JP2004023042A - 半導体装置および半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電気的特性の向上を図り得るとともに、容易に形成可能なキャパシタ素子を備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】トランジスタ3などが形成された半導体基板7の表面を層間絶縁膜6で覆った後、ルテニウムからなるキャパシタ用下部電極11aを形成する。下部電極11aの露出表面を覆うように、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成するSrの酸化物の層15を設ける。Sr酸化物層15の露出表面を覆うように、キャパシタ誘電体膜16の下層誘電体膜16aとなる、ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなる第1層目のSTO膜17aを成膜する。STO膜17aの露出表面を覆うように、上層誘電体膜16bとなる第2層目のSTO膜17bを成膜する。上層誘電体膜16bの露出表面上にルテニウムからなるキャパシタ用上部電極11bを形成し、キャパシタ素子10を形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】トランジスタ3などが形成された半導体基板7の表面を層間絶縁膜6で覆った後、ルテニウムからなるキャパシタ用下部電極11aを形成する。下部電極11aの露出表面を覆うように、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成するSrの酸化物の層15を設ける。Sr酸化物層15の露出表面を覆うように、キャパシタ誘電体膜16の下層誘電体膜16aとなる、ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなる第1層目のSTO膜17aを成膜する。STO膜17aの露出表面を覆うように、上層誘電体膜16bとなる第2層目のSTO膜17bを成膜する。上層誘電体膜16bの露出表面上にルテニウムからなるキャパシタ用上部電極11bを形成し、キャパシタ素子10を形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置のキャパシタ構造に係り、特にキャパシタ用誘電体膜としてBST、STO等のペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物薄膜を使用して、キャパシタの電気的特性および加工性の改良を図った半導体装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子デバイスのダウンサイジング化に伴い、単にデバイス内部の回路構成を工夫するだけでは、所望される電子デバイスの機能を得ることが困難になりつつある。所望される電子デバイスの機能を得るためには、機能性薄膜等のデバイスを構成する材料自体の特性をも利用して回路を形成することが有利になりつつある。電子デバイスの中には、情報の記憶動作を主な機能とするものがある。そのような電子デバイスとしては、例えば複数個のトランジスタ同士を組み合わせたSRAM(Static Random Access read write Memory)またはEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、あるいは複数個のトランジスタとキャパシタとを組み合わせたDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの各種集積回路が挙げられる。これらの集積回路の機能を、例えばMOSトランジスタおよびMOSキャパシタの各素子を組み合わせた回路構成のみで満足させることは、それら各素子のセル面積が縮小される中で非常に困難になりつつある。
【0003】
特に、キャパシタ素子のS/N比を低下させないためには、たとえ集積回路の最小加工寸法が小さくなっても、一定のキャパシタ容量を確保しなければならない。このため、キャパシタ素子用の誘電体膜として、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、あるいはシリコン酸化膜の積層膜(NO膜)などよりも高い比誘電率を発現する機能性薄膜の採用が検討されている。このような機能性薄膜は、例えばTa2O5,Ba−Sr−Ti−O(BST),Sr−Ti−O(STO),Pb−Zr−Ti−O(PZT),またはSr−Bi−Ta−O(SBT)等の材料によって形成されている。また、キャパシタ形成材料として機能性薄膜を採用することに伴って、FeRAM(Ferroelectric Random Access read write Memory)等の新しい機能を有するデバイスが提案され始めている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
とりわけ、BaxSr1−xTiO3 (BST)や、SrTiO3 (STO)などのペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物薄膜を有する金属酸化物は、数百以上の比誘電率を実現できる。このため、BSTやSTOなどをキャパシタ誘電体膜として採用することは、極めて大きな利点となる。ところが、BSTやSTOなどは複数の金属元素を含む金属酸化物であるために、それらの膜を例えばCVD法により成膜する場合、組成成分の制御の面で困難を伴う。
【0005】
また、BST膜やSTO膜を、例えば熱CVD法により成膜する場合、BaやSrの原料であるDPM [=C11H19O2]は、単体では極めて分解し難い。一方、Tiの原料は単体でも容易に成膜反応が起こる。しかも、一旦Tiを主成分とする膜が成膜され始めるとSrの原料の吸着が促進され、BST膜やSTO膜の成膜が始まる性質を有している。これにより、熱CVD法により形成されたBST膜やSTO膜と、それらの下部に存在する貴金属からなる電極との界面にTi層が偏析することになる。
【0006】
複数の価数を有する遷移元素のチタンは、界面に欠陥を生成し易い。このため、貴金属との界面にTi層が存在すると、十分なショットキー障壁(ショットキーバリア)を形成することが困難になり、リーク電流の増大をもたらすという問題があった。特に、下部電極側から電子注入を行う際のリーク電流の増大を引き起こすという問題があった。
【0007】
さらに、半導体装置の微細化に伴い、トランジスタ形成後の熱による負荷(サーマルバジェット)に対する制限が厳しくなる傾向にある。BSTやSTOの高い比誘電率は、ペロブスカイト結晶相が形成された場合にのみ実現される。ところが、BSTやSTOのペロブスカイト結晶相を形成するために、非晶質膜から結晶化させるのに要する熱処理温度は、STOで約575℃、BSTで約620℃と高い。これらのような高温は、BSTやSTOの薄膜を有するキャパシタを半導体装置に搭載するにあたり、大きな障害となる。
【0008】
本発明は、以上説明したような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電子デバイスのダウンサイジング化に伴う電気的特性の劣化を抑制して、電気的特性の向上を図り得るとともに、容易に形成可能なキャパシタ素子を備えた半導体装置を提供することにある。それとともに、そのような半導体装置を効率よく容易に製造できる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明に係る半導体装置は、基板上に選択的に設けられたキャパシタ用下部電極と、前記基板および前記下部電極の表面を覆うように設けられ、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物の単層構造ないしは複数層の積層構造からなるキャパシタ誘電体膜と、このキャパシタ誘電体膜の表面上に設けられたキャパシタ用上部電極と、を具備してなり、前記キャパシタ誘電体膜は、その前記下部電極との界面が前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層により形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
この半導体装置においては、キャパシタ誘電体膜が、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物の単層構造ないしは複数層の積層構造からなる、高誘電体膜として成膜されている。また、キャパシタ誘電体膜は、そのキャパシタ用下部電極との界面が、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層により形成されている。これにより、キャパシタ誘電体膜は、その下地となるキャパシタ用下部電極との界面において、チタンやジルコニウムなどのペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素の偏析が殆どない状態に成膜されている。したがって、キャパシタ誘電体膜中には、適正な高さのショットキー障壁(ショットキーバリア)が形成されており、このキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子に流れるリーク電流は抑制もしくは低減されている。このように、本発明に係る半導体装置が具備するキャパシタ素子は、その電気的特性が向上されている。
【0011】
また、キャパシタ誘電体膜は、先ず、そのキャパシタ用下部電極との界面がペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層により形成される。この後、その酸化物層を下地として、キャパシタ誘電体膜の残りの部分が成膜される。これにより、キャパシタ誘電体膜は、その成膜が容易である。ひいては、このキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子は、その形成が容易であり、半導体装置内に容易に組み込むことができる。
【0012】
また、本発明に係る半導体装置を実施するにあたり、その構成などの一部を以下に述べるような設定としても構わない。
【0013】
前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素は、Ba,Sr,Pb,Laのうちの少なくとも1種類の金属元素であるとともに、前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素は、Ti,Zr,Nb,Ta,Snのうちの少なくとも1種類の金属元素である。
【0014】
前記キャパシタ用下部電極および前記キャパシタ用上部電極は、それぞれVII−A族およびVIII族のうちの少なくとも1種類の金属元素を主たる成分として含む材料によって形成されている。
【0015】
前記キャパシタ用下部電極および前記キャパシタ用上部電極は、それぞれRu,Pt,Ir,Pd,Os,Re,Rhのうちの少なくとも1種類の金属元素を主たる成分として含む材料によって形成されている。
【0016】
本発明に係る半導体装置を実施するにあたり、その構成などの一部を以上述べたような各種設定とすることにより、キャパシタ誘電体膜や下部および上部のキャパシタ用電極の電気的特性を容易に向上させることができる。したがって、キャパシタ素子の電荷蓄積能力、ひいては半導体装置の電気的特性を容易に向上させることができる。
【0017】
また、前記課題を解決するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板上にキャパシタ素子の下部電極を設ける工程と、前記基板および前記下部電極の露出表面を覆うように、かつ、前記下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜を設ける工程と、前記下部電極との間に前記酸化物の層および前記キャパシタ誘電体膜を挟むように、前記キャパシタ素子の上部電極を前記キャパシタ誘電体膜の露出表面上に設ける工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0018】
この半導体装置の製造方法においては、基板およびキャパシタ素子の下部電極の露出表面を覆うように、かつ、下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜を設ける。これにより、キャパシタ誘電体膜を、高誘電体膜として成膜できるとともに、その下地となるキャパシタ素子の下部電極との界面において、チタンやジルコニウムなどのペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素の偏析が殆どない状態で成膜できる。したがって、キャパシタ誘電体膜中に適正な高さのショットキー障壁(ショットキーバリア)を形成して、このキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子に流れるリーク電流を抑制もしくは低減できる。このように、本発明に係る半導体装置の製造方法は、キャパシタ素子の電気的特性を向上できる。
【0019】
また、キャパシタ誘電体膜を成膜する際に、先ず、そのキャパシタ素子の下部電極との界面をペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層として形成する。この後、その酸化物層を下地として、キャパシタ誘電体膜の残りの部分を成膜する。これにより、キャパシタ誘電体膜を容易に、かつ、効率よく成膜できる。ひいては、このキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子を容易に、かつ、効率よく形成して、半導体装置内に容易に組み込むことができる。
【0020】
また、前記課題を解決するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板上にキャパシタ素子の下部電極を設ける工程と、前記基板および前記下部電極の露出表面を覆うように、かつ、前記下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、該ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層とを、それぞれ少なくとも1層ずつ交互に積層して、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜の下層誘電体膜を設ける工程と、この下層誘電体膜の露出表面を覆うように、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜の上層誘電体膜を設ける工程と、前記下部電極との間に前記下層誘電体膜および前記上層誘電体膜の2層構造からなる前記キャパシタ誘電体膜を挟むように、前記上層誘電体膜の露出表面上に前記キャパシタ素子の上部電極を設ける工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0021】
この半導体装置の製造方法においては、キャパシタ誘電体膜を下層誘電体膜および上層誘電体膜の2層構造に形成する。そして、基板およびキャパシタ素子の下部電極の露出表面を覆うように、かつ、下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなる下層誘電体膜を設ける。これにより、下層誘電体膜を、その下地となるキャパシタ素子の下部電極との界面において、チタンやジルコニウムなどのペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素の偏析が殆どない状態で成膜できる。したがって、下層誘電体膜中、ひいてはキャパシタ誘電体膜全体中に、適正な高さのショットキー障壁(ショットキーバリア)を形成して、キャパシタ素子に流れるリーク電流を抑制もしくは低減できる。
【0022】
また、下層誘電体膜の露出表面を覆うように、同じく組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜の上層誘電体膜を設ける。これにより、キャパシタ誘電体膜を、その下層誘電体膜および上層誘電体膜ともにペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなる高誘電体膜として成膜する。このように、本発明に係る半導体装置の製造方法は、キャパシタ素子の電気的特性を向上できる。
【0023】
また、下層誘電体膜を、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層とを、それぞれ少なくとも1層ずつ交互に積層して成膜する。これにより、例えば下層誘電体膜をCVD法により成膜する場合、成膜中の組成成分を容易に制御できるので、下層誘電体膜を容易に、かつ、効率よく成膜できる。さらに、下層誘電体膜をシード層として、上層誘電体膜を容易に、かつ、効率よく成膜することができる。したがって、キャパシタ誘電体膜全体を容易に、かつ、効率よく成膜できる。ひいては、このキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子を容易に、かつ、効率よく形成して、半導体装置内に容易に組み込むことができる。
【0024】
さらに、前記課題を解決するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板上にキャパシタ素子の下部電極を設ける工程と、前記基板および前記下部電極の露出表面を覆うように、かつ、前記下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、該ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層とを、それぞれ少なくとも1層ずつ交互に積層して、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜を設ける工程と、前記下部電極との間に前記キャパシタ誘電体膜を挟むように、前記キャパシタ誘電体膜の露出表面上に前記キャパシタ素子の上部電極を設ける工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0025】
この半導体装置の製造方法においては、基板およびキャパシタ素子の下部電極の露出表面を覆うように、かつ、下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜を設ける。これにより、キャパシタ誘電体膜を、高誘電体膜として成膜できるとともに、その下地となるキャパシタ素子の下部電極との界面において、チタンやジルコニウムなどのペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素の偏析が殆どない状態で成膜できる。したがって、キャパシタ誘電体膜中に、適正な高さのショットキー障壁(ショットキーバリア)を形成して、キャパシタ素子に流れるリーク電流を抑制もしくは低減できる。このように、本発明に係る半導体装置の製造方法は、キャパシタ素子の電気的特性を向上できる。
【0026】
また、キャパシタ誘電体膜を、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層とを交互に積層して成膜する。これにより、キャパシタ誘電体膜全体を略同じ工程の繰り返しにより成膜可能である。それとともに、例えばキャパシタ誘電体膜をCVD法により成膜する場合、成膜中の組成成分を容易に制御できる。したがって、キャパシタ誘電体膜の成膜プロセスの簡素化および短時間化を図って、キャパシタ誘電体膜を容易に、かつ、効率よく成膜できる。ひいては、このキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子の形成プロセスの簡素化および短時間化を図って、キャパシタ素子を容易に、かつ、効率よく形成して、半導体装置内に容易に組み込むことができる。
【0027】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法を実施するにあたり、その工程などの一部を以下に述べるような設定としても構わない。
【0028】
前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層の原料、および前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層の原料として、それら各酸化物が堆積する際に互いに相互作用を及ぼし合う原料を採用する。
【0029】
前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層の原料、および前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層の原料として、ともにDPM錯体を採用する。
【0030】
前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素として、II−A族、III−A族、およびIV−B族のうちの少なくとも1種類の金属元素を含ませ、かつ、前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素として、IV−A族、V−A族、およびIV−B族のうちの少なくとも1種類の金属元素を含ませる。
【0031】
前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素として、Ba,Sr,Pb,Laのうちの少なくとも1種類の金属元素を含ませ、かつ、前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素として、Ti,Zr,Nb,Ta,Snのうちの少なくとも1種類の金属元素を含ませる。
【0032】
前記キャパシタ素子の下部電極および上部電極を、それぞれVII−A族およびVIII族のうちの少なくとも1種類の金属元素を主たる成分として含む材料によって形成する。
【0033】
前記キャパシタ素子の下部電極および上部電極を、それぞれRu,Pt,Ir,Pd,Os,Re,Rhのうちの少なくとも1種類の金属元素を主たる成分として含む材料によって形成する。
【0034】
本発明に係る半導体装置の製造方法を実施するにあたり、その工程などの一部を以上述べたような各種設定とすることにより、キャパシタ誘電体膜や下部および上部のキャパシタ用電極の電気的性能を容易に向上させることができる。したがって、キャパシタ素子の電荷蓄積能力、ひいては半導体装置の電気的性能を容易に向上させることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
【0036】
(第1の実施の形態)
先ず、本発明に係る第1実施形態を図1〜図5を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置のキャパシタ素子付近の構成および製造工程を示す断面図である。図2は、第1実施形態に係るキャパシタ素子の下部電極上にSrの酸化物の層が形成される仕組みを模式的に示す工程断面図である。図3は、第1実施形態および従来技術に係るキャパシタ素子に流れるリーク電流の印加電圧依存性をそれぞれグラフにして示す図である。図4は、第1実施形態および従来技術に係るキャパシタ誘電体膜中のSr/Ti比の深度依存性をそれぞれグラフにして示す図である。図5は、第1実施形態および従来技術に係るキャパシタ誘電体膜中のエネルギーバンド構造を模式的に示す図である。
【0037】
本実施形態では、キャパシタ素子のキャパシタ誘電体膜を、STO膜を用いて第1層および第2層の2段階に成膜する。そして、第2層目のSTO膜のシード層となる第1層目のSTO膜を成膜するのに先立って、この第1層目のSTO膜とその下地となるキャパシタ素子の下部電極との界面に、予めストロンチウム(Sr)を主成分とする酸化物の層を形成しておくことを特徴とするものである。以下、本実施形態の半導体装置について詳細に説明する。
【0038】
先ず、図1(a)に示すように、素子分離領域1などが形成された基板本体2上に、トランジスタ3、ビット線4、およびコンタクトプラグ5などを形成した後、これらを層間絶縁膜6で被覆する。以下の説明において、前記各素子が設けられているとともに、後述するキャパシタ素子10などが設けられる基板本体2を、まとめて半導体基板7と称することとする。
【0039】
次に、層間絶縁膜6上に電極支持層となるシリコン窒化膜8をLPCVD法により約80nm形成する。続けて、シリコン窒化膜8上にシリコン酸化膜9をプラズマCVD法により約500nm形成する。この後、コンタクトプラグ5の上方のシリコン酸化膜9およびシリコン窒化膜8を、フォトリソグラフィ技術およびRIE技術によりエッチングして、後述するキャパシタ用下部電極11aの鋳型となるキャビティ12を形成する。これにより、コンタクトプラグ5の上面(表面)が露出する。
【0040】
次に、キャビティ12内にバリアメタルとしての窒化チタンアルミニウム膜13をスパッタリング法により約20nm形成する。この際、窒化チタンアルミニウム膜13は、その下面(底面)がコンタクトプラグ5の上面に接触するように形成される。これにより、コンタクトプラグ5は、その上面を窒化チタンアルミニウム膜13の下面により覆われる。続けて、窒化チタンアルミニウム膜13の内側に、ルテニウム(Ru)−CVD法のシードとして用いるルテニウム膜をスパッタリング法により約10nm形成する。続けて、このルテニウム膜の内側に、Ru(EtCp)2 [=Ru(C7H9)2]を原料として用いる熱CVD法により、ルテニウム膜をさらに約25nm形成し、合計約35nmのルテニウム(Ru)膜14を形成する。続けて、半導体基板7の全面に図示しないフォトレジストを塗布した後、CMP法によりエッチバックを行い、窒化チタンアルミニウム膜13およびルテニウム膜14をキャビティ12の内部にのみ残存させる。この後、アッシャーにより、フォトレジストを除去する。これにより、キャパシタ素子10が備える2つのキャパシタ用電極11のうちの一方の電極である、ルテニウムからなるキャパシタ用下部電極11aが、半導体基板7上に選択的に形成される。
【0041】
この際、キャパシタ用下部電極11aは、その外側から窒化チタンアルミニウム膜13により包まれた状態となっている。すなわち、キャパシタ用下部電極11aは、その外側表面が窒化チタンアルミニウム膜13に接触して、露出しないように覆われた状態となっている。また、図1(a)に示す電極形状は、一般に凹形状と称される。このような凹型のキャパシタ用下部電極11aを有するキャパシタ素子10の構造は、一般にConcave(凹型)構造と称される。
【0042】
次に、後述するキャパシタ誘電体膜16を成膜するのに先立って、下部電極11aの露出表面を覆うように、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする、酸化物の層15を設ける。この金属酸化物の層15は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素として、II−A族、III−A族、およびIV−B族のうちの少なくとも1種類の金属元素を含む原料を用いて形成される。具体的には、金属酸化物の層15は、Ba,Sr,Pb,Laのうちの少なくとも1種類を含む原料を用いて形成されることが好ましい。本実施形態においては、ストロンチウム(Sr)を含む原料を用いて、Srを主成分とする酸化物の層15を形成する。
【0043】
また、本実施形態においては、このSr酸化物層15を、キャパシタ誘電体膜16を成膜するための図示しない成膜装置を用いて形成する。具体的には、図示しないホットウォール型バッチ式CVD装置を用いて金属酸化物の層15を形成する。本装置は、酸化剤として高純度酸素およびH2Oガスを供給可能である。以下、Sr酸化物層15の形成方法について詳述する。
【0044】
先ず、下部電極(ルテニウム電極)11aが形成された半導体基板7を、炉内温度が予め300℃に設定されている図示しない反応炉(反応容器)内に導入する。半導体基板7が導入された反応炉の内部を真空排気した後、アルゴン(Ar)ガスで真空パージする。この状態で炉内温度が約300℃付近で安定するまで待つ。
【0045】
容器内温度が設定温度である300℃の±20℃程度まで安定したことを確認した後、反応容器内圧力を約5Torrに保持しつつ、反応容器内にH2Oガスを約45秒間導入する。導入されたH2Oガスは、図2(a)に示すように、半導体基板7の露出表面に吸着する。この後、反応容器内の雰囲気を排気して、気相中のH2Oガスの分圧を十分に低下させる。
【0046】
次に、反応容器内圧力を約5Torrに保持しつつ、Sr酸化物層15の原料であるガス状のSr(DPM)2 [=Sr(C11H19O2)2]を反応容器内に約30秒間導入する。通常、気相中に例えばO2またはH2Oなどの酸化剤が存在しない場合には、約300℃ではSrの原料ガスの分解反応は起こらない。ところが、半導体基板7の露出表面にはH2Oが吸着しているので、図2(b)に示すように、半導体基板7の露出表面に到達したSrの原料ガスは、半導体基板7の露出表面に吸着しているH2Oとの間で加水分解反応を起こす。これにより、図2(c)に示すように、下部電極11aが形成された半導体基板7の露出表面上にSrを主成分とする酸化物の層(薄膜)15が1層形成される。このSr酸化物層15は、後にキャパシタ誘電体膜16の一部となるものである。すなわち、Sr酸化物層15の組成および電気的性質を鑑みれば、Sr酸化物層15をキャパシタ誘電体膜16の一部とみなしても、本発明の趣旨を何ら逸脱もしくは妨げるものではない。
【0047】
本発明者らが行った実験によれば、Srの原料ガスの分子は巨大なので、前述したようにH2Oガスの供給と、Srの原料ガスの供給とをそれぞれ1回ずつ行っただけでは、半導体基板7の露出表面をSr酸化物層15で完全に被覆できないことが判明した。このため、H2Oガスの供給と、Srの原料ガスの供給とをそれぞれ3回ずつ交互に繰り返した。これにより、下部電極11aの露出表面を含めて、半導体基板7の露出表面を1層のSr酸化物層15で略完全に被覆することができた。なお、図2(a)〜(c)においては、半導体基板7の表面にSr酸化物層15が形成される仕組みを理解し易くするために、H2O分子やSr分子を模式的に描いた。
【0048】
また、この状態において、下部電極11aは、その外側面および外側下面(底面)が窒化チタンアルミニウム膜13に接触して覆われている。この下部電極11aの窒化チタンアルミニウム膜13に接触している部分を、例えば下部電極11aの外側表面とする。それとともに、下部電極11aは、その内側面および内側下面など、前記外側表面以外の部分がSr酸化物層15に接触して覆われている。この下部電極11aのSr酸化物層15に接触している部分を、例えば下部電極11aの内側表面とする。このように、下部電極11aは、その外側表面を窒化チタンアルミニウム膜13により覆われるとともに、その内側表面をSr酸化物層15により覆われる。これにより、下部電極11aは、その表面全体が外部に露出されない。
【0049】
次に、キャパシタ誘電体膜16を形成する。本実施形態においては、キャパシタ誘電体膜16を、キャパシタ用下部電極11aと接触する下層誘電体膜16a、および後述するキャパシタ用電極11の他方の電極であるキャパシタ用上部電極11bと接触する上層誘電体膜16bの2層構造に形成する。また、下層誘電体膜16aおよび上層誘電体膜16bを、ともにペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物の膜を用いて形成する。
【0050】
ここで、本実施形態のキャパシタ誘電体膜16を形成するペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物について簡潔に説明する。
【0051】
ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物は、一般に、その組成式をABO3−d:0≦d≦1で表される。この組成式中Aは、ペロブスカイト型結晶構造中のいわゆるAサイトを形成する所定の金属元素を表す。このAサイトを形成する金属元素は、通常、II−A族、III−A族、およびIV−B族のうちのいずれかの金属元素である。同様に、前記組成式中Bは、ペロブスカイト型結晶構造中のいわゆるBサイトを形成する所定の金属元素を表す。このBサイトを形成する金属元素は、通常、IV−A族、V−A族、およびIV−B族のうちのいずれかの金属元素である。
【0052】
したがって、キャパシタ誘電体膜16を形成する金属酸化物の膜は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成するII−A族、III−A族、およびIV−B族のうちの金属元素を少なくとも1種類含んでいるとともに、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成するIV−A族、V−A族、およびIV−B族のうちの金属元素を少なくとも1種類含んでいる原料により形成される。具体的には、この金属酸化物の膜は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素としてBa,Sr,Pb,Laのうちの少なくとも1種類の金属元素を含むとともに、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素としてTi,Zr,Nb,Ta,Snのうちの少なくとも1種類の金属元素を含む原料を用いて形成されることが好ましい。すなわち、キャパシタ誘電体膜16は、その組成式がABO3−d:0≦d≦1, A:Ba,Sr,Pb,La ; B:Ti,Zr,Nb,Ta,Snで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物の膜により形成されることが好ましい。
【0053】
本実施形態においては、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素としてSrを含むとともに、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素としてTiを含む原料を用いて、下層誘電体膜16aおよび上層誘電体膜16bを形成する。以下、下層誘電体膜16aおよび上層誘電体膜16bの成膜方法について詳述する。
【0054】
本実施形態においては、下層誘電体膜16aおよび上層誘電体膜16bを、ともにペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物膜であるSr−Ti−O膜 [=STO膜]を用いてCVD法により成膜する。この際、下層誘電体膜16aは、上層誘電体膜16bを成膜する際のシード層となる。また、STO膜の形成材料であるSrおよびTiを含むCVD法の原料としては、Sr(DPM)2 [=Sr(C11H19O2)2]およびTi(DPM)2(i−OC3H7)2のそれぞれのTHF [=C4H8O]溶液を用いる。各THF溶液の濃度は、それぞれ約0.5モル/リットルである。成膜装置としては、前述したホットウォール型バッチ式CVD装置を用いる。
【0055】
先ず、上面(表面)がSr酸化物層(薄膜)15で被覆された半導体基板7上に、第1層目のキャパシタ誘電体膜としての下層誘電体膜16aを成膜する。
【0056】
上面がSr酸化物層15で被覆された半導体基板7を、Sr酸化物層15を形成した反応容器内において約380℃で加熱し、下部電極11aを含めた半導体基板7上に、下層誘電体膜16aとなる第1層目のSTO膜17aを成膜する。この際、膜厚が約3nm、Sr/Ti比が約1.05のSTO膜17aが成膜されるように成膜条件を設定する。続けて、同じ反応容器内で、真空を破ることなく連続的にSTO膜17aに結晶化熱処理(アニール処理)を施す。この際、半導体基板7の周りの雰囲気を窒素で充満させるとともに、気圧を約133Paに設定する。この雰囲気下において、STO膜17aが形成された半導体基板7を約10分間、約575℃で加熱する。これにより、非晶質の状態であったSTO膜17a中にペロブスカイト型結晶構造が生成される。すなわち、ペロブスカイト型結晶構造を有するSTO膜17aの結晶膜からなる下層誘電体膜16aが、Sr酸化物層(薄膜)15の露出表面を覆うように、この露出表面上に成膜される。
【0057】
次に、下層誘電体膜16a上に第2層目のキャパシタ誘電体膜としての上層誘電体膜16bを成膜する。すなわち、第1層目のSTO膜17a上に積層するように、第2層目のSTO膜17bを連続して形成する。
【0058】
反応容器内の温度を、真空を保持した状態で約440℃まで昇温させ、成膜温度を約440℃に設定して、上層誘電体膜16bとなる第2層目のSTO膜17bを成膜する。この際、STO膜17bを、その膜厚が約17nmとなるように成膜する。また、第1層目のSTO膜17aは、第2層目のSTO膜17bの結晶成長のシード層として作用する。このため、第2層目のSTO膜17bは、約440℃という比較的低い成膜温度にも拘らず、成膜されつつ結晶化する。すなわち、STO膜17bは、いわゆるin−situ結晶化する。これにより、ペロブスカイト型結晶構造を有するSTO膜17bの結晶膜からなる上層誘電体膜16bが、下層誘電体膜16aの露出表面を覆うように、この露出表面上に成膜される。
【0059】
以上説明した工程により、図1(b)に示すように、半導体基板7上に選択的に設けられ、表面がSr酸化物層15で覆われたキャパシタ用下部電極11aの上に、2層のSTO膜17a,17bの結晶膜が成膜される。結晶化したSTO膜17a,17bは、一般的なキャパシタ誘電体膜の形成材料であるシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、あるいはシリコン酸化膜の積層膜(NO膜)などよりも高い比誘電率を発現することができる。したがって、結晶化した2層のSTO膜17a,17bにより形成されたキャパシタ誘電体膜16は、高誘電体膜として形成されている。
【0060】
次に、キャパシタ用電極11の他方の電極であるキャパシタ用上部電極11bを、上層誘電体膜16bの露出表面を覆うように設ける。図1(b)に示すように、下部電極11aとの間にキャパシタ誘電体膜16を挟むように、上層誘電体膜16bの露出表面上に上部電極11bを形成する。本実施形態においては、上部電極11bを、下部電極11aと同様にルテニウム膜を用いて形成する。これにより、所望の構造および電気的特性を有するキャパシタ素子10を得ることができる。
【0061】
続けて、フォトリソグラフィ技術およびRIE技術により、キャパシタ用上部電極11b(ルテニウム膜)、ならびに下層誘電体膜16a(STO膜17a)および上層誘電体膜16b(STO膜17b)からなる積層膜を加工して、図示しないメモリセル領域を形成する。さらに続けて、図示しない他の絶縁膜および配線などを形成することにより、所望の半導体装置を得る。ただし、それら各工程の詳細な説明は省略する。
【0062】
図3に、本実施形態のキャパシタ素子(STO薄膜キャパシタ)10の約85℃におけるリーク電流の印加電圧依存性を実線グラフで示す。併せて、図3に、Srの酸化物層の形成は行わずに、第1層目および第2層目のSTO膜を本実施形態と同様に成膜した従来技術に係るSTO薄膜キャパシタの約85℃におけるリーク電流の印加電圧依存性を破線グラフで示す。
【0063】
図3中に記載したように、それら両キャパシタの誘電特性値(Teq)は略同じである。ところが、それら両キャパシタのリーク電流特性は、図3中の実線グラフおよび破線グラフの形状から分かるように、互いに異なっている。特に、キャパシタ用下部電極側からの電子注入になる、キャパシタ用上部電極に正バイアスを印加した際のリーク電流特性が、大きく異なっている。従来技術のSTO薄膜キャパシタに比べると、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10は正バイアスを印加した際のリーク電流が低減されており、その差は約85℃で測定した際に顕著である。また、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10と従来技術のSTO薄膜キャパシタとでは、リーク電流の立ち上がり方も異なっていることが分かる。従来技術のSTO薄膜キャパシタに比べると、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10は正バイアスを印加した際のリーク電流が緩やかに立ち上がる。
【0064】
また、図4に、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10のSTO膜17a,17b中でのSr/Ti比の分布(深度依存性)を、オージェ電子分光法により測定した結果を実線グラフで示す。併せて、図4に、従来技術のSTO薄膜キャパシタのSTO膜中でのSr/Ti比の分布(深度依存性)を、オージェ電子分光法により測定した結果を破線グラフで示す。
【0065】
従来技術のSTO薄膜キャパシタでは、図4中の破線グラフの形状から分かるように、STO膜とその下地となるキャパシタ用下部電極との界面において、STO膜中にSrに比べて極めて多量のTiが含まれていることが分かる。すなわち、従来技術のSTO薄膜キャパシタでは、STO膜と下部電極(ルテニウム電極)との界面において、Tiの偏析が生じていることが分かる。これに対して、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10では、図4中の実線グラフの形状から分かるように、第1層目のSTO膜17aとその下地となるSr酸化物層15により覆われたキャパシタ用下部電極11aとの界面において、第1層目のSTO膜17a中に略同量のSrおよびTiが含まれていることが分かる。すなわち、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10では、第1層目のSTO膜17aと下部電極(ルテニウム電極)11aとの界面において、Tiの偏析が略完全に抑制されていることが分かる。
【0066】
下部電極(ルテニウム電極)の界面におけるTiの偏析は、キャパシタ用下部電極との界面におけるSTO膜中の酸素欠損濃度を高める。したがって、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10のSTO膜17a,17b中のエネルギーバンド構造、および従来技術のSTO薄膜キャパシタのSTO膜中のエネルギーバンド構造は、それぞれ図5(a)および(b)に示すようになっていると推定される。
【0067】
従来技術により2段階成膜されたSTO膜では、図5(b)に示すように、そのキャパシタ用下部電極との界面でバンドが急激に湾曲する。これにより、酸素欠損を介したトンネル伝導が生じ、STO薄膜キャパシタ中のリーク電流の急激な立ち上がりを惹起する。これに対して、本実施形態により2段階成膜されたSTO膜17a,17bでは、図5(a)に示すように、第1層目のSTO膜17aと下部電極(ルテニウム電極)11aとの界面において、STO膜17a中に良好なショットキー障壁(ショットキーバリア)が形成される。同様に、第2層目のSTO膜17bと上部電極(ルテニウム電極)11bとの界面において、STO膜17b中に良好なショットキー障壁が形成される。したがって、従来技術のSTO膜に比べると、本実施形態のSTO膜17a,17bはそれぞれの上下両界面におけるバンドの湾曲が緩やかである。この結果、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10は、従来技術のSTO薄膜キャパシタに比べてリーク電流が抑制もしくは低減されている。
【0068】
以上説明したように、この第1実施形態においては、半導体装置が具備するキャパシタ素子10のキャパシタ誘電体膜16が、結晶化された2層のSTO膜17a,17bを用いて形成されている。したがって、キャパシタ誘電体膜16は、高い比誘電率を発現できる高誘電体膜として形成されているので、キャパシタ素子10はその電荷蓄積能力が高められている。
【0069】
また、キャパシタ用下部電極11aとキャパシタ誘電体膜16の下層誘電体膜16aとの界面に、Sr酸化物層15が設けられている。これにより、キャパシタ誘電体膜16は、そのキャパシタ用下部電極11aとの界面において、チタン(Ti)やジルコニウム(Zr)などに代表されるペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素の偏析が殆どない状態に成膜されている。したがって、キャパシタ誘電体膜16中には、適正な高さのショットキー障壁(ショットキーバリア)が形成されているので、キャパシタ素子10に流れるリーク電流が抑制もしくは低減されている。
【0070】
実際の半導体装置の製造工程では、キャパシタ誘電体膜を成膜する半導体基板の表面には、電極膜、バリアメタル膜、および層間絶縁膜などの互いに膜種が異なる複数の膜が露出している。このような状態においても、本実施形態によれば、キャパシタ誘電体膜の電気的特性の下地依存性が殆ど無くなる。これにより、良質なペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなる薄膜をキャパシタ誘電体膜16として採用し、このキャパシタ誘電体膜16を備えるキャパシタ素子10に流れるリーク電流を抑制もしくは低減して、低い値に保持できる。したがって、キャパシタ誘電体膜16によるキャパシタ用下部電極11aなどの被覆率等が多少変化しても、電気的特性が向上された高誘電体キャパシタ素子10を安定して製造することができる。
【0071】
さらに、ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜16の大部分は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成するSrを主成分とするSr酸化物層15を下地として成膜される。これにより、キャパシタ誘電体膜16は容易に、かつ、効率よく成膜される。
【0072】
また、キャパシタ誘電体膜16の上層誘電体膜16bを、比較的低温で結晶化させつつ成膜できる。これにより、キャパシタ誘電体膜16の成膜プロセスにおける熱による負荷(サーマルバジェット)を抑制もしくは低減させて、キャパシタ誘電体膜16を容易に成膜できる。それとともに、キャパシタ誘電体膜16の成膜効率および品質を向上できる。ひいては、このキャパシタ誘電体膜16を備えるキャパシタ素子10を容易に形成できるとともに、キャパシタ素子10の形成効率および品質を向上できる。さらには、キャパシタ素子10を形成する際に、トランジスタ3やコンタクトプラグ5などの半導体装置が備える他の電子素子に与える熱による負荷を抑制もしくは低減できる。したがって、キャパシタ素子10を具備する半導体装置は、その全体の品質が向上されているとともに、効率よく容易に製造される。また、このような効果は、キャパシタ素子10を具備する半導体装置として、例えばDRAMが混載されている図示しないLSIを製造する際に極めて有利である。
【0073】
このように、本実施形態のキャパシタ素子10は、電気的特性が向上されているとともに、容易に、かつ、効率よく成膜可能なキャパシタ誘電体膜16を備えた高誘電体キャパシタ素子として形成されている。また、この高誘電体キャパシタ素子10は容易に、かつ、効率よく形成可能であるため、半導体装置内に容易に、かつ、効率よく組み込むことができる。したがって、この第1実施形態の半導体装置は、電子デバイスのダウンサイジング化に伴う電気的特性の劣化を抑制して、電気的特性の向上を図り得るとともに、容易に、かつ、効率よく形成可能なキャパシタ素子10を具備している。また、この第1実施形態の半導体装置の製造方法は、そのようなキャパシタ素子10を具備した半導体装置を効率よく容易に製造できる。
【0074】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る第2実施形態を図6および図7を参照しつつ説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置が具備するキャパシタ素子付近の構造を示す断面図である。図7は、第2実施形態に係るキャパシタ素子の下部電極上にSrおよびTiの酸化物の層が交互に積層されて形成される仕組みを模式的に示す工程断面図である。なお、図1と同一部分は同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0075】
この第2実施形態では、半導体装置が具備するキャパシタ素子のキャパシタ誘電体膜を、第1実施形態と同様に、CVD法により下層誘電体膜および上層誘電体膜の2層構造に形成する。この際、下層誘電体膜をSr−Ti−O膜 [=STO膜]を用いて形成するとともに、上層誘電体膜をBa−Sr−Ti−O膜 [=BST膜]を用いて形成する。つまり、本実施形態では、キャパシタ誘電体膜として、STO膜およびBST膜を2層に積層した積層膜を採用する。また、下層誘電体膜となる第1層目のキャパシタ誘電体膜を、第1実施形態で説明したSr酸化物層15の形成方法と同様の成膜方法により成膜する。つまり、H2Oガスの供給および吸着と、STO膜の主成分となるSrおよびTiを含む原料ガスの供給とを交互に行う。これにより、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成するSrを主成分とする酸化物の層と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成するTiを主成分とする酸化物の層とを交互に堆積させてSTO膜を成膜する。
【0076】
第1層目のキャパシタ誘電体膜としてSTO膜を用いる理由は、STO膜はBST膜に比べて結晶化温度が低いので、成膜中の結晶化熱処理温度を低く抑えることができるためである。また、BST膜の原料には、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素として、BaおよびSrの2種類の金属元素が含まれている。したがって、前述したSr酸化物層15の形成方法と同様の成膜方法によりBST膜を成膜しようとすると、Aサイトの酸化物層を形成する際に、その組成成分であるBaおよびSrの制御が困難になる。これにより、所望する構造および膜質を有するBST膜を得ることが困難になる。これを避けるために、第1層目のキャパシタ誘電体膜としてSTO膜を用いる。
【0077】
また、STO膜はペロブスカイト型結晶構造を有しており、Srを主成分とする酸化物の層(Sr−O面)と、Tiを主成分とする酸化物の層(Ti−O面)とが交互に積層された構造となっている。これにより、後述する本実施形態の半導体装置の製造方法を用いて、約300℃という比較的低い成膜温度でも、一部が既に結晶化したSTO膜を成膜することが可能である。また、一部が既に結晶化したSTO膜は、これを略完全に結晶化させるのに要する結晶化熱処理温度が、非晶質のSTO膜を結晶化させる場合に比べて約100℃程度低くできるという利点がある。
【0078】
なお、前述したSr酸化物層15の形成方法と同様の成膜方法により、膜厚が10nm以上のSTO膜およびBST膜の積層膜を成膜しようとすると、その成膜プロセスに掛かる時間の増大を招くことが懸念される。本実施形態では、Sr酸化物層15の形成方法と同様の成膜方法を、BST膜の結晶性長のシード層となるSTO膜の成膜プロセスに限定して採用する。これにより、STO膜およびBST膜の積層膜の成膜プロセスに掛かる時間の増大は、殆ど問題にならなくなる。以下、本実施形態の半導体装置およびその製造方法について詳述する。
【0079】
先ず、図6(a)に示すように、第1実施形態と同様に、素子分離領域1などが形成された基板本体2上に、トランジスタ3、ビット線4、およびコンタクトプラグ5などを形成した後、これらを層間絶縁膜6で被覆する。以下の説明において、前記各素子が設けられているとともに、後述するキャパシタ素子22などが設けられる基板本体2を、まとめて半導体基板21と称することとする。
【0080】
次に、層間絶縁膜6上に電極支持層となるシリコン窒化膜8をLPCVD法により約80nm形成する。続けて、シリコン窒化膜8上にシリコン酸化膜9をプラズマCVD法により約500nm形成する。この後、コンタクトプラグ5の上方のシリコン酸化膜9およびシリコン窒化膜8を、フォトリソグラフィ技術およびRIE技術によりエッチングして、後述するキャパシタ用下部電極23aの鋳型となる図示しないキャビティを形成する。これにより、コンタクトプラグ5の上面(表面)が露出する。
【0081】
次に、キャビティ内にバリアメタルとしての窒化チタンアルミニウム膜13をスパッタリング法により約20nm形成する。この際、窒化チタンアルミニウム膜13は、その下面(底面)がコンタクトプラグ5の上面に接触するように形成される。これにより、コンタクトプラグ5は、その上面を窒化チタンアルミニウム膜13の下面により覆われる。続けて、窒化チタンアルミニウム膜13の内側に、白金(Pt)膜28をスパッタリング法により約40nm形成する。続けて、半導体基板21の全面に図示しないフォトレジストを塗布した後、CMP法によりエッチバックを行い、窒化チタンアルミニウム膜13および白金膜28をキャビティの内部にのみ残存させる。この後、アッシャーにより、フォトレジストを除去する。これにより、白金からなるキャパシタ用電極23の下部電極23aが、半導体基板21上に選択的に形成される。
【0082】
次に、下層誘電体膜24aおよび上層誘電体膜24bの2層構造からなるキャパシタ誘電体膜24を形成する。本実施形態においては、下層誘電体膜24aをSr−Ti−O膜 [=STO膜]25aを用いて形成する。それとともに、上層誘電体膜23bをBa−Sr−Ti−O膜 [=BST膜]25bを用いて形成する。これらSTO膜25aおよびBST膜25bの積層膜は、CVD法により形成される。以下、STO膜25aおよびBST膜25bの積層膜の成膜方法について詳述する。
【0083】
STO膜25aおよびBST膜25bの形成材料であるBa,Sr,Tiを含むCVD法の原料としては、Ba(DPM)2 [=Ba(C11H19O2)2]、Sr(DPM)2 [=Sr(C11H19O2)2]、およびTi(DPM)2(i−OC3H7)2のそれぞれのTHF溶液、ならびにTi(i−OC3H7)4 [=TTIP]を用いる。各THF溶液の濃度は、それぞれ約0.5モル/リットルである。成膜装置としては、第1実施形態と同様に、ホットウォール型バッチ式CVD装置を用いる。
【0084】
先ず、半導体基板21上に第1層目のキャパシタ誘電体膜としての下層誘電体膜24aを成膜する。
【0085】
キャパシタ用下部電極(白金電極)23aが形成された半導体基板21を、炉内温度が予め約300℃に設定されている反応炉(反応容器)内に導入する。半導体基板21が導入された反応炉の内部を真空排気した後、アルゴン(Ar)ガスで真空パージする。この状態で炉内温度が約300℃付近で安定するまで待つ。容器内温度が設定温度である300℃の±20℃程度まで安定したことを確認した後、反応容器内圧力を約5Torrに保持しつつ、反応容器内にH2Oガスを約45秒間導入する。導入されたH2Oガスは半導体基板21およびキャパシタ用下部電極23aの露出表面に吸着する。
【0086】
次に、反応容器内圧力を約5Torrに保持しつつ、Srを含むCVD法の原料であるガス状のSr(DPM)2 [=Sr(C11H19O2)2]を反応容器内に約30秒間導入する。H2Oが吸着している半導体基板21および下部電極23aの露出表面の表面に到達したSrの原料ガスは、吸着しているH2Oとの間で加水分解反応を起こす。これにより、図7(a)に示すように、半導体基板21および下部電極23aの露出表面上に、Srを主成分とする酸化物の層26が1層形成される。このようなH2Oガスの供給と、Srの原料ガスの供給とをそれぞれ3回ずつ交互に繰り返す。これにより、キャパシタ用下部電極23aが形成された半導体基板21の露出表面は、1層のSr酸化物層26で略完全に被覆される。
【0087】
また、この状態において、下部電極23aは、その外側面および外側下面(底面)が窒化チタンアルミニウム膜13に接触して覆われている。この下部電極23aの窒化チタンアルミニウム膜13に接触している部分を、例えば下部電極23aの外側表面とする。それとともに、下部電極23aは、その内側面および内側下面など、前記外側表面以外の部分が、下層誘電体膜24aとなるSTO膜25aの一部を形成するSr酸化物層26に接触して覆われている。この下部電極23aのSr酸化物層26に接触している部分を、例えば下部電極23aの内側表面とする。このように、下部電極23aは、その外側表面を窒化チタンアルミニウム膜13により覆われるとともに、その内側表面をSr酸化物層26により覆われる。これにより、下部電極23aは、その表面全体が外部に露出されない。
【0088】
次に、炉内温度を約300℃±20℃に保持した状態で、前記シーケンスと同様のシーケンスにより、Sr酸化物層26の露出表面上にH2Oガスを吸着させる。続けて、反応容器内を排気し、気相中のH2Oの分圧を十分低下させた後に、反応容器内の圧力を約5Torrに設定する。この雰囲気下において、反応容器内にガス状のTi(i−OC3H7)4 [=TTIP]を約20秒間供給し、TTIPとSr酸化物層26の露出表面上に吸着しているH2Oとの間で加水分解反応を起こさせる。これにより、図7(b)に示すように、Sr酸化物層26の露出表面上にTiを主成分とするの酸化物の層27を1層形成する。このようなH2Oガスの供給と、TTIPガスの供給とをそれぞれ2回ずつ交互に繰り返す。これにより、Sr酸化物層26の露出表面は、1層のTi酸化物層27で略完全に被覆される。
【0089】
以上説明したSr酸化物層26を形成する工程と、Ti酸化物層27を形成する工程とを交互に繰り返すことにより、所望の構造および膜厚を有するSTO膜25aをキャパシタ用下部電極23aが形成された半導体基板21の露出表面上に成膜できる。また、本発明者らが行ったX線回折法を用いた測定によれば、前述した工程により成膜されたSTO膜25aは、その一部が既に結晶化していることが確認された。本実施形態では、Sr酸化物層26を形成する工程と、Ti酸化物層27を形成する工程とをそれぞれ8回ずつ交互に繰り返す。これにより、図6(b)および図7(c)に示すように、Sr酸化物層26とTi酸化物層27とが、それぞれ8層ずつ交互に積層されたSTO膜25aが成膜される。この際、図7(c)中hで示すSTO膜25aの膜厚が、約3nmとなるように設定した。ただし、図6(a)においては、図面を見易くするために、Sr酸化物層26およびTi酸化物層27をそれぞれ1層ずつだけ描いて、STO膜25aを簡略化して示す。また、図6(b)は、図6(a)中実線の円で囲んだ部分を拡大して示す図である。
【0090】
続けて、同じ反応容器内で、真空を破ることなく連続的にSTO膜25aに結晶化熱処理(アニール処理)を施す。この際、半導体基板21の周りの雰囲気を窒素で充満させるとともに、気圧を約133Paに設定する。この雰囲気下において、STO膜25aが成膜された半導体基板21を約10分間加熱する。本実施形態では、異なる成膜条件下で成膜されたキャパシタ誘電体膜24としてのSTO膜25aおよびBST膜25bの積層膜を採用したキャパシタ素子22の電気的特性を、各成膜条件間で比較することとした。このために、STO膜25aに対して、結晶化熱処理なし(非加熱処理)、約500℃で結晶化熱処理、そして約575℃で結晶化熱処理(従来技術と同じ)の3通りの結晶化熱処理を施した。この結果については、後に表1を参照しつつ説明する。
【0091】
以上説明した工程により、STO膜25aの結晶膜からなる下層誘電体膜24aが、キャパシタ用下部電極(白金電極)23a上に成膜される。
【0092】
次に、下層誘電体膜24a上に第2層目のキャパシタ誘電体膜としての上層誘電体膜24bを成膜する。すなわち、STO膜25a上に積層するように、SBT膜25bを連続して形成する。
【0093】
前述したように、STO膜25aに対して、非加熱処理を含めた3通りの結晶化熱処理を施した後、同じ反応容器内で、真空を破ることなく反応容器内の温度を約470℃まで昇温させる。この雰囲気下において、BST膜25bをその膜厚が約17nmとなるまで連続的に成膜する。BST膜25bのCVD法の原料としては、前述したBa(DPM)2、Sr(DPM)2、およびTi(DPM)2(i−OC3H7)2のそれぞれのTHF [=C4H8O]溶液を用いた。BST膜25bを成膜する際には、その下地として、一部ないしは全体が既に結晶化したSTO膜25aが存在する。この結晶化したSTO膜25aは、BST膜25bが結晶化するためのシード層として作用する。このため、BST膜25bは、約460℃という比較的低い成膜温度にも拘らず、成膜中に十分結晶化することが可能である。すなわち、BST膜25bは、in−situ結晶化する。これにより、ペロブスカイト型結晶構造を有するBST膜25bの結晶膜からなる上層誘電体膜24bが、下層誘電体膜24aの露出表面を覆うように、この露出表面上に成膜される。
【0094】
以上説明した工程により、図6(a)および(b)に示すように、半導体基板7上に選択的に設けられたキャパシタ用下部電極23aの表面を覆うように、結晶化したSTO膜25aおよびBST膜25bの積層膜が成膜される。結晶化したSTO膜25aおよびBST膜25bは、一般的なキャパシタ誘電体膜の形成材料であるシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、あるいはシリコン酸化膜の積層膜(NO膜)などよりも高い比誘電率を発現することができる。したがって、結晶化したSTO膜25aおよびBST膜25bにより形成されたキャパシタ誘電体膜24は、高誘電体膜として形成されている。
【0095】
なお、図6(a)および(b)においては、図面を見易くするために、下層誘電体膜24aであるSTO膜25a、STO膜25aのSr酸化物層26およびTi酸化物層27、ならびに下層誘電体膜24bであるBST膜25bを、それぞれの実際の厚さを無視して描いた。
【0096】
次に、キャパシタ用電極23の他方の電極であるキャパシタ用上部電極23bを、上層誘電体膜24bの露出表面を覆うように設ける。図6(a)および(b)に示すように、下部電極23aとの間にキャパシタ誘電体膜24を挟むように、上層誘電体膜24bの露出表面上に上部電極23bを形成する。本実施形態においては、上部電極23bをルテニウム膜を用いて形成する。これにより、所望の構造および電気的特性を有するキャパシタ素子22を得ることができる。
【0097】
続けて、フォトリソグラフィ技術およびRIE技術により、上部電極23b(ルテニウム膜)、ならびに下層誘電体膜24a(STO膜25a)および上層誘電体膜24b(BST膜25b)からなる積層膜を加工して、図示しないメモリセル領域を形成する。さらに続けて、図示しない他の絶縁膜および配線などを形成することにより、所望の半導体装置を得る。ただし、それら各工程の詳細な説明は省略する。
【0098】
次に、前述したように、STO膜25aに対して3通りの結晶化熱処理を施して成膜されたSTO膜25aおよびBST膜25bの積層膜をキャパシタ誘電体膜24として採用した、3種類のキャパシタ素子22の電気的特性について説明する。以下の説明において、結晶化熱処理を行わなかったSTO膜25aを有するキャパシタ素子22を第1実施例とする。同様に、約500℃で結晶化熱処理を行ったSTO膜25aを有するキャパシタ素子22を第2実施例とする。また、約575℃で結晶化熱処理を行ったSTO膜25aを有するキャパシタ素子22を第3実施例とする。これら第1〜第3の各実施例のキャパシタ素子22の主な電気的特性について調べた結果を表1にまとめて示す。
【0099】
併せて、比較例として、従来技術に係る2種類のキャパシタ素子の主な電気的特性について調べた結果を表1にまとめて示す。これら2種類のキャパシタ素子は、それぞれ次に述べる2種類の成膜条件で成膜されたキャパシタ誘電体膜を備えている。
【0100】
一方は、先ず、第1層目のキャパシタ誘電体膜である非晶質のSTO膜を、従来技術を用いて約375℃で約3.5nmまで成膜した後、約500℃で結晶化熱処理を施して結晶化させる。結晶化したSTO膜は、その膜厚が約3nmとなる。次に、この結晶化したSTO膜上に、本実施形態と同様の成膜条件で第2層目のキャパシタ誘電体膜であるBST膜を成膜する。以下の説明において、この成膜条件で成膜されたキャパシタ誘電体膜を備えたキャパシタ素子を、第1比較例とする。
【0101】
他方は、第1比較例において、非晶質のSTO膜に結晶化熱処理を施す際の温度を約575℃に設定して結晶化させる。以下の説明において、この成膜条件で成膜されたキャパシタ誘電体膜を備えたキャパシタ素子を、第2比較例とする。
【0102】
【表1】
【0103】
先ず、第1〜第3実施例、ならびに第1および第2比較例のそれぞれのリーク電流について比較する。表1によれば、従来技術に係る第1および第2比較例では、キャパシタ用上部電極に正バイアスを印加した際のリーク電流が、負バイアスを印加した際のリーク電流よりも増大している。これに対して、本実施形態に係る第1〜第3実施例では、キャパシタ用上部電極に正バイアスを印加した際のリーク電流が、負バイアスを印加した際のリーク電流よりも低減されていることが分かる。また、第1〜第3の各実施例の間では、正バイアスを印加した際のリーク電流の値に大差がないことが分かる。
【0104】
次に、第1〜第3実施例、ならびに第1および第2比較例のそれぞれの比誘電率について比較する。表1によれば、第1〜第3実施例および第2比較例では、200以上の比誘電率を得られることが分かる。これに対して、第1比較例の比誘電率の値は、非晶質膜の比誘電率の値に略等しくなっている。したがって、従来技術に係る非晶質のSTO膜を結晶化させるためには、約500℃の処理温度では不十分であることが分かる。また、結晶化されていないSTO膜をシード層とすると、このシード層上に成膜されるBST膜の結晶化も起こらないことが分かる。
【0105】
また、第1〜第3実施例および第2比較例の間では、それらの比誘電率の大小関係は、おおよそ第1実施例<第2実施例=第3実施例=第2比較例となっていることが分かる。このような比誘電率の大小関係により、以下のことが分かる。本実施形態の成膜方法によれば、結晶化熱処理を行う前の成膜温度が約300℃という低い温度にも拘らず、STO膜はその一部が既に結晶化している。ただし、その結晶化自体は完全ではない。
【0106】
また、従来技術に係る非晶質のSTO膜を結晶化させるためには、結晶化熱処理を行う際に約575℃という高い温度が必要である。これに対して、本実施形態では、結晶化が不十分な非晶質のSTO膜25aを略完全に結晶化させるためには、結晶化熱処理を行う際の温度を約500℃とすれば十分である。これは、キャパシタ誘電体膜24の成膜プロセスを行う際の温度を低温化させるのに有効である。
【0107】
さらに、第1実施例の結晶化熱処理を省略する成膜プロセスによれば、得られる比誘電率が若干低くなる。ところが、成膜プロセスを行う際の最高温度は、第2層目のキャパシタ誘電体膜24bであるBST膜25bの成膜温度であり、これは約470℃である。これは、従来技術に係る非晶質のSTO膜を結晶化させるために必要な温度の約575℃よりも大幅に低い値である。したがって、第1実施例でも、キャパシタ誘電体膜24の成膜プロセスの低温化、ひいてはキャパシタ素子22全体の製造プロセス(キャパシタプロセス)を低温化させるのに有効である。
【0108】
実際、本発明者らは、キャパシタ誘電体膜の第1層目および第2層目を、ともにSTO膜を用いて形成した場合について実験および検討を行った。第1層目のSTO膜を本実施形態の成膜方法により成膜して、このSTO膜を第2層目のSTO膜を結晶化させる際のシード層として用いた。すると、第2層目のSTO膜を結晶化させるのに必要としたCVD成膜温度は約430℃であった。したがって、本実施形態の成膜方法を用いて2層のSTO膜からなるキャパシタ誘電体膜を成膜すると、キャパシタプロセスの最高温度は約430℃となる。これは、例えばアルミニウム多層配線構造を有する半導体基板上にキャパシタ素子を形成する場合に適用可能な十分低い温度である。このアルミニウム多層配線構造を有する半導体基板上にキャパシタ素子を形成する形態については、後述する第4実施形態においてその詳細を説明する。
【0109】
次に、表1には示されていないが、第3実施例および第2比較例のそれぞれのキャパシタ素子が有するBST膜中の炭素不純物濃度を比較した結果について説明する。第3実施例と第2比較例とでは、第2層目のキャパシタ誘電体膜であるBST膜の成膜条件は等しいにも拘らず、第3実施例のBST膜中の炭素不純物濃度が約1atomic%以下であったのに対して、第2比較例のBST膜中の炭素不純物濃度は約2atomic%であった。そこで、第3実施例および第2比較例のそれぞれの第1層目のキャパシタ誘電体膜であるとともに、BST膜のシード層であるSTO膜中の炭素不純物濃度を比較した。
【0110】
この結果、本実施形態に係る第3実施例のSTO膜中の炭素不純物濃度が約1atomic%以下であったのに対して、約375℃で成膜した従来技術に係る第2比較例のSTO膜中の炭素不純物濃度は約2atomic%であった。これにより、本実施形態のように有機金属錯体からなる原料を加水分解させることにより金属酸化物の層を一層ずつ形成すると、約300℃という低温でも炭素不純物がキャパシタ誘電体膜中から効率よく排出されて、キャパシタ誘電体膜中に残留し難いことが分かる。また、第3実施例および第2比較例で、第2層目のBST膜中の炭素不純物濃度にも差が見られたのは、次の理由によるものと推定される。BST膜は、そのシード層となる第1層目のSTO膜の結晶性の影響を強く受けて結晶化する。したがって、STO膜中の炭素不純物濃度がBST膜中の炭素不純物濃度にも強い影響を及ぼす。この結果、第1層目のSTO膜中の炭素不純物濃度が異なると、第2層目のBST膜中の炭素不純物濃度も異なってくる。
【0111】
また、TEM−EDXにより、第1〜第3実施例のそれぞれのBST膜内の状態をキャパシタ用下部電極23a上と層間絶縁膜6上とで比較したところ、組成および結晶性ともに殆ど差違は見られなかった。これは、本実施形態の成膜方法によれば、キャパシタ誘電体膜24の膜質の下地依存性が殆どなくなるので、異なる質の下地が併存する半導体基板21上においても、略同じ膜質のキャパシタ誘電体膜24の成膜が可能であることを示す。
【0112】
以上説明したように、この第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、キャパシタ誘電体膜24の下層誘電体膜24aとなるSTO膜25aを、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成するSrを主成分とする酸化物の層26と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成するTiを主成分とする酸化物の層27とを、それぞれ交互に8層ずつ積層することにより成膜した。これにより、STO膜25aをCVD法により成膜する場合、成膜中の組成成分の制御が容易となるので、良質なSTO膜25aを効率よく容易に形成できる。また、このSTO膜25aを、キャパシタ誘電体膜24の上層誘電体膜24bとしてBST膜25bをCVD法により成膜する際のシード層として用いることにより、BST膜25bの下地依存性を殆どなくして、良質なBST膜25bを効率よく容易に形成することができる。ひいては、良質なキャパシタ誘電体膜24を効率よく容易に成膜することができる。
【0113】
また、STO膜25aは、その一部が既に結晶化された状態で成膜されるので、その結晶化熱処理を省略したり、あるいは結晶化熱処理温度を低下させたりすることができる。これにより、キャパシタ誘電体膜24に対して、その成膜プロセスにおける熱による負荷(サーマルバジェット)をより抑制もしくは低減できる。したがって、キャパシタ誘電体膜24は、その成膜がより容易であるとともに、その品質および成膜効率がより向上されている。ひいては、キャパシタ誘電体膜24を備えるキャパシタ素子22の形成が容易であるとともに、その品質および形成効率が向上されている。
【0114】
また、本実施形態によれば、キャパシタ素子22を形成する際に、このキャパシタ素子22を備える半導体装置が有するトランジスタやコンタクトプラグ、あるいは配線などの他の電子素子への、熱によるダメージを低減できる。したがって、半導体装置内にキャパシタ素子22以外の各種電子素子を設けた後、それら各種電子素子よりも上方にキャパシタ素子22を形成することができる。すなわち、このキャパシタ素子22は、半導体装置内の形成位置の自由度が向上されている。これは、第4実施形態において説明するように、例えば配線が熱に弱いアルミニウムなどにより形成されている場合に、極めて有効である。
【0115】
さらに、前述したように、キャパシタ誘電体膜24の下層誘電体膜24aは、これを成膜する際の結晶化熱処理を省略したり、あるいは結晶化熱処理温度を低下させたりすることができる。これにより、シード層としての下層誘電体膜24aを成膜する際の成膜温度の精密な制御が殆ど不要となる。したがって、下層誘電体膜24aは、その成膜前に設定される成膜プロセスの安定化に要する時間(heat recovery time)の削減が可能である。ひいては、キャパシタ誘電体膜24全体の成膜に掛かるプロセス時間を短縮して、キャパシタ誘電体膜24全体を効率よく成膜することが可能である。さらには、このキャパシタ誘電体膜24を備えるキャパシタ素子22の形成に掛かるプロセス時間を短縮して、キャパシタ素子22を効率よく形成することが可能である。
【0116】
このように、本実施形態のキャパシタ素子22は、電気的特性および品質が向上されているとともに、形成が容易であり、かつ、短時間で効率よく成膜できるキャパシタ誘電体膜24を備えた高品質な高誘電体キャパシタ素子として形成されている。また、この高誘電体キャパシタ素子22は、その形成が容易であるとともに、短時間で効率よく形成でき、かつ、半導体装置内での形成位置の自由度が向上されているため、半導体装置内の所望の位置に短時間で効率よく容易に組み込むことができる。したがって、この第2実施形態の半導体装置は、電子デバイスのダウンサイジング化に伴う電気的特性の劣化をより抑制して、電気的特性の向上をより図り得るとともに、効率よく容易に形成可能で、かつ、より良質なキャパシタ素子22を具備している。また、この第2実施形態の半導体装置の製造方法は、そのようなキャパシタ素子22を具備した、より良質な半導体装置を効率よく容易に製造できる。
【0117】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係る第3実施形態を図8〜図11を参照しつつ説明する。図8は、本発明の第3実施形態に係る金属酸化物堆積量の金属原料供給時間に対する依存性を各金属の原料ごとにグラフにして示す図である。図9は、第3実施形態に係る金属酸化物堆積量のH2Oおよび金属原料の供給サイクル数に対する依存性を各金属の原料ごとにグラフにして示す図である。図10は、第3実施形態に係る金属酸化物堆積量のH2Oおよび混合金属原料の供給サイクル数に対する依存性を各金属の原料ごとにグラフにして示す図である。図11は、第3実施形態および第2実施形態に係るキャパシタ誘電体膜の製造プロセスの1サイクルのシーケンスを示す図である。
【0118】
この第3実施形態では、第2実施形態と同様に、半導体装置が具備するキャパシタ素子のキャパシタ誘電体膜を、CVD法により下層誘電体膜および上層誘電体膜の2層構造に形成する。この際、第2実施形態と同様に、下層誘電体膜をSr−Ti−O膜 [=STO膜]を用いて形成するとともに、上層誘電体膜をBa−Sr−Ti−O膜 [=BST膜]を用いて形成する。つまり、本実施形態では、キャパシタ誘電体膜として、STO膜およびBST膜を2層に積層した積層膜を採用する。また、下層誘電体膜となるSTO膜を、第2実施形態と同様に、H2Oガスの供給および吸着と金属原料のガスの供給とを交互に行うことにより、Sr酸化物層とTi酸化物層とを交互に堆積させて成膜する。ただし、Tiを含む原料として、第2実施形態で用いたTTIPではなく、DPM錯体であるTi(DPM)2(i−OC3H7)2のTHF溶液を用いる。これにより、STO膜の成膜プロセスに掛かる時間の短縮を実現するものである。
【0119】
下層誘電体膜となる第1層目のキャパシタ誘電体膜としてSTO膜を用いる理由は、第2実施形態と同様に、STO膜はBST膜に比べて結晶化温度が低いので、成膜中の結晶化熱処理温度を低く抑えることができるためである。また、BST膜を前述したH2Oガスの供給および吸着と金属原料のガスの供給とを交互に行うことにより成膜する場合に、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトの組成成分であるBaおよびSrの制御が困難になるのを避けるためである。
【0120】
また、本実施形態では、Srを含む原料としてSr(DPM)2 [=Sr(C1 1H19O2)2]のTHF溶液を用いるとともに、Tiを含む原料としてTi(DPM)2(i−OC3H7)2のTHF溶液を用いる。このように、SrおよびTiのそれぞれの原料に同じDPM錯体を用いることにより、それら各原料同士の相互作用を利用できるという利点が生じる。これにより、以下に詳述するような理由により、キャパシタ誘電体膜の成膜プロセスに掛かる時間の短縮が可能となる。また、キャパシタ誘電体膜全体を、H2Oガスの供給および吸着と金属原料のガスの供給とを交互に行うことにより成膜することも可能になる。このキャパシタ誘電体膜全体を、H2Oガスの供給および吸着と金属原料のガスの供給とを交互に行うことにより成膜する形態については、後述する第4実施形態においてその詳細を説明する。
【0121】
ここで、本発明者らが実験および検討した結果について詳述する。図示しない半導体基板が導入される反応容器内の温度を約300℃に、また反応容器内の圧力を約5Torrにそれぞれ保持する。この雰囲気下において、予め第1および第2実施形態において説明した条件と同様の条件下でH2Oを吸着させた半導体基板の表面に、Sr(DPM)2,Ba(DPM)2,TTIP,Ti(DPM)2(i−OC3H7)2,TiO(DPM)2の5種類のガス状の金属原料をそれぞれ個別に供給する。すると、それぞれの金属酸化物堆積量の金属原料供給時間に対する依存性は、図8(a)〜(e)に示すように、前記5種類のいずれの原料でも一定時間で飽和する傾向を示す。このように、第1および第2実施形態において説明した条件と同様の条件下では、各金属酸化物の堆積量はそれらの原料の種類に依らず自律的に制御される。したがって、精密な成膜プロセスの制御は要求されないことが分かる。
【0122】
ところが、H2Oガスを供給する過程と金属原料のガスを供給する過程とを、それぞれ交互に複数回繰り返した場合の、供給サイクル数に対する各金属酸化物堆積量の依存性は、図9(a)〜(e)に示すように、各金属原料によって異なっている。図9(a)および(b)に示すように、Baの原料であるBa(DPM)2や、Srの原料であるSr(DPM)2では、それらの供給サイクル数を増加させると、供給サイクル数に対する各金属酸化物堆積量の依存性は飽和する傾向を示す。これに対して、図9(c)〜(e)に示すように、Tiの原料であるTTIP,Ti(DPM)2(i−OC3H7)2,TiO(DPM)2では、それらの供給サイクル数を増加させると、供給サイクル数に対する金属酸化物堆積量の依存性は、供給サイクル数に線形(リニア)に追従するように増大する傾向を示す。したがって、Tiの酸化物の堆積量は、Tiの原料の供給サイクル数を用いて制御する必要があることが分かる。
【0123】
次に、H2Oを吸着させた半導体基板の表面に前記各金属原料ガスを混合して供給する場合について、本発明者らが実験および検討した結果について説明する。なお、本発明者らが鋭意検討した結果、Ba(DPM)2を混合した場合とSr(DPM)2を混合した場合とでは、それらの間において金属酸化物の堆積挙動には差違が殆ど見られなかった。したがって、以下、説明が煩雑になるのを避けるために、Sr(DPM)2を混合した場合についてのみ説明する。そして、Srの原料と前記3種類のTiの原料とをそれぞれ個別に混合し、それら3種類のSrの原料/Tiの原料の混合ガスを供給する場合について比較する。
【0124】
図10(a)〜(c)に、Sr(DPM)2とTTIP、Sr(DPM)2とTi(DPM)2(i−OC3H7)2、Sr(DPM)2とTiO(DPM)2との、3種類の混合ガスを用いた場合の、各混合ガスの供給サイクル数に対する各金属酸化物堆積量の依存性を示す。
【0125】
図10(a)、ならびに図9(a)および(c)から分かるように、Sr(DPM)2とTTIPとを混合したガスを用いた場合では、SrおよびTiの堆積挙動はそれぞれの原料ガスを単体で供給した場合の堆積挙動に類似している。これに対して、Sr(DPM)2とTi(DPM)2(i−OC3H7)2とを混合したガスを用いた場合、およびSr(DPM)2とTiO(DPM)2とを混合したガスを用いた場合では、図10(b)および(c)から分かるように、Tiの原料を供給しているにも拘らず、Tiの酸化物は殆ど堆積せず、Srの酸化物が堆積する。そして、Srの酸化物の堆積挙動は、図10(b)および(c)、ならびに図9(a)から明らかなように、Sr(DPM)2のみを単体で供給した場合の堆積挙動と略同じであることが分かる。これは、同じDPM錯体であるSrの原料とTiの原料との相互作用によるものと考えられる。すなわち、Sr(DPM)2と、Ti(DPM)2(i−OC3H7)2およびTiO(DPM)2との相互作用によるものと考えられる。このような性質を用いることにより、H2Oガスの供給および吸着と金属原料のガスの供給とを交互に行い、Sr酸化物層とTi酸化物層とを交互に堆積させてSTO膜を成膜する、本実施形態の成膜方法のプロセス時間を削減することが可能となる。
【0126】
図11(a)に、本発明の第2実施形態に係る成膜プロセスの1サイクルのシーケンス(圧力、ガス流量、時間)を示す。各ガス供給の間のパージ時間、特に排気時間の比率が大きいことが分かる。これは、Tiを原料としてTTIPを用いる場合、Tiの原料ガスが残存しているうちに、Sr層の成膜プロセスを開始すると、残存したTiの原料ガスによるTiの堆積が起こって、精密な組成制御が困難になるためである。そこで、シーケンスを図11(b)に示すように変更することで、1サイクルのプロセス時間を大幅に削減することができる。以下、このシーケンスを図11(b)を参照しつつ説明する。
【0127】
Step1:H2Oガスの供給。基板表面へのH2Oの吸着。
【0128】
Step2:H2Oガス、Srの原料ガス、およびTiの原料ガスの供給。Srの原料の影響によりTiの酸化物の堆積は殆ど起こらない。Srの酸化物の堆積のみ起こる。
【0129】
Step3:H2OガスおよびSrの原料ガスの供給停止。Tiの原料ガスの供給は続行。Tiの酸化物の堆積が始まる。
【0130】
Step4:H2OガスおよびSrの原料ガスを再度供給。Tiの原料ガスは供給し続けるが、Srの原料の影響によりTiの酸化物の堆積は殆ど起こらず、Srの酸化物の堆積のみ起こる。(=Step2)
このように、Step2およびStep3を適切なプロセス時間比で繰り返すことにより、STO膜を成膜する際に、各層の組成成分を容易に制御することが可能である。
【0131】
このような工程により、図示しないキャパシタ用下部電極が形成された半導体基板の露出表面上に、下層誘電体膜となるSTO膜を約3nm成膜する。この後、図示しない反応容器の内部を第2実施形態と同様の成膜条件に設定する。この成膜条件下において、同じ反応容器内でSTO膜が成膜された半導体基板を約500℃まで加熱し、STO膜に結晶化熱処理を施す。これにより、所望の膜厚を有し、ペロブスカイト型結晶構造を有するSTO膜の結晶膜からなる下層誘電体膜が、下部電極の露出表面上に成膜される。
【0132】
次に、同じ反応容器内で、真空を破ることなく反応容器内の温度を約470℃まで昇温させる。この雰囲気下において、結晶化されたSTO膜の露出表面上に、上層誘電体膜となるBST膜をその膜厚が約17nmとなるまで連続的に成膜する。この際、BST膜は、in−situ結晶化する。これにより、所望の膜厚を有し、ペロブスカイト型結晶構造を有するBST膜の結晶膜からなる上層誘電体膜が、下層誘電体膜の露出表面を覆うように、この露出表面上に成膜される。すなわち、BST膜が、STO膜上に積層するように連続して形成される。
【0133】
以上説明した工程により、キャパシタ用下部電極が選択的に形成された半導体基板上に、結晶化したSTO膜およびBST膜の積層膜が成膜される。したがって、第2実施形態と同様に、本実施形態のキャパシタ誘電体膜も高誘電体膜として形成されている。
【0134】
次に、第2実施形態と同様に、キャパシタ用電極の他方の電極であるキャパシタ用上部電極を、BST膜の露出表面を覆うように設ける。すなわち、下部電極との間にキャパシタ誘電体膜を挟むように、BST膜の露出表面上に上部電極を形成する。これにより、所望の構造および電気的特性を有するキャパシタ素子を得ることができる。
【0135】
続けて、フォトリソグラフィ技術およびRIE技術により、上部電極、ならびに下層誘電体膜(STO膜)および上層誘電体膜(BST膜)からなる積層膜を加工して、図示しないメモリセル領域を形成する。さらに続けて、図示しない他の絶縁膜および配線などを形成することにより、所望の半導体装置を得る。ただし、それら各工程の詳細な説明は省略する。
【0136】
次に、前述した成膜方法により成膜されたキャパシタ誘電体膜を備える本実施形態のキャパシタ素子、および第2実施形態に係るキャパシタ素子のそれぞれの電気的特性に関して、本発明者らが実験および検討した結果について表2を参照しつつ説明する。以下の説明において、本実施形態のキャパシタ素子を第4実施例とする。また、第2実施形態の成膜方法により成膜されたキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子を第5実施例とする。
【0137】
【表2】
【0138】
表2から明らかなように、キャパシタ素子の主な電気的特性である比誘電率、ならびに正バイアスおよび負バイアス印加時の各リーク電流について、第4実施例のキャパシタ素子は、第5実施例のキャパシタ素子と同等以上の性能を有していることが分かる。
【0139】
以上説明したように、この第3実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、キャパシタ誘電体膜の下層誘電体膜(STO膜)を、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層(Sr酸化物層)と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層(Ti酸化物層)とを交互に積層して形成する。これにより、下層誘電体膜を略同じ工程の繰り返しにより成膜可能である。それとともに、下層誘電体膜を成膜する際の組成成分を容易に制御できる。特に、Sr酸化物層およびTi酸化物層のそれぞれの原料として、それら各層の酸化物が堆積する際に互いに相互作用を及ぼし合う原料であるDPM錯体を採用するので、互いに異なる酸化物からなる2種類の層の形成工程を自律的に制御できる。これにより、堆積させる層の種類を変える毎に反応容器内から不要な原料ガスを排気して、異なる種類の原料ガスが互いに混じらないように入れ換えるなどの作業が不要となる。
【0140】
つまり、キャパシタ誘電体膜の成膜プロセスのさらなる簡素化および短時間化を図って、より効率よく、かつ、より容易にキャパシタ誘電体膜を成膜できる。ひいては、このキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子の形成プロセスのさらなる簡素化および短時間化を図って、より効率よく、かつ、より容易にキャパシタ素子を形成できる。
【0141】
したがって、この第3実施形態の半導体装置は、電子デバイスのダウンサイジング化に伴う電気的特性の劣化をより抑制して、電気的特性の向上をより図り得るとともに、より効率よく、より容易に形成可能で、かつ、より良質なキャパシタ素子を具備している。また、この第3実施形態の半導体装置の製造方法は、そのようなキャパシタ素子を具備した、より良質な半導体装置をより効率よく、かつ、より容易に製造できる。
【0142】
(第4の実施の形態)
次に、本発明に係る第4実施形態を図12を参照しつつ説明する。図12は、第4実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。なお、図1と同一部分は同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0143】
この第4実施形態では、キャパシタ誘電体膜を、第3実施形態と同様の成膜方法により、STO膜を用いてCVD法により成膜する。ただし、本実施形態においては、第1〜第3実施形態において説明したように、2段階成長法を用いてキャパシタ誘電体膜を下層誘電体膜および上層誘電体膜からなる2層構造に形成する成膜方法は採用しない。本実施形態においては、H2Oガスの供給および吸着と金属原料のガスの供給とを交互に行う成膜方法を用いて、キャパシタ誘電体膜全体を一体のSTO膜として成膜する。これは、本実施形態のキャパシタ誘電体膜の成膜方法が、次の理由により実用上十分可能になったためである。
【0144】
第3実施形態において説明したように、Srを含む原料およびTiを含む原料の各原料としてDPM錯体を用いるとともに、第3実施形態の成膜プロセスのシーケンスを用いる。これにより、STO膜を成膜する際の組成成分を容易に制御できるとともに、成膜プロセスを簡素化でき、かつ、成膜プロセスに掛かる時間を短縮できる。したがって、第3実施形態において説明した成膜方法を採用することにより、キャパシタ誘電体膜全体をSTO膜を用いて成膜することが実用上十分可能となる。
【0145】
また、第2実施形態において説明したように、Srの酸化物層とTiの酸化物層とを交互に堆積させてSTO膜を成膜する成膜方法によれば、約300℃でSTO膜の結晶化が可能となる。これにより、キャパシタ誘電体膜を成膜する際の熱が、半導体装置内の他の電子デバイスなどに与える負荷を抑制もしくは低減できる。したがって、半導体装置へのキャパシタ素子の搭載位置の自由度が向上する。例えば、約300℃という結晶化温度は、熱に弱いアルミニウム多層配線構造を有する半導体基板上にキャパシタ素子を形成する場合に適用可能な十分低い温度である。
【0146】
本実施形態は、以上説明した特徴を利用することにより、複数層(多層)に配置されたアルミニウム(Al)配線の上に、キャパシタ誘電体膜としてSTO膜を採用したキャパシタ素子を形成するものである。以下、本実施形態の半導体装置およびその製造方法について詳述する。
【0147】
先ず、図12(a)に示すように、第1および第2実施形態と同様に、素子分離領域1などが形成された基板本体2上に、トランジスタ3、ビット線4、およびコンタクトプラグ5などを形成する。それとともに、基板本体2上に、アルミニウム配線31を複数層に積層して形成する。本実施形態においては、アルミニウム配線31を2層に積層して形成する。また、アルミニウム配線31が設けられている2層の配線層には、それらを積層方向に沿って貫通するコンタクトプラグ32を複数個設ける。この際、各コンタクトプラグ32を、それらの下層に設けられているコンタクトプラグ5と電気的に接続するように形成して、トランジスタ3の拡散層に連通させる。このように各素子を形成した後、それら各素子を層間絶縁膜6で被覆する。以下の説明において、前記各素子が設けられているとともに、後述するキャパシタ素子33などが設けられる基板本体2を、まとめて半導体基板34と称することとする。
【0148】
次に、最上層の層間絶縁膜6上にシリコン酸化膜9をプラズマCVD法により約500nm形成する。この後、コンタクトプラグ32の上方のシリコン酸化膜9をフォトリソグラフィ技術およびRIE技術によりエッチングして、後述するキャパシタ用下部電極35aの鋳型となるキャビティ36を形成する。これにより、コンタクトプラグ32の上面(表面)が露出する。
【0149】
次に、キャビティ内にバリアメタルとしての窒化チタン膜37をスパッタリング法により約20nm形成する。この際、窒化チタン膜37は、その下面(底面)がコンタクトプラグ32の上面に接触するように形成される。これにより、コンタクトプラグ32は、その上面を窒化チタン膜32の下面により覆われる。続けて、窒化チタン膜37の内側に、ルテニウム(Ru)膜14をスパッタリング法により約50nm形成する。続けて、半導体基板34の全面に図示しないフォトレジストを塗布した後、CMP法によりエッチバックを行い、窒化チタン膜37およびルテニウム膜14をキャビティ36の内部にのみ残存させる。この後、アッシャーにより、フォトレジストを除去する。これにより、ルテニウムからなるキャパシタ用電極35の下部電極35aが、半導体基板34上に選択的に形成される。
【0150】
次に、キャパシタ誘電体膜38を形成する。本実施形態においては、キャパシタ誘電体膜38全体を、Sr−Ti−O膜 [=STO膜]39を用いてCVD法により形成する。以下、STO膜39の成膜方法について詳述する。
【0151】
STO膜39の形成材料である、Sr,Tiを含むCVD法の原料としては、Sr(DPM)2 [=Sr(C11H19O2)2]、およびTi(DPM)2(i−OC3H7)2のそれぞれのTHF [=C4H8O]溶液を用いる。各THF溶液の濃度は、それぞれ約0.5モル/リットルである。成膜装置としては、第1および第2実施形態と同様に、ホットウォール型バッチ式CVD装置を用いる。
【0152】
先ず、キャパシタ用下部電極(ルテニウム電極)35aが形成された半導体基板34を、炉内温度が予め約300℃に設定されている反応炉(反応容器)内に導入する。半導体基板34が導入された反応炉の内部を真空排気した後、アルゴン(Ar)ガスで真空パージする。この状態で炉内温度が約300℃付近で安定するまで待つ。容器内温度が設定温度である300℃の±20℃程度まで安定したことを確認した後、反応容器内圧力を約5Torrに保持しつつ、反応容器内にH2Oガスを約45秒間導入する。導入されたH2Oガスは下部電極35aが形成された半導体基板34の露出表面上に吸着する。
【0153】
次に、H2Oガスの供給を保ちつつ、反応容器内圧力を約5Torrに保持した状態で、Srを含むCVD法の原料であるガス状のSr(DPM)2 [=Sr(C1 1H19O2)2]、およびTiを含むCVD法の原料であるガス状のTi(DPM)2(i−OC3H7)2を反応容器内に約60秒間導入する。H2Oが吸着している半導体基板34の露出表面に到達したSrの原料ガスは、吸着しているH2Oとの間で加水分解反応を起こす。これにより、図12(b)に示すように、半導体基板34および下部電極35aの露出表面上にSrを主成分とする酸化物の層40が1層形成される。H2Oガスの供給と、Srの原料ガスの供給とを略同時に行うことにより、キャパシタ用下部電極35aが形成された半導体基板34の露出表面を、1層のSr酸化物層40により略完全に被覆する。Srの原料とTiの原料とが共存している状態では、Srの原料の影響によりTiの酸化物の堆積は殆ど起こらない。
【0154】
また、この状態において、下部電極35aは、その外側面および外側下面(底面)が窒化チタン膜37に接触して覆われている。この下部電極35aの窒化チタン膜37に接触している部分を、例えば下部電極23aの外側表面とする。それとともに、下部電極35aは、その内側面および内側下面など、前記外側表面以外の部分がSTO膜39の一部を形成するSr酸化物層40に接触して覆われている。この下部電極35aのSr酸化物層40に接触している部分を、例えば下部電極35aの内側表面とする。このように、下部電極35aは、その外側表面を窒化チタン膜37により覆われるとともに、その内側表面をSr酸化物層40により覆われる。これにより、下部電極35aは、その表面全体が外部に露出されない。
【0155】
次に、H2OガスおよびSrの原料ガスの供給を断ち、Tiの原料ガスのみを反応容器内に約20秒間導入する。すると、Sr酸化物層40の露出表面上に到達したTiの原料ガスは、吸着しているH2Oとの間で加水分解反応を起こす。これにより、Sr酸化物層40の露出表面上にTiの酸化物の層41が1層形成される。すなわち、Sr酸化物層40の露出表面を、1層のTi酸化物層41により略完全に被覆する。
【0156】
以上説明した工程により、1層のSr酸化物層40および1層のTi酸化物層41からなるSTO膜39を約80秒間で成膜する。また、本実施形態においては、これら1層のSr酸化物層40および1層のTi酸化物層41からなるSTO膜39の膜厚が、約0.5nmとなるように成膜条件を設定する。
【0157】
この後、前述したように、H2Oガス、Srの原料ガス、およびTiの原料ガスの供給と、Tiの原料ガスのみの供給とを交互に繰り返すことにより、所望の構造および膜厚を有するSTO膜39を半導体基板34およびキャパシタ下部電極35aの露出表面上に成膜できる。本実施形態においては、H2Oガス、Srの原料ガス、およびTiの原料ガスの供給と、Tiの原料ガスのみの供給とを、それぞれ40回ずつ約1時間かけて交互に繰り返す。これにより、図12(b)に示すように、半導体基板34およびキャパシタ用下部電極35aの露出表面を、膜厚が約20nmのSTO膜39により略完全に被覆する。このように、本実施形態のSTO膜39は、実際にはSr酸化物層40およびTi酸化物層41がそれぞれ40層ずつ交互に積層された多層構造に成膜される。ただし、図12(b)においては、図面を見易くするために、Sr酸化物層40およびTi酸化物層41をそれぞれ1層ずつだけ描いて、STO膜39を簡略化して示す。また、同じく図面を見易くするために、Sr酸化物層40およびTi酸化物層41、ならびにSTO膜39全体のそれぞれの実際の厚さを無視して描いた。
【0158】
以上説明した工程により、図12(b)に示すように、キャパシタ用下部電極23aが選択的に設けられた半導体基板34の露出表面上に、この露出表面を覆うように結晶化したSTO膜39が成膜される。結晶化したSTO膜39は、一般的なキャパシタ誘電体膜の形成材料であるシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、あるいはシリコン酸化膜の積層膜(NO膜)などよりも高い比誘電率を発現することができる。したがって、結晶化したSTO膜39により形成されたキャパシタ誘電体膜38は、高誘電体膜として形成されている。
【0159】
次に、キャパシタ用電極35の他方の電極であるキャパシタ用上部電極35bを、キャパシタ誘電体膜38の露出表面を覆うように設ける。図12(b)に示すように、下部電極35aとの間にキャパシタ誘電体膜38を挟むように、キャパシタ誘電体膜38の露出表面上に上部電極35bを形成する。本実施形態においては、上部電極35bを、下部電極35aと同様に、ルテニウム膜を用いて形成する。これにより、所望の構造および電気的特性を有するキャパシタ素子33を得ることができる。
【0160】
続けて、フォトリソグラフィ技術およびRIE技術により、上部電極35b(ルテニウム膜)およびキャパシタ誘電体膜38(STO膜39)からなる積層膜を加工して、図示しないメモリセル領域を形成する。さらに続けて、図示しない他の絶縁膜および配線などを形成することにより、所望の半導体装置を得る。ただし、それら各工程の詳細な説明は省略する。
【0161】
次に、キャパシタ誘電体膜38を備える本実施形態のキャパシタ素子33、および第2実施形態と略同じキャパシタ素子のそれぞれの電気的特性に関して、本発明者らが実験および検討した結果について表3を参照しつつ説明する。以下の説明において、キャパシタ誘電体膜38を備える本実施形態のキャパシタ素子33を第6実施例とする。また、STO膜25aおよびBST膜25bの積層膜を用いてキャパシタ誘電体膜24を2段階成膜した第2実施形態と同様の成膜方法により、STO膜を2段階成膜したキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子を第7実施例とする。ただし、この第7実施例のSTO膜には、結晶化熱処理を施さないものとする。
【0162】
【表3】
【0163】
表3から明らかなように、キャパシタ素子の主な電気的特性である比誘電率、ならびに正バイアスおよび負バイアス印加時の各リーク電流について、第6実施例のキャパシタ素子33と第7実施例のキャパシタ素子とでは、それらの間に大差がないことが分かる。
【0164】
以上説明したように、この第4実施形態によれば、第2および第3実施形態と同様の効果を得ることができる。また、STO膜39を用いてキャパシタ誘電体膜38全体を成膜する際の成膜温度を低温化できるので、STO膜39を備えるキャパシタ素子33の半導体装置内での形成位置の自由度が向上されている。これにより、キャパシタ素子33を半導体装置内の所望の位置に容易に組み込むことができる。具体的には、前述したように、熱に弱いアルミニウム配線31の上方においてSTO膜39を成膜できるので、特に図示しないDRAM混載LSIなどを製造する際に、以下に述べるような利点がある。
【0165】
多層配線構造を有する半導体装置において、局所的に段差を形成し易いキャパシタ素子をより上層に配置することができるので、多層配線構造を形成し易くなる。
【0166】
キャパシタ素子を形成する以前の段階、すなわち多層配線を形成する工程までは、SrやRuなどの金属を用いていないので、基板の汚染を考慮する必要が殆どない。
【0167】
さらに、キャパシタ誘電体膜38全体を、Sr酸化物層40とTi酸化物層41とを交互に積層して形成する。これにより、キャパシタ誘電体膜38全体を略同じ工程の繰り返しにより成膜可能である。それとともに、キャパシタ誘電体膜38を成膜する際の組成成分を容易に制御できる。したがって、キャパシタ誘電体膜38の成膜プロセスの大幅な簡素化および短時間化を図って、極めて効率よく、かつ、より容易にキャパシタ誘電体膜38を成膜できる。ひいては、このキャパシタ誘電体膜38を備えるキャパシタ素子33の形成プロセスの大幅な簡素化および短時間化を図って、極めて効率よく、かつ、より容易にキャパシタ素子33を形成できる。
【0168】
したがって、この第4実施形態の半導体装置は、電子デバイスのダウンサイジング化に伴う電気的特性の劣化をより抑制して、電気的特性の向上をより図り得るとともに、極めて効率よく、より容易に形成可能で、かつ、より良質なキャパシタ素子33を具備している。また、この第4実施形態の半導体装置の製造方法は、そのようなキャパシタ素子33を具備した、より良質な半導体装置を極めて効率よく、かつ、より容易に製造できる。
【0169】
なお、本発明に係る半導体装置およびその製造方法は、前述した第1〜第4の各実施形態には制約されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、それらの構成、あるいは工程などの一部を種々様々な設定に変更したり、あるいは各種設定を適宜、適当に組み合わせて用いたりして実施することができる。
【0170】
例えば、第1実施形態においては、キャパシタ素子10の下部電極11aとしてルテニウム膜14を用いたが、これには限られない。例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、あるいはこれら各貴金属の合金から、キャパシタ用下部電極11aを形成しても構わない。この場合でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、上下両キャパシタ用電極は、VII−A族およびVIII族のうちの少なくとも1種類の金属元素を主たる成分として含む材料によって形成されていればよい。具体的には、Ru,Pt,Ir,Pd,Os,Re,Rhのうちの少なくとも1種類の元素を主たる成分として含む材料によって形成されていればよい。
【0171】
また、キャパシタ用下部電極11aとなるルテニウム膜14の成膜方法として、第1実施形態ではCVD法を用いているが、スパッタリング法、めっき法等による電極膜の成膜も可能である。
【0172】
また、キャパシタ下層誘電体膜16aとなる第1層目のSTO膜17a、およびキャパシタ上層誘電体膜16bとなる第2層目のSTO膜17bのそれぞれをCVD法により成膜する際に、Tiを含む原料として、Ti(DPM)2(i−OC3H7)2を用いたが、Tiのβジケトン系錯体を用いても同様の効果を得ることができる。例えば、Ti(DPM)2(t−OC4H9)2、Ti(DPM)2(i−OC4H9)2、TiO(DPM)2、Ti(MPD)(DPM)2などを用いても、Ti(DPM)2(i−OC3H7)2を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0173】
また、キャパシタ誘電体膜の主たる構成成分は、前述したSr,Ti,Baには限られない。ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素としては、II−A族、III−A族、およびIV−B族のうちの少なくとも1種類の金属元素であればよい。例えば、Aサイトを形成する金属元素としては、他にPbやLaなどがある。同様に、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する成分としては、IV−A族、V−A族、およびIV−B族のうちの少なくとも1種類の金属元素であればよい。例えば、Bサイトを形成する金属元素としては、他にZr,Nb,Ta,Snなどがある。
【0174】
また、第1実施形態で説明した2層構造のキャパシタ誘電体膜を形成するにあたり、下層誘電体膜および上層誘電体膜を互いに異なる材質で形成しても構わない。このような構成でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。あるいは、第2および第3実施形態で説明した2層構造のキャパシタ誘電体膜を形成するにあたり、下層誘電体膜および上層誘電体膜を同じ材質で形成しても構わない。このような構成でも、サーマルバジェットを低減できるなど、第2および第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0175】
また、第4実施形態で説明した一体構造のキャパシタ誘電体膜を、第1〜第3実施形態で説明した各種類のキャパシタ用下部電極上に成膜しても構わない。あるいは、第1〜第3実施形態で説明した2層構造の各キャパシタ誘電体膜を、第4実施形態で説明したルテニウムからなるキャパシタ用下部電極上に成膜しても構わない。本発明に係るキャパシタ誘電体膜は、その電気的特性の下地依存性が殆どないので、下地の種類によらず安定した電気的性能を発揮できる。
【0176】
また、第2〜第3実施形態で説明した各キャパシタ誘電体膜の、キャパシタ用下部電極との界面における構造から明らかなように、第1実施形態で説明したSr酸化物層を、キャパシタ誘電体膜の一部とみなしても構わない。
【0177】
さらに、本発明に係る半導体装置および半導体装置の製造方法は、その適用をDRAM等、現在、一般に普及している半導体装置には限られない。本発明に係る半導体装置および半導体装置の製造方法は、例えばFeRAMなど、将来において発展が期待される各種の微細な半導体装置を製造する際にも十分適用可能なのはもちろんである。
【0178】
【発明の効果】
本発明に係る半導体装置によれば、キャパシタ素子が備えるキャパシタ誘電体膜は、その電気的特性が向上されているとともに、容易に成膜可能である。これにより、電気的特性が向上されたキャパシタ素子を半導体装置内に容易に組み込むことができる。したがって、本発明に係る半導体装置は、電子デバイスのダウンサイジング化に伴う電気的特性の劣化を抑制して、電気的特性の向上を図り得るとともに、容易に形成可能なキャパシタ素子を備えた構成となっている。
【0179】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、キャパシタ素子が備えるキャパシタ誘電体膜の電気的特性を向上できるとともに、容易に、かつ、効率よく成膜できる。これにより、電気的特性が向上されたキャパシタ素子を半導体装置内に容易に、かつ、効率よく組み込むことができる。したがって、本発明に係る半導体装置の製造方法は、電子デバイスのダウンサイジング化に伴う電気的特性の劣化を抑制して、電気的特性の向上を図り得るとともに、容易に、かつ、効率よく形成可能なキャパシタ素子を備えた半導体装置を効率よく容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図。
【図2】第1実施形態に係るキャパシタ下部電極上にSrの酸化物の層が形成される仕組みを模式的に示す工程断面図。
【図3】第1実施形態および従来技術に係るキャパシタ素子に流れるリーク電流の印加電圧依存性をそれぞれグラフにして示す図。
【図4】第1実施形態および従来技術に係るキャパシタ誘電体膜中のSr/Ti比の深度依存性をそれぞれグラフにして示す図。
【図5】第1実施形態および従来技術に係るキャパシタ誘電体膜中のエネルギーバンド構造を模式的に示す図。
【図6】第2実施形態に係る半導体装置のキャパシタ素子付近の構造を示す断面図。
【図7】第2実施形態に係るキャパシタ素子の下部電極上にSrおよびTiの酸化物の層が交互に積層されて形成される仕組みを模式的に示す工程断面図。
【図8】第3実施形態に係る金属酸化物堆積量の金属原料供給時間依存性を各金属の原料ごとにグラフにして示す図。
【図9】第3実施形態に係る金属酸化物堆積量のH2Oおよび金属原料の供給サイクル数依存性を各金属の原料ごとにグラフにして示す図。
【図10】第3実施形態に係る金属酸化物堆積量のH2Oおよび混合金属原料の供給サイクル数依存性を各金属の原料ごとにグラフにして示す図。
【図11】第3実施形態および第2実施形態に係るキャパシタ誘電体膜の製造プロセスの1サイクルのシーケンスを示す図。
【図12】第4実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図。
【符号の説明】
2…基板本体
7,21,34…半導体基板
10,22,33…キャパシタ素子(高誘電体キャパシタ素子)
11,23,35…キャパシタ用電極
11a,23a,35a…キャパシタ用下部電極
11b,23b,35b…キャパシタ用上部電極
14…ルテニウム膜
15,26,40…Sr酸化物層(ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層)
16,38…キャパシタ誘電体膜
16a,24a,33a…キャパシタ下層誘電体膜
16b,24b,33b…キャパシタ上層誘電体膜
17a,17b,25a,39…STO膜(Sr−Ti−O膜)
25b…BST膜(Ba−Sr−Ti−O膜)
27,41…Ti酸化物層(ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層)
28…白金膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置のキャパシタ構造に係り、特にキャパシタ用誘電体膜としてBST、STO等のペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物薄膜を使用して、キャパシタの電気的特性および加工性の改良を図った半導体装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子デバイスのダウンサイジング化に伴い、単にデバイス内部の回路構成を工夫するだけでは、所望される電子デバイスの機能を得ることが困難になりつつある。所望される電子デバイスの機能を得るためには、機能性薄膜等のデバイスを構成する材料自体の特性をも利用して回路を形成することが有利になりつつある。電子デバイスの中には、情報の記憶動作を主な機能とするものがある。そのような電子デバイスとしては、例えば複数個のトランジスタ同士を組み合わせたSRAM(Static Random Access read write Memory)またはEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、あるいは複数個のトランジスタとキャパシタとを組み合わせたDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの各種集積回路が挙げられる。これらの集積回路の機能を、例えばMOSトランジスタおよびMOSキャパシタの各素子を組み合わせた回路構成のみで満足させることは、それら各素子のセル面積が縮小される中で非常に困難になりつつある。
【0003】
特に、キャパシタ素子のS/N比を低下させないためには、たとえ集積回路の最小加工寸法が小さくなっても、一定のキャパシタ容量を確保しなければならない。このため、キャパシタ素子用の誘電体膜として、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、あるいはシリコン酸化膜の積層膜(NO膜)などよりも高い比誘電率を発現する機能性薄膜の採用が検討されている。このような機能性薄膜は、例えばTa2O5,Ba−Sr−Ti−O(BST),Sr−Ti−O(STO),Pb−Zr−Ti−O(PZT),またはSr−Bi−Ta−O(SBT)等の材料によって形成されている。また、キャパシタ形成材料として機能性薄膜を採用することに伴って、FeRAM(Ferroelectric Random Access read write Memory)等の新しい機能を有するデバイスが提案され始めている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
とりわけ、BaxSr1−xTiO3 (BST)や、SrTiO3 (STO)などのペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物薄膜を有する金属酸化物は、数百以上の比誘電率を実現できる。このため、BSTやSTOなどをキャパシタ誘電体膜として採用することは、極めて大きな利点となる。ところが、BSTやSTOなどは複数の金属元素を含む金属酸化物であるために、それらの膜を例えばCVD法により成膜する場合、組成成分の制御の面で困難を伴う。
【0005】
また、BST膜やSTO膜を、例えば熱CVD法により成膜する場合、BaやSrの原料であるDPM [=C11H19O2]は、単体では極めて分解し難い。一方、Tiの原料は単体でも容易に成膜反応が起こる。しかも、一旦Tiを主成分とする膜が成膜され始めるとSrの原料の吸着が促進され、BST膜やSTO膜の成膜が始まる性質を有している。これにより、熱CVD法により形成されたBST膜やSTO膜と、それらの下部に存在する貴金属からなる電極との界面にTi層が偏析することになる。
【0006】
複数の価数を有する遷移元素のチタンは、界面に欠陥を生成し易い。このため、貴金属との界面にTi層が存在すると、十分なショットキー障壁(ショットキーバリア)を形成することが困難になり、リーク電流の増大をもたらすという問題があった。特に、下部電極側から電子注入を行う際のリーク電流の増大を引き起こすという問題があった。
【0007】
さらに、半導体装置の微細化に伴い、トランジスタ形成後の熱による負荷(サーマルバジェット)に対する制限が厳しくなる傾向にある。BSTやSTOの高い比誘電率は、ペロブスカイト結晶相が形成された場合にのみ実現される。ところが、BSTやSTOのペロブスカイト結晶相を形成するために、非晶質膜から結晶化させるのに要する熱処理温度は、STOで約575℃、BSTで約620℃と高い。これらのような高温は、BSTやSTOの薄膜を有するキャパシタを半導体装置に搭載するにあたり、大きな障害となる。
【0008】
本発明は、以上説明したような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電子デバイスのダウンサイジング化に伴う電気的特性の劣化を抑制して、電気的特性の向上を図り得るとともに、容易に形成可能なキャパシタ素子を備えた半導体装置を提供することにある。それとともに、そのような半導体装置を効率よく容易に製造できる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明に係る半導体装置は、基板上に選択的に設けられたキャパシタ用下部電極と、前記基板および前記下部電極の表面を覆うように設けられ、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物の単層構造ないしは複数層の積層構造からなるキャパシタ誘電体膜と、このキャパシタ誘電体膜の表面上に設けられたキャパシタ用上部電極と、を具備してなり、前記キャパシタ誘電体膜は、その前記下部電極との界面が前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層により形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
この半導体装置においては、キャパシタ誘電体膜が、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物の単層構造ないしは複数層の積層構造からなる、高誘電体膜として成膜されている。また、キャパシタ誘電体膜は、そのキャパシタ用下部電極との界面が、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層により形成されている。これにより、キャパシタ誘電体膜は、その下地となるキャパシタ用下部電極との界面において、チタンやジルコニウムなどのペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素の偏析が殆どない状態に成膜されている。したがって、キャパシタ誘電体膜中には、適正な高さのショットキー障壁(ショットキーバリア)が形成されており、このキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子に流れるリーク電流は抑制もしくは低減されている。このように、本発明に係る半導体装置が具備するキャパシタ素子は、その電気的特性が向上されている。
【0011】
また、キャパシタ誘電体膜は、先ず、そのキャパシタ用下部電極との界面がペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層により形成される。この後、その酸化物層を下地として、キャパシタ誘電体膜の残りの部分が成膜される。これにより、キャパシタ誘電体膜は、その成膜が容易である。ひいては、このキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子は、その形成が容易であり、半導体装置内に容易に組み込むことができる。
【0012】
また、本発明に係る半導体装置を実施するにあたり、その構成などの一部を以下に述べるような設定としても構わない。
【0013】
前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素は、Ba,Sr,Pb,Laのうちの少なくとも1種類の金属元素であるとともに、前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素は、Ti,Zr,Nb,Ta,Snのうちの少なくとも1種類の金属元素である。
【0014】
前記キャパシタ用下部電極および前記キャパシタ用上部電極は、それぞれVII−A族およびVIII族のうちの少なくとも1種類の金属元素を主たる成分として含む材料によって形成されている。
【0015】
前記キャパシタ用下部電極および前記キャパシタ用上部電極は、それぞれRu,Pt,Ir,Pd,Os,Re,Rhのうちの少なくとも1種類の金属元素を主たる成分として含む材料によって形成されている。
【0016】
本発明に係る半導体装置を実施するにあたり、その構成などの一部を以上述べたような各種設定とすることにより、キャパシタ誘電体膜や下部および上部のキャパシタ用電極の電気的特性を容易に向上させることができる。したがって、キャパシタ素子の電荷蓄積能力、ひいては半導体装置の電気的特性を容易に向上させることができる。
【0017】
また、前記課題を解決するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板上にキャパシタ素子の下部電極を設ける工程と、前記基板および前記下部電極の露出表面を覆うように、かつ、前記下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜を設ける工程と、前記下部電極との間に前記酸化物の層および前記キャパシタ誘電体膜を挟むように、前記キャパシタ素子の上部電極を前記キャパシタ誘電体膜の露出表面上に設ける工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0018】
この半導体装置の製造方法においては、基板およびキャパシタ素子の下部電極の露出表面を覆うように、かつ、下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜を設ける。これにより、キャパシタ誘電体膜を、高誘電体膜として成膜できるとともに、その下地となるキャパシタ素子の下部電極との界面において、チタンやジルコニウムなどのペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素の偏析が殆どない状態で成膜できる。したがって、キャパシタ誘電体膜中に適正な高さのショットキー障壁(ショットキーバリア)を形成して、このキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子に流れるリーク電流を抑制もしくは低減できる。このように、本発明に係る半導体装置の製造方法は、キャパシタ素子の電気的特性を向上できる。
【0019】
また、キャパシタ誘電体膜を成膜する際に、先ず、そのキャパシタ素子の下部電極との界面をペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層として形成する。この後、その酸化物層を下地として、キャパシタ誘電体膜の残りの部分を成膜する。これにより、キャパシタ誘電体膜を容易に、かつ、効率よく成膜できる。ひいては、このキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子を容易に、かつ、効率よく形成して、半導体装置内に容易に組み込むことができる。
【0020】
また、前記課題を解決するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板上にキャパシタ素子の下部電極を設ける工程と、前記基板および前記下部電極の露出表面を覆うように、かつ、前記下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、該ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層とを、それぞれ少なくとも1層ずつ交互に積層して、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜の下層誘電体膜を設ける工程と、この下層誘電体膜の露出表面を覆うように、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜の上層誘電体膜を設ける工程と、前記下部電極との間に前記下層誘電体膜および前記上層誘電体膜の2層構造からなる前記キャパシタ誘電体膜を挟むように、前記上層誘電体膜の露出表面上に前記キャパシタ素子の上部電極を設ける工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0021】
この半導体装置の製造方法においては、キャパシタ誘電体膜を下層誘電体膜および上層誘電体膜の2層構造に形成する。そして、基板およびキャパシタ素子の下部電極の露出表面を覆うように、かつ、下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなる下層誘電体膜を設ける。これにより、下層誘電体膜を、その下地となるキャパシタ素子の下部電極との界面において、チタンやジルコニウムなどのペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素の偏析が殆どない状態で成膜できる。したがって、下層誘電体膜中、ひいてはキャパシタ誘電体膜全体中に、適正な高さのショットキー障壁(ショットキーバリア)を形成して、キャパシタ素子に流れるリーク電流を抑制もしくは低減できる。
【0022】
また、下層誘電体膜の露出表面を覆うように、同じく組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜の上層誘電体膜を設ける。これにより、キャパシタ誘電体膜を、その下層誘電体膜および上層誘電体膜ともにペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなる高誘電体膜として成膜する。このように、本発明に係る半導体装置の製造方法は、キャパシタ素子の電気的特性を向上できる。
【0023】
また、下層誘電体膜を、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層とを、それぞれ少なくとも1層ずつ交互に積層して成膜する。これにより、例えば下層誘電体膜をCVD法により成膜する場合、成膜中の組成成分を容易に制御できるので、下層誘電体膜を容易に、かつ、効率よく成膜できる。さらに、下層誘電体膜をシード層として、上層誘電体膜を容易に、かつ、効率よく成膜することができる。したがって、キャパシタ誘電体膜全体を容易に、かつ、効率よく成膜できる。ひいては、このキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子を容易に、かつ、効率よく形成して、半導体装置内に容易に組み込むことができる。
【0024】
さらに、前記課題を解決するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板上にキャパシタ素子の下部電極を設ける工程と、前記基板および前記下部電極の露出表面を覆うように、かつ、前記下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、該ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層とを、それぞれ少なくとも1層ずつ交互に積層して、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜を設ける工程と、前記下部電極との間に前記キャパシタ誘電体膜を挟むように、前記キャパシタ誘電体膜の露出表面上に前記キャパシタ素子の上部電極を設ける工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0025】
この半導体装置の製造方法においては、基板およびキャパシタ素子の下部電極の露出表面を覆うように、かつ、下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜を設ける。これにより、キャパシタ誘電体膜を、高誘電体膜として成膜できるとともに、その下地となるキャパシタ素子の下部電極との界面において、チタンやジルコニウムなどのペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素の偏析が殆どない状態で成膜できる。したがって、キャパシタ誘電体膜中に、適正な高さのショットキー障壁(ショットキーバリア)を形成して、キャパシタ素子に流れるリーク電流を抑制もしくは低減できる。このように、本発明に係る半導体装置の製造方法は、キャパシタ素子の電気的特性を向上できる。
【0026】
また、キャパシタ誘電体膜を、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層とを交互に積層して成膜する。これにより、キャパシタ誘電体膜全体を略同じ工程の繰り返しにより成膜可能である。それとともに、例えばキャパシタ誘電体膜をCVD法により成膜する場合、成膜中の組成成分を容易に制御できる。したがって、キャパシタ誘電体膜の成膜プロセスの簡素化および短時間化を図って、キャパシタ誘電体膜を容易に、かつ、効率よく成膜できる。ひいては、このキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子の形成プロセスの簡素化および短時間化を図って、キャパシタ素子を容易に、かつ、効率よく形成して、半導体装置内に容易に組み込むことができる。
【0027】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法を実施するにあたり、その工程などの一部を以下に述べるような設定としても構わない。
【0028】
前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層の原料、および前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層の原料として、それら各酸化物が堆積する際に互いに相互作用を及ぼし合う原料を採用する。
【0029】
前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層の原料、および前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層の原料として、ともにDPM錯体を採用する。
【0030】
前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素として、II−A族、III−A族、およびIV−B族のうちの少なくとも1種類の金属元素を含ませ、かつ、前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素として、IV−A族、V−A族、およびIV−B族のうちの少なくとも1種類の金属元素を含ませる。
【0031】
前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素として、Ba,Sr,Pb,Laのうちの少なくとも1種類の金属元素を含ませ、かつ、前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素として、Ti,Zr,Nb,Ta,Snのうちの少なくとも1種類の金属元素を含ませる。
【0032】
前記キャパシタ素子の下部電極および上部電極を、それぞれVII−A族およびVIII族のうちの少なくとも1種類の金属元素を主たる成分として含む材料によって形成する。
【0033】
前記キャパシタ素子の下部電極および上部電極を、それぞれRu,Pt,Ir,Pd,Os,Re,Rhのうちの少なくとも1種類の金属元素を主たる成分として含む材料によって形成する。
【0034】
本発明に係る半導体装置の製造方法を実施するにあたり、その工程などの一部を以上述べたような各種設定とすることにより、キャパシタ誘電体膜や下部および上部のキャパシタ用電極の電気的性能を容易に向上させることができる。したがって、キャパシタ素子の電荷蓄積能力、ひいては半導体装置の電気的性能を容易に向上させることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
【0036】
(第1の実施の形態)
先ず、本発明に係る第1実施形態を図1〜図5を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置のキャパシタ素子付近の構成および製造工程を示す断面図である。図2は、第1実施形態に係るキャパシタ素子の下部電極上にSrの酸化物の層が形成される仕組みを模式的に示す工程断面図である。図3は、第1実施形態および従来技術に係るキャパシタ素子に流れるリーク電流の印加電圧依存性をそれぞれグラフにして示す図である。図4は、第1実施形態および従来技術に係るキャパシタ誘電体膜中のSr/Ti比の深度依存性をそれぞれグラフにして示す図である。図5は、第1実施形態および従来技術に係るキャパシタ誘電体膜中のエネルギーバンド構造を模式的に示す図である。
【0037】
本実施形態では、キャパシタ素子のキャパシタ誘電体膜を、STO膜を用いて第1層および第2層の2段階に成膜する。そして、第2層目のSTO膜のシード層となる第1層目のSTO膜を成膜するのに先立って、この第1層目のSTO膜とその下地となるキャパシタ素子の下部電極との界面に、予めストロンチウム(Sr)を主成分とする酸化物の層を形成しておくことを特徴とするものである。以下、本実施形態の半導体装置について詳細に説明する。
【0038】
先ず、図1(a)に示すように、素子分離領域1などが形成された基板本体2上に、トランジスタ3、ビット線4、およびコンタクトプラグ5などを形成した後、これらを層間絶縁膜6で被覆する。以下の説明において、前記各素子が設けられているとともに、後述するキャパシタ素子10などが設けられる基板本体2を、まとめて半導体基板7と称することとする。
【0039】
次に、層間絶縁膜6上に電極支持層となるシリコン窒化膜8をLPCVD法により約80nm形成する。続けて、シリコン窒化膜8上にシリコン酸化膜9をプラズマCVD法により約500nm形成する。この後、コンタクトプラグ5の上方のシリコン酸化膜9およびシリコン窒化膜8を、フォトリソグラフィ技術およびRIE技術によりエッチングして、後述するキャパシタ用下部電極11aの鋳型となるキャビティ12を形成する。これにより、コンタクトプラグ5の上面(表面)が露出する。
【0040】
次に、キャビティ12内にバリアメタルとしての窒化チタンアルミニウム膜13をスパッタリング法により約20nm形成する。この際、窒化チタンアルミニウム膜13は、その下面(底面)がコンタクトプラグ5の上面に接触するように形成される。これにより、コンタクトプラグ5は、その上面を窒化チタンアルミニウム膜13の下面により覆われる。続けて、窒化チタンアルミニウム膜13の内側に、ルテニウム(Ru)−CVD法のシードとして用いるルテニウム膜をスパッタリング法により約10nm形成する。続けて、このルテニウム膜の内側に、Ru(EtCp)2 [=Ru(C7H9)2]を原料として用いる熱CVD法により、ルテニウム膜をさらに約25nm形成し、合計約35nmのルテニウム(Ru)膜14を形成する。続けて、半導体基板7の全面に図示しないフォトレジストを塗布した後、CMP法によりエッチバックを行い、窒化チタンアルミニウム膜13およびルテニウム膜14をキャビティ12の内部にのみ残存させる。この後、アッシャーにより、フォトレジストを除去する。これにより、キャパシタ素子10が備える2つのキャパシタ用電極11のうちの一方の電極である、ルテニウムからなるキャパシタ用下部電極11aが、半導体基板7上に選択的に形成される。
【0041】
この際、キャパシタ用下部電極11aは、その外側から窒化チタンアルミニウム膜13により包まれた状態となっている。すなわち、キャパシタ用下部電極11aは、その外側表面が窒化チタンアルミニウム膜13に接触して、露出しないように覆われた状態となっている。また、図1(a)に示す電極形状は、一般に凹形状と称される。このような凹型のキャパシタ用下部電極11aを有するキャパシタ素子10の構造は、一般にConcave(凹型)構造と称される。
【0042】
次に、後述するキャパシタ誘電体膜16を成膜するのに先立って、下部電極11aの露出表面を覆うように、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする、酸化物の層15を設ける。この金属酸化物の層15は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素として、II−A族、III−A族、およびIV−B族のうちの少なくとも1種類の金属元素を含む原料を用いて形成される。具体的には、金属酸化物の層15は、Ba,Sr,Pb,Laのうちの少なくとも1種類を含む原料を用いて形成されることが好ましい。本実施形態においては、ストロンチウム(Sr)を含む原料を用いて、Srを主成分とする酸化物の層15を形成する。
【0043】
また、本実施形態においては、このSr酸化物層15を、キャパシタ誘電体膜16を成膜するための図示しない成膜装置を用いて形成する。具体的には、図示しないホットウォール型バッチ式CVD装置を用いて金属酸化物の層15を形成する。本装置は、酸化剤として高純度酸素およびH2Oガスを供給可能である。以下、Sr酸化物層15の形成方法について詳述する。
【0044】
先ず、下部電極(ルテニウム電極)11aが形成された半導体基板7を、炉内温度が予め300℃に設定されている図示しない反応炉(反応容器)内に導入する。半導体基板7が導入された反応炉の内部を真空排気した後、アルゴン(Ar)ガスで真空パージする。この状態で炉内温度が約300℃付近で安定するまで待つ。
【0045】
容器内温度が設定温度である300℃の±20℃程度まで安定したことを確認した後、反応容器内圧力を約5Torrに保持しつつ、反応容器内にH2Oガスを約45秒間導入する。導入されたH2Oガスは、図2(a)に示すように、半導体基板7の露出表面に吸着する。この後、反応容器内の雰囲気を排気して、気相中のH2Oガスの分圧を十分に低下させる。
【0046】
次に、反応容器内圧力を約5Torrに保持しつつ、Sr酸化物層15の原料であるガス状のSr(DPM)2 [=Sr(C11H19O2)2]を反応容器内に約30秒間導入する。通常、気相中に例えばO2またはH2Oなどの酸化剤が存在しない場合には、約300℃ではSrの原料ガスの分解反応は起こらない。ところが、半導体基板7の露出表面にはH2Oが吸着しているので、図2(b)に示すように、半導体基板7の露出表面に到達したSrの原料ガスは、半導体基板7の露出表面に吸着しているH2Oとの間で加水分解反応を起こす。これにより、図2(c)に示すように、下部電極11aが形成された半導体基板7の露出表面上にSrを主成分とする酸化物の層(薄膜)15が1層形成される。このSr酸化物層15は、後にキャパシタ誘電体膜16の一部となるものである。すなわち、Sr酸化物層15の組成および電気的性質を鑑みれば、Sr酸化物層15をキャパシタ誘電体膜16の一部とみなしても、本発明の趣旨を何ら逸脱もしくは妨げるものではない。
【0047】
本発明者らが行った実験によれば、Srの原料ガスの分子は巨大なので、前述したようにH2Oガスの供給と、Srの原料ガスの供給とをそれぞれ1回ずつ行っただけでは、半導体基板7の露出表面をSr酸化物層15で完全に被覆できないことが判明した。このため、H2Oガスの供給と、Srの原料ガスの供給とをそれぞれ3回ずつ交互に繰り返した。これにより、下部電極11aの露出表面を含めて、半導体基板7の露出表面を1層のSr酸化物層15で略完全に被覆することができた。なお、図2(a)〜(c)においては、半導体基板7の表面にSr酸化物層15が形成される仕組みを理解し易くするために、H2O分子やSr分子を模式的に描いた。
【0048】
また、この状態において、下部電極11aは、その外側面および外側下面(底面)が窒化チタンアルミニウム膜13に接触して覆われている。この下部電極11aの窒化チタンアルミニウム膜13に接触している部分を、例えば下部電極11aの外側表面とする。それとともに、下部電極11aは、その内側面および内側下面など、前記外側表面以外の部分がSr酸化物層15に接触して覆われている。この下部電極11aのSr酸化物層15に接触している部分を、例えば下部電極11aの内側表面とする。このように、下部電極11aは、その外側表面を窒化チタンアルミニウム膜13により覆われるとともに、その内側表面をSr酸化物層15により覆われる。これにより、下部電極11aは、その表面全体が外部に露出されない。
【0049】
次に、キャパシタ誘電体膜16を形成する。本実施形態においては、キャパシタ誘電体膜16を、キャパシタ用下部電極11aと接触する下層誘電体膜16a、および後述するキャパシタ用電極11の他方の電極であるキャパシタ用上部電極11bと接触する上層誘電体膜16bの2層構造に形成する。また、下層誘電体膜16aおよび上層誘電体膜16bを、ともにペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物の膜を用いて形成する。
【0050】
ここで、本実施形態のキャパシタ誘電体膜16を形成するペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物について簡潔に説明する。
【0051】
ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物は、一般に、その組成式をABO3−d:0≦d≦1で表される。この組成式中Aは、ペロブスカイト型結晶構造中のいわゆるAサイトを形成する所定の金属元素を表す。このAサイトを形成する金属元素は、通常、II−A族、III−A族、およびIV−B族のうちのいずれかの金属元素である。同様に、前記組成式中Bは、ペロブスカイト型結晶構造中のいわゆるBサイトを形成する所定の金属元素を表す。このBサイトを形成する金属元素は、通常、IV−A族、V−A族、およびIV−B族のうちのいずれかの金属元素である。
【0052】
したがって、キャパシタ誘電体膜16を形成する金属酸化物の膜は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成するII−A族、III−A族、およびIV−B族のうちの金属元素を少なくとも1種類含んでいるとともに、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成するIV−A族、V−A族、およびIV−B族のうちの金属元素を少なくとも1種類含んでいる原料により形成される。具体的には、この金属酸化物の膜は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素としてBa,Sr,Pb,Laのうちの少なくとも1種類の金属元素を含むとともに、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素としてTi,Zr,Nb,Ta,Snのうちの少なくとも1種類の金属元素を含む原料を用いて形成されることが好ましい。すなわち、キャパシタ誘電体膜16は、その組成式がABO3−d:0≦d≦1, A:Ba,Sr,Pb,La ; B:Ti,Zr,Nb,Ta,Snで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物の膜により形成されることが好ましい。
【0053】
本実施形態においては、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素としてSrを含むとともに、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素としてTiを含む原料を用いて、下層誘電体膜16aおよび上層誘電体膜16bを形成する。以下、下層誘電体膜16aおよび上層誘電体膜16bの成膜方法について詳述する。
【0054】
本実施形態においては、下層誘電体膜16aおよび上層誘電体膜16bを、ともにペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物膜であるSr−Ti−O膜 [=STO膜]を用いてCVD法により成膜する。この際、下層誘電体膜16aは、上層誘電体膜16bを成膜する際のシード層となる。また、STO膜の形成材料であるSrおよびTiを含むCVD法の原料としては、Sr(DPM)2 [=Sr(C11H19O2)2]およびTi(DPM)2(i−OC3H7)2のそれぞれのTHF [=C4H8O]溶液を用いる。各THF溶液の濃度は、それぞれ約0.5モル/リットルである。成膜装置としては、前述したホットウォール型バッチ式CVD装置を用いる。
【0055】
先ず、上面(表面)がSr酸化物層(薄膜)15で被覆された半導体基板7上に、第1層目のキャパシタ誘電体膜としての下層誘電体膜16aを成膜する。
【0056】
上面がSr酸化物層15で被覆された半導体基板7を、Sr酸化物層15を形成した反応容器内において約380℃で加熱し、下部電極11aを含めた半導体基板7上に、下層誘電体膜16aとなる第1層目のSTO膜17aを成膜する。この際、膜厚が約3nm、Sr/Ti比が約1.05のSTO膜17aが成膜されるように成膜条件を設定する。続けて、同じ反応容器内で、真空を破ることなく連続的にSTO膜17aに結晶化熱処理(アニール処理)を施す。この際、半導体基板7の周りの雰囲気を窒素で充満させるとともに、気圧を約133Paに設定する。この雰囲気下において、STO膜17aが形成された半導体基板7を約10分間、約575℃で加熱する。これにより、非晶質の状態であったSTO膜17a中にペロブスカイト型結晶構造が生成される。すなわち、ペロブスカイト型結晶構造を有するSTO膜17aの結晶膜からなる下層誘電体膜16aが、Sr酸化物層(薄膜)15の露出表面を覆うように、この露出表面上に成膜される。
【0057】
次に、下層誘電体膜16a上に第2層目のキャパシタ誘電体膜としての上層誘電体膜16bを成膜する。すなわち、第1層目のSTO膜17a上に積層するように、第2層目のSTO膜17bを連続して形成する。
【0058】
反応容器内の温度を、真空を保持した状態で約440℃まで昇温させ、成膜温度を約440℃に設定して、上層誘電体膜16bとなる第2層目のSTO膜17bを成膜する。この際、STO膜17bを、その膜厚が約17nmとなるように成膜する。また、第1層目のSTO膜17aは、第2層目のSTO膜17bの結晶成長のシード層として作用する。このため、第2層目のSTO膜17bは、約440℃という比較的低い成膜温度にも拘らず、成膜されつつ結晶化する。すなわち、STO膜17bは、いわゆるin−situ結晶化する。これにより、ペロブスカイト型結晶構造を有するSTO膜17bの結晶膜からなる上層誘電体膜16bが、下層誘電体膜16aの露出表面を覆うように、この露出表面上に成膜される。
【0059】
以上説明した工程により、図1(b)に示すように、半導体基板7上に選択的に設けられ、表面がSr酸化物層15で覆われたキャパシタ用下部電極11aの上に、2層のSTO膜17a,17bの結晶膜が成膜される。結晶化したSTO膜17a,17bは、一般的なキャパシタ誘電体膜の形成材料であるシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、あるいはシリコン酸化膜の積層膜(NO膜)などよりも高い比誘電率を発現することができる。したがって、結晶化した2層のSTO膜17a,17bにより形成されたキャパシタ誘電体膜16は、高誘電体膜として形成されている。
【0060】
次に、キャパシタ用電極11の他方の電極であるキャパシタ用上部電極11bを、上層誘電体膜16bの露出表面を覆うように設ける。図1(b)に示すように、下部電極11aとの間にキャパシタ誘電体膜16を挟むように、上層誘電体膜16bの露出表面上に上部電極11bを形成する。本実施形態においては、上部電極11bを、下部電極11aと同様にルテニウム膜を用いて形成する。これにより、所望の構造および電気的特性を有するキャパシタ素子10を得ることができる。
【0061】
続けて、フォトリソグラフィ技術およびRIE技術により、キャパシタ用上部電極11b(ルテニウム膜)、ならびに下層誘電体膜16a(STO膜17a)および上層誘電体膜16b(STO膜17b)からなる積層膜を加工して、図示しないメモリセル領域を形成する。さらに続けて、図示しない他の絶縁膜および配線などを形成することにより、所望の半導体装置を得る。ただし、それら各工程の詳細な説明は省略する。
【0062】
図3に、本実施形態のキャパシタ素子(STO薄膜キャパシタ)10の約85℃におけるリーク電流の印加電圧依存性を実線グラフで示す。併せて、図3に、Srの酸化物層の形成は行わずに、第1層目および第2層目のSTO膜を本実施形態と同様に成膜した従来技術に係るSTO薄膜キャパシタの約85℃におけるリーク電流の印加電圧依存性を破線グラフで示す。
【0063】
図3中に記載したように、それら両キャパシタの誘電特性値(Teq)は略同じである。ところが、それら両キャパシタのリーク電流特性は、図3中の実線グラフおよび破線グラフの形状から分かるように、互いに異なっている。特に、キャパシタ用下部電極側からの電子注入になる、キャパシタ用上部電極に正バイアスを印加した際のリーク電流特性が、大きく異なっている。従来技術のSTO薄膜キャパシタに比べると、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10は正バイアスを印加した際のリーク電流が低減されており、その差は約85℃で測定した際に顕著である。また、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10と従来技術のSTO薄膜キャパシタとでは、リーク電流の立ち上がり方も異なっていることが分かる。従来技術のSTO薄膜キャパシタに比べると、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10は正バイアスを印加した際のリーク電流が緩やかに立ち上がる。
【0064】
また、図4に、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10のSTO膜17a,17b中でのSr/Ti比の分布(深度依存性)を、オージェ電子分光法により測定した結果を実線グラフで示す。併せて、図4に、従来技術のSTO薄膜キャパシタのSTO膜中でのSr/Ti比の分布(深度依存性)を、オージェ電子分光法により測定した結果を破線グラフで示す。
【0065】
従来技術のSTO薄膜キャパシタでは、図4中の破線グラフの形状から分かるように、STO膜とその下地となるキャパシタ用下部電極との界面において、STO膜中にSrに比べて極めて多量のTiが含まれていることが分かる。すなわち、従来技術のSTO薄膜キャパシタでは、STO膜と下部電極(ルテニウム電極)との界面において、Tiの偏析が生じていることが分かる。これに対して、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10では、図4中の実線グラフの形状から分かるように、第1層目のSTO膜17aとその下地となるSr酸化物層15により覆われたキャパシタ用下部電極11aとの界面において、第1層目のSTO膜17a中に略同量のSrおよびTiが含まれていることが分かる。すなわち、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10では、第1層目のSTO膜17aと下部電極(ルテニウム電極)11aとの界面において、Tiの偏析が略完全に抑制されていることが分かる。
【0066】
下部電極(ルテニウム電極)の界面におけるTiの偏析は、キャパシタ用下部電極との界面におけるSTO膜中の酸素欠損濃度を高める。したがって、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10のSTO膜17a,17b中のエネルギーバンド構造、および従来技術のSTO薄膜キャパシタのSTO膜中のエネルギーバンド構造は、それぞれ図5(a)および(b)に示すようになっていると推定される。
【0067】
従来技術により2段階成膜されたSTO膜では、図5(b)に示すように、そのキャパシタ用下部電極との界面でバンドが急激に湾曲する。これにより、酸素欠損を介したトンネル伝導が生じ、STO薄膜キャパシタ中のリーク電流の急激な立ち上がりを惹起する。これに対して、本実施形態により2段階成膜されたSTO膜17a,17bでは、図5(a)に示すように、第1層目のSTO膜17aと下部電極(ルテニウム電極)11aとの界面において、STO膜17a中に良好なショットキー障壁(ショットキーバリア)が形成される。同様に、第2層目のSTO膜17bと上部電極(ルテニウム電極)11bとの界面において、STO膜17b中に良好なショットキー障壁が形成される。したがって、従来技術のSTO膜に比べると、本実施形態のSTO膜17a,17bはそれぞれの上下両界面におけるバンドの湾曲が緩やかである。この結果、本実施形態のSTO薄膜キャパシタ10は、従来技術のSTO薄膜キャパシタに比べてリーク電流が抑制もしくは低減されている。
【0068】
以上説明したように、この第1実施形態においては、半導体装置が具備するキャパシタ素子10のキャパシタ誘電体膜16が、結晶化された2層のSTO膜17a,17bを用いて形成されている。したがって、キャパシタ誘電体膜16は、高い比誘電率を発現できる高誘電体膜として形成されているので、キャパシタ素子10はその電荷蓄積能力が高められている。
【0069】
また、キャパシタ用下部電極11aとキャパシタ誘電体膜16の下層誘電体膜16aとの界面に、Sr酸化物層15が設けられている。これにより、キャパシタ誘電体膜16は、そのキャパシタ用下部電極11aとの界面において、チタン(Ti)やジルコニウム(Zr)などに代表されるペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素の偏析が殆どない状態に成膜されている。したがって、キャパシタ誘電体膜16中には、適正な高さのショットキー障壁(ショットキーバリア)が形成されているので、キャパシタ素子10に流れるリーク電流が抑制もしくは低減されている。
【0070】
実際の半導体装置の製造工程では、キャパシタ誘電体膜を成膜する半導体基板の表面には、電極膜、バリアメタル膜、および層間絶縁膜などの互いに膜種が異なる複数の膜が露出している。このような状態においても、本実施形態によれば、キャパシタ誘電体膜の電気的特性の下地依存性が殆ど無くなる。これにより、良質なペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなる薄膜をキャパシタ誘電体膜16として採用し、このキャパシタ誘電体膜16を備えるキャパシタ素子10に流れるリーク電流を抑制もしくは低減して、低い値に保持できる。したがって、キャパシタ誘電体膜16によるキャパシタ用下部電極11aなどの被覆率等が多少変化しても、電気的特性が向上された高誘電体キャパシタ素子10を安定して製造することができる。
【0071】
さらに、ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜16の大部分は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成するSrを主成分とするSr酸化物層15を下地として成膜される。これにより、キャパシタ誘電体膜16は容易に、かつ、効率よく成膜される。
【0072】
また、キャパシタ誘電体膜16の上層誘電体膜16bを、比較的低温で結晶化させつつ成膜できる。これにより、キャパシタ誘電体膜16の成膜プロセスにおける熱による負荷(サーマルバジェット)を抑制もしくは低減させて、キャパシタ誘電体膜16を容易に成膜できる。それとともに、キャパシタ誘電体膜16の成膜効率および品質を向上できる。ひいては、このキャパシタ誘電体膜16を備えるキャパシタ素子10を容易に形成できるとともに、キャパシタ素子10の形成効率および品質を向上できる。さらには、キャパシタ素子10を形成する際に、トランジスタ3やコンタクトプラグ5などの半導体装置が備える他の電子素子に与える熱による負荷を抑制もしくは低減できる。したがって、キャパシタ素子10を具備する半導体装置は、その全体の品質が向上されているとともに、効率よく容易に製造される。また、このような効果は、キャパシタ素子10を具備する半導体装置として、例えばDRAMが混載されている図示しないLSIを製造する際に極めて有利である。
【0073】
このように、本実施形態のキャパシタ素子10は、電気的特性が向上されているとともに、容易に、かつ、効率よく成膜可能なキャパシタ誘電体膜16を備えた高誘電体キャパシタ素子として形成されている。また、この高誘電体キャパシタ素子10は容易に、かつ、効率よく形成可能であるため、半導体装置内に容易に、かつ、効率よく組み込むことができる。したがって、この第1実施形態の半導体装置は、電子デバイスのダウンサイジング化に伴う電気的特性の劣化を抑制して、電気的特性の向上を図り得るとともに、容易に、かつ、効率よく形成可能なキャパシタ素子10を具備している。また、この第1実施形態の半導体装置の製造方法は、そのようなキャパシタ素子10を具備した半導体装置を効率よく容易に製造できる。
【0074】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る第2実施形態を図6および図7を参照しつつ説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置が具備するキャパシタ素子付近の構造を示す断面図である。図7は、第2実施形態に係るキャパシタ素子の下部電極上にSrおよびTiの酸化物の層が交互に積層されて形成される仕組みを模式的に示す工程断面図である。なお、図1と同一部分は同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0075】
この第2実施形態では、半導体装置が具備するキャパシタ素子のキャパシタ誘電体膜を、第1実施形態と同様に、CVD法により下層誘電体膜および上層誘電体膜の2層構造に形成する。この際、下層誘電体膜をSr−Ti−O膜 [=STO膜]を用いて形成するとともに、上層誘電体膜をBa−Sr−Ti−O膜 [=BST膜]を用いて形成する。つまり、本実施形態では、キャパシタ誘電体膜として、STO膜およびBST膜を2層に積層した積層膜を採用する。また、下層誘電体膜となる第1層目のキャパシタ誘電体膜を、第1実施形態で説明したSr酸化物層15の形成方法と同様の成膜方法により成膜する。つまり、H2Oガスの供給および吸着と、STO膜の主成分となるSrおよびTiを含む原料ガスの供給とを交互に行う。これにより、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成するSrを主成分とする酸化物の層と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成するTiを主成分とする酸化物の層とを交互に堆積させてSTO膜を成膜する。
【0076】
第1層目のキャパシタ誘電体膜としてSTO膜を用いる理由は、STO膜はBST膜に比べて結晶化温度が低いので、成膜中の結晶化熱処理温度を低く抑えることができるためである。また、BST膜の原料には、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素として、BaおよびSrの2種類の金属元素が含まれている。したがって、前述したSr酸化物層15の形成方法と同様の成膜方法によりBST膜を成膜しようとすると、Aサイトの酸化物層を形成する際に、その組成成分であるBaおよびSrの制御が困難になる。これにより、所望する構造および膜質を有するBST膜を得ることが困難になる。これを避けるために、第1層目のキャパシタ誘電体膜としてSTO膜を用いる。
【0077】
また、STO膜はペロブスカイト型結晶構造を有しており、Srを主成分とする酸化物の層(Sr−O面)と、Tiを主成分とする酸化物の層(Ti−O面)とが交互に積層された構造となっている。これにより、後述する本実施形態の半導体装置の製造方法を用いて、約300℃という比較的低い成膜温度でも、一部が既に結晶化したSTO膜を成膜することが可能である。また、一部が既に結晶化したSTO膜は、これを略完全に結晶化させるのに要する結晶化熱処理温度が、非晶質のSTO膜を結晶化させる場合に比べて約100℃程度低くできるという利点がある。
【0078】
なお、前述したSr酸化物層15の形成方法と同様の成膜方法により、膜厚が10nm以上のSTO膜およびBST膜の積層膜を成膜しようとすると、その成膜プロセスに掛かる時間の増大を招くことが懸念される。本実施形態では、Sr酸化物層15の形成方法と同様の成膜方法を、BST膜の結晶性長のシード層となるSTO膜の成膜プロセスに限定して採用する。これにより、STO膜およびBST膜の積層膜の成膜プロセスに掛かる時間の増大は、殆ど問題にならなくなる。以下、本実施形態の半導体装置およびその製造方法について詳述する。
【0079】
先ず、図6(a)に示すように、第1実施形態と同様に、素子分離領域1などが形成された基板本体2上に、トランジスタ3、ビット線4、およびコンタクトプラグ5などを形成した後、これらを層間絶縁膜6で被覆する。以下の説明において、前記各素子が設けられているとともに、後述するキャパシタ素子22などが設けられる基板本体2を、まとめて半導体基板21と称することとする。
【0080】
次に、層間絶縁膜6上に電極支持層となるシリコン窒化膜8をLPCVD法により約80nm形成する。続けて、シリコン窒化膜8上にシリコン酸化膜9をプラズマCVD法により約500nm形成する。この後、コンタクトプラグ5の上方のシリコン酸化膜9およびシリコン窒化膜8を、フォトリソグラフィ技術およびRIE技術によりエッチングして、後述するキャパシタ用下部電極23aの鋳型となる図示しないキャビティを形成する。これにより、コンタクトプラグ5の上面(表面)が露出する。
【0081】
次に、キャビティ内にバリアメタルとしての窒化チタンアルミニウム膜13をスパッタリング法により約20nm形成する。この際、窒化チタンアルミニウム膜13は、その下面(底面)がコンタクトプラグ5の上面に接触するように形成される。これにより、コンタクトプラグ5は、その上面を窒化チタンアルミニウム膜13の下面により覆われる。続けて、窒化チタンアルミニウム膜13の内側に、白金(Pt)膜28をスパッタリング法により約40nm形成する。続けて、半導体基板21の全面に図示しないフォトレジストを塗布した後、CMP法によりエッチバックを行い、窒化チタンアルミニウム膜13および白金膜28をキャビティの内部にのみ残存させる。この後、アッシャーにより、フォトレジストを除去する。これにより、白金からなるキャパシタ用電極23の下部電極23aが、半導体基板21上に選択的に形成される。
【0082】
次に、下層誘電体膜24aおよび上層誘電体膜24bの2層構造からなるキャパシタ誘電体膜24を形成する。本実施形態においては、下層誘電体膜24aをSr−Ti−O膜 [=STO膜]25aを用いて形成する。それとともに、上層誘電体膜23bをBa−Sr−Ti−O膜 [=BST膜]25bを用いて形成する。これらSTO膜25aおよびBST膜25bの積層膜は、CVD法により形成される。以下、STO膜25aおよびBST膜25bの積層膜の成膜方法について詳述する。
【0083】
STO膜25aおよびBST膜25bの形成材料であるBa,Sr,Tiを含むCVD法の原料としては、Ba(DPM)2 [=Ba(C11H19O2)2]、Sr(DPM)2 [=Sr(C11H19O2)2]、およびTi(DPM)2(i−OC3H7)2のそれぞれのTHF溶液、ならびにTi(i−OC3H7)4 [=TTIP]を用いる。各THF溶液の濃度は、それぞれ約0.5モル/リットルである。成膜装置としては、第1実施形態と同様に、ホットウォール型バッチ式CVD装置を用いる。
【0084】
先ず、半導体基板21上に第1層目のキャパシタ誘電体膜としての下層誘電体膜24aを成膜する。
【0085】
キャパシタ用下部電極(白金電極)23aが形成された半導体基板21を、炉内温度が予め約300℃に設定されている反応炉(反応容器)内に導入する。半導体基板21が導入された反応炉の内部を真空排気した後、アルゴン(Ar)ガスで真空パージする。この状態で炉内温度が約300℃付近で安定するまで待つ。容器内温度が設定温度である300℃の±20℃程度まで安定したことを確認した後、反応容器内圧力を約5Torrに保持しつつ、反応容器内にH2Oガスを約45秒間導入する。導入されたH2Oガスは半導体基板21およびキャパシタ用下部電極23aの露出表面に吸着する。
【0086】
次に、反応容器内圧力を約5Torrに保持しつつ、Srを含むCVD法の原料であるガス状のSr(DPM)2 [=Sr(C11H19O2)2]を反応容器内に約30秒間導入する。H2Oが吸着している半導体基板21および下部電極23aの露出表面の表面に到達したSrの原料ガスは、吸着しているH2Oとの間で加水分解反応を起こす。これにより、図7(a)に示すように、半導体基板21および下部電極23aの露出表面上に、Srを主成分とする酸化物の層26が1層形成される。このようなH2Oガスの供給と、Srの原料ガスの供給とをそれぞれ3回ずつ交互に繰り返す。これにより、キャパシタ用下部電極23aが形成された半導体基板21の露出表面は、1層のSr酸化物層26で略完全に被覆される。
【0087】
また、この状態において、下部電極23aは、その外側面および外側下面(底面)が窒化チタンアルミニウム膜13に接触して覆われている。この下部電極23aの窒化チタンアルミニウム膜13に接触している部分を、例えば下部電極23aの外側表面とする。それとともに、下部電極23aは、その内側面および内側下面など、前記外側表面以外の部分が、下層誘電体膜24aとなるSTO膜25aの一部を形成するSr酸化物層26に接触して覆われている。この下部電極23aのSr酸化物層26に接触している部分を、例えば下部電極23aの内側表面とする。このように、下部電極23aは、その外側表面を窒化チタンアルミニウム膜13により覆われるとともに、その内側表面をSr酸化物層26により覆われる。これにより、下部電極23aは、その表面全体が外部に露出されない。
【0088】
次に、炉内温度を約300℃±20℃に保持した状態で、前記シーケンスと同様のシーケンスにより、Sr酸化物層26の露出表面上にH2Oガスを吸着させる。続けて、反応容器内を排気し、気相中のH2Oの分圧を十分低下させた後に、反応容器内の圧力を約5Torrに設定する。この雰囲気下において、反応容器内にガス状のTi(i−OC3H7)4 [=TTIP]を約20秒間供給し、TTIPとSr酸化物層26の露出表面上に吸着しているH2Oとの間で加水分解反応を起こさせる。これにより、図7(b)に示すように、Sr酸化物層26の露出表面上にTiを主成分とするの酸化物の層27を1層形成する。このようなH2Oガスの供給と、TTIPガスの供給とをそれぞれ2回ずつ交互に繰り返す。これにより、Sr酸化物層26の露出表面は、1層のTi酸化物層27で略完全に被覆される。
【0089】
以上説明したSr酸化物層26を形成する工程と、Ti酸化物層27を形成する工程とを交互に繰り返すことにより、所望の構造および膜厚を有するSTO膜25aをキャパシタ用下部電極23aが形成された半導体基板21の露出表面上に成膜できる。また、本発明者らが行ったX線回折法を用いた測定によれば、前述した工程により成膜されたSTO膜25aは、その一部が既に結晶化していることが確認された。本実施形態では、Sr酸化物層26を形成する工程と、Ti酸化物層27を形成する工程とをそれぞれ8回ずつ交互に繰り返す。これにより、図6(b)および図7(c)に示すように、Sr酸化物層26とTi酸化物層27とが、それぞれ8層ずつ交互に積層されたSTO膜25aが成膜される。この際、図7(c)中hで示すSTO膜25aの膜厚が、約3nmとなるように設定した。ただし、図6(a)においては、図面を見易くするために、Sr酸化物層26およびTi酸化物層27をそれぞれ1層ずつだけ描いて、STO膜25aを簡略化して示す。また、図6(b)は、図6(a)中実線の円で囲んだ部分を拡大して示す図である。
【0090】
続けて、同じ反応容器内で、真空を破ることなく連続的にSTO膜25aに結晶化熱処理(アニール処理)を施す。この際、半導体基板21の周りの雰囲気を窒素で充満させるとともに、気圧を約133Paに設定する。この雰囲気下において、STO膜25aが成膜された半導体基板21を約10分間加熱する。本実施形態では、異なる成膜条件下で成膜されたキャパシタ誘電体膜24としてのSTO膜25aおよびBST膜25bの積層膜を採用したキャパシタ素子22の電気的特性を、各成膜条件間で比較することとした。このために、STO膜25aに対して、結晶化熱処理なし(非加熱処理)、約500℃で結晶化熱処理、そして約575℃で結晶化熱処理(従来技術と同じ)の3通りの結晶化熱処理を施した。この結果については、後に表1を参照しつつ説明する。
【0091】
以上説明した工程により、STO膜25aの結晶膜からなる下層誘電体膜24aが、キャパシタ用下部電極(白金電極)23a上に成膜される。
【0092】
次に、下層誘電体膜24a上に第2層目のキャパシタ誘電体膜としての上層誘電体膜24bを成膜する。すなわち、STO膜25a上に積層するように、SBT膜25bを連続して形成する。
【0093】
前述したように、STO膜25aに対して、非加熱処理を含めた3通りの結晶化熱処理を施した後、同じ反応容器内で、真空を破ることなく反応容器内の温度を約470℃まで昇温させる。この雰囲気下において、BST膜25bをその膜厚が約17nmとなるまで連続的に成膜する。BST膜25bのCVD法の原料としては、前述したBa(DPM)2、Sr(DPM)2、およびTi(DPM)2(i−OC3H7)2のそれぞれのTHF [=C4H8O]溶液を用いた。BST膜25bを成膜する際には、その下地として、一部ないしは全体が既に結晶化したSTO膜25aが存在する。この結晶化したSTO膜25aは、BST膜25bが結晶化するためのシード層として作用する。このため、BST膜25bは、約460℃という比較的低い成膜温度にも拘らず、成膜中に十分結晶化することが可能である。すなわち、BST膜25bは、in−situ結晶化する。これにより、ペロブスカイト型結晶構造を有するBST膜25bの結晶膜からなる上層誘電体膜24bが、下層誘電体膜24aの露出表面を覆うように、この露出表面上に成膜される。
【0094】
以上説明した工程により、図6(a)および(b)に示すように、半導体基板7上に選択的に設けられたキャパシタ用下部電極23aの表面を覆うように、結晶化したSTO膜25aおよびBST膜25bの積層膜が成膜される。結晶化したSTO膜25aおよびBST膜25bは、一般的なキャパシタ誘電体膜の形成材料であるシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、あるいはシリコン酸化膜の積層膜(NO膜)などよりも高い比誘電率を発現することができる。したがって、結晶化したSTO膜25aおよびBST膜25bにより形成されたキャパシタ誘電体膜24は、高誘電体膜として形成されている。
【0095】
なお、図6(a)および(b)においては、図面を見易くするために、下層誘電体膜24aであるSTO膜25a、STO膜25aのSr酸化物層26およびTi酸化物層27、ならびに下層誘電体膜24bであるBST膜25bを、それぞれの実際の厚さを無視して描いた。
【0096】
次に、キャパシタ用電極23の他方の電極であるキャパシタ用上部電極23bを、上層誘電体膜24bの露出表面を覆うように設ける。図6(a)および(b)に示すように、下部電極23aとの間にキャパシタ誘電体膜24を挟むように、上層誘電体膜24bの露出表面上に上部電極23bを形成する。本実施形態においては、上部電極23bをルテニウム膜を用いて形成する。これにより、所望の構造および電気的特性を有するキャパシタ素子22を得ることができる。
【0097】
続けて、フォトリソグラフィ技術およびRIE技術により、上部電極23b(ルテニウム膜)、ならびに下層誘電体膜24a(STO膜25a)および上層誘電体膜24b(BST膜25b)からなる積層膜を加工して、図示しないメモリセル領域を形成する。さらに続けて、図示しない他の絶縁膜および配線などを形成することにより、所望の半導体装置を得る。ただし、それら各工程の詳細な説明は省略する。
【0098】
次に、前述したように、STO膜25aに対して3通りの結晶化熱処理を施して成膜されたSTO膜25aおよびBST膜25bの積層膜をキャパシタ誘電体膜24として採用した、3種類のキャパシタ素子22の電気的特性について説明する。以下の説明において、結晶化熱処理を行わなかったSTO膜25aを有するキャパシタ素子22を第1実施例とする。同様に、約500℃で結晶化熱処理を行ったSTO膜25aを有するキャパシタ素子22を第2実施例とする。また、約575℃で結晶化熱処理を行ったSTO膜25aを有するキャパシタ素子22を第3実施例とする。これら第1〜第3の各実施例のキャパシタ素子22の主な電気的特性について調べた結果を表1にまとめて示す。
【0099】
併せて、比較例として、従来技術に係る2種類のキャパシタ素子の主な電気的特性について調べた結果を表1にまとめて示す。これら2種類のキャパシタ素子は、それぞれ次に述べる2種類の成膜条件で成膜されたキャパシタ誘電体膜を備えている。
【0100】
一方は、先ず、第1層目のキャパシタ誘電体膜である非晶質のSTO膜を、従来技術を用いて約375℃で約3.5nmまで成膜した後、約500℃で結晶化熱処理を施して結晶化させる。結晶化したSTO膜は、その膜厚が約3nmとなる。次に、この結晶化したSTO膜上に、本実施形態と同様の成膜条件で第2層目のキャパシタ誘電体膜であるBST膜を成膜する。以下の説明において、この成膜条件で成膜されたキャパシタ誘電体膜を備えたキャパシタ素子を、第1比較例とする。
【0101】
他方は、第1比較例において、非晶質のSTO膜に結晶化熱処理を施す際の温度を約575℃に設定して結晶化させる。以下の説明において、この成膜条件で成膜されたキャパシタ誘電体膜を備えたキャパシタ素子を、第2比較例とする。
【0102】
【表1】
【0103】
先ず、第1〜第3実施例、ならびに第1および第2比較例のそれぞれのリーク電流について比較する。表1によれば、従来技術に係る第1および第2比較例では、キャパシタ用上部電極に正バイアスを印加した際のリーク電流が、負バイアスを印加した際のリーク電流よりも増大している。これに対して、本実施形態に係る第1〜第3実施例では、キャパシタ用上部電極に正バイアスを印加した際のリーク電流が、負バイアスを印加した際のリーク電流よりも低減されていることが分かる。また、第1〜第3の各実施例の間では、正バイアスを印加した際のリーク電流の値に大差がないことが分かる。
【0104】
次に、第1〜第3実施例、ならびに第1および第2比較例のそれぞれの比誘電率について比較する。表1によれば、第1〜第3実施例および第2比較例では、200以上の比誘電率を得られることが分かる。これに対して、第1比較例の比誘電率の値は、非晶質膜の比誘電率の値に略等しくなっている。したがって、従来技術に係る非晶質のSTO膜を結晶化させるためには、約500℃の処理温度では不十分であることが分かる。また、結晶化されていないSTO膜をシード層とすると、このシード層上に成膜されるBST膜の結晶化も起こらないことが分かる。
【0105】
また、第1〜第3実施例および第2比較例の間では、それらの比誘電率の大小関係は、おおよそ第1実施例<第2実施例=第3実施例=第2比較例となっていることが分かる。このような比誘電率の大小関係により、以下のことが分かる。本実施形態の成膜方法によれば、結晶化熱処理を行う前の成膜温度が約300℃という低い温度にも拘らず、STO膜はその一部が既に結晶化している。ただし、その結晶化自体は完全ではない。
【0106】
また、従来技術に係る非晶質のSTO膜を結晶化させるためには、結晶化熱処理を行う際に約575℃という高い温度が必要である。これに対して、本実施形態では、結晶化が不十分な非晶質のSTO膜25aを略完全に結晶化させるためには、結晶化熱処理を行う際の温度を約500℃とすれば十分である。これは、キャパシタ誘電体膜24の成膜プロセスを行う際の温度を低温化させるのに有効である。
【0107】
さらに、第1実施例の結晶化熱処理を省略する成膜プロセスによれば、得られる比誘電率が若干低くなる。ところが、成膜プロセスを行う際の最高温度は、第2層目のキャパシタ誘電体膜24bであるBST膜25bの成膜温度であり、これは約470℃である。これは、従来技術に係る非晶質のSTO膜を結晶化させるために必要な温度の約575℃よりも大幅に低い値である。したがって、第1実施例でも、キャパシタ誘電体膜24の成膜プロセスの低温化、ひいてはキャパシタ素子22全体の製造プロセス(キャパシタプロセス)を低温化させるのに有効である。
【0108】
実際、本発明者らは、キャパシタ誘電体膜の第1層目および第2層目を、ともにSTO膜を用いて形成した場合について実験および検討を行った。第1層目のSTO膜を本実施形態の成膜方法により成膜して、このSTO膜を第2層目のSTO膜を結晶化させる際のシード層として用いた。すると、第2層目のSTO膜を結晶化させるのに必要としたCVD成膜温度は約430℃であった。したがって、本実施形態の成膜方法を用いて2層のSTO膜からなるキャパシタ誘電体膜を成膜すると、キャパシタプロセスの最高温度は約430℃となる。これは、例えばアルミニウム多層配線構造を有する半導体基板上にキャパシタ素子を形成する場合に適用可能な十分低い温度である。このアルミニウム多層配線構造を有する半導体基板上にキャパシタ素子を形成する形態については、後述する第4実施形態においてその詳細を説明する。
【0109】
次に、表1には示されていないが、第3実施例および第2比較例のそれぞれのキャパシタ素子が有するBST膜中の炭素不純物濃度を比較した結果について説明する。第3実施例と第2比較例とでは、第2層目のキャパシタ誘電体膜であるBST膜の成膜条件は等しいにも拘らず、第3実施例のBST膜中の炭素不純物濃度が約1atomic%以下であったのに対して、第2比較例のBST膜中の炭素不純物濃度は約2atomic%であった。そこで、第3実施例および第2比較例のそれぞれの第1層目のキャパシタ誘電体膜であるとともに、BST膜のシード層であるSTO膜中の炭素不純物濃度を比較した。
【0110】
この結果、本実施形態に係る第3実施例のSTO膜中の炭素不純物濃度が約1atomic%以下であったのに対して、約375℃で成膜した従来技術に係る第2比較例のSTO膜中の炭素不純物濃度は約2atomic%であった。これにより、本実施形態のように有機金属錯体からなる原料を加水分解させることにより金属酸化物の層を一層ずつ形成すると、約300℃という低温でも炭素不純物がキャパシタ誘電体膜中から効率よく排出されて、キャパシタ誘電体膜中に残留し難いことが分かる。また、第3実施例および第2比較例で、第2層目のBST膜中の炭素不純物濃度にも差が見られたのは、次の理由によるものと推定される。BST膜は、そのシード層となる第1層目のSTO膜の結晶性の影響を強く受けて結晶化する。したがって、STO膜中の炭素不純物濃度がBST膜中の炭素不純物濃度にも強い影響を及ぼす。この結果、第1層目のSTO膜中の炭素不純物濃度が異なると、第2層目のBST膜中の炭素不純物濃度も異なってくる。
【0111】
また、TEM−EDXにより、第1〜第3実施例のそれぞれのBST膜内の状態をキャパシタ用下部電極23a上と層間絶縁膜6上とで比較したところ、組成および結晶性ともに殆ど差違は見られなかった。これは、本実施形態の成膜方法によれば、キャパシタ誘電体膜24の膜質の下地依存性が殆どなくなるので、異なる質の下地が併存する半導体基板21上においても、略同じ膜質のキャパシタ誘電体膜24の成膜が可能であることを示す。
【0112】
以上説明したように、この第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、キャパシタ誘電体膜24の下層誘電体膜24aとなるSTO膜25aを、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成するSrを主成分とする酸化物の層26と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成するTiを主成分とする酸化物の層27とを、それぞれ交互に8層ずつ積層することにより成膜した。これにより、STO膜25aをCVD法により成膜する場合、成膜中の組成成分の制御が容易となるので、良質なSTO膜25aを効率よく容易に形成できる。また、このSTO膜25aを、キャパシタ誘電体膜24の上層誘電体膜24bとしてBST膜25bをCVD法により成膜する際のシード層として用いることにより、BST膜25bの下地依存性を殆どなくして、良質なBST膜25bを効率よく容易に形成することができる。ひいては、良質なキャパシタ誘電体膜24を効率よく容易に成膜することができる。
【0113】
また、STO膜25aは、その一部が既に結晶化された状態で成膜されるので、その結晶化熱処理を省略したり、あるいは結晶化熱処理温度を低下させたりすることができる。これにより、キャパシタ誘電体膜24に対して、その成膜プロセスにおける熱による負荷(サーマルバジェット)をより抑制もしくは低減できる。したがって、キャパシタ誘電体膜24は、その成膜がより容易であるとともに、その品質および成膜効率がより向上されている。ひいては、キャパシタ誘電体膜24を備えるキャパシタ素子22の形成が容易であるとともに、その品質および形成効率が向上されている。
【0114】
また、本実施形態によれば、キャパシタ素子22を形成する際に、このキャパシタ素子22を備える半導体装置が有するトランジスタやコンタクトプラグ、あるいは配線などの他の電子素子への、熱によるダメージを低減できる。したがって、半導体装置内にキャパシタ素子22以外の各種電子素子を設けた後、それら各種電子素子よりも上方にキャパシタ素子22を形成することができる。すなわち、このキャパシタ素子22は、半導体装置内の形成位置の自由度が向上されている。これは、第4実施形態において説明するように、例えば配線が熱に弱いアルミニウムなどにより形成されている場合に、極めて有効である。
【0115】
さらに、前述したように、キャパシタ誘電体膜24の下層誘電体膜24aは、これを成膜する際の結晶化熱処理を省略したり、あるいは結晶化熱処理温度を低下させたりすることができる。これにより、シード層としての下層誘電体膜24aを成膜する際の成膜温度の精密な制御が殆ど不要となる。したがって、下層誘電体膜24aは、その成膜前に設定される成膜プロセスの安定化に要する時間(heat recovery time)の削減が可能である。ひいては、キャパシタ誘電体膜24全体の成膜に掛かるプロセス時間を短縮して、キャパシタ誘電体膜24全体を効率よく成膜することが可能である。さらには、このキャパシタ誘電体膜24を備えるキャパシタ素子22の形成に掛かるプロセス時間を短縮して、キャパシタ素子22を効率よく形成することが可能である。
【0116】
このように、本実施形態のキャパシタ素子22は、電気的特性および品質が向上されているとともに、形成が容易であり、かつ、短時間で効率よく成膜できるキャパシタ誘電体膜24を備えた高品質な高誘電体キャパシタ素子として形成されている。また、この高誘電体キャパシタ素子22は、その形成が容易であるとともに、短時間で効率よく形成でき、かつ、半導体装置内での形成位置の自由度が向上されているため、半導体装置内の所望の位置に短時間で効率よく容易に組み込むことができる。したがって、この第2実施形態の半導体装置は、電子デバイスのダウンサイジング化に伴う電気的特性の劣化をより抑制して、電気的特性の向上をより図り得るとともに、効率よく容易に形成可能で、かつ、より良質なキャパシタ素子22を具備している。また、この第2実施形態の半導体装置の製造方法は、そのようなキャパシタ素子22を具備した、より良質な半導体装置を効率よく容易に製造できる。
【0117】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係る第3実施形態を図8〜図11を参照しつつ説明する。図8は、本発明の第3実施形態に係る金属酸化物堆積量の金属原料供給時間に対する依存性を各金属の原料ごとにグラフにして示す図である。図9は、第3実施形態に係る金属酸化物堆積量のH2Oおよび金属原料の供給サイクル数に対する依存性を各金属の原料ごとにグラフにして示す図である。図10は、第3実施形態に係る金属酸化物堆積量のH2Oおよび混合金属原料の供給サイクル数に対する依存性を各金属の原料ごとにグラフにして示す図である。図11は、第3実施形態および第2実施形態に係るキャパシタ誘電体膜の製造プロセスの1サイクルのシーケンスを示す図である。
【0118】
この第3実施形態では、第2実施形態と同様に、半導体装置が具備するキャパシタ素子のキャパシタ誘電体膜を、CVD法により下層誘電体膜および上層誘電体膜の2層構造に形成する。この際、第2実施形態と同様に、下層誘電体膜をSr−Ti−O膜 [=STO膜]を用いて形成するとともに、上層誘電体膜をBa−Sr−Ti−O膜 [=BST膜]を用いて形成する。つまり、本実施形態では、キャパシタ誘電体膜として、STO膜およびBST膜を2層に積層した積層膜を採用する。また、下層誘電体膜となるSTO膜を、第2実施形態と同様に、H2Oガスの供給および吸着と金属原料のガスの供給とを交互に行うことにより、Sr酸化物層とTi酸化物層とを交互に堆積させて成膜する。ただし、Tiを含む原料として、第2実施形態で用いたTTIPではなく、DPM錯体であるTi(DPM)2(i−OC3H7)2のTHF溶液を用いる。これにより、STO膜の成膜プロセスに掛かる時間の短縮を実現するものである。
【0119】
下層誘電体膜となる第1層目のキャパシタ誘電体膜としてSTO膜を用いる理由は、第2実施形態と同様に、STO膜はBST膜に比べて結晶化温度が低いので、成膜中の結晶化熱処理温度を低く抑えることができるためである。また、BST膜を前述したH2Oガスの供給および吸着と金属原料のガスの供給とを交互に行うことにより成膜する場合に、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトの組成成分であるBaおよびSrの制御が困難になるのを避けるためである。
【0120】
また、本実施形態では、Srを含む原料としてSr(DPM)2 [=Sr(C1 1H19O2)2]のTHF溶液を用いるとともに、Tiを含む原料としてTi(DPM)2(i−OC3H7)2のTHF溶液を用いる。このように、SrおよびTiのそれぞれの原料に同じDPM錯体を用いることにより、それら各原料同士の相互作用を利用できるという利点が生じる。これにより、以下に詳述するような理由により、キャパシタ誘電体膜の成膜プロセスに掛かる時間の短縮が可能となる。また、キャパシタ誘電体膜全体を、H2Oガスの供給および吸着と金属原料のガスの供給とを交互に行うことにより成膜することも可能になる。このキャパシタ誘電体膜全体を、H2Oガスの供給および吸着と金属原料のガスの供給とを交互に行うことにより成膜する形態については、後述する第4実施形態においてその詳細を説明する。
【0121】
ここで、本発明者らが実験および検討した結果について詳述する。図示しない半導体基板が導入される反応容器内の温度を約300℃に、また反応容器内の圧力を約5Torrにそれぞれ保持する。この雰囲気下において、予め第1および第2実施形態において説明した条件と同様の条件下でH2Oを吸着させた半導体基板の表面に、Sr(DPM)2,Ba(DPM)2,TTIP,Ti(DPM)2(i−OC3H7)2,TiO(DPM)2の5種類のガス状の金属原料をそれぞれ個別に供給する。すると、それぞれの金属酸化物堆積量の金属原料供給時間に対する依存性は、図8(a)〜(e)に示すように、前記5種類のいずれの原料でも一定時間で飽和する傾向を示す。このように、第1および第2実施形態において説明した条件と同様の条件下では、各金属酸化物の堆積量はそれらの原料の種類に依らず自律的に制御される。したがって、精密な成膜プロセスの制御は要求されないことが分かる。
【0122】
ところが、H2Oガスを供給する過程と金属原料のガスを供給する過程とを、それぞれ交互に複数回繰り返した場合の、供給サイクル数に対する各金属酸化物堆積量の依存性は、図9(a)〜(e)に示すように、各金属原料によって異なっている。図9(a)および(b)に示すように、Baの原料であるBa(DPM)2や、Srの原料であるSr(DPM)2では、それらの供給サイクル数を増加させると、供給サイクル数に対する各金属酸化物堆積量の依存性は飽和する傾向を示す。これに対して、図9(c)〜(e)に示すように、Tiの原料であるTTIP,Ti(DPM)2(i−OC3H7)2,TiO(DPM)2では、それらの供給サイクル数を増加させると、供給サイクル数に対する金属酸化物堆積量の依存性は、供給サイクル数に線形(リニア)に追従するように増大する傾向を示す。したがって、Tiの酸化物の堆積量は、Tiの原料の供給サイクル数を用いて制御する必要があることが分かる。
【0123】
次に、H2Oを吸着させた半導体基板の表面に前記各金属原料ガスを混合して供給する場合について、本発明者らが実験および検討した結果について説明する。なお、本発明者らが鋭意検討した結果、Ba(DPM)2を混合した場合とSr(DPM)2を混合した場合とでは、それらの間において金属酸化物の堆積挙動には差違が殆ど見られなかった。したがって、以下、説明が煩雑になるのを避けるために、Sr(DPM)2を混合した場合についてのみ説明する。そして、Srの原料と前記3種類のTiの原料とをそれぞれ個別に混合し、それら3種類のSrの原料/Tiの原料の混合ガスを供給する場合について比較する。
【0124】
図10(a)〜(c)に、Sr(DPM)2とTTIP、Sr(DPM)2とTi(DPM)2(i−OC3H7)2、Sr(DPM)2とTiO(DPM)2との、3種類の混合ガスを用いた場合の、各混合ガスの供給サイクル数に対する各金属酸化物堆積量の依存性を示す。
【0125】
図10(a)、ならびに図9(a)および(c)から分かるように、Sr(DPM)2とTTIPとを混合したガスを用いた場合では、SrおよびTiの堆積挙動はそれぞれの原料ガスを単体で供給した場合の堆積挙動に類似している。これに対して、Sr(DPM)2とTi(DPM)2(i−OC3H7)2とを混合したガスを用いた場合、およびSr(DPM)2とTiO(DPM)2とを混合したガスを用いた場合では、図10(b)および(c)から分かるように、Tiの原料を供給しているにも拘らず、Tiの酸化物は殆ど堆積せず、Srの酸化物が堆積する。そして、Srの酸化物の堆積挙動は、図10(b)および(c)、ならびに図9(a)から明らかなように、Sr(DPM)2のみを単体で供給した場合の堆積挙動と略同じであることが分かる。これは、同じDPM錯体であるSrの原料とTiの原料との相互作用によるものと考えられる。すなわち、Sr(DPM)2と、Ti(DPM)2(i−OC3H7)2およびTiO(DPM)2との相互作用によるものと考えられる。このような性質を用いることにより、H2Oガスの供給および吸着と金属原料のガスの供給とを交互に行い、Sr酸化物層とTi酸化物層とを交互に堆積させてSTO膜を成膜する、本実施形態の成膜方法のプロセス時間を削減することが可能となる。
【0126】
図11(a)に、本発明の第2実施形態に係る成膜プロセスの1サイクルのシーケンス(圧力、ガス流量、時間)を示す。各ガス供給の間のパージ時間、特に排気時間の比率が大きいことが分かる。これは、Tiを原料としてTTIPを用いる場合、Tiの原料ガスが残存しているうちに、Sr層の成膜プロセスを開始すると、残存したTiの原料ガスによるTiの堆積が起こって、精密な組成制御が困難になるためである。そこで、シーケンスを図11(b)に示すように変更することで、1サイクルのプロセス時間を大幅に削減することができる。以下、このシーケンスを図11(b)を参照しつつ説明する。
【0127】
Step1:H2Oガスの供給。基板表面へのH2Oの吸着。
【0128】
Step2:H2Oガス、Srの原料ガス、およびTiの原料ガスの供給。Srの原料の影響によりTiの酸化物の堆積は殆ど起こらない。Srの酸化物の堆積のみ起こる。
【0129】
Step3:H2OガスおよびSrの原料ガスの供給停止。Tiの原料ガスの供給は続行。Tiの酸化物の堆積が始まる。
【0130】
Step4:H2OガスおよびSrの原料ガスを再度供給。Tiの原料ガスは供給し続けるが、Srの原料の影響によりTiの酸化物の堆積は殆ど起こらず、Srの酸化物の堆積のみ起こる。(=Step2)
このように、Step2およびStep3を適切なプロセス時間比で繰り返すことにより、STO膜を成膜する際に、各層の組成成分を容易に制御することが可能である。
【0131】
このような工程により、図示しないキャパシタ用下部電極が形成された半導体基板の露出表面上に、下層誘電体膜となるSTO膜を約3nm成膜する。この後、図示しない反応容器の内部を第2実施形態と同様の成膜条件に設定する。この成膜条件下において、同じ反応容器内でSTO膜が成膜された半導体基板を約500℃まで加熱し、STO膜に結晶化熱処理を施す。これにより、所望の膜厚を有し、ペロブスカイト型結晶構造を有するSTO膜の結晶膜からなる下層誘電体膜が、下部電極の露出表面上に成膜される。
【0132】
次に、同じ反応容器内で、真空を破ることなく反応容器内の温度を約470℃まで昇温させる。この雰囲気下において、結晶化されたSTO膜の露出表面上に、上層誘電体膜となるBST膜をその膜厚が約17nmとなるまで連続的に成膜する。この際、BST膜は、in−situ結晶化する。これにより、所望の膜厚を有し、ペロブスカイト型結晶構造を有するBST膜の結晶膜からなる上層誘電体膜が、下層誘電体膜の露出表面を覆うように、この露出表面上に成膜される。すなわち、BST膜が、STO膜上に積層するように連続して形成される。
【0133】
以上説明した工程により、キャパシタ用下部電極が選択的に形成された半導体基板上に、結晶化したSTO膜およびBST膜の積層膜が成膜される。したがって、第2実施形態と同様に、本実施形態のキャパシタ誘電体膜も高誘電体膜として形成されている。
【0134】
次に、第2実施形態と同様に、キャパシタ用電極の他方の電極であるキャパシタ用上部電極を、BST膜の露出表面を覆うように設ける。すなわち、下部電極との間にキャパシタ誘電体膜を挟むように、BST膜の露出表面上に上部電極を形成する。これにより、所望の構造および電気的特性を有するキャパシタ素子を得ることができる。
【0135】
続けて、フォトリソグラフィ技術およびRIE技術により、上部電極、ならびに下層誘電体膜(STO膜)および上層誘電体膜(BST膜)からなる積層膜を加工して、図示しないメモリセル領域を形成する。さらに続けて、図示しない他の絶縁膜および配線などを形成することにより、所望の半導体装置を得る。ただし、それら各工程の詳細な説明は省略する。
【0136】
次に、前述した成膜方法により成膜されたキャパシタ誘電体膜を備える本実施形態のキャパシタ素子、および第2実施形態に係るキャパシタ素子のそれぞれの電気的特性に関して、本発明者らが実験および検討した結果について表2を参照しつつ説明する。以下の説明において、本実施形態のキャパシタ素子を第4実施例とする。また、第2実施形態の成膜方法により成膜されたキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子を第5実施例とする。
【0137】
【表2】
【0138】
表2から明らかなように、キャパシタ素子の主な電気的特性である比誘電率、ならびに正バイアスおよび負バイアス印加時の各リーク電流について、第4実施例のキャパシタ素子は、第5実施例のキャパシタ素子と同等以上の性能を有していることが分かる。
【0139】
以上説明したように、この第3実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、キャパシタ誘電体膜の下層誘電体膜(STO膜)を、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層(Sr酸化物層)と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層(Ti酸化物層)とを交互に積層して形成する。これにより、下層誘電体膜を略同じ工程の繰り返しにより成膜可能である。それとともに、下層誘電体膜を成膜する際の組成成分を容易に制御できる。特に、Sr酸化物層およびTi酸化物層のそれぞれの原料として、それら各層の酸化物が堆積する際に互いに相互作用を及ぼし合う原料であるDPM錯体を採用するので、互いに異なる酸化物からなる2種類の層の形成工程を自律的に制御できる。これにより、堆積させる層の種類を変える毎に反応容器内から不要な原料ガスを排気して、異なる種類の原料ガスが互いに混じらないように入れ換えるなどの作業が不要となる。
【0140】
つまり、キャパシタ誘電体膜の成膜プロセスのさらなる簡素化および短時間化を図って、より効率よく、かつ、より容易にキャパシタ誘電体膜を成膜できる。ひいては、このキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子の形成プロセスのさらなる簡素化および短時間化を図って、より効率よく、かつ、より容易にキャパシタ素子を形成できる。
【0141】
したがって、この第3実施形態の半導体装置は、電子デバイスのダウンサイジング化に伴う電気的特性の劣化をより抑制して、電気的特性の向上をより図り得るとともに、より効率よく、より容易に形成可能で、かつ、より良質なキャパシタ素子を具備している。また、この第3実施形態の半導体装置の製造方法は、そのようなキャパシタ素子を具備した、より良質な半導体装置をより効率よく、かつ、より容易に製造できる。
【0142】
(第4の実施の形態)
次に、本発明に係る第4実施形態を図12を参照しつつ説明する。図12は、第4実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。なお、図1と同一部分は同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0143】
この第4実施形態では、キャパシタ誘電体膜を、第3実施形態と同様の成膜方法により、STO膜を用いてCVD法により成膜する。ただし、本実施形態においては、第1〜第3実施形態において説明したように、2段階成長法を用いてキャパシタ誘電体膜を下層誘電体膜および上層誘電体膜からなる2層構造に形成する成膜方法は採用しない。本実施形態においては、H2Oガスの供給および吸着と金属原料のガスの供給とを交互に行う成膜方法を用いて、キャパシタ誘電体膜全体を一体のSTO膜として成膜する。これは、本実施形態のキャパシタ誘電体膜の成膜方法が、次の理由により実用上十分可能になったためである。
【0144】
第3実施形態において説明したように、Srを含む原料およびTiを含む原料の各原料としてDPM錯体を用いるとともに、第3実施形態の成膜プロセスのシーケンスを用いる。これにより、STO膜を成膜する際の組成成分を容易に制御できるとともに、成膜プロセスを簡素化でき、かつ、成膜プロセスに掛かる時間を短縮できる。したがって、第3実施形態において説明した成膜方法を採用することにより、キャパシタ誘電体膜全体をSTO膜を用いて成膜することが実用上十分可能となる。
【0145】
また、第2実施形態において説明したように、Srの酸化物層とTiの酸化物層とを交互に堆積させてSTO膜を成膜する成膜方法によれば、約300℃でSTO膜の結晶化が可能となる。これにより、キャパシタ誘電体膜を成膜する際の熱が、半導体装置内の他の電子デバイスなどに与える負荷を抑制もしくは低減できる。したがって、半導体装置へのキャパシタ素子の搭載位置の自由度が向上する。例えば、約300℃という結晶化温度は、熱に弱いアルミニウム多層配線構造を有する半導体基板上にキャパシタ素子を形成する場合に適用可能な十分低い温度である。
【0146】
本実施形態は、以上説明した特徴を利用することにより、複数層(多層)に配置されたアルミニウム(Al)配線の上に、キャパシタ誘電体膜としてSTO膜を採用したキャパシタ素子を形成するものである。以下、本実施形態の半導体装置およびその製造方法について詳述する。
【0147】
先ず、図12(a)に示すように、第1および第2実施形態と同様に、素子分離領域1などが形成された基板本体2上に、トランジスタ3、ビット線4、およびコンタクトプラグ5などを形成する。それとともに、基板本体2上に、アルミニウム配線31を複数層に積層して形成する。本実施形態においては、アルミニウム配線31を2層に積層して形成する。また、アルミニウム配線31が設けられている2層の配線層には、それらを積層方向に沿って貫通するコンタクトプラグ32を複数個設ける。この際、各コンタクトプラグ32を、それらの下層に設けられているコンタクトプラグ5と電気的に接続するように形成して、トランジスタ3の拡散層に連通させる。このように各素子を形成した後、それら各素子を層間絶縁膜6で被覆する。以下の説明において、前記各素子が設けられているとともに、後述するキャパシタ素子33などが設けられる基板本体2を、まとめて半導体基板34と称することとする。
【0148】
次に、最上層の層間絶縁膜6上にシリコン酸化膜9をプラズマCVD法により約500nm形成する。この後、コンタクトプラグ32の上方のシリコン酸化膜9をフォトリソグラフィ技術およびRIE技術によりエッチングして、後述するキャパシタ用下部電極35aの鋳型となるキャビティ36を形成する。これにより、コンタクトプラグ32の上面(表面)が露出する。
【0149】
次に、キャビティ内にバリアメタルとしての窒化チタン膜37をスパッタリング法により約20nm形成する。この際、窒化チタン膜37は、その下面(底面)がコンタクトプラグ32の上面に接触するように形成される。これにより、コンタクトプラグ32は、その上面を窒化チタン膜32の下面により覆われる。続けて、窒化チタン膜37の内側に、ルテニウム(Ru)膜14をスパッタリング法により約50nm形成する。続けて、半導体基板34の全面に図示しないフォトレジストを塗布した後、CMP法によりエッチバックを行い、窒化チタン膜37およびルテニウム膜14をキャビティ36の内部にのみ残存させる。この後、アッシャーにより、フォトレジストを除去する。これにより、ルテニウムからなるキャパシタ用電極35の下部電極35aが、半導体基板34上に選択的に形成される。
【0150】
次に、キャパシタ誘電体膜38を形成する。本実施形態においては、キャパシタ誘電体膜38全体を、Sr−Ti−O膜 [=STO膜]39を用いてCVD法により形成する。以下、STO膜39の成膜方法について詳述する。
【0151】
STO膜39の形成材料である、Sr,Tiを含むCVD法の原料としては、Sr(DPM)2 [=Sr(C11H19O2)2]、およびTi(DPM)2(i−OC3H7)2のそれぞれのTHF [=C4H8O]溶液を用いる。各THF溶液の濃度は、それぞれ約0.5モル/リットルである。成膜装置としては、第1および第2実施形態と同様に、ホットウォール型バッチ式CVD装置を用いる。
【0152】
先ず、キャパシタ用下部電極(ルテニウム電極)35aが形成された半導体基板34を、炉内温度が予め約300℃に設定されている反応炉(反応容器)内に導入する。半導体基板34が導入された反応炉の内部を真空排気した後、アルゴン(Ar)ガスで真空パージする。この状態で炉内温度が約300℃付近で安定するまで待つ。容器内温度が設定温度である300℃の±20℃程度まで安定したことを確認した後、反応容器内圧力を約5Torrに保持しつつ、反応容器内にH2Oガスを約45秒間導入する。導入されたH2Oガスは下部電極35aが形成された半導体基板34の露出表面上に吸着する。
【0153】
次に、H2Oガスの供給を保ちつつ、反応容器内圧力を約5Torrに保持した状態で、Srを含むCVD法の原料であるガス状のSr(DPM)2 [=Sr(C1 1H19O2)2]、およびTiを含むCVD法の原料であるガス状のTi(DPM)2(i−OC3H7)2を反応容器内に約60秒間導入する。H2Oが吸着している半導体基板34の露出表面に到達したSrの原料ガスは、吸着しているH2Oとの間で加水分解反応を起こす。これにより、図12(b)に示すように、半導体基板34および下部電極35aの露出表面上にSrを主成分とする酸化物の層40が1層形成される。H2Oガスの供給と、Srの原料ガスの供給とを略同時に行うことにより、キャパシタ用下部電極35aが形成された半導体基板34の露出表面を、1層のSr酸化物層40により略完全に被覆する。Srの原料とTiの原料とが共存している状態では、Srの原料の影響によりTiの酸化物の堆積は殆ど起こらない。
【0154】
また、この状態において、下部電極35aは、その外側面および外側下面(底面)が窒化チタン膜37に接触して覆われている。この下部電極35aの窒化チタン膜37に接触している部分を、例えば下部電極23aの外側表面とする。それとともに、下部電極35aは、その内側面および内側下面など、前記外側表面以外の部分がSTO膜39の一部を形成するSr酸化物層40に接触して覆われている。この下部電極35aのSr酸化物層40に接触している部分を、例えば下部電極35aの内側表面とする。このように、下部電極35aは、その外側表面を窒化チタン膜37により覆われるとともに、その内側表面をSr酸化物層40により覆われる。これにより、下部電極35aは、その表面全体が外部に露出されない。
【0155】
次に、H2OガスおよびSrの原料ガスの供給を断ち、Tiの原料ガスのみを反応容器内に約20秒間導入する。すると、Sr酸化物層40の露出表面上に到達したTiの原料ガスは、吸着しているH2Oとの間で加水分解反応を起こす。これにより、Sr酸化物層40の露出表面上にTiの酸化物の層41が1層形成される。すなわち、Sr酸化物層40の露出表面を、1層のTi酸化物層41により略完全に被覆する。
【0156】
以上説明した工程により、1層のSr酸化物層40および1層のTi酸化物層41からなるSTO膜39を約80秒間で成膜する。また、本実施形態においては、これら1層のSr酸化物層40および1層のTi酸化物層41からなるSTO膜39の膜厚が、約0.5nmとなるように成膜条件を設定する。
【0157】
この後、前述したように、H2Oガス、Srの原料ガス、およびTiの原料ガスの供給と、Tiの原料ガスのみの供給とを交互に繰り返すことにより、所望の構造および膜厚を有するSTO膜39を半導体基板34およびキャパシタ下部電極35aの露出表面上に成膜できる。本実施形態においては、H2Oガス、Srの原料ガス、およびTiの原料ガスの供給と、Tiの原料ガスのみの供給とを、それぞれ40回ずつ約1時間かけて交互に繰り返す。これにより、図12(b)に示すように、半導体基板34およびキャパシタ用下部電極35aの露出表面を、膜厚が約20nmのSTO膜39により略完全に被覆する。このように、本実施形態のSTO膜39は、実際にはSr酸化物層40およびTi酸化物層41がそれぞれ40層ずつ交互に積層された多層構造に成膜される。ただし、図12(b)においては、図面を見易くするために、Sr酸化物層40およびTi酸化物層41をそれぞれ1層ずつだけ描いて、STO膜39を簡略化して示す。また、同じく図面を見易くするために、Sr酸化物層40およびTi酸化物層41、ならびにSTO膜39全体のそれぞれの実際の厚さを無視して描いた。
【0158】
以上説明した工程により、図12(b)に示すように、キャパシタ用下部電極23aが選択的に設けられた半導体基板34の露出表面上に、この露出表面を覆うように結晶化したSTO膜39が成膜される。結晶化したSTO膜39は、一般的なキャパシタ誘電体膜の形成材料であるシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、あるいはシリコン酸化膜の積層膜(NO膜)などよりも高い比誘電率を発現することができる。したがって、結晶化したSTO膜39により形成されたキャパシタ誘電体膜38は、高誘電体膜として形成されている。
【0159】
次に、キャパシタ用電極35の他方の電極であるキャパシタ用上部電極35bを、キャパシタ誘電体膜38の露出表面を覆うように設ける。図12(b)に示すように、下部電極35aとの間にキャパシタ誘電体膜38を挟むように、キャパシタ誘電体膜38の露出表面上に上部電極35bを形成する。本実施形態においては、上部電極35bを、下部電極35aと同様に、ルテニウム膜を用いて形成する。これにより、所望の構造および電気的特性を有するキャパシタ素子33を得ることができる。
【0160】
続けて、フォトリソグラフィ技術およびRIE技術により、上部電極35b(ルテニウム膜)およびキャパシタ誘電体膜38(STO膜39)からなる積層膜を加工して、図示しないメモリセル領域を形成する。さらに続けて、図示しない他の絶縁膜および配線などを形成することにより、所望の半導体装置を得る。ただし、それら各工程の詳細な説明は省略する。
【0161】
次に、キャパシタ誘電体膜38を備える本実施形態のキャパシタ素子33、および第2実施形態と略同じキャパシタ素子のそれぞれの電気的特性に関して、本発明者らが実験および検討した結果について表3を参照しつつ説明する。以下の説明において、キャパシタ誘電体膜38を備える本実施形態のキャパシタ素子33を第6実施例とする。また、STO膜25aおよびBST膜25bの積層膜を用いてキャパシタ誘電体膜24を2段階成膜した第2実施形態と同様の成膜方法により、STO膜を2段階成膜したキャパシタ誘電体膜を備えるキャパシタ素子を第7実施例とする。ただし、この第7実施例のSTO膜には、結晶化熱処理を施さないものとする。
【0162】
【表3】
【0163】
表3から明らかなように、キャパシタ素子の主な電気的特性である比誘電率、ならびに正バイアスおよび負バイアス印加時の各リーク電流について、第6実施例のキャパシタ素子33と第7実施例のキャパシタ素子とでは、それらの間に大差がないことが分かる。
【0164】
以上説明したように、この第4実施形態によれば、第2および第3実施形態と同様の効果を得ることができる。また、STO膜39を用いてキャパシタ誘電体膜38全体を成膜する際の成膜温度を低温化できるので、STO膜39を備えるキャパシタ素子33の半導体装置内での形成位置の自由度が向上されている。これにより、キャパシタ素子33を半導体装置内の所望の位置に容易に組み込むことができる。具体的には、前述したように、熱に弱いアルミニウム配線31の上方においてSTO膜39を成膜できるので、特に図示しないDRAM混載LSIなどを製造する際に、以下に述べるような利点がある。
【0165】
多層配線構造を有する半導体装置において、局所的に段差を形成し易いキャパシタ素子をより上層に配置することができるので、多層配線構造を形成し易くなる。
【0166】
キャパシタ素子を形成する以前の段階、すなわち多層配線を形成する工程までは、SrやRuなどの金属を用いていないので、基板の汚染を考慮する必要が殆どない。
【0167】
さらに、キャパシタ誘電体膜38全体を、Sr酸化物層40とTi酸化物層41とを交互に積層して形成する。これにより、キャパシタ誘電体膜38全体を略同じ工程の繰り返しにより成膜可能である。それとともに、キャパシタ誘電体膜38を成膜する際の組成成分を容易に制御できる。したがって、キャパシタ誘電体膜38の成膜プロセスの大幅な簡素化および短時間化を図って、極めて効率よく、かつ、より容易にキャパシタ誘電体膜38を成膜できる。ひいては、このキャパシタ誘電体膜38を備えるキャパシタ素子33の形成プロセスの大幅な簡素化および短時間化を図って、極めて効率よく、かつ、より容易にキャパシタ素子33を形成できる。
【0168】
したがって、この第4実施形態の半導体装置は、電子デバイスのダウンサイジング化に伴う電気的特性の劣化をより抑制して、電気的特性の向上をより図り得るとともに、極めて効率よく、より容易に形成可能で、かつ、より良質なキャパシタ素子33を具備している。また、この第4実施形態の半導体装置の製造方法は、そのようなキャパシタ素子33を具備した、より良質な半導体装置を極めて効率よく、かつ、より容易に製造できる。
【0169】
なお、本発明に係る半導体装置およびその製造方法は、前述した第1〜第4の各実施形態には制約されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、それらの構成、あるいは工程などの一部を種々様々な設定に変更したり、あるいは各種設定を適宜、適当に組み合わせて用いたりして実施することができる。
【0170】
例えば、第1実施形態においては、キャパシタ素子10の下部電極11aとしてルテニウム膜14を用いたが、これには限られない。例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、あるいはこれら各貴金属の合金から、キャパシタ用下部電極11aを形成しても構わない。この場合でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、上下両キャパシタ用電極は、VII−A族およびVIII族のうちの少なくとも1種類の金属元素を主たる成分として含む材料によって形成されていればよい。具体的には、Ru,Pt,Ir,Pd,Os,Re,Rhのうちの少なくとも1種類の元素を主たる成分として含む材料によって形成されていればよい。
【0171】
また、キャパシタ用下部電極11aとなるルテニウム膜14の成膜方法として、第1実施形態ではCVD法を用いているが、スパッタリング法、めっき法等による電極膜の成膜も可能である。
【0172】
また、キャパシタ下層誘電体膜16aとなる第1層目のSTO膜17a、およびキャパシタ上層誘電体膜16bとなる第2層目のSTO膜17bのそれぞれをCVD法により成膜する際に、Tiを含む原料として、Ti(DPM)2(i−OC3H7)2を用いたが、Tiのβジケトン系錯体を用いても同様の効果を得ることができる。例えば、Ti(DPM)2(t−OC4H9)2、Ti(DPM)2(i−OC4H9)2、TiO(DPM)2、Ti(MPD)(DPM)2などを用いても、Ti(DPM)2(i−OC3H7)2を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0173】
また、キャパシタ誘電体膜の主たる構成成分は、前述したSr,Ti,Baには限られない。ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素としては、II−A族、III−A族、およびIV−B族のうちの少なくとも1種類の金属元素であればよい。例えば、Aサイトを形成する金属元素としては、他にPbやLaなどがある。同様に、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する成分としては、IV−A族、V−A族、およびIV−B族のうちの少なくとも1種類の金属元素であればよい。例えば、Bサイトを形成する金属元素としては、他にZr,Nb,Ta,Snなどがある。
【0174】
また、第1実施形態で説明した2層構造のキャパシタ誘電体膜を形成するにあたり、下層誘電体膜および上層誘電体膜を互いに異なる材質で形成しても構わない。このような構成でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。あるいは、第2および第3実施形態で説明した2層構造のキャパシタ誘電体膜を形成するにあたり、下層誘電体膜および上層誘電体膜を同じ材質で形成しても構わない。このような構成でも、サーマルバジェットを低減できるなど、第2および第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0175】
また、第4実施形態で説明した一体構造のキャパシタ誘電体膜を、第1〜第3実施形態で説明した各種類のキャパシタ用下部電極上に成膜しても構わない。あるいは、第1〜第3実施形態で説明した2層構造の各キャパシタ誘電体膜を、第4実施形態で説明したルテニウムからなるキャパシタ用下部電極上に成膜しても構わない。本発明に係るキャパシタ誘電体膜は、その電気的特性の下地依存性が殆どないので、下地の種類によらず安定した電気的性能を発揮できる。
【0176】
また、第2〜第3実施形態で説明した各キャパシタ誘電体膜の、キャパシタ用下部電極との界面における構造から明らかなように、第1実施形態で説明したSr酸化物層を、キャパシタ誘電体膜の一部とみなしても構わない。
【0177】
さらに、本発明に係る半導体装置および半導体装置の製造方法は、その適用をDRAM等、現在、一般に普及している半導体装置には限られない。本発明に係る半導体装置および半導体装置の製造方法は、例えばFeRAMなど、将来において発展が期待される各種の微細な半導体装置を製造する際にも十分適用可能なのはもちろんである。
【0178】
【発明の効果】
本発明に係る半導体装置によれば、キャパシタ素子が備えるキャパシタ誘電体膜は、その電気的特性が向上されているとともに、容易に成膜可能である。これにより、電気的特性が向上されたキャパシタ素子を半導体装置内に容易に組み込むことができる。したがって、本発明に係る半導体装置は、電子デバイスのダウンサイジング化に伴う電気的特性の劣化を抑制して、電気的特性の向上を図り得るとともに、容易に形成可能なキャパシタ素子を備えた構成となっている。
【0179】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、キャパシタ素子が備えるキャパシタ誘電体膜の電気的特性を向上できるとともに、容易に、かつ、効率よく成膜できる。これにより、電気的特性が向上されたキャパシタ素子を半導体装置内に容易に、かつ、効率よく組み込むことができる。したがって、本発明に係る半導体装置の製造方法は、電子デバイスのダウンサイジング化に伴う電気的特性の劣化を抑制して、電気的特性の向上を図り得るとともに、容易に、かつ、効率よく形成可能なキャパシタ素子を備えた半導体装置を効率よく容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図。
【図2】第1実施形態に係るキャパシタ下部電極上にSrの酸化物の層が形成される仕組みを模式的に示す工程断面図。
【図3】第1実施形態および従来技術に係るキャパシタ素子に流れるリーク電流の印加電圧依存性をそれぞれグラフにして示す図。
【図4】第1実施形態および従来技術に係るキャパシタ誘電体膜中のSr/Ti比の深度依存性をそれぞれグラフにして示す図。
【図5】第1実施形態および従来技術に係るキャパシタ誘電体膜中のエネルギーバンド構造を模式的に示す図。
【図6】第2実施形態に係る半導体装置のキャパシタ素子付近の構造を示す断面図。
【図7】第2実施形態に係るキャパシタ素子の下部電極上にSrおよびTiの酸化物の層が交互に積層されて形成される仕組みを模式的に示す工程断面図。
【図8】第3実施形態に係る金属酸化物堆積量の金属原料供給時間依存性を各金属の原料ごとにグラフにして示す図。
【図9】第3実施形態に係る金属酸化物堆積量のH2Oおよび金属原料の供給サイクル数依存性を各金属の原料ごとにグラフにして示す図。
【図10】第3実施形態に係る金属酸化物堆積量のH2Oおよび混合金属原料の供給サイクル数依存性を各金属の原料ごとにグラフにして示す図。
【図11】第3実施形態および第2実施形態に係るキャパシタ誘電体膜の製造プロセスの1サイクルのシーケンスを示す図。
【図12】第4実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図。
【符号の説明】
2…基板本体
7,21,34…半導体基板
10,22,33…キャパシタ素子(高誘電体キャパシタ素子)
11,23,35…キャパシタ用電極
11a,23a,35a…キャパシタ用下部電極
11b,23b,35b…キャパシタ用上部電極
14…ルテニウム膜
15,26,40…Sr酸化物層(ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層)
16,38…キャパシタ誘電体膜
16a,24a,33a…キャパシタ下層誘電体膜
16b,24b,33b…キャパシタ上層誘電体膜
17a,17b,25a,39…STO膜(Sr−Ti−O膜)
25b…BST膜(Ba−Sr−Ti−O膜)
27,41…Ti酸化物層(ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層)
28…白金膜
Claims (11)
- 基板上に選択的に設けられたキャパシタ用下部電極と、
前記基板および前記下部電極の表面を覆うように設けられ、組成式がABO3− d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物の単層構造ないしは複数層の積層構造からなるキャパシタ誘電体膜と、
このキャパシタ誘電体膜の表面上に設けられたキャパシタ用上部電極と、
を具備してなり、前記キャパシタ誘電体膜は、その前記下部電極との界面が前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層により形成されていることを特徴とする半導体装置。 - 前記キャパシタ誘電体膜は、前記下部電極の表面と接触する下層誘電体膜、および前記上部電極と接触する上層誘電体膜の2層構造に形成されているとともに、該上層誘電体膜および該下層誘電体膜は、互いに異なる組成および材質からなるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
- 前記下層誘電体膜は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層、およびペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層がそれぞれ少なくとも1層ずつ交互に積層されて形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
- 前記キャパシタ誘電体膜は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層、およびペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層がそれぞれ少なくとも1層ずつ交互に積層されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
- 前記ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素となるII−A族、III−A族、およびIV−B族の金属元素、ならびにペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素となるIV−A族、V−A族、およびIV−B族の金属元素を、それぞれ少なくとも1種類ずつ主成分として含んでいることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれかに記載の半導体装置。
- 基板上にキャパシタ素子の下部電極を設ける工程と、
前記基板および前記下部電極の露出表面を覆うように、かつ、前記下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜を設ける工程と、
前記下部電極との間に前記酸化物の層および前記キャパシタ誘電体膜を挟むように、前記キャパシタ素子の上部電極を前記キャパシタ誘電体膜の露出表面上に設ける工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層を、前記キャパシタ素子の下部電極が形成された基板上に水分を吸着させ、この基板上に吸着した水分と、前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分として含む原料とを反応させる工程を1回以上行うことにより形成することを特徴とする請求項6に記載半導体装置の製造方法。
- 基板上にキャパシタ素子の下部電極を設ける工程と、
前記基板および前記下部電極の露出表面を覆うように、かつ、前記下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、該ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層とを、それぞれ少なくとも1層ずつ交互に積層して、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜の下層誘電体膜を設ける工程と、
この下層誘電体膜の露出表面を覆うように、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜の上層誘電体膜を設ける工程と、
前記下部電極との間に前記下層誘電体膜および前記上層誘電体膜の2層構造からなる前記キャパシタ誘電体膜を挟むように、前記上層誘電体膜の露出表面上に前記キャパシタ素子の上部電極を設ける工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 前記下層誘電体膜を設ける工程において、
前記キャパシタ素子の下部電極が形成された基板上に水分を吸着させ、この基板上に吸着した水分と、前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分として含む原料とを反応させる工程を1回以上行うことにより、前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層を形成するとともに、
このペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が形成された基板上に水分を吸着させ、この基板上に吸着した水分と、前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分として含む原料とを反応させる工程を1回以上行うことにより、前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層を形成し、
かつ、それら両工程を交互に1回ずつ以上行うことにより、前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層と、前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層とを、それぞれ少なくとも1層ずつ交互に積層することを特徴とする請求項8に記載半導体装置の製造方法。 - 基板上にキャパシタ素子の下部電極を設ける工程と、
前記基板および前記下部電極の露出表面を覆うように、かつ、前記下部電極の露出表面にペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が接触するように、該ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層と、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層とを、それぞれ少なくとも1層ずつ交互に積層して、組成式がABO3−d,0≦d≦1で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物からなるキャパシタ誘電体膜を設ける工程と、
前記下部電極との間に前記キャパシタ誘電体膜を挟むように、前記キャパシタ誘電体膜の露出表面上に前記キャパシタ素子の上部電極を設ける工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 前記キャパシタ誘電体膜を設ける工程において、
前記キャパシタ素子の下部電極が形成された基板上に水分を吸着させた後、該基板上に水分を供給しつつ、前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分として含む原料および前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分として含む原料を前記基板上に供給し、前記基板上に吸着した水分と、前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分として含む原料とを反応させる工程を1回以上行うことにより、前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層を形成するとともに、
前記水分の供給および前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分として含む原料の供給を断った後、前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層が形成された基板の上に前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分として含む原料を供給し、前記基板上に吸着した水分と、前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分として含む原料とを反応させる工程を1回以上行うことにより、前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層を形成し、
かつ、それら両工程を交互に1回ずつ以上行うことにより、前記ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層と、前記ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを形成する金属元素を主成分とする酸化物の層とを、それぞれ少なくとも1層ずつ交互に積層することを特徴とする請求項10に記載半導体装置の製造方法。
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