JP2004019506A - 密閉型回転圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】密閉容器内を吐出圧力より低い圧力とし、圧縮室からローラ内面に漏れ込む冷媒ガスの軸受摺動部への浸入を防ぎ、確実に軸受摺動部へ給油できる高性能で信頼性の高い密閉型回転圧縮機を提供することにある。
【解決手段】密閉容器内に電動要素とその電動要素に駆動軸を介して連結する回転圧縮要素とを備え、駆動軸は、外側は潤滑油を通過し内側はローラの内周側に漏れた冷媒ガスが通過する部分を少なくとも備える貫通孔を有する。
【選択図】 図3
【解決手段】密閉容器内に電動要素とその電動要素に駆動軸を介して連結する回転圧縮要素とを備え、駆動軸は、外側は潤滑油を通過し内側はローラの内周側に漏れた冷媒ガスが通過する部分を少なくとも備える貫通孔を有する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にヒートポンプ装置及び冷凍・空調システムに関し、特に、当該装置及びシステムに適用される密閉型回転圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、冷凍・空調システム等に用いられているロータリ圧縮機は、ローラに押圧するベーンの背圧を高圧とする為に密閉容器内を吐出圧力とする場合が多い。このような場合、ローラの内周面側空間から吸入室内に差圧によって漏れ込む油が過剰となり加熱損失等による圧縮機の性能低下や電動要素のコイル温度上昇による信頼性低下の問題がある。
【0003】
また、地球温暖化防止の観点から地球温暖化係数が小さい二酸化炭素等を冷媒で使用する場合、通常、吐出圧力が約10MPaと高圧になるので密閉容器内を吐出圧力にすると耐圧強化のため密閉容器の肉厚が厚くなり圧縮機の大型化や高コスト化が問題となる。
【0004】
以上の問題に対して、密閉容器内を吐出圧力以下としたロータリ圧縮機を開示する従来技術として、特開2001−73977号公報がある。
【0005】
特開2001−73977号公報に開示されたロータリ圧縮機は、密閉容器の内部空間を低圧または中間圧とし、二つの圧縮要素のうち低段側圧縮要素を中間仕切板の上側に配置すると供に、クランク軸に設けた上下偏心部のオイル溝は中間仕切板へオイルが流れ込む方向に傾きを配置する。さらに、中間仕切板にガス抜き穴を水平方向に形成し、高段圧縮要素のローラ内側へリークしたガスをこのガス抜き穴から排出してリークガスによる各摺動部に対する潤滑オイル供給の阻害を防止するといったものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来技術のようにガス抜き穴を中間仕切板に水平に形成するとクランク軸の回転による遠心作用により潤滑オイルもこのガス抜き穴から排出される可能性がある。特に上部支持部材への潤滑オイルの供給量が少なくなり潤滑不良を起こすことが考えられる。 本発明の目的は、密閉容器内を吐出圧力より低い圧力の密閉容器内に、圧縮室からローラ内側に漏れ込む冷媒ガスが軸受摺動部に浸入することを防ぎ、確実に軸受摺動部へ給油できる高性能で信頼性の高い密閉型回転圧縮機及びその密閉型回転圧縮機を有する冷凍サイクル装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、密閉容器内に電動要素とその電動要素に駆動軸を介して連結する回転圧縮要素とを備え、前記密閉容器の底部に溜まる潤滑油を前記回転圧縮要素の摺動部に給油する給油機構を有する密閉型回転圧縮機において、前記回転圧縮要素は、前記駆動軸を支持する二つの軸受と、その軸受間に設けられたシリンダとを有し、前記駆動軸は、前記シリンダ内で嵌合されたローラを公転運動させる偏心部と、外側は前記潤滑油を通過し内側は前記ローラの内周側に漏れた冷媒ガスが通過する部分を少なくとも備える貫通孔を有することにより達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成等を図に示す実施形態によって詳細に説明する。本発明の一実施形態に係る揺動ピストン形2段圧縮機について図1から図4を用いて説明する。
【0009】
図1及び図2において、圧縮要素1は、低圧用圧縮要素2と高圧用圧縮要素3からなる。駆動軸4の軸支持を兼ねた主軸受5と副軸受6及び仕切板7は各圧縮要素のシリンダ2a、3aの両端開口部を閉塞する。シリンダ2a、3aは中央部に円筒状内周面2b、3bを有しており、主軸受5と副軸受6は、駆動軸4の回転軸がシリンダ2a、3aの円筒状内周面2b、3bの中心軸と一致する様にシリンダ2a、3aに固定されている。
【0010】
圧縮要素1は駆動軸4を介して電動要素8に直結していて電動要素8は回転子9と固定子10からなる。駆動軸4には、シリンダ2a、3aの円筒状内周面2b、3bに対応する部分に偏心部4a、4bが設けられている。偏心部それぞれに揺動ピストン2c、3cのローラ部2c1、3c1の円筒状内周面が接触しながら、ローラ部2c1、3c1が回転可能に嵌入されている。ローラ部2c1、3c1の円筒状外周面とシリンダ2a、3aの円筒状内周面2b、3bとの間の隙間は微少になる様に各部寸法が決められている。
【0011】
ローラ部2c1、3c1の円筒状外周面にはベーン部2c2、3c2が設けられている。シリンダ2a、3aの円筒状内周面2b、3bの外側に円筒状内周面2b、3bの中心軸と平行な中心軸を持つ円筒孔部2d、3dが設けられている。
【0012】
円筒孔部2d、3dのシリンダ2a、3a中心側とその反対側とは、それぞれシリンダ2a、3aの円筒状内周面2b、3bと円筒孔部2d、3dの外側に設けた別の孔部2e、3eに連通している。
【0013】
ベーン部2c2、3c2は円筒孔部2d、3dと孔部2e、3eとに挿入されているが、ベーン部2c2、3c2と円筒孔部2d、3dとの間には、ベーン部2c2、3c2の平面部に摺動可能に当接する平面部と円筒孔部2d、3dの円筒面部に摺動可能に当接する円筒面部とを有する滑動部材2f、3fがベーン部2c2、3c2をはさみ込んでいる。この結果、ベーン部2c2、3c2は円筒孔部2d、3dの中心軸に向かう進退運動と中心軸廻りの揺動運動を行う。具体的には、ベーン部2c2、3c2が常にシリンダ2a、3aの円筒孔部2d、3dの中心軸方向を向く様に偏心部4a、4bの中心軸廻りに若干の角度だけ揺動運動を行いながら、ローラ部2c1、3c1の中心が公転運動をする。ベーン部2c2、3c2の先端部は孔部2e、3eの中で運動し、シリンダ2a、3aと干渉することはない。
【0014】
以上の構成とすることにより、電動要素8により駆動軸4が回転すると、揺動ピストン2c、3cは偏心部4a、4bとともに、シリンダ2a、3a内で揺動を伴う公転運動を行う。
【0015】
ベーン部2c2、3c2の摺動については、ベーン部2c2、3c2はシリンダ2a、3aの円筒孔部2d、3dの中心軸に向かった進退運動とその中心軸廻りの揺動運動を行う。ベーン部2c2、3c2とシリンダ2a、3aの円筒孔部2d、3dとの間の隙間のシールは、滑動部材2f、3fが挿入されることにより保たれる。
【0016】
以上述べたように、シリンダ2a、3a、揺動ピストン2c、3c、主軸受5、副軸受6、仕切板7及び滑動部材2f、3fとにより密閉空間である圧縮室11と吸入空間である吸入室12が形成され、電動要素8による駆動軸4の回転に伴い図2の様にそれらの容積の増減を繰り返す。
【0017】
冷媒ガスは、密閉容器13に取り付けられた低圧用圧縮要素2の吸入パイプ14から吸入通路14aを通って低圧圧縮要素2のシリンダ2a内に入り圧縮される。圧縮された冷媒ガスは副軸受6に形成された吐出ポート15から吐出され、吐出通路16を通って密閉容器13内に吐き出される。その後、吐出された冷媒ガスは吐出パイプ17から外部に出て中間冷却器18に入る。中間冷却器18により放熱して冷やされた後、冷媒ガスは高圧用圧縮要素3の吸入パイプ19から吸入通路14aを通って、高圧用圧縮要素3のシリンダ3a内に入り圧縮される。圧縮された冷媒ガスは、主軸受5に設けられた吐出ポート20から吐出された後、吐出室21に入り吐出パイプ22から密閉容器13の外部に設けられる冷凍サイクルに流出する。
【0018】
このように本実施例では特に、低圧用圧縮要素2の吐出ガスを密閉容器13内に吐き出す構造としており、密閉容器13内は低圧用圧縮要素2の吸入圧力と高圧用圧縮要素3の吐出圧力との中間圧力になる。密閉容器13内を高圧用圧縮要素の吐出圧力より低い圧力に保持することにより以下のような利点がある。
(1)圧縮された高温の冷媒ガスによる電動要素8の加熱が少ない。低温の冷媒ガスが電動要素8を冷却するため、回転子9、固定子10の温度が低下し、電動要素8の効率が向上する。
(2)油と相溶性のある冷媒では、油中に溶解する冷媒ガスの割合が少なくなり、軸受等での冷媒ガスの発泡現象が起こりにくく、圧縮機の信頼性が向上する。
(3)密閉容器13の耐圧を低くでき、密閉容器13の薄肉・軽量化を図ることができる。
【0019】
また、本実施例に示した揺動ピストン形圧縮機は、ローラとベーンを一体化しているので、ロータリ圧縮機のようにローラにベーンを押圧するためにベーンに高圧の背圧をかける必要が無く、密閉容器13内を吐出圧力以下にした構造に適用し易い。
【0020】
次に圧縮機構部の給油機構について説明する。図3において、給油ピース23は駆動軸4の下端に装着されていて、密閉容器13内の潤滑油24中に浸っている。密閉容器13内の各摺動部、主軸受5、福軸受6、及びローラ部2c、3c等への給油は、駆動軸4の回転による遠心ポンプ作用により、密閉容器13の底部に貯溜された潤滑油24が駆動軸4に設けられた貫通孔4cより小径の開口を有する給油ピース23より吸引され、駆動軸4に設けられた給油孔25、26、27、28から駆動軸4の外周面に導かれる。主軸受5へはスパイラル溝29により潤滑油が供給される。偏心部4a、4b及び副軸受6へはそれぞれの外周面に設けられた溝(図示せず)等により潤滑油が供給され、各摺動部の潤滑がなされる。
【0021】
一方、高圧用圧縮要素3の偏心部4bを潤滑した潤滑油24の一部は、主軸受5もしくは仕切板7のローラ部3c1内周側と吸入室12を交互に行き来する位置に設けられた油ポケット34により吸入室12に供給され、シリンダ3a内の内部潤滑を行う。低圧用圧縮要素2の偏心部4aを潤滑した潤滑油24の一部は、差圧によってローラ部2c1と副軸受6及び仕切板7との微少な隙間を通って吸入室12に供給される。
【0022】
ここで、特に高圧用圧縮要素3では圧縮された冷媒ガスが高圧なので、圧縮室11からローラ部3c1の内周面側へ冷媒ガスが漏れ込むことが生じやすい。本発明の一実施形態において、駆動軸4に圧入等により取り付けられ駆動軸4の回転中心近傍まで延びたガス排出管30、31、32が、漏れ込んだ冷媒ガスを貫通孔4cに導いて、導かれた冷媒ガスは密閉容器13内に開放された貫通孔4cを通じて排出される。
【0023】
遠心ポンプ作用を利用した場合、貫通孔4c内の油面は図3及び図4に示すような放物線となる。本実施の形態においては、ガス排出管30、31は貫通孔4c内の油面を通り抜けて駆動軸4の回転中心近傍まで伸びているため、特に底部から離れた位置にあるガス排出管30の中に潤滑油24が入ってくることがない。その点、圧縮要素を複数備えた場合、潤滑油が貯留する底部から相対的に離れた位置に高段側の圧縮要素を設けるときに有効である。駆動軸4の回転による遠心力によって潤滑油と冷媒ガスの密度差から、密度の高い潤滑油は外側に、密度の低い冷媒ガスは内側に位置するようになるので、ほぼローラ部3c1内周面に漏れ込んだ冷媒ガスのみをガス排出管30、31から貫通孔4cへ抜き密閉容器13へ確実に排出できる。
【0024】
また、圧縮機の運転条件によって密閉容器13内の潤滑油24の液面が変化することが考えられる。例えば遠心ポンプ作用による給油量が少なくなる低速域ではガス排出管30、31、32が潤滑油24によって満たされる場合が起こりうる。このような場合でも貫通孔4c内の潤滑油24は駆動軸4の回転によって図4に示す放物線の圧力分布を示し、貫通孔4cの半径rが大きくなるほど圧力pが高くなるので、潤滑油24は流入口の圧力が高い給油孔30、31から駆動軸4の外周面に供給され、ローラ部3c2内周面の漏れ込んだ冷媒ガスは流出口の圧力が低い駆動軸4の回転中心近傍に開口したガス排出管から気泡となって排出される。
【0025】
次にガス排出管30、31、32の一例について、図5、図6を用いて説明する。説明する構成とすることによりガス排出管の取り付けが容易となり組み立て性が向上する。ガス排出管30、31、32を構成するために、駆動軸4とは別部材であるガス排出ピース33を用いる。ガス排出ピース33は大径円筒部33aと小径円筒部33bとを備える。大径円筒部33aは、ガス排出ピース33自身が挿入される駆動軸4の孔30a、31a、32aより若干径が大きい。小径円筒部33bは、大径円筒部33aより径が小さい。大径円筒部33aにはストッパ33cとスリット部33dを有している。
【0026】
ガス排出ピース33は図6に示すように、孔30a、31a、32aに挿入するとき、大径円筒部33bのスリット部33dが孔30a、31a、32aの中で弾性変形する。この変形による突っ張り力により、ガス排出ピース33は孔30a、31a、32aに固定される。また、ストッパ33cは孔30a、31a、32aを通過中は図のように弾性変形し、孔30a、31a、32aの駆動軸4中心側の開口部を通過するとこの変形がもとに戻り、駆動軸4の回転による遠心力が働いても抜けないようになっている。このように、ガス排出ピース33を用いることで、ガス排出管30、31、32は、駆動軸4の中心近傍までその開口部を容易に延長することができる。
【0027】
次に給油孔25、26、27と孔30a、31a、32aに位置について説明する。図7(a)に低圧用圧縮要素2(図1のA−A断面)の駆動軸4の一回転中に偏心部に働く荷重の計算結果を示す。図面はA−A断面を副軸受6側から見た図である。計算の条件を示すと、作動流体は二酸化炭素で、圧力条件は吸入圧力Ps=6.8MPa、吐出圧力Pd=12.5MPaである。偏心部4aには駆動軸の一回転中に、図のような偏心部4a中心に向かう荷重が作用する。これにより駆動軸4には図7(b)に示すような圧縮応力と引張応力が働く。この時、引張応力側(図7(b)中の駆動軸4における左上方)に給油孔や孔があると応力集中により駆動軸4の破壊が起こりやすい。本発明の一実施形態として、圧縮応力側に給油孔25、26、27及び孔30a、31a、32aを設けるのが望ましい。
【0028】
以上の説明により、密閉容器内を吐出圧力以下に保持したとき、高圧用圧縮要素3のローラ部3c1内周面側に冷媒ガスが漏れ込んでも、簡単な構造で軸受摺動部に漏れ込んだ冷媒ガスが浸入することなく、駆動軸4内部の貫通孔4cから密閉容器13内に排出できる。そのため軸受摺動部やシリンダ3a内部へ安定した給油が可能となり、高性能で高信頼性の密閉型回転圧縮機を提供することができる。
【0029】
更に、給油孔26、27、28や孔30a、31a、32aを駆動軸4の圧縮応力が作用する側に設けると、駆動軸4に作用する荷重が大きくなる二酸化炭素のような高圧冷媒に適用した場合においても信頼性を確保できる。
【0030】
次に、本発明の他の実施形態を図8に示す。ここで図1乃至図7と同一符号を付したものは、同一部品であり同一の作用をなす。図8において、圧縮動作は図1乃至図7に示したものと同じであるが、給油機構が異なる。以下に本発明の他の実施形態の給油機構を説明する。
【0031】
駆動軸4の回転による遠心ポンプ作用により、密閉容器13の底部に貯留された潤滑油24は、駆動軸4の給油口4dより小径の開口を有する給油ピース23より吸引される。給油通路35、36から駆動軸4の外周面に潤滑油24は導かれる。主軸受5へ潤滑油を供給するためには、スパイラル溝29に潤滑油を供給することで潤滑油が主軸受5内に供給される。偏心部4a、4b及び副軸受6へは外周面に形成された溝(図示せず)等に潤滑油を供給することで各摺動部の潤滑がなされる。
【0032】
一方、高圧用圧縮要素3の偏心部4bを潤滑した潤滑油24の一部は、主軸受5もしくは仕切板7の端面上であって、ローラ部3c1内周面側と吸入室12を交互に行き来する位置に設けられた油ポケット34により吸入室12に供給され、シリンダ3a内の内部潤滑を行う。低圧用圧縮要素2の偏心部4aを潤滑した潤滑油24の一部は、差圧によってローラ部2c1と副軸受6及び仕切板7との微少な隙間を通って吸入室12に供給される。
【0033】
ここで、高圧用圧縮要素3では圧縮室11からローラ部3c1の内周面側へ冷媒ガスが漏れ込む。そして、この冷媒ガスは駆動軸4の中心近傍に設けられたガス排出孔37から貫通孔4cを通って密閉容器13の内部へ排出される。このようにガス排出孔37と給油通路35、36を分離し、ガス排出孔37を駆動軸4の内側に給油通路35、36を駆動軸4の外側に設けているので、密度の重い潤滑油24は駆動軸4の回転による遠心力で駆動軸4の外周面に向かい、密度の軽い冷媒ガスは駆動軸4中心のガス排出孔37に向かうようになり、ローラ部3c1内周面に漏れ込んだ冷媒ガスをガス排出孔37から密閉容器13へ確実に排出できる。
【0034】
以上の構成とすることにより、密閉容器13内を吐出圧力以下に保持し、高圧用圧縮要素3のローラ部3c1内周面に漏れ込んだ冷媒ガスが簡単な構造で軸受摺動部に浸入することなく、駆動軸4内部の貫通孔4cから密閉容器13内に排出できる。そのため軸受摺動部やシリンダ3a内部へ安定した給油が可能となり、高性能で高信頼性の密閉型回転圧縮機を提供することができる。更に駆動軸4以外に部品を使うことがないので、部品数や組み立て行程が少なくなり低コスト化につながる。
【0035】
次に、本発明の一実施形態を適用した2段圧縮可能な密閉型回転圧縮機をヒートポンプ式給湯機に適用した場合における冷凍サイクルの構成を、図9を用いて説明する。本発明の一実施形態を適用した密閉型回転圧縮機38に設けられた低圧用圧縮要素2で中間圧力まで圧縮された冷媒ガスは中間冷却器38aで冷却された後、高圧用圧縮要素3で吐出圧力まで圧縮される。吐出パイプ22から熱交換器39に流入した圧縮冷媒ガスは、水通路40内の水と熱交換する。その後膨張弁41で冷媒ガスは減圧され、蒸発器ファン44aからの送風を受ける蒸発器42で吸熱、ガス化された後、吸入パイプ14を経て密閉型回転圧縮機38に吸入される。ここで図9に示したヒートポンプ式給湯機は本発明の密閉型回転圧縮機を搭載しているので、エネルギ効率に優れたヒートポンプ式給湯機得られる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態では、2段圧縮機を用いて説明したが、単段圧縮機にも容易に適用でき、密閉容器内を低圧用圧縮要素2の吸入圧力としても同様の効果が得られる。また、ヒートポンプ装置の他に冷凍空調装置にも適用可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、軸受摺動部やシリンダ3a内部へ安定した給油が可能となり、高性能で高信頼性の密閉型回転圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係わる揺動ピストン形2段圧縮機の縦断面図。
【図2】図1のA−A(A‘−A’)断面において駆動軸を90°ずつ回転させた圧縮動作の説明図。
【図3】図1で説明した揺動ピストン形2段圧縮機の給油機構拡大図。
【図4】図1で説明した揺動ピストン形圧縮機の給油機構が潤滑油で満たされた場合の給油機能説明図。
【図5】本発明の一実施形態に係わるガス排出ピース構造図。
【図6】本発明の一実施形態に係わるガス排出ピースの取り付け方法説明図。
【図7】本発明の一実施形態に係わる偏心部の作用する荷重方向と給油孔および孔の位置説明図。
【図8】本発明の他の実施形態に係わる揺動ピストン型2段圧縮機の給油機構拡大図。
【図9】本発明における密閉型回転圧縮機を搭載したヒートポンプ式給湯器を示す図。
【符号の説明】
1…圧縮要素、2…低圧用圧縮要素、2a…シリンダ、2b…円筒状内周面、2c…揺動ピストン、2c1…ローラ部、2c2ベーン部、2d…円筒孔部、2e…孔部、2f…活動部材、3…低圧用圧縮要素、3a…シリンダ、3b…円筒状内周面、3c…揺動ピストン、3c1…ローラ部、3c2ベーン部、3d…円筒孔部、3e…孔部、3f…活動部材、4…駆動軸、4a、4b…偏心部、4c…貫通孔、4d…給油口、5…主軸受、6…副軸受、7…仕切板、8…電動要素、9…回転子、10…固定子、11…圧縮室、12…吸入室、13…密閉容器、14…吸入パイプ、14a…吸入通路、15…吐出ポート、16…吐出通路、17…吐出パイプ、18…中間冷却器、19…吸入パイプ、19a…吸入通路、20…吐出ポート、21…吐出室、22…吐出パイプ、23…給油ピース、24…潤滑油、25、26、27、28…給油孔、29…スパイラル溝、30、31、32…ガス排出管、30a、31a、32a…孔、33…ガス排出ピース、33a…大径円筒部、33b…小径円筒部、33c…ストッパ、33d…スリット、34…油ポケット、35、36…給油通路、37…ガス排出孔、38…密閉型回転圧縮機、39…熱交換器、40…水通路、41…膨張弁、42…蒸発器、42a…蒸発器ファン。
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にヒートポンプ装置及び冷凍・空調システムに関し、特に、当該装置及びシステムに適用される密閉型回転圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、冷凍・空調システム等に用いられているロータリ圧縮機は、ローラに押圧するベーンの背圧を高圧とする為に密閉容器内を吐出圧力とする場合が多い。このような場合、ローラの内周面側空間から吸入室内に差圧によって漏れ込む油が過剰となり加熱損失等による圧縮機の性能低下や電動要素のコイル温度上昇による信頼性低下の問題がある。
【0003】
また、地球温暖化防止の観点から地球温暖化係数が小さい二酸化炭素等を冷媒で使用する場合、通常、吐出圧力が約10MPaと高圧になるので密閉容器内を吐出圧力にすると耐圧強化のため密閉容器の肉厚が厚くなり圧縮機の大型化や高コスト化が問題となる。
【0004】
以上の問題に対して、密閉容器内を吐出圧力以下としたロータリ圧縮機を開示する従来技術として、特開2001−73977号公報がある。
【0005】
特開2001−73977号公報に開示されたロータリ圧縮機は、密閉容器の内部空間を低圧または中間圧とし、二つの圧縮要素のうち低段側圧縮要素を中間仕切板の上側に配置すると供に、クランク軸に設けた上下偏心部のオイル溝は中間仕切板へオイルが流れ込む方向に傾きを配置する。さらに、中間仕切板にガス抜き穴を水平方向に形成し、高段圧縮要素のローラ内側へリークしたガスをこのガス抜き穴から排出してリークガスによる各摺動部に対する潤滑オイル供給の阻害を防止するといったものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来技術のようにガス抜き穴を中間仕切板に水平に形成するとクランク軸の回転による遠心作用により潤滑オイルもこのガス抜き穴から排出される可能性がある。特に上部支持部材への潤滑オイルの供給量が少なくなり潤滑不良を起こすことが考えられる。 本発明の目的は、密閉容器内を吐出圧力より低い圧力の密閉容器内に、圧縮室からローラ内側に漏れ込む冷媒ガスが軸受摺動部に浸入することを防ぎ、確実に軸受摺動部へ給油できる高性能で信頼性の高い密閉型回転圧縮機及びその密閉型回転圧縮機を有する冷凍サイクル装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、密閉容器内に電動要素とその電動要素に駆動軸を介して連結する回転圧縮要素とを備え、前記密閉容器の底部に溜まる潤滑油を前記回転圧縮要素の摺動部に給油する給油機構を有する密閉型回転圧縮機において、前記回転圧縮要素は、前記駆動軸を支持する二つの軸受と、その軸受間に設けられたシリンダとを有し、前記駆動軸は、前記シリンダ内で嵌合されたローラを公転運動させる偏心部と、外側は前記潤滑油を通過し内側は前記ローラの内周側に漏れた冷媒ガスが通過する部分を少なくとも備える貫通孔を有することにより達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成等を図に示す実施形態によって詳細に説明する。本発明の一実施形態に係る揺動ピストン形2段圧縮機について図1から図4を用いて説明する。
【0009】
図1及び図2において、圧縮要素1は、低圧用圧縮要素2と高圧用圧縮要素3からなる。駆動軸4の軸支持を兼ねた主軸受5と副軸受6及び仕切板7は各圧縮要素のシリンダ2a、3aの両端開口部を閉塞する。シリンダ2a、3aは中央部に円筒状内周面2b、3bを有しており、主軸受5と副軸受6は、駆動軸4の回転軸がシリンダ2a、3aの円筒状内周面2b、3bの中心軸と一致する様にシリンダ2a、3aに固定されている。
【0010】
圧縮要素1は駆動軸4を介して電動要素8に直結していて電動要素8は回転子9と固定子10からなる。駆動軸4には、シリンダ2a、3aの円筒状内周面2b、3bに対応する部分に偏心部4a、4bが設けられている。偏心部それぞれに揺動ピストン2c、3cのローラ部2c1、3c1の円筒状内周面が接触しながら、ローラ部2c1、3c1が回転可能に嵌入されている。ローラ部2c1、3c1の円筒状外周面とシリンダ2a、3aの円筒状内周面2b、3bとの間の隙間は微少になる様に各部寸法が決められている。
【0011】
ローラ部2c1、3c1の円筒状外周面にはベーン部2c2、3c2が設けられている。シリンダ2a、3aの円筒状内周面2b、3bの外側に円筒状内周面2b、3bの中心軸と平行な中心軸を持つ円筒孔部2d、3dが設けられている。
【0012】
円筒孔部2d、3dのシリンダ2a、3a中心側とその反対側とは、それぞれシリンダ2a、3aの円筒状内周面2b、3bと円筒孔部2d、3dの外側に設けた別の孔部2e、3eに連通している。
【0013】
ベーン部2c2、3c2は円筒孔部2d、3dと孔部2e、3eとに挿入されているが、ベーン部2c2、3c2と円筒孔部2d、3dとの間には、ベーン部2c2、3c2の平面部に摺動可能に当接する平面部と円筒孔部2d、3dの円筒面部に摺動可能に当接する円筒面部とを有する滑動部材2f、3fがベーン部2c2、3c2をはさみ込んでいる。この結果、ベーン部2c2、3c2は円筒孔部2d、3dの中心軸に向かう進退運動と中心軸廻りの揺動運動を行う。具体的には、ベーン部2c2、3c2が常にシリンダ2a、3aの円筒孔部2d、3dの中心軸方向を向く様に偏心部4a、4bの中心軸廻りに若干の角度だけ揺動運動を行いながら、ローラ部2c1、3c1の中心が公転運動をする。ベーン部2c2、3c2の先端部は孔部2e、3eの中で運動し、シリンダ2a、3aと干渉することはない。
【0014】
以上の構成とすることにより、電動要素8により駆動軸4が回転すると、揺動ピストン2c、3cは偏心部4a、4bとともに、シリンダ2a、3a内で揺動を伴う公転運動を行う。
【0015】
ベーン部2c2、3c2の摺動については、ベーン部2c2、3c2はシリンダ2a、3aの円筒孔部2d、3dの中心軸に向かった進退運動とその中心軸廻りの揺動運動を行う。ベーン部2c2、3c2とシリンダ2a、3aの円筒孔部2d、3dとの間の隙間のシールは、滑動部材2f、3fが挿入されることにより保たれる。
【0016】
以上述べたように、シリンダ2a、3a、揺動ピストン2c、3c、主軸受5、副軸受6、仕切板7及び滑動部材2f、3fとにより密閉空間である圧縮室11と吸入空間である吸入室12が形成され、電動要素8による駆動軸4の回転に伴い図2の様にそれらの容積の増減を繰り返す。
【0017】
冷媒ガスは、密閉容器13に取り付けられた低圧用圧縮要素2の吸入パイプ14から吸入通路14aを通って低圧圧縮要素2のシリンダ2a内に入り圧縮される。圧縮された冷媒ガスは副軸受6に形成された吐出ポート15から吐出され、吐出通路16を通って密閉容器13内に吐き出される。その後、吐出された冷媒ガスは吐出パイプ17から外部に出て中間冷却器18に入る。中間冷却器18により放熱して冷やされた後、冷媒ガスは高圧用圧縮要素3の吸入パイプ19から吸入通路14aを通って、高圧用圧縮要素3のシリンダ3a内に入り圧縮される。圧縮された冷媒ガスは、主軸受5に設けられた吐出ポート20から吐出された後、吐出室21に入り吐出パイプ22から密閉容器13の外部に設けられる冷凍サイクルに流出する。
【0018】
このように本実施例では特に、低圧用圧縮要素2の吐出ガスを密閉容器13内に吐き出す構造としており、密閉容器13内は低圧用圧縮要素2の吸入圧力と高圧用圧縮要素3の吐出圧力との中間圧力になる。密閉容器13内を高圧用圧縮要素の吐出圧力より低い圧力に保持することにより以下のような利点がある。
(1)圧縮された高温の冷媒ガスによる電動要素8の加熱が少ない。低温の冷媒ガスが電動要素8を冷却するため、回転子9、固定子10の温度が低下し、電動要素8の効率が向上する。
(2)油と相溶性のある冷媒では、油中に溶解する冷媒ガスの割合が少なくなり、軸受等での冷媒ガスの発泡現象が起こりにくく、圧縮機の信頼性が向上する。
(3)密閉容器13の耐圧を低くでき、密閉容器13の薄肉・軽量化を図ることができる。
【0019】
また、本実施例に示した揺動ピストン形圧縮機は、ローラとベーンを一体化しているので、ロータリ圧縮機のようにローラにベーンを押圧するためにベーンに高圧の背圧をかける必要が無く、密閉容器13内を吐出圧力以下にした構造に適用し易い。
【0020】
次に圧縮機構部の給油機構について説明する。図3において、給油ピース23は駆動軸4の下端に装着されていて、密閉容器13内の潤滑油24中に浸っている。密閉容器13内の各摺動部、主軸受5、福軸受6、及びローラ部2c、3c等への給油は、駆動軸4の回転による遠心ポンプ作用により、密閉容器13の底部に貯溜された潤滑油24が駆動軸4に設けられた貫通孔4cより小径の開口を有する給油ピース23より吸引され、駆動軸4に設けられた給油孔25、26、27、28から駆動軸4の外周面に導かれる。主軸受5へはスパイラル溝29により潤滑油が供給される。偏心部4a、4b及び副軸受6へはそれぞれの外周面に設けられた溝(図示せず)等により潤滑油が供給され、各摺動部の潤滑がなされる。
【0021】
一方、高圧用圧縮要素3の偏心部4bを潤滑した潤滑油24の一部は、主軸受5もしくは仕切板7のローラ部3c1内周側と吸入室12を交互に行き来する位置に設けられた油ポケット34により吸入室12に供給され、シリンダ3a内の内部潤滑を行う。低圧用圧縮要素2の偏心部4aを潤滑した潤滑油24の一部は、差圧によってローラ部2c1と副軸受6及び仕切板7との微少な隙間を通って吸入室12に供給される。
【0022】
ここで、特に高圧用圧縮要素3では圧縮された冷媒ガスが高圧なので、圧縮室11からローラ部3c1の内周面側へ冷媒ガスが漏れ込むことが生じやすい。本発明の一実施形態において、駆動軸4に圧入等により取り付けられ駆動軸4の回転中心近傍まで延びたガス排出管30、31、32が、漏れ込んだ冷媒ガスを貫通孔4cに導いて、導かれた冷媒ガスは密閉容器13内に開放された貫通孔4cを通じて排出される。
【0023】
遠心ポンプ作用を利用した場合、貫通孔4c内の油面は図3及び図4に示すような放物線となる。本実施の形態においては、ガス排出管30、31は貫通孔4c内の油面を通り抜けて駆動軸4の回転中心近傍まで伸びているため、特に底部から離れた位置にあるガス排出管30の中に潤滑油24が入ってくることがない。その点、圧縮要素を複数備えた場合、潤滑油が貯留する底部から相対的に離れた位置に高段側の圧縮要素を設けるときに有効である。駆動軸4の回転による遠心力によって潤滑油と冷媒ガスの密度差から、密度の高い潤滑油は外側に、密度の低い冷媒ガスは内側に位置するようになるので、ほぼローラ部3c1内周面に漏れ込んだ冷媒ガスのみをガス排出管30、31から貫通孔4cへ抜き密閉容器13へ確実に排出できる。
【0024】
また、圧縮機の運転条件によって密閉容器13内の潤滑油24の液面が変化することが考えられる。例えば遠心ポンプ作用による給油量が少なくなる低速域ではガス排出管30、31、32が潤滑油24によって満たされる場合が起こりうる。このような場合でも貫通孔4c内の潤滑油24は駆動軸4の回転によって図4に示す放物線の圧力分布を示し、貫通孔4cの半径rが大きくなるほど圧力pが高くなるので、潤滑油24は流入口の圧力が高い給油孔30、31から駆動軸4の外周面に供給され、ローラ部3c2内周面の漏れ込んだ冷媒ガスは流出口の圧力が低い駆動軸4の回転中心近傍に開口したガス排出管から気泡となって排出される。
【0025】
次にガス排出管30、31、32の一例について、図5、図6を用いて説明する。説明する構成とすることによりガス排出管の取り付けが容易となり組み立て性が向上する。ガス排出管30、31、32を構成するために、駆動軸4とは別部材であるガス排出ピース33を用いる。ガス排出ピース33は大径円筒部33aと小径円筒部33bとを備える。大径円筒部33aは、ガス排出ピース33自身が挿入される駆動軸4の孔30a、31a、32aより若干径が大きい。小径円筒部33bは、大径円筒部33aより径が小さい。大径円筒部33aにはストッパ33cとスリット部33dを有している。
【0026】
ガス排出ピース33は図6に示すように、孔30a、31a、32aに挿入するとき、大径円筒部33bのスリット部33dが孔30a、31a、32aの中で弾性変形する。この変形による突っ張り力により、ガス排出ピース33は孔30a、31a、32aに固定される。また、ストッパ33cは孔30a、31a、32aを通過中は図のように弾性変形し、孔30a、31a、32aの駆動軸4中心側の開口部を通過するとこの変形がもとに戻り、駆動軸4の回転による遠心力が働いても抜けないようになっている。このように、ガス排出ピース33を用いることで、ガス排出管30、31、32は、駆動軸4の中心近傍までその開口部を容易に延長することができる。
【0027】
次に給油孔25、26、27と孔30a、31a、32aに位置について説明する。図7(a)に低圧用圧縮要素2(図1のA−A断面)の駆動軸4の一回転中に偏心部に働く荷重の計算結果を示す。図面はA−A断面を副軸受6側から見た図である。計算の条件を示すと、作動流体は二酸化炭素で、圧力条件は吸入圧力Ps=6.8MPa、吐出圧力Pd=12.5MPaである。偏心部4aには駆動軸の一回転中に、図のような偏心部4a中心に向かう荷重が作用する。これにより駆動軸4には図7(b)に示すような圧縮応力と引張応力が働く。この時、引張応力側(図7(b)中の駆動軸4における左上方)に給油孔や孔があると応力集中により駆動軸4の破壊が起こりやすい。本発明の一実施形態として、圧縮応力側に給油孔25、26、27及び孔30a、31a、32aを設けるのが望ましい。
【0028】
以上の説明により、密閉容器内を吐出圧力以下に保持したとき、高圧用圧縮要素3のローラ部3c1内周面側に冷媒ガスが漏れ込んでも、簡単な構造で軸受摺動部に漏れ込んだ冷媒ガスが浸入することなく、駆動軸4内部の貫通孔4cから密閉容器13内に排出できる。そのため軸受摺動部やシリンダ3a内部へ安定した給油が可能となり、高性能で高信頼性の密閉型回転圧縮機を提供することができる。
【0029】
更に、給油孔26、27、28や孔30a、31a、32aを駆動軸4の圧縮応力が作用する側に設けると、駆動軸4に作用する荷重が大きくなる二酸化炭素のような高圧冷媒に適用した場合においても信頼性を確保できる。
【0030】
次に、本発明の他の実施形態を図8に示す。ここで図1乃至図7と同一符号を付したものは、同一部品であり同一の作用をなす。図8において、圧縮動作は図1乃至図7に示したものと同じであるが、給油機構が異なる。以下に本発明の他の実施形態の給油機構を説明する。
【0031】
駆動軸4の回転による遠心ポンプ作用により、密閉容器13の底部に貯留された潤滑油24は、駆動軸4の給油口4dより小径の開口を有する給油ピース23より吸引される。給油通路35、36から駆動軸4の外周面に潤滑油24は導かれる。主軸受5へ潤滑油を供給するためには、スパイラル溝29に潤滑油を供給することで潤滑油が主軸受5内に供給される。偏心部4a、4b及び副軸受6へは外周面に形成された溝(図示せず)等に潤滑油を供給することで各摺動部の潤滑がなされる。
【0032】
一方、高圧用圧縮要素3の偏心部4bを潤滑した潤滑油24の一部は、主軸受5もしくは仕切板7の端面上であって、ローラ部3c1内周面側と吸入室12を交互に行き来する位置に設けられた油ポケット34により吸入室12に供給され、シリンダ3a内の内部潤滑を行う。低圧用圧縮要素2の偏心部4aを潤滑した潤滑油24の一部は、差圧によってローラ部2c1と副軸受6及び仕切板7との微少な隙間を通って吸入室12に供給される。
【0033】
ここで、高圧用圧縮要素3では圧縮室11からローラ部3c1の内周面側へ冷媒ガスが漏れ込む。そして、この冷媒ガスは駆動軸4の中心近傍に設けられたガス排出孔37から貫通孔4cを通って密閉容器13の内部へ排出される。このようにガス排出孔37と給油通路35、36を分離し、ガス排出孔37を駆動軸4の内側に給油通路35、36を駆動軸4の外側に設けているので、密度の重い潤滑油24は駆動軸4の回転による遠心力で駆動軸4の外周面に向かい、密度の軽い冷媒ガスは駆動軸4中心のガス排出孔37に向かうようになり、ローラ部3c1内周面に漏れ込んだ冷媒ガスをガス排出孔37から密閉容器13へ確実に排出できる。
【0034】
以上の構成とすることにより、密閉容器13内を吐出圧力以下に保持し、高圧用圧縮要素3のローラ部3c1内周面に漏れ込んだ冷媒ガスが簡単な構造で軸受摺動部に浸入することなく、駆動軸4内部の貫通孔4cから密閉容器13内に排出できる。そのため軸受摺動部やシリンダ3a内部へ安定した給油が可能となり、高性能で高信頼性の密閉型回転圧縮機を提供することができる。更に駆動軸4以外に部品を使うことがないので、部品数や組み立て行程が少なくなり低コスト化につながる。
【0035】
次に、本発明の一実施形態を適用した2段圧縮可能な密閉型回転圧縮機をヒートポンプ式給湯機に適用した場合における冷凍サイクルの構成を、図9を用いて説明する。本発明の一実施形態を適用した密閉型回転圧縮機38に設けられた低圧用圧縮要素2で中間圧力まで圧縮された冷媒ガスは中間冷却器38aで冷却された後、高圧用圧縮要素3で吐出圧力まで圧縮される。吐出パイプ22から熱交換器39に流入した圧縮冷媒ガスは、水通路40内の水と熱交換する。その後膨張弁41で冷媒ガスは減圧され、蒸発器ファン44aからの送風を受ける蒸発器42で吸熱、ガス化された後、吸入パイプ14を経て密閉型回転圧縮機38に吸入される。ここで図9に示したヒートポンプ式給湯機は本発明の密閉型回転圧縮機を搭載しているので、エネルギ効率に優れたヒートポンプ式給湯機得られる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態では、2段圧縮機を用いて説明したが、単段圧縮機にも容易に適用でき、密閉容器内を低圧用圧縮要素2の吸入圧力としても同様の効果が得られる。また、ヒートポンプ装置の他に冷凍空調装置にも適用可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、軸受摺動部やシリンダ3a内部へ安定した給油が可能となり、高性能で高信頼性の密閉型回転圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係わる揺動ピストン形2段圧縮機の縦断面図。
【図2】図1のA−A(A‘−A’)断面において駆動軸を90°ずつ回転させた圧縮動作の説明図。
【図3】図1で説明した揺動ピストン形2段圧縮機の給油機構拡大図。
【図4】図1で説明した揺動ピストン形圧縮機の給油機構が潤滑油で満たされた場合の給油機能説明図。
【図5】本発明の一実施形態に係わるガス排出ピース構造図。
【図6】本発明の一実施形態に係わるガス排出ピースの取り付け方法説明図。
【図7】本発明の一実施形態に係わる偏心部の作用する荷重方向と給油孔および孔の位置説明図。
【図8】本発明の他の実施形態に係わる揺動ピストン型2段圧縮機の給油機構拡大図。
【図9】本発明における密閉型回転圧縮機を搭載したヒートポンプ式給湯器を示す図。
【符号の説明】
1…圧縮要素、2…低圧用圧縮要素、2a…シリンダ、2b…円筒状内周面、2c…揺動ピストン、2c1…ローラ部、2c2ベーン部、2d…円筒孔部、2e…孔部、2f…活動部材、3…低圧用圧縮要素、3a…シリンダ、3b…円筒状内周面、3c…揺動ピストン、3c1…ローラ部、3c2ベーン部、3d…円筒孔部、3e…孔部、3f…活動部材、4…駆動軸、4a、4b…偏心部、4c…貫通孔、4d…給油口、5…主軸受、6…副軸受、7…仕切板、8…電動要素、9…回転子、10…固定子、11…圧縮室、12…吸入室、13…密閉容器、14…吸入パイプ、14a…吸入通路、15…吐出ポート、16…吐出通路、17…吐出パイプ、18…中間冷却器、19…吸入パイプ、19a…吸入通路、20…吐出ポート、21…吐出室、22…吐出パイプ、23…給油ピース、24…潤滑油、25、26、27、28…給油孔、29…スパイラル溝、30、31、32…ガス排出管、30a、31a、32a…孔、33…ガス排出ピース、33a…大径円筒部、33b…小径円筒部、33c…ストッパ、33d…スリット、34…油ポケット、35、36…給油通路、37…ガス排出孔、38…密閉型回転圧縮機、39…熱交換器、40…水通路、41…膨張弁、42…蒸発器、42a…蒸発器ファン。
Claims (10)
- 密閉容器内に電動要素とその電動要素に駆動軸を介して連結する回転圧縮要素とを備え、前記密閉容器の底部に溜まる潤滑油を前記回転圧縮要素の摺動部に給油する給油機構を有する密閉型回転圧縮機において、前記回転圧縮要素は、前記駆動軸を支持する二つの軸受と、その軸受間に設けられたシリンダとを有し、前記駆動軸は、前記シリンダ内で嵌合されたローラを公転運動させる偏心部と、外側は前記潤滑油が通過し内側は前記ローラの内周側に漏れた冷媒ガスが通過する部分を少なくとも備える貫通孔を有する密閉型回転圧縮機。
- 請求項1記載の密閉型回転圧縮機において、前記密閉容器内は吐出圧力以下であって、前記貫通孔から前記駆動軸外周面に向かう複数の横孔を設け、各々の横孔は給油通路もしくはガス通路のいずれか一方に機能する密閉型回転圧縮機。
- 請求項2記載の密閉型回転圧縮機において、前記複数の横孔のうち冷媒ガスが通る横孔が、前記駆動軸の回転中心近傍まで延びている密閉型回転圧縮機。
- 請求項3記載の密閉型回転圧縮機において、前記冷媒ガスが通過する前記横孔は、前記駆動軸の回転中心近傍まで達する円筒管である密閉型回転圧縮機。
- 請求項1記載の密閉型回転圧縮機において、密閉容器内は吐出圧力以下であって、前記貫通孔から前記駆動軸の外周面に向かう複数の横孔を設け、少なくともその横孔のうち一部は前記駆動軸の回転中心近傍まで達する円筒管を備えている密閉型回転圧縮機。
- 請求項4若しくは5記載の密閉型回転圧縮機において、前記円筒管は、前記横孔より大径の円筒部と小径の円筒部を有し、大径の円筒部にはストッパとスリットを設けている密閉型回転圧縮機。
- 請求項2記載の密閉型回転圧縮機において、前記貫通孔から前記駆動軸の外周面に向かう複数の横孔を前記駆動軸の圧縮応力が作用する側に設けた密閉型回転圧縮機。
- 請求項1記載の密閉型回転圧縮機において、前記密閉容器内は吐出圧力以下であって、前記駆動軸内部に複数の貫通孔を有し、各々の貫通孔は給油通路もしくはガス通路のいずれか一方に機能する密閉型回転圧縮機。
- 請求項8記載の密閉型回転圧縮機において、前記貫通孔のうち冷媒ガスが通過する前記貫通孔は前記密閉容器の内部の上部空間と前記ローラの内周側とを連通し、潤滑油を給油する前記貫通孔は前記密閉容器の下部に貯留された潤滑油と前記ローラの内周側とを連通する密閉型回転圧縮機。
- 請求項1から9のいずれかに記載の密閉型回転圧縮機を搭載したヒートポンプ装置及び冷凍空調装置。
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