JP2004019508A - 車両用制御装置の評価方法、および車両用制御装置の評価用信号の記録装置 - Google Patents
車両用制御装置の評価方法、および車両用制御装置の評価用信号の記録装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】本発明は、車両用制御装置のデバッグ処理を効率化するための評価方法に関する。
【解決手段】ECU10が搭載された車両12を走行させて実車評価を行う。実車評価では、車両12の走行中にECU10に入力される全種類の制御信号を記録する。車両12の挙動を模擬するリアルタイムシミュレータ22とECU10とを接続して机上評価を行う。実車評価で記録された制御信号のデータをリアルタイムシミュレータ22にロードしてシミュレーションを行う。シミュレーションの過程でECU10のRAM値に生ずる変化を記録し、その変化を解析する。
【選択図】 図2
【解決手段】ECU10が搭載された車両12を走行させて実車評価を行う。実車評価では、車両12の走行中にECU10に入力される全種類の制御信号を記録する。車両12の挙動を模擬するリアルタイムシミュレータ22とECU10とを接続して机上評価を行う。実車評価で記録された制御信号のデータをリアルタイムシミュレータ22にロードしてシミュレーションを行う。シミュレーションの過程でECU10のRAM値に生ずる変化を記録し、その変化を解析する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用制御装置の評価方法、および車両用制御装置の評価用信号の記録装置に係り、特に、車両用制御装置のデバッグ処理を効率化する上で有用な車両用制御装置の評価方法、および車両用制御装置の評価用信号の記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車載用内燃機関の制御装置など、車両の走行状態を制御するための制御装置の開発は、設計、実装、デバッグ、適合等の段階を経て開発されるのが通常である。これらの段階のうち、特に、デバッグの段階では、開発段階の制御装置が、実車上で不具合を生じさせないように制御内容を修正することが要求される。
【0003】
図1は、実車上で不具合が生じた場合に、デバッグの一環として、その不具合の原因を特定するために行われていた従来の手法を説明するためのフローチャートである。図1に示す一連の処理は、開発過程にある車両用制御装置が実車に搭載された状態で進められる。つまり、図1に示す一連の処理では、車両用制御装置のデバッグが、その装置の実車上での評価の繰り返しを伴って進められる。以下、図1に示す一連の手順を「実車評価手順」と称す。
【0004】
図1に示す実車評価手順では、先ず、解析すべきRAM値が選択される(ステップ100)。
車両用制御装置の内部には、車両の制御に必要な各種のパラメータやフラグを記憶するためのRAMが配置されている。そして、車両用制御装置は、外部から供給される各種の車両制御信号に基づいて種々の処理を実行し、上記のパラメータやフラグに割り当てられたRAM値を書き換えながら、車両の制御に必要な信号を生成して出力する。このため、車両の走行中に何らかの不具合が生じた場合、その不具合は、何れかのRAM値に生じた何らかの異常が原因となっていることが予想される。そこで、実車評価の手順としては、先ず、発生した不具合の内容に基づいて、その異常の原因となったRAM値が予想され、本ステップ100では、その予測されたRAM値が解析の対象として選択される。
【0005】
次に、解析の対象として選択されたRAM値を計測するための準備を整えたうえで、デバッグにより解消すべき不具合が発生するように、実車走行が行われる(ステップ102)。
本ステップ102の処理によれば、不具合の発生前後に解析対象のRAM値がどのような値をとっていたかを記録することができる。
【0006】
次に、実車走行を行うことで記録した解析対象のRAM値が、開発者の意図する値をとっていたか否かが検証される(ステップ104)。
【0007】
その結果、解析対象とされたRAM値の全てが、開発者の意図した通りの正常値をとっていることが判明した場合は(ステップ106)、解析対象のRAM値が選択し直され、再び上記ステップ100以降の処理が繰り返される。
【0008】
一方、上記ステップ106の段階で、解析対象のRAM値の中に異常な値をとっているものが発見された場合は、そのRAM値の異常が根本的な原因であるか否かが判断される(ステップ108)。
【0009】
その結果、発見された異常なRAM値が不具合の根本原因ではなく、更に本質的な原因が存在すると判断された場合は、その本質的な原因を特定するために、解析対象のRAM値が選択し直され、再び上記ステップ100以降の処理が繰り返される。
【0010】
一方、上記ステップ108の段階で、不具合の根本的な原因が特定できたと判断された場合は、実車評価の手順が終了される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明した通り、上述した従来の実車評価の手順では、不具合の根本的な原因であるRAM値の異常が特定されるまで、解析対象のRAM値を変更したうえで、実車走行を繰り返す必要がある。このため、従来の手順によると、不具合の根本的な原因を特定するまでに、数多くの実車走行が強要され、長い時間を要することがあった。
【0012】
また、従来の実車評価手順によって不具合の原因を特定するためには、実車走行時に、車両上でその不具合を再現させる必要がある。しかしながら、車両上での不具合は、特定の条件が偶発的に重なることで発生し、再現させるのが容易でないものがある。このため、従来の実車評価手順によっては、この種の不具合の原因を特定することが特に困難であった。
【0013】
更に、上述した従来の実車評価手順では、実車とデスクとの往復時間を省くために、解析対象のRAM値の変更や、RAM値の解析(検証)などの作業は、通常、車両の内部で行われる。しかしながら、車両の内部環境は、必ずしもそれらの作業に適したものではない。この点、従来の実車評価手順は、開発効率の観点からも好ましいものではなかった。
【0014】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、車両用制御装置の効率的な評価を可能とするための評価方法を提供することを第1の目的とする。
また、車両用制御装置を効率的に評価する上で有用な評価用信号を、実車上で効率的に記録するための記録装置を提供することを第2の目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、車両の走行状態を制御するための車両用制御装置の評価方法であって、
車両用制御装置が搭載された車両を走行させるステップと、
車両の走行中に、前記車両用制御装置に入力される全種類の車両制御信号を記録するステップと、
車両の挙動を模擬することのできるシミュレータと車両用制御装置とを接続するステップと、
記録された前記全種類の車両制御信号を、前記シミュレータにロードするステップと、
ロードされた前記全種類の車両制御信号に基づいて前記シミュレータを動作させるステップと、
当該シミュレータの動作に伴って当該シミュレータに接続されている前記車両用制御装置のRAM値に生ずる変化を記録するステップと、
記録された前記RAM値を解析するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0016】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記シミュレータにロードされる前記全種類の車両制御信号は、前記車両の走行に不具合が生じた際の信号であることを特徴とする。
【0017】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記車両用制御装置は、内燃機関の制御装置であり、
前記全種類の車両制御信号は、内燃機関の制御に必要な信号として当該車両用制御装置に供給されている全種類の信号であることを特徴とする。
【0018】
また、第4の発明は、上記の目的を達成するため、車両用制御装置の評価用信号の記録装置であって、
車両用制御装置が車両制御信号の供給を受けるために備えている全ての端子のそれぞれと接続される出力端子の群と、
前記車両用制御装置に供給すべき車両制御信号を伝送するための全ての信号線のそれぞれと接続される入力端子の群と、
前記入力端子のそれぞれに対応する分岐信号線の群と、
前記入力端子のそれぞれに入力される車両制御信号を、出力低下を生じさせることなく、当該入力端子に対応する前記分岐信号線および前記出力端子の双方に分岐して伝送する分岐伝送路と、
前記分岐信号線を介して伝送されてくる分岐後の車両制御信号を記録する信号記録機構と、
を備えることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0020】
実施の形態1.
図2は、本発明の実施の形態1における車両用制御装置の評価方法を説明するための図である。本実施形態の評価方法は、開発の過程にある車両用制御装置に内在しているバグを検出するために実行される。尚、本実施形態において、評価の対象である車両用制御装置は、内燃機関の運転状態を制御するためのECU10(Electronic Control Unit)であるものとする。
【0021】
図2において、車両12は、評価の対象であるECU10が搭載された実車である。ECU10の開発の過程では、制御ロジックが実装された段階で、そのECU10が実車上で適正に動作するか否かを評価する必要がある。また、その評価の過程で何らかの不具合、すなわち、開発者の意図しない現象が生じた場合には、その不具合が生じないように制御ロジックを修正することが必要である。このため、ECU10の開発の過程では、ECU10が搭載された車両12を現実に走行させながら、そのECU10の機能を評価する作業が行われる。以下、この作業を「実車評価」と称す。
【0022】
実車評価のために車両12に搭載されたECU10には、内燃機関の運転状態を制御するうえで必要な全ての制御信号、例えば、機関廻転数NE、冷却水温THW、アクセルペダル開度Acc、車速SPDなどの制御信号が供給されている。ECU10は、それらの制御信号の入力を受けて、車両12上で、燃料噴射量、点火時期、或いは、可変動弁系などの制御を現実に実行する。
【0023】
車両12には、ECU10と共に計測器14が搭載されている。計測器14は、ECU10に供給される全ての制御信号、すなわち、ECU10が、内燃機関を制御するうえで必要としている制御信号の全てを計測する。計測器14は、更に、計測した全ての制御信号を時系列で保存(記録)することができる。計測器14の保存データは、通信インターフェースを介して、或いは、記録媒体に書き込まれた状態で、外部に取り出すことができる。
【0024】
本実施形態において、ECU10の実車評価は、不具合の発生時にECU10に供給されていた制御信号を記録することを目的として行われる。例えば、特定の運転操作に対して特定の不具合が発生することが既知である場合は、計測器14により制御信号を記録しつつ、その不具合を再現し、不具合発生前後の記録データを不具合データとして保存する作業が行われる。また、特定の不具合の発生が既知でない場合は、制御信号を記録しつつ種々の評価パターンで車両12を走行させ、不具合が生じた時点で、その前後の記録データを不具合データとして保存する等の作業が行われる。
【0025】
図2において、符号20は、ECU10の机上評価に用いられるHILS(Hardware In the Loop Simulation)システムを示している。ECU10の机上評価は、上述した実車評価で記録された不具合データを解析して、ECU10に実装されている制御ロジックのバグを発見し、そのバグを修正することを目的として行われる。
【0026】
HILSシステム20は、評価の対象であるハードウェア、すなわち、現実のECU10を含んで構成されている。より具体的には、HILSシステム20は、ECU10と、リアルタイムシミュレータ22と、それらの間での信号の授受を可能とするためのインターフェース(I/F)24,26とで構成されている。
【0027】
リアルタイムシミュレータ22には、車両モデルが実装されていると共に、アクセルペダル、ブレーキペダル、或いはシフトレバーなどの入力I/Fが設けられている。更に、リアルタイムシミュレータ22には、外部から供給される車両の走行パターンや制御信号のパターンを読み込んだり、上記の計測器14によって記録された制御信号のデータを読み込んだりするための入力インターフェースが設けられている。
【0028】
リアルタイムシミュレータ22は、上述した種々の入力インターフェースから入力される情報に基づいて、車両の挙動を模擬することができる。また、リアルタイムシミュレータ22が動作している間、リアルタイムシミュレータ22とECU10との間では、車両12においてECU10が授受するのと同様の信号が授受される。このため、HILSシステム20に組み込まれたECU10は、リアルタイムシミュレータ22の動作中は、車両12に搭載された状態で、その車両12が現実に走行している場合と同様に、内燃機関の制御に必要な種々の処理を実行する。
【0029】
本実施形態において、ECU10の机上評価では、実車評価で記録された不具合データがリアルタイムシミュレータ22にロードされ、その不具合データを用いたシミュレーションが行われる。このシミュレーションの際、ECU10は、実車上で不具合が発生したときと同様の演算処理を行い、不具合を生じさせることとなった出力を発する。机上評価では、その際のECU10の動作を解析することにより、ECU10に実装された制御ロジックのバグ解析が行われる。
【0030】
以下、図3および図4を参照して、本実施形態における車両用制御装置の評価方法の内容を、より詳細かつ具体的に説明する。
図3は、実車評価の際に車両12に搭載されるECU10および計測器14の接続例を示す。ECU10は、外部機器との接続を得るためのコネクタ30を備えている。コネクタ30の内部には、制御信号の供給を受けるための複数の端子、および出力信号を発するための複数の端子が設けられている。
【0031】
車両12には、ECU10に対して、内燃機関の制御に必要な種々の制御信号を送信すると共に、ECU10から発せられる種々の出力信号を適当なアクチュエータ等に伝送するための信号線群32が設けられている。信号線群32の端部には、ECU32にコネクタ30と嵌合することのできるコネクタ34が設けられている。ECU10は、本来は、コネクタ30とコネクタ34とが嵌合されることにより、車両12上の種々の外部機器と信号を授受し得る状態とされる。
【0032】
実車評価に用いられる計測器14には、複数の分岐信号線からなる分岐信号線群36が接続されている。分岐信号線群36の端部には、分配器38が接続されている。分配器38の内部には、以下の構成物が内蔵されている。
▲1▼ECU30のコネクタに内蔵される個々の端子と接続される出力端子の群。
▲2▼信号線群32を構成する個々の信号線と接続される入力端子の群。
▲3▼個々の入力端子に供給される制御信号を、出力低下を生じさせることなく対応する分岐信号線、および対応する出力端子の双方に分岐して伝送する分岐伝送路。
【0033】
上記の分配器38によれば、信号線群32を介して伝送されてくる制御信号を、出力低下を伴うことなくECU10に供給することができると共に、ECU10に供給される制御信号と全く同一の制御信号を計測器14に供給することができる。このため、図3に示す構成によれば、実車評価の際に、計測器14が存在しない場合と同様にECU10を動作させつつ、ECU10に供給される全種類の制御信号を正確に記録することができる。
【0034】
図4は、実車評価で記録した不具合データ、つまり、車両12に不具合が生じた際にECU10に供給されていた制御信号のデータを用いて、机上評価を進める際の手順を説明するためのフローチャートである。
【0035】
図4に示すように、本実施形態において、机上評価の際には、先ず、実車評価で記録された不具合データがリアルタイムシミュレータ22にロードされる(ステップ110)。
不具合データのロードは、計測器14およびリアルタイムシミュレータ22の仕様に応じて、例えば、通信インターフェースを介して、或いは、フレキシブルディスクなどの記録媒体を介して行われる。
【0036】
次に、不具合解消のために解析すべきRAM値が選択される(ステップ112)。
ECU10は、内燃機関の制御に必要な各種のパラメータやフラグを記憶するためのRAMを備えており、外部から供給される各種の制御信号に基づいて種々の処理を実行し、上記のパラメータやフラグに割り当てられたRAM値を書き換えながら、内燃機関の制御に必要な信号を生成して出力する。このため、車両上で生じた不具合は、何れかのRAM値に生じた何らかの異常が原因となっていることが予想される。本ステップ112では、ECU10の開発者により、解消すべき不具合の内容に基づいて、その不具合の原因として予想されるRAM値が解析の対象として選択される。
【0037】
次に、解析の対象として選択されたRAM値の変化を記録するための準備を整えたうえで、リアルタイムシミュレータ22により、不具合データを用いたシミュレーションが実行される(ステップ114)。
本ステップ114によるシミュレーションの実行過程において、ECU10は、車両12上で不具合を生じさせた場合と同様の手順でRAM値の書き換えを行い、不具合の原因となった指令を生成して出力する。本ステップ114では、ECU10がそのような動作を行う過程で、解析の対象として選択されたRAM値がどのような値をとっていたかが記録される。
【0038】
次に、上記のシミュレーションの過程で記録された解析対象のRAM値が、開発者の意図する通りの値をとっていたか否かが検証される(ステップ116)。
【0039】
その結果、解析の対象とされたRAM値の全てが、開発者の意図した通りの正常な値をとっていることが判明した場合は(ステップ118)、解析対象のRAM値が選択し直され、再び上記ステップ112以降の処理が繰り返される。
【0040】
一方、上記ステップ118の段階で、解析対象のRAM値の中に異常な値をとっているものが発見された場合は、そのRAM値の異常が根本的な原因であるか否かが判断される(ステップ120)。
【0041】
その結果、発見された異常なRAM値が不具合の根本原因ではなく、更に本質的な原因が存在すると判断された場合は、その本質的な原因を特定するために、解析対象のRAM値が選択し直され、再び上記ステップ112以降の処理が繰り返される。
【0042】
一方、上記ステップ120の段階で、不具合の根本的な原因が特定できたと判断された場合は、実車評価の手順が終了される。
【0043】
以上説明した通り、図4に示す机上評価の手順によれば、不具合データを用いたシミュレーションを、解析対象のRAM値を変更しながら繰り返すことにより、不具合の根本的な原因であるRAM値を特定することができる。不具合データを用いたシミュレーションの繰り返しは、不具合の再現を目的とした実車評価の繰り返しに比して、労度が低く、また、短時間で行うことができる。このため、本実施形態の評価方法によれば、ECU10のデバッグを、従来の方法に比して極めて容易に、かつ短時間で完了させることができる。
【0044】
また、不具合データを用いたシミュレーションによれば、実車評価の場合と異なり、不具合を生じさせた際のECU10の動作を、容易かつ確実に再現させることができる。このため、本実施形態の評価方法によれば、実車上で再現させることが難しい不具合を解消するためのデバッグについても、容易かつ短時間で完了させることができる。
【0045】
更に、本実施形態の評価方法によれば、解析対象のRAM値の変更や、RAM値の解析(検証)などの作業を、車両の内部ではなく、机上環境で行うことができる。つまり、本実施形態の評価方法によれば、それらの作業を、それらの作業に適した環境下で、効率的に行うことができる。本実施形態の評価方法は、この点においても、従来の評価方法に比して、効率的な開発を可能とするうえで好ましいものである。
【0046】
ところで、上述した実施の形態1においては、ECU10の評価方法を、不具合を解消するためのデバッグの際に用いることにしているが、本発明の適用は、そのような状況に限られるものではない。すなわち、本発明の評価方法は、制御ロジックの実装されたECU10が、開発者の意図する通りに正常に動作していることを確認する目的で用いることとしてもよい。
【0047】
また、上述した実施の形態1においては、評価の対象が、内燃機関を制御するためのECU10に限定されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明の評価方法は、ABS(Antilock Brake System)等のシャシー系の制御装置や、その他の車両制御用の装置の評価に用いることとしてもよい。
【0048】
【発明の効果】
この発明は以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
第1の発明によれば、車両用制御装置を搭載した車両を走行させることにより、実車の走行中に車両用制御装置に入力される全種類の車両制御信号を記録することができる。そして、その全種類の車両制御信号を用いてシミュレータを動作させることにより、車両用制御装置にとって、実車走行時と全く同じ状況を机上で作り出すことができる。このため、本発明によれば、実車走行を繰り返すことなく、実車走行時における車両用制御装置の動作を効率的に机上で再現することができる。従って、本発明によれば、効率的なRAM値解析を可能とすることができる。
【0049】
第2の発明によれば、実車走行を繰り返すことなく、車両に不具合が生じた際の車両用制御装置の動作を効率的に机上で再現することができる。従って、本発明によれば、不具合の原因が特定できるように、RAM値解析を効率的に行うことができる。
【0050】
第3の発明によれば、内燃機関の制御装置を対象として、効率的なRAM値解析を実現することができる。
【0051】
第4の発明によれば、信号線を介して伝送されてくる車両制御信号を、出力低下を生じさせることなく入力端子から分岐信号線と出力端子の双方へ分岐することができる。このため、本発明によれば、実車上で、車両用制御装置に供給される全種類の車両制御信号を、効率的に記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の実車評価手順を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態1の車両用制御装置の評価方法の概要を説明するための図である。
【図3】実施の形態1において実行される実車評価の際に実車に搭載されるECUと計測器との接続状態を表した図である。
【図4】実施の形態1において実行される机上評価の手順を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
10 ECU(Electronic Control Unit)
12 車両
14 計測器
20 HILS(Hardware in the Loop Simulation)システム
22 リアルタイムシミュレータ
24,26 インターフェース
30,34 コネクタ
32 信号線群
36 分岐信号線群
38 分配器
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用制御装置の評価方法、および車両用制御装置の評価用信号の記録装置に係り、特に、車両用制御装置のデバッグ処理を効率化する上で有用な車両用制御装置の評価方法、および車両用制御装置の評価用信号の記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車載用内燃機関の制御装置など、車両の走行状態を制御するための制御装置の開発は、設計、実装、デバッグ、適合等の段階を経て開発されるのが通常である。これらの段階のうち、特に、デバッグの段階では、開発段階の制御装置が、実車上で不具合を生じさせないように制御内容を修正することが要求される。
【0003】
図1は、実車上で不具合が生じた場合に、デバッグの一環として、その不具合の原因を特定するために行われていた従来の手法を説明するためのフローチャートである。図1に示す一連の処理は、開発過程にある車両用制御装置が実車に搭載された状態で進められる。つまり、図1に示す一連の処理では、車両用制御装置のデバッグが、その装置の実車上での評価の繰り返しを伴って進められる。以下、図1に示す一連の手順を「実車評価手順」と称す。
【0004】
図1に示す実車評価手順では、先ず、解析すべきRAM値が選択される(ステップ100)。
車両用制御装置の内部には、車両の制御に必要な各種のパラメータやフラグを記憶するためのRAMが配置されている。そして、車両用制御装置は、外部から供給される各種の車両制御信号に基づいて種々の処理を実行し、上記のパラメータやフラグに割り当てられたRAM値を書き換えながら、車両の制御に必要な信号を生成して出力する。このため、車両の走行中に何らかの不具合が生じた場合、その不具合は、何れかのRAM値に生じた何らかの異常が原因となっていることが予想される。そこで、実車評価の手順としては、先ず、発生した不具合の内容に基づいて、その異常の原因となったRAM値が予想され、本ステップ100では、その予測されたRAM値が解析の対象として選択される。
【0005】
次に、解析の対象として選択されたRAM値を計測するための準備を整えたうえで、デバッグにより解消すべき不具合が発生するように、実車走行が行われる(ステップ102)。
本ステップ102の処理によれば、不具合の発生前後に解析対象のRAM値がどのような値をとっていたかを記録することができる。
【0006】
次に、実車走行を行うことで記録した解析対象のRAM値が、開発者の意図する値をとっていたか否かが検証される(ステップ104)。
【0007】
その結果、解析対象とされたRAM値の全てが、開発者の意図した通りの正常値をとっていることが判明した場合は(ステップ106)、解析対象のRAM値が選択し直され、再び上記ステップ100以降の処理が繰り返される。
【0008】
一方、上記ステップ106の段階で、解析対象のRAM値の中に異常な値をとっているものが発見された場合は、そのRAM値の異常が根本的な原因であるか否かが判断される(ステップ108)。
【0009】
その結果、発見された異常なRAM値が不具合の根本原因ではなく、更に本質的な原因が存在すると判断された場合は、その本質的な原因を特定するために、解析対象のRAM値が選択し直され、再び上記ステップ100以降の処理が繰り返される。
【0010】
一方、上記ステップ108の段階で、不具合の根本的な原因が特定できたと判断された場合は、実車評価の手順が終了される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明した通り、上述した従来の実車評価の手順では、不具合の根本的な原因であるRAM値の異常が特定されるまで、解析対象のRAM値を変更したうえで、実車走行を繰り返す必要がある。このため、従来の手順によると、不具合の根本的な原因を特定するまでに、数多くの実車走行が強要され、長い時間を要することがあった。
【0012】
また、従来の実車評価手順によって不具合の原因を特定するためには、実車走行時に、車両上でその不具合を再現させる必要がある。しかしながら、車両上での不具合は、特定の条件が偶発的に重なることで発生し、再現させるのが容易でないものがある。このため、従来の実車評価手順によっては、この種の不具合の原因を特定することが特に困難であった。
【0013】
更に、上述した従来の実車評価手順では、実車とデスクとの往復時間を省くために、解析対象のRAM値の変更や、RAM値の解析(検証)などの作業は、通常、車両の内部で行われる。しかしながら、車両の内部環境は、必ずしもそれらの作業に適したものではない。この点、従来の実車評価手順は、開発効率の観点からも好ましいものではなかった。
【0014】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、車両用制御装置の効率的な評価を可能とするための評価方法を提供することを第1の目的とする。
また、車両用制御装置を効率的に評価する上で有用な評価用信号を、実車上で効率的に記録するための記録装置を提供することを第2の目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、車両の走行状態を制御するための車両用制御装置の評価方法であって、
車両用制御装置が搭載された車両を走行させるステップと、
車両の走行中に、前記車両用制御装置に入力される全種類の車両制御信号を記録するステップと、
車両の挙動を模擬することのできるシミュレータと車両用制御装置とを接続するステップと、
記録された前記全種類の車両制御信号を、前記シミュレータにロードするステップと、
ロードされた前記全種類の車両制御信号に基づいて前記シミュレータを動作させるステップと、
当該シミュレータの動作に伴って当該シミュレータに接続されている前記車両用制御装置のRAM値に生ずる変化を記録するステップと、
記録された前記RAM値を解析するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0016】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記シミュレータにロードされる前記全種類の車両制御信号は、前記車両の走行に不具合が生じた際の信号であることを特徴とする。
【0017】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記車両用制御装置は、内燃機関の制御装置であり、
前記全種類の車両制御信号は、内燃機関の制御に必要な信号として当該車両用制御装置に供給されている全種類の信号であることを特徴とする。
【0018】
また、第4の発明は、上記の目的を達成するため、車両用制御装置の評価用信号の記録装置であって、
車両用制御装置が車両制御信号の供給を受けるために備えている全ての端子のそれぞれと接続される出力端子の群と、
前記車両用制御装置に供給すべき車両制御信号を伝送するための全ての信号線のそれぞれと接続される入力端子の群と、
前記入力端子のそれぞれに対応する分岐信号線の群と、
前記入力端子のそれぞれに入力される車両制御信号を、出力低下を生じさせることなく、当該入力端子に対応する前記分岐信号線および前記出力端子の双方に分岐して伝送する分岐伝送路と、
前記分岐信号線を介して伝送されてくる分岐後の車両制御信号を記録する信号記録機構と、
を備えることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0020】
実施の形態1.
図2は、本発明の実施の形態1における車両用制御装置の評価方法を説明するための図である。本実施形態の評価方法は、開発の過程にある車両用制御装置に内在しているバグを検出するために実行される。尚、本実施形態において、評価の対象である車両用制御装置は、内燃機関の運転状態を制御するためのECU10(Electronic Control Unit)であるものとする。
【0021】
図2において、車両12は、評価の対象であるECU10が搭載された実車である。ECU10の開発の過程では、制御ロジックが実装された段階で、そのECU10が実車上で適正に動作するか否かを評価する必要がある。また、その評価の過程で何らかの不具合、すなわち、開発者の意図しない現象が生じた場合には、その不具合が生じないように制御ロジックを修正することが必要である。このため、ECU10の開発の過程では、ECU10が搭載された車両12を現実に走行させながら、そのECU10の機能を評価する作業が行われる。以下、この作業を「実車評価」と称す。
【0022】
実車評価のために車両12に搭載されたECU10には、内燃機関の運転状態を制御するうえで必要な全ての制御信号、例えば、機関廻転数NE、冷却水温THW、アクセルペダル開度Acc、車速SPDなどの制御信号が供給されている。ECU10は、それらの制御信号の入力を受けて、車両12上で、燃料噴射量、点火時期、或いは、可変動弁系などの制御を現実に実行する。
【0023】
車両12には、ECU10と共に計測器14が搭載されている。計測器14は、ECU10に供給される全ての制御信号、すなわち、ECU10が、内燃機関を制御するうえで必要としている制御信号の全てを計測する。計測器14は、更に、計測した全ての制御信号を時系列で保存(記録)することができる。計測器14の保存データは、通信インターフェースを介して、或いは、記録媒体に書き込まれた状態で、外部に取り出すことができる。
【0024】
本実施形態において、ECU10の実車評価は、不具合の発生時にECU10に供給されていた制御信号を記録することを目的として行われる。例えば、特定の運転操作に対して特定の不具合が発生することが既知である場合は、計測器14により制御信号を記録しつつ、その不具合を再現し、不具合発生前後の記録データを不具合データとして保存する作業が行われる。また、特定の不具合の発生が既知でない場合は、制御信号を記録しつつ種々の評価パターンで車両12を走行させ、不具合が生じた時点で、その前後の記録データを不具合データとして保存する等の作業が行われる。
【0025】
図2において、符号20は、ECU10の机上評価に用いられるHILS(Hardware In the Loop Simulation)システムを示している。ECU10の机上評価は、上述した実車評価で記録された不具合データを解析して、ECU10に実装されている制御ロジックのバグを発見し、そのバグを修正することを目的として行われる。
【0026】
HILSシステム20は、評価の対象であるハードウェア、すなわち、現実のECU10を含んで構成されている。より具体的には、HILSシステム20は、ECU10と、リアルタイムシミュレータ22と、それらの間での信号の授受を可能とするためのインターフェース(I/F)24,26とで構成されている。
【0027】
リアルタイムシミュレータ22には、車両モデルが実装されていると共に、アクセルペダル、ブレーキペダル、或いはシフトレバーなどの入力I/Fが設けられている。更に、リアルタイムシミュレータ22には、外部から供給される車両の走行パターンや制御信号のパターンを読み込んだり、上記の計測器14によって記録された制御信号のデータを読み込んだりするための入力インターフェースが設けられている。
【0028】
リアルタイムシミュレータ22は、上述した種々の入力インターフェースから入力される情報に基づいて、車両の挙動を模擬することができる。また、リアルタイムシミュレータ22が動作している間、リアルタイムシミュレータ22とECU10との間では、車両12においてECU10が授受するのと同様の信号が授受される。このため、HILSシステム20に組み込まれたECU10は、リアルタイムシミュレータ22の動作中は、車両12に搭載された状態で、その車両12が現実に走行している場合と同様に、内燃機関の制御に必要な種々の処理を実行する。
【0029】
本実施形態において、ECU10の机上評価では、実車評価で記録された不具合データがリアルタイムシミュレータ22にロードされ、その不具合データを用いたシミュレーションが行われる。このシミュレーションの際、ECU10は、実車上で不具合が発生したときと同様の演算処理を行い、不具合を生じさせることとなった出力を発する。机上評価では、その際のECU10の動作を解析することにより、ECU10に実装された制御ロジックのバグ解析が行われる。
【0030】
以下、図3および図4を参照して、本実施形態における車両用制御装置の評価方法の内容を、より詳細かつ具体的に説明する。
図3は、実車評価の際に車両12に搭載されるECU10および計測器14の接続例を示す。ECU10は、外部機器との接続を得るためのコネクタ30を備えている。コネクタ30の内部には、制御信号の供給を受けるための複数の端子、および出力信号を発するための複数の端子が設けられている。
【0031】
車両12には、ECU10に対して、内燃機関の制御に必要な種々の制御信号を送信すると共に、ECU10から発せられる種々の出力信号を適当なアクチュエータ等に伝送するための信号線群32が設けられている。信号線群32の端部には、ECU32にコネクタ30と嵌合することのできるコネクタ34が設けられている。ECU10は、本来は、コネクタ30とコネクタ34とが嵌合されることにより、車両12上の種々の外部機器と信号を授受し得る状態とされる。
【0032】
実車評価に用いられる計測器14には、複数の分岐信号線からなる分岐信号線群36が接続されている。分岐信号線群36の端部には、分配器38が接続されている。分配器38の内部には、以下の構成物が内蔵されている。
▲1▼ECU30のコネクタに内蔵される個々の端子と接続される出力端子の群。
▲2▼信号線群32を構成する個々の信号線と接続される入力端子の群。
▲3▼個々の入力端子に供給される制御信号を、出力低下を生じさせることなく対応する分岐信号線、および対応する出力端子の双方に分岐して伝送する分岐伝送路。
【0033】
上記の分配器38によれば、信号線群32を介して伝送されてくる制御信号を、出力低下を伴うことなくECU10に供給することができると共に、ECU10に供給される制御信号と全く同一の制御信号を計測器14に供給することができる。このため、図3に示す構成によれば、実車評価の際に、計測器14が存在しない場合と同様にECU10を動作させつつ、ECU10に供給される全種類の制御信号を正確に記録することができる。
【0034】
図4は、実車評価で記録した不具合データ、つまり、車両12に不具合が生じた際にECU10に供給されていた制御信号のデータを用いて、机上評価を進める際の手順を説明するためのフローチャートである。
【0035】
図4に示すように、本実施形態において、机上評価の際には、先ず、実車評価で記録された不具合データがリアルタイムシミュレータ22にロードされる(ステップ110)。
不具合データのロードは、計測器14およびリアルタイムシミュレータ22の仕様に応じて、例えば、通信インターフェースを介して、或いは、フレキシブルディスクなどの記録媒体を介して行われる。
【0036】
次に、不具合解消のために解析すべきRAM値が選択される(ステップ112)。
ECU10は、内燃機関の制御に必要な各種のパラメータやフラグを記憶するためのRAMを備えており、外部から供給される各種の制御信号に基づいて種々の処理を実行し、上記のパラメータやフラグに割り当てられたRAM値を書き換えながら、内燃機関の制御に必要な信号を生成して出力する。このため、車両上で生じた不具合は、何れかのRAM値に生じた何らかの異常が原因となっていることが予想される。本ステップ112では、ECU10の開発者により、解消すべき不具合の内容に基づいて、その不具合の原因として予想されるRAM値が解析の対象として選択される。
【0037】
次に、解析の対象として選択されたRAM値の変化を記録するための準備を整えたうえで、リアルタイムシミュレータ22により、不具合データを用いたシミュレーションが実行される(ステップ114)。
本ステップ114によるシミュレーションの実行過程において、ECU10は、車両12上で不具合を生じさせた場合と同様の手順でRAM値の書き換えを行い、不具合の原因となった指令を生成して出力する。本ステップ114では、ECU10がそのような動作を行う過程で、解析の対象として選択されたRAM値がどのような値をとっていたかが記録される。
【0038】
次に、上記のシミュレーションの過程で記録された解析対象のRAM値が、開発者の意図する通りの値をとっていたか否かが検証される(ステップ116)。
【0039】
その結果、解析の対象とされたRAM値の全てが、開発者の意図した通りの正常な値をとっていることが判明した場合は(ステップ118)、解析対象のRAM値が選択し直され、再び上記ステップ112以降の処理が繰り返される。
【0040】
一方、上記ステップ118の段階で、解析対象のRAM値の中に異常な値をとっているものが発見された場合は、そのRAM値の異常が根本的な原因であるか否かが判断される(ステップ120)。
【0041】
その結果、発見された異常なRAM値が不具合の根本原因ではなく、更に本質的な原因が存在すると判断された場合は、その本質的な原因を特定するために、解析対象のRAM値が選択し直され、再び上記ステップ112以降の処理が繰り返される。
【0042】
一方、上記ステップ120の段階で、不具合の根本的な原因が特定できたと判断された場合は、実車評価の手順が終了される。
【0043】
以上説明した通り、図4に示す机上評価の手順によれば、不具合データを用いたシミュレーションを、解析対象のRAM値を変更しながら繰り返すことにより、不具合の根本的な原因であるRAM値を特定することができる。不具合データを用いたシミュレーションの繰り返しは、不具合の再現を目的とした実車評価の繰り返しに比して、労度が低く、また、短時間で行うことができる。このため、本実施形態の評価方法によれば、ECU10のデバッグを、従来の方法に比して極めて容易に、かつ短時間で完了させることができる。
【0044】
また、不具合データを用いたシミュレーションによれば、実車評価の場合と異なり、不具合を生じさせた際のECU10の動作を、容易かつ確実に再現させることができる。このため、本実施形態の評価方法によれば、実車上で再現させることが難しい不具合を解消するためのデバッグについても、容易かつ短時間で完了させることができる。
【0045】
更に、本実施形態の評価方法によれば、解析対象のRAM値の変更や、RAM値の解析(検証)などの作業を、車両の内部ではなく、机上環境で行うことができる。つまり、本実施形態の評価方法によれば、それらの作業を、それらの作業に適した環境下で、効率的に行うことができる。本実施形態の評価方法は、この点においても、従来の評価方法に比して、効率的な開発を可能とするうえで好ましいものである。
【0046】
ところで、上述した実施の形態1においては、ECU10の評価方法を、不具合を解消するためのデバッグの際に用いることにしているが、本発明の適用は、そのような状況に限られるものではない。すなわち、本発明の評価方法は、制御ロジックの実装されたECU10が、開発者の意図する通りに正常に動作していることを確認する目的で用いることとしてもよい。
【0047】
また、上述した実施の形態1においては、評価の対象が、内燃機関を制御するためのECU10に限定されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明の評価方法は、ABS(Antilock Brake System)等のシャシー系の制御装置や、その他の車両制御用の装置の評価に用いることとしてもよい。
【0048】
【発明の効果】
この発明は以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
第1の発明によれば、車両用制御装置を搭載した車両を走行させることにより、実車の走行中に車両用制御装置に入力される全種類の車両制御信号を記録することができる。そして、その全種類の車両制御信号を用いてシミュレータを動作させることにより、車両用制御装置にとって、実車走行時と全く同じ状況を机上で作り出すことができる。このため、本発明によれば、実車走行を繰り返すことなく、実車走行時における車両用制御装置の動作を効率的に机上で再現することができる。従って、本発明によれば、効率的なRAM値解析を可能とすることができる。
【0049】
第2の発明によれば、実車走行を繰り返すことなく、車両に不具合が生じた際の車両用制御装置の動作を効率的に机上で再現することができる。従って、本発明によれば、不具合の原因が特定できるように、RAM値解析を効率的に行うことができる。
【0050】
第3の発明によれば、内燃機関の制御装置を対象として、効率的なRAM値解析を実現することができる。
【0051】
第4の発明によれば、信号線を介して伝送されてくる車両制御信号を、出力低下を生じさせることなく入力端子から分岐信号線と出力端子の双方へ分岐することができる。このため、本発明によれば、実車上で、車両用制御装置に供給される全種類の車両制御信号を、効率的に記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の実車評価手順を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態1の車両用制御装置の評価方法の概要を説明するための図である。
【図3】実施の形態1において実行される実車評価の際に実車に搭載されるECUと計測器との接続状態を表した図である。
【図4】実施の形態1において実行される机上評価の手順を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
10 ECU(Electronic Control Unit)
12 車両
14 計測器
20 HILS(Hardware in the Loop Simulation)システム
22 リアルタイムシミュレータ
24,26 インターフェース
30,34 コネクタ
32 信号線群
36 分岐信号線群
38 分配器
Claims (4)
- 車両の走行状態を制御するための車両用制御装置の評価方法であって、
車両用制御装置が搭載された車両を走行させるステップと、
車両の走行中に、前記車両用制御装置に入力される全種類の車両制御信号を記録するステップと、
車両の挙動を模擬することのできるシミュレータと車両用制御装置とを接続するステップと、
記録された前記全種類の車両制御信号を、前記シミュレータにロードするステップと、
ロードされた前記全種類の車両制御信号に基づいて前記シミュレータを動作させるステップと、
当該シミュレータの動作に伴って当該シミュレータに接続されている前記車両用制御装置のRAM値に生ずる変化を記録するステップと、
記録された前記RAM値を解析するステップと、
を含むことを特徴とする車両用制御装置の評価方法。 - 前記シミュレータにロードされる前記全種類の車両制御信号は、前記車両の走行に不具合が生じた際の信号であることを特徴とする請求項1記載の車両用制御装置の制御方法。
- 前記車両用制御装置は、内燃機関の制御装置であり、
前記全種類の車両制御信号は、内燃機関の制御に必要な信号として当該車両用制御装置に供給されている全種類の信号であることを特徴とする請求項1または2記載の車両用制御装置の評価方法。 - 車両用制御装置が車両制御信号の供給を受けるために備えている全ての端子のそれぞれと接続される出力端子の群と、
前記車両用制御装置に供給すべき車両制御信号を伝送するための全ての信号線のそれぞれと接続される入力端子の群と、
前記入力端子のそれぞれに対応する分岐信号線の群と、
前記入力端子のそれぞれに入力される車両制御信号を、出力低下を生じさせることなく、当該入力端子に対応する前記分岐信号線および前記出力端子の双方に分岐して伝送する分岐伝送路と、
前記分岐信号線を介して伝送されてくる分岐後の車両制御信号を記録する信号記録機構と、
を備えることを特徴とする車両用制御装置の評価用信号の記録装置。
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- 2002-06-14 JP JP2002173647A patent/JP2004019508A/ja active Pending
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