JP2004021826A - 電磁弁の駆動方法 - Google Patents

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Mikio Hamada
浜田 幹生
Houshi Sasaki
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Abstract

【課題】電磁弁の流量特性及び耐久性を維持するとともに電磁弁が発生する衝突音を抑制できる電磁弁の駆動方法を提供する。
【解決手段】電磁コイル32に通電を開始した場合に、通電を開始してからの時間を計測し、計測した時間が第1所定時間(T1)に達した場合に、電磁コイル32への通電を一時的に停止する。そして、電磁コイル32への通電を一時的に停止してから第2所定時間(T2)が経過した場合に、電磁コイル32への通電を再開する。あるいは、電磁コイル32に通電を開始した場合に、当該電磁コイルに供給される電流を検出し、検出した電流に基づいて、電磁コイルへの通電を一時的に停止する。そして、電磁コイル32への通電を一時的に停止してから第2所定時間(T2)が経過した場合に、電磁コイル32への通電を再開する。
【選択図】    図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁弁の駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は、例えば二輪車等の車両のエンジンの概略構成図である。エンジンのシリンダ10内の燃焼に用いられる空気は、エアクリーナ50及び配管51を通過してスロットルボデー20に導入される。そして、スロットルボデー20内に設けられたスロットルバルブ22は、流路面積を調節し、スロットルボデー20から吸気管15に導入される空気量を調節する。
スロットルボデー20を通過した空気は、吸気管15に導入され、吸気バルブ13に到達する。吸気バルブ13は、ピストン11が吸気工程にある場合に開き、シリンダ10に空気を吸い込ませる。また、このときインジェクタ40は、その時点の空気量等に適した燃料量を、シリンダ10内に向けて、霧状に噴射する。吸入工程を終えたピストン11は、圧縮工程、爆発工程、排気工程の各工程を行い、吸気工程に戻る。
【0003】
また、エアクリーナ50及び配管51と、吸気管15との間には、スロットルボデー20をバイパスするアイドル制御手段(配管24,26、電磁弁30、制御手段70)が設けられている。これにより、アイドリング時は、安定したアイドル回転数を得るためにスロットルボデー20を通過する空気量をほぼゼロとし、制御手段70による電磁弁30の開閉で空気量を精度よく制御することが行われる。制御手段70は、電磁弁30を開通させる場合、電磁弁30に単純に通電して開通させ、電磁弁30を閉鎖させる場合、電磁弁30への通電を停止させている。
【0004】
図2(A)及び(B)は、電磁弁30の概略構造及び動作状態を示す図である。図2(A)は通電を停止した場合の閉鎖状態を示しており、図2(B)は通電した場合の開通状態を示している。電磁弁30は、導入管37、導出管38、電磁コイル32、コア33、弾性体35(スプリング等)、可動体34、可動体34に固定された弁体36、バルブシート管39で構成されている。コア33及び可動体34は磁性体であり、励磁されることにより磁化される。
また、弁体36は、ゴム等の材質で成形されており、図2(A)において弁体36とバルブシート管39は密着している。
【0005】
図2(A)に示す閉鎖状態の場合、電磁コイル32への通電は停止されている。この場合、コア33は励磁されないため、可動体34は吸引されない。よって可動体34は弾性体35の付勢力により、コア33と反対の方向に付勢される。そして、可動体34に固定された半球状の弁体36がバルブシート管39に当接し、流路が閉鎖される。このとき、コア33と可動体34とのギャップ(L)は、例えば0.7mm程度である。
【0006】
図2(B)に示す開通状態の場合、電磁コイル32は通電状態である。この場合、コア33は励磁されており、可動体34を吸引する。可動体34は、弾性体35の付勢力よりも大きな吸引力でコア33に吸引されると、コア33の方向に移動して当接する。そして、可動体34に固定された半球状の弁体36とバルブシート管39と間には、流路(L)が形成され、流路(L)が開通する。このとき、弁体36とバルブシート管39との間に形成された流路(L)は、ほぼ図2(A)のギャップ(L)に等しい。
【0007】
電磁弁30の駆動方法において、開通させる場合に単純に通電すると、図2(B)で説明したように、コア33と可動体34が当接する。コア33と可動体34は磁性体(例えば鉄)であるため、吸引されて当接する場合、相当の速度を持って衝突する。このとき、車両の運転者等に不快な、比較的大きな衝突音が発生する。
この衝突音を抑制するために、例えば特開平11−81940号公報では、可動体の位置、速度等を検出して、衝突前に電磁コイルへの供給電圧等を制御している。また、特開平5−335140号公報では、複数の電磁コイルを用意し、可動体の位置に応じて電磁コイルを切替えて制御している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特開平11−81940号公報に記載の電磁弁の駆動方法では、可動体の位置を検出するセンサが電磁弁に必要であり、電磁弁の構造が複雑になり、流量特性及び耐久性等に影響を及ぼす可能性があるため、好ましくない。
また、特開平5−335140号公報に記載の電磁弁の駆動方法では、可動体の位置を検出するセンサを電磁弁に設ける必要と、複数の電磁コイルを電磁弁に備えなければならない。また、複数の電磁コイルを駆動する制御回路及び制御処理も複雑になる。このため、電磁弁の構造及び制御回路等が複雑になり、流量特性及び耐久性等に影響を及ぼす可能性があるため、好ましくない。
また、電磁弁のコアと可動体の衝突面に緩衝部材を設け、衝突音を抑制する方法も考えられるが、電磁弁の構造に変化を与えるため、電磁弁の流量特性(緩衝部材の劣化等による特性の変化)、耐久性(緩衝部材の耐久性)に影響を及ぼす可能性があるため、好ましくない。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、電磁弁の流量特性及び耐久性を維持するとともに電磁弁が発生する衝突音を抑制できる電磁弁の駆動方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの電磁弁の駆動方法である。
請求項1に記載の電磁弁の駆動方法では、電磁コイルへの通電を開始してから第1所定時間に達した場合に電磁コイルへの通電を一時的に停止(第2所定時間の間、停止)し、その後、通電を再開する。
このため、電磁弁の構造を変えることなく(位置検出用のセンサ等を設けることなく)、通電を開始してからの時間に基づいて、電磁弁のコアと可動体の衝突前に一旦通電を停止し、可動体をコアの充分近くに移動させるとともに、可動体の移動速度を減速した後で、再度通電することでより低い速度で電磁弁のコアと可動体を衝突させる。
これにより、電磁弁の流量特性及び耐久性を維持するとともに電磁弁が発生する衝突音を抑制できる。
【0010】
また、本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの電磁弁の駆動方法である。
請求項2に記載の電磁弁の駆動方法では、請求項1に対して、電磁弁への通電を開始してから電磁コイルへの通電を一時的に停止(第2所定時間の間、停止)するまでの間を、通電開始からの時間で設定するのでなく、電磁コイルへ供給される電流が所定の条件を満足した場合とする。弁体(可動体)がコアに吸引されるにつれて電流が増加傾向から一旦減少傾向に向かう現象を利用して、例えば、通電を開始以降に所定量の電流の落ち込みが発生した場合、あるいは通電を開始以降に電流の落ち込みが発生して所定電流まで落ち込んだ場合に通電を一時的に停止する。
このように、電磁弁のコアと可動体の衝突前を電流に基づいて検出するため、電磁弁のコアと可動体が衝突前であることを、より適切に検出することができる。
これにより、電磁弁の流量特性及び耐久性を維持するとともに電磁弁が発生する衝突音を抑制できる。
【0011】
また、本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりの電磁弁の駆動方法である。
請求項3に記載の電磁弁の駆動方法では、第1所定時間は、電磁弁に電流を供給する電源の電圧に応じて設定される。記憶手段等に電源の電圧に応じた第1所定時間を求める特性グラフ等を記憶しておき、電源の電圧から適切な第1所定時間を求める。
これにより、供給電圧毎に、適切な第1所定時間を設定できるため、より適切に電磁弁が発生する衝突音を抑制できる。
【0012】
また、本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりの電磁弁の駆動方法である。
請求項4に記載の電磁弁の駆動方法では、第2所定時間は、少なくとも電磁弁の特性に基づいて設定される。記憶手段等に第2所定時間を記憶しておき、駆動時に用いる。
これにより、適切な第2所定時間を設定できるため、より適切に電磁弁が発生する衝突音を抑制できる。
【0013】
また、本発明の第5発明は、請求項5に記載されたとおりのエンジンのアイドリング制御装置である。
請求項5に記載のエンジンのアイドリング制御装置では、エンジンのアイドリング時の空気量を制御する際、制御手段は、スロットルバルブをバイパスした通路における電磁弁を、請求項1〜4のいずれかに記載の電磁弁の駆動方法を用いて駆動する。
これにより、エンジンのアイドリング時の空気量を制御する電磁弁の流量特性及び耐久性を維持するとともに電磁弁が発生する衝突音を抑制できる、エンジンのアイドリング制御装置を容易に実現することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図3(A)は、本発明の電磁弁の駆動方法を用いた制御手段の一実施の形態の概略回路構成を示している。
以下、第1の実施の形態〜第4の実施の形態について、順に説明する。
【0015】
◆[第1の実施の形態]
第1の実施の形態では、図2に示す構造の電磁弁30において、電磁弁30を開通させる場合、電磁コイル32に第1所定時間通電した後に、第2所定時間通電を停止し、第2所定時間経過後に再度通電を開始する。このとき、第1所定時間、及び第2所定時間は、電磁弁30の特性及び電源電圧に基づいて設定される。
【0016】
●[回路構成]
図3(A)を用いて、第1の実施の形態における回路構成の例を説明する。制御手段70は、例えば、CPU71と、MOSトランジスタ72(以下、特に断りがない限り、M72と記載する)と、ツェナーダイオード73(以下、特に断りがない限り、ZD73と記載する)で構成されている。
電磁コイル32は、インダクタンス(L)と抵抗(R)とを含む等価回路で表現することができる。電磁コイル32の一方の端子は電源70aに接続されるとともに、ZD73のカソードにも接続される。また、電磁コイル32の他方の端子はM72のドレイン(D)に接続される。
【0017】
M72のソース(S)は基準電位70bに接続され、M72のゲート(G)はZD73のアノードに接続されている。また、M72のゲート(G)には、CPU71からの出力が接続されている。また、CPU71には、電源70aの電源電圧が供給され、電源70aの電圧を検出することが可能である。
例えば、CPU71への「電源電圧」入力はCPU71内のA/Dコンバータに接続され、CPU71からの出力はCPU71内のタイマ出力に接続されている。
【0018】
●[電磁コイルに流れる電流と可動体の位置の関係(図3(B)]
次に、図3(B)を用いて、図2に示す構造の電磁弁30に、通電を停止している状態から通電を開始し、通電を停止することなく通電を継続させた場合(従来の駆動方法)における、電磁コイル32に供給される電流と可動体34の位置の関係について説明する。
電磁弁30を閉鎖状態から開通状態にする場合、CPU71からM72のゲート(G)にHレベル信号(例えば5[V])を出力する。M72のゲート(G)にHレベル信号が入力されると、M72のドレイン(D)とソース(S)の間が導通し、電磁コイル32に電源70aから電流が供給される。
【0019】
ここで、電磁コイル32はインダクタンス(L)を有するため、図3(B)の「電磁弁の電流」において、「期間A」の間は電流が徐々に増加する。このとき、可動体34は、電磁コイル32の電流により励磁されたコア33の吸引力を受けるが、図3(B)の「可動体の位置」に示すように、弾性体35(スプリング等)の付勢力(バネ定数等)よりも吸引力が大きくなるまで移動することはない。
図3(B)の「電磁弁の電流」において、「期間A」の後、電流が更に増加すると、図3(B)の「可動体の位置」に示すように、弾性体35の付勢力よりも吸引力が大きくなり、可動体34がコア33の方向に移動を開始する(コア33に吸引される)。可動体34が一旦移動を開始すると、コア33と可動体34との距離が徐々に縮まるにつれて吸引力も徐々に大きくなる。このため、可動体34の速度は徐々に増加し、加速された状態でコア33と衝突し、比較的大きな衝突音が発生する。
ここで、図3(B)の「電磁弁の電流」における「期間B」の間は、可動体34がコア33の方向に移動することにより、電流が増加した後に徐々に減少していく。
【0020】
図3(B)の「電磁弁の電流」における「期間C」の間は、コア33と可動体34が既に当接しているため、コア33と可動体34の間の距離は変わらない。この「期間C」では可動体34がコア33に当接した位置から移動しないため、電流が徐々に増加し、いずれ一定値となる。
また、図3(B)の「可動体の位置」において、「期間A」の状態は図2(A)の状態(閉鎖状態)に対応しており、「期間C」の状態は図2(B)の状態(開通状態)に対応しており、「可動範囲」は図2(A)における「ギャップ(L)」に対応している。また、角度「α」は、コア33と可動体34とが衝突する時点での可動体34の速度に対応している。つまり角度「α」が大きい程、大きな衝突音が発生する。
【0021】
●[電磁コイルに流れる電流と可動体の位置の関係(図3(C)]
次に、図3(C)を用いて、第1の実施の形態における電磁弁の駆動方法とその効果について説明する。
第1の実施の形態では、図3(C)の「ゲート(G)電圧」に示すように、電磁コイル32への通電を「T1」の期間(第1所定時間)継続させた後、「T2」の期間(第2所定時間)通電を停止し、その後、再度通電する。「T1」及び「T2」を適切に設定することで、可動体34がコア33の方向に徐々に速度を上げながら接近する場合において、コア33と可動体34の衝突の直前に一旦可動体34の速度を減少させることができる。また、コア33と可動体34との間の距離も縮まっているため、再度通電した時点における可動体34の位置からコア33に衝突する位置までの距離が近く、衝突時における可動体34の速度(角度「β」)をより小さくすることができる。これにより衝突音を抑制することが可能となる。
なお、「T1」及び「T2」の設定方法においては後述する。
【0022】
次に、図3(C)の波形について説明する。
「期間A」は図3(B)の「期間A」と同じであるため説明を省略する。
「期間b」では、可動体34がコア33に徐々に近づくため、図3(B)における「期間B」と同様に、「電磁弁の電流」は徐々に増加した後、徐々に減少していく。なお、「期間b」は、「期間B」よりも必ず短い時間に設定される。
「期間c」では、コア33と可動体34が衝突する前に、一時的に通電を停止する。この期間では、「電磁弁の電流」はZD73による消弧回路にて急激に減少する。また、「可動体の位置」において、電流の急激な減少に伴い、可動体34のコア33方向への速度が急激に減少し、弾性体35の付勢力よりもコア33の吸引力が小さくなった時点で、可動体34はコア33と反対の方向に移動を開始する。
可動体34がコア33に充分に近づき、且つ充分に減速された状態から、「期間d」において再度通電を開始して、可動体34をコア33に吸引する。この場合、可動体34とコア33の距離が充分短いので、速度が充分大きくなる前に可動体34とコア33が衝突する(この場合、衝突する際の速度は角度「β」が対応している)。これにより、衝突時の衝突音を比較的小さく抑えることができる。可動体34の位置を時間で微分すると速度が求められ、更に時間で微分すると加速度が求められる。また、衝突エネルギーの大きさは、速度に応じて大きくなる。
【0023】
ここで、「T1(第1所定時間)」が長過ぎると、図3(B)に示すように可動体34がコア33に大きな速度で衝突してしまう。また「T1」が短過ぎると、可動体34を一旦減速する際、可動体34とコア33との間の距離を充分縮めることができない。
また、「T2(第2所定時間)」が長過ぎると、可動体34を一旦減速する際、コア33と反対の方向に押し戻される距離が大きくなり、せっかく可動体34とコア33との間の距離を縮めても、その距離が大きく開いてしまう。また「T2」が短過ぎると、可動体34を一旦減速する際、充分に減速することができない。
「T1」及び「T2」は、電磁弁の特性(電磁コイル32のインダクタンス等の電気的特性と、弾性体35の付勢力等の機械的特性)と、電源電圧(電磁コイル32に供給可能な電流量等)に基づいて、適切な値に設定する。
なお、最適な「T1」及び「T2」は、計算で求めることが非常に困難であるため、以下に示すように、実験で求めている。
【0024】
●[T1(第1所定時間)及びT2(第2所定時間)の設定]
図4(A)に、電源電圧−T1特性を示す。これは、図2に示す電磁弁30において、各電源電圧毎に、コア33と可動体34を衝突させることなく、且つコア33と可動体34が充分に近い距離とすることができる「T1[msec]」を実験で求めた結果である。例えば、ある電磁弁における電源電圧−T1特性では、電源電圧が14[V]の場合、T1は4.65[msec]が適切である。CPU71は、記憶手段に電源電圧−T1特性を記憶しており、電源電圧を監視しながら、現在の電源電圧と、記憶手段に記憶されている電源電圧−T1特性とに基づいて、T1を求める。
【0025】
図4(B)に、電源電圧−T2特性を示す。これは、図2に示す電磁弁30において、各電源電圧毎に、適切なT1(図4(A)より求めたT1)を出力した直後、可動体34のコア33の方向への速度を充分に減速できるとともに、コア33と反対の方向への移動距離(弾性体35に押し戻される距離)を充分小さくできる「T2[msec]」を実験で求めた結果である。図4(B)に示すように、電源電圧−T2特性は通電を停止する期間であるため、電源電圧にはあまり影響されず、電磁弁30の特性(弾性体35の付勢力等の機械的特性)でほぼ決まる要素であるため、電源電圧に対してT2はほぼ一定である。例えば、ある電磁弁における電源電圧−T2特性では、電源電圧が14[V]の場合、T2は0.5[msec]が適切である。
CPU71は、記憶手段に電源電圧−T2特性を記憶しており、電源電圧を監視しながら、現在の電源電圧と、記憶手段に記憶されている電源電圧−T2特性とに基づいて、T2を求める。また、ほぼ一定であることから電源電圧−T2特性を記憶することなく、電磁弁30の種類毎に所定値(この場合、0.5[msec])を記憶しておくのみでもよい。
【0026】
次に、図4(C)に示す時間−電流特性にて、電源電圧の違いによる、時間と電流の変化を説明する。電源電圧が高いほど、通電を開始してからの電流の立上がりが速い。しかし、通電を開始後に電流が立上がった後、電流が一旦減少を開始する位置(図4(C)の「電流a」の位置)は、ほぼ一定である。これは、所定の電流値に達した時点でコア33の吸引力が弾性体35の付勢力(バネ定数等)より大きくなり、可動体34がコア33の方向に移動するためである。
以下、第2の実施の形態〜第4の実施の形態では、この電流値に基づいてT1(第1所定時間)及びT2(第2所定時間)を適切に出力する方法について説明する。
【0027】
◆[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、電磁コイル32に流れる電流を検出して、検出した電流に基づいてT1を設定する方法である(T2はほぼ一定である)。第2の実施の形態は、図5(B)に示す複数のサンプリングデータから検出電流の波形を推定し、T1を求めて通電を停止する方法である。以下、第1の実施の形態との相違点について説明する。
【0028】
●[回路構成]
図5(A)を用いて、第2の実施の形態における回路構成の例を説明する。図3(A)に示す第1の実施の形態に対して、電流検出抵抗r74(以下、特に断りがない限り、r74と記載する)がM72のソース(S)と基準電位70bとの間に接続されており、M72のソース(S)からCPU71に入力されている。CPU71は、当該入力(図5(A)の検出電流(Vi))の電圧を検出することで、電磁コイル32に流れる電流を検出することができる。
例えば、CPU71の「検出電流(Vi)」入力はCPU71内のA/Dコンバータに接続され、CPU71からの出力はCPU71内のタイマ出力に接続される。
【0029】
●[T1、T2の出力方法と電磁コイルに流れる電流の関係(図5(B)]
CPU71は、所定のサンプリング間隔(例えば、1msec)で、検出電流(Vi)の電圧を検出することで電流を検出する(例えばr74を1Ωとした時、10mVの電圧であれば10mAであることが判る)。
例えば図5(B)に示すように、CPU71からM72のゲート(G)にHレベル信号を出力し、所定間隔で検出電流(Vi)を検出する。図5(B)の例では、T[i−4]の時点での検出電流はa[i−4]であり、T[i−3]の時点での検出電流はa[i−3]であったことを示している。
【0030】
ここで、T1はサンプリング間隔の整数倍とは限らないため、複数のサンプリングデータから、T1を推定する。例えばT[i−4]〜T[i]までの5個のデータ(a[i−4]〜a[i])より、検出電流(Vi)の値、傾き、及び傾きの変化等に基づいて検出電流(Vi)の波形を推定し、T1を求める。例えば、T[i]の時点でT[i−4]〜T[i]までの5個のデータ(a[i−4]〜a[i])から検出電流(Vi)の波形を推定して(基準波形データ等を記憶手段に記憶しておき、(T[n]、a[n])が基準波形のどの部分に対応するか判定しながら波形を推定する)T1を求め、T[i]の時点からTa経過後に通電を停止すれば、通電開始からT1を確保できると判定した場合、T[i]の時点からTa経過後に通電を停止させる。これにより、検出電流(Vi)に基づいてT1(第1所定時間)を適切に設定することができる。
【0031】
また、T2は図4(B)に示すように、ほぼ一定であるため、T1が経過して通電を停止させた時点から、T2経過後に再度通電を開始する。(この例では、T2には予め設定した固定値を使用)
これにより、図3(C)に示すゲート(G)電圧と同様の出力を行うことができ、可動体34とコア33の衝突音を抑制することができる。
第2の実施の形態は、電源電圧による画一的な見込み時間で制御する第1の実施の形態に対して、検出した電流に基づいて制御するため、電磁弁30のバラツキ(電磁コイル32等の電気的特性のバラツキ、弾性体35等の機械的特性のバラツキ)の影響をより小さくすることができる。
【0032】
◆[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、電磁コイル32に流れる電流を検出して、検出した電流に基づいてT1を設定する方法である(T2はほぼ一定である)。第3の実施の形態は、図6(B)の「期間h」において電流が減少することを検出し、所定の電流量が減少(図6(B)の「Δa」)したことを検出した時点で通電を停止する方法である。以下、第2の実施の形態との相違点について説明する。
【0033】
●[回路構成]
図6(A)を用いて、第3の実施の形態における回路構成の例を説明する。図5(A)に示す第2の実施の形態に対して、ピークホールド回路75(以下、特に断りがない限り、PH75と記載する)、比較器76(以下、特に断りがない限り、Cmp76と記載する)、ANDゲート77(以下、特に断りがない限り、AND77と記載する)が追加されている。また、M72のソース(S)からは、Cmp76の一方の入力(この場合、+側入力)と、PH75の入力に接続されている。また、PH75の出力は、Cmp76の他方の入力(この場合、−側入力)に接続されている。
【0034】
Cmp76の出力(Cout)は、AND77の一方の入力に接続され、AND77の他方の入力には、CPU71からの出力(Vout1)が接続されている。また、Cmp76の出力は、CPU71にも接続されている。また、AND77の出力(Vout2)は、M72のゲート(G)に接続されている。また、CPU71からPH75をリセット(ホールド電圧のリセット)可能なRst出力が接続されている。
例えば、CPU71への「Cout」入力はCPU71内のタイマ入力に接続され、CPU71の「Vout1」出力はCPU71内のタイマ出力に接続され、CPU71の「Rst出力」はCPU71内の汎用出力に接続される。
【0035】
PH75は、入力電圧の最大値をホールドし、リセット信号が入力されると、ホールド電圧をリセット(0[V]に初期化)する。
Cmp76は、+側入力に入力される電圧が−側入力に入力される電圧以上である場合にHレベル信号を出力し、+側入力に入力される電圧が−側入力に入力される電圧未満である場合にLレベル信号を出力する。この場合、Cmp76の出力は、+側入力に入力される電圧が、−側入力に入力される電圧よりも所定電圧(Δaに相当する電圧)低い時、Lレベル信号を出力するように設定する。
【0036】
●[T1、T2の出力方法と電磁コイルに流れる電流の関係(図6(B)]
CPU71は、電磁弁30に通電を開始するまでの「期間f」の間は、「Rst出力」をHレベルにしてPH75を初期化する。これにより「期間f」ではPH75のホールド電圧が初期化されているため、Cmp76の出力はHレベルである。
電磁弁30に通電を開始する時点で、CPU71は、「Vout1出力」をLレベルからHレベルに切替え、その後「Rst出力」をHレベルからLレベルに切替える。このとき、AND77の出力(「Vout2出力」)はLレベルからHレベルに切替わり、M72のゲート(G)にHレベル信号が入力され、電磁コイル32への通電が開始される。
【0037】
「期間g」においては検出電流(Vi)が徐々に増加するため、Cmp76の出力はHレベルを維持する。
「期間h」において検出電流(Vi)が減少し、減少が所定値(この場合、Δa)に達すると、Cmp76の出力がHレベルからLレベルに切替わる。このとき、AND77の「Vout2出力」もHレベルからLレベルに切替わる。通電を開始してからこの時点までがT1に相当する。
「期間i」において、CPU71は、Cmp76の「Cout」の立下りエッジを検出して、「Cout」がHレベルからLレベルに切替わったことを認識し、Lレベルに切替わった時点の時刻(Z1)を記憶し、「Vout1出力」をHレベルからLレベルに切替える。その後、CPU71は「Rst出力」をLレベルからHレベルに切替え、PH75のホールド電圧を初期化してCmp76の出力をLレベルからHレベルに切替える。更に、CPU71は、記憶した時刻(Z1)からT2時間を経過した後に「Vout1出力」をLレベルからHレベルに切替える。(この例では、T2には予め設定した固定値を使用)
以上の動作により、「Vout2出力」において、T1及びT2を適切に出力させることができる。
【0038】
第3の実施の形態は、電源電圧による画一的な見込み時間で制御する第1の実施の形態に対して、検出した電流に基づいて制御するため、第2の実施の形態と同様に、電磁弁30のバラツキ(電磁コイル32等の電気的特性のバラツキ、弾性体35等の機械的特性のバラツキ)の影響をより小さくすることができる。
また、T1の終了時点をハードウェアにより制御するため、ソフトウェアの処理遅れ等の影響を受けることなく、応答性を向上させることができる。
【0039】
◆[第4の実施の形態]
第4の実施の形態は、電磁コイル32に流れる電流を検出して、検出した電流に基づいてT1を設定する方法である(T2はほぼ一定である)。第4の実施の形態は、図7(B)の「期間m」と「期間n」の間(図7(B)の「E」)において検出電流(Vi)が所定値(図7(B)の「電流a」)よりも小さくなったことを検出した時点で通電を停止する方法である。以下、第3の実施の形態との相違点について説明する。
【0040】
●[回路構成]
図7(A)を用いて、第4の実施の形態における回路構成の例を説明する。図6(A)に示す第3の実施の形態に対して、PH75、CPU71からのRst出力が省略され、所定電圧回路79(以下、特に断りがない限り、Vref79と記載する)、ORゲート78(以下、特に断りがない限り、OR78と記載する)、CPU71からのForce出力が追加されている。
【0041】
Cmp76の出力(Cout)は、OR78の一方の入力に接続され、OR78の他方の入力には、CPU71からの出力(Force)が接続されている。また、Cmp76の出力は、CPU71にも接続されている。また、OR78の出力はAND77の一方の入力に接続され、AND77の他方の入力には、CPU71からの出力(Vout1)が接続されている。AND77の出力(Vout2)は、M72のゲート(G)に接続されている。
例えば、CPU71の「Cout」入力はCPU71内のタイマ入力に接続され、CPU71の「Vout1」出力はCPU71内のタイマ出力に接続され、CPU71の「Force」出力はCPU71内の汎用出力に接続される。
【0042】
Vref79は、所定電圧(例えば図7(B)に示す「電流a」に相当する電圧)に設定されており、Cmp76の一方の入力(この場合、−側入力)に接続されている。また、Cmp76の他方の入力(この場合、+側入力)には、検出電流(Vi)が接続されている。
Cmp76は、+側入力に入力される電圧が−側入力に入力される電圧以上である場合にHレベル信号を出力し、+側入力に入力される電圧が−側入力に入力される電圧未満である場合にLレベル信号を出力する。
【0043】
●[T1、T2の出力方法と電磁コイルに流れる電流の関係(図7(B)]
CPU71は、電磁弁30に通電を開始するまでの「期間k」の間は、「Force出力」をHレベルにしてOR78の出力をHレベルとしておく。このとき、CPU71からの「Vout1出力」をLレベルとしておくことで、AND77の「Vout2出力」をLレベルとする。また、このとき、Cmp76の「Cout出力」はLレベルである。
電磁弁30に通電を開始する時点で、CPU71は、「Vout1出力」をLレベルからHレベルに切替える。このとき、OR78の出力がHレベルであるため、AND77の「Vout2出力」はLレベルからHレベルに切替わり、M72のゲート(G)にHレベル信号が入力され、電磁コイル32への通電が開始される。
【0044】
「期間m」においては検出電流(Vi)が徐々に増加するが、「電流a」未満であるため、Cmp76の「Cout出力」はLレベルである。このとき、CPU71の「Force出力」にHレベルが出力されているため、OR78の出力はHレベルである。
検出電流(Vi)が徐々に増加して「電流a」以上に達した「期間n」においてはCmp76の「Cout出力」は、LレベルからHレベルに切替わる。CPU71は、「Cout出力」の立上がりエッジを検出して「Cout出力」がLレベルからHレベルに切替わったことを認識し、「Force出力」をHレベルからLレベルに切替える。このとき、「Cout出力」がHレベルであるため、OR78の出力はHレベルが維持される。また、AND77の「Vout2出力」もHレベルが維持される。
【0045】
検出電流(Vi)が徐々に減少して「電流a」未満に達した「期間p」においてはCmp76の「Cout出力」は、HレベルからLレベルに切替わる。このとき、CPU71の「Force出力」がLレベルであるため、OR78の出力はHレベルからLレベルに切替わり、AND77の「Vout2出力」もHレベルからLレベルに切替わる。通電を開始してからこの時点までがT1に相当する。
CPU71は、「Cout」の立下りエッジを検出して「Cout」がHレベルからLレベルに切替わったことを認識し、Lレベルに切替わった時点の時刻(Z2)を記憶し、「Vout1出力」をHレベルからLレベルに切替える。そして、CPU71は「Force出力」をLレベルからHレベルに切替える。更に、CPU71は、記憶した時刻(Z2)からT2時間を経過した後に「Vout1出力」をLレベルからHレベルに切替える。(この例では、T2には予め設定した固定値を使用)
以上の動作により、「Vout2出力」において、T1及びT2を適切に出力させることができる。
【0046】
第4の実施の形態は、電源電圧による画一的な見込み時間で制御する第1の実施の形態に対して、検出した電流に基づいて制御するため、第2及び第3の実施の形態と同様に、電磁弁30のバラツキ(電磁コイル32等の電気的特性のバラツキ、弾性体35等の機械的特性のバラツキ)の影響をより小さくすることができる。
また、T1の終了時点を、第3の実施の形態と同様にハードウェアにより制御するため、ソフトウェアの処理遅れ等の影響を受けることなく、応答性を向上させることができる。
【0047】
本発明の電磁弁の駆動方法は、本実施の形態で説明した構成、動作に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
本発明の電磁弁の駆動方法は、エンジンのアイドリング制御装置に限定されず、パージ制御装置等、電磁弁を用いた種々の制御装置に適用することが可能である。
本実施の形態の説明に用いた回路構成は、図3、図5〜図7に示した回路構成に限定されるものではない。
本実施の形態の説明に用いた特性グラフ、電圧(電流)波形等は、図3〜図7に示した特性グラフ、電圧(電流)波形等に限定されるものではない。
本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜4のいずれかに記載の電磁弁の駆動方法を用いれば、電磁弁の流量特性及び耐久性を維持するとともに電磁弁が発生する衝突音を抑制できる。
また、請求項5に記載のエンジンのアイドリング制御装置を用いれば、エンジンのアイドリング時の空気量を制御する電磁弁の流量特性及び耐久性を維持するとともに電磁弁が発生する衝突音を抑制できる、エンジンのアイドリング制御装置を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】二輪車等の車両のエンジンの概略構成図である。
【図2】電磁弁30の概略構造及び動作状態を説明する図である。
【図3】第1の実施の形態における、構成及び動作を説明する図である。
【図4】電磁弁30の、電源電圧−T1特性、電源電圧−T2特性、時間−電流特性の例を説明する図である。
【図5】第2の実施の形態における、構成及び動作を説明する図である。
【図6】第3の実施の形態における、構成及び動作を説明する図である。
【図7】第4の実施の形態における、構成及び動作を説明する図である。
【符号の説明】
32 電磁コイル
70 制御手段
71 CPU
72 MOSトランジスタ
73 ツェナーダイオード

Claims (5)

  1. 電磁コイルと、電磁コイルによって発生する電磁力により励磁されるコアと、励磁されたコアに吸引される弁体と、当該弁体が吸引される方向とほぼ逆の方向に弁体を付勢する弾性体とを備えた電磁弁を駆動する駆動方法であって、
    電磁コイルに通電を開始した場合に、通電を開始してからの時間を計測し、
    計測した時間が第1所定時間に達した場合に、電磁コイルへの通電を一時的に停止し、
    電磁コイルへの通電を一時的に停止してから第2所定時間が経過した場合に、電磁コイルへの通電を再開する、
    ことを特徴とする電磁弁の駆動方法。
  2. 電磁コイルと、電磁コイルによって発生する電磁力により励磁されるコアと、励磁されたコアに吸引される弁体と、当該弁体が吸引される方向とほぼ逆の方向に弁体を付勢する弾性体とを備えた電磁弁を駆動する駆動方法であって、
    電磁コイルに通電を開始した場合に、当該電磁コイルに供給される電流を検出し、
    検出した電流が所定の条件を満足した場合に、電磁コイルへの通電を一時的に停止し、
    電磁コイルへの通電を一時的に停止してから第2所定時間が経過した場合に、電磁コイルへの通電を再開する、
    ことを特徴とする電磁弁の駆動方法。
  3. 請求項1に記載の電磁弁の駆動方法であって、
    第1所定時間は、電磁弁に電流を供給する電源の電圧に応じて設定される、
    ことを特徴とする電磁弁の駆動方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の電磁弁の駆動方法であって、
    第2所定時間は、少なくとも電磁弁の特性に基づいて設定される、
    ことを特徴とする電磁弁の駆動方法。
  5. 空気と燃料の混合気を吸入して当該混合気の燃焼に基づいて動力を得るエンジンと、当該エンジンへ吸入する空気量を制御するスロットルバルブを備えたスロットルボデーと、エンジンの吸入口に配設されて燃料を噴射するインジェクタと、前記スロットルバルブの上流側及び下流側をバイパスして接続した通路間でエンジンのアイドリング時の空気量を制御する電磁弁と、電磁弁の制御手段とを備えたエンジンのアイドリング制御装置において、
    制御手段は、請求項1〜4のいずれかに記載の電磁弁の駆動方法を用いて電磁弁を駆動する、
    ことを特徴とするエンジンのアイドリング制御装置。
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