JP2004028803A - 管内面付着物の測定方法 - Google Patents

管内面付着物の測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】管の内面に付着した厚さが1cm以下の汚れなどについても誤差が少なく簡便かつ確実に測定できる管内面付着物の測定方法とすることである。
【解決手段】超音波発信装置1と接続され、所定間隔で配置された一対の探触子2を測定対象の管の壁面4に接近させ、両探触子間に超音波を送受信することにより管の壁面4に板波(ラム波)6を伝播させ、このとき探触子2に受信される超音波の波形と、付着物層がないかまたは付着物層厚が既知のいずれかの状態で受信される基準波形とを比較することにより、管内面の付着物の有無または1〜10mm程度の付着物層の厚さを測定する管内面付着物の測定方法とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、化学プラントなどにおける配管の内側に付着した汚れ等の付着物を配管の外部から測定する管内面付着物の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、化学プラントその他の工業用施設には、熱交換器や蒸留塔などに接続されるような配管が多数設置されており、これら配管の内面には使用時に通過する物質に応じて様々な汚れが付着する。
【0003】
例えば化学物質を製造する設備では、配管内に原料などの流体が積層状態になるまで付着すると、管内の流通抵抗が大きくなって流通速度は遅くなり、製造効率が低下したり、管内圧力の上昇や反応時の安全性の問題、または製品の純度の低下など種々の問題を起こす懸念がある。
【0004】
このような問題を起こさないように配管内を定期的に洗浄する作業が行なわれているが、洗浄作業は、製造工程の一次的な停止を伴う作業になり、そのために製造時間も遅延することとなり、経済的な損失も大きい。
【0005】
通常、管内面に汚れが付着しても流体の流れを阻害する汚れの付着の有無や付着量を実際に調べることは困難であり、このため、予め決められた定期的な日程に従って管内の洗浄作業が行なわれている。
【0006】
また管内面に付着した汚れの有無やその付着量は、配管の使用状態によって大きく異なるから、管内面付着物の量を適宜に知ることができれば、安全性の高い補修作業が可能になり、より効率的な補修プログラムの設定が可能になると共により最適な条件で配管を使用できる。
【0007】
管内面付着物の量を知るための従来の測定方法としては、例えば管壁に低出力のガンマ線を透過させ、波形の減衰を調べて付着物の厚みを測定する方法が知られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した従来の管内面付着物の測定方法では、γ線などの生物体を損傷させる危険性のある放射線を透過させる方法であり、強い線源を使用する場合は、作業者などに対する安全性を考慮する必要があり、簡便に行なえる方法であるとはいえない。
【0009】
また、γ線などを利用する方法は、汚れの層がかなり厚くなければ、配管内に流体を通過させながら測定するときに測定精度が充分に高くならないという欠点がある。
【0010】
特に、管内面に形成される厚さが1cm以下の付着物層は、放射線では測定誤差が大きくて確実に検出することが難しく、運転中に汚れ(付着物)と流通液の密度差が小さい場合には測定誤差が大きくなり検出がかなり困難である。
【0011】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、安全で法的な届出の必要もない簡便な方法により、精度よく確実に管内面付着物を検出できる測定方法とすることである。
【0012】
また、この発明の他の課題としては、管内面に付着した厚さが1cm以下の付着汚れの層についても誤差が少なく測定できる精度の高い管内面付着物の測定方法とすることである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、超音波発信装置と接続され所定間隔で配置された一対の探触子を検査対象の管外面に接近させ、両探触子間に超音波を送受信することにより管に板波(好ましくはラム波モードの板波)を伝播させ、このとき前記探触子に受信される超音波の波形と、管内面に付着物のない状態または付着物層の厚さが既知の状態で受信される波形とを比較することにより、管内面付着物の有無または付着物層の厚さを測定することからなる管内面付着物の測定方法としたのである。
【0014】
上記したように構成されるこの発明の測定方法では、超音波発信装置に接続した一方の探触子から発信された超音波が、接近(間接的または直接的に接続される場合も含む。)した管に伝播し板波(ラム波)となって他方の探触子に受信される。
【0015】
このとき、管内面に付着物層がなく管内面が直接に液体に接している場合は、管から液体に超音波(ラム波)の一部が漏洩するから、他方の探触子に受信される超音波を表示すると、発信時より減衰した波形で現れる。
【0016】
また、管内面に結晶性付着物などの付着物が層状に存在する場合は、付着物層中に超音波が伝搬せず、すなわち管内から付着物層を介して液体層中に超音波が漏洩しないので、他方の探触子に受信された超音波は減衰しない波形になる。
【0017】
したがって、管内面に結晶などの付着物層がある場合は、受信波形が、管内面に付着物層がない状態で受信される波形に比べてピークなどからみた強度が減衰せずに高い強度になることによって判別できる。
【0018】
特に、受信波形の強度の大きさは、付着物層の厚みが1mmから10mmの範囲において、その厚みに良く対応するから、受信波形の強度に応じて付着物層の厚みを推定することができる。
【0019】
また、上記の管内面付着物の測定方法で用いる超音波は、通常100〜1000kHz(好ましくは300〜700KHz)の超音波であることが好ましい。このような所定波長の低周波数の超音波は、管壁を形成する金属材料(特に鋼材)において、板波(固体板の中に縦波と横波が混在している波をいう。)として伝播し、通常、鋼材を伝搬する距離が1m程度の距離では、全く減衰せずに伝わり、正確な付着物の有無および付着物層の厚さの測定に利用可能だからである。
【0020】
【発明の実施の形態】
この発明の実施形態を、以下に添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1に示すように、管内面付着物の測定方法に用いる装置は、超音波発信装置(縦波横波垂直入射型)1と接続され、一対の探触子2を約1mの直線状の棒3の両端に固定することで所定間隔で配置し、これらを測定対象の管(金属製)の壁面4の外側に合成樹脂製のパッド5を介して接近させるように配置したものである。
【0022】
超音波発信装置1は、市販されている超音波探傷器(三菱電機社製など)を利用することができ、超音波センサーとなる2つの探触子2を台形状のパッド5の斜面にネジ止めにより固定している。
【0023】
また、一対の探触子2は、同じ構造であるが上記した送信機構と逆に受信機構も働くため、1つの探触子が発信した縦波と横波(同じ偏向方向のもの)を所定距離だけ離れた他の探触子2で受信することができる。
【0024】
そして、2つの探触子2は、管の壁面内部に板波6を伝播させることができる。このとき、1方の探触子2(図中左側)から発信され、他方の探触子2(図中右側)に受信される超音波の波形は、超音波発信装置のモニター画面7に表示することができると共に、必要に応じてプリンタ8を用いて紙面等に印刷することもできる。
【0025】
一方、予め、管の壁面(内面)を清浄処理して付着物層をなくしておき、または管の径方向の切断面を顕微鏡などで観察することにより、付着物層厚を既知の管(図示せず。)を調べ、これらの管を外部から上記同様にして調べた超音波の波形を基準波形とする。
【0026】
この基準波形と、前記得られた付着物層の厚さが未知の管の超音波波形とを比較することにより、管内面付着物層の有無または厚さを比較して調べることができる。
【0027】
このとき、図1(a)に示すように、管の壁面4の内側に付着物層がなく管内面が直接に液体Lに接している場合は、図中の斜め下向きの矢印のように管から液体Lに超音波(板波)の一部が漏洩するから、探触子に受信される超音波は、発信時よりも減衰した波形で現れる。
【0028】
ところが、図1(b)に示すように、管内面に結晶性付着物などの付着物または付着物層Cが形成されている場合は、付着物層Cに超音波が伝搬せず、すなわち管内から付着物層Cを介して液体L中に超音波が漏洩しないので、図1(a)で右側の探触子2に受信された超音波は減衰しない波形になる。
【0029】
上記の測定方法で使用する超音波の周波数は、通常、管の厚さが5mm程度の場合には、500kHzを目安とし、400〜600kHzとすることが好ましい。なぜなら、所定の周波数未満または所定の周波数を超える超音波を使用すると、板波の発生効率が低下して好ましくないからである。但し、管の厚さが上記と大きく異なる場合には、事前に適当な周波数を検証し、使用する超音波の周波数を選択する。
【0030】
このような管内面付着物の測定方法は、管内面付着物層の厚さが、1mm〜10mmである場合に、特に正確に測定できる。なぜなら、1mm未満の薄厚の付着物が形成されている状態では、充分に管内の板波の振動を液体に伝わらないようにシールドできず、受信される超音波が管内の液体によって減衰する場合があるからである。また、10mmを超えて厚い付着物では、減衰なく板波(ラム波)の波動が受信され、それ以上に汚れが厚くなっても信号強度は変わらない。
【0031】
上記した実施形態の測定装置を用いて、以下のように、管内面付着物の測定方法による効果の確認試験を行なった。
【0032】
すなわち、図2に示すように、上面を開放した溝型の水槽9をステンレス鋼で形成し、試験1では水槽9の内側を清浄し、何も入れていない状態(水も付着物もなし)、試験2では予めフェノール系樹脂の結晶からなる付着物層Cを水槽9の内側底面(内面)に約10mmの厚さで形成し、その上に水Wを入れておいた状態とし、試験3では内面に付着物層のない状態で水だけを入れた状態とした。
【0033】
上記それぞれの状態で、水槽9の長手方向に沿って底面外側に実施形態の測定装置の2つの探触子2を、アクリル樹脂製のパッド5を介して押し当てた。
【0034】
そして、一方の探触子2から520kHz超音波を送信して、水槽9の底面内部(内面)に板波(図中矢印で示す。)を伝播させると共に、他方の探触子2に受信される超音波の波形を表示機(図1(a)に示すものと同じ。)に表示させ、さらにプリンタを用いて紙面に印刷し、図3に示した。
【0035】
図3(a)、(c)に示す試験1と試験3の結果を比較すると、水槽9の内面に付着物層Cが無く、直接に水Wを入れた場合(試験3)に、探触子2に最初に受信される波形は、水槽9に何も入れていない場合(試験1)において探触子2に最初に受信された波形に比べて減衰していた。
【0036】
このことから、520kHzの超音波からなる板波は、水によってかなり吸収されたことがわかる。なお、試験3において最初に受信された波形に続く他の波形は、水面から反射された超音波が受信されていたと考えられた。
【0037】
また、図3(a)、(b)の試験1と試験2の結果を比較すると、水槽の内面に形成した付着物層の上に水を入れた場合(試験2)は、水槽に何も入れていない場合(試験1)に受信された波形と同等であって減衰しておらず、しかも水面から反射された超音波も受信されておらず、水中に超音波が漏れていないことがわかる。
【0038】
これらのことから、水などの液体が接している板や管状のものでは、その内面に結晶の付着物層がない場合には、所定距離で受信される超音波が減衰して現れるが、内面に結晶などの付着物層がある場合には、受信波形がほとんど減衰せずに強く現れ、これらのことから、液体に接する板状物の内面に付着物層が有るか無いかは、受信される板状波の波形強度で判別できることがわかる。
【0039】
次に、図2に示した前記実験装置を用いて、以下のように試験4、5を行なった。すなわち、試験4としてフェノール系樹脂の結晶からなる付着物層Cを、その厚さが3mmとなるように水槽9の内側底面(内面)に形成し、その上に水Wを入れ、その状態で一方の探触子2から520kHz超音波を送信して、水槽9の底面内部(内面)に板波を伝播させると共に、他方の探触子2に受信される超音波の波形を超音波発信装置1(図1(a)参照)のモニター画面7に表示させ、さらにプリンタ8を用いて紙面に記録し、図4(a)に示した。
【0040】
さらに、試験5として、上記の試験4においてフェノール系樹脂の結晶からなる付着物層Cを、その厚さが7mmとなるように形成したこと以外は、全て同様に行なって伝播した板波の波形を記録し、図4(b)に示した。
【0041】
図4(a)、(b)の結果からも明らかなように、付着物層Cの厚さが3mmの場合に比べて、7mmの場合の方が信号強度が大きく現れており、付着物層Cの厚さを信号強度の相対的な比較によって測定できる。
【0042】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように、超音波発信装置と接続され所定間隔で配置された一対の探触子を検査対象の管外面に接近させ、探触子に受信される超音波の波形により、管内面付着物層の有無または厚さを測定するので、安全で法的な届出の必要もない簡便な方法により、確実に管内面付着物を検出できる管内面付着物の測定方法であるという利点がある。
【0043】
また、このように所定振動数の超音波の板波の減衰の有無により管内面付着物を測定することにより、管内面に付着した厚さが1cm以下の付着汚れの層についても誤差が少なく測定できる管内面付着物の測定方法となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)実施形態の測定方法における管内面に付着物がない場合の説明図
(b)実施形態の測定方法における管内面に付着物がある場合の説明図
【図2】試験例に用いた水槽に対する測定装置の装着状態を説明する一部断面正面図
【図3】試験例1、2、3における付着物の有無による受信波形の相違を示す図表
【図4】試験例4、5における付着物層の厚さによる受信波形の相違を示す図表
【符号の説明】
1 超音波発信装置
2 探触子
3 棒
4 管の壁面
5 パッド
6 板波
7 モニター画面
8 プリンタ
9 水槽
L 液体
C 付着物層
W 水

Claims (4)

  1. 超音波発信装置と接続され所定間隔で配置された一対の探触子を検査対象の管外面に接近させ、両探触子間に超音波を送受信することにより管に板波を伝播させ、このとき前記探触子に受信される超音波の波形と、管内面に付着物のない状態または付着物層の厚さが既知の状態で受信される波形とを比較することにより、管内面付着物の有無または付着物層の厚さを測定することからなる管内面付着物の測定方法。
  2. 超音波が、100〜1000kHzの超音波である請求項1記載の管内面付着物の測定方法。
  3. 管内面付着物層が、結晶性付着物である請求項1または2のいずれかに記載の管内面付着物の測定方法。
  4. 管内面付着物層の厚さが、1〜10mmである請求項1〜3のいずれかに記載の管内面付着物の測定方法。
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