JP2004020341A - シリコン単結晶インゴットの点欠陥分布を測定する方法 - Google Patents

シリコン単結晶インゴットの点欠陥分布を測定する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】インゴットに含まれる酸素濃度が低くてもインゴット内の領域[Pv]と領域[Pi]及びこれらの境界を簡便に識別する。
【解決手段】参照用サンプルの表面に遷移金属を汚染して熱処理し、遷移金属をサンプル内に拡散する。熱処理された参照用サンプル全体における遷移金属の形成する再結合中心の濃度を測定して、この測定値から参照用サンプルにおける領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を規定する。一方上記熱処理された参照用サンプル全体における遷移金属の再結合ライフタイムを測定し、双方の測定結果から、再結合中心の濃度と再結合ライフタイムとの相関直線を作成する。測定用サンプルの表面に遷移金属を汚染して熱処理し、遷移金属をサンプル内に拡散する。熱処理された測定用サンプル全体における遷移金属の再結合ライフタイムを測定し、この測定値を上記相関直線に照合して、測定用サンプルにおける領域[Pv]と領域[Pi]及びこれらの境界を推定する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、CZ法という。)により引上げられたシリコン単結晶インゴット(以下、インゴットという。)の欠陥分布を測定する方法に関する。更に詳しくは、特にインゴットに固溶する酸素濃度が8.0×1017〜1.0×1018atoms/cm(旧ASTM、以下同じ)の範囲にある低酸素濃度のインゴットにおけるGrown−in無欠陥領域の測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の半導体集積回路の超微細化にともないデバイスの歩留まりを低下させる要因として、結晶に起因したパーティクル(Crystal Originated Particle、以下、COPという。)や、酸化誘起積層欠陥(Oxidation Induced Stacking Fault、以下、OISFという。)の核となる酸素析出物の微小欠陥や、或いは侵入型転位(Interstitial−type Large Dislocation、以下、L/Dという。)の存在が挙げられている。
【0003】
COPは、鏡面研磨されたシリコンウェーハをアンモニアと過酸化水素の混合液で洗浄すると、ウェーハ表面に出現するピットである。このウェーハをパーティクルカウンタで測定すると、このピットがパーティクルとして検出される。このピットは結晶に起因する。COPは電気的特性、例えば酸化膜の経時絶縁破壊特性(Time Dependent dielectric Breakdown、TDDB)、酸化膜耐圧特性(Time Zero Dielectric Breakdown、TZDB)等を劣化させる原因となる。またCOPがウェーハ表面に存在するとデバイスの配線工程において段差を生じ、断線の原因となり得る。そして素子分離部分においてもリーク等の原因となり、製品の歩留りを低くする。
【0004】
OISFは、結晶成長時に微小な酸素析出核がシリコン単結晶中に導入され、半導体デバイスを製造する際の熱酸化工程等で顕在化する欠陥である。このOISFは、デバイスのリーク電流を増加させる等の不良原因になる。L/Dは、転位クラスタとも呼ばれたり、或いはこの欠陥を生じたシリコンウェーハをフッ酸を主成分とする選択エッチング液に浸漬するとピットを生じることから転位ピットとも呼ばれる。このL/Dも、電気的特性、例えばリーク特性、アイソレーション特性等を劣化させる原因となる。
【0005】
以上のことから、半導体集積回路を製造するために用いられるシリコンウェーハからCOP、OISF及びL/Dを減少させることが必要となっている。
【0006】
このCOP、OISF及びL/Dを有しない無欠陥のインゴット及びこのインゴットからスライスされたシリコンウェーハが特開平11−1393号公報に開示されている。この無欠陥のインゴットは、インゴット内での空孔型点欠陥の凝集体及び格子間シリコン型点欠陥の凝集体がそれぞれ存在しないパーフェクト領域を[P]とするとき、パーフェクト領域[P]からなるインゴットである。パーフェクト領域[P]は、インゴット内で空孔型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有する領域[V]と、格子間シリコン型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有する領域[I]との間に介在する。
【0007】
また特開2001−102385号公報には、凝集した点欠陥を有しないパーフェクト領域[P]が空孔型点欠陥が優勢である領域[Pv]と、格子間シリコン型点欠陥が優勢である領域[Pi]とに分類されることが示される。領域[Pv]は領域[V]に隣接し、かつOISF核を形成し得る最低の空孔型点欠陥濃度未満の空孔型点欠陥濃度を有する領域である。領域[Pi]は領域[I]に隣接し、かつ侵入型転位を形成し得る最低の格子間シリコン型点欠陥濃度未満の格子間シリコン型点欠陥濃度を有する領域である。
【0008】
パーフェクト領域[P]からなるインゴットは、インゴットの引上げ速度をV(mm/分)とし、シリコン融液とインゴットの接触面におけるインゴット鉛直方向の温度勾配をG(℃/mm)とするとき、熱酸化処理をした際にリング状に発生するOISF(Pバンド)がウェーハ中心部で消滅し、かつL/D(Bバンド)を発生しない領域のV/G(mm/分・℃)の範囲内で作られる。
【0009】
従来、インゴット内の熱処理によって生じた2次欠陥、即ち凝集した点欠陥分布をインゴットの軸方向及び径方向にわたって測定するためには次の方法が採られていた。先ずインゴットを軸方向にスライスしてサンプルを作製する。次いでこのサンプルをミラーエッチングした後、窒素又は酸化性雰囲気下で800℃で4時間熱処理し、更に続いて1000℃で16時間熱処理する。この熱処理したサンプルを銅デコレーション(copperdecoration)、セコエッチング(secco−etching)、X線トポグラフ像分析(X−Ray Topography)分析、ライフタイム(lifetime)測定などの方法により測定する。一般に熱処理によってサンプル中に形成される酸素析出物の密度は酸素濃度にほぼ比例する。インゴットに固溶する酸素の濃度が1.2×1018atoms/cm以上である場合、上記熱処理により酸素析出物が高密度にインゴット内に出現するため、上記方法により領域[V]、Pバンド、領域[Pv]、領域[Pi]、Bバンド及び領域[I]を明確にすることができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、MCZ(Magnetic−field−applied CZ)法により磁界印加下で引上げられたインゴットのように、インゴットに固溶する酸素の濃度が1.0×1018atoms/cm未満と低い場合には、上記熱処理によって出現する酸素析出物の密度が十分に高くなく、上記従来の方法では各領域を明確にすることができない不具合があった。例えば、熱処理後のサンプルの再結合ライフタイムを測定した場合であって、酸素濃度が低いサンプルときには、酸素濃度が高いサンプルと比較して、領域[Pv]における再結合ライフタイムの測定値と領域[Pi]における再結合ライフタイムの測定値との差が小さい。このため、酸素濃度が低いサンプルのときには、領域[Pv]と領域[Pi]との境界を明確にすることができない欠点があった。更に熱処理条件によって領域[Pv]と領域[Pi]の間の境界が領域[Pv]側へ、又は領域[Pi]側へのいずれかにシフトする。これは熱処理条件によってサンプル内の酸素析出物の密度とサイズが変化することに起因する。そのため、本来の点欠陥領域を精度良く測定することが困難であった。
本発明の目的は、インゴットに含まれる酸素濃度が低くてもインゴット内の領域[Pv]と領域[Pi]領域及びこれらの境界を簡便に識別する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、(a) 第1シリコン融液から引上げ速度を変えて引上げられた第1シリコン単結晶インゴットを軸方向にスライスして、領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を含む参照用サンプルを作製する工程と、(b) 遷移金属が1〜1000ppmの濃度で溶解している遷移金属溶液を上記参照用サンプルの表面に塗布して金属汚染する工程と、(c) この金属汚染された参照用サンプルをアルゴン、窒素、酸素、水素又はそれらの混合ガス雰囲気下、0.5〜10℃/分の速度で昇温して600〜1200℃の温度で0.5〜24時間熱処理するか、又は30〜70℃/秒の速度で昇温して600〜1100℃の温度で10〜60秒間熱処理して上記遷移金属を上記参照用サンプル内に拡散する熱処理工程と、(d) この熱処理された参照用サンプル全体における上記遷移金属の形成する再結合中心の濃度を測定する工程と、(e) この熱処理された参照用サンプル全体における上記遷移金属の再結合ライフタイムを測定する工程と、(f) 上記(d)工程の測定結果と上記(e)工程の測定結果から、再結合中心の濃度と再結合ライフタイムとの相関直線を作成するとともに、参照用サンプルにおける、領域[Pv]及び領域[Pi]を少なくとも含む領域及びこれらの境界を規定する工程と、(g) 第2シリコン融液から所定の引上げ速度で引上げられた第2シリコン単結晶インゴットを軸方向にスライスして、領域[Pv]及び領域[Pi]を少なくとも含む測定用サンプルを作製する工程と、(h) 上記遷移金属溶液と同一の遷移金属溶液を上記測定用サンプルの表面に塗布して金属汚染する工程と、(i) 上記金属汚染された測定用サンプルを上記(c)工程と同一条件で熱処理して上記遷移金属を上記測定用サンプル内に拡散する熱処理工程と、(j) この熱処理された測定用サンプル全体における上記遷移金属の再結合ライフタイムを測定する工程と、(k) 上記(j)工程の測定結果を上記相関直線に照合することにより、領域[Pv]と領域[Pi]及びこれらの境界を推定する工程とを含むシリコン単結晶インゴットの点欠陥分布を測定する方法である。
【0012】
なお、上記スライスした参照用サンプル及び測定用サンプルは、その酸素濃度が8.0×1017〜1.0×1018atoms/cmの範囲にあるか、又はこれらのサンプルを窒素雰囲気下で800℃で4時間熱処理し、更に続いて1000℃で16時間熱処理した後に再結合ライフタイムを測定したときにこのサンプルにおける、領域[Pv]及び領域[Pi]の境界を識別不能であるサンプルである。また領域[V]は空孔型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有する領域、領域[Pv]は空孔型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有しない領域、領域[Pi]は格子間シリコン型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有しない領域及び領域[I]は格子間シリコン型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有する領域である。
【0013】
請求項1に係る発明は次の知見によりなされた。LM−PCD(レーザ/マイクロ波光導電率減衰法)に代表される再結合ライフタイムの測定法は、簡便であるけれども、所定の熱処理がなれた低酸素濃度のサンプルにおける、領域[Pv]と領域[Pi]及びこれらの境界を識別することができない。一方、DLTS(過渡容量分光法)に代表される再結合中心濃度の測定法は、その測定に多くの処理と時間を費やすけれども、所定の熱処理がなれた低酸素濃度のサンプルにおける領域[Pv]と領域[Pi]及びこれらの領域の境界を識別することができる。本発明者は、速度を変えて引上げた参照用サンプルをDLTS法によって測定した値と、この参照用サンプルをLM−PCD法によって測定した値とが相関関係にあることに着目した。即ち、参照用サンプルでDLTS法により、各領域の境界を識別した上で、この相関関係から検量線を作成する。所定の速度で引上げた測定用サンプルでは簡便なLM−PCD法により再結合ライフタイムを測定し、この測定値を検量線に当てはめて、再結合中心濃度を求める。求められた再結合中心濃度の値から測定用サンプルの領域を推定する。
【0014】
【発明の実施の形態】
(1) 本発明の測定方法の対象となるインゴット
本発明の測定方法の対象となるインゴットは、領域[Pv]及び領域[Pi]を少なくとも含むようにV/G比を制御して引上げられる。またこのインゴットはその酸素濃度が8.0×1017〜1.0×1018atoms/cm(旧ASTM、以下同じ)の範囲にあるか、又はこのインゴットをスライスされたサンプルを窒素雰囲気下で800℃で4時間熱処理し、更に続いて1000℃で16時間熱処理した後に再結合ライフタイムを測定したときにこのサンプルにおける、領域[Pv]と領域[Pi]の境界を識別不能であるインゴットである。
【0015】
こうしたインゴットは、CZ法又はMCZ法によりホットゾーン炉内のシリコン融液からボロンコフ(Voronkov)の理論に基づいて引上げられる。一般的に、CZ法又はMCZ法によりホットゾーン炉内のシリコン融液からシリコン単結晶のインゴットを引上げたときには、シリコン単結晶における欠陥として、点欠陥(point defect)と点欠陥の凝集体(agglomerates:三次元欠陥)が発生する。点欠陥は空孔型点欠陥と格子間シリコン型点欠陥という二つの一般的な形態がある。空孔型点欠陥は一つのシリコン原子がシリコン結晶格子で正常的な位置の一つから離脱したものである。このような空孔が空孔型点欠陥になる。一方、原子がシリコン結晶の格子点以外の位置(インタースチシャルサイト)で発見されるとこれが格子間シリコン点欠陥になる。
【0016】
点欠陥は一般的にシリコン融液(溶融シリコン)とインゴット(固状シリコン)の間の接触面で導入される。しかし、インゴットを継続的に引上げることによって接触面であった部分は引上げとともに冷却していく。冷却の間、空孔型点欠陥又は格子間シリコン型点欠陥は拡散や対消滅反応をする。約1100℃まで冷却した時点での過剰な点欠陥が空孔型点欠陥の凝集体(vacancy agglomerates)又は格子間シリコン型点欠陥の凝集体(interstitial agglomerates)を形成する。言い換えれば、過剰な点欠陥が凝集体を形成して発生する三次元構造である。
【0017】
空孔型点欠陥の凝集体は前述したCOPの他に、LSTD(Laser ScatteringTomograph Defects)又はFPD(Flow Pattern Defects)と呼ばれる欠陥を含み、格子間シリコン型点欠陥の凝集体は前述したL/Dと呼ばれる欠陥を含む。FPDとは、インゴットをスライスして作製されたシリコンウェーハを30分間セコ(Secco)エッチング液で化学エッチングしたときに現れる特異なフローパターンを呈する痕跡の源であり、LSTDとは、シリコン単結晶内に赤外線を照射したときにシリコンとは異なる屈折率を有し散乱光を発生する源である。
【0018】
ボロンコフの理論は、欠陥の数が少ない高純度インゴットを成長させるために、インゴットの引上げ速度をV(mm/分)、シリコンインゴット−シリコン融液の接触面の温度勾配をG(℃/mm)とするときに、V/G(mm/分・℃)を制御することである。この理論では、図16に示すように、V/Gをよこ軸にとり、空孔型点欠陥濃度と格子間シリコン型点欠陥濃度を同一のたて軸にとって、V/Gと点欠陥濃度との関係を図式的に表現し、空孔領域と格子間シリコン領域の境界がV/Gによって決定されることを説明している。より詳しくは、V/G比が臨界点以上では空孔型点欠陥濃度が上昇したインゴットが形成される反面、V/G比が臨界点以下では格子間シリコン型点欠陥濃度が上昇したインゴットが形成される。図16において、[I]は格子間シリコン型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有する領域((V/G)以下)を示し、[V]は空孔型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有する領域((V/G)以上)を示し、[P]は空孔型点欠陥の凝集体及び格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域((V/G)〜(V/G))を示す。領域[P]に隣接する側の領域[V]にはOISF核を形成するPバンド領域((V/G)〜(V/G))が存在する。Pバンド領域は板状析出物を核とする積層欠陥である。また領域[P]に隣接する側の領域[I]にはBバンド領域が存在する。このBバンド領域は領域[P]の中で凝集した格子間シリコン型点欠陥密度がより高い領域である。
【0019】
このパーフェクト領域[P]は更に領域[Pi]と領域[Pv]に分類される。[Pi]はV/G比が上記(V/G)から臨界点までの領域であり、格子間シリコン型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有しない領域である。[Pv]はV/G比が臨界点から上記(V/G)までの領域であり、空孔型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有しない領域である。即ち、[Pi]は領域[I]に隣接し、かつ侵入型転位を形成し得る最低の格子間シリコン型点欠陥濃度未満の格子間シリコン型点欠陥濃度を有する領域であり、[Pv]は領域[V]に隣接し、かつOISF核を形成し得る最低の空孔型点欠陥濃度未満の空孔型点欠陥濃度を有する領域である。
本発明の測定方法の対象となるインゴットは、V/G比が(V/G)〜(V/G) の範囲内に制御されて引上げられる。
【0020】
(2) 本発明の第1の測定方法
次に図1〜図3に基づいて本発明の第1の測定方法を説明する。
図2及び図3に示すように、先ずインゴットからパイロットサンプル及び参照用サンプルを作製する。即ち、CZ法又はMCZ法に基づく引上げ装置の石英るつぼに貯留された第1シリコン融液から第1インゴットを引上げる。このとき上述した領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を含むをインゴットが軸方向に含むように、インゴットの引上げ速度V(mm/分)を高速(トップ側)から低速(ボトム側)に速度を変えて引上げる。得られた第1インゴットを軸方向にスライスし、かつミラーエッチングすることにより、500〜1000μmの厚さを有する、表面が鏡面化したウェーハ状のパイロットサンプル及び参照用サンプルが作られる。
【0021】
パイロットサンプルに固溶する酸素濃度をFT−IR(Fourier transform infrared absorption spectroscopy)法により測定し、酸素濃度が1.0×1018atoms/cm以上である場合には、窒素雰囲気下で800℃で4時間熱処理し、更に続いて1000℃で16時間熱処理する。この熱処理したサンプルの再結合ライフタイムをLM−PCD法でサンプル全体にわたって測定する。図4は測定結果の一例である。図4に示すように、上記2段熱処理により酸素析出物が高密度にサンプル内に出現する。その濃度分布に応じて、サンプル全体が領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]が明瞭に識別される。領域[V]内にはOISF核を形成するPバンド領域が存在し、領域[I]内にはBバンド領域が存在する。
【0022】
一方、パイロットサンプルの酸素濃度が1.0×1018atoms/cm未満である場合には、上記と同様にサンプルを熱処理してサンプルの再結合ライフタイムの測定しても、図5に示すように、この再結合ライフタイムの測定結果からでは、パーフェクト領域[P]が領域[Pv]であるか、又は領域[Pi]であるかを識別することができない。このため、本発明では、図2に示すように参照用サンプルに遷移金属溶液を塗布してこのサンプルを金属汚染する。遷移金属としてFe,Ni,Cu又はCoが例示される。遷移金属溶液は遷移金属が1〜1000ppm、好ましくは1〜100ppmの濃度で溶解している溶液である。特にFe,Ni,Cu又はCoが10〜100ppmの濃度で溶解している原子吸光用標準溶液が好ましい。塗布方法としては、スピンコート法、ディッピング法が挙げられる。遷移金属溶液の濃度が下限値未満では、その後の度及び再結合ライフタイムを高精度に測定することができない。また上限値を越えるとサンプルの表面及び裏面に遷移金属が拡散して表裏面の近傍で金属シリサイド(析出物)を形成することから、サンプル内部(結晶中)に深いエネルギ準位である再結合中心を形成することができない。
【0023】
第1の測定方法では、図2に示すように1ppmの濃度でFeが溶解している溶液を参照用サンプルの表面にスピンコート法で塗布してFe汚染する。このFe汚染された参照用サンプルをアルゴン、窒素、酸素、水素又はそれらの混合ガス雰囲気下、熱処理する。この熱処理の方法として、0.5〜10℃/分の速度で昇温して600〜1200℃の温度で0.5〜24時間熱処理する方法と、30〜70℃/秒の速度で昇温して600〜1100℃の温度で10〜60秒間熱処理する方法(RTA法)がある。前者の方法では、5〜10℃/分の速度で昇温して900〜1000℃で1〜2時間熱処理することが好ましい。また後者の方法(RTA法)では、30〜50℃/秒の速度で昇温して900〜1000℃で30〜60秒間熱処理することが好ましい。熱処理の時間及び温度が下限値未満では遷移金属が十分にサンプル内に拡散しない。また上限値を越えるとサンプルの表面及び裏面に遷移金属が拡散して表裏面の近傍で金属シリサイド(析出物)を形成することから、サンプル内部(結晶中)に深いエネルギ準位である再結合中心を形成することができない。
【0024】
熱処理された参照用サンプルについて次の2つの測定を行う。即ち▲1▼サンプル全体における前記遷移金属の形成する再結合中心の濃度の測定、及び▲2▼遷移金属の再結合ライフタイムの測定である。上記▲1▼の方法としてはDLTS(過渡容量分光法)が好ましく、上記▲2▼の方法としてはLM−PCD(レーザ/マイクロ波光導電率減衰法)が好ましい。DLTSによりサンプル内に遷移金属によって形成される再結合中心の濃度を定量化する。LM−PCDによりサンプル全体にわたって再結合ライフタイムを定量化する。
【0025】
上記▲1▼の再結合中心の濃度を測定した結果を図6に示す。また上記▲2▼の再結合ライフタイムを測定した結果を図7に示す。図6及び図7において、それぞれよこ軸はサンプルをスライスする前のインゴットの軸方向に相当する。両図のよこ軸の右端はV/G比が大であり、左端はV/G比が小である。図6から、V/G比を変化していく中でサンプル中心領域RでFe濃度が最も高くなること、及び領域Rの右側領域RにおいてFe濃度が最も低くなることいのが判る。また図7から同じくサンプル中心領域Rで再結合ライフタイムの劣化が極めて顕著であること、及び領域Rの右側領域Rにおいて再結合ライフタイムが最も高くなることが判る。図8は図6と図7を合成した図である。この図8から、領域Rは領域Rに一致し、領域Rは領域Rに一致することが判る。図4の結果とボロンコフの理論から、領域R(R)は酸素析出が最も抑制される領域[Pi]と断定され、領域R(R)は酸素析出が最も促進される領域[Pv]と断定される。
【0026】
Fe濃度が最も高い領域が領域[Pi]であって、最も低い領域が領域[Pv]である理由は次の通りである。遷移金属であるFe溶液をサンプル表面に塗布し、熱処理によりFeをサンプル内に拡散すると、サンプル内の領域[V]及び領域[Pv]ではFeは空孔に取り込まれサンプルが冷却するとFeを含んだ酸素析出物となる。酸素析出物中のFeの含有量は空孔型点欠陥の量に起因するので、領域[Pv]におけるFeの含有量は領域[V]のそれより少ない。一方、領域[Pi]では遷移金属の取り込まれる空孔が存在せずかつ凝集した格子間シリコン型点欠陥もないため、Feはシリコンのバルク中に留まる。領域[I]ではFeは凝集した格子間シリコン型点欠陥と反応してFeシリサイドを形成する。上記各領域におけるFeの挙動は酸素濃度の多寡によらず、一定である。こうしたサンプル全体におけるFe属の形成する再結合中心の濃度を測定することにより、サンプルにおける、領域[Pv]と領域[Pi]及びこれらの境界を明確にすることができる。
【0027】
一方、図8から再結合ライフタイムと再結合中心濃度の両者に相関があることが推察され、上記▲2▼の測定値の逆数と上記▲1▼の測定値とをプロットすると図9が得られる。図9から両者に一次の相関関係にあることが判り、この相関による直線から検量線を作成する。この直線は、次式(1)で表される。
Fe=(1×1013/ライフタイム)(cm−3・μs)……(1)
図9には、同時に領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]が示される。
【0028】
次に、図1に示すように、測定用インゴットからパイロットサンプル及び測定用サンプルを作製する。即ち、CZ法又はMCZ法に基づく引上げ装置の石英るつぼに貯留された第2シリコン融液から第2インゴットを引上げる。このとき例えば第2インゴットはパーフェクト領域[P]を全長にわたって含むように、V/G値を図16に示す(V/G)〜(V/G)の範囲内にして引上げられる。得られた第2インゴットを軸方向にスライスし、かつミラーエッチングすることにより、厚さ0.5〜1mmの範囲の表面が鏡面化したウェーハ状のパイロットサンプル及び測定用サンプルが作られる。
【0029】
このパイロットサンプルに固溶する酸素濃度をFT−IR法により測定し、酸素濃度が1.0×1018atoms/cm以上である場合には、上述した参照用サンプルの2段熱処理と同じ2段熱処理を行う。この熱処理したサンプルの再結合ライフタイムをLM−PCD法でサンプル全体にわたって測定する。高酸素濃度のパイロットサンプルでは、2段熱処理により酸素析出物が高密度にサンプル内に出現するため、サンプルには領域[Pv]と領域[Pi]及びこれらの境界が明瞭に識別される。
【0030】
一方、パイロットサンプルの酸素濃度が1.0×1018atoms/cm未満である場合には、参照用サンプルへの金属汚染と同様に、図1に示すように測定用サンプルに遷移金属溶液を塗布してこのサンプルを金属汚染する。第1の測定方法では、図1に示すように1ppmの濃度でFeが溶解している溶液を測定用サンプルの表面に塗布してFe汚染する。このFe汚染された測定用サンプルを上述した参照用サンプルと同様に熱処理する。熱処理された測定用サンプルについてFeの再結合ライフタイムを測定する。この再結合ライフタイムの測定値を図9に示される検量線に当てはめ、再結合中心濃度を求めると、求められた再結合中心濃度の値から測定用サンプルの領域が領域[Pv]であるか、又は領域[Pi]であるかを推定することができる。
【0031】
(3) 本発明の第2の測定方法
第2の測定方法は、図10及び図11に示される。図11に示すように、パイロットサンプルの酸素濃度が1.0×1018atoms/cm未満である場合には、インゴットから2枚の参照用サンプルをスライスし、参照用第1サンプルにFeが溶解している溶液を塗布してFe汚染し、参照用第2サンプルにNi又はCoが溶解している溶液を塗布してNi又はCo汚染する。これらの参照用サンプルを個別に又は同時に熱処理する。この熱処理条件は第1の測定方法と同じである。
【0032】
Fe汚染した後,熱処理した参照用第1サンプルのFeの再結合中心の濃度を第1の測定方法と同様に測定することにより、低酸素濃度の参照用第1サンプルにおける領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を識別することができる。一方、Ni又はCo汚染した後,熱処理した参照用第2サンプルの再結合ライフタイムを第1の測定方法と同様に測定する。次いでNHとHFとCHOOHを含むエッチング液でエッチングする。Ni又はCoはFeと比べて拡散係数が大きいため熱処理によりサンプル表面近傍に析出しているが、このエッチングにより表面近傍に存在するNi又はCoは除去される。この状態で再度、参照用第2サンプルの再結合ライフタイムを第1の測定方法と同様に測定する。次いで化学エッチング前後におけるサンプル全体の再結合ライフタイムを測定する。図11に示すように、化学エッチング後では、領域[Pi]と領域[I]での再結合ライフタイムの増加が顕著であり、一方、領域[V]は、化学エッチング前後での再結合ライフタイムに変化がないことが判る。そのため、Ni拡散によっても化学エッチング前後での再結合ライフタイムの増加量から領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を識別することができる。
【0033】
参照用第1サンプルにおけるFeの再結合中心の濃度の測定値と、参照用第2サンプルにおける再結合ライフタイムの測定値との相関から、第1の測定方法と同様に検量線(図示せず)を作成する。
【0034】
次に、図10に示すように、第1の測定方法と同様に、測定用インゴットからパイロットサンプル及び測定用サンプルを作製する。このインゴットはパーフェクト領域[P]を全長にわたって含むように、V/G値を図16に示す(V/G)〜(V/G)の範囲内にして引上げられる。このパイロットサンプルの酸素濃度が1.0×1018atoms/cm未満である場合には、参照用第2サンプルと同様に、測定用サンプルにNi又はCo溶液を塗布してこのサンプルをNi又はCo汚染する。このNi又はCo汚染された測定用サンプルを上述した参照用第2サンプルと同様に熱処理する。図11に示すように、熱処理された測定用サンプルについてNi又はCoの再結合ライフタイムを測定する。参照用第2サンプルと同様にこの測定用サンプルを化学エッチングした後、再度、測定用サンプルの再結合ライフタイムを測定する。次いで化学エッチング前後におけるサンプル全体の再結合ライフタイムを測定する。この再結合ライフタイムの測定値を図示しない検量線に当てはめると、測定用サンプルの領域が領域[Pv]であるか、又は領域[Pi]であるかを推定することができる。
【0035】
(4) 本発明の第3の測定方法
第3の測定方法は、図12及び図13に示される。図13に示すように、先ずパイロットサンプルを第1の測定方法と同じ2段熱処理を行い、再結合ライフタイムを測定する。この結果、パイロットサンプルにおいて、領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]の境界を識別できない場合には、インゴットからスライスした参照用サンプルにFeが溶解している溶液を塗布してFe汚染する。この参照用サンプルを第1の測定方法と同様に熱処理する。この熱処理した参照用サンプルのFeの再結合中心の濃度を第1の測定方法と同様に測定することにより、参照用サンプルにおける領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を識別することができる。一方、Fe汚染した後,熱処理した参照用サンプルの再結合ライフタイムを第1の測定方法と同様に測定する。参照用サンプルにおけるFeの再結合中心の濃度の測定値と再結合ライフタイムの測定値との相関から、第1の測定方法と同様に図示しない検量線を作成する。
【0036】
次に、図12に示すように、第1の測定方法と同様に、測定用インゴットからパイロットサンプル及び測定用サンプルを作製する。このインゴットはパーフェクト領域[P]を全長にわたって含むように、V/G値を図16に示す(V/G)〜(V/G)の範囲内にして引上げられる。このパイロットサンプルを第1の測定方法と同じ2段熱処理を行い、再結合ライフタイムを測定する。この結果、パイロットサンプルにおいて、領域[Pv]と領域[Pi]及びこれらの境界を識別できない場合には、測定用サンプルにFeが溶解している溶液を塗布してFe汚染する。この測定用サンプルを第1の測定方法と同様に熱処理した後、測定用サンプルのFeの再結合ライフタイムを測定する。この再結合ライフタイムの測定値を図示しない検量線に当てはめ、再結合中心濃度を求めると、求められた再結合中心濃度の値から測定用サンプルの領域が領域[Pv]であるか、又は領域[Pi]であるかを推定することができる。
【0037】
(5) 本発明の第4の測定方法
第4の測定方法は、図14及び図15に示される。図15に示すように、先ずパイロットサンプルを第1の測定方法と同じ2段熱処理を行い、再結合ライフタイムを測定する。この結果、パイロットサンプルにおいて、領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]の境界を識別できない場合には、インゴットから2枚の参照用サンプルをスライスし、参照用第1サンプルにFeが溶解している溶液を塗布してFe汚染し、参照用第2サンプルにNi又はCoが溶解している溶液を塗布してNi又はCo汚染する。これらの参照用サンプルを個別に又は同時に熱処理する。この熱処理条件は第1の測定方法と同じである。
【0038】
Fe汚染した後,熱処理した参照用第1サンプルのFeの再結合中心の濃度を第1の測定方法と同様に測定することにより、参照用第1サンプルにおける領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を識別することができる。一方、Ni又はCo汚染した後,熱処理した参照用第2サンプルを第2の測定方法と同様に化学エッチングした後、再度、参照用第2サンプルの再結合ライフタイムを測定する。次いで化学エッチング前後におけるサンプル全体の再結合ライフタイムを測定する。参照用第1サンプルにおけるFeの再結合中心の濃度の測定値と、参照用第2サンプルにおける再結合ライフタイムの測定値との相関から、第1の測定方法と同様に図示しない検量線を作成する。
【0039】
次に、図14に示すように、第1の測定方法と同様に、測定用インゴットからパイロットサンプル及び測定用サンプルを作製する。このインゴットはパーフェクト領域[P]を全長にわたって含むように、V/G値を図16に示す(V/G)〜(V/G)の範囲内にして引上げられる。このパイロットサンプルを第1の測定方法と同じ2段熱処理を行い、再結合ライフタイムを測定する。この結果、パイロットサンプルにおいて、領域[Pv]と領域[Pi]及びこれらの境界を識別できない場合には、参照用第2サンプルと同様に、測定用サンプルにNi又はCo溶液を塗布してこのサンプルをNi又はCo汚染する。このNi又はCo汚染された測定用サンプルを上述した参照用第2サンプルと同様に熱処理する。熱処理された測定用サンプルについてNi又はCoの再結合ライフタイムを測定する。参照用第2サンプルと同様にこの測定用サンプルを化学エッチングした後、再度、測定用サンプルの再結合ライフタイムを測定する。次いで化学エッチング前後におけるサンプル全体の再結合ライフタイムを測定する。この再結合ライフタイムの測定値を図示しない検量線に当てはめると、測定用サンプルの領域が領域[Pv]であるか、又は領域[Pi]であるかを推定することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のシリコン単結晶インゴットの点欠陥分布を測定する方法によれば、インゴットに含まれる酸素濃度が低くてもインゴット内の領域[Pv]と領域[Pi]及びこれらの境界を高精度に測定して、点欠陥の各領域を簡便に識別することができる。この結果、パーフェクト領域[P]を有するシリコン単結晶インゴットを容易に製造することができ、このインゴットからパーフェクト領域[P]からなるシリコンウェーハが容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1の測定方法における測定用サンプルに関するフローチャート。
【図2】
本発明の第1の測定方法における参照用サンプルに関するフローチャート。
【図3】
インゴットからサンプルを作製する状況を示す図。
【図4】
第1の測定方法において高酸素濃度のパイロットサンプルを2段熱処理した後
LM−PCD法により測定したときのサンプル全体の再結合ライフタイムを示す
図。
【図5】
第1の測定方法において低酸素濃度の測定用サンプルをFe汚染して熱処理し
た後、LM−PCD法により測定したときのサンプル全体の再結合ライフタイム
を示す図。
【図6】
第1の測定方法において低酸素濃度の参照用サンプルをDLTS法により測定
したときのサンプル内のFe濃度の再結合中心濃度を示す図。
【図7】
第1の測定方法において低酸素濃度の参照用サンプルをLM−PCD法により
測定したときのサンプル全体のFeの再結合ライフタイムを示す図。
【図8】
図6と図7を合成した図。
【図9】第1の測定方法において低酸素濃度の参照用サンプルのLM−PCD法による測定値の逆数とDLTS法による測定値とをプロットしたときの検量線を示す図。
【図10】本発明の第2の測定方法における測定用サンプルに関するフローチャート。
【図11】本発明の第2の測定方法における参照用サンプルに関するフローチャート。
【図12】本発明の第3の測定方法における測定用サンプルに関するフローチャート。
【図13】本発明の第3の測定方法における参照用サンプルに関するフローチャート。
【図14】本発明の第4の測定方法における測定用サンプルに関するフローチャート。
【図15】本発明の第5の測定方法における参照用サンプルに関するフローチャート。
【図16】ボロンコフの理論を基づいた、V/Gをよこ軸にとり、空孔型点欠陥濃度と格子間シリコン型点欠陥濃度を同一のたて軸にとって、V/Gと点欠陥濃度との関係を示す図。

Claims (7)

  1. (a) 第1シリコン融液から引上げ速度を変えて引上げられた第1シリコン単結晶インゴットを軸方向にスライスして、領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を含む参照用サンプルを作製する工程と、
    (b) 遷移金属が1〜1000ppmの濃度で溶解している遷移金属溶液を前記参照用サンプルの表面に塗布して金属汚染する工程と、
    (c) 前記金属汚染された参照用サンプルをアルゴン、窒素、酸素、水素又はそれらの混合ガス雰囲気下、0.5〜10℃/分の速度で昇温して600〜1200℃の温度で0.5〜24時間熱処理するか、又は30〜70℃/秒の速度で昇温して600〜1100℃の温度で10〜60秒間熱処理して前記遷移金属を前記参照用サンプル内に拡散する熱処理工程と、
    (d) 前記熱処理された参照用サンプル全体における前記遷移金属の形成する再結合中心の濃度を測定する工程と、
    (e) 前記熱処理された参照用サンプル全体における前記遷移金属の再結合ライフタイムを測定する工程と、
    (f) 前記(d)工程の測定結果と前記(e)工程の測定結果から、再結合中心の濃度と再結合ライフタイムとの相関直線を作成するとともに、前記参照用サンプルにおける、領域[Pv]及び領域[Pi]を少なくとも含む領域及びこれらの境界を規定する工程と、
    (g) 第2シリコン融液から所定の引上げ速度で引上げられた第2シリコン単結晶インゴットを軸方向にスライスして、領域[Pv]及び領域[Pi]を少なくとも含む測定用サンプルを作製する工程と、
    (h) 前記遷移金属溶液と同一の遷移金属溶液を前記測定用サンプルの表面に塗布して金属汚染する工程と、
    (i) 前記金属汚染された測定用サンプルを前記(c)工程と同一条件で熱処理して前記遷移金属を前記測定用サンプル内に拡散する熱処理工程と、
    (j) 前記熱処理された測定用サンプル全体における前記遷移金属の再結合ライフタイムを測定する工程と、
    (k) 前記(j)工程の測定結果を前記相関直線に照合することにより、領域[Pv]と領域[Pi]及びこれらの境界を推定する工程とを含み、
    前記スライスした参照用サンプル及び測定用サンプルは、その酸素濃度が8.0×1017〜1.0×1018atoms/cm(旧ASTM、以下同じ)の範囲にあるか、又はこれらのサンプルを窒素雰囲気下で800℃で4時間熱処理し、更に続いて1000℃で16時間熱処理した後に再結合ライフタイムを測定したときに前記サンプルにおける、領域[Pv]及び領域[Pi]の境界を識別不能であるサンプルであることを特徴とするシリコン単結晶インゴットの点欠陥分布を測定する方法。
    但し、領域[V]は空孔型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有する領域、領域[Pv]は空孔型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有しない領域、領域[Pi]は格子間シリコン型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有しない領域及び領域[I]は格子間シリコン型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有する領域である。
  2. (a) 第1シリコン融液から引上げ速度を変えて引上げられた第1シリコン単結晶インゴットを軸方向にスライスして、領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を含む第1及び第2参照用サンプルを作製する工程と、
    (b) 互いに異なる遷移金属が1〜1000ppmの濃度で溶解している第1及び第2遷移金属溶液を前記第1及び第2参照用サンプルの各表面に塗布して金属汚染する工程と、
    (c) 前記金属汚染された第1及び第2参照用サンプルをアルゴン、窒素、酸素、水素又はそれらの混合ガス雰囲気下、0.5〜10℃/分の速度で昇温して600〜1200℃の温度で0.5〜24時間熱処理するか、又は30〜70℃/秒の速度で昇温して600〜1100℃の温度で10〜60秒間熱処理して前記遷移金属を前記第1及び第2参照用サンプル内に拡散する熱処理工程と、
    (d) 前記熱処理された第1参照用サンプル全体における前記遷移金属の形成する再結合中心の濃度を測定する工程と、
    (e) 前記熱処理された第2参照用サンプル全体における前記遷移金属の再結合ライフタイムを測定する工程と、
    (f) 前記(d)工程の測定結果と前記(e)工程の測定結果から、再結合中心の濃度と再結合ライフタイムとの相関直線を作成するとともに、前記第1参照用サンプルにおける、領域[Pv]及び領域[Pi]を少なくとも含む領域及びこれらの境界を規定する工程と、
    (g) 第2シリコン融液から所定の引上げ速度で引上げられた第2シリコン単結晶インゴットを軸方向にスライスして、領域[Pv]及び領域[Pi]を少なくとも含む測定用サンプルを作製する工程と、
    (h) 前記第2遷移金属溶液と同一の第3遷移金属溶液を前記測定用サンプルの表面に塗布して金属汚染する工程と、
    (i) 前記金属汚染された測定用サンプルを前記(c)工程と同一条件で熱処理して前記遷移金属を前記測定用サンプル内に拡散する熱処理工程と、
    (j) 前記熱処理された測定用サンプル全体における前記遷移金属の再結合ライフタイムを測定する工程と、
    (k) 前記(j)工程の測定結果を前記相関直線に照合することにより、領域[Pv]と領域[Pi]及びこれらの境界を推定する工程とを含み、
    前記スライスした第1及び第2参照用サンプル並びに測定用サンプルは、その酸素濃度が8.0×1017〜1.0×1018atoms/cm(旧ASTM、以下同じ)の範囲にあるか、又はこれらのサンプルを窒素雰囲気下で800℃で4時間熱処理し、更に続いて1000℃で16時間熱処理した後に再結合ライフタイムを測定したときに前記サンプルにおける、領域[Pv]及び領域[Pi]の境界を識別不能であるサンプルであることを特徴とするシリコン単結晶インゴットの点欠陥分布を測定する方法。
    但し、領域[V]は空孔型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有する領域、領域[Pv]は空孔型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有しない領域、領域[Pi]は格子間シリコン型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有しない領域及び領域[I]は格子間シリコン型点欠陥が優勢であって凝集した点欠陥を有する領域である。
  3. 遷移金属がFe,Ni,Cu又はCoである請求項1又は2記載の測定方法。
  4. 遷移金属がNi又はCoであるとき、Ni又はCoを溶解した溶液を塗布した第2参照用サンプル及び測定用サンプルをそれぞれ熱処理した後、第2参照用サンプル及び測定用サンプルをそれぞれ厚さ500〜1000μmの範囲で化学エッチングし、前記第2参照用サンプル及び測定用サンプルの各化学エッチング前後において、前記遷移金属の再結合ライフタイムの測定が行われる請求項3記載の測定方法。
  5. 第1参照用サンプルにFeが溶解している溶液を塗布し、第2参照用サンプル及び測定用サンプルにそれぞれNi又はCoが溶解している溶液を塗布する請求項3記載の測定方法。
  6. 遷移金属の拡散熱処理によってシリコン単結晶内に形成される再結合中心の濃度をDLTS(過渡容量分光法)を用いて測定する請求項1又は2記載の測定方法。
  7. 遷移金属の拡散熱処理後の再結合ライフタイムをLM−PCD(レーザ/マイクロ波光導電率減衰法)を用いて測定する請求項1又は2記載の測定方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008085333A (ja) * 2006-09-25 2008-04-10 Siltron Inc 金属汚染と熱処理を利用した単結晶シリコンの結晶欠陥領域の区分方法
JP2012148925A (ja) * 2011-01-19 2012-08-09 Sumco Corp シリコン単結晶の検査方法および製造方法
JP2014017409A (ja) * 2012-07-10 2014-01-30 Shin Etsu Handotai Co Ltd シリコン基板の再結合ライフタイム測定の前処理方法
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JP2019047068A (ja) * 2017-09-06 2019-03-22 信越半導体株式会社 点欠陥の評価方法

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