JP2004025266A - 金属材料の押出方法 - Google Patents
金属材料の押出方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004025266A JP2004025266A JP2002187635A JP2002187635A JP2004025266A JP 2004025266 A JP2004025266 A JP 2004025266A JP 2002187635 A JP2002187635 A JP 2002187635A JP 2002187635 A JP2002187635 A JP 2002187635A JP 2004025266 A JP2004025266 A JP 2004025266A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- temperature
- billet
- extrusion
- container
- product
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Extrusion Of Metal (AREA)
Abstract
【課題】金属材料の押出加工に際して、押出中のダイス出側の押出製品の温度が、押出中において常に一定となるように、押出機における押出条件を簡単に設定することの出来る手法を提供すること。
【解決手段】コンテナ10内に収容した金属ビレット12を、ダイス20を通じて押し出すに際し、コンテナ10挿入直前の金属ビレット12の軸方向及び径方向における温度が、それぞれ、設定温度の±10℃以内となるように加熱する一方、ラム速度、コンテナ温度、ビレット温度の3つの押出条件を変数とした計算式を解くことにより、押出工程中の製品温度が常に一定温度となるようなビレット温度、コンテナ温度、及びラム速度を設定して、押出加工操作を実施するように構成した。
【選択図】 図1
【解決手段】コンテナ10内に収容した金属ビレット12を、ダイス20を通じて押し出すに際し、コンテナ10挿入直前の金属ビレット12の軸方向及び径方向における温度が、それぞれ、設定温度の±10℃以内となるように加熱する一方、ラム速度、コンテナ温度、ビレット温度の3つの押出条件を変数とした計算式を解くことにより、押出工程中の製品温度が常に一定温度となるようなビレット温度、コンテナ温度、及びラム速度を設定して、押出加工操作を実施するように構成した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【技術分野】
本発明は、アルミニウム若しくはその合金等の金属材料の押出方法に係り、特に、ビレット温度とコンテナ温度とラム速度とを制御して、ダイスから押し出される押出製品の温度が一定となるようにすることによって、かかる押出製品の品質を、高度に、且つ安定して維持することの出来る等温押出方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、アルミニウム等の金属材料(ビレット)をダイスから押し出して、所望の断面形状とした押出製品が、各種の用途において用いられてきているが、そのような金属材料の押出加工においては、ダイス出側となる押出機プラテン出側の製品温度が、その押出方向たる長手方向において変化して、温度差が生じてしまうことが認められている。例えば、均一に加熱した金属ビレットを用いて押出加工を行なった場合において、その押出が進むにつれて、ダイス出側の製品温度が上昇するようになることが多いのである。これは、押出加工中に、コンテナ内に収容されたビレットに対して押出のための圧力がラムを介して加えられることによって惹起される加工発熱が蓄熱されるためであり、そして、押出工程の後半になる程、その蓄熱量が多くなるところから、プラテン出側(ダイス出側)の製品温度も、押出が進むにつれて上昇するようになる。
【0003】
そこで、従来においては、かかる押出加工のために、コンテナ内に収容されるビレットの加熱に際して、誘導加熱炉等を用いて、ビレットの押出方向における後部側(ラム側)の温度を前部側(ダイス側)の温度よりも予め低く加熱するテーパ加熱手法を採用して、ビレット温度がダイス側からラム側に向かって漸次低下する傾斜温度パターンを、ビレットに付与することにより、押出工程中の製品温度の上昇を抑制するという手段が、広く採用されてきているのである。
【0004】
しかしながら、そのような押出加工中のダイス出側の製品温度の上昇を抑えるためにテーパ加熱したビレットを用いても、ビレットの前部と後部の温度差(テーパ量)は、ビレットの100mm長当たり10℃といったように一律に決められていることが多く、各押出条件に応じたビレット温度分布(テーパ量)が与えられていないために、実際には、押出中に製品温度が上昇する場合や減少する場合が殆どであり、押出工程中の製品温度が常に一定になるような等温押出となることは、稀なことであった。
【0005】
尤も、各製品に応じて最適なテーパ量を設定して、テーパ加熱したビレットを用いることにより、押出製品温度が等温となるようにする手法も考えられるのではあるが、ビレットのテーパ加熱に際して、そのテーパ量を自在に設定することは、技術的に難しく、また、誘導加熱ビレットヒータ等を用いてテーパ量を最適値にしたとしても、加熱直後から、ビレットが搬送されて、コンテナ内に挿入されるまでの経過時間により、ビレット内の熱伝導によって、そのテーパ量が減少してしまうこともあり、このテーパ量による製品温度調節には、大きな困難が内在しているのである。
【0006】
また、かかるテーパ加熱ビレットを使用することによって、ビレット後部の温度が前部の設定温度よりも著しく低くなり、ビレットとコンテナとの間の剪断変形抵抗が増大するようになるところから、同じ設定温度(同じビレット前部加熱温度)の均一加熱のビレットよりも、テーパ加熱ビレットを用いる方が、最大押出力が高くなってしまい、押出機の能力が不足する場合も生じ、そしてそのような場合にあっては、ビレットの加熱温度を高く設定する必要があり、その結果、製品温度が上昇するのを防ぐために、押出速度を減少させなければならず、押出能率が低下する等といった弊害もある。
【0007】
さらに、そのようなテーパ加熱ビレットを用いる場合には、押出工程中のコンテナ内のダイス近辺のビレット温度が一定となり難く、ダイス面に加わる圧力が押出工程中に変化して、ダイスの撓み量が変化し、以てダイス孔の断面積が変化することにより、得られる押出製品の寸法が押出工程中に変化してしまうという問題も内在するものであった。
【0008】
一方、均一に加熱されたビレットを用いた押出加工において、その押出が進むにつれて、製品温度が上昇するという問題を解決する手段として、押出加工中の押出速度を変化させる手法の採用も考えることが出来る。一定速度で押出を行なった場合には、製品温度が上昇するようになるところから、押出が進むにつれて押出速度を下げて、加工発熱量を減少せしめ、以て等温押出加工を実現しようとする考え方である。しかしながら、そのような手法では、押出速度が一定でないところから、押出製品の表面性状、例えば光沢等が変化したり、ダイス面圧が変化して、押出製品の長手方向における寸法誤差が大きくなったりする等の問題があり、実用上、採用することの出来る手法と考えることは出来ない。
【0009】
ところで、特開平10−12843号公報等には、また、押出温度制御の一つの手法が提案されている。具体的には、そこでは、金属押出機において、押出機プラテン出側の製品温度が上限を超えないように、押出力実測値を用いて、理論モデルから導かれた押出温度計算式を解くことにより、ビレット温度が設定されているのである。
【0010】
しかしながら、かかる特開平10−12843号公報等において採用されている計算モデルは複雑なものであって、そこでは、材料の変形抵抗、押出材料から工具への熱伝達率等の計算式に用いられる変数を、各材料、各押出機毎に調べる必要があり、また、押出形材の形状やダイスの形状パラメータ、押出荷重等、必要とされる項目が多く、目的とする等温押出加工を実現するには、非常に多くの基礎実験や制御システム構築のための多額の費用の投下が必要となる、等の問題が内在している。
【0011】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、金属材料の押出加工に際して、押出中のダイス出側の押出製品の温度が、押出工程中において常に一定となるように、押出機における押出条件を簡単に設定することの出来る手法を提供することにあり、また、他の解決課題とするところは、押出製品の品質を、その押出方向である長手方向において、高度に且つ安定して維持することの出来る手法を提供することにある。
【0012】
【解決手段】
そして、そのような課題を解決するために、本発明にあっては、コンテナ内に収容した金属ビレットを、ラムを介しての圧力の作用によって、ダイス出側の押出製品温度が一定となるように、ダイスを通じて押し出すに際し、前記金属ビレットとして、コンテナ挿入直前の軸方向及び径方向における温度が、それぞれ、設定温度の±10℃以内となるように、加熱されたビレットを用いる一方、ラム速度、コンテナ温度、ビレット温度の3つの押出条件を変数とした計算式を解くことにより、押出中の製品温度が常に一定温度となるようなビレット温度、コンテナ温度、ラム速度を設定して、押出加工操作を実施することにより、ダイス出側の押出製品温度を一定と為し、押出加工中において、該製品温度が変化しないようにしたのである。
【0013】
要するに、かくの如き本発明に従う金属材料の等温押出方法においては、前記計算式として、次式(1):
Tb=α×V+Tc ・・・(1)
[但し、Tb:ビレット温度(℃)
V:ラム速度(mm/sec)
Tc:コンテナ温度(℃)
α:補正係数]
が採用されるのであり、この計算式を解くことによって、例えば、ビレット温度(Tb)が求められることとなる。そして、このようにして求められたビレット温度(Tb)を用いて加熱制御されたビレットをコンテナに挿入して、押出加工を行うことにより、目的とする押出製品の温度をより一層有利に一定と為し得ることとなるのである。
【0014】
従って、このような本発明手法によれば、複雑な計算を行うための制御システムを構築することなく、簡単な計算により、またはその簡単な計算を行う演算装置によって、押出中の製品温度が常に一定となるようなビレット温度設定値を求めることが出来るのであり、その結果、作業者の技量によることなく、常に高品質の押出製品を得ることが出来るのである。
【0015】
なお、かかる本発明手法においては、等温押出条件となるビレット温度だけを求めることが出来るというわけではなく、ビレット温度、コンテナ温度、及びラム速度のうち、二つの条件を決めた後、等温押出とするための残りの一つの条件を求めることが出来るというものである。従って、何等かの理由で、ビレット温度設定値とラム速度が固定値となる場合には、コンテナ温度を制御して、等温押出を実現することとなるのである。また、ビレット温度とコンテナ温度とが固定値となる場合には、ラム速度を制御して、等温押出を実現するようにするのである。
【0016】
ところで、この本発明に従う金属材料の等温押出方法の好ましい態様の一つによれば、前記(1)式における補正係数:αは、ダイス出側の押出製品温度の実測値に基づいて、演算装置により自動的に調節されることが望ましく、これによって、本発明の目的が、より一層よく達成され得ることとなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0018】
先ず、図1には、本発明に従う金属材料の等温押出方法の一実施形態としての金属押出機のシステムの全体が、概略的に示されている。そこにおいて、金属押出機は、コンテナ10内に収容されたアルミニウム若しくはその合金等の金属ビレット12を、その背後から、油圧シリンダ14によって駆動されるラム16の前進作動にて、ダミーブロック18を介して押圧することにより、ダイス20を通じて、所定の断面形状を有する押出製品(形材)22が、連続的に押し出され得るように構成されている。また、押出材料としてのビレット12は、ビレットヒータ24にて設定温度に加熱され、よく知られているように、コンテナ10内に収容された後、ラム16をコンテナ10内に押し込むことにより、コンテナ10内に収容されたビレット12を、コンテナ10に装着された、製品形状のダイス孔を有するダイス20を通じて、目的とする形状の押出製品22が成形され得るようになっているのである。更に、ここで用いられるビレット12は、コンテナ10挿入直前において、その軸方向及び径方向における温度が設定温度の±10℃以内となるように加熱されてなる、軸方向及び径方向における温度が一定となるように加熱された均熱加熱ビレットである。
【0019】
そして、このような金属押出機においては、押出製品22の温度が押出工程中において常に一定となるように、ビレットヒータ24によるビレット12の加熱温度(Tb:℃)と、コンテナヒータ26によるコンテナ10の加熱温度(Tc:℃)と、油圧シリンダ14によって駆動されるラム16の速度(V:mm/sec)とが、前記(1)式によって決定され、また、それらが適当な制御手段を用いて制御せしめられ得るようになっているのである。なお、ダイス20を支持するプラテン32の出側には、ダイス20から押し出される押出製品22の製品温度を検出するための、放射温度計等の温度計34が設置されており、この温度計34による出側製品温度実測値に基づいて、前記(1)式における補正係数:αの値が、調節され得るようになっている。
【0020】
また、ここでは、等温押出条件となる、ビレット温度(Tb)、ラム速度(V)、及びコンテナ温度(Tc)を決定する前記(1)式の計算を行う演算機能を有する制御装置30が設けられており、この制御装置30によって、それぞれの設定値となるように、ビレット12の加熱温度、ラム16による押出速度(ラム速度)、コンテナ10の温度が制御されて、目的とする等温押出しが実現され得るようになっているのである。なお、このような制御装置30における演算に代えて、前記(1)式の計算を手計算で行い、手動設定して、制御装置30による制御を実行することも可能であり、また、前記(1)式が図2のグラフにて示されるところから、そのようなグラフに基づいて、それぞれの設定値を決定して、制御装置30にて制御せしめるようにすることも可能である。
【0021】
ここにおいて、本発明に従って等温押出条件を決定する上記(1)式を求めるに際しては、先ず、出側製品温度計算式として、例えば、次式によって表される押出し時の熱量移動のモデルに基づく計算式が、好適に採用されることとなるのである。
出側製品の熱量=(ビレットの熱量)
+(ダイス付近の変形による発生熱量)
+(ビレットとコンテナとの間の剪断変形による発生熱量)
−(ビレットからコンテナへの流出熱量)
【0022】
ところで、押出工程中における出側製品温度の変化に対しては、上式における項目のうち、ビレット12とコンテナ10との間の剪断変形による発生熱量と、ビレット12からコンテナ10への流出熱量とが及ぼす影響が最も大きいのである。例えば、ラム速度が比較的速い場合等には、押出工程中に、ビレット12とコンテナ10との間の剪断変形による発生熱量が蓄積されていくことから、押出工程中にビレット温度が増加するようになるのであり、その結果、ダイス孔を通過した後の製品温度も、押出工程中に増加してしまうのである。また、逆に、ラム速度が比較的遅くて、ビレット12とコンテナ10との間の剪断変形による発生熱量が少なく、ビレット12の加熱温度がコンテナ温度よりも高い場合等には、押出工程中に、ビレット12からコンテナ10へ熱量が流出して、押出工程中にビレット温度が低下していき、その結果、ダイス孔を通過した後の製品温度も低下してしまうのである。
【0023】
また、ビレット12とコンテナ10との間の剪断変形による発生熱量に最も影響を及ぼす押出条件は、ラム速度であり、このラム速度が速い程、剪断変形による発生熱量が増加するようになる。更に、ビレット12からコンテナ10への流出熱量に影響を及ぼす押出条件は、ビレット温度とコンテナ温度の温度差であり、コンテナ温度がビレット温度よりも低い程、ビレット12からコンテナ10への流出熱量が増加することとなるのである。
【0024】
従って、ビレット温度とコンテナ温度との温度差が決まっておれば、ビレット12からコンテナ10への流出熱量が決まることとなる。この流出熱量と同等の熱量がビレット12とコンテナ10との間の剪断変形により発生するような、ラム速度にて押出加工を行うこととするならば、両者の熱量がバランスされ、結果として、コンテナ10内のビレット温度は変化することなく、押出加工を行うことが出来ることとなる。その結果、ダイス孔に流入する材料温度が一定となり、従って、ダイス孔を通過した後の製品温度も一定となるのである。そうすると、(ビレットとコンテナとの間の剪断変形による発生熱量)=(ビレットからコンテナへの流出熱量)となるように、ビレット温度等の押出条件を設定すれば、等温押出が可能となるのである。
【0025】
ところで、ビレット12とコンテナ10との間の剪断変形力:Fは、押出し力計算式の一つであるSiebelの計算式を用いれば、以下の(2)式にて表されることとなる。
F=Y・π・D・μ・L ・・・(2)
[但し、Y:ビレットの変形抵抗(kgf/mm2)
D:ビレットの直径(mm)
μ:ビレットとコンテナとの間の摩擦係数
L:ビレット長さ(mm)]
【0026】
従って、ビレット12とコンテナ10との間の剪断変形による発生熱量:Q1 (J)は、下記の(3)式のようになる。
Q1=F・(L/2)/J ・・・(3)
[但し、J:熱の仕事当量(kgf・mm/J)]
【0027】
また、かかる(3)式に対して、前記(2)式にて規定されるF値を代入することにより、下記(4)式を導くことが出来る。
Q1=Y・π・D・μ・L・(L/2)/J ・・・(4)
【0028】
ここにおいて、ビレット12からコンテナ10への流出熱量:Q2 (J)は、ビレット12とコンテナ10との間の熱伝達率をh(J/mm2/sec/℃)とすると、以下の(5)式で表すことが出来る。
Q2=h・(Tb−Tc)・L/V・D・π・(L/2) ・・・(5)
【0029】
そうすると、押出中の押出製品の温度を一定とするには、上記の発熱量:Q1 と流出熱量:Q2 とが等しければよいところから、上記の(4)式と(5)式より、下記の(6)式を導くことが出来るのである。
Y・π・D・μ・L・(L/2)/J=h・(Tb−Tc)・L/V・D・π・(L/2) ・・・(6)
【0030】
そして、この(6)式を整理することにより、押出中の製品温度を一定とするビレット温度は、以下のような(7)式にて求めることが出来ることとなる。
Tb−Tc=Y・μ/(J・h)・V ・・・(7)
【0031】
ここで、上記(7)式において、
Y・μ/(J・h)=α ・・・(8)
とおくと、かかる(7)式は、下記の如き(9)式に書き換えることが出来るのである。
Tb−Tc=α・V ・・・(9)
【0032】
従って、ビレット温度(Tb)とコンテナ温度(Tc)の温度差とラム速度(V)との間には、等温押出条件となる下記の式が成立することとなるのである。
ビレット温度(℃)−コンテナ温度(℃)=α×ラム速度(mm/sec)
[但し、α:係数、ビレット温度≧コンテナ温度]
【0033】
ここにおいて、上式における補正係数:αの値は、押出機の特性、金属材料の材質等によって異なった値をとるものである。この補正係数:αを予め算出するには、押出温度計算モデル等から計算する方法と、FEMシミュレーション等による数値実験から算出する方法、押出実験により算出する方法等がある。また、この補正係数:αの値を、図1に示される如き温度計34を用いて測定して得られる出側製品温度実測値に基づいて調節する方法も、好適に採用されることとなる。
【0034】
ここで、押出実験から予め補正係数:αの値を算出する例を示すならば、例えば、6000系アルミニウム合金の押出加工を8インチビレットにより行い、ビレット温度とコンテナ温度との温度差を3種類ほど設定し、各押出条件において放射温度計や接触温度計等の温度計34にて測定した出側製品温度が一定となるラム速度を見出すのである。その結果、ビレット温度とコンテナ温度との温度差が30℃の場合は、ラム速度が9.6mm/secであり、ビレット温度とコンテナ温度との差が20℃の場合には、ラム速度が6.5mm/secであり、ビレット温度とコンテナ温度との差が10℃の場合には、ラム速度が3.6mm/secであることが求められ、更に、この得られた値より、下記の一次式が導き出され、α=3となるのである。
ビレット温度(℃)−コンテナ温度(℃)=3×ラム速度(mm/sec)
【0035】
また、材料種や押出機の特性によって、補正係数:αの値は、ばらつくこととなるところから、各押出機、各材料種、各合金種ごとに数値を求めておく必要がある。なお、ビレット温度、ラム速度の違いによっても、変形抵抗:Yや摩擦係数:μが変化し、補正係数:αも変化することが懸念されるが、アルミニウム6000系合金の場合、通常の押出し条件におけるビレット温度やラム速度の範囲内では、変形抵抗:Y、摩擦係数:μのばらつきは小さく、補正係数:αを一定値としても、前記の計算結果に大きな相違がないことが判明している。
【0036】
また、補正係数:αを出側製品温度の実測値により自動的に調節する方法においては、はじめに、かかる補正係数:αにデフォルトの値、例えば、α=3を入力しておき、次に、そのαの値に基づいて計算されたビレット温度等の押出条件で実際に押出加工を行い、その時の出側製品温度を、図1における温度計34等にて測定するのである。ラム速度が設定値に達した直後の押出初期の出側製品温度と、ラムが停止する直前の押出終期の出側製品温度との差を、演算装置30等により計算し、その数値に基づいて、補正係数:αの補正を行うのである。そして、出側製品温度の差が許容範囲内に収まった時のαの値を、材質と併せて、演算装置(制御装置30)に格納して、計算に用いるのである。なお、初めての材質を押出場合には、補正係数:αは、デフォルト値を使用するが、2回目以降の押出加工には、前回の押出加工において調整した補正係数:αの値が使用されることとなる。
【0037】
なお、補正係数:αの調整を行う演算式としては、例えば、以下に示される式が採用されることとなるのである。
補正係数αの調整を行う式:
αi=αi−1×β
−A(℃)<ΔT<A(℃)の場合 ・・・ β=1
−A(℃)>ΔT の場合 ・・・ β=0.9
A(℃)<ΔT の場合 ・・・ β=1.1
但し、ΔT:出側製品温度初期温度−出側製品終期温度
A:許容される出側製品温度差で、例えば製品が厳しい品質を要求される場合はA=2℃
β:補正係数αの調整量であり、−A(℃)>ΔTの場合、αが現状よりも小さくなればよく、A(℃)<ΔTの場合はαが現状よりも大きくなればよく、上式のみに限定されるものではない。
i:αを調整するための計算回数。
1回目の押出しはi=1であり、α1=α0×β(α0 =初期値)となる。
2回目の押出しではi=2となり、α2=α1×βとなる。
【0038】
以上のように、本発明にあっては、所定の計算式に基づいて、ダイス出側、具体的には押出機プラテン出側の製品温度が一定となるように、ビレット温度やコンテナ温度、ラム速度を算出し、そしてそのような温度に、ビレット12やコンテナ10を設定して、更にラム速度を設定して、押出加工操作を実施することにより、得られる押出製品の長手方向(押出方向)における耐力等の機械的性質の変動を効果的に抑制せしめ、以て、その品質を、高度に、且つ安定して維持せしめ得ることとなったのであり、そこに、本発明の特徴的な技術的意義が存するのであるが、それら本発明の特徴的な作用・効果は、また、以下の実施例からも明らかなところである。
【0039】
【実施例】
前記した図1に示される如き構成の金属押出機システムを用い、前記(1)式にて示される等温押出計算式にて得られる押出条件を、制御装置30にて実現しつつ、実際に、6000系アルミニウム合金からなるアルミニウムビレット12の押出加工を行い、目的とする中実材22を得た。なお、押出条件は、コンテナ温度:450℃、ビレット温度:462℃、ラム速度:4.0mm/sec、α=3.0であった。そして、かかる押出加工に際しての製品温度の押出時間経過に伴う変化の実測値を、図3に示した。
【0040】
一方、比較例として実施された、同様なアルミニウムビレット12を用いて、同様な押出製品を、同じ押出機を用いて、従来と同様な設定条件の下に押出加工する従来法において、得られた押出製品の製品温度の実測値の押出時間の経過に伴う変化を、図4に示した。なお、押出条件は、コンテナ温度:450℃、ビレット温度:400℃、ラム速度:2.6mm/secであった。
【0041】
そして、それらの図3,4の対比から明らかなように、従来の押出条件を採用した押出加工手法では、押出加工中に、製品温度が25℃も上昇しているのに対して、本発明手法によれば、押出工程中の製品温度の上昇は殆ど無く、略一定に制御され得ていることが、認められるのである。
【0042】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に従う金属材料の等温押出方法によれば、ダイス出側の押出製品温度が、押出工程中において一定の温度に効果的に維持され得て、押出加工中において製品温度が変化しないようにされ、以て、かかる押出製品の長手方向(押出方向)における強度等の機械的性質の変動が有利に抑制され得て、その品質を、高度に、且つ安定して維持することが出来る等という特徴が発揮されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う金属材料の等温押出方法の一実施形態としての金属押出機の全体構成を概略的に示す説明図である。
【図2】本発明において採用する等温押出条件計算式:(1)式を示すグラフである。
【図3】実施例において得られた、本発明方法における製品温度の押出時間に対する変化を示すグラフである。
【図4】実施例において得られた、比較例である従来の押出加工手法を採用した場合における製品温度の押出時間に伴う変化を示すグラフである。
【符号の説明】
10 コンテナ
12 金属ビレット
14 油圧シリンダ
16 ラム
18 ダミーブロック
20 ダイス
22 押出製品
24 ビレットヒータ
26 コンテナヒータ
30 制御装置
32 プラテン
34 温度計
【技術分野】
本発明は、アルミニウム若しくはその合金等の金属材料の押出方法に係り、特に、ビレット温度とコンテナ温度とラム速度とを制御して、ダイスから押し出される押出製品の温度が一定となるようにすることによって、かかる押出製品の品質を、高度に、且つ安定して維持することの出来る等温押出方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、アルミニウム等の金属材料(ビレット)をダイスから押し出して、所望の断面形状とした押出製品が、各種の用途において用いられてきているが、そのような金属材料の押出加工においては、ダイス出側となる押出機プラテン出側の製品温度が、その押出方向たる長手方向において変化して、温度差が生じてしまうことが認められている。例えば、均一に加熱した金属ビレットを用いて押出加工を行なった場合において、その押出が進むにつれて、ダイス出側の製品温度が上昇するようになることが多いのである。これは、押出加工中に、コンテナ内に収容されたビレットに対して押出のための圧力がラムを介して加えられることによって惹起される加工発熱が蓄熱されるためであり、そして、押出工程の後半になる程、その蓄熱量が多くなるところから、プラテン出側(ダイス出側)の製品温度も、押出が進むにつれて上昇するようになる。
【0003】
そこで、従来においては、かかる押出加工のために、コンテナ内に収容されるビレットの加熱に際して、誘導加熱炉等を用いて、ビレットの押出方向における後部側(ラム側)の温度を前部側(ダイス側)の温度よりも予め低く加熱するテーパ加熱手法を採用して、ビレット温度がダイス側からラム側に向かって漸次低下する傾斜温度パターンを、ビレットに付与することにより、押出工程中の製品温度の上昇を抑制するという手段が、広く採用されてきているのである。
【0004】
しかしながら、そのような押出加工中のダイス出側の製品温度の上昇を抑えるためにテーパ加熱したビレットを用いても、ビレットの前部と後部の温度差(テーパ量)は、ビレットの100mm長当たり10℃といったように一律に決められていることが多く、各押出条件に応じたビレット温度分布(テーパ量)が与えられていないために、実際には、押出中に製品温度が上昇する場合や減少する場合が殆どであり、押出工程中の製品温度が常に一定になるような等温押出となることは、稀なことであった。
【0005】
尤も、各製品に応じて最適なテーパ量を設定して、テーパ加熱したビレットを用いることにより、押出製品温度が等温となるようにする手法も考えられるのではあるが、ビレットのテーパ加熱に際して、そのテーパ量を自在に設定することは、技術的に難しく、また、誘導加熱ビレットヒータ等を用いてテーパ量を最適値にしたとしても、加熱直後から、ビレットが搬送されて、コンテナ内に挿入されるまでの経過時間により、ビレット内の熱伝導によって、そのテーパ量が減少してしまうこともあり、このテーパ量による製品温度調節には、大きな困難が内在しているのである。
【0006】
また、かかるテーパ加熱ビレットを使用することによって、ビレット後部の温度が前部の設定温度よりも著しく低くなり、ビレットとコンテナとの間の剪断変形抵抗が増大するようになるところから、同じ設定温度(同じビレット前部加熱温度)の均一加熱のビレットよりも、テーパ加熱ビレットを用いる方が、最大押出力が高くなってしまい、押出機の能力が不足する場合も生じ、そしてそのような場合にあっては、ビレットの加熱温度を高く設定する必要があり、その結果、製品温度が上昇するのを防ぐために、押出速度を減少させなければならず、押出能率が低下する等といった弊害もある。
【0007】
さらに、そのようなテーパ加熱ビレットを用いる場合には、押出工程中のコンテナ内のダイス近辺のビレット温度が一定となり難く、ダイス面に加わる圧力が押出工程中に変化して、ダイスの撓み量が変化し、以てダイス孔の断面積が変化することにより、得られる押出製品の寸法が押出工程中に変化してしまうという問題も内在するものであった。
【0008】
一方、均一に加熱されたビレットを用いた押出加工において、その押出が進むにつれて、製品温度が上昇するという問題を解決する手段として、押出加工中の押出速度を変化させる手法の採用も考えることが出来る。一定速度で押出を行なった場合には、製品温度が上昇するようになるところから、押出が進むにつれて押出速度を下げて、加工発熱量を減少せしめ、以て等温押出加工を実現しようとする考え方である。しかしながら、そのような手法では、押出速度が一定でないところから、押出製品の表面性状、例えば光沢等が変化したり、ダイス面圧が変化して、押出製品の長手方向における寸法誤差が大きくなったりする等の問題があり、実用上、採用することの出来る手法と考えることは出来ない。
【0009】
ところで、特開平10−12843号公報等には、また、押出温度制御の一つの手法が提案されている。具体的には、そこでは、金属押出機において、押出機プラテン出側の製品温度が上限を超えないように、押出力実測値を用いて、理論モデルから導かれた押出温度計算式を解くことにより、ビレット温度が設定されているのである。
【0010】
しかしながら、かかる特開平10−12843号公報等において採用されている計算モデルは複雑なものであって、そこでは、材料の変形抵抗、押出材料から工具への熱伝達率等の計算式に用いられる変数を、各材料、各押出機毎に調べる必要があり、また、押出形材の形状やダイスの形状パラメータ、押出荷重等、必要とされる項目が多く、目的とする等温押出加工を実現するには、非常に多くの基礎実験や制御システム構築のための多額の費用の投下が必要となる、等の問題が内在している。
【0011】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、金属材料の押出加工に際して、押出中のダイス出側の押出製品の温度が、押出工程中において常に一定となるように、押出機における押出条件を簡単に設定することの出来る手法を提供することにあり、また、他の解決課題とするところは、押出製品の品質を、その押出方向である長手方向において、高度に且つ安定して維持することの出来る手法を提供することにある。
【0012】
【解決手段】
そして、そのような課題を解決するために、本発明にあっては、コンテナ内に収容した金属ビレットを、ラムを介しての圧力の作用によって、ダイス出側の押出製品温度が一定となるように、ダイスを通じて押し出すに際し、前記金属ビレットとして、コンテナ挿入直前の軸方向及び径方向における温度が、それぞれ、設定温度の±10℃以内となるように、加熱されたビレットを用いる一方、ラム速度、コンテナ温度、ビレット温度の3つの押出条件を変数とした計算式を解くことにより、押出中の製品温度が常に一定温度となるようなビレット温度、コンテナ温度、ラム速度を設定して、押出加工操作を実施することにより、ダイス出側の押出製品温度を一定と為し、押出加工中において、該製品温度が変化しないようにしたのである。
【0013】
要するに、かくの如き本発明に従う金属材料の等温押出方法においては、前記計算式として、次式(1):
Tb=α×V+Tc ・・・(1)
[但し、Tb:ビレット温度(℃)
V:ラム速度(mm/sec)
Tc:コンテナ温度(℃)
α:補正係数]
が採用されるのであり、この計算式を解くことによって、例えば、ビレット温度(Tb)が求められることとなる。そして、このようにして求められたビレット温度(Tb)を用いて加熱制御されたビレットをコンテナに挿入して、押出加工を行うことにより、目的とする押出製品の温度をより一層有利に一定と為し得ることとなるのである。
【0014】
従って、このような本発明手法によれば、複雑な計算を行うための制御システムを構築することなく、簡単な計算により、またはその簡単な計算を行う演算装置によって、押出中の製品温度が常に一定となるようなビレット温度設定値を求めることが出来るのであり、その結果、作業者の技量によることなく、常に高品質の押出製品を得ることが出来るのである。
【0015】
なお、かかる本発明手法においては、等温押出条件となるビレット温度だけを求めることが出来るというわけではなく、ビレット温度、コンテナ温度、及びラム速度のうち、二つの条件を決めた後、等温押出とするための残りの一つの条件を求めることが出来るというものである。従って、何等かの理由で、ビレット温度設定値とラム速度が固定値となる場合には、コンテナ温度を制御して、等温押出を実現することとなるのである。また、ビレット温度とコンテナ温度とが固定値となる場合には、ラム速度を制御して、等温押出を実現するようにするのである。
【0016】
ところで、この本発明に従う金属材料の等温押出方法の好ましい態様の一つによれば、前記(1)式における補正係数:αは、ダイス出側の押出製品温度の実測値に基づいて、演算装置により自動的に調節されることが望ましく、これによって、本発明の目的が、より一層よく達成され得ることとなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0018】
先ず、図1には、本発明に従う金属材料の等温押出方法の一実施形態としての金属押出機のシステムの全体が、概略的に示されている。そこにおいて、金属押出機は、コンテナ10内に収容されたアルミニウム若しくはその合金等の金属ビレット12を、その背後から、油圧シリンダ14によって駆動されるラム16の前進作動にて、ダミーブロック18を介して押圧することにより、ダイス20を通じて、所定の断面形状を有する押出製品(形材)22が、連続的に押し出され得るように構成されている。また、押出材料としてのビレット12は、ビレットヒータ24にて設定温度に加熱され、よく知られているように、コンテナ10内に収容された後、ラム16をコンテナ10内に押し込むことにより、コンテナ10内に収容されたビレット12を、コンテナ10に装着された、製品形状のダイス孔を有するダイス20を通じて、目的とする形状の押出製品22が成形され得るようになっているのである。更に、ここで用いられるビレット12は、コンテナ10挿入直前において、その軸方向及び径方向における温度が設定温度の±10℃以内となるように加熱されてなる、軸方向及び径方向における温度が一定となるように加熱された均熱加熱ビレットである。
【0019】
そして、このような金属押出機においては、押出製品22の温度が押出工程中において常に一定となるように、ビレットヒータ24によるビレット12の加熱温度(Tb:℃)と、コンテナヒータ26によるコンテナ10の加熱温度(Tc:℃)と、油圧シリンダ14によって駆動されるラム16の速度(V:mm/sec)とが、前記(1)式によって決定され、また、それらが適当な制御手段を用いて制御せしめられ得るようになっているのである。なお、ダイス20を支持するプラテン32の出側には、ダイス20から押し出される押出製品22の製品温度を検出するための、放射温度計等の温度計34が設置されており、この温度計34による出側製品温度実測値に基づいて、前記(1)式における補正係数:αの値が、調節され得るようになっている。
【0020】
また、ここでは、等温押出条件となる、ビレット温度(Tb)、ラム速度(V)、及びコンテナ温度(Tc)を決定する前記(1)式の計算を行う演算機能を有する制御装置30が設けられており、この制御装置30によって、それぞれの設定値となるように、ビレット12の加熱温度、ラム16による押出速度(ラム速度)、コンテナ10の温度が制御されて、目的とする等温押出しが実現され得るようになっているのである。なお、このような制御装置30における演算に代えて、前記(1)式の計算を手計算で行い、手動設定して、制御装置30による制御を実行することも可能であり、また、前記(1)式が図2のグラフにて示されるところから、そのようなグラフに基づいて、それぞれの設定値を決定して、制御装置30にて制御せしめるようにすることも可能である。
【0021】
ここにおいて、本発明に従って等温押出条件を決定する上記(1)式を求めるに際しては、先ず、出側製品温度計算式として、例えば、次式によって表される押出し時の熱量移動のモデルに基づく計算式が、好適に採用されることとなるのである。
出側製品の熱量=(ビレットの熱量)
+(ダイス付近の変形による発生熱量)
+(ビレットとコンテナとの間の剪断変形による発生熱量)
−(ビレットからコンテナへの流出熱量)
【0022】
ところで、押出工程中における出側製品温度の変化に対しては、上式における項目のうち、ビレット12とコンテナ10との間の剪断変形による発生熱量と、ビレット12からコンテナ10への流出熱量とが及ぼす影響が最も大きいのである。例えば、ラム速度が比較的速い場合等には、押出工程中に、ビレット12とコンテナ10との間の剪断変形による発生熱量が蓄積されていくことから、押出工程中にビレット温度が増加するようになるのであり、その結果、ダイス孔を通過した後の製品温度も、押出工程中に増加してしまうのである。また、逆に、ラム速度が比較的遅くて、ビレット12とコンテナ10との間の剪断変形による発生熱量が少なく、ビレット12の加熱温度がコンテナ温度よりも高い場合等には、押出工程中に、ビレット12からコンテナ10へ熱量が流出して、押出工程中にビレット温度が低下していき、その結果、ダイス孔を通過した後の製品温度も低下してしまうのである。
【0023】
また、ビレット12とコンテナ10との間の剪断変形による発生熱量に最も影響を及ぼす押出条件は、ラム速度であり、このラム速度が速い程、剪断変形による発生熱量が増加するようになる。更に、ビレット12からコンテナ10への流出熱量に影響を及ぼす押出条件は、ビレット温度とコンテナ温度の温度差であり、コンテナ温度がビレット温度よりも低い程、ビレット12からコンテナ10への流出熱量が増加することとなるのである。
【0024】
従って、ビレット温度とコンテナ温度との温度差が決まっておれば、ビレット12からコンテナ10への流出熱量が決まることとなる。この流出熱量と同等の熱量がビレット12とコンテナ10との間の剪断変形により発生するような、ラム速度にて押出加工を行うこととするならば、両者の熱量がバランスされ、結果として、コンテナ10内のビレット温度は変化することなく、押出加工を行うことが出来ることとなる。その結果、ダイス孔に流入する材料温度が一定となり、従って、ダイス孔を通過した後の製品温度も一定となるのである。そうすると、(ビレットとコンテナとの間の剪断変形による発生熱量)=(ビレットからコンテナへの流出熱量)となるように、ビレット温度等の押出条件を設定すれば、等温押出が可能となるのである。
【0025】
ところで、ビレット12とコンテナ10との間の剪断変形力:Fは、押出し力計算式の一つであるSiebelの計算式を用いれば、以下の(2)式にて表されることとなる。
F=Y・π・D・μ・L ・・・(2)
[但し、Y:ビレットの変形抵抗(kgf/mm2)
D:ビレットの直径(mm)
μ:ビレットとコンテナとの間の摩擦係数
L:ビレット長さ(mm)]
【0026】
従って、ビレット12とコンテナ10との間の剪断変形による発生熱量:Q1 (J)は、下記の(3)式のようになる。
Q1=F・(L/2)/J ・・・(3)
[但し、J:熱の仕事当量(kgf・mm/J)]
【0027】
また、かかる(3)式に対して、前記(2)式にて規定されるF値を代入することにより、下記(4)式を導くことが出来る。
Q1=Y・π・D・μ・L・(L/2)/J ・・・(4)
【0028】
ここにおいて、ビレット12からコンテナ10への流出熱量:Q2 (J)は、ビレット12とコンテナ10との間の熱伝達率をh(J/mm2/sec/℃)とすると、以下の(5)式で表すことが出来る。
Q2=h・(Tb−Tc)・L/V・D・π・(L/2) ・・・(5)
【0029】
そうすると、押出中の押出製品の温度を一定とするには、上記の発熱量:Q1 と流出熱量:Q2 とが等しければよいところから、上記の(4)式と(5)式より、下記の(6)式を導くことが出来るのである。
Y・π・D・μ・L・(L/2)/J=h・(Tb−Tc)・L/V・D・π・(L/2) ・・・(6)
【0030】
そして、この(6)式を整理することにより、押出中の製品温度を一定とするビレット温度は、以下のような(7)式にて求めることが出来ることとなる。
Tb−Tc=Y・μ/(J・h)・V ・・・(7)
【0031】
ここで、上記(7)式において、
Y・μ/(J・h)=α ・・・(8)
とおくと、かかる(7)式は、下記の如き(9)式に書き換えることが出来るのである。
Tb−Tc=α・V ・・・(9)
【0032】
従って、ビレット温度(Tb)とコンテナ温度(Tc)の温度差とラム速度(V)との間には、等温押出条件となる下記の式が成立することとなるのである。
ビレット温度(℃)−コンテナ温度(℃)=α×ラム速度(mm/sec)
[但し、α:係数、ビレット温度≧コンテナ温度]
【0033】
ここにおいて、上式における補正係数:αの値は、押出機の特性、金属材料の材質等によって異なった値をとるものである。この補正係数:αを予め算出するには、押出温度計算モデル等から計算する方法と、FEMシミュレーション等による数値実験から算出する方法、押出実験により算出する方法等がある。また、この補正係数:αの値を、図1に示される如き温度計34を用いて測定して得られる出側製品温度実測値に基づいて調節する方法も、好適に採用されることとなる。
【0034】
ここで、押出実験から予め補正係数:αの値を算出する例を示すならば、例えば、6000系アルミニウム合金の押出加工を8インチビレットにより行い、ビレット温度とコンテナ温度との温度差を3種類ほど設定し、各押出条件において放射温度計や接触温度計等の温度計34にて測定した出側製品温度が一定となるラム速度を見出すのである。その結果、ビレット温度とコンテナ温度との温度差が30℃の場合は、ラム速度が9.6mm/secであり、ビレット温度とコンテナ温度との差が20℃の場合には、ラム速度が6.5mm/secであり、ビレット温度とコンテナ温度との差が10℃の場合には、ラム速度が3.6mm/secであることが求められ、更に、この得られた値より、下記の一次式が導き出され、α=3となるのである。
ビレット温度(℃)−コンテナ温度(℃)=3×ラム速度(mm/sec)
【0035】
また、材料種や押出機の特性によって、補正係数:αの値は、ばらつくこととなるところから、各押出機、各材料種、各合金種ごとに数値を求めておく必要がある。なお、ビレット温度、ラム速度の違いによっても、変形抵抗:Yや摩擦係数:μが変化し、補正係数:αも変化することが懸念されるが、アルミニウム6000系合金の場合、通常の押出し条件におけるビレット温度やラム速度の範囲内では、変形抵抗:Y、摩擦係数:μのばらつきは小さく、補正係数:αを一定値としても、前記の計算結果に大きな相違がないことが判明している。
【0036】
また、補正係数:αを出側製品温度の実測値により自動的に調節する方法においては、はじめに、かかる補正係数:αにデフォルトの値、例えば、α=3を入力しておき、次に、そのαの値に基づいて計算されたビレット温度等の押出条件で実際に押出加工を行い、その時の出側製品温度を、図1における温度計34等にて測定するのである。ラム速度が設定値に達した直後の押出初期の出側製品温度と、ラムが停止する直前の押出終期の出側製品温度との差を、演算装置30等により計算し、その数値に基づいて、補正係数:αの補正を行うのである。そして、出側製品温度の差が許容範囲内に収まった時のαの値を、材質と併せて、演算装置(制御装置30)に格納して、計算に用いるのである。なお、初めての材質を押出場合には、補正係数:αは、デフォルト値を使用するが、2回目以降の押出加工には、前回の押出加工において調整した補正係数:αの値が使用されることとなる。
【0037】
なお、補正係数:αの調整を行う演算式としては、例えば、以下に示される式が採用されることとなるのである。
補正係数αの調整を行う式:
αi=αi−1×β
−A(℃)<ΔT<A(℃)の場合 ・・・ β=1
−A(℃)>ΔT の場合 ・・・ β=0.9
A(℃)<ΔT の場合 ・・・ β=1.1
但し、ΔT:出側製品温度初期温度−出側製品終期温度
A:許容される出側製品温度差で、例えば製品が厳しい品質を要求される場合はA=2℃
β:補正係数αの調整量であり、−A(℃)>ΔTの場合、αが現状よりも小さくなればよく、A(℃)<ΔTの場合はαが現状よりも大きくなればよく、上式のみに限定されるものではない。
i:αを調整するための計算回数。
1回目の押出しはi=1であり、α1=α0×β(α0 =初期値)となる。
2回目の押出しではi=2となり、α2=α1×βとなる。
【0038】
以上のように、本発明にあっては、所定の計算式に基づいて、ダイス出側、具体的には押出機プラテン出側の製品温度が一定となるように、ビレット温度やコンテナ温度、ラム速度を算出し、そしてそのような温度に、ビレット12やコンテナ10を設定して、更にラム速度を設定して、押出加工操作を実施することにより、得られる押出製品の長手方向(押出方向)における耐力等の機械的性質の変動を効果的に抑制せしめ、以て、その品質を、高度に、且つ安定して維持せしめ得ることとなったのであり、そこに、本発明の特徴的な技術的意義が存するのであるが、それら本発明の特徴的な作用・効果は、また、以下の実施例からも明らかなところである。
【0039】
【実施例】
前記した図1に示される如き構成の金属押出機システムを用い、前記(1)式にて示される等温押出計算式にて得られる押出条件を、制御装置30にて実現しつつ、実際に、6000系アルミニウム合金からなるアルミニウムビレット12の押出加工を行い、目的とする中実材22を得た。なお、押出条件は、コンテナ温度:450℃、ビレット温度:462℃、ラム速度:4.0mm/sec、α=3.0であった。そして、かかる押出加工に際しての製品温度の押出時間経過に伴う変化の実測値を、図3に示した。
【0040】
一方、比較例として実施された、同様なアルミニウムビレット12を用いて、同様な押出製品を、同じ押出機を用いて、従来と同様な設定条件の下に押出加工する従来法において、得られた押出製品の製品温度の実測値の押出時間の経過に伴う変化を、図4に示した。なお、押出条件は、コンテナ温度:450℃、ビレット温度:400℃、ラム速度:2.6mm/secであった。
【0041】
そして、それらの図3,4の対比から明らかなように、従来の押出条件を採用した押出加工手法では、押出加工中に、製品温度が25℃も上昇しているのに対して、本発明手法によれば、押出工程中の製品温度の上昇は殆ど無く、略一定に制御され得ていることが、認められるのである。
【0042】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に従う金属材料の等温押出方法によれば、ダイス出側の押出製品温度が、押出工程中において一定の温度に効果的に維持され得て、押出加工中において製品温度が変化しないようにされ、以て、かかる押出製品の長手方向(押出方向)における強度等の機械的性質の変動が有利に抑制され得て、その品質を、高度に、且つ安定して維持することが出来る等という特徴が発揮されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う金属材料の等温押出方法の一実施形態としての金属押出機の全体構成を概略的に示す説明図である。
【図2】本発明において採用する等温押出条件計算式:(1)式を示すグラフである。
【図3】実施例において得られた、本発明方法における製品温度の押出時間に対する変化を示すグラフである。
【図4】実施例において得られた、比較例である従来の押出加工手法を採用した場合における製品温度の押出時間に伴う変化を示すグラフである。
【符号の説明】
10 コンテナ
12 金属ビレット
14 油圧シリンダ
16 ラム
18 ダミーブロック
20 ダイス
22 押出製品
24 ビレットヒータ
26 コンテナヒータ
30 制御装置
32 プラテン
34 温度計
Claims (2)
- コンテナ内に収容した金属ビレットに対し、ラムを介して圧力を加えることにより、かかるビレットを、ダイス出側の押出製品温度が一定となるようにして、ダイスを通じて押し出す方法にして、
前記金属ビレットとして、コンテナ挿入直前のビレットの軸方向及び径方向における温度が設定温度の±10℃以内に加熱されたビレットを用いる一方、かかるビレットの加熱温度(Tb:℃)とラム速度(V:mm/sec)とコンテナ温度(Tc:℃)とが、次式:
Tb=α×V+Tc(但し、α:補正係数)
を満足するように設定して、押出加工操作を実施することにより、ダイス出側の押出製品温度を一定と為しつつ、押出加工中において該製品温度が変化しないようにしたことを特徴とする金属材料の押出方法。 - 前記式における補正係数:αが、ダイス出側の押出製品温度の実測値に基づいて、演算装置により自動的に調節される請求項1に記載の金属材料の押出方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002187635A JP2004025266A (ja) | 2002-06-27 | 2002-06-27 | 金属材料の押出方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002187635A JP2004025266A (ja) | 2002-06-27 | 2002-06-27 | 金属材料の押出方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004025266A true JP2004025266A (ja) | 2004-01-29 |
Family
ID=31182611
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002187635A Pending JP2004025266A (ja) | 2002-06-27 | 2002-06-27 | 金属材料の押出方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004025266A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005219123A (ja) * | 2004-01-08 | 2005-08-18 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | 金属材料の押出方法 |
JP2009248188A (ja) * | 2008-04-11 | 2009-10-29 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | 金属材料の押出方法 |
CN110976543A (zh) * | 2019-12-16 | 2020-04-10 | 广东和胜工业铝材股份有限公司 | 一种铝合金的段速挤压工艺 |
CN114871287A (zh) * | 2022-05-10 | 2022-08-09 | 燕山大学 | 一种制备铝基纳米材料的装置和方法 |
CN115582450A (zh) * | 2022-10-12 | 2023-01-10 | 盐城工学院 | 一种板材成形柔性压边结构及调控方法 |
-
2002
- 2002-06-27 JP JP2002187635A patent/JP2004025266A/ja active Pending
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005219123A (ja) * | 2004-01-08 | 2005-08-18 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | 金属材料の押出方法 |
JP4642481B2 (ja) * | 2004-01-08 | 2011-03-02 | 株式会社住軽テクノ | 金属材料の押出方法 |
JP2009248188A (ja) * | 2008-04-11 | 2009-10-29 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | 金属材料の押出方法 |
CN110976543A (zh) * | 2019-12-16 | 2020-04-10 | 广东和胜工业铝材股份有限公司 | 一种铝合金的段速挤压工艺 |
CN110976543B (zh) * | 2019-12-16 | 2021-06-08 | 广东和胜工业铝材股份有限公司 | 一种铝合金的段速挤压工艺 |
CN114871287A (zh) * | 2022-05-10 | 2022-08-09 | 燕山大学 | 一种制备铝基纳米材料的装置和方法 |
CN114871287B (zh) * | 2022-05-10 | 2023-03-24 | 燕山大学 | 一种制备铝基纳米材料的装置和方法 |
CN115582450A (zh) * | 2022-10-12 | 2023-01-10 | 盐城工学院 | 一种板材成形柔性压边结构及调控方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2011528995A5 (ja) | ||
Zhou et al. | Computer simulated and experimentally verified isothermal extrusion of 7075 aluminium through continuous ram speed variation | |
Li et al. | A study on hot extrusion of Ti–6Al–4V using simulations and experiments | |
WO1993014895A1 (en) | Apparatus and method for deforming a workpiece | |
CA2159161C (en) | Method for controlling the temperature of a plastic mold | |
JP4871209B2 (ja) | 金属素材の鍛造方法及び鍛造装置 | |
CN107262546A (zh) | 一种铝合金圆铸锭加热筒及加热方法 | |
JP2004025266A (ja) | 金属材料の押出方法 | |
JP3654834B2 (ja) | 金属材料の等温押出方法 | |
JP4642481B2 (ja) | 金属材料の押出方法 | |
CN207170540U (zh) | 一种铝合金圆铸锭加热筒 | |
JP2017006988A (ja) | 押出ダイ予熱装置 | |
JP2007175740A (ja) | 通電接合方法及び装置 | |
Merrygold et al. | Forging of complex geometries with differential heating | |
JP4921411B2 (ja) | 金属材料の押出方法 | |
JP3770169B2 (ja) | 等温押出成形システム | |
JPH10315291A (ja) | 射出成形機におけるノズル・シリンダ温度の昇温方法 | |
LI et al. | Ram speed profile design for isothermal extrusion of AZ31 magnesium alloy by using FEM simulation | |
US6884969B1 (en) | Die oven and method of operating a die oven | |
JP2000117323A (ja) | 押出機における温度制御方法および温度制御装置 | |
EP3137243B1 (en) | Forging dies with internal heating system | |
Robbins et al. | The design and benefits of a thermally stable container | |
CN114985652B (zh) | 一种十字轴等温多向热挤压成形方法及装置 | |
JP4928024B2 (ja) | 押出加工方法 | |
JPH05104131A (ja) | 押出しプレスにおける冷媒流量制御方法 |