JP2004027930A - 車両用制御装置の評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は車両用制御装置が仕様を満たしているか否かを検証するための評価方法に関し、その評価を短時間で簡単に実行可能とすることを目的とする。
【解決手段】コンピュータが実行可能な言語(シミュリンク)で仕様書を作成する。その仕様書の内容が実装され、かつ、その内容が実行可能なRPEを用いてHILSを準備する(S1)。RPEに所定の条件信号を供給してシミュレーションを行い、その結果としてRPEにより生成される基準結果信号を記録する(S3)。上記仕様書に基づいて作成されたECUを用いてHILSを準備する(S4)。ECUに上記の条件信号を供給してシミュレーションを行い、その結果としてECUにより生成される検証用結果信号を記録する(S5)。基準結果信号と検証用結果信号とを比較してECUを評価する(S6)。
【選択図】 図3
【解決手段】コンピュータが実行可能な言語(シミュリンク)で仕様書を作成する。その仕様書の内容が実装され、かつ、その内容が実行可能なRPEを用いてHILSを準備する(S1)。RPEに所定の条件信号を供給してシミュレーションを行い、その結果としてRPEにより生成される基準結果信号を記録する(S3)。上記仕様書に基づいて作成されたECUを用いてHILSを準備する(S4)。ECUに上記の条件信号を供給してシミュレーションを行い、その結果としてECUにより生成される検証用結果信号を記録する(S5)。基準結果信号と検証用結果信号とを比較してECUを評価する(S6)。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用制御装置の評価方法に係り、特に、開発の段階で車両用制御装置の機能が仕様を満たしているか否かを検証する方法として好適な評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特開平11−326135号公報に開示されるように、仮想的な車両モデルを用いて、シミュレーションにより車両制御装置(ECU:Electronic Control Unit)を評価する方法が知られている。このような評価方法によれば、実車走行を行うことなく、実車走行を行った場合と同等の評価を行うことができ、車両用制御装置の開発効率を高めることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
シミュレーションによるECUの評価は、ECUの開発過程において、そのECUが仕様書の内容通りに動作するか否かを評価するために用いることができる。このような評価では、具体的には、仕様書に定められた個々の条件について、その条件に対応する信号を試作段階のECUに入力する処理、および、その結果得られた出力が仕様書の内容に一致しているか否かを判断する処理が実行される。
【0004】
これらの処理は、何れも評価担当者が手作業で行うことを要する。また、ECUが仕様通りに機能するか否かを判断するために検証すべき事項を選択したり、その事項を適切に検証するための条件を設定したりする作業には高度の経験が要求される。このため、上述した従来の方法によれば、ECUが正常に機能しているか否かを評価するために、高度の経験と長い時間が必要とされる。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、車両用制御装置が仕様書の内容通りに機能しているか否かを、短時間で簡単に評価するための評価方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、車両用制御装置の評価方法であって、
コンピュータが実行可能な言語で仕様書を作成するステップと、
前記仕様書の内容が実装され、かつ、その内容が実行可能な制御装置試作ユニットに所定の条件信号を供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記制御装置試作ユニットが生成する基準結果信号を記録するステップと、
前記仕様書に基づいて車両用制御装置を作成するステップと、
前記条件信号を前記車両用制御装置に供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記車両用制御装置が生成する検証用結果信号を記録するステップと、
前記基準結果信号と前記検証用結果信号とが一致しているか否かを判断するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明は、車両用制御装置の評価方法であって、
コンピュータが読み取り可能な言語で仕様書を作成するステップと、
前記仕様書に基づいて車両用制御装置を作成するステップと、
前記仕様書の内容から要検証事項をコンピュータに読み取らせるステップと、前記要検証事項を検証するためのデバッグ条件をコンピュータに作成させるステップと、
前記デバッグ条件に対応する条件信号を生成するステップと、
前記条件信号を用いて前記車両用制御装置の動作を評価するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記車両用制御装置の動作を評価するステップは、
前記条件信号を前記車両用制御装置に供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記車両用制御装置が生成する検証用結果信号を計測するステップと、
前記検証用結果信号が、前記仕様書の定める仕様と一致しているか否かを判断するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0009】
また、第4の発明は、第2の発明において、前記車両用制御装置の動作を評価するステップは、
前記条件信号を制御装置試作ユニットに供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記制御装置試作ユニットが生成する基準結果信号を記録するステップと、
前記条件信号を前記車両用制御装置に供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記車両用制御装置が生成する検証用結果信号を記録するステップと、
前記基準結果信号と前記検証用結果信号とが一致しているか否かを判断するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0010】
また、第5の発明は、第2乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記条件信号は、前記車両用制御装置の内部処理により演算されるべきRAM値を含み、
前記車両用制御装置の動作を評価するステップは、
前記車両用制御装置内部のRAM値を、前記条件信号に含まれるRAM値に書き換えるステップと、
書き換えられたRAM値が、前記車両用制御装置の内部処理により再び書き換えられるのを禁止するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0011】
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れかにおいて、前記言語はシミュリンクであることを特徴とする。
【0012】
また、第7の発明は、第1または第4の発明において、
前記基準結果信号を記録するステップは、当該基準結果信号をコンピュータに記録させるステップを含み、
前記検証用結果信号を記録するステップは、当該検証用結果信号をコンピュータに記録させるステップを含み、
前記基準結果信号と前記検証用結果信号とが一致しているか否かを判断するステップは、当該判断をコンピュータに実行させるステップを含むことを特徴とする。
【0013】
また、第8の発明は、第3の発明において、前記検証用結果信号が、前記仕様書の定める仕様と一致しているか否かを判断するステップは、
前記検証用結果信号と対比されるべき基準の結果を前記仕様書からコンピュータに読み取らせるステップと、
読み取られた基準の結果と前記検証用結果信号とが一致しているか否かをコンピュータに判断させるステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、図1乃至図4を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。本実施形態は、車両用制御装置(ECU)の開発過程で、そのECUが仕様書の内容通りに動作するか否かを評価するための方法に関する。
【0015】
図1は、本実施形態における評価の対象であるECUの仕様書の一部を示す。ECUの仕様書は、その内容を人間が理解することができ、かつ、その内容をコンピュータが実行することのできる言語で作成される。本実施形態では、図1に示すように、ECUの仕様書はシミュリンク(Simulink)により作成される。
【0016】
尚、図1に示す仕様は、内燃機関を制御するためのECUの仕様書の一部であり、その内容は以下の事項を表している。
「以下の条件全て成立でFlag2=ON(=1)
機関廻転数NE<800rpm
冷却水温THW≧80℃
Flag1=1」
【0017】
本実施形態におけるECUの開発過程では、先ず、図1に示すようにシミュリンクによって仕様書が作成される。次いで、その仕様書に基づいて、ECUのハードウェアおよびソフトウェアが作製される。ここで、ソフトウェアは、シミュリンクに比してコンピュータ上での実行に適した言語、例えば、C言語等を用いて、人間の手作業(自動変換ツールの使用を含む)により作製される。このようにして作製されたソフトウェアが、上記のハードウェアに実装されることにより、評価の対象であるECU(試作品)が作製される。
【0018】
上記の手順でECUが試作される過程には、ソフトウェアの開発者が仕様書の内容に基づいて手作業でソフトウェアを作製する工程が含まれる。仕様書がシミュリンクで書かれている場合、その内容は自動変換ツールを用いてC言語に変換することが可能である。しかしながら、自動変換ツールを用いてC言語に変換されただけのソフトウェアは、コンピュータ上での効率的な実行を可能とする意味で最適化されたものではない。このため、ECUを効率的に動作させるソフトウェアを得るためには、必然的に開発者の手作業を介在させる必要が生ずる。
【0019】
ソフトウェアの開発過程では、そのソフトウェアにバグが混入することがある。特に、そのソフトウェアが手作業で作製される場合には、バグの混入が生じ易い。更に、ECUの試作段階では、ソフトウェアのみでなく、ハードウェアにも何等かの不具合が生じていることがある。このため、上述した手順でECUの試作品が作製された後には、そのECUが仕様書に定められている通りに動作するか否かを評価し、異常が認められた場合には、その異常が解消されるように、ハードウェア或いはソフトウェアを修正することが必要となる。
【0020】
開発段階のECUを効率的に評価する手法としては、HILS(Hardware In the LoopSimulation)を用いた手法が知られている。
図2は、HILSの概要を説明するための図である。図2に示すように、HILSは、評価の対象であるハードウェア、すなわち、開発の過程にあるECU10を含んで構成される。本実施形態において、ECU10は、内燃機関の運転状態を制御するための制御ユニットである。
【0021】
図2に示すように、HILSは、ECU10をリアルタイムシミュレータ12に接続することで構成されている。リアルタイムシミュレータ12は、入出力ポート(I/O)14,16を備えており、それらを介してECU10との間で信号を授受することができる。
【0022】
リアルタイムシミュレータ12には、車両モデル、より具体的には、エンジンモデルが実装されている。また、リアルタイムシミュレータ12には、アクセルペダル、ブレーキペダル、或いはシフトレバーなどの入力I/F(図示せず)、更には、外部から供給される車両の走行パターンや制御信号のパターンを読み込むための入力インターフェースが設けられている。
【0023】
リアルタイムシミュレータ12は、上述した種々の入力インターフェースから入力される情報に基づいて、車両(内燃機関)の挙動を模擬することができる。また、リアルタイムシミュレータ12が動作している間、リアルタイムシミュレータ12とECU10との間では、実車上でECU10が授受するのと同様の信号が授受される。このため、HILSに組み込まれたECU10は、リアルタイムシミュレータ12の動作中は、実車に搭載された状態と同様に、車両(内燃機関)の制御に必要な種々の処理を実行する。
【0024】
HILSを用いたECU10の評価は、基本的には以下のような手順で進められる。すなわち、開発過程にあるECU10が仕様書の内容通りに動作するか否かを評価する際には、先ず、
(1)仕様書に定められている事項のうち、ECU10が仕様を満たしているか否かを検証する必要のある事項(要検証事項)が選択される。
(2)次に、それぞれの要検証事項を検証するために、実行すべきシミュレーションのパターン(車両の走行パターン、或いは、ECU10に対する入力信号のパターンなど)が決定される。
(3)上記のパターンでHILSによるシミュレーションを実行する。
(4)シミュレーションの際にECU10で生成される結果信号(アクチュエータへの出力信号、或いは、RAM値など)と、仕様書に定められている内容とを比較し、両者が一致していない場合にECU10にバグが生じていると判断する。
【0025】
上述した一連の手順において、要検証事項の選択、シミュレーションパターンの決定、および結果信号と仕様書との比較(手順(1)、(2)、(4))は、ECU10の評価担当者によって仕様書を参照しながら手作業により行われるのが通常である。このため、その評価には多大な時間が必要とされ、また、上記の評価担当者は、高度の経験を有しECU10の制御を熟知した者に限られるのが現状である。そこで、本実施形態の評価方法は、上記(4)の手順を自動化することで、ECU10の評価に要する時間を短縮し、また、その評価の難易度を下げようとするものである。
【0026】
図3は、本実施形態において、上記の目的を達成すべく実行されるECU10のデバッグ手順のフローチャートである。尚、図3に示す手順は、ECU10の仕様書が完成した後の手順である。また、完成した仕様書に基づくECU10の作製は、この手順とは別に、この手順と並行して進められるものとする。
【0027】
図3に示す手順では、先ず、制御装置試作ユニット(RPE: Rapid Prototyping ECU)20を含むHILSの準備が行われる(S1)。
図4は、上記工程S1により準備されたHILSの構成を説明するための図である。図4に示すように、RPE20を含むHILSは、RPE20をリアルタイムシミュレータ12に接続することで実現することができる。
【0028】
Rapid Prototyping ECU、すなわち、RPEは、仕様書の内容に適合する制御ユニットを短時間で準備するための汎用的なユニットである。RPEは、通常のECUに比して高度なコンピュータを備え、かつ、通常のECUが備えているのと同様の入出力ポート(I/O)を備えている。本実施形態で用いられるRPE20は、特に、シミュリンクで書かれたプログラムを実行することのできるコンピュータを備えたものである。
【0029】
仕様書が完成した後、ECUの試作品ができあがるまでには、ハードウェアやソフトウェアを作製するための時間が当然に必要である。これに対して、RPEを利用すれば、仕様書の内容に合致した制御ユニットを短時間で準備することができる。このため、RPEは、ECUの開発時間を短縮するうえで有効である。
【0030】
本実施形態の場合は、シミュリンクで書かれたプログラムを実行することのできるRPEに、ECU10の仕様書、すなわち、シミュリンクで書かれた仕様書の内容をそのまま実装することにより、その仕様書の内容に合致した制御ユニットを準備することができる。図4に示すRPE20は、このようにして準備された制御ユニットである。
【0031】
再び図3を参照して、以下の手順を説明する。図3に示す手順では、次に、仕様書内の要検証事項を評価するためのデバッグ条件が決定される(S2)。
本工程S2では、より具体的には、要検証事項を評価するためにリアルタイムシミュレータ12により模擬させるべき車両の走行パターンや、リアルタイムシミュレータに供給すべき各種パラメータ(機関廻転数NE、冷却水温THW、吸入空気量Gaなど)の値が決定される。
尚、本工程S2と、上記工程S1との順序は、図3に示す順序に限定されるものではなく、それらの順序は、図3に示す順序と反対の順序であってもよい。
【0032】
図3に示す手順では、次に、RPE20を含むHILSを用いて、上記工程S2で決定された個々のデバッグ条件でのシミュレーションが実行される(S3)。
個々のデバッグ条件に応じたシミュレーションでは、リアルタイムシミュレータ12に対して、そのデバッグ条件に応じた走行パターンの指令や各種パラメータの指令値が供給される。リアルタイムシミュレータ12は、それらの指令を受けると、その指令に応じた状況を模擬的に作り出し、実車上でECU10が受けるべき信号を生成してRPE20に出力する。この際、リアルタイムシミュレータ12からは、例えば、模擬すべき機関回転数NEに応じた周期で変動するクランクパルス信号や、模擬すべき吸入空気量Gaに対応するエアフロメータ(AFM)信号、或いは、模擬すべき冷却水温THWに対応する水温センサ信号などが出力される。以下、このようにして、個々のデバッグ条件に対応してリアルタイムシミュレータから出力される信号を「条件信号」と称す。
【0033】
個々のデバッグ条件に応じたシミュレーションの実行過程において、RPE20は、供給される条件信号に応じた動作を行う。その結果、RPE20は、個々のデバッグ条件に応じたアクチュエータ出力(例えば、インジェクタ信号や点火信号)やRAM値(例えば、各種パラメータの記憶値やフラグ値)を生成する。以下、このようにして、個々のデバッグ条件に対応してRPE20により生成される信号やRAM値を「基準結果信号」と称す。
【0034】
シミュレーションの過程でRPE20がどのように動作しているかは、デバッグ条件に対して、つまり、条件信号に対してRPE20がどのような基準結果信号を生成しているかを見ることで把握することができる。そこで、上記工程S3では、シミュレーションの実行と共に、RPE20で生成される基準結果信号(アクチュエータ出力とRAM値)の計測と記録とが行われる。
【0035】
図3に示す手順では、次に、評価の対象であるECU10を含むHILSが準備される(S4)。
ここで用いられるECU10は、RPE20に実装された仕様書の内容に合致するように、人手を介して開発されたものである。本工程S4では、具体的には、このようにして開発されたECU10をリアルタイムシミュレータ12に接続する作業が行われる(図2参照)。
【0036】
次に、ECU10を含むHILSを用いて、上記工程S2で決定された個々のデバッグ条件でのシミュレーション、つまり、上記工程S3においてRPE20を対象として行われたのと同様のシミュレーションが実行される(S5)。
【0037】
個々のデバッグ条件に応じたシミュレーションの実行過程において、ECU10は、リアルタイムシミュレータ12から供給される条件信号を受けて、その条件信号に応じたアクチュエータ出力やRAM値を生成する。以下、このようにして、個々のデバッグ条件に対応してECU10により生成される信号やRAM値を「検証用結果信号」と称す。上記工程S5では、シミュレーションの実行と共に、このようにしてECU10により生成される検証用結果信号(アクチュエータ出力とRAM値)の計測と記録とが行われる。
【0038】
図3に示す手順では、次に、上記工程S3で記録された基準結果信号と、上記工程S5において記録された検証用結果信号との比較に基づいて、ECU10が仕様書の内容通りに動作しているか否かが判定される(S6)。
基準結果信号は、仕様書の内容がそのまま搭載されたRPE20により生成される結果信号である。つまり、基準結果信号は、個々のデバッグ条件に対する結果として仕様書に定められている信号である。従って、ECU10が仕様書の内容通りに作製されていれば、基準結果信号(RPE20の信号)と検証用結果信号(ECU10の信号)とは一致するはずである。そして、それら両者が一致しない場合は、ECU10が、仕様書の内容通りに機能していないと判断することができる。
本工程S6では、具体的には、シミュレーションが行われた個々のデバッグ条件毎に、基準結果信号と検証用結果信号とが一致しているか否かが判断される。そして、両者の不一致を生じさせたデバッグ条件が、NG条件として認識される。
【0039】
図3に示す手順では、次に、全てのデバッグ条件中にNG条件が存在しているか否かが判別される(S7)。
【0040】
その結果、NG条件が存在すると判別された場合は、そのNGの原因となったバグが解析され、更に、そのバグの修正が行われる(S8)。
その後、再び上記工程S5以降の作業が行われる。
【0041】
上記工程S7において、全てのデバッグ条件中にNG条件が存在しないと判別できた場合は、ECU10のデバッグが終了したものとして、図3に示すデバッグ手順が終了される。
【0042】
以上説明した通り、図3に示す一連の手順によれば、RPE20を用いたシミュレーションを行うことにより、個々のデバッグ条件毎に、仕様書の内容に合致する結果信号(基準結果信号)を取得することができる。そして、ECU10を用いたシミュレーションの結果として生成される検証用結果信号と、上記の基準結果信号とを比較するだけで、仕様書の参照を要することなく、ECU10が仕様書の内容通りに作製されているか否かを評価することができる。
【0043】
検証用結果信号と基準結果信号とが一致しているか否かは、高度の経験を要することなく、また、制御内容の熟知を必要とすることなく、短時間で判断することができる。このため、本実施形態の評価方法によれば、ECU10の評価を、短時間で簡単に行うことができる。
【0044】
ところで、上述した実施の形態1においては、仕様書をシミュリンクで作成することとしているが、仕様書の作成言語はこれに限定されるものではない。すなわち、その言語は、人間が内容を理解することができ、かつ、コンピュータが実行可能なものである限り、他の言語(例えばC言語)であってもよい。
【0045】
また、上述した実施の形態1では、上記工程S6の作業、すなわち、基準結果信号と検証用結果信号との比較に基づいてECU10のOK・NGを判定する作業を、開発者に手作業で実行させるか、或いはコンピュータに自動実行させるかにつき言及していないが、その作業は、何れの手法で実行させることとしてもよい。
その作業を手作業で行う場合は、基準結果信号および検証用結果信号をそれぞれプリントアウト等して、上記工程S6において、評価担当者が、それらを目視により比較すればよい。また、上記の作業をコンピュータに実行させる場合は、上記工程S3において基準結果信号をコンピュータに記録させ、かつ、上記工程S5において検証用結果信号をコンピュータに記録させたうえで、上記工程S6において、コンピュータにそれらの一致不一致を判断させればよい。
【0046】
実施の形態2.
次に、図5乃至図8を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
実施の形態1の説明において記述した通り、HILSを用いて車両用制御装置(ECU)を評価する場合は、シミュレーションの実行に先立って、以下の作業を行う必要がある。
(1)仕様書に定められている事項から要検証事項を選択する作業。
(2)それぞれの要検証事項を検証するためのシミュレーションのパターンを決定する作業。
これらの作業は、通常、ECUの評価担当者によって手作業で行われており、評価時間の短縮および簡単化の妨げとなっている。
【0047】
また、ECUが仕様書の内容通りに動作するか否かをHILSを用いて評価する場合は、特定のRAM値(フラグの値など)を、デバッグ条件に応じた値に設定する必要が生ずる。ECUにおいて、フラグ値等のRAM値は、その内部処理の結果として設定される。従って、シミュレーションの過程でそれらのRAM値を所望の値に設定するためには、その設定を実現するための全ての条件を整えることが必要である。
【0048】
換言すると、HILSを用いたシミュレーションの過程で、ECUのRAM値を、単純にデバッグ条件に応じた値に書き換えた場合は、その書き換えの直後に、ECUの内部処理により、再びそのRAM値が書き換えられる事態が生じ、デバッグ条件に応じたシミュレーションが実行できない事態が生じ得る。このように、HILSを用いてECUを評価する場合、デバッグ条件に応じたシミュレーションを実行することは必ずしも容易ではない。
【0049】
本実施形態の評価方法は、HILSを用いたECUの評価に伴う上記の不都合の解消を目的としたものである。すなわち、本実施形態の評価方法は、上記(1)および(2)の作業の自動化を可能とし、更に、シミュレーション中におけるRAM値の直接書き換えを可能とすることで、HILSを用いたECUの評価を容易化しようとするものである。尚、本実施形態においても、評価の対象は、実施の形態1の場合と同様に、開発過程にあるECU10(内燃機関の制御装置)であるものとする。
【0050】
図5は、本実施形態の評価方法の概要を説明するためのブロック図である。尚、図5において、実施の形態1で説明した要素と同一物を表すブロックには、実施の形態1の場合と同一の符号を付している。
【0051】
図5において、Simulink仕様書30は、シミュリンクで書かれたECU10の仕様書である。Simulink仕様書30には、例えば、図1に示すような事項が書かれている。Simulink仕様書30は、ECU10の作成の基礎として用いられると共に、ECU10の評価のために、その内容がパーソナルコンピュータに読み込まれる。
【0052】
条件読み取りツール32は、Simulink仕様書30から、要検証事項を読み取るためのツール(ソフトウェア)である。条件読み取りツール32は、Simulink仕様書30の内容と同様に、パーソナルコンピュータに読み込まれている。条件読み取りツール32によれば、Simulink仕様書30に書かれている事項から、制御ロジックとして使用されている条件や、条件分岐文を読み取ることができる。
【0053】
デバッグ条件作成ツール34は、条件読み取りツール32によって読み取られた個々の要検証事項について、デバッグ条件を作成するためのツール(ソフトウェア)である。デバッグ条件作成ツール34は、Simulink仕様書30の内容や条件読み取りツール32と同様に、パーソナルコンピュータに読み込まれている。デバッグ条件作成ツール34によれば、個々の要検証事項を検証するために必要な必要十分なデバッグ条件を自動的に作成することができる。
【0054】
デバッグ条件出力ツール36は、デバッグ条件作成ツール34によって作成されたデバッグ条件を、リアルタイムシミュレータ12およびRAM値計測機器38に出力するためのツール(ソフトウェア)である。デバッグ条件出力ツール36は、Simulink仕様書30の内容や条件読み取りツール32などと同様に、パーソナルコンピュータに読み込まれている。本実施形態において作成されるデバッグ条件には、リアルタイムシミュレータ12が車両の状態を模擬するために必要とするパラメータ値(機関廻転数NEや、冷却水温THWなど)と、ECU10において実現されるべきRAM値(フラグ値など)とが含まれている。デバッグ条件出力ツール36は、それらのデバッグ条件のうち、パラメータ値をリアルタイムシミュレータ12に出力し、RAM値をRAM値計測機器38に出力する。
【0055】
RAM値計測機器38は、ECU10のRAM値を直接的に読み書きするための装置である。RAM値計測機器38によれば、評価対象のECU10内のRAM値を、デバッグ条件出力ツール36から供給されるRAM値に直接的に書き換えることができる。尚、図5に示す例では、RAM値計測機器38が、リアルタイムシミュレータ12とは別個の装置として表されているが、RAM値計測機器38は、リアルタイムシミュレータ12に内蔵されていてもよい。
【0056】
本実施形態において、ECU10は、リアルタイムシミュレータ12によるシミュレーションの実行中は、RAM値計測機器38により書き換えられたRAM値を、内部処理に応じた値に書き換えることなく維持することができるように構成されている。このため、図5に示す構成によれば、デバッグ条件作成ツール34によって作成されたデバッグ条件を、シミュレーションの実行中に、比較的容易にECU10に反映させることができる。
【0057】
図6は、上述した条件読み取りツール32、デバッグ条件作成ツール34、およびデバッグ条件出力ツール36の内容を詳細に説明するためのフローチャートである。
【0058】
図6において、符号40は、Simulink仕様書40に書かれている条件の1例を示すコンピュータ画面である。画面40に書かれている条件は、図1に示す事項と同一である。すなわち、その条件は、
「以下の条件全て成立でFlag2=ON(=1)
機関廻転数NE<800rpm
冷却水温THW≧80℃
Flag1=1」
という条件である。
【0059】
条件読み取りツール32によれば、パーソナルコンピュータに読み込まれているSimulink仕様書30の内容を検索して、その中から、画面40に表示されているような条件や、或いは他の条件若しくは条件分岐文を、要検証事項として読み取ることができる。
【0060】
デバッグ条件作成ツール34は、要検証事項として読み取られた個々の事項につき、その内容を検証するために実行すべきシミュレーションの条件、すなわち、デバッグ条件を作成する。要検証事項は、それぞれ、画面40(または図1)に示されるように、パラメータの大小関係を定める条件や、フラグの設定値に関する条件で構成されている。デバッグ条件作成ツール34は、それらの条件の正否の全てが検証できるようにデバッグ条件を作成する。
【0061】
より具体的には、デバッグ条件作成ツール34は、パラメータの大小関係については、原則として、以下の場合についてそれぞれシミュレーションが実行されるように、4通りのデバッグ条件を設定する。
▲1▼パラメータの大小関係についての条件が成立する場合。
▲2▼パラメータの大小関係についての条件が成立しない場合。
▲3▼パラメータの大小関係についての条件が成立から不成立に変化する場合。
▲4▼パラメータの大小関係についての条件が不成立から成立に変化する場合。
【0062】
デバッグ条件作成ツール34は、また、フラグの設定値に関する条件についても、原則として、以下に示す4通りのデバッグ条件を設定する。
▲1▼フラグ値についての条件が成立する場合。
▲2▼フラグ値についての条件が成立しない場合。
▲3▼フラグ値についての条件が成立から不成立に変化する場合。
▲4▼フラグ値についての条件が不成立から成立に変化する場合。
【0063】
従って、画面40に示される通り、要検証事項に、パラメータの大小関係を規定する2つの条件と、フラグ値に関する1つの条件とが含まれている場合、それぞれの条件について検証すべき場合の組み合わせにより、原則として、4×4×4=64通りのデバッグ条件がデバッグ条件作成ツール34により作成される。図6中に、デバッグ条件作成ツール34により作成されたデバッグ条件として例示されている4つの条件は、それら64通りのデバッグ条件の一部である。
【0064】
尚、上述したデバッグ条件の作成手法は、あくまでも例示であり、その作成手法はこれに限定されるものではない。例えば、上記の例では、パラメータの大小関係についての条件或いはフラグ値に関する条件が、成立から不成立に変化する場合と不成立から成立に変化する場合の双方につきデバッグ条件を作成することとしているが、パラメータやフラグの性質によっては、それらの一方についてはデバッグ条件の作成を省略することとしてもよい。
【0065】
デバッグ条件出力ツール36は、上記の如く作成された複数のデバッグ条件を、順次リアルタイムシミュレータ12およびRAM値計測機器38に向けて出力する。この際、デバッグ条件に含まれている条件のうち、機関廻転数NEや冷却水温THWなど、車両の制御に必要な条件として予め定められているものは、リアルタイムシミュレータ12に供給される。一方、デバッグ条件に含まれている条件のうち、車両制御に直接的には必要ないもの、つまり、本来はECU10の内部処理により設定されるべきRAM値に関するものは、RAM値計測機器38に供給される。
【0066】
デバッグ条件出力ツール36から、上記の如くデバッグ条件が出力されると、リアルタイムシミュレータ12は、個々のデバッグ条件に応じたシミュレーションを実行すべく、機関廻転数NEやAFM信号、或いは水温信号などの条件信号を生成してECU10に供給する。この際、ECU10には、RAM値計測機器38からデバッグ条件に合致したRAM値が条件信号の一部として供給される。その結果、ECU10のRAM値は、デバッグ条件に適合する値に書き換えられる。
【0067】
ECU10は、リアルタイムシミュレータ12およびRAM値計測機器38から上記の如く条件信号を受信すると、その条件信号に応じた検証用結果信号(アクチュエータ出力、RAM値)を生成する。つまり、HILSに組み込まれたECU10では、デバッグ条件出力ツール36からデバッグ条件が出力される毎に、個々のデバッグ条件に対応する検証用結果信号が生成される。
【0068】
本実施形態の評価方法では、このようにして生成された検証用結果信号が、全てのデバッグ条件毎に記録される。更に、その検証用結果信号が、仕様書の内容に合致しているか否かを判断することにより、ECU10が、仕様書の内容通りに作成されているか否かが判断される。そして、何れかのデバッグ条件につき、ECU10の動作が仕様書の内容に合致していないと判別された場合は、両者が合致するように、ECU10のハードウェア上、或いはソフトウェア上のバグが修正される。
【0069】
以上説明した通り、本実施形態の評価方法によれば、HILSを用いてECU10を評価するうえで必要となる要検証事項の決定、およびデバッグ条件の作成を、人手を介することなく、コンピュータに実行させることができる。このため、本実施形態の方法によれば、ECU10が仕様書の内容通りに作成されているか否かを判断するための評価を、短時間で、かつ、簡単に実行することができる。
【0070】
既述した通り、本実施形態では、リアルタイムシミュレータ12によるシミュレーションの実行中に、ECU10内のRAM値がRAM値計測機器38により書き換えられた場合は、そのRAM値がECU10の内部処理により再び書き換えられるのを防止している。以下、この機能を実現するために、リアルタイムシミュレータ12およびECU10においてそれぞれ実行されている処理の内容について説明する。
【0071】
図7は、上記の機能を実現するためにリアルタイムシミュレータ12が実行する一連の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図7に示す一連の処理では、先ず、リアルタイムシミュレータ12が新たなデバッグ条件を受信したか否かが判別される(ステップ100)。
【0072】
上記ステップ100の処理は、新たなデバッグ信号の受信が判定されるまで繰り返し実行される。そして、新たな条件信号の受信が判定されると、次に、そのデバッグ条件でのシミュレーションが開始されたことを表すべく、デバッグフラグがONとされる(ステップ102)。
【0073】
リアルタイムシミュレータ12では、次に、ECU10に向けて、デバッグ条件に適合した条件信号(パラメータ信号)が出力される(ステップ104)。
【0074】
次いで、ECU10により生成される検証用結果信号の記録が終了したか否かが判別される(ステップ106)。
本ステップ106において、検証用結果信号の記録が終了したか否かは、例えば、その記録の終了を意味する信号がHILS側から発せられたか否かに基づいて、或いは、その記録に要する予定の時間が経過したか否かに基づいて、更には、その記録の終了を意味する入力操作が評価担当者によってなされたか否かに基づいて判断することができる。
【0075】
上記ステップ106の処理は、検証用結果信号の記録が終了したと判別されるまで繰り返し実行される。そして、その記録が終了したと判定されると、今回のデバッグ条件でのシミュレーションが終了したことを表すべく、デバッグフラグがOFFとされる(ステップ108)。
【0076】
以上説明した通り、図7に示すルーチンによれば、リアルタイムシミュレータ12に新たなデバッグ条件が供給された後、そのデバッグ条件に対して、ECU10が生成する検証用結果信号が記録されるまでの間は、デバッグフラグをONとしておくことができる。
【0077】
図8は、シミュレーション中におけるRAM値の再書き換えを防止するためにECU10が実行するルーチンのフローチャートを示す。
図8に示すルーチンでは、先ず、デバッグフラグがONであるか否かが判別される(ステップ110)。
【0078】
その結果、デバッグフラグがONであると判別された場合は、リアルタイムシミュレータ12によるシミュレーションの実行中であり、未だ、新たなデバッグ条件に対する検証用結果信号の記録が終了していないと判断することができる。ECU10では、この場合、外部入力によるRAM値の書き換えが有効とされ(ステップ112)、かつ、内部処理によるRAM値の書き換えが禁止される(ステップ114)。
【0079】
上記の処理によれば、ECU10のRAM値は、検証用結果信号の記録が終わるまでは、内部処理の影響を受けることなく、RAM値計測機器38(図5参照)から供給される値、つまり、デバッグ条件に合致した値に維持される。このため、本実施形態の評価方法によれば、シミュレーションの実行時に、ECU10のRAM値を容易にデバッグ条件に合致させることができ、個々のデバッグ条件に対する正確な検証用結果信号を容易に計測し、かつ、記録することができる。
【0080】
図8に示すルーチン中、上記ステップ110において、デバッグフラグがONでないと判別された場合は、デバッグ条件に対する検証用結果信号の記録を行うべき状況が生じていないと判断することができる。つまり、検証用結果信号を取得するためにECU10の動作を規制する必要が生じていないと判断することができる。ECU10では、この場合、外部入力によるRAM値の書き換えが無効とされ(ステップ116)、かつ、内部処理によるRAM値の書き換えが許可される(ステップ118)。
【0081】
上記の処理によれば、検証用結果信号を記録する必要のないときは、ECU10のRAM値を、その内部処理により決められる値に設定することができる。このため、ECU10は、リアルタイムシミュレータ12によるシミュレーションの実行中であり、かつ、リアルタイムシミュレータ12の新たなデバッグ条件が供給された後、検証用結果信号が記録されるまでの間を除き、RAM値計測機器38等の外部機器に影響されることなく、通常の動作を行うことができる。
【0082】
ところで、上記の説明においては、シミュレーションの実行に伴ってECU10により生成される検証用結果信号が、Simulink仕様書30の内容と合致しているか否かに基づいてECU10を評価することとしているが、その評価の手法はこれに限定されるものではない。すなわち、本実施形態においても、ECU10の評価は、実施の形態1の場合と同様に、Simulink仕様書30の内容を実装したRPE20により生成される基準結果信号と、ECU10により生成される検証用結果信号との比較に基づいて行うこととしてもよい。
【0083】
また、上記の説明においては、ECU10により生成される検証用結果信号と、Simulink仕様書30の内容との比較を、開発者に手作業で実行させるか、或いはコンピュータに自動実行させるかにつき言及していないが、その作業は、何れの手法で実行させることとしてもよい。
その作業を手作業で行う場合は、評価担当者が、シミュレーションの結果得られた検証用結果信号と、Simulink仕様書30の内容とを目視により比較すればよい。また、上記の作業をコンピュータに実行させる場合は、シミュレーションの結果得られた検証用結果信号をコンピュータに記録させ、かつ、個々のデバッグ条件に対する結果としてSimulink仕様書30に定められている事項をコンピュータに読み取らせたうえで、それらの一致不一致をコンピュータに判断させればよい。
【0084】
【発明の効果】
この発明は以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
第1の発明によれば、制御装置試作ユニットが仕様書の内容に従って生成する基準結果信号と、評価の対象である車両用制御装置が生成する検証用結果信号とを比較するだけで、車両用制御装置が仕様書の内容通りに機能しているか否かを容易かつ正確に評価することができる。
【0085】
第2の発明によれば、仕様書がコンピュータ読み取り可能な言語で作成されているため、コンピュータに、その仕様書から要検証事項を読み取らせ、更に、個々の要検証事項の検証に必要なデバッグ条件を作成させることができる。そして、このようにして作成されたデバッグ条件に対応する条件信号を車両用制御装置に供給することで、その装置の評価を容易かつ正確に行うことができる。
【0086】
第3の発明によれば、条件信号の供給の結果として車両用制御装置が生成する検証用結果信号が、仕様書の定める仕様と一致しているか否かに基づいて、車両用制御装置を評価することができる。
【0087】
第4の発明によれば、条件信号の供給の結果として制御装置試作ユニットが生成する基準結果信号と、条件信号の供給の結果として車両用制御装置が生成する検証用結果信号とが一致しているか否かに基づいて、車両用制御装置を評価することができる
【0088】
第5の発明によれば、車両用制御装置の動作を評価する際に、車両用制御装置内部のRAM値を条件信号に含まれるRAM値に書き換えることができると共に、そのRAM値がその後車両用制御装置の内部処理により書き換えられるのを禁止することができる。このため、本発明によれば、車両用制御装置の評価時に、特定のRAM値を所望の値にするための全条件を成立させることなく、簡易にその評価を行うことができる。
【0089】
第6の発明によれば、仕様書がシミュリンク言語で作成されるため、その仕様書の内容を人間が理解することができ、かつ、その内容をコンピュータに実行させることができる。
【0090】
第7の発明によれば、制御装置試作ユニットによって生成される基準結果信号と、車両用制御装置によって生成される検証用結果信号との比較を、コンピュータに実行させることができる。このため、本発明によれば、車両用制御装置の評価に要する手作業を大幅に軽減することができる。
【0091】
第8の発明によれば、仕様書の内容から読み取られる基準の結果と、車両用制御装置によって生成される検証用結果信号との比較を、コンピュータに実行させることができる。このため、本発明によれば、車両用制御装置の評価に要する手作業を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1において評価の対象とされる車両用制御装置の仕様書の一部である。
【図2】実施の形態1で用いられるHILS(Hardware In the Loop Simulation)の概要を説明するための図である。
【図3】実施の形態1で用いられる車両用制御装置のデバッグ手順を説明するためのフローチャートである。
【図4】図3に示す工程S1において、RPE(Rapid Prototyping ECU)を含むように準備されるHILSの概要を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態2の評価方法の概要を説明するためのブロック図である。
【図6】図5に示す条件読み取りツール、デバッグ条件作成ツール、およびデバッグ条件出力ツールの内容を説明するためのフローチャートである。
【図7】実施の形態2において、シミュレーション中におけるRAM値の再書き換えを防止するために、リアルタイムシミュレータによって実行される一連の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図8】実施の形態2において、シミュレーション中におけるRAM値の再書き換えを防止するために、評価対象のECUによって実行される一連の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
10 ECU(Electronic Control Unit)
12 リアルタイムシミュレータ
30 Simulink仕様書
32 条件読み取りツール
34 デバッグ条件作成ツール
38 RAM値計測機器
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用制御装置の評価方法に係り、特に、開発の段階で車両用制御装置の機能が仕様を満たしているか否かを検証する方法として好適な評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特開平11−326135号公報に開示されるように、仮想的な車両モデルを用いて、シミュレーションにより車両制御装置(ECU:Electronic Control Unit)を評価する方法が知られている。このような評価方法によれば、実車走行を行うことなく、実車走行を行った場合と同等の評価を行うことができ、車両用制御装置の開発効率を高めることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
シミュレーションによるECUの評価は、ECUの開発過程において、そのECUが仕様書の内容通りに動作するか否かを評価するために用いることができる。このような評価では、具体的には、仕様書に定められた個々の条件について、その条件に対応する信号を試作段階のECUに入力する処理、および、その結果得られた出力が仕様書の内容に一致しているか否かを判断する処理が実行される。
【0004】
これらの処理は、何れも評価担当者が手作業で行うことを要する。また、ECUが仕様通りに機能するか否かを判断するために検証すべき事項を選択したり、その事項を適切に検証するための条件を設定したりする作業には高度の経験が要求される。このため、上述した従来の方法によれば、ECUが正常に機能しているか否かを評価するために、高度の経験と長い時間が必要とされる。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、車両用制御装置が仕様書の内容通りに機能しているか否かを、短時間で簡単に評価するための評価方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、車両用制御装置の評価方法であって、
コンピュータが実行可能な言語で仕様書を作成するステップと、
前記仕様書の内容が実装され、かつ、その内容が実行可能な制御装置試作ユニットに所定の条件信号を供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記制御装置試作ユニットが生成する基準結果信号を記録するステップと、
前記仕様書に基づいて車両用制御装置を作成するステップと、
前記条件信号を前記車両用制御装置に供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記車両用制御装置が生成する検証用結果信号を記録するステップと、
前記基準結果信号と前記検証用結果信号とが一致しているか否かを判断するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明は、車両用制御装置の評価方法であって、
コンピュータが読み取り可能な言語で仕様書を作成するステップと、
前記仕様書に基づいて車両用制御装置を作成するステップと、
前記仕様書の内容から要検証事項をコンピュータに読み取らせるステップと、前記要検証事項を検証するためのデバッグ条件をコンピュータに作成させるステップと、
前記デバッグ条件に対応する条件信号を生成するステップと、
前記条件信号を用いて前記車両用制御装置の動作を評価するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記車両用制御装置の動作を評価するステップは、
前記条件信号を前記車両用制御装置に供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記車両用制御装置が生成する検証用結果信号を計測するステップと、
前記検証用結果信号が、前記仕様書の定める仕様と一致しているか否かを判断するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0009】
また、第4の発明は、第2の発明において、前記車両用制御装置の動作を評価するステップは、
前記条件信号を制御装置試作ユニットに供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記制御装置試作ユニットが生成する基準結果信号を記録するステップと、
前記条件信号を前記車両用制御装置に供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記車両用制御装置が生成する検証用結果信号を記録するステップと、
前記基準結果信号と前記検証用結果信号とが一致しているか否かを判断するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0010】
また、第5の発明は、第2乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記条件信号は、前記車両用制御装置の内部処理により演算されるべきRAM値を含み、
前記車両用制御装置の動作を評価するステップは、
前記車両用制御装置内部のRAM値を、前記条件信号に含まれるRAM値に書き換えるステップと、
書き換えられたRAM値が、前記車両用制御装置の内部処理により再び書き換えられるのを禁止するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0011】
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れかにおいて、前記言語はシミュリンクであることを特徴とする。
【0012】
また、第7の発明は、第1または第4の発明において、
前記基準結果信号を記録するステップは、当該基準結果信号をコンピュータに記録させるステップを含み、
前記検証用結果信号を記録するステップは、当該検証用結果信号をコンピュータに記録させるステップを含み、
前記基準結果信号と前記検証用結果信号とが一致しているか否かを判断するステップは、当該判断をコンピュータに実行させるステップを含むことを特徴とする。
【0013】
また、第8の発明は、第3の発明において、前記検証用結果信号が、前記仕様書の定める仕様と一致しているか否かを判断するステップは、
前記検証用結果信号と対比されるべき基準の結果を前記仕様書からコンピュータに読み取らせるステップと、
読み取られた基準の結果と前記検証用結果信号とが一致しているか否かをコンピュータに判断させるステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、図1乃至図4を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。本実施形態は、車両用制御装置(ECU)の開発過程で、そのECUが仕様書の内容通りに動作するか否かを評価するための方法に関する。
【0015】
図1は、本実施形態における評価の対象であるECUの仕様書の一部を示す。ECUの仕様書は、その内容を人間が理解することができ、かつ、その内容をコンピュータが実行することのできる言語で作成される。本実施形態では、図1に示すように、ECUの仕様書はシミュリンク(Simulink)により作成される。
【0016】
尚、図1に示す仕様は、内燃機関を制御するためのECUの仕様書の一部であり、その内容は以下の事項を表している。
「以下の条件全て成立でFlag2=ON(=1)
機関廻転数NE<800rpm
冷却水温THW≧80℃
Flag1=1」
【0017】
本実施形態におけるECUの開発過程では、先ず、図1に示すようにシミュリンクによって仕様書が作成される。次いで、その仕様書に基づいて、ECUのハードウェアおよびソフトウェアが作製される。ここで、ソフトウェアは、シミュリンクに比してコンピュータ上での実行に適した言語、例えば、C言語等を用いて、人間の手作業(自動変換ツールの使用を含む)により作製される。このようにして作製されたソフトウェアが、上記のハードウェアに実装されることにより、評価の対象であるECU(試作品)が作製される。
【0018】
上記の手順でECUが試作される過程には、ソフトウェアの開発者が仕様書の内容に基づいて手作業でソフトウェアを作製する工程が含まれる。仕様書がシミュリンクで書かれている場合、その内容は自動変換ツールを用いてC言語に変換することが可能である。しかしながら、自動変換ツールを用いてC言語に変換されただけのソフトウェアは、コンピュータ上での効率的な実行を可能とする意味で最適化されたものではない。このため、ECUを効率的に動作させるソフトウェアを得るためには、必然的に開発者の手作業を介在させる必要が生ずる。
【0019】
ソフトウェアの開発過程では、そのソフトウェアにバグが混入することがある。特に、そのソフトウェアが手作業で作製される場合には、バグの混入が生じ易い。更に、ECUの試作段階では、ソフトウェアのみでなく、ハードウェアにも何等かの不具合が生じていることがある。このため、上述した手順でECUの試作品が作製された後には、そのECUが仕様書に定められている通りに動作するか否かを評価し、異常が認められた場合には、その異常が解消されるように、ハードウェア或いはソフトウェアを修正することが必要となる。
【0020】
開発段階のECUを効率的に評価する手法としては、HILS(Hardware In the LoopSimulation)を用いた手法が知られている。
図2は、HILSの概要を説明するための図である。図2に示すように、HILSは、評価の対象であるハードウェア、すなわち、開発の過程にあるECU10を含んで構成される。本実施形態において、ECU10は、内燃機関の運転状態を制御するための制御ユニットである。
【0021】
図2に示すように、HILSは、ECU10をリアルタイムシミュレータ12に接続することで構成されている。リアルタイムシミュレータ12は、入出力ポート(I/O)14,16を備えており、それらを介してECU10との間で信号を授受することができる。
【0022】
リアルタイムシミュレータ12には、車両モデル、より具体的には、エンジンモデルが実装されている。また、リアルタイムシミュレータ12には、アクセルペダル、ブレーキペダル、或いはシフトレバーなどの入力I/F(図示せず)、更には、外部から供給される車両の走行パターンや制御信号のパターンを読み込むための入力インターフェースが設けられている。
【0023】
リアルタイムシミュレータ12は、上述した種々の入力インターフェースから入力される情報に基づいて、車両(内燃機関)の挙動を模擬することができる。また、リアルタイムシミュレータ12が動作している間、リアルタイムシミュレータ12とECU10との間では、実車上でECU10が授受するのと同様の信号が授受される。このため、HILSに組み込まれたECU10は、リアルタイムシミュレータ12の動作中は、実車に搭載された状態と同様に、車両(内燃機関)の制御に必要な種々の処理を実行する。
【0024】
HILSを用いたECU10の評価は、基本的には以下のような手順で進められる。すなわち、開発過程にあるECU10が仕様書の内容通りに動作するか否かを評価する際には、先ず、
(1)仕様書に定められている事項のうち、ECU10が仕様を満たしているか否かを検証する必要のある事項(要検証事項)が選択される。
(2)次に、それぞれの要検証事項を検証するために、実行すべきシミュレーションのパターン(車両の走行パターン、或いは、ECU10に対する入力信号のパターンなど)が決定される。
(3)上記のパターンでHILSによるシミュレーションを実行する。
(4)シミュレーションの際にECU10で生成される結果信号(アクチュエータへの出力信号、或いは、RAM値など)と、仕様書に定められている内容とを比較し、両者が一致していない場合にECU10にバグが生じていると判断する。
【0025】
上述した一連の手順において、要検証事項の選択、シミュレーションパターンの決定、および結果信号と仕様書との比較(手順(1)、(2)、(4))は、ECU10の評価担当者によって仕様書を参照しながら手作業により行われるのが通常である。このため、その評価には多大な時間が必要とされ、また、上記の評価担当者は、高度の経験を有しECU10の制御を熟知した者に限られるのが現状である。そこで、本実施形態の評価方法は、上記(4)の手順を自動化することで、ECU10の評価に要する時間を短縮し、また、その評価の難易度を下げようとするものである。
【0026】
図3は、本実施形態において、上記の目的を達成すべく実行されるECU10のデバッグ手順のフローチャートである。尚、図3に示す手順は、ECU10の仕様書が完成した後の手順である。また、完成した仕様書に基づくECU10の作製は、この手順とは別に、この手順と並行して進められるものとする。
【0027】
図3に示す手順では、先ず、制御装置試作ユニット(RPE: Rapid Prototyping ECU)20を含むHILSの準備が行われる(S1)。
図4は、上記工程S1により準備されたHILSの構成を説明するための図である。図4に示すように、RPE20を含むHILSは、RPE20をリアルタイムシミュレータ12に接続することで実現することができる。
【0028】
Rapid Prototyping ECU、すなわち、RPEは、仕様書の内容に適合する制御ユニットを短時間で準備するための汎用的なユニットである。RPEは、通常のECUに比して高度なコンピュータを備え、かつ、通常のECUが備えているのと同様の入出力ポート(I/O)を備えている。本実施形態で用いられるRPE20は、特に、シミュリンクで書かれたプログラムを実行することのできるコンピュータを備えたものである。
【0029】
仕様書が完成した後、ECUの試作品ができあがるまでには、ハードウェアやソフトウェアを作製するための時間が当然に必要である。これに対して、RPEを利用すれば、仕様書の内容に合致した制御ユニットを短時間で準備することができる。このため、RPEは、ECUの開発時間を短縮するうえで有効である。
【0030】
本実施形態の場合は、シミュリンクで書かれたプログラムを実行することのできるRPEに、ECU10の仕様書、すなわち、シミュリンクで書かれた仕様書の内容をそのまま実装することにより、その仕様書の内容に合致した制御ユニットを準備することができる。図4に示すRPE20は、このようにして準備された制御ユニットである。
【0031】
再び図3を参照して、以下の手順を説明する。図3に示す手順では、次に、仕様書内の要検証事項を評価するためのデバッグ条件が決定される(S2)。
本工程S2では、より具体的には、要検証事項を評価するためにリアルタイムシミュレータ12により模擬させるべき車両の走行パターンや、リアルタイムシミュレータに供給すべき各種パラメータ(機関廻転数NE、冷却水温THW、吸入空気量Gaなど)の値が決定される。
尚、本工程S2と、上記工程S1との順序は、図3に示す順序に限定されるものではなく、それらの順序は、図3に示す順序と反対の順序であってもよい。
【0032】
図3に示す手順では、次に、RPE20を含むHILSを用いて、上記工程S2で決定された個々のデバッグ条件でのシミュレーションが実行される(S3)。
個々のデバッグ条件に応じたシミュレーションでは、リアルタイムシミュレータ12に対して、そのデバッグ条件に応じた走行パターンの指令や各種パラメータの指令値が供給される。リアルタイムシミュレータ12は、それらの指令を受けると、その指令に応じた状況を模擬的に作り出し、実車上でECU10が受けるべき信号を生成してRPE20に出力する。この際、リアルタイムシミュレータ12からは、例えば、模擬すべき機関回転数NEに応じた周期で変動するクランクパルス信号や、模擬すべき吸入空気量Gaに対応するエアフロメータ(AFM)信号、或いは、模擬すべき冷却水温THWに対応する水温センサ信号などが出力される。以下、このようにして、個々のデバッグ条件に対応してリアルタイムシミュレータから出力される信号を「条件信号」と称す。
【0033】
個々のデバッグ条件に応じたシミュレーションの実行過程において、RPE20は、供給される条件信号に応じた動作を行う。その結果、RPE20は、個々のデバッグ条件に応じたアクチュエータ出力(例えば、インジェクタ信号や点火信号)やRAM値(例えば、各種パラメータの記憶値やフラグ値)を生成する。以下、このようにして、個々のデバッグ条件に対応してRPE20により生成される信号やRAM値を「基準結果信号」と称す。
【0034】
シミュレーションの過程でRPE20がどのように動作しているかは、デバッグ条件に対して、つまり、条件信号に対してRPE20がどのような基準結果信号を生成しているかを見ることで把握することができる。そこで、上記工程S3では、シミュレーションの実行と共に、RPE20で生成される基準結果信号(アクチュエータ出力とRAM値)の計測と記録とが行われる。
【0035】
図3に示す手順では、次に、評価の対象であるECU10を含むHILSが準備される(S4)。
ここで用いられるECU10は、RPE20に実装された仕様書の内容に合致するように、人手を介して開発されたものである。本工程S4では、具体的には、このようにして開発されたECU10をリアルタイムシミュレータ12に接続する作業が行われる(図2参照)。
【0036】
次に、ECU10を含むHILSを用いて、上記工程S2で決定された個々のデバッグ条件でのシミュレーション、つまり、上記工程S3においてRPE20を対象として行われたのと同様のシミュレーションが実行される(S5)。
【0037】
個々のデバッグ条件に応じたシミュレーションの実行過程において、ECU10は、リアルタイムシミュレータ12から供給される条件信号を受けて、その条件信号に応じたアクチュエータ出力やRAM値を生成する。以下、このようにして、個々のデバッグ条件に対応してECU10により生成される信号やRAM値を「検証用結果信号」と称す。上記工程S5では、シミュレーションの実行と共に、このようにしてECU10により生成される検証用結果信号(アクチュエータ出力とRAM値)の計測と記録とが行われる。
【0038】
図3に示す手順では、次に、上記工程S3で記録された基準結果信号と、上記工程S5において記録された検証用結果信号との比較に基づいて、ECU10が仕様書の内容通りに動作しているか否かが判定される(S6)。
基準結果信号は、仕様書の内容がそのまま搭載されたRPE20により生成される結果信号である。つまり、基準結果信号は、個々のデバッグ条件に対する結果として仕様書に定められている信号である。従って、ECU10が仕様書の内容通りに作製されていれば、基準結果信号(RPE20の信号)と検証用結果信号(ECU10の信号)とは一致するはずである。そして、それら両者が一致しない場合は、ECU10が、仕様書の内容通りに機能していないと判断することができる。
本工程S6では、具体的には、シミュレーションが行われた個々のデバッグ条件毎に、基準結果信号と検証用結果信号とが一致しているか否かが判断される。そして、両者の不一致を生じさせたデバッグ条件が、NG条件として認識される。
【0039】
図3に示す手順では、次に、全てのデバッグ条件中にNG条件が存在しているか否かが判別される(S7)。
【0040】
その結果、NG条件が存在すると判別された場合は、そのNGの原因となったバグが解析され、更に、そのバグの修正が行われる(S8)。
その後、再び上記工程S5以降の作業が行われる。
【0041】
上記工程S7において、全てのデバッグ条件中にNG条件が存在しないと判別できた場合は、ECU10のデバッグが終了したものとして、図3に示すデバッグ手順が終了される。
【0042】
以上説明した通り、図3に示す一連の手順によれば、RPE20を用いたシミュレーションを行うことにより、個々のデバッグ条件毎に、仕様書の内容に合致する結果信号(基準結果信号)を取得することができる。そして、ECU10を用いたシミュレーションの結果として生成される検証用結果信号と、上記の基準結果信号とを比較するだけで、仕様書の参照を要することなく、ECU10が仕様書の内容通りに作製されているか否かを評価することができる。
【0043】
検証用結果信号と基準結果信号とが一致しているか否かは、高度の経験を要することなく、また、制御内容の熟知を必要とすることなく、短時間で判断することができる。このため、本実施形態の評価方法によれば、ECU10の評価を、短時間で簡単に行うことができる。
【0044】
ところで、上述した実施の形態1においては、仕様書をシミュリンクで作成することとしているが、仕様書の作成言語はこれに限定されるものではない。すなわち、その言語は、人間が内容を理解することができ、かつ、コンピュータが実行可能なものである限り、他の言語(例えばC言語)であってもよい。
【0045】
また、上述した実施の形態1では、上記工程S6の作業、すなわち、基準結果信号と検証用結果信号との比較に基づいてECU10のOK・NGを判定する作業を、開発者に手作業で実行させるか、或いはコンピュータに自動実行させるかにつき言及していないが、その作業は、何れの手法で実行させることとしてもよい。
その作業を手作業で行う場合は、基準結果信号および検証用結果信号をそれぞれプリントアウト等して、上記工程S6において、評価担当者が、それらを目視により比較すればよい。また、上記の作業をコンピュータに実行させる場合は、上記工程S3において基準結果信号をコンピュータに記録させ、かつ、上記工程S5において検証用結果信号をコンピュータに記録させたうえで、上記工程S6において、コンピュータにそれらの一致不一致を判断させればよい。
【0046】
実施の形態2.
次に、図5乃至図8を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
実施の形態1の説明において記述した通り、HILSを用いて車両用制御装置(ECU)を評価する場合は、シミュレーションの実行に先立って、以下の作業を行う必要がある。
(1)仕様書に定められている事項から要検証事項を選択する作業。
(2)それぞれの要検証事項を検証するためのシミュレーションのパターンを決定する作業。
これらの作業は、通常、ECUの評価担当者によって手作業で行われており、評価時間の短縮および簡単化の妨げとなっている。
【0047】
また、ECUが仕様書の内容通りに動作するか否かをHILSを用いて評価する場合は、特定のRAM値(フラグの値など)を、デバッグ条件に応じた値に設定する必要が生ずる。ECUにおいて、フラグ値等のRAM値は、その内部処理の結果として設定される。従って、シミュレーションの過程でそれらのRAM値を所望の値に設定するためには、その設定を実現するための全ての条件を整えることが必要である。
【0048】
換言すると、HILSを用いたシミュレーションの過程で、ECUのRAM値を、単純にデバッグ条件に応じた値に書き換えた場合は、その書き換えの直後に、ECUの内部処理により、再びそのRAM値が書き換えられる事態が生じ、デバッグ条件に応じたシミュレーションが実行できない事態が生じ得る。このように、HILSを用いてECUを評価する場合、デバッグ条件に応じたシミュレーションを実行することは必ずしも容易ではない。
【0049】
本実施形態の評価方法は、HILSを用いたECUの評価に伴う上記の不都合の解消を目的としたものである。すなわち、本実施形態の評価方法は、上記(1)および(2)の作業の自動化を可能とし、更に、シミュレーション中におけるRAM値の直接書き換えを可能とすることで、HILSを用いたECUの評価を容易化しようとするものである。尚、本実施形態においても、評価の対象は、実施の形態1の場合と同様に、開発過程にあるECU10(内燃機関の制御装置)であるものとする。
【0050】
図5は、本実施形態の評価方法の概要を説明するためのブロック図である。尚、図5において、実施の形態1で説明した要素と同一物を表すブロックには、実施の形態1の場合と同一の符号を付している。
【0051】
図5において、Simulink仕様書30は、シミュリンクで書かれたECU10の仕様書である。Simulink仕様書30には、例えば、図1に示すような事項が書かれている。Simulink仕様書30は、ECU10の作成の基礎として用いられると共に、ECU10の評価のために、その内容がパーソナルコンピュータに読み込まれる。
【0052】
条件読み取りツール32は、Simulink仕様書30から、要検証事項を読み取るためのツール(ソフトウェア)である。条件読み取りツール32は、Simulink仕様書30の内容と同様に、パーソナルコンピュータに読み込まれている。条件読み取りツール32によれば、Simulink仕様書30に書かれている事項から、制御ロジックとして使用されている条件や、条件分岐文を読み取ることができる。
【0053】
デバッグ条件作成ツール34は、条件読み取りツール32によって読み取られた個々の要検証事項について、デバッグ条件を作成するためのツール(ソフトウェア)である。デバッグ条件作成ツール34は、Simulink仕様書30の内容や条件読み取りツール32と同様に、パーソナルコンピュータに読み込まれている。デバッグ条件作成ツール34によれば、個々の要検証事項を検証するために必要な必要十分なデバッグ条件を自動的に作成することができる。
【0054】
デバッグ条件出力ツール36は、デバッグ条件作成ツール34によって作成されたデバッグ条件を、リアルタイムシミュレータ12およびRAM値計測機器38に出力するためのツール(ソフトウェア)である。デバッグ条件出力ツール36は、Simulink仕様書30の内容や条件読み取りツール32などと同様に、パーソナルコンピュータに読み込まれている。本実施形態において作成されるデバッグ条件には、リアルタイムシミュレータ12が車両の状態を模擬するために必要とするパラメータ値(機関廻転数NEや、冷却水温THWなど)と、ECU10において実現されるべきRAM値(フラグ値など)とが含まれている。デバッグ条件出力ツール36は、それらのデバッグ条件のうち、パラメータ値をリアルタイムシミュレータ12に出力し、RAM値をRAM値計測機器38に出力する。
【0055】
RAM値計測機器38は、ECU10のRAM値を直接的に読み書きするための装置である。RAM値計測機器38によれば、評価対象のECU10内のRAM値を、デバッグ条件出力ツール36から供給されるRAM値に直接的に書き換えることができる。尚、図5に示す例では、RAM値計測機器38が、リアルタイムシミュレータ12とは別個の装置として表されているが、RAM値計測機器38は、リアルタイムシミュレータ12に内蔵されていてもよい。
【0056】
本実施形態において、ECU10は、リアルタイムシミュレータ12によるシミュレーションの実行中は、RAM値計測機器38により書き換えられたRAM値を、内部処理に応じた値に書き換えることなく維持することができるように構成されている。このため、図5に示す構成によれば、デバッグ条件作成ツール34によって作成されたデバッグ条件を、シミュレーションの実行中に、比較的容易にECU10に反映させることができる。
【0057】
図6は、上述した条件読み取りツール32、デバッグ条件作成ツール34、およびデバッグ条件出力ツール36の内容を詳細に説明するためのフローチャートである。
【0058】
図6において、符号40は、Simulink仕様書40に書かれている条件の1例を示すコンピュータ画面である。画面40に書かれている条件は、図1に示す事項と同一である。すなわち、その条件は、
「以下の条件全て成立でFlag2=ON(=1)
機関廻転数NE<800rpm
冷却水温THW≧80℃
Flag1=1」
という条件である。
【0059】
条件読み取りツール32によれば、パーソナルコンピュータに読み込まれているSimulink仕様書30の内容を検索して、その中から、画面40に表示されているような条件や、或いは他の条件若しくは条件分岐文を、要検証事項として読み取ることができる。
【0060】
デバッグ条件作成ツール34は、要検証事項として読み取られた個々の事項につき、その内容を検証するために実行すべきシミュレーションの条件、すなわち、デバッグ条件を作成する。要検証事項は、それぞれ、画面40(または図1)に示されるように、パラメータの大小関係を定める条件や、フラグの設定値に関する条件で構成されている。デバッグ条件作成ツール34は、それらの条件の正否の全てが検証できるようにデバッグ条件を作成する。
【0061】
より具体的には、デバッグ条件作成ツール34は、パラメータの大小関係については、原則として、以下の場合についてそれぞれシミュレーションが実行されるように、4通りのデバッグ条件を設定する。
▲1▼パラメータの大小関係についての条件が成立する場合。
▲2▼パラメータの大小関係についての条件が成立しない場合。
▲3▼パラメータの大小関係についての条件が成立から不成立に変化する場合。
▲4▼パラメータの大小関係についての条件が不成立から成立に変化する場合。
【0062】
デバッグ条件作成ツール34は、また、フラグの設定値に関する条件についても、原則として、以下に示す4通りのデバッグ条件を設定する。
▲1▼フラグ値についての条件が成立する場合。
▲2▼フラグ値についての条件が成立しない場合。
▲3▼フラグ値についての条件が成立から不成立に変化する場合。
▲4▼フラグ値についての条件が不成立から成立に変化する場合。
【0063】
従って、画面40に示される通り、要検証事項に、パラメータの大小関係を規定する2つの条件と、フラグ値に関する1つの条件とが含まれている場合、それぞれの条件について検証すべき場合の組み合わせにより、原則として、4×4×4=64通りのデバッグ条件がデバッグ条件作成ツール34により作成される。図6中に、デバッグ条件作成ツール34により作成されたデバッグ条件として例示されている4つの条件は、それら64通りのデバッグ条件の一部である。
【0064】
尚、上述したデバッグ条件の作成手法は、あくまでも例示であり、その作成手法はこれに限定されるものではない。例えば、上記の例では、パラメータの大小関係についての条件或いはフラグ値に関する条件が、成立から不成立に変化する場合と不成立から成立に変化する場合の双方につきデバッグ条件を作成することとしているが、パラメータやフラグの性質によっては、それらの一方についてはデバッグ条件の作成を省略することとしてもよい。
【0065】
デバッグ条件出力ツール36は、上記の如く作成された複数のデバッグ条件を、順次リアルタイムシミュレータ12およびRAM値計測機器38に向けて出力する。この際、デバッグ条件に含まれている条件のうち、機関廻転数NEや冷却水温THWなど、車両の制御に必要な条件として予め定められているものは、リアルタイムシミュレータ12に供給される。一方、デバッグ条件に含まれている条件のうち、車両制御に直接的には必要ないもの、つまり、本来はECU10の内部処理により設定されるべきRAM値に関するものは、RAM値計測機器38に供給される。
【0066】
デバッグ条件出力ツール36から、上記の如くデバッグ条件が出力されると、リアルタイムシミュレータ12は、個々のデバッグ条件に応じたシミュレーションを実行すべく、機関廻転数NEやAFM信号、或いは水温信号などの条件信号を生成してECU10に供給する。この際、ECU10には、RAM値計測機器38からデバッグ条件に合致したRAM値が条件信号の一部として供給される。その結果、ECU10のRAM値は、デバッグ条件に適合する値に書き換えられる。
【0067】
ECU10は、リアルタイムシミュレータ12およびRAM値計測機器38から上記の如く条件信号を受信すると、その条件信号に応じた検証用結果信号(アクチュエータ出力、RAM値)を生成する。つまり、HILSに組み込まれたECU10では、デバッグ条件出力ツール36からデバッグ条件が出力される毎に、個々のデバッグ条件に対応する検証用結果信号が生成される。
【0068】
本実施形態の評価方法では、このようにして生成された検証用結果信号が、全てのデバッグ条件毎に記録される。更に、その検証用結果信号が、仕様書の内容に合致しているか否かを判断することにより、ECU10が、仕様書の内容通りに作成されているか否かが判断される。そして、何れかのデバッグ条件につき、ECU10の動作が仕様書の内容に合致していないと判別された場合は、両者が合致するように、ECU10のハードウェア上、或いはソフトウェア上のバグが修正される。
【0069】
以上説明した通り、本実施形態の評価方法によれば、HILSを用いてECU10を評価するうえで必要となる要検証事項の決定、およびデバッグ条件の作成を、人手を介することなく、コンピュータに実行させることができる。このため、本実施形態の方法によれば、ECU10が仕様書の内容通りに作成されているか否かを判断するための評価を、短時間で、かつ、簡単に実行することができる。
【0070】
既述した通り、本実施形態では、リアルタイムシミュレータ12によるシミュレーションの実行中に、ECU10内のRAM値がRAM値計測機器38により書き換えられた場合は、そのRAM値がECU10の内部処理により再び書き換えられるのを防止している。以下、この機能を実現するために、リアルタイムシミュレータ12およびECU10においてそれぞれ実行されている処理の内容について説明する。
【0071】
図7は、上記の機能を実現するためにリアルタイムシミュレータ12が実行する一連の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図7に示す一連の処理では、先ず、リアルタイムシミュレータ12が新たなデバッグ条件を受信したか否かが判別される(ステップ100)。
【0072】
上記ステップ100の処理は、新たなデバッグ信号の受信が判定されるまで繰り返し実行される。そして、新たな条件信号の受信が判定されると、次に、そのデバッグ条件でのシミュレーションが開始されたことを表すべく、デバッグフラグがONとされる(ステップ102)。
【0073】
リアルタイムシミュレータ12では、次に、ECU10に向けて、デバッグ条件に適合した条件信号(パラメータ信号)が出力される(ステップ104)。
【0074】
次いで、ECU10により生成される検証用結果信号の記録が終了したか否かが判別される(ステップ106)。
本ステップ106において、検証用結果信号の記録が終了したか否かは、例えば、その記録の終了を意味する信号がHILS側から発せられたか否かに基づいて、或いは、その記録に要する予定の時間が経過したか否かに基づいて、更には、その記録の終了を意味する入力操作が評価担当者によってなされたか否かに基づいて判断することができる。
【0075】
上記ステップ106の処理は、検証用結果信号の記録が終了したと判別されるまで繰り返し実行される。そして、その記録が終了したと判定されると、今回のデバッグ条件でのシミュレーションが終了したことを表すべく、デバッグフラグがOFFとされる(ステップ108)。
【0076】
以上説明した通り、図7に示すルーチンによれば、リアルタイムシミュレータ12に新たなデバッグ条件が供給された後、そのデバッグ条件に対して、ECU10が生成する検証用結果信号が記録されるまでの間は、デバッグフラグをONとしておくことができる。
【0077】
図8は、シミュレーション中におけるRAM値の再書き換えを防止するためにECU10が実行するルーチンのフローチャートを示す。
図8に示すルーチンでは、先ず、デバッグフラグがONであるか否かが判別される(ステップ110)。
【0078】
その結果、デバッグフラグがONであると判別された場合は、リアルタイムシミュレータ12によるシミュレーションの実行中であり、未だ、新たなデバッグ条件に対する検証用結果信号の記録が終了していないと判断することができる。ECU10では、この場合、外部入力によるRAM値の書き換えが有効とされ(ステップ112)、かつ、内部処理によるRAM値の書き換えが禁止される(ステップ114)。
【0079】
上記の処理によれば、ECU10のRAM値は、検証用結果信号の記録が終わるまでは、内部処理の影響を受けることなく、RAM値計測機器38(図5参照)から供給される値、つまり、デバッグ条件に合致した値に維持される。このため、本実施形態の評価方法によれば、シミュレーションの実行時に、ECU10のRAM値を容易にデバッグ条件に合致させることができ、個々のデバッグ条件に対する正確な検証用結果信号を容易に計測し、かつ、記録することができる。
【0080】
図8に示すルーチン中、上記ステップ110において、デバッグフラグがONでないと判別された場合は、デバッグ条件に対する検証用結果信号の記録を行うべき状況が生じていないと判断することができる。つまり、検証用結果信号を取得するためにECU10の動作を規制する必要が生じていないと判断することができる。ECU10では、この場合、外部入力によるRAM値の書き換えが無効とされ(ステップ116)、かつ、内部処理によるRAM値の書き換えが許可される(ステップ118)。
【0081】
上記の処理によれば、検証用結果信号を記録する必要のないときは、ECU10のRAM値を、その内部処理により決められる値に設定することができる。このため、ECU10は、リアルタイムシミュレータ12によるシミュレーションの実行中であり、かつ、リアルタイムシミュレータ12の新たなデバッグ条件が供給された後、検証用結果信号が記録されるまでの間を除き、RAM値計測機器38等の外部機器に影響されることなく、通常の動作を行うことができる。
【0082】
ところで、上記の説明においては、シミュレーションの実行に伴ってECU10により生成される検証用結果信号が、Simulink仕様書30の内容と合致しているか否かに基づいてECU10を評価することとしているが、その評価の手法はこれに限定されるものではない。すなわち、本実施形態においても、ECU10の評価は、実施の形態1の場合と同様に、Simulink仕様書30の内容を実装したRPE20により生成される基準結果信号と、ECU10により生成される検証用結果信号との比較に基づいて行うこととしてもよい。
【0083】
また、上記の説明においては、ECU10により生成される検証用結果信号と、Simulink仕様書30の内容との比較を、開発者に手作業で実行させるか、或いはコンピュータに自動実行させるかにつき言及していないが、その作業は、何れの手法で実行させることとしてもよい。
その作業を手作業で行う場合は、評価担当者が、シミュレーションの結果得られた検証用結果信号と、Simulink仕様書30の内容とを目視により比較すればよい。また、上記の作業をコンピュータに実行させる場合は、シミュレーションの結果得られた検証用結果信号をコンピュータに記録させ、かつ、個々のデバッグ条件に対する結果としてSimulink仕様書30に定められている事項をコンピュータに読み取らせたうえで、それらの一致不一致をコンピュータに判断させればよい。
【0084】
【発明の効果】
この発明は以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
第1の発明によれば、制御装置試作ユニットが仕様書の内容に従って生成する基準結果信号と、評価の対象である車両用制御装置が生成する検証用結果信号とを比較するだけで、車両用制御装置が仕様書の内容通りに機能しているか否かを容易かつ正確に評価することができる。
【0085】
第2の発明によれば、仕様書がコンピュータ読み取り可能な言語で作成されているため、コンピュータに、その仕様書から要検証事項を読み取らせ、更に、個々の要検証事項の検証に必要なデバッグ条件を作成させることができる。そして、このようにして作成されたデバッグ条件に対応する条件信号を車両用制御装置に供給することで、その装置の評価を容易かつ正確に行うことができる。
【0086】
第3の発明によれば、条件信号の供給の結果として車両用制御装置が生成する検証用結果信号が、仕様書の定める仕様と一致しているか否かに基づいて、車両用制御装置を評価することができる。
【0087】
第4の発明によれば、条件信号の供給の結果として制御装置試作ユニットが生成する基準結果信号と、条件信号の供給の結果として車両用制御装置が生成する検証用結果信号とが一致しているか否かに基づいて、車両用制御装置を評価することができる
【0088】
第5の発明によれば、車両用制御装置の動作を評価する際に、車両用制御装置内部のRAM値を条件信号に含まれるRAM値に書き換えることができると共に、そのRAM値がその後車両用制御装置の内部処理により書き換えられるのを禁止することができる。このため、本発明によれば、車両用制御装置の評価時に、特定のRAM値を所望の値にするための全条件を成立させることなく、簡易にその評価を行うことができる。
【0089】
第6の発明によれば、仕様書がシミュリンク言語で作成されるため、その仕様書の内容を人間が理解することができ、かつ、その内容をコンピュータに実行させることができる。
【0090】
第7の発明によれば、制御装置試作ユニットによって生成される基準結果信号と、車両用制御装置によって生成される検証用結果信号との比較を、コンピュータに実行させることができる。このため、本発明によれば、車両用制御装置の評価に要する手作業を大幅に軽減することができる。
【0091】
第8の発明によれば、仕様書の内容から読み取られる基準の結果と、車両用制御装置によって生成される検証用結果信号との比較を、コンピュータに実行させることができる。このため、本発明によれば、車両用制御装置の評価に要する手作業を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1において評価の対象とされる車両用制御装置の仕様書の一部である。
【図2】実施の形態1で用いられるHILS(Hardware In the Loop Simulation)の概要を説明するための図である。
【図3】実施の形態1で用いられる車両用制御装置のデバッグ手順を説明するためのフローチャートである。
【図4】図3に示す工程S1において、RPE(Rapid Prototyping ECU)を含むように準備されるHILSの概要を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態2の評価方法の概要を説明するためのブロック図である。
【図6】図5に示す条件読み取りツール、デバッグ条件作成ツール、およびデバッグ条件出力ツールの内容を説明するためのフローチャートである。
【図7】実施の形態2において、シミュレーション中におけるRAM値の再書き換えを防止するために、リアルタイムシミュレータによって実行される一連の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図8】実施の形態2において、シミュレーション中におけるRAM値の再書き換えを防止するために、評価対象のECUによって実行される一連の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
10 ECU(Electronic Control Unit)
12 リアルタイムシミュレータ
30 Simulink仕様書
32 条件読み取りツール
34 デバッグ条件作成ツール
38 RAM値計測機器
Claims (8)
- コンピュータが実行可能な言語で仕様書を作成するステップと、
前記仕様書の内容が実装され、かつ、その内容が実行可能な制御装置試作ユニットに所定の条件信号を供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記制御装置試作ユニットが生成する基準結果信号を記録するステップと、
前記仕様書に基づいて車両用制御装置を作成するステップと、
前記条件信号を前記車両用制御装置に供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記車両用制御装置が生成する検証用結果信号を記録するステップと、
前記基準結果信号と前記検証用結果信号とが一致しているか否かを判断するステップと、
を含むことを特徴とする車両用制御装置の評価方法。 - コンピュータが読み取り可能な言語で仕様書を作成するステップと、
前記仕様書に基づいて車両用制御装置を作成するステップと、
前記仕様書の内容から要検証事項をコンピュータに読み取らせるステップと、前記要検証事項を検証するためのデバッグ条件をコンピュータに作成させるステップと、
前記デバッグ条件に対応する条件信号を生成するステップと、
前記条件信号を用いて前記車両用制御装置の動作を評価するステップと、
を含むことを特徴とする車両用制御装置の評価方法。 - 前記車両用制御装置の動作を評価するステップは、
前記条件信号を前記車両用制御装置に供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記車両用制御装置が生成する検証用結果信号を計測するステップと、
前記検証用結果信号が、前記仕様書の定める仕様と一致しているか否かを判断するステップと、
を含むことを特徴とする請求項2記載の車両用制御装置の評価方法。 - 前記車両用制御装置の動作を評価するステップは、
前記条件信号を制御装置試作ユニットに供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記制御装置試作ユニットが生成する基準結果信号を記録するステップと、
前記条件信号を前記車両用制御装置に供給するステップと、
前記条件信号の供給の結果として前記車両用制御装置が生成する検証用結果信号を記録するステップと、
前記基準結果信号と前記検証用結果信号とが一致しているか否かを判断するステップと、
を含むことを特徴とする請求項2記載の車両用制御装置の評価方法。 - 前記条件信号は、前記車両用制御装置の内部処理により演算されるべきRAM値を含み、
前記車両用制御装置の動作を評価するステップは、
前記車両用制御装置内部のRAM値を、前記条件信号に含まれるRAM値に書き換えるステップと、
書き換えられたRAM値が、前記車両用制御装置の内部処理により再び書き換えられるのを禁止するステップと、
を含むことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項記載の車両用制御装置の評価方法。 - 前記言語はシミュリンクであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の車両用制御装置の評価方法。
- 前記基準結果信号を記録するステップは、当該基準結果信号をコンピュータに記録させるステップを含み、
前記検証用結果信号を記録するステップは、当該検証用結果信号をコンピュータに記録させるステップを含み、
前記基準結果信号と前記検証用結果信号とが一致しているか否かを判断するステップは、当該判断をコンピュータに実行させるステップを含むことを特徴とする請求項1または4記載の車両用制御装置の評価方法。 - 前記検証用結果信号が、前記仕様書の定める仕様と一致しているか否かを判断するステップは、
前記検証用結果信号と対比されるべき基準の結果を前記仕様書からコンピュータに読み取らせるステップと、
読み取られた基準の結果と前記検証用結果信号とが一致しているか否かをコンピュータに判断させるステップとを含むことを特徴とする請求項3記載の車両用制御装置の評価方法。
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