JP2004029574A - 現像装置及び画像形成装置 - Google Patents

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坂巻 智幸
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Abstract

【課題】ワックスを含有した粉砕トナーを用いた従来の二成分磁気ブラシ現像において、現像スリーブ表面におけるトナー及びトナー中の成分の融着を防止する現像装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体3上に形成された静電潜像を可視画像とするために、現像剤22を担持し搬送する回転可能な現像剤担持体25を具備する現像装置において、現像剤22は、少なくともバインダ樹脂、着色剤、ワックスを混練した後粉砕して得られたトナーと、1KOeの磁界中における磁化量が、30〜230emu/cmの範囲内の磁性キャリアと、を含み、現像剤担持体25の表面形状は、表面粗さRzと表面の凸凹の平均山間隔Smの関係が、
0.05≦Rz/Sm≦0.25
の条件を満足する。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式等によって像担持体上に形成された静電潜像を現像して可視画像を形成する現像装置、及びそれを備えた複写機、プリンター、記録画像表示装置、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、複写機、プリンター、記録画像表示装置、ファクシミリ等の画像形成装置において、現像剤担持体の表面に顕画剤としての乾式現像剤を担持し、静電潜像を担持した像担持体の表面近傍にこの現像剤を搬送供給し、そして像担持体と現像剤担持体の間に交互(交番)電界を印加しながら静電潜像を現像して顕像化する現像方法が知られている。
【0003】
尚、上記現像剤担持体は、一般に現像スリーブが用いられる場合が多いので、以下の説明では「現像スリーブ」と称し、又、像担持体は、一般に感光体ドラムが用いられる場合が多いので、以下の説明では「感光体ドラム」と称すことにする。
【0004】
上記現像方法として、従来より、例えばキャリア粒子とトナー粒子の二成分系組成を含む現像剤(二成分現像剤)により、内部に磁石を配置した現像スリーブの表面に磁気ブラシを形成させ、微少な現像間隙を保持して対向させた感光体ドラムにこの磁気ブラシを摺擦又は近接させ、そして現像スリーブと感光体ドラム間(S−D間)に連続的に交互電界を印加することによって、トナー粒子の現像スリーブ側から感光体ドラム側への転位及び逆転位を繰り返し行わせて現像を行う、所謂磁気ブラシ現像法が知られている(例えば、特開昭55−32060号公報、特開昭59−165082号公報参照)。
【0005】
又、簡易なカラー現像や多重現像を目的とした二成分現像剤を用いた非接触方式の交互電界現像法も知られている(例えば特開昭56−14268号公報、特開昭58−68051号公報、特開昭56−144452号公報、特開昭59−181362号公報、特開昭60−176069号公報参照)。
【0006】
近年、更なる高速化、画質の向上、及び消費電力の低減を目的として、現像剤に含まれるトナーの特性として粒径を小さくし、且つ、シャープメルトタイプのトナーが開発されている。トナーの小径化は画質の粒状性の低減に効果があるとともに、同じ熱量を与えられた時、より大径のトナーよりも融けやすいため、高速化に伴い短時間で定着しなければならない場合や消費電力低減に有効である。シャープメルトタイプのトナーも高速定着及び消費電力低減に対し有効である。
【0007】
一方、このトナーを用いて二成分現像を行うと、トナーが融けやすくなっているため、従来二成分磁気ブラシ交互電界印加現像法において用いられている現像スリーブをサンドブラストにより表面処理したのでは、長時間の使用の中でトナー又はトナー中の成分がその粗面化した表面の凹凸部分に融着し、スリーブ汚染に至る傾向がより強い。
【0008】
現像スリーブ表面にトナー融着が生じると、まず、現像領域への現像剤の搬送量が低下し画像濃度が低下する。
【0009】
又、従来は、良好な現像を行わせるために、現像時に現像スリーブには直流電圧及び/又は交流電圧の重畳された現像バイアスが印加されるが、現像スリーブ表面にトナー融着が生じると、スリーブ表面に融着物による高抵抗層ができてしまい、現像時に現像スリーブと像担持体間の現像領域に所望の電界が形成されない。その結果、現像バイアスによる十分な現像効果が得られず、濃度が低下したり、白抜けのような画像不良が生じたりする。
【0010】
この問題は、現像スリーブ上の表面粗さを調整することで、例えば、特開平8−202140号公報に記載されるように、表面の平均山間隔Smをある一定値以下にすることで、従来の現像スリーブではスリーブ汚染により短い寿命しかもたなかった現像剤においても、ある程度の長寿命化が可能となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、オイルレス定着による装置構成の簡便化等のために、トナー自身にワックス成分等を含有させているトナーが開発されている。このようなトナーを用いた場合、トナー等が磁気ブラシに保持されながら現像スリーブを摺擦する中でトナーに圧力がかかり、ワックス成分がしみ出てスリーブに付着し、そこに更にトナー又はトナー中の成分が融着することで、従来のワックスを内包しないトナーに比べ、現像スリーブ汚染を悪化させることが、本発明者らの検討によりわかってきた。その結果、スリーブ表面を多少改善したとしても長寿命化は困難と考えられる。
【0012】
この現象は、ワックス成分を含有させているトナーのなかでも、懸濁重合法や乳化重合法等で作成された重合トナーを用いた場合より、バインダ、着色剤、ワックス等を混練後粉砕し作成された粉砕トナーを用いたほうが顕著である。これは、トナーの作成方法の違いにより、重合トナーではワックスをトナー中心部に内包させることが可能であるのに対し、粉砕トナーにおいては、ワックスがトナーの比較的表面にも存在し易いことによる。
【0013】
又、この現象は一成分現像方式に比べ、トナーと磁気キャリアを含む二成分現像剤を用いた場合のほうが顕著である。これは、現像スリーブと磁気キャリアの磁気的付着力により、キャリアに付着しているトナーがより現像スリーブに押し付けられるために、上記ワックス成分等がより現像スリーブに付着し現像スリーブを汚染させているためであると考えられる。
【0014】
更に、一成分現像剤を用いた現像装置の場合には、比較的感光体ドラム等と一体に作られた、いわゆるカートリッジとして使われることが多く、感光体ドラムの摩耗等による交換時に現像スリーブを含めた現像装置も一緒に交換される場合が多いので、現像スリーブの寿命も5万枚程度の耐久寿命があればよい。これに対し、二成分現像剤を用いた現像装置の場合には、トナー補給機構が必須なため、カートリッジとして使われることが少なく、又現像スリーブのみの交換も構成上簡単ではないので、現像スリーブは現像装置寿命10万枚以上さらには20万枚以上の耐久寿命が求められる場合が多い。
【0015】
よって、本発明の目的は、ワックスを含有した粉砕トナーを用いた従来の二成分磁気ブラシ現像において、現像スリーブ表面におけるトナー及びトナー中の成分の融着を防止する現像装置及び画像形成装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的は本発明に係る現像装置及び画像形成装置にて達成される。要約すれば、第1の本発明は、像担持体上に形成された静電潜像を可視画像とするために、現像剤を担持し搬送する回転可能な現像剤担持体を具備する現像装置において、
前記現像剤は、少なくともバインダ樹脂、着色剤、ワックスを含んで且つ粉砕して得られたトナーと、1KOeの磁界中における磁化量が、30〜230emu/cmの範囲内の磁性キャリアと、を含み、前記現像剤担持体の表面形状において、表面粗さRzを平均山間隔Smで割った値Rz/Smが、
0.05≦Rz/Sm≦0.25
の条件を満足することを特徴とする現像装置を提供する。
【0017】
第2の本発明は、表面に静電潜像が形成される像担持体と、前記静電潜像を可視画像とするために現像剤を担持し搬送する回転可能な現像剤担持体を具備する第1の本発明の現像装置と、を有することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る現像装置及び画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0019】
実施例1
図2は、本発明が適用できる電子写真方式のフルカラー画像形成装置の概略構成図である。
【0020】
この画像形成装置は、矢印方向に回転する感光体ドラム3を備え、その周囲には、帯電器4、現像装置1M、1C、1Y、1BKを備えた回転式現像装置1、転写帯電器10、クリーニング手段12、及び感光体ドラム3の図上方に配置したレーザービームスキャナーLS等を含む画像形成手段から構成されている。
【0021】
各現像装置1M、1C、1Y、1Kは、トナー粒子とキャリア粒子を含有するそれぞれが含有する色の二成分現像剤を感光体ドラム3に供給する。現像装置1Mの現像剤はマゼンダトナーを、現像装置1Cの現像剤はシアントナーを、現像装置1Yの現像剤はイエロートナーを、現像装置1BKの現像剤はブラックトナーを含有する。
【0022】
CCD等の光電変換素子を有する原稿読み取り装置(不図示)は、原稿のマゼンダ画像情報、シアン画像情報、イエロー画像情報、及びブラック画像情報に対応する画像信号を出力する。レーザービームスキャナーLSに内蔵された半導体レーザーは、これらの画像信号に対応して制御され、レーザービームLを射出する。なお、電子計算機からの出力信号もプリントアウトすることができる。
【0023】
フルカラー画像形成装置全体のシーケンスは、まず感光体ドラム3が、帯電器4によって一様に帯電される。次にマゼンダ画像信号により変調されたレーザー光Lにより走査露光が行われ、感光体ドラム3上に静電潜像が形成され、現像位置に定置されたマゼンダ現像装置1Mによって、この静電潜像は反転現像される。
【0024】
一方、給紙カセットCから取り出され、給紙ガイド5a、給紙ローラ6、給紙ガイド5bを経由して進行した紙等の転写材Pは、転写ドラム9のグリッパ7により保持され、当接用ローラ8とその対向極によって静電的に転写ドラム9に巻き付けられる。転写ドラム9は感光体ドラム3と同期して図示矢印方向に回転しており、マゼンダ現像装置1Mで現像されたマゼンダ現像剤像は、転写部において転写帯電器10によって転写材Pに転写される。転写ドラム9はそのまま、回転を継続し、次の色(図2においてはシアン)の画像の転写に備える。
【0025】
一方、感光体ドラム3は、帯電器11により除電され、クリーニング手段12によってクリーニングされ、再び帯電器4によって帯電され、次のシアン画像信号により変調されたレーザービームLにより前記のような露光Lを受け、静電潜像が形成される。この間に現像装置1は回転して、シアン現像装置1Cが所定の現像位置に定置されていて、シアンに対応する静電潜像の反転現像を行い、シアン現像剤像を形成する。
【0026】
続いて、以上の工程を、それぞれイエロー画像信号、及びブラック画像信号に対して行い、4色分の現像剤像(トナー像)の転写が終了すると、転写材Pは帯電器14により除電され、グリッパ7を解除するとともに、分離爪15によって転写ドラム9から分離され、搬送ベルト16で定着器(熱ローラ定着器)17に送られる。定着器17は転写材上に重なっている4色の画像を定着する。こうして一連のフルカラー画像形成シーケンスが終了し、所要のフルカラー画像が形成される。
【0027】
次に、図1を用いて現像装置について説明する。尚、各現像装置1M、1C、1Y、1Kは同一の構成を備えているので、現像装置1Mについてのみ説明を行う。
【0028】
現像装置1Mは、現像容器18を備え、その内部は隔壁19によって現像室R1と撹拌室R2に区画され、撹拌室R2の上方にはトナー貯蔵室R3があり、中には補給用トナー20が収容されている。トナー貯蔵室R3下部にある補給口21からは、現像で消費されたトナーに見合った量のトナー20が撹拌室R2内に落下補給される。一方、現像室R1及び撹拌室R2内には、上記トナー粒子と磁性キャリアが混合された現像剤22が収容されている。尚、現像剤のトナーと磁性キャリアとの混合比は、重量比でトナーが6%になるようにした。
【0029】
ここで、本発明で用いるトナー粒子について説明する。本発明のトナー粒子は、従来例で記したようにオイルレス定着を達成するためにワックス成分を含有する粉砕トナーを使用している。粉砕トナーは、重合トナーに比べ比較的安価に作成可能であるが、その作成方法からワックス成分がトナー表層近傍に存在しやすい。そのため、同じくワックスを内包した重合トナーに比べ、後に説明する現像スリーブにワックスが染み出しやすく、結果としてスリーブ汚染がしやすい。本実施例においてはバインダ樹脂、ワックス、着色剤、荷電制御剤を混練したのち、粉砕、分級してトナー粒子を得た。尚、生成法は上記手法に限るものではなく、混練冷凍粉砕法等で生成しても構わず、又他の添加物が入っていても構わない。
【0030】
本発明で用いる磁性キャリアについての詳細は後述する。
【0031】
現像室R1内には搬送スクリュー23が収容されており、回転駆動により現像剤を、感光体ドラム3の長手方向に沿って搬送する。攪拌室R2には、搬送スクリュー24が収容されており、スクリュー24による現像剤搬送方向はスクリュー23によるそれとは反対方向である。
【0032】
隔壁19には、手前側と奥側に開口が設けられており、スクリュー23で搬送された現像剤22が、この開口の1つからスクリェー24に受渡され、スクリュー24で搬送された現像剤22が、上記の開口の他の1つからスクリュー23に受渡される。
【0033】
現像容器18の感光体ドラム3に近接する部位には開口部が設けられ、該開口部にアルミニウムや非磁性ステンレス鋼等の材質であり、その表面に適度な凹凸を有する非磁性現像スリーブ25が設けられている。
【0034】
現像スリーブ25は矢印bの方向(感光体ドラム3回転方向aとは逆方向)に周速度Vbで回転し、現像容器18開口にあるブレード状の層厚規制部材(層厚規制ブレード)28にて適正な現像剤層厚に規制された後、現像剤22を現像領域26に担持搬送する。
【0035】
現像スリーブ25に担持された現像剤の磁気ブラシは現像領域26で矢印a方向に周速度Vaで回転する感光体ドラム3に接触し、静電潜像はこの現像領域26で現像される。スリーブ25の周速度Vbは感光体ドラム3周速比120〜200%が望ましく、130〜180%なら更によい。上記の範囲を下回ると十分な画像濃度が得られず、又上回ると現像剤22の飛散が生じる。
【0036】
現像スリーブ25内にはローラ状の磁石29が固定配置されている。この磁石29は、現像領域26に対向する現像磁極S1を有している。現像磁極S1が、現像領域26に形成する現像磁界により現像剤の磁気ブラシが形成され、この磁気ブラシが感光体ドラム3に接触して静電潜像を現像する。その際、磁気ブラシに付着しているトナーと、現像スリーブ25表面に付着しているトナーも、静電潜像の画像領域に転移して現像する。本実施例では、磁石29は現像磁極S1の他にN1、N2、N3、S2極を有し、これらの磁極によって、現像剤22を現像スリーブ25表面に汲み上げたり、現像容器18中に落としたりしている。
【0037】
係る構成により、従来と同様に、現像スリーブ25の回転によりN3極及びS2極にて塗布された現像剤22は層厚規制ブレード28を通過して現像磁極S1に至り、その磁界中で穂立ちした現像剤22が感光体ドラム3上の静電潜像を現像する。その後、現像容器18内部側に位置するN2極、N3極間の反発磁界により現像スリーブ25上の現像剤22は、撹拌室R1内へ落下する。撹拌室R1内に落下した現像剤22はスクリュー23、24により撹拌搬送される。
【0038】
本実施例にて使用されている、オイルレス定着を達成するためのワックス成分を含有する粉砕トナーは、スリーブにワックスが染み出しやすく、結果としてスリーブ汚染がしやすい。
【0039】
そして、従来例で記したように、この現像スリーブ25上のトナー又はトナー中の成分の融着(スリーブ汚染)という現象は、アルミナ等で形成された不定形粒子によって粗面化する、サンドブラスト処理を行った現像スリーブ25において、長期間の使用によりトナー又はトナー中の成分が、その粗面化した表面の凹凸の谷に引っかかり付着することで起こる。この谷に付着したトナーは、長期間の使用によりスリーブ25表層の現像剤22の層厚を規制する層厚規制部材28等の押圧による摩擦熱により融着に至ると考えられる。
【0040】
従って、現像スリーブ汚染を防ぐために、本発明者等は、この現像スリーブ表面処理をガラスビーズによるブラスト処理を行った。
【0041】
ガラスビーズによるブラスと処理はサンドブラストによる処理と比ベて、現像スリーブ25の、図3に示すような、表面の十点平均粗さRzを凸凹の平均山間隔Smで割った値Rz/Smが小さい。
【0042】
現像スリーブの表面形状の測定方法について、図3を用いて、以下に説明する。本発明におけるRz、Smとは、JIS−B0601及びISO468に記載されている十点平均粗さ及び凹凸の平均間隔を規定する値で、次式により求められる。
【0043】
【数1】
Rz=〔(R1+R3+R5+R7+R9)−(R2+R4+R6+R8+R10)〕/5
Ri;凹凸のピーク値
Sm=(1/n)Σ(i=n)(Smi)
Smi;凹凸の間隔
【0044】
ここで、Rzは、定性的には、図3に示す物体(ここでは現像スリーブ25の)の表面Dの凸凹の山と谷の高低差を表す。又、Smは、粗面化処理した表面の断面曲線Dから基準の長さ(測定長さ)Lだけ切り取った部分において、その断面曲線Dの中心線Cを横切る最初の山から谷への横断点から、次の山から谷への横断点までの間隔をSとし、それ以降の横断点間隔をS、S、・・・、S(nは基準の長さ中の横断点の総数を示す)として、その算術平均したもので、定性的には山と隣の山の平均間隔を表す。
【0045】
表面粗さRzの測定には、接触式表面粗さ計((株)小坂研究所製;サーフコーダーSE−3300)を用いた。この測定器は、1回の測定で現像スリーブ25の表面の十点平均粗さRzと凸凹の平均山間隔Smを同時に測定することができる。測定条件はカットオフ値が0.8mm、測定長さが2.5mm、送りスピードが0.1mm/秒、倍率が5000倍である。
【0046】
つまり、このRz/Smは、十点平均粗さRzが凸凹の山と谷の高低差を表し、平均山間隔Smが凸凹の山と隣の山の平均間隔を表すことから、表面の粗さの傾きが急なほど値が大きく、傾きが緩やかなほど値は小さい。つまり、Rz/Smはスリーブ25の表面の滑らかさを表す指標となる。
【0047】
Rz/Smが、0.25以下の場合には、先述のようにトナーがスリーブ25表面の凹凸の谷に引っかかりにくく、汚染レベルを低減できる。但し、Rz/Smが0.05より小さくなると、スリーブ汚染には効果があるが、スリーブ表面が極度に滑らかになり、現像スリーブ25の現像剤搬送性が不十分となって実用上問題がある。よって、本発明では、このRz/Smは、次の式を満たすものとする
0.05≦Rz/Sm≦0.25
【0048】
上式を満たすことで、表面の凹凸がなめらかになり、凹凸部等での現像スリーブ25ヘトナーが押しつけられる力を小さくすることで、トナー又はトナー中の成分が現像スリーブ25に融着することをある程度は防止することができるようになった。
【0049】
そして、更に、現像スリーブ25の表面形状が、以下の条件を満たす数値であることが好ましい
4μm≦Rz≦30μm
20μm≦Sm≦120μm
【0050】
Rzが4μmより小さいと、やはり現像剤の搬送性が不十分なため安定に現像スリーブ25上に現像剤をコートできず、逆にRzが30μmより大きいと、搬送性は良化するが現像剤22にかかる摺擦力が強くなりすぎ、耐久時の現像剤22の劣化が大きくなるために好ましくない。
【0051】
Smに関しても、20μmより小さいと、スリーブ汚染が問題となり、逆にSmが120μmより大きくなると凹凸の数の減少による搬送性の低下により現像スリーブ上現像剤が安定してコートしなくなってしまう。
【0052】
尚、スリーブ25の表面処理方法は、実施例1に示される方法だけに限定されるわけではないが、尖った角のある不定形の砂、アルミナ粒子や酸化けい素等を高速で吹き付ける不定形ブラスト法より、ガラスビーズ、ステンレス鋼球、セラミック球のような突起の少ない定形球形粒子を用いた定形ブラスト法のほうが、条件に適合した現像スリーブを作成しやすい。特に、現像スリーブ25の材質としてアルミニウムを用いると加工しやすい。
【0053】
ここで、本発明者らは、上記ワックスを含有した粉砕トナーと上記スリーブの組み合わせで種々の検討を行った。その結果、スリーブ汚染に対してある程度の改善がみられた。しかしながら、スリーブ汚染が完全になくなるまでには至らなかった。
【0054】
特に、近年の複写機及びプリンターの高速化の流れに対応するために、現像スリーブ25の周速度Vbを350mm/sec以上1000mm/sec以下又は回転速度が250rpm以上1000rpm以下とした場合、スリーブ表層の現像剤22の層厚を規制する層厚規制ブレード28等の押圧による摩擦熱等が高くなるために、より融着しやすくなり、長時間の使用の中でスリーブ汚染にいたることがあった。これは、特に現像スリーブ25の周速Vbが500mm/sec以上又は回転速度が400rpm以上の場合に顕著である。ただし、スリーブ25の周速度が1000mm/sを超えるとトナーの飛散等の別の問題が起きる。又、回転速度が1000rpmを超えるとスリーブ25端部の軸受け部分が回転の摩擦により昇温が激しくなるなど、やはり別の問題が起こる。
【0055】
又、最近の複写機及びプリンターの高画質化及び低消費電力化の流れの中で、小径、且つシャープメルトタイプのトナーが開発されてきているが、ワックスを含有した粉砕トナーの中でもこのタイプのトナーを用いた場合は、やはり長時間の使用の中でスリーブ汚染にいたることがあった。体積平均径が10μm以下のトナーを用いる場合、特に、8.5μm以下の小径トナーを用いる場合はスリーブ汚染に至りやすかった。そして、更に4μm以下のトナーを用いると今度は飛散等が問題となる。従って、本実施例では、トナーの体積平均粒径は、4μm〜10μmとして考える。
【0056】
そこで、本発明においては、以下のようなキャリアを用いることで問題を解決した。
【0057】
本発明者らの実験によると、S−Dギャップが300〜1000μm、M/Sが20〜50mg/cm、T/D比が5〜12%の範囲内では、キャリアの磁化量が230emu/cm以下、好ましくは190emu/cm以下であれば、現像スリーブ25に現像剤22が磁気的に引きつけられる力は、汎用的に利用されているCu−Znフェライト(約280emu/cm)の場合よりもかなり小さいものとなる。
【0058】
その結果、現像スリーブ25とキャリアの磁気的付着力が小さくなり、それらに挟まれているトナーが現像スリーブ25に押しつけられる力が軽減されるため、ワックス成分を含有する粉砕トナーを使用した系においても、現像スリーブ25におけるワックスの付着、及びそれに起因するトナーとトナー中の成分の融着による汚染を防止することができた。
【0059】
上記キャリアの磁化量の範囲であるが、キャリア付着を考慮すると、1KOeの磁界中での磁化量が、30〜230emu/cm、好ましくは100〜190emu/cmが適正である。30emu/cm未満になるとキャリア付着が増大するだけでなく、現像スリーブ25上に磁気的に現像剤を塗布・搬送できなくなる。又、230emu/cmを超えると、ワックスを含有する粉砕トナーを使用する系では、現像スリーブ汚染が激しくなる。
【0060】
上記磁化量と同時にキャリアの粒径範囲や比抵抗の範囲を適正化することにより、更にキャリア付着や画像劣化を確実に防止しながら現像スリーブ汚染という現象を解決できる。つまり、キャリアの個数平均粒径を10〜60μmの範囲にすることで、より好ましくは25μm以上とすることで、微粒径のキャリアの感光体への付着、大粒径キャリアによるハキメムラの見えやすさを防止し、又キャリアの比抵抗を10〜1014Ωcmの範囲内にすることで、低磁化量のキャリアであっても電荷注入によるキャリア付着を防止でき、且つキャリアのチャージアップによる画像劣化を防止できるのである。
【0061】
上記した低磁化量のキャリアを用いることで、ハキメムラ以外にも高画質化が達成できる。その理由は、隣り合う磁気ブラシの磁気的な相互作用が、低磁化量のために小さく、その結果磁気ブラシの穂が緻密に且つ短くなることで、画像として解像度の高いものを提供できるのである。
【0062】
本発明において、上記低磁化量キャリアは、バインダ樹脂と磁性金属酸化物及び非磁性金属酸化物を含む樹脂磁性キャリアを重合法により生成したが、この製造法だけにとどまらず、フェライトキャリア等で磁化量を制御しても構わない。磁化量と粒径、及び比抵抗の測定方法に関して以下に説明する。
【0063】
まず磁化量であるが、キャリアの磁気特性を理研電子(株)製の振動磁場型磁気特性自動記録装置にて、1KOe(キロエルステッド)の外部磁場中に円筒状にパッキングしたキャリアの磁化の強さを求め、その後キャリアの真比重を掛けることで磁化量(emu/cm)を算出した。
【0064】
粒径は、ランダムに300個抽出したキャリア粒子を走査電子顕微鏡により、撮影し、それを、ニコレ社(株)製の画像処理解析装置Luzex3(商品名)により、水平方向フェレ径をもってキャリア粒径とし、算出した。
【0065】
比抵抗は、図4に示す測定装置を用いた。セルEに、キャリア33に接するように電極30及び31を配し、電極30と31間に電圧32を印加し、そのとき流れる電流を測定することにより比抵抗を求める。本発明に用いる比抵抗の測定条件は、充填キャリアと電極との接触面積S=約2.3cm、厚みd=約2mm、上部電極31の荷重180g、測定電界強度を5×10V/mとした。
【0066】
又、トナーの体積平均粒径の測定法について説明する。測定装置としてコールター社製コールカウンターTA−II型(商品名)を用い、これに、個数平均分布、体積平均分布を出力する日科機製インターフェース(商品名)及びキヤノン製CX−iパーソナルコンピュータ(商品名)を接続する。電解液は、塩化ナトリウム(試薬1級)を用いて1%NaCl水溶液を調製する。
【0067】
上記の電解液100〜150ml中に分散剤として、界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料のトナーを0.5〜50mg加えて懸濁する。この試料を懸濁した電解液を超音波分散器で約1〜3分、分散処理した後、上記のコールカウンターTA−II型により、100μmのアパチャーを用いて、2〜40μmのトナー粒子の粒度分布を測定し、トナーの体積分布を求める。このようにして求めたトナーの体積分布からトナーの体積平均粒径が得られる。
【0068】
実験例1
以上のような本実施例の内容において、以下の条件で、比軟例1と比較して、現像スリーブ汚染の比較を行った。
【0069】
1.実施例1による現像装置1Ma:本実施例として、本実験1に使用した磁性キャリア、トナー、現像スリーブ25等は次の条件のものである。個数平均粒径、比抵抗、体積平均粒径の測定は、上記に説明した条件で行われた。
【0070】
現像剤;粉砕トナー+樹脂磁性キャリア;T/D比=8%
キャリア;重合法により生成された樹脂磁性キャリア
1KOe磁界中の磁化量;190emu/cm
個数平均粒径;40μm
比抵抗;1012Ωcm
トナー; バインダ、着色剤、ワックス等を混練後粉砕し作成された粉砕トナー
体積平均粒径;7μm
単位質量当たりの平均電荷量;25μC/g
スリーブ上現像剤の単位面積当たりの重量;25mg/cm
スリーブ表面粗さ;現像スリーブ25をガラスビーズの定形球形粒子によりブラスト処理したもの
Rz;13μm、Sm;80μm、Rz/Sm;0.16
スリーブの周速度Vb;450mm/sec
【0071】
2.実施例1による現像装置1Mb:現像装置1Mbでは、現像装置1Maに対して、以下の磁性キャリアを用いたときの現像スリーブ汚染を比較した。本実施例では、現像装置1Maに収容された現像剤22と、磁性キャリアの種類が違うが磁化量が低い磁性キャリアを用いている。
【0072】
フェライトキャリア;1KOe磁界中の磁化量;165emu/cm
他の条件は実施例1と同じ。
【0073】
3.比較例1;上記現像装置1Maに対して以下の磁性キャリアを用いたとき現像スリーブ汚染を、本実施例1である現像装置1Ma、1Mbと比較した。本比較例では、磁性キャリアの磁化量の違いが特徴である。
【0074】
フェライトキャリア;1KOe磁界中の磁化量;260emu/cm
【0075】
・比較例2;上記比較例1に対して以下の表面処理を施した現像スリーブ25bを用いたときの現像スリーブ汚染を現像装置1Ma、1Mbと比較した。本比較例2では、磁性キャリアの磁化量及び現像スリーブ25の表面処理の違いが特徴である。
【0076】
フェライトキャリア;1KOe磁界中の磁化量;260emu/cm
スリーブ表面粗さ;現像スリーブ25をサンドブラスト処理したもの
Rz;4μm、Sm;13μm、Rz/Sm;0.31
他の条件は実施例1と同じ。
【0077】
以上のような構成で現像スリーブ25の汚染度を評価するに当たり、粉砕法により生成された非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤を担持し搬送する回転可能な現像スリーブ25と、現像スリーブ25の内部に固定して設けられた複数の磁界を発生する磁石29が配置された現像装置において、現像スリーブ25を連続で5時間回転させ続けた場合に、現像スリーブ25上にトナー及びトナー中の成分がどのくらい融着するかを、実施例1及び比較例1、2において検討した。
【0078】
スリーブ汚染濃度の評価方法としては、反射型濃度測定計を用い使用前後のスリーブ表面反射光を測定し、その光学濃度差ΔDを汚染濃度とし、表1にまとめた。表中○は汚染濃度が0.07未満の場合、又、△は0.15未満の場合、×は0.15以上の場合である。
【0079】
【表1】
Figure 2004029574
【0080】
上記比較例1と比較例2を比べると、現像スリーブ汚染は、現像スリーブ表面の凹凸が滑らかな(Rz/Smが小さな)比較例1のほうが抑えられており、スリーブ表面の改質による効果が認められるが、スリーブ汚染が完全に起こらなくなるには至っていない。更に、本実施例1による現像装置1Maと比較例1を比ベると、現像スリーブ汚染は、キャリアとして低磁化のキャリアを用いた現像装置1Maの方が抑えられており、低磁化キャリアの効果が認められる。
【0081】
又、低磁化キャリアとして、現像装置1Maで用いた樹脂キャリアの変わりにフェライトキャリアを用いた現像装置1Mbにおいてもスリーブ汚染が良化していることから、スリーブ汚染はキャリアの種類によらず、キャリアの磁化量が低磁化であることによって良化していることがわかる。
【0082】
実施例2
本実施例は、現像スリーブ25の表面を粗面化処理した後、その上にNi−Pめっき、もしくはNi−Bめっき、若しくはCrめっきをコーティングすることにより、現像スリーブの表面の粗さを制御したことが特徴である。その他は実施例1と同じである。
【0083】
現像スリーブ25表面にNi−P、Ni−B、Crの各めっきをコーティングすると、表面粗さの制御が容易になる上に、現像スリーブ25の耐摩耗性を向上する効果がある。又、スリーブの切削やブラスト時にできる表面の細かいギザギザを滑らかにする効果もある。細かいギザギザにはトナーが引っかかりやすく、スリーブ汚染に悪影響を与えるが、Ni−P、Ni−B、Crの各めっきを施すことでスリーブ汚染を低減できる。
【0084】
又、現像スリーブ25の材質にアルミニウムを用いた場合、ステンレスに比べて安価にできるものの、現像スリーブ表面の硬度が低いことから、キャリアを含む二成分現像剤を用いた場合、耐摩耗性が低下し、現像スリーブの寿命が短くなってしまう。しかし、アルミニウムの現像スリーブでも、表面にNi−P,Ni−B、Crの各めっきをコーティングすると、表面硬度がアルミニウムよりも増して、現像スリーブの寿命を延ばすことが可能になる。
【0085】
実施例3
本実施例は、実施例2と同様、現像スリーブ25は表面を粗面化処理した後その上にコーティングを施すことにより、所望の表面状態を得るが、本実施例では、結晶性グラファイト及び導電性カーボンをコーティングする点が異なる。樹脂層のコーティングは、実施例2のNi−P、Ni−B、Crの各めっきと同様、所望の表面形状の形成の容易化、現像スリーブの硬質化を目的にしている。
【0086】
尚、本発明が適用できる現像装置及び画像形成装置の現像剤や現像剤担持体以外の構成は、本明細書に説明されているもの以外のものでも良い。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の現像装置及び画像形成装置は、像担持体上に形成された静電潜像を可視画像とする現像剤担持体を具備する現像装置において、少なくともバインダ樹脂、着色剤、ワックスを混練した後粉砕して得られたトナーと、1KOeの磁界中における磁化量が、30〜230emu/cmの範囲内の磁性キャリアと、を含む現像剤を収容し、又、現像剤担持体の表面形状が、0.05≦Rz/Sm≦0.25の条件を満足するので、現像スリーブ表面が改良され、且つ低磁化キャリアを用いているので、ワックスを含有した粉砕トナーを含む現像剤を用いるときの、トナーやトナー中の成分の融着による現像スリーブ汚染を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る現像装置の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明に係る現像剤担持体のRz/Smを定義するための説明図である。
【図4】本発明に係る現像剤担持体の比抵抗の測定装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
3           感光体ドラム(像担持体)
18          現像容器
22          現像剤
25          現像スリーブ(現像剤担持体)
28          層厚規制部材
29          磁石

Claims (8)

  1. 像担持体上に形成された静電潜像を可視画像とするために、現像剤を担持し搬送する回転可能な現像剤担持体を具備する現像装置において、
    前記現像剤は、少なくともバインダ樹脂、着色剤、ワックスを含んで且つ粉砕して得られたトナーと、1KOeの磁界中における磁化量が、30〜230emu/cmの範囲内の磁性キャリアと、を含み、前記現像剤担持体の表面形状において、表面粗さRzを平均山間隔Smで割った値Rz/Smが、
    0.05≦Rz/Sm≦0.25
    の条件を満足することを特徴とする現像装置。
  2. 前記現像剤担持体の表面形状が、更に、表面粗さRz、及び平均山間隔Smが、
    4μm≦Rz≦30μm
    20μm≦Sm≦120μm
    の条件を満足することを特徴とする請求項1の現像装置。
  3. 前記現像剤担持体の周速度が350mm/sec以上1000mm/sec以下、又は、回転速度が250rpm以上1000rpm以下であることを特徴とする請求項1又は2の現像装置。
  4. 前記トナーの体積平均粒径が、4〜10μmであることを特徴とする請求項1、2又は3の現像装置。
  5. 前記現像剤担持体が、定形球形粒子を用いてブラスト処理したものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の現像装置。
  6. 前記現像剤担持体が、Ni−Pめっき層、又はNi−Bめっき層、又はCrめっき層を設けたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の現像装置。
  7. 前記現像剤担持体が、結晶性グラファイト及び導電性カーボンを含む樹脂層を設けたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の現像装置。
  8. 表面に静電潜像が形成される像担持体と、前記静電潜像を可視画像とするために現像剤を担持し搬送する回転可能な現像剤担持体を具備する請求項1〜7のいずれかの項に記載の現像装置と、を有することを特徴とする画像形成装置。
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