JP2004035798A - オレフィン系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】無機充填剤を高比率で含有するにもかかわらず、押出成形において吐出量及び線速度が高く、かつ可塑剤のブリードがないオレフィン系熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリオレフィン系樹脂100重量部、(B)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステル0.2〜10重量部、並びに(C)無機充填剤50〜300重量部を含むオレフィン系樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】(A)ポリオレフィン系樹脂100重量部、(B)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステル0.2〜10重量部、並びに(C)無機充填剤50〜300重量部を含むオレフィン系樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィン系樹脂組成物に関し、更に詳しくは、電線及びケーブルの絶縁被覆用に好適に使用し得るオレフィン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、オレフィン系樹脂は、エコマテリアル電線の被覆材として注目されており、自動車用、家電用、OA用等の絶縁被覆材として広範囲に使用されてきた。
【0003】
特開昭52−59648号公報には、ポリオレフィン、水酸化マグネシウム又はアルミナ水和物及び2−ヒドロキシ−アルコキシ−ベンゾフェノンから成る難燃性ポリオレフィン組成物が開示されている。該発明は、2−ヒドロキシ−アルコキシ−ベンゾフェノンを所定量でポリオレフィン及び水酸化マグネシウム又はアルミナ水和物に加えることにより、外観及び耐衝撃性を改善する。
【0004】
特開平1−141929号公報には、ハロゲンを含まないポリオレフィン樹脂、無機充填剤及びシリコーンオイルを含む難燃性樹脂組成物が開示されている。該発明は、シリコーンオイルを所定量で添加することにより、無機充填剤の量を比較的少なくしても、良好な難燃性を維持し得るものである。無機充填剤を多量に添加することによる生じる機械的特性、可撓性及び耐外傷性の低下を防止することができる。
【0005】
特開平5−17692号公報には、水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱物を粉砕し、脂肪酸、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤より選ばれた表面処理材で表面処理をした後、ポリエチレン、エチレンビニルアセテート、エチレンアクリレート、エチレンメタクリレート、エチレンメチルメタクリレート等のプラスチック又はゴムに添加し、難燃性を付与すると共に耐酸性を向上せしめた難燃性組成物が開示されている。該発明は、水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱物を粉砕し、これを上記の表面処理材で表面処理することにより耐酸性を向上せしめるものである。
【0006】
特開昭53−14751号公報には、ポリオレフィンと、エチレン・プロピレンゴムと、水酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムをカルボン酸、カルボン酸金属塩又はアルキルアミンで表面処理した表面処理水酸化マグネシウムの所定比率から成る充填剤と、炭素とを夫々所定量で含む難燃性ポリオレフィン樹脂組成物が開示されている。
【0007】
上記の各公報に記載された発明では、十分な難燃性を得るために水酸化マグネシウム等の無機フィラーを多量に充填する。その結果、押出負荷が、従来の塩化ビニル系材料に比べ高くなる傾向にあり、従って、押出成形において吐出量及び線速度が低くなり、高速度で生産できないと言う欠点を有していた。
【0008】
特開2001−151974号公報には、所定のゴム変性スチレン系樹脂100質量部とリン化合物1〜20質量部とを含有する難燃性樹脂組成物であって、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、天然ワックス、合成ワックス、所定の融点を持つフッ素樹脂、及び所定の動粘度を有するシリコーンオイルから選ばれた1種以上の添加剤成分を含有することが開示されている。ここで、該添加剤成分は、難燃性を損なうことなく、流動性や衝撃強度を改良するためにいわゆる滑剤である。
【0009】
このように滑剤を使用する樹脂組成物であっても、無機充填剤を多量に配合すると押出成形において線速度が低くなり、高速度で生産できない。また、脂肪酸エステル等ではブリードが生ずると言う欠点があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、無機充填剤を高比率で含有するにもかかわらず、押出成形において吐出量及び線速度が高く、かつ可塑剤のブリードがないオレフィン系熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を続けた。その結果、公知の種々の滑剤の中から脂肪酸アミドと脂肪酸エステルとの組合わせを選択し、かつこれらを所定量で加えれば、ポリオレフィン系樹脂に多量の無機充填剤を含めても、樹脂組成物が、押出成形において吐出量及び線速度が高く、良好な生産性を維持でき、かつ可塑剤のブリードがないことを見出したのである。
【0012】
即ち、本発明は、
(1)(A)ポリオレフィン系樹脂 100重量部、
(B)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステル 0.2〜10重量部、並びに
(C)無機充填剤 50〜300重量部
を含むオレフィン系樹脂組成物である。
【0013】
好ましい態様として、
(2)脂肪酸アミドと脂肪酸エステルとの重量比が、1/99〜99/1である上記(1)記載のオレフィン系樹脂組成物、
(3)脂肪酸アミドと脂肪酸エステルとの重量比が、1/9〜9/1である上記(1)記載のオレフィン系樹脂組成物、
(4)脂肪酸アミドと脂肪酸エステルとの重量比が、2/8〜8/2である上記(1)記載のオレフィン系樹脂組成物、
(5)(B)の量が、0.3〜7重量部である上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物、
(6)(B)の量が、0.5〜5重量部である上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物、
(7)(A)が、エチレンと次式(I)で示される単量体
【化2】
CH2=C(R1)−R2 (I)
[上記式中、R1は、H又はメチル基であり、R2は、(O=)C−OR3又はO−C(=O)R3であり、ここで、R3は、H又は、直鎖若しくは分枝の炭素数1〜10個のアルキル基である]
との共重合体を主成分とする上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物、
(8)(A)が、エチレンアクリレート共重合体(EEA)、エチレンメタクリレート共重合体(EMA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)及び鹸化エチレン酢酸ビニル共重合体(EVOH)より成る群から選ばれる上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物、
(9)(C)が、金属水和物、炭酸カルシウム及びタルクより成る群から選ばれる1種以上である上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物、
(10)上記(1)〜(9)のいずれか一つに記載の押出成形用のオレフィン系樹脂組成物、
(11)上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の電線被覆用のオレフィン系樹脂組成物
を挙げることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
(A)ポリオレフィン系樹脂
本発明のポリオレフィン系樹脂(A)としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及び、これらの酸変性物から選ばれる1種類以上が挙げられる。好ましくはエチレンと次式(I)で示される単量体との共重合体を主成分とするものが使用される。
【0015】
【化3】
CH2=C(R1)−R2 (I)
【0016】
上記式中、R1は、H又はメチル基であり、R2は、(O=)C−OR3又はO−C(=O)R3である。ここで、R3は、H又は、直鎖若しくは分枝の炭素数1〜10個のアルキル基、好ましくは1〜4個のアルキル基である。
【0017】
式(I)で示される単量体の好ましい例としては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、酢酸イソプロペニル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを単独で、または2種以上組合せて使用できる。特に好ましい単量体は、酢酸ビニル及びエチルアクリレートから成る群より選ばれる。
【0018】
上記の共重合体におけるエチレンと式(I)で示される単量体との割合は特に限定されない。好ましくはエチレン92〜70重量部に対して式(I)で示される単量体8〜30重量部、より好ましくはエチレン80〜70重量部に対して式(I)で示される単量体20〜30重量部の割合である。
【0019】
エチレンと式(I)で示される単量体との共重合体としては、例えば、エチレンアクリレート共重合体(EEA)、エチレンメタクリレート共重合体(EMA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、鹸化エチレン酢酸ビニル共重合体(EVOH)等が挙げられる。
【0020】
エチレンと式(I)で示される単量体との共重合体は更に、変性オレフィンモノマー等の単量体を、共重合成分として含むことができる。これらの単量体の含有量は、好ましくは上記の共重合体全体の50重量%以下である。
【0021】
エチレンアクリレート共重合体(EEA)、エチレンメタクリレート共重合体(EMA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、鹸化エチレン酢酸ビニル共重合体(EVOH)を用いる場合、必要に応じて、0〜80重量%のポリエチレン系樹脂を併用するとより、難燃性を向上せしめることができる。また、必要に応じて、酸変性したプロピレン系樹脂、又は、エチレン系樹脂を併用することにより、無機充填剤(特に、金属水和物)との相互作用によって、無機充填剤を均一に分散せしめることができる。
【0022】
(B)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステル
【0023】
(B−1)脂肪酸アミド
本発明において使用される脂肪酸アミドとしては、例えば、モノアミド、エチレンビスアミド、メチレンビスアミド、オレイルアミド、エルクアミド、パルミトアミド、及び、炭素数10〜30個、好ましくは10〜20個の高級脂肪酸のアミド、例えばメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。該脂肪酸アミドの市販品として、例えば、カオーワックスEB−P(商標、花王株式会社製、エチレンビスステアリン酸アミド)を使用し得る。
【0024】
(B−2)脂肪酸エステル
本発明において使用される脂肪酸エステルとしては、例えば、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ポリグリセリド、ペンタエリスリトール、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、高級アルコールとの(部分)エステル等が挙げられる。該高級アルコールとしては、ステアリルアルコール、ココナットアルコール、メリシルアルコール、セチルアルコール、及び、炭素数12〜22個の飽和又は不飽和脂肪酸と、炭素数4〜22個の1価脂肪酸アルコールから得られるエステル化合物であって沸点が200℃以上のものが好ましい。脂肪酸エステルとしては高級脂肪酸エステルが好ましく、例えば、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチル、ステアリン酸パルミチル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸オクチル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、トリメチロールプロパンジステアレート等が挙げられる。
【0025】
上記(B−1)と(B−2)との配合比は、1/99〜99/1、好ましくは1/9〜9/1、より好ましくは2/8〜8/2である。上記の範囲外では、オレフィン系樹脂組成物に良好な成形性を付与することができない。
【0026】
成分(B)の配合量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100重量部に対して、上限が10重量部、好ましくは7重量部、更に好ましくは5重量部であり、下限が0.2重量部、好ましくは0.3重量部、更に好ましくは0.5重量部である。成分(B)が上記上限を超えては、ブリードが著しく、上記下限未満では、良好な成形性が得られない。
【0027】
(C)無機充填剤
本発明に使用される無機充填剤としては、例えば、タルク、クレー、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、リン化合物、シリカ及び金属水和物等が挙げられる。金属水和物としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の水酸基又は結晶水を有する化合物を単独若しくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの金属水和物のうち、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましい。金属水和物は少なくとも一部が、シランカップリング剤、脂肪酸、脂肪酸エステルで表面処理されていることが好ましい。また、表面処理されていない無処理の金属水和物や他の表面処理剤で処理した金属水和物を適宜併用することができる。難燃性が要求される場合には、表面処理された金属水和物が好ましく使用される。
【0028】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、エチレン・α−オレフィン共重合体を配合することができる。エチレン・α−オレフィン系共重合体としては、例えば、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレンプロピレンゴム等が挙げられる。特に、エチレン−1−ヘキセン共重合体が、柔軟性に優れ、かつ強度が優れ、物性バランスが優れるので好ましく使用できる。エチレン・α−オレフィン共重合体は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下で配合することができる。
【0029】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわないかぎり、安定剤、着色剤、可塑剤、離型剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、補強剤、発泡剤、耐候(光)剤などの添加剤を配合することができる。
【0030】
本発明の組成物の製造には一般に用いられる混合機、混練機、定量フィーダー等を用いることが出来るが、以下の例により限定されるものではない。
【0031】
ペレット状コンパウンドの加工において用いられる混合機としては、予備分散、分配、拡散混合を目的とするブレンダーが予備混合機として用いられる。ブレンダーの代表例としては、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー(スーパーミキサー)、タンブラーミキサー、タンブルミキサー、エアーブレンダーなどが挙げられる。これらの予備混合機は、目的に応じて選定される。また、各配合成分は予備混合されることなく定量フィーダーで混練機に供給することも可能である。これらの予備混合機は、配合物をペレット状にする予備混合機として使用されるだけでなく、ドライブレンドして直接成形可能な組成物として供給することも可能である。
【0032】
本発明の組成物は、通常の熱可塑性樹脂の混合、混練に用いられる通常の装置、設備を用いて問題なく製造できる。押出機としては、ベント付きの単軸、二軸異方向、二軸同方向押出機が望ましい。また、押出機に代えて、バンバリーミキサー、ニーダー、コニーダーなどの混練機を用いても良い。
【0033】
本発明のオレフィン系樹脂組成物は、例えば、電線被覆材、又は自動車用、家電用、OA用等の絶縁被覆材、難燃性シート、フィルム成形品等として使用される。
【0034】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0035】
実施例及び比較例に用いた各種成分は、以下のとおりである。
【0036】
<(A):ポリオレフィン系樹脂>
(a−1)エチレン‐エチルアクリレート共重合体(A−719、商標、三井デュポン・ポリケミカル株式会社製)、エチルアクリレート含有量:14重量%
(a−2)エチレン‐酢酸ビニル共重合体(V−5274、商標、三井デュポン・ポリケミカル株式会社製)、酢酸ビニル含有量:17重量%
【0037】
<(B):脂肪酸アミド及び脂肪酸エステル>
(b−1)高級脂肪酸アミド(EB−P、商標、花王株式会社製)、エチレンビスステアリン酸アミド
(b−2)高級脂肪酸エステル(S−100、商標、理研ビタミン株式会社製)、グリセリンモノステアレート
(b−3)高級脂肪酸アミドと高級脂肪酸エステルとの混合物(ファルパックL−1014、商標、日本油脂株式会社製)、高級脂肪酸アミドと高級脂肪酸エステルとの70/30(重量比)の混合物
【0038】
<(C):無機充填剤>
(c−1)金属水和物(キスマ5A、商標、協和化学株式会社製)、ステアリン酸表面処理水酸化マグネシウム
(c−2)金属水和物(ハイジライトH−42M、商標、昭和電工株式会社製)、水酸化アルミニウム
【0039】
<その他の成分>
(d−1)エチレン・α―オレフィン共重合体(KS240、商標、日本ポリケム株式会社製)、エチレン−オクテン共重合体
(d−2)ステアリン酸カルシウム(Ca−St、離型剤)
【0040】
<比較成分>
(bc−1)滑剤(DC4−7081、商標、東レ・ダウコーニング株式会社製)、シリコーン含浸シリカ
(bc−2)滑剤(ヘキストWAX−OP、商標、ヘキスト社製)、ポリエチレン系ワックス(PE−WAX)
【0041】
実施例及び比較例において用いた評価方法は次の通りである。
【0042】
<比重>
JIS K 7112に準拠し、試験片は6.3mm厚プレスシートを用いて測定した。
【0043】
<硬さ>
JIS K 7215に準拠し、試験片は6.3mm厚プレスシートを用いた。5秒後の硬さ(Dタイプ)を測定した。
【0044】
<メルトフローレート(MFR)>
JIS K 7210に準拠し、(測定温度:190℃、荷重:2160g)測定した。
【0045】
<引張強度>
JIS K 7113に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、ダンベル2号型に抜いて使用した。引張速度は200mm/分とした。
【0046】
<100%伸び応力>
JIS K 7113に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、ダンベル2号型に抜いて使用した。引張速度は200mm/分とした。
【0047】
<引張伸び>
JIS K 7113に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、ダンベル2号型に抜いて使用した。引張速度は200mm/分とした。
【0048】
<押出成形性>
40mmの押出機にて、フィーダーからダイス口にかけて、140℃から180℃の温度勾配を設け、スクリュー回転数30rpmにて、直径20mmの円柱状の成形物をダイスから5m/分の押出速度で押出した。このときの押出負荷及び吐出量を測定した。また、得られた成形品の寸法安定性及び成形品表面のブリードを観察した。評価基準は下記の通りである。
(寸法安定性)
○:良好
△:ひけが若干あり
×:寸法が取れなかった
(ブリード)
○:なし
△:若干ブリードあり
×:ブリードなし
【0049】
<キャピログラフ>
東洋精機株式会社製キャピログラフ1Bを用いて測定した。
シリンダー温度160℃、180℃、剪断速度1.2×102〜2.4×103 s−1の条件で直径1mm、長さ20mmのオリフィスから押出し、押出速度を50mm/分、100mm/分、200mm/分と変化させた。次いで、押出された糸状組成物を、回転数調節手段を備えたプーリーの回転速度を逐次上げる方法によって巻き取り糸状組成物を得た。この際の押出し状態及び外観を観察し評価した。評価基準は下記の通りである。これにより押出成形における線速度と押出し状態及び成形品表面の状態との関係を判定し得る。
○:押出し状態が良好であり、表面が滑らかな糸状組成物が得られた。
×:押出し状態が悪く、表面に若干ざらつきのある糸状組成物が得られた。
【0050】
【実施例1〜6及び比較例1〜8】
表1に示す各組成物を、2軸混練機を使用して混練温度180〜240℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練してペレットを作成した。上記の各種試験における試験片等の作成には該ペレットを使用した。各種の評価は、このようにして得たペレット及び成形品について実施した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1〜3は、本発明の樹脂組成物であり、(B)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステルの配合比を変えたもの、及び(B)の種類を変えたものである。いずれも押出成形性は優れており、比較的小さな吐出負荷で大きな吐出量を得ることができた。実施例2では僅かにブリードが認められたが、本発明の効果を損なうものではなかった。キャピログラフによる結果から、流速100mm/分において良好な押出し状態と成形品表面の状態とが得られた。また、樹脂組成物の性質も良好であった。実施例4は、実施例1における(C)の種類を変えたものである。押出し負荷が高くなったが、高い吐出量を維持することができ、かつキャピログラフによる結果も流速100mm/分において良好であった。実施例5は、実施例1において(A)の種類を変えたものである。吐出量は多少低下したが、他は実施例1と同様であり良好であった。実施例6は、本願発明の範囲内で(B)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステルの配合比を変えたものである。実施例1及び2と同様に良好な結果が得られた。
【0053】
一方、比較例1は、実施例1と同一の配合において、高級脂肪酸アミドのみを加えたものであり、比較例2は、高級脂肪酸エステルのみを加えたものである。比較例1では、キャピログラフの結果が悪く、流速100mm/分の条件では押出し状態が悪く、糸状組成物の表面に若干ざらつきが生じた。従って、実施例1に比べて押出し時の線速度を増加することができず、生産性を高めることができない。比較例2はブリードを生じた。比較例3及び4は、夫々(B)に代えて、一般的な滑剤であるシリコーン含浸シリカ又はポリエチレン系ワックスを使用したものである。いずれもキャピログラフの結果が悪く、流速100mm/分の条件では押出し状態が悪く、糸状組成物の表面に若干ざらつきが生じた。比較例5は、実施例1において(B)を配合しなかったものであり、比較例6は、実施例5において(B)を配合しなかったものであり、かつ比較例7は、実施例4において(B)を配合しなかったものである。いずれも樹脂の吐出量が低下し寸法安定性も悪いものであった。また、いずれもキャピログラフの結果が悪く、流速50mm/分の条件でさえ押出し状態が悪く、糸状組成物の表面に若干ざらつきが生じた。比較例8は、実施例1において、(B)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステルの配合比はそのままで、本発明の配合量の範囲を超えて配合したものである。吐出量が低下し、かつブリードが生じた。
【0054】
【発明の効果】
本発明は、無機充填剤を高比率で含有するにもかかわらず、押出成形において吐出量及び線速度が高く、かつ可塑剤のブリードがないオレフィン系熱可塑性樹脂組成物を提供する。これにより、絶縁電線、及びこれを使用したケーブルを迅速かつ経済的に製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィン系樹脂組成物に関し、更に詳しくは、電線及びケーブルの絶縁被覆用に好適に使用し得るオレフィン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、オレフィン系樹脂は、エコマテリアル電線の被覆材として注目されており、自動車用、家電用、OA用等の絶縁被覆材として広範囲に使用されてきた。
【0003】
特開昭52−59648号公報には、ポリオレフィン、水酸化マグネシウム又はアルミナ水和物及び2−ヒドロキシ−アルコキシ−ベンゾフェノンから成る難燃性ポリオレフィン組成物が開示されている。該発明は、2−ヒドロキシ−アルコキシ−ベンゾフェノンを所定量でポリオレフィン及び水酸化マグネシウム又はアルミナ水和物に加えることにより、外観及び耐衝撃性を改善する。
【0004】
特開平1−141929号公報には、ハロゲンを含まないポリオレフィン樹脂、無機充填剤及びシリコーンオイルを含む難燃性樹脂組成物が開示されている。該発明は、シリコーンオイルを所定量で添加することにより、無機充填剤の量を比較的少なくしても、良好な難燃性を維持し得るものである。無機充填剤を多量に添加することによる生じる機械的特性、可撓性及び耐外傷性の低下を防止することができる。
【0005】
特開平5−17692号公報には、水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱物を粉砕し、脂肪酸、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤より選ばれた表面処理材で表面処理をした後、ポリエチレン、エチレンビニルアセテート、エチレンアクリレート、エチレンメタクリレート、エチレンメチルメタクリレート等のプラスチック又はゴムに添加し、難燃性を付与すると共に耐酸性を向上せしめた難燃性組成物が開示されている。該発明は、水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱物を粉砕し、これを上記の表面処理材で表面処理することにより耐酸性を向上せしめるものである。
【0006】
特開昭53−14751号公報には、ポリオレフィンと、エチレン・プロピレンゴムと、水酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムをカルボン酸、カルボン酸金属塩又はアルキルアミンで表面処理した表面処理水酸化マグネシウムの所定比率から成る充填剤と、炭素とを夫々所定量で含む難燃性ポリオレフィン樹脂組成物が開示されている。
【0007】
上記の各公報に記載された発明では、十分な難燃性を得るために水酸化マグネシウム等の無機フィラーを多量に充填する。その結果、押出負荷が、従来の塩化ビニル系材料に比べ高くなる傾向にあり、従って、押出成形において吐出量及び線速度が低くなり、高速度で生産できないと言う欠点を有していた。
【0008】
特開2001−151974号公報には、所定のゴム変性スチレン系樹脂100質量部とリン化合物1〜20質量部とを含有する難燃性樹脂組成物であって、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、天然ワックス、合成ワックス、所定の融点を持つフッ素樹脂、及び所定の動粘度を有するシリコーンオイルから選ばれた1種以上の添加剤成分を含有することが開示されている。ここで、該添加剤成分は、難燃性を損なうことなく、流動性や衝撃強度を改良するためにいわゆる滑剤である。
【0009】
このように滑剤を使用する樹脂組成物であっても、無機充填剤を多量に配合すると押出成形において線速度が低くなり、高速度で生産できない。また、脂肪酸エステル等ではブリードが生ずると言う欠点があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、無機充填剤を高比率で含有するにもかかわらず、押出成形において吐出量及び線速度が高く、かつ可塑剤のブリードがないオレフィン系熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を続けた。その結果、公知の種々の滑剤の中から脂肪酸アミドと脂肪酸エステルとの組合わせを選択し、かつこれらを所定量で加えれば、ポリオレフィン系樹脂に多量の無機充填剤を含めても、樹脂組成物が、押出成形において吐出量及び線速度が高く、良好な生産性を維持でき、かつ可塑剤のブリードがないことを見出したのである。
【0012】
即ち、本発明は、
(1)(A)ポリオレフィン系樹脂 100重量部、
(B)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステル 0.2〜10重量部、並びに
(C)無機充填剤 50〜300重量部
を含むオレフィン系樹脂組成物である。
【0013】
好ましい態様として、
(2)脂肪酸アミドと脂肪酸エステルとの重量比が、1/99〜99/1である上記(1)記載のオレフィン系樹脂組成物、
(3)脂肪酸アミドと脂肪酸エステルとの重量比が、1/9〜9/1である上記(1)記載のオレフィン系樹脂組成物、
(4)脂肪酸アミドと脂肪酸エステルとの重量比が、2/8〜8/2である上記(1)記載のオレフィン系樹脂組成物、
(5)(B)の量が、0.3〜7重量部である上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物、
(6)(B)の量が、0.5〜5重量部である上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物、
(7)(A)が、エチレンと次式(I)で示される単量体
【化2】
CH2=C(R1)−R2 (I)
[上記式中、R1は、H又はメチル基であり、R2は、(O=)C−OR3又はO−C(=O)R3であり、ここで、R3は、H又は、直鎖若しくは分枝の炭素数1〜10個のアルキル基である]
との共重合体を主成分とする上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物、
(8)(A)が、エチレンアクリレート共重合体(EEA)、エチレンメタクリレート共重合体(EMA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)及び鹸化エチレン酢酸ビニル共重合体(EVOH)より成る群から選ばれる上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物、
(9)(C)が、金属水和物、炭酸カルシウム及びタルクより成る群から選ばれる1種以上である上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物、
(10)上記(1)〜(9)のいずれか一つに記載の押出成形用のオレフィン系樹脂組成物、
(11)上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の電線被覆用のオレフィン系樹脂組成物
を挙げることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
(A)ポリオレフィン系樹脂
本発明のポリオレフィン系樹脂(A)としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及び、これらの酸変性物から選ばれる1種類以上が挙げられる。好ましくはエチレンと次式(I)で示される単量体との共重合体を主成分とするものが使用される。
【0015】
【化3】
CH2=C(R1)−R2 (I)
【0016】
上記式中、R1は、H又はメチル基であり、R2は、(O=)C−OR3又はO−C(=O)R3である。ここで、R3は、H又は、直鎖若しくは分枝の炭素数1〜10個のアルキル基、好ましくは1〜4個のアルキル基である。
【0017】
式(I)で示される単量体の好ましい例としては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、酢酸イソプロペニル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを単独で、または2種以上組合せて使用できる。特に好ましい単量体は、酢酸ビニル及びエチルアクリレートから成る群より選ばれる。
【0018】
上記の共重合体におけるエチレンと式(I)で示される単量体との割合は特に限定されない。好ましくはエチレン92〜70重量部に対して式(I)で示される単量体8〜30重量部、より好ましくはエチレン80〜70重量部に対して式(I)で示される単量体20〜30重量部の割合である。
【0019】
エチレンと式(I)で示される単量体との共重合体としては、例えば、エチレンアクリレート共重合体(EEA)、エチレンメタクリレート共重合体(EMA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、鹸化エチレン酢酸ビニル共重合体(EVOH)等が挙げられる。
【0020】
エチレンと式(I)で示される単量体との共重合体は更に、変性オレフィンモノマー等の単量体を、共重合成分として含むことができる。これらの単量体の含有量は、好ましくは上記の共重合体全体の50重量%以下である。
【0021】
エチレンアクリレート共重合体(EEA)、エチレンメタクリレート共重合体(EMA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、鹸化エチレン酢酸ビニル共重合体(EVOH)を用いる場合、必要に応じて、0〜80重量%のポリエチレン系樹脂を併用するとより、難燃性を向上せしめることができる。また、必要に応じて、酸変性したプロピレン系樹脂、又は、エチレン系樹脂を併用することにより、無機充填剤(特に、金属水和物)との相互作用によって、無機充填剤を均一に分散せしめることができる。
【0022】
(B)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステル
【0023】
(B−1)脂肪酸アミド
本発明において使用される脂肪酸アミドとしては、例えば、モノアミド、エチレンビスアミド、メチレンビスアミド、オレイルアミド、エルクアミド、パルミトアミド、及び、炭素数10〜30個、好ましくは10〜20個の高級脂肪酸のアミド、例えばメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。該脂肪酸アミドの市販品として、例えば、カオーワックスEB−P(商標、花王株式会社製、エチレンビスステアリン酸アミド)を使用し得る。
【0024】
(B−2)脂肪酸エステル
本発明において使用される脂肪酸エステルとしては、例えば、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ポリグリセリド、ペンタエリスリトール、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、高級アルコールとの(部分)エステル等が挙げられる。該高級アルコールとしては、ステアリルアルコール、ココナットアルコール、メリシルアルコール、セチルアルコール、及び、炭素数12〜22個の飽和又は不飽和脂肪酸と、炭素数4〜22個の1価脂肪酸アルコールから得られるエステル化合物であって沸点が200℃以上のものが好ましい。脂肪酸エステルとしては高級脂肪酸エステルが好ましく、例えば、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチル、ステアリン酸パルミチル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸オクチル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、トリメチロールプロパンジステアレート等が挙げられる。
【0025】
上記(B−1)と(B−2)との配合比は、1/99〜99/1、好ましくは1/9〜9/1、より好ましくは2/8〜8/2である。上記の範囲外では、オレフィン系樹脂組成物に良好な成形性を付与することができない。
【0026】
成分(B)の配合量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100重量部に対して、上限が10重量部、好ましくは7重量部、更に好ましくは5重量部であり、下限が0.2重量部、好ましくは0.3重量部、更に好ましくは0.5重量部である。成分(B)が上記上限を超えては、ブリードが著しく、上記下限未満では、良好な成形性が得られない。
【0027】
(C)無機充填剤
本発明に使用される無機充填剤としては、例えば、タルク、クレー、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、リン化合物、シリカ及び金属水和物等が挙げられる。金属水和物としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の水酸基又は結晶水を有する化合物を単独若しくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの金属水和物のうち、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましい。金属水和物は少なくとも一部が、シランカップリング剤、脂肪酸、脂肪酸エステルで表面処理されていることが好ましい。また、表面処理されていない無処理の金属水和物や他の表面処理剤で処理した金属水和物を適宜併用することができる。難燃性が要求される場合には、表面処理された金属水和物が好ましく使用される。
【0028】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、エチレン・α−オレフィン共重合体を配合することができる。エチレン・α−オレフィン系共重合体としては、例えば、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレンプロピレンゴム等が挙げられる。特に、エチレン−1−ヘキセン共重合体が、柔軟性に優れ、かつ強度が優れ、物性バランスが優れるので好ましく使用できる。エチレン・α−オレフィン共重合体は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下で配合することができる。
【0029】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわないかぎり、安定剤、着色剤、可塑剤、離型剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、補強剤、発泡剤、耐候(光)剤などの添加剤を配合することができる。
【0030】
本発明の組成物の製造には一般に用いられる混合機、混練機、定量フィーダー等を用いることが出来るが、以下の例により限定されるものではない。
【0031】
ペレット状コンパウンドの加工において用いられる混合機としては、予備分散、分配、拡散混合を目的とするブレンダーが予備混合機として用いられる。ブレンダーの代表例としては、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー(スーパーミキサー)、タンブラーミキサー、タンブルミキサー、エアーブレンダーなどが挙げられる。これらの予備混合機は、目的に応じて選定される。また、各配合成分は予備混合されることなく定量フィーダーで混練機に供給することも可能である。これらの予備混合機は、配合物をペレット状にする予備混合機として使用されるだけでなく、ドライブレンドして直接成形可能な組成物として供給することも可能である。
【0032】
本発明の組成物は、通常の熱可塑性樹脂の混合、混練に用いられる通常の装置、設備を用いて問題なく製造できる。押出機としては、ベント付きの単軸、二軸異方向、二軸同方向押出機が望ましい。また、押出機に代えて、バンバリーミキサー、ニーダー、コニーダーなどの混練機を用いても良い。
【0033】
本発明のオレフィン系樹脂組成物は、例えば、電線被覆材、又は自動車用、家電用、OA用等の絶縁被覆材、難燃性シート、フィルム成形品等として使用される。
【0034】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0035】
実施例及び比較例に用いた各種成分は、以下のとおりである。
【0036】
<(A):ポリオレフィン系樹脂>
(a−1)エチレン‐エチルアクリレート共重合体(A−719、商標、三井デュポン・ポリケミカル株式会社製)、エチルアクリレート含有量:14重量%
(a−2)エチレン‐酢酸ビニル共重合体(V−5274、商標、三井デュポン・ポリケミカル株式会社製)、酢酸ビニル含有量:17重量%
【0037】
<(B):脂肪酸アミド及び脂肪酸エステル>
(b−1)高級脂肪酸アミド(EB−P、商標、花王株式会社製)、エチレンビスステアリン酸アミド
(b−2)高級脂肪酸エステル(S−100、商標、理研ビタミン株式会社製)、グリセリンモノステアレート
(b−3)高級脂肪酸アミドと高級脂肪酸エステルとの混合物(ファルパックL−1014、商標、日本油脂株式会社製)、高級脂肪酸アミドと高級脂肪酸エステルとの70/30(重量比)の混合物
【0038】
<(C):無機充填剤>
(c−1)金属水和物(キスマ5A、商標、協和化学株式会社製)、ステアリン酸表面処理水酸化マグネシウム
(c−2)金属水和物(ハイジライトH−42M、商標、昭和電工株式会社製)、水酸化アルミニウム
【0039】
<その他の成分>
(d−1)エチレン・α―オレフィン共重合体(KS240、商標、日本ポリケム株式会社製)、エチレン−オクテン共重合体
(d−2)ステアリン酸カルシウム(Ca−St、離型剤)
【0040】
<比較成分>
(bc−1)滑剤(DC4−7081、商標、東レ・ダウコーニング株式会社製)、シリコーン含浸シリカ
(bc−2)滑剤(ヘキストWAX−OP、商標、ヘキスト社製)、ポリエチレン系ワックス(PE−WAX)
【0041】
実施例及び比較例において用いた評価方法は次の通りである。
【0042】
<比重>
JIS K 7112に準拠し、試験片は6.3mm厚プレスシートを用いて測定した。
【0043】
<硬さ>
JIS K 7215に準拠し、試験片は6.3mm厚プレスシートを用いた。5秒後の硬さ(Dタイプ)を測定した。
【0044】
<メルトフローレート(MFR)>
JIS K 7210に準拠し、(測定温度:190℃、荷重:2160g)測定した。
【0045】
<引張強度>
JIS K 7113に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、ダンベル2号型に抜いて使用した。引張速度は200mm/分とした。
【0046】
<100%伸び応力>
JIS K 7113に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、ダンベル2号型に抜いて使用した。引張速度は200mm/分とした。
【0047】
<引張伸び>
JIS K 7113に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、ダンベル2号型に抜いて使用した。引張速度は200mm/分とした。
【0048】
<押出成形性>
40mmの押出機にて、フィーダーからダイス口にかけて、140℃から180℃の温度勾配を設け、スクリュー回転数30rpmにて、直径20mmの円柱状の成形物をダイスから5m/分の押出速度で押出した。このときの押出負荷及び吐出量を測定した。また、得られた成形品の寸法安定性及び成形品表面のブリードを観察した。評価基準は下記の通りである。
(寸法安定性)
○:良好
△:ひけが若干あり
×:寸法が取れなかった
(ブリード)
○:なし
△:若干ブリードあり
×:ブリードなし
【0049】
<キャピログラフ>
東洋精機株式会社製キャピログラフ1Bを用いて測定した。
シリンダー温度160℃、180℃、剪断速度1.2×102〜2.4×103 s−1の条件で直径1mm、長さ20mmのオリフィスから押出し、押出速度を50mm/分、100mm/分、200mm/分と変化させた。次いで、押出された糸状組成物を、回転数調節手段を備えたプーリーの回転速度を逐次上げる方法によって巻き取り糸状組成物を得た。この際の押出し状態及び外観を観察し評価した。評価基準は下記の通りである。これにより押出成形における線速度と押出し状態及び成形品表面の状態との関係を判定し得る。
○:押出し状態が良好であり、表面が滑らかな糸状組成物が得られた。
×:押出し状態が悪く、表面に若干ざらつきのある糸状組成物が得られた。
【0050】
【実施例1〜6及び比較例1〜8】
表1に示す各組成物を、2軸混練機を使用して混練温度180〜240℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練してペレットを作成した。上記の各種試験における試験片等の作成には該ペレットを使用した。各種の評価は、このようにして得たペレット及び成形品について実施した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1〜3は、本発明の樹脂組成物であり、(B)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステルの配合比を変えたもの、及び(B)の種類を変えたものである。いずれも押出成形性は優れており、比較的小さな吐出負荷で大きな吐出量を得ることができた。実施例2では僅かにブリードが認められたが、本発明の効果を損なうものではなかった。キャピログラフによる結果から、流速100mm/分において良好な押出し状態と成形品表面の状態とが得られた。また、樹脂組成物の性質も良好であった。実施例4は、実施例1における(C)の種類を変えたものである。押出し負荷が高くなったが、高い吐出量を維持することができ、かつキャピログラフによる結果も流速100mm/分において良好であった。実施例5は、実施例1において(A)の種類を変えたものである。吐出量は多少低下したが、他は実施例1と同様であり良好であった。実施例6は、本願発明の範囲内で(B)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステルの配合比を変えたものである。実施例1及び2と同様に良好な結果が得られた。
【0053】
一方、比較例1は、実施例1と同一の配合において、高級脂肪酸アミドのみを加えたものであり、比較例2は、高級脂肪酸エステルのみを加えたものである。比較例1では、キャピログラフの結果が悪く、流速100mm/分の条件では押出し状態が悪く、糸状組成物の表面に若干ざらつきが生じた。従って、実施例1に比べて押出し時の線速度を増加することができず、生産性を高めることができない。比較例2はブリードを生じた。比較例3及び4は、夫々(B)に代えて、一般的な滑剤であるシリコーン含浸シリカ又はポリエチレン系ワックスを使用したものである。いずれもキャピログラフの結果が悪く、流速100mm/分の条件では押出し状態が悪く、糸状組成物の表面に若干ざらつきが生じた。比較例5は、実施例1において(B)を配合しなかったものであり、比較例6は、実施例5において(B)を配合しなかったものであり、かつ比較例7は、実施例4において(B)を配合しなかったものである。いずれも樹脂の吐出量が低下し寸法安定性も悪いものであった。また、いずれもキャピログラフの結果が悪く、流速50mm/分の条件でさえ押出し状態が悪く、糸状組成物の表面に若干ざらつきが生じた。比較例8は、実施例1において、(B)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステルの配合比はそのままで、本発明の配合量の範囲を超えて配合したものである。吐出量が低下し、かつブリードが生じた。
【0054】
【発明の効果】
本発明は、無機充填剤を高比率で含有するにもかかわらず、押出成形において吐出量及び線速度が高く、かつ可塑剤のブリードがないオレフィン系熱可塑性樹脂組成物を提供する。これにより、絶縁電線、及びこれを使用したケーブルを迅速かつ経済的に製造することができる。
Claims (7)
- (A)ポリオレフィン系樹脂 100重量部、
(B)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステル 0.2〜10重量部、並びに
(C)無機充填剤 50〜300重量部
を含むオレフィン系樹脂組成物。 - 脂肪酸アミドと脂肪酸エステルとの重量比が、1/99〜99/1である請求項1記載のオレフィン系樹脂組成物。
- (B)の量が、0.3〜7重量部である請求項1又は2記載のオレフィン系樹脂組成物。
- (C)が、金属水和物、炭酸カルシウム及びタルクより成る群から選ばれる1種以上である請求項1〜4のいずれか一つに記載のオレフィン系樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか一つに記載の押出成形用のオレフィン系樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか一つに記載の電線被覆用のオレフィン系樹脂組成物。
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2002
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