JP2004031623A - ガラスセラミック基板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フェライト層が形成されたガラスセラミック基板において、フェライト層としてガラスを添加したフェライトペーストを塗布して同時焼成し、熱膨張係数の異なるフェライト層とガラスセラミックスとを同時焼成していたため、応力発生によりフェライト層の透磁率が低下し、十分なノイズ吸収効果が得られなかった。
【解決手段】ガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体1の内部および/または表面に配線導体4と、配線導体4の上面および下面を覆うフェライトおよび1質量%以下のガラスから成るフェライト層3とが、フェライト層3と絶縁基体1との間に、絶縁基体1と同じガラスおよびフェライト層3と同じフェライトを含有する絶縁層2を介在させて、絶縁基体1との同時焼成で形成されているガラスセラミック基板である。フェライト層3で安定した高い透磁率を得ることができ、配線導体4へのノイズを効果的に吸収することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部および/または表面に同時焼成による配線導体およびこの配線導体を覆うノイズ吸収のためのフェライト層を備えるガラスセラミック基板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報処理装置は高性能化が急激に進展し、これに伴って情報処理装置に搭載実装される半導体装置や混成集積回路装置も高速駆動が行なわれ、ノイズの影響をきわめて受けやすいものになってきた。そのため外部電気回路から高周波のノイズが入り込んだ場合、そのノイズはそのまま配線導体を通して半導体素子等の電子部品に入り込み、誤動作させてしまう危険がある。従って、そのような誤動作を防ぐためノイズ対策が必要とされる。
【0003】
従来のガラスセラミック基板におけるノイズ対策としては、ノイズを吸収するフェライトビーズをガラスセラミック基板の表面に実装する方法や、フェライト基板をガラスセラミック基板の裏面に接合する方法が古くから行なわれてきた。
【0004】
しかしながら、この方法では小型化および実装の簡略化が困難であった。そこで、近年ではガラスセラミック基板そのものにノイズを吸収させることによる表面実装工程の簡略化およびガラスセラミック基板の小型化が図られている。
【0005】
その方法の一つとして、ガラスセラミック基板の内部にフェライト層を形成する方法が挙げられる。例えば絶縁基体そのものにフェライト粉末を混入させる方法や、絶縁基体の一部にフェライトを含む補助膜を形成する方法がある。これらの方法ではガラスセラミック基板の内部にフェライト層を形成するために、フェライト層と絶縁基体のガラスセラミックスとを同時焼成している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の方法では、フェライト層と絶縁基体の主成分であるガラスセラミックスとを同時焼成により密着させるために、またそれぞれの焼成収縮率を合わせるために、フェライト層にガラス粉末を添加しなければならなかった。これは、純粋なフェライト層をガラスセラミックスと同時焼成するとフェライト層とガラスセラミックスとの充分な密着力が得られず、さらに、焼成時のフェライト層の収縮率とガラスセラミックスの収縮率とが異なると、焼成後にガラスセラミック基板が変形する、またはフェライト層がガラスセラミック基板から剥離するというような不具合が発生するからである。
【0007】
しかしながら、フェライト層に添加されるガラス粉末は非磁性体であるため、これらはフェライト層中に非磁性の空間を形成することとなり、フェライト層中のフェライトの密度が低下してしまうという問題点があった。
【0008】
一般的に、フェライト等の磁性体のノイズ吸収力は透磁率(μ)を指標として表される。透磁率が高ければ、磁性体のノイズ吸収力が高くなる。ただし、透磁率は磁性体中に非磁性部分が存在するとその非磁性部分の体積の3乗に比例して低下する。よって、前述のようにフェライト層にガラス粉末を添加すると、フェライト層の透磁率が急激に低下するという問題点があった。
【0009】
そして、透磁率が低下するとノイズを充分に吸収できなくなり、その結果、外部電気回路から高周波のノイズが入り込んだ場合に、そのノイズが完全に吸収されず配線導体を通して半導体素子等の電子部品に入り込み、誤動作させてしまうという問題点があった。
【0010】
しかし、ノイズを充分に吸収するためにフェライト層を多量に形成すると、焼成後のフェライト層が剥離しやすくなるという問題点があった。これは焼成時の収縮および熱膨張係数がフェライト層とガラスセラミックスとで異なるためであり、フェライト層が多量に形成されれば剥離の発生は顕著になる。また、フェライト層が増加すると相対的にガラスセラミックスが少なくなり、絶縁基体全体としての誘電率や絶縁特性がガラスセラミック基板本来のものと異なってくるという問題点があった。
【0011】
さらに、前記のいずれのフェライト層形成手法においても、フェライト層の厚みを再現性良く均一に形成することが困難であるという問題があった。通常、フェライト層のガラスセラミック・グリーンシート上への形成にはフェライトペーストをスクリーン印刷する手法がとられているが、これでは同じようにして作製したガラスセラミック基板のフェライト層間および同一ガラスセラミック基板内の異なるフェライト層間でも厚みがばらついてしまうという問題点があった。また、局所的に厚みの薄いフェライト層が形成されれば、その部分はノイズ吸収効果が充分に得られないので、これを回避するためにはフェライト層の厚みを必要以上に厚くする必要があるが、フェライト層を多量に形成することは前述のように焼成時の剥離を促進してしまうという問題点もあった。
【0012】
さらに、フェライト層と絶縁基体のガラスセラミックスとの同時焼成では、フェライト層の熱膨張係数とガラスセラミックスの熱膨張係数とが異なるため、同時焼成過程においてフェライト層に応力がかかることにより磁歪が発生し、フェライト層の透磁率が急激に低下する問題があった。
【0013】
以上のような理由から、絶縁基体の内部のフェライト層は微小体積または低密度のものしか形成できず、また同じように作製したガラスセラミック基板間でのノイズ吸収効果のばらつきもあり、フェライト層を用いて充分なノイズ吸収特性を持ったガラスセラミック基板を得ることが困難であるという問題点があった。
【0014】
本発明は以上のような従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、透磁率の高いフェライト層を備えており、そのノイズ吸収特性が高くかつ安定しているガラスセラミック基板およびその製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明のガラスセラミック基板は、ガラスおよびフィラーを含有するガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部および/または表面に配線導体と、この配線導体の上面および下面を覆う前記絶縁基体のガラスおよびフィラーより熱膨張係数の高いフェライトおよび1質量%以下のガラスから成るフェライト層とが、このフェライト層と前記絶縁基体との間に、前記絶縁基体に含有されるガラスと同じガラスおよび前記フェライト層に含有されるフェライトと同じフェライトを含有する厚みが10μm以上の絶縁層を介在させて、前記絶縁基体との同時焼成で形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明のガラスセラミック基板は、上記構成において、前記絶縁層は、前記フェライト層との熱膨張係数の差が3×10−6/℃以下であり、かつ前記絶縁基体との熱膨張係数の差が5×10−6/℃以下であることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明のガラスセラミック基板は、上記構成において、前記フェライトが、ZnFe,MnFe,FeFe,CoFe,NiFe,BaFe12,SrFe12およびCuFeのうちの少なくとも1種から成ることを特徴とするものである。
【0018】
さらに、本発明のガラスセラミック基板の製造方法は、ガラス粉末およびフィラーおよび有機バインダを含有する複数枚のガラスセラミック・グリーンシートの少なくとも一枚の表面に配線導体およびこの配線導体の上面および下面を覆うZnFe,MnFe,FeFe,CoFe,NiFe,BaFe12,SrFe12およびCuFeのうちの少なくとも1種を含むフェライト・グリーンシートを、前記ガラスセラミック・グリーンシートに含有されるガラス粉末および前記フェライト・グリーンシートに含有されるフェライト粉末を含有する絶縁ペースト層を介して配置するとともに、前記複数枚のガラスセラミック・グリーンシートを、前記フェライト・グリーンシートとそれに積層される前記ガラスセラミック・グリーンシートとの間にも前記絶縁ペースト層を介在させて積層してガラスセラミック・グリーンシート積層体を作製する工程と、前記ガラスセラミック・グリーンシート積層体の両面に、難焼結性無機材料とガラスと有機バインダとを含む拘束グリーンシートを積層する工程と、前記拘束グリーンシートと前記ガラスセラミック・グリーンシート積層体との積層体から有機成分を除去し、次いで焼成して拘束シートを保持したガラスセラミック基板を作製する工程と、前記ガラスセラミック基板から前記拘束シートを除去する工程とを含み、前記拘束グリーンシートのガラス含有量が、前記焼成時に前記拘束グリーンシートを前記ガラスセラミック・グリーンシートと結合させかつ前記拘束グリーンシートをその積層面内で実質的に収縮させない量であることを特徴とするものである。
【0019】
本発明のガラスセラミック基板によれば、フェライト層のガラスを1質量%以下としたことで、フェライト層の内部における磁性を持たない空間が1質量%以下となり、フェライト層の透磁率低下を抑えることができる。また、ガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体に含有されるガラスと同じガラスおよびフェライト層に含有されるフェライトと同じフェライトを含有する厚みが10μm以上の絶縁層をフェライト層と絶縁基体との間に介在させたことから、絶縁基体の熱膨張係数より熱膨張係数が大きく、かつフェライト層の熱膨張係数より熱膨張係数が小さい絶縁層によってフェライト層と絶縁基体との熱膨張差により生じる応力を緩和することができ、磁歪によるフェライト層の透磁率の低下を抑えることができる。また、これらフェライト層および絶縁層がガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体および配線導体との同時焼成によって形成されることから、これらと絶縁基体および配線導体との十分な密着性を得ることができる。さらに、このフェライト層は、好適にはフェライト・グリーンシートを焼結させて形成されるが、配線導体の上下面をフェライト層で覆うことによってフェライト層によるノイズ吸収を効率良く安定して機能させることができるので、配線導体へのノイズの侵入を確実に防止することができ、ノイズが半導体素子等の電子部品へ侵入するのを効果的に防止することが可能となる。
【0020】
また、本発明のガラスセラミック基板によれば、絶縁層は、フェライト層との熱膨張係数の差が3×10−6/℃以下であり、かつ絶縁基体との熱膨張係数の差が5×10−6/℃以下である場合には、絶縁基体およびフェライト層と絶縁層との熱膨張係数差が好適に小さいことから、絶縁層がよりいっそう効果的に応力を緩和することができ、フェライト層の透磁率低下を十分に抑えることができる。
【0021】
また、本発明のガラスセラミック基板によれば、フェライトが、ZnFe,MnFe,FeFe,CoFe,NiFe,BaFe12,SrFe12およびCuFeのうちの少なくとも1種から成る場合には、これらのフェライトの結晶相は高い透磁率を発現することから、これらのフェライトから成るフェライト層によって、より効果的にノイズ吸収が可能な十分に高い透磁率を得ることができる。
【0022】
さらに、本発明のガラスセラミック基板の製造方法によれば、上記の各工程を含み、ガラスセラミック・グリーンシート積層体の両面に積層した拘束グリーンシートのガラス含有量が、焼成時に拘束グリーンシートをガラスセラミック・グリーンシートと結合させかつ拘束グリーンシートをその積層面内で実質的に収縮させない量であることから、ガラスセラミック基板の焼成時に生じる平面方向の収縮を拘束シートによって抑えることができるので、焼成時に熱収縮の異なるフェライト層が形成されたガラスセラミック・グリーンシート積層体を変形させることなく、ガラスセラミックスから成る絶縁基体と配線導体とフェライト層とを同時焼成することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は本発明のガラスセラミック基板の実施の形態の一例を示す断面図であり、1はガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体、2は絶縁層、3はフェライト層、4は配線導体である。
【0025】
絶縁基体1は、複数のガラスセラミックス層が積層されて構成されており、その内部および/または表面に配線導体4およびその上面および下面を覆うフェライト層3がフェライト層3と絶縁基体1との間に、ガラスおよびフェライトから成る絶縁層2を介在させて形成されている。
【0026】
ガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体1は、まず、ガラス粉末およびフィラー粉末(セラミック粉末)、さらに有機バインダ,可塑剤,有機溶剤等を混合してスラリーを得て、これからドクターブレード法,圧延法,カレンダーロール法等によってガラスセラミック・グリーンシートを製作し、このガラスセラミック・グリーンシートを複数積層した後、大気中または加湿窒素雰囲気中にて、800〜1100℃の温度で焼成して作製される。
【0027】
ガラス粉末としては、例えばSiO−B系,SiO−B−Al系,SiO−B−Al−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−Al−MO−MO系(但し、MおよびMは同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−B−Al−MO−MO系(但し、MおよびMは前記と同じである),SiO−B−M O系(但し、MはLi,NaまたはKを示す),SiO−B−Al−M O系(但し、Mは前記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等を用いることができる。
【0028】
また、フィラー粉末としては、例えばAl,SiO,ZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物や、TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等を用いることができる。
【0029】
絶縁層2は、配線導体4の上下面を覆うフェライト層3と絶縁基体1との間に形成されており、絶縁基体1に含有されるガラスと同じガラス粉末およびフェライト層3に含有されるフェライト粉末を絶縁基体1との熱膨張係数の差が5×10−6/℃以下、およびフェライト層3との熱膨張係数の差が3×10−6/℃以下になるように配合し、適当な有機バインダ,溶剤を混練して作製した絶縁ペーストを、従来周知のスクリーン印刷法やグラビア印刷法等によりガラスセラミック・グリーンシート上のフェライト層が載置される位置に塗布し、ガラスセラミック・グリーンシートと同時に焼成されて形成される。
【0030】
なお、絶縁層のガラス粉末は、絶縁基体1のガラスセラミックスと同様であり、例えばSiO−B系,SiO−B−Al系,SiO−B−Al−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−Al−MO−MO系(但し、MおよびMは同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−B−Al−MO−MO系(但し、MおよびMは前記と同じである),SiO−B−M O系(但し、MはLi,NaまたはKを示す),SiO−B−Al−M O系(但し、Mは前記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等を用いることができる。
【0031】
また、絶縁層のフェライト粉末も、フェライト層のフェライト粉末と同様であり、ZnFe,MnFe,FeFe,CoFe,NiFe,BaFe12,SrFe12およびCuFe等を用いることができる。
【0032】
絶縁層2は、10μm以上の厚みで構成するのが望ましい。厚みが10μm未満であると、応力緩和が不十分となり磁歪が発生することにより透磁率が低下しやすい。ただし、絶縁層2の厚みはガラスセラミック基板全体を厚くしない程度であることが望ましい。
【0033】
フェライト層3は、配線導体4の上下面を覆うように絶縁基体1の表面および/または内部に形成された配線導体4とともに絶縁層2を介在させて形成されており、フェライトおよび1質量%以下のガラスから成るものである。このフェライト層3には、ZnFe,MnFe,FeFe,CoFe,NiFe,BaFe12,SrFe12およびCuFeのうちの少なくとも1種から成るフェライトを用いることが、より効果的にノイズ吸収が可能な十分に高い透磁率を得られる点で好ましい。
【0034】
フェライト層3の形成は、まずフェライト粉末に適当な有機バインダ,可塑剤,有機溶剤等を混合してスラリーを得て、これからドクターブレード法,圧延法,カレンダーロール法等によってフェライト・グリーンシートを製作する。次に、このフェライト・グリーンシートを所定の配線導体4を覆う形状にカットし、ガラスセラミック・グリーンシート上の配線導体4が形成される位置に配線導体4の上面および下面を覆うようにして載置する。
【0035】
フェライト層3となるフェライト・グリーンシートを形成するのに用いるフェライト粉末は、仮焼済みのフェライト粉末で、粒径が均一で球形状に近い粒が望ましい。これは、均一な焼結状態を得ることができるからであり、例えばフェライト粉末で部分的に小さい粒径が存在した場合は、その部分のみ結晶粒の成長が低下してしまい、焼結後に得られるフェライト層3の透磁率が安定しにくい傾向がある。
【0036】
フェライト層3は、フェライトおよびフェライト層3全体に対して1質量%以下のガラスから成るものである。ただし、この1質量%以下のガラスは焼成時に絶縁基体1および絶縁層2から拡散して流入するものであり、焼成前のフェライト・グリーンシートには含まれない。
【0037】
配線導体4は、フェライト層3に上下面を覆われて絶縁基体1の内部および/または表面に絶縁層2を介在させて形成されており、Cu,Ag,Au,Ag合金等の金属粉末に、適当な有機バインダ,溶剤を混練して作製した導体ペーストを、従来周知のスクリーン印刷法やグラビア印刷法等によりガラスセラミック・グリーンシート表面およびガラスセラミック・グリーンシート表面に絶縁ペーストを介在させて配置されたフェライト・グリーンシート上に塗布し、ガラスセラミック・グリーンシートと同時に焼成されて形成される。このとき、配線導体4から侵入するノイズを完全に吸収するためには、配線導体4の上下面をフェライト層3で完全に覆う必要がある。また、より完全なノイズ吸収のためには、配線導体4の側面もフェライト層3で覆っておくことが好ましい。さらに、フェライト層3の上下面を絶縁層2で完全に覆う必要がある。よって、そのような配線導体4、フェライト層3および絶縁層2を形成するためには、所定のガラスセラミック・グリーンシート表面に、下面の絶縁層2となる絶縁ペースト,下面のフェライト層3となるフェライト・グリーンシート,配線導体4となる導体ペースト,上面のフェライト層3となるフェライト・グリーンシート,上面の絶縁層2となる絶縁ペーストの順番に各層を形成して配置するとよい。
【0038】
本発明のガラスセラミック基板の製造方法においては、まず、フェライト層3,絶縁層2および配線導体4を前述の要領でガラスセラミック・グリーンシートに配置した後、このガラスセラミック・グリーンシートの複数枚を積層してガラスセラミック・グリーンシート積層体を作製する。
【0039】
次に、ガラスセラミック・グリーンシート積層体の両面に、難焼結性無機材料とガラスと有機バインダとを含む拘束グリーンシートを積層する。
【0040】
そして、この拘束グリーンシートとガラスセラミック・グリーンシート積層体との積層体から有機成分を除去し、次いで焼成して拘束シートを保持したガラスセラミック基板を作製し、最後にこのガラスセラミック基板から拘束シートを除去する。
【0041】
本発明における拘束グリーンシートは、難焼結性無機材科とガラスとから成る無機成分に有機バインダ,可塑剤,溶剤等を加えたスラリーを成形して得られる。難焼結性無機材料としては、AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0042】
拘束グリーンシートに加えられるガラスについても、特に制限されるものではなく、前述のガラスセラミック・グリーンシートに配合されるガラスと同様のものが使用可能である。また、拘束グリーンシート中のガラスは、ガラスセラミック・グリーンシート中のガラスと同一組成のものであってもよく、異なる組成のものであってもよい。
【0043】
拘束グリーンシート中のガラス含有量は、この拘束グリーンシート中の全無機成分の0.5〜15質量%であるのがよい。通常は、この範囲が焼成時にガラスセラミック・グリーンシートと結合しかつ拘束グリーンシートをその積層面内で実質的に収縮させない量となるが、必ずしもこの範囲に制限されるものではなく、使用するガラスの種類等によってガラス含有量は変化する。
【0044】
拘束グリーンシート中のガラスの軟化点は、ガラスセラミック・グリーンシート積層体の焼成温度以下で、かつ拘束グリーンシート中の有機成分の分解温度および揮散温度よりも高いのが好ましい。具体的には、拘束グリーンシート中のガラスの軟化点は450〜1100℃程度であるのが好ましい。ガラスの軟化点が450℃未満の場合には、ガラスセラミック・グリーンシートからの有機成分の除去時に、軟化したガラスが分解・揮散した有機成分の除去経路を塞ぐことになり有機成分を完全に除去できないおそれがある。一方、ガラスの軟化点が1100℃を超える場合には、通常のガラスセラミック・グリーンシートの焼成条件ではこのグリーンシートへの結合材として作用しなくなるおそれがある。
【0045】
拘束グリーンシートは、ガラスセラミック・グリーンシートの作製と同様にして、有機バインダ,可塑剤,溶剤等を用いて成形することによって得られる。有機バインダ,可塑剤,溶剤としては、ガラスセラミック・グリーンシートで使用したのと同様な材料が使用可能である。ここで、可塑剤を添加するのは、拘束グリーンシートに可撓性を付与し、積層時にガラスセラミック・グリーンシートとの密着性を高めるためである。
【0046】
ガラスセラミック・グリーンシート積層体の両面に積層される拘束グリーンシートの厚さは、片面だけでガラスセラミック・グリーンシート積層体の厚さに対して10%以上であるのが好ましく、これよりも薄いと拘束グリーンシートの拘束性が低下するおそれがある。また、有機成分の揮散を容易にし、かつガラスセラミック基板からの拘束シートの除去も容易にすることを考慮すると、拘束グリーンシートの厚さはガラスセラミック・グリーンシート積層体の厚さの約200%以下であるのがよい。また、積層される拘束シートは、1枚のシートからなるものであってもよく、あるいは所定の厚みになるように複数枚を積層したものであってもよい。
【0047】
成形された拘束グリーンシートをガラスセラミック・グリーンシート積層体の両面に積層するには、積み重ねたグリーンシートに熱と圧力を加えて熱圧着する方法や、有機バインダ,可塑剤,溶剤等からなる密着剤をシート間に塗布して熱圧着する方法等が採用可能である。シート間に密着剤層を介在させる場合には、この密着剤層に拘束グリーンシートと同じガラス成分を含有させてシート間の結合力を高めるようにしてもよい。
【0048】
拘束グリーンシートを積層した後、有機成分の除去と焼成を行なう。有機成分の除去は、積層体に荷重をかけつつ100〜800℃の温度範囲で積層体を加熱することによって行ない、有機成分を分解し揮散させる。また、焼成温度はガラスセラミックスの組成により異なるが、通常は約800〜1100℃の範囲内である。焼成は通常、大気中で行なうが、導体材料にCuを使用する場合には、100〜700℃の加湿窒素雰囲気中で有機成分の除去を行ない、次いで窒素雰囲気中で焼成を行なう。
【0049】
また、有機成分の除去時ならびに焼成時には、積層体の反りを防止するために、積層体の上面に重しを載せる等して荷重をかけるとよい。このような重しによる荷重は50Pa〜1MPa程度が適当である。荷重が50Pa未満である場合は、積層体の反りを抑制する作用が充分でなくなるおそれがある。また、荷重が1MPaを超える場合は、使用する重しが大きくなるため、焼成炉に入らなくなったり、また焼成炉に入っても重しが大きいために熱容量が不足することになり焼成できなくなったりする等の問題をひき起こすおそれがある。
【0050】
この重しとしては、ガラスセラミック基板の焼成中に変形,溶融等して荷重が不均一になったり、分解した有機成分の揮散を妨げたりすることがないような耐熱性の多孔質のものが適している。具体的には、セラミックス等の耐火物、あるいは高融点の金属等が挙げられる。また、積層体の上面に多孔質の重しを置き、その上に非多孔質の重しを置いてもよい。
【0051】
焼成後、拘束シートを除去する。除去方法としては、ガラスセラミック基板の表面に結合した拘束シートを除去できる方法であれば特に制限はなく、例えば超音波洗浄,研磨,ウォータージェット,ケミカルブラスト,サンドブラスト,ウェットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法)等が挙げられる。
【0052】
得られたガラスセラミック基板は、焼成時の収縮が拘束グリーンシートによって厚さ方向だけに抑えられているので、その積層面内の収縮をおよそ0.5%以下にも抑えることが可能となり、しかも、ガラスセラミック・グリーンシートは拘束グリーンシートによって全面にわたって均一にかつ確実に結合されているので、拘束グリーンシートの一部剥離等によってガラスセラミック基板およびフェライト層の反りや変形が起こるのを効果的に防止することができる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
<実施例1>
本実施例では、図2に断面図で示すような、外径20mm,内径5mmのリング形状の評価用試験片を作製し、透磁率を測定した。なお、図2において、図1と同様の箇所には同じ符号を付してあり、1はガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体、2は絶縁層、3はフェライト層、4は配線導体である。透磁率の測定はヒューレットパッカード社製のインピーダンスアナライザーHP−4291Aを用い、高周波電流電圧法にて測定した。
【0054】
まず、ガラスセラミックス成分として、熱膨張係数が8.5×10−6/℃であるSiO−Al−MgO−B−ZnO系ガラス粉末75質量%および熱膨張係数が6.5×10−6/℃であるAl粉末25質量%を使用した。このガラスセラミックス成分100質量%に有機バインダとしてアクリル樹脂12質量%,フタル酸系可塑剤6質量%および溶剤としてトルエン30質量%を加え、ボールミル法により混合しスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ300μmのガラスセラミック・グリーンシートを成形した。
【0055】
次にフェライト・グリーンシートとして平均粒径0.5〜1μmのZnFe,MnFe,FeFe,NiFeの結晶相から構成される透磁率22.0、熱膨張係数12×10−6/℃の仮焼済みのフェライト粉末に、ブチラール樹脂10質量%、高分子量のアルコールを希釈剤として添加し、ボールミル法により混合しスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ80μmのフェライト・グリーンシートを成形した。
【0056】
次に絶縁ペーストとしてガラスセラミックスに含有されるガラス粉末と同じ熱膨張係数が8.5×10−6/℃であるSiO−Al−MgO−B−ZnO系ガラス粉末30質量%,フェライト・グリーンシートグリーンシートに含有されるフェライト粉末と同じ平均粒径0.5〜1μmのZnFe,MnFe,FeFe,NiFeの結晶相から構成される熱膨張係数12×10−6/℃の仮焼済みのフェライト粉末70質量%を用い、所定量のエチルセルロース系樹脂とテルピネオールを加え、3本ロールにより適度な粘度になるように混合し作製した。
【0057】
同様に、配線導体ペーストとしてCu粉末(平均粒径1.0μm)100質量%に対してガラスセラミック・グリーンシートと同組成のガラス粉末2質量%、さらに所定量のエチルセルロース系樹脂とテルピネオールを加え、3本ロールにより適度な粘度になるように混合し配線導体ペーストを作製した。
【0058】
一方、無機成分としてAl粉末95質量%と軟化点720℃のSiO−Al−MgO−B−ZnO系ガラス粉末5質量%とを用いて、ガラスセラミック・グリーンシートと同様にしてスラリーを作製し、次いで成形して厚さ250μmの拘束グリーンシートを得た。
【0059】
なお、ガラスセラミック・グリーンシートおよびフェライト・グリーンシート,拘束グリーンシートは、ともに透磁率の評価用試験片形状である外径20mm,内径5mmのリング形状に加工しておいた。
【0060】
まず、ガラスセラミック・グリーンシートの所定枚数を重ね合わせ、その上に絶縁ペースト層を全面に塗布し乾燥を行なった。絶縁ペースト層は40μmの厚みとした。その後、乾燥した絶縁ペースト層上にフェライト・グリーンシートを重ね合わせ、さらに、導体ペーストをフェライト・グリーンシート全面に塗布し乾燥を行なった。導体ペーストは20μmの厚みとした。その後、乾燥した導体ペースト上にフェライト・グリーンシートの所定枚数を重ね合わせ、その上に絶縁ペースト層を全面に塗布し乾燥を行なった。絶縁ペースト層は40μmの厚みとした。その後、乾燥した絶縁ペースト層上にガラスセラミック・グリーンシートの所定枚数を重ね合わせてガラスセラミック・グリーンシート積層体を得た。このガラスセラミック・グリーンシート積層体の両面に拘束グリーンシートを重ね合わせ、温度55℃,圧力20MPaで圧着して積層体を得た。
【0061】
得られた積層体をアルミナセッターに載置し、その上に重しを載せて約0.5MPaの荷重をかけつつ大気中にて500℃で2時間加熱して有機成分を除去した後、窒素雰囲気中にて900℃で1時間焼成した。焼成後は、ガラスセラミック基板の両面に拘束シートが付着していた。この状態では、軽く叩いても拘束シートが剥がれることはなかった。
【0062】
ガラスセラミック基板の表面に付着した拘束シートは、擦り取ることにより大部分は除去できたが、ガラスセラミック基板の表面に薄く残留していた。この残留した拘束シートを、球状Al微粉末と水との混合物を高圧の空気圧で投射するウェットブラスト法により除去した。拘束シートを除去した後のガラスセラミック基板の表面は、表面粗さ(中心線平均粗さ)Raが1μm以下の平滑な面であった。
【0063】
さらに、得られたガラスセラミック基板の積層面内での収縮は0.5%以下であり、内層の全面にフェライト層が形成されているものの、基板に反りや変形も認められなかった。
【0064】
また、得られたガラスセラミック基板の絶縁層の焼成後の厚みは20μmであった。
【0065】
なお、このようにして作製した絶縁基体1の熱膨張係数は8×10−6/℃、フェライト層3の熱膨張係数は12×10−6/℃、絶縁層2の熱膨張係数は11×10−6/℃であった。
【0066】
このようにして作製した評価用試験片にて、透磁率を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
Figure 2004031623
【0068】
表1の結果より、ZnFe,MnFe,FeFe,NiFeの結晶相から構成される透磁率が22.0のフェライトに対し、実施例1の場合は透磁率が21.5であり透磁率の低下がほとんどないことが分かる。また、表1においては、測定された透磁率を測定サンプルのそれぞれについて記載している。また、後述の実施例および比較例のサンプル測定結果も記載している。
<実施例2および3>
熱膨張係数が9×10−6/℃および10×10−6/℃になるように、ガラスセラミックスに含有されるガラス粉末と同じ熱膨張係数が8.5×10−6/℃であるSiO−Al−MgO−B−ZnO系ガラス粉末85質量%および60質量%,フェライト・グリーンシートグリーンシートに含有されるフェライト粉末と同じ平均粒径0.5〜1μmのZnFe,MnFe,FeFe,NiFeの結晶相から構成される熱膨張係数12×10−6/℃の仮焼済みのフェライト粉末15質量%および40質量%を用いて絶縁層を作製した以外は実施例1と同様にして、実施例2および3の評価用試験片を作製した。
【0069】
このようにして作製した実施例2および3の評価用試験片の透磁率を測定した。その測定結果も表1に記載した。
【0070】
表1の結果より、実施例2および3の場合は、透磁率がそれぞれ21.3および21.2であり透磁率の低下がほとんどないことが分かる。
<実施例4>
熱膨張係数が6×10−6/℃になるように、熱膨張係数が5.0×10−6/℃であるSiO−Al−MgO−B−ZnO系ガラス粉末40質量%および熱膨張係数が6.5×10−6/℃であるAl粉末60質量%を用いてガラスセラミックスからなる絶縁基体を作製し、および熱膨張係数が11×10−6/℃になるように、ガラスセラミックスに含有されるガラス粉末と同じ熱膨張係数が5.0×10−6/℃であるSiO−Al−MgO−B−ZnO系ガラス粉末15質量%,フェライト・グリーンシートグリーンシートに含有されるフェライト粉末と同じ平均粒径0.5〜1μmのZnFe,MnFe,FeFe,NiFeの結晶相から構成される熱膨張係数12×10−6/℃の仮焼済みのフェライト粉末85質量%を用いて絶縁層を作製した以外は実施例1と同様にして、実施例4の評価用試験片を作製した。
【0071】
このようにして作製した実施例4の評価用試験片の透磁率を測定した。その測定結果も表1に記載した。
【0072】
表1の結果より、実施例4の場合は、透磁率が21.0であり透磁率の低下がほとんどないことが分かる。
<実施例5および6>
焼成後の厚みが10μmおよび50μmになるように絶縁層を作製した以外は実施例1と同様にして、実施例5および6の評価用試験片を作製した。
【0073】
このようにして作製した実施例5および6の評価用試験片の透磁率を測定した。その測定結果も表1に記載した。
【0074】
表1の結果より、実施例5および6の場合は、透磁率がそれぞれ21.3および21.1であり透磁率の低下がほとんどないことが分かる。
<実施例7>
熱膨張係数が6×10−6/℃になるように、熱膨張係数が5.0×10−6/℃であるSiO−Al−MgO−B−ZnO系ガラス粉末40質量%および熱膨張係数が6.5×10−6/℃であるAl粉末60質量%を用いてガラスセラミックスからなる絶縁基体を作製し、および熱膨張係数が8×10−6/℃になるようにガラスセラミックスに含有されるガラス粉末と同じ熱膨張係数が5.0×10−6/℃であるSiO−Al−MgO−B−ZnO系ガラス粉末58質量%,フェライト・グリーンシートグリーンシートに含有されるフェライト粉末と同じ平均粒径0.5〜1μmのZnFe,MnFe,FeFe,NiFeの結晶相から構成される熱膨張係数12×10−6/℃の仮焼済みのフェライト粉末42質量%を用いて絶縁層を作製した以外は実施例1と同様にして、実施例7の評価用試験片を作製した。
【0075】
このようにして作製した実施例7の評価用試験片の透磁率を測定した。その測定結果も表1に記載した。
【0076】
表1の結果より、実施例7の場合は、透磁率が20.0であったことが分かる。これは、絶縁層とフェライト層の熱膨張係数の差がやや大きいためフェライト層に若干の応力が発生し、透磁率がやや低下したためであるが、実用に問題はない程度の低下であった。
<実施例8>
熱膨張係数が5×10−6/℃になるように、熱膨張係数が4.0×10−6/℃であるSiO−Al−MgO−B−ZnO系ガラス粉末60質量%および熱膨張係数が6.5×10−6/℃であるAl粉末40質量%を用いてガラスセラミックスからなる絶縁基体を作製し、および熱膨張係数が11×10−6/℃になるようにガラスセラミックスに含有されるガラス粉末と同じ熱膨張係数が4.0×10−6/℃であるSiO−Al−MgO−B−ZnO系ガラス粉末13質量%,フェライト・グリーンシートグリーンシートに含有されるフェライト粉末と同じ平均粒径0.5〜1μmのZnFe,MnFe,FeFe,NiFeの結晶相から構成される熱膨張係数12×10−6/℃の仮焼済みのフェライト粉末87質量%を用いて絶縁層を作製した以外は実施例1と同様にして、実施例8の評価用試験片を作製した。
【0077】
このようにして作製した実施例8の評価用試験片の透磁率を測定した。その測定結果も表1に記載した。
【0078】
表1の結果より、実施例8の場合は、透磁率が19.8であったことが分かる。これは、絶縁層と絶縁基体との熱膨張係数の差が大きいため、絶縁層にかかる応力がフェライト層に若干伝搬し、透磁率がやや低下したためであるが、実用に問題はない程度の低下であった。
<比較例1>
焼成後の厚みが5μmになるように絶縁層を作製した以外は実施例1と同様にして、比較例1の評価用試験片を作製した。
【0079】
このようにして作製した比較例1の評価用試験片の透磁率を測定した。その測定結果も表1に記載した。
【0080】
表1の結果より、焼成後の厚みが5μmになるように絶縁層を作製した比較例1の場合は、透磁率が15.3であり、焼成後の厚みが10μm,20μmおよび50μmになるように絶縁層を作製した実施例5,1および実施例6の場合に比べて、透磁率が大きく低下していることが分かる。これは、絶縁層の厚みが薄いため、絶縁基体とフェライト層との熱膨張差によるフェライトの内部応力を緩和できず、フェライト層に磁歪が発生したためである。
<比較例2>
拘束シートを積層せずに焼成した以外は実施例1と同様にして、比較例2の評価用試験片を作製した。
【0081】
拘束シートを積層せずに焼成した比較例2では、評価用試験片が焼成時に大きく変形してしまい、透磁率は測定できず、ガラスセラミック基板としても使えないことが分かった。
【0082】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述の実施の形態の例では配線導体4にCuを用いたが、配線導体4にAg,Au,Ag−Pd合金等を用いてもよい。
【0083】
【発明の効果】
本発明のガラスセラミック基板によれば、ガラスおよびフィラーを含有するガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部および/または表面に配線導体と、配線導体の上面および下面を覆う絶縁基体のガラスおよびフィラーより熱膨張係数の高いフェライトおよび1質量%以下のガラスから成るフェライト層とが、フェライト層と絶縁基体との間に、絶縁基体に含有されるガラスと同じガラスおよびフェライト層に含有されるフェライトと同じフェライトを含有する厚みが10μm以上の絶縁層を介在させて、絶縁基体との同時焼成で形成されていることから、フェライト層の内部に磁性を持たない空間を形成するガラス成分を1質量%以下としたこと、および絶縁基体より熱膨張係数が大きく、かつフェライト層より熱膨張係数が小さい絶縁層をフェライト層とガラスセラミックス間に設け、フェライト層と絶縁基体との熱膨張差による応力を緩和することによって、フェライト層の透磁率の低下を抑えることができる。また、フェライト層および絶縁層がガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体および配線導体との同時焼成によって形成されることによって、これらの層と絶縁基体および配線導体との十分な密着性を得ることができる。さらに、このフェライト層をフェライト・グリーンシートを焼結させて形成することによって、安定した透磁率を再現性良く得ることができる。また、このフェライト層で配線導体の上下面を覆うことによって、フェライト層によるノイズ吸収を効率良く機能させることができるので、配線導体へのノイズの侵入を確実に防止することができ、ノイズが半導体素子等の電子部品へ侵入するのを効果的に防止することが可能となる。
【0084】
また、本発明のガラスセラミック基板によれば、フェライトが、ZnFe,MnFe,FeFe,CoFe,NiFe,BaFe12,SrFe12およびCuFeのうちの少なくとも1種から成る場合には、これらのフェライトの結晶相は高い透磁率を発現することから、これらのフェライトから成るフェライト層によって、より効果的にノイズ吸収が可能な十分に高い透磁率を得ることができる。
【0085】
また、本発明のガラスセラミック基板の製造方法によれば、ガラスセラミック基板の焼成時に生じる平面方向の収縮を拘束シートによって抑え、またZnFe,MnFe,FeFe,CoFe,NiFe,BaFe12,SrFe12およびCuFeのうちの少なくとも1種を含むフェライト層の変形を防止することができ、焼成時に熱収縮の異なるフェライト層が形成されたガラスセラミック・グリーンシート積層体を変形させることなく、ガラスセラミックスから成る絶縁基体と配線導体とフェライト層とを同時焼成して本発明のガラスセラミック基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガラスセラミック基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例の透磁率測定に用いた評価用試験片を示す断面図である。
【符号の説明】
1:絶縁基体
2:絶縁層
3:フェライト層
4:配線導体

Claims (4)

  1. ガラスおよびフィラーを含有するガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部および/または表面に配線導体と、該配線導体の上面および下面を覆う前記絶縁基体のガラスおよびフィラーより熱膨張係数の高いフェライトおよび1質量%以下のガラスから成るフェライト層とが、該フェライト層と前記絶縁基体との間に、前記絶縁基体に含有されるガラスと同じガラスおよび前記フェライト層に含有されるフェライトと同じフェライトを含有する厚みが10μm以上の絶縁層を介在させて、前記絶縁基体との同時焼成で形成されていることを特徴とするガラスセラミック基板。
  2. 前記絶縁層は、前記フェライト層との熱膨張係数の差が3×10−6/℃以下であり、かつ前記絶縁基体との熱膨張係数の差が5×10−6/℃以下であることを特徴とする請求項1記載のガラスセラミック基板。
  3. 前記フェライトが、ZnFe,MnFe,FeFe,CoFe,NiFe,BaFe12,SrFe12およびCuFeのうちの少なくとも1種から成ることを特徴とする請求項1記載のガラスセラミック基板。
  4. ガラスおよびフィラーおよび有機バインダを含有する複数枚のガラスセラミック・グリーンシートの少なくとも一枚の表面に配線導体および該配線導体の上面および下面を覆うZnFe,MnFe,FeFe,CoFe,NiFe,BaFe12,SrFe12およびCuFeのうちの少なくとも1種を含むフェライト・グリーンシートを、前記ガラスセラミック・グリーンシートに含有されるガラス粉末および前記フェライト・グリーンシートに含有されるフェライト粉末を含有する絶縁ペースト層を介して配置するとともに、前記複数枚のガラスセラミック・グリーンシートを、前記フェライト・グリーンシートとそれに積層される前記ガラスセラミック・グリーンシートとの間にも前記絶縁ペースト層を介在させて積層してガラスセラミック・グリーンシート積層体を作製する工程と、
    前記ガラスセラミック・グリーンシート積層体の両面に、難焼結性無機材料とガラスと有機バインダとを含む拘束グリーンシートを積層する工程と、
    前記拘束グリーンシートと前記ガラスセラミック・グリーンシート積層体との積層体から有機成分を除去し、次いで焼成して拘束シートを保持したガラスセラミック基板を作製する工程と、
    前記ガラスセラミック基板から前記拘束シートを除去する工程とを含み、
    前記拘束グリーンシートのガラス含有量が、前記焼成時に前記拘束グリーンシートを前記ガラスセラミック・グリーンシートと結合させかつ前記拘束グリーンシートをその積層面内で実質的に収縮させない量であることを特徴とするガラスセラミック基板の製造方法。
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