JP2004028364A - 流下液膜式全蒸発器、液体のワンパス全蒸発方法ならびに気体量計測方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】実用的な伝熱面積で蒸発残液を生じることなくワンパスで100%液体を蒸発させるための流下液膜式全蒸発器、流下液膜式蒸発方法ならびに気体量計測方法を提供することにある。
【解決手段】管外を加熱した複数の伝熱管7内に液体を流下してワンパスで100%蒸発気化させるための流下液膜式全蒸発器1であって、上部管板面8の上方には液体を管板面に分散して供給する液分配器3があり、伝熱管上端には液体を管板面から各伝熱管内面に均等に導入するための切込みを設けた堰6が取り付けられ、伝熱管内には管壁と液体との伝熱を促進し、かつ液滴の自由落下を防止する金属製充填物9が挿入される。該蒸発器を用いて単純な装置及び操作で液体をワンパスで100%蒸発させる。さらに該方法を用いて蒸発前の液体の流量を高精度で計測することにより全蒸発した気体の量を精度よく安定して求める。
【選択図】 図1
【解決手段】管外を加熱した複数の伝熱管7内に液体を流下してワンパスで100%蒸発気化させるための流下液膜式全蒸発器1であって、上部管板面8の上方には液体を管板面に分散して供給する液分配器3があり、伝熱管上端には液体を管板面から各伝熱管内面に均等に導入するための切込みを設けた堰6が取り付けられ、伝熱管内には管壁と液体との伝熱を促進し、かつ液滴の自由落下を防止する金属製充填物9が挿入される。該蒸発器を用いて単純な装置及び操作で液体をワンパスで100%蒸発させる。さらに該方法を用いて蒸発前の液体の流量を高精度で計測することにより全蒸発した気体の量を精度よく安定して求める。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流下液膜式蒸発器、流下液膜式蒸発方法ならびに気体量計測方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
流下液膜式蒸発器としては縦型多管式熱交換器がしばしば用いられている。しかしながらワンパスでの蒸発率を100%にするには全ての伝熱管出口で蒸発残液を確実になくす必要があり、それに見合う伝熱面積は見当がつかないかもしくはきわめて過大な伝熱面積が必要であった。
全蒸発を実用的に行うには、蒸発残液を入口にリサイクルして再び蒸発させる方式が一般的であるが、装置ならびに操作が複雑になり、そのために安定性に欠ける場合があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の流下液膜式の縦型多管式熱交換器においては、各伝熱管への液体の流入は現実には均等にならないため、伝熱面積の余裕率以上に液体が流入した伝熱管では100%の蒸発が不可能となり、少なめに液体が流入した伝熱管では蒸発が途中で完了してその後の区間は無駄となる。さらに、液体が均等な流量で流入した伝熱管でも、液体が中心部に偏って気相中での自由落下状態になるなど気液の状況によって管壁からの伝熱が不十分となった伝熱管からは、少量の蒸発残液が出てくる。このようなゆらぎ現象を想定して蒸発残液が確実に生じないようにするのは見当がつかず、伝熱面積にきわめて過大な余裕をみるしかなく、実用的ではなかった。
リサイクル蒸発方式であると、蒸発した気体から残った液体を分離し、分離した液体を保有し、入口にリサイクルするなど、ワンパス全蒸発方式に比べて装置及び操作が追加されて複雑になる。その複雑さにより、外乱などによる変動が長引き、安定性に欠ける場合があった。
また、気体の量の計測は、差圧式流量計や体積式流量計を用いた場合、温度及び圧力による密度の影響を受けやすく、精度の高い質量式流量計でも密度自体が小さいため、液体の流量の計測に比べて精度が悪いという本質的な問題があった。
【0004】
本発明の目的は、従来技術における上記したような問題を解決し、実用的な伝熱面積で蒸発残液を生じることなくワンパスで100%液体を蒸発させるための流下液膜式全蒸発器を提供し、また該蒸発器を用いて単純な装置及び操作で液体をワンパスで100%蒸発させる方法を提供し、さらに該方法を用いて蒸発前の液体の流量を高精度で計測することにより全蒸発した気体の量を精度よく安定して求める方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明は、管外を加熱した複数の伝熱管内に液体を流下させてワンパスで100%蒸発気化させるための流下液膜式全蒸発器であって、上部の管板面の上方に、液体を該管板面に分散して供給する液分配器を設け、前記伝熱管の上端に、液体を前記管板面から前記の各伝熱管内面に均等に導入するための切込みを設けた堰を取り付け、前記伝熱管内には、管壁と液体との伝熱を促進し、かつ液滴の自由落下を防止する金属製充填物が挿入されることを特徴とする。
【0006】
上部管板面上方の液分配器により液体が管板面に分散して供給され、管板面に高低差の少ない液面を生じさせる。これにより液分配器がない場合に起こりがちな液供給ノズルから伝熱管への直接流入や伝熱管位置による液体流入量の偏りを防止するとともに、各伝熱管上端の堰を通過する液流量を左右する管板面の液面高さを均一に近づける。
各伝熱管上端の切込みを設けた堰により、その周囲の管板面に生じた液面の高さに応じて少流量でも安定して定量的に液体が堰を通過して伝熱管内面に流下する。
伝熱管内に挿入された圧力損失の低い金属製充填物により、液体が中心部に偏っても充填物が液体の自由落下を防止するとともに、液体や気体より良好な金属の熱伝導により管壁からの伝熱を促進し、圧力損失が低いので沸点を上昇させ難く、したがって蒸発を妨げることはない。
【0007】
請求項2においては、堰の水平度を±0.5mm以下とすることにより、一般的な縦型熱交換器に比べて水平面と各伝熱管上端の堰高さの差のバラツキを少なくし、流れ勾配がなければ水平面に平行に生ずる管板面上の液面に対する各伝熱管上端の堰高さのバラツキが少なくなり、各堰とその周囲液面の高さの差に応じて定量的に堰を通過する液流量の伝熱管ごとのバラツキが少なくなる。すなわち各伝熱管への液体の流入を高精度で均等にならしめる。
請求項3においては、前記管板面上に、前記複数の伝熱管の間隔を他の部分に比べて拡大して形成された伝熱管不存在部を設け、前記液分配器を該伝熱管不存在部に液体を供給するように配置したことにより、管板面上の液の流れ勾配を緩和し、液面を水平面に近づけることで周囲液面に対する各伝熱管上端の堰の高さのバラツキが少なくなり、各堰とその周囲液面の高さの差に応じて定量的に堰を通過する液流量の伝熱管ごとのバラツキが少なくなる。すなわち各伝熱管への液体の流入をさらに均等に近づける。
請求項4においては、伝熱管にほぼ内接する外径の円筒で中心軸に向かって伸びる突起を有する金属製充填物を使用することで、ほぼ内接する円筒により伝熱管との伝熱が良好で、突起により中心部に偏った液体の自由落下を防止し、液体と蒸発した気体の流路を全面的に邪魔する構造ではないので圧力損失を低く抑える。
請求項5においては、請求項1乃至4の何れか一項に記載の流下液膜式全蒸発器を用いることにより、単純な装置及び操作で液体をワンパスで100%蒸発気化させることができる。
請求項6においては、本発明の流下液膜式全蒸発器を用いてワンパスで100%蒸発気化させる方法により、気体に比べて本質的に精度よく計測できる蒸発前の液体の流量を高精度に計測することで、全蒸発した気体の量を精度よく求めることができる。
請求項7においては、請求項5又は6の方法を用いることにより、単純な装置及び操作で、リサイクルがないために装置内の保有量を少なくして、毒性物質である塩化カルボニルの蒸発気化操作及び高精度の計量を行うことができ、安全性を高めることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の流下液膜式全蒸発器を以下に具体的に説明する。なお、本発明は、実施の形態に限定されるものではなく、適宜改変して実施することが可能である。
【0009】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る流下液膜式全蒸発器の概略正面図である。
流下液膜式全蒸発器1は、内径550mmの筒状の胴部1aを有し、その胴部1a内には、長さ5000mm、本数160本の伝熱管7が設けられている。胴部1aは、上部管板面8の水平度を±0.1mm以下とするようにして鉄骨架台20に据え付けられている。胴部1aの上下端部にはそれぞれ、上カバー4及び下カバー14が取り付けられている。上カバー4、下カバー14、伝熱管7、管板面8はすべて耐食合金製である。
液供給ノズル2は、耐食合金製の液分配器3に通じている。液分配器3は、図2に平面図で示すごとく、上部カバー4に内接して取り付けられたトラフであり、液が流下するための複数の穴5が相互に分散して開けられており、各穴5の位置は、後述するように、管板面8上の伝熱管7のない部分の真上となっている。管板面8は、図3に平面図で示すごとく、外形25.4mm、内径21.4mmの複数の伝熱管7を三角錯列配列ピッチ(以下、△ピッチとも称する)が32mmとなる態様で支持している。また、管板面8は、円盤状に形成されており、その外周部及び互いに十字状に直交する直径部に、伝熱管の設けられていない伝熱管不存在部8aを有する。すなわち、隣接する2本の伝熱管の上端の堰外縁と管板面とで形成される管板面上の液体の流路を多管式熱交換器の標準の伝熱管間隔に比べて部分的に巾を広げて上方の液分配器からの流下液を受けられるようにしている。管板面8は、かかる伝熱管不存在部8aにおいて、上方の液分配器3から液体を受け、かつ液体の流路が広げられ流れ勾配が緩和されることにより、液面を水平面に近づけることで周囲液面に対する各伝熱管上端の堰の高さのバラツキが少なくなり、各堰とその周囲液面の高さの差に応じて定量的に堰を通過する液流量の伝熱管ごとのバラツキが少なくなる。すなわち各伝熱管への液体の流入をさらに均等に近づけることが可能となる。
図4に示すごとく、各伝熱管7の上端には堰6が取り付けられており、堰6にはV字状の切込み6aが3箇所設けられている。管板面8の上面よりV字切込み下端までの深さは10.0±0.1mmである。
各伝熱管7内部には耐食合金製ポールリング9が挿入されており、ポールリング9は、格子状のサポート10により支持され伝熱管7の下端から2500mmの高さ部分まで充填されている。図5の(a)及び(b)に示すごとく、各ポールリング9のサイズは外径20mm、高さ20mmであり、ほぼ伝熱管7に内接し、内部中心軸に向かって5枚羽根状に1個あたり2段の突起9aがある。
また、流下液膜式全蒸発器1には、伝熱管7内で蒸発気化した蒸気の出口である蒸気出口11、伝熱管7の周囲に加熱用温水を供給する温水供給ノズル12、加熱用温水を回収する温水出口ノズル13が設けられている。なお、下部カバー14には温水ジャケットが設けられ、温水入口ノズル15、出口ノズル16がある。
【0010】
実施例A1.
ここで堰6におけるV字状切込み6a底部の液面からの深さと流入量の関係について流体力学的計算結果を示して説明する。図4に示されるように3箇所のV字状切込み6aのある堰(伝熱管1本分)に流入する塩化カルボニル相当の低粘度液体の量を液面の高さを変えて計算した結果を表1に示す。なお、実施例A1においては上部管板面8の水平度を±0.1mm以下とし、かつ管板面よりV字切込み下端までの深さ精度を±0.1mmとすることにより最大で±0.2mmの液面高さの差が生じるため、実際の流入量は表1から最大で±13%程度変わりうる。
【0011】
【表1】
【0012】
さらに管板面上の液の流れ勾配すなわち液面高さの偏倚について同様の流体力学的計算結果を示して説明する。図3の管板面8における外周環状及び十字状の伝熱管不存在部8aに均一に塩化カルボニル相当の低粘度液体を流下させた場合(実施例A1)と、伝熱管本数は同じ160本であるが管板面全体に亙って均等に32mmの△ピッチで並んでいる(伝熱管不存在部に相当する部分がない)態様において管板面の外周部のみに均一に液体を流下させた場合(比較例)とにおいて液面高さを計算した結果を表2に示す。なお、この計算では堰深さ精度及び管板面水平度は±0と仮定した。表1と合わせて考えると実施例A1の方の流量の偏差は±8%程度であるが、比較例のほうは+60%〜−40%程度にまで拡大する。
【0013】
【表2】
【0014】
次に、上述した流下液膜式全蒸発器を用いてワンパスで液体を100%蒸発気化させる方法を説明する。
液体を供給する方法は、ポンプ、重力による自然流下などを用いて流量計及び流量調節用バルブを経由して配管で供給する単純な方法が挙げられる。
また、使用する流下液膜式全蒸発器については液体の物性及び流量に応じた適切な伝熱面積に設定した上記の流下液膜式全蒸発器を用いればよい。適切な伝熱面積は、次の2つの組み合わせにより容易に選定することができる。流下液膜式全蒸発器において、液体の物性及び流量が決められ、伝熱管への液体の流入が均等であり、気液の状況によっても管壁からの伝熱が十分である前提ならば、必要な伝熱面積を求めることは、熱交換器の専門家にとっては容易なことである。本発明の流下液膜式全蒸発器において、各伝熱管への流入量のぶれ、すなわち最大流入量は液体の物性及び流量が決められていれば、流体力学の専門家にとっては容易に推定できることである。
加熱用の流体としては温水その他の液体、水蒸気その他の凝縮性気体が挙げられる。
【0015】
さらに、上記のワンパスで液体を100%蒸発気化させる方法を用い、蒸発前の液体の流量を計測することで全蒸発した気体の量を精度よく求める方法を説明する。
液体の流量を測定する方法としては、高精度の流量計としてコリオリ流量計、容積式流量計、タービンメータ、電磁流量計が挙げられる。
高精度の質量式流量計の1種であるコリオリ流量計の精度を塩化カルボニル液(液体状態)とそのガス(気体状態)との2つの場合について流量計メーカーに計算させた結果を表3に示す。この例では精度が7倍程度開きがあり、蒸発後の気体を計測する場合に比べて格段の高精度となることがわかる。
【0016】
【表3】
【0017】
実施例A2.
本実施の形態1の流下液膜式全蒸発器に洗剤を少量添加して表面張力を塩化カルボニルに近づけた水を供給して(加熱蒸発させずに)各伝熱管出口での流量を測定した。その結果を表4に示す。
【0018】
【表4】
【0019】
実施例A3.
本実施の形態1の流下液膜式全蒸発器に液体塩化カルボニルを供給して温水で加熱し、ワンパスで100%蒸発気化させた。結果を表5に示す。
【0020】
【表5】
【0021】
実施の形態2.
図6は実施の形態2に係る流下液膜式全蒸発器の概略正面図である。
流下液膜式全蒸発器31は、外形25.4mm、内径21.4mm、長さ3000mmの伝熱管37を1本備え、胴部内径41.6mmのジャケットに温水を流して加熱するものである。伝熱管37の上端には堰36が取り付けられており、堰36にはV字状の切込みが3箇所設けられている。伝熱管37の内部には、耐食合金製ポールリング39が伝熱管下端より1500mmまでの範囲で充填される。ポールリング39のサイズは外径20mm、高さ20mmであり、ほぼ伝熱管37に内接し、内部中心軸に向かって5枚羽根状に1個あたり2段の突起がある。符号41は蒸発気化した蒸気の出口を示し、符号42は加熱用の温水供給ノズルを示し、符号43は温水出口ノズルを示す。
【0022】
実施例B1.
この流下液膜式蒸発器に塩化メチレンを供給して蒸発させた結果を表6に示す。ポールリングなどの充填物なしの場合に比べて、本実施の形態のように外径20mmのポールリングを1500mmに亙って充填した本実施の形態は、約1.6倍大きい流下量で100%蒸発したことが分かる。
【0023】
【表6】
【0024】
【発明の効果】
本発明の請求項1の流下液膜式全蒸発器は上部の管板面の上方の液分配器により液体が管板面に分散して供給され、管板面に高低差の少ない液面を生じさせる。これにより液分配器がない場合に起こりがちな液供給ノズルから伝熱管への直接流入や伝熱管位置による液体流入量の偏りを防止するとともに、各伝熱管上端の堰を通過する液流量を左右する管板面の液面高さを均一に近づける。
各伝熱管上端の切込みを設けた堰により、その周囲の管板面に生じた液面の高さに応じて少流量でも安定して定量的に液体が堰を通過して伝熱管内面に流下する。
伝熱管内に挿入された圧力損失の低い金属製充填物により、液体が中心部に偏っても充填物が液体の自由落下を防止するとともに、液体や気体より良好な金属の熱伝導により管壁からの伝熱を促進し、圧力損失が低いので沸点を上昇させ難く、したがって蒸発を妨げることはない。
【0025】
請求項2においては、堰の水平度を±0.5mm以下とすることにより、一般的な縦型熱交換器に比べて水平面と各伝熱管上端の堰高さの差のバラツキを少なくし、流れ勾配がなければ水平面に平行に生ずる管板面上の液面に対する各伝熱管上端の堰高さのバラツキが少なくなり、各堰とその周囲液面の高さの差に応じて定量的に堰を通過する液流量の伝熱管ごとのバラツキが少なくなる。すなわち各伝熱管への液体の流入を高精度で均等にならしめる。
請求項3においては、管板面上に、複数の伝熱管の間隔を他の部分に比べて拡大して形成された伝熱管不存在部を設け、液分配器は伝熱管不存在部に液体を供給するように配置したことにより、管板面上の液の流れ勾配を緩和し、液面を水平面に近づけることで周囲液面に対する各伝熱管上端の堰の高さのバラツキが少なくなり、各堰とその周囲液面の高さの差に応じて定量的に堰を通過する液流量の伝熱管ごとのバラツキが少なくなる。すなわち各伝熱管への液体の流入をさらに均等に近づける。
請求項4においては、伝熱管にほぼ内接する外径の円筒で中心軸に向かって伸びる突起を有する金属製充填物を使用することで、ほぼ内接する円筒により伝熱管との伝熱が良好で、突起により中心部に偏った液体の自由落下を防止し、液体と蒸発した気体の流路を全面的に邪魔する構造ではないので圧力損失を低く抑える。
請求項5においては、請求項1乃至4の何れか一項に記載の流下液膜式全蒸発器を用いることにより、単純な装置及び操作で液体をワンパスで100%蒸発気化させることができる。
請求項6においては、本発明の流下液膜式全蒸発器を用いてワンパスで100%蒸発気化させる方法により、気体に比べて本質的に精度よく計測できる蒸発前の液体の流量を高精度に計測することで、全蒸発した気体の量を精度よく求めることができる。
請求項7においては、請求項5又は6の方法を用いることにより、単純な装置及び操作で、リサイクルがないために装置内の保有量を少なくして、毒性物質である塩化カルボニルの蒸発気化操作及び高精度の計量を行うことができ、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る流下液膜式全蒸発器を示す図である。
【図2】上部の管板面の上方ある、液体を管板面に分散して供給する液分配器の平面図である。
【図3】上部の管板面の平面図である。
【図4】伝熱管上端部及び堰の断面図である。
【図5】伝熱管内に配置されるポールリングを示し、(a)はその斜視図、(b)は平面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る流下液膜式全蒸発器を示す図である。
【符号の説明】
1,31…流下液膜式全蒸発器、6…堰、6a…切込み、7,37…伝熱管、8…管板面、8a…伝熱管不存在部、9,39…金属製充填物、9a…突起。
【発明の属する技術分野】
本発明は、流下液膜式蒸発器、流下液膜式蒸発方法ならびに気体量計測方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
流下液膜式蒸発器としては縦型多管式熱交換器がしばしば用いられている。しかしながらワンパスでの蒸発率を100%にするには全ての伝熱管出口で蒸発残液を確実になくす必要があり、それに見合う伝熱面積は見当がつかないかもしくはきわめて過大な伝熱面積が必要であった。
全蒸発を実用的に行うには、蒸発残液を入口にリサイクルして再び蒸発させる方式が一般的であるが、装置ならびに操作が複雑になり、そのために安定性に欠ける場合があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の流下液膜式の縦型多管式熱交換器においては、各伝熱管への液体の流入は現実には均等にならないため、伝熱面積の余裕率以上に液体が流入した伝熱管では100%の蒸発が不可能となり、少なめに液体が流入した伝熱管では蒸発が途中で完了してその後の区間は無駄となる。さらに、液体が均等な流量で流入した伝熱管でも、液体が中心部に偏って気相中での自由落下状態になるなど気液の状況によって管壁からの伝熱が不十分となった伝熱管からは、少量の蒸発残液が出てくる。このようなゆらぎ現象を想定して蒸発残液が確実に生じないようにするのは見当がつかず、伝熱面積にきわめて過大な余裕をみるしかなく、実用的ではなかった。
リサイクル蒸発方式であると、蒸発した気体から残った液体を分離し、分離した液体を保有し、入口にリサイクルするなど、ワンパス全蒸発方式に比べて装置及び操作が追加されて複雑になる。その複雑さにより、外乱などによる変動が長引き、安定性に欠ける場合があった。
また、気体の量の計測は、差圧式流量計や体積式流量計を用いた場合、温度及び圧力による密度の影響を受けやすく、精度の高い質量式流量計でも密度自体が小さいため、液体の流量の計測に比べて精度が悪いという本質的な問題があった。
【0004】
本発明の目的は、従来技術における上記したような問題を解決し、実用的な伝熱面積で蒸発残液を生じることなくワンパスで100%液体を蒸発させるための流下液膜式全蒸発器を提供し、また該蒸発器を用いて単純な装置及び操作で液体をワンパスで100%蒸発させる方法を提供し、さらに該方法を用いて蒸発前の液体の流量を高精度で計測することにより全蒸発した気体の量を精度よく安定して求める方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明は、管外を加熱した複数の伝熱管内に液体を流下させてワンパスで100%蒸発気化させるための流下液膜式全蒸発器であって、上部の管板面の上方に、液体を該管板面に分散して供給する液分配器を設け、前記伝熱管の上端に、液体を前記管板面から前記の各伝熱管内面に均等に導入するための切込みを設けた堰を取り付け、前記伝熱管内には、管壁と液体との伝熱を促進し、かつ液滴の自由落下を防止する金属製充填物が挿入されることを特徴とする。
【0006】
上部管板面上方の液分配器により液体が管板面に分散して供給され、管板面に高低差の少ない液面を生じさせる。これにより液分配器がない場合に起こりがちな液供給ノズルから伝熱管への直接流入や伝熱管位置による液体流入量の偏りを防止するとともに、各伝熱管上端の堰を通過する液流量を左右する管板面の液面高さを均一に近づける。
各伝熱管上端の切込みを設けた堰により、その周囲の管板面に生じた液面の高さに応じて少流量でも安定して定量的に液体が堰を通過して伝熱管内面に流下する。
伝熱管内に挿入された圧力損失の低い金属製充填物により、液体が中心部に偏っても充填物が液体の自由落下を防止するとともに、液体や気体より良好な金属の熱伝導により管壁からの伝熱を促進し、圧力損失が低いので沸点を上昇させ難く、したがって蒸発を妨げることはない。
【0007】
請求項2においては、堰の水平度を±0.5mm以下とすることにより、一般的な縦型熱交換器に比べて水平面と各伝熱管上端の堰高さの差のバラツキを少なくし、流れ勾配がなければ水平面に平行に生ずる管板面上の液面に対する各伝熱管上端の堰高さのバラツキが少なくなり、各堰とその周囲液面の高さの差に応じて定量的に堰を通過する液流量の伝熱管ごとのバラツキが少なくなる。すなわち各伝熱管への液体の流入を高精度で均等にならしめる。
請求項3においては、前記管板面上に、前記複数の伝熱管の間隔を他の部分に比べて拡大して形成された伝熱管不存在部を設け、前記液分配器を該伝熱管不存在部に液体を供給するように配置したことにより、管板面上の液の流れ勾配を緩和し、液面を水平面に近づけることで周囲液面に対する各伝熱管上端の堰の高さのバラツキが少なくなり、各堰とその周囲液面の高さの差に応じて定量的に堰を通過する液流量の伝熱管ごとのバラツキが少なくなる。すなわち各伝熱管への液体の流入をさらに均等に近づける。
請求項4においては、伝熱管にほぼ内接する外径の円筒で中心軸に向かって伸びる突起を有する金属製充填物を使用することで、ほぼ内接する円筒により伝熱管との伝熱が良好で、突起により中心部に偏った液体の自由落下を防止し、液体と蒸発した気体の流路を全面的に邪魔する構造ではないので圧力損失を低く抑える。
請求項5においては、請求項1乃至4の何れか一項に記載の流下液膜式全蒸発器を用いることにより、単純な装置及び操作で液体をワンパスで100%蒸発気化させることができる。
請求項6においては、本発明の流下液膜式全蒸発器を用いてワンパスで100%蒸発気化させる方法により、気体に比べて本質的に精度よく計測できる蒸発前の液体の流量を高精度に計測することで、全蒸発した気体の量を精度よく求めることができる。
請求項7においては、請求項5又は6の方法を用いることにより、単純な装置及び操作で、リサイクルがないために装置内の保有量を少なくして、毒性物質である塩化カルボニルの蒸発気化操作及び高精度の計量を行うことができ、安全性を高めることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の流下液膜式全蒸発器を以下に具体的に説明する。なお、本発明は、実施の形態に限定されるものではなく、適宜改変して実施することが可能である。
【0009】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る流下液膜式全蒸発器の概略正面図である。
流下液膜式全蒸発器1は、内径550mmの筒状の胴部1aを有し、その胴部1a内には、長さ5000mm、本数160本の伝熱管7が設けられている。胴部1aは、上部管板面8の水平度を±0.1mm以下とするようにして鉄骨架台20に据え付けられている。胴部1aの上下端部にはそれぞれ、上カバー4及び下カバー14が取り付けられている。上カバー4、下カバー14、伝熱管7、管板面8はすべて耐食合金製である。
液供給ノズル2は、耐食合金製の液分配器3に通じている。液分配器3は、図2に平面図で示すごとく、上部カバー4に内接して取り付けられたトラフであり、液が流下するための複数の穴5が相互に分散して開けられており、各穴5の位置は、後述するように、管板面8上の伝熱管7のない部分の真上となっている。管板面8は、図3に平面図で示すごとく、外形25.4mm、内径21.4mmの複数の伝熱管7を三角錯列配列ピッチ(以下、△ピッチとも称する)が32mmとなる態様で支持している。また、管板面8は、円盤状に形成されており、その外周部及び互いに十字状に直交する直径部に、伝熱管の設けられていない伝熱管不存在部8aを有する。すなわち、隣接する2本の伝熱管の上端の堰外縁と管板面とで形成される管板面上の液体の流路を多管式熱交換器の標準の伝熱管間隔に比べて部分的に巾を広げて上方の液分配器からの流下液を受けられるようにしている。管板面8は、かかる伝熱管不存在部8aにおいて、上方の液分配器3から液体を受け、かつ液体の流路が広げられ流れ勾配が緩和されることにより、液面を水平面に近づけることで周囲液面に対する各伝熱管上端の堰の高さのバラツキが少なくなり、各堰とその周囲液面の高さの差に応じて定量的に堰を通過する液流量の伝熱管ごとのバラツキが少なくなる。すなわち各伝熱管への液体の流入をさらに均等に近づけることが可能となる。
図4に示すごとく、各伝熱管7の上端には堰6が取り付けられており、堰6にはV字状の切込み6aが3箇所設けられている。管板面8の上面よりV字切込み下端までの深さは10.0±0.1mmである。
各伝熱管7内部には耐食合金製ポールリング9が挿入されており、ポールリング9は、格子状のサポート10により支持され伝熱管7の下端から2500mmの高さ部分まで充填されている。図5の(a)及び(b)に示すごとく、各ポールリング9のサイズは外径20mm、高さ20mmであり、ほぼ伝熱管7に内接し、内部中心軸に向かって5枚羽根状に1個あたり2段の突起9aがある。
また、流下液膜式全蒸発器1には、伝熱管7内で蒸発気化した蒸気の出口である蒸気出口11、伝熱管7の周囲に加熱用温水を供給する温水供給ノズル12、加熱用温水を回収する温水出口ノズル13が設けられている。なお、下部カバー14には温水ジャケットが設けられ、温水入口ノズル15、出口ノズル16がある。
【0010】
実施例A1.
ここで堰6におけるV字状切込み6a底部の液面からの深さと流入量の関係について流体力学的計算結果を示して説明する。図4に示されるように3箇所のV字状切込み6aのある堰(伝熱管1本分)に流入する塩化カルボニル相当の低粘度液体の量を液面の高さを変えて計算した結果を表1に示す。なお、実施例A1においては上部管板面8の水平度を±0.1mm以下とし、かつ管板面よりV字切込み下端までの深さ精度を±0.1mmとすることにより最大で±0.2mmの液面高さの差が生じるため、実際の流入量は表1から最大で±13%程度変わりうる。
【0011】
【表1】
【0012】
さらに管板面上の液の流れ勾配すなわち液面高さの偏倚について同様の流体力学的計算結果を示して説明する。図3の管板面8における外周環状及び十字状の伝熱管不存在部8aに均一に塩化カルボニル相当の低粘度液体を流下させた場合(実施例A1)と、伝熱管本数は同じ160本であるが管板面全体に亙って均等に32mmの△ピッチで並んでいる(伝熱管不存在部に相当する部分がない)態様において管板面の外周部のみに均一に液体を流下させた場合(比較例)とにおいて液面高さを計算した結果を表2に示す。なお、この計算では堰深さ精度及び管板面水平度は±0と仮定した。表1と合わせて考えると実施例A1の方の流量の偏差は±8%程度であるが、比較例のほうは+60%〜−40%程度にまで拡大する。
【0013】
【表2】
【0014】
次に、上述した流下液膜式全蒸発器を用いてワンパスで液体を100%蒸発気化させる方法を説明する。
液体を供給する方法は、ポンプ、重力による自然流下などを用いて流量計及び流量調節用バルブを経由して配管で供給する単純な方法が挙げられる。
また、使用する流下液膜式全蒸発器については液体の物性及び流量に応じた適切な伝熱面積に設定した上記の流下液膜式全蒸発器を用いればよい。適切な伝熱面積は、次の2つの組み合わせにより容易に選定することができる。流下液膜式全蒸発器において、液体の物性及び流量が決められ、伝熱管への液体の流入が均等であり、気液の状況によっても管壁からの伝熱が十分である前提ならば、必要な伝熱面積を求めることは、熱交換器の専門家にとっては容易なことである。本発明の流下液膜式全蒸発器において、各伝熱管への流入量のぶれ、すなわち最大流入量は液体の物性及び流量が決められていれば、流体力学の専門家にとっては容易に推定できることである。
加熱用の流体としては温水その他の液体、水蒸気その他の凝縮性気体が挙げられる。
【0015】
さらに、上記のワンパスで液体を100%蒸発気化させる方法を用い、蒸発前の液体の流量を計測することで全蒸発した気体の量を精度よく求める方法を説明する。
液体の流量を測定する方法としては、高精度の流量計としてコリオリ流量計、容積式流量計、タービンメータ、電磁流量計が挙げられる。
高精度の質量式流量計の1種であるコリオリ流量計の精度を塩化カルボニル液(液体状態)とそのガス(気体状態)との2つの場合について流量計メーカーに計算させた結果を表3に示す。この例では精度が7倍程度開きがあり、蒸発後の気体を計測する場合に比べて格段の高精度となることがわかる。
【0016】
【表3】
【0017】
実施例A2.
本実施の形態1の流下液膜式全蒸発器に洗剤を少量添加して表面張力を塩化カルボニルに近づけた水を供給して(加熱蒸発させずに)各伝熱管出口での流量を測定した。その結果を表4に示す。
【0018】
【表4】
【0019】
実施例A3.
本実施の形態1の流下液膜式全蒸発器に液体塩化カルボニルを供給して温水で加熱し、ワンパスで100%蒸発気化させた。結果を表5に示す。
【0020】
【表5】
【0021】
実施の形態2.
図6は実施の形態2に係る流下液膜式全蒸発器の概略正面図である。
流下液膜式全蒸発器31は、外形25.4mm、内径21.4mm、長さ3000mmの伝熱管37を1本備え、胴部内径41.6mmのジャケットに温水を流して加熱するものである。伝熱管37の上端には堰36が取り付けられており、堰36にはV字状の切込みが3箇所設けられている。伝熱管37の内部には、耐食合金製ポールリング39が伝熱管下端より1500mmまでの範囲で充填される。ポールリング39のサイズは外径20mm、高さ20mmであり、ほぼ伝熱管37に内接し、内部中心軸に向かって5枚羽根状に1個あたり2段の突起がある。符号41は蒸発気化した蒸気の出口を示し、符号42は加熱用の温水供給ノズルを示し、符号43は温水出口ノズルを示す。
【0022】
実施例B1.
この流下液膜式蒸発器に塩化メチレンを供給して蒸発させた結果を表6に示す。ポールリングなどの充填物なしの場合に比べて、本実施の形態のように外径20mmのポールリングを1500mmに亙って充填した本実施の形態は、約1.6倍大きい流下量で100%蒸発したことが分かる。
【0023】
【表6】
【0024】
【発明の効果】
本発明の請求項1の流下液膜式全蒸発器は上部の管板面の上方の液分配器により液体が管板面に分散して供給され、管板面に高低差の少ない液面を生じさせる。これにより液分配器がない場合に起こりがちな液供給ノズルから伝熱管への直接流入や伝熱管位置による液体流入量の偏りを防止するとともに、各伝熱管上端の堰を通過する液流量を左右する管板面の液面高さを均一に近づける。
各伝熱管上端の切込みを設けた堰により、その周囲の管板面に生じた液面の高さに応じて少流量でも安定して定量的に液体が堰を通過して伝熱管内面に流下する。
伝熱管内に挿入された圧力損失の低い金属製充填物により、液体が中心部に偏っても充填物が液体の自由落下を防止するとともに、液体や気体より良好な金属の熱伝導により管壁からの伝熱を促進し、圧力損失が低いので沸点を上昇させ難く、したがって蒸発を妨げることはない。
【0025】
請求項2においては、堰の水平度を±0.5mm以下とすることにより、一般的な縦型熱交換器に比べて水平面と各伝熱管上端の堰高さの差のバラツキを少なくし、流れ勾配がなければ水平面に平行に生ずる管板面上の液面に対する各伝熱管上端の堰高さのバラツキが少なくなり、各堰とその周囲液面の高さの差に応じて定量的に堰を通過する液流量の伝熱管ごとのバラツキが少なくなる。すなわち各伝熱管への液体の流入を高精度で均等にならしめる。
請求項3においては、管板面上に、複数の伝熱管の間隔を他の部分に比べて拡大して形成された伝熱管不存在部を設け、液分配器は伝熱管不存在部に液体を供給するように配置したことにより、管板面上の液の流れ勾配を緩和し、液面を水平面に近づけることで周囲液面に対する各伝熱管上端の堰の高さのバラツキが少なくなり、各堰とその周囲液面の高さの差に応じて定量的に堰を通過する液流量の伝熱管ごとのバラツキが少なくなる。すなわち各伝熱管への液体の流入をさらに均等に近づける。
請求項4においては、伝熱管にほぼ内接する外径の円筒で中心軸に向かって伸びる突起を有する金属製充填物を使用することで、ほぼ内接する円筒により伝熱管との伝熱が良好で、突起により中心部に偏った液体の自由落下を防止し、液体と蒸発した気体の流路を全面的に邪魔する構造ではないので圧力損失を低く抑える。
請求項5においては、請求項1乃至4の何れか一項に記載の流下液膜式全蒸発器を用いることにより、単純な装置及び操作で液体をワンパスで100%蒸発気化させることができる。
請求項6においては、本発明の流下液膜式全蒸発器を用いてワンパスで100%蒸発気化させる方法により、気体に比べて本質的に精度よく計測できる蒸発前の液体の流量を高精度に計測することで、全蒸発した気体の量を精度よく求めることができる。
請求項7においては、請求項5又は6の方法を用いることにより、単純な装置及び操作で、リサイクルがないために装置内の保有量を少なくして、毒性物質である塩化カルボニルの蒸発気化操作及び高精度の計量を行うことができ、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る流下液膜式全蒸発器を示す図である。
【図2】上部の管板面の上方ある、液体を管板面に分散して供給する液分配器の平面図である。
【図3】上部の管板面の平面図である。
【図4】伝熱管上端部及び堰の断面図である。
【図5】伝熱管内に配置されるポールリングを示し、(a)はその斜視図、(b)は平面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る流下液膜式全蒸発器を示す図である。
【符号の説明】
1,31…流下液膜式全蒸発器、6…堰、6a…切込み、7,37…伝熱管、8…管板面、8a…伝熱管不存在部、9,39…金属製充填物、9a…突起。
Claims (7)
- 管外を加熱した複数の伝熱管内に液体を流下させてワンパスで100%蒸発気化させるための流下液膜式全蒸発器であって、
上部の管板面の上方に、液体を該管板面に分散して供給する液分配器を設け、
前記伝熱管の上端に、液体を前記管板面から前記の各伝熱管内面に均等に導入するための切込みを設けた堰を取り付け、
前記伝熱管内には、管壁と液体との伝熱を促進し、かつ液滴の自由落下を防止する金属製充填物が挿入される
ことを特徴とする流下液膜式全蒸発器。 - 前記堰の水平度を±0.5mm以下とすることを特徴とする請求項1の流下液膜式全蒸発器。
- 前記管板面上には、前記複数の伝熱管の間隔を他の部分に比べて拡大して形成された伝熱管不存在部が設けられており、
前記液分配器は該伝熱管不存在部に液体を供給するように配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の流下液膜式全蒸発器。 - 前記金属製充填物は、前記伝熱管にほぼ内接する外径の円筒部材で中心軸に向かって伸びる突起を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の流下液膜式全蒸発器。
- 請求項1乃至4の何れか一項に記載の流下液膜式全蒸発器を用いて液体をワンパスで100%蒸発気化させることを特徴とするワンパス全蒸発方法。
- 請求項5の方法を用いて蒸発前の液体の流量を計測することで全蒸発した気体の量を高精度で求めることを特徴とする気体量計測方法。
- 前記液体は塩化カルボニルであることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
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JP2002181243A JP2004028364A (ja) | 2002-06-21 | 2002-06-21 | 流下液膜式全蒸発器、液体のワンパス全蒸発方法ならびに気体量計測方法 |
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JP2018524537A (ja) * | 2015-06-10 | 2018-08-30 | ロッキード・マーチン・コーポレイションLockheed Martin Corporation | 流体分配サブアッセンブリを有する蒸発器 |
-
2002
- 2002-06-21 JP JP2002181243A patent/JP2004028364A/ja not_active Withdrawn
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