JP2004027452A - 気相法炭素繊維の製造法および製造装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】反応炉内にキャリアガス分散筒を設ける。そして加熱したキャリアガスを分散筒の外側を通るガスと分散筒内に入るガスに分け、分散筒内でキャリアガスと原料ガスが混合し、反応炉内に送入して炭素繊維を生成させる。
製造装置の発明は反応炉とキャリアガス加熱炉が直結し、キャリアガス加熱炉にはキャリアガス送入管が接続され、反応炉内にキャリアガス分散筒が設けられており、さらに分散筒に原料ガスを供給する原料ガス供給管が設けられている構成からなる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は有機化合物の気相熱分解法による微細な炭素繊維の製造法および製造装置に関し、特に繊維径が細く、かつ揃った炭素繊維を得ることが可能な製造法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機化合物の熱分解によって得られる気相法炭素繊維は、Fe、Ni等の微粒子を触媒として成長すると云われている。この場合のFe、Ni等の微粒子は有機遷移金属化合物(触媒前駆体)の熱分解によって生成される方法が一般的である。原料となる有機化合物にはベンゼン等の芳香族化合物が多く用いられ、水素等のキャリアガスと共に炭素繊維生成炉(以下反応炉という)に供給されるが、反応炉での成長時間が極めて短いことから、得られる炭素繊維は微細なものである。
従来、有機化合物、有機遷移金属化合物及びキャリアガスを所定温度に加熱された反応炉に直接供給する方法が一般的であったが、その後種々の改良法が提示されている。
例えば有機遷移金属化合物の熱分解帯域と炭素繊維生成帯域を分け、熱分解帯域で分解したガスを炭素繊維生成帯域に導き、同時に該生成帯域に有機化合物のガスとキャリアガスを供給し、有機化合物の熱分解を行い、先の有機遷移金属化合物の熱分解で生じたFe、Ni等の微粒子を触媒として炭素繊維を成長させる方法である(特公平6−21377号公報)。
【0003】
また有機遷移金属化合物の溶解した有機化合物の溶液をキャリアガスの存在下に気化させて、有機遷移金属化合物と有機化合物の比率が、該溶液と等しい混合ガスを作成し、該混合ガスを加熱帯域中で高温で反応させて気相法炭素繊維を製造する方法もある(特公平4−13448号公報)。
更に生成した炭素繊維が反応炉の炉壁に付着するのを防止するため原料ガスを反応炉の中心部に、キャリアガスを炉壁に沿って層流として流す方法も提案されている(特開平8−301699号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
気相法炭素繊維は微細であることから、樹脂、ゴム等の複合材料のフィラー、半導体材料、触媒材料、電界電子放出材料等の用途に用いられる。この場合繊維の直径ができるだけ細く、かつ揃ったものが望ましい。
遷移金属化合物の分解で生成したFe、Ni等の遷移金属の微粒子は時間が長くなると成長して大きくなるので細い繊維を得るには生成帯域での滞留時間を短くして微粒子の成長を抑える必要がある。
反応炉の加熱手段は一般に外熱式であるため炉内の温度の均一化に問題があり、特に繊維の生産性を高めるために反応炉(反応管)の径を大きくすると原料ガスの昇温に時間がかかり、かつ炉内の温度ムラが生じやすい。
【0005】
炭素繊維の径を均一にし、これを効率よく生産するには、均一な反応条件すなわち、反応炉内で均一な反応温度、反応時間、原料および触媒組成を満足する必要がある。なぜならば、炭素繊維成長反応は、これらの反応条件によりその反応速度が大きく影響されるためである。したがって、均一な繊維径を持った良質な炭素繊維を得るためには、これらの反応条件を炭素繊維成長反応が起こっている反応炉内で、できるだけ一定に保つ必要がある。これらの反応条件の内、特に重要なものは反応温度である。従来から炭素繊維生成に用いられてきた反応炉は、反応炉外部から電気ヒーターを用いて加熱する方式のものが主流であったが、この方式を用いると反応炉壁面の温度が一番高温となり、次いで反応炉中央部に向かって温度が低くなるような温度分布を有することとなり、均一な温度分布が得られなかった。これを改善する方法として、あらかじめキャリアガスを予熱して、このキャリアガスと有機化合物および遷移金属化合物とを混合した後、反応炉へ供給する方法などが行われてきた。ただしこの方法を用いても、キャリアガスと有機化合物および遷移金属化合物との混合ガスを反応炉へ供給する前に放熱により温度が低下し、反応炉入口部では温度が低く、後流に行くにつれて高くなるような温度分布を形成するために、均一な反応温度を得ることが難しかった。また、一般には、有機化合物の熱分解による炭素クラスターの放出温度と、遷移金属化合物の熱分解による遷移金属原子の放出温度は一致しないため、出来るだけ短時間のうちにこれらが同時に進行するように反応温度を確保してやる必要がある。
【0006】
前記の特公平6−21377号公報や特公平4−13448号公報の方法ではこれらの問題点に対して不十分なところがある。またこれらの方法では生成した炭素繊維が炉壁に付着するという問題が発生する。そのため付着した繊維の掻き取り等の面倒な操作が必要となるばかりでなく、付着した繊維が成長して太くなり、それが製品中に混入してくるため、この点からも細い繊維の揃ったものが得られない。
特開平8−301699号公報の方法は繊維が炉壁に付着するのを防止するには効果があると思われるが、反応炉入り口付近での原料ガスの温度を高くすることは難しく、そのため反応炉内での中心部と外側での温度ムラが生じやすい。また原料ガスの昇温に時間がかかる等から反応炉内での金属微粒子やガスの滞留時間が長くなり、繊維の径が大きくなり易い。
本発明は生成した炭素繊維が反応炉の壁面に付着するのを防止すると共に、十分に細く、かつ径の揃った繊維を製造することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するためになされたもので以下の各発明からなる。
(1) 炭素繊維生成炉内にキャリアガス分散筒を、該生成炉の炉壁との間に間隙を設けて配置し、炭素繊維の原料ガスを前記分散筒内に供給し、加熱したキャリアガスを前記間隙と分散筒内を通るガスに分けて前記生成炉内に供給して炭素繊維を生成させることを特徴とする気相法炭素繊維の製造法。
(2) キャリアガス分散筒が、その内部に整流板を有するものである上記(1)に記載の気相法炭素繊維の製造法。
(3) キャリアガスの加熱温度が900〜1300℃である上記(1)または(2)のいずれか1項に記載の気相法炭素繊維の製造法。
(4) 原料ガスの供給が、炉の側壁を通して挿入された供給管により行われるものである上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の気相法炭素繊維の製造法。
【0008】
(5) 原料ガスの供給が、冷却機構を備えた供給管により原料ガス中の触媒前駆体の分解温度以下で行われる上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の気相法炭素繊維の製造法。
(6) 原料ガスが、炭素化合物及び遷移金属化合物を含むものである上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の気相法炭素繊維の製造法。
(7) 炭素化合物が、芳香族化合物、アセチレン、エチレン、ブタジエンの少なくとも1種、遷移金属化合物の金属が鉄、ニッケル、コバルトの少なくとも1種である上記(6)に記載の気相法炭素繊維の製造法。
(8) 上記(1)〜(7)のいずれか1項により製造された気相法炭素繊維。
【0009】
(9) 気相法炭素繊維が、直径0.001〜0.5μm、アスペクト比が10〜15000である上記(8)に記載の気相法炭素繊維。
(10) 炭素繊維生成炉とキャリアガス加熱炉が直結し、該生成炉内にキャリアガス分散筒が、炉壁との間に間隙を設けて配置され、該分散筒上に原料ガス供給管が設けられ、前記加熱炉にキャリアガス供給管が接続されてなる気相法炭素繊維製造装置。
(11) キャリアガス分散筒が、その内部に整流板を有するものである上記(10)に記載の気相法炭素繊維製造装置。
(12) キャリアガス分散筒が設置される部位の炉壁にレデューサー部(傾斜部)を有し、該レデューサー部で前記分散筒を支持している上記(10)または(11)に記載の気相法炭素繊維製造装置。
【0010】
(13) 原料ガス供給管が、炉の側壁を通して挿入されている上記(10)〜(12)のいずれか1項に記載の気相法炭素繊維製造装置。
(14) 炭素繊維生成炉の繊維排出口に冷却管が接続され、該冷却管に冷却ガス吹込機構が設けられている上記(10)〜(13)のいずれか1項に記載の気相法炭素繊維製造装置。
(15) キャリアガス加熱炉、炭素繊維生成炉、キャリアガス分散筒、整流板の材料がセラミックスである上記(10)〜(14)のいずれか1項に記載の気相法炭素繊維製造装置。
(16) セラミックスが、炭化珪素、窒化ホウ素、窒化珪素から選ばれた少なくとも1種の化合物である上記(15)に記載の気相法炭素繊維製造装置。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において原料ガスは有機化合物及び触媒前駆体である。有機化合物はベンゼン等の芳香族化合物、直鎖状の炭素水素、脂環式炭化水素などが用いられるが、芳香族化合物、アセチレン、エチレン、ブタジエンなどの不飽和炭化水素が好ましいが、最も好ましいのはベンゼンである。
触媒前駆体は鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、バナジウムなどの遷移金属を含む化合物が用いられ、フェロセン、ニッケルセン等の有機遷移金属化合物、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、バナジウムの塩化物、硝酸化物、硫酸化物、フッ化物、臭化物、酸化物の無機遷移金属化合物例えば塩化鉄、塩化ニッケル、塩化コバルトが用いられるが、その他分解あるいは反応により鉄等の遷移金属微粒子が生ずるものであれば使用できる。触媒前駆体及び有機化合物は予熱して蒸発あるいはキャリアガスのバブリング等によりガス化される。したがって原料ガスにはこのようなキャリアガスを含んでもよい。触媒前駆体が有機遷移金属化合物の場合、それから生じた遷移金属微粒子が触媒となり、炭素分は炭素繊維源にもなる。
【0012】
原料ガスはキャリアガスと共に反応炉に供給される。キャリアガスは通常は水素である。
本発明はこれらのガスから炭素繊維を製造する場合、反応炉の炭素繊維生成帯域内、好ましくは該生成帯域内の上部(上流部)にキャリアガス分散筒を設置することが一つの特徴である。キャリアガスはこの分散筒により筒体の外側を通るガスと内側を通るガスに分かれる。
キャリアガス分散筒(以下分散筒という)の一実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の炭素繊維の製造法に用いられる装置の一例を示す概略断面図で、図2はその分散筒の近辺の拡大断面図である。図2で4が分散筒である。図に示す装置はキャリアガス加熱炉1と反応炉2が直結したもので、分散筒4は反応炉内の上部、加熱炉1の下に設置されている。分散筒は上下が開放された筒体で、その外側の鍔部43がレデュース面(下側に向けて径がわずかに細くなる傾斜面)に支持されている。図に示す分散筒は内部に整流板41を有するのであるが整流板はなくすこともできる。整流板及び鍔部には多数の通気孔が開けられている。整流板は原料ガスとキャリアガスをよく混合すると共にその混合ガスが分散筒内の中央部と周辺部等で偏流を起こすことなく一様に流通するようにするため好ましくは設けられるものである。分散筒が設置される位置はその上下方向の中央部で900〜1300℃の温度帯のところが好ましい。分散筒は炉の外壁、即ち図の装置では反応炉内の上部外壁から間隙を設けて設置される。
【0013】
本発明の方法は上記の間隙にはほぼキャリアガスのみを通すようにして、反応炉の壁面にできるだけキャリアガスが層流で流れるようにして、壁面に炭素繊維が付着するのを抑制するのが一つの特徴である。したがって上記の間隙をあまり狭くすることは好ましくない。反面広過ぎると中央部が狭くなったり、該帯域の不均一化にもつながる。これらの好ましい構成については後述の装置の発明のところで説明する。
分散筒内には原料ガスが供給される。この原料ガスは分散筒の外側にはできるだけ出ないようにする。そのために原料ガス供給管の先端は上限が分散筒の上端と同程度の位置とすべきであり、好ましくは分散筒内に位置させることである。ただし分散筒に整流板がある場合、あまり整流板に近づけることは原料ガスとキャリアガスの均一混合等から好ましくない。この関係を図2で説明すると整流板の上の部分の分散筒の高さH1と整流板上の原料ガス供給管3の先端の高さH3は好ましくはH3/H1が0.5〜1.0、更に好ましくは0.7〜0.9の範囲にあることがよい。分散筒に整流板がない場合は原料ガス供給管の先端は分散筒の中央部位まで下げてもよい。いずれの場合も原料ガスは炉の長さ方向に平行に供給される。
【0014】
原料ガスは遷移金属化合物等の触媒前駆体の熱分解温度以下で供給される。触媒前駆体が熱分解すると遷移金属原子が放出され、これが衝突、凝集して遷移金属微粒子触媒が形成されるが、この衝突、凝集が多過ぎると微粒子が巨大化し、触媒機能が失われる。また、触媒として有効に利用できる遷移金属微粒子数も減少する。したがって、触媒前駆体は炉内に入る前は熱分解を起こさない方がよい。望ましい遷移金属微粒子径は1〜10nmである。原料ガス供給管はキャリアガス加熱炉の上端から炉内に挿入することも不可能ではないが、この場合は原料ガス供給管が長くなり、原料ガスの温度が高くなるとともに原料ガスの滞留時間が増大して遷移金属化合物の分解を招く。従って、図2に示すように炉側壁面から炉内に挿入することが望ましい。
【0015】
キャリアガスは加熱され、分散筒の上部に供給される。そして一部は分散筒の外側の間隙を、残りは分散筒内に入り原料ガスと混合される。キャリアガスの加熱温度は900〜1300℃が好ましい。図1,2に示す装置はキャリアガス加熱炉は反応炉に直結している。キャリアガスを反応炉からはなして加熱し、これを分散筒上に導入することも不可能ではないが、導入径路における熱放散等を考慮すると図示するように両者を直結することが望ましい。
【0016】
分散筒内において原料ガスはキャリアガスにより急激に昇温し、触媒前駆体を熱分解し、遷移金属原子が放出され、原子同士の衝突等により微粒子となるが、その時間は短いので、粒子が過度に大きくなることはない。分散筒内では 一部炭素繊維の生成も開始されると思われるが、分散筒内での滞留時間は短く、繊維は殆ど成長せず、次の反応帯域に送られる。
反応炉は通常900〜1300℃程度の温度にされている。キャリアガスの加熱も同程度ないしはそれ以上の温度にすることも可能であり、原料ガスと混合しても、反応炉の温度と大差ないものとすることができる。そして分散筒内では原料ガスが均一に混合され、かつ温度ムラがない。このガスが反応炉に移行するので反応炉での触媒微粒子の分布、反応温度のバラツキが少なく径の揃った炭素繊維が得られる。
分散筒の外側はキャリアガスが層流として流通し、この層流作用が反応炉の側壁にも及び、側壁近傍での炭素繊維の生成を抑制し、また生成した炭素繊維の側壁での付着を防止する。
【0017】
本発明において、炭素繊維の径を細くし、かつ径のバラツキを少なくするために反応炉の後にガス冷却筒を接続することが好ましい。生成した炭素繊維は反応炉内で時間の経過と共に成長するので、径のバラツキを少なくするには、すべての反応ガスを急激に冷却して炭素繊維の成長を同時に停止してやる必要がある。そこで本発明では反応炉の後に好ましくはガス冷却筒を接続し、水素ガス、不活性ガス等を吹き込み、冷却することにより反応炉の炭素繊維が成長する温度帯域の滞留時間を短くしたものである。これにより、不均一に炭素繊維が成長するのを防止して径のバラツキを少なくすることができる。
【0018】
反応炉で生成した炭素繊維は捕集器に集められ回収される。生成したままの炭素繊維には繊維ではない炭化物等が混入されているので、空気酸化等の方法によりこれを分離し、必要により熱処理して製品とする。
得られた炭素繊維は大部分、例えば90質量%以上は繊維径が0.001〜0.5μm、アスペクト比(長さ/径)が10〜15000の範囲にある。この繊維において、繊維径等の調節は炭素繊維生成炉内のガスの滞留時間、温度、原料ガス組成、遷移金属化合物濃度等を変えることによって行うことができる。そして本発明においては前記炉内の繊維生成条件のバラツキが少ないので、繊維径が揃ったものを得ることができる。
【0019】
次に本発明の炭素繊維製造装置について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の炭素繊維製造装置の概略断面図、図2は分散筒近辺の拡大断面図である。
本発明の炭素繊維製造装置はキャリアガス加熱炉1と反応炉2は直結している。通常は縦型であるが、その場合キャリアガス加熱炉の下に反応炉が配置される。これら二つの炉は一体に成形されたものでもよく、別々に成形し、接続することもできる。これらの炉はヒーター11、21により所定の温度に加熱される。キャリアガス加熱炉および反応炉は高温に加熱されるので炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素の焼結体が望ましい。キャリアガス加熱炉と反応炉が直結していることにより、加熱されたキャリアガスが直ちに反応炉に移行するので放熱による熱損失が少なく効率的である。
【0020】
反応炉内の上部には分散筒4が設置される。分散筒4の上部に原料ガス供給管3が設置され、その先端は分散筒の上端近傍ないし分散筒内に位置させるのがよい。そして供給管の先端は下向き、即ち反応炉と平行方向にし、原料ガスを下向きに流出させる。原料ガス供給管はキャリアガス加熱炉の上部から炉内を通して設置することも不可能ではないが、キャリアガスは高温に加熱されているので、原料ガスの温度を遷移金属化合物の分解温度以下に抑えるためには、原料ガス供給管の炉内部分は短くする方がよく、それには図1に示すようにキャリアガス加熱炉の下部の側壁部を通して設けるのが好ましい。
【0021】
本発明において用いられる分散筒4は図2に示すように上下が開放された筒体である。分散筒は反応炉内の好ましくは上部に設置されるが、分散筒内には原料ガスが放出され、かつ温度も炭素繊維生成温度に達しているので、分散筒が設置されている部位は反応炉の一部でもある。
分散筒4は反応炉の内壁と分散筒外壁との間に間隙を有するように設置される。この間隙に加熱されたキャリアガスを流通させる。これによって間隙を通るガスは層流となり、その層流が分散筒の下部の反応炉の壁面に沿ってできるだけ長く形成されていることが好ましい。また分散筒内では原料ガスとキャリアガスが均一に混合され、温度ムラ、濃度ムラが生じないことが好ましい。これらのためには分散筒はある程度以上の長さが必要である。反面長過ぎると分散筒内に炭素繊維が付着するようになる。また分散筒と炉壁との間隙もある程度以上必要であるが、これをあまり広くすると分散筒の径が狭くなり、触媒微粒子等の濃度が反応炉の中央部等で高くなったり、反応炉内の濃度ムラの原因にもなる。
【0022】
これらのことから望ましい実施形態を図2、図3により説明する。分散筒は整流板の上下でその径を変えることができる。例えば図3は整流板の上部の分散筒の径を下部の径よりも大きくした場合である。図2、図3において、D1は反応炉の内径、D2は分散筒の整流板上部の内径、D3は分散筒の整流板下部の内径、H1は整流板の上部の分散筒の長さ、H2は整流板下部の分散筒の長さである。 この場合の望ましい関係はD2/D1が0.2〜1.1、D3/D1が0.2〜0.9、H2/D1が0.2〜2.0、H1/D2が0.2〜3.0の範囲である。
なお、図示の分散筒は整流板41を有するものであるが、整流板はなくすことも可能である。整流板がない場合の分散筒の長さHは反応炉の内径に対し、H/D1 が0.2〜3.0の範囲にあるのが望ましい。
分散筒4は炉壁のレデュース部22(下方が細い傾斜部)で、分散筒の鍔43を支持するようにすることが好ましい。鍔の代わりに複数個の突起等で支持することも可能であるが、反応炉と同様炭化珪素焼結体等で構成されるので、成形、焼結が容易であることが好ましく、この点上記の突起より鍔の方が製作が容易である。鍔には多数の通気孔が設けられている。分散筒は温度変化により膨張、収縮するが、支持点がレデュース部であれば膨張、収縮に合わせて上下動が可能となり、熱応力の発生を抑えることができるので好都合である。
【0023】
分散筒は好ましくは整流板41を有し、その整流板には多数の通気孔42が設けられる。この通気孔にガスを流すことにより、ガスが中央部から周辺部まで一様に流すことができる。分散筒内では炭素繊維の生成が一部開始されることもあるので、この通気孔があまり小さいと長時間の運転では炭素繊維が付着し閉塞を起こす恐れがある。したがって通気孔の直径は5mm以上が好ましい。
分散筒上には原料ガス供給管3が設けられる。原料ガス供給管3はキャリアガス加熱炉の上部から垂下させることも可能であるが、前記した理由により炉の側壁から挿入することが好ましい。原料ガス供給管3は二重管とし、中心部の原料ガス供給内挿管31の周囲に冷却用の不活性ガス等を流し、原料中の触媒前駆体の温度を分解温度以下にする。冷却用のガスを流す方法としては例えば二重管の間に細管を挿入し、その先端を開放し、細管に冷却用のガスを流す方法等がある。原料ガス供給管の先端の位置については前述したとおり分散筒内にあってもよい。
【0024】
キャリアガス加熱炉にはキャリアガス送入管12が接続され、反応炉出口には好ましくは冷却管5が接続される。冷却管5には冷却用のガス送入口51が複数個斜め下向きに設けられる。ガス送入口51は垂直方向に対し斜め下向きで、かつ周囲方向に傾けることもでき、これによりガスを下向きで渦巻き状に流すこともできる。冷却管に連なる輸送配管6を細くすることにより輸送ガスの流速を増し、炭素繊維が配管中に滞るのを防止することができる。輸送配管はステンレス等で構成でき、加工が容易であり、図1に示すように屈曲させることができ、これにより生成した炭素繊維を任意の位置に輸送できたり、装置全体の高さを短くすることができる。
輸送配管6の先にはバッフル72を有する捕集器7が接続され、ここで炭素繊維とキャリアガスが分離される 。炭素繊維は回収され、キャリアガスはバグフィルター8を通して排出され処理あるいは回収される。
【0025】
【実施例】
図1、図3に示す装置を用いて炭素繊維を製造した。反応炉およびキャリアガス加熱炉は炭化珪素焼結体で一体に構成されたものを使用した。炉はレデュース部の上が長さ1500mm、内径が125mm、レデュース部の下が長さ930mm、内径が100mm、レデュース部は内径125−100mm、長さ100mmである。
分散筒はレデュース部で支持するようにした。分散筒は炭化珪素焼結体で、図3に示す各寸法はH1が115mm、H2が105mm、D2は60mm、D3は50mmである。分散筒には径5mmの通気孔を有する整流板が内装されている。
原料ガスは整流板からの高さH3を105mmとして分散筒内に供給した。原料ガス供給管は二重構造として、二重管の外側を窒素ガスにより冷却し、中心部の原料ガスを触媒前駆体であるフェロセンの分解温度以下に抑えた。
【0026】
反応炉の下部にはステンレス製の冷却管を接続し、この冷却管に窒素ガス挿入口を斜め下向に4カ所設けた。冷却管に続く輸送管は内径9.8mmとした。
運転条件は以下の通り
原料ガス フェロセン4質量%含有ベンゼン。送入量は7g/min.
キャリアガス 水素ガス。送入量は60nl/min.
冷却ガス 窒素ガス。送入量は50nl/min.
キャリアガス温度 1200℃(最高温度帯)
反応炉内温度 1200℃(最高温度帯)
上記の条件で5時間運転した。その結果反応炉壁に炭素繊維が付着することが殆どなく円滑に運転できた。得られた炭素繊維は顕微鏡観察により平均径は0.02μm、平均長さは10μmであり、繊維は径がよく揃っていた。炭素繊維の収率は原料ガス(ベンゼン及びフェロセン)中の炭素分に対する繊維量で表すと25質量%であった。
【0027】
【発明の効果】
本発明は反応炉の上部にキャリアガス分散筒を設けたものであり、分散筒の外側にキャリアガスを流すことにより、反応炉の壁面に炭素繊維が付着するのを防止することができる。また分散筒内では原料ガスと高温に加熱されたキャリアガスが直ちに混合し、かつ分散筒内における温度分布が均一で、しかもその温度は反応炉内の温度と大差なくすることができる。この高温の混合ガスが反応炉内に入るので反応炉内での温度のアンバランスが少ない。また触媒前駆体及び有機化合物の熱分解から炭素繊維の成長が終了するまでの時間を短くまた、一定にすることが可能である。これらのことにより炭素繊維径が細く、かつ揃った炭素繊維を得ることができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の気相法炭素繊維の製造装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は図1における分散筒近辺の部分拡大断面図である。
【図3】図3は分散筒近辺の別の態様の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 キャリアガス加熱炉
11 ヒーター
12 キャリアガス送入管
13 キャリアガス
2 反応炉
21 ヒーター
22 レデュース部
3 原料ガス供給管
31 原料ガス供給内挿管
32,33 冷却用不活性ガス
34 原料ガス
4 キャリアガス分散筒
41 整流板
42 通気孔
43 鍔部
5 冷却管
51 冷却用ガス送入口
52 冷却用ガス
6 輸送管
7 捕集器
71、73 炭素繊維
72 バッフル
8 バグフィルター
81 排出ガス
Claims (16)
- 炭素繊維生成炉内にキャリアガス分散筒を、該生成炉の炉壁との間に間隙を設けて配置し、炭素繊維の原料ガスを前記分散筒内に供給し、加熱したキャリアガスを前記間隙と分散筒内を通るガスに分けて前記生成炉内に供給して炭素繊維を生成させることを特徴とする気相法炭素繊維の製造法。
- キャリアガス分散筒が、その内部に整流板を有するものである請求項1に記載の気相法炭素繊維の製造法。
- キャリアガスの加熱温度が900〜1300℃である請求項1または2のいずれか1項に記載の気相法炭素繊維の製造法。
- 原料ガスの供給が、炉の側壁を通して挿入された供給管により行われるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の気相法炭素繊維の製造法。
- 原料ガスの供給が、冷却機構を備えた供給管により原料ガス中の触媒前駆体の分解温度以下で行われる請求項1〜4のいずれか1項に記載の気相法炭素繊維の製造法。
- 原料ガスが、炭素化合物及び遷移金属化合物を含むものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の気相法炭素繊維の製造法。
- 炭素化合物が、芳香族化合物、アセチレン、エチレン、ブタジエンの少なくとも1種、遷移金属化合物の金属が鉄、ニッケル、コバルトの少なくとも1種である請求項6に記載の気相法炭素繊維の製造法。
- 請求項1〜7のいずれか1項により製造された気相法炭素繊維。
- 気相法炭素繊維が、直径0.001〜0.5μm、アスペクト比が10〜15000である請求項8に記載の気相法炭素繊維。
- 炭素繊維生成炉とキャリアガス加熱炉が直結し、該生成炉内にキャリアガス分散筒が、炉壁との間に間隙を設けて配置され、該分散筒上に原料ガス供給管が設けられ、前記加熱炉にキャリアガス供給管が接続されてなる気相法炭素繊維製造装置。
- キャリアガス分散筒が、その内部に整流板を有するものである請求項10に記載の気相法炭素繊維製造装置。
- キャリアガス分散筒が設置される部位の炉壁にレデューサー部(傾斜部)を有し、該レデューサー部で前記分散筒を支持している請求項10または11に記載の気相法炭素繊維製造装置。
- 原料ガス供給管が、炉の側壁を通して挿入されている請求項10〜12のいずれか1項に記載の気相法炭素繊維製造装置。
- 炭素繊維生成炉の繊維排出口に冷却管が接続され、該冷却管に冷却ガス吹込機構が設けられている請求項10〜13のいずれか1項に記載の気相法炭素繊維製造装置。
- キャリアガス加熱炉、炭素繊維生成炉、キャリアガス分散筒、整流板の材料がセラミックスである請求項10〜14のいずれか1項に記載の気相法炭素繊維製造装置。
- セラミックスが、炭化珪素、窒化ホウ素、窒化珪素から選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項15に記載の気相法炭素繊維製造装置。
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