JP2004027035A - ディスクパッド用粉体塗料組成物及びそれによって塗装されたディスクパッド - Google Patents
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Abstract
【課題】ディスクパッドに塗装する際に、膜厚が薄く、スコーチ処理性がよく、捺印性に優れ、耐油性、耐錆性、耐熱性に問題のない粉体塗料組成物及びそれによって塗装されたディスクパッドを提供する。
【解決手段】組成物全量に対して、35〜70質量%のポリエステル樹脂(A)と、15〜40質量%の硬化剤(B)とを、或いはさらに、1〜30質量%のエポキシ樹脂(C)を含有する粉体塗料組成物であって、該組成物中の粒子の平均粒径が15〜35μmであり、かつ粒径が50μm以上の粒子が30質量%以下であることを特徴とするスコーチ処理性に優れたディスクパッド用粉体塗料組成物などを提供した。
【選択図】 なし
【解決手段】組成物全量に対して、35〜70質量%のポリエステル樹脂(A)と、15〜40質量%の硬化剤(B)とを、或いはさらに、1〜30質量%のエポキシ樹脂(C)を含有する粉体塗料組成物であって、該組成物中の粒子の平均粒径が15〜35μmであり、かつ粒径が50μm以上の粒子が30質量%以下であることを特徴とするスコーチ処理性に優れたディスクパッド用粉体塗料組成物などを提供した。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスクパッド用粉体塗料組成物及びそれによって塗装されたディスクパッドに関し、更に詳しくは膜厚が薄く、スコーチ処理性がよく、捺印性に優れ、耐油性、耐錆性、耐熱性に問題のないディスクパッド用粉体塗料組成物及びそれによって塗装されたディスクパッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
ディスクパッドの塗装は、溶剤系のスプレー塗装が一般的であった。スプレー塗装は、薄膜性、耐錆性、捺印性、スコーチ処理性、耐油性等に優れ、ディスクパッドの塗装に適している。
しかし、有機溶剤を用いたスプレー塗装は、有機溶剤による大気汚染、またスクラバーで捕捉することによる水質汚染、作業環境悪化等の環境問題を生じるために、その代替品が求められている。
そこで、塗料組成物中に有機溶剤を含まず、かつ塗装時に資源の回収、再使用が可能な粉体塗料が注目され、提案されている。例えば、特開平11−99356号公報や特開2001−17891号公報には、粉体塗料を用いたディスクパッドの塗装方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、従来の粉体塗料組成物を用いてディスクパッドに塗装した場合には、問題点があった。即ちディスクパッドの塗装では、
(1)薄塗り(20〜40μm)が望ましいこと、
(2)スコーチ処理温度は、500℃以上となり、耐熱性のある粉体塗料を使用しても、摩擦材内部からの脱ガスによる塗膜の膨れが生じること、
(3)塗装後にバックプレートに捺印を行うが、運搬時等にディスクパッドの摩擦面で擦られやすいこと、また、使用中に熱、温度、水、塩水、油等により消える問題もあること。
(4)ブレーキオイル、グリース等の油分が付着する環境下で使用されること、(5)屋外暴露で使用されること、
(6)使用中、摩擦熱により過熱されること、
など通常の塗装と異なる特殊な事情があるため、問題点があった。例えば、元来、厚塗り(50〜60μm)を想定している粉体塗料組成物により、ディスクパッドを薄い膜厚で粉体塗装することは、物性面で不安定になったり、また、経済的にも不利であった。
【0004】
また、一般的に粉体塗料用樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が考えられている。このうち、アクリル樹脂を主成分とする粉体塗料は、耐熱性、柔軟性に劣る。また、エポキシ樹脂を主成分とする粉体塗料は、耐熱性、耐錆性はあるが、耐候性(変色性)に劣る。さらに、ポリエステル樹脂を主成分とする粉体塗料は、耐候性(変色性)に優れるが、耐熱性に劣るといわれている。
【0005】
従って、ディスクパッド用の粉体塗料組成物としては、耐熱性、耐錆性を重視する点から、エポキシ樹脂を塗料全体の40重量%以上含有する粉体塗料組成物が提案されてきた。ところが、このようなエポキシ樹脂中心の粉体塗料組成物を用いたディスクパッド塗装では、スコーチ処理性に問題があった。
このスコーチ処理性について、さらに説明する。図1に、一般的なディスクパッドの製造工程を示す。この製造工程から明らかなように、摩擦材とバックプレートが組み合わされたディスクパッドを成形、熱処理、研磨、塗装してから、スコーチ処理(ヒートシア)が行われるのであるが、このスコーチ処理(ヒートシア)により塗膜膨れ等が問題となるのは、摩擦材の側面である(図2参照)。つまり500℃以上のヒートシア温度と、摩擦材内部からのガス発生(摩擦材中の有機成分、水分等が分解、揮発する)に対して、耐熱性に優れるエポキシ樹脂中心の粉体塗料でも、耐えられず塗膜膨れが生じるのである。
さらに、捺印については、インクジェット法にて行う場合、インク中に含まれる溶剤により、塗膜が侵され、インクの顔料または染料が、塗膜と結合または密着することで捺印性が向上するが、通常捺印性の良い塗料は、耐油性が劣るという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ディスクパッドに塗装する際に、膜厚が薄く、スコーチ処理性がよく、捺印性に優れ、耐油性、耐錆性、耐熱性に問題のない粉体塗料組成物及びそれによって塗装されたディスクパッドを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、ディスクパッド用粉体塗料組成物について、粉体塗料の平均粒径及び各成分の配合量に注目し、平均粒径が小さく、かつポリエステル樹脂成分の配合量をエポキシ樹脂の配合量に比べて多くし、他の成分を規定範囲内にした粉体塗料組成物を、ディスクパッドの塗装に使用したところ、膜厚が薄く、スコーチ処理性がよく、捺印性に優れ、耐油性、耐錆性、耐熱性に問題のない塗膜を得ることができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、組成物全量に対して、35〜70質量%のポリエステル樹脂(A)と、15〜40質量%の硬化剤(B)とを含有する粉体塗料組成物であって、該組成物中の粒子の平均粒径が15〜35μmであり、かつ粒径が50μm以上の粒子が30質量%以下であることを特徴とするスコーチ処理性に優れたディスクパッド用粉体塗料組成物が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、硬化剤(B)がブロックドイソシアネート系であることを特徴とするディスクパッド用粉体塗料組成物が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、粒径が100μm以上の粒子が5質量%以下で、かつ粒径が5μm以下の粒子が15質量%以下であることを特徴とするディスクパッド用粉体塗料組成物が提供される。
【0009】
本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、さらに、1〜30質量%のエポキシ樹脂(C)を含有することを特徴とするディスクパッド用粉体塗料組成物が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、さらに、20〜40質量%の顔料又は体質顔料を含有することを特徴とするディスクパッド用粉体塗料組成物が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明のディスクパッド用粉体塗料組成物によって塗装されてなるディスクパッドが提供される。
【0010】
本発明は、上記した如く、組成物全量に対して、35〜70質量%のポリエステル樹脂(A)と、15〜40質量%の硬化剤(B)とを含有する粉体塗料組成物であって、該組成物中の粒子の平均粒径が15〜35μmであり、かつ粒径が50μm以上の粒子が30質量%以下であることを特徴とするスコーチ処理性に優れたディスクパッド用粉体塗料組成物などに係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
【0011】
(1)第1〜5のいずれかの発明のディスクパッド用粉体塗料組成物を用いる塗装工程を含むことを特徴とするディスクパッドの製造方法。
(2)上記(1)の発明の製造方法により得られたディスクパッド。
(3)第1〜5のいずれかの発明において、JIS Z8741試験方法による塗膜の60°光沢(グロスユニット)は、85以下であることを特徴とするディスクパッド用粉体塗料組成物。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物などについて、項目毎に詳細に説明する。
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物は、組成物全量に対して、35〜70質量%のポリエステル樹脂(A)と、15〜40質量%の硬化剤(B)とを、或いはさらに、1〜30質量%のエポキシ樹脂(C)を含有する粉体塗料組成物であって、該組成物中の粒子の平均粒径が15〜35μmであり、かつ粒径が50μm以上の粒子が30質量%以下であることを特徴とし、特にスコーチ処理性に優れたものである。
尚、前記したように、スコーチ処理とは、図1、2に示すように、ディスクパッドなどの摩擦部材の仕上げ工程で行われる処理工程であって、摩擦面を400〜700℃程度の範囲、好ましくは500℃以上で30〜300秒程度加熱し、ブレーキとして摩擦部材を使用した際に発生するガスを、予め発生させておき、主にフェード現象を抑えるために行う工程であり、また、スコーチ処理性とは、このスコーチ処理(ヒートシア)により生じる塗膜膨れに対する性能であり、塗膜膨れが生じないのが優れる。そして、図1に示される塗装工程において、本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物を用いることにより、特にスコーチ処理性に優れたものになる。
【0013】
1.ポリエステル樹脂(A)
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物において、用いられるポリエステル樹脂(A)は、−C(O)O−のエステル結合を有する樹脂であり、一般に、アルコール基(−ROH基)を持つ化合物と、カルボキシル基(−COOH基)を持つ化合物の脱水縮合反応によって生成される。
通常、ポリエステル樹脂としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、β−オキシプロピオン酸等のカルボン酸とを常法に従って重合させたものである。
本発明においては、ポリエステル樹脂は、一般に、粉体塗料用の樹脂として、用いられているものであれば、特に限定されないが、平均分子量は、好ましくは500〜100,000、更に好ましくは2,000〜80,000、最も好ましくは3,000〜10,000である。OH価は、0〜300mgKOH/g、好ましくは30〜120mgKOH/gのものが、また、酸価は、0〜200mgKOH/g、好ましくは10〜100mgKOH/gのものが好適である。融点は、好ましくは50〜200℃、更に好ましくは80〜150℃である。
具体的には、ダイセルUCB社製の「クリルコート341、7620、7630」、大日本インキ社製の「ファインディックM−8010、8020、8024、8710」、日本コピカ社製の「コピカコートGV110、230」、日本エステル社製の「ER6570」、ヒュルス社製の「VESTAGON EP−P100」などが挙げられる。
【0014】
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物において、ポリエステル樹脂(A)の配合量は、組成物全量基準で、35〜70質量%、好ましくは40〜60質量%である。
前記したように、ポリエステル樹脂を主な成分とする粉体塗料は、耐候性(変色性)に優れるものの、耐熱性に劣るといわれており、ポリエステル樹脂を使用することは、性能面で問題があるようにも考えられたが、ディスクパッドの塗装用の粉体塗料に、上記の配合割合の範囲で用いた場合、耐熱性が劣っているために、かえってスコーチ処理に加わる熱によって、塗膜面が摩擦材内部から発生するガスを通気させる状態となり、かつバックプレート面では、スコーチ処理時における熱(約300℃)に耐えることができ、捺印性に優れ、耐油性、耐錆性、耐熱性等が保持される。
【0015】
2.硬化剤(B)
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物において、用いられる硬化剤(B)としては、ブロックドイソシアネート系、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)系、エポキシ系(ポリエポキシド、エポキシ樹脂)のものなどが挙げられる。特に好ましくは、ブロックドイソシアネート系のものである。
ブロックドイソシアネート(ブロック化イソシアネート)系の硬化剤は、ウレタン結合(−NHCO−)を主体とする化合物で構成されている。本発明で用いられるブロック化(ポリ)イソシアネートは、(ポリ)イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でブロックした軟化点が20〜100℃、好ましくは25〜80℃の範囲のものであり、NCOの割合(%)は、5〜30%程度が好ましい。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、(i)ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート化合物、(ii)イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式系ジイソシアネート化合物、(iii)キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、(m−又はp−)フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、(iv)トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート等の3個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート化合物類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ポリアルキレングリコール、トリメチロ−ルプロパン、ヘキサントリオ−ル等のポリオールの水酸基に対してイソシアネート基が過剰量となる量のポリイソシアネート化合物を反応させてなる付加物類、イソシアヌル環タイプ付加物等のその他のポリイソシアネート類が挙げられる。
【0016】
また、ブロック剤として、例えば、フェノール系、ラクタム系、オキシム(−C=NOH)系の従来から公知のブロック剤がいずれも使用でき、これらのブロック剤の具体例としては、(i)フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、t−ブチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系ブロック剤、(ii)ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤、(iii)アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤が挙げられる。
硬化剤(B)、硬化触媒の具体的なものとして、EMS−CHEME社製の「primid XL552」、油化シェルエポキシ社製の「エピキュア170、108FF」、四国化成社製の「キュアゾール2MZ」、ヒュルス社製の「B−1540、B−1530」、日東化成社製の「ネオスタンU−100」などが挙げられる。
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物において、硬化剤(B)の配合量は、組成物全量基準で、15〜40質量%、好ましくは20〜30質量%である。尚、硬化剤(B)の配合割合は、ポリエステル樹脂(A)に対して、ポリエステル系樹脂(A)の官能基1個当たり硬化剤(B)の官能基が約0.6〜1.5個、好ましくは約0.8〜1.2個の範囲に入るように配合すれば良い。通常、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、約5〜150質量部、好ましくは約10〜100質量部の範囲である。
【0017】
3.エポキシ樹脂(C)
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物において、特に必須の成分ではないが、配合されるのが好ましい成分としてエポキシ樹脂(C)が用いられる。尚、エポキシ樹脂は、ポリエステル樹脂(A)の硬化剤(B)としても用いることができる。
本発明においては、エポキシ樹脂(C)は、一般に、粉体塗料用の樹脂として、用いられているものであれば、特に限定されないが、エポキシ当量は、好ましくは200〜10,000g/eq.、更に好ましくは250〜5,000g/eq.、最も好ましくは250〜2,500g/eq.のものが好適である。
そのようなエポキシ樹脂の具体例としては、グリシジルエステル樹脂;ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合反応物や、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの縮合反応物等のグリシジルエーテル型樹脂;脂環式エポキシ樹脂;脂肪族エポキシ樹脂;含ブロムエポキシ樹脂;フェノール−ノボラック型またはクレゾール−ノボラック型のエポキシ樹脂などが挙げられ、好ましくはビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合反応物、またはビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの縮合反応物等のグリシジルエーテル型樹脂である。
具体的には、東都化成社製の「エポトート YD903N、YD128、YD14、PN639、CN701、NT114、ST−5080、ST−5100、ST−4100D」、ダイセル化学社製の「EITPA3150」、チバ・ガイギー社製の「アルダイトCY179、PT810、PT910、GY6084」、ナガセ化成社製の「テコナールEX711」、大日本インキ社製の「エピクロン 4055RP、N680、HP4032、N−695、HP7200H」、油化シェルエポキシ社製の「エピコート1001、1002、1003、1004、1007」、ダウ・ケミカル社製の「DER662」、日本化薬社製の「EPPN201、202、EOCN1020、102S」などが挙げられる。
【0018】
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物において、配合されるのが好ましいエポキシ樹脂(C)の配合量は、組成物全量基準で、1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%である。
【0019】
4.その他の配合剤(D)
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物においては、特に必須の成分ではないが、上記のポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)、エポキシ樹脂(C)に加えて、更に必要に応じて、通常の粉体塗料組成物などに使用される、次に示すような各種配合剤(D)、即ち帯電剤、顔料又は体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤(表面調整剤)、硬化促進剤(又は硬化触媒)、発泡防止剤などを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0020】
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物において、所望により、適宜配合される顔料又は体質顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン系顔料、アゾ系顔料等の着色顔料や、タルク、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム等の体質顔料、或いは、クロム系顔料、リン酸塩系顔料、モリブデン系顔料等の防錆顔料などが挙げられる。
また、所望により、適宜配合されるレベリング剤(表面調整剤)としては、ジメチルシリコーンやメチルシリコーンなどのシリコーン類、アクリルオリゴマー等があり、具体的には、東芝シリコーン社製の「CF−1056」、モンサント化成社製の「モダフロー」、BASF社製の「アクロナール4F」、BYKchemie社製の「BYK−360P」、楠本化成社製の「チィスパロンPL540」などが挙げられる。
さらに、本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物を、摩擦帯電ガン用に使用する場合、アルミナ等を全体の0.05〜3質量%程度添加するとよい。
【0021】
5.粉体塗料組成物の粒径
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物は、粒子の平均粒径が15〜35μmであり、かつ50μm以上の粒径の粒子が30質量%以下である。さらに好ましくは、100μm以上の粒径の粒子が5質量%以下であり、一方、5μm以下の粒径の粒子が15質量%以下である。このように、平均粒径が小さくかつ粒径を均一にすることにより、塗膜厚さが薄く、スコーチ処理性が優れたものになる。
また、粉体塗料組成物の平均粒径を、従来公知の粉体塗料の平均粒径(約50μm)よりも小さくすることにより、形成される塗膜表面の凹凸をなくすことができる。さらに、粉体塗料組成物中の粒子の平均粒径が、15μm未満であると、製造工程が複雑化し、また、ディスクパッドに対する粉体塗料組成物の塗着効率が低下することがある。あるいは、粉体塗料組成物中の粒子の平均粒径が、35μmを超えると、ディスクパッド全体への均一な膜厚分布を付与できないか、または粉体塗膜の外観が低下することがある。
【0022】
6.粉体塗料組成物の使用方法
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物は、ディスクパッド用粉体塗料として用いられる。
ディスクパッドに対する粉体塗装は、一般的な方法が可能であり、摩擦帯電法、コロナ帯電法、静電流動浸漬法、流動浸漬法等が挙げられ、着き回り性から摩擦帯電法が好ましい。
また、塗装性能を向上させるために、ディスクパッドのバックプレート(又は裏金)には、予め化成被膜処理を施すとよい。その化成被膜処理としては、リン酸鉄系処理、リン酸亜鉛処理、リン酸カルシウム処理等が挙げられる。
【0023】
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物を、ディスクパッドに塗装することにより、塗膜が形成されて、その膜厚が薄く、スコーチ処理性がよく即ち摩擦材が膨れず、捺印性に優れ、耐油性、耐錆性、耐熱性に問題のない塗膜を得ることができる。
また、本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物は、捺印の際に、インキ中の溶剤に塗膜が適度に侵され、インク顔料又は染料が塗膜と結合、密着し、かつ耐油性にも優れるバランスのとれたものである。
尚、捺印性は、塗膜表面に凸凹があるほうが良い。また、捺印は、スタンプ方式もあるが、好ましくはインクジェット方式にて行い、そのインクジェット用インキとしては、メチルエチルケトン(MEK)を10〜60%含むものが一般的で、その他に例えば、メタノール、キシレン、N−メチル2−ピロリドンなども含有している場合もある。
また、塗膜の艶、即ち光沢は、JIS Z8741に規定された鏡面光沢度として、塗膜の60°光沢(グロスユニット)は85以下が好ましく、更に好ましくは65以下である。鏡面光沢度が85以下となることにより、インクジェット性が向上し、インキが塗膜の凹部に入り、消えにくくなる。この鏡面光沢度が小さいということは、光が乱反射する、すなわち、塗膜の表面粗さが粗い、言い替えると塗膜に凸凹があることを意味する。この塗膜の表面粗さとしては、十点平均粗さ(Rz)が7μm以上、中心線平均粗さ(Ra)は1.0μm以上が好ましい。
【0024】
【実施例】
次に、本発明について実施例及び比較例を挙げて、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に特に限定されるものではない。
実施例及び比較例における塗装面の評価は、次の評価試験で実施した。
(1)塩水噴霧試験:
塗装面に対しクロスカットを入れ、塩水噴霧72時間後、セロハンテープ(登録商標)をクロスカット部に接着した後、10分置き、その後セロハンテープ(登録商標)を剥離させた時の塗装状態を観察した。その評価基準は次のとおり。○:クロスカット部より片側2mm以内の剥がれ
△:クロスカット部より片側5mm以内の剥がれ
×:クロスカット部より片側5mm以上の剥がれ
【0025】
(2)摩擦材表面加熱試験:
550℃の鉄板の上に摩擦材を下向きにし、乗せ、120秒静置させた時の摩擦材側面の塗装状態を観察した。その評価基準は次のとおり。
○:膨れなし
×:膨れ有り
【0026】
(3)捺印試験:
インクジェットにより塗装面に捺印し、10分放置後、脱脂綿にて、100回擦った後の捺印状態を観察した。その評価基準は次のとおり。
○:変化なし
△:判読可能だが薄くなった
×:判読不能
【0027】
(4)艶試験:
艶は、60度鏡面光沢度試験(JIS Z8741)に準拠し、スガ試験機(株)製のデジタル変角光沢計(UGV−5D)を使用し、塗膜の60°光沢(グロスユニット)として測定した。その評価基準は次のとおり。
◎:65以下
○:85以下
×:85超
【0028】
(5)耐油性試験:
ブレーキオイルを脱脂綿に染み込ませ、24時間塗装面に放置した後、オイルを拭き取り、塗装面を観察した。その評価基準は次のとおり。
○:変化なし
△:艶が落ちたが、塗装は、剥げない
×:塗装がはげた
【0029】
[実施例1]
実施例1は、組成物全量基準で、ポリエステル樹脂(A)として、大日本インキ社製の商品名「ファインディックM−8020」を44質量%、硬化剤(B)として、ブロックドイソシアネート系のブロック剤がε−カプロラクタム系であるヒュルス社製の商品名「B−1530」を27質量%、エポキシ樹脂(C)として、油化シェルエポキシ社製の商品名「エピコート1003」を2質量%、その他配合剤(D)として、体質顔料についてはシリカである日本アエロジル社製の商品名「AEROSIL200」を25質量%、顔料についてはカーボンブラックである三菱化学社製の商品名「MA100」を1質量%、及びその他添加剤として、補助硬化剤(硬化促進剤)であるEMS−chemie社製の商品名「primidXL552」を0.5質量%と、表面調整剤(レベリング剤)であるBASF社製の商品名「アクロナール4F」を0.5質量%との1質量%の合計100質量%を配合し、粉体塗料組成物を調製した。
その粉体塗料組成物の平均粒径は22μmであり、5μm以下のものは7質量%であり、50μm以上のものは7質量%であり、100μm以上のものは無かった。尚、粒径、粒径分布は、乾式のレーザー法により、測定した。
この調製した粉体塗料組成物を、摩擦材に、摩擦帯電法により塗装し、前記の5種の評価試験を実施した。それらの評価結果と、粉体塗料組成物の組成を表1に示す。
【0030】
[実施例2〜6]
実施例1と同様にして、表1に示す組成で、粉体塗料組成物を調製し、評価試験を実施した。それらの評価結果と、粉体塗料組成物の組成を表1に示す。
尚、実施例2は、エポキシ樹脂(C)を配合せず、また、実施例5は、硬化剤(B)として、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)を20質量%配合し、さらに、実施例6は、硬化剤(B)として、エポキシ当量が200g/eq.のものを15質量%配合している。
【0031】
【表1】
【0032】
[比較例1〜5]
実施例1と同様にして、表2に示す組成で、粉体塗料組成物を調製し、評価試験を実施した。それらの評価結果と、粉体塗料組成物の組成を表2に示す。
尚、比較例1〜3は、35質量%未満のポリエステル樹脂を用い、比較例4、5は、粉体塗料用樹脂としてエポキシ樹脂を用いている。
【0033】
【表2】
【0034】
表1、2の結果から明らかなように、実施例1〜6の粉体塗料組成物は、5種の評価試験結果がいずれも良好であった。一方、ポリエステル樹脂(A)の含有量が少ない比較例1〜5の粉体塗料組成物は、5種の評価試験結果が悪かった。これらの結果から、本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物は、スコーチ処理性がよく、捺印性に優れ、耐油性、耐熱性などに問題のない塗膜を得ることができることが明らかになった。
【0035】
【発明の効果】
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物は、組成物全量に対して、35〜70質量%のポリエステル樹脂(A)と、15〜40質量%の硬化剤(B)とを、或いはさらに、1〜30質量%のエポキシ樹脂(C)を含有する粉体塗料組成物であって、該組成物中の粒子の平均粒径が15〜35μmであり、かつ粒径が50μm以上の粒子が30質量%以下であることを特徴とすることにより、膜厚が薄く、スコーチ処理性がよく、捺印性に優れ、耐油性、耐錆性、耐熱性に問題のない塗膜を得ることができるという顕著な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ディスクパッドなどの摩擦部材の製造工程を示す図である。
【図2】スコーチ処理工程を説明する図である。
【符号の説明】
1 バックプレート(裏金)
2 摩擦材
3 鉄板
4 塗膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスクパッド用粉体塗料組成物及びそれによって塗装されたディスクパッドに関し、更に詳しくは膜厚が薄く、スコーチ処理性がよく、捺印性に優れ、耐油性、耐錆性、耐熱性に問題のないディスクパッド用粉体塗料組成物及びそれによって塗装されたディスクパッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
ディスクパッドの塗装は、溶剤系のスプレー塗装が一般的であった。スプレー塗装は、薄膜性、耐錆性、捺印性、スコーチ処理性、耐油性等に優れ、ディスクパッドの塗装に適している。
しかし、有機溶剤を用いたスプレー塗装は、有機溶剤による大気汚染、またスクラバーで捕捉することによる水質汚染、作業環境悪化等の環境問題を生じるために、その代替品が求められている。
そこで、塗料組成物中に有機溶剤を含まず、かつ塗装時に資源の回収、再使用が可能な粉体塗料が注目され、提案されている。例えば、特開平11−99356号公報や特開2001−17891号公報には、粉体塗料を用いたディスクパッドの塗装方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、従来の粉体塗料組成物を用いてディスクパッドに塗装した場合には、問題点があった。即ちディスクパッドの塗装では、
(1)薄塗り(20〜40μm)が望ましいこと、
(2)スコーチ処理温度は、500℃以上となり、耐熱性のある粉体塗料を使用しても、摩擦材内部からの脱ガスによる塗膜の膨れが生じること、
(3)塗装後にバックプレートに捺印を行うが、運搬時等にディスクパッドの摩擦面で擦られやすいこと、また、使用中に熱、温度、水、塩水、油等により消える問題もあること。
(4)ブレーキオイル、グリース等の油分が付着する環境下で使用されること、(5)屋外暴露で使用されること、
(6)使用中、摩擦熱により過熱されること、
など通常の塗装と異なる特殊な事情があるため、問題点があった。例えば、元来、厚塗り(50〜60μm)を想定している粉体塗料組成物により、ディスクパッドを薄い膜厚で粉体塗装することは、物性面で不安定になったり、また、経済的にも不利であった。
【0004】
また、一般的に粉体塗料用樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が考えられている。このうち、アクリル樹脂を主成分とする粉体塗料は、耐熱性、柔軟性に劣る。また、エポキシ樹脂を主成分とする粉体塗料は、耐熱性、耐錆性はあるが、耐候性(変色性)に劣る。さらに、ポリエステル樹脂を主成分とする粉体塗料は、耐候性(変色性)に優れるが、耐熱性に劣るといわれている。
【0005】
従って、ディスクパッド用の粉体塗料組成物としては、耐熱性、耐錆性を重視する点から、エポキシ樹脂を塗料全体の40重量%以上含有する粉体塗料組成物が提案されてきた。ところが、このようなエポキシ樹脂中心の粉体塗料組成物を用いたディスクパッド塗装では、スコーチ処理性に問題があった。
このスコーチ処理性について、さらに説明する。図1に、一般的なディスクパッドの製造工程を示す。この製造工程から明らかなように、摩擦材とバックプレートが組み合わされたディスクパッドを成形、熱処理、研磨、塗装してから、スコーチ処理(ヒートシア)が行われるのであるが、このスコーチ処理(ヒートシア)により塗膜膨れ等が問題となるのは、摩擦材の側面である(図2参照)。つまり500℃以上のヒートシア温度と、摩擦材内部からのガス発生(摩擦材中の有機成分、水分等が分解、揮発する)に対して、耐熱性に優れるエポキシ樹脂中心の粉体塗料でも、耐えられず塗膜膨れが生じるのである。
さらに、捺印については、インクジェット法にて行う場合、インク中に含まれる溶剤により、塗膜が侵され、インクの顔料または染料が、塗膜と結合または密着することで捺印性が向上するが、通常捺印性の良い塗料は、耐油性が劣るという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ディスクパッドに塗装する際に、膜厚が薄く、スコーチ処理性がよく、捺印性に優れ、耐油性、耐錆性、耐熱性に問題のない粉体塗料組成物及びそれによって塗装されたディスクパッドを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、ディスクパッド用粉体塗料組成物について、粉体塗料の平均粒径及び各成分の配合量に注目し、平均粒径が小さく、かつポリエステル樹脂成分の配合量をエポキシ樹脂の配合量に比べて多くし、他の成分を規定範囲内にした粉体塗料組成物を、ディスクパッドの塗装に使用したところ、膜厚が薄く、スコーチ処理性がよく、捺印性に優れ、耐油性、耐錆性、耐熱性に問題のない塗膜を得ることができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、組成物全量に対して、35〜70質量%のポリエステル樹脂(A)と、15〜40質量%の硬化剤(B)とを含有する粉体塗料組成物であって、該組成物中の粒子の平均粒径が15〜35μmであり、かつ粒径が50μm以上の粒子が30質量%以下であることを特徴とするスコーチ処理性に優れたディスクパッド用粉体塗料組成物が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、硬化剤(B)がブロックドイソシアネート系であることを特徴とするディスクパッド用粉体塗料組成物が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、粒径が100μm以上の粒子が5質量%以下で、かつ粒径が5μm以下の粒子が15質量%以下であることを特徴とするディスクパッド用粉体塗料組成物が提供される。
【0009】
本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、さらに、1〜30質量%のエポキシ樹脂(C)を含有することを特徴とするディスクパッド用粉体塗料組成物が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、さらに、20〜40質量%の顔料又は体質顔料を含有することを特徴とするディスクパッド用粉体塗料組成物が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明のディスクパッド用粉体塗料組成物によって塗装されてなるディスクパッドが提供される。
【0010】
本発明は、上記した如く、組成物全量に対して、35〜70質量%のポリエステル樹脂(A)と、15〜40質量%の硬化剤(B)とを含有する粉体塗料組成物であって、該組成物中の粒子の平均粒径が15〜35μmであり、かつ粒径が50μm以上の粒子が30質量%以下であることを特徴とするスコーチ処理性に優れたディスクパッド用粉体塗料組成物などに係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
【0011】
(1)第1〜5のいずれかの発明のディスクパッド用粉体塗料組成物を用いる塗装工程を含むことを特徴とするディスクパッドの製造方法。
(2)上記(1)の発明の製造方法により得られたディスクパッド。
(3)第1〜5のいずれかの発明において、JIS Z8741試験方法による塗膜の60°光沢(グロスユニット)は、85以下であることを特徴とするディスクパッド用粉体塗料組成物。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物などについて、項目毎に詳細に説明する。
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物は、組成物全量に対して、35〜70質量%のポリエステル樹脂(A)と、15〜40質量%の硬化剤(B)とを、或いはさらに、1〜30質量%のエポキシ樹脂(C)を含有する粉体塗料組成物であって、該組成物中の粒子の平均粒径が15〜35μmであり、かつ粒径が50μm以上の粒子が30質量%以下であることを特徴とし、特にスコーチ処理性に優れたものである。
尚、前記したように、スコーチ処理とは、図1、2に示すように、ディスクパッドなどの摩擦部材の仕上げ工程で行われる処理工程であって、摩擦面を400〜700℃程度の範囲、好ましくは500℃以上で30〜300秒程度加熱し、ブレーキとして摩擦部材を使用した際に発生するガスを、予め発生させておき、主にフェード現象を抑えるために行う工程であり、また、スコーチ処理性とは、このスコーチ処理(ヒートシア)により生じる塗膜膨れに対する性能であり、塗膜膨れが生じないのが優れる。そして、図1に示される塗装工程において、本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物を用いることにより、特にスコーチ処理性に優れたものになる。
【0013】
1.ポリエステル樹脂(A)
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物において、用いられるポリエステル樹脂(A)は、−C(O)O−のエステル結合を有する樹脂であり、一般に、アルコール基(−ROH基)を持つ化合物と、カルボキシル基(−COOH基)を持つ化合物の脱水縮合反応によって生成される。
通常、ポリエステル樹脂としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、β−オキシプロピオン酸等のカルボン酸とを常法に従って重合させたものである。
本発明においては、ポリエステル樹脂は、一般に、粉体塗料用の樹脂として、用いられているものであれば、特に限定されないが、平均分子量は、好ましくは500〜100,000、更に好ましくは2,000〜80,000、最も好ましくは3,000〜10,000である。OH価は、0〜300mgKOH/g、好ましくは30〜120mgKOH/gのものが、また、酸価は、0〜200mgKOH/g、好ましくは10〜100mgKOH/gのものが好適である。融点は、好ましくは50〜200℃、更に好ましくは80〜150℃である。
具体的には、ダイセルUCB社製の「クリルコート341、7620、7630」、大日本インキ社製の「ファインディックM−8010、8020、8024、8710」、日本コピカ社製の「コピカコートGV110、230」、日本エステル社製の「ER6570」、ヒュルス社製の「VESTAGON EP−P100」などが挙げられる。
【0014】
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物において、ポリエステル樹脂(A)の配合量は、組成物全量基準で、35〜70質量%、好ましくは40〜60質量%である。
前記したように、ポリエステル樹脂を主な成分とする粉体塗料は、耐候性(変色性)に優れるものの、耐熱性に劣るといわれており、ポリエステル樹脂を使用することは、性能面で問題があるようにも考えられたが、ディスクパッドの塗装用の粉体塗料に、上記の配合割合の範囲で用いた場合、耐熱性が劣っているために、かえってスコーチ処理に加わる熱によって、塗膜面が摩擦材内部から発生するガスを通気させる状態となり、かつバックプレート面では、スコーチ処理時における熱(約300℃)に耐えることができ、捺印性に優れ、耐油性、耐錆性、耐熱性等が保持される。
【0015】
2.硬化剤(B)
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物において、用いられる硬化剤(B)としては、ブロックドイソシアネート系、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)系、エポキシ系(ポリエポキシド、エポキシ樹脂)のものなどが挙げられる。特に好ましくは、ブロックドイソシアネート系のものである。
ブロックドイソシアネート(ブロック化イソシアネート)系の硬化剤は、ウレタン結合(−NHCO−)を主体とする化合物で構成されている。本発明で用いられるブロック化(ポリ)イソシアネートは、(ポリ)イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でブロックした軟化点が20〜100℃、好ましくは25〜80℃の範囲のものであり、NCOの割合(%)は、5〜30%程度が好ましい。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、(i)ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート化合物、(ii)イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式系ジイソシアネート化合物、(iii)キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、(m−又はp−)フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、(iv)トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート等の3個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート化合物類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ポリアルキレングリコール、トリメチロ−ルプロパン、ヘキサントリオ−ル等のポリオールの水酸基に対してイソシアネート基が過剰量となる量のポリイソシアネート化合物を反応させてなる付加物類、イソシアヌル環タイプ付加物等のその他のポリイソシアネート類が挙げられる。
【0016】
また、ブロック剤として、例えば、フェノール系、ラクタム系、オキシム(−C=NOH)系の従来から公知のブロック剤がいずれも使用でき、これらのブロック剤の具体例としては、(i)フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、t−ブチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系ブロック剤、(ii)ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤、(iii)アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤が挙げられる。
硬化剤(B)、硬化触媒の具体的なものとして、EMS−CHEME社製の「primid XL552」、油化シェルエポキシ社製の「エピキュア170、108FF」、四国化成社製の「キュアゾール2MZ」、ヒュルス社製の「B−1540、B−1530」、日東化成社製の「ネオスタンU−100」などが挙げられる。
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物において、硬化剤(B)の配合量は、組成物全量基準で、15〜40質量%、好ましくは20〜30質量%である。尚、硬化剤(B)の配合割合は、ポリエステル樹脂(A)に対して、ポリエステル系樹脂(A)の官能基1個当たり硬化剤(B)の官能基が約0.6〜1.5個、好ましくは約0.8〜1.2個の範囲に入るように配合すれば良い。通常、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、約5〜150質量部、好ましくは約10〜100質量部の範囲である。
【0017】
3.エポキシ樹脂(C)
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物において、特に必須の成分ではないが、配合されるのが好ましい成分としてエポキシ樹脂(C)が用いられる。尚、エポキシ樹脂は、ポリエステル樹脂(A)の硬化剤(B)としても用いることができる。
本発明においては、エポキシ樹脂(C)は、一般に、粉体塗料用の樹脂として、用いられているものであれば、特に限定されないが、エポキシ当量は、好ましくは200〜10,000g/eq.、更に好ましくは250〜5,000g/eq.、最も好ましくは250〜2,500g/eq.のものが好適である。
そのようなエポキシ樹脂の具体例としては、グリシジルエステル樹脂;ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合反応物や、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの縮合反応物等のグリシジルエーテル型樹脂;脂環式エポキシ樹脂;脂肪族エポキシ樹脂;含ブロムエポキシ樹脂;フェノール−ノボラック型またはクレゾール−ノボラック型のエポキシ樹脂などが挙げられ、好ましくはビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合反応物、またはビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの縮合反応物等のグリシジルエーテル型樹脂である。
具体的には、東都化成社製の「エポトート YD903N、YD128、YD14、PN639、CN701、NT114、ST−5080、ST−5100、ST−4100D」、ダイセル化学社製の「EITPA3150」、チバ・ガイギー社製の「アルダイトCY179、PT810、PT910、GY6084」、ナガセ化成社製の「テコナールEX711」、大日本インキ社製の「エピクロン 4055RP、N680、HP4032、N−695、HP7200H」、油化シェルエポキシ社製の「エピコート1001、1002、1003、1004、1007」、ダウ・ケミカル社製の「DER662」、日本化薬社製の「EPPN201、202、EOCN1020、102S」などが挙げられる。
【0018】
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物において、配合されるのが好ましいエポキシ樹脂(C)の配合量は、組成物全量基準で、1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%である。
【0019】
4.その他の配合剤(D)
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物においては、特に必須の成分ではないが、上記のポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)、エポキシ樹脂(C)に加えて、更に必要に応じて、通常の粉体塗料組成物などに使用される、次に示すような各種配合剤(D)、即ち帯電剤、顔料又は体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤(表面調整剤)、硬化促進剤(又は硬化触媒)、発泡防止剤などを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0020】
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物において、所望により、適宜配合される顔料又は体質顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン系顔料、アゾ系顔料等の着色顔料や、タルク、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム等の体質顔料、或いは、クロム系顔料、リン酸塩系顔料、モリブデン系顔料等の防錆顔料などが挙げられる。
また、所望により、適宜配合されるレベリング剤(表面調整剤)としては、ジメチルシリコーンやメチルシリコーンなどのシリコーン類、アクリルオリゴマー等があり、具体的には、東芝シリコーン社製の「CF−1056」、モンサント化成社製の「モダフロー」、BASF社製の「アクロナール4F」、BYKchemie社製の「BYK−360P」、楠本化成社製の「チィスパロンPL540」などが挙げられる。
さらに、本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物を、摩擦帯電ガン用に使用する場合、アルミナ等を全体の0.05〜3質量%程度添加するとよい。
【0021】
5.粉体塗料組成物の粒径
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物は、粒子の平均粒径が15〜35μmであり、かつ50μm以上の粒径の粒子が30質量%以下である。さらに好ましくは、100μm以上の粒径の粒子が5質量%以下であり、一方、5μm以下の粒径の粒子が15質量%以下である。このように、平均粒径が小さくかつ粒径を均一にすることにより、塗膜厚さが薄く、スコーチ処理性が優れたものになる。
また、粉体塗料組成物の平均粒径を、従来公知の粉体塗料の平均粒径(約50μm)よりも小さくすることにより、形成される塗膜表面の凹凸をなくすことができる。さらに、粉体塗料組成物中の粒子の平均粒径が、15μm未満であると、製造工程が複雑化し、また、ディスクパッドに対する粉体塗料組成物の塗着効率が低下することがある。あるいは、粉体塗料組成物中の粒子の平均粒径が、35μmを超えると、ディスクパッド全体への均一な膜厚分布を付与できないか、または粉体塗膜の外観が低下することがある。
【0022】
6.粉体塗料組成物の使用方法
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物は、ディスクパッド用粉体塗料として用いられる。
ディスクパッドに対する粉体塗装は、一般的な方法が可能であり、摩擦帯電法、コロナ帯電法、静電流動浸漬法、流動浸漬法等が挙げられ、着き回り性から摩擦帯電法が好ましい。
また、塗装性能を向上させるために、ディスクパッドのバックプレート(又は裏金)には、予め化成被膜処理を施すとよい。その化成被膜処理としては、リン酸鉄系処理、リン酸亜鉛処理、リン酸カルシウム処理等が挙げられる。
【0023】
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物を、ディスクパッドに塗装することにより、塗膜が形成されて、その膜厚が薄く、スコーチ処理性がよく即ち摩擦材が膨れず、捺印性に優れ、耐油性、耐錆性、耐熱性に問題のない塗膜を得ることができる。
また、本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物は、捺印の際に、インキ中の溶剤に塗膜が適度に侵され、インク顔料又は染料が塗膜と結合、密着し、かつ耐油性にも優れるバランスのとれたものである。
尚、捺印性は、塗膜表面に凸凹があるほうが良い。また、捺印は、スタンプ方式もあるが、好ましくはインクジェット方式にて行い、そのインクジェット用インキとしては、メチルエチルケトン(MEK)を10〜60%含むものが一般的で、その他に例えば、メタノール、キシレン、N−メチル2−ピロリドンなども含有している場合もある。
また、塗膜の艶、即ち光沢は、JIS Z8741に規定された鏡面光沢度として、塗膜の60°光沢(グロスユニット)は85以下が好ましく、更に好ましくは65以下である。鏡面光沢度が85以下となることにより、インクジェット性が向上し、インキが塗膜の凹部に入り、消えにくくなる。この鏡面光沢度が小さいということは、光が乱反射する、すなわち、塗膜の表面粗さが粗い、言い替えると塗膜に凸凹があることを意味する。この塗膜の表面粗さとしては、十点平均粗さ(Rz)が7μm以上、中心線平均粗さ(Ra)は1.0μm以上が好ましい。
【0024】
【実施例】
次に、本発明について実施例及び比較例を挙げて、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に特に限定されるものではない。
実施例及び比較例における塗装面の評価は、次の評価試験で実施した。
(1)塩水噴霧試験:
塗装面に対しクロスカットを入れ、塩水噴霧72時間後、セロハンテープ(登録商標)をクロスカット部に接着した後、10分置き、その後セロハンテープ(登録商標)を剥離させた時の塗装状態を観察した。その評価基準は次のとおり。○:クロスカット部より片側2mm以内の剥がれ
△:クロスカット部より片側5mm以内の剥がれ
×:クロスカット部より片側5mm以上の剥がれ
【0025】
(2)摩擦材表面加熱試験:
550℃の鉄板の上に摩擦材を下向きにし、乗せ、120秒静置させた時の摩擦材側面の塗装状態を観察した。その評価基準は次のとおり。
○:膨れなし
×:膨れ有り
【0026】
(3)捺印試験:
インクジェットにより塗装面に捺印し、10分放置後、脱脂綿にて、100回擦った後の捺印状態を観察した。その評価基準は次のとおり。
○:変化なし
△:判読可能だが薄くなった
×:判読不能
【0027】
(4)艶試験:
艶は、60度鏡面光沢度試験(JIS Z8741)に準拠し、スガ試験機(株)製のデジタル変角光沢計(UGV−5D)を使用し、塗膜の60°光沢(グロスユニット)として測定した。その評価基準は次のとおり。
◎:65以下
○:85以下
×:85超
【0028】
(5)耐油性試験:
ブレーキオイルを脱脂綿に染み込ませ、24時間塗装面に放置した後、オイルを拭き取り、塗装面を観察した。その評価基準は次のとおり。
○:変化なし
△:艶が落ちたが、塗装は、剥げない
×:塗装がはげた
【0029】
[実施例1]
実施例1は、組成物全量基準で、ポリエステル樹脂(A)として、大日本インキ社製の商品名「ファインディックM−8020」を44質量%、硬化剤(B)として、ブロックドイソシアネート系のブロック剤がε−カプロラクタム系であるヒュルス社製の商品名「B−1530」を27質量%、エポキシ樹脂(C)として、油化シェルエポキシ社製の商品名「エピコート1003」を2質量%、その他配合剤(D)として、体質顔料についてはシリカである日本アエロジル社製の商品名「AEROSIL200」を25質量%、顔料についてはカーボンブラックである三菱化学社製の商品名「MA100」を1質量%、及びその他添加剤として、補助硬化剤(硬化促進剤)であるEMS−chemie社製の商品名「primidXL552」を0.5質量%と、表面調整剤(レベリング剤)であるBASF社製の商品名「アクロナール4F」を0.5質量%との1質量%の合計100質量%を配合し、粉体塗料組成物を調製した。
その粉体塗料組成物の平均粒径は22μmであり、5μm以下のものは7質量%であり、50μm以上のものは7質量%であり、100μm以上のものは無かった。尚、粒径、粒径分布は、乾式のレーザー法により、測定した。
この調製した粉体塗料組成物を、摩擦材に、摩擦帯電法により塗装し、前記の5種の評価試験を実施した。それらの評価結果と、粉体塗料組成物の組成を表1に示す。
【0030】
[実施例2〜6]
実施例1と同様にして、表1に示す組成で、粉体塗料組成物を調製し、評価試験を実施した。それらの評価結果と、粉体塗料組成物の組成を表1に示す。
尚、実施例2は、エポキシ樹脂(C)を配合せず、また、実施例5は、硬化剤(B)として、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)を20質量%配合し、さらに、実施例6は、硬化剤(B)として、エポキシ当量が200g/eq.のものを15質量%配合している。
【0031】
【表1】
【0032】
[比較例1〜5]
実施例1と同様にして、表2に示す組成で、粉体塗料組成物を調製し、評価試験を実施した。それらの評価結果と、粉体塗料組成物の組成を表2に示す。
尚、比較例1〜3は、35質量%未満のポリエステル樹脂を用い、比較例4、5は、粉体塗料用樹脂としてエポキシ樹脂を用いている。
【0033】
【表2】
【0034】
表1、2の結果から明らかなように、実施例1〜6の粉体塗料組成物は、5種の評価試験結果がいずれも良好であった。一方、ポリエステル樹脂(A)の含有量が少ない比較例1〜5の粉体塗料組成物は、5種の評価試験結果が悪かった。これらの結果から、本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物は、スコーチ処理性がよく、捺印性に優れ、耐油性、耐熱性などに問題のない塗膜を得ることができることが明らかになった。
【0035】
【発明の効果】
本発明のディスクパッド用粉体塗料組成物は、組成物全量に対して、35〜70質量%のポリエステル樹脂(A)と、15〜40質量%の硬化剤(B)とを、或いはさらに、1〜30質量%のエポキシ樹脂(C)を含有する粉体塗料組成物であって、該組成物中の粒子の平均粒径が15〜35μmであり、かつ粒径が50μm以上の粒子が30質量%以下であることを特徴とすることにより、膜厚が薄く、スコーチ処理性がよく、捺印性に優れ、耐油性、耐錆性、耐熱性に問題のない塗膜を得ることができるという顕著な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ディスクパッドなどの摩擦部材の製造工程を示す図である。
【図2】スコーチ処理工程を説明する図である。
【符号の説明】
1 バックプレート(裏金)
2 摩擦材
3 鉄板
4 塗膜
Claims (6)
- 組成物全量に対して、35〜70質量%のポリエステル樹脂(A)と、15〜40質量%の硬化剤(B)とを含有する粉体塗料組成物であって、該組成物中の粒子の平均粒径が15〜35μmであり、かつ粒径が50μm以上の粒子が30質量%以下であることを特徴とするスコーチ処理性に優れたディスクパッド用粉体塗料組成物。
- 硬化剤(B)がブロックドイソシアネート系であることを特徴とする請求項1に記載のディスクパッド用粉体塗料組成物。
- 粒径が100μm以上の粒子が5質量%以下で、かつ粒径が5μm以下の粒子が15質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のディスクパッド用粉体塗料組成物。
- さらに、1〜30質量%のエポキシ樹脂(C)を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のディスクパッド用粉体塗料組成物。
- さらに、20〜40質量%の顔料又は体質顔料を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のディスクパッド用粉体塗料組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のディスクパッド用粉体塗料組成物によって塗装されてなるディスクパッド。
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