JP2004034144A - 鋳造品内部欠陥検査支援装置及び方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】X線CTスキャナ10が、鋳造品の所定間隔の断面の断層画像を形成する。実測モデル形成部22が、断層画像群から鋳造品のポリゴンモデルを形成する。内部欠陥識別部24は、このポリゴンモデルをディスプレイ装置40に表示し、ユーザから鋳造品の外表面に該当するポリゴンを1つ指定してもらい、そのポリゴンに対する連結成分のポリゴンをすべて抽出する。この結果、抽出されずに残ったポリゴンは、鋳造品内部の空洞、すなわち内部欠陥の内表面に該当するものと識別することができる。描画部26は、この識別結果に基づき、鋳造品の外表面に該当するポリゴン群は半透明に設定し、内部欠陥の内表面に該当するポリゴン群には、外表面のポリゴンの色との関係で目立ちやすい色を設定して、そのポリゴンモデルをレンダリングし、表示する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋳造品にできる鋳巣等の内部欠陥の検査を支援するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋳造品に現れる欠陥の中には、引け巣等の鋳巣のように、製品の内部に現れる欠陥がある。このような鋳巣等の欠陥は、鋳造品の強度等の性能に悪影響を及ぼす可能性があるので、ないにこしたことはない。しかし、現実問題として鋳巣を皆無にすることは極めて困難なので、製品形状や鋳造の仕方を調整するなどにより、性能に影響が少ない部分(例えば後の機械加工工程で除去する部分など)に鋳巣を集中させるというアプローチがとられている。この場合、生産に向けた設計の段階で、形状や鋳造条件を様々に変えながら試作と検査を繰り返し、最適な条件を探索することになる。
【0003】
ここで内部欠陥の検査には、古くは製品自体の破壊が必要であった。このような破壊検査は、手間と時間を要する上、精度もあまり高くなく、また破壊検査に用いたワークについては、その後、強度試験等のワーク全体についての試験を行うことができなくなるため、不便な場合があった。
【0004】
これに対し近年では、X線を用いた非破壊検査もよく用いられるようになっている。特に最近では、例えば特開平7−12759号公報に開示されるように、X線CT(コンピュータ断層)により鋳造品内部の断面を画像化することで、内部欠陥の状況を視覚的に提示するシステムが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
X線CTを用いた検査は、検査対象の断層画像が得られるので、内部欠陥の有無や位置を視覚的に確認しやすいというメリットがある。
【0006】
しかしながら、CT断層画像では、断面上での内部欠陥の位置や大きさは分かるが、内部欠陥の三次元的な位置や大きさを把握することは困難である。また、鋳巣等の内部欠陥は比較的小さいものが多いこともあって、鋳造品全体の検査では小さい間隔で多数の断面を取って断層画像を作成することとなり、これら多数の断層画像を目視で調べるのには多大の時間と労力を要する。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、鋳造品の内部欠陥の検査をより容易にする支援装置及び方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、検査対象の鋳造品を実測して形成した該鋳造品の複数の断面の断層画像を受け取り、それら前記複数の断面の断層画像に基づき、前記鋳造品の三次元形状モデルを形成する実測モデル形成手段と、前記実測モデル形成手段で形成した三次元形状モデルから、前記鋳造品内の空洞に該当する部分を識別する欠陥識別手段と、前記三次元モデルをディスプレイ装置に三次元表示するための表示画像を形成する手段であって、前記鋳造品の三次元形状モデルを半透明とし、前記空洞に該当する部分を前記三次元モデルとは異なる色で強調した表示画像を形成する表示画像形成手段と、を備える。
【0009】
本発明の好適な態様では、前記実測モデル形成手段は、前記三次元形状モデルとして、前記鋳造品のサーフェイスモデルを形成し、前記欠陥識別手段は、前記サーフェイスモデルにおいて前記鋳造品の外表面を構成する面要素群を特定し、これら外表面を構成する面要素以外の面要素を前記空洞を囲む面要素として特定することで、前記空洞に該当する部分を識別し、前記表示画像形成手段は、前記サーフェイスモデルにおける前記鋳造品の外表面を構成する面要素を半透明とし、前記空洞を囲む面要素を前記半透明表示とは異なる色で強調した表示画像を形成する。
【0010】
また、本発明は、検査対象の鋳造品を実測して形成した該鋳造品の複数の断面の断層画像を受け取り、それら前記複数の断面の断層画像に基づき、前記鋳造品のサーフェイスモデルを形成する実測モデル形成手段と、前記実測モデル形成手段で形成したサーフェイスモデルにおいて、前記鋳造品の外表面を構成する面要素群を特定し、これら外表面を構成する面要素以外の面要素で囲まれる空間を前記鋳造品内の内部欠陥として識別する欠陥識別手段と、前記鋳造品における目標とする内部欠陥状態の情報を取得し、前記欠陥識別手段で識別した内部欠陥と前記目標とする内部欠陥状態との比較に基づき前記検査対象の鋳造品の良否を判定し、判定結果をユーザに提示する良否判定手段と、を備える。
【0011】
また、本発明に係る方法は、検査対象の鋳造品を実測して形成した該鋳造品の複数の断面の断層画像を受け取り、それら前記複数の断面の断層画像に基づき、前記鋳造品の三次元形状モデルを形成するステップと、形成した三次元形状モデルから、前記鋳造品内の空洞に該当する部分を識別するステップと、前記三次元モデルをディスプレイ装置に三次元表示するための表示画像を形成するステップであって、前記鋳造品の三次元形状モデルを半透明とし、前記空洞に該当する部分を前記三次元モデルとは異なる色で強調した表示画像を形成するステップと、を含む。
【0012】
また本発明に係る方法は、検査対象の鋳造品を実測して形成した該鋳造品の複数の断面の断層画像を受け取り、それら前記複数の断面の断層画像に基づき、前記鋳造品のサーフェイスモデルを形成するステップと、形成したサーフェイスモデルにおいて、前記鋳造品の外表面を構成する面要素群を特定し、これら外表面を構成する面要素以外の面要素で囲まれる空間を前記鋳造品内の内部欠陥として識別するステップと、前記鋳造品における目標とする内部欠陥状態の情報を取得し、前記サーフェイスモデルから識別した内部欠陥と前記目標とする内部欠陥状態との比較に基づき前記検査対象の鋳造品の良否を判定し、その判定結果をユーザに提示するステップと、を含む。
【0013】
また本発明は、鋳造品の形状情報及び鋳造パラメータに基づき、所定の鋳造シミュレーションを実行し、所望の内部欠陥分布が得られるまで、前記形状情報及び鋳造パラメータの少なくとも1つに修正を加えながらそのシミュレーションを繰り返す鋳造条件探索ステップと、鋳造条件探索ステップで所望の内部欠陥分布をもたらすものとして求められた形状情報及び鋳造パラメータに従って試作品を鋳造する試作ステップと、この試作品を断層画像形成装置で実測し、この試作品の複数の断面の断層画像を形成する試作品実測ステップと、それら複数の断面の断層画像に基づき、試作品のサーフェイスモデルを形成する実測モデル形成ステップと、形成したサーフェイスモデルにおいて、試作品の外表面を構成する面要素群を特定し、これら外表面を構成する面要素以外の面要素で囲まれる空間を試作品内の内部欠陥として識別する欠陥識別ステップと、鋳造条件探索ステップでの前記シミュレーションの繰り返しにより最終的に得られた内部欠陥分布と、前記サーフェイスモデルから識別した内部欠陥の分布とに基づき、前記シミュレーションの良否判断の基礎となる所定の情報を作成し、ユーザに対して提示するシミュレーション良否情報提示ステップと、を含む。
【0014】
また本発明は、検査対象の鋳造品を実測して形成した該鋳造品の複数の断面の断層画像を受け取り、それら前記複数の断面の断層画像に基づき、前記鋳造品のサーフェイスモデルを形成するステップと、形成したサーフェイスモデルにおいて、前記鋳造品の外表面を構成する面要素群を特定し、これら外表面を構成する面要素以外の面要素を内部欠陥の面要素と識別するステップと、前記三次元モデルをディスプレイ装置に三次元表示するための表示画像を形成するステップであって、前記鋳造品の外表面に該当する面要素を半透明とし、前記内部欠陥に該当する面要素を前記外表面に該当する面要素とは異なる色で強調した表示画像を形成するステップとを実行させる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る鋳造品製作支援システムの概略構成を示す図である。この図に示すように、このシステムは、X線CTスキャナ10と検査支援装置20とディスプレイ装置40と入力装置45とを含む。
【0017】
X線CTスキャナ10は、鋳造品をX線にて走査することでCT断層画像を撮影するための装置である。
【0018】
検査支援装置20は、CT断層画像に基づき、鋳造品の内部欠陥検査の助けとなる情報を作成してユーザに提供する装置であり、実測モデル形成部22と内部欠陥識別部24と描画部26と判定処理部28を備えている。検査支援装置20は、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーションなどの汎用のコンピュータシステムに、以下に説明する実測モデル形成部22や内部欠陥識別部24、描画部26、判定処理部28などの処理内容を記述したプログラムを実行させることにより実現することができる。
【0019】
このうち、実測モデル形成部22は、CTスキャナ10から入力される断層画像群から、鋳造品の三次元形状モデルを形成する。ここでは、三次元形状モデルとして、鋳造品の表面をポリゴン(多角形面要素)で表したポリゴンサーフェイスモデルを作成する。このような断層画像群からポリゴンモデルを作成するアルゴリズムとしては、例えばマーチング・キューブ法などの従来公知のものを利用することができる。空気と鋳物金属(例えばアルミニウムや鋳鉄など)では、X線の吸収率が大きく異なるため、CT断層画像では両者の画素値(CT値)に大きい差が出る。したがってCT断層画像群からマーチング・キューブ法等の手法でポリゴンモデルを作成すると、鋳造金属部分と空気との境界面がポリゴンデータ化される。すなわち、実測モデル形成部22で形成されるポリゴンモデルでは、鋳造品と外部との境界面だけでなく、鋳造品内部の鋳巣等の内部欠陥による空洞部分の内面も表現される。
【0020】
内部欠陥識別部24は、実測モデル形成部22が形成した三次元形状モデルから、鋳造品内の内部欠陥に該当する部分を識別する。ここでは、ポリゴンサーフェイスモデルから、鋳造品の外部(外気)との境界面(外表面と呼ぶ)に該当するポリゴン群を抽出し、残ったポリゴン群を内部欠陥の空洞部分との境界面と認識する。
【0021】
描画部26は、実測モデル形成部22で形成した三次元形状モデルをレンダリングして表示画像を形成する手段であり、特に本実施形態では、内部欠陥識別部24の識別結果を利用して、内部欠陥部分を視認しやすく強調した表示画像を生成する。
【0022】
判定処理部28は、内部欠陥識別部24の識別結果に基づき、検査対象の鋳造品の内部欠陥状態が適切な状態であるかどうかを判定する。判定処理部28はあらかじめ本装置内に登録された判定基準に従って、その判定を行う。
【0023】
ディスプレイ装置40は、検査支援装置20の生成する表示画面を表示する装置であり、例えば描画部26が生成した鋳造品の三次元画像の表示を行う。入力装置45は、例えばキーボードやポインティングデバイスなど、検査支援装置20に対するデータや指示の入力を受け付ける装置である。
【0024】
次に、図2を参照して、このシステムによる鋳造品の内部欠陥検査支援処理の手順を説明する。
【0025】
まずこのシステムでは、X線CT装置10により、検査対象の鋳造品の所定間隔(例えば1mmなど。この間隔は、作成したい3次元形状モデルの精度による)の断面をそれぞれ走査し、それら各断面の断層画像を作成する(S10)。この結果得られた各断面の断層画像のデータは、検査支援装置20に入力される。検査支援装置20の実測モデル形成部22は、それら断層画像群から、マーチングキューブズ法などのアルゴリズムを用いて、検査対象の鋳造品のポリゴンサーフェイスモデルを形成する(S12)。次に、内部欠陥識別部24がこのポリゴンサーフェイスモデルから、鋳造品内の内部欠陥に該当する部分を識別する(S20)。このステップS20の処理内容の一例をステップS22〜S26として示している。この処理例では、ポリゴンサーフェイスモデルから、鋳造品の外部(外気)との境界面(外表面と呼ぶ)に該当するポリゴン群を抽出し、残ったポリゴン群を内部欠陥の空洞部分との境界面と認識する。ここでは、外表面の認識処理のために、まずポリゴンサーフェイスモデルをディスプレイ装置40に表示し、その表示上でユーザに鋳造品の外表面に該当するポリゴンの指定を求める(S22)。このように指定されたポリゴンを起点に、既に外表面として認識されているポリゴンに連結する(すなわち辺を共有する)ポリゴンを探索してこれを新たに外表面として認識する(S24)。すなわち、探索して得たポリゴンが外表面に該当する旨を所定の記憶装置に記憶する。この処理を、新たに外表面と認識されるポリゴンが増えなくなるところまで繰り返すと、鋳造品の外表面に該当するポリゴンをすべて抽出できる。鋳造品の場合、外表面でない境界面(すなわち鋳造品の内表面)は、内部欠陥と考えてよい。したがって、外表面のポリゴンをすべて抽出した後で、外表面である旨の情報が記憶されていないポリゴンは、内部欠陥である空洞を取り囲むポリゴンと考えることができる。したがって、この処理例では、ステップS22でユーザに指定されたポリゴンに連結するポリゴンをすべて抽出した後に、抽出されずに残った各ポリゴンを鋳造品の内部欠陥に対応するポリゴンとして識別する(S26)。なお、このように内部欠陥の面を表すポリゴンが識別されると、それらを相互に連結するポリゴンの組に分けることで、個々の内部欠陥(空洞)を識別することもできる。これにより、個々の内部欠陥の位置や体積などの物理量を求める処理が可能となる。
【0026】
このように内部欠陥が識別できると、描画部26による三次元画像生成や、判定処理部28による良否判定が可能になる。例えば、これら2つの処理をユーザが選択できるようにすることも可能である。
【0027】
描画部26の処理としては、まず内部欠陥識別部24が識別した外表面の各ポリゴン群を半透明に設定する(S30)。すなわち、外表面と認識したポリゴンに対し、0より大きく1より小さい所定値の透過係数(透過係数0は完全に透明、透過係数1は完全に不透明)を設定する。また、内部欠陥に対応する各ポリゴンを、外表面のポリゴンの色(半透明)に対して区別しやすい所定の色に設定する(S32)。そして、この設定に従って、描画部26は鋳造品のポリゴンサーフェイスモデルをレンダリングし、その結果の三次元画像をディスプレイ装置40に表示する(S34)。このようにして作成される三次元画像では、鋳造品の形状が半透明で表示され、鋳造品内部にある鋳巣等の欠陥がその半透明の鋳造品形状表示を透かして明確に視認できるように表示される。このように、内部欠陥の位置や形状を三次元表示することができるので、ユーザにとって内部欠陥の数や個々の位置、形状、大きさなどを直感的に把握しやすいというメリットがある。また、入力装置45から視点位置や視線方向等の描画パラメータの指定を動的に受け付け可能とし、その指定に応じて動的にサーフェイスモデルのレンダリングを行うようにすることも好適である。このように向き等を様々に変えながら三次元表示を行うことで、内部欠陥の三次元的な位置がより把握しやすくなる。
【0028】
また、判定処理部28では、例えば、内部欠陥識別部24で識別した内部欠陥群が、あらかじめ登録しておいた判定基準を満足するかどうかを判定する(S36)。
【0029】
例えば、鋳巣等の内部欠陥を製品性能に悪影響のない部分に集中させる設計アプローチをとる場合、判定基準として、製品形状の中で内部欠陥を集中させる集中目標領域をあらかじめ設定しておけばよい。この場合、その集中目標領域外に内部欠陥が存在する場合、その検査対象を不良と判定する、などの判定を行えばよい。この場合、内部欠陥識別部24で識別した各内部欠陥のポリゴンの位置情報から、各内部欠陥の三次元位置を知ることができるので、この三次元位置の情報から、その判定基準を満足するかどうかを判定することができる。なお、判定基準の情報として、集中目標領域の代わりに、その集中目標領域以外の領域を、できるだけ内部欠陥が存在しないようにしたい領域、として設定してもよい。また、構造上絶対内部欠陥が存在しては行けない禁止領域をあらかじめ設定し、この領域内に内部欠陥があれば不良と判定する手法も可能である。
【0030】
また、別の判定手法として、内部欠陥についての量的評価値が、判定基準としてあらかじめ定めた上限値以下に収まっているかどうかを判定する手法が考えられる。ここで、内部欠陥についての量的評価値としては、例えば、内部欠陥の総数、総体積、総表面積、最大体積(すべての内部欠陥の中で体積が最大のものの体積)、最大表面積、などの様々なものが考えられる。これら量的評価値の1つに基づき判定するだけでなく、複数の量的評価値の組合せで判定することも可能である。
【0031】
また、上記二つの判定手法の折衷的な手法として、上述の集中目標領域の外の領域における内部欠陥の量的評価値を評価する手法も好適である。この場合例えば、集中目標領域外の内部欠陥の総体積(又は最大体積、総数など)が所定上限値以下であれば、検査対象を良品と判定するなどの処理となる。もちろん、集中目標領域外の内部欠陥について複数の量的評価値を調べ、それら各評価値の組合せが所定の良品基準を満足する場合に、良品と判定するような方式でもよい。また、上述の集中目標領域と禁止領域の両方を設定し、集中目標領域と禁止領域のいずれでもない範囲に対して量的評価値による判定基準を設定するなどの判定方式も好適である。
【0032】
検査支援装置20は、このようにして判定処理部28が求めた判定結果を、ディスプレイ装置40に表示する(S38)。
【0033】
なお、描画部26による内部欠陥を視認可能とした三次元画像表示と、判定処理部28による判定結果とを、例えばウインドウシステムなどを用いて同時にディスプレイ装置40に表示することも可能である。
【0034】
このように、本実施形態のシステムによれば、鋳造品の断層画像から三次元形状モデルを形成し、この三次元形状モデルから内部欠陥を識別して表示したり、あるいはこれら内部欠陥の状況が許容範囲内であるかを判定したりすることができる。ユーザは、このような三次元画像表示や判定結果表示を参照して、検査対象の鋳造品の鋳巣等の内部欠陥の状態の良否を確認することができる。したがって、試作段階でこのシステムを利用すれば、試作品の内部欠陥状態の検査が従来に比べて格段に容易になり、試作・検査・設計調整(鋳造パラメータや設計形状の調整・変更)に要するサイクルを短縮することができる。
【0035】
次に図3及び図4を参照して、上記実施形態の変形例について説明する。
【0036】
図3は、この変形例のシステム構成を示す図であり、図1に示した上記実施形態の構成要素に相当する構成要素には、図1と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0037】
この変形例のシステムは、鋳造部門等における鋳造プロセス設計のための試作サイクルの支援を目指したものである。この変形例では、上記実施形態のシステム構成に加え、検査支援装置20に鋳造シミュレータ29を設けている。
【0038】
この鋳造シミュレータ29は、鋳造欠陥の発生位置や形状、大きさなどを求めるためのシミュレーション演算を行う手段であり、製品(鋳造品)の設計形状や鋳造パラメータ(例えば湯の温度や注入場所など)に従って解析用のモデルを作成し、このモデルに対して凝固解析等の公知の解析演算を行う。このシミュレーションのアルゴリズムとしては、特開2001−287023など、従来からある様々なアルゴリズムを利用することができる。
【0039】
検査支援装置20に設けられたハードディスクドライブ等の記憶部30には、鋳造品の設計形状データ32や、その鋳造品を鋳造する際の鋳造パラメータ34、鋳造シミュレータ29によるシミュレーション結果36などが記憶される。
【0040】
図4に示すように、このシステムでは、まず、設計部門がCADシステムで作成した鋳造品の設計形状データを受け取り、記憶部30に記憶する(S40)。次に、ユーザが、鋳造シミュレータ29を起動し、このシミュレータ29に対し、鋳造条件として、シミュレーション対象とする設計形状データ32と、各種の鋳造パラメータ34と、を設定する(S42)。鋳造シミュレータ29は、この設定に従って解析モデルを作成して所定の鋳造シミュレーションを実行し(S44)、そのシミュレーション結果をディスプレイ装置40に表示する。ユーザはこのシミュレーション結果を見て、内部欠陥の状況を含む鋳造状態が良好なものであるかどうかを調べ、鋳造条件が適切であったか否かを判断する(S46)。ここで、シミュレーション結果の鋳造状態が良好でない場合は、ステップS42に戻って設計形状データや鋳造パラメータなどに調整を加え、シミュレーション(S44)を行う。これを良好なシミュレーション結果が得られるまで繰り返す。良好なシミュレーション結果が得られたときの設計形状データ32や鋳造パラメータ34、シミュレーション結果36は、記憶部30に保存されており、後で利用可能となっている。
【0041】
このようにして良好なシミュレーション結果が得られると、そのときの鋳造条件(設計形状データ及び鋳造パラメータ)に従って、試作品を鋳造する(S48)。そして、上述の実施形態と同様、X線CTスキャナ10によりその試作品の断層画像を作成し(S50)、これら断層画像群をもとに実測モデル形成部22で試作品の三次元形状モデルを作成し(S52)、この三次元形状モデルから内部欠陥識別部24で内部欠陥の識別を行う(S54)。そして、本実施形態では、判定処理部28が、この内部欠陥の識別結果を、シミュレーション結果36における内部欠陥の状態と比較し、その良否を判定する(S56)。ここでは、例えば、シミュレーション結果36における内部欠陥の発生位置分布と実測モデルから求めた内部欠陥の位置分布とを比較し、それら両分布の差が所定の許容範囲以内かどうかを判定する(S58)。このとき、内部欠陥の位置だけでなく大きさも考慮する判定処理を採用することも好適である。実測した内部欠陥の状態が、ステップS46で良好と判定したシミュレーション結果と類似であれば、良好な試作結果が得られたものと判断できる。なお、ステップS56,S58の代わりに、上記実施形態で例示したような判断基準に従って実測モデルの内部欠陥状態の良否を判定してもよい。そして、この判定の結果をディスプレイ装置40に表示し、ユーザの判断を仰ぐ。
【0042】
ユーザは、この判定結果の表示を見て、試作品の内部欠陥の状態が良好であるか否かを判断し、良好でない場合は、ステップS42に戻って設計形状データや鋳造パラメータの鋳造条件の調整・変更を行い、以降の処理を繰り返す。
【0043】
このように、この変形例のシステムでは、シミュレーションによる設計・鋳造パラメータの練り上げと、試作品実測によるその設計・鋳造パラメータの有効性の検証とをスムーズな流れで実行でき、鋳造品生産のサイクルの短縮に寄与できる。
【0044】
また、この変形例では、試作品の実測モデルから求めた内部欠陥の分布とシミュレーション結果との比較ができるので、両者の差が大きい場合や、鋳造条件を様々に変えてもなかなか両者が近くならない場合などには、鋳造シミュレータ29のシミュレーションアルゴリズムの改良が必要などの判断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図2】実施形態のシステムの処理手順を示すフローチャートである。
【図3】変形例のシステム構成を示す図である。
【図4】変形例の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 X線CTスキャナ、20 検査支援装置、22 実測モデル形成部、24 内部欠陥識別部、26 描画部、28 判定処理部、29 鋳造シミュレータ、30 記憶部、32 設計形状データ、34 鋳造パラメータ、36 シミュレーション結果、40 ディスプレイ装置、45 入力装置。
Claims (7)
- 検査対象の鋳造品を実測して形成した該鋳造品の複数の断面の断層画像を受け取り、それら前記複数の断面の断層画像に基づき、前記鋳造品の三次元形状モデルを形成する実測モデル形成手段と、
前記実測モデル形成手段で形成した三次元形状モデルから、前記鋳造品内の空洞に該当する部分を識別する欠陥識別手段と、
前記三次元モデルをディスプレイ装置に三次元表示するための表示画像を形成する手段であって、前記鋳造品の三次元形状モデルを半透明とし、前記空洞に該当する部分を前記三次元モデルとは異なる色で強調した表示画像を形成する表示画像形成手段と、
を備える鋳造品内部欠陥検査支援装置。 - 請求項1記載の装置であって、
前記実測モデル形成手段は、前記三次元形状モデルとして、前記鋳造品のサーフェイスモデルを形成し、
前記欠陥識別手段は、前記サーフェイスモデルにおいて前記鋳造品の外表面を構成する面要素群を特定し、これら外表面を構成する面要素以外の面要素を前記空洞を囲む面要素として特定することで、前記空洞に該当する部分を識別し、
前記表示画像形成手段は、前記サーフェイスモデルにおける前記鋳造品の外表面を構成する面要素を半透明とし、前記空洞を囲む面要素を前記半透明表示とは異なる色で強調した表示画像を形成する、
ことを特徴とする鋳造品内部欠陥検査支援装置。 - 検査対象の鋳造品を実測して形成した該鋳造品の複数の断面の断層画像を受け取り、それら前記複数の断面の断層画像に基づき、前記鋳造品のサーフェイスモデルを形成する実測モデル形成手段と、
前記実測モデル形成手段で形成したサーフェイスモデルにおいて、前記鋳造品の外表面を構成する面要素群を特定し、これら外表面を構成する面要素以外の面要素で囲まれる空間を前記鋳造品内の内部欠陥として識別する欠陥識別手段と、前記鋳造品における目標とする内部欠陥状態の情報を取得し、前記欠陥識別手段で識別した内部欠陥と前記目標とする内部欠陥状態との比較に基づき前記検査対象の鋳造品の良否を判定し、判定結果をユーザに提示する良否判定手段と、
を備える鋳造品内部欠陥検査支援装置。 - 検査対象の鋳造品を実測して形成した該鋳造品の複数の断面の断層画像を受け取り、それら前記複数の断面の断層画像に基づき、前記鋳造品の三次元形状モデルを形成するステップと、
形成した三次元形状モデルから、前記鋳造品内の空洞に該当する部分を識別するステップと、
前記三次元モデルをディスプレイ装置に三次元表示するための表示画像を形成するステップであって、前記鋳造品の三次元形状モデルを半透明とし、前記空洞に該当する部分を前記三次元モデルとは異なる色で強調した表示画像を形成するステップと、
を含む鋳造品内部欠陥検査支援方法。 - 検査対象の鋳造品を実測して形成した該鋳造品の複数の断面の断層画像を受け取り、それら前記複数の断面の断層画像に基づき、前記鋳造品のサーフェイスモデルを形成するステップと、
形成したサーフェイスモデルにおいて、前記鋳造品の外表面を構成する面要素群を特定し、これら外表面を構成する面要素以外の面要素で囲まれる空間を前記鋳造品内の内部欠陥として識別するステップと、
前記鋳造品における目標とする内部欠陥状態の情報を取得し、前記サーフェイスモデルから識別した内部欠陥と前記目標とする内部欠陥状態との比較に基づき前記検査対象の鋳造品の良否を判定し、その判定結果をユーザに提示するステップと、
を含む鋳造品内部欠陥検査支援方法。 - 鋳造品の形状情報及び鋳造パラメータに基づき、所定の鋳造シミュレーションを実行し、所望の内部欠陥分布が得られるまで、前記形状情報及び鋳造パラメータの少なくとも1つに修正を加えながらそのシミュレーションを繰り返す鋳造条件探索ステップと、
鋳造条件探索ステップで所望の内部欠陥分布をもたらすものとして求められた形状情報及び鋳造パラメータに従って試作品を鋳造する試作ステップと、
この試作品を断層画像形成装置で実測し、この試作品の複数の断面の断層画像を形成する試作品実測ステップと、
それら複数の断面の断層画像に基づき、試作品のサーフェイスモデルを形成する実測モデル形成ステップと、
形成したサーフェイスモデルにおいて、試作品の外表面を構成する面要素群を特定し、これら外表面を構成する面要素以外の面要素で囲まれる空間を試作品内の内部欠陥として識別する欠陥識別ステップと、
鋳造条件探索ステップでの前記シミュレーションの繰り返しにより最終的に得られた内部欠陥分布と、前記サーフェイスモデルから識別した内部欠陥の分布とに基づき、前記シミュレーションの良否判断の基礎となる所定の情報を作成し、ユーザに対して提示するシミュレーション良否情報提示ステップと、
を含む鋳造品内部欠陥検査支援方法。 - コンピュータシステムに、
検査対象の鋳造品を実測して形成した該鋳造品の複数の断面の断層画像を受け取り、それら前記複数の断面の断層画像に基づき、前記鋳造品のサーフェイスモデルを形成するステップと、
形成したサーフェイスモデルにおいて、前記鋳造品の外表面を構成する面要素群を特定し、これら外表面を構成する面要素以外の面要素を内部欠陥の面要素と識別するステップと、
前記三次元モデルをディスプレイ装置に三次元表示するための表示画像を形成するステップであって、前記鋳造品の外表面に該当する面要素を半透明とし、前記内部欠陥に該当する面要素を前記外表面に該当する面要素とは異なる色で強調した表示画像を形成するステップと、
を実行させるプログラム。
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