧を発生させるロックアップ制御手段と,クラッチピストンがサイドカバー内側面側に押圧されたとき,クラッチピストン及びサイドカバー間を摩擦係合させる摩擦係合手段とで構成した,ロックアップクラッチ付き流体伝動装置において,前記タービンランナ及びクラッチピストン間に,クラッチピストンが少なくとも摩擦係合手段を非作動にする後退位置を占めるとき,前記内側油室を半径方向内方の1次内側油室と半径方向外方の2次内側油室とに区画しつゝタービンランナ及びクラッチピストン間を離反させる方向に弾発力を発揮する弾性隔壁部材を配設し,前記クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動したときは,前記1次内側油室及び2次内側油室を,その順序で前記外側油室に対して昇圧させるので,クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動したときは,先ず,1次内側油室の素早い昇圧によりクラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に前進させて,2次内側油室から外側油室への作動オイルのリークを阻止し,これにより2次内側油室の昇圧をも早めることができ,その結果,総合的に1次内側油室及び2次内側油室の昇圧が早まり,クラッチピストンをサイドカバー側に素早く強力に押圧して,ロックアップクラッチの接続応答性を効果的に高めることができる。しかもクラッチピストンに対する押圧力は1次内側油室及び2次内側油室で順次発生することで,ロックアップクラッチの接続ショックを軽減することができる。また弾性隔壁部材は,その弾発力によりクラッチピストンを前記摩擦係合手段の作動方向へ付勢するので,クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動したときは,その弾発力もクラッチピストンを内側及び外側油室の圧力差に加わることになり,ロックアップクラッチの接続応答性をより効果的に高めることができる。さらにロックアップクラッチの遮断状態では,従来のような一方向弁に頼らずとも,外側油室から内側油室への作動オイルの流通をスムーズに行うことができ,ロックアップクラッチの冷却を図ることができると共に,一方向弁を設けない分,部品点数を削減し,コストの低減に寄与し得る。
【0048】
また本発明の第2の特徴によれば,第1の特徴に加えて,前記弾性隔壁部材を,これが前記タービンランナ及びクラッチピストンの少なくとも一方に相対回転可能に摺接すると共に,その弾発力が前記クラッチピストンの,摩擦係合手段を作動する前進に応じて減少するように構成したので,ロックアップクラッチの遮断状態では,弾性隔壁部材とタービンランナ又はクラッチピストンとの摺接により,両者間の相対回転を許容しつゝ,1次及び2次内側油室間を確実に仕切ることができ,しかもロックアップクラッチの接続状態では,弾性隔壁部材とタービンランナ又はクラッチピストンとの摺接力を減少,若しくはゼロにして,その間の摩耗の発生を抑えることができる。
【0049】
さらに本発明の第3の特徴によれば,第1又は第2の特徴に加えて,前記タービンランナに,前記1次内側室を前記循環回路に連通する通孔を設けたので,タービンランナがポンプインペラに対して駆動側となる流体伝動装置の減速運転時には,循環回路のタービンランナ側が高圧となることで,循環回路から前記通孔を通して1次内側室に作動オイルが流入して,1次内側室を昇圧させることになるから,クラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段を作動すると,1次及び2次内側室の昇圧を,1次内側室の既に昇圧した分,早めることができ,したがってロックアップクラッチの接続応答性を一層効果的に高めることができる。またポンプインペラがタービンランナより高速で回転される加速運転時には,循環回路のタービンランナ側が低圧となるから,1次内側室の作動オイルが通孔を通して循環回路に流出して,1次内側室を降圧させることになるが,通孔は2次内側室とは連通しておらず,しかも1次及び2次内側室は弾性隔壁部材により相互に遮断されているため,1次内側室の降圧は2次内側室にまでは及ばず,しかも2次内側室は,循環回路の外周部と連通していることで比較的高圧に保持される。したがって,この状態からロックアップクラッチを接続状態にすべくロックアップ制御手段を作動したときは,高圧の2次内側室と低圧となる外側室との圧力差によりクラッチピストンを摩擦係合手段の作動方向に作動させ,ロックアップクラッチを支障なく接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るロックアップクラッチ付きトルクコンバータの縦断側面図
【図2】本発明の第2実施例を示す,図1との対応図
【図3】本発明の第3実施例を示す,図1との対応図
【符号の説明】
L・・・・・・ロックアップクラッチ
T・・・・・・流体伝動装置(トルクコンバータ)
2・・・・・・ポンプインペラ
3・・・・・・タービンランナ
5・・・・・・サイドカバー
5b・・・・・摩擦面(摩擦係合手段)
6・・・・・・循環回路
19・・・・・クラッチピストン
22・・・・・クラッチ室
23・・・・・内側油室
23a・・・・1次内側油室
23b・・・・2次内側油室
24・・・・・外側油室
25・・・・・弾性隔壁部材
28・・・・・摩擦係合手段(摩擦ライニング)
42・・・・・ロックアップ制御手段(ロックアップ制御弁)
51・・・・・通孔
Claims (3)
- ポンプインペラ(2)と,このポンプインペラ(2)との間に循環回路(6)を画成するタービンランナ(3)と,ポンプインペラ(2)に連設され,タービンランナ(3)の外側面との間に循環回路(6)の外周部と連通するクラッチ室(22)を画成するサイドカバー(5)と,前記クラッチ室(22)に配設され,サイドカバー(5)及びタービンランナ(3)間を直結し得るロックアップクラッチ(L)とを備え,そのロックアップクラッチ(L)を,タービンランナ(3)に軸方向移動可能に連結されて前記クラッチ室(22)をタービンランナ(3)側の内側油室(23)とサイドカバー(5)側の外側油室(24)との区画するクラッチピストン(19)と,このクラッチピストン(19)をサイドカバー(5)内側面に対して進退させるべく内側油室(23)及び外側油室(24)間に差圧を発生させるロックアップ制御手段(42)と,クラッチピストン(19)がサイドカバー(5)内側面側に押圧されたとき,クラッチピストン(19)及びサイドカバー(5)間を摩擦係合させる摩擦係合手段(5b,28)とで構成した,ロックアップクラッチ付き流体伝動装置において,前記タービンランナ(3)及びクラッチピストン(19)間に,クラッチピストン(19)が少なくとも摩擦係合手段(5b,28)を非作動にする後退位置を占めるとき,前記内側油室(23)を半径方向内方の1次内側油室(23a)と半径方向外方の2次内側油室(23b)とに区画しつゝタービンランナ(3)及びクラッチピストン(19)間を離反させる方向に弾発力を発揮する弾性隔壁部材(25)を配設し,前記クラッチピストン(19)を摩擦係合手段(5b,28)の作動方向に押圧すべくロックアップ制御手段(42)を作動したときは,前記1次内側油室(23a)及び2次内側油室(23b)を,その順序で前記外側油室(24)に対して昇圧させることを特徴とする,ロックアップクラッチ付き流体伝動装置。
- 請求項1記載のロックアップクラッチ付き流体伝動装置において,
前記弾性隔壁部材(25)を,これが前記タービンランナ(3)及びクラッチピストン(19)の少なくとも一方に相対回転可能に摺接すると共に,その弾発力が前記クラッチピストン(19)の,摩擦係合手段(5b,28)を作動する前進に応じて減少するように構成したことを特徴とする,ロックアップクラッチ付き流体伝動装置。 - 請求項1又は第2に記載のロックアップクラッチ付き流体伝動装置において,
前記タービンランナ(3)に,前記1次内側室(23a)を前記循環回路(6)に連通する通孔(51)を設けたことを特徴とする,ロックアップクラッチ付き流体伝動装置。
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-
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