JP2004026612A - セラミック用表示材料 - Google Patents

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Koji Koiwai
小岩井 孝二
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Abstract

【課題】焼成前後で色調が変化するセラミック素材にも使用可能で、焼成前後でセラミック素地と明確に判別可能な表示が可能なセラミック用表示材料を提供する。
【解決手段】無機顔料を含むセラミック用着色ペーストに、酸素、炭素、水素、窒素以外の元素を含まない有機顔料を分散させて形成した。無機顔料が、周期表の3族から14族の元素の中の少なくとも1種の酸化物であることが好ましい。また、有機顔料の分解温度が、150℃から700℃の範囲にあることが好ましい。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層コンデンサ、フィルターなどのセラミックチップ部品の表面に塗布して表示マークを形成する着色ペーストに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、積層コンデンサ、フィルターなどのセラミックチップ部品には実装時の方向性があるものがあり、このような部品には、実装方向を示す表示マークが必要となる。また、その表示マークはグリーンシート積層体からチップを切り出す際の位置合わせにも用いられる。従って、セラミックチップ部品の表示は、その焼成前におけるグリーンシート積層体の状態、および焼成後における焼結体の状態において、素地とコントラストが高く、視認性の良いものが望まれている。
【0003】
この表示に用いられる材料は、色を出すための顔料のほかに、密着性を上げる為の素材材料の粉末やガラス粉末から成り立っている。該材料は、顔料等をビヒクルと呼ばれる樹脂を溶剤に溶解させたものに分散させて着色ペーストとし、スクリーン印刷などの方法でグリーンシートの表面に塗布して、マークを表示するのが一般的である。
【0004】
例えば、高純度アルミナのように白色粉末を焼結させて白色セラミック焼結体を生成する場合には、表示部は焼成の前後で着色が保たれていれば、白以外のどのような色を用いてもコントラストが確保されるので問題はない。このような白色のセラミック素材の場合、表示に用いられる顔料として酸化コバルトなどの黒色の遷移金属酸化物が選択されることが多い。
【0005】
しかしながら、焼成後に色を有するセラミック素材の場合、グリーンシート積層体成形時とチップに切断後の焼成時の色が異なることが多い。その原因は、グリーンシート積層体段階の成形時は粉末の集合体であるために、粉末による光の散乱で白っぽく見えることや低温焼結させるために添加するガラス成分などの色とセラミック粉末自体の色が異なっていることによる。この様な場合、切断時の位置あわせに必要な表示部とグリーンシートとのコントラストをなすことと、焼成後のチップ(焼結体)の実装方向を示すために必要な表示部とコントラストをなすことを両立させることが困難である。
【0006】
さらに、セラミック素体の材料との反応性が高く、黒色顔料を使用することができない場合に、表示色の濃淡でなく、色調の差異を利用して素地の色と補色の関係にある色を選択して使用する場合がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した事情に鑑みて為されたもので、焼成前後で色調が変化するセラミック素材にも使用可能で、焼成前後でセラミック素地と明確に判別可能な表示が可能なセラミック用表示材料を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、本発明のセラミック用表示材料は、無機顔料を含むセラミック用着色ペーストに、酸素、炭素、水素、窒素以外の元素を含まない有機顔料を分散させて形成したことを特徴とする。
【0009】
本発明のセラミック用着色ペーストによれば、無機顔料を含むペーストに有機顔料を添加し、グリーンシートの段階では有機顔料の色で素地とのコントラストを有して、焼成時に有機成分を分解させ燃焼させて、焼成後は無機顔料によって素地とのコントラストをなすものである。
【0010】
本発明によれば、焼成の前後において表示用ペーストを塗布した部分の表示色を変化させることができる。この焼成前後における表示色は、有機着色成分の選択によって変化させることができる。例えば、無機顔料と異なる色調の有機顔料を選択すれば、焼成前後で色調が異なり、無機顔料と同系色の有機顔料を選択すれば焼成後に色の濃さを調整することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るセラミック用着色ペーストの実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明のセラミック用着色ペーストが塗布されたグリーンシート積層体1を上から見た図(平面図)を示す。即ち、切断時にその位置合わせのガイドとなる表示マーク部(切断位置合わせライン)2aと、実装時に実装方向を示す表示マーク部(実装方向指示マーク)2bがスクリーン印刷により印刷されている。グリーンシート積層体1を切断し焼成することにより、図2に示すセラミックチップ(セラミック焼結体)3を得る。ここで、セラミックグリーンシートの素材であるBaTi20とガラス成分を混合したセラミック粉は白色であり、セラミックグリーンシート1の段階では白色であるが、焼成後のセラミックチップ3は黄色を呈する特徴を有している。
【0013】
上記セラミック粉をドクターブレードにてシート化した後、所定の大きさに打ち抜き、スクリーン印刷機を用いて内部電極として銀ペーストを印刷して、最上部となるシートには後述する表示ペーストを印刷塗布した。このシートを最上部にして、所定の枚数のシートを積層し、静水圧プレスを行った。この段階が、図1に示す状態である。
【0014】
次に、この素材の表示に用いる着色ペーストを以下のように作成した。まず、BaTi20粉末100重量部に対してガラスフリットを15重量部および顔料成分としてMnを2重量部添加して、エチルセルロースをターピネオールに溶解させた有機ビヒクル100重量部に3本ロール分散機を用いて分散させた。さらに、有機赤色顔料であるキナクリドンレッドを無機顔料分に対して10重量%添加して表示ペーストを得た。この着色ペーストは、有機顔料により赤色を呈している。得られたグリーンシート積層体は白色をしており、赤色をした表示部とのコントラストが高いので、ダイシングによるチップ切断の際の位置合わせが容易にできる。
【0015】
所定の大きさのチップに切断した後、500℃で脱バインダー処理を行い、900℃で2時間の焼成を行った。焼成後のチップ素材は黄色であったが、表示ペースト塗布部は無機顔料Mnにより茶色を呈していた。表示マークとして非塗布部分と判然として区別できる状態であった。
【0016】
比較例として、着色ペースト作成時にキナクリドンレッドを添加せず、その他の材料と工程は前記実施例と同じにしてセラミックチップを作成した。焼成後のチップについては、表示ペースト塗布部分のコントラストは高いが、グリーンシート積層体の段階ではセラミック素材と表示塗布部分のコントラストが低く、切断のための位置合わせを行うのが困難であった。
【0017】
本発明のセラミック用着色ペーストは、無機顔料を含むペーストに有機顔料を添加したものである。無機顔料の表示ペーストに添加される有機顔料として、部品の電気的な特性に影響を与え無いことが要求される。また、塗布時および焼成時にセラミック材料および電極材料と反応しないものが好ましい。水素や炭素や窒素や酸素のみからなる顔料であれば、分解時に水、炭素酸化物、窒素、窒素酸化物などの揮発性の物質になるので完全に除去できる。また、これらの元素からなる物質はセラミック素体材料にダメージを与えることは無い。これに対して、硫黄、燐、塩素などの元素が含まれていると、セラミック素体の焼結を促進させたり、銀などの電極材料と反応して抵抗値の上昇を招いたりすることがある。また、これらの元素のガスが揮発して焼成炉の部材を腐食する恐れがある。また、悪臭の原因となったり、毒性を有するガスの発生原因となったりすることがある。上述した、水素や炭素や窒素や酸素のみからなる顔料であれば、これらの問題を生じない。
【0018】
上記有機顔料の例としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、インジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、キナクリドン系、キノフタロン系、ビロール系などが挙げられる。水素、炭素、窒素、酸素以外の元素を含まない顔料としては、例えば、キナクリドン系のキナクリドンレッドなどがある。ここで、顔料は溶剤に溶けないもので、固体もしくは液体をペースト中に分散させて用いる物質であり、溶媒に溶解して用いる染料と区別される。
【0019】
上記無機顔料の例としては、焼成後にセラミック材料とのコントラストが高くて視認性のよいものが好ましい。黒色の無機顔料を用い、かつ顔料濃度が大きい場合には、有機顔料の色は無機顔料の色に隠れてしまう恐れがあり、本発明の効果が小さくなる。しかしながら、無機顔料の濃度が小さくてアルミナセラミック粉やガラス粉などの白色成分が共に分散している場合には、灰色の着色ペーストとなるために有機顔料で着色を付与することができる。
【0020】
また、無機顔料成分としては、有機顔料と反応を起こさないことが好ましい。また、焼成時においても有機成分が分解して発生するガスによって変質しないことが好ましい。国際純正および応用化学連合(IUPAC)の無機化学命名法(1989年)による周期表の3族から14族に属する元素の酸化物が安定性の上から好ましい。更には、Al、Si、Se、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Sn、ランタノイド、W、Pbのうち少なくとも1種を含む酸化物から選択されるのが好ましい。
【0021】
グリーンシート積層体を切断し焼成することにより、セラミックチップ(焼結体)を生成する。切断する際グリーンシート積層体を50℃から150℃の温度に加熱するので、有機着色成分がこの温度で分解しないことが必要である。次に、切断されたチップ状のグリーンシート積層体を焼成する。このグリーンシート積層体を焼成する温度は、一般的に800℃から1500℃の範囲である。有機着色成分はこの焼成温度に達するまでに分解することが望まれる。
【0022】
有機顔料の添加量としては、無機成分に対して1重量%から20重量%の範囲にあることが好ましい。有機顔料は粒子径や分散状態によって色の濃さに差がでる。概ね、1重量%以上添加すれば顔料の色は確認できるようになる。しかし、鮮明に着色するためには5重量%以上添加するのが望まれる。濃色の無機顔料が分散している場合も、添加量を増やす必要があるが、20重量%以上添加しても色は濃くならずに材料が無駄になるばかりでなく、焼成時に表示ペーストが塗布された部分の焼結密度が低くなることがある。
【0023】
尚、上記実施形態は本発明の実施例の一態様を述べたもので、本発明の趣旨を逸脱することなく種々の変形実施例が可能なことは勿論である。
【0024】
【発明の効果】
上述したように、本発明のセラミック用表示ペーストは、無機顔料を含むペーストに有機顔料を添加し、グリーンシート積層体の段階で有機顔料の着色で素地とのコントラストをなして、焼成時に有機成分を分解させ燃焼させて、焼成後は無機顔料によって素地とのコントラストをなすものである。これにより、焼成の前後において、表示マークを素地に対して高いコントラストで表示することができ、セラミック部品の生産性の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の着色ペーストを印刷したセラミックグリーンシートを最上部として積層したグリーンシート積層体の平面図である。
【図2】図1のグリーンシート積層体を切断し、焼成して得られたセラミックチップ(焼結体)の斜視図である。
【符号の説明】
1          グリーンシート積層体
2a         表示マーク部(切断位置合わせライン)
2b         表示マーク部(実装方向指示マーク)
3          セラミックチップ(焼結体)

Claims (4)

  1. 無機顔料を含むセラミック用着色ペーストに、酸素、炭素、水素、窒素以外の元素を含まない有機顔料を分散させて形成したことを特徴とするセラミック用表示材料。
  2. 前記無機顔料が、周期表の3族から14族の元素の中の少なくとも1種の酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のセラミック用表示材料。
  3. 前記有機顔料の分解温度が、150℃から700℃の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のセラミック用表示材料。
  4. 前記有機顔料の添加量が、前記無機顔料成分の重量に対して、1重量%から20重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のセラミック用表示材料。
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JP2021012962A (ja) * 2019-07-08 2021-02-04 日本電気硝子株式会社 パッケージ基材、パッケージ、及びパッケージ基材の製造方法

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